IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社アトライズヨドガワの特許一覧

<>
  • 特許-静電容量センサ 図1
  • 特許-静電容量センサ 図2
  • 特許-静電容量センサ 図3
  • 特許-静電容量センサ 図4
  • 特許-静電容量センサ 図5
  • 特許-静電容量センサ 図6
  • 特許-静電容量センサ 図7
  • 特許-静電容量センサ 図8
  • 特許-静電容量センサ 図9
  • 特許-静電容量センサ 図10
  • 特許-静電容量センサ 図11
  • 特許-静電容量センサ 図12
  • 特許-静電容量センサ 図13
  • 特許-静電容量センサ 図14
  • 特許-静電容量センサ 図15
  • 特許-静電容量センサ 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-20
(45)【発行日】2023-06-28
(54)【発明の名称】静電容量センサ
(51)【国際特許分類】
   G01V 3/08 20060101AFI20230621BHJP
   H01H 36/00 20060101ALI20230621BHJP
【FI】
G01V3/08 D
H01H36/00 J
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022154178
(22)【出願日】2022-09-27
【審査請求日】2022-09-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592070878
【氏名又は名称】株式会社アトライズヨドガワ
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】太田垣 貴康
【審査官】山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-099297(JP,A)
【文献】特開2007-175163(JP,A)
【文献】特表2019-526318(JP,A)
【文献】特開2021-100228(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01V 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサ電極と、検知領域に対する被検知体の接触又は接近動作を前記センサ電極の静電容量変化に基づいて検知する検出装置と、を備える静電容量センサであって、
前記検知領域に設けられる導体を備え、
前記導体は、前記センサ電極との間に間隔あけて又は誘電体を介在させて対向配置されており、
前記センサ電極及び前記導体が対向する方向から見た前記導体の面積は、前記センサ電極の面積よりも大きく、前記導体の一部分が前記センサ電極に対向し、
前記検出装置は、前記導体の静電容量と前記センサ電極の静電容量との合成容量の変化を前記センサ電極の静電容量変化として検出する検出部と、制御部と、を含み、
前記検出部は、前記静電容量変化を電圧変化に変えるCVアンプを含み、前記制御部は、前記検出部から出力される前記電圧変化に応じた検出信号に基づいて前記検知領域に対する被検知体の接触又は接近動作を検知するように構成されている、静電容量センサ。
【請求項2】
前記導体は、前記検知領域の全域に設けられる、請求項1に記載の静電容量センサ。
【請求項3】
前記導体は、導電性インク、導電性樹脂、金属膜、金属箔、金属板、金属網、導電性織物、導電性編み物及び導電性不織布のいずれかで構成される、請求項1に記載の静電容量センサ。
【請求項4】
前記検知領域はトイレの便座であり、
前記導体は、前記便座の裏面に設けられ、
前記センサ電極は、前記導体の一部分に前記誘電体を介して固定される、請求項1から3のいずれか一項に記載の静電容量センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、センサ電極の静電容量変化に基づいて検知領域に対する被検知体の接触又は接近動作を検知する静電容量センサに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、情報通信機器、家電製品、車載製品などの電子機器においては、ユーザのタッチ操作に反応して各種機能を実行するように構成されており、ユーザのタッチ操作を検知するために静電容量センサが用いられている。静電容量センサは、各機器においてユーザがタッチ操作を行う検知領域の近傍にセンサ電極が配置され、センサ電極により生成される電界にユーザの体の一部分(例えば指)が干渉することにより、センサ電極の静電容量がCからC+ΔCに変化する。この静電容量の変化ΔCをセンサ電極に接続された検出装置で検出することにより、検知領域に対するユーザのタッチ操作の有無を判別することができる(例えば特許文献1を参照)。なお、本開示において、タッチ操作とは、ユーザの体の一部分やタッチペンなどの入力器具など(以下、「被検知体」という。)が検知領域に接触又は接近する操作を指す。
【0003】
センサ電極の静電容量Cの大きさは、センサ電極の面積に比例し、センサ電極及び被検知体の間の距離に反比例する。よって、センサ電極はその面積が広いほど静電容量Cが大きくなるため、検知距離を大きくしてもタッチ操作を感度よく検知可能である。また、センサ電極の面積が広いほど、ユーザのタッチ操作に感応できる検知範囲を拡大可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-210811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、静電容量センサの検知範囲や感度はセンサ電極の面積に依存するため、静電容量センサを搭載する機器のラインナップに応じてセンサ電極の面積を変えると、センサ電極の静電容量も変わり、機器ごとにセンサ電極が持つ静電容量、さらにセンサ電極に依存する寄生容量及び個体ばらつき、感度、閾値などの調整が必要となり、煩雑になる。また、センサ電極の面積を広くするためにセンサ電極を大きくすると、その分、コスト高となる。
【0006】
本開示は、上記課題を解決することに着目して、センサ電極を大きくしなくても検知範囲を拡大でき、静電容量センサを搭載する機器のラインナップに応じて機器ごとに調整の必要がない静電容量センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の静電容量センサは、上記課題を解決するため、以下の項1に記載の静電容量センサを主題とする。
【0008】
項1.センサ電極と、検知領域に対する被検知体の接触又は接近動作を前記センサ電極の静電容量変化に基づいて検知する検出装置と、を備える静電容量センサであって、
前記検知領域に設けられる導体を備え、
前記導体は、前記センサ電極との間に間隔あけて又は誘電体を介在させて対向配置されており、
前記センサ電極及び前記導体が対向する方向から見た前記導体の面積は、前記センサ電極の面積よりも大きく、前記導体の一部分が前記センサ電極に対向し、
前記検出装置は、前記導体の静電容量と前記センサ電極の静電容量との合成容量の変化を前記センサ電極の静電容量変化として検出する検出部と、制御部と、を含み、
前記検出部は、前記静電容量変化を電圧変化に変えるCVアンプを含み、前記制御部は、前記検出部から出力される前記電圧変化に応じた検出信号に基づいて前記検知領域に対する被検知体の接触又は接近動作を検知するように構成されている、静電容量センサ。
【0009】
また本開示の静電容量センサは、上記項1に記載の静電容量センサの好ましい態様として、以下の項2に記載の静電容量センサを包含する。
【0010】
項2.前記導体は、前記検知領域の全域に設けられる、項1に記載の静電容量センサ。
【0011】
また本開示の静電容量センサは、上記項1及び項2に記載の静電容量センサの好ましい態様として、以下の項3に記載の静電容量センサを包含する。
【0012】
項3.前記導体は、導電性インク、導電性樹脂、金属膜、金属箔、金属板、金属網、導電性織物、導電性編み物及び導電性不織布のいずれかで構成される、項1又は項2に記載の静電容量センサ。
【0013】
また本開示の静電容量センサは、上記項1から項3に記載の静電容量センサの好ましい態様として、以下の項4に記載の静電容量センサを包含する。
【0014】
項4.前記検知領域はトイレの便座であり、
前記導体は、前記便座の裏面に設けられ、
前記センサ電極は、前記導体の一部分に前記誘電体を介して固定される、項1から3のいずれか一項に記載の静電容量センサ。
【発明の効果】
【0015】
本開示の静電容量センサによれば、面積が小さいセンサ電極と、センサ電極よりも面積が大きい導体との静電誘導により、検知領域に対するユーザのタッチ操作などの被検知体の接触又は接近動作を検知している。そのため、本開示の静電容量センサでは、導体が従来技術におけるセンサ電極の役割を果たし、導体への被検知体の近接に対して感応するように構成される。よって、本開示の静電容量センサは、センサ電極の面積が小さくても、大きい面積の導体によって被検知体の接触又は接近動作に感応できる検知範囲を拡大することができる。
【0016】
加えて、本開示の静電容量センサは、被検知体の接触又は接近動作に感応できる検知範囲を拡大するためにセンサ電極の面積を大きくする必要がなく、小さい面積のセンサ電極で対応可能なため、コスト高を抑えることができる。
【0017】
また本開示の静電容量センサでは、センサ電極に対する被検知体の検知距離は、導体及びセンサ電極の距離と導体及び被検知体の距離との和となり、従来技術において同面積のセンサ電極による検知距離よりも大きい。よって、本開示の静電容量センサは、センサ電極に対する被検知体の検知距離を大きく確保することができ、検知距離を大きくしても感度よく検知領域に対する被検知体の接触又は接近動作を検知することができる。
【0018】
また本開示の静電容量センサでは、検知範囲や感度はセンサ電極の面積に依存しない。そのため、静電容量センサを搭載する機器のラインナップ(検知範囲や感度)に応じてセンサ電極の面積を変える必要はない。そのうえ、機器のラインナップ(検知範囲や感度)に応じて導体の面積が変わっても、検知領域に対する被検知体の接触又は接近動作によるセンサ電極の静電容量の変化は少ない。よって、本開示の静電容量センサは、機器ごとにセンサ電極が持つ静電容量、さらにセンサ電極に依存する寄生容量及び個体ばらつき、感度、閾値などの調整の必要をなくすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本開示の一実施形態の静電容量センサの機能構成を示す図である。
図2】本開示の一実施形態の静電容量センサの機能構成を示す図である。
図3】本開示の一実施形態の静電容量センサの動作原理を説明する図である。
図4】従来の静電容量センサの動作原理を説明する図である。
図5】静電容量センサを便座ヒーターに適用した例を示す図である。
図6】(A)便座の裏面を示す図であり、(B)便座の断面を示す図である。
図7】静電容量センサを在席確認システムに適用した例を示す図である。
図8】椅子の座部の断面を示す図である。
図9】静電容量センサを自動水栓器具に適用した例を示す図である。
図10】(A)カランの正面の一部を示す図であり、(B)(C)カランの断面を示す図である。
図11】(A)静電容量センサをランプに適用した例を示す図であり、(B)ランプの断面の一部を示す図である。
図12】(A)静電容量センサをワイヤレスイヤホンに適用した例を示す図であり、(B)ワイヤレスイヤホンの断面の一部を示す図である。
図13】(A)静電容量センサをタッチスイッチに適用した例を示す図であり、(B)タッチセンサの機能構成を示す図である。
図14】(A)静電容量センサをタッチスイッチに適用した例を示す図であり、(B)タッチセンサの機能構成を示す図である。
図15】(A)静電容量センサを水位センサに適用した例を示す図であり、(B)水位センサの断面の一部を示す図である。
図16図15の水位センサにおいて水位と静電容量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
静電容量センサの概要及び全体構成の説明
本開示の静電容量センサは、例えば電子機器(情報通信機器、家電製品、車載製品など)においてユーザのタッチ操作に反応して各種機能を実行させるために、ユーザのタッチ操作を検知するために用いられる。静電容量センサは、各機器の検知領域にユーザが体の一部分やタッチペンなどの専用の入力器具などの被検知体(導電体)を接近又は接触させることで生じるセンサ電極の静電容量変化を検出することで、検知領域に対するタッチ操作の有無を判別する。以下、本開示の静電容量センサの実施形態について、添付図面を参照して説明する。なお、本開示の静電容量センサは、以下の実施形態に限定されない。
【0021】
図1及び図2は、静電容量センサ1の機能構成を例示している。静電容量センサ1は、センサ電極2と、機器においてユーザのタッチ操作を受け付ける検知領域8に設けられる導体3と、センサ電極2の静電容量変化に基づいて検知領域8に対するタッチ操作の有無を判別する検出装置4と、を備えている。
【0022】
センサ電極の説明
センサ電極2は、従来から公知のものであり、従来から静電容量センサのセンサ電極に用いられている材料、例えば、黒鉛、カーボンブラックなどの炭素;アルミニウム、銅、銀、金などの金属;チオフェン系導電性高分子、ポリスチレンスルホン酸(PSS)などの導電性樹脂;あるいは、これらの複合材料により形成することができる。
【0023】
センサ電極2は、面状体の形態であり、例えば板状、シート状などを呈し、その外形は例えば矩形、円形などである。センサ電極2の大きさは、特に限定されないが、縦が3mm以上80mm以下、横が3mm以上80mm以下(円の場合は直径が3mm以上80mm以下)の大きさであり、好ましくは縦が3mm以上20mm以下、横が3mm以上20mm以下(円の場合は直径が3mm以上20mm以下)の大きさであり、センサ電極2は、主面の面積(後述するセンサ電極2及び導体3が対向する方向から見た面積)が小さく形成されている。
【0024】
センサ電極2は、図示しない電源によりグラウンドに対してプラスの電圧が加えられている。これにより、センサ電極2にはプラスの電荷(正電荷)が一様に生じている。
【0025】
導体の説明
導体3は、黒鉛、カーボンブラックなどの炭素;アルミニウム、銅、銀、金などの金属;チオフェン系導電性高分子、ポリスチレンスルホン酸(PSS)などの導電性樹脂;導電性インク;金属や炭素を含有した化学繊維、表面が金属で被覆された化学繊維、金属を繊維化した金属繊維などの導電性繊維;あるいは、これらの複合材料により形成することができる。
【0026】
導体3は、面状体の形態であり、例えば板状、シート状、膜状などを呈する。導体3は、特に限定されないが、好ましくは金属膜(メッキを含む)、金属シート(金属箔)、金属板、金属網の他、導電性繊維により形成される織物(メッシュを含む)、編み物、不織布を用いることができる。
【0027】
導体3は、機器が有する検知領域8に設けられる。導体3は検知領域8に対してユーザによりタッチ操作される側に設けられていてもよいし、ユーザによりタッチ操作される側とは反対側に設けられていてもよい。
【0028】
導体3は、センサ電極2と対向する、つまりは互いの主面同士が向かい合うように配置されている。導体3は、センサ電極2との間に間隔があけられていて空気が介在するように配置されている、あるいは、センサ電極2との間に絶縁物などの誘電体が介在するようにして配置されている。
【0029】
導体3の外形は、例えば矩形、円形などである。導体3は、センサ電極2及び導体3が対向する方向から見て、センサ電極2よりも面積が大きくなるように形成されており、導体3の一部分にセンサ電極2が対向している。
【0030】
導体3の大きさは、特に限定されないが、検知領域8の全域(ほぼ全域も含む)に設けることができる大きさであることが好ましい。これにより、検知領域8の全域をユーザのタッチ操作に感応可能な範囲にすることができる。
【0031】
導体3は、その一部分がセンサ電極2から発生する電界内に位置するように配置されている。導体3の一部分が電界内に存在することで、導体3は静電誘導を受けて分極が起こり、導体3のセンサ電極2から近い部分には、センサ電極2の正電荷に引かれて異種のマイナスの電荷(負電荷)が生じ、これと等量の正電荷が導体3のセンサ電極2から遠い部分に生じる。
【0032】
導体3及びセンサ電極2の距離hは、距離hが小さいほど静電誘導が起こりやすく、導体3に生じる負電荷の量が大きくなるため、導体3に生じる正電荷の量も同様に大きくなる。そのため、導体3の正電荷が生じる部分とグラウンドとの間に発生する電界が大きくなるので、導体3及びセンサ電極2の距離hは短いほうが好ましい。
【0033】
ユーザのタッチ操作による静電容量変化の説明
図1及び図3(A)に示すように、検知領域8に対するユーザのタッチ操作が無い時において、導体3の静電容量をCとし、センサ電極2の静電容量をC(C<C)とすると、本開示ではCとCの直列接続となるため、相互したセンサ電極2の静電容量は、C×C/(C+C)となる。この静電容量C×C/(C+C)が検出装置4によって監視される。これに対して、図2及び図3(B)に示すように、ユーザがタッチ操作のために検知領域8にユーザの体の一部分(例えば指)などの被検知体9を接近又は接触させると(導体3及び被検知体9の距離hが短くなると)、導体3からの電界に被検知体9が干渉する。ユーザの体は接地されているため、導体として働くユーザの体を通じて電荷が集まり、導体3の静電容量がCからC+ΔCに変化する。導体3の静電容量(電荷)がC+ΔCに変化すると、相互したセンサ電極2の静電容量は(C+ΔC)×C/{(C+ΔC)+C)}となる。そのため、検知領域8に対するユーザのタッチ操作があると、センサ電極2の静電容量の変化ΔC´は以下の式1の通りとなり、このセンサ電極2の静電容量変化ΔC´が検出装置4によって検出される。
【0034】
[式1]
ΔC´=(C+ΔC)×C/{(C+ΔC)+C)}-C×C/(C+C
=ΔC×C /{(C+C)×(C+ΔC+C)}
【0035】
なお、本開示のセンサ電極2の静電容量変化ΔC´は、式1の分母(C+C)×(C+ΔC+C)=C +2C+CΔC+CΔC+C >C であるため、式1のC /{(C+C)×(C+ΔC+C)}が1より小さい。よって、ΔC´はΔCよりも小さい。
【0036】
従来技術の静電容量センサにおいて、本開示の静電容量センサ1の導体3と同じ面積のセンサ電極でユーザのタッチ操作を検知すると、図4(A)(B)に示すように、ユーザのタッチ操作によるセンサ電極の静電容量変化は(C+ΔC)-C=ΔCである。そのため、本開示の静電容量センサ1は、ユーザのタッチ操作によるセンサ電極2の静電容量の変化量は従来技術よりも少なく、小さいことが分かる。
【0037】
検出装置の説明
センサ電極2の静電容量は、検知領域8の導体3にユーザが被検知体9を接触又は接近させた際の導体3及び被検知体9の距離hに応じて変化する。検出装置4は、センサ電極2の静電容量変化を検出する検出部5を含む。
【0038】
検出部5は、センサ電極2に電気的に接続されている。検出部5は、センサ電極2の静電容量変化を検出するための電気・電子回路を有する。センサ電極2の静電容量変化を検出するため、検出部5は、例えば、静電容量変化を電圧変化に変えるCVアンプと、感度を調整するためCVアンプのゲイン調整機能を有した検出回路とから構成することができる。検知領域8に対するユーザのタッチ操作が無い時は、導体3の電界内に被検知体9が存在しないので、静電容量の変化もなくCVアンプからの電圧変化もない。一方で、検知領域8に対するユーザのタッチ操作により導体3の電界内に被検知体9が干渉すると、センサ電極2の静電容量が増加し、CVアンプからの静電容量増加分に応じた電圧変化にゲインを掛けた電圧変化が検出回路から出力される。検出信号は、アナログデータの形態であってもよいし、デジタルデータの形態であってもよい。
【0039】
検出部5によりセンサ電極2の静電容量変化を検出する方法としては、上述した例に限定されず、(1)センサ電極2に一定電荷充電後、放電に要する時間差を計測する方法、(2)センサ電極2の静電容量の変化を発振回路の発振状態の変化により検出する方法、などの従来から公知の様々な方法を挙げることができる。検出部5は、(1)(2)の方法に適した従来から公知の静電容量センサに用いられている電気・電子回路やスイッチなどで構成することができる。
【0040】
検出装置4は、検出部5から出力される検出信号に基づいて検知領域8に対するタッチ操作があったと判別する制御部6を含む。制御部6は、例えばマイクロコンピュータにより構成することができる。制御部6は、受付部60、処理部61及び出力部62などを含む。
【0041】
受付部60は、検出信号を受け付けるインターフェースとして構成されている。検出信号がアナログデータの形態である場合、受付部は、A/Dコンバータを含む適宜の変換回路を含むように構成される。処理部61は、検出信号に基づいて検知領域8に対するタッチ操作の有無を判別するように構成されている。例えば、処理部61は、センサ電極2の静電容量の変化量がメモリに記憶されている所定の閾値を超えると判定すると、検知領域8にタッチ操作が行なわれたと判断する。出力部62は、機器に搭載されている制御装置10に各機器の機能を実行させるための制御信号を出力するインターフェースとして構成されている。処理部61は、検知領域8にタッチ操作が行なわれたと判断することで、出力部62から制御信号を出力するように構成されている。制御信号は、アナログデータの形態であってもよいし、デジタルデータの形態であってもよい。制御信号がアナログデータの形態である場合、出力部は、D/Aコンバータを含む適宜の変換回路を含むように構成される。
【0042】
検出装置4はセンサ電極2が組み込まれたモジュール7の形態であってもよいし、センサ電極2と別個の形態であってもよい。
【0043】
静電容量センサの作用・効果
上述した本実施形態の静電容量センサ1によれば、面積が小さいセンサ電極2と、センサ電極2よりも面積が大きい導体3との静電誘導により、検知領域8に対するユーザのタッチ操作を検知している。そのため、本実施形態の静電容量センサ1では、導体3が従来技術におけるセンサ電極の役割を果たし、導体3への被検知体9の近接に対して感応するように構成される。よって、本実施形態の静電容量センサ1は、センサ電極2の面積が小さくても、大きい面積の導体3によってユーザのタッチ操作に感応できる検知範囲を拡大することができる。
【0044】
加えて、本実施形態の静電容量センサ1は、ユーザのタッチ操作に感応できる検知範囲を拡大するためにセンサ電極2の面積を大きくする必要がなく、小さい面積のセンサ電極2で対応可能なため、コスト高を抑えることができる。
【0045】
また本実施形態の静電容量センサ1では、センサ電極2に対する被検知体9の検知距離h(図2に示す)は、導体3及びセンサ電極2の距離hと導体3及び被検知体9の距離hとの和となり、従来技術において同面積のセンサ電極による検知距離hよりも大きい。よって、本実施形態の静電容量センサ1は、センサ電極2に対する被検知体9の検知距離hを大きく確保することができ、検知距離hを大きくしても感度よく検知領域8に対するユーザのタッチ操作を検知することができる。
【0046】
また本実施形態の静電容量センサ1では、検知範囲や感度はセンサ電極2の面積に依存しない。そのため、静電容量センサ1を搭載する機器のラインナップ(検知範囲や感度)に応じてセンサ電極2の面積を変える必要はない。そのうえ、機器のラインナップ(検知範囲や感度)に応じて導体3の面積が変わっても、検知領域に対するユーザのタッチ操作によるセンサ電極2の静電容量の変化は少ない。そのため、本実施形態の静電容量センサ1は、機器ごとにセンサ電極2が持つ静電容量、さらにセンサ電極2に依存する寄生容量及び個体ばらつき、感度、閾値などの調整の必要をなくすことができる。
【0047】
静電容量センサの使用例の説明
次に、本開示の静電容量センサ1を各種機器に用いた例を説明する。なお、本開示の静電容量センサの用途は、以下の例に限定されない。
【0048】
(1)便座ヒーター
図5及び図6は、静電容量センサ1を便座ヒーター11に用いた例である。図示例の便座ヒーター11は、便座12がユーザのタッチ操作を検知する検知領域8であり、タッチ操作としてユーザが便座12に座る動作を静電容量センサ1が検知することに応じて、ヒーターが駆動するように構成されている。また、図示例では、静電容量センサ1のセンサ電極2及び検出装置4は検出装置4にセンサ電極2が組み込まれたモジュール7の形態である。
【0049】
便座12は合成樹脂製であり、便座12の裏面の全域に導体3として例えばアルミシート(アルミ箔)が貼り付けられており、導体3の一部分にモジュール7が接着剤や両面テープ13などの誘電体を介して貼り付けられている。モジュール7は検知領域8の後方側の端に配置されている。また、便座12の裏面にはヒーター線(コードヒーター)14を這わせている。ヒーター線14は、便座ヒーター11の動作を制御する制御装置に接続されており、制御装置は、公知の電気・電子回路やスイッチなどを用いてヒーター線14への通電を制御している。
【0050】
ユーザが便座12に座ると、導体3が検知領域8である便座12の全域に設けられているため、導体3の静電容量が増加し、センサ電極2の静電容量が増加する。このセンサ電極2の静電容量変化を検出装置4が検出することで、静電容量センサ1により検知領域8に対するユーザのタッチ操作が検知される。この検知情報が制御信号として便座ヒーター11の制御装置に有線又は無線で送信されることで、便座ヒーター11の制御装置はヒーター線14を発熱させて便座の暖房機能を実行する。一方、ユーザが便座12から立ち上がると、導体3の静電容量が低下し、センサ電極2の静電容量が低下する。このセンサ電極2の静電容量変化を検出装置4が検出することで、静電容量センサ1により検知領域8に対するユーザのタッチ操作の解除が検知される。この検知情報が制御信号として便座ヒーター11の制御装置に有線又は無線で送信されることで、便座ヒーター11の制御装置はヒーター線14の発熱を止めて便座の暖房機能を停止する。
【0051】
なお、この例においては、便座ヒーター11の制御装置の代わりに、検出装置4の制御部6が検知領域8に対するユーザのタッチ操作を検知すると、ヒーター線14を発熱させて便座の暖房機能を実行するように構成してもよい。
【0052】
(2)在席管理システム
図7及び図8は、静電容量センサ1を在席管理システム21に用いた例である。図示例の在席管理システム21は、椅子の座部22がユーザのタッチ操作を検知する検知領域8であり、タッチ操作としてユーザが椅子の座部22に座る動作を静電容量センサ1が検知することに応じて、在席確認するように構成されている。また、図示例では、静電容量センサ1のセンサ電極2及び検出装置4は検出装置4にセンサ電極2が組み込まれたモジュール7の形態である。
【0053】
座部22は合皮や布製であり、座部2の下面の全域に導体3として例えば導電性メッシュ布が貼り付けられており、導体3の一部分にモジュール7が接着剤や両面テープ23などの誘電体を介して貼り付けられている。モジュール7は検知領域8の側方側の端に配置されている。
【0054】
ユーザが座部22に座ると、導体3が検知領域8である座部22の全域に設けられているため、導体3の静電容量が増加し、センサ電極2の静電容量が増加する。このセンサ電極2の静電容量変化を検出装置4が検出することで、静電容量センサ1により検知領域8に対するユーザのタッチ操作が検知される。この検知情報が制御信号として図示しない在席管理システムの制御装置に有線又は無線で送信されることで、在席管理システム21の制御装置は在席確認を行う。一方、ユーザが座部22から立ち上がると、導体3の静電容量が低下し、センサ電極2の静電容量が低下する。このセンサ電極2の静電容量変化を検出装置4が検出することで、静電容量センサ1により検知領域8に対するユーザのタッチ操作の解除が検知される。この検知情報が制御信号として在席管理システム21の制御装置に有線又は無線で送信されることで、在席管理システム21の制御装置は離席確認を行う。
【0055】
(3)自動水栓器具
図9及び図10は、静電容量センサ1を自動水栓器具31に用いた例である。図示例の自動水栓器具31は、吐水部37と、導水部35と、ハンドル部38とを備えており、導水部35の一部分がユーザのタッチ操作を検知する検知領域8である。自動水栓器具31は、タッチ操作としてユーザが導水部35に手を近づける動作を静電容量センサ1が検知することに応じて、水が吐水部37から吐出するように構成されている。また、図示例では、静電容量センサ1のセンサ電極2及び検出装置4は検出装置4にセンサ電極2が組み込まれたモジュール7の形態である。
【0056】
導水部35の検知領域8以外の部分32は真鍮などの合金製あるいはABS樹脂などの合成樹脂製であり、外面が例えばクロムメッキなどの金属メッキ34が施されている。導水部35の検知領域8の部分33は合成樹脂製であり、該部分33の外面に導体3として例えば金属メッキが施されている。導水部35の検知領域8以外の部分32の外面の金属メッキ34は検知領域8の部分33の外面の導体3との間にクリアランスが設けられており、金属メッキ34は導体3と電気的に非接続とされており、好ましくは接地される。導体3の検知領域8の部分33の内面には導体3の一部分と対向するようにモジュール7が接着剤や両面テープ36などの誘電体を介して貼り付けられている。モジュール7は検知領域8の下方側の端の隅に配置されている。また、自動水栓器具31内の給水路には電磁弁が設けられている。電磁弁は、自動水栓器具31の動作を制御する制御装置に接続されており、制御装置は、電磁弁の開閉を制御している。
【0057】
ユーザが導水部35の一部分の検知領域8に手を近づけると、導体3が検知領域8の全域に設けられているため、導体3の静電容量が増加し、センサ電極2の静電容量が増加する。このセンサ電極2の静電容量変化を検出装置4が検出することで、静電容量センサ1により検知領域8に対するユーザのタッチ操作が検知される。この検知情報が制御信号として自動水栓器具31の制御装置に有線又は無線で送信されることで、自動水栓器具31の制御装置は電磁弁を開動作させて吐水を実行する。自動水栓器具31の制御装置は、吐水が所定時間行われると電磁弁を閉動作させて止水を実行する。
【0058】
図9及び図10では、導水部35の一部分が検知領域8とされているが、導水部35の全域を検知領域8とすることもできる。この場合には、導水部35の外面の全域に導体3として金属メッキが被覆される。吐水部37及びハンドル部38は、導水部35と電気的に非接続とされるように、吐水部37及びハンドル部38の外面を被覆する金属メッキと導水部35の外面の導体3との間にクリアランスが設けられる。また、吐水部37及びハンドル部38の外面の金属メッキは、好ましくは接地される。
【0059】
なお、静電容量センサ1を自動水栓器具31に用いる例においては、自動水栓器具31の制御装置の代わりに、検出装置4の制御部6が検知領域8に対するユーザのタッチ操作を検知すると、電磁弁を開閉動作させて吐水・止水を実行するように構成してもよい。
【0060】
(4)ランプ
図11は、静電容量センサ1をランプ41に用いた例である。図示例のランプ41は、ベース42-43の一部である傾斜部43がユーザのタッチ操作を検知する検知領域8である。ランプ41は、タッチ操作としてユーザが傾斜部43に手を近づける動作を静電容量センサ1が検知することに応じて、光源が点灯・消灯するように構成されている。また、図示例では、静電容量センサ1のセンサ電極2及び検出装置4は検出装置4にセンサ電極2が組み込まれたモジュール7の形態である。
【0061】
ベース42-43は例えば木製や合成樹脂製であり、傾斜部43の外面の全域に導体3として例えば金属メッキが施されている。傾斜部43の内面には導体3の一部分と対向するようにモジュール7が接着剤や両面テープ46などの誘電体を介して貼り付けられている。モジュール7は検知領域8の上方側の端に配置されている。ベース42-43の下部42の外面の全域にも例えば金属メッキ45を施すことができるが、下部42の外面の金属メッキ45は傾斜部43の外面の導体3との間にクリアランスが設けられており、金属メッキ45は、導体3と電気的に非接続とされており、好ましくは接地される。また、ベース42-43の上方に取り付けられた例えばガラス製のカバー44の内側には光源が配置されている。光源は、ランプ41の動作を制御する制御装置に接続されており、制御装置は、公知の電気・電子回路やスイッチなどを用いて光源への通電を制御している。
【0062】
ユーザがベース42-43の傾斜部43に手を近づけると、導体3が検知領域8である傾斜部43の全域に設けられているため、導体3の静電容量が増加し、センサ電極2の静電容量が増加する。このセンサ電極2の静電容量変化を検出装置4が検出することで、静電容量センサ1により検知領域8に対するユーザのタッチ操作が検知される。この検知情報が制御信号としてランプ41の制御装置に有線又は無線で送信されることで、ランプ41の制御装置は光源に通電してランプ41の点灯を実行する。一方、ユーザがベース42-43の傾斜部43から手を離すと、導体3の静電容量が低下し、センサ電極2の静電容量が低下し、その後に再度、ユーザがベース42-43の傾斜部43に手を近づけると、導体3の静電容量が増加し、センサ電極2の静電容量が増加する。このセンサ電極2の静電容量変化を検出装置4が検出することで、静電容量センサ1により検知領域8に対するユーザのタッチ操作が検知されると、この検知情報が制御信号としてランプ41の制御装置に有線又は無線で送信され、ランプ41の制御装置は光源への通電を停止して、ランプ41の消灯を実行する。
【0063】
なお、ベース42-43の傾斜部43を周方向に沿って複数の領域に分けて検知領域8を複数配置し、それぞれの検知領域8ごとに導体3とモジュール7を設けることで、ランプ41は、一つの検知領域8はユーザのタッチ操作の検知によりランプ41の点灯を実行し、他の一つの検知領域8はユーザのタッチ操作の検知によりランプ41の消灯を実行し、他の一つの検知領域8はユーザのタッチ操作の検知によりランプ41の点灯する色の変更を実行するなど、種々の設計変更が可能である。
【0064】
また、静電容量センサ1をランプ41に用いる例においては、ランプ41の制御装置の代わりに、検出装置4の制御部6が検知領域8に対するユーザのタッチ操作を検知すると、光源に通電してランプ41の点灯や消灯を実行するように構成してもよい。
【0065】
(5)ワイヤレスイヤホン
図12は、静電容量センサ1をワイヤレスイヤホン51に用いた例である。図示例のワイヤレスイヤホン51は、ハウジング52の先端部53がユーザのタッチ操作を検知する検知領域8である。ワイヤレスイヤホン51は、タッチ操作としてユーザがハウジング52の先端部53を耳の穴に挿入する動作を静電容量センサ1が検知することに応じて、電源がオン・オフするように構成されている。また、図示例では、静電容量センサ1のセンサ電極2及び検出装置4は検出装置4にセンサ電極2が組み込まれたモジュール7の形態である。
【0066】
ハウジング52は例えば合成樹脂製であり、先端部53の内面の全域に導体3として例えば金属メッキが施されており、導体3の一部分にモジュール7が接着剤や両面テープ55などの誘電体を介して貼り付けられている。モジュール7は検知領域8であるハウジング52の先端部53においてイヤーピース54とは反対側の端に配置されている。
【0067】
ユーザがワイヤレスイヤホン51の先端部53を耳の穴に挿入すると、導体3が検知領域8である先端部53の全域に設けられているため、導体3の静電容量が増加し、センサ電極2の静電容量が増加する。このセンサ電極2の静電容量変化を検出装置4が検出することで、静電容量センサ1により検知領域8に対するユーザのタッチ操作が検知される。この検知情報が制御信号としてワイヤレスイヤホン51の動作を制御する制御装置に有線又は無線で送信されることで、ワイヤレスイヤホン51の制御装置は公知の電気・電子回路やスイッチなどを介してワイヤレスイヤホン51の電源をオンにする。一方、ユーザがワイヤレスイヤホン51を耳から外すと、導体3の静電容量が低下し、センサ電極2の静電容量が低下する。このセンサ電極2の静電容量変化を検出装置4が検出することで、静電容量センサ1により検知領域8に対するユーザのタッチ操作の解除が検知される。この検知情報が制御信号としてワイヤレスイヤホン51の制御装置に有線又は無線で送信されることで、ワイヤレスイヤホン51の制御装置はワイヤレスイヤホン51の電源をオフにする。
【0068】
なお、静電容量センサ1をワイヤレスイヤホン51に用いる例においては、ワイヤレスイヤホン51の制御装置の代わりに、検出装置4の制御部6が検知領域8に対するユーザのタッチ操作を検知すると、ワイヤレスイヤホン51の電源のオン・オフを実行するように構成してもよい。
【0069】
また、静電容量センサ1をワイヤレスイヤホン51に用いる例においては、ワイヤレスイヤホン51を補聴器に設計変更することが可能である。
【0070】
(6)タッチスイッチ
図13及び図14は、静電容量センサ1を例えばエレベータや自動ドア、タッチパネルに用いられる、押しボタンの操作ではなく軽く触れるだけで機器に実行させる各種の機能の選択を行えるタッチスイッチ61に用いた例である。
【0071】
図示例のタッチスイッチ61は、プリント基板63の上面に一つ又は複数のセンサ電極2が設けられ、プリント基板2の上方に間隔をあけて例えば合成樹脂や木製などのカバー板62が配置される。カバー板62の上面にはそれぞれのセンサ電極2に対応して一つ又は複数の導体3が設けられている。導体3は例えば金属膜で構成されている。なお、図14では、カバー板62の上面において導体3以外の領域にも例えば金属膜64が形成されており、タッチスイッチ61の表面がメタリック調とされている。図14では、金属膜64は導体3との間にクリアランスが設けられており、金属膜64と導体3とは電気的に非接続とされるとともに、金属膜64はグラウンドに接地される。カバー板62の上面には、導体3や金属膜64を覆うように例えば樹脂製フィルムや樹脂製パネルなどの非導電性の表面層65が設けられている。タッチスイッチ61の表面、この例では表面層65の上面がユーザのタッチ操作を検知する検知領域8であり、それぞれの導体3の位置がタッチスイッチ61の各種のボタン操作の位置となる。
【0072】
静電容量センサ1は、ユーザのタッチ操作としてユーザの指が検知領域8のいずれかのボタン操作の位置に接触する又は接近する動作を検知する。ユーザが検知領域8のいずれかのボタン操作の位置に指を接触又は接近させると、該ボタン操作の位置にある導体3の静電容量が増加し、該導体3に対応するセンサ電極2の静電容量が増加する。検出装置4の検出部5は、それぞれのセンサ電極2の静電容量変化を検出することにより、検知領域8においてタッチ操作が行われた位置を検出し、検知領域8のいずれのボタン操作の位置でタッチ操作が行われたかを示す検出信号を制御部6に出力する。制御部6は、検出信号に基づいて、検知領域8のいずれのボタン操作の位置でタッチ操作が行われたかどうかを判別し、機器に搭載されている制御装置10に、タッチ操作が行われたボタン操作の位置に設定された機能を機器に実行させるための制御信号を出力する。
【0073】
変形例の説明
以上、本開示の静電容量センサについて説明したが、上述した実施形態は、あくまでも例示であって制限的なものではない。そのため、本開示の静電容量センサは上述した実施形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変形が可能である。
【0074】
例えば上記実施形態では、被検知体としてユーザの指などの体の一部分が検知領域8に接触又は接近する動作(タッチ操作)を検知している。しかし、被検知体は人の体の一部分でなくてもよく、例えば水などの液体であってもよい。例えば図15に示すように、本開示の静電容量センサ1は、水位センサ71に用いることができる。
【0075】
図15に示す水位センサ71は、水などの液体を貯留する有底筒状のタンク72の高さ方向の一部分が水位を検知する検知領域8である。水位センサ71は、液量の増減に伴い検知領域8に対して液体が接近する動作を静電容量センサ1が検知することに応じて、液体の水位が検知領域8に達しているかどうかを検出するように構成されている。また、図示例では、静電容量センサ1のセンサ電極2及び検出装置4は検出装置4にセンサ電極2が組み込まれたモジュール7の形態である。
【0076】
タンク72は例えば木製や合成樹脂製であり、タンク72の検知領域8の部分はその外面の全域に導体3として例えば金属メッキが施されている。タンク72の検知領域8の部分の内面には導体3の一部分と対向するようにモジュール7が接着剤や両面テープ73などの誘電体を介して貼り付けられている。モジュール7は検知領域8の下方側の端に配置されている。タンク72の高さ方向において、検知領域8以外の部分の外面の全域にも例えば金属メッキを施すことができるが、この金属メッキは検知領域8の部分の外面の導体3との間にクリアランスが設けられており、この金属メッキは導体3と電気的に非接続とされており、好ましくは接地される。
【0077】
図示しない注入口から液体がタンク72内に供給されると、液体の水位が上昇し、液体の水位が検知領域8の下端まで上昇する。このとき、導体3が検知領域8の全域に設けられているため、図16に示すように、導体3の静電容量が増加し、センサ電極2の静電容量が増加する。このセンサ電極2の静電容量変化を検出装置4が検出し、この検知情報が制御信号として水位センサ71の制御装置に有線又は無線で送信されることで、水位センサ71の制御装置は、液体がタンク72内で所定の高さまで貯留されていることを検出する。液体がタンク72内にさらに供給されて、液体の水位が検知領域8の上端よりも上方に位置すると、導体3の静電容量は一定に維持され、センサ電極2の静電容量が一定に維持される。この検知情報が制御信号として水位センサ71の制御装置に有線又は無線で送信されることで、水位センサ71の制御装置は、液体がタンク72内で所定の高さを越えて貯留されていることを検出する。その後、図示しない注出口から液体がタンク72外に排出され、液体の水位が検知領域8の上端まで下降すると、導体3の静電容量が減少し、センサ電極2の静電容量が減少する。このセンサ電極2の静電容量変化を検出装置4が検出し、この検知情報が制御信号として水位センサ71の制御装置に有線又は無線で送信されることで、水位センサ71の制御装置は、液体が再びタンク72内で所定の高さまで貯留されていることを検出する。液体がタンク72外にさらに排出されて、液体の水位が検知領域8の下端よりも下降すると、導体3の静電容量は一定に維持され、センサ電極2の静電容量が一定に維持される。この検知情報が制御信号として水位センサ71の制御装置に有線又は無線で送信されることで、水位センサ71の制御装置は、液体がタンク72内で所定の高さまで貯留されていないことを検出する。
【0078】
なお、静電容量センサ1を水位センサ71に用いる例においては、水位センサ71の制御装置の代わりに、検出装置4の制御部6が、液体の水位がタンク72の所定の高さにあるか否かを検出するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0079】
1 静電容量センサ
2 センサ電極
3 導体
4 検出装置
5 検出部
6 制御部
7 モジュール
8 機器の検知領域
9 被検知体
10 機器の制御装置
【要約】
【課題】センサ電極を大きくしなくても検知範囲を拡大でき、静電容量センサを搭載する機器のラインナップに応じて機器ごとに調整の必要がない静電容量センサを提供することを目的とする。
【解決手段】センサ電極2と、検知領域8に対するユーザのタッチ操作をセンサ電極2の静電容量変化に基づいて検知する検出装置4と、を備える静電容量センサ1であって、タッチ操作を検知する検知領域8に設けられる導体3を備え、導体3は、センサ電極2との間に間隔あけて又は誘電体を介在させて対向配置されており、センサ電極2及び導体3が対向する方向から見た導体3の面積は、センサ電極2の面積よりも大きく、導体3の一部分がセンサ電極2に対向する。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16