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特許7299657太陽光発電施設を用いた自己託送システムにおける発電、蓄電、及び送電のシナリオ作成装置
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  • 特許-太陽光発電施設を用いた自己託送システムにおける発電、蓄電、及び送電のシナリオ作成装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-20
(45)【発行日】2023-06-28
(54)【発明の名称】太陽光発電施設を用いた自己託送システムにおける発電、蓄電、及び送電のシナリオ作成装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/00 20060101AFI20230621BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20230621BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20230621BHJP
   G06Q 50/06 20120101ALI20230621BHJP
【FI】
H02J3/00 170
H02J3/00 180
H02J3/38 130
H02J3/32
G06Q50/06
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022194558
(22)【出願日】2022-12-06
【審査請求日】2022-12-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522474675
【氏名又は名称】ノータスソーラージャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136847
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼山 嘉成
(72)【発明者】
【氏名】高橋 隆造
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-141778(JP,A)
【文献】特開2020-058141(JP,A)
【文献】特開2020-058101(JP,A)
【文献】国際公開第2020/256056(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00
H02J 3/38
H02J 3/32
G06Q 50/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力需要施設から離れた地にある太陽光発電施設で発電された電力を、送電網を通じて、電力需要施設に送電するための自己託送システムにおいて、前記太陽光発電施設での発電、蓄電、及び送電のための計画を示すシナリオデータを作成するためのシナリオ作成装置であって、
前記電力需要施設で電力市場から電力を購入する電力購入量、前記太陽光発電施設で発電された電力を自己託送する発電送電量、及び前記太陽光発電施設で蓄電された電力を自己託送する蓄電送電量について、時間帯毎の計画を作成することで、前記シナリオデータを作成することを特徴とする、シナリオ作成装置。
【請求項2】
前記電力市場から電力を購入した場合の費用と、前記太陽光発電施設で発電された電力を自己託送した場合との費用を比較するための比較手段と、
前記比較手段によって、前記電力市場から電力を購入した場合の費用の方が安いと判断された場合に、前記電力需要施設での前記時間帯毎の需要予測電力量に対する前記電力購入量、前記発電送電量、及び前記蓄電送電量についての前記シナリオデータを作成するための第1のシナリオデータ作成手段と、
前記比較手段によって、前記電力市場から電力を購入した場合の費用の方が高いと判断された場合に、前記時間帯毎の前記需要予測電力量に対する前記発電送電量及び前記蓄電送電量についての前記シナリオデータを作成するための第2のシナリオデータ作成手段とを備えることを特徴とする、請求項1に記載のシナリオ作成装置。
【請求項3】
前記第1のシナリオデータ作成手段は、発電可能な時間帯でない場合は、前記電力市場から電力を購入するとして、前記シナリオデータを作成することを特徴とする、請求項2に記載のシナリオデータ作成装置。
【請求項4】
前記第1のシナリオデータ作成手段は、発電可能な時間帯において、前記電力市場から電力を購入した場合の費用と、前記太陽光発電施設で発電された電力を自己託送した場合との費用との価格差が第1の閾値よりも大きい場合には、前記電力市場から電力を購入し、かつ、前記太陽光発電施設で発電された余剰電力は蓄電するとして、前記シナリオデータを作成することを特徴とする、請求項2に記載のシナリオ作成装置。
【請求項5】
前記第1のシナリオデータ作成手段は、発電可能な時間帯において、前記電力市場から電力を購入した場合の費用と、前記太陽光発電施設で発電された電力を自己託送した場合との費用との価格差が閾値よりも小さい場合には、前記電力需要施設での電力需要を考慮して、前記シナリオデータを作成することを特徴とする、請求項2に記載のシナリオ作成装置。
【請求項6】
前記第1のシナリオデータ作成手段は、
前記電力需要施設での前記電力需要が第2の閾値よりも小さい場合には、前記電力市場から電力を購入し、かつ、前記太陽光発電施設で発電された電力を自己託送するとして前記シナリオデータを作成し、
前記電力需要施設での前記電力需要が第2の閾値よりも大きい場合には、前記太陽光発電施設で発電された電力及び蓄電された電力を自己託送するとして、前記シナリオデータを作成することを特徴とする、請求項5に記載のシナリオ作成装置。
【請求項7】
前記第1のシナリオデータ作成手段は、前記電力市場から電力を購入するか否かを決定する際に、再エネ比率の目標達成率を考慮して、再エネ比率の目標達成率を達成していない場合には、前記電力市場から電力を購入せずに、発電送電するとして、前記シナリオデータを作成することを特徴とする、請求項6に記載のシナリオ作成装置。
【請求項8】
前記第1のシナリオデータ作成手段は、前記電力市場から電力を購入し、かつ、前記太陽光発電施設で発電された電力を自己託送するとして前記シナリオデータを作成する際、予め決められた購入及び発電送電の決定ルールに基づいて、前記シナリオデータを作成することを特徴とする、請求項6に記載のシナリオ作成装置。
【請求項9】
前記第1のシナリオデータ作成手段は、前記太陽光発電施設で発電された電力及び蓄電された電力を自己託送するとして、前記シナリオデータを作成する際、予め決められた発電送電及び蓄電送電の決定ルールに基づいて、前記シナリオデータを作成することを特徴とする、請求項6に記載のシナリオ作成装置。
【請求項10】
前記第2のシナリオデータ作成手段は、前記発電送電量及び前記蓄電送電量についての前記シナリオデータを作成する際、予め決められた発電送電及び蓄電送電の決定ルールに基づいて、前記シナリオデータを作成することを特徴とする、請求項2に記載のシナリオ作成装置。
【請求項11】
電力需要施設から離れた地にある太陽光発電施設で発電された電力を、送電網を通じて、電力需要施設に送電するための自己託送システムにおいて、前記太陽光発電施設での発電、蓄電、及び送電のための計画を示すシナリオデータを作成するためのコンピュータ装置を、
力市場から電力を購入する電力購入量、前記太陽光発電施設で発電された電力を自己託送する発電送電量、及び前記太陽光発電施設で蓄電された電力を自己託送する蓄電送電量について、時間帯毎の計画を作成することで、前記シナリオデータを作成する手段として機能させることを特徴とする、プログラム。
【請求項12】
前記コンピュータ装置を、
前記電力市場から電力を購入した場合の費用と、前記太陽光発電施設で発電された電力を自己託送した場合との費用を比較するための比較手段と、
前記比較手段によって、前記電力市場から電力を購入した場合の費用の方が安いと判断された場合に、前記電力需要施設での前記時間帯毎の需要予測電力量に対する前記電力購入量、前記発電送電量、及び前記蓄電送電量についての前記シナリオデータを作成するための第1のシナリオデータ作成手段と、
前記比較手段によって、前記電力市場から電力を購入した場合の費用の方が高いと判断された場合に、前記時間帯毎の前記需要予測電力量に対する前記発電送電量及び前記蓄電送電量についての前記シナリオデータを作成するための第2のシナリオデータ作成手段として機能させることを特徴とする、請求項11に記載のプログラム。
【請求項13】
太陽電池、パワーコンディショナ部、及び蓄電池部を備える太陽光発電施設であって、
前記太陽電池が発電した電力の発電送電、前記蓄電池部が蓄電している電力の蓄電送電、及び前記蓄電池部での蓄電を制御するための制御装置を備えており、
前記制御装置は、請求項1又は2に記載のシナリオ作成装置によって作成された前記シナリオデータに基づいて、発電送電、蓄電送電、及び蓄電を行うか否かを制御することを特徴とする、太陽光発電施設。
【請求項14】
太陽電池、パワーコンディショナ部、及び蓄電池部を備える太陽光発電施設で用いられる制御装置であって、
前記太陽電池が発電した電力の発電送電、前記蓄電池部が蓄電している電力の蓄電送電、及び前記蓄電池部での蓄電を行うか否かを、請求項1又は2に記載のシナリオ作成装置によって作成された前記シナリオデータに基づいて、制御することを特徴とする、制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠隔地にある太陽光発電施設で発電された電力を、送電網を通じて、自己の電力需要施設へ送電するいわゆる自己託送において、当該太陽光発電施設での発電、蓄電、及び送電の計画の作成に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
従来、自家消費型の太陽光発電システムにおいては、自己の施設内に、太陽光発電設備を設置して、当該施設内の負荷で消費する電力を、当該太陽光発電施設が発電した電力で賄うようにしていた。このような自家消費型の太陽光発電システムでは、自己の敷地内に、太陽光発電施設を設置しなければならないため、自己の敷地内に屋根や空きスペースを確保する必要があった。
【0003】
このような自家消費型太陽光発電システムに対して、自己託送システムとは、離れた地にある自己の太陽光発電施設で発電された電力を、送電網(送配電ネットワーク)を通じて、自己又は密接な関係にある電力需要施設に送電するシステムである。自己託送システムを用いれば、屋根や空きスペースの確保が難しい需要施設においても、再生可能エネルギーを利用することができ、自己託送システムは、近年注目されている。
【0004】
自己託送システムを利用する場合、発電計画と需要計画を一致させる(「計画値同時同量」という。)必要がある。「計画値同時同量」では、電力需要施設での電力の需要量と太陽光発電施設からの電力の供給量とを30分単位で予測し、その計画値を、OCCTO(オクト)などの広域機関に提出しなければならない。計画値と実績値とにずれ(「インバランス」という。)が発生した場合には、その量に応じて、ペナルティが課される。
【0005】
特許文献1は、計画値と実績値との間で生じるインバランスを回避又は抑制し得る技術を開示している。特許文献1に記載の技術は、発電設備を用いて発電された電気を、一般送配電事業者の送配電ネットワークを介して、前記発電設備とは別の場所にある電力需要設備へ送電する自己託送を支援するシステムである。この自己託送を支援するシステムは、少なくとも一つのコンピュータを備える。少なくとも一つのコンピュータは、発電設備による発電量の計画値を、所定の単位時間で区分された複数の時間枠毎に記述する発電計画データを取得し、発電計画データの取得後に、複数の時間枠の少なくとも一つについて、発電設備による発電量の予測値を記述する発電予測データを取得し、発電計画データに記述された計画値が、発電予測データに記述された予測値と相違する時間枠を、インバランス時間枠として特定し、インバランス時間枠から所定時間前のゲートクローズ時点を算出し、現時点が前記ゲートクローズ時点よりも前であるのか否かを判定する。上記したシステムによると、例えば広域機関に報告された発電計画を記述する発電計画データと、その後に天気予報等を考慮して作成された発電予測データとをコンピュータに与えることで、インバランスが生じ得るインバランス時間枠が特定されるとともに、そのインバランス時間枠がゲートクローズ時点を過ぎたものであるのか否かも判定される。これにより、自己託送を利用する者は、予測されたインバランスに対して、広域機関に報告済みの発電計画を修正すべきか、発電設備において稼働調整を行うべきか等、適切な対策を選択することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6991492号公報
【文献】特許第6216377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
需要家としては、出来る限り支払う電気料金を低くしたいと考える。自己託送システムを用いる場合であっても、同様である。
【0008】
ただし、太陽光発電施設を用いる場合であっても、その設備投資やメンテナンス費用の他、送電費用や再エネ付加金などの外部に支払う費用が発生しているのであり、太陽光発電で得られた電力には、コストがかかっている。
【0009】
時間帯によっては、太陽光発電施設で得られた電力を自己託送するのではなく、電力市場から、電力を購入した方が、トータルの電気料金を安く抑えることができる可能性がある。また、当然、自己託送システムを用いる場合でも、太陽光発電施設が発電しない時間帯や、蓄電残量が少なくなって蓄電池からの自己託送が困難な場合には、電力市場から、電力を購入しなくてはならない。
【0010】
このような観点から、自己託送システムにおいて、支払うべき電気料を出来る限り安くすることが可能な発電計画や蓄電計画、送電計画を作成することが必要となる。しかし、そのような点を考慮した発明は、今まで存在しなかった。
【0011】
そこで、本発明は、自己託送システムにおいて、支払うべき電気料を出来る限り安くすることが可能な発電、蓄電、及び送電の計画を作成するための装置を提供することを目的とする。
【0012】
なお、特許文献2の段落0032ないし0048等に記載の電力調整システムは、自己託送システムにおけるものではないが、電力系統(30)からの受電(買電)に対して支払う対価を最小化するために、蓄電池(33)の充電あるいは放電を行う期間を調整している。たとえば、買電の単価が高い時間帯は蓄電池(33)から放電し、買電の単価が低い時間帯は蓄電値(33)に蓄電することとしている。ただし、特許文献2に記載の電力調整システムは、需要家内での自家消費に関するものであり、自己託送システムに用いられるものではない。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明は、以下の特徴を有する。
本発明は、電力需要施設から離れた地にある太陽光発電施設で発電された電力を、送電網を通じて、電力需要施設に送電するための自己託送システムにおいて、太陽光発電施設での発電、蓄電、及び送電のための計画を示すシナリオデータを作成するためのシナリオ作成装置である。
【0014】
シナリオ作成装置は、電力需要施設で電力市場から電力を購入する電力購入量、太陽光発電施設で発電された電力を自己託送する発電送電量、及び太陽光発電施設で蓄電された電力を自己託送する蓄電送電量について、時間帯毎の計画を作成することで、シナリオデータを作成する。
【0015】
好ましくは、シナリオ作成装置は、電力市場から電力を購入した場合の費用と、太陽光発電施設で発電された電力を自己託送した場合との費用を比較するための比較手段と、比較手段によって、電力市場から電力を購入した場合の費用の方が安いと判断された場合に、電力需要施設での時間帯毎の需要予測電力量に対する電力購入量、発電送電量、及び蓄電送電量についてのシナリオデータを作成するための第1のシナリオデータ作成手段と、比較手段によって、電力市場から電力を購入した場合の費用の方が高いと判断された場合に、時間帯毎の需要予測電力量に対する発電送電量及び蓄電送電量についてのシナリオデータを作成するための第2のシナリオデータ作成手段とを備えるとよい。
【0016】
好ましくは、第1のシナリオデータ作成手段は、発電可能な時間帯でない場合は、電力市場から電力を購入するとして、シナリオデータを作成するとよい。
【0017】
好ましくは、第1のシナリオデータ作成手段は、発電可能な時間帯において、電力市場から電力を購入した場合の費用と、太陽光発電施設で発電された電力を自己託送した場合との費用との価格差が第1の閾値よりも大きい場合には、電力市場から電力を購入し、かつ、太陽光発電施設で発電された余剰電力は蓄電するとして、シナリオデータを作成するとよい。
【0018】
好ましくは、第1のシナリオデータ作成手段は、発電可能な時間帯において、電力市場から電力を購入した場合の費用と、太陽光発電施設で発電された電力を自己託送した場合との費用との価格差が閾値よりも小さい場合には、電力需要施設での電力需要を考慮して、シナリオデータを作成するとよい。
【0019】
好ましくは、第1のシナリオデータ作成手段は、電力需要施設での電力需要が第2の閾値よりも小さい場合には、電力市場から電力を購入し、かつ、太陽光発電施設で発電された電力を自己託送するとしてシナリオデータを作成し、電力需要施設での電力需要が第2の閾値よりも大きい場合には、太陽光発電施設で発電された電力及び蓄電された電力を自己託送するとして、シナリオデータを作成するとよい。
【0020】
好ましくは、第1のシナリオデータ作成手段は、電力市場から電力を購入するか否かを決定する際に、再エネ比率の目標達成率を考慮して、再エネ比率の目標達成率を達成していない場合には、電力市場から電力を購入せずに、発電送電するとして、シナリオデータを作成するとよい。
【0021】
好ましくは、第1のシナリオデータ作成手段は、電力市場から電力を購入し、かつ、太陽光発電施設で発電された電力を自己託送するとしてシナリオデータを作成する際、予め決められた購入及び発電送電の決定ルールに基づいて、シナリオデータを作成するとよい。
【0022】
好ましくは、第1のシナリオデータ作成手段は、太陽光発電施設で発電された電力及び蓄電された電力を自己託送するとして、シナリオデータを作成する際、予め決められた発電送電及び蓄電送電の決定ルールに基づいて、シナリオデータを作成するとよい。
【0023】
好ましくは、第2のシナリオデータ作成手段は、発電送電量及び蓄電送電量についてのシナリオデータを作成する際、予め決められた発電送電及び蓄電送電の決定ルールに基づいて、シナリオデータを作成するとよい。
【0024】
また、本発明は、電力需要施設から離れた地にある太陽光発電施設で発電された電力を、送電網を通じて、電力需要施設に送電するための自己託送システムにおいて、太陽光発電施設での発電、蓄電、及び送電のための計画を示すシナリオデータを作成するためのコンピュータ装置を、電力市場から電力を購入する電力購入量、太陽光発電施設で発電された電力を自己託送する発電送電量、及び太陽光発電施設で蓄電された電力を自己託送する蓄電送電量について、時間帯毎の計画を作成することで、シナリオデータを作成する手段として機能させるプログラムである
【0025】
好ましくは、コンピュータ装置を、電力市場から電力を購入した場合の費用と、太陽光発電施設で発電された電力を自己託送した場合との費用を比較するための比較手段と、比較手段によって、電力市場から電力を購入した場合の費用の方が安いと判断された場合に、電力需要施設での時間帯毎の需要予測電力量に対する電力購入量、発電送電量、及び蓄電送電量についてのシナリオデータを作成するための第1のシナリオデータ作成手段と、比較手段によって、電力市場から電力を購入した場合の費用の方が高いと判断された場合に、時間帯毎の需要予測電力量に対する発電送電量及び蓄電送電量についてのシナリオデータを作成するための第2のシナリオデータ作成手段として機能させるプログラムであるとよい。
【0026】
また、本発明は、太陽電池、パワーコンディショナ部、及び蓄電池部を備える太陽光発電施設であって、太陽電池が発電した電力の発電送電、蓄電池部が蓄電している電力の蓄電送電、及び蓄電池部での蓄電を制御するための制御装置を備えており、制御装置は、請求項1~10のいずれかに記載のシナリオ作成装置によって作成されたシナリオデータに基づいて、発電送電、蓄電送電、及び蓄電を行うか否かを制御する。
【0027】
また、本発明は、太陽電池、パワーコンディショナ部、及び蓄電池部を備える太陽光発電施設で用いられる制御装置であって、太陽電池が発電した電力の発電送電、蓄電池部が蓄電している電力の蓄電送電、及び蓄電池部での蓄電を行うか否かを、上記のいずれかに記載のシナリオ作成装置によって作成されたシナリオデータに基づいて、制御する。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、電力需要施設での電力購入量、太陽光発電施設から自己託送する発電送電量、及び太陽光発電施設から自己託送する蓄電送電量について、時間帯毎の計画を作成することで、シナリオデータを作成することができる。したがって、この計画を支払う電気料を出来る限り安くすることが可能なように作成することで、電力需要施設で支払う電気料を出来る限り安くすることが可能となる。
【0029】
たとえば、電力購入の費用と発電送電の費用とを比較して、購入電力の方が安い場合には、電力購入量、発電送電量、及び蓄電送電量についてのシナリオデータすることで、電力需要施設において安い購入電力を利用することが可能となるので、電気料の支払を出来る限り安くすることができる。その一方で、電力購入に、発電送電や蓄電送電を組み合わせることで、再エネ比率を上げることができるので、再エネ利用目標の達成も実現できる。
【0030】
逆に、購入電力の方が高い場合には、発電送電量及び蓄電送電量についてのシナリオデータを作成することで、電気料の支払を出来る限り安くすることができる。
【0031】
また、購入電力と発電送電との費用の差が大きい場合には、購入電力の方が安いので、電力需要施設では、電力を購入することにして、発電された余剰電力は蓄電することで、支払う電気料を出来る限り安くしつつ、別途、蓄電送電できるようにすることが可能となる。
【0032】
一方、購入電力を発電送電との費用の差が小さい場合には、電力需要施設での電力需要を考慮してシナリオデータを作成することで、需要に応じて、電気料の調整や再エネ比率の調整が可能となる。
【0033】
再エネ比率が目標に達していない場合は、電気料が高くなるかも分からないが、発電送電を利用するとして、シナリオデータを作成することで、再エネ比率の目標達成に寄与できる。
【0034】
発電量が少ない場合には、電力購入量を少なくして、発電送電量を多くすることで、再エネ比率の向上に寄与できる。
【0035】
また、発電量が少ない場合に、発電送電量を少なくして、蓄電送電量を多くすることでも、再エネ比率の向上に寄与できる。
【0036】
また、購入電力の方が高い場合に、発電量が少なければ、発電送電量を少なくして、蓄電送電量を多くすることでも、再エネ比率の向上に寄与できる。
【0037】
本発明のこれら、及び他の目的、特徴、局面、効果は、添付図面と照合して、以下の詳細な説明から一層明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1図1は、本発明の一実施形態における自己託送システム1の全体構成を示すブロック図である。
図2図2は、シナリオ作成装置2の機能的構成を示すブロック図である。
図3図3は、ある電力需要施設8のある一日のシナリオデータの一例を示す図である。
図4図4は、シナリオ作成装置2の動作を示すフローチャートである。
図5図5は、シナリオ作成装置2における処理1の動作を示すフローチャートである。
図6図6は、シナリオ作成装置2における処理2の動作を示すフローチャートである。
図7図7は、購入及び発電送電の比率の決定ルールの例を示すテーブルである。
図8図8は、購入及び発電送電の比率の決定ルールの例を示すフローチャートである。
図9図9は、発電送電及び蓄電送電の比率の決定ルールの例を示すテーブルである。
図10図10は、太陽光発電施設3での動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1において、自己託送システム1は、シナリオ作成装置2と、太陽光発電施設3と、送電網4と、ユーザ端末5と、発電量予測装置6と、新電力情報提供装置7と、電力市場価格予測装置8と、ネットワーク9とを備える。
【0040】
太陽光発電施設3で発電及び蓄電された電力は、送電網4を介して、電力需要施設5に、自己託送される。電力需要施設5は、送電網1から受電する。自己託送を受けない場合、電力事情施設5は、電力市場から電力を購入する。
【0041】
シナリオ作成装置2は、電力市場から電力需要施設5において電力を購入して受電するか(「電力購入」という。)、太陽光発電施設3で発電された電力を受電するか(「発電送電」という。)、太陽光発電施設3で蓄電され送電された電力を受電するか(「蓄電送電」という。)、太陽光発電施設3から送電網4に電力を供給せずに発電電力を蓄電するか(「発電蓄電」という。)の計画(「シナリオ」という。)を示すデータ(「シナリオデータ」という。)を作成する。
【0042】
ユーザ端末5は、ネットワーク9を通じて、シナリオデータの作成をシナリオ作成装置2に指示する。
【0043】
発電量予測装置6は、太陽光発電施設3の設置場所の天気や日照量を予想することで、太陽光発電施設3での発電量の予測を示す情報(「発電量予測情報」という。)を作成して、ネットワーク9を通じて、シナリオ作成装置2に送信する。
【0044】
新電力情報提供装置7は、新電力で発電した電力を、送信網4を通じて電力需要施設4に送信するのに必要な経費に関する情報(「新電力の送信経費情報」という。)を作成して、ネットワーク10を通じて、シナリオ作成装置2からの要求に応じて送信する。
【0045】
電力市場価格予測装置8は、電力市場(日本の場合は、日本卸電力取引所「JEPX (Japan Electric Power Exchange)」)で取引される新電力の価格の予測情報(「電力市場の価格予測情報」という。)を作成して、ネットワーク9を通じて、シナリオ作成装置2からの要求に応じて送信する。電力市場で決定される新電力で発電した電力の価格は、上下するが、電力市場価格予測装置8は、その価格を予測する装置である。
【0046】
図2に示すように、シナリオ作成装置2は、制御部21と、入力部22と、出力部23と、通信部24と、記憶部25とを備えるコンピュータ装置である。制御部21は、本明細書で説明する動作を行うためのプログラムを実行することで、シナリオデータを作成する。当該プログラムは、記憶部25に保存されていてもよいし、適宜、ネットワーク9を介して、外部ストレージ上から実行してもよい。また、記憶部25に格納されているデータは、適宜、ネットワーク9を介して、外部ストレージ上に保存されていてもよい。
【0047】
記憶部25には、電力視上価格予測装置8から入手した単位時間(たとえば、30分)当たりの「電力市場の価格予測情報」、及び、新電力情報提供装置から入手した単位時間当たりの「新電力の送電経費情報」が記憶されている。制御部21は、「電力市場の価格予測情報」、「新電力の送電経費情報」、及び「再エネ加算金」(図示せず)を合算して、単位時間当たりの「新電力の合算単価予測情報(A)」(「新電力ぶっ込み単価予測値」ともいう。)を、記憶部25に記憶させる。
【0048】
記憶部25には、太陽光発電施設3での単位時間当たりの発電単価を示す「太陽光発電施設の発電単価情報」、及び、太陽光発電施設3で発電した電力を送電網4を通じて電力需要施設5に送電するのに要する単位時間当たりの経費を示す「太陽光発電施設の送電経費情報」が記憶されている。制御部21は、「太陽光発電施設の発電単価情報」、及び、「太陽光発電施設の送電経費情報」を合算して、単位時間当たりの「太陽光発電施設の合算単価(B)」(「太陽光発電施設ぶっ込み単価」ともいう。)を、記憶部25に記憶させる。
【0049】
制御部21は、発電量予測装置6からダウンロードした単位時間当たりの「発電量予測情報」を記憶部25に記憶させる。
制御部21は、電力需要施設5における需要予測(「電力需要施設の予測情報」という。)を記憶部25に記憶させる。「電力需要施設の予測情報」は、電力需要施設5での過去の実績や使用機器などから求められている。
【0050】
制御部21は、電力需要施設の予測情報、発電量予測情報、シナリオデータにおける発電送電、発電蓄電、及び蓄電送電の量に基づいて、蓄電池の残容量を予測し、単位時間当たりの「蓄電残容量予測情報」として、記憶部25に記憶させる。
【0051】
制御部21は、作成したシナリオデータを記憶部25に記憶させる。
【0052】
シナリオデータの一例について、図3を参照しながら説明する。0:00~1:30の間、夜間電力のため、蓄電送電するよりも、電力市場から購入した方が安くなるので、需要予測電力に対する電力購入を100%とするシナリオが作成されている。この間、太陽光発電施設3では発電されないので、発電量予測は0[kWh]である。蓄電もされないので、蓄電残量予測は、2,603[kWh]から変化しない。なお、太陽光発電施設3は、夜間電力を蓄電しない設定としているが、夜間電力を蓄電することとしてもよい。
【0053】
日が明けて、7:00から太陽光発電施設3での発電が始まるとする。7:00~7:30の間の発電量予測は214[kWh]であり、需要予測電力量は427[kWh]であるとする。このとき、需要全てを太陽光発電で賄うことはできないので、需要予測電力に対する電力購入を50%、発電送電を50%とするシナリオが作成される。この間、発電残量が発生ないので、蓄電残量予測は、2,603[kWh]のままである。8:30~9:00の時間帯まで同様である。
【0054】
9:00~9:30の間の需要予測電力量は、1,052[kWh]である。この間、発電量予測は、521[kWh]である。新電力の合算単価予測情報(A)が太陽光発電施設の合算単価(B)よりも安いと想定する。そのため、電力購入を組み合わせた方が、トータルの費用は安くなる。新電力の合算単価予測情報(A)と太陽光発電施設の合算単価(B)との価格差が閾値Y1よりも小さいと想定する。また、需要予測電力量が予め決めた閾値Y2よりも少ないと想定する。この場合、後述の購入及び発電送電の比率の決定ルールに基づいて、電力購入と発電送電の割合が決定される(後述の図5のS209参照)。ここでは、購入電力70%、発電送電30%、蓄電送電0%としたシナリオデータが作成されている。需要予測電力量は、1,052[kWh]に対して、発電送電を30%にするということは、1,052×0.3=316[kWh](小数点以下四捨五入)の電力を送電するということである。この間の、発電量予測は、521[kWh]であるから、521-316=205[kWh]の余剰電力が生じる。その余剰電力について、蓄電池に蓄電する(「発電蓄電」を「実行」と表記する。)。蓄電残量予測2,603[kWh]に対して、205[kWh]を蓄電した結果、蓄電残量予測は、2,808[kWh]となる。
【0055】
9:30~10:00の間の需要予測電力量は、1,307[kWh]である。この間、発電量予測は、616[kWh]である。新電力の合算単価予測情報(A)が太陽光発電施設の合算単価(B)よりも安いと想定する。そのため、電力購入を組み合わせた方が、トータルの費用は安くなる。新電力の合算単価予測情報(A)と太陽光発電施設の合算単価(B)との価格差が閾値Y1よりも大きいと想定する。この場合、電力市場から100%購入して、発電した電力を蓄電する(「発電蓄電」を「実行」)(後述の図5のS204参照)。ここでは、購入電力100%、発電送電0%、及び、蓄電送電0%としたシナリオデータが作成されている。この間の、発電量予測は、616[kWh]であるから、それが全て蓄電される。したがって、蓄電残量予測2,808[kWh]に対して、616[kWh]を蓄電した結果、蓄電残量予測は、3,424[kWh]となる。
【0056】
同様にして、10:00~10:30の時間帯から、15:00~15:30の時間帯まで、電力購入が100%であるとして、発電蓄電が実行され続けたとする。その結果、15:00~15:30の時間帯での蓄電残量予測が6,169[kWh]になる。
【0057】
15:30~16:00の間の需要予測電力量は、1,422[kWh]である。この間、発電量予測は、636[kWh]である。この間、新電力の合算単価予測情報(A)が太陽光発電施設の合算単価(B)よりも高いと想定する。そのため、発電送電及び蓄電送電を組み合わせた方が、トータルの費用は安くなる。ここでは、発電送電40%、及び、蓄電送電60%としたシナリオデータが作成されている(後述の図6のS303参照)。この間の、需要予測電力量は、1,422[kWh]であり、発電送電が40%であるので、1,422×0.4=569[kWh]が発電送電される。発電量予測は、636[kWh]であるから、636-569=67[kWh]が余剰電力となり、蓄電される。また、蓄電送電が60%であるので、1,422×0.6=853[kWh]が蓄電送電される。当初の蓄電残量予測が6,169[kWh]であるから、この間の蓄電残量予測は、6,169+67-853=5,383[kWh]となる。
【0058】
同様にして、16:00~16:30の時間帯から、18:00~18:30の時間帯まで、発電送電及び蓄電送電が実行され続けたとする。その結果、18:00~18:30の時間帯での蓄電残量予測が364[kWh]となる。これ以上蓄電送電すると、蓄電残量がなくなり、日没による発電送電もできなくなるので、シナリオデータは、以後、夜明けまで、電力購入を100%として作成される。
【0059】
作成されたシナリオデータは、シナリオ作成装置2から、ネットワーク9を通じて、太陽光発電施設3の制御装置31に送信される。
【0060】
なお、上記の例では、シナリオデータを需要予測電力量[kWh]に対する電力購入、発電送電、発電蓄電の比率で表すこととしたが、電力量[kWh]で表すようにしてもよい。すなわち、シナリオデータは、需要予測電力量[kWh]に対する電力購入の量(購入電力量)、発電送電の電力の量(発電送電量)、発電蓄電の電力の量(蓄電送電量)を比率で表してもよいし、電力量で表してもよく、その他の表し方でもよく、本発明を限定するものでない。シナリオデータは、電力市場から電力を購入する電力購入量、太陽光発電施設3で発電された電力を自己託送する発電送電量、及び太陽光発電施設3で蓄電された電力を自己託送する蓄電送電量について、時間帯毎の計画(シナリオ)を示したデータであると言える。
【0061】
太陽光発電施設3は、制御装置1と、PCS(Power Conditioning Subsystem)部32と、蓄電池部33と、太陽電池34と、切替装置35と、受変電設備36とを備える。
PCS部32は、一以上のPCS32aを含む。各PCS32aには、太陽電池34が接続されており、発電電力は、各PCS32aで交流に変換されて、切替装置35に送られる。各PCS32aは、制御装置31からの発電制御信号に基づいて、出力電力などが制御される。
【0062】
蓄電池部33は、一以上の蓄電池33bと、双方向AC/DC変換器33aとを含む。双方向AC/DC変換器33aは、制御装置31からの蓄電制御信号に基づいて、蓄電池33bに蓄電されている電気を交流に変換して切替装置35及び受変電設備36を介して送電網に供給したり、PCS部32から出力される電気を直流に変換して蓄電池33bに蓄電したりすることができる。
【0063】
切替装置35は、制御装置31からの送電/蓄電の切替信号に基づいて、PCS部32からの電気又は蓄電池部33からの電気を送電網に供給するか、若しくは、PCS部32からの電気を蓄電池33に供給するかを切り替えるための装置である。
受変電設備36は、送電網4に系統連系させるための電圧に昇圧するための設備である。
【0064】
制御装置31は、コンピュータ装置であり、シナリオ作成装置2からダウンロードしたシナリオデータを記憶している。制御装置31は、シナリオデータに基づいて、発電制御信号、蓄電制御信号、及び送電/蓄電の切替信号を、PCS部32、蓄電池部33、及び切替装置35に送信して、発電送電、発電蓄電、及び蓄電送電を実現している。
【0065】
発電送電の場合、制御装置31は、発電電力を出力するような発電制御信号をPCS部32に送信し、PCS32からの出力電力を送電網4に供給するように切り替えるための信号を切替装置35に送信する。
【0066】
発電蓄電の場合、制御装置31は、発電電力を出力するような発電制御信号をPCS部32に送信し、PCS32からの出力電力を蓄電池部33に供給するように切り替えるための信号を切替装置35に送信する。
【0067】
蓄電送電の場合、制御装置31は、放電するための蓄電制御信号を蓄電池部33に送信し、蓄電池部33からの出力電力を送電網4に供給するように切り替えるための信号を切替装置35に送信する。
【0068】
発電送電と蓄電送電が組み合わされている場合は、制御装置31は、それぞれの比率に応じた電力がPCS部32及び蓄電池部33から出力されるような発電制御信号及び蓄電制御信号を出力して、PCS部32及び蓄電池部33からの電力を、送電網4に供給するように切り替えるための信号を切替装置35に送信する。
【0069】
切替装置35において、余剰電力は、蓄電池部33に蓄電されるような回路が形成されている。
【0070】
切替装置35は、具体的には、PLC(Programmable Logic Controller)のようなデバイスによって実現することが可能であるが、限定されるものではない。
【0071】
次に、図4ないし図9を参照しながら、シナリオデータの作成の具体的な動作フローの一例について説明する。
図4において、まず、シナリオ作成装置2の制御部21は、計算対象となる時間帯で使用するデータを読み込む(S101)。当該データは、「電力市場の価格予測情報」、「新電力の送電経費情報」、「太陽光発電施設の発電単価情報」、「太陽光発電施設の送電経費情報」、「発電量予測情報」、「電力需要施設の需要予測情報」、及び、直近の「蓄電池残量予測情報」である。
【0072】
制御部21は、当該時間帯の「電力市場の価格予測情報」+「新電力の送電経費情報」によって、「新電力の合算単価予測情報(A)」を計算する(S102)。制御部21は、
当該時間帯の「太陽光発電施設の発電単価情報」+「太陽光発電施設の送電経費情報」によって、「太陽光発電施設の合算単価(B)」を計算する(S103)。制御部21は、A及びBの二つの単価を比較して、C=A-Bとする(S104)。
【0073】
Cが0以下の場合、すなわち、当該時間帯において電力市場の単価の方が、発電した電力の単価よりも安いか同じである場合、制御部21は、処理1(S105)を実行してシナリオを作成する。一方、Cが0よりも大きい場合、すなわち、当該時間帯において電力市場の単価の方が、発電した電力の単価よりも高い場合、制御部21は、処理2(S106)を実行してシナリオを作成する。
【0074】
そして、制御部21は、全ての時間帯で計算してシナリオを作成するまで上記処理を繰り返す(S107)。全ての時間帯での計算が完了すると、シナリオデータが完成したことになり(S108)、制御部21は、太陽光発電施設3の制御装置31に対して、シナリオデータを送信する(S109)。
【0075】
図5を参照しながら、処理1でのシナリオデータの作成動作について説明する。
制御部21は、当該時間帯における発電量予測X2が0より大きいか否かを判断する(S201)。
【0076】
X2が0より大きくない場合(即ち、X2が0の場合)には、発電することができない時間帯であることを示す。電力市場の方が安いのであるから、蓄電送電もせずに(蓄電送電を0%として)、制御部21は、電力市場からの購入電力を100%とするシナリオを作成する(S202)。
【0077】
X2が0より大きい場合、発電することができる時間帯を示している。このとき、制御部21は、価格差Cが予め決められた閾値Y1よりも大きいか否かを判断する(S203)。閾値Y1よりも大きい場合とは、価格差が大きいことを意味し、電力市場の単価が十分に安いことを意味する。したがって、制御部21は、電力市場からの購入電力を100%とし、発電の余剰電力を蓄電する(「発電蓄電」を実行する)というシナリオを作成する(S204)。制御部21は、S204の後、蓄電される余剰電力を蓄電残量予測に換算して、当該時間帯での蓄電残量予測を作成する(S205)。
【0078】
価格差Cが閾値Y1よりも小さい場合、価格差が小さいことを意味し、制御部21は、S206以降の動作に進む。電力市場価格の方が安ければ、当該時間帯では、全て、購入電力とした方が、電力コストを低くすることができるかもしれないが、それでは、再生可能エネルギーの利用促進が実現されない。そこで、価格差Cが閾値Y1よりも小さい場合には、発電送電や蓄電送電を組み合わせて、再生可能エネルギーの利用を行うこととする。
【0079】
S206において、制御部21は、電力需要施設5での当該時間帯における需要予測情報X3を取得する。そして、制御部21は、X3が予め決められた閾値Y2よりも小さいか否かを判断する(S207)。
【0080】
X3が閾値Y2よりも小さい場合、需要が少ないことを意味する。この場合、制御部21は、予め決められた「購入及び発電送電の比率の決定ルール」に基づいて、電力市場からの購入電力の割合と、発電送電の割合とを決定して、シナリオを作成する(S209)。
【0081】
図7に、「購入及び発電送電の比率の決定ルール」を定義付けるテーブルの一例を示す。図7に示したように、時間帯別発電量が少ない場合には、購入比率を低くし、発電送電比率を高くする。逆に、時間帯別発電量が多い場合には、購入比率を高くし、発電送電比率を低くする。具体的な数値は、太陽光発電施設3での発電可能電力量などを考慮して決めることとする。
【0082】
さらに、図7に基づいて、購入及び発電送電の比率を決定した後に、現時点での再エネ比率を考慮して、決定した比率を調整するようにしてもよい。具体的には、図8に示すように、制御部201は、現時点での再エネ比率の年間目標達成率(年間日数経過率とポイントの加算で決まる)を算出する(S401)。そして、制御部201は、現時点での年間目標達成率が閾値以下か否かを判断する(S402)。閾値以下である場合、再エネ比率の目標が達成されていないので、時間帯別発電量に関わらず、発電送電するとして、シナリオを作成する(S403)。一方、閾値以上の場合、再エネ比率が達成できているので、制御部201は、図7に従った購入及び発電送電の比率を用いるとして、シナリオを作成する(S404)。
【0083】
S207以降の動作の説明に戻る。S207において、X3が閾値Y2以上の場合、需要が多いことを意味する。この場合、制御部21は、発電送電及び蓄電送電するとして、「発電送電及び蓄電送電の比率の決定ルール」に基づいて、シナリオを作成する(S208)。また、蓄電送電することによって、蓄電残量に変化が生じるので、制御部21は、蓄電残量予測を更新する。ただし、蓄電残量予測が下限値(たとえば、0など)以下となる場合は、蓄電送電が出来なくなるので、電力市場から電力を購入するとして、シナリオを作成する。
【0084】
図9に、「発電送電及び蓄電送電の比率の決定ルール」を定義付けるテーブルの一例を示す。図9に示したように、時間帯別発電量が少ない場合には、発電送電比率を低くし、蓄電送電比率を高くする。逆に、時間帯別発電量が多い場合には、発電送電比率を高くし、蓄電送電比率を低くする。具体的な数値は、太陽光発電施設3での発電可能電力量などを考慮して決めることとする。
【0085】
以上、図5に示したように、電力市場の方が安い場合には、処理1によって、購入、発電送電、及び蓄電送電の比率を決定することになる。要約すると、発電できない時間帯の場合には、電力市場から購入し(S202)、購入電力単価と発電電力単価との価格差が大きい場合には、電力市場から購入し(S204)、該価格差が小さくて需要が少ない場合には、電力市場からの購入と発電送電とを組み合わせ(S209)、該価格差が小さくて需要が多い場合には、発電送電と蓄電送電とを組み合わせる(S208)ようにして、シナリオが作成されることとなる。適宜、再エネ比率を考慮して、シナリオは修正される。このように、支払うべきコストを出来る限り抑えるようなシナリオを作成しつつ、適宜、再エネ利用比率を維持できるようにしたシナリオが作成される。
【0086】
次に、図6を参照しながら、処理2でのシナリオデータの作成動作について説明する。
制御部21は、当該時間帯における発電量予測X2が0より大きいか否かを判断する(S301)。
【0087】
X2が0より大きくない場合(即ち、X2が0の場合)には、発電することができない時間帯であることを示す。制御部21は、蓄電送電を100%とするシナリオを作成する(S302)。また、蓄電送電することによって、蓄電残量に変化が生じるので、制御部21は、蓄電残量予測を更新する。ただし、蓄電残量予測が下限値(たとえば、0など)以下となる場合は、蓄電送電が出来なくなるので、電力市場から電力を購入するとして、シナリオを作成する。
【0088】
X2が0より大きい場合、発電することができる時間帯を示している。この場合、制御部21は、発電送電及び蓄電送電するとして、「発電送電及び蓄電送電の比率の決定ルール」に基づいて、シナリオを作成する(S303)。また、蓄電送電することによって、蓄電残量に変化が生じるので、制御部21は、蓄電残量予測を更新する。ただし、蓄電残量予測が下限値(たとえば、0など)以下となる場合は、蓄電送電が出来なくなるので、電力市場から電力を購入するとして、シナリオを作成する。
【0089】
以上、図6に示したように、電力市場の方が高い場合には、蓄電送電とするか(S302)、発電送電及び蓄電送電とするか(S303)が選択されることとなる。これにより、電力市場が高い時間帯では、蓄電送電及び/又は発電送電が利用されることで、支払うべきコストを出来る限り抑えるようなシナリオを作成しつつ、適宜、再エネ利用比率を維持できるようにしたシナリオが作成される。
【0090】
図10を参照しながら、太陽光発電施設3での動作について説明する。時間帯毎(ここでは、30分毎)の制御タイミングが到来したとすると(S501)、太陽光発電施設3の制御装置31は、当該時間帯のダウンロードしたシナリオデータを参照する(S502)。
【0091】
制御装置31は、蓄電送電の割り当てがあるか否かを判断する(S503)。蓄電送電が割り当てられている場合、制御装置31は、割り当てられた電力量を系統に供給するように、切替装置35及び蓄電池部33を制御する(S504)。ただし、蓄電池33bの容量不足で割り当てられた電力量を供給できなくなった場合は、制御装置31は、蓄電送電を停止する。
【0092】
次に、制御装置31は、発電送電の割り当てがあるか否かを判断する(S505)。発電送電が割り当てられている場合、制御装置31は、割り当てられた電力量を系統に供給するように、切替装置35及びPCS部32を制御する(S506)。ただし、予測に反して日照不足等で割り当てられた電力量を発電できない場合は、発電可能な最大電力を出力するように、制御する。
【0093】
次に、制御装置31は、発電した電力の残り(余剰電力)を蓄電池33bで蓄電するように、PCS部32、切替装置35、及び蓄電池部33を制御する(S507)。
【0094】
図10に示したように、制御装置31が、シナリオデータに従って、時間帯毎に、PCS部32、切替装置35、及び蓄電池部33を制御することで、シナリオデータに従った電力を系統に提供することを可能としている。
【0095】
なお、上記実施形態におけるS104での判定による処理1及び処理2の動作フローは、逆の関係、すなわち、市場の方が安い場合に処理2に進んでも、全体として安くなるのであれば、そのように処理しても良い。
また、上記実施形態におけるS203での判定によるS204の動作フローは、逆の関係、すなわち、価格差が小さい場合に実行されても、全体として安くなるのであれば、そのように処理してもよい。
また、上記実施形態におけるS207での判定によるS209及びS208の処理は、逆になっていても良い。すなわち、需要が少ない場合に、発電送電及び蓄電送電の比率の決定ルールに基づくシナリオが作成され、需要が多い場合に、購入及び発電送電の比率の決定ルールに基づくシナリオが作成されてもよい。
また、上記実施形態におけるS301での判定によるS302及びS303の処理において、発電できない時間帯に電力を購入しても、全体として安くなるのであれば、そのように処理してもよい。
また、発電送電及び蓄電送電の決定ルール、及び購入及び発電送電の決定ルールは、上記実施例はあくまでも一例に過ぎない。例示したもの以外でもあってもよく、絶対的な数値や相対的な数値などによって、決められていてもよい。予め決められた決定ルールでシナリオが作成されていれば、どのようなルールでもよい。なお、決定ルールは、比率以外に、絶対値を決定するルールでもよい。
【0096】
以上、本発明を詳細に説明してきたが、前述の説明はあらゆる点において本発明の例示にすぎず、その範囲を限定しようとするものではない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。本明細書に開示されている発明の構成要件は、それぞれ独立に単独した発明として成立するものとする。各構成要件をあらゆる組み合わせ方法で組み合わせた発明も、本発明に含まれることとする。
【産業上の利用可能性】
【0097】
太陽光発電施設を用いた自己託送システムにおける発電、蓄電、及び送電のシナリオ作成装置であり、産業上利用可能である。
【符号の説明】
【0098】
1 自己託送システム
2 シナリオ作成装置
21 制御部
22 入力部
23 出力部
24 通信部
25 記憶部
3 太陽光発電施設
31 制御装置
32 PCS部
32a PCS(パワーコンディショナ)
33 蓄電池部
33a 双方向ACアダプタ変換器
33b 蓄電池
34 太陽電池
35 切替装置
36 受変電設備
4 送電網
5 ユーザ端末
6 発電量予測装置
7 新電力情報提供装置
8 電力市場価格予測装置
9 ネットワーク
【要約】
【課題】自己託送システムにおいて、支払うべき電気料を出来る限り安くすることが可能な発電、蓄電、及び送電のシナリオデータを作成するためのシナリオ作成装置を提供する。
【解決手段】電力需要施設4から離れた地にある太陽光発電施設3で発電された電力を、送電網4を通じて、電力需要施設4に送電するための自己託送システム1において、太陽光発電施設3での発電、蓄電、及び送電のための計画を示すシナリオデータを作成するためのシナリオ作成装置2は、電力需要施設4で電力市場から電力を購入する電力購入量、太陽光発電施設3で発電された電力を自己託送する発電送電量、及び太陽光発電施設3で蓄電された電力を自己託送する蓄電送電量について、時間帯毎の計画を作成することで、シナリオデータを作成する。
【選択図】図1

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10