(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-20
(45)【発行日】2023-06-28
(54)【発明の名称】犬用靴、及び犬用靴の装着方法
(51)【国際特許分類】
A01K 13/00 20060101AFI20230621BHJP
【FI】
A01K13/00 K
(21)【出願番号】P 2023053205
(22)【出願日】2023-03-29
【審査請求日】2023-03-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523112253
【氏名又は名称】清水 和子
(74)【代理人】
【識別番号】110001793
【氏名又は名称】弁理士法人パテントボックス
(72)【発明者】
【氏名】清水 和子
【審査官】吉原 健太
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録実用新案第20-0433182(KR,Y1)
【文献】特開2015-149983(JP,A)
【文献】米国特許第10342226(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0119772(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0143250(US,A1)
【文献】登録実用新案第3195536(JP,U)
【文献】ペット 犬用靴 小型犬 犬 靴 夏用 室内 室外 可愛い メッシュ シューズ サンダル 滑り止め 履きやすさ 軽い ソフト 柔らかく 春 夏 お散歩 出かけ用 XS ピンク,2018年07月04日,インターネット<URL:https://www.amazon.co.jp/ペット用靴-メッシュ-サンダル-シューズ-履きやすさ/dp/B07F7TT4TW>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 13/00
A43B 1/00 - 23/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
犬の肉球に接する底部と、
前記底部に連続して犬の中手部又は中足部の背面側に接するヒール部と、
前記底部に連続して犬の指節部を覆う上部と、
前記ヒール部と前記上部を着脱自在に締結する締結手段と、備える犬用靴であって、
少なくとも前記上部は柔軟性を有しており、前記締結手段が解除された状態で、前記上部の内面と外面を反転可能に形成されて
おり、
前記上部の前記底部と反対側の縁は、前記底部の近傍と比べてより柔軟性が大きく形成され、
前記上部は、犬の指節部の正面を覆う舌部と、犬の指節部の左右の側面を覆う腰部と、前記舌部と前記腰部の前記底部と反対側の縁にかけ渡される伸縮部と、から構成される、犬用靴。
【請求項2】
前記ヒール部の断面は、内面側が凹となるように湾曲して形成されている、
請求項1に記載された、犬用靴。
【請求項3】
請求項1
又は請求項2に記載された犬用靴の装着方法であって、
前記上部の内面が外側になるように前記上部を反転させるステップと、
前記底部の内面を犬の肉球に当接させるステップと、
犬の肉球を前記底部の内面に当接させた状態で、前記上部の外面が外側になるように前記上部を反転させるステップと、
をこの順で備える、犬用靴の装着方法。
【請求項4】
前記上部の外面が外側になるように前記上部を反転させるステップの後に、
前記ヒール部を犬の中手部又は中足部に当接させるステップと、
前記締結手段によって前記ヒール部と前記上部を締結するステップと、
をこの順でさらに備える、
請求項3に記載された、犬用靴の装着方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、犬用靴に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、犬の脚の汚れ防止や肉球保護などを目的として、犬に靴を履かせるようになってきている。従来の犬用靴は、種類も少なく、デザインを重視したものは脱げ易かったり、軽いものは耐久性がなかったり、耐熱性を重視したものはデザイン性を重視していなかったり、人間の靴に比べると実用性とデザイン性を兼ね備えたものは少なかった。
【0003】
そのため、例えば、特許文献1の犬用靴は、本体を前後に二分し、左右が大きく開き、後方のへら状の部分を倒すことにより容易に着脱でき、その上犬の足の動きによって通風し、肉球からの発汗による蒸れを防ぐ、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1を含む従来の犬用靴は、犬の脚を犬用靴の内部に差し込むようにして履かせることになる。しかしながら、このように犬の脚を犬用靴の内部に差し込む作用は容易ではない。さらに、差し込みやすくすると、犬用靴を犬の脚よりも大きめに作っておくことになるが、そうするとフィット感が損なわれてしまう、という問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、履かせやすく、かつ、フィット感を損なうことのない、犬用靴を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の犬用靴は、犬の肉球に接する底部と、前記底部に連続して犬の中手部又は中足部の背面側に接するヒール部と、前記底部に連続して犬の指節部を覆う上部と、前記ヒール部と前記上部を着脱自在に締結する締結手段と、備える犬用靴であって、少なくとも前記上部は柔軟性を有しており、前記締結手段が解除された状態で、前記上部の内面と外面を反転可能に形成されている。
【0008】
また、本発明の犬用靴の装着方法は、上述した犬用靴の装着方法であって、前記上部の内面が外側になるように前記上部を反転させるステップと、前記底部の内面を犬の肉球に当接させるステップと、犬の肉球を前記底部の内面に当接させた状態で、前記上部の外面が外側になるように前記上部を反転させるステップと、をこの順で備えている。
【発明の効果】
【0009】
このように、本発明の犬用靴は、底部と、ヒール部と、上部と、ヒール部と上部を着脱自在に締結する締結手段と、備える犬用靴であって、少なくとも上部は柔軟性を有しており、締結手段が解除された状態で、上部の内面と外面を反転可能に形成されている。このような構成であれば、履かせやすく、かつ、フィット感を損なうことのない、犬用靴となる。
【0010】
また、本発明の犬用靴の装着方法は、上部を反転させるステップと、底部の内面を犬の肉球に当接させるステップと、部の外面が外側になるように上部を反転させるステップと、をこの順で備えている。このような手順であれば、犬用靴を履かせやすく、かつ、フィット感を損なうことがない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図5】犬用靴の装着方法の代表的な工程の説明図である。(a)は反転させるステップ及び肉球を当接させるステップであり、(b)は反転させるステップであり、(c)は中足部に当接させるステップ及び締結するステップである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。ただし、以下の実施例に記載されている構成要素は例示であり、本発明の技術範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。なお、以下では、実施例1で前脚用の犬用靴1について説明し、実施例2で後脚用の犬用靴1Aについて説明する。
【実施例1】
【0013】
(犬用靴の構成)
まず、
図1、
図2を用いて本実施例の前脚用の犬用靴1の全体構成を説明する。この犬用靴1は、
図1、
図2に示すように、犬の肉球に接する底部2と、底部2に連続して犬の中手部(又は中足部)の背面側に接するヒール部3と、底部2に連続して犬の指節部を覆う上部4と、ヒール部3と上部4を着脱自在に締結する締結手段8と、備えている。
【0014】
犬用靴1の各構成要素2~4は、それぞれ柔軟性を有する薄板状の素材を要素毎の形状に切り抜くことによって形成されている。この柔軟性を有する素材としては、例えば、ポリクロロプレン等の発泡合成ゴムからなる「ネオプレーン」(登録商標)を使用することができる。
【0015】
具体的には、ネオプレーンとして、底部2とヒール部3には、板厚2mmで、片面ジャージ、片面メッシュラバーのものを使用することが好ましい。上部4には、板厚2mmで、両面ジャージのものを使用することが好ましい。そして、これらの各構成要素2~4を互いに縫い合わせることによって犬用靴1が形成されている。
【0016】
このように、本実施例の犬用靴1では、少なくとも上部4は柔軟性を有しており、締結手段8が解除された状態で、上部4の内面と外面を反転可能に形成されている。すなわち、本実施例の犬用靴1は、柔軟性のある素材を使用することによって、裏返す(ひっくり返す)ことができるようになっている。
【0017】
底部2は、
図1、
図2に示すように、犬の肉球に接する内面2aと外面2bを有する、ハート形状、乃至、馬蹄形状に形成されている。そして、
図2では上方向に位置する凹部に、ヒール部3が縫い付けられている。後述するように、底部2の下面(外面)2bには、滑り止め用のシリコンゴムが塗布されることが好ましい。
【0018】
ヒール部3は、
図1、
図2に示すように、中央部30と、右片部31と、左片部32と、に分けられている。そして、中央部30と右片部31、中央部30と左片部32、をそれぞれ互いに縫い合わせる。そうすると、ヒール部3の断面は、内面側が凹となるように湾曲して形成される。そして、
図2では下方向の半円弧部が底部2の凹部に縫い付けられる。
【0019】
上部4は、
図1、
図2に示すように、犬の指節部の正面を覆う舌部5と、犬の指節部の左右の側面を覆う腰部6(61、62)と、舌部5と腰部6(61、62)の底部2と反対側の縁にかけ渡される伸縮部7(70、71、72)と、から構成されている。
【0020】
このうち舌部5は、略二等辺三角形状に形成されて、上部4の正面(中央)に配置され、脚の甲の部分を覆うようになっている。腰部6は、それぞれ略台形状に形成されており、上部4の右側面を構成する右腰部61と、上部4の左側面を構成する左腰部62と、を備えている。
【0021】
伸縮部7は、三角形状に形成されて舌部5の背面側に縫い付けられる正面部70と、台形状に形成されて右腰部61の上縁近傍に縫い付けられる右ベルト部71と、台形状に形成されて左腰部62の上縁近傍に縫い付けられる左ベルト部72と、から構成される。
【0022】
そして、伸縮部7(70、71、72)は、舌部5及び腰部6(及びヒール部3)と比べて、柔軟性がより大きい素材によって形成されている。すなわち、上部4の底部2と反対側の縁は、底部2の近傍と比べてより柔軟性が大きく形成されている。
【0023】
締結手段8は、ヒール部3の外面側(背面側)に設置された面ファスナ81と、右ベルト部71の内面側に設置された面ファスナ82と、右ベルト部71の外面側に設置された面ファスナ83と、左ベルト部72の内面側に設置された面ファスナ84と、から構成されている。
【0024】
(犬用靴の作成方法)
次に、
図3を用いて、本実施例の犬用靴1の作成方法について説明する。犬用靴1は、以下の手順1)~5)のように各パーツを互いに縫い付けて作成できる。
1)丸みをつけるため、ヒール部3の中央部30を右片部31及び左片部32と縫い付ける。その後、背面側に面ファスナ81を縫い付ける。
2)丸みのついたヒール部3を底部2に縫い付ける。
3)舌部5と腰部6を縫い合わせて上部4を作成し、上部4を底部2に縫い付ける。
4)左右のベルト部71、72を二つ折りにして作成し、面ファスナ82、83、84を縫い付け、左右の腰部61、62に縫い付ける。
5)底部2の底面全体と、ヒール部3及び上部4の一部と、にシリコンを塗布する。
【0025】
(犬用靴の装着方法)
次に、
図4のフローチャートと
図5(a)~(c)の説明図を用いて、本実施例の犬用靴1の装着方法について説明する。犬用靴の装着方法は、以下のステップ1)~6)を順に実施することで実行される。
【0026】
1)あらかじめ、犬用靴1を作成しておく。
2)上部4の(着用時における)内面5a、62aが(着用時における)外側になるように上部4を反転(裏返し)させる(
図5(a)、ステップS1。)
3)底部2の内面2aを犬の肉球に当接させる(
図5(a)、ステップS2)。
4)犬の肉球を底部2の内面2aに当接させた状態で、上部4の外面5b、61b、62bが外側になるように上部4を反転させる(
図5(b)、ステップS3)。
5)ヒール部3の内面3aを犬の中手部(又は中足部)の背面側に当接させる(
図5(c)、ステップS4)。
6)ヒール部3、右ベルト部71、左ベルト部72の順に重ねて、締結手段8(81~84)によってヒール部3と上部4を締結する(
図5(c)、ステップS5)。
【0027】
(効果)
次に、本実施例の犬用靴1の奏する効果を列挙しながら説明する。
【0028】
(1)上述してきように、本実施例の犬用靴1は、犬の肉球に接する底部2と、底部2に連続して犬の中手部(又は中足部)の背面側に接するヒール部3と、底部2に連続して犬の指節部を覆う上部4と、ヒール部3と上部4を着脱自在に締結する締結手段8と、備える犬用靴1であって、少なくとも上部4は柔軟性を有しており、締結手段8が解除された状態で、上部4の内面と外面を反転可能に形成されている。このような構成であれば、履かせやすく、かつ、フィット感を損なうことのない、犬用靴1となる。つまり、犬の脚を犬用靴1に差し込む必要がないため、短時間で履かせることができ、履く側と履かせる側の双方のストレスを軽減できる。さらに、犬の脚によくフィットするため、犬がとる脚のポーズに柔軟に対応(追従)することができる。
【0029】
(2)また、上部4の底部2と反対側の縁(上縁)は、底部2の近傍と比べてより柔軟性が大きく形成されていることによって、より裏返しにしやすくなるため、いっそう履かせやすい犬用靴1となる。
【0030】
(3)さらに、上部4は、犬の指節部の正面を覆う舌部5と、犬の指節部の左右の側面を覆う腰部6(61、62)と、舌部5と腰部6の底部2と反対側の縁にかけ渡される伸縮部7(70、71、72)と、から構成されるため、簡単な構成によって、上部4の上縁の柔軟性を大きくすることができる。
【0031】
(4)また、ヒール部3の断面は、内面側が凹となるように湾曲して形成されているため、ヒール部3の単体でも形状が自立するようになるため、犬の脚にあてがいやすくなり、より履かせやすくなる。
【0032】
(5)そして、本実施例の犬用靴の装着方法は、上述したいずれかの犬用靴1の装着方法であって、上部4の内面4aが外側になるように上部4を反転させる(裏返す)ステップと、底部2の内面2aを犬の肉球に当接させるステップと、犬の肉球を底部2の内面2aに当接させたままの状態で、上部4の外面4bが外側になるように上部4を反転(正転)させるステップと、をこの順で備えている。このような構成であれば、履かせやすく、かつ、フィット感を損なうことのない、犬用靴の装着方法となる。つまり、犬の脚を犬用靴1に差し込む必要がないため、短時間で履かせることができ、履く側と履かせる側の双方のストレスを軽減できる。さらに、犬の脚によくフィットするため、犬がとる脚のポーズに柔軟に対応(追従)することができる。
【0033】
(6)また、上部4の外面4bが外側になるように上部4を反転させるステップの後に、ヒール部3を犬の中手部又は中足部に当接させるステップと、締結手段8によってヒール部3と上部4を締結するステップと、をこの順でさらに備えている。このように最後に背面側を閉じることで、いっそう履かせやすく、フィット感の高い、犬用靴の装着方法とすることができる。
【実施例2】
【0034】
以下、
図6を用いて、実施例1とは別形態の「後脚用」の犬用靴1Aについて説明する。なお、実施例1で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0035】
まず構成について説明すると、実施例2の後脚用の犬用靴1Aは、前脚用の犬用靴1(
図1)と同様に、
図6に示すように、犬の肉球に接する底部2と、底部2に連続して犬の中足部(後脚)の背面側に接するヒール部3と、底部2に連続して犬の指節部を覆う上部4と、ヒール部3と上部4を着脱自在に締結する締結手段8と、備えている。
【0036】
そして、実施例2の後脚用の犬用靴1Aは、実施例1の前脚用の犬用靴1(
図1)と比べて、舌部5が少し短く形成されるとともに、左右の腰部61、62が前後方向に長く形成されている。さらに、左右のベルト部71、72の底部2に対する角度が、より浅い角度(より寝ている)となっている。これらの相違点は、犬の後脚の形状に起因する。
【0037】
次に作用・効果について説明すると、実施例2の犬用靴1Aは、犬の肉球に接する底部2と、底部2に連続して犬の中足部の背面側に接するヒール部3と、底部2に連続して犬の指節部を覆う上部4と、ヒール部3と上部4を着脱自在に締結する締結手段8と、備える犬用靴1Aであって、少なくとも上部4は柔軟性を有しており、締結手段8が解除された状態で、上部4の内面と外面を反転可能に形成されている。このような構成であれば、履かせやすく、かつ、フィット感を損なうことのない、犬用靴1Aとなる。
【0038】
なお、この他の構成および作用効果については、実施例1の犬用靴1と略同様であるため説明を省略する。
【0039】
以上、図面を参照して、本発明の実施例を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0040】
1 犬用靴(前脚用)
1A 犬用靴(後脚用)
2 底部
3 ヒール部
4 上部
5 舌部
6 腰部
61 右腰部
62 左腰部
7 伸縮部
70 正面部
71 右ベルト部
72 左ベルト部
8 締結手段
81-84 面ファスナ
【要約】
【課題】履かせやすく、かつ、フィット感を損なうことのない、犬用靴を提供する。
【解決手段】犬用靴1は、犬の肉球に接する底部2と、底部2に連続して犬の中手部又は中足部の背面側に接するヒール部3と、底部2に連続して犬の指節部を覆う上部4と、ヒール部3と上部4を着脱自在に締結する締結手段8と、備える犬用靴1であって、少なくとも上部4は柔軟性を有しており、締結手段8が解除された状態で、上部4の内面と外面を反転可能に形成されている。
【選択図】
図1