(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-20
(45)【発行日】2023-06-28
(54)【発明の名称】セラミックス回路基板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/14 20060101AFI20230621BHJP
H05K 3/38 20060101ALI20230621BHJP
【FI】
H05K3/14 Z
H05K3/38 D
(21)【出願番号】P 2017188485
(22)【出願日】2017-09-28
【審査請求日】2020-09-14
【審判番号】
【審判請求日】2022-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【氏名又は名称】中塚 岳
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100189452
【氏名又は名称】吉住 和之
(72)【発明者】
【氏名】市川 恒希
(72)【発明者】
【氏名】広津留 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】酒井 篤士
(72)【発明者】
【氏名】谷口 佳孝
【合議体】
【審判長】山田 正文
【審判官】畑中 博幸
【審判官】山本 章裕
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/082368(WO,A1)
【文献】特開2016-174165(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K3/14
H05K3/38
H05K1/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さが0.2~1.5mmの範囲であるセラミックス基材と、
前記セラミックス基材の両面上に設けられた金属層と、
を備え、
前記セラミックス基材の少なくとも一方の面上に設けられた前記金属層が金属回路を形成しているセラミックス回路基板の製造方法であって、
(A)前記セラミックス基材の両面上に、銅を主成分とし且つ厚さが0.1~0.3mmの範囲である第一金属層を形成する工程と、
(B)前記第一金属層の表面上に、
コールドスプレー法によって第二金属層を形成する工程と、
を含み、
(B)工程において、前記セラミックス基材の一方の面側に位置する前記第二金属層として銅を主成分とする層を形成するとともに、前記セラミックス基材の他方の面側に位置する前記第二金属層としてアルミニウムを主成分とする層を形成し、
前記金属層が前記セラミックス基材側から前記第一金属層及び前記第二金属層をこの順序で含む多層構造を有し且つ0.5~2.0mmの厚さを有する、セラミックス回路基板の製造方法。
【請求項2】
前記第二金属層は前記第一金属層よりも厚い、請求項1に記載のセラミックス回路基板の製造方法。
【請求項3】
厚さが0.2~1.5mmの範囲であるセラミックス基材と、
前記セラミックス基材の両面上に設けられた金属層と、
を備え、
前記セラミックス基材の少なくとも一方の面上に設けられた前記金属層が金属回路を形成しているセラミックス回路基板であって、
前記金属層は、前記セラミックス基材側から第一金属層及び第二金属層をこの順序で含む多層構造を有し且つ0.5~2.0mmの厚さを有し、
前記第一金属層は、銅を主成分とし且つ厚さが0.1~0.3mmの範囲であり、
前記セラミックス基材の一方の面側に位置する前記第二金属層は、銅を主成分とし且つ
コールドスプレー法によって形成されたものであり、
前記セラミックス基材の他方の面側に位置する前記第二金属層は、アルミニウムを主成分とし且つ
コールドスプレー法によって形成されたものである、セラミックス回路基板。
【請求項4】
厚さが0.2~1.5mmの範囲であるセラミックス基材と、
前記セラミックス基材の一方及び他方の面上に設けられた金属層と、
を備え、
前記セラミックス基材の少なくとも一方の面上に設けられた前記金属層が金属回路を形成しているセラミックス回路基板であって、
前記金属層は、前記セラミックス基材側から第一金属層及び第二金属層をこの順序で含む多層構造を有し且つ0.5~2.0mmの厚さを有し、
前記第一金属層は、銅を主成分とし且つ厚さが0.1~0.3mmの範囲であり、
前記セラミックス基材の一方の面側に位置する前記第二金属層は、銅を主成分とし且つ厚さが0.4~1.9mmの範囲であり、
前記セラミックス基材の他方の面側に位置する前記第二金属層は、アルミニウムを主成分とし且つ厚さが0.4~1.9mmの範囲である、セラミックス回路基板。
【請求項5】
180℃の環境に前記セラミックス回路基板を30分間放置した後、-45℃の環境に前記セラミックス回路基板を30分間放置する操作を1サイクルとして、このサイクルを500回繰り返すヒートサイクル試験後において、
前記セラミックス基材から前記金属回路の剥離が発生しない、請求項3又は4に記載のセラミックス回路基板。
【請求項6】
前記セラミックス基材は、材質がSi
3N
4であり且つ0.2~1.5mmの厚さを有する、請求項3~5のいずれか一項に記載のセラミックス回路基板。
【請求項7】
前記第一金属層の端面と前記第二金属層の端面とが面一である、又は、前記第一金属層の端面が前記第二金属層の端面よりも外側にはみ出ている、請求項3~6のいずれか一項に記載のセラミックス回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックス回路基板及びその製造方法に関し、特にパワーモジュール等の大電力電子部品の実装に好適なセラミックス回路基板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ロボット、モーター等の産業機器の高性能化に伴い、インバータの大電流化及び高効率化が求められている。このような状況の下、インバータに使用されるパワーモジュールにおいて、半導体素子から発生する熱も増加の一途をたどっている。半導体素子から発生する熱を効率的に拡散させるため、良好な熱伝導性を有するセラミックス回路基板が用いられている。
【0003】
パワーモジュールは、一般に、セラミックス回路基板と、セラミックス回路基板の一方の面上に設けられた半導体素子と、セラミックス回路基板の他方の面上に半田付け等により設けられ、熱伝導性に優れるCu、Cu-Mo、Cu-C、Al、Al-SiC、Al-C等からなるベース板と、ベース板のセラミックス回路基板とは反対側の面上にねじ止め等により設けられた放熱フィンと、を備える。
【0004】
パワーモジュールの動作時に半導体素子等から発生した熱は、セラミックス回路基板、半田、及びベース板を介して放熱フィンに伝達される。実使用の際、パワーモジュールは発熱及び冷却が繰り返し行われる環境下に置かれる。セラミックス基材と金属回路との間に繰り返し生じる熱応力によりセラミックス基材にクラックが発生し、信頼性が低下する問題があった。
【0005】
こうした、信頼性の問題に対して、例えば、セラミックス基材の両面に接合された金属層を有するセラミックス回路基板において、硬度、種類、厚さ等の異なる金属層をそれぞれ金属回路板及び放熱板として用いて、セラミックス基材の一方及び他方の面上に接合することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、パワーモジュールを製造する際に、溶融した状態のベース板と、セラミックス回路基板とを接触させることにより、ベース板とセラミックス回路基板とを接合することが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-207587号公報
【文献】特開2002-76551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
セラミックス回路基板は、信頼性の観点から、実使用において繰り返し行われる発熱及び冷却によっても金属層がセラミックス基材から剥離したり、セラミックス基材にクラックが発生したりせず、セラミックス基材と金属層の高い密着性を維持できることが望ましい。しかし、従来のセラミックス回路基板及びこれを用いたパワーモジュールは、高温動作時において未だ改善の余地があり、放熱性の向上も求められている。
【0008】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであって、発熱及び冷却が繰り返し行われる環境下で使用されても、性能を十分に発揮することができる優れた信頼性を有するとともに、放熱性に優れるセラミックス回路基板及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、セラミックス基材と、セラミックス基材の両面上に設けられた金属層とを備え、セラミックス基材の少なくとも一方の面上に設けられた金属層が金属回路を形成するセラミックス回路基板の製造方法を提供する。この製造方法は、(A)セラミックス基材の両面上に、銅を主成分とする第一金属層を形成する工程と、(B)第一金属層の表面上に、溶射法によって第二金属層を形成する工程とを含み、(B)工程において、セラミックス基材の一方の面側に位置する第二金属層として銅を主成分とする層を形成するとともに、セラミックス基材の他方の面側に位置する第二金属層としてアルミニウムを主成分とする層を形成し、上記金属層はセラミックス基材側から第一金属層及び第二金属層をこの順序で含む多層構造を有し且つ0.5~2.0mmの厚さを有する。
【0010】
上記製造方法によれば、セラミックス基材の両面上に形成される金属層のうちの一方の金属層の一部を構成する第二金属層として銅を主成分とする層を第一金属層の表面に対して溶射法によって形成することで、セラミックス基材と比較して熱伝導性に優れる金属層を十分に厚く形成することができ、放熱性に優れたセラミックス回路基板を得ることができる。また、セラミックス基材の両面上に形成される金属層のうちの他方の金属層の一部を構成する第二金属層としてアルミニウムを主成分とする層を第一金属層の表面に対して溶射法によって形成することで、この第二金属層がベース板との間で緩衝層として機能し、セラミックス回路基板の信頼性向上に寄与する。ここでいう主成分とは、対象の金属層(第一金属層又は第二金属層)の全体質量を基準として、70質量%以上含まれる成分を意味する。
【0011】
上記製造方法は、銅を主成分とする第一金属層を有するセラミックス回路基板を製造するためのものであるが、本発明に係る製造方法は、上記(A)工程において、銅を主成分とする第一金属層を形成する代わりに、アルミニウムを主成分とする第一金属層を形成するものであってもよい。
【0012】
本発明は、セラミックス回路基板を提供する。第一の態様に係るセラミックス回路基板は、セラミックス基材と、セラミックス基材の両面上に設けられた金属層とを備え、セラミックス基材の少なくとも一方の面上に設けられた金属層が金属回路を形成するものである。上記金属層は、セラミックス基材側から第一金属層及び第二金属層をこの順序で含む多層構造を有し且つ0.2~1.5mmの厚さを有する。第一金属層は、銅を主成分とするものであり、セラミックス基材の一方の面側に位置する第二金属層は、銅を主成分とし且つ溶射法によって形成されたものであり、セラミックス基材の他方の面側に位置する第二金属層は、アルミニウムを主成分とし且つ溶射法によって形成されたものである。
【0013】
上記セラミックス回路基板は、セラミックス基材の両面上に位置する金属層のうちの一方の金属層が銅を主成分とする第二金属層を有するため、放熱性に優れる。また、セラミックス基材の両面上に位置する金属層のうちの他方の金属層がアルミニウムを主成分とする第二金属層を有しており、この第二金属層がベース板との間で緩衝層として機能し、セラミックス回路基板の信頼性向上に寄与する。
【0014】
第二の態様に係るセラミックス回路基板は以下の構成の金属層を備えること以外は上記第一の態様と同じである。すなわち、第二の態様に係るセラミックス回路基板の金属層は、セラミックス基材側から第一金属層及び第二金属層をこの順序で含む多層構造を有し且つ0.2~1.5mmの厚さを有するとともに、以下の条件を満たす。
・第一金属層は、銅を主成分とし且つ厚さが0.1~0.3mmの範囲である。
・セラミックス基材の一方の面側に位置する第二金属層は、銅を主成分とし且つ厚さが0.4~1.9mmの範囲である。
・セラミックス基材の他方の面側に位置する第二金属層は、アルミニウムを主成分とし且つ厚さが0.4~1.9mmの範囲である。
【0015】
上記構成の金属層を備えるセラミックス回路基板は、セラミックス基材の両面上に位置する金属層のうちの一方の金属層が銅を主成分とし且つ厚さが0.4~1.9mmの範囲の第二金属層を有するため、放熱性に優れる。また、セラミックス基材の両面上に位置する金属層のうちの他方の金属層がアルミニウムを主成分とし且つ厚さが0.4~1.9mmの範囲の第二金属層を有しており、この第二金属層がベース板との間で緩衝層として機能し、セラミックス回路基板の信頼性向上に寄与する。
【0016】
上記第一及び第二の態様に係るセラミックス回路基板は、銅を主成分とする第一金属層を有するものであるが、本発明に係るセラミックス回路基板は、銅を主成分とする第一金属層の代わりに、アルミニウムを主成分とする第一金属層を有するものであってもよい。
【0017】
セラミックス基材と金属層の密着性はヒートサイクル試験で評価することができる。本発明に係るセラミックス回路基板は、180℃の環境に当該セラミックス回路基板を30分間放置した後、-45℃の環境に当該セラミックス回路基板を30分間放置する操作を1サイクルとして、このサイクルを500回繰り返すヒートサイクル試験後において、セラミックス基材から金属回路の剥離が発生しないことが好ましい。
【0018】
第二金属層は第一金属層よりも厚いことが好ましい。溶射法によって第二金属層を第一金属層よりも厚く形成することで、十分な厚さを有し且つ残留応力が少ない金属層をセラミックス基材の表面上に形成することができる。第一金属層の端面と第二金属層の端面とは面一であってもよく、第一金属層の端面が第二金属層の端面よりも外側にはみ出ていてもよい。
【0019】
機械的強度及び耐熱性等の点から、セラミックス基材の材質はSi3N4であることが好ましい。セラミックス回路基板の放熱性等の点から、セラミックス基材は十分に薄いことが好ましく、その厚さの範囲は0.2~1.5mmであることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、発熱及び冷却が繰り返し行われる環境下で使用されても、性能を十分に発揮することができる優れた信頼性を有するとともに、放熱性に優れるセラミックス回路基板及びその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】セラミックス回路基板の一実施形態を示す断面図である。
【
図2】セラミックス回路基板の他の実施形態を示す断面図である。
【
図3】パワーモジュールの一態様を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明のいくつかの実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0023】
<セラミックス回路基板>
図1は、セラミックス回路基板の一実施形態を示す断面図である。
図1に示すように、セラミックス回路基板10Aは、セラミックス基材1と、セラミックス基材1の両面に設けられた金属層2,3とを備える。本実施形態においては、金属層2が電気回路を形成するものである(
図3参照)。金属層2は、セラミックス基材1側から第一金属層2a及び第二金属層2bをこの順序で含む多層構造を有する。金属層3は、セラミックス基材1側から第一金属層3a及び第二金属層3bをこの順序で含む多層構造を有する。
【0024】
上記構成のセラミックス回路基板10Aは、パワーモジュール製造過程において、ベース板(
図3のベース板20参照)と接合される際、ベース板の反りを抑制できるのみならず、発熱及び冷却が繰り返して行われる環境下で使用されても、セラミックス基材1と金属層2,3との高い密着性を維持できる。この理由について本発明者等は以下のように考えている。
【0025】
まず、本発明者等の検討によれば、パワーモジュール製造時におけるベース板の反りの発生、並びにヒートサイクルによるセラミックス基材及び金属層の剥離やセラミックス基材におけるクラックの発生は、セラミックス回路基板を構成するセラミックス基材及び金属層の線熱膨張係数の差が原因であることが判明している。一般に、セラミックス基材の線熱膨張係数に比べ金属層の線熱膨張係数の方が大きい。そのため、セラミックス基材と金属層とを接合する温度から室温に戻す場合やヒートサイクルにより、金属層に引張応力が残留する。この引張応力の残留(残留応力)によって、上述したような不具合が発生すると考えられる。
【0026】
本発明者等は、上記残留応力を低減するため、セラミックス回路基板の線熱膨張係数に着目した。本発明者等の更なる検討によれば、セラミックス回路基板の線熱膨張係数は、構成されるセラミックス基材と金属層の構造(厚さ等)及び組成に加え、セラミックス基材と金属層とを接合する温度から室温に戻る際に、両材料の熱膨張差により発生する残留応力により決まることが判明している。このため、例えば、同一の構成を有するセラミックス回路基板であっても、接合方法によりセラミックス回路基板の線熱膨張係数が異なる場合がある。一般に、セラミックス基材と金属層とは、温度800℃程度の温度で、活性金属法によってロウ付けして接合されることが多く、このような条件で接合した場合、接合後に室温に冷却する過程で線熱膨張係数の大きい金属層に引張応力が残留する。引張応力が残留している場合、得られるセラミックス回路基板の線熱膨張係数の測定値は、構成するセラミックス基材及び金属層の構造(厚さ等)及び組成から算出した線熱膨張係数の理論値より小さい値となると考えられる。本実施形態に係るセラミックス回路基板は、得られるセラミックス回路基板の線熱膨張係数の測定値を大きくし、且つ当該測定値を理論値に近づけたことで、セラミックス回路基板における残留応力を低減することができた、と本発明者等は考えている。
【0027】
更に、本実施形態に係るセラミックス回路基板は、それ自体の残留応力を低減できることから、ベース板の種類や線熱膨張係数の値によらず、ベース板に接合する際のベース板の反りを抑制することもできると考えている。
【0028】
セラミックス回路基板の線熱膨張係数の測定値を大きくする手法としては、例えば、線熱膨張係数の大きい金属層の厚さを大きくすることが有効と考えられる。ただし、セラミックス回路基板の線熱膨張係数を大きくしすぎると、セラミックス基材に対する金属層の引張応力が大きくなり、実使用を想定したヒートサイクル試験において、セラミックス基材にクラックが入るなどの面で問題が発生する可能性がある。
【0029】
一方、セラミックス回路基板の線熱膨張係数の測定値を理論値に近づける手法としては、例えば、セラミックス基材と金属層とを接合する際の温度を小さくし、金属層の残留応力を低減する方法等が有効と考えられる。セラミックス基材と金属層とを接合する方法としては、特に制限されるものではないが、例えば、接着剤を用いて両者を接着させる接着法、活性金属法、溶射法等を単独で又は複数を組み合わせて用いる方法が挙げられる。接合する際の温度を小さくできる観点からは、接着法、溶射法等を用いることが好ましく、熱伝導率の低い接着剤を用いずにパワーモジュールとしての放熱性を十分に確保する観点からは、活性金属法、溶射法等を用いることが好ましい。このような観点から、セラミックス基材の表面に活性金属法等により薄い金属層を形成した後に、所定の厚さの金属板を低温で接合する手法や溶射法により金属層を形成する手法が有効である。セラミックス基材と金属層とを接合する方法の詳細については、後述する。
【0030】
このようなセラミックス回路基板10Aを得るためには、例えば、セラミックス基材1は、Si3N4で形成されていることが好ましい。
【0031】
セラミックス基材1の厚さは、0.2~1.5mmであることが好ましく、0.25~1.0mmであることがより好ましい。セラミックス基材1の厚さが0.2mm未満であると耐熱衝撃性が低下する傾向があり、1.5mmを超えると放熱性が低下する傾向がある。
【0032】
金属層2は、セラミックス基材1側から第一金属層2a及び第二金属層2bをこの順序で含む多層構造を有する。金属層3は、セラミックス基材1側から第一金属層3a及び第二金属層3bをこの順序で含む多層構造を有する。
【0033】
第一金属層2a,3aは、Cu(銅)を主成分として含む。ここでいう主成分とは、第一金属層2a,3aの全体質量を基準として、70質量%以上含まれる成分を意味する。第一金属層2a,3aにおけるCuの含有率は、90質量%以上であってもよく、95質量%以上であってもよい。第一金属層2a,3aが含み得るCu以外の元素としてMo、C等が挙げられる。
【0034】
第二金属層2bは、Cu(銅)を主成分として含む。第二金属層2bにおけるCuの含有率は、90質量%以上であってもよく、95質量%以上であってもよい。第二金属層2bが含み得るCu以外の元素としてMo、C等が挙げられる。
【0035】
第二金属層3bは、Al(アルミニウム)を主成分として含む。第二金属層3bにおけるAlの含有率は、90質量%以上であってもよく、95質量%以上であってもよい。第二金属層3bが含み得るAl以外の元素としてSi、C等が挙げられる。
【0036】
第二金属層2b,3bは第一金属層2a,3aよりも厚いことが好ましい。溶射法によって形成される第二金属層2b,3bを、例えば、活性金属法又は溶射法によって形成される第一金属層2a,3aよりも厚く形成することで、十分な厚さを有し且つ残留応力が少ない金属層2,3をセラミックス基材1の表面上に形成することができる。
【0037】
第一金属層2a,3aのそれぞれの厚さは、例えば、0.1~0.3mmの範囲であり、0.11~0.2mmの範囲であることが好ましく、0.12~0.15mmの範囲であることがより好ましい。第一金属層2a,3aの厚さが0.1mm未満であると、第一金属層2a,3aの形成が困難となる傾向があり、0.3mmを越えると0.3mm以下の場合と比較して残留応力が大きくなり信頼性が低下する。第一金属層2a,3aの厚さは、それぞれ実質的に同じでも異なっていてもよいが、セラミックス回路基板10Aの製造を容易にする観点から、実質的に同じであることが好ましい。
【0038】
第二金属層2b,3bのそれぞれの厚さは、例えば、0.4~1.9mmの範囲であり、0.8~1.5mmの範囲であることが好ましく、1.0~1.3mmの範囲であることがより好ましい。第二金属層2b,3bの厚さが0.4mm未満であると、残留応力緩和の効果が不十分となる傾向があり、1.9mmを越えると耐熱衝撃性が不十分となるとともに第二金属層2b,3bの形成に長い時間を要する傾向がある。第二金属層2b,3bの厚さは、それぞれ実質的に同じでも異なっていてもよいが、セラミックス回路基板10Aの製造を容易にする観点から、実質的に同じであることが好ましい。
【0039】
金属層2,3のそれぞれの厚さは、0.5~2.0mmであり、1.0~1.8mmであることが好ましい。電気回路を形成する金属層2の厚さが0.5mm未満であると流せる電流が制限される。なお、
図3に示されるように、第1の半田21を介してベース板20に接合される金属層3の厚さが0.5mm未満であるとセラミックス回路基板10Aの放熱性が不十分となる。他方、金属層2,3の厚さが2.0mmを超えると耐熱衝撃性が不十分となる。金属層2,3の厚さは、それぞれ実質的に同じでも異なっていてもよいが、セラミックス回路基板10Aの製造を容易にする観点から、実質的に同じであることが好ましい。
【0040】
セラミックス回路基板10Aは、180℃の環境にセラミックス回路基板10Aを30分間放置した後、-45℃の環境にセラミックス回路基板10Aを30分間放置する操作を1サイクルとして、このサイクルを500回繰り返すヒートサイクル試験後において、セラミックス基材1から金属層2,3の剥離が発生しないことが好ましい。
【0041】
<セラミックス回路基板の製造方法>
次に、セラミックス回路基板10Aの製造方法について説明する。本実施形態に係る製造方法は、(A)セラミックス基材1の両面上に、銅を主成分とする第一金属層2a,3aを形成する工程と、(B)第一金属層2a,3aの表面上に、溶射法によって第二金属層2b,3bを形成する工程とを含み、(B)工程において、第二金属層2bとして銅を主成分とする層を形成するとともに、第二金属層3bとしてアルミニウムを主成分とする層を形成する。
【0042】
(A)工程は、セラミックス基材1の両面上に、銅を主成分とする第一金属層2a,3aを形成する工程である。第一金属層2a,3aの形成は、例えば、活性金属法又は溶射法(「コールドスプレー法」とも称される。)によって行えばよい。
【0043】
活性金属法は、セラミックス基材1の両面に対し、ろう材を用いて金属板をそれぞれ接合するステップを含む。形成すべき第一金属層2a,3aの厚さ及び組成に応じて、接合する金属板の厚さ及び組成を選択すればよい。接合の温度条件は、例えば、780~810℃の範囲であり、使用するろう材の種類に応じて適切な温度を設定すればよい。
【0044】
Cuを含む金属板(Cu板)をセラミックス基材1に接合する場合、例えば、Ag(90%)-Cu(10%)-TiH2(3.5%)のろう材を用いて、温度800℃でセラミックス基材1の両面にCu板を接合する。
【0045】
溶射法(「コールドスプレー法」とも称される。)は、10~270℃(好ましくは20~260℃)の金属粉体(Cu含有粉体)を、対象面(セラミックス基材1の表面)に向けて250~1050m/秒(好ましくは400~1000m/秒)の速度で吹き付けるステップを含む。形成すべき第一金属層2a,3aの組成に応じて、吹き付ける金属粉体の組成を選択するとともに温度条件及び吹付け速度を設定すればよい。第一金属層2a,3aの厚さに応じて、金属粉体の吹付け量を調整すればよい。金属粉体の吹付けには、例えば、スプレーガンを使用すればよい。金属粉体を噴射するための作動ガスとして、例えば、窒素が使用される。
【0046】
なお、セラミックス基材1の表面に溶射法によって金属層(第一金属層2a,3a)を直接的に形成する場合、吹き付ける金属粉体の融点又は軟化点によっては金属粉体がセラミックス基材1に十分に付着しない場合がある。したがって、(A)工程においては、活性金属法によって第一金属層2a,3aを形成することが好ましい。
【0047】
(B)工程は、第一金属層2aの表面上に銅を主成分とする第二金属層2bを溶射法によって形成するとともに、第一金属層3aの表面上にアルミニウムを主成分とする第二金属層3bを溶射法によって形成する工程である。
【0048】
第二金属層2bは、10~270℃(好ましくは20~260℃)のCu含有粉体を、第一金属層2aの表面に向けて250~1050m/秒(好ましくは400~1000m/秒)の速度で吹き付けることによって形成される。形成すべき第二金属層2bの組成に応じて、吹き付けるCu含有粉体の組成を選択するとともに温度条件及び吹付け速度を設定すればよい。第二金属層2bの厚さに応じて、Cu含有粉体の吹付け量を調整すればよい。
【0049】
第二金属層3bは、10~270℃(好ましくは20~260℃)のAl含有粉体を、第一金属層3aの表面に向けて250~1050m/秒(好ましくは400~1000m/秒)の速度で吹き付けることによって形成される。形成すべき第二金属層3bの組成に応じて、吹き付けるAl含有粉体の組成を選択するとともに温度条件及び吹付け速度を設定すればよい。第二金属層3bの厚さに応じて、Al含有粉体の吹付け量を調整すればよい。
【0050】
なお、(A)工程において第一金属層2a,3aを形成した後、(B)工程において溶射法により第二金属層2b,3bを形成する前に、第一金属層2a,3aの少なくとも一方をエッチングすることにより、回路パターンを形成してもよい。この場合、この回路パターンに対応する開口部を有するマスク材をセラミックス基材1の表面に配置した状態で、溶射法によって第二金属層を形成してもよい。マスク材を使用することで、所望の箇所のみに第二金属層を形成することができる。第二金属層の表面に無電解Niめっき等を施してもよい。
【0051】
上記製造方法によれば、第二金属層2bとして銅を主成分とする層を溶射法によって形成することで、セラミックス基材1と比較して熱伝導性に優れる金属層2を十分に厚く形成することができ、放熱性に優れたセラミックス回路基板10Aを得ることができる。また、第二金属層3bとしてアルミニウムを主成分とする層を溶射法によって形成することで、第二金属層3bがベース板20との間で緩衝層の役割を果たすことができる。これにより、セラミックス回路基板10Aは、
図3に示すようなパワーモジュール50に組み込まれた状態において、機能を十分に長期にわたって維持できる。
【0052】
本実施形態に係るセラミックス回路基板10Aは、
図1に示すとおり、第一金属層2a,3aの端面2c,3cと第二金属層2b,3bの端面2d,3dとが面一になっている。セラミックス回路基板のより優れた耐熱衝撃性を達成する観点から、
図2に示すセラミックス回路基板10Bのように、第一金属層2a,3aの端面2c,3cが、第二金属層2b,3bの端面2d,3dよりも外側、すなわちセラミックス基材1の端部側にはみ出していてもよい。端面2c,3cが、端面2d,3dからはみ出している部分の幅は、例えば、1~1000μmである。
【0053】
上記実施形態においては、第一金属層2a,3aが銅を主成分とする層である場合を例示したが、第一金属層2a,3aはAl(アルミニウム)を主成分とする層であってもよい。第一金属層2a,3aにおけるAlの含有率は、90質量%以上であってもよく、95質量%以上であってもよい。第一金属層2a,3aが含み得るAl以外の元素としてSi、C等が挙げられる。この層を活性金属法で形成する場合、例えば、Al-Cu-Mgクラッド箔をろう材として用い、温度630℃でセラミックス基材1の両面にAl板を接合すればよい。この層を溶射法で形成する場合、10~270℃(好ましくは20~260℃)のAl含有粉体を、セラミックス基材1の表面に向けて250~1050m/秒(好ましくは400~1000m/秒)の速度で吹き付ければよい。
【0054】
上記実施形態に係るセラミックス回路基板は、パワーモジュールにおいて好適に用いられ、高い放熱性を有するのに加え、ベース板と接合する際に生じるベース板の反りを抑制できるのみならず、繰り返し行われる発熱及び冷却によってもセラミックス基材及び金属層の高い密着性を維持することができる。
【0055】
ベース板に接合する際に生じるベース板の反りとは、ベース板にセラミックス回路基板を接合した際の、ベース板自体の初期形状(初期反り量)からの変形量(反り変化量)として測定される。また、ベース板の反り量とは、ベース板の任意の位置において、放熱面方向の長さ10cmあたりの反りの大きさを意味する。ベース板の反り変化量は、セラミックス回路基板に接合するとしては、好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下、更に好ましくは10μm以下である。当該反り変化量は、セラミックス回路基板に接合する前のベース板の反り量と、セラミックス回路基板に接合した後のベース板の反り量との差の絶対値として定義される。
【0056】
<パワーモジュール>
図3は、パワーモジュールの一実施形態を示す断面図である。
図3に示すように、パワーモジュール50は、ベース板20と、ベース板20上に第1の半田21を介して接合されたセラミックス回路基板10と、セラミックス回路基板10上に第2の半田22を介して接合された半導体素子6とを備えている。セラミックス回路基板10は、セラミックス回路基板10A又はセラミックス回路基板10Bであって、金属層2が電気回路(金属回路)を形成しているものである。なお、金属層3は、金属回路を形成していても、していなくともよい。
【0057】
ベース板20は、第1の半田21を介して金属層3に接合されている。半導体素子6は、第2の半田22を介して金属層2の所定の部分に接合されているとともに、アルミワイヤ(アルミ線)等の金属ワイヤ7で金属層2の所定の部分に接合されている。ベース板20上に設けられた上記の各構成要素は、例えば一面が開口した中空箱状の樹脂製の筐体25で蓋され、筐体25内に収容されている。ベース板20と筐体25との間の中空部分には、シリコーンゲル等の充填材28が充填されている。金属層2の所定部分には、筐体8の外部と電気的な接続が可能なように、筐体25を貫通する電極9が第3の半田23を介して接合されている。
【0058】
ベース板20の縁部には、パワーモジュール50に例えば放熱部品を取り付ける際のネジ止め用の取付け穴20aが形成されている。取付け穴20aの数は、例えば4個以上である。ベース板20の縁部には、取付け穴20aに代えて、ベース板20の側壁が断面U字状となるような取付け溝が形成されていてもよい。
【0059】
パワーモジュール50は、上述した本実施形態に係るセラミックス回路基板を備えるため、高耐圧、高出力等が要望される電車又は自動車の駆動インバータとして好適に用いられる。
【実施例】
【0060】
以下、実施例を挙げて本発明について更に具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0061】
(実施例1)
セラミックス基材として、窒化珪素(Si3N4)基材(サイズ:50mm×60mm×0.32mmt)を用いた。Ag-Cu-TiH2ろう材を用い、セラミックス基材の両面に温度800℃にてCu板(厚さ0.1mm、第一金属層2a,3aに相当)を接合した((A)工程)。続いて、セラミックス基材の一方の面側のCu板に対して以下の条件で溶射法(コールドスプレー法)により厚さ0.9mmのCu回路(第二金属層2bに相当)を積層した((B)工程)。また、セラミックス基材の他方の面側のCu板に対して以下の条件で溶射法(コールドスプレー法)により厚さ0.9mmのAl回路(第二金属層3bに相当)を積層した((B)工程)。得られた積層体を温度300℃でアニール処理した後、Cu回路及びAl回路の表面に無電解Niめっきを施す工程を経て本実施例に係るセラミックス回路基板を作製した。なお、本実施例における「Cu回路」及び「Al回路」はセラミックス基材の全面に形成したものである。
<溶射法の条件(Cu回路の形成)>
・Cu粉体の温度:260℃
・Cu粉体の吹付け速度:800m/秒
・作動ガス:窒素
<溶射法の条件(Al回路の形成)>
・Al粉体の温度:260℃
・Al粉体の吹付け速度:800m/秒
・作動ガス:窒素
【0062】
(参考例2,4,6,8及び実施例3,5,7)
窒化珪素(Si3N4)基材として、表1に示す厚さを有するものを使用するとともに、表1に示す材質(Cu又はAl)の第一金属層を基材の両面上に形成し且つ表1に示す厚さのCu回路及びAl回路を溶射法(コールドスプレー法)によって第一金属層の表面にそれぞれ形成したことの他は、実施例1と同様にしてセラミックス回路基板を作製した。
【0063】
(参考例9)
セラミックス基材として、窒化珪素(Si3N4)基材(サイズ:50mm×60mm×0.32mmt)を用いた。セラミックス基材の両面に以下の条件で溶射法(コールドスプレー法)により厚さ0.1mmのAl層をそれぞれ形成した。
<溶射法の条件(Al層の形成)>
・Al粉体の温度:260℃
・Al粉体の吹付け速度:800m/秒
・作動ガス:窒素
【0064】
続いて、セラミックス基材の一方の面側のAl層に対して以下の条件で溶射法(コールドスプレー法)により厚さ0.9mmのCu回路を積層した((B)工程)。また、セラミックス基材の他方の面側のAl回路に対して以下の条件で溶射法(コールドスプレー法)により厚さ0.9mmのAl回路を積層した((B)工程)。得られた積層体を温度300℃でアニール処理した後、Cu回路及びAl回路の表面に無電解Niめっきを施す工程を経てセラミックス回路基板を作製した。
<溶射法の条件(Cu回路の形成)>
・Cu粉体の温度:260℃
・Cu粉体の吹付け速度:800m/秒
・作動ガス:窒素
<溶射法の条件(Al回路の形成)>
・Al粉体の温度:260℃
・Al粉体の吹付け速度:800m/秒
・作動ガス:窒素
【0065】
(比較例1~3)
窒化珪素(Si3N4)基材として、表1に示す厚さを有するものを使用するとともに、表1に示す厚さのCu回路及びAl回路を溶射法(コールドスプレー法)によって形成したことの他は、実施例1と同様にしてセラミックス回路基板を作製した。
【0066】
(比較例4)
窒化珪素(Si3N4)基材として、表1に示す厚さを有するものを使用するとともに、表1に示す厚さのCu回路及びAl回路を溶射法(コールドスプレー法)によって形成したことの他は、参考例9と同様にしてセラミックス回路基板を作製した。
【0067】
(比較例5)
セラミックス基材として、窒化珪素(Si3N4)基材(サイズ:50mm×60mm×0.32mmt)を用いた。Ag-Cu-TiH2ろう材を用い、セラミックス基材の両面に温度800℃にてCu板(厚さ0.3mm)を接合した。Cu板の表面に無電解Niめっきを施す工程を経てセラミックス回路基板を作製した。
【0068】
(比較例6)
セラミックス基材として、窒化珪素(Si3N4)基材(サイズ:50mm×60mm×0.32mmt)を用いた。Al-Cu-Mgクラッド箔をろう材として用い、セラミックス基材の両面に温度630℃にてAl板(厚さ2.0mm)を接合した後、エッチングによりAl回路を形成した。得られた積層体を温度300℃でアニール処理を行った後、Al回路の表面に無電解Niめっきを施す工程を経てセラミックス回路基板を作製した。
【0069】
<セラミックス回路基板の見かけの熱伝導率>
実施例1,3,5,7、参考例2,4,6,8,9及び比較例1~6に係るセラミックス回路基板の見かけの熱伝導率を、NETZSCH社製フラッシュアナライザー(LFA467)を用いて以下のようにして求めた。黒化処理を施したサンプル(セラミックス回路基板)の熱拡散率をフラッシュ電圧200Vで測定した。この測定値と、各層の厚さとサンプルサイズから加成則により算出した見かけ密度及び見かけ比熱容量とを用いて、サンプルの見かけの熱伝導率を計算した。窒化珪素及びCuの物性は以下の値とした。表2に結果を示す。
窒化珪素(Si3N4):密度3.2g/cm3、比熱容量0.68J/g・K
Cu:密度8.89g/cm3、比熱容量0.389J/g・K
Al:密度2.7g/cm3、比熱容量0.88J/g・K
【0070】
<ヒートサイクル試験のクラック評価>
実施例1,3,5,7、参考例2,4,6,8,9及び比較例1~6に係るセラミックス回路基板に対し、SiC含有量65質量%のAlベース板(サイズ140mm×190mm×5mm)を共晶半田でそれぞれ接合することによって、評価対象のサンプル(ベース板付セラミックス回路基板)を作製した。180℃の環境にサンプルを30分放置した後、-45℃の環境に当該サンプルを30分放置する操作を1サイクルとして、500サイクルのヒートサイクル試験を実施した。ヒートサイクル試験後におけるサンプルの異常(金属回路の剥離及びセラミックス基材におけるクラック)の有無を目視により確認した。表2に結果を示す。
【0071】
【0072】
【符号の説明】
【0073】
1…セラミックス基材、2,3…金属層、2a,3a…第一金属層、2b,3b…第二金属層、2c,3c…第一金属層の端面、2d,3d…第二金属層の端面、10A,10B…セラミックス回路基板。