(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-20
(45)【発行日】2023-06-28
(54)【発明の名称】ロボット高周波数位置ストリーミング
(51)【国際特許分類】
B25J 13/00 20060101AFI20230621BHJP
【FI】
B25J13/00 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018098200
(22)【出願日】2018-05-22
【審査請求日】2021-04-02
(32)【優先日】2017-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514079114
【氏名又は名称】ファナック アメリカ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】イー スン
(72)【発明者】
【氏名】ジェイソン ツァイ
(72)【発明者】
【氏名】サイ-カイ チョン
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ エフ.フーバー
【審査官】國武 史帆
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-062002(JP,A)
【文献】特開2003-103484(JP,A)
【文献】特開2017-007036(JP,A)
【文献】特開2014-014900(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0104284(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボット高周波数位置ストリーミングの方法であって、前記方法は、
ロボットと通信するロボット制御装置であって、プロセッサとメモリとを含み、機械制御装置とも通信するロボット制御装置を配置し、
割り込み信号の検出時に、前記ロボット制御装置の前記プロセッサにおいて、ツール中心点位置を決定するようにプログラムされた割り込みサービスルーチ
ンモジュールを実行し、
前記
割り込みサービスルーチンモジュールの各実行において、前記ロボット制御装置のバッファに対して前記ツール中心点位置及び対応するタイムスタンプを提供し、各ツール中心点位置及び対応するタイムスタンプはデータセットを形成し、
前記プロセッサで実行する通信タスクによって前記バッファから前記データセットを読み込み、前記ロボット制御装置のネットワークポートへ前記データセットを送信し、
前記ロボット制御装置における前記プロセッサは、指令補間ルーチンを実行し、前記
割り込みサービスルーチンモジュールの実行サイクル時間は、前記指令補間ルーチンの独立した実行よりも速い、ロボット高周波数位置ストリーミングの方法。
【請求項2】
前記
割り込みサービスルーチンモジュールは、前記割り込み信号の各検出時に、
ロボット関節位置データを読み込むことと、
前記関節位置データに基づく順運動学計算を用いて、ロボット位置構成を計算することと、
ワールドデカルト座標系に対して前記ツール中心点位置を変換することを含んでいて、前記ロボット位置構成及びロボットの手首に取り付けられたツールの形状に基づき前記ツール中心点位置を決定することと、を含むステップを実行する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ロボット関節位置データは、前記ロボットにおける関節エンコーダによって提供される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記関節エンコーダからの信号を前処理することをさらに含み、前記前処理はデジタル信号処理を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ツール中心点位置は、前記ワールドデカルト座標系における3つの直交位置の値及び3つの角度の方向を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記割り込み信号は、システムクロックによって提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記機械制御装置によって、前記ロボット制御装置の前記ネットワークポートから前記データセットを読み込むことと、前記ツール中心点位置に基づいて指令を生成することと、機械による実行のために、前記機械へ指令を送信することと、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ロボット制御装置によって、前記機械制御装置から指令を受け取ることと、前記
割り込みサービスルーチンモジュールにおいて指令を処理することと、前記ロボットへ指示を送信することと、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ロボット高周波数位置ストリーミングの方法であって、前記方法は、
ロボットと通信するロボット制御装置であって、プロセッサとメモリとを含み、機械制御装置とも通信するロボット制御装置を配置し、
割り込み信号の検出時に、前記ロボット制御装置の前記プロセッサにおいて割り込みサービスルーチ
ンモジュールを実行し、前記
割り込みサービスルーチンモジュールは、ロボット関節位置データを読み込むことと、前記関節位置データに基づき順運動学計算を用いてロボット位置構成を計算することと、前記ロボット位置構成及びロボットの手首に取り付けられたツールの形状に基づきツール中心点位置を決定することと、を含むステップを実行するようにプログラムされており、
前記
割り込みサービスルーチンモジュールの各実行において、前記ロボット制御装置のバッファに対して前記ツール中心点位置及び対応するタイムスタンプを提供し、各ツール中心点位置及び対応するタイムスタンプはデータセットを形成し、
前記プロセッサで実行する通信タスクによって前記バッファから前記データセットを読み込み、ユーザデータグラムプロトコル(UDP)を用いる、前記ロボット制御装置のネットワークポートに前記データセットを送信し、
前記機械制御装置によって前記ロボット制御装置の前記ネットワークポートから前記データセットを読み込み、前記ツール中心点位置に基づき指令を生成し、機械による実行のために前記機械へ前記指令を送信し、
前記ロボット制御装置における前記プロセッサは、指令補間ルーチンを実行し、前記
割り込みサービスルーチンモジュールの実行サイクル時間は、前記指令補間ルーチンの独立した実行よりも速い、ロボット高周波位置ストリーミングの方法。
【請求項10】
前記割り込み信号は、一定の間隔でシステムクロックによって提供される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ロボット制御装置によって前記機械制御装置から指令信号を受信することと、指示を生成するために、前記
割り込みサービスルーチンモジュールにおいて前記指令信号を処理することと、前記ロボットへ前記指示を送信することと、をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
ロボット高周波数位置ストリーミングシステムであって、前記システムは、
ロボットと、
ロボットツール中心点位置データに基づき、前記ロボットと同期して動作するように機械を制御する機械制御装置と、
プロセッサとメモリとを含み、前記ロボット及び前記機械制御装置と通信するロボット制御装置とを備え、
前記プロセッサは、
割り込み信号の検出時に、割り込みサービスルーチ
ンモジュールを実行し、前記
割り込みサービスルーチンモジュールは、ロボット関節位置データを読み込むことと、前記関節位置データに基づき順運動学計算を用いてロボット位置構成を計算することと、前記ロボット位置構成及びロボットの手首に取り付けられたツールの形状に基づきツール中心点位置を決定することと、を含むステップを実行し、
前記
割り込みサービスルーチンモジュールの各実行において、前記ロボット制御装置のバッファに対して前記ツール中心点位置及び対応するタイムスタンプを提供し、各ツール中心点位置及び対応するタイムスタンプはデータセットを形成し、
通信タスクによって前記バッファから前記データセットを読み込み、前記機械制御装置への通信のために前記ロボット制御装置のネットワークポートへ前記データセットを送信するように構成されており、
前記ロボット制御装置における前記プロセッサは、指令補間ルーチンを実行し、前記
割り込みサービスルーチンモジュールの実行サイクル時間は、前記指令補間ルーチンの独立した実行よりも速い、ロボット高周波位置ストリーミングシステム。
【請求項13】
前記割り込み信号は、一定の間隔でシステムクロックによって提供される、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記ロボット関節位置データは、前記ロボットにおける関節エンコーダによって提供される、請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
前記ツール中心点位置は、ワールドデカルト座標系における3つの直交位置の値及び3つの角度の方向を含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項16】
前記機械制御装置は、前記ロボット制御装置の前記ネットワークポートから前記データセットを読み込み、前記ツール中心点位置に基づき指令を生成し、前記機械による実行のために、前記機械へ前記指令を送信する、請求項12に記載のシステム。
【請求項17】
前記ロボット制御装置における前記プロセッサは、前記機械制御装置から指令を受信し、指示を生成するように前記
割り込みサービスルーチンモジュールにおいて前記指令を送信し、前記ロボットへ前記指示を送信するようにさらに構成される、請求項12に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年5月22日に提出され、ロボット高周波数位置ストリーミング(ROBOT HIGH FREQUENCY POSITION STREAMING)と題された米国特許仮出願第62/509569号明細書の利益を請求する。
【背景技術】
【0002】
本開示は、一般的に、工場のロボット制御/通信の分野に関し、より特には、ロボット制御装置(robot controller)における割り込みサービスルーチン(Interrupt Service Routine)を用いてロボット関節エンコーダデータを読み込むことと、エンコーダデータに基づいてツール中心点位置を計算することと、計算された位置データを、高優先度タスクにおいて、ネットワークソケットへ送信することとを含む、高周波数でロボットツール中心点位置を外部のプロセッサへストリーミングする方法に関する。
【0003】
ロボットマシンは、ロボットが、材料移動、アーク溶接、レーザ溶接、レーザ切断、材料分配等のような作業を繰り返し、費用効果的に実行するために用いられる、製造及び工場フロア環境において広く用いられる。これらのロボットが実行する作業の多くは、他の部品の動き、又は他のツールの作業シーケンスとの同期を要求する。例えば、溶接操作は、1つ以上の部品が適切に配置され、かつ、溶接レーザ又はロッドが適切に配置されるまで実行することができない。さらに、ロボット及びそれらの制御装置における改善の結果として、作業の実行率は増加する。与えられた量の時間に対し、より多くの部品を処理することは、部品ごとのコストが低くなるので、実行率の増加は、工場操作者のために良好である。加えて、部品の品質に対する需要は増加するので、さらなる精度を伴って実行される切断及び溶接のようなロボットの作業のために必要である。
【0004】
上述の作業の同期は、ロボットが、他のロボット又は処理装置に対して、そのツール中心点位置を通信することを要求する。上述で議論した作業率及び精度要求へ合わせるために、ツール中心点位置の通信は、高周波数(high frequency)が要求される。しかしながら、ツール中心点位置を計算し、かつ、通信するための既存技術は、要求される通信周波数を適合することができない。
【発明の概要】
【0005】
本開示の教示に従い、高周波数で外部のプロセッサへロボットのツール中心点位置をストリーミング(streaming)するための方法及びシステムが開示される。方法は、ロボット制御装置において割り込みサービスルーチンを用いてロボット関節エンコーダデータを読み込むことと、エンコーダデータに基づいてツール中心点位置を計算することと、高優先度の作業において計算した位置データをネットワークソケットへ送信することとを含む。方法は、先行技術の方法のより長い時間と比較すると、速くかつ連続する時間間隔で、ツール中心点位置及び/又は関節位置の通信を達成する。他の機械のプロセッサ又は制御装置のようなダウンストリーム装置は、通信されるツール中心点及び/又は関節位置データを読み、かつ、それを自己の装置の操作を制御するために用いる。外部のプロセッサからの高速度の動き指令ストリーミングは、ロボットを制御するための類似の方法において用いられることができる。
【0006】
本開示の方法及びシステムの追加となる特徴は、添付の図面と併せて、以下の説明および添付の特許請求の範囲から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】ロボットが他の機械と同期して作業を実行する工場フロア操作の図である。
【
図2】ツール中心点位置ストリーミングが必要とされる、ロボットと、ロボット制御装置と、他の機械の制御装置との間の接続を示すブロック図である。
【
図3】本開示の実施形態の、高周波数ツール中心点位置ストリーミングのための、ロボット制御装置及びその中で実行される処理ステップの部分的なソフトウェア構造を示すブロック図である。
【
図4】本開示の実施形態の、ロボット制御装置から他の装置へ高周波数でツール中心点位置を通信するための方法のフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
ロボットの高周波数ツール中心点位置ストリーミングに対する開示の実施形態の以下の議論は、本来単に例示であり、開示の技術、又はその応用、又は使用を制限することを意図していない。例えば、技術は、工場フロアの部品処理の内容で説明されるが、同様に、任意の他のロボットの作業又はアプリケーションに適用できる。開示の方法に関しては、開示されるステップは本来例示であるため、ステップは、発明の精神及び範囲から離れることなく、追加され、除去され、又は並べ替えられても良い。
【0009】
図1は、ロボット100が、他の機械150と同期して作業を実行する、工場フロア操作の図である。ロボット100は、
図1に示される6軸タイプのロボット、又は任意の他のタイプのロボットであって良い。
図1及び以下の図の議論において、ロボット100が自己のペースで動作し、かつ、他の機械150がロボット100と同期して動作するようにプログラムされていることが理解される。言い換えれば、ロボット100はマスター装置であり、機械150はスレーブ装置である。こうして、機械150は、機械150が自己の動きを決定するために用いるロボット100のツール中心点位置を知る必要がある。
【0010】
ロボット100は、本技術分野で知られた方法で、ロボット制御装置110と線102で双方向に通信する。これは、制御装置110が、ロボット100へどのように動くのかを指示する関節位置指令をロボット100へ送信し、かつ、ロボット100が、制御装置110へ関節サーボモータの実際の位置を定義する関節エンコーダデータを提供する。機械150は、線152で制御装置160と通信する。レーザ溶接機として
図1に示される機械150は、レーザ又はアーク溶接機、レーザ切断機、任意の種類の機械ツール、材料移動、又は分配機械等のような任意の適用可能な種類の機械であっても良い。制御装置160は、線180でロボット制御装置110からロボットツール中心点位置データを受け取る。制御装置160はまた、示されるように、ロボット制御装置110と無線で通信しても良い。
【0011】
ロボットが他の機械へツール中心点位置を提供する、
図1の基本的な構造(architecture)は良く知られている。しかしながら、ロボットツール中心点位置データを通信する既存の方法は、多くの現代の工場の運用の要求に合わせるために十分に速くない。例えば、機械150は、精度と処理速度の要求へ合わせるために、2.0ミリ秒(ms)毎にツール中心点位置データを要求して良いが、ロボット制御装置110の既存の設計は、約8.0ms毎にデータを提供できるだけである。
【0012】
こうして、改善した技術は、
図1と同じ基本的な構造を用いて開発されたが、位置データを通信できる速度をさらに増加させる新たな方法で、ロボット制御装置110におけるツール中心点位置の計算を改善する。以下で議論する技術は、これらのロボット―機械同期作業アプリケーションを、高速度でツール中心点位置データを提供するために回避策として時々用いられる、外部のセンサの使用をすることなく可能にする。
【0013】
図2は、ツール中心点位置ストリーミングが必要とされる、ロボット100と、ロボット制御装置110と、他の機械の制御装置160との間の接続を示すブロック図である。
図2は、
図1で示された同じ接続を示しており、かつ、制御装置110において発生することの高レベルの描写を提供する。
図2は、ツール中心点位置を提供する既存の方法と、本開示の新しい技術の双方に適用する。
【0014】
図1で前に示したように、ロボット100は、ロボット100と制御装置110との間でデータと信号とを行ったり来たり運ぶ、線102によって制御装置110と接続される。例えば、制御装置110は、ロボット100へ位置コマンドを送信し、かつ、ロボット100は、制御装置110へ関節位置データを送信する。制御装置110は、線180の上で他の機械の制御装置160へツール中心点位置データを提供するために、3つの基本的な操作を実行する。制御装置110は、線102で関節エンコーダ角度位置データを受信する。デジタルシグナルプロセッサ(DSP)120は、生の関節エンコーダデータを処理し、かつ、ブロック122で順運動学計算のために適切なフォーマットで関節位置データを提供する。言い換えれば、DSPブロック120は、線102で受け取った信号に基づいて、6軸のロボット100における6個全て関節のために、特に一瞬で関節角度位置を提供する。
【0015】
ブロック122は、ツール中心点位置を決定するために順運動学計算を実行する。順運動学計算は、ロボットの基本関節(J1)の角度が肩関節(J2)の位置の決定に用いられ、J2の角度が肘関節(J3)の位置の決定に内部の腕の長さにて沿って用いられる等、本技術分野で知られた方法で動作する。この順運動学計算は、手首関節へと続き、そして、ツール中心点位置という結果をもたらす。ツール中心点位置計算は、ロボットの中心座標系で実行されても良く、ロボットの基本関節角度を用いるグローバルデカルト座標系(例えば、工場フロアと比較して定義される)へ変換されても良い。
【0016】
各々の時間ツール中心点位置は、ブロック122で計算され、それは、タイムスタンプと共に、通信ブロック124へ提供される。通信ブロック124は、標準的なネットワークインターフェース又は任意の他の適切な技術を用いて、線180でツール中心点位置データを通信する。
【0017】
ツール中心点位置を計算し、かつ、出力する既存の方法は、指令補間レートで、ロボットの指令補間ルーチンの一部として実行する。指令補間レートで実行される位置計算は、指令補間間隔ごとにツール中心点位置の計算を提供することができるだけであり、それ以上に速くはならない。上述で議論したように、ツール中心点位置の出力は、機械150の要求へ合わせるために、補間間隔よりも速いレートを必要とする。故に、以下で議論される新しい技術が開発された。
【0018】
図3は、本開示の実施形態の、ロボット制御装置110の部分的なソフトウェア構造及び高周波数ツール中心点位置ストリーミングのために、その中で実行される処理ステップを示すブロック図である。
図3は、制御装置110が、高速度のツール中心点位置の通信要求へ合わせるために、どのように構成されるのか詳細を示している。
【0019】
制御装置110の新たな設計の基本概念は、標準的な指令補間ルーチンの代わりに、割り込みサービスルーチン(Interrupt Service Routine)においてツール中心点位置の計算を実行することである。割り込みサービスルーチン(ISR)としてまた知られる、割り込みハンドラーは、オペレーティングシステム(OS)におけるコールバックサブルーチン又は割り込みの受信によって実行が引き起こされるデバイスドライバである。ISRにおいて、ハードウェア(ハードウェア割り込み)の部分、又はいくつかのOSの作業(ソフトウェア割り込み)の実行が必要となる際に、それは割り込みを引き起こす。もしこれらの割り込みがマスク(無視)されなければ、OSは実行していることを停止し、このイベントを扱うためにいくつかの特別なコード(ISR)を呼び出すだろう。ISRの即時的な実行という特徴は、以前まで可能だったよりもより速い速度でツール中心点位置の計算を可能にする。
【0020】
制御装置110は、既に述べたロボット指令補間ルーチンのような他のソフトウェアルーチン(図示せず)に加えて、ISR位置計算モジュール310及び通信タスク320を含む。システムクロック312は、一定の周波数でISRモジュール310を起こすために用いられる。1つの非限定的な好ましい実施形態において、クロック312は、指令補間(それは、500Hz以上の周波数)よりも速いレートで実行することを引き起こす。
【0021】
制御装置110は、既に議論したように、線102でロボット100と通信する。特に、制御装置110は、線102で関節位置エンコーダデータを受信する。クロック312が、ISRモジュール110の実行を引き起こす際に、関節位置データが、ブロック314において線102から読み取られる。例えば、6軸ロボット100に対しては、6つの角度の関節位置がブロック314において読み取られる。DSPのような信号処理がブロック314内に含まれても良い。ブロック316において、ロボット100の位置の構成は、ブロック314から関節エンコーダデータを用いる順運動学計算にて求められる。順運動学計算は、先行する関節の角度位置及び介在するロボットアームの長さに加えて、運動学的連鎖における先行する関節の空間位置に基づいて、各々の関節の位置及び方向を決定する。
【0022】
ブロック318において、ツール中心点位置は、順運動学計算の出力を用いて、工場フロアに対して固定されるように定義されるデカルト座標系のような「ワールド」座標系において計算される。ブロック316における計算は、ロボットの固定された座標系で実行されても良く、ツール中心点位置は、ブロック318においてワールド座標系に変換される。ツール中心点位置データは、好ましくは、ツール中心点位置及び方向を定義するために十分な3つの回転角度に加えて、ワールド座標系においてツールの中心であるX/Y/Zの位置を含む。1つの実施形態では、3つの回転角度はオイラー角度である。ブロック318からのツール中心点位置データは、ツール中心点位置データバッファ330へ出力される。この時点で、ISRルーチン310は、1サイクルの実行を完了し、クロック312によって送られた次の割り込みに備える。
【0023】
通信タスク320は、単に、ブロック322においてバッファ330からツール中心点位置データを読み、ブロック324における通信リンクに対して、対応するタイムスタンプに加えてツール中心点位置データの各セットを送信する。通信タスク320は、好ましくは、高優先度システムタスクである。高優先度通信タスク320は、バッファ330が未送信データの増大するバックログ(backlog)を蓄積しないように、ISRモジュール310のデータ計算を実行することができる。こうして、通信タスク320は、ISRモジュール310の実行時間を長くなる処理をISRモジュール310に不必要に加えることなく、要求される速度で要求される機能を実行する。
【0024】
通信リンクは、標準的なネットワークソケットであって良い。1つの実施形態では、ネットワークソケットは、ユーザーデータグラムプログラム(UDP)プロトコルを用いる。通信タスク320からのツール中心点位置データは、線180で制御装置110から出力され、それは、上述で議論したように、他の機械150を制御するために、データを制御装置160へ提供する。
【0025】
制御装置110が、高周波数でツール中心点位置を計算し、かつ、出力する上述で説明した技術は、上述で議論したように、2.0ms間隔で確実に位置データを出力できることが証明される。類似技術はまた、外部のプロセッサからの高速度の動作指令ストリーミングのために予見される。言い換えれば、ロボット100が、機械150のような他の装置に対してスレーブとして指定されるのであれば、それから、機械150は、高速度で(2.0ms間隔のような)、その位置データ又はいくつかの種類の指令トリガーを出力でき、かつ、ロボット100は、他の機械150からの高速度指令ストリーミングに従うように構成されることができる。この場合、制御装置110は、ISRモジュールを標準的な指令補間レートよりも高い周波数で指令データを読むために用いて、そして、ロボット位置コマンドを計算し、かつ、送信するために、ISRモジュールにおいて逆運動学計算を用いる。
【0026】
図4は、本開示の実施形態の、ロボット制御装置から他の装置へ、高周波数でツール中心点位置を通信するための方法のフローチャート
図400である。ボックス402において、ISR位置計算モジュール310が制御装置110に備えられ、ISRモジュールは、標準的な指令補間レートよりも著しく速い500Hzのような周波数で、クロックトリガーがかけられる。ボックス404において、関節エンコーダデータは、クロックトリガーごとにISRモジュール310によって読み取られる。関節エンコーダデータは、ロボット100から線102で受け取られ、ロボット100における各々の関節に対して関節角度位置を提供する。
【0027】
ボックス406において、ロボット100の位置は、関節エンコーダデータに基づき、順運動学計算を用いて計算される。ボックス406における計算は、ロボット基部から手首関節に至るまでの全ての関節の中心の位置及び角度を含む、ロボット100の完全な位置を決定する。ボックス408において、ツール中心点位置は、ワールド座標系において計算され、それは、手首に組み付けられたツール自身に対する任意の最終的な位置計算及びロボット中心座標系からワールド座標系への変換を含む。ボックス406及び408における計算は、ボックス404において読まれる関節エンコーダデータの各セットに対して、ISRモジュール310において実行され、それは、各ISRクロックトリガーに対して一度である。
【0028】
ボックス410において、ISRモジュール310は、制御装置110におけるバッファ330へツール中心点位置データを書き込む。ボックス412において、制御装置通信タスク320は、バッファからツール中心点位置データを読み、制御装置110における通信ポートへデータを送る。制御装置通信タスク320は、好ましくは、高優先度タスクである。1つの実施形態において、通信ポートは、UDPプロトコルを用いるイーサネット(登録商標)ポート(Ethernet(登録商標) port)である。ボックス414において、他の機械150に対する制御装置160は、制御装置110からツール中心点位置データを読む。制御装置160は、ロボット100のツール中心点位置に基づいて、機械150に対する指令を生成し(formulate)、それに応じて機械150を動かすために指令を送る。
【0029】
上述のソフトウェアアプリケーション及びモジュールは、プロセッサ及びメモリモジュールを有する1つ以上の計算装置において実行される。例えば、ロボット指令補間と、ISR位置計算と、通信タスクとは、制御装置160が機械150に対して類似する計算を実行する間、その全てを制御装置110において実行する。更に、機械―制御装置間及び制御装置―制御装置間の通信は、ハードワイヤーケーブル接続を介しても良く、又は、携帯電話/データネットワーク、Wi-Fi、ブロードバンドインターネット、ブルートゥース(登録商標)(Bluetooth(登録商標))のような任意の無線技術を用いても良い。
【0030】
上記で開示した方法及びシステムは、既存技術で可能だったよりもより高い周波数で、ロボットからツール中心点位置データを提供する手段として考えられた。関節位置データの読み込み及びツール中心点位置計算のためにカスタムしたISRモジュールを用いて、開示した技術は、ダウンストリーム機械へ高速のロボット位置データを確実にかつ繰り返し運ぶことを証明した。先行技術の8ms又はそれよりも長いものの代わりに、2ms間隔で提供されるロボットツール中心点位置データは、ダウンストリーム機械及び完全な製造プロセスが、高速かつより一層の正確性で実行することを可能にした。
【0031】
前述の議論は、開示する方法及びシステムの単なる模範的な実施形態を説明する。当業者は、そのような議論と、添付図面及び特許請求の範囲とから、様々な変更、修正、及び変化が、以下の特許請求の範囲において定義されるような開示技術の精神及び範囲から離れることなく、その中でできることが容易に認識できるだろう。