IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社豊田中央研究所の特許一覧

<>
  • 特許-エネルギー取引管理システム 図1
  • 特許-エネルギー取引管理システム 図2
  • 特許-エネルギー取引管理システム 図3A
  • 特許-エネルギー取引管理システム 図3B
  • 特許-エネルギー取引管理システム 図3C
  • 特許-エネルギー取引管理システム 図4
  • 特許-エネルギー取引管理システム 図5
  • 特許-エネルギー取引管理システム 図6
  • 特許-エネルギー取引管理システム 図7A
  • 特許-エネルギー取引管理システム 図7B
  • 特許-エネルギー取引管理システム 図7C
  • 特許-エネルギー取引管理システム 図8
  • 特許-エネルギー取引管理システム 図9
  • 特許-エネルギー取引管理システム 図10
  • 特許-エネルギー取引管理システム 図11
  • 特許-エネルギー取引管理システム 図12
  • 特許-エネルギー取引管理システム 図13
  • 特許-エネルギー取引管理システム 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-20
(45)【発行日】2023-06-28
(54)【発明の名称】エネルギー取引管理システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20120101AFI20230621BHJP
【FI】
G06Q50/06
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018196523
(22)【出願日】2018-10-18
(65)【公開番号】P2020064490
(43)【公開日】2020-04-23
【審査請求日】2020-04-01
【審判番号】
【審判請求日】2021-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 敬祐
(72)【発明者】
【氏名】石垣 将紀
(72)【発明者】
【氏名】田原 康佐
【合議体】
【審判長】佐藤 智康
【審判官】松田 直也
【審判官】相崎 裕恒
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-49399(JP,A)
【文献】特開2016-31360(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可搬型貯蔵手段に貯蔵されて取引されるエネルギーの前記可搬型貯蔵手段に対する入出力に関する情報及び前記可搬型貯蔵手段の利用者を、ネットワークを構築するよう形成されている前記可搬型貯蔵手段に分散して保管される分散型取引台帳を利用して管理する分散台帳システムを有することを特徴とするエネルギー取引管理システム。
【請求項2】
前記分散台帳システムは、
分散型取引台帳を記憶する記憶手段と、
エネルギーの生成、取引及び消費に関する通知内容をトランザクションとして前記分散型取引台帳に記録することによって前記可搬型貯蔵手段の利用者及び当該可搬型貯蔵手段におけるエネルギー貯蔵量を管理するエネルギー管理手段と、
エネルギーの取引に利用されるトークンの発行、移動及び消滅に関する通知内容をトランザクションとして前記分散型取引台帳に記録することによって前記可搬型貯蔵手段の利用者が保有するトークンを管理するトークン管理手段と、
を有することを特徴とする請求項1に記載のエネルギー取引管理システム。
【請求項3】
前記分散型取引台帳を参照することにより前記可搬型貯蔵手段に貯蔵されているエネルギーが不正に利用されようとしている状態であることが検出された場合、当該可搬型貯蔵手段からのエネルギーの供給の遮断を制御する制御手段を有することを特徴とする請求項1に記載のエネルギー取引管理システム。
【請求項4】
前記トークン管理手段は、エネルギーの生成量に応じたトークンを当該生成者に発行し、エネルギーの消費量に応じたトークンを当該消費者が保有するトークンの中から消去することを特徴とする請求項2に記載のエネルギー取引管理システム。
【請求項5】
前記トークン管理手段は、同じ量のエネルギーがエネルギー発生手段により生成された場合でもエネルギーの取扱状況又は使用状況に応じて、当該エネルギー発生手段に対するトークンの発行数量を調整すると共に、当該エネルギー発生手段に関する情報を前記分散型取引台帳に記録することを特徴とする請求項4に記載のエネルギー取引管理システム。
【請求項6】
前記可搬型貯蔵手段は、自走可能又は自律走行可能な貯蔵器であることを特徴とする請求項1に記載のエネルギー取引管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー取引管理システム、特に分散型取引台帳を利用したエネルギーの取引の管理に関する。
【背景技術】
【0002】
従来では、電力会社等の発電事業者が電気を発生していたが、近年では、太陽光発電等を利用して個人宅でも電気を発生できる。
【0003】
また、従来から電力会社等の小売電気事業者が一般家庭やビル、工場等に電気を販売して供給しているが、近年では、個人がアグリゲータを介するなどして電力会社に電気を販売する形態も登場してきている。また、技術進歩により蓄電手段に大量の電気を蓄積することも可能となっていることから、蓄電手段を移動させることによって電気の譲渡(売買)も可能となってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-33213号公報
【文献】国際公開第2017/067587号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述したように、現在、エネルギーの発生や売買の形態が多種多様になってきている中、エネルギーの発生、消費、取引等エネルギーの管理を正確かつ効率的にできるようにするのが望まれる。
【0006】
本発明は、エネルギーの管理を、分散型取引台帳を利用して管理することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るエネルギー取引管理システムは、可搬型貯蔵手段に貯蔵されて取引されるエネルギーの前記可搬型貯蔵手段に対する入出力に関する情報及び前記可搬型貯蔵手段の利用者を、ネットワークを構築するよう形成されている前記可搬型貯蔵手段に分散して保管される分散型取引台帳を利用して管理する分散台帳システムを有することを特徴とする。
【0008】
また、前記分散台帳システムは、分散型取引台帳を記憶する記憶手段と、エネルギーの生成、取引及び消費に関する通知内容をトランザクションとして前記分散型取引台帳に記録することによって前記可搬型貯蔵手段の利用者及び当該可搬型貯蔵手段におけるエネルギー貯蔵量を管理するエネルギー管理手段と、エネルギーの取引に利用されるトークンの発行、移動及び消滅に関する通知内容をトランザクションとして前記分散型取引台帳に記録することによって前記可搬型貯蔵手段の利用者が保有するトークンを管理するトークン管理手段と、を有することを特徴とする。
【0009】
また、前記分散型取引台帳を参照することにより前記可搬型貯蔵手段に貯蔵されているエネルギーが不正に利用されようとしている状態であることが検出された場合、当該可搬型貯蔵手段からのエネルギーの供給の遮断を制御する制御手段を有することを特徴とする。

【0010】
また、前記トークン管理手段は、エネルギーの生成量に応じたトークンを当該生成者に発行し、エネルギーの消費量に応じたトークンを当該消費者が保有するトークンの中から消去することを特徴とする。
【0011】
また、前記トークン管理手段は、同じ量のエネルギーがエネルギー発生手段により生成された場合でもエネルギーの取扱状況又は使用状況に応じて、当該エネルギー発生手段に対するトークンの発行数量を調整すると共に、当該エネルギー発生手段に関する情報を前記分散型取引台帳に記録することを特徴とする。
【0012】
また、前記可搬型貯蔵手段は、自走可能又は自律走行可能な貯蔵器であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、エネルギーの生成及び消費、またエネルギーの生成から消費までの間に行われるエネルギーの売買等の取引等、エネルギーに関するイベントを、分散型取引台帳を利用して管理することができる。
【0014】
また、可搬型貯蔵手段に貯蔵されているエネルギーの不正使用を未然に防止することができる。
【0015】
また、消費したトークンの量に対応する分のエネルギーのみ消費させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施の形態における電力取引管理システムの管理対象とする電力を取り扱う者の間でのやり取りされる電力、貯蔵器、トークン及び発電機の流れを示す概念図である。
図2】本実施の形態において利用可能な発電方式のリストを示す図である。
図3A】本実施の形態における設置型の貯蔵器の構成の一例を示す図である。
図3B】本実施の形態における可搬型の貯蔵器の構成の一例を示す図である。
図3C】本実施の形態における自律移動型の貯蔵器の構成の一例を示す図である。
図4】本実施の形態の貯蔵器に含まれる電力遮断回路を示す図である。
図5】本実施の形態における電力取引管理システムが取り扱うブロックチェーンの概略構成図である。
図6】本実施の形態におけるトランザクションに記録されるデータ項目の一例を示す図である。
図7A】本実施の形態における分散台帳システムの全体構成の一例を示す図である。
図7B】本実施の形態における分散台帳システムの全体構成の他の一例を示す図である。
図7C】本実施の形態における分散台帳システムの全体構成の他の一例を示す図である。
図8】本実施の形態における分散台帳システムを構成するノードのブロック構成図である。
図9】本実施の形態において貯蔵器に電力を充電するときのシーケンス図である。
図10】本実施の形態において消費者による電力の利用シーンの一例を示すシーケンス図である。
図11】本実施の形態において消費者による電力の利用シーンの他の一例を示すシーケンス図である。
図12】本実施の形態において消費者による電力の利用シーンの他の一例を示すシーケンス図である。
図13】本実施の形態において貯蔵器を電気自動車に搭載したときの電力の利用シーンの一例を示すシーケンス図である。
図14】本実施の形態において発電機を購入して電力を充電するときのシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づいて、本発明の好適な実施の形態について説明する。取引対象となるエネルギーには、電気、ガス等種々の種類があるが、本実施の形態では、電気(電力)を取り扱う場合を例にして説明する。
【0018】
図1には、本実施の形態における電力取引管理システムの管理対象とする電力を取り扱う者(取扱者)として発電者1、消費者2、貯蔵器管理会社3、交換ステーション4及び発電機製造販売業者5が示されている。取扱者の間には、電力、電力を貯蔵する貯蔵器6、電力の取引に利用されるトークン及び発電機の移動方向(流れ)が異なる種類の矢印で示されている。トークンの流れが示すように、本実施の形態における電力取引管理システムでは、P2P(Peer to Peer)で通信が行われる。
【0019】
本実施の形態における「トークン」は、電力に対応した仮想通貨であり、電力の取引の際に利用される。もちろん、電力の取引以外、例えば物品の購入等にも利用可能である。変動性のトークンとしてもよいが、本実施の形態では、固定的に、例えば100Wh=1トークンと定義する。トークンは、基本的には発電し貯蔵器6に充電することにより生成され、その発電量に応じた量が発行される。トークンは、自らの発電を伴わない系統架線からの貯蔵器6への充電によっても発行されるが、発電を伴う場合のみ現金との交換が許容される。また、電力の消費量に応じた量が消滅される。トークンは、ブロックチェーン(分散型取引台帳)で管理され、ブロックチェーン上で発行、流通(移動)、消滅される。
【0020】
発電者1は、電気を発生させる発電機等の発電手段を所有し、電気(電力)を販売する者である。発電者1としては、図1に示すように電力会社1a及び個人発電家1bが代表的である。個人発電家1bは、電力会社1aに電力を販売する場合もある。発電者1は、図2に例示したいずれかの発電方式にて発電する。発電方式には、電気を生成する際に太陽熱や風力等自然を利用することで環境に優しい、いわゆるクリーンエネルギーを発電する発電方式や有害な廃棄物を排出するなど環境に悪影響を与える可能性のある発電方式等種々の発電方式が含まれている。
【0021】
消費者2は、発電者1から電力を直接又は間接的に購入して消費する者である。消費者2としては、図1に示すようにビル設備や装置を使用する法人2a及び住居とする個人宅2bが代表的である。図1では消費者2の中に含まれていないが、電力を使用する貯蔵器管理会社3等の事業者も法人2aとして消費者2となり得る。
【0022】
本実施の形態では、電力を貯蔵器6に充電して販売する方式を基本としている。図1では、円柱を横にして描画している。消費者2は、発電者1から電力を直接購入する場合もあるが、その場合も購入した電力を貯蔵器6に充電してから使用することになる。貯蔵器管理会社3は、この貯蔵器6を有償にて消費者2に貸し出す事業者である。
【0023】
交換ステーション4は、電力が空になった貯蔵器6を満充電状態の貯蔵器6に交換する事業者である。発電機製造販売業者5は、発電機を製造し、発電者1に販売する事業者である。
【0024】
図3Aは、本実施の形態における貯蔵器6の構成の一例を示す図である。前述したように、貯蔵器6は、発電者1が生成した電力を貯蔵する貯蔵手段である。本実施の形態では、電力を貯蔵器6に充電することによって取引させ、消費者2に使用させる。2次電池61には電力が蓄積される。電池監視回路62は、2次電池61における電流の充放電を監視する。電力回路63は、コネクタ64を介して2次電池61からの放電及び2次電池61への充電を行う。通信モジュール65は、アンテナ66を介して無線ネットワークに接続して2次電池61の充放電に関する情報を通知する。分散台帳システムは、貯蔵器6からの通知内容をトランザクションとして記録する。なお、本実施の形態では無線によるネットワーク通信を想定しているが、有線にてネットワークと接続してもよい。メインコンピュータ67は、貯蔵器6に搭載された各構成要素の動作を制御する。貯蔵器6の筐体68の中には、上記構成要素が収納される。
【0025】
図3Bは、本実施の形態における貯蔵器6の構成の他の一例を示す図である。図3Bに示す貯蔵器6は、図3Aに示す貯蔵器6の筐体68の両端に、貯蔵器6を搬送可能とする可搬手段としてタイヤ69を取り付けた構成を有している。すなわち、図3Aに示す貯蔵器6は、可搬手段が設けられていないことから設置型であるのに対し、図3Bに示す貯蔵器6は、可搬型となる。
【0026】
図3Cは、本実施の形態における貯蔵器6の構成の他の一例を示す図である。図3Cに示す貯蔵器6は、図3Bに示す貯蔵器6の筐体68の内部に、タイヤ69を回転させるモータ70と、モータ70を駆動するモータドライバ71とが追加された構成を有している。メインコンピュータ67は、外部からの指示若しくは所定のプログラムに従ってモータドライバ71の動作を制御して貯蔵器6を自律走行させる。すなわち、図3Bに示す貯蔵器6は、車両に搭載若しくは牽引されて移動する可搬型であるのに対し、図3Cに示す貯蔵器6は、モータ70及びモータドライバ71により自走可能な可搬型の貯蔵器6であり、メインコンピュータ67による走行制御のもと自律走行可能な可搬型の貯蔵器6でもある。
【0027】
本実施の形態では、いずれのタイプの貯蔵器6を使用してもよい。ただ、可搬型若しくは自律走行可能な貯蔵器6を利用すると、系統架線のない土地まで電力を運搬することが可能となるので、系統架線のない場所に所在する消費者に電力を販売することが可能となる。また、系統架線のない場所に所在する消費者は、系統架線を新たに引かなくても電力購入することによって使用することが可能となる。
【0028】
図4は、貯蔵器6に含まれる電力遮断回路を示す図である。図4には、電力遮断回路の構成要素として電流電圧センサ621及びリレー回路72を示している。電流電圧センサ621は、2次電池61の電流電圧を検出する。リレー回路72は、電池監視回路62からの制御のもと電力回路63とコネクタ64との接続のオンオフを切り替える。詳細は後述するが、本実施の形態では、貯蔵器6の利用者でない者が貯蔵器6に貯蔵されている電力を使用しようとした場合、すなわち電力の不正使用が検出された場合、電力遮断回路が貯蔵器6からの電力の供給を遮断することによって電力の不正使用を防止する。
【0029】
なお、貯蔵器6は、貯蔵器管理会社3から購入して利用しなくてもリース等で利用してもよい。すなわち、貯蔵器6を購入することで貯蔵器6の保有者と利用者が一致してもよいし、貯蔵器6をリース会社等から借用することで貯蔵器6の保有者と利用者が一致していなくてもよい。説明の便宜上、以下の説明では、貯蔵器6の保有者と利用者が一致している場合を想定して説明する。
【0030】
本実施の形態における分散台帳システムは、分散型取引台帳技術、あるいは分散型ネットワークとも呼ばれる、いわゆるブロックチェーンを利用して構築される。前述したように、本実施の形態では、電力を貯蔵器6に充電してから利用するが、本実施の形態における分散台帳システムは、貯蔵器6に対する電力の入出力(充電及び放電)や貯蔵器6の利用者の移動等、貯蔵器6(電力)の取引に関する情報を、ブロックチェーンを利用して管理することによって電力の取引を管理することを特徴としている。トークンは、ブロックチェーン上を流通するので、電力の取引等に用いられるトークンの管理も合わせて行うことになる。
【0031】
図5は、ブロックチェーンの構成例を示す図である。一般的なブロックチェーンと同様に、ブロックチェーンは、「ブロック」と呼ばれるデータの単位を鎖のように連結していくことにより形成される。ブロックチェーンは、データを保管するデータベースともいえる。各ブロックは各ノードに保管される。従って、ブロックがノードともいえる。
【0032】
電力の発生、取引及び消費等電力に関する情報が通知されてくると、その通知内容がブロックチェーンのいずれかのブロックにトランザクションとして記録される。また、電力の取引に利用されるトークンの発行、移動及び消滅等トークンに関する情報が通知されてくると、その通知内容がブロックチェーンのいずれかのブロックにトランザクションとして記録される。ブロックの生成やトランザクションが記録されるブロックは、既存技術を用いて分散台帳システムが決める。
【0033】
トランザクションには、上記の通り電力に関する取引の内容が記録されるが、その記録する内容はハッシュ関数によって暗号化される。そして、送り先のアドレスなどを含め、所有者の秘密鍵で電子署名されて生成される。また、各ブロックには、ナンス値と、直前のブロックのハッシュ値が含まれる。
【0034】
ブロックチェーンの課題として、ブロックチェーンのチェーンが長くなり、情報が膨大になることがあげられるが、電力では自然放電による減少などがあるため、長期保存は意味をなさない。従って、充電してから所定期間、例えば1年経過すると、該当するブロックを削除してもよい。あるいは複数のサーバにブロックチェーンを構成し、そこで長時間経過したブロックを別途保持管理するようにしてもよい。
【0035】
図6は、本実施の形態におけるトランザクションに記録されるデータ項目の一例を示す図である。トランザクションには、これら全ての項目が常に含まれるわけではなく、取引の内容に応じて必要な項目が設定される、
【0036】
図7A乃至図7Cは、本実施の形態における分散台帳システムの全体構成例を示す図である。分散台帳システムは、複数のノードによって形成され、各ノードにて各ブロックが保管される。そして、各ノードが連携動作することによって分散型取引台帳、すなわちブロックチェーンが機能する。
【0037】
図7Aには、貯蔵器6のみでノードが構成される場合の例が示されている。図7Bには、貯蔵器6及びPC7でノードが構成された場合の例が示されている。PC7は、電力取引管理システム内にある任意のコンピュータ、例えば図1に示す電力の取扱者が使用するコンピュータでよい。図7Cには、貯蔵器6とPC7が示されているが、PC7のみでノードが構成される場合の例が示されている。本実施の形態では、図7A乃至図7Cに示すいずれのノードの構成でもよい。
【0038】
ノードの構成によってブロックチェーンのブロックを形成するための合意形成の方式が変わる。貯蔵器6は、貯蔵器6との間でネットワークを構築するよう形成されているので、図7Aに示す構成は、セキュリティ以上、相対的に安全である。従って、ブロックの生成権は、どの貯蔵器6が取得してもよい。もしくは、充放電回数の多いものが生成権を得たり、すべての貯蔵器6のメインコンピュータ67の処理速度が同じである場合、短時間、例えば1分程度で探索可能なハッシュ値を設定させて、ナンス値を探索させたりしてもよい。図7Bに示す構成において、ブロックの生成権は、貯蔵器6内で決める方式で、ブロックチェーンをノード全体で保持する形式が考えられる。この構成の場合のブロックの生成権の選び方は、図7Aに示すノード構成の場合と同じでもよい。PC7に生成権を付与する場合、充放電回数のもっとも多いものに付与するproof of stake、若しくは10分程度で探索可能なハッシュ値を設定して、ナンス値を探索させるproof of workでもよい。図7Cに示すノードの構成では、ノード(PC7)で複数の貯蔵器6の情報を管理することになる。ブロックの生成権に関しては、図7Bに示すノードの構成の場合と同じでよい。
【0039】
図8は、本実施の形態における分散台帳システムを構成するノードのブロック構成図である。ノード10は、前述したように貯蔵器6又はPC7により形成されるコンピュータである。なお、貯蔵器6はメインコンピュータ67を内蔵している。コンピュータは、CPU、ROM、RAM、記憶手段としてHDDやストレージを有している。また、他のノード10と有線又は無線によるネットワーク通信を行うための通信インタフェース(貯蔵器6の「通信モジュール65」)を有している。また、必要によりユーザインタフェースを設けてもよい。
【0040】
ノード10は、電力管理部11、トークン管理部12、通信処理部13、電力制御部14、制御部15及び記憶部16を有している。なお、本実施の形態の説明に用いない構成要素については図から省略している。電力管理部11は、電力の発生、取引及び消費に関する通知内容をトランザクションとして記憶部16におけるブロックに記録することによって電力利用者が利用可能な貯蔵器6及び貯蔵器6における電力残量(貯蔵量)等を管理する。トークン管理部12は、電力の取引に利用されるトークンの発行、移動及び消滅に関する通知内容をトランザクションとして記憶部16におけるブロックに記録することによって電力が充電される貯蔵器6の利用者が保有するトークンを管理する。通信処理部13は、他のノード10やノード10でない貯蔵器6との通信を行う。電力制御部14は、電力の使用要求を受けたときに、分散型取引台帳(ブロックチェーン)の記録内容から貯蔵器6に貯蔵されている電力の不正使用が検出された場合、当該貯蔵器6からの電力の供給を遮断するように制御する。制御部15は、上記各構成要素11~14の動作制御及び他のノード10の制御部と連携して電力及びトークンの管理を行う。記憶部16には、ブロックが保管される。
【0041】
ノード10における各構成要素11~15は、ノード10に含まれるコンピュータと、コンピュータに搭載されたCPUで動作するプログラムとの協調動作により実現される。また、記憶部16は、ノード10に含まれる記憶手段又はRAMにて実現される。
【0042】
また、本実施の形態で用いるプログラムは、通信手段により提供することはもちろん、USBメモリ等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して提供することも可能である。通信手段や記録媒体から提供されたプログラムはコンピュータにインストールされ、コンピュータのCPUがプログラムを順次実行することで各種処理が実現される。
【0043】
次に、本実施の形態における動作について、図9乃至図14に示すシーケンス図を用いて説明する。
【0044】
各シーケンス図において、ステップ101のように処理ブロックが貯蔵器6の形状の処理は、貯蔵器6の物理的な移動を示している。また、処理ブロックから延びる破線の矢印は、電力の取引に関する情報又はトークンに関する情報の分散台帳システムへの通知を示している。分散台帳システムでは、処理ブロックは図示していないが、電力の取扱者から通知を受けると、電力管理部11又はトークン管理部12がその通知内容をトランザクションとしてブロックチェーンに記録する処理を実行する。以降の説明では、破線の矢印で示す分散台帳システムへの通知及び分散台帳システムにおけるブロックチェーンへのトランザクションの記録に関する処理については、説明を適宜省略する。
【0045】
また、貯蔵器管理会社3は、取引所を運営していることから、トークンの売買等を行う取引所を兼務するものとする。また、貯蔵器6は、分散台帳システムのノードとしての機能と、貯蔵手段としての機能の双方を有する場合があるが、各シーケンス図では、貯蔵手段として機能する場合が示されている。ノードとして機能する場合、その機能は分散台帳システムに含まれる。
【0046】
前述したように、本実施の形態では、電力を貯蔵器6に充電し、その充電した電力を使用するようにしている。従って、電力を使用できるようにするためには、まず貯蔵器6に電力を充電する必要がある。そこで、本実施の形態において貯蔵器6に電力を充電するときの処理について図9に示すシーケンス図を用いて説明する。なお、貯蔵器6の移動に関しては、貯蔵器管理会社3や発電者1等の各取扱者(取扱者が事業体の場合は当該事業体の従業員等)が貯蔵器6の配送若しくは配送の手続を行う。トークンの授受に対する分散型取引台帳への記録は、基本的には分散台帳システムに含まれるいずれかのノード10が行う。
【0047】
まず、貯蔵器管理会社3は、空の貯蔵器6、すなわち電力が充電されていない状態の貯蔵器6を発電者1に有償にて貸し出す(ステップ101)。空の貯蔵器6を受け取ると、発電者1は、空の貯蔵器6が満充電となるまで充電を行う(ステップ301)。発電者1は、貯蔵器6が満充電の状態になったに関する情報(図6に示すトランザクションに記録するための情報)を分散台帳システムに通知すると、分散台帳システムは、電力の発生に伴い、発電量に応じたトークンを発行する(ステップ201)。発電者1は、電力の発電並びに貯蔵器6への充電に伴いトークンを取得する。空の貯蔵器6が満充電となる量の電力が生成されたこと、及びトークンを発行したことは、トランザクションとして記録される。そして、発電者1は、取得したトークンで貯蔵器6の貸出手数料を支払う(ステップ302)。これにより、貯蔵器管理会社3は、空の貯蔵器6を貸し出した手数料を受け取る。
【0048】
このように、貯蔵器管理会社3から貯蔵器6の貸し出しを受けた者は、貸出の対価としてトークンにより手数料を支払う。支払は、トークンに限る必要はなく現金等他の手段を用いてもよい。ここでは、手数料を電力の発生時に支払う例を示したが、手数料の支払うタイミングは、特に限定する必要はない。例えば、貯蔵器6を貸し出したタイミングでもよいし、トークンの購入時、電力の発生時若しくは消費時、貯蔵器6の交換時いつでもよいし、複数のタイミングに分割して支払ってもよい。
【0049】
続いて、発電者1は、満充電状態の貯蔵器6を取扱者に販売することが可能となるが、ここでは、空の貯蔵器6を保有している者(貯蔵器保有者)と貯蔵器6を交換する場合を例にして説明する。貯蔵器保有者は、消費者2をはじめ、貯蔵器管理会社3や交換ステーション4である。貯蔵器6を交換するために、発電者1は、貯蔵器6を交換したい旨の要求(貯蔵器交換要求)を分散台帳システムへ送る(ステップ303)。分散台帳システムが貯蔵器交換要求に応じて交換を許可すると(ステップ202)、発電者1は、満充電状態の貯蔵器6を貯蔵器保有者へ送る(ステップ304)。
【0050】
なお、厳密には、発電者1となる電力会社の従業員や個人発電家がPC等を使って貯蔵器交換要求を分散台帳システムへ送信し、一方、貯蔵器交換要求を受信した分散台帳システムに含まれるいずれかのノード10がこの要求に応じて許可を示す情報を返信することになるが、説明の便宜上、上記のように発電者1が貯蔵器交換要求を送り、また、分散台帳システムは許可すると、簡略して記載する。以下に説明する各取扱者から分散台帳システムへ送る各種要求においても同様とする。
【0051】
一方、貯蔵器保有者は、空の貯蔵器6を発電者1へ送る(ステップ401)。このようにして、貯蔵器6の交換が行われると、貯蔵器保有者は、取得した貯蔵器6に充電されている分の電気代をトークンで支払う(ステップ402)。なお、貯蔵器保有者は、支払分のトークンを現金で購入するなどの取引にて保有していたものとする。あるいは、現金等トークン以外の手段を用いてもよい。
【0052】
ここで、発電者1は、保有しているトークンを換金したい場合、換金したい旨の要求(トークン換金要求)を分散台帳システムへ送る(ステップ305)。分散台帳システムがトークン換金要求に応じて換金を許可すると(ステップ203)、発電者1は、トークンを取引所として機能する貯蔵器管理会社3へ送ることで現金化する(ステップ306)。このトークンの移動は、発電者1により分散台帳システムに通知される。貯蔵器管理会社3が分散台帳システムに通知してもよい。
【0053】
以上のようにして、電力は貯蔵器6に充電されて販売されるが、続いて、消費者による電力の利用シーンの一例を、図10に示すシーケンス図を用いて説明する。なお、同じ処理には同じステップ番号を付けて、説明を適宜省略する。
【0054】
まず、貯蔵器管理会社3は、満充電状態の貯蔵器6を消費者2に有償にて貸し出す(ステップ111)。なお、貯蔵器管理会社3は、発電者1から満充電状態の貯蔵器6を事前に取得している。電気代は、トークンで支払うことを想定しているが、現金等トークン以外の手段を用いてもよい。
【0055】
続いて、消費者2は、トークンを取引所から購入する(ステップ511)。消費者2によりトークンが購入されたことは、分散台帳システムに通知されトランザクションとして記録される。
【0056】
続いて、消費者2は、電力の使用を開始する前に電力使用要求を分散台帳システムに送る(ステップ512)。例えば、消費者2が電力を使用するために、電気機器を貯蔵器6に接続すると、貯蔵器6は、電気機器のコネクタ64への接続を検出したタイミングで電力使用要求を分散台帳システムへ送信するようにしてもよい。
【0057】
分散台帳システムが電力使用要求を受信すると、ブロックチェーンを参照して電力の不正使用の有無を確認する。例えば、消費者2が自ら取得していない貯蔵器6を利用しようとしている場合、あるいは消費者2が自ら取得した貯蔵器6を利用しようとしていても電力の使用に十分なトークンを保有していないことが確認された場合等が電力の不正使用に該当する。
【0058】
分散台帳システムは、トランザクションとして記録されている電力及びトークンの取引履歴から貯蔵器6に貯蔵されている電力が不正に利用されようとしている状態であることを検出した場合、電力の使用を許可しない旨を消費者2が使用しようとする貯蔵器6に送る。
【0059】
貯蔵器6におけるメインコンピュータ67は、その通知に応じて電池監視回路62に指示することで、リレー回路72に電力回路63とコネクタ64との接続を遮断させる。これにより、貯蔵器6の貯蔵されている電力の電気機器への供給は遮断され、電力の不正使用を未然に防止できる。
【0060】
なお、リレー回路72は、通常、電力回路63とコネクタ64との接続をオフ状態、すなわち遮断状態にしており、分散台帳システムから使用許可が送られてきてはじめてオン状態に切り替えるように制御される。
【0061】
上記説明では、電気機器のコネクタ64への接続をトリガとして、消費者2(貯蔵器6)は、電力使用要求を分散台帳システムに送るように説明したが、例えば電流電圧センサ621が2次電池61の電力量の変化を検知したタイミング(電力の使用開始のタイミング)をトリガとし、このタイミングで電力使用要求を分散台帳システムに送るように制御してもよい。
【0062】
以上説明したように、本実施の形態では、分散台帳システムによる制御のもと、分散台帳システムと貯蔵器6が連携動作することによって電力の不正使用を未然に防止することができる。
【0063】
一方、電力の不正使用を検出しなかった場合、分散台帳システムは、電力の使用許可を消費者2(貯蔵器6)に送る(ステップ211)。
【0064】
分散台帳システムにより電力の使用が許可されると、消費者2は、貯蔵器6に貯蔵されている電力を使用することができる。貯蔵器6の電力を消費すると、その消費量に対応したトークンは消滅していくことになる(ステップ513)。換言すると、消費(消滅)したトークンの量に対応する量の電力のみ消費することができる。このように、本実施の形態の場合、消滅するトークンの量と電力消費量とは、例えば100Wh=1トークンと定義したように関連付けられている。
【0065】
ところで、発電者1は、貯蔵器管理会社3から満充電状態の貯蔵器6の貸し出しを受けている。そこで、消費者2は、購入したトークンで貯蔵器6の貸出手数料を支払う(ステップ514)。これにより、貯蔵器管理会社3は、満充電の貯蔵器6を貸し出した手数料を受け取る。このように、図10では、手数料を電力の消費時に支払う例を示している。
【0066】
電力を消費することで、貯蔵器6に貯蔵されている電力はゼロ、いわゆる貯蔵器6が空の状態になったとする。消費者2は、電力の補充のためにトークンを取引所から購入する(ステップ515)。そして、消費者2は、電力の補充を電力会社1aに依頼する(ステップ516)。電力会社1aは、この依頼に応じて電力を消費者2が保有する貯蔵器6に供給する(ステップ611)。
【0067】
これにより、消費者2が保有する貯蔵器6には電力が充電される(ステップ517)。そして、消費者2は、供給された電力量に応じた電気代をトークンにより電力会社1aに支払う(ステップ518)。電気代は、現金等トークン以外の手段を用いてもよい。
【0068】
次に、消費者2による電力の利用シーンの他の一例を、図11に示すシーケンス図を用いて説明する。なお、同じ処理には同じステップ番号を付けて、説明を適宜省略する。
【0069】
貯蔵器6に貯蔵されている電力がゼロの状態になった場合、図10では電力会社から電気を購入することで満充電の貯蔵器6を得る場合を説明した。ここでは、交換ステーション4との間で貯蔵器6を交換することで満充電の貯蔵器6を得る場合について説明する。
【0070】
図11では、消費者2が電力を消費することで貯蔵器6が空の状態になり、取引所からトークンを購入する処理(ステップ515)までは図10と同じでよいので説明を省略する。
【0071】
続いて、消費者2は、貯蔵器6の交換要求を分散台帳システムに送る(ステップ521)。分散台帳システムは、この要求に応じて交換許可を消費者2(貯蔵器6)に送る(ステップ221)。
【0072】
分散台帳システムにより貯蔵器6の交換が許可されると、消費者2は、空の貯蔵器6を交換ステーション4に移動させる(ステップ522)。交換ステーション4は、空の貯蔵器6が送られてくると、満充電の状態の貯蔵器6を送り元となる消費者2に移動させる(ステップ721)。
【0073】
消費者2は、満充電の状態の貯蔵器6が送られてくると、満充電分の電力量に応じた電気代をトークンにより電力会社1aに支払う(ステップ518)。電気代は、現金等トークン以外の手段を用いてもよい。
【0074】
次に、消費者2による電力の利用シーンの他の一例を、図12に示すシーケンス図を用いて説明する。なお、同じ処理には同じステップ番号を付けて、説明を適宜省略する。
【0075】
貯蔵器6に貯蔵されている電力がゼロの状態になった場合、図10,11では外部から電気を購入することで満充電の貯蔵器6を得る場合を説明した。ここでは、消費者2が所有する発電機、すなわち電気を自ら発電して満充電の貯蔵器6を得る場合について説明する。本実施の形態では、消費者2は個人宅であり、個人宅には、太陽光発電が設置されている場合、すなわち消費者2は発電者1でもある場合を想定している。
【0076】
図12では、消費者2が電力を消費することで貯蔵器6が空の状態になるまで処理は図10と同じでよいので説明を省略する。続いて、消費者2は、貯蔵器6を所有している発電機(太陽光発電)に接続すると、発電機は、電力を消費者2が保有する貯蔵器6に供給する(ステップ531)。これにより、消費者2が保有する貯蔵器6には電力が充電される(ステップ532)。
【0077】
ところで、自ら発電して貯蔵器6に充電すると、トークンは発行される。従って、分散台帳システムは、発電機が生成した電力量に応じた量のトークンを発行し(ステップ231)、消費者2は、この発行されたトークンを取得する。
【0078】
このように、個人宅である消費者(個人消費者)2は、太陽光発電を用いて自ら生成した電力量に見合った量のトークンを得ることができる。
【0079】
次に、貯蔵器6を電気自動車に搭載したときの電力の利用シーンの一例を、図13に示すシーケンス図を用いて説明する。なお、同じ処理には同じステップ番号を付けて、説明を適宜省略する。図11では、消費者2として個人宅を想定していたが、ここでは、消費者2が電気自動車(以下、「EV」ともいう)の利用者であり、貯蔵器6が電気自動車に 搭載されて利用される場合について説明する。
【0080】
貯蔵器管理会社3は、満充電状態の貯蔵器6を消費者2に有償にて貸し出すが(ステップ111)、その貯蔵器6は、電気自動車に搭載されて利用されることになる(ステップ541)。その後、電気自動車が電力を消費することで貯蔵器6が空の状態になったことで、貯蔵器6の交換を要求して許可されるまでの処理は図11と同じでよい。
【0081】
続いて、電気自動車の利用者は、空の貯蔵器6を交換ステーション4に移動させる(ステップ542)。交換ステーション4は、空の貯蔵器6が送られてくると、満充電の状態の貯蔵器6を送り元となる消費者2に移動させる(ステップ721)。
【0082】
電気自動車の利用者は、満充電の状態の貯蔵器6が送られてくると、電気自動車に搭載する(ステップ543)。そして、満充電分の電力量に応じた電気代をトークンにより電力会社1aに支払う(ステップ518)。電気代は、現金等トークン以外の手段を用いてもよい。
【0083】
次に、発電者1が発電機製造販売業者5から発電機を購入するシーンの一例を、図14に示すシーケンス図を用いて説明する。なお、同じ処理には同じステップ番号を付けて、説明を適宜省略する。
【0084】
まず、発電者1が貯蔵器管理会社3から借りた空の貯蔵器6を満充電とすることでトークンを取得するまでの処理は、図9と同じなので説明を省略する。続いて、発電者1は、発電機製造販売業者5に発電機の追加購入を依頼すると(ステップ351)、発電機製造販売業者5は、この依頼に応じて発電機を納品する(ステップ851)。そして、発電者1は、発電機の代金としてトークンで支払う(ステップ352)。
【0085】
続いて、発電機製造販売業者5は、電力の補充を電力会社1aに依頼する(ステップ852)。電力会社1aは、この依頼に応じて電力を消費者2が保有する貯蔵器6に供給する(ステップ651)。これにより、発電機製造販売業者5が保有する貯蔵器6には電力が充電される(ステップ853)。そして、発電機製造販売業者5は、供給された電力量に応じた電気代をトークンにより電力会社1aに支払う(ステップ854)。電気代は、現金等トークン以外の手段を用いてもよい。
【0086】
以上、図9乃至図14に示すシーケンス図を用いて、貯蔵器6の利用(電気の充電、消費)やトークンの流れ等の処理について説明したが、図9乃至図14それぞれにおいて説明した処理や貯蔵器6の移動は、適宜組合せ実施してよい。以上説明したように、本実施の形態によれば、電力の生成及び消費、また電力の生成から消費までの間に行われる電力の売買等の取引等、電力に関するあらゆるやり取り(イベント)を、ブロックチェーンを利用して管理することができる。
【0087】
ところで、上記説明では、電力量とトークンとの交換比率は一定(例えば100Wh=1トークン)として、交換比率の変動については特に言及しなかった。ただ、同じ電力量の電力が発電者1により生成された場合でも電力の取扱状況又は使用状況に応じて、発電者1に対するトークンの発行数量を調整して交換比率を変動させてもよい。この調整の内容は、当然ながら分散台帳システムに記録される。
【0088】
例えば、分散台帳システムは、発電に関し、同じ電力量を生成した場合でも発電の方法によって発行するトークンの量を変動させる。例えば、貯蔵器6に自ら発電して充電する場合と、系統架線から電力の供給を受けて充電する場合とで、発行するトークン量を異ならせてよい。この場合、自ら発電する前者の方にトークン量を多くする。例えば、90Wh=1トークンと発電量に対して通常より多くのトークンを発行する。このようにトークンの発行数量を調整することで、太陽光発電等による自家発電を推進することができる。
【0089】
また、発電方式によって交換比率を変えてもよい。例えば、同じ電力量を生成した場合でも、クリーンエネルギーを発電する発電方式に対し、環境に悪影響を与える可能性のある発電方式より多くのトークンを発行する。これにより、クリーンエネルギーを発電する発電方式を推進させることができる。
【0090】
なお、貯蔵器6に充電の際に、発電元を特定する情報(例えば、発電元の認証ID)をコネクタ64経由で取得することで発電元を判別するようにしてもよい。
【0091】
一方、分散台帳システムは、電力の充電や消費に関し、同じ電力量を充電、消費する場合でも充電や消費の方法によって消費(消滅)するトークンの量を変動させてもよい。例えば、急速充電より通常若しくはゆっくり貯蔵器6に充電する方のトークンの消滅量をより少なくする。例えば、100Wh=1トークンの場合、同じ充電量でもゆっくり充電した場合には110Wh=1トークンと、少ない量のトークンを消滅させる。また、電力の消費についても貯蔵器6から大容量の電力が消費される場合より通常若しくは少しずつ消費される方のトークンの消滅量をより少なくする。これにより、貯蔵器6にかかる負荷の軽減、また省エネを推進することができる。
【0092】
電池監視回路62が電流の入出力される電流を監視することによって貯蔵器6に充電、消費される時間当たりの電力量は検出可能である。
【0093】
あるいは、貯蔵器6を搭載した電気自動車が渋滞を回避するために目的地まで遠回りしたとする。この場合、渋滞回避に協力したことにより、消費した電力に対して消滅させるトークンの量を相対的に少なくする。渋滞を回避した走行かどうかは、交通量の情報(渋滞情報)及び電気自動車の走行履歴に基づいて判明することができる。
【0094】
また、前述した貯蔵器6や環境に優しい充電、消費によってトークンの発行量を変動させること以外にも、例えば、自然放電によって貯蔵器6に貯蔵されている電力は減少するので、この経時的要素を考慮してトークンを自然消滅させるようにしてもよい。
【0095】
なお、本実施の形態では、エネルギーとして電気を例にして説明したが、ガス等貯蔵手段に貯蔵可能なエネルギーであれば、そのエネルギーにも適用してもよい。
【符号の説明】
【0096】
1 発電者、1a 電力会社、1b 個人発電家、2 消費者、2a 法人、2b 個人宅、3 貯蔵器管理会社、4 交換ステーション、5 発電機製造販売業者、6 貯蔵器、10 ノード、11 電力管理部、12 トークン管理部、13 通信処理部、14 電力制御部、15 制御部、16 記憶部、61 2次電池、62 電池監視回路、63 電力回路、64 コネクタ、65 通信モジュール、66 アンテナ、67 メインコンピュータ、68 筐体、69 タイヤ、70 モータ、71 モータドライバ、72 リレー回路、621 電流電圧センサ。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14