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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-20
(45)【発行日】2023-06-28
(54)【発明の名称】近接センサ
(51)【国際特許分類】
   H03K 17/955 20060101AFI20230621BHJP
   E05B 81/78 20140101ALI20230621BHJP
   G01B 7/00 20060101ALI20230621BHJP
【FI】
H03K17/955 G
E05B81/78
G01B7/00 101C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018242075
(22)【出願日】2018-12-26
(65)【公開番号】P2020107933
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000138462
【氏名又は名称】株式会社ユーシン
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】徳留 哲夫
【審査官】▲高▼橋 徳浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-119906(JP,A)
【文献】特開2016-070052(JP,A)
【文献】特開2016-091803(JP,A)
【文献】特開2018-092317(JP,A)
【文献】国際公開第2013/111841(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/168320(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B1/00-E05B85/28
G01B7/00-G01B7/34
H03K17/74-H03K17/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検出体との距離に応じた検出電圧を出力する検出部と、
前記検出電圧が入力される制御部と、を備え、
前記制御部は、
所定の期間毎に所定の回数の前記検出電圧を測定する測定手段と、
前記所定の回数の前記検出電圧を積算して積算値を生成する積算手段と、
前記積算値を時系列に記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された前記積算値を基準積算値とし、前記積算手段により生成された最新の積算値の前記基準積算値に対する変化量が所定の閾値を超えるとき、前記被検出体が近接したと判定する判定手段と、
を備えている近接センサ。
【請求項2】
前記記憶手段は、前記積算値を時系列に複数記憶し、
前記判定手段は、前記最新の積算値よりも複数前に前記記憶手段に記憶された前記積算値を前記基準積算値として、前記被検出体の近接を判定する
請求項1に記載の近接センサ。
【請求項3】
前記制御部は、前記最新の積算値が前記積算値として前記記憶手段に記憶された後、前記最新の積算値の前記基準積算値に対する変化量が前記所定の閾値を超えないとき、前記基準積算値より後に記憶された前記積算値を新たな基準積算値として更新する請求項2に記載の近接センサ。
【請求項4】
前記制御部は、前記最新の積算値が前記積算値として前記記憶手段に記憶された後、前記最新の積算値の前記基準積算値に対する変化量が前記所定の閾値を超えるとき、前記基準積算値を更新しない請求項に記載の近接センサ。
【請求項5】
前記制御部からパルス電圧が印加される駆動電極と、
前記パルス電圧の印加により誘起電圧が発生する検出電極と、を含んで構成される電極部を更に備え、
前記検出部は、前記誘起電圧の発生により充電されるコンデンサを有し、
前記検出電圧は、前記コンデンサに充電された充電電圧とされる
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の近接センサ。
【請求項6】
前記所定の期間は、前記パルス電圧の印加の開始から、前記コンデンサの前記充電電圧の放電開始までの期間である
請求項5に記載の近接センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近接センサに関する。
【背景技術】
【0002】
キーレスエントリー装置やドア開閉装置が自動車等の車両に装備される傾向にある。キーレスエントリー装置では、車両の使用者のドアハンドルへの近接又は接触が検出されると、使用者が携帯する電子キーとの間において認証が行われ、ドアを施錠又は解錠することができる。一方、ドア開閉装置では、使用者の車両表面の一部への近接又は接触が検出されると、同様に電子キーとの間において認証が行われ、ドアを開閉することができる。
この種の装置は近接センサを備えている。近接センサでは、装置と使用者との距離の変化に応じて出力が変化する。
【0003】
下記特許文献1には、近接センサが開示されている。この近接センサは、駆動電極と、検出電極とを含んで構成されている。駆動電極にはパルス電圧が印加される。パルス電圧が駆動電極に印加されると、検出電極には検出電圧としての誘起電圧を発生させることができる。近接センサでは、使用者との距離の変化に応じて検出電圧が変化し、この検出電圧の変化量が閾値を超えたとき、使用者の近接を検出することができる。
このように構成される近接センサでは、検出距離が短いものの、安価に製作することができ、ドアハンドルや車両表面の一部に多少の汚れがあっても、使用者の近接又は接触を検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-70052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記近接センサでは、利便性の観点から、検出距離が長いときでも使用者の近接を検出することが望まれている。検出電圧と比較される閾値を小さく設定すれば、検出距離を長くすることができる。
しかしながら、閾値が小さく設定されると、検出電圧に乗るノイズの影響が大きくなるので、使用者が「非近接状態」であっても、ノイズが乗った検出電圧が閾値を超えてしまい、使用者が「近接状態」にあるとの誤検出を生じる恐れがあった。
本発明は、上記事実を考慮し、誤検出を効果的に抑制又は防止することができ、検出距離を長くすることができる近接センサを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1実施態様に係る近接センサは、被検出体との距離に応じた検出電圧を出力する検出部と、検出電圧が入力される制御部と、を備え、制御部は、所定の期間毎に所定の回数の検出電圧を測定する測定手段と、所定の回数の検出電圧を積算して積算値を生成する積算手段と、積算値を時系列に記憶する記憶手段と、記憶手段に記憶された積算値を基準積算値とし、積算手段により生成された最新の積算値の基準積算値に対する変化量が所定の閾値を超えるとき、被検出体が近接したと判定する判定手段と、を備えている。
【0007】
本発明の第2実施態様に係る近接センサでは、第1実施態様に係る近接センサにおいて、記憶手段は、積算値を時系列に複数記憶し、判定手段は、最新の積算値よりも複数前に記憶手段に記憶された積算値を基準積算値として、被検出体の近接を判定する。
【0008】
本発明の第3実施態様に係る近接センサでは、第2実施態様に係る近接センサにおいて、制御部は、最新の積算値が前記積算値として記憶手段に記憶された後、最新の積算値の基準積算値に対する変化量が前記所定の閾値を超えないとき、基準積算値より後に記憶された積算値を新たな基準積算値として更新する。
【0009】
本発明の第4実施態様に係る近接センサでは、第実施態様に係る近接センサにおいて、制御部は、最新の積算値が前記積算値として前記記憶手段に記憶された後、最新の積算値の前記基準積算値に対する変化量が前記所定の閾値を超えるとき、前記基準積算値を更新しない。
【0010】
本発明の第5実施態様に係る近接センサでは、第1実施態様~第4実施態様のいずれか1つに係る近接センサにおいて、制御部からパルス電圧が印加される駆動電極と、パルス電圧の印加により誘起電圧が発生する検出電極と、を含んで構成される電極部を更に備え、検出部は、誘起電圧の発生により充電されるコンデンサを有し、検出電圧は、コンデンサに充電された充電電圧とされる。
【0011】
本発明の第6実施態様に係る近接センサでは、第5実施態様に係る近接センサにおいて、所定の期間は、パルス電圧の印加の開始から、コンデンサの充電電圧の放電開始までの期間である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、誤検出を効果的に抑制又は防止することができ、検出距離を長くすることができる近接センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施の形態に係る近接センサの回路構成図である。
図2図1に示される近接センサにおける検出電圧と検出電圧の測定時間との関係を示す図である。
図3図2に示される検出電圧を積算して生成された積算値と積算値の生成時間との関係を示す図である。
図4図1に示される近接センサの検出電圧の検出方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1図4を用いて、本発明の一実施の形態に係る近接センサについて説明する。本実施の形態では、近接センサの回路構成並びに近接又は接触の検出方法について、自動車等の車両に装着された例を説明する。なお、近接センサは、図示省略の車両のドアハンドルに配設され、キーレスエントリー装置を構築する。また、近接センサは、図示省略の車両に装着され、ドア開閉装置を構築する。
【0015】
(近接センサ1の回路構成)
図1に示されるように、本実施の形態に係る近接センサ1は、電極部2と、検出部3と、制御部4と、を含んで構成されている。
【0016】
電極部2は、駆動電極20と、この駆動電極20にそれぞれ対向して配置される第1検出電極21及び第2検出電極22とを備えている。
駆動電極20は制御部4のパルス電圧出力端子に接続され、制御部4から供給されるパルス電圧が駆動電極20に印加される。パルス電圧が印加されると、被検出体としての使用者の手の車両への近接又は接触の検出が開始される。駆動電極20は、第1検出電極21、第2検出電極22のそれぞれに共用の電極として形成されている。
第1検出電極21は、ロック電極として使用され、図示省略の車両のドアを施錠する又はドアを閉める際に、使用者の手の近接又は接触状態を検出する電極である。駆動電極20にパルス電圧が印加されると、第1検出電極21に誘起電圧が発生する。使用者の手の距離の変化に応じて誘起電圧が変化する。
第2検出電極22は、アンロック電極として使用され、ドアを解錠する又はドアを開ける際に、使用者の手の近接又は接触状態を検出する電極である。第1検出電極21と同様に、駆動電極20にパルス電圧が印加されると、第2検出電極22に誘起電圧が発生する。この誘起電圧は使用者の手の距離に応じて変化する。
【0017】
検出部3は、第1検出電極21に接続され、第1検出電極21に発生する誘起電圧を検出する第1検出回路31と、第2検出電極22に接続され、第2検出電極22に発生する誘起電圧を検出する第2検出回路32とを備えている。
【0018】
第1検出回路31は、オペアンプ311と、コンデンサ312と、ダイオード313と、抵抗R1~抵抗R3と、を含んで構成されている。
オペアンプ311では、非反転入力が第1検出電極21に接続され、反転入力が抵抗R1を介して基準電圧Vssに接続され、更に電源電圧Vcc及び基準電圧Vssが供給されている。ここで、電源電圧Vccは、例えば回路の動作電圧、5Vである。また、基準電圧Vssは、例えば回路の接地電圧、0Vである。
オペアンプ311の出力は、ダイオード313を介して制御部4のA/D入力端子に接続され、かつ、抵抗R2を介して反転入力と抵抗R1との間に接続されている。ダイオード313は、オペアンプ311の出力と制御部4のA/D入力端子との間に順方向に挿入され、オペアンプ311への電流の流れを阻止している。また、抵抗R1及び抵抗R2はオペアンプ311の増幅率を決定している。
コンデンサ312は、ダイオード313のカソードと制御部4のA/D入力端子との間に一方の電極を接続し、基準電圧Vssに他方の電極を接続している。このコンデンサ312は、使用者の手の近接又は接触を検出する検出用コンデンサとして使用され、第1検出電極21に発生する誘起電圧により充電される。コンデンサ312に充電された充電電圧は第1検出回路31から制御部4へ出力される検出電圧とされる。
抵抗R3の一端はダイオード313のカソードと制御部4のA/D入力端子との間に接続され、抵抗R3の他端は制御部4に接続されている。コンデンサ312に充電された充電電圧は抵抗R3を介して放電される。
【0019】
第2検出回路32は、第1検出回路31と同様の構成とされ、オペアンプ321と、コンデンサ322と、ダイオード323と、抵抗R4~抵抗R6と、を含んで構成されている。
オペアンプ321では、非反転入力が第2検出電極22に接続され、反転入力が抵抗R4を介して基準電圧Vssに接続され、更に電源電圧Vcc及び基準電圧Vssが供給されている。
オペアンプ321の出力は、ダイオード323を介して制御部4のA/D入力端子に接続され、かつ、抵抗R5を介して反転入力と抵抗R4との間に接続されている。ダイオード323は、オペアンプ321の出力と制御部4のA/D入力端子との間に順方向に挿入され、オペアンプ321への電流の流れを阻止している。また、抵抗R4及び抵抗R5はオペアンプ321の増幅率を決定している。
コンデンサ322は、ダイオード323のカソードと制御部4のA/D入力端子との間に一方の電極を接続し、基準電圧Vssに他方の電極を接続している。このコンデンサ322は、使用者の手の近接又は接触を検出する検出用コンデンサとして使用され、第2検出電極22に発生する誘起電圧により充電される。コンデンサ322に充電された充電電圧は第2検出回路32から制御部4へ出力される検出電圧とされる。
抵抗R6の一端はダイオード323のカソードと制御部4のA/D入力端子との間に接続され、抵抗R6の他端は制御部4に接続されている。コンデンサ322に充電された充電電圧は抵抗R6を介して放電される。
【0020】
制御部4は、マイクロコンピュータを用いて構築され、測定ユニット(測定手段)41、積算ユニット(積算手段)42、記憶ユニット(記憶手段)43、判定ユニット(判定手段)44を少なくとも備えている。制御部4には、第1検出回路31、第2検出回路32のそれぞれから出力される検出電圧が入力される。
なお、図1に示される制御部4において、測定ユニット41等の各ユニットは専用回路の構成要素(ハードウエア)として記載されている。本実施の形態では、各ユニットのすべて又は一部が、ユニットに相当する機能を実現する、コンピュータを用いて実行されるプログラム(ソフトウエア)により構成されてもよい。
また、本実施の形態では、制御部4において、検出部3の第1検出回路31から出力される検出電圧の検出方法について説明する。第2検出回路32から出力される検出電圧の検出方法は、第1検出回路31から出力される検出電圧の検出方法と同様であるので、説明を省略する。
【0021】
測定ユニット41では、所定の期間毎に所定の回数の検出電圧が測定される。詳しく説明する。
図2には、測定ユニット41において測定される検出電圧と検出電圧の測定時間との関係が示されている。縦軸が検出電圧[V]であり、横軸が検出電圧の測定時間である。図2に示されるように、最初に、検出電圧V1は期間T1において測定される。期間T1、すなわち本実施の形態における「所定の期間」は、制御部4から駆動電極20へパルス電圧の印加を開始した時間t11から、第1検出回路31のコンデンサ312の充電電圧の放電開始の時間t14までの期間である(図1参照)。期間T1内において、時間t11から一定の時間が経過した時間t12に、制御部4から駆動電極20へのパルス電圧の印加が停止される。このパルス電圧の停止直後であって、時間t12と時間t14との間の時間t12寄りの時間t13において、検出電圧V1が測定される。要するに、時間t13のタイミングにおいて測定された電圧が検出電圧V1とされる。
【0022】
測定ユニット41では、期間T1の後の期間T2内に検出電圧V2が測定される。検出電圧V1の測定方法と同様に、期間T2はパルス電圧の印加開始の時間t21から放電開始の時間t24までの期間とされ、期間T2内においてパルス電圧の停止(時間t22)直後の時間t23のタイミングにおいて検出電圧V2が測定される。
測定ユニット41では、「所定の回数」として、例えば10回測定され、検出電圧V1~検出電圧V10が測定される。検出電圧V3~検出電圧V10のそれぞれの測定方法は検出電圧V1の測定方法と同様である。本実施の形態では、「所定の回数」は、繰り返しの単位となる基準測定回数とされているが、「回数」自体は任意に設定可能である。
【0023】
図1に戻って、積算ユニット42では、所定の回数の検出電圧が積算されて積算値が生成される。ここでは、前述の通り、「所定の回数」は「10回」に設定されているので、積算値は測定ユニット41において測定された検出電圧V1~検出電圧V10を加算した値とされる。積算値が生成されることにより、検出電圧V1~検出電圧V10のそれぞれに乗るプラスノイズとマイナスノイズとが平均化され、ノイズが相殺されるので、積算値ではノイズが実質的に取り除かれる。
【0024】
図3には、積算ユニット42において積算された積算値と積算値が生成された時間との関係が示されている。縦軸が積算値[V]であり、横軸が積算値の生成時間である。
ここで、図3において、時系列に記載されている最新の時間Tnに生成された積算値が「最新の積算値Sn」とされる。時間Tnよりも一定の時間前の過去の時間Tn-1に生成された積算値は「積算値Sn-1」とされる。さらに、時間Tn-1よりも一定の時間前の過去の時間Tn-2に生成された積算値は「積算値Sn-2」とされる。以下同様に、時間Tn-3~時間Tn-9のそれぞれに生成された積算値は、各々、「積算値Sn-3」~「積算値Sn-9」とされる。そして、時間Tnよりも10回前の時間Tn-10に生成された積算値は「積算値Sn-10」とされる。
図3では、最新の積算値Snから10回前の過去の積算値Sn-10が示されている。近接センサ1に使用者の手(被検出体)が近接すると、積算値が下がり始めるので、積算値が下がり始める前、ここでは10回前の「積算値Sn-10」が近接又は接触を判定する「基準積算値Sr」に設定されている。「基準積算値Sr」は、基本的に「最新の積算値Sn」よりも前の積算値に設定されるが、積算値の緩やかな変化を認識するため、「最新の積算値Sn」よりも複数前の積算値(「積算値Sn-2」~「積算値Sn-10」)を用いて設定されている。
【0025】
図1に示される記憶ユニット43は、積算ユニット42において生成された複数の「積算値Sn-10」~「積算値Sn-1」のそれぞれを時系列に記憶する。記憶ユニット43としては、具体的な図示を省略するが、例えば揮発性メモリ(RAM:Random Access Memory)を用いて構築されている。
【0026】
判定ユニット44は、記憶ユニット43に記憶された「積算値Sn-10」を「基準積算値Sr」とし、積算ユニット42により生成された「最新の積算値Sn」の「基準積算値Sr」に対する変化量を「所定の閾値」と比較する。そして、判定ユニット44は、この変化量が「所定の閾値」を超えるとき、「使用者の手が近接した」と判定する。
ここでは、「所定の閾値」は下記不等式(1)により設定されている。
(基準積算値Sr-最新の積算値Sn)/基準積算値Sr>0.01 …(1)
上記不等式(1)は下記不等式(2)に書き換えることができる。
最新の積算値Sn<0.99×基準積算値Sr …(2)
すなわち、本実施の形態において「所定の閾値」は「1%」に設定され、判定ユニット44では、「最新の積算値Sn」の「基準積算値Sr」に対する変化量が「1%」を超えると、「被検出体が近接した」との判定がなされる。
ここで、比較例として、検出電圧に乗るノイズの影響を考慮すると、近接の判定に使用される閾値は、例えば5%の高い値に設定される。
【0027】
(近接センサ1における近接又は接触の検出方法)
次に、図1図3を参照しつつ、図4を用いて、近接センサ1における被検出体の近接又は接触の検出方法を説明する。
まず最初に、近接又は接触の検出方法では、近接センサ1の制御部4が初期化され、後述するステップS3からステップS12を行って積算値Snを生成し、判定ユニット44において積算値Snが「基準積算値Sr」に設定される(ステップS1)。
引き続き、所定の時間が経過したか否かが判定される(ステップS2)。ここでの「所定の時間」とは、基準積算値Srの設定後から次の積算値の生成を開始するまでの時間である。所定の時間が経過していないと判定されると、ステップS2へ戻る。
【0028】
ステップS2において、所定の時間が経過したと判定されると、積算ユニット42では、積算値Snが「0」に設定される(ステップS3)。一方、測定ユニット41では、測定される検出電圧Viが「所定の回数」(10回)の最初の検出電圧V1に設定される(ステップS4)。
【0029】
図1に示される制御部4では、パルス電圧の印加が開始される(ステップS5)。これにより、制御部4のパルス電圧出力端子からパルス電圧が電極部2の駆動電極20へ供給され、駆動電極20にパルス電圧が印加される(図2の時間t11参照)。
駆動電極20にパルス電圧が印加されると、例えば使用者の手との距離の変化に応じた大きさの誘起電圧が、電極部2の第1検出電極21に発生する。この誘起電圧の発生により、検出部3の第1検出回路31ではコンデンサ312の充電が開始される(ステップS6)。
そして、制御部4では、パルス電圧の印加が停止される(ステップS7)。このパルス電圧の印加の停止直後(図2の時間t12及び時間t13参照)に、コンデンサ312に充電された充電電圧が検出電圧V1として測定ユニット41により測定される(ステップS8)。なお、測定された検出電圧V1は、測定ユニット41内に記憶されてもよいし、積算ユニット42又は記憶ユニット43に記憶させてもよい。
【0030】
測定ユニット41において測定された検出電圧V1は、積算ユニット42により積算が開始される(ステップS9)。この後、コンデンサ312に充電された充電電圧は抵抗R3を介して放電される(ステップS10)。
【0031】
制御部4では、測定された検出電圧V1が「所定の回数」の検出電圧であるか否かが判定される(ステップS11)。「所定の回数」ではないと判定されると、次に測定される検出電圧Viが「検出電圧V2」に設定され(ステップS16)、ステップS5へ戻り、検出電圧V2が測定される。ステップS11では、「所定の回数」の検出電圧V10が得られるまで、測定ユニット41において検出電圧Viが測定される。
【0032】
次に、測定ユニット41において測定された「所定の回数」の検出電圧V1~検出電圧V10が積算ユニット42において積算され、積算ユニット42により「最新の積算値Sn」が生成される(ステップS12)。「最新の積算値Sn」は、順次、時系列に記憶ユニット43に複数記憶される。
そして、「基準積算値Sr」から10回目に測定され、積算された最も新しい「最新の積算値Sn」の「基準積算値Sr」に対する変化量が「所定の閾値」を超えるか否かが判定される(ステップS13)。「所定の閾値」は、前述の不等式(1)又は不等式(2)に示される例示の通り、ここでは「1%」に設定されている。
【0033】
ステップS13において、「最新の積算値Sn」の「基準積算値Sr」に対する変化量が「1%」を超えると、使用者の手が近接していると判定され、近接センサ1はオン出力される(ステップS14)。この後、検出処理を終了するか否かが判定され(ステップS15)、終了すると判定されると、本実施の形態に係る近接センサ1による被検出体の近接又は接触の検出方法が終了する。終了しないと判定されると、ステップS2へ戻る。
【0034】
一方、ステップS13において、「最新の積算値Sn」の「基準積算値Sr」に対する変化量が「1%」を超えないと判定されると、ステップS13の判断に使用された「基準積算値Sr」が更新される(ステップS17)。ここでは、記憶ユニット43に時系列に記憶された「基準積算値Sr」よりも後に記憶された積算値Sn-9が「新たな基準積算値Sr」として更新される。なお、ステップS17では、「最新の積算値Sn」が「積算値Sn-1」に、「積算値Sn-1」が「積算値Sn-2」に、…「積算値Sn-8」が「積算値Sn-9」にそれぞれ更新される。この更新が終了すると、ステップS15へ移行する。
【0035】
(作用効果)
本実施の形態に係る近接センサ1は、図1に示されるように、検出部3と、制御部4とを備える。検出部3では、被検出体、例えば使用者の手との距離に応じた検出電圧が出力される。制御部4には、検出部3から出力される検出電圧が入力される。
ここで、制御部4は、測定ユニット(測定手段)41と、積算ユニット(積算手段)42と、記憶ユニット(記憶手段)43と、判定ユニット(判定手段)44とを含んで構成される。測定ユニット41では、所定の期間毎に所定の回数の検出電圧が測定される。積算ユニット42では、所定の回数の検出電圧が積算されて積算値が生成される。記憶ユニット43では、積算値が時系列に記憶される。判定ユニット44では、記憶ユニット43に記憶された積算値を基準積算値Srとし、積算ユニット41により生成された最新の積算値Snの基準積算値Srに対する変化量が所定の閾値を超えるとき、被検出体の近接が判定される(図4のステップS13)。
【0036】
被検出体の近接を判定する際に使用される「変化量」は、積算ユニット42により所定の回数の検出電圧を積算して生成された積算値の変化量とされ、1回の測定による検出電圧の変化量に比し、大きな値になる。加えて、基準積算値Sr、最新の積算値Snのそれぞれでは、所定の回数の検出電圧が積算されるので、検出電圧に乗るノイズを最終的に相殺することができる。
このため、近接センサ1では、被検出体の近接の判断に使用される「所定の閾値」が小さくなっても、誤検出を効果的に抑制又は防止することができる。加えて、近接センサ1では、上記「所定の閾値」を小さくすることができるので、検出距離を長くすることができる。
【0037】
また、近接センサ1では、図1に示される記憶ユニット43は、積算ユニット42により生成された積算値を時系列に複数記憶する(図3参照)。そして、近接センサ1では、判定ユニット44は、図3及び図4に示されるように、最新の積算値Snよりも複数前、ここでは10回前に記憶ユニット43に記憶された積算値Sn-10を基準積算値Srとして、被検出体の近接を判定する(ステップS13)。
このため、最新の積算値Snはその直前の積算値(ここでは積算値Sn-1)よりも前に記憶ユニット43に記憶された基準積算値Sr(ここでは積算値Sn-10)と比較されることにより、被検出体の近接による検出電圧の緩やか変化を検出することができる。少し詳しく説明すると、図3に示されるように、最新の積算値Snとその直前の積算値とが比較される場合、変化量が小さく、被検出体の近接の判定が難しい。これに対して、最新の積算値Snと基準積算値Srとしての積算値Sn-10とが比較される場合、変化量が大きく、被検出体の近接の判定が容易になると共に、双方の間の積算値Sn-9~積算値Sn-1が生成されるので、積算値の経時的な変化も検出することができる。
【0038】
さらに、近接センサ1では、図1に示される制御部4は、最新の積算値Snを積算値Sn-1として記憶ユニット43に記憶する。すると、図4に示されるように、制御部4では、基準積算値Sr(積算値Sn-10)よりも後に記憶された積算値Sn-9が新たな基準積算値Srとして更新される(ステップS17)。
このため、近接センサ1では、最新の積算値Snの生成毎に、新たな基準積算値Srが更新されるので、温度変化、降雨等の周囲の環境変化が生じても、この環境変化に対応した基準積算値Srを設定することができる。従って、近接センサ1では、環境変化に影響を受け難く、誤検出を効果的に抑制又は防止することができ、更に検出距離を長くすることができる。
【0039】
また、近接センサ1では、図1に示される制御部4は、最新の積算値Snの基準積算値Srに対する変化量が所定の閾値を超えるとき、最新の積算値Snを新たな基準積算値Srとして更新しない(図4のステップS13)。変化量が所定の閾値を超えるときに基準積算値Srが更新されると、被検出体の近接状態が新たな基準積算値Srとなり、誤検出の要因となる。このため、変化量が所定の閾値を超えるときに新たな基準積算値Srを更新しない設定とされるので、近接センサ1では、誤検出を効果的に抑制又は防止することができる。
【0040】
さらに、近接センサ1は、図1に示されるように、電極部2を備える。電極部2は、制御部4からパルス電圧が印加される駆動電極20と、パルス電圧の印加により誘起電圧が発生する検出電極21及び検出電極22とを含んで構成される。
加えて、近接センサ1の検出部3は、第1検出回路31にコンデンサ312、第2検出回路32にコンデンサ322を有する。コンデンサ312、コンデンサ322のそれぞれは誘起電圧の発生により充電される。そして、検出電圧は、コンデンサ312、コンデンサ322のそれぞれに充電された充電電圧とされる。
つまり、近接センサ1における近接又は接触の検出方法は、まず電極部2の駆動電極20にパルス電圧を印加する。このパルス電圧の印加により、駆動電極20と検出電極21又は検出電極22との間に電界が発生する。この電界の発生により、検出電極21又は検出電極22に誘起電圧が発生する。誘起電圧は被検出体の近接によって変化する。この誘起電圧の変化に応じて、検出部3のコンデンサ312又はコンデンサ322が充電される。この充電電圧は検出電圧として測定される。
このような検出方法を採用する近接センサ1によれば、降雨等の液体の付着による影響を受け難いので、検出精度を更に向上させることができる。
【0041】
また、近接センサ1では、制御部4の測定ユニット41における例えば検出電圧V1を測定する所定の期間が、図2に示されるように、パルス電圧の印加の開始(時間t11)から、検出部3のコンデンサ312の充電電圧の放電開始(時間t14)までの期間とされる。検出電圧V2~検出電圧V10のそれぞれを測定する所定の期間は、同様の期間である。
このため、検出電圧V1~検出電圧V10のそれぞれは、毎回、パルス電圧が印加されて、コンデンサ312が十分に充電された状態において測定されるので、検出電圧V1~検出電圧V10のそれぞれの測定のばらつきを効果的に抑制することができる。
【0042】
(その他の実施の形態)
本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。例えば、上記近接センサは、車両のキーレスエントリー装置やドア開閉装置の構築に限定されるものではなく、建造物のキーレスエントリー装置やドア開閉装置を構築してもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 近接センサ
2 電極部
20 駆動電極
21 第1検出電極(検出電極)
22 第2検出電極(検出電極)
3 検出部
31 第1検出回路
312、322 コンデンサ
32 第2検出回路
4 制御部
41 測定ユニット(測定手段)
42 積算ユニット(積算手段)
43 記憶ユニット(記憶手段)
44 判定ユニット(判定手段)
図1
図2
図3
図4