(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-20
(45)【発行日】2023-06-28
(54)【発明の名称】ポンプ
(51)【国際特許分類】
B65D 83/00 20060101AFI20230621BHJP
B65D 47/34 20060101ALI20230621BHJP
【FI】
B65D83/00 K
B65D47/34 200
(21)【出願番号】P 2018244405
(22)【出願日】2018-12-27
【審査請求日】2021-12-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】502356517
【氏名又は名称】王子コンテナー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】514111403
【氏名又は名称】誠和産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074181
【氏名又は名称】大塚 明博
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】奥出 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】野田 貴治
(72)【発明者】
【氏名】槐 武信
(72)【発明者】
【氏名】太田 隆男
(72)【発明者】
【氏名】中村 圭太
(72)【発明者】
【氏名】田中 康教
(72)【発明者】
【氏名】中津 和章
(72)【発明者】
【氏名】藤本 正義
【審査官】宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3188806(JP,U)
【文献】特開2017-105499(JP,A)
【文献】特開2007-308181(JP,A)
【文献】特開2015-212168(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 83/00-83/76
B65D 47/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
破断可能なフィルムで封止された穴を有する容器内の液体を圧送するポンプであって、 直線状の軸に沿って延在し、前記フィルムを貫通した状態で一端部が前記容器内に配置されるとともに他端部が前記容器外に配置され、前記一端部に形成された吸込口から前記液体を吸い込む管部と、
前記他端部に接続され、前記吸込口から吸い込まれた前記液体を吐出するノズル部と、を備え、
前記一端部は、錐状であって前記軸に対して回転対称に配置された複数の前記吸込口を有し、前記フィルムを破断させる先端が前記軸上に位置し、
前記吸込口は、その下縁側端面が、前記管部の内側開口縁部から外側開口縁部に向かって前記軸に沿った略垂直面に形成され、外側開口縁部の下縁側が内側開口縁部の下縁側から前記一端部の先端に向かうにつれて広がっていることを特徴とする、ポンプ。
【請求項2】
前記一端部が、円錐面状の外面を有し、
前記吸込口が、前記軸の方向から見て環状扇形である
ことを特徴とする、請求項1に記載のポンプ。
【請求項3】
前記管部が、前記他端部から前記軸と離隔する方向に突設された鍔状のフランジ部を有する
ことを特徴とする、請求項1または2に記載のポンプ。
【請求項4】
前記フィルムに対向する方向から前記容器に被せられるケースに固定され、
前記管部は、前記ケースが前記容器に被せられるときに、前記軸が前記穴を通るとともに前記フィルムと直交するように配置されている
ことを特徴とする、請求項1~3の何れか1項に記載のポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムで穴を封止された容器内の液体を圧送するポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シャンプーやリンス等の液体を取り出し可能に収容するディスペンサーにおいて、液体(内容物)を収容した容器を差し替え可能に内蔵させることが提案されている。すなわち、液体の消耗時に、液体を詰め替える作業に代えて、液体を収容した容器自体を差し替えるようにしたものである。
【0003】
このような差し替えに対応した容器は、例えば特許文献1に記載されるように、破断可能なフィルムで封止された穴を有し、ディスペンサーへの内蔵時にこのフィルムがポンプの管部(吸い込み管)で突き破られるように構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述したようなポンプの管部は、内容物の粘度によっては吸い上げにくい問題があった。
【0006】
本件のポンプは、前述したような課題に鑑みて創案されたものであり、内容物を吸い上げやすくすることを目的の一つとする。なお、この目的に限らず、後述する「発明を実施するための形態」に示す各構成から導き出される作用及び効果であって、従来の技術では得られない作用及び効果を奏することも、本件の他の目的として位置付けることができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)ここで開示するポンプは、破断可能なフィルムで封止された穴を有する容器内の液体を圧送するポンプであって、直線状の軸に沿って延在し、前記フィルムを貫通した状態で一端部が前記容器内に配置されるとともに他端部が前記容器外に配置され、前記一端部に形成された吸込口から前記液体を吸い込む管部と、前記他端部に接続され、前記吸込口から吸い込まれた前記液体を吐出するノズル部と、を備え、前記一端部は、錐状であって前記軸に対して回転対称に配置された複数の前記吸込口を有し、前記フィルムを破断させる先端が前記軸上に位置し、前記吸込口は、その下縁側端面が、前記管部の内側開口縁部から外側開口縁部に向かって前記軸に沿った略垂直面に形成され、外側開口縁部の下縁側が内側開口縁部の下縁側から前記一端部の先端に向かうにつれて広がっていることを特徴としている。
【0008】
(2)前記一端部が、円錐面状の外面を有し、前記吸込口が、前記軸の方向から見て環状扇形であることが好ましい。
【0009】
(3)前記管部が、前記他端部から前記軸と離隔する方向に突設された鍔状のフランジ部を有することが好ましい。
(4)前記ポンプは、前記フィルムに対向する方向から前記容器に被せられるケースに固定され、前記管部は、前記ケースが前記容器に被せられるときに、前記軸が前記穴を通るとともに前記フィルムと直交するように配置されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
開示のポンプによれば、内容物の吸い上げやすさを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一実施形態に係るポンプが適用されたディスペンサーを分解して示す部分断面図である。
【
図3】
図1のポンプの管部を先端側から軸方向に見た図である。
【
図5】
図1のディスペンサーに適用されたケースの斜視図である。
【
図6】
図1のディスペンサーに適用された台座の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、実施形態としてのポンプについて説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0013】
[1.構成]
(ディスペンサー)
本実施形態に係るポンプ2は、
図1に示すディスペンサー1に適用される。ディスペンサー1は、シャンプーやリンス等の液体を取り出し可能に入れておくためのものであって、その内部には、所定の液体(内容物)を収容する容器10が差し替え可能に配置される。以下、ディスペンサー1の使用時の姿勢(
図1に示す姿勢)を基準として上下方向を定める。
【0014】
本実施形態では、容器10がいわゆるゲーブルトップ型の紙パックである場合を例示する。容器10は、切妻屋根型の底部11と、底部11に対向する矩形状の頂部12と、底部11と頂部12との間に形成された四角筒状の側部13とを有する。以下、側部13の外面を「容器10の外周面」ともいう。容器10は、頂部12を上方に向けた姿勢(通常の紙パックとは上下が逆の姿勢)でディスペンサー1に内蔵される。
【0015】
容器10は、頂部12に穿設された穴14を有する。穴14は、容器10内の液体を取り出すための取出口であって、例えば円形状に形成され、容器10と同軸上(頂部12の中心位置)に設けられる。穴14は、破断可能なフィルム15で封止される。フィルム15は、例えば、ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリエステル,セロファンで形成され、上下方向と直交する方向に延在する。
【0016】
ディスペンサー1は、容器10内の液体を加圧して排出するためのポンプ2と、容器10を被覆するように設けられるケース3と、容器10を載置するための台座4とを備えている。以下、これらのポンプ2,ケース3,台座4について順に説明する。
【0017】
(ポンプ)
ポンプ2は、容器10内の液体を吸い上げる管部21と、管部21で吸い上げられた液体を吐出するノズル部22と、管部21とノズル部22との間でピストン運動可能に設けられたピストン部23と、ケース3に固定される固定部24とを備えている。管部21,ノズル部22及びピストン部23の内部は連通している。本実施形態のポンプ2は、容器10内の液体を、ピストン部23のピストン運動に応じて管部21からノズル部22へ圧送し、ノズル部22から排出する。
【0018】
管部21は、直線状の軸(軸心)Cに沿って延在する。本実施形態の管部21は、ポンプ2と一体化されたケース3が容器10に被せられるときに、軸Cが容器10の穴14を通るとともにフィルム15と直交するように配置されている。管部21は、ディスペンサー1の使用時には、容器10のフィルム15を貫通した状態で配置され、軸Cが上下方向に沿う姿勢とされる。なお、本実施形態の管部21は、全ての部位が所定の型で一体に形成されたものである。
【0019】
図2に示すように、管部21は、ディスペンサー1の使用時に、その下端部(一端部)21aが容器10内に配置され、その上端部(他端部)21bが下端部21aよりも上方で容器10外に配置される。管部21による液体の吸い上げ方向を基準とすると、下端部21aは上流側の端部であって、上端部21bは下流側の端部である。
【0020】
下端部21aは、容器10のフィルム15を突き破る機能と、管部21内に液体を吸い込む機能とを併せもつ。下端部21aは、容器10のフィルム15を破断させるために錐状に形成される。すなわち、下端部21aは、その先端21tに近づくにつれて細くなる形状である。本実施形態の下端部21aは、円錐面状の外面を有する。また、下端部21aの先端21tは、軸C上に位置する。下端部21aの先端21tは、ケース3が容器10に被せられるときに、容器10の穴14を通り、フィルム15を破断させる。
【0021】
管部21の下端部21aには、管部21内に液体を吸い込むための吸込口21hが形成される。
図3に示すように、本実施形態の下端部21aは、軸Cに対して回転対称に配置された複数の吸込口21hを有する。ここでは、下端部21aが五つの吸込口21hを有する場合を例示する。各吸込口21hは、軸Cの方向から見て環状扇形(annular sector)である。なお、環状扇形とは、アニュラス(二つの同心円で囲まれる領域)のうち、その径方向に延びる二つの直線で挟まれた部分の形状に相当する。
【0022】
吸込口21hは、具体的には、下端部21aの壁部に貫設された穴である。
図4に示すように、吸込口21hは、管部21の内側から外側にいくにつれて広がっている。すなわち、吸込口21hは、管部21の内側から見た場合の開口面積A1よりも、管部21の外側から見た場合の開口面積A2のほうが大きい形状とされている。本実施形態の管部21は、型抜き形成されるため、吸込口21hの下枠をなす面は軸Cと平行であり、
すなわち、吸込口21hの下縁側端面が、管部21の内側開口端部から外側開口端部に向かって軸Cに沿った略垂直面に形成されており、外側開口縁部の下縁側が内側開口縁部の下縁側から前記一端部の先端に向かうにつれて広がっている(図4参照)。また、吸込口21hの上枠をなす面は軸Cと垂直である。管部21は、ピストン部23のピストン運動に応じて吸込口21hから液体を吸い込み、この液体を上端部21bからノズル部22へ向けて送給する。
【0023】
図2に示すように、本実施形態の管部21は、互いに外径が異なるとともに軸Cに沿って並設された三つの円筒状の部位21c,21d,21eを有する。以下、これらの部位21c,21d,21eを、下端部21a側から順に第一筒部21c,第二筒部21d,第三筒部21eという。第一筒部21cは、軸C上で下端部21aから上端部21bへ向かって延設されている。また、第二筒部21dは、軸C上で第一筒部21cから上端部21bへ向かって延設されている。さらに、第三筒部21eは、軸C上で第二筒部21dから上端部21bまで延設されている。
【0024】
第二筒部21dは、第一筒部21cの外径よりも大きい外径をもち、第三筒部21eは、第二筒部21dの外径よりも大きい外径をもつ。すなわち、管部21は、下端部21aから上端部21bに向かって外径が大きくなるように形成されている。本実施形態では、第一筒部21c及び第二筒部21dがそれぞれに一様な外径をもち、第三筒部21eが上端部21bに近づくにつれて次第に大きくなる外径をもつ場合を例示する。
【0025】
また、管部21は、上端部21bから軸Cと離隔する方向(すなわち、径方向の外側)に突設された鍔状のフランジ部21gを有する。フランジ部21gは、ポンプ2がケース3に取り付けられた状態では、ケース3の後述する首部31の上縁部に当接し、ケース3に対して管部21を位置決めする機能をもつ。
【0026】
ポンプ2は、固定部24がケース3の首部31に外嵌されることにより、ケース3に取り付けられる。本実施形態の固定部24には、ポンプ2をケース3の首部31に固定するための雌ねじ加工が施されている。固定部24は、ケース3の首部31の上縁部との間に管部21のフランジ部21gを挟持した状態で、ケース3の首部31に上方から螺合させられる。固定部24がケース3の首部31に固定された状態では、管部21がケース3と同軸上に配置される。
【0027】
ノズル部22は、ピストン部23を介して管部21の上端部21bに接続される。ノズル部22は、ピストン部23の動作に応じて吸込口21hから吸い込まれた液体を吐出する。なお、ノズル部22の構造は、ディスペンサー1の用途に応じて適宜設計される。例えば、ノズル部22は、液体を液状のまま吐出する構造とされてもよいし、液体を霧状や泡状にして吐出するような構造とされてもよい。
【0028】
(ケース)
図5に示すように、ケース3は、ポンプ2の固定部24が取り付けられる首部31と、首部31の下方に設けられ、容器10の外周面を囲む筒状に形成された周壁部32と、首部31及び周壁部32の間を接続する肩部33とを備えている。ケース3は、容器10を被覆可能な形状,大きさとされる。
【0029】
首部31は、周壁部32と同軸上に設けられた円筒状であって、その外周面にはポンプ2の固定部24が螺合可能な雄ねじ加工が施される。首部31の内径は、ポンプ2の管部21における第三筒部21eの最大外径よりも大きく、かつ、フランジ部21gの外径よりも小さくされる。首部31にポンプ2の固定部24が取り付けられた状態では、首部31の内側にポンプ2の管部21が配置される。また、首部31は、ディスペンサー1の使用時には(すなわち、ケース3が容器10に被せられた状態では)、容器10の上方に配置される。
【0030】
周壁部32は、容器10の全体を覆うように上下方向に立設される。周壁部32は、ケース3が容器10に被せられた状態では、容器10と同軸上に配置される。本実施形態の周壁部32は、四角筒状である。すなわち、周壁部32は、四つの板状の側面部32aが連結されて構成されている。本実施形態の側面部32aは何れも、厚みが一様な平板状である。各側面部32aの下端部には、ケース3を台座4に係止するための係止部34が設けられる。係止部34は、具体的には、側面部32aに貫設された穴であって、各側面部32aの同一箇所に形成されている。
【0031】
肩部33は、首部31の下縁部と周壁部32の上縁部との間を繋ぐ部位である。肩部33の外面は、首部31から周壁部32に向かって下降傾斜するように形成される。ケース3は、前述したように頂部12を上方に向けた姿勢の容器10に対して上方から被せられる。言い換えると、ケース3は、容器10のフィルム15に対向する方向から容器10に被せられる。
【0032】
(台座)
図6に示すように、台座4は、容器10を受ける座部41と、座部41から上方へ延設された柱部42と、座部41の下端部から外側へ突設された脚部43とを備えている。座部41は、上面視で矩形状をなす。柱部42は、上面視で座部41がなす矩形状の四隅に配設される。柱部42は、座部41に載置された容器10の姿勢が保持されるように、容器10を支持する機能をもつ。脚部43は、上面視で座部41がなす矩形を囲む枠状に形成される。脚部43は、台座4に取り付けられたケース3を下方から支持する機能をもつ。なお、ケース3が台座4に取り付けられた状態では、座部41及び柱部42がケース3の内側に位置し、脚部43がケース3の下方に位置する。
【0033】
本実施形態の台座4は、座部41の側面から外側へ突設された爪部44を備えている。爪部44は、ケース3の係止部34に内側から嵌脱可能に形成される。本実施形態では、爪部44が弾性変形することで係止部34に嵌脱するように、座部41及び脚部43が爪部44の両側において上下方向に切り欠かれている。爪部44が係止部34に入り込んだ状態では、ケース3が台座4に係止される。本実施形態では、爪部44が座部41の側面のうちの対向する二箇所に設けられている場合を例示する。なお、台座4の座部41の外周には、台座4とケース3との密閉性を高めるためのパッキン(図示略)が装着される。
【0034】
[2.容器の設置手順]
図1を参照して、ディスペンサー1内に容器10を設置する手順について説明する。この手順は、例えばディスペンサー1内の容器10を差し替える場合に実施される。ここでは、ポンプ2がケース3に予め固定(一体化)されているものとする。すなわち、ポンプ2の管部21は、ケース3(具体的には、首部31及び周壁部32)と同軸上に設けられている。
【0035】
まず、頂部12を上方に向けた姿勢の容器10を台座4に載置する。このとき、容器10の側部13の四つの角部が台座4の四つの柱部42の内側に配置されるように、容器10の周方向の向きを調節する。次に、ポンプ2が固定されたケース3を容器10と同軸上に配置したうえで、ケース3を容器10に上方から被せるように、ケース3を容器10に対して押圧する。言い換えると、ケース3を容器10と同軸上に保ちながら、ケース3を容器10に上方から近づけていく。このとき、ケース3の周壁部32の四つの角部が容器10の側部13の四つの角部の外側に配置されるように、ケース3の周方向の向きを調節する。
【0036】
ここで、ポンプ2の管部21はケース3と同軸上に設けられていることから、管部21の下端部21aの先端21tは、ケース3の軸上に位置するとともに、ケース3の軸に沿って移動する。したがって、ケース3が容器10に被せられるときに、下端部21aの先端21tは、容器10のフィルム15と直交する方向に移動し、容器10の穴14を通る。
【0037】
そして、ケース3を更に下方へ押圧すると、管部21の下端部21aの先端21tが容器10のフィルム15に当たり、フィルム15が下方に押される。ここで先端21tがフィルム15から受ける反力(抵抗力)は、管部21の軸C上で作用する。すなわち、フィルム15から管部21にかかる反力の作用点は、軸C上に位置する。その後、先端21tからフィルム15に所定以上の力が作用すると、フィルム15が破れる。これに伴い、管部21の下端部21aがフィルム15を貫通して容器10内に進入する。
【0038】
ケース3を更に下方へ移動させると、管部21の下端部21aに続いて第一筒部21cがフィルム15を貫通する。ケース3を台座4の脚部43に当たる位置まで移動させると、四つの係止部34のうちの対向する何れか二つに対し、台座4の爪部44が内側から入り込む。これにより、ケース3が台座4に係止され、ケース3と台座4との相対移動が規制される。ディスペンサー1は、このような手順で容器10が内蔵された後、使用可能な状態となる。
【0039】
なお、例えば容器10内の液体が消耗した場合に、ディスペンサー1から容器10を取り除くには、台座4の爪部44を内側に押し込んで係止部34から脱離させ、ケース3を上方へ引き上げることでケース3と容器10とを台座4から同時に取り外せばよい。 また、このように容器10が取り除かれたディスペンサー1に対し、液体が充填された(新品の)容器10を前述した手順で再び設置すれば、容器10の差し替え作業が完了する。
【0040】
[3.作用,効果]
前述したポンプ2によれば、以下のような作用,効果を得ることができる。
(1)管部21の下端部21aには複数の吸込口21hが軸Cに対して回転対称に配置されているため、これらの吸込口21hを通じて下端部21aの周囲からバランスよく液体を吸い込むことができる。よって、ポンプ2による液体の圧送量を増やしやすくすることができる。また、複数の吸込口21hを設けることで、これらの吸込口21hの間に形成される肉部により下端部21aの剛性低下を抑えることができるとともに、吸込口21hの合計の開口面積を増やしやすくすることができる。よって、管部21の下端部21aの剛性を維持しつつ、圧送量を増やしやすくすることができる。したがって、粘度が低い液体を圧送する場合に限らず、粘度が高い液体を圧送する場合であっても、その圧送量を確保しやすくすることができる。このように、ポンプ2によれば、内容物の吸い上げやすさを向上させることができる。
【0041】
(2)管部21の下端部21aが円錐面状の外面を有する場合、吸込口21hを軸Cの方向から見て環状扇形に形成することで、吸込口21hの開口面積を効率よく確保することができる。したがって、ポンプ2による液体の圧送量をより増やしやすくすることができる。このため、例えば粘度が高い液体であっても、その圧送量をより確保しやすくすることができる。
【0042】
(3)管部21が上端部21bから軸Cと離隔する方向に突設された鍔状のフランジ部21gを有するため、管部21をケース3の首部31に上方から差し込んだ場合に、フランジ部21gが首部31の上縁部に当たることで管部21の位置を規制することができる。すなわち、管部21をケース3に取り付ける場合に、管部21が首部31を通過して落下することが防止されるため、管部21の取り付け性を向上させることができる。
【0043】
(4)吸込口21hが管部21の内側から外側にいくにつれて広がっているため、液体をより円滑に吸い込むことができる。したがって、ポンプ2による液体の圧送量をより増やしやすくすることができるため、例えば粘度が高い液体であってもその圧送量をより確保しやすくすることができる。
【0044】
(5)管部21は、ポンプ2を固定されたケース3が容器10に被せられるときに、軸Cが容器10の穴14を通るとともにフィルム15と直交するように配置されている。このため、ケース3を容器10に被せるときに、管部21の下端部21aの先端21tが軸Cに沿って下方へと移動し、容器10の穴14でフィルム15を貫通することから、フィルム15をより適切に且つより容易に破断させることができる。また、このように管部21の位置が調節されたポンプ2を予めケース3に固定しておき、このケース3を容器10に被せることで、容器10にケース3を取り付ける作業に連動して管部21をフィルム15に貫通させることができる。よって、ディスペンサー1に容器10を内蔵させる作業を簡略化することができる。
【0045】
[4.変形例]
以下、本実施形態の変形例について述べる。
前述した吸込口21hの個数は一例である。吸込口21hは、少なくとも二つあればよく、その形状及びサイズは特に限定されない。ただし、吸込口21hの個数が少なく且つそのサイズが大きいと、下端部21aに設けられる肉部が小さくなることから、下端部21aの剛性低下を招く虞がある。このため、吸込口21hの個数は、四つ又は五つであることが好ましい。また、吸込口21hの形状及びサイズは、下端部21aの形状や容器10内に収容される液体の粘度などを考慮して設定されることが好ましい。
【0046】
容器10は、前述したゲーブルトップ型の紙パックに限定されず、例えば、直方体形状の紙パック(いわゆるブリックパック)であってもよいし、紙以外の材料で形成されたものであってもよい。ケース3の係止部34は、少なくとも台座4の爪部44の個数分だけ設けられればよい。ただし、前述したようにケース3の側面部32aのそれぞれに係止部34が設けられていれば、台座4に載置された容器10にケース3を被せた場合に、ケース3の周方向の向きに関わらず係止部34を爪部44に係止させることができる。このため、台座4に対するケース3の取り付けを容易にすることができる。
【符号の説明】
【0047】
2 ポンプ
3 ケース
10 容器
14 穴
15 フィルム
21 管部
21a 下端部(一端部)
21b 上端部(他端部)
21g フランジ部
21h 吸込口
21t 先端
22 ノズル部
C 管部の軸(軸心)