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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-20
(45)【発行日】2023-06-28
(54)【発明の名称】切削加工システム
(51)【国際特許分類】
   B23Q 17/24 20060101AFI20230621BHJP
   B23Q 17/09 20060101ALI20230621BHJP
   B23Q 17/00 20060101ALI20230621BHJP
   G05B 19/18 20060101ALI20230621BHJP
【FI】
B23Q17/24 A
B23Q17/09 C
B23Q17/00 D
B23Q17/00 A
G05B19/18 X
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019014513
(22)【出願日】2019-01-30
(65)【公開番号】P2020121369
(43)【公開日】2020-08-13
【審査請求日】2021-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】317009525
【氏名又は名称】DGSHAPE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(72)【発明者】
【氏名】花島 正樹
(72)【発明者】
【氏名】大▲高▼ 全
(72)【発明者】
【氏名】峰野 洋介
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-022108(JP,A)
【文献】国際公開第2019/008855(WO,A1)
【文献】特開2008-011056(JP,A)
【文献】特開昭60-062442(JP,A)
【文献】米国特許第05086590(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0177119(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03348350(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 13/00
B23Q 17/00-23/00
B26D 5/00-5/42
G05B 19/18
G05B 23/02
H04N 5/77
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物が切削される切削空間が形成された本体、および、制御装置を有する切削加工機と、
前記切削空間内の切削動画を撮影する撮影装置と、
表示画面と、前記制御装置および前記撮影装置と通信可能に接続された通知制御装置と、を有するエラー通知装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記被加工物が切削されているときに発生したエラーを検出するエラー検出部と、
前記エラー検出部によってエラーを検出したとき、前記通知制御装置にエラー情報を送信する送信部と、
を備え、
前記通知制御装置は、
前記切削加工機の切削中に、前記撮影装置によって撮影された前記切削動画を記録する記録部と、
前記送信部によって送信された前記エラー情報を受信する受信部と、
前記受信部が前記エラー情報を受信したときの受信時刻を基準とした所定のエラー記録時間の動画をエラー動画としたとき、前記撮影装置によって撮影されている前記切削動画から前記エラー動画を抽出する抽出部と、
前記抽出部によって抽出された前記エラー動画を前記表示画面に表示する表示部と、
を備え
前記エラー記録時間は、
前記受信時刻よりも前のエラー前時間と、
前記受信時刻よりも後のエラー後時間と、
を有し、
前記切削加工機で発生するエラーは、
前記エラー検出部によってエラーが検出されるタイミングと、前記切削加工機でエラーが発生したタイミングとが同じである同時エラーと、
前記エラー検出部によってエラーが検出されるタイミングよりも前に、前記切削加工機でエラーが発生している事後エラーと、
を有し、
前記通知制御装置は、前記受信部によって受信された前記エラー情報に基づいて、前記切削加工機で発生したエラーが前記同時エラーか前記事後エラーかを判定する判定部を備え、
前記抽出部は、前記判定部によって前記切削加工機で発生したエラーが前記同時エラーであると判定された場合、前記エラー前時間を所定の第1の前時間に設定した前記エラー動画を抽出し、
前記抽出部は、前記判定部によって前記切削加工機で発生したエラーが前記事後エラーであると判定された場合、前記エラー前時間を前記第1の前時間よりも長い所定の第2の前時間に設定した前記エラー動画を抽出する、切削加工システム。
【請求項2】
前記表示部は、前記エラー動画と共に、前記受信部によって受信した前記エラー情報に基づいたエラーメッセージを前記表示画面に表示する、請求項1に記載された切削加工システム。
【請求項3】
前記切削加工機は、
棒状の加工ツールを把持するツール把持部と、前記ツール把持部を回転させるスピンドルとを有し、前記切削空間に配置された切削機構と、
前記切削空間に配置され、前記ツール把持部に把持された前記加工ツールが接触可能なツールセンサと、
を備え、
前記制御装置は、前記ツール把持部に把持された前記加工ツールの軸方向の長さである判定長さが記憶された記憶部を備え、
前記エラー検出部は、前記ツール把持部に把持された前記加工ツールを前記ツールセンサに接触させたときの前記切削機構の位置から、前記加工ツールの軸方向の実際の長さである実長さを算出し、前記実長さが前記判定長さよりも短いとき、前記加工ツールが折れているというツール折れエラーが発生したことを検出し、
前記ツール折れエラーは、前記事後エラーである、請求項1または2に記載された切削加工システム。
【請求項4】
前記切削加工機は、
前記切削空間に配置され、前記被加工物を切削する切削機構と、
前記切削空間に配置され、前記被加工物を支持する支持機構と、
前記切削機構と前記支持機構に支持された前記被加工物とを相対的に移動させる移動機構と、
を備え、
前記制御装置は、
切削プログラムが保存された切削ファイルが記憶された記憶部と、
前記切削プログラムに基づいて前記被加工物を切削するように、前記切削機構、前記支持機構および前記移動機構を制御する切削制御部と、
を備え、
前記記録部は、前記切削ファイルに保存された前記切削プログラムごとに、前記切削動画を記録する、請求項1からまでの何れか1つに記載された切削加工システム。
【請求項5】
他の被加工物が切削される他の切削空間が形成された他の本体、および、他の制御装置を有する他の切削加工機と、
前記他の切削空間内の他の切削動画を撮影する他の撮影装置と、
を備え、
前記通知制御装置は、前記他の切削加工機および前記他の撮影装置と通信可能に接続され、
前記他の制御装置は、
前記他の被加工物が切削されているときに発生したエラーを検出する他のエラー検出部と、
前記他のエラー検出部によってエラーを検出したとき、前記通知制御装置に他のエラー情報を送信する他の送信部と、
を備え、
前記記録部は、前記他の撮影装置によって撮影された前記他の切削動画を記録し、
前記受信部は、前記他の送信部によって送信された前記他のエラー情報を受信し、
前記抽出部は、前記受信部が前記他のエラー情報を受信したときの他の受信時刻を基準とした所定の他のエラー記録時間の動画を他のエラー動画としたとき、前記他の撮影装置によって撮影されている前記他の切削動画から前記他のエラー動画を抽出し、
前記表示部は、前記抽出部によって抽出された前記他のエラー動画を前記表示画面に表示する、請求項1からまでの何れか1つに記載された切削加工システム。
【請求項6】
前記表示画面は、携帯型端末のディスプレイである、請求項1からまでの何れか1つに記載された切削加工システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削加工システムに関する。詳しくは、本発明は、切削加工機と、撮影装置と、エラー通知装置とを備えた切削加工システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、セラミックまたは樹脂などの所定の材料によって成型された被加工物を所望の形状に切削することで、対象物を作製する切削加工機が開示されている。特許文献1に開示された切削加工機は、棒状の加工ツールを用いて、加工ツールを軸方向に回転させながら、加工ツールと被加工物との相対的な位置を変更することで、被加工物を切削する。その結果、所望の対象物を作製することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-120222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記切削加工機において、切削中にエラーが発生することがあり得る。利用者は、切削中において継続して切削の様子を目視しているとは限らない。そのため、切削加工機にエラーが発生したときに、利用者は、発生したエラーを事後的に知ることがあった。よって、利用者は、どのような状況でエラーが発生したかが分からないことがあった。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、切削加工機を備えた切削加工システムにおいて、切削加工機にエラーが発生したときに、エラーの発生状況を確認することが可能な切削加工システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る切削加工システムは、切削加工機と、撮影装置と、エラー通知装置とを備えている。前記切削加工機は、被加工物が切削される切削空間が形成された本体、および、制御装置を有する。前記撮影装置は、前記切削空間内の切削動画を撮影する。前記エラー通知装置は、表示画面と、前記制御装置および前記撮影装置と通信可能に接続された通知制御装置と、を有する。前記制御装置は、前記被加工物が切削されているときに発生したエラーを検出するエラー検出部と、前記エラー検出部によってエラーを検出したとき、前記通知制御装置にエラー情報を送信する送信部と、を備えている。前記通知制御装置は、記録部と、受信部と、抽出部と、表示部とを備えている。前記記録部は、前記切削加工機の切削中に、前記撮影装置によって撮影された前記切削動画を記録する。前記受信部は、前記送信部によって送信された前記エラー情報を受信する。前記抽出部は、前記受信部が前記エラー情報を受信したときの受信時刻を基準とした所定のエラー記録時間の動画をエラー動画としたとき、前記撮影装置によって撮影されている前記切削動画から前記エラー動画を抽出する。前記表示部は、前記抽出部によって抽出された前記エラー動画を前記表示画面に表示する。
【0007】
前記切削加工システムによれば、切削加工機が切削中のときに、切削が行われている切削空間の切削動画が撮影されている。このような状態で、切削加工機にエラーが発生した場合、エラー通知装置の受信部がエラー情報を受信した受信時刻を基準としたエラー動画を、切削動画から抽出する。このエラー動画には、エラーが発生したときの状況を示す動画が含まれている。よって、利用者は、表示画面に表示されたエラー動画を見ることで、エラーが発生した状況を確認することができる。このように、エラーの発生状況を確認することで、発生したエラーに適した対策を講じることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、切削加工機にエラーが発生したときに、エラーの発生状況を確認することが可能な切削加工システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る切削加工システムの概念図である。
図2】切削加工機の斜視図である。
図3】切削加工機の正面図であり、カバーを開けた状態を示す図である。
図4】ツールマガジン、回転支持部材およびクランプの斜視図である。
図5】切削加工システムのブロック図である。
図6】表示画面を示す図である。
図7】同時エラーおよび事後エラーにおいて、エラーの発生のタイミングとエラーを検出するタイミングとの関係を示すタイムチャートである。
図8】同時エラーおよび事後エラーにおいて、エラー動画の時間を示すタイムチャートである。
図9】エラー発生時にエラー動画を表示画面に表示する手順を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態に係る切削加工システムについて説明する。なお、ここで説明される実施の形態は、当然ながら本発明を特に限定することを意図したものではない。
【0011】
図1は、本実施形態に係る切削加工システム1の概念図である。図1に示すように、切削加工システム1は、切削加工機100と、撮影装置110と、エラー通知装置120とを備えている。切削加工システム1は、切削加工機100にエラーが発生した際、撮影装置110によって撮影されたエラー動画EM1(図6参照)を、エラー通知装置120を通じて利用者に提供するシステムである。
【0012】
本実施形態に係る切削加工機100の数、および、撮影装置110の数は特に限定されない。切削加工機100および撮影装置110は、それぞれ1つであってもよいし、複数であってもよい。本実施形態に係る切削加工システム1において、切削加工機100の数、および、撮影装置110の数は、それぞれ4つである。ここでは、1つの切削加工機100につき、1つの撮影装置110が設けられている。ただし、1つの切削加工機100に対して複数の撮影装置110が設けられていてもよい。以下、各装置について説明する。
【0013】
まず、切削加工機100について説明する。図2は、切削加工機100の斜視図である。図3は、切削加工機100の正面図であり、カバー12を開けた状態を示す図である。図4は、後述するツールマガジン14、回転支持部材15およびクランプ16の斜視図である。図5は、切削加工システム1のブロック図である。以下の説明では、左方、右方とは、切削加工機100の正面にいる利用者から見た左方、右方をそれぞれ意味する。また、後述するが、切削加工機100の底壁21(図2参照)は、上記利用者から見て手前から奥に向かうにしたがって下方に傾斜している。そこで、本実施形態では、底壁21に沿って切削加工機100が上記利用者に近づく方を前方とし、底壁21に沿って切削加工機100が上記利用者から遠ざかる方を後方とする。また、底壁21に直交する方向において、上を上方、下を下方とする。なお、図面中のF、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を意味する。
【0014】
本実施形態では、切削加工機100は、互いに直交する軸をX軸、Y軸、Z軸としたとき、X軸とY軸とで構成される平面に配置されている。X軸は左右方向に延びた軸であり、Y軸は前後方向に延びた軸であり、Z軸は上下方向に延びた軸である。また、図面中の符号θx、θy、θzは、それぞれX軸回り、Y軸回り、Z軸回りの回転方向を示している。ただし、上記方向は、説明の便宜上定めた方向に過ぎず、切削加工機100の設置態様を何ら限定するものではなく、本発明を何ら限定するものでもない。
【0015】
本実施形態に係る4つの切削加工機100は、同じ構成である。そのため、以下では、1つの切削加工機100の構成について説明し、他の切削加工機100の構成に関する説明は省略する。ただし、4つの切削加工機100のうち一部または全部の切削加工機100の構成は、異なっていてもよい。また、切削加工機100は、いわゆるディスクチェンジャー付きの切削加工機であってもよい。なお、ディスクチェンジャーとして、従来公知のものを採用することができる。ディスクチェンジャーとして、例えば特開2018-89763号公報に記載された被加工物搬送装置を採用することができる。
【0016】
切削加工機100は、被加工物5(図4参照)を切削することで、対象物を作製する。切削加工機100の構成は、特に限定されない。ここでは、図2に示すように、切削加工機100は、本体11と、カバー12と、切削機構13(図3参照)と、ツールマガジン14(図4参照)と、回転支持部材15と、クランプ16(図4参照)とを備えている。
【0017】
本体11は、箱状に形成されており、内部に空間を有している。この空間が切削空間26である。切削空間26は、被加工物5が切削される空間である。図3に示すように、本体11の前部は開口している。図2に示すように、本体11は、底壁21と、左壁22と、右壁23と、後壁24と、上壁25とを有している。底壁21は、図示は省略するが、前方から後方に向かって下方に傾斜している。左壁22、右壁23、後壁24は、それぞれ底壁21の左端、右部、後端から上方に向かって延びている。上壁25は、左壁22、右壁23および後壁24のそれぞれの上端に接続されており、底壁21の上方に配置されている。ここでは、底壁21、左壁22、右壁23および上壁25に取り囲まれることによって開口28(図3参照)が形成されている。
【0018】
図3に示すように、カバー12は、左壁22の前端および右壁23の前端に沿って上下方向に移動することによって開閉自在に構成されている。カバー12が上方に移動することで、本体11の内部と外部とが連通される。カバー12には窓部12aが設けられている。利用者は窓部12aから切削空間26を視認することができる。本実施形態では、底壁21、左壁22、右壁23、後壁24、上壁25およびカバー12によって囲まれた空間が、切削空間26である。
【0019】
切削機構13は、加工ツール8を使用して被加工物5を切削するものである。切削機構13は、加工ツール8を回転させながら被加工物5に接触させることで、被加工物5を切削する。ここでは、切削機構13は、スピンドル31と、ツール把持部32とを有している。スピンドル31は、ツール把持部32と共に加工ツール8を回転させるものである。スピンドル31は、上下方向に延びており、Z軸周りθzに回転可能に構成されている。ツール把持部32は、加工ツール8を把持するものであり、スピンドル31に設けられている。詳しくは、ツール把持部32は、スピンドル31の底面に設けられている。
【0020】
本実施形態では、図5に示すように、スピンドル31には、第1駆動モータ31aが接続されている。第1駆動モータ31aが駆動することで、スピンドル31は、Z軸周りθzに回転する。スピンドル31の回転に伴い、ツール把持部32、および、ツール把持部32に把持された加工ツール8は、Z軸周りθzに回転する。また、切削機構13は、第1駆動機構13a(図5参照)によって左右方向および上下方向に移動可能に構成されている。
【0021】
図4に示すように、ツールマガジン14は、複数の加工ツール8を収容することが可能なものである。本実施形態では、ツールマガジン14は、箱状に形成されている。ツールマガジン14の上面には、加工ツール8を収容する複数の収容孔35が形成されている。加工ツール8は、その上部が露出された状態で収容孔35に挿通される。なお、収容孔35の数は特に限定されないが、ここでは、10個である。そのため、本実施形態では、ツールマガジン14には、10本の加工ツール8を収容することが可能である。ツール把持部32に把持されている加工ツール8を交換する際には、ツール把持部32に把持されている加工ツール8を収容孔35に戻す。そして、次に使用する加工ツール8の上方の位置まで切削機構13を移動させる。その後、ツール把持部32の下方に位置する加工ツール8の上端をツール把持部32が把持する。
【0022】
本実施形態では、切削加工機100は、ツールセンサ36を備えている。ツールセンサ36は、ツールマガジン14に設けられている。ツールセンサ36は、ツール把持部32によって把持された棒状の加工ツール8が接触したことを検知するセンサである。ツールセンサ36の構成は特に限定されない。本実施形態では、ツールセンサ36は、スイッチ36aを有している。スイッチ36aは、微小荷重が上方から加えられたことにより微小に変位するように構成されており、ツールセンサ36は、スイッチ36aが変位することで加工ツール8の接触を検出する。
【0023】
本実施形態では、ツールマガジン14には、回転支持部材15を回転可能に支持する第1回転軸41が設けられている。第1回転軸41は左右方向に延びており、回転支持部材15に連結している。ツールマガジン14には、第1回転軸41を回転させる第2駆動機構41a(図5参照)が設けられている。第1回転軸41は、第2駆動機構41aによってX軸回りθxに回転可能に構成されている。第1回転軸41がX軸回りθxに回転することによって、回転支持部材15はX軸回りθxに回転する。
【0024】
回転支持部材15は、クランプ16を回転可能に支持している。回転支持部材15は、平面視で、略C字形状に形成されている。回転支持部材15は、第1回転軸41を介して、ツールマガジン14と連結している。回転支持部材15は、第1部分51と、第2部分52と、第3部分53とを有している。第1部分51は、ツールマガジン14の左方に配置されており、前後方向に延びている。第2部分52は、第1部分51の後端から左方に延びている。第3部分53は、第1部分51の前端から左方に延びている。第3部分53は、第2部分52と対向している。本実施形態では、第2部分52と第3部分53との間に、クランプ16が配置されている。
【0025】
クランプ16は、被加工物5を切削する際に被加工物5を支持する部材である。被加工物5は、加工ツール8によって切削されるものである。被加工物5が切削されることで、所望の対象物が作製される。本実施形態では、被加工物5は、対象物の材料となる対象材料によって形成されている。なお、被加工物5の形状、および、対象材料は特に限定されない。本実施形態では、被加工物5の形状は、円盤形状である。例えば、被加工物5を形成する対象材料は、セラミック、樹脂などである。本実施形態では、被加工物5には、図示しないアダプタが取り付けられている。
【0026】
クランプ16は、上記アダプタを支持し、上記アダプタを介して被加工物5を支持する。例えばクランプ16は、被加工物5の形状の一部に対応した形状をしている。ここでは、クランプ16は、平面視において略C字形状である。本実施形態では、クランプ16によって支持された被加工物5に対して、切削が行われる。クランプ16は、回転支持部材15の第2部分52および第3部分53に回転可能に支持されている。本実施形態では、クランプ16の後部には、第2回転軸42の一端が接続されており、第2回転軸42の他端には、第2部分52が接続されている。クランプ16の前部には、第3回転軸43の一端が接続されており、第3回転軸43の他端には、第3部分53が接続されている。本実施形態では、第3部分53には、クランプ16をY軸回りθyに回転させる第2駆動モータ16a(図5参照)が設けられている。なお、本実施形態では、クランプ16は、本発明の「支持機構」に対応している。
【0027】
なお、本実施形態では、図5に示すように、切削機構13を左右方向および上下方向に移動させる第1駆動機構13aと、第1回転軸41を回転させることで、回転支持部材15およびクランプ16をX軸回りθxに回転させる第2駆動機構41aと、クランプ16をY軸回りθyに回転させる第2駆動モータ16aとによって、移動機構55が構成されている。移動機構55は、クランプ16に支持された被加工物5と、切削機構13(詳しくは、スピンドル31、ツール把持部32、および、ツール把持部32に把持された加工ツール8)とを相対的に移動させる機構である。
【0028】
図2に示すように、切削加工機100は、制御装置60を備えている。制御装置60は、被加工物5の切削に関する制御、および、切削中に切削加工機100のエラーを検出する制御をする装置である。制御装置60は、マイクロコンピュータからなっており、本体11の内部に設けられている。制御装置60は、例えば中央処理装置(CPU)と、CPUが実行するプログラムなどを格納したROMと、RAMなどを備えている。ここでは、マイクロコンピュータ内に保存されたプログラムを使用して、被加工物5の切削に関する制御、および、切削中に切削加工機100のエラーを検出する制御を行う。
【0029】
図5に示すように、制御装置60は、移動機構55および第1駆動モータ31aに通信可能に接続され、移動機構55および第1駆動モータ31aを制御する。ここでは、制御装置60は、切削機構13を移動させる第1駆動機構13a、第1回転軸41を回転させる第2駆動機構41aおよび第2駆動モータ16aに通信可能に接続され、第1駆動機構13a、第2駆動機構41aおよび第2駆動モータ16aを制御する。また、制御装置60は、ツールセンサ36に通信可能に接続され、ツールセンサ36を制御する。
【0030】
本実施形態では、制御装置60は、記憶部61と、切削制御部62と、エラー検出部64と、送信部66とを備えている。制御装置60の各部は、ソフトウェアによって構成されていてもよいし、ハードウェアによって構成されていてもよい。制御装置60の各部は、1つまたは複数のプロセッサによって実現されるものであってもよいし、回路によって組み込まれるものであってもよい。
【0031】
記憶部61には、切削プログラムPG1が記憶されている。切削加工機100は、切削プログラムPG1に基づいて、1つまたは複数の加工ツール8を使用して自動で被加工物5を切削することで、所望の対象物を作製する。この切削プログラムPG1は、いわゆるNCデータ(NCプログラム)、または、ジョブデータと呼ばれるものである。切削プログラムPG1とは、切削加工機100がどのような手順で被加工物5を切削するかを示したものである。切削プログラムPG1とは、切削機構13の動作、および、被加工物5を支持するクランプ16の動作を座標値によって定義した加工工程が複数記録されたものである。切削プログラムPG1は、例えばコンピュータ支援製造装置(以下、CAM(Computer Aided Manufacturing)装置ともいう。)によって作成されるものである。本実施形態では、CAM装置は、被加工物5を切削することで作製される対象物の形状のデータ(以下、対象物データという。)に基づいて、切削プログラムPG1を作成する。上記対象物データは、STLデータのことであり、例えばコンピュータ支援設計装置(以下、CAD(Computer Aided Design)装置ともいう。)によって作成されるデータである。
【0032】
切削プログラムPG1は、切削ファイルFL1(図5参照)に保存されている。本実施形態では、1つの切削ファイルFL1の切削プログラムPG1を実行することで、1つの被加工物5から、1つまたは複数の対象物が作製される。しかしながら、1つの切削ファイルFL1の切削プログラムPG1を実行する際の切削対象となる被加工物5の数は、1つに限定されず、複数であってもよい。
【0033】
切削制御部62は、切削ファイルFL1に保存された切削プログラムPG1に基づいて被加工物5を切削するように、切削機構13、クランプ16および移動機構55の制御を行う。本実施形態では、切削制御部62は、切削プログラムPG1の座標値に基づいて、切削機構13およびクランプ16の動作を制御する。切削制御部62は、切削機構13の動作と共に、クランプ16の動作を全体として統括的に制御する。このことによって、クランプ16に支持された被加工物5と加工ツール8との相対的な位置関係を3次元で変化させて、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向、X軸周りθx、Y軸周りθyの5軸制御による高精度な切削を実現することができる。本実施形態では、切削機構13のスピンドル31によって回転された加工ツール8の刃物部8a(図3参照)を、クランプ16に支持された被加工物5に当接させることで、被加工物5に対する切削を行うことができる。ここでは、被加工物5に対して、任意の位置に加工ツール8が任意の角度で当接されることによって、対象物が作製される。
【0034】
エラー検出部64は、被加工物5が切削されているときに発生した切削加工機100のエラーを検出する。このエラーの内容は特に限定されず、従来公知のエラーが含まれるものとする。エラーは、被加工物5を適切に切削できないときに発生するものである。エラーは、例えば加工ツール8が折れたことによるエラー(以下、ツール折れエラーという。)、ツール把持部32が加工ツール8を把持できなかったことによるエラー、スピンドル31が適切な回転数で回転しないことによるエラー、移動機構55によって切削機構13またはクランプ16が適切な位置に移動できないことによるエラーなどが含まれる。エラー検出部64は、これらのエラーを、従来公知のように機械的に検出してもよいし、撮影装置110によって撮影された動画に対して画像処理することで検出してもよい。
【0035】
以下、エラー検出部64によるエラー検出の制御の一例として、上記ツール折れエラーの検出制御について簡単に説明する。本実施形態では、複数の加工ツール8のそれぞれに対する長さ(言い換えると、加工ツール8の軸方向の長さ)である「判定長さ」が記憶部61に記憶されている。切削中において加工ツール8の使用前と使用後、すなわち、ツールマガジン14から加工ツール8を取り出した後と、加工ツール8をツールマガジン14に収容する前において、エラー検出部64は、ツール折れエラーが発生しているか否かを検出する。ここでは、エラー検出部64は、ツール把持部32によって加工ツール8を把持している状態において、加工ツール8の下端をツールセンサ36のスイッチ36aに接触させるように、移動機構55を制御する。そして、スイッチ36aに加工ツール8が接触したときの、ツール把持部32またはスピンドル31の上下方向の位置に基づいて、加工ツール8の実際の長さである実長さを算出する。
【0036】
そして、エラー検出部64は、記憶部61に記憶された加工ツール8の判定長さと、加工ツール8の実長さとを比較する。そして、加工ツール8の実長さが加工ツール8の判定長さよりも短いとき、エラー検出部64は、ツール折れエラーが発生していると判定し、エラーを検出する。
【0037】
送信部66は、切削加工機100にエラーが発生した際、そのエラーに関するエラー情報EC1をエラー通知装置120に送信する。ここでは、送信部66は、エラー検出部64によってエラーが検出されたとき、その検出されたエラーに関するエラー情報EC1をエラー通知装置120に送信する。このエラー情報EC1の内容は特に限定されない。エラー情報EC1は、例えば各エラーに関連付けられたエラーコードである。エラーコードは、エラーに関連付けられた状態で、記憶部61に予め記憶されている。ここで、エラーコードには、エラーコードに対応した信号が含まれるものとする。このエラーコードは、エラーの内容に応じて一意的に設定されたコードである。このエラーコードを知ることで、どのようなエラーが発生したかを認識することができる。
【0038】
以上、本実施形態に係る切削加工機100の構成の一例について説明した。次に、撮影装置110(図1参照)について説明する。撮影装置110は、切削加工機100の切削空間26(図3参照)内の動画を撮影するものである。ここでは、撮影装置110は、切削空間26内において、切削機構13によって加工ツール8で被加工物5を切削している様子の動画を撮影する。撮影装置110の種類は特に限定されない。例えば撮影装置110は、動画で表現される映像を撮影することが可能なカメラである。本実施形態では、図1に示すように、1つの切削加工機100に対して1つの撮影装置110が設けられている。切削加工システム1には、4つの切削加工機100が設けられているため、4つの撮影装置110が設けられている。しかしながら、1つの切削加工機100に設けられる撮影装置110の数は、1つに限定されず、2つ以上であってもよい。
【0039】
切削加工機100に対する撮影装置110の位置は特に限定されず、切削加工機100の切削空間26内において被加工物5が切削されている状態を撮影することができる位置であるとよい。被加工物5が切削されている状態を撮影することができる位置であれば、撮影装置110は、本体11内(詳しくは、切削空間26)に配置されていてもよいし、本体11の外部であって、カバー12の窓部12a(図2参照)を通じて切削空間26内を撮影できる位置に配置されていてもよい。なお、撮影装置110が本体11内に配置されている場合、撮影装置110は、被加工物5が切削されているときに発生する被加工物5の削り粉が付着し難い位置に配置されていることが好ましい。この場合、例えば撮影装置110は、切削空間26の上部に配置されているとよい。例えば1つの切削加工機100に設けられる撮影装置110の数が3つの場合、撮影装置110は、第1撮影装置と、第2撮影装置と、第3撮影装置とを備えている。この場合、第1撮影装置は、例えばクランプ16の前方に配置されている。第2撮影装置は、例えばツールマガジン14およびクランプ16よりも上方に配置されている。第3撮影装置は、例えば上記のディスクチェンジャーの状態を撮影できる位置(例えばディスクチェンジャーの上方の位置)に配置されている。
【0040】
次に、エラー通知装置120について説明する。エラー通知装置120は、切削加工機100にエラーが発生したときに、該当するエラー発生の状態を含むエラー動画EM1(図6参照)を作成し、そのエラー動画EM1を表示するものである。エラー通知装置120は、例えばパーソナルコンピュータによって実現されるものである。上記パーソナルコンピュータは、汎用コンピュータであってもよいし、エラー動画EM1を作成および表示するための専用のコンピュータであってもよい。また、エラー通知装置120は、いわゆるクライアントサーバ型の装置であってもよい。また、エラー通知装置120の一部は、いわゆるクラウド・コンピューティングであってもよい。エラー通知装置120の一部は、携帯型端末であってもよい。ここで、携帯型端末には、スマートフォンおよびタブレット端末などが含まれる。
【0041】
本実施形態では、図1に示すように、エラー通知装置120は、複数の切削加工機100、および、複数の撮影装置110と通信可能に接続されている。この接続の方法は特に限定されず、有線で接続されていてもよいし、無線で接続されていてもよい。
【0042】
図5に示すように、エラー通知装置120は、表示画面121と、操作部122と、通知制御装置123とを備えている。図6は、表示画面121の一例を示す図である。図6に示すように、表示画面121には、エラー動画EM1が表示される。表示画面121には、エラーが発生したときのエラー情報EC1(図5参照)に基づいたエラーメッセージEC2が表示されてもよい。このエラーメッセージEC2には、エラーコードや、エラーコードに基づいた文書が含まれるものとする。例えばエラーメッセージEC2には、上記エラーコードの他に、エラー発生時刻、エラーの対象を示す予め定められたパラメータ、エラーが発生した切削加工機100の種類(例えば機種名や、切削加工機100に付されたシリアル番号など)が含まれていてもよい。また、表示画面121には、切削加工機100に関する情報が表示されていてもよい。この切削加工機100に関する情報には、例えばエラー動画EM1の対象となる切削加工機100における機体情報、被加工物5の加工履歴、エラー履歴、切削加工機100で利用されている加工ツール8に関する情報、被加工物5の材料や大きさなどの情報、エラーが発生したときの切削プログラムPG1の情報などが含まれる。表示画面121の種類は特に限定されない。例えば表示画面121は、携帯型端末のディスプレイである。ただし、表示画面121は、パーソナルコンピュータのディスプレイであってもよい。
【0043】
図5に示す操作部122は、表示画面121に表示されたものを利用者が操作するものである。操作部122の種類は特に限定されない。例えば操作部122は、表示画面121に設けられたタッチパネルである。ただし、操作部122は、パーソナルコンピュータのキーボードおよびマウスであってもよい。なお、ここでは、表示画面121および操作部122は、それぞれ1つであるが、表示画面121の数、および、操作部122の数は、それぞれ複数であってもよい。この場合、エラー動画EM1は、複数の表示画面121に表示することが可能となる。
【0044】
図5に示す通知制御装置123は、切削加工機100の動画を撮影する制御をしたり、エラー動画EM1を抽出し、表示画面121に表示する制御をしたりするものである。通知制御装置123の構成は特に限定されない。通知制御装置123は、例えばマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータのハードハードウェアの構成は特に限定されないが、例えば、CPUと、ROMと、RAMと、記憶装置などを備えている。なお、エラー通知装置120がクライアントサーバ型の装置の場合、通知制御装置123は、例えばサーバによって実現される。エラー通知装置120がクラウド・コンピューティングの場合、通知制御装置123は、例えばクラウド上で実現される。
【0045】
通知制御装置123は、切削加工機100の制御装置60と有線または無線を介して通信可能に接続されている。通知制御装置123は、撮影装置110と通信可能に接続されている。通知制御装置123は、表示画面121および操作部122と通信可能に接続されている。
【0046】
本実施形態では、通知制御装置123は、通知記憶部130と、記録部132と、受信部134と、判定部136と、抽出部138と、表示部140とを備えている。通知制御装置123の各部は、ソフトウェアによって構成されていてもよいし、ハードウェアによって構成されていてもよい。通知制御装置123の各部は、1つまたは複数のプロセッサによって実現されるものであってもよいし、回路に組み込まれるものであってもよい。
【0047】
記録部132は、撮影装置110を制御して切削加工機100の切削空間26(図3参照)内の動画(以下、切削動画CM1という。)を撮影する。記録部132は、切削加工機100が切削ファイルFL1の切削プログラムPG1の実行を開始するタイミングで、切削動画CM1の撮影を開始する。そして、記録部132は、上記切削プログラムPG1の実行が終了するタイミングで、切削動画CM1の撮影を終了する。このように、記録部132によって、切削空間26内において被加工物5が切削されている様子の切削動画CM1が撮影される。切削動画CM1は、切削プログラムPG1が実行されている間、撮影されている。本実施形態では、1つの切削ファイルFL1につき、1つの切削動画CM1が作成される。通知記憶部130には、記録部132によって撮影された切削動画CM1が保存された動画ファイルFL2が記憶される。1つの動画ファイルFL2には、1つの切削動画CM1が保存されている。
【0048】
受信部134は、切削加工機100の制御装置60から送信された信号などの情報を受信する。本実施形態では、受信部134は、制御装置60の送信部66から送信されたエラー情報EC1を受信する。エラー情報EC1を受信することで、エラー通知装置120は、該当する切削加工機100にエラーが発生したことを認識することができる。
【0049】
図7は、同時エラーER1および事後エラーER2において、エラーの発生のタイミングとエラーを検出するタイミングとの関係を示したタイムチャートである。判定部136は、受信部134によって受信されたエラー情報EC1に基づいて、切削加工機100で発生したエラーが同時エラーER1か事後エラーER2かを判定する。本実施形態では、切削加工機100において、切削中に発生したエラーは、同時エラーER1および事後エラーER2のいずれかのエラーである。例えば図7では、時刻t11のときに、切削加工機100のエラーET1が発生し、かつ、エラー検出部64によるエラー検出ED1が行われている。このように、切削加工機100のエラーET1が発生したときのタイミングと、エラー検出部64によるエラー検出ED1のタイミングとが同じエラーを、同時エラーER1という。ここで、「タイミングが同じ」には、多少のタイムラグが発生している場合も含まれるものとする。同時エラーER1として、例えばスピンドル31の回転不足エラーが挙げられる。
【0050】
例えば図7では、時刻t11のときに、エラー検出部64によるエラー検出ED2が行われている。そして、時刻t11より前の時刻t12に、切削加工機100のエラーET2が発生している。このように、エラー検出ED2のタイミングよりも前に、切削加工機100のエラーET2が発生しているエラーを、事後エラーER2という。事後エラーER2とは、切削加工機100のエラー検出部64がエラーを検出したときには、既にエラーが発生した後の状態のエラーのことであり、エラーが実際に発生したときとは、エラーを検出したときよりも前の何れかのときである。事後エラーER2の一例として、上記のツール折れエラーが挙げられる。ツール折れエラーは、加工ツール8が折れたときに検出されるエラーではなく、加工ツール8が折れた後において、加工ツール8をツールセンサ36(図4参照)に接触させたときに検出されるエラーである。そのため、エラーが実際に発生したときの時刻と、エラーを検出したときの時刻とでは、差が生じる。このように、エラー発生時の時刻と、エラー検出時の時刻とに差が生じるようなエラーのことを事後エラーER2という。
【0051】
抽出部138は、撮影装置110によって撮影されている切削動画CM1からエラー動画EM1(図6参照)を抽出する。図8は、同時エラーER1および事後エラーER2において、エラー動画EM1の時間を示すタイムチャートである。図8において、矢印の範囲が動画の時間を示している。図8に示すように、エラー動画EM1は、受信部134がエラー情報EC1を受信したときの時刻(以下、受信時刻RT1という。)を基準とした所定のエラー記録時間TM0の動画のことである。言い換えると、エラー動画EM1のエラー記録時間TM0には、受信時刻RT1が少なくとも含まれる。このエラー記録時間TM0の長さは、特に限定されるものではなく、エラー情報EC1の内容によって設定されるものである。以下の説明では、エラー動画EM1のうち同時エラーER1のエラー動画には、符号EM11を適宜付し、事後エラーER2のエラー動画には、符号EM12を適宜付す。
【0052】
エラー記録時間TM0は、エラー前時間TM1と、エラー後時間TM2とを有している。エラー前時間TM1とは、受信時刻RT1よりも前のエラー記録時間のことである。エラー後時間TM2とは、受信時刻RT1よりも後のエラー記録時間のことである。本実施形態では、エラー動画EM1は、エラー検出部64によってエラーが検出された前後の所定の時間の切削動画CM1のことである。
【0053】
図8に示すように、同時エラーER1のとき、エラー前時間TM1が第1の前時間TM11であり、エラー後時間TM2が第1の後時間TM21であるエラー動画EM11が抽出される。すなわち、第1の前時間TM11と第1の後時間TM21との合計の時間が、同時エラーER1におけるエラー動画EM11の録画時間である。なお、第1の前時間TM11および第1の後時間TM21の具体的な数値は、特に限定されない。例えば第1の前時間TM11は、時刻t22から受信時刻RT1までの時間である。第1の後時間TM21は、受信時刻RT1から時刻t23までの時間である。例えば第1の前時間TM11および第1の後時間TM21は、例えば3秒~10秒である。第1の前時間TM11と第1の後時間TM21は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0054】
事後エラーER2が発生したとき、エラー前時間TM1が第2の前時間TM12であり、エラー後時間TM2が第2の後時間TM22であるエラー動画EM12が抽出される。すなわち、第2の前時間TM12と第2の後時間TM22との合計の時間が、事後エラーER2におけるエラー動画EM12の録画時間である。ここで、第2の前時間TM12は、時刻t22よりも前の時刻t21から受信時刻RT1までの時間である。第2の前時間TM12は、第1の前時間TM11よりも長い時間である。第2の前時間TM12は、例えば切削動画CM1の開始時刻からの時間である。本実施形態では、第2の後時間TM22は、受信時刻RT1から時刻t23までの時間である。第2の後時間TM22は、第1の後時間TM21と同じである。しかしながら、第2の後時間TM22は、第1の後時間TM21よりも長くてもよいし、短くてもよい。本実施形態では、第2の後時間TM22は、第2の前時間TM12よりも短い。
【0055】
なお、抽出部138がエラー動画EM1を抽出する制御は、特に限定されない。例えばエラー動画EM1のうちエラー前時間TM1に対応したエラー動画は、既に記録されている切削動画CM1から抽出することができる。この場合、抽出部138は、記録部132に記録された切削動画CM1から、エラー前時間TM1の間の動画を抽出する。一方、エラー動画EM1のうちエラー後時間TM2に対応したエラー動画は、既に記録された切削動画CM1ではなく、これから記録される切削動画CM1から抽出することができる。この場合、抽出部138は、受信時刻RT1から開始されるエラー後時間TM2の間の切削動画CM1を、記録部132によって記録されると同時に抽出する。
【0056】
表示部140は、図6に示すように、抽出部138によって抽出されたエラー動画EM1を表示画面121に表示する。このとき、エラー動画EM1の他に、表示部140は、受信部134によって受信されたエラー情報EC1、または、エラー情報EC1に基づいたエラーメッセージEC2を表示画面121に表示してもよい。
【0057】
以上、本実施形態に係る切削加工システム1の構成について説明した。次に、複数の切削加工機100のうち1つの切削加工機100にエラーが発生したときのエラー動画EM1を表示する手順について、図9のフローチャートに沿って説明する。図9のフローチャートでは、切削中にエラーが発生し、エラー動画EM1を表示画面121に表示するまでの流れが示されている。
【0058】
まずステップS101において、切削加工機100は、切削を開始する。ここでは、切削加工機100の切削制御部62は、記憶部61に記憶された切削ファイルFL1に保存された切削プログラムPG1を実行する。このように切削プログラムPG1の実行が開始されると同時、または、切削プログラムPG1の実行が開始される前(例えば、利用者が切削開始ボタン(図示せず)を押したタイミング)に、送信部66からエラー通知装置120の受信部134に、切削開始信号が送信される。切削開始信号を受信部134が受信したとき、記録部132は、切削開始信号を送信した切削加工機100に設けられた撮影装置110を制御して、切削中の切削空間26内の動画の撮影を開始する。撮影されている切削動画CM1は、撮影の途中であっても、順次、通知記憶部130に記憶されている。
【0059】
ステップS101において切削、および、切削動画CM1の撮影が始まった後、ステップS102において、切削中の切削加工機100にエラーが発生したとする。例えば切削加工機100のツール把持部32に把持された加工ツール8が切削中に折れたという「ツール折れエラー」が発生したとする。このとき、切削加工機100の送信部66は、ツール折れエラーに対応したエラー情報EC1の一例であるエラーコードをエラー通知装置120に送信する。エラー通知装置120の受信部134は、送信されたエラーコードを受信する。
【0060】
次に、ステップS103では、判定部136は、受信部134が受信したエラーコードに基づいて、発生したエラーが同時エラーER1であるか事後エラーER2であるかを判定する。例えば受信したエラーコードが同時エラーER1に対応したエラーコードの場合、判定部136は、切削加工機100で発生したエラーが同時エラーER1であると判定(ステップS103においてYESと判定)し、次にステップS104に進む。ステップS104では、抽出部138は、図8に示すように、エラー前時間TM1が第1の前時間TM11であり、エラー後時間TM2が第1の後時間TM21である範囲のエラー動画EM11を切削動画CM1から抽出する。ここで抽出される切削動画CM1は、ステップS101において撮影が開始された切削動画である。
【0061】
ステップS103において、受信したエラーコードが事後エラーER2(例えば、ツール折れエラー)に対応したエラーコードの場合、判定部136は、切削加工機100で発生したエラーが事後エラーER2であると判定(ステップS103においてNOと判定)し、次にステップS105に進む。ステップS105では、抽出部138は、図8に示すように、エラー前時間TM1が第2の前時間TM12であり、エラー後時間TM2が第2の後時間TM22である範囲のエラー動画EM12を切削動画CM1から抽出する。なお、ステップS104およびステップS105において抽出されたエラー動画EM11、EM12は、通知記憶部130に記憶される。
【0062】
このように、エラー動画EM1を抽出した後、ステップS106では、表示部140は、抽出部138によって抽出したエラー動画EM1を表示画面121(図6参照)に表示する。なお、このとき、表示部140は、表示画面121に、エラーコードを含むエラーメッセージEC2(図6参照)を表示してもよい。このエラーメッセージEC2は、エラー動画EM1に重なって表示されるものであってもよいし、エラー動画EM1とは異なる領域に表示されるものであってもよい。このようにして、切削加工機100にエラーが発生したときに、表示画面121にエラー動画EM1が表示される。
【0063】
以上、本実施形態では、切削加工機100が切削中のときに、切削が行われている切削空間26(図3参照)の切削動画CM1が撮影されている。このような状態で、切削加工機100にエラーが発生した場合、エラー通知装置120の受信部134がエラー情報EC1を受信した受信時刻RT1を基準とした所定のエラー記録時間TM0の間のエラー動画EM1(図8参照)を、切削動画CM1から抽出する。このエラー動画EM1には、エラーが発生したときの状況を示す動画が含まれている。よって、利用者は、表示画面121に表示されたエラー動画EM1を見ることで、エラーが発生した状況を確認することができる。このように、エラーの発生状況を確認することで、発生したエラーに適した対策を講じることができる。
【0064】
本実施形態では、表示部140は、図6に示すように、エラー動画EM1と共に、受信部134によって受信したエラー情報EC1に基づいたエラーコードなどのエラーメッセージEC2を表示画面121に表示する。このことによって、利用者は、表示画面121を確認したとき、表示されているエラー動画EM1がどのようなエラーに関するエラー動画であるかが分かり易い。
【0065】
本実施形態では、図8に示すように、エラー動画EM1のエラー記録時間TM0は、受信時刻RT1よりも前のエラー前時間TM1と、受信時刻RT1よりも後のエラー後時間TM2とを有する。このことによって、エラー動画EM1には、エラーを検出する前の動画の他に、エラーを検出した後の動画が含まれている。よって、利用者は、エラーを検出する前の切削加工機100の動作だけでなく、エラーを検出した後に、切削加工機100がどのような動作をしたかを確認することができる。したがって、エラーを検出した前後の切削加工機100の状況に応じた対策を講じることができる。
【0066】
本実施形態では、切削加工機100で発生するエラーは、図7に示すように、同時エラーER1と、事後エラーER2とを有している。同時エラーER1は、エラー検出部64によってエラーが検出されるタイミング(図7ではED1)と、切削加工機100でエラーが実際に発生したタイミング(図7ではET1)とが同じであるエラーである。事後エラーER2は、エラー検出部64によってエラーが検出されるタイミング(図7ではED2)よりも前に、切削加工機100でエラーが発生(図7ではET2)しているエラーである。抽出部138は、判定部136によって切削加工機100で発生したエラーが同時エラーER1であると判定された場合、図8に示すように、エラー前時間TM1を所定の第1の前時間TM11に設定したエラー動画EM11を抽出する。抽出部138は、判定部136によって切削加工機100で発生したエラーが事後エラーER2であると判定された場合、エラー前時間TM1を第1の前時間TM11よりも長い所定の第2の前時間TM12に設定したエラー動画EM12を抽出する。事後エラーER2の場合、エラーを検出するよりも前のタイミングで実際にエラーが発生している。そのため、エラー前時間TM1を短く設定すると、エラー動画EM1にエラーが実際に発生した動画が含まれないことがあり得る。そのため、本実施形態では、事後エラーER2におけるエラー前時間TM1を、相対的に長く設定している。詳しくは、事後エラーER2におけるエラー前時間TM1の開始を、切削動画CM1が開始される時刻(図8では時刻t21)に設定している。そのため、事後エラーER2であっても、エラー動画EM12にエラーが実際に発生した動画を含ませ易い。
【0067】
本実施形態では、ツール折れエラーは、事後エラーER2である。記憶部61には、ツール把持部32に把持された加工ツール8の軸方向の長さである判定長さが記憶されている。エラー検出部64は、ツール把持部32に把持された加工ツール8をツールセンサ36(図4参照)に接触させたときの切削機構13の位置から、加工ツール8の軸方向の実際の長さである実長さを算出する。そして、エラー検出部64は、実長さが判定長さよりも短いとき、加工ツール8が折れているというツール折れエラーが発生したことを検出する。このように、ツール折れエラーにおいて、ツール把持部32に把持された加工ツール8が折れていることを検出したときとは、エラーが実際に発生したときよりも後である。このようなツール折れエラーを事後エラーER2とすることで、エラー動画EM1のエラー前時間TM1を相対的に長くすることができる。したがって、ツール折れエラーが発生した場合であっても、エラー動画EM1にエラーが実際に発生した動画を含ませ易い。
【0068】
本実施形態では、制御装置60の記憶部61には、図5に示すように、切削プログラムPG1が保存された切削ファイルFL1が記憶されている。切削制御部62は、切削プログラムPG1に基づいて被加工物5を切削するように、切削機構13、クランプ16および移動機構55を制御する。記録部132は、切削ファイルFL1に保存された切削プログラムPG1ごとに、切削動画CM1を記録する。ここでは、1つの切削ファイルFL1につき、1つの切削動画CM1が作成される。そのため、仮に、抽出部138によって抽出されたエラー動画EM1にエラーが実際に発生した動画が含まれていない場合であっても、利用者は、1つの切削ファイルFL1ごとに作成された切削動画CM1を確認するとよい。よって、エラーが実際に発生した動画を探し易い。
【0069】
本実施形態では、図1に示すように、エラー通知装置120には、複数の切削加工機100および複数の撮影装置110が接続されている。よって、1つのエラー通知装置120で、複数の切削加工機100で発生したエラーをエラー動画EM1で確認することができる。したがって、複数の切削加工機100を使用する場合であっても、切削加工機100のエラーの状況を把握し易い。
【0070】
本実施形態では、エラー通知装置120の表示画面121は、携帯型端末のディスプレイである。このことによって、利用者は、場所を限定されることなく、切削加工機100にエラーが発生しときのエラーの状況をエラー動画EM1で確認することができる。
【符号の説明】
【0071】
1 切削加工システム
5 被加工物
11 本体
26 切削空間
60 制御装置
64 エラー検出部
66 送信部
100 切削加工機
110 撮影装置
121 表示画
123 通知制御装置
132 記録部
134 受信部
138 抽出部
140 表示部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9