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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-20
(45)【発行日】2023-06-28
(54)【発明の名称】排水構造及びサイホン排水システム
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/122 20060101AFI20230621BHJP
   E03C 1/12 20060101ALI20230621BHJP
【FI】
E03C1/122 Z
E03C1/12 C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019040323
(22)【出願日】2019-03-06
(65)【公開番号】P2020143490
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2021-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】栗本 到
【審査官】秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-169081(JP,A)
【文献】特開2018-105035(JP,A)
【文献】特開2018-25073(JP,A)
【文献】特開2016-216944(JP,A)
【文献】特開2002-121792(JP,A)
【文献】特開2016-196744(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/12-1/33
F16L 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの水廻り機器と、
前記水廻り機器にそれぞれ設けられる排水トラップの下流側に接続された配管と、
前記配管が上流側の端部にそれぞれ接続され、前記水廻り機器から前記配管を通じて流された排水を横方向へ流す横引き管と、
一方の前記水廻り機器側の前記配管に設けられ、該配管内での空気溜まりを抑制する空気溜まり抑制部と、を有し、
一方の前記水廻り機器側の前記配管における前記排水トラップから前記横引き管への接続部までの横方向の流路長が、他方の前記水廻り機器側の前記配管における前記排水トラップから前記横引き管への接続部までの横方向の流路長より長く設定され
前記空気溜まり抑制部として、前記一方の水廻り機器からの排水が行われていない時に前記配管内が水で満たされる封水構造を有し、
前記封水構造は、前記配管の流路が、該封水構造を有する側の前記水廻り機器から前記接続部までの間に、一旦下がり、上がり、再び下がって構成され、
前記封水構造において、前記流路が上下する部分に、水平方向に対して斜めに傾斜する傾斜部が設けられている排水構造。
【請求項2】
2つの水廻り機器と、
前記水廻り機器にそれぞれ設けられる排水トラップの下流側に接続された配管と、
前記配管が上流側の端部にそれぞれ接続され、前記水廻り機器から前記配管を通じて流された排水を横方向へ流す横引き管と、
一方の前記水廻り機器側の前記配管に設けられ、該配管内での空気溜まりを抑制する空気溜まり抑制部と、を有し、
一方の前記水廻り機器側の前記配管における前記排水トラップから前記横引き管への接続部までの横方向の流路長が、他方の前記水廻り機器側の前記配管における前記排水トラップから前記横引き管への接続部までの横方向の流路長より長く設定され、
前記空気溜まり抑制部として、前記一方の水廻り機器からの排水が行われていない時に前記配管内が水で満たされる封水構造を有し、
前記封水構造は、前記配管の流路が、該封水構造を有する側の前記水廻り機器から前記接続部までの間に、一旦下がり、上がり、再び下がって構成され、
前記封水構造における前記配管の流路が一旦下がってから上がるまでの間に水平部が設けられ、
前記水平部は、前記横引き管の上方に重ねて設けられ、かつ前記横引き管に沿って延びている排水構造。
【請求項3】
2つの水廻り機器と、
前記水廻り機器にそれぞれ設けられる排水トラップの下流側に接続された配管と、
前記配管が上流側の端部にそれぞれ接続され、前記水廻り機器から前記配管を通じて流された排水を横方向へ流す横引き管と、
一方の前記水廻り機器側の前記配管に設けられ、該配管内での空気溜まりを抑制する空気溜まり抑制部と、を有し、
一方の前記水廻り機器側の前記配管における前記排水トラップから前記横引き管への接続部までの横方向の流路長が、他方の前記水廻り機器側の前記配管における前記排水トラップから前記横引き管への接続部までの横方向の流路長より長く設定され、
前記空気溜まり抑制部として、前記一方の水廻り機器からの排水が行われていない時に前記配管内が水で満たされる封水構造を有し、
他方の水廻り機器側の前記配管には、圧力緩衝部が設けられており、
前記圧力緩衝部の許容容量は、前記一方の水廻り機器側の前記配管における前記封水構造の下流側端部から、前記他方の水廻り機器側の前記配管における前記圧力緩衝部の接続位置までの容積の合計よりも大きい排水構造。
【請求項4】
前記封水構造を有する前記配管のうち前記封水構造を構成しない部分に清掃口が設けられている請求項~請求項の何れか1項に記載の排水構造。
【請求項5】
建物の上下方向に配設される排水立て管と、
請求項1~請求項の何れか1項に記載の排水構造と、
前記排水立て管に接続され前記横引き管からの排水を下方へ流す竪管と、
を有するサイホン排水システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水構造及びサイホン排水システムに関する。
【背景技術】
【0002】
サイホン排水システムにおいて、2つの水廻り機器(台所流し台と食洗機)からの排水を流す配管が一本の横引き管に接続された構造が開示されている(特許文献1参照)。台所流し台の配管は、横引き管の上流端に接続されている。食洗機の配管は、横引き管の上流端より下流側に接続されている。食洗機の配管と横引き管の接続部分が、台所流し台からの排水と食洗機からの排水が合流する合流部となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-196744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、一方の水廻り機器(例えば食洗機)から排水が流れると、一方の水廻り機器から合流部までの間の空気が他方の水廻り機器(例えば台所流し台)側の配管に流入し、該配管内の圧力が上昇し、排水トラップの封水が失われる(破封する)不具合が生じる場合がある。
【0005】
この対策として、2つの水廻り機器の位置をできるだけ近づけて、一方の水廻り機器(食洗機)から合流部までの配管の容積を抑えることが考えられるが、水廻り機器の設置レイアウトの自由度の低下を招く可能性がある。
【0006】
本発明は、2つの水廻り機器の設置レイアウトの自由度を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様に係る排水構造は、2つの水廻り機器と、前記水廻り機器にそれぞれ設けられる排水トラップの下流側に接続された配管と、前記配管が上流側の端部にそれぞれ接続され、前記水廻り機器から前記配管を通じて流された排水を横方向へ流す横引き管と、一方の前記水廻り機器側の前記配管に設けられ、該配管内での空気溜まりを抑制する空気溜まり抑制部と、を有し、一方の前記水廻り機器側の前記排水トラップから前記横引き管への接続部までの前記配管の横方向の流路長が、他方の前記水廻り機器側の前記排水トラップから前記横引き管への接続部までの前記配管の横方向の流路長より長く設定されている。
【0008】
この排水構造では、一方の水廻り機器側の排水トラップから横引き管への接続部までの配管の横方向の流路長が、他方の水廻り機器の排水トラップから横引き管への接続部までの配管の横方向の流路長より長く設定されている。そして、一方の水廻り機器側の配管に空気溜まり抑制部が設けられている。したがって、該水廻り機器から排水を流したときに、流路長が短い他方の水廻り機器側における配管の圧力上昇に起因する該他方の水廻り機器側の排水トラップでの封水の破封が抑制される。したがって、水廻り機器側から横引き管までの配管の長さを大きくして、2つの水廻り機器の設置位置を互いに離すことが可能となる。
【0009】
第2の態様は、第1の態様に係る排水構造において、前記空気溜まり抑制部として、前記一方の水廻り機器からの排水が行われていない時に、前記配管内が水で満たされる封水構造を有している。
【0010】
この排水構造では、空気溜まり抑制部としての封水構造を有している。この封水構造においては、一方の水廻り機器からの排水が行われていない時に配管内が水で満たされるので、配管内での空気溜まりの形成が抑制される。この水は、一方の水廻り機器からの排水の残りでもよいし、外部から配管内に供給される水であってもよい。配管内が水で満たされることにより、配管内に残留する空気の量を抑制できる。このため、一方の水廻り機器からの排水時に、他方の水廻り機器側の配管に空気が流入することを抑制できる。
【0011】
第3の態様は、第2の態様に係る排水構造において、前記封水構造が、前記配管の流路が、該封水構造を有する側の前記水廻り機器から前記接続部までの間に、一旦下がり、上がり、再び下がって構成されている。
【0012】
この排水構造では、封水構造において、配管の流路が、該封水構造を有する側の水廻り機器から接続部までの間に、一旦下がり、上がり、再び下がって構成されているので、簡易な構成により、配管内を水で満たすことができる。
【0013】
第4の態様は、第3の態様に係る排水構造であって、前記封水構造において、前記流路が上下する部分に、水平方向に対して斜めに傾斜する傾斜部が設けられている。
【0014】
この排水構造では、封水構造において流路が上下する部分に、水平方向に対して斜めに傾斜する傾斜部が設けられているので、空気溜まりが形成され難い。
【0015】
第5の態様は、第3の態様又は第4の態様に係る排水構造において、前記封水構造における前記配管の流路が一旦下がってから上がるまでの間に水平部が設けられ、前記水平部は、前記横引き管の上方に重ねて設けられ、かつ前記横引き管に沿って延びている。
【0016】
この排水構造では、封水構造における水平部が、横引き管の上方に重ねて設けられ、かつ横引き管に沿って延びているので、配管の設置スペースを確保し易くなる。このため、一方の水廻り機器側の比較的長い配管を無理なく配置できる。
【0017】
第6の態様は、第2~第5の態様の何れか1態様に係る排水構造において、前記封水構造を有する前記配管のうち前記封水構造を構成しない部分に清掃口が設けられている。
【0018】
この排水構造では、封水構造を有する配管に清掃口が設けられているので、該配管の清掃を必要に応じて容易に行うことができる。
【0019】
第7の態様は、第2~第6の態様の何れか1態様に係る排水構造において、他方の水廻り機器側の前記配管には、圧力緩衝部が設けられており、前記圧力緩衝部の許容容量は、前記一方の水廻り機器側の前記配管における前記封水構造の下流側端部から、前記他方の水廻り機器側の前記配管における前記圧力緩衝部の接続位置までの容積の合計よりも大きい。
【0020】
この排水構造では、他方の水廻り機器側の配管に圧力緩衝部が設けられており、その許容容量が適切に設定されているので、一方の水廻り機器からの排水時に、封水構造の下流側端部から他方の水廻り機器側の配管における圧力緩衝部の接続位置までの空気が、該他方の水廻り機器側の配管に流入しても、その空気を圧力緩衝部で受け入れることができる。これにより、該配管内の圧力上昇を抑制し、他方の水廻り機器側の排水トラップでの封水の破封を抑制できる。
【0021】
第8の態様に係るサイホン排水システムは、建物の上下方向に配設される排水立て管と、第1~第7の態様の何れか1態様に係る排水構造と、前記排水立て管に接続され前記横引き管からの排水を下方へ流す竪管と、を有する。
【0022】
このサイホン排水システムでは、2つの水廻り機器の設置レイアウトの自由度を高めた排水システムを提供できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る排水構造及びサイホン排水システムによれば、2つの水廻り機器の設置レイアウトの自由度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本実施形態に係る排水構造を備えた台所システムを示す平面図である。
図2】(A)は、本実施形態に係るサイホン排水システムを示す断面図である。(B)は、配管と横引き管の位置関係を示す、図2(A)における2B-2B矢視拡大断面図である。
図3】変形例に係る排水構造を備えたサイホン排水システムを示す断面図である。
図4】他の変形例に係る排水構造を備えたサイホン排水システムを示す断面図である。
図5】他の変形例に係る排水構造を備えたサイホン排水システムを示す断面図である。
図6】他の変形例に係る排水構造を示す図5における6-6矢視拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づき説明する。図1において、本実施形態に係る排水構造10は、サイホン排水システム12の一部であり、例えば台所システム13からの排水のために用いられる。
【0026】
台所システム13は、ガス台18と、一方の水廻り機器の一例としての食洗機21と、他方の水廻り機器の一例としての台所流し台のシンク22とを有している。台所システム13は、いわゆるL型キッチンであり、シンク22の向きが、ガス台18及び食洗機21の向きに対して、直角に配置されている。換言すれば、ガス台18及び食洗機21は壁11に沿って配置されており、シンク22は壁11から離れた位置に配置されている。これにより、シンク22と食洗機21とが隣り合って配置される場合と比較して、シンク22と食洗機21との間の距離が離れている。
【0027】
図2(A)に示されるように、建物15の各階において、食洗機21及びシンク22は、床スラブ24の上側に設置されている。サイホン排水システム12は、排水立て管14と、排水構造10と、竪管16とを有している。
【0028】
排水立て管14は、建物の上下方向に配設されており、建物15の床スラブ24の貫通穴25を貫通している。この排水立て管14には、竪管16を連結する排水継手26が設けられている。
【0029】
竪管16は、排水立て管14に接続され横引き管28からの排水を下方へ流す管であり、上端部が横引き管28の下流端に接続されている。竪管16の下端部は排水継手26に接続されている。これにより、食洗機21やシンク22等の水廻り器具から排出され横引き管28を通じて竪管16に流入した排水を、排水立て管14に合流させるように構成されている。
【0030】
なお、図面では、管継手等、各配管の接続部分の構成が適宜省略又は簡略化されて示されている。
【0031】
図2(A)において、排水構造10は、2つの水廻り機器としての食洗機21及びシンク22と、配管31,32と、横引き管28と、空気溜まり抑制部としての封水構造34とを有している。
【0032】
配管31,32は、食洗機21及びシンク22にそれぞれ設けられる排水トラップ41,42の下流側に接続されている。具体的には、配管31は、食洗機21に設けられる排水トラップ41の下流側に接続されている。また、配管32は、シンク22に設けられる排水トラップ42の下流側に接続され、下方に延びている。
【0033】
排水トラップ41,42は、汚臭やガス等の逆流を防止するためのいわゆる封水式トラップである。排水トラップ41は、例えば食洗機21に内蔵されている。排水トラップ42は、シンク22の排水口に接続された例えばS字トラップである。なお、排水トラップ41,42の形式は任意であり、カップ型のトラップ等を用いてもよい。
【0034】
排水トラップ42の例えば上端部(配管32の上方)には、通気弁44が取り付けられている。通気弁44は、外部からの空気を排水トラップ42へ通過させると共に排水トラップ42から外部へ排水及び空気を通過させないための部品である。
【0035】
横引き管28は、配管31,32が上流側の端部28Aにそれぞれ接続され、水廻り機器から配管31,32を通じて流された排水を横方向へ流す管である。具体的には、横引き管28の上流側の端部28Aには、配管31の下流側の端部と、配管32の下流側の端部とがそれぞれ接続されている。図2(A)に示される例では、横引き管28の上流側の端部28Aにおいて、配管31の接続部31Aが、配管32の接続部32Aの下流側近傍に接続されている。一例として、接続部31Aは、後述する圧力緩衝部36の下方に配置されている。横引き管28の上流側の端部28Aにおける接続部31A,32A間の流路長は、なるべく短いことが望ましい。この流路長が短いほど、接続部31A,32A間での空気溜まりの形成を抑制できるためである。
【0036】
なお、配管31の接続部31Aは、配管32の接続部32Aの上流側に配置されていてもよい。図示は省略するが、例えば配管31の接続部31Aが、配管32における接続部32Aより上流側で、かつ後述する圧力緩衝部36の下流側に接続されていてもよい。
【0037】
シンク22側の配管32には、圧力緩衝部36が設けられている。この圧力緩衝部36は、配管32を通じて排水トラップ42に作用する圧力を緩和するための部品である。配管32と連通し、弾性的に拡縮可能な袋体を内部に有している(図示せず)。袋体は、配管32の下流側端部から正圧を受けた際に弾性変形して膨らみ、下流側に生じた圧力を緩和できるように構成されている。
【0038】
封水構造34は、食洗機21側の配管31に設けられ、該配管31内での空気溜まりを抑制するものである。ここで、配管31における排水トラップ41から横引き管28への接続部31Aまでの横方向の流路長は、配管32における排水トラップ42から横引き管28への接続部32Aまでの横方向の流路長よりも長い。比較的長い配管31には空気溜まりが形成され易いため、該配管31に封水構造34を設けて、配管31内での空気溜まりの形成を抑制している。
【0039】
この封水構造34は、食洗機21からの排水が行われていない時に、配管31内が水で満たされるように構成されている。この水は、食洗機21からの排水の残りでもよいし、外部から配管31内に供給される水であってもよい。
【0040】
具体的には、封水構造34は、配管31の流路が、食洗機21から接続部31Aまでの間に、一旦下がり、上がり、再び下がって構成されている。ここで、排水トラップ41から流路が斜め下方に一旦下がる部分を下降部34Aとし、流路が上がる部分を上昇部34Cとし、流路が再び下がる部分を再下降部34Eとする。封水構造34における配管31の流路が一旦下がってから上がるまでの間、つまり下降部34Aと上昇部34Cとの間には、例えば水平部34Bが設けられている。このように、封水構造34は、U字トラップ状に構成されている。もし、配管31に、上がってから再び下がる再下降部34Eがなく下流側の配管に直接合流するとなると、配管31は上下方向に延びるシンク22側の配管32に合流することになるが、その場合、シンク22側からの排水が配管31に流入し易くなる。特に配管31内の圧力変動が生じている場合、流入し易くなる。配管31が再下降部34Eにより横引き管28に対して上から合流することで、横引き管28の排水が配管31に流入せず、またシンク22側からの排水も流入しないため、食洗器21側の配管31内の圧力変動が起きにくい。
【0041】
水平部34Bは水で満たされるので、接続部31Aを接続部32Aに近づけ、水平部34Bの範囲を大きく設定すると、配管31に空気溜まりが形成される領域を少なくすることができる。このため、接続部31A,32Aは、横引き管28の上流側の端部28Aにそれぞれ配置されている。
【0042】
また、流路が上がってから再び下がるまでの間、つまり上昇部34Cと再下降部34Eとの間にも、水平部34Dが設けられている。なお、この水平部34Dを短く、又は無くして、排水が上昇部34Cから再下降部34Eに直ちに流入するようにしてもよい。これにより、水平部34Dの配管内の空気を失くすことができる。
【0043】
図2(B)に示されるように、水平部34Bは、横引き管28の上方に重ねて設けられ、かつ横引き管28に沿って延びている。水平部34Bは、図示しない支持部材により、横引き管28の上方に適宜間隔を空けて配置されている。
【0044】
図2(A)において、圧力緩衝部36の許容容量は、食洗機21側の配管31における封水構造34の下流側端部Aから、シンク22側の配管32における圧力緩衝部36の接続位置Bまでの容積の合計よりも大きい。下流側端部Aとは、封水構造34において配管31内が水で満たされる領域の下流側の端部である。換言すれば、下流側端部Aは、封水構造34の下流側における封水の液面Lの高さに相当する。また、「下流側端部Aから接続位置Bまで」とは、区間ABを意味する。
【0045】
(作用)
本実施形態は、上記のように構成されており、以下その作用について説明する。図2(A)において、本実施形態に係る排水構造10及びサイホン排水システム12では、食洗機21側の排水トラップ41から横引き管28への接続部31Aまでの配管31の横方向の流路長が、シンク22側の排水トラップ42から横引き管28への接続部32Bまでの配管32の横方向の流路長よりも長い。この食洗機21側の配管31に、空気溜まり抑制部としての封水構造34が設けられている。
【0046】
封水構造34においては、食洗機21からの排水が行われていない時に配管31内が水で満たされる(液面L)。少なくとも水平部34Bは完全に水で満たされる。このように、配管31内が水で満たされることにより、配管31内での空気溜まりの形成が抑制され、配管31内に残留する空気の量が抑制される。したがって、食洗機21からの排水時に、食洗機21側の配管31に残留する空気が、流路長が短いシンク22側の配管32に流入することを抑制できる。このため、配管32の圧力上昇に起因する該シンク22側の排水トラップ42での封水の破封が抑制される。
【0047】
また、封水構造34において、配管31の流路が、該封水構造34を有する側の水廻り機器、つまり食洗機21から接続部31Aまでの間に、一旦下がり、上がり、再び下がって構成されている。具体的には、食洗機21から接続部31Aの間に、順に下降部34A、水平部34B、上昇部34C、水平部34D及び再下降部34Eが設けられている。このような、U字トラップ状の簡易な構成により、配管31内を水で満たすことができる。また、水平部34Bがあることで、配管31内を密に保ちつつ、水平方向に配管31の距離を延ばせることができるため、水回り機器のレイアウトの自由度を高めることができる。
【0048】
更に、図2(A),(B)に示されるように、封水構造34における水平部34Bが横引き管28の上方に重ねて設けられ、かつ横引き管28に沿って延びているので、配管31の設置スペースを確保し易くなる。このため、食洗機21側の比較的長い配管31を無理なく配置できる。
【0049】
また、シンク22側の配管32に圧力緩衝部36が設けられており、その許容容量が適切に設定されているので、食洗機21からの排水時に、封水構造34の下流側端部Aからシンク22側の配管32における圧力緩衝部36の接続位置Bまで(区間AB)の空気が、該シンク22側の配管32に流入しても、その空気を圧力緩衝部36で受け入れることができる。これにより、該配管32内の圧力上昇を抑制し、シンク22側の排水トラップ42での封水の破封を抑制できる。
【0050】
このように、本実施形態に係る排水構造10及びサイホン排水システム12によれば、食洗機21側から横引き管28までの配管31の長さを大きく設定して、食洗機21とシンク22の設置位置を互いに離すことが可能となる。このため、2つの水廻り機器の設置レイアウトの自由度を高めることができる。図1に示されるように、シンク22と食洗機21が離れたL型キッチンにも対応できる。
【0051】
(変形例)
本実施形態は、次の変形例のように構成することも可能である。図3に示される例では、封水構造34において、流路が上下する部分、水平方向に対して斜めに傾斜する傾斜部34Fが設けられている。具体的には、図2(A)における、上下方法に延びる上昇部34Cの代わりに、傾斜部34Fが設けられている。この例では、封水構造34において流路が上下する部分に、水平方向に対して斜めに傾斜する傾斜部34Fが設けられているので、水平部34Bから傾斜部34Fに空気が流れ易くなるため、水平部34Bに空気溜まりが形成され難い。
【0052】
図4に示される例では、封水構造34を有する配管31のうち封水構造34を構成しない部分、つまり水で満たされない部分に清掃口46が設けられている。具体的には、図2(A)の下降部34Aに相当する部分が排水トラップ42に接続された水平部34Gと、水平部34Gの下流端に接続された下降部34Hとに置き換えられている。清掃口46は、該下降部34Hの上端に設けられている。図示は省略するが、清掃口46は開口部と、該開口部を閉塞可能な着脱可能な蓋とを有している。配管31の清掃時には、清掃口46の蓋を外して配管31内に清掃用具を挿入することが可能となっている。
【0053】
この例では、封水構造34を有する配管31に清掃口46が設けられているので、該配管31の清掃を必要に応じて容易に行うことができる。
【0054】
図5図6に示される例では、図1図4に示される例とは異なり、食洗機21とシンク22の配置が左右で入れ替わっており、配管31,32が交差している。この場合、配管32が傾斜部34F又は水平部34Dと干渉するため、図6に示されるように、傾斜部34F又は水平部34Dが配管32を避けて配置されている。
【0055】
圧力緩衝部36がある方の配管32は、横引き管28の上流側に接続される。圧力緩衝部36がない方の配管31は、圧力緩衝部36のある方の配管32内の空気の影響を受けやすくなるため、必ず横引き管28の下流側に接続しなければならない。これにより水回り機器のレイアウトの制約が出てしまうが、本変形例のような配管接続構造を用いることで、水廻り機器のレイアウトの自由度を高めることが可能となっている。
【0056】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態の一例について説明したが、本発明の実施形態は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【0057】
上記実施形態では、2つの水廻り機器としての食洗機21及びシンク22を有するものとしたが、更に他の水廻り機器を有していてもよい。その場合、他の水廻り機器の配管を横引き管28の上流側の端部に接続すると共に、必要に応じて該配管に空気溜まり抑制部を設けてもよい。
【0058】
空気溜まり抑制部の一例として、封水構造34を挙げたが、更に配管31に残留する空気を受け入れ可能な圧力緩衝部を設けてもよい(図示せず)。その場合、封水構造34により空気溜まりの形成が抑制されるので、該圧力緩衝部の容量を小さくすることができる。
【0059】
図2(A)では、横引き管28及び配管31が直線状に描かれているが、これに限られず、図1に示されるように、横引き管28及び配管31がL字形に屈曲していてもよい。
【0060】
封水構造34において、下降部34A、水平部34B及び上昇部34Cの代わりに、V字部を設けてもよい(図示せず)。
【符号の説明】
【0061】
10…排水構造、12…サイホン排水システム、14…排水立て管、15…建物、16…竪管、21…食洗機(一方の水廻り機器)、22…シンク(他方の水廻り機器)、28…横引き管、28A…上流側の端部、31…配管、31A…接続部、32…配管、32A…接続部、34…封水構造(空気溜まり抑制部)、34F…傾斜部、36…圧力緩衝部、41…排水トラップ、42…排水トラップ、46…清掃口、A…封水構造の下流側端部、B…圧力緩衝部と配管との接続部
図1
図2
図3
図4
図5
図6