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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-20
(45)【発行日】2023-06-28
(54)【発明の名称】浴室用椅子
(51)【国際特許分類】
   A47C 9/00 20060101AFI20230621BHJP
   A47C 4/04 20060101ALI20230621BHJP
   A47K 3/12 20060101ALI20230621BHJP
【FI】
A47C9/00 Z
A47C4/04 A
A47K3/12
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019040381
(22)【出願日】2019-03-06
(65)【公開番号】P2020006141
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-10-26
(31)【優先権主張番号】P 2018125937
(32)【優先日】2018-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000505
【氏名又は名称】アロン化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(72)【発明者】
【氏名】青山 智行
(72)【発明者】
【氏名】岩本 楓
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-176752(JP,A)
【文献】中国実用新案第202842944(CN,U)
【文献】特開2008-220921(JP,A)
【文献】特開2001-055004(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 9/00
A47C 4/04
A47K 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の脚と、
下部が前記第1の脚の下部から離れた位置に設けられる第2の脚と、
前記第1の脚の下部と、前記第2の脚の下部とを相対的に接近または離反させる移動機構と、
を備え、
前記第1の脚の下部と前記第2の脚の下部とが接近したときの前記第1の脚と前記第2の脚との位置を折り畳み位置とし、前記第1の脚の下部と前記第2の脚の下部とが離反したときの前記第1の脚と前記第2の脚との位置を開脚位置としたとき、
前記第1の脚と前記第2の脚の何れか一方の下部には、前記折り畳み位置および前記開脚位置のときに床に接触し、前記床との滑り抵抗が第1の抵抗である滑り止め部が設けられ、
前記第1の脚と前記第2の脚の何れか他方の下部には、前記折り畳み位置のときに床に接触し、前記床との滑り抵抗が前記第1の抵抗よりも小さい第2の抵抗である滑り部が設けられている、浴室用椅子。
【請求項2】
前記第1の脚は前脚であり、
前記第2の脚は後脚であり、
前記移動機構は、前記第1の脚と前記第2の脚とを相対回転可能に連結するように構成されている、請求項1に記載された浴室用椅子。
【請求項3】
前記第1の脚と前記第2の脚の何れか前記他方の下部には、前記折り畳み位置のときに前記床に接触せず、前記開脚位置のときに前記床に接触し、前記床との滑り抵抗が前記第2の抵抗よりも大きい第3の抵抗である他の滑り止め部が設けられている、請求項1または2に記載された浴室用椅子。
【請求項4】
前記滑り部は、前記開脚位置のときに前記床に接触しないように構成されている、請求項3に記載された浴室用椅子。
【請求項5】
前記折り畳み位置のとき、前記他の滑り止め部は、前記滑り部の下端よりも上方に配置されている、請求項3または4に記載された浴室用椅子。
【請求項6】
前記開脚位置のとき、前記滑り部は、前記他の滑り止め部の下端よりも上方に配置されている、請求項3から5までの何れか1つに記載された浴室用椅子。
【請求項7】
前記滑り部は、前記第1の脚と前記第2の脚の何れか前記他方の下部に対して回転可能に設けられたローラである、請求項1から6までの何れか1つに記載された浴室用椅子。
【請求項8】
前記ローラは、前記第1の脚と前記第2の脚の何れか前記他方の下部に対して着脱可能に設けられている、請求項7に記載された浴室用椅子。
【請求項9】
前記第1の脚と前記第2の脚の何れか前記他方の下部を覆い、底面から上方に向かって凹んだ嵌合空間が形成されたキャップと、
前記キャップの前記嵌合空間に着脱可能に嵌め込まれ、前記ローラの下端が下方に露出するように、前記ローラが回転可能に収容されたローラカバーと、
を備えた、請求項8に記載された浴室用椅子。
【請求項10】
前記キャップの内周面および前記ローラカバーの外周面の何れか一方には、凹部が形成され、
前記キャップの内周面および前記ローラカバーの外周面の何れか他方には、前記凹部に嵌る凸部が形成されている、請求項9に記載された浴室用椅子。
【請求項11】
前記キャップは、弾性体によって形成され、
前記ローラカバーの外周面の下部には、溝が形成されている、請求項9または10に記載された浴室用椅子。
【請求項12】
前記滑り止め部の少なくとも前記床と接触する面は、ゴムによって形成されている、請求項1から11までの何れか1つに記載された浴室用椅子。
【請求項13】
前記滑り部は、前脚の下部に設けられ、
前記滑り止め部は、後脚の下部に設けられている、請求項1から12までの何れか1つに記載された浴室用椅子。
【請求項14】
前記滑り部は、前記前脚の下部の前側に設けられている、請求項13に記載された浴室用椅子。
【請求項15】
前記折り畳み位置および前記開脚位置のとき、側面視において前記移動機構よりも後方に配置されるように前記前脚に直接また間接的に設けられた押し下げ部を備え、
前記押し下げ部は、下向きに力が加えられることで、前記前脚の下部を前記後脚の下部に対して離反させるように構成されている、請求項13または14に記載された浴室用椅子。
【請求項16】
前記折り畳み位置における前記床に対する前記滑り部の接触面積は、第1の面積であり、
前記開脚位置における前記床に対する前記滑り部の接触面積は、前記第1の面積よりも小さい第2の面積である、請求項1から15までの何れか1つに記載された浴室用椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室用椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、折り畳み可能な浴室用椅子が開示されている。この浴室用椅子は、左右一対の前脚と、左右一対の後脚と、前脚および後脚を相対回転可能に連結させる連結具と、背もたれとを備えている。左右一対の前脚のそれぞれの上端は連結フレームによって連結されており、連結フレームに背もたれが設けられている。また、前脚および後脚のそれぞれの下端には、床に対して滑ることを防ぐための脚ゴムが装着されている。
【0003】
開脚している浴室用椅子において、前脚の下部と後脚の下部とが接近するように前脚と後脚とを連結具を軸に相対回転させることによって、浴室用椅子を折り畳むことができる。一方、折り畳まれた浴室用椅子において、前脚の下部と後脚の下部とが離反するように前脚と後脚とを連結具を軸に相対回転させることによって、浴室用椅子を開脚させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5905928号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に開示された浴室用椅子において、折り畳まれた浴室用椅子を開脚させるとき、利用者は、後脚の脚ゴムを床に接触させ、かつ、前脚の脚ゴムを床から浮かせるように浴室用椅子を後方に傾けた状態にした後、背もたれの上端を下方に向かって押さえる。このことによって、連結フレームが下方に回転し、前脚の下部が上方に回転する。その結果、前脚の下部と後脚の下部とが離反し、浴室用椅子を開脚させることができる。しかしながら、浴室用椅子を開脚させる際に、前脚の脚ゴムを一度浮かせる必要があるため、浴室用椅子を開脚させる際、利用者にとって煩わしい作業が発生していた。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、折り畳まれた状態の浴室用椅子を容易に開脚させることが可能な浴室用椅子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、「前脚および後脚が床から浮いている」とは、前脚および後脚のそれぞれの下部に設けられた脚ゴムなどが床から浮いていることをいい、「前脚および後脚が床に接触している」とは、前脚および後脚のそれぞれの下部に設けられた脚ゴムなどが床に接触していることをいう。本願発明者は、例えば前脚の下部と後脚の下部とを接近させたり、離反させたりすることで、折り畳み、または開脚させる浴室用椅子を対象として、前脚および後脚の両方を床から浮かせることなく、浴室用椅子を開脚させる構成について種々検討した。そこで、本願発明者は、まず特許文献1に開示された浴室用椅子において、前脚および後脚のそれぞれの脚ゴムが床に接触した状態では、その脚ゴムが滑り止めの役割を担っているため、前脚の下部と後脚の下部とを離反させ難いことを発見した。そして、本願発明者は、更に検討した結果、前脚および後脚の何れか一方の下端に、床に対して滑り易いものを設けることで、折り畳まれた浴室用椅子において、前脚および後脚が床に接触している状態で、前脚の下部と後脚の下部とを離反させ易くなることを見出した。
【0008】
本発明に係る浴室用椅子は、第1の脚と、第2の脚と、移動機構とを備えている。前記第2の脚は、下部が前記第1の脚の下部から離れた位置に設けられている。前記移動機構は、前記第1の脚の下部と、前記第2の脚の下部とを相対的に接近または離反させる。前記第1の脚の下部と前記第2の脚の下部とが接近したときの前記第1の脚と前記第2の脚との位置を折り畳み位置とし、前記第1の脚の下部と前記第2の脚の下部とが離反したときの前記第1の脚と前記第2の脚との位置を開脚位置としたとき、前記第1の脚と前記第2の脚の何れか一方の下部には、前記折り畳み位置および前記開脚位置のときに床に接触し、前記床との滑り抵抗が第1の抵抗である滑り止め部が設けられている。前記第1の脚と前記第2の脚の何れか他方の下部には、前記折り畳み位置のときに床に接触し、前記床との滑り抵抗が前記第1の抵抗よりも小さい第2の抵抗である滑り部が設けられている。
【0009】
本発明に係る浴室用椅子によれば、折り畳み位置のときに滑り部と滑り止め部とが床に接触している。このとき、浴室用椅子に対して上から力を加えることで、滑り部が床に対して移動し、第1の脚の下部と第2の脚の下部とが離反する。その結果、浴室用椅子を開脚させた状態にすることができる。このように、本発明では、滑り部と滑り止め部とを床に接触させた状態で、折り畳まれた浴室用椅子を開脚させることができる。よって、特許文献1に開示された浴室用椅子のように、前脚を一度床から浮かせる動作を行わなくてもよいため、折り畳まれた状態の浴室用椅子を容易に開脚させることができる。
【0010】
本発明の好ましい一態様によれば、前記第1の脚は前脚であり、前記第2の脚は後脚である。前記移動機構は、前記第1の脚と前記第2の脚とを相対回転可能に連結するように構成されている。
【0011】
上記態様によれば、浴室用椅子に対して上から力を加えることで、滑り部が床に対して移動し、前脚の下部と後脚の下部とが離反するように前脚と後脚とが相互回転する。よって、滑り部と滑り止め部とを床に接触させた状態で、折り畳まれた浴室用椅子を開脚させることができる。
【0012】
本発明の好ましい一態様によれば、前記第1の脚と前記第2の脚の何れか前記他方の下部には、前記折り畳み位置のときに前記床に接触せず、前記開脚位置のときに前記床に接触し、前記床との滑り抵抗が前記第2の抵抗よりも大きい第3の抵抗である他の滑り止め部が設けられている。
【0013】
上記態様によれば、折り畳み位置のとき、第1の脚および第2の脚のうち滑り部が設けられた脚は、滑り部を介して床に接触し、他の滑り止め部は床に接触していない。そのため、折り畳まれた浴室用椅子を開脚させ易い。また、開脚位置のとき、第1の脚および第2の脚のうち滑り部が設けられた脚は、他の滑り止め部を介して床に接触している。よって、開脚した状態の浴室用椅子に利用者が座ったとき、浴室用椅子が床に対して滑り難くすることができる。
【0014】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記滑り部は、前記開脚位置のときに前記床に接触しないように構成されている。
【0015】
上記態様によれば、開脚位置のとき、第1の脚および第2の脚のうち滑り部が設けられた脚は、他の滑り部を介して床に接触しており、滑り部は床に接触していない状態となる。よって、開脚した状態の浴室用椅子に利用者が座ったとき、浴室用椅子が床に対してより滑り難くすることができる。
【0016】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記折り畳み位置のとき、前記他の滑り止め部は、前記滑り部の下端よりも上方に配置されている。
【0017】
上記態様によれば、折り畳み位置のとき、第1の脚および第2の脚のうち滑り部が設けられた脚は、滑り部を介して床に接触し、他の滑り止め部は床に接触していない。よって、折り畳まれた浴室用椅子を開脚させる際、滑り部を床に接触させながら第1の脚の下部と第2の脚の下部とを離反させ易い。したがって、浴室用椅子を開脚させ易い。
【0018】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記開脚位置のとき、前記滑り部は、前記他の滑り止め部の下端よりも上方に配置されている。
【0019】
上記態様によれば、開脚位置のとき、第1の脚および第2の脚のうち滑り部が設けられた脚は、他の滑り止め部を介して床に接触しており、滑り部は床に接触していない。よって、浴室用椅子に利用者が座ったとき、浴室用椅子が床に対して滑り難くすることができる。
【0020】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記滑り部は、前記第1の脚と前記第2の脚の何れか前記他方の下部に対して回転可能に設けられたローラである。
【0021】
上記態様によれば、折り畳み位置のとき、第1の脚および第2の脚の何れか他方の脚は、ローラが床に接触している。よって、折り畳まれた浴室用椅子を開脚させる際、ローラが床に対して回転するため、第1の脚の下部と第2の脚の下部とを離反させ易い。
【0022】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記ローラは、前記第1の脚と前記第2の脚の何れか前記他方の下部に対して着脱可能に設けられている。
【0023】
浴室用椅子は、浴室で使用されるものであり、例えばローラに水垢や髪の毛などのゴミが付着し易い。しかしながら、上記態様では、第1の脚と第2の脚の何れか他方の下部から、ローラを容易に取り外すことができる。そのため、キャップに付着したゴミを取り除き易く、キャップを掃除し易い。
【0024】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記浴室用椅子は、前記第1の脚と前記第2の脚の何れか前記他方の下部を覆い、底面から上方に向かって凹んだ嵌合空間が形成されたキャップと、前記キャップの前記嵌合空間に着脱可能に嵌め込まれ、前記ローラの下端が下方に露出するように、前記ローラが回転可能に収容されたローラカバーと、を備えている。
【0025】
上記態様によれば、ローラカバーを介してキャップにローラを取り付けることが可能である。また、ローラは、ローラカバーに回転可能に収容されている。よって、このようなキャップおよびローラカバーを設けることで、第1の脚と第2の脚の何れか他方の下部に、ローラを着脱可能に設けることができると共に、第1の脚と第2の脚の何れか他方の下部に設けた状態で、ローラを回転可能にすることができる。
【0026】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記キャップの内周面および前記ローラカバーの外周面の何れか一方には、凹部が形成されている。前記キャップの内周面および前記ローラカバーの外周面の何れか他方には、前記凹部に嵌る凸部が形成されている。
【0027】
上記態様によれば、ローラカバーがキャップに嵌め込まれているとき、凹部と凸部とが嵌まった状態となり、ローラカバーの上下方向の移動がより規制される。よって、ローラカバーがキャップから落下し難い。
【0028】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記キャップは、弾性体によって形成されている。前記ローラカバーの外周面の下部には、溝が形成されている。
【0029】
上記態様によれば、例えばマイナスドライバーなどの取り外し器具の先端をキャップとローラカバーの間から溝に差し込む。そして、取り外し器具の先端が溝に差し込まれた状態で取り外し器具を操作することで、ローラカバーをキャップから取り外すことができる。よって、取り外し器具を使用して、ローラカバー、および、ローラカバーに収容されたローラをキャップから取り外し易い。
【0030】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記滑り止め部の少なくとも前記床と接触する面は、ゴムによって形成されている。
【0031】
ゴムは床に対して滑り難い材質である。そのため、滑り止め部の少なくとも床と接触する面をゴムによって形成することで、床に対して滑り難い滑り止め部作製することができる。
【0032】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記滑り部は、前脚の下部に設けられている。前記滑り止め部は、後脚の下部に設けられている。
【0033】
例えば、浴室用椅子は、壁に背を向けた状態、かつ、壁に接近させた状態で利用されることがあり得る。このような場合、折り畳まれた浴室用椅子を壁に背を向けた状態、かつ、壁に接近した状態で配置し、浴室用椅子に対して上から力を加える。このとき、前脚の下部が後脚の下部に対して離反するように前方に移動することで、浴室用椅子を開脚させることができる。よって、壁に背を向け、かつ、壁に接近した状態の折り畳まれた浴室用椅子を開脚させ易い。
【0034】
本発明の好ましい他の一態様によれば、滑り部は、前記前脚の下部の前側に設けられている。
【0035】
上記態様によれば、開脚位置のときの前脚の下端の前側の部位は、折り畳み位置のとき、前脚の最下端に位置する。よって、前脚の下部の前側に滑り部を設けることで、折り畳み位置のときに、滑り部を床に接触させ易い。
【0036】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記浴室用椅子は、前記折り畳み位置および前記開脚位置のとき、側面視において前記移動機構よりも後方に配置されるように前記前脚に直接また間接的に設けられた押し下げ部を備えている。前記押し下げ部は、下向きに力が加えられることで、前記前脚の下部を前記後脚の下部に対して離反させるように構成されている。
【0037】
上記態様によれば、押し下げ部に対して上からの相対的に小さい力を加えた場合であっても、その力によって、前脚の下部が後脚の下部に対して離反するように前方に移動し易い。よって、相対的に小さい力で浴室用椅子を開脚させることができる。
【0038】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記折り畳み位置における前記床に対する前記滑り部の接触面積は、第1の面積である。前記開脚位置における前記床に対する前記滑り部の接触面積は、前記第1の面積よりも小さい第2の面積である。
【0039】
上記態様によれば、折り畳まれた浴室用椅子を開脚させるとき、滑り部と床との接触面積が大きいため、前脚および後脚のうち滑り部が設けられた脚を移動させ易い。また、開脚位置のとき、滑り部と床との接触面積が小さいため、床に対して浴室用椅子を滑り難くすることができる。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、折り畳まれた状態の浴室用椅子を容易に開脚させることが可能な浴室用椅子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】実施形態に係る浴室用椅子の斜視図である。
図2】浴室用椅子の正面図である。
図3】浴室用椅子の背面図である。
図4】浴室用椅子の平面図である。
図5】浴室用椅子の開脚した状態を示す左側面図である。
図6】浴室用椅子の折り畳まれた状態を示す左側面図である。
図7】浴室用椅子の斜視図である。
図8】浴室用椅子の斜視図である。
図9】開脚位置における前側滑り止めキャップおよびローラを示す左側面図である。
図10】折り畳み位置における前側滑り止めキャップおよびローラを示す左側面図である。
図11】他の実施形態において、開脚位置における前側滑り止めキャップを示す左側面図である。
図12】他の実施形態において、折り畳み位置における前側滑り止めキャップを示す左側面図である。
図13】他の実施形態に係るキャップ、ローラカバーおよびローラの斜視図である。
図14】他の実施形態に係るキャップ、ローラカバーおよびローラの正面断面図である。
図15】他の実施形態に係るキャップの斜視図である。
図16】他の実施形態に係るローラカバーおよびローラの側面図である。
図17】他の実施形態に係るローラカバーの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る浴室用椅子について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の一実施形態に過ぎず、当然ながら本発明を限定することを意図したものではない。
【0043】
<実施形態>
図1は、本実施形態に係る浴室用椅子100の斜視図である。以下の説明では、前、後、左、右、上、下とは、浴室用椅子100に座る利用者から見た前、後、左、右、上、下をそれぞれ意味するものとする。各図面中における符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を表す。ただし、これらの方向は説明の便宜上定めた方向に過ぎず、浴室用椅子100の態様を何ら限定するものではない。
【0044】
以下、浴室用椅子100のことを単に椅子100と称することとする。本実施形態に係る椅子100は、折り畳むことが可能なものである。椅子100は、主に浴室内で使用されるものである。椅子100は、例えば高齢者や要介護者などが浴室内においてシャワーを浴びるときなどに利用される。ただし、椅子100の使用場所は浴室に限定されず、また椅子100の利用対象者は、高齢者または要介護者に限定されない。
【0045】
図2図3図4は、それぞれ椅子100の正面図、背面図、平面図である。図5図6は、それぞれ椅子100の開脚した状態、椅子100の折り畳まれた状態を示す左側面図である。椅子100は、開脚した状態で使用され、非使用時には折り畳まれる。図7図8は、それぞれ椅子100の斜視図である。
【0046】
図5に示すように、椅子100は、例えば床5に載置される。ここで、床5には、浴室の床以外にも、浴槽の底面が含まれる。また、床5は、建物の各階の部屋や廊下の床であってもよい。
【0047】
図1図6に示すように、椅子100は、前脚10と、後脚20と、回転機構30と、座部50と、背もたれ70と、操作ハンドル80と、肘掛け90とを備えている。
【0048】
以下の説明において、各部位および部品の位置は、特に明記されていない限り、椅子100が開脚している状態の位置を示している。図2に示すように、前脚10は左右に一対設けられたパイプ状のものである。前脚10は、本発明の第1の脚の一例である。本実施形態では、左の前脚10と右の前脚10とは、左右対称の形状を有している。図5に示すように、前脚10は、前斜め下向きに延びる下前脚11と、下前脚11から後斜め上向きに延びる上前脚12と、を有している。なお、本実施形態では、前脚10の下部とは、下前脚11のことをいう。
【0049】
前脚10は、伸縮可能であり、長さ調整が可能である。図示は省略するが、前脚10は、前脚上パイプ部と、前脚上パイプ部がスライド可能に挿入された前脚下パイプ部とから構成されている。前脚上パイプ部の前脚下パイプ部に対する挿入長さを調整することで、前脚10の長さを調整することができる。
【0050】
本実施形態では、図3に示すように、左右の前脚10は、連結フレーム15によって互いが連結している。連結フレーム15は、図5に示すように、左右の前脚10の上前脚12から後斜め上向きに延びた左右一対の縦フレーム16と、図3に示すように、左の縦フレーム16と右の縦フレーム16との間に架け渡された横フレーム17とを有している。なお、左右一対の前脚10と、連結フレーム15とは、別体であってもよいし、一体であってもよい。
【0051】
図5に示すように、後脚20は、下部が前脚10の下部から離れた位置(ここでは、後方に離れた位置)に設けられている。側面視において、後脚20の少なくとも一部(本実施形態では、下部)が前脚10の後方に配置されている。図3に示すように、後脚20は左右に一対設けられたパイプ状の部材である。後脚20は、本発明の第2の脚の一例である。本実施形態では、左の後脚20と、右の後脚20とは、左右対称の形状を有している。図5に示すように、後脚20は、後斜め下向きに延びた下後脚21と、下後脚21から前斜め上向きに延びた上後脚22と、を有している。なお、本実施形態では、前脚20の下部とは、下前脚21のことをいう。
【0052】
後脚20も前脚10と同様に、伸縮可能であり、長さ調整が可能である。図示は省略するが、後脚20は、後脚上パイプ部と、後脚上パイプ部がスライド可能に挿入された後脚下パイプ部とから構成されている。後脚上パイプ部の後脚下パイプ部に対する挿入長さを調整することで、後脚20の長さを調整することができる。本実施形態では、左右の前脚10の長さ、および、左右の後脚20の長さを調整することで、座部50の高さを調整することができる。
【0053】
前脚10と後脚20とは、回転機構30を介して、相互回転可能に連結している。回転機構30は、本発明の移動機構の一例であり、前脚10の下部と後脚20の下部とを相対的に接近または離反させるものである。ここでは、回転機構30は、前脚10と後脚20とを連結し、前脚10と後脚20とを相互に回転させる機構である。なお、回転機構30の構成は特に限定されない。本実施形態では、回転機構30は、連結軸31を有している。本実施形態では、図2に示すように、前脚10および後脚20はそれぞれ左右に一対設けられているため、連結軸31も左右に一対設けられている。連結軸31は左右方向に延びた部材であり、図5に示すように、前脚10の上前脚12と、後脚20の上後脚22とを連結している。前脚10は、連結軸31を軸にして後脚20に対して回転可能であり、後脚20は、連結軸31を軸にして前脚10に対して回転可能である。本実施形態では、前脚10の下前脚11の下部(以下、単に前脚10の下部ともいう。)と、後脚20の下後脚21の下部(以下、単に後脚20の下部ともいう。)とが接近するように前脚10と後脚20を相対回転させることによって、図6に示すように、椅子100を折り畳むことができる。逆に、前脚10の下部と、後脚20の下部とが離反するように前脚10と後脚20を相対回転させることによって、図5に示すように、椅子100を開脚させることができる。
【0054】
本実施形態では、図6に示すように、前脚10の下部と後脚20の下部とが接近したとき、言い換えると、前脚10の下部と、後脚20の下部とが接近するように前脚10と後脚20とを相互回転させた後の前脚10および後脚20の位置を、折り畳み位置P1と称する。折り畳み位置P1は、椅子100が折り畳まれた状態の位置である。また、図5に示すように、前脚10の下部と後脚20の下部とが離反したとき、言い換えると、前脚10の下部と、後脚20の下部とが離反するように前脚10と後脚20とを相互回転させた後の前脚10および後脚20の位置を、開脚位置P2と称する。開脚位置P2は、椅子100が開脚された状態の位置である。
【0055】
図5および図6に示すように、折り畳み位置P1および開脚位置P2のとき、前脚10と後脚20とは交差している。図6に示すように、折り畳み位置P1のとき、前脚10の下前脚11の軸A11は、鉛直方向から前斜め上向きに傾いており、上前脚12の軸A12は、軸A11から後斜め上向きに延びている。ただし、折り畳み位置P1のとき、下前脚11の軸A11は鉛直方向に延びていてもよい。折り畳み位置P1のとき、後脚20の下後脚21の軸A21は、鉛直方向から後斜め上向きに傾いており、上後脚22の軸A22は、軸A21から前斜め上向きに延びている。軸A22の一部は折れ曲がっている。なお、折り畳み位置P1のとき、下後脚21の軸A21は鉛直方向に延びていてもよい。
【0056】
図5に示すように、開脚位置P2のとき、下前脚11の軸A11は前斜め下向きに延びており、上前脚12の軸A12は軸A11から後斜め上向き延びている。また、開脚位置P2のとき、下後脚21の軸A21は後斜め下向きに延びており、上後脚22の軸A22は軸A21から前斜め上向きに延びている。例えば、折り畳み位置P1のときの前脚10の下後端と後脚20の下前端との距離を第1の距離D1(図6参照)としたとき、開脚位置P2のときの前脚10の下後端と後脚20の下前端との距離は、上記第1の距離D1よりも長い第2の距離D2(図5参照)である。前脚10と後脚20を相対回転させることで、前脚10および後脚20の位置を、折り畳み位置P1から開脚位置P2に変更したり、開脚位置P2から折り畳み位置P1に変更したりすることができる。
【0057】
本実施形態では、図5に示すように、前脚10の下部には、本発明の他の滑り止め部の一例である前側滑り止めキャップ33、および、本発明の滑り部の一例であるローラ35が設けられている。後脚20の下端には、本発明の滑り止め部材の一例である後側滑り止めキャップ37が設けられている。
【0058】
図9は、開脚位置P2における前側滑り止めキャップ33およびローラ35を示す左側面図である。図10は、折り畳み位置P1における前側滑り止めキャップ33およびローラ35を示す左側面図である。図9に示すように、前側滑り止めキャップ33は、前脚10の下前脚11の下部を覆う部材である。前側滑り止めキャップ33は、本実施形態では前脚10とは別体であるが、一部または全部が前脚10と一体的に形成されてもよい。ここでは、前側滑り止めキャップ33は、図10に示すように折り畳み位置P1のときに床5とは接触せずに、図9に示すように開脚位置P2のときに床5と接触するように構成されている。ここで、開脚位置P2のときに床5に接触する前側滑り止めキャップ33の面を接触面33aとする。図10に示すように、折り畳み位置P1のとき、前側滑り止めキャップ33の接触面33aは、床5に接触しない状態で後斜め上向きに延びている。言い換えると、折り畳み位置P1のとき、接触面33aは、前端から後端に向かうに従って、床5と徐々に離れている。このとき、接触面33aの前端は、床5と接触していない。
【0059】
前側滑り止めキャップ33の床5との接触面積は、図10の折り畳み位置P1のときに第1の前側滑り止め面積であり、図9の開脚位置P2のときに第2の前側滑り止め面積である。なお、第1の前側滑り止め面積には、「0」が含まれるものとする。ここで、第1の前側滑り止め面積は、第2の前側滑り止め面積よりも小さい。
【0060】
ローラ35は、椅子100を開脚させるときに前脚10と後脚20との開脚の支援をするものである。ローラ35は、前脚10に回転可能に設けられている。ローラ35は、前脚10の下部の前側に設けられている。ここでは、前脚の下部の前側には、前側滑り止めキャップ33を介してローラ用ブラケット36が設けられている。このローラ用ブラケット36は、前側滑り止めキャップ33と別体であってもよいし、一体であってもよい。ローラ用ブラケット36には、左右方向に延びた回転軸36aが回転可能に取り付けられている。ローラ35は、回転軸36aに取り付けられており、回転軸36aと共に回転する。このように、ローラ35は、回転軸36a、ローラ用ブラケット36および前側滑り止めキャップ33を介して前脚10の下前脚11に間接的に設けられている。ただし、ローラ35は、前脚10の下部に回転可能に直接設けられていてもよい。
【0061】
図10に示すように、ローラ35は、折り畳み位置P1のときに床5と接触するように構成されている。本実施形態では、図9に示すように、ローラ35は、開脚位置P2のときに床5と接触しないように構成されているが、開脚位置P2のときに床5と接触していてもよい。図10に示すように、折り畳み位置P1のとき、前側滑り止めキャップ33は、ローラ35の下端よりも上方に配置されている。ローラ35の下端は、前側滑り止めキャップ33の接触面33aよりも下方に配置されている。そのため、折り畳み位置P1のとき、接触面33aは床5から浮いている状態となる。図9に示すように、開脚位置P2のとき、ローラ35は、前側滑り止めキャップ33の下端(ここでは、接触面33a)よりも上方に配置されている。そのため、開脚位置P2のとき、ローラ35は床5から浮いている状態となる。ここでは、折り畳み位置P1から開脚位置P2に位置が変更している途中において、ローラ35は床5と接触している。
【0062】
ローラ35の床5との接触面積は、図10の折り畳み位置P1のときに第1のローラ接触面積であり、図9の開脚位置P2のときに第2のローラ接触面積である。なお、第2のローラ接触面積には、「0」が含まれるものとする。ここで、第2のローラ接触面積は、第1のローラ接触面積よりも小さい。なお、本実施形態では、第1のローラ接触面積は本発明の第1の面積の一例であり、第2のローラ接触面積は本発明の第2の面積の一例である。
【0063】
図5に示すように、後側滑り止めキャップ37は、後脚20の下後脚21の下部を覆う部材である。後側滑り止めキャップ37は、後脚20とは別体であり、下後脚21に取り付けられている。しかしながら、後側滑り止めキャップ37の一部または全部は、後脚20と一体的に形成されていてもよい。後側滑り止めキャップ37は、図5および図6に示すように、折り畳み位置P1および開脚位置P2のときに床5と接触している。ここでは、折り畳み位置P1から開脚位置P2に位置が変更している途中において、後側滑り止めキャップ37の少なくとも一部は、床5と接触している。
【0064】
本実施形態では、図5に示すように、開脚位置P2のとき、後側滑り止めキャップ37の底面の全体が床5と接触している。ここで、開脚位置P2のときに床5と接触する後側滑り止めキャップ37の面を接触面37aと称する。図6に示すように、折り畳み位置P1のとき、後側滑り止めキャップ37の接触面37aは、前斜め上向きに延びている。言い換えると、折り畳み位置P1のとき、接触面37aは、後端から前端に向かうに従って、床5から徐々に離れている。折り畳み位置P1のときに接触面37aの少なくとも後端は、床5と接触している。
【0065】
後側滑り止めキャップ37の床5との接触面積は、図6の折り畳み位置P1のときに第1の後側滑り止め面積であり、図5の開脚位置P2のときに第2の後側滑り止め面積である。ここで、第1の後側滑り止め面積は、第2の後側滑り止め面積よりも小さい。
【0066】
本実施形態では、床5に対する後側滑り止めキャップ37の滑り抵抗は、第1の抵抗である。床5に対するローラ35の滑り抵抗は、第2の抵抗である。床5に対する前側滑り止めキャップ33の滑り抵抗は、第3の抵抗である。ここで、「滑り抵抗」とは、椅子100に対して下向きの力を加えたときに床5との間で発生する抵抗のことをいう。「滑り抵抗」には、床5に対して部材が滑っている際に発生する抵抗の他に、床5に対して部材が回転している際に発生する抵抗も含まれるものとする。本実施形態では、ローラ35の第2の抵抗は、後側滑り止めキャップ37の第1の抵抗よりも小さく、かつ、前側滑り止めキャップ33の第3の抵抗よりも小さい。また、第1の抵抗は、第3の抵抗と同じである。ここで、第1の抵抗と第3の抵抗とが同じとは、多少の誤差が含まれるものとする。なお、第1の抵抗は、第3の抵抗よりも大きくてもよいし、小さくてもよい。
【0067】
前側滑り止めキャップ33の接触面33a、および、後側滑り止めキャップ37の接触面37aは、ゴムによって形成されている。本実施形態では、前側滑り止めキャップ33の全体、および、後側滑り止めキャップ37の全体がゴムによって形成されている。ただし、前側滑り止めキャップ33および後側滑り止めキャップ37を形成する材料は、ゴムに限定されない。前側滑り止めキャップ33の接触面33a以外の部位、および、後側滑り止めキャップ37の接触面37a以外の部位は、ゴム以外の材料によって形成されていてもよい。例えばローラ35における床5と接触する部位は、ポリプロピレンによって形成されている。ただし、ローラ35における床5と接触しない部位は、ポリプロピレンによって形成されていてもよいし、ポリプロピレンとは異なる材料、例えば前側滑り止めキャップ33よりも滑り抵抗が小さい材料によって形成されていてもよい。
【0068】
本実施形態では、図8に示すように、左の前脚10と右の前脚10との間には、第1支持バー41および第1連結バー44が架け渡されている。第1支持バー41および第1連結バー44は、何れも左右方向に延びており、左の前脚10と右の前脚10とを連結している。第1支持バー41は、第1連結バー44の後斜め上方に配置されており、椅子100が開脚しているときに座部50を支持するように構成されている。第1支持バー41は、前脚10の上前脚12に接続されている。第1連結バー44は、前脚10の下前脚11に接続されていてもよいし、上前脚12に接続されていてもよい。
【0069】
図7に示すように、左の後脚20と右の後脚20との間には、第2支持バー42および第2連結バー45が架け渡されている。第2支持バー42および第2連結バー45は、何れも左右方向に延びており、左の後脚20と右の後脚20とを連結している。第2支持バー42は、第2連結バー45の前斜め上方に配置されており、椅子100が開脚しているときに座部50を支持するように構成されている。第2支持バー42は、後脚20の上後脚22に接続されている。第2連結バー45は、後脚20の下後脚21に接続されていてもよいし、上後脚22に接続されていてもよい。
【0070】
図8に示すように、座部50の裏面には、左右一対の後ブラケット61が設けられている。後ブラケット61には、第2支持バー42が回転自在に支持されている。そのため、座部50は、後ブラケット61および第2支持バー42を介して、後脚20に対して回転可能に構成されている。
【0071】
座部50の裏面には、後ブラケット61の他に、左右一対の前ブラケット62が設けられている。前ブラケット62は、後ブラケット61よりも前方に配置され、後ブラケット61よりも左右方向の中央側に配置されている。前ブラケット62には、左右方向に延びた連結軸63が取り付けられている。
【0072】
本実施形態では、前ブラケット62に取り付けられた連結軸63と第1連結バー44とは、リンク66によって連結されている。連結軸63は左右に一対設けられているため、リンク66も左右に一対設けられている。リンク66は、開脚している椅子100を折り畳むとき、および、折り畳まれた椅子100を開脚するときに、後脚20に対する座部50の回転と、回転機構30の連結軸31回りの前脚10と後脚20との相対回転とを連動させる部材である。
【0073】
本実施形態では、図7に示すように、座部50の裏面には、左右一対の被支持部64が設けられている。被支持部64は、後ブラケット61および前ブラケット62よりも後方に配置されており、座部50の裏面から突出している。被支持部64は、椅子100が開脚したときに第1支持バー41と接触し、第1支持バー41に支持されるように構成されている。よって、椅子100が開脚したとき、座部50は被支持部64および第1支持バー41を介して、前脚10に支持される。
【0074】
また、図5の開脚位置P2のときに、後脚20の上後脚22の一部22aは座部50から下方に離間している。ここで、この部分を離間部22aと称する。離間部22aの上には補強部材65が設けられている。図7に示すように、補強部材65は、椅子100が開脚したときに第1支持バー41と接触し、第1支持バー41を支持するように構成されている。そのため、椅子100が開脚したときに、第1支持バー41は補強部材65を介して後脚20によって支持される。
【0075】
図4に示すように、座部50は、上面に形成され、利用者が座る座面51を有している。座部50の材料は特に限定されないが、本実施形態では、座部50は合成樹脂製のブロー成形品である。座部50の後端部には前方に凹んだ凹部50aが形成されている。凹部50aは、座部50の左右方向の中央に形成されている。凹部50aの内側に把手56が配置されている。把手56は座部50に固定されている。
【0076】
背もたれ70は、連結フレーム15の横フレーム17に取り付けられている。本実施形態では、背もたれ70は横フレーム17と別体であるが、背もたれ70と横フレーム17とは一体的に形成されてもよい。図2に示すように、背もたれ70には、孔71が形成されている。利用者は、この孔71に指を挿入して背もたれ70を把持することによって、椅子100を片手で持ち上げたり、片手で移動させたりすることが可能である。ここでは、背もたれ70の下端部には、上方に凹んだ凹部72が形成されている。なお、背もたれ70の材料は特に限定されないが、本実施形態では、背もたれ70は合成樹脂製のブロー成形品である。なお、本実施形態では、背もたれ70の後部70aは、本発明の押し下げ部の一例である。図6に示すように、折り畳み位置P1のとき、背もたれ70の後部70aは、側面視において回転機構30よりも後方に配置されている。
【0077】
図5に示すように、操作ハンドル80は、折り畳まれた椅子100を開脚する際、または、開脚している椅子100を折り畳む際、利用者が力を加えるものである。例えば、操作ハンドル80に対して鉛直方向の下向きに力を加えることで、折り畳まれた椅子100を開脚させることができる。本実施形態では、操作ハンドル80は、背もたれ70の後方に設けられている。ここでは、図3に示すように、連結フレーム15の横フレーム17の中央には、ブラケット81が設けられている。このブラケット81には、左右方向に延びた軸82(図5参照)が設けられている。操作ハンドル80の前端は、軸82に設けられており、軸82と共に回転する。ここでは、操作ハンドル80は、その前端を中心にして軸82の回りに回転可能であり、操作ハンドル80を上げ下げすることができる。図6に示すように、折り畳み位置P1のとき、操作ハンドル80は、側面視において回転機構30よりも後方に配置されている。
【0078】
本実施形態では、操作ハンドル80は、ワイヤー(図示せず)を介して左右一対のピン84(図3参照)が接続されている。図3に示すように、左右一対のピン84は、左右一対の前脚10の上前脚12の間であって、第1支持バー41の両端部に設けられた収容部材48から左右方向の中心に向かって突出可能に設けられている。この収容部材48よりも左右方向の中央側であって、座部50の裏面に設けれた左右一対の被支持部64には、それぞれフック49が設けられている。ピン84が収容部材48から突出しているとき、フック49と係合する。ここでは、操作ハンドル80が下方の位置にあると、ピン84がフック49と係合し、操作ハンドル80を上方に持ち上げると、ピン84はフック49から外れる。図示は省略するが、左右一対の収容部材48の内部には、バネが設けられている。当該バネは、折り畳み位置P1のときに折り畳みの状態を維持するようにピン84を付勢し、開脚位置P2のときに開脚状態を維持するように、ピン84がフック49と係合するようにピン84を付勢するように構成されている。よって、椅子100が折り畳まれている状態のときには、操作ハンドル80を操作しない限り、折り畳み位置P1の状態が保たれる。一方、椅子100が開脚している状態のときには、操作ハンドル80を操作しない限り、開脚位置P2の状態が保たれる。
【0079】
図1に示すように、肘掛け90は、連結フレーム15の左右一対の縦フレーム16にそれぞれ取り付けられている。本実施形態では、図4に示すように、縦フレーム16には、前方に突出したブラケット18が設けられている。ブラケット18には、左右方向に延びた水平軸19が設けられている。肘掛け90は、水平軸19に回転可能に取り付けられている。肘掛け90は、水平軸19およびブラケット18を介して、縦フレーム16に回転可能に取り付けられている。ここでは、肘掛け90は、先端部が前方に位置する水平な状態と、先端部が上方に位置する鉛直な状態との間で回転可能である。
【0080】
以上、椅子100の構成について説明した。次に、椅子100の開脚操作および折り畳み操作の一例について説明する。
【0081】
椅子100の開脚操作および折り畳み操作は片手で行うことができる。図5に示すように、開脚した状態の椅子100を折り畳むときには、まず、肘掛け90を跳ね上げ、肘掛け90を水平な状態から鉛直な状態にする。次に、背もたれ70および操作ハンドル80を手で掴む。このとき、操作ハンドル80が上方に回転し、ピン84(図3参照)がフック49(図3参照)から外れる。次に、背もたれ70を持ち上げると、座部50は、第1支持バー41を中心に回転し、図6に示すように、座部50の後部が上方に移動する一方、座部50の前部が下方に移動する。
【0082】
本実施形態では、図8に示すように、座部50の前部はリンク66を介して第1連結バー44に連結されているため、座部50の前部が下方に移動すると、前脚10はリンク66および第1連結バー44から後斜め下向きの力を受ける。その結果、図6に示すように、前脚10と後脚20とが接近するように、前脚10は回転機構30の連結軸31を中心に回転する。椅子100を持ち上げると、前脚10および後脚20には自重が作用する。それらの自重によっても、前脚10および後脚20は連結軸31を中心として相対回転する。なお、前脚10と後脚20とが相対回転する際、前側滑り止めキャップ33の接触面33aが床5から浮き上がると同時に、床5に接触していなかったローラ35が床5に接触する。後側滑り止めキャップ37の接触面37aでは、前端が床5から離れていき、ローラ35が床5に接触しているときには、接触面37aの後端のみが床5に接触している状態となる。ここでは、前脚10はローラ35の回転に伴い後脚20に向かって接近し易い。このように、前脚10および後脚20が相対回転すると、図6に示すように椅子100は折り畳まれ、折り畳み位置P1で椅子100は維持される。
【0083】
折り畳まれた椅子100が開脚するときには、利用者は、前脚10および後脚20を他の部材を介して床5から浮かせることなく、椅子100を開脚させることができる。ここでは、まず利用者は、背もたれ70の後部70aに手を置き、背もたれ70の後部70aに対して鉛直方向の下向きの力を加える。このとき、上述の折り畳み動作と逆の動作が行われ、前脚10と後脚20とが連結軸31を中心して相対回転する。その結果、前脚10の下部と後脚20の下部とが徐々に離反する。ここで、図6に示す折り畳み位置P1のとき、後側滑り止めキャップ37の接触面37aの後端が床5に接触している。そして、図10に示すように、折り畳み位置P1のとき、前側滑り止めキャップ33の接触面33aは、床5から離れており、ローラ35が床5に接触している。折り畳み位置P1から開脚位置P2に位置が移動する間において、後側滑り止めキャップ37が床5に接触しているため、後脚20の下端における床5に対する位置は略変わらない。一方、折り畳み位置P1から開脚位置P2に位置が移動する間において、前側滑り止めキャップ33が床5に接触せず、ローラ35が床5に接触している状態である。そのため、前脚10の下部は、ローラ35の回転に伴い前方に移動し、ローラ35の回転に伴い開脚動作が促進される。このような動作をすることで、図5に示すように、椅子100は開脚し、開脚位置P2のような姿勢となる。なお、図9に示すように、開脚位置P2のときには、前側滑り止めキャップ33の接触面33aが床5に接触し、かつ、ローラ35が床5から離れているため、前脚10は床5に対して滑り難くなる。
【0084】
以上、本実施形態では、図6に示すように、折り畳み位置P1のときにローラ35と後側滑り止めキャップ37とが床5に接触している。このとき、椅子100に対して上から力を加えることで、ローラ35が床5に対して移動し、前脚10の下部と後脚20の下部とが離反するように前脚10と後脚20とが相互回転する。その結果、図5に示すように、椅子100を開脚させた状態にすることができる。このように、本実施形態では、ローラ35と後側滑り止めキャップ37とを床5に接触させた状態で、折り畳まれた椅子100を開脚させることができる。よって、特許文献1に開示された浴室用椅子のように、前脚を一度床から浮かせる動作を行わなくてもよいため、折り畳まれた状態の椅子100を容易に開脚させることができる。
【0085】
本実施形態では、ローラ35は前脚10の下部に設けられている。例えば、椅子100は、壁に背を向けた状態、かつ、壁に接近させた状態で使用することがあり得る。このような場合、折り畳まれた椅子100を壁に背を向けた状態、かつ、壁に接近した状態で配置し、椅子100に対して上から力を加える。このとき、前脚10の下部が後脚20の下部に対して離反するように前方に移動することで、椅子100を開脚させることができる。よって、壁に背を向けた状態、かつ、壁に接近した状態の折り畳まれた椅子100を開脚させ易い。
【0086】
本実施形態では、ローラ35は、前脚10の下部の前側に設けられている。開脚位置P2のときの前脚10の下端の前側の部位は、折り畳み位置P1のとき、前脚10の最下端に位置する。よって、前脚10の下部の前側にローラ35を設けることで、折り畳み位置P1のときに、ローラ35を床5に接触させ易い。
【0087】
本実施形態では、図10に示すように、折り畳み位置P1のとき、前側滑り止めキャップ33は、ローラ35の下端よりも上方に配置されている。このことによって、折り畳み位置P1のとき、前脚10は、ローラ35を介して床5に接触し、前側滑り止めキャップ33は床5に接触していない。そのため、折り畳まれた椅子100を開脚させ易い。また、図9に示すように、開脚位置P2のとき、ローラ35は、前側滑り止めキャップ33の下端よりも上方に配置されている。このことによって、開脚位置P2のとき、前脚10は、前側滑り止めキャップ33を介して床5に接触しており、ローラ35は床5に接触していない。よって、開脚した状態の椅子100に利用者が座ったとき、椅子100が床5に対して滑り難くすることができる。
【0088】
本実施形態では、図5および図6に示すように、背もたれ70の後部70aは、折り畳み位置P1および開脚位置P2のとき、側面視において回転機構30(詳しくは、連結軸31)よりも後方に配置されるように、連結フレーム15を介して前脚10に設けられている。このことによって、背もたれ70の後部70aに対して上からの相対的に小さい力(例えば、20N~80N程度)を加えた場合であっても、その力によって後脚20に対して前脚10が回転するため、前脚10の下部が後脚20の下部に対して離反するように前方に移動し易い。よって、相対的に小さい力で椅子100を開脚させることができる。
【0089】
本実施形態では、折り畳み位置P1における床5に対するローラ35の接触面積は、第1のローラ接触面積である。開脚位置P2における床5に対するローラ35の接触面積は、第1のローラ接触面積よりも小さい第2のローラ接触面積である。このことによって、折り畳まれた椅子100を開脚させるとき、ローラ35と床5との接触面積が大きいため、前脚10を前方に移動させ易い。また、開脚位置P2のとき、ローラ35と床5との接触面積が小さい(ここでは、0である)ため、床5に対して椅子100を滑り難くすることができる。
【0090】
本実施形態では、図10に示すように、ローラ35は、前脚10の下部に対して回転可能に設けられている。このことによって、折り畳まれた椅子100を開脚させる際、ローラ35を床5に回転させながら、前脚10の下部と後脚20の下部とを離反させ易い。
【0091】
本実施形態では、前側滑り止めキャップ33の接触面33a、および、後側すべり止めキャップ37の接触面37aは、ゴムによって形成されている。ゴムは床5に対して滑りにくい材質である。そのため、接触面33a、37aをゴムによって形成することで、床5に対して滑り難い前側滑り止めキャップ33および後側すべり止めキャップ37が滑り難くすることを作製することができる。
【0092】
以上、本実施形態に係る椅子100について説明した。次に、他の実施形態に係る浴室用椅子について説明する。以下の説明において、既に説明した構成と同様の構成には同じ符号を使用し、その説明は適宜省略する。
【0093】
<他の実施形態>
上記実施形態では、本発明の滑り部の一例として、ローラ35が採用され、椅子100を開脚させるとき、ローラ35の回転によって前脚10を床5に対して動かし易くしていた。しかしながら、本発明の滑り部は、ローラ35に限定されない。図11は、他の実施形態において、開脚位置P2における前側滑り止めキャップ133を示す左側面図である。図12は、折り畳み位置P1における前側滑り止めキャップ133を示す左側面図である。
【0094】
例えば、図11に示すように、前脚10の下前脚11には、前側滑り止めキャップ133が設けられており、前側滑り止めキャップ133には、滑り止め面133aと、本発明の滑り部の一例である滑り面135が設けられてもよい。側面視において、滑り面135は、滑り止め面133aの前方に配置されている。図12に示すように、折り畳み位置P1のときに、滑り止め面133aは床5に接触せずに、滑り面135が床5に接触している。ここでは、折り畳み位置P1のとき、滑り面135は水平方向に延びた面であり、滑り止め面133aは滑り面135から後斜め上向きに延びている。
【0095】
図11に示すように、開脚位置P2のときに、滑り止め面133aは床5に接触し、滑り面135は床5に接触していない。ここでは、開脚位置P2のとき、滑り止め面133aは水平方向に延びており、滑り面135は滑り止め面133aから前斜め上向きに延びている。
【0096】
本実施形態では、滑り止め面133aの床5に対する滑り抵抗と、滑り面135の床5に対する滑り抵抗とは異なる。例えば、床5に対する後側滑り止めキャップ37(図5参照)の滑り抵抗を第1の抵抗とし、床5に対する滑り面135の滑り抵抗を第2の抵抗とし、床5に対する滑り止め面133aの滑り抵抗を第3の抵抗とする。このとき、滑り面135の第2の抵抗は、後側滑り止めキャップ37の第1の抵抗よりも小さく、かつ、滑り止め面133aの第3の抵抗よりも小さい。また、第1の抵抗は、第3の抵抗と同じであるが、第3の抵抗より大きくてもよいし、小さくてもよい。このような滑り抵抗の関係となるように、滑り面135を形成する材料と、滑り止め面133aを形成する材料とを異ならせてもよい。また、このような滑り抵抗の関係となるように、滑り止め面133aおよび滑り面135に対して表面加工を施してもよい。
【0097】
本実施形態であっても、第1実施形態と同様の効果が得られ、折り畳まれた椅子を開脚させ易い。
【0098】
なお、上記実施形態では、開脚位置P2のときに、ローラ35は、床5から離れていた。しかしながら、開脚位置P2のときに、ローラ35は、前側滑り止めキャップ33の接触面33aと共に床5に接触していてもよい。
【0099】
上記実施形態において、前側滑り止めキャップ33を省略することが可能である。この場合、ローラ35は、前脚10の下前脚11の下端に回転可能に取り付けられているとよい。この場合、折り畳み位置P1および開脚位置P2の両方の位置において、ローラ35は床5に接触している状態となる。なお、前側滑り止めキャップ33が省略されている場合、後側滑り止めキャップ37の接触面37aと床5との間の滑り抵抗が、利用者が椅子100に座る際に椅子100が床5に対して滑り難くなる程度の大きさであることが好ましい。
【0100】
上記実施形態では、ローラ35は、前脚10の下部の前側に設けられていた。しかしながら、前脚10に対するローラ35の位置は特に限定されない。例えば、ローラ35は、前脚10の下部の後側に設けられていてもよい。また、ローラ35は、前脚10の下部の左側に設けられていてもよいし、前脚10の下部の右側に設けられていてもよい。
【0101】
上記実施形態では、本発明の滑り部の一例であるローラ35は、前脚10に設けられていたが、後脚20に設けられていてもよい。この場合、ローラ35は、後側滑り止めキャップ37の後側に設けられているとよい。ただし、ローラ35は、後側滑り止めキャップ37の前側に設けられていてもよいし、左側または右側に設けられていてもよい。この場合、折り畳み位置P1のときに、後側滑り止めキャップ37の接触面37aは床5と接触せずに、ローラ35が床5と接触する。折り畳み位置P1のときに、接触面37aは、ローラ35の下端よりも上方に位置している。この場合、開脚位置P2のときに、ローラ35は床5に接触していてもよいし、接触していなくてもよい。
【0102】
上記実施形態において、本発明に係る移動機構は回転機構30であり、回転機構30によって前脚10と後脚20とを相対的に回転させることで、椅子100を開脚させたり、折り畳んだりしていた。しかしながら、本発明に係る移動機構は、後脚20の下部に対して前脚10の下部を相対的にスライドさせることで、前脚10の下部と後脚20の下部とを相対的に接近または離反させるように構成されていてもよい。
【0103】
上記実施形態では、前脚10と後脚20とを相対回転させることで、椅子100を開脚させたり、折り畳んだりしていた。しかしながら、左脚(すなわち、左前脚10および左後脚20)の下部と、右脚(すなわち、右前脚10および右後脚20)の下部と接近させたり、離反させたりすることで、椅子100を開脚させたり、折り畳んだりしてもよい。このとき、本発明の移動機構(上記実施形態では、回転機構30)は、左脚の下部と、右脚の下部とを相対的に接近または離反させるように構成されている。この場合、例えば右脚が本発明の第1の脚に対応し、左脚が本発明の第2の脚に対応する。この場合の移動機構は、左脚と右脚とを相互回転可能に連結させていてもよいし、左脚の下部に対して右脚の下部を相対的にスライドさせることで、左右両脚のそれぞれ下部を相対的に接近または離反させるように構成されていてもよい。また、この場合、ローラ35は、左右一対の前脚10の一方(例えば、右前脚10)、および、左右一対の後脚20の一方(例えば、右後脚20)に設けられていてもよい。
【0104】
この場合であっても、折り畳まれた椅子100が開脚するときには、利用者は、左脚および右脚を他の部材を介して床5から浮かせることなく、椅子100を開脚させることができる。折り畳まれた椅子100を開脚させるとき、左脚の下部と右脚の下部とが徐々に離反する。このとき、ローラ35が床5に接触しているため、折り畳み位置P1から開脚位置P2に位置が移動する間において、右脚の下部は、ローラ35の回転に伴い右方に移動し、ローラ35の回転に伴い開脚動作が促進される。このような動作をすることで、椅子100を開脚させることができる。なお、この場合、ローラ35は、左右一対の前脚10の他方(例えば、左前脚10)、および、左右一対の後脚20の他方(例えば、左後脚20)に設けられていてもよい。
【0105】
上記実施形態では、背もたれ70の後部70aが本発明の押し下げ部の一例であった。しかしながら、押し下げ部は、背もたれ70の後部70aに限定されず、前脚10に直接または間接的に設けられた部位であって、前脚10と連動して回転する部位であってもよい。例えば、本発明の押し下げ部は、操作ハンドル80であってもよいし、連結フレーム15であってもよいし、座部50の後部であってもよいし、肘掛け90の後部であってもよい。
【0106】
上記実施形態では、操作ハンドル80は、背もたれ70の後方に設けられていたが、その設置場所は特に限定されない。例えば、操作ハンドル80は、座部50の裏面に設けられていてもよい。
【0107】
上記実施形態では、ローラ35は、回転軸36a、ローラ用ブラケット36および前側滑り止めキャップ33を介して前脚10の下部に取り付けられていた。ローラ35は、前脚10の下部、および、前側滑り止めキャップ33から容易に取り外すことができなかった。しかしながら、ローラ35は、前脚10の下部に対して着脱可能、すなわち取り外し可能に設けられていてもよい。
【0108】
図13図14は、それぞれ他の実施形態に係るキャップ233、ローラカバー240およびローラ235の斜視図、正面断面図である。図13は、キャップ233、ローラカバー240およびローラ235を前方の左斜め下から見た図である。図15は、キャップ233の斜視図である。図16図17は、それぞれローラカバー240の側面図、分解斜視図である。図13に示すように、ローラ235は、ローラカバー240およびキャップ233を介して前脚10の下部に対して着脱可能に設けられている。
【0109】
ここでは、キャップ233は、前脚10の下部を下方から覆うものである。図15に示すように、キャップ233には、底面から上方に向かって凹んだ嵌合空間234が形成されている。本実施形態では、キャップ233の底面は開口しており、キャップ233の内部に嵌合空間234が形成されている。嵌合空間234は、キャップ233の底面の開口と繋がっている。キャップ233は、弾性体によって形成されている。弾性体とは、例えばゴムのことである。キャップ233は例えばゴム製である。
【0110】
図14に示すように、ローラカバー240は、キャップ233の嵌合空間234に下方から着脱可能に嵌め込まれる。ローラカバー240は、嵌合空間234に合致した形状である。ローラカバー240には、ローラ235の下端がローラカバー240から下方に露出するように、ローラ235が回転可能に収容されている。本実施形態では、図17に示すように、ローラカバー240は、左右一対の左カバー240aと右カバー240bの2つの部材を有している。しかしながら、ローラカバー240は、1つの部材によって構成されていてもよいし、3つ以上の部材によって構成されていてもよい。
【0111】
本実施形態では、左カバー240aの右端に右カバー240bの左端を取り付ける。図14に示すように、左カバー240aと右カバー240bとを組み付けたとき、内部にカバー空間241が形成される。また、左カバー240aと右カバー240bとを組み付けたとき、底部が開口し、カバー空間241が上記底部の開口と繋がっている。
【0112】
本実施形態では、ローラカバー240には、回転軸245が設けられている。回転軸245には、ローラ235が挿入されている。ローラ235は、回転軸245を軸にして回転する。回転軸245は、カバー空間241に配置され、左右に延びている。ここでは、回転軸245は、右カバー240bと一体成形されており、右カバー240bから左カバー240aに向かって延びている。なお、回転軸245は、左カバー240aと一体成形されていてもよいし、左カバー240aおよび右カバー240bと別体であってもよい。
【0113】
本実施形態では、図15に示すように、キャップ233の内周面には、凹部251が形成されている。図14に示すように、凹部251は、キャップ233の内周面に2つ形成されているが、凹部251の数は特に限定されず、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。ここでは、2つの凹部251は対向している。一方の凹部251は、キャップ233の内周面の左面の下部に形成されおり、他方の凹部251は、キャップ233の内周面の右面の下部に形成されている。
【0114】
ローラカバー240の外周面には、凹部251に嵌る凸部252が形成されている。凸部252は、ローラカバー240の外周面から突出している。凸部252の数は特に限定されないが、例えば凹部251の数と同じの2つである。一方の凸部252は、ローラカバー240の左カバー240aの外周面の下部に形成されている。他方の凸部252は、ローラカバー240の右カバー240bの外周面の下部に形成されている。本実施形態では、ローラカバー240がキャップ233の嵌合空間234に嵌め込まれたとき、凸部252が凹部251に嵌る。
【0115】
なお、本実施形態では、凹部251がキャップ233の内周面に形成され、凸部252がローラカバー240の外周面に形成されているが、凹部251の位置と、凸部252の位置とが逆であってもよい。すなわち、凹部251がローラカバー240の外周面に形成され、凸部252がキャップ233の内周面に形成されていてもよい。
【0116】
本実施形態では、図16に示すように、ローラカバー240の外周面の下部には、溝255が形成されている。溝255の数および位置は特に限定されない。ここでは、2つの溝255がローラカバー240に形成されている。具体的には、一方の溝255は、ローラカバー240の外周面の前下部に形成されており、他方の溝255は、ローラカバー240の外周面の後下部に形成されている。ここでは、図17に示すように、ローラカバー240の前下部に形成された一方の溝255は、左カバー240aから右カバー240bに亘って形成されている。図示は省略するが、ローラカバー240の後下部に形成された他方の溝255も、左カバー240aから右カバー240bに亘って形成されている。ただし、2つの溝255は、左カバー240aおよび右カバー240bの何れか一方のみに形成されていてもよい。溝255には、例えばマイナスドライバーなどの取り外し器具(図示せず)が差し込まれるものである。
【0117】
例えばローラカバー240をキャップ233から取り外す際、まず上記の取り外し器具を下方からローラカバー240とキャップ233との間に差し込む。そして、取り外し器具を上方に押し込み、取り外し器具の先端を溝255に差し込む。その後、取り外し器具の先端が溝255に差し込まれた状態で、当該先端を下方に移動させて、ローラカバー240を下方に押し出す。その結果、ローラカバー240をキャップ233から取り外すことができる。
【0118】
以上のように、本実施形態では、図13に示すように、ローラ235は、浴室用椅子の前脚10の下部に着脱可能に設けられている。浴室用椅子は、浴室で使用されるものであり、例えばキャップ233の内部やローラ235に、水垢や髪の毛などのゴミが付着し易い。しかしながら、ローラ235は、前脚10から容易に取り外すことができるため、キャップ233やローラ235に付着したゴミを取り除き易く、キャップ233やローラ235を掃除し易い。
【0119】
本実施形態では、ローラカバー240を介してキャップ233にローラ235を取り付けることが可能である。また、ローラ235は、ローラカバー240に回転可能に収容されている。このようなキャップ233およびローラカバー240を設けることで、ローラ235を前脚10の下部に着脱可能に設けることができると共に、前脚10の下部に設けた状態で回転可能にすることができる。
【0120】
本実施形態では、図15に示すように、キャップ233の内周面には凹部251が形成され、図16に示すように、ローラカバー240の外周面には、凹部251に嵌る凸部252が形成されている。このことによって、ローラカバー240がキャップ233に嵌め込まれているとき、凹部251と凸部252とが嵌まった状態となり、ローラカバー240の上下方向の移動がより規制される。よって、ローラカバー240がキャップ233から落下し難い。
【0121】
本実施形態では、ローラカバー240の外周面の下部には、溝255が形成されている。このことによって、マイナスドライバーなどの取り外し器具の先端を溝255に差し込むことで、ローラカバー240およびローラ235をキャップ233から取り外すことができる。よって、取り外し器具を使用して、ローラカバー240およびローラ235をキャップ233から取り外し易い。
【符号の説明】
【0122】
10 前脚
20 後脚
30 回転機構
33 前側滑り止めキャップ(他の滑り止め部)
35 ローラ(滑り部)
37 後側滑り止めキャップ(滑り止め部)
100 椅子(浴室用椅子)
P1 折り畳み位置
P2 開脚位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図16
図17