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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-20
(45)【発行日】2023-06-28
(54)【発明の名称】状態判定システム
(51)【国際特許分類】
   G16H 50/30 20180101AFI20230621BHJP
   G06Q 50/10 20120101ALI20230621BHJP
   G06Q 50/22 20180101ALI20230621BHJP
【FI】
G16H50/30
G06Q50/10
G06Q50/22
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019064676
(22)【出願日】2019-03-28
(65)【公開番号】P2020166413
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-01-28
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100161230
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 雅博
(72)【発明者】
【氏名】早川 英明
【審査官】佐伯 憲太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-186402(JP,A)
【文献】特開2001-041531(JP,A)
【文献】特開2018-045545(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 50/22
G16H 10/00-80/00
G06Q 50/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
住宅に居住する居住者の精神状態を判定する状態判定システムであって、
前記住宅内に設けられた生体センサを用いて、前記居住者の生体情報を定期的に取得する生体情報取得手段と、
前記住宅内に設けられた行動センサを用いて、前記住宅内における前記居住者の日常行動に関する日常行動情報を定期的に取得する行動情報取得手段と、
前記生体情報取得手段により取得される前記居住者の生体情報の変化と、前記行動情報取得手段により取得される前記居住者の日常行動情報の変化とに基づいて、前記居住者の精神状態を判定する状態判定手段と、
を備え
前記居住者の前記生体情報の基準データである生体基準データが予め登録されており、
前記居住者の前記日常行動情報の基準データである日常行動基準データが予め登録されており、
前記状態判定手段は、
前記生体情報取得手段により取得された前記居住者の生体情報を前記生体基準データと比較し、その比較結果に基づき前記居住者の生体情報の変化を検出し、
前記行動情報取得手段により取得された前記居住者の日常行動情報を前記日常行動基準データと比較し、その比較結果に基づき前記居住者の日常行動情報の変化を検出することを特徴とする状態判定システム。
【請求項2】
前記行動情報取得手段は、前記日常行動情報として、前記居住者が身支度を行う際の行動に関する身支度行動情報を取得する、請求項1に記載の状態判定システム。
【請求項3】
前記生体情報取得手段は、前記生体情報として、前記居住者の体重情報を取得する、請求項1又は2に記載の状態判定システム。
【請求項4】
前記行動情報取得手段は、前記日常行動情報として、前記居住者が身支度を行う際の行動に関する身支度行動情報を取得し、
前記日常行動基準データとして、平日における前記居住者の身支度に関する平日用基準データと、休日における前記居住者の身支度に関する休日用基準データとが登録されており、
前記状態判定手段は、前記行動情報取得手段により平日に取得された前記居住者の身支度行動情報については前記平日用基準データと比較し、前記行動情報取得手段により休日に取得された前記居住者の身支度行動情報については前記休日用基準データと比較する、請求項1~3のいずれか1項に記載の状態判定システム。
【請求項5】
前記状態判定手段により判定された前記居住者の精神状態に応じて、前記居住者に推奨する行動を提案する提案手段を備える、請求項1~のいずれか1項に記載の状態判定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、状態判定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、健康管理を支援する種々のシステムが提案されている。例えば、特許文献1には、ユーザに対して精神状態に関する問診を定期的に行うことにより、遠隔でありながらユーザの精神状態を判定するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-355328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術では、ユーザが問診を受けるとともに、その問診の回答を入力することで、システム側がユーザの精神情報を取得する構成となっているため、ユーザの負担が大きいものとなっている。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ユーザに負担をかけることなく、適切にユーザの精神状態を判定することができる状態判定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく、第1の発明の状態判定システムは、
住宅に居住する居住者の精神状態を判定する状態判定システムであって、
前記住宅内に設けられた生体センサを用いて、前記居住者の生体情報を定期的に取得する生体情報取得手段と、
前記住宅内に設けられた行動センサを用いて、前記住宅内における前記居住者の日常行動に関する日常行動情報を定期的に取得する行動情報取得手段と、
前記生体情報取得手段により取得される前記居住者の生体情報の変化と、前記行動情報取得手段により取得される前記居住者の日常行動情報の変化とに基づいて、前記居住者の精神状態を判定する状態判定手段と、
を備えることを特徴とする。
【0007】
居住者の精神状態に良くない変化がある場合、身体的な状態と日常生活の行動とにおいてなにかしら変化が生じるものと考えられる。そこで、第1の発明では、この点に着目し、居住者の生体情報と日常行動情報とを定期的に取得するようにし、それら取得される生体情報及び日常行動情報に基づいて、居住者の精神状態を判定するようにしている。この場合、居住者の生体情報と日常行動情報との双方に基づいて、それらに変化が生じた場合に、その変化の内容に応じて居住者の精神状態が判定されるため、居住者の精神状態を適切に判定することができる。また、居住者の生体情報と日常行動情報とは住宅内に設けられたセンサを用いて自動的に取得されるため、これらの情報を定期的に取得するに際し居住者に負担がかかることがない。よって、以上より、居住者に負担をかけることなく、居住者の精神状態を適切に判定することができる。
【0008】
第2の発明の状態判定システムは、第1の発明において、前記行動情報取得手段は、前記日常行動情報として、前記居住者が身支度を行う際の行動に関する身支度行動情報を取得することを特徴とする。
【0009】
身支度は、居住者が日々決まった時間帯に行うものであり、また身支度にかける時間は日々同じ時間であると考えられる。このため、身支度に関する行動に変化が生じた場合、居住者が普段とは違う不安定な精神状態になっている可能性が高い。また、身支度を行うことは自身の外観に配慮した行動であるため、この身支度を行う際の行動に基づいて居住者の精神的な余裕度が把握できると考えられる。そこで、第2の発明では、この点に着目し、日常行動情報として、居住者が身支度を行う際の行動に関する身支度行動情報を取得することとしている。この場合、居住者の精神状態を好適に判定することができる。なお、身支度行動情報としては、居住者が身支度を行う際の行動に要する所要時間や、その行動を行う時間帯の情報等が挙げられる。
【0010】
第3の発明の状態判定システムは、第1又は2の発明において、前記生体情報取得手段は、前記生体情報として、前記居住者の体重情報を取得することを特徴とする。
【0011】
居住者の精神状態がよくない場合には、食べ過ぎにより体重が大きく増加したり、食欲を失って体重が大きく減少したりすることが考えられる。また、体重の増減は自身の外観の変化に関わるため、体重の増減に基づいて居住者の精神的な余裕度が把握できると考えられる。そこで、第3の発明では、この点に着目し、生体情報として、居住者の体重情報を取得する。この場合、居住者の精神状態を好適に判定することができる。
【0012】
第4の発明の状態判定システムは、第1~3の発明のいずれかにおいて、
前記居住者の前記生体情報の基準データである生体基準データが予め登録されており、
前記居住者の前記日常行動情報の基準データである日常行動基準データが予め登録されており、
前記状態判定手段は、
前記生体情報取得手段により取得された前記居住者の生体情報を前記生体基準データと比較し、その比較結果に基づき前記居住者の生体情報の変化を検出し、
前記行動情報取得手段により取得された前記居住者の日常行動情報を前記日常行動基準データと比較し、その比較結果に基づき前記居住者の日常行動情報の変化を検出することを特徴とする。
【0013】
第4の発明によれば、生体情報と日常行動情報とにおいて基準データが設けられ、この各基準に対して、生体情報と日常行動情報とをそれぞれ比較することにより、居住者の精神状態が判定される。生体情報及び日常行動情報を各基準データに対して比較することにより、生体情報及び日常行動情報における各変化を明確に評価できる。よって、より適切に居住者の精神状態を判定することができる。
【0014】
第5の発明の状態判定システムは、第4の発明において、
前記行動情報取得手段は、前記日常行動情報として、前記居住者が身支度を行う際の行動に関する身支度行動情報を取得し、
前記日常行動基準データとして、平日における前記居住者の身支度に関する平日用基準データと、休日における前記居住者の身支度に関する休日用基準データとが登録されており、
前記状態判定手段は、前記行動情報取得手段により平日に取得された前記居住者の身支度行動情報については前記平日用基準データと比較し、前記行動情報取得手段により休日に取得された前記居住者の身支度行動情報については前記休日用基準データと比較することを特徴とする。
【0015】
第5の発明によれば、日常行動情報について、居住者の平日と休日とにおける基準データをそれぞれ作成する。なお、以下では、日常行動情報として身支度を行う際の所要時間(以下、身支度の所要時間)及びその時間帯を例に説明するがこれに制限されるわけではない。
【0016】
学校や勤務等がある平日の場合、ある程度決まった時間に外出するため、身支度の所要時間及びその時間帯が限られる。一方、休日では、その日の予定に合わせて身支度するため、身支度の所要時間及びその時間帯が平日とは異なる。よって、平日と休日とで身支度の所要時間及びその時間帯の基準データを変えることで、平日及び休日に応じて居住者の精神状態をより適切に判定することができる。
【0017】
第6の発明の状態判定システムは、第1~5の発明のいずれかにおいて、前記状態判定手段により判定された前記居住者の精神状態に応じて、前記居住者に推奨する行動を提案する提案手段を備えることを特徴とする。
【0018】
第6の発明によれば、居住者の精神状態に応じて、居住者に推奨する行動が提案される。これにより、例えば、精神状態が不安定な状態である場合には不安定な状態を改善するための行動が提案されるため、精神状態の改善を早い段階で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】状態判定システムの構成を示す概略図。
図2図2(a)は居住者情報記憶エリアに記録された各身支度行動情報及び体重情報を示す概略図、図2(b)は基準データ記憶エリアに記録された基準データを示す概略図。
図3】状態判定処理を示すフローチャート。
図4】基準データ記憶エリアに記憶された基準データに対する当日の身支度行動及び体重の変化パターンを示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を具体化した一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。図1は、居住者の精神状態を判定する状態判定システムの構成を示す概略図であり、状態判定システムは住宅10に設けられている。なお、本実施形態では、住宅10に、居住者Aが居住していることを想定している。
【0021】
図1に示すように、住宅10には洗面室11が設けられている。洗面室11には、洗面台21と、人感センサ22と、体重センサ23とが設けられている。洗面台21には、鏡21aが設けられている。
【0022】
人感センサ22は、洗面室11の天井に設けられている。人感センサ22は、赤外線や超音波によるセンサが用いられる。人感センサ22は、洗面台21付近に向けて赤外線や超音波を照射し、その照射する赤外線や超音波が遮られることにより、洗面台21付近の人(つまり居住者A)の存在を検出する。これにより、居住者Aが洗面台21を使用している場合には、人感センサ22により居住者Aが検出されることになる。なお、人感センサ22は行動センサに相当する。
【0023】
体重センサ23は、居住者Aの体重を検出する体重計であり、洗面室11の床部に埋め込まれた状態で設けられている。この体重センサ23の上に居住者Aが立つと、体重センサ23により居住者Aの体重が検出される。また、体重センサ23は、洗面台21の前の床部に埋め込まれている。これにより、居住者Aは洗面台21を使用する際に体重センサ23の上に立つことが可能となっている。そのため、居住者Aが洗面台21を使用する際に居住者Aの体重が体重センサ23により検出されるようになっている。なお、体重センサ23が生体センサに相当する。
【0024】
洗面台21には、ドライヤ24が備えられている。ドライヤ24には、センサ24aが設けられており、ドライヤ24が使用されている場合には、センサ24aによりドライヤ24が使用中であることが検出される。センサ24aは行動センサに相当する。
【0025】
住宅10内には、スマートスピーカ(AIスピーカ)25が備えられており、例えば、洗面室11に設けられている。スマートスピーカ25は、洗面室11にいる人と対話を行うことが可能な対話機能を有している。スマートスピーカ25は、ランプ(図示略)が設けられている。スマートスピーカ25は提案手段に相当する。
【0026】
次に、本システムの電気的構成について説明する。
【0027】
状態判定システムは、当該システムを統括管理(制御)するコントローラ30を備える。コントローラ30は、例えば、洗面室11の壁に取り付けられている。コントローラ30は、CPU、ROM、RAM等からなる周知のマイクロコンピュータを備えて構成されている。コントローラ30は、各種情報を記憶する記憶部31と、現在時刻と同期する計時装置であるタイマ32とを有している。記憶部31には、居住者Aに関する各種情報を記憶する居住者情報記憶エリア31aと、居住者Aに関する各種基準データを記憶する基準データ記憶エリア31bとが設けられている。
【0028】
コントローラ30には、人感センサ22が接続され、人感センサ22による検出結果が逐次入力される。コントローラ30は、人感センサ22からの検出結果に基づいて、居住者Aが洗面台21を使用する使用時間と、居住者Aが洗面台21を使用する使用時間帯とをそれぞれ算出(取得)する。この場合、コントローラ30は、タイマ32により計時される時刻情報を参照して、洗面台21の使用時間及び使用時間帯を算出(取得)する。なお、コントローラ30が行動情報取得手段に相当する。
【0029】
ここで、洗面台21を使用する場合としては、洗面台21で顔を洗ったり、歯磨きしたり、鏡21aを用いて身だしなみチェックをしたりする等、身支度を行う場合であると考えられる。よって、洗面台21の使用時間及び使用時間帯はそれぞれ、身支度を行う際の行動に要する所要時間、及び当該行動を行う時間帯に相当する。したがって、洗面台21の使用時間及び使用時間帯はそれぞれ身支度行動情報に相当する。
【0030】
コントローラ30には、ドライヤ24に備えられたセンサ24aが接続され、センサ24aによる検出結果が逐次入力される。コントローラ30は、センサ24aからの検出結果に基づいて、居住者Aがドライヤ24を使用する使用時間と、居住者Aがドライヤ24を使用する使用時間帯とをそれぞれ算出(取得)する。この場合、コントローラ30は、タイマ32により計時される時刻情報を参照して、ドライヤ24の使用時間及び使用時間帯を算出(取得)する。
【0031】
ここで、ドライヤ24を使用する場合としては、ドライヤ24を用いて髪のセットを行う等、身支度を行う場合が想定される。そのため、ドライヤ24の使用時間及び使用時間帯についてもそれぞれ、身支度を行う際の行動に要する所要時間、及び当該行動を行う時間帯に相当し、ひいては身支度行動情報に相当する。
【0032】
コントローラ30には、体重センサ23が接続され、体重センサ23による検出結果が入力される。コントローラ30は、体重センサ23からの検出結果に基づいて、居住者Aの体重情報を取得する。居住者Aの体重情報が居住者Aの生体情報に相当する。なお、コントローラ30が生体情報取得手段に相当する。
【0033】
コントローラ30は、洗面台21の使用時間及び使用時間帯と、ドライヤ24の使用時間及び使用時間帯とを取得すると、それら各情報(以下、身支度行動情報ともいう)をそれぞれ当該情報を取得した取得日と対応付けて居住者情報記憶エリア31aに記憶する。また、コントローラ30は、居住者Aの体重情報を取得すると、その体重情報を当該情報を取得した取得日と対応付けて居住者情報記憶エリア31aに記憶する。これにより、居住者情報記憶エリア31aには、居住者Aの各身支度行動情報と体重情報とが日々記憶されるようになっている。なお、図2(a)には、居住者情報記憶エリア31aに記憶される各身支度行動情報と体重情報の一例が示されている。
【0034】
基準データ記憶エリア31bには、居住者Aの体重情報の基準データである体重基準データ(生体基準データに相当)と、居住者Aの身支度行動情報の基準データである身支度基準データ(日常行動基準データに相当)とが記憶(登録)されている。図2(b)には、これらの基準データの一例が示されている。居住者Aの体重基準データとしては、平日用の体重基準データと、休日用の体重基準データとが記憶されている。また、居住者Aの身支度基準データとしては、平日用の身支度基準データと、休日用の身支度基準データとが記憶されている。居住者Aの体重や、居住者Aが身支度を行う際の行動は学校や勤務等がある平日と、学校や勤務等がない休日とでは異なることが考えられる。そこで、この点に鑑み、基準データ記憶エリア31bには、体重基準データと身支度基準データとのそれぞれについて、平日用及び休日用の各基準データが記憶されている。なお、本実施形態では、体重基準データに関して、平日用基準データと休日用基準データとは同じとする。
【0035】
本システムでは、コントローラ30が、体重基準データと身支度基準データとを作成する基準データ作成機能を有している。コントローラ30は、居住者情報記憶エリア31aに記憶されている所定期間の体重情報に基づき、体重基準データを作成する。具体的には、所定期間における居住者Aの体重の平均値を算出し、その算出した平均値を体重基準データとして作成する。また、この場合、平日用の体重基準データについては、所定期間における平日の体重情報に基づき算出し、休日用の体重基準データについては、所定期間における休日の体重情報に基づき算出する。なお、所定期間としては、例えばシステムを導入してから1ヶ月が経過するまでの間の期間とすることが考えられる。
【0036】
同様に、コントローラ30は、居住者情報記憶エリア31aに記憶されている所定期間の身支度行動情報に基づき、身支度基準データを作成する。身支度行動情報としては、洗面台21の使用時間及び使用時間帯と、ドライヤ24の使用時間及び使用時間帯とがあるため、これら各身支度行動情報ごとに身支度基準データを作成する。具体的には、所定期間における居住者Aの身支度行動情報の平均値を算出し、その算出した平均値を身支度基準データとして作成する。また、この場合、平日用の身支度基準データについては、所定期間における平日の身支度行動情報に基づき算出し、休日用の身支度基準データについては、所定期間における休日の身支度行動情報に基づき算出する。なお、所定期間としては、例えばシステムを導入してから1ヶ月が経過するまでの間の期間とすることが考えられる。
【0037】
コントローラ30は、居住者情報記憶エリア31aに記憶された居住者Aの身支度行動情報及び体重情報の各変化に基づき、居住者Aの精神状態を判定する。この場合、コントローラ30は、基準データ記憶エリア31bに記憶された居住者Aの体重基準データ及び身支度基準データを参照して、居住者Aの身支度行動情報及び体重情報の各変化を検出する。なお、コントローラ30が状態判定手段に相当する。
【0038】
コントローラ30には、スマートスピーカ25が接続されている。コントローラ30は、居住者Aの精神状態に応じて、居住者Aに対してスマートスピーカ25により提案を行わせる。よって、スマートスピーカ25が提案手段に相当する。
【0039】
次に、コントローラ30により実行される状態判定処理について図3に示すフローチャートに基づいて説明する。本処理は、所定の時間周期(例えば、0.5秒)で繰り返し実行される。
【0040】
図3において、ステップS11では、居住者Aの精神状態を判定する判定時刻になったか否かを判定する。ここでは、タイマ32により計時される現在時刻に基づき、判定時刻になったか否かを判定する。本実施形態では、判定時刻が夜間の時刻に設定されており、例えば3時に設定されている。そのため、ここでは、現在時刻が3時の場合には、判定時刻であるとしてステップS12へ進む。現在時刻が3時でない場合には、判定時刻でないとして本処理を終了する。
【0041】
続いて、ステップS12では、当日(本日)における居住者Aの各身支度行動情報及び体重情報を記憶部31より読み出して取得する。
【0042】
続くステップS13では、当日が平日であるか又は休日であるかを判定する。平日である場合にはステップS14に進み、休日である場合にはステップS21に進む。
【0043】
ステップS14では、ステップS12で取得された居住者Aの身支度行動情報を基準データ記憶エリア31bに記憶された平日用の身支度基準データと比較する。この場合、居住者Aの身支度行動情報としては、洗面台21の使用時間及び使用時間帯と、ドライヤ24の使用時間及び使用時間帯とがあるため、これら各身支度行動情報ごとに、対応する身支度基準データとの比較を行う。
【0044】
また、本ステップS14では、ステップS12で取得された居住者Aの体重情報を基準データ記憶エリア31bに記憶された平日用の体重基準データと比較する。この場合、居住者Aの体重情報を基準データ記憶エリア31bに記憶された平日用の体重基準データと比較する。
【0045】
ステップS21では、ステップS12で取得された居住者Aの身支度行動情報を基準データ記憶エリア31bに記憶された休日用の身支度基準データと比較する。この場合、居住者Aの身支度行動情報としては、洗面台21の使用時間及び使用時間帯と、ドライヤ24の使用時間及び使用時間帯とがあるため、これら各身支度行動情報ごとに、対応する身支度基準データとの比較を行う。
【0046】
また、本ステップS21では、ステップS12で取得された居住者Aの体重情報を基準データ記憶エリア31bに記憶された休日用の体重基準データと比較する。この場合、居住者Aの体重情報を基準データ記憶エリア31bに記憶された休日用の体重基準データと比較する。
【0047】
続くステップS15では、ステップS14又はステップS21における比較の結果に基づき、居住者Aの体重情報及び身支度行動情報にそれぞれ変化が生じたか否かを判定する。この判定は、予め定められた変化基準を参照して行う。変化基準は、例えば以下のように定められている;
・ドライヤ24の使用時間及び洗面台21の使用時間:基準データから10%以上の差がある場合
・ドライヤ24の使用時間帯及び洗面台21の使用時間帯:基準データから30分以上の差がある場合
・体重:基準データから1%以上の差がある場合。
【0048】
上記の変化基準を満たす場合には変化が生じたと判定し、変化基準を満たさない場合には変化が生じていないと判定する。そして、居住者Aの体重情報及び身支度行動情報にそれぞれ変化が生じた場合にはステップS16に進む。この場合、身支度行動情報については、各身支度行動情報のうちいずれかについて変化が生じていればよい。また、居住者Aの体重情報及び身支度行動情報のうち少なくともいずれかの情報に変化が生じていない場合には本処理を終了する。
【0049】
ここで、各身支度行動情報及び体重情報の変化には複数のパターンが存在する。図4には、それら複数の変化パターンの概略図が示されている。なお、図4では、参考として、各身支度行動情報及び体重情報のいずれも変化しない場合をパターンAとして示している。このパターンAに該当する場合、居住者Aの精神状態は良好であると判定される。
【0050】
ステップS16では、居住者Aの各身支度行動情報及び体重情報の変化がパターンBの変化に該当するか否かを判定する。パターンBに該当する場合にはステップS17へ進み、該当しない場合にはステップS22へ進む。
【0051】
ステップS17では、パターンBが3日間以上継続しているか否かを判定する。後述するように、記憶部31には、少なくとも過去2日間における居住者Aの変化パターンが記憶されている。そこで、本ステップS17では、その記憶部31に記憶された変化パターンに基づき、上記の判定を行うようにしている。パターンBが3日間以上継続している場合は、ステップS18へ進む。パターンBが3日間以上継続していない場合には、ステップS20へ進む。なお、この3日間という日数は適宜設定される。
【0052】
ステップS18では、居住者Aは生活リズムが乱れ、疲労がたまっている可能性が高いと判定する。続くステップS19では、リラックスできる行動をスマートスピーカ25に通知する(提案手段に相当)。例えば、温泉に行く、旅行に行く、睡眠をとる、読書する等の行動が通知される。コントローラ30により通知されたスマートスピーカ25は、ランプを点灯する。これにより、ランプの点灯に気付いた居住者Aがスマートスピーカ25に話しかけることにより、スマートスピーカ25は、コントローラ30により通知された内容(リラックスできる行動)を音声により出力する。よって、居住者Aは、通知された内容を確認できる。スマートスピーカ25への通知後、ステップS20へ進む。
【0053】
ステップS16で変化パターンはパターンBではないとしてステップS22へ進んだ場合、変化のパターンはパターンCであるか否かを判定する。変化パターンがパターンCである場合にはステップS23へ進む。
【0054】
ステップS23では、パターンCが3日間以上継続しているか否かを判定する。3日間以上パターンCが継続している場合は、ステップS24へ進む。3日間以上パターンCが継続していない場合には、ステップS20へ進む。
【0055】
ステップS24では、鬱の予兆があると判定する。続くステップS25では、ストレスが発散できる行動をスマートスピーカ25に通知する(提案手段に相当)。例えば、ジムへ行く、友達と会う、レストランで食事する等の行動が音声により通知される。スマートスピーカ25は、ランプを点灯し、居住者Aにより話しかけられた場合には、コントローラ30により通知された内容(ストレスが発散できる行動)を音声により出力する。これにより、居住者Aは、通知された内容を確認できる。スマートスピーカ25への通知後、ステップS20へ進む。
【0056】
先のステップS22で居住者Aの変化パターンがパターンCではない場合には、その後パターンDであるか否かを判定し、判定の結果パターンDである場合にはステップA17~S19(ステップS23~S25)と同様の各処理を繰り返す。また、パターンE以降についても、これと同様の流れで処理を行っていく。その後はステップS20へ進む。
【0057】
ステップS17,S19,S23,S25等からステップS20に進むと、そのステップS20では、居住者Aの変化パターンを記憶部31に記録する。これにより、記憶部31には日々の変化パターンが記憶される。その後、本処理を終了する。
【0058】
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0059】
(1)居住者Aの精神状態に良くない変化がある場合、身体的な状態と日常生活の行動とにおいてなにかしら変化が生じるものと考えられる。そこで、本実施形態によれば、この点に着目し、居住者Aの生体情報と日常行動情報とを定期的に取得するようにし、それら取得される生体情報及び日常行動情報に基づいて、居住者Aの精神状態を判定するようにしている。この場合、居住者Aの生体情報と日常行動情報との双方に基づいて、居住者Aの精神状態が判定されるため、居住者Aの精神状態を適切に判定することができる。また、居住者Aの生体情報と日常行動情報とは住宅10内に設けられた各センサ22,23,24aを用いて自動的に取得されるため、これらの情報を定期的に取得するに際し居住者Aに負担がかかることがない。よって、以上より、居住者Aに負担をかけることなく、居住者Aの精神状態を適切に判定することができる。
【0060】
また、居住者A自身が精神状態の悪化に気付けない場合であっても、当該構成によれば自動的に生体情報と日常行動情報とが取得されて判定されることにより、自動的に居住者Aの精神状態の変化が検出できる。これにより、精神状態の変化の見落としが抑制でき、居住者Aの精神状態の変化を早い段階で気づくことができるため、居住者Aの精神状態を改善するための対応を早い段階で行うことができ、鬱状態となることを回避できる。
【0061】
(2)身支度は、居住者Aが日々決まった時間帯に行うものであり、また身支度にかける時間は日々同じ時間であると考えられる。このため、身支度に関する行動に変化が生じた場合、居住者Aが普段とは違う不安定な精神状態になっている可能性が高い。また、身支度を行うことは自身の外観に配慮した行動であるため、この身支度を行う際の行動に基づいて居住者Aの精神的な余裕度が把握できると考えられる。そこで、本実施形態では、この点に着目し、日常行動情報として、居住者Aが身支度を行う際の行動に関する身支度行動情報を取得することとしている。具体的には、身支度行動情報としては、居住者Aが身支度を行う際の行動に要する所要時間、及びその行動を行う時間帯である。この場合、居住者Aの精神状態を好適に判定することができる。
【0062】
(3)本実施形態では、洗面台21付近における人の存在状況が取得されている。洗面台21付近において人の存在する場合としては、居住者Aが洗面台21を使用している場合であり、例えば、洗面台21で顔を洗ったり、歯磨きしたり、洗面台21に備え付けられた鏡21aを用いて身だしなみチェックをしたり等の身支度を行う場合であると考えられる。よって、洗面台21付近において人の存在が検出された時間及びその時間帯は、居住者Aが洗面台21を使用する時間及びその時間帯であり、すなわち、身支度を行う際の行動に要する所要時間及びその時間帯(身支度行動情報)である。また、本実施形態では、ドライヤ24の使用状況が取得されている。ドライヤ24が使用中である場合、ドライヤ24を用いて髪のセットを行っていると想定されるため、ドライヤ24の使用時間及びその時間帯は、身支度を行う際の行動に要する所要時間及びその時間帯(身支度行動情報)である。
【0063】
よって、本実施形態では、身支度行動情報として2つの要素(行動)を取得している。これにより、居住者Aの精神状態をより適切に判定することができる。また、本実施形態によれば、身支度を行う際に用いられる物の使用時間及びその時間帯を取得することにより、複雑な機器を導入することなく、身支度行動情報を取得することができる。
【0064】
(4)居住者Aの精神状態がよくない場合には、食べ過ぎにより体重が大きく増加したり、食欲を失って体重が大きく減少したりすることが考えられる。また、体重の増減は自身の外観の変化に関わるため、体重の増減に基づいて居住者Aの精神的な余裕度が把握できると考えられる。そこで、本実施形態では、この点に着目し、生体情報として、居住者Aの体重情報を取得する。この場合、居住者Aの精神状態を好適に判定することができる。
【0065】
(5)本実施形態によれば、体重情報と身支度行動情報とにおいて基準データが設けられ、この各基準データに対して、体重情報と身支度行動情報とをそれぞれ比較することにより、居住者Aの精神状態が判定される。体重情報及び身支度行動情報を各基準データに対して比較することにより、体重情報及び身支度行動情報における各変化を明確に評価できる。よって、より適切に居住者Aの精神状態を判定することができる。
【0066】
(6)本実施形態によれば、身支度行動情報について、居住者Aの平日と休日とにおける基準データがそれぞれ登録されている。学校や勤務等がある平日の場合、ある程度決まった時間に外出するため、身支度の所要時間及びその時間帯が限られる。一方、休日では、その日の予定に合わせて身支度するため、身支度の所要時間及びその時間帯が平日とは異なる。よって、平日と休日とで身支度の所要時間及びその時間帯の基準データを変えることで、平日及び休日に応じて居住者Aの精神状態をより適切に判定することができる。
【0067】
(7)本実施形態によれば、居住者Aの精神状態に応じて、居住者Aに推奨する行動が提案される。これにより、例えば、精神状態が不安定な状態である場合には、その不安定な状態を改善するための行動が提案されるため、精神状態の改善を早い段階で行うことができる。
【0068】
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
【0069】
(1)上記実施形態では、日常行動情報として身支度行動情報を取得したが、日常行動情報としてはこれに制限されない。例えば、日常行動情報として居住者Aが外出する時刻や帰宅する時刻を日常行動情報としてもよい。この場合、居住者Aの所有する電子キーにより住宅10に設けられた玄関ドアが施解錠される構成とし、電子キーの認証された時間に基づいて、外出及び帰宅の時刻を取得できる。または、住宅10に設けられた洗濯機、コンロ、食洗機、給湯器等の機器の使用状況に基づいて、その使用時間帯、使用時間、使用頻度等を日常行動情報とすることもできる。
【0070】
(2)上記実施形態では、生体情報として体重センサ23により体重を取得したが、体動センサ等により取得される脈拍や呼吸数、温度センサ等により取得される体温等を生体情報としてもよい。
【0071】
(3)上記実施形態では、住宅10に設けられたコントローラ30により居住者Aの精神状態が判定されたが、例えば、コントローラ30の代わりに住宅10外に設けられたクラウド等のサーバにより居住者Aの精神状態が判定されてもよい。この場合には、例えば、コントローラ30にサーバとの間で無線通信可能な通信部が設けられ、コントローラ30が通信部を介して各センサ22,23,24aからの検出結果等を送信する。サーバ側では、検出結果を分析した後、スマートスピーカ25により通知させる内容をコントローラ30に向けて送信する。これにより、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0072】
(4)上記実施形態では、スマートスピーカ25により音声により居住者Aに対する行動提案が通知されたが、住宅10にディスプレイが設けられ、当該ディスプレイに行動提案が表示されることにより通知(提案)されてもよい。
【0073】
(5)上記実施形態では、体重基準データ及び身支度基準データは、所定期間における居住者Aの体重の平均値及び居住者Aの身支度行動情報の平均値として定めていたが、体重基準データ及び身支度基準データを居住者Aが設定(登録)できる構成であってもよい。
【0074】
(6)上記実施形態では、住宅10内には居住者Aのみが居住していたが、複数の居住者が居住する住宅10において本システムが適用されていてもよい。この場合には、取得された生体情報及び日常行動情報が複数の居住者のうちいずれかの情報であるかを特定する特定手段を設ければ、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0075】
10…住宅、21…洗面台、22…行動センサとしての人感センサ、23…生体センサとしての体重センサ、24…ドライヤ、24a…行動センサとしてのセンサ、25…提案手段としてのスマートスピーカ、30…生体情報取得手段、行動情報取得手段、及び状態判定手段としてのコントローラ、31…記憶部。
図1
図2
図3
図4