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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-20
(45)【発行日】2023-06-28
(54)【発明の名称】インペラ及び遠心ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/22 20060101AFI20230621BHJP
【FI】
F04D29/22 A
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019099370
(22)【出願日】2019-05-28
(65)【公開番号】P2020193589
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2022-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000177612
【氏名又は名称】株式会社ミクニ
(74)【代理人】
【識別番号】100106312
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 敬敏
(72)【発明者】
【氏名】竹花 憲夫
(72)【発明者】
【氏名】草▲なぎ▼ 英明
(72)【発明者】
【氏名】見上 裕一
(72)【発明者】
【氏名】菅原 睦
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 伸
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-135789(JP,A)
【文献】特開2013-234619(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入口、吐出口、及びインペラ室を有するハウジングを備える遠心ポンプにおいて、前記インペラ室に配置されて駆動軸により回転駆動されるインペラであって、
前記吸入口に向けて伸長する軸線回りに回転するべく,前記インペラ室に配置されて前記駆動軸が連結される嵌合穴及び前記嵌合穴に連続する先端部を含む軸部と、
前記軸部の外周から径方向に延出する複数の羽根と、
記複数の羽根の先端側領域を覆うように前記複数の羽根に連続する円環状のシュラウド板と、を備え、
前記シュラウド板は、前記吸入口の側において前記ハウジングの内壁に隣接して配置されるべく、前記軸線に垂直な平坦面をなす環状平板部と、前記環状平板部の内縁領域から前記軸線方向に伸長する円筒部を含む、
ことを特徴とするインペラ。
【請求項2】
前記軸部の先端部は、前記吸入口に向かう先端において、前記複数の羽根よりも前記吸入口側に突出する半球状をなす、
ことを特徴とする請求項1に記載のインペラ。
【請求項3】
前記複数の羽根は、前記軸部から径方向の外側に向かうにつれて湾曲するように形成されている、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のインペラ。
【請求項4】
前記複数の羽根は、前記シュラウド板が配置された側と反対側において、前記インペラ室の内壁に沿う輪郭を含む、
ことを特徴とする請求項1ないし請求項3いずれか一つに記載のインペラ。
【請求項5】
前記複数の羽根は、前記軸部から径方向に遠ざかるにつれて前記軸線の方向における幅寸法が大きくなる輪郭を含む、
ことを特徴とする請求項4に記載のインペラ。
【請求項6】
前記シュラウド板が配置された側と反対側において、前記軸部から径方向に延出して前記複数の羽根の付け根側領域を覆うように前記複数の羽根に連続する円盤部を含む、
ことを特徴とする請求項1ないし請求項5いずれか一つに記載のインペラ。
【請求項7】
前記円盤部は、前記シュラウド板により画定される開口部の内径寸法以下の外径寸法に形成されている、
ことを特徴とする請求項6に記載のインペラ。
【請求項8】
前記円盤部は、前記インペラ室の内壁に沿う輪郭を含む、
ことを特徴とする請求項6又は請求項7に記載のインペラ。
【請求項9】
前記円盤部は、前記シュラウド板により画定される開口部から吸入される流体を前記軸部の径方向に導くべく、傾斜面又は湾曲面に形成されている、
ことを特徴とする請求項6ないし8いずれか一つに記載のインペラ。
【請求項10】
前記軸部、前記複数の羽根、及び前記シュラウド板は、一体成形されている、
ことを特徴とする請求項1ないし請求項5いずれか一つに記載のインペラ。
【請求項11】
前記軸部、前記複数の羽根、前記シュラウド板、及び前記円盤部は、一体成形されている、
ことを特徴とする請求項6ないし請求項いずれか一つに記載のインペラ。
【請求項12】
吸入口、吐出口、及びインペラ室を有するハウジングと、
駆動軸を有する駆動源と、
前記インペラ室に配置されて前記駆動軸に連結されるインペラと、
を備えた遠心ポンプであって、
前記インペラは、請求項1ないし請求項11いずれか一つに記載のインペラである、
ことを特徴とする遠心ポンプ。
【請求項13】
前記駆動源は、前記インペラ室の一部を画定するケーシングを含む、
ことを特徴とする請求項12に記載の遠心ポンプ。
【請求項14】
前記ケーシングは、前記インペラに向けて円錐台状に突出する突出面を含む、
ことを特徴とする請求項13に記載の遠心ポンプ。
【請求項15】
前記駆動源は、電動モータである、
ことを特徴とする請求項12ないし14いずれか一つに記載の遠心ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心ポンプに適用されるインペラ及び遠心ポンプに関し、特にエンジンのウォータポンプとして適用されるインペラ及び遠心ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の遠心ポンプとしては、吸入口、インペラ室、吐出口を有するハウジングと、ハウジング内のインペラ室に配置されて駆動軸により回転駆動されるインペラを備え、インペラとしては、駆動軸を連結する連結穴を有するハブ板(ディスク)と、ハブ板に一体的に形成された複数の羽根を有し、吸入口に向けて開放したオープンインペラを採用したものが知られている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3を参照)。
このオープンインペラは、複数の羽根を設けるべく、駆動軸を連結する側に配置されるハブ板に羽根の一方側を一体的に連続して形成することを前提としたものである。
【0003】
しかしながら、オープンインペラにおいては、ハブ板とハウジングの背面壁との間の圧力が低下し、駆動軸の軸受シール等の損傷を招く虞があることから、ハブ板に対して貫通孔を設け、ハブ板の背面側の圧力低下を抑制するようにしたオープンインペラが知られている(例えば、特許文献4を参照)。
【0004】
また、オープンインペラにおいては、圧力の低い吸入口側において、特に流量が少ない場合にランキン渦(無限回転の渦)及び逆流が生じ、ポンプ性能が低下する。
そこで、これに対処するべく、吸入口側において、羽根の他方側を塞ぐべく円板状のシュラウド板を取り付けたクローズドインペラが知られている(例えば、特許文献5、特許文献6を参照)。
【0005】
しかしながら、クローズドインペラにおいては、ハブ板及び羽根から成る第1部材と、シュラウド板又はシュラウド板及び羽根から成る第2部材とを連結しなければならず、部品点数の増加、コストの増加、重量の増加等を招く。
また、シュラウド板とハウジングの内壁面との隙間がポンプ性能に影響を及ぼすため、シュラウド板の組付け精度を高精度に管理する必要があり、組立作業の複雑化、製造コストの増加等を招く。
さらに、クローズドインペラにおいては、複数の羽根により画定される流体通路を、両側からハブ板とシュラウド板で塞いでいる。それ故に、クローズドインペラを樹脂材料や金属材料を用いて金型等で一体的に成形することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-114004号公報
【文献】特開2016-217157号公報
【文献】特開2014-141944号公報
【文献】特開2006-307859号公報
【文献】特開2007-239731号公報
【文献】特開2018-61600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術の事情に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、従来技術の課題を解消して、構造の簡素化、軽量化、低コスト化等を図れ、又、金型等での一体成形も可能なインペラ及び遠心ポンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のインペラは、吸入口、吐出口、及びインペラ室を有するハウジングを備える遠心ポンプにおいて、インペラ室に配置されて駆動軸により回転駆動されるインペラであって、吸入口に向けて伸長する軸線回りに回転するべく,インペラ室に配置されて駆動軸が連結される嵌合穴及び嵌合穴に連続する先端部を含む軸部と、軸部の外周から径方向に延出する複数の羽根と、吸入口の側においてハウジングの内壁に隣接して配置されるべく複数の羽根の先端側領域を覆うように複数の羽根に連続する円環状のシュラウド板とを備え、シュラウド板は、吸入口の側においてハウジングの内壁に隣接して配置されるべく、軸線に垂直な平坦面をなす環状平板部と、環状平板部の内縁領域から軸線方向に伸長する円筒部を含む。
【0009】
上記インペラにおいて、軸部の先端部は、吸入口に向かう先端において、複数の羽根よりも吸入口側に突出する半球状をなす、構成を採用してもよい。
【0010】
上記インペラにおいて、複数の羽根は、軸部から径方向の外側に向かうにつれて湾曲するように形成されている、構成を採用してもよい。
【0011】
上記インペラにおいて、複数の羽根は、シュラウド板が配置された側と反対側において、インペラ室の内壁に沿う輪郭を含む、構成を採用してもよい。
【0012】
上記インペラにおいて、複数の羽根は、軸部から径方向に遠ざかるにつれて軸線の方向における幅寸法が大きくなる輪郭を含む、構成を採用してもよい。
【0013】
上記インペラにおいて、シュラウド板が配置された側と反対側において、軸部から径方向に延出して複数の羽根の付け根側領域を覆うように複数の羽根に連続する円盤部を含む、構成を採用してもよい。
【0014】
上記インペラにおいて、円盤部は、シュラウド板により画定される開口部の内径寸法以下の外径寸法に形成されている、構成を採用してもよい。
【0015】
上記インペラにおいて、円盤部は、インペラ室の内壁に沿う輪郭を含む、構成を採用してもよい。
【0016】
上記インペラにおいて、円盤部は、シュラウド板により画定される開口部から吸入される流体を軸部の径方向に導くべく、傾斜面又は湾曲面に形成されている、構成を採用してもよい。
【0018】
上記インペラにおいて、軸部、複数の羽根、及びシュラウド板は、一体成形されている、構成を採用いてもよい。
【0019】
上記インペラにおいて、軸部、複数の羽根、シュラウド板、及び円盤部は、一体成形されている、構成を採用いてもよい。
【0020】
本発明の遠心ポンプは、吸入口、吐出口、及びインペラ室を有するハウジングと、駆動軸を有する駆動源と、インペラ室に配置されて駆動軸に連結されるインペラと、を備えた遠心ポンプであって、インペラとして、上記構成のいずれかをなすインペラを採用するものである。
【0021】
上記遠心ポンプにおいて、駆動源は、インペラ室の一部を画定するケーシングを含む、構成を採用してもよい。
【0022】
上記遠心ポンプにおいて、ケーシングは、インペラに向けて円錐台状に突出する突出面を含む、構成を採用してもよい。
【0023】
上記遠心ポンプにおいて、駆動源は、電動モータである、構成を採用してもよい。
【発明の効果】
【0024】
上記構成をなすインペラ及び遠心ポンプによれば、構造の簡素化、軽量化、低コスト化等を達成でき、又、インペラを金型等で一体成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明に係るインペラを備えた遠心ポンプの一実施形態を示す外観斜視図である。
図2図1に示す遠心ポンプの分解斜視図である。
図3図2に示す遠心ポンプを他の角度から視た分解斜視図である。
図4図1に示す遠心ポンプの内部を示す断面図である。
図5図1に示す遠心ポンプの内部を示す断面図である。
図6図1に示す遠心ポンプの内部を示す斜視断面図である。
図7】本発明に係るインペラの一実施形態を示すものであり、吸入口側から視た斜視図である。
図8図7に示すインペラを吸入口と反対側の背面側から視た斜視図である。
図9図7に示すインペラを吸入口側から視た正面図である。
図10図7に示すインペラを吸入口と反対側の背面側から視た背面図である。
図11図7に示すインペラを軸部の軸線を通る面で切断した斜視断面図である。
図12図7に示すインペラを軸部の軸線を通る面で切断した断面図である。
図13】本発明に係るインペラの他の実施形態を示すものであり、吸入口側から視た斜視図である。
図14図13に示すインペラを吸入口と反対側の背面側から視た斜視図である。
図15図13に示すインペラを吸入口側から視た正面図である。
図16図13に示すインペラを吸入口と反対側の背面側から視た背面図である。
図17図13に示すインペラを軸部の軸線を通る面で切断した斜視断面図である。
図18図13に示すインペラを軸部の軸線を通る面で切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
一実施形態に係る遠心ポンプMは、流体として例えばエンジンの冷却水を移送するウォータポンプとして適用されるものであり、図1ないし図3に示すように、ハウジング10、駆動源20、軸線S回りに回転するインペラ30を備えている。
【0027】
ハウジング10は、アルミニウム材料等により形成され、図3ないし図6に示すように、コネクタ11、吸入通路12、インペラ室13、渦形室14、吐出通路15、コネクタ16、内壁17、内壁18、モータ取付け部19を備えている。
【0028】
コネクタ11は、移送される流体を導く配管が接続されるべく、金属製のパイプにより形成されている。
吸入通路12は、流体がインペラ室13に向けて流れ込む領域であり、インペラ室13に面する下流側において吸入口12aを画定する。
吸入口12aは、軸線Sを中心とする略円形断面をなす。
そして、吸入通路12は、吸入口12aにおいて、流体を軸線S方向の流れに方向付ける。
【0029】
インペラ室13は、インペラ30を軸線S回りに回転自在に収容するべく、インペラ30の外輪郭と所定の隙間を有して軸線Sを中心とする内周壁により画定される空間として形成されている。
ここでは、モータ取付け部19に嵌合された駆動源20のケーシング21が、インペラ30の背面側においてインペラ室の一部を画定するようになっている。
渦形室14は、軸線S回りにおいて渦形状に伸長し、インペラ室13の外周領域と吐出通路15を連通させるように形成されている。
【0030】
吐出通路15は、図6に示すように、インペラ室13から流れ出て渦形室14を通過した流体を下流側に導く領域であり、渦形室14との境界領域において吐出口15aを画定する。
そして、吐出通路15は、インペラ30により軸線S回りに回転するように指向されて渦形室14を通過した流体を軸線Sに垂直な方向の流れに方向付ける。
コネクタ16は、吐出通路15から吐出される流体を移送する配管が接続されるべく、金属製のパイプにより形成されている。
【0031】
内壁17は、インペラ30のシュラウド板33の円筒部33bが軸線Sに垂直な径方向において微小隙間をおいて対向するべく、吸入口12aの近傍において、軸線Sを中心とする円筒壁をなす。
内壁18は、インペラ30のシュラウド板33の環状円板部33aが軸線S方向において微小隙間をおいて対向するべく、内壁17に連続すると共に軸線Sに垂直な平面上で軸線Sを中心とする円環状の平坦面をなす。
【0032】
モータ取付け部19は、駆動源20のケーシング21が嵌合されて固定される部分であり、嵌合孔19a、接合面19b、ネジ穴19cを備えている。
嵌合孔19aは、ケーシング21の嵌合部21aが嵌合されるべく、軸線Sを中心とする円筒状をなす。
接合面19bは、ケーシング21のフランジ部21cが接合されるべく、軸線Sに垂直な環状の平坦面をなす。
ネジ穴19cは、ネジBが捩じ込まれるべく、接合面19bの三箇所に設けられている。
【0033】
駆動源20は、電動モータであり、ケーシング21、ケーシング21から突出する駆動軸22、ケーシング21内に収容されて駆動軸22に回転駆動力を及ぼすロータ及びコイル等を備えている。
【0034】
ケーシング21は、アルミニウム、鋼等の金属材料により形成され、図2及び図3に示すように、嵌合部21a、インペラ室の一部を画定する端面壁21b、フランジ部21c、円孔21dを備えている。
【0035】
嵌合部21aは、ハウジング10の嵌合孔19aにシール性を確保して密接に嵌合されるべく、軸線Sを中心とする円筒面をなす。
尚、嵌合部21aと嵌合孔19aの間にOリング等のシール部材を介在させるべく、嵌合部21aの周りにおいてOリングを嵌め込む環状溝を設けてもよい。
【0036】
端面壁21bは、軸線Sを中心とする円形状に形成され、外側領域において環状の平坦面21bと、中央領域において突出面21bを画定する。突出面21bは、インペラ30に向けて突出する円錐台状に形成されている。
そして、端面壁21bは、ケーシング21がハウジング10に固定された状態で、ハウジング10のインペラ室13に配置されたインペラ30の背面と対向する背面壁を画定する。
すなわち、平坦面21bは、軸線S方向において、インペラ30の複数の羽根32の先端側領域と微小隙間をおいて対向し、突出面21bは、軸線S方向において、インペラ30の複数の羽根32の付け根側領域及び軸部31の背面31bと微小隙間をおいて対向する。
【0037】
フランジ部21cは、ハウジング10の接合面19bに密接するべく、環状の平坦面を含むように形成されている。
円孔21dは、ハウジング10の三つのネジ穴19cに捩じ込むネジBを通すべく、フランジ部21cの三箇所に形成されている。
駆動軸22は、図2に示すように、ケーシング21の端面壁21bから突出し、軸線S方向に伸長する柱状に形成されている。
そして、駆動軸22は、図6に示すように、インペラ30の嵌合穴31aに嵌合されて、インペラ30を軸線S回りに一体的に回転させる。
尚、駆動軸22は、円柱状に示されているが、二面幅をなす矩形断面やその他の円形断面以外の形状であってもよい。
【0038】
インペラ30は、アルミニウム等の金属材料又は樹脂材料を用いて、金型により一体成形されており、図7ないし図12に示すように、軸部31、複数(ここでは8枚)の羽根32、シュラウド板33を備えている。
【0039】
軸部31は、吸入口12aに向けて伸長する軸線Sを中心とする略円柱状に形成され、嵌合穴31a、背面31b、先端部31cを備えている。
嵌合穴31aは、駆動軸22を嵌合させるべく、円筒状に形成されている。尚、嵌合穴31aは、駆動軸22が一体的に固定される形態であれば、駆動軸22の形状に合わせて例えば矩形断面やその他の円形断面以外の穴形状であってもよい。
背面31bは、軸線Sを中心とする円環状の平坦面として形成され、ケーシング21の端面壁21bの突出面21bの中央領域に対向する。
先端部31cは、吸入口12aに向かう先端において、複数の羽根32よりも吸入口12a側に突出する半球状の端部をなすように形成されている。
そして、先端部31cは、吸入口12aから流れ込む流体を、複数の羽根32に向けて軸線Sを中心とする放射状に導く役割をなす。
ここでは、先端部31cが半球状に形成されているため、流体の衝突による損失を低減しつつ、流体を羽根32に向けて効率よく指向させることができる。
【0040】
羽根32は、全て同一の形状をなし、軸部31の周方向に等間隔で外周から径方向の外側に延出するように軸部31に一体的に形成されている。
羽根32は、軸線S方向に延在する薄板状をなし、図9及び図10に示すように軸線S方向から視て、軸部31から径方向の外側に向かうに連れて湾曲するように形成されている。
また、羽根32は、軸線S方向のシュラウド板33が配置された側と反対側において、所定の隙間をおいてケーシング21の端面壁21bに沿う、すなわち、インペラ室の内壁に沿う輪郭をなす。
具体的には、羽根32は、端面壁21bの平坦面21bに対向する平坦面32aと、端面壁21bの突出面21bの円錐面に対向する傾斜面32bを備えている。
傾斜面32bは、羽根32において、軸部31から径方向に遠ざかるにつれて軸線Sの方向における幅寸法が大きくなる輪郭をなす領域である。
さらに、羽根32は、軸線S方向において、シュラウド板33が配置される側、すなわち、吸入口12a側に向く端面32cが軸線Sに垂直な平面上に位置する略平坦面として形成されている。
【0041】
シュラウド板33は、軸線Sを中心とする円環状をなし、複数の羽根32の先端側領域を覆うように複数の羽根32に連続して一体的に形成され、環状円板部33aと、環状円板部33aの内縁領域から軸線S方向に伸長する円筒部33bを備えている。
環状円板部33aは、軸線Sに垂直な平面上に拡がる平坦面として形成され、ハウジング10の吸入口12aの側において内壁18と隣接して、すなわち、軸線S方向において内壁18と微小隙間をおいて配置される。
円筒部33bは、軸線Sを中心とする外周面を画定し、吸入口12aの側においてハウジング10の内壁17と隣接して、すなわち、軸線Sに垂直な方向において微小隙間をおいて配置される。
シュラウド板33は、円筒部33bの内側において、流体が流入する円形の開口部33cを画定する。
【0042】
上記構成をなすインペラ30によれば、従来のようなハブ板が無く、軸部31と、軸部31の外周から延出する複数の羽根32と、吸入口12aの側において複数の羽根32の先端側領域を覆うシュラウド板33を備えるだけである。したがって、以下のような効果が得られる。
従来のようなハブ板が無いため、従来のインペラにおいて発生していたハブ板の背面側の圧力の低下による駆動軸回りにおけるシール性能の低下等の問題が解消される。
また、ハブ板が無いため、構造の簡素化、軽量化、慣性モーメントの低減を達成でき、又、ハブ板と流体との摩擦損失を低減でき、応答性を向上させることができる。
【0043】
複数の羽根32の間を流れる流体のインペラ室13の内壁(端面壁21b)に対する相対速度が、ハブ板が設けられた従来例に比べて小さくなる。それ故に、流体の摩擦損失を低減することができる。
シュラウド板33が圧力の低い吸入口12aの側に配置されているため、ランキン渦(無限回転の渦)の発生を防止ないし抑制することができる。
シュラウド板33がハウジング10の内壁17,18と微小隙間をおいて対向するため、圧力の高い吐出口15a側から圧力の低い吸入口12a側への流体の逆流による漏れを防止することができる。すなわち、吸入口12aの側において、シュラウド板33が配置されることにより、ポンプ効率の低下を防止することができる。
【0044】
インペラ30を金型等で成形する際に、軸線S方向において金型を分離できるため、金属材料又は樹脂材料を用いて、容易に一体成形することができる。
シュラウド板33が、軸部31及び複数の羽根32に対して一体的に成形されているため、従来のような組付け作業が不要になり、又、組付けを高精度に管理する必要もなく、製造コストを低減することができる。
【0045】
ここで、遠心ポンプMの組付けについて説明する。
組付けに際し、ハウジング10、駆動源20、インペラ30、ネジBが準備される。
先ず、インペラ30が駆動軸22と一体的に回転するように、インペラ30が駆動源20の駆動軸22に嵌合されて固定される。
続いて、インペラ30をインペラ室13に収容するようにして、駆動源20のケーシング21がハウジング10のモータ取付け部19に嵌合される。
続いて、ネジBが、ケーシング21の円孔21dを通して、ハウジング10のネジ穴19cに捩じ込まれ、ケーシング21がハウジング10に締結される。
これにより、遠心ポンプMの組付けが完了する。
【0046】
次に、遠心ポンプMがエンジンの冷却水循環系に適用された場合の動作について説明する。この場合、遠心ポンプMは、ハウジング10が不図示の取付けボス部を介して不図示のボルト等でエンジンに固定され、コネクタ11がエンジンからの供給側の配管に接続され、コネクタ16がエンジンの移送先側の配管に接続される。
【0047】
そして、エンジンの制御部により、駆動源20が駆動されて、駆動軸22が、図6中の矢印で示すように回転し、駆動軸22と一体的にインペラ30が回転する。
すると、冷却水が、吸入通路12を流れ、吸入口12aから開口部33cを経て、インペラ室13に配置されたインペラ30内の通路に導かれる。
そして、軸線S方向から流れ込む冷却水は、インペラ30の羽根32に沿って遠心力を受け、軸線Sに垂直な方向に流れの向きが変換させられつつ移送される。
【0048】
この方向変換の際に、冷却水は、ケーシング21の端面壁21bに沿って、すなわち、突出面21bの円錐状の傾斜面から平坦面21bに沿うように滑らかに流れるため、衝突損失又は通路損失等を低減することができる。
続いて、加圧された冷却水は、渦形室14及び吐出口15aを経て、吐出通路15を流れ、コネクタ16に接続された配管を通り、エンジンの下流側の移送先に移送される。
【0049】
上記の移送動作において、インペラ30は、シュラウド板33により吸入口12a側におけるランキン渦の発生等を防止ないし抑制しつつ、冷却水を効率よく吐出することができる。
また、インペラ30が軽量化されているため、駆動源20としての負荷も軽減され、駆動源20としての電動モータの消費電力を低減することができる。
【0050】
以上述べたように、上記構成をなすインペラ30及び遠心ポンプMによれば、構造の簡素化、軽量化、低コスト化等を達成でき、又、インペラ30を金型等で一体成形することができる。
【0051】
図13ないし図18は、本発明に係るインペラの他の実施形態を示すものであり、前述の遠心ポンプMにおいて、インペラ30と置き換えることができるものである。
この実施形態に係るインペラ130は、アルミニウム等の金属材料又は樹脂材料を用いて金型により一体成形されており、軸部131、複数(ここでは8枚)の羽根132、シュラウド板133、円盤部134を一体的に備えている。
【0052】
軸部131は、吸入口12aに向けて伸長する軸線Sを中心とする略円柱状に形成され、嵌合穴131a、背面131b、先端部131cを備えている。
嵌合穴131aは、駆動軸22を嵌合させるべく、円筒状に形成されている。尚、嵌合穴131aは、駆動軸22が一体的に固定される形態であれば、駆動軸22の形状に合わせて例えば矩形断面やその他の円形断面以外の穴形状であってもよい。
背面131bは、軸線Sを中心とする円環状の平坦面として形成され、ケーシング21の端面壁21bの突出面21bの中央領域に対向する。
先端部131cは、吸入口12aに向かう先端において、複数の羽根132よりも吸入口12a側に突出する半球状の端部をなすように形成されている。
そして、先端部131cは、吸入口12aから流れ込む流体を、複数の羽根132に向けて軸線Sを中心とする放射状に導く役割をなす。
ここでは、先端部131cが半球状に形成されているため、流体の衝突による損失を低減しつつ、流体を羽根132に向けて効率よく指向させることができる。
【0053】
羽根132は、全て同一の形状をなし、軸部131の周方向に等間隔で外周から径方向の外側に延出するように軸部131に一体的に形成されている。
羽根132は、軸線S方向に延在する薄板状をなし、図15及び図16に示すように軸線S方向から視て、軸部131から径方向の外側に向かうにつれて湾曲するように形成されている。
また、羽根132は、図17に示すように、軸部131から径方向に遠ざかるにつれて軸線Sの方向における幅寸法が大きくなる輪郭をなす。
さらに、羽根132は、軸線S方向において、シュラウド板133が配置される側、すなわち、吸入口12a側に向く端面132cが軸線Sに垂直な平面上に位置する略平坦面として形成されている。
【0054】
シュラウド板133は、軸線Sを中心とする円環状をなし、複数の羽根132の先端側領域を覆うように複数の羽根132に連続して一体的に形成されている。
そして、シュラウド板133は、環状円板部133aと、環状円板部133aの内縁領域から軸線S方向に伸長する円筒部133bを備えている。
環状円板部133aは、軸線Sに垂直な平面上に拡がる平坦面として形成され、ハウジング10の吸入口12aの側において内壁18と隣接して、すなわち、軸線S方向において内壁18と微小隙間をおいて配置される。
円筒部133bは、軸線Sを中心とする外周面を画定し、吸入口12aの側において、ハウジング10の内壁17と隣接して、すなわち、軸線Sに垂直な方向において微小隙間をおいて配置される。
シュラウド板133は、円筒部133bの内側において、流体が流入する円形の開口部133cを画定する。
【0055】
円盤部134は、図14図16ないし図18に示すように、軸線S方向のシュラウド板133が配置された側と反対側において、軸部131から径方向に延出して複数の羽根132の付け根側領域を覆うように複数の羽根132に連続して形成されている。
【0056】
円盤部134は、図18に示すように、外径寸法D1が、シュラウド板133により画定される開口部133cの内径寸法D2以下の大きさをなすように形成されている。
また、円盤部134は、軸線S方向の背面側において、所定の隙間をおいてケーシング21の端面壁21bに沿う、すなわち、インペラ室の内壁に沿う輪郭をなす。
さらに、円盤部134は、軸線S方向の開口部133cに面する側において、開口部133cから吸入される流体を軸部131の径方向に導くべく、軸部131から径方向の外側の端面壁21bに向かって下り傾斜する傾斜面をなすように形成されている。
尚、ここでは、円盤部134は、円錐状の傾斜面として形成されているが、吸入口12a側に向けて凹む湾曲面として形成されてもよい。
【0057】
上記構成をなすインペラ130によれば、従来のようなハブ板が無く、軸部131と、軸部131の外周から延出する複数の羽根132と、吸入口12aの側において複数の羽根132の先端側領域を覆うシュラウド板133と、円盤部134を備えるだけである。したがって、以下のような効果が得られる。
従来のような羽根の全体を覆うようなハブ板が無いため、従来のインペラにおいて発生していたハブ板の背面側の圧力の低下による駆動軸回りにおけるシール性能の低下等の問題が解消される。
【0058】
また、ハブ板よりも小さい外径の円盤部134を設けたことにより、軽量化、慣性モーメントの低減を達成でき、ハブ板と流体との摩擦損失を低減でき、応答性を向上させることができる。
また、円盤部134を設けたことにより、複数の羽根132と軸部131との連結部分の機械的強度を高めることができる。
さらに、円盤部134を設けたことにより、吸入口12aから開口部133cを経て流れ込んだ流体が、駆動軸22の周辺近傍の突出面21bに直接衝突するのを防止でき、駆動軸22のシール性能を維持することができる。
【0059】
複数の羽根132の間を流れる流体のインペラ室13の壁面(端面壁21b)に対する相対速度が、背面側の全体を覆うハブ板が設けられた従来例に比べて小さくなる。それ故に、流体の摩擦損失を低減することができる。
シュラウド板133が圧力の低い吸入口12aの側に配置されているため、ランキン渦(無限回転の渦)の発生を防止ないし抑制することができる。
シュラウド板133がハウジング10の内壁17,18と微小隙間をおいて対向するため、圧力の高い吐出口15a側から圧力の低い吸入口12a側への流体の逆流による漏れを防止することができる。すなわち、吸入口12aの側において、シュラウド板133が配置されることにより、ポンプ効率の低下を防止することができる。
【0060】
インペラ130を金型等で成形する際に、円盤部134の外径寸法D1は開口部133の内径寸法D2以下に設定されているため、軸線S方向において金型を分離できる。それ故に、金属材料又は樹脂材料を用いて、インペラ130を金型により容易に一体成形することができる。
シュラウド板133が、軸部131及び複数の羽根132に対して一体的に成形されているため、従来のような組付け作業が不要になり、又、組付けを高精度に管理する必要もなく、製造コストを低減することができる。
【0061】
尚、上記インペラ130が遠心ポンプMに組み込まれて、エンジンの冷却水循環系に適用された場合の動作については前述同様である。
以上述べたように、上記構成をなすインペラ130及び遠心ポンプMによれば、構造の簡素化、軽量化、低コスト化等を達成でき、又、インペラ130を金型等で一体成形することができる。
【0062】
上記実施形態においては、インペラ30,130に含まれる複数の羽根32,132が、軸部31,131から径方向の外側に向かうにつれて湾曲するように形成された場合を示した。しかしながら、これに限定されるものではなく、径方向に直線的に伸長する複数の羽根を採用してもよく、羽根の枚数も8枚に限るものではなくそれ以外の枚数の羽根を採用してもよい。
【0063】
上記実施形態において、インペラ30,130は、駆動軸22が嵌合される嵌合穴31a,131aを備える構成を示したが、これに限定されるものではなく、駆動軸22が雄ネジを有する駆動軸として形成され、軸部の嵌合穴が貫通孔として形成され、先端部31c,131cに代えてインペラを締結するナットを採用してもよい。
【0064】
上記実施形態においては、駆動源として駆動軸22を備えた電動モータを示したが、これに限定されるものではなく、例えば遠心ポンプがエンジンに適用される場合、エンジンのクランクシャフトの回転により駆動されるプーリを駆動源として採用し、プーリの回転軸を駆動軸として採用してもよい。
【0065】
以上述べたように、本発明のインペラ及び遠心ポンプによれば、構造の簡素化、軽量化、低コスト化等を達成でき、又、インペラを金型等で一体成形することができるため、エンジンの冷却水循環系のウォータポンプとして適用できるのは勿論のこと、その他の流体を移送する遠心ポンプとしても有用である。
【符号の説明】
【0066】
S 軸線
10 ハウジング
12a 吸入口
13 インペラ室
15a 吐出口
17,18 内壁
20 駆動源(電動モータ)
21 ケーシング
21b 端面壁(インペラ室の内壁)
21b 突出面
22 駆動軸
30 インペラ
31 軸部
31c 先端部(半球状の端部)
32 複数の羽根
33 シュラウド板
33b 円筒部
33c 開口部
130 インペラ
131 軸部
131c 先端部(半球状の端部)
132 複数の羽根
133 シュラウド板
133b 円筒部
133c 開口部
134 円盤部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18