(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-20
(45)【発行日】2023-06-28
(54)【発明の名称】車両用制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 20/40 20160101AFI20230621BHJP
B60W 10/02 20060101ALI20230621BHJP
B60K 6/48 20071001ALI20230621BHJP
B60K 6/543 20071001ALI20230621BHJP
B60W 10/08 20060101ALI20230621BHJP
B60W 10/06 20060101ALI20230621BHJP
B60W 10/10 20120101ALI20230621BHJP
B60W 10/30 20060101ALI20230621BHJP
B60W 20/17 20160101ALI20230621BHJP
B60L 50/16 20190101ALI20230621BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20230621BHJP
F16H 63/50 20060101ALI20230621BHJP
F16H 61/02 20060101ALI20230621BHJP
【FI】
B60W20/40
B60W10/02 900
B60K6/48 ZHV
B60K6/543
B60W10/08 900
B60W10/06 900
B60W10/10 900
B60W10/30 900
B60W20/17
B60L50/16
B60L15/20 K
F16H63/50
F16H61/02
(21)【出願番号】P 2019104300
(22)【出願日】2019-06-04
【審査請求日】2021-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110002549
【氏名又は名称】弁理士法人綾田事務所
(72)【発明者】
【氏名】大塚 征史
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-131534(JP,A)
【文献】国際公開第2015/049806(WO,A1)
【文献】特開2016-027965(JP,A)
【文献】国際公開第2016/158928(WO,A1)
【文献】特開2003-307270(JP,A)
【文献】特開2006-335196(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/20 - 6/547
B60W 10/00 - 10/30
B60W 20/00 - 20/50
B60L 1/00 - 3/12
B60L 7/00 - 13/00
B60L 15/00 - 15/42
B60L 50/00 - 58/40
F16H 63/50
F16H 61/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用の駆動源としてのエンジンと電動モータと、
前記エンジンと電動モータの駆動力が入力される変速機と、
前記エンジンと変速機の間に配置されるクラッチと、を備えるハイブリッド車両を前記クラッチが解放のときには、前記電動モータによる走行を行うEVモード、前記クラッチが締結のときには、前記エンジンまたは前記エンジンと電動モータによる走行を行うHEVモードに制御する車両用制御装置であって、
前記EVモードでは、前記電動モータを最適回転速度で、前記HEVモードでは、前記エンジンまたは前記エンジンおよび電動モータを最適回転速度で作動させ、
前記EVモードからHEVモードに遷移するときに、遷移前目標変速機入力部回転速度より前記エンジン始動後のエンジン吹き上がり回転速度が小さく、かつ、遷移後目標変速機入力部回転速度より前記エンジン始動後のエンジン吹き上がり回転速度が大きい場合には、前記クラッチ
の締結前に
前記変速機の変速比を制御しつつ前記電動モータの回転速度を
制御することで、
当該電動モータの回転速度を前記EVモードでの電動モータ最適回転速度から前記エンジン始動後のエンジン吹き上がり回転速度に相当する回転速度まで変化させるよう
にするとともに
、前記電動モータの回転速度
が前記エンジン始動後のエンジン吹き上がり回転速度にほぼ達した時点で、前記クラッチの締結を開始する、
ことを特徴とする車両用制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用制御装置において、
前記電動モータの回転速度とエンジンの回転速度との回転速度差が、予め設定した設定値以下となったら、前記クラッチの締結を開始する、
ことを特徴とする車両用制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用制御装置において、
前記クラッチ締結後に、エンジンの回転速度を低下させてHEVモードでのエンジンのエンジン最適回転速度とする、
ことを特徴とする車両用制御装置。
【請求項4】
請求項2乃至3いずれか1項に記載の車両用制御装置において、
EVモードからHEVモードへの遷移時に、前記クラッチの締結を開始する前に、前記クラッチへの作動油のプリチャージを行う、
ことを特徴とする車両用制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、クラッチをスリップさせ電動モータの駆動力でエンジン回転を高回転まで引き上げてから始動するシステムにおいて、EVモードからHEVモードへの遷移開始と同時に回転を電動モータの最適回転速度からエンジンの最適回転速度とするために、変速機の変速を開始する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術を、エンジン始動時にスタータやSSG等のデバイスを用い、低回転からエンジンを始動するシステムに適用して、EVモードからHEVモードへの遷移開始と同時にエンジン最適回転速度まで変速させてしまうと、エンジン回転速度がオーバーシュートしてしまい、ショックが発生してしまうおそれがある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、EVモードからHEVモードへの遷移時のショックを低減可能な車両用制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両用制御装置では、EVモードでは、前記電動モータを最適回転速度で、HEVモードでは、エンジンまたはエンジンおよび電動モータを最適回転速度で作動させ、EVモードからHEVモードに遷移するときに、遷移前目標変速機入力部回転速度よりエンジン始動後のエンジン吹き上がり回転速度が小さく、かつ、遷移後目標入力部回転速度よりエンジン始動後のエンジン吹き上がり回転速度が大きい場合には、クラッチの締結前に変速機の変速比を制御しつつ電動モータの回転速度を制御することで、当該電動モータの回転速度をEVモードでの電動モータ最適回転速度からエンジン始動後のエンジン吹き上がり回転速度に相当する回転速度まで変化させるようにするとともに、電動モータの回転速度がエンジン始動後のエンジン吹き上がり回転速度にほぼ達した時点で、クラッチの締結を開始するようにした。
【発明の効果】
【0007】
よって、EVモードからHEVモードへの遷移時のショックを低減することできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明が適用される車両のシステム構成図である。
【
図2】実施形態1の車両用制御装置2の制御処理を示すフローチャートである。
【
図3】実施形態1の車両用制御装置2のクラッチ6の締結制御処理を示すフローチャートである。
【
図4】実施形態1の車両用制御装置2の制御処理を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施形態1]
図1は、本発明が適用される車両のシステム構成図である。
【0010】
[車両駆動装置の構成]
図1に示すように、ハイブリッド車両1は、駆動源としてのエンジン3およびバッテリ10から電力を供給される電動モータ4を有している。
なお、バッテリ10は、インバータ4a、7a、SSG9等にも電力を供給している。
また、エンジン3および電動モータ4間に、プライマリプーリ5b(変速機入力部)およびセカンダリプーリ5c、無端ベルト5dを備えるベルトドライブ式無段変速機(変速機)5が設けられている。
【0011】
プライマリプーリ5bの一方側(図中右側)には、湿式多板式のクラッチ6、トルクコンバータ11を介してエンジン3が連結され、プライマリプーリ5bの他方側(図中左側)には、電動モータ4が連結されている。
電動モータ4は、モータ軸4b、チェーン機構13およびプライマリ軸50を介してベルトドライブ式無段変速機5のプライマリプーリ5bに駆動力を伝達している。
また、プライマリ軸50と平行となるセカンダリプーリ5cのセカンダリ軸51には、減速機構14が連結されている。この減速機構14には、一対のアクスル軸15aを介して一対の駆動輪15が連結されている。
【0012】
また、エンジン3のクランク軸3bには、SSG9が連結されている。SSG9を用いてクランク軸3bを回転させ、エンジン3を始動することが可能となっている。
【0013】
トルクコンバータ11とプライマリプーリ5bとの間に設けられたクラッチ6は、解放状態と締結状態とに切り換えることができる。
クラッチ6の一方側部材6aとプライマリ軸50が接続され、クラッチ6の他方側部材6bは、エンジン3のクランク軸3bが、トルクコンバータ11を介して、接続されている。
クラッチ6を解放状態に切り換えることにより、プライマリプーリ5bとエンジン3とを切り離すことが可能となる。
これにより、走行モードをEVモードに設定することができ、エンジン3を停止させて電動モータ4の駆動力のみを各駆動輪15に伝達することが可能となる。
【0014】
一方、クラッチ6を締結状態に切り換えることにより、プライマリプーリ5bとエンジン3とを接続することが可能となる。これにより、走行モードをHEVモードに設定することができ、電動モータ4およびエンジン3の駆動力を各駆動輪15に伝達することが可能となる。
【0015】
ベルトドライブ式無段変速機5,トルクコンバータ11,クラッチ6等の油圧系に対して作動油を給排するために、チェーン機構12を介して、エンジン3にて駆動されるトロコイドポンプ等よりなるメカオイルポンプ8が設けられている。
そして、メカオイルポンプ8から吐出された作動油は、ベルトドライブ式無段変速機5,トルクコンバータ11,クラッチ6等に供給される。
【0016】
メカオイルポンプ8は、エンジン3が駆動されるHEVモードでの車両走行時においては、エンジン3によって常に駆動することができ、メカオイルポンプ8からの作動油によってベルトドライブ式無段変速機5等を油圧制御することが可能となる。
【0017】
一方、EVモードでの車両走行時には、エンジン3が停止するとともにメカオイルポンプ8が停止することになるが、この時においても、ベルトドライブ式無段変速機5等の油圧系に対する作動油の供給を継続する必要がある。そのため、EVモードでの車両走行時に油圧系の基本油圧であるライン圧を確保するために、電動オイルポンプ7を備えている。
【0018】
[車両用制御装置の構成]
車両用制御装置2は、エンジン3、エンジン始動用のSSG9を制御するエンジン制御装置3a、ベルトドライブ式無段変速機5およびクラッチ6を制御する変速機制御装置5a、電動モータ4を制御するインバータ4a、エンジン3停止時に、ベルトドライブ式無段変速機5へ作動油を供給する電動オイルポンプ7を制御するインバータ7aを制御している。
なお、車両用制御装置2には、アクセルペダルセンサ20、車速センサ21、エンジン水温センサ22、電動モータ回転速度センサ23、エンジン回転速度センサ24、プライマリプーリ回転速度センサ25からの情報が入力されている。
【0019】
図2は、実施形態1の車両用制御装置2の制御処理を示すフローチャートである。
このフローチャートは、所定の演算周期で繰り返し実行される。
【0020】
ステップS1では、車両用制御装置2からエンジン制御装置3a、変速機制御装置5a、電動モータ4のインバータ4aへ、EVモードからHEVモードへの遷移指令が出力されたか否かを判定する。
EVモードからHEVモードへの遷移指令が出力されたときには、ステップS2へ進み、EVモードからHEVモードへの遷移指令が出力されていないときには、ステップS1へ戻る。
ステップS2では、アクセルペダルセンサ20からのドライバの要求出力情報および車速センサ21からの車速情報を取得し、遷移後のプライマリプーリ5bの目標回転速度であるエンジン3のエンジン最適回転速度(遷移後目標変速機入力部回転速度)Noを算出する。
ステップS3では、エンジン水温センサ22からのエンジン水温情報等を取得し、エンジン3の始動後のエンジン3のエンジン吹き上がり回転速度Nfを算出する。
ステップS4では、エンジン3のエンジン吹き上がり回転速度Nfが、現在のプライマリプーリ5bの目標回転速度である電動モータ4の電動モータ最適回転速度(遷移前目標変速機入力部回転速度)Naより小さいか否かを判定する。
エンジン3のエンジン吹き上がり回転速度Nfが、電動モータ4の電動モータ最適回転速度Naより小さいときには、ステップS5へ進み、エンジン3のエンジン吹き上がり回転速度Nfが、電動モータ4の電動モータ最適回転速度Naより小さくないときには、ステップS9へ進む。
ステップS5では、エンジン3のエンジン最適回転速度Noが、エンジン3のエンジン吹き上がり回転速度Nfより小さいか否かを判定する。
エンジン3のエンジン最適回転速度Noが、エンジン3のエンジン吹き上がり回転速度Nfより小さいときには、ステップ6へ進み、エンジン3のエンジン最適回転速度Noが、エンジン3のエンジン吹き上がり回転速度Nfより小さくないときには、ステップS9へ進む。
ステップS6では、後述する
図3のフローチャートによるクラッチ6の締結が完了したか否かを判定する。
クラッチ6の締結が完了しているときには、ステップS7へ進み、クラッチ6の締結が完了していないときには、ステップS8へ進む。
ステップS7では、目標プライマリプーリ回転速度をエンジン3のエンジン最適回転速度Noに設定する。
ステップS8では、目標プライマリプーリ回転速度をエンジン3のエンジン吹き上がり回転速度Nfに設定する。
ステップS9では、目標プライマリプーリ回転速度をエンジン3のエンジン最適回転速度Noに設定する。
【0021】
図3は、実施形態1の車両用制御装置2のクラッチ6の締結制御処理を示すフローチャートである。
このフローチャートは、所定の演算周期で繰り返し実行される。
【0022】
ステップS11では、車両用制御装置2からエンジン制御装置3a、変速機制御装置5a、電動モータ4のインバータ4aへ、EVモードからHEVモードへの遷移指令が出力されたか否かを判定する。
EVモードからHEVモードへの遷移指令が出力されたときには、ステップS12へ進み、EVモードからHEVモードへの遷移指令が出力されていないときには、ステップS11へ戻る。
ステップS12では、変速機制御装置5aがクラッチ6へ作動油を充填する充填フェーズ(プリチャージ)を開始する。
なお、充填フェーズ(プリチャージ)とは、クラッチ6の遊びのストロークを詰めておくためである。
ステップS13では、クラッチ6の充填フェーズが終了したか否かを判定する。
クラッチ6の充填フェーズが終了しているときには、ステップS14へ進み、クラッチ6の充填フェーズが終了していないときには、ステップS13へ戻る。
ステップS14では、電動モータ4にて駆動されるプライマリプーリ5aのプライマリプーリ回転速度Npがエンジン3のエンジン吹き上がり回転速度Nfにほぼ達したか否かを判定する。
なお、ほぼ達したか否かは、プライマリプーリ5aのプライマリプーリ回転速度Npとエンジン3のエンジン吹き上がり回転速度Nfとの回転速度差があらかじめ設定した設定値以下のことを言う。
プライマリプーリ5aのプライマリプーリ回転速度Npがエンジン3のエンジン吹き上がり回転速度Nfにほぼ達しているときには、ステップS15へ進み、プライマリプーリ5aのプライマリプーリ回転速度Npがエンジン3のエンジン吹き上がり回転速度Nfにほぼ達していないときには、ステップS14へ戻る。
ステップS15では、締結フェーズを開始する。
【0023】
このように、エンジン3のエンジン吹き上がり回転速度Nfが、電動モータ4の電動モータ最適回転速度Naより小さく、エンジン3のエンジン最適回転速度Noが、エンジン3のエンジン吹き上がり回転速度Nfより小さいとき、すなわち、エンジン3のエンジン吹き上がり回転速度Nfが、電動モータ4の電動モータ最適回転速度Naとエンジン3のエンジン最適回転速度Noの間にあるときには、目標プライマリプーリ回転速度をエンジン3のエンジン吹き上がり回転速度Nfに設定し、クラッチ6の一方側部材6aと他方側部材6b間の回転速度差が所定値以下のときに、クラッチ6を締結するので、クラッチ6の締結時のショックを抑制することができる。
さらに、クラッチ6を締結させた後に、エンジン3の回転速度Neを速やかにエンジン3のエンジン最適回転速度Noに低下させるので、素早くEVモードからHEVモードへの遷移を完了することができ、燃費も向上することができる。
また、プライマリプーリ5aのプライマリプーリ回転速度Npがエンジン3のエンジン吹き上がり回転速度Nfにほぼ達する前に、すなわち、締結フェーズ開始前に、充填フェーズ(プリチャージ)を開始するので、プライマリプーリ5aのプライマリプーリ回転速度Npがエンジン3のエンジン吹き上がり回転速度Nfにほぼ達したときには、速やかにクラッチ6を締結することができる。
【0024】
図4は、実施形態1の車両用制御装置2の制御処理を示すタイムチャートである。
横軸は、時間であり、一番上が車速、その下が回転速度、クラッチ6への指令油圧、駆動力(トルク)の変化を示している。
【0025】
時刻t1までは、電動モータ4の電動モータ最適回転速度NaによるEVモードで、ハイブリッド車両1は走行している。
時刻t1にて、車両用制御装置2が、エンジン制御装置3a、変速機制御装置5a、電動モータ4のインバータ4aへ、EVモードからHEVモードへの遷移指令を出力する。
そこで、エンジン制御装置3aは、時刻t1からt2の間、SSG9によるエンジン3の始動を行う。
同様に、変速機制御装置5aは、クラッチ6への作動油の充填を行う充填フェーズ(プリチャージ)を開始する。
また、電動モータ4の回転速度が、電動モータ4の電動モータ最適回転速度Naからエンジン3のエンジン吹き上がり回転速度Nfへ向けて、低下を開始する。
同時に、変速機制御装置5aは、ベルトドライブ式無段変速機5の変速比を制御する。
時刻t2以降、エンジン3は、完爆し、エンジン回転速度Neはエンジン3のエンジン吹き上がり回転速度Nfへ向けて、上昇する。
【0026】
時刻t3にて、電動モータ4にて駆動されるプライマリプーリ5aの回転速度Npが、エンジン3のエンジン吹き上がり回転速度Nfにほぼ到達する。
ここで、変速機制御装置5aは、クラッチ6の締結のための作動油をクラッチ6へ供給する締結フェーズを開始する。
【0027】
時刻t4で、クラッチ6の締結が完了するので、両駆動輪15へ伝達される駆動源の駆動力(トルク)の架け替えが開始される。
すなわち、電動モータ4の駆動力(トルク)は、0に向かい徐々に減少するとともに、エンジン3の駆動力(トルク)は、ドライバの要求駆動力(トルク)まで徐々に増加する。
また、エンジン3の回転速度Neは、時刻t4以降、エンジン3のエンジン最適回転速度Noに向けて、減少する。
同時に、変速機制御装置5aは、ベルトドライブ式無段変速機5の変速比を制御する。
【0028】
時刻t5にて、駆動力(トルク)の架け替えが完了し、エンジン3のエンジン最適回転速度NoによるHEVモードで、ハイブリッド車両1は走行する。
【0029】
以上説明したように、実施形態1にあっては下記の作用効果が得られる。
(1)エンジン3のエンジン吹き上がり回転速度Nfが、電動モータ4の電動モータ最適回転速度Naより小さく、エンジン3のエンジン最適回転速度Noが、エンジン3のエンジン吹き上がり回転速度Nfより小さいとき、すなわち、エンジン3のエンジン吹き上がり回転速度Nfが、電動モータ4の電動モータ最適回転速度Naとエンジン3のエンジン最適回転速度Noの間にあるときには、目標プライマリプーリ回転速度をエンジン3のエンジン吹き上がり回転速度Nfに設定し、クラッチ6の一方側部材6aと他方側部材6b間の回転速度差が所定値以下のときに、クラッチ6を締結するようにした。
よって、クラッチ6の一方側部材6aと他方側部材6b間の回転速度差を小さくして、クラッチ6を締結するので、クラッチ6の締結時のショックを抑制することができる。
【0030】
(2)クラッチ6を締結させた後に、エンジン3の回転速度Neを速やかにエンジン3のエンジン最適回転速度Noに低下させるようにした。
よって、素早くEVモードからHEVモードへの遷移を完了することができ、燃費も向上することができる。
【0031】
(3)プライマリプーリ5aの回転速度Npがエンジン3のエンジン吹き上がり回転速度Nfにほぼ達する前に、すなわち、締結フェーズ開始前に、充填フェーズ(プリチャージ)を開始するようにした。
よって、プライマリプーリ5aの回転速度Npがエンジン3のエンジン吹き上がり回転速度Nfにほぼ達したときには、速やかにクラッチ6を締結することができる。
【0032】
[他の実施形態]
以上、本発明を実施するための形態を実施形態に基づいて説明したが、本発明の具体的な構成は実施形態に示した構成に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。
例えば、実施形態1では、ベルトドライブ式無段変速機を採用したものを示したが、チェーンドライブ式やトラクションドライブ式無段変速機にも適用することができる。
また、車両用制御装置が、エンジン制御装置、変速機制御装置を制御しているが、車両用制御装置が、エンジン制御装置、変速機制御装置の機能を備えるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 ハイブリッド車両
2 車両用制御装置
3 エンジン
3a エンジン制御装置
4 電動モータ
4a インバータ
5 ベルトドライブ式無段変速機(変速機)
5a 変速機制御装置
5b プライマリプーリ(変速機入力部)
5c セカンダリプーリ
5d 無端ベルト
6 クラッチ
6a 一方側部材
6b 他方側部材
7 電動オイルポンプ
7a インバータ
8 メカオイルポンプ
9 SSG
10 バッテリ
11 トルクコンバータ
12 チェーン機構
13 チェーン機構
14 減速機構
15 駆動輪
Na 電動モータ最適回転速度(遷移前目標変速機入力部回転速度)
Nf エンジン吹き上がり回転速度
No エンジン最適回転速度(遷移後目標変速機入力部回転速度)