(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-20
(45)【発行日】2023-06-28
(54)【発明の名称】車載用ブラシレスモータ装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 5/22 20060101AFI20230621BHJP
H02K 11/30 20160101ALI20230621BHJP
H02K 15/14 20060101ALI20230621BHJP
【FI】
H02K5/22
H02K11/30
H02K15/14 Z
(21)【出願番号】P 2019128644
(22)【出願日】2019-07-10
【審査請求日】2022-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000177612
【氏名又は名称】株式会社ミクニ
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小林 規
【審査官】池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-201804(JP,A)
【文献】特開2014-229506(JP,A)
【文献】特開2002-252958(JP,A)
【文献】特開2013-093930(JP,A)
【文献】特開平06-076870(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/22
H02K 11/30
H02K 15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブラシレスモータ及び電子基板を備える車載用ブラシレスモータ装置であって、
前記ブラシレスモータは、ロータと、前記ロータの周りに配置された複数のコイルを含むステータと、を含み、
前記電子基板は、
前記ロータの軸方向に貫通する貫通孔が形成されると共に、前記ブラシレスモータの出力側と反対側に前記軸方向と交差する平面に沿って配置された基板本体と、
前記基板本体における前記ロータと反対側の面上に固定されたターミナルと、を含み、
前記コイルのコイル線は、前記貫通孔に挿通されており、前記基板本体を挟んで前記ロータと反対側で前記ターミナルに溶接され
、
前記ターミナルには、前記平面に含まれる第1方向に沿って延在する第1スリットが形成されており、
前記ターミナルは、
前記第1スリットを挟んで一方側に設けられた第1ターミナル部と、
前記第1スリットを挟んで他方側に設けられた第2ターミナル部と、
前記第1ターミナル部と前記第2ターミナル部とを接続する第3ターミナル部と、
前記第2ターミナル部から前記軸方向における前記ロータと反対側に突出して設けられた突出部と、
を含み、
前記突出部は、前記コイル線に溶接されており、
前記第1ターミナル部は、前記基板本体に第1半田付け部を介して接続された
車載用ブラシレスモータ装置。
【請求項2】
前記第2ターミナル部は、前記基板本体に第2半田付け部を介して接続され、
前記第1半田付け部と前記第2半田付け部とは分離している
請求項
1に記載の車載用ブラシレスモータ装置。
【請求項3】
前記第3ターミナル部は、前記第1方向における前記第2ターミナル部の一端部に接続し、
前記突出部は、前記第1方向における前記第2ターミナル部の他端部に接続する
請求項
1又は2に記載の車載用ブラシレスモータ装置。
【請求項4】
前記突出部は、鉤状に形成されるとともにヒュージングにより前記コイル線に溶接されたフック部を含む
請求項
1~3の何れか一項に記載の車載用ブラシレスモータ装置。
【請求項5】
前記第1方向における前記第2ターミナル部の長さは、前記第1方向における前記第1ターミナル部の長さよりも長い、
請求項
1~4の何れか一項に記載の車載用ブラシレスモータ装置。
【請求項6】
前記電子基板は、
前記貫通孔に隣接し、前記基板本体における前記ロータと反対側の面に沿って配置された金属箔端子部と、
前記金属箔端子部上に配置されるとともに前記第1半田付け部に対応する第1開口部及び前記第2半田付け部に対応する第2開口部を有するレジストと、を含み、
前記金属箔端子部には、前記第1方向に延在する第2スリットが形成されており、
前記金属箔端子部は、
前記第2スリットを挟んで一方側に設けられ、前記第1開口部において前記第1半田付け部と接続された第1部分と、
前記第2スリットを挟んで他方側に設けられ、前記第2開口部において前記第2半田付け部と接続された第2部分と、
前記第1部分と前記第2部分とを接続する第3部分と、
を含む、請求項
2に記載の車載用ブラシレスモータ装置。
【請求項7】
前記第2部分の面積が前記第1部分の面積より大きい
請求項
6に記載の車載用ブラシレスモータ装置。
【請求項8】
前記第2部分の面積が前記第1部分の面積の1.2倍以上である
請求項
7に記載の車載用ブラシレスモータ装置。
【請求項9】
前記電子基板は、複数の前記ターミナルを含み、
前記複数のターミナルの各々が前記基板本体に対して同じ向きに配向されている
請求項1~
8の何れか一項に記載の車載用ブラシレスモータ装置。
【請求項10】
前記電子基板と外部機器とを接続するためのコネクタターミナルと、
前記基板本体と前記ブラシレスモータとの間に配置されて前記電子基板を支持するホルダと、を含むホルダユニットをさらに備え、
前記電子基板は、前記コネクタターミナルと接続するための第3半田付け部を含む
請求項1~
9の何れか一項に記載の車載用ブラシレスモータ装置。
【請求項11】
前記ホルダは、当該ホルダを前記軸方向に貫通して前記ブラシレスモータ側から前記基板本体の前記貫通孔に前記コイル線を案内するガイド穴を含む
請求項
10に記載の車載用ブラシレスモータ装置。
【請求項12】
前記ガイド穴は、前記ロータから前記軸方向に離れるにつれて穴径が小さくなるように形成されたテーパ通路部を含む
請求項
11に記載の車載用ブラシレスモータ装置。
【請求項13】
前記ガイド穴における前記電子基板側の開口端の直径は、前記貫通孔の直径よりも小さい、請求項
11又は12に記載の車載用ブラシレスモータ装置。
【請求項14】
ブラシレスモータの出力側と反対側に前記ブラシレスモータのロータの軸方向と交差する平面に沿って電子基板の基板本体を配置するステップと、
前記電子基板の貫通孔に前記ブラシレスモータのステータを構成するコイルのコイル線を通すステップと、
前記電子基板を挟んで前記ロータと反対側で、前記基板本体における前記ロータと反対側の面上に固定されたターミナルに前記コイル線を溶接するステップと、
を
備え、
前記ターミナルには、前記平面に含まれる第1方向に沿って延在する第1スリットが形成されており、
前記ターミナルは、
前記第1スリットを挟んで一方側に設けられた第1ターミナル部と、
前記第1スリットを挟んで他方側に設けられた第2ターミナル部と、
前記第1ターミナル部と前記第2ターミナル部とを接続する第3ターミナル部と、
前記第2ターミナル部から前記軸方向における前記ロータと反対側に突出して設けられた突出部と、
を含み、
前記突出部は、前記コイル線に溶接され、
前記第1ターミナル部は、前記基板本体に第1半田付け部を介して接続された
車載用ブラシレスモータ装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車載用ブラシレスモータ装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ブラシやコミュテータのような機械的な接点を用いないブラシレスモータが種々開発されている。例えば特許文献1には、ブラシレスモータを備えたポンプ装置に関する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両に搭載される車載用の電動アクチュエータにおいては、電動アクチュエータの搭載場所のスペースの制限により、装置の小型化が望まれている。しかし、特許文献1に記載されたポンプ装置では、一端が駆動用コイルと電気的に接続された端子ピンの他端を回路基板に半田付けすることにより、ロータの軸方向に沿って配置される端子ピンを介して駆動用コイルと回路基板とが接続される。このため、ロータの軸方向においては、端子ピンを配置するためのスペースのほか、端子ピンを回路基板に半田付けするためのスペースを確保する必要があり、ロータの軸方向においてポンプ装置全体を小型化することが困難であった。特許文献1には、このような問題を解決するための解決策が何ら開示されていない。
【0005】
上述の事情に鑑みて、本開示の少なくとも1つの実施形態は、ロータの軸方向において小型化できる車載用ブラシレスモータ装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の少なくとも1つの実施形態に係る車載用ブラシレスモータ装置は、
ブラシレスモータ及び電子基板を備える車載用ブラシレスモータ装置であって、
ブラシレスモータは、ロータと、ロータの周りに配置された複数のコイルを含むステータと、を含み、
電子基板は、
ロータの軸方向に貫通する貫通孔が形成されると共に、ブラシレスモータの出力側と反対側に軸方向と交差する平面に沿って配置された基板本体と、
基板本体におけるロータと反対側の面上に固定されたターミナルと、を含み、
コイルのコイル線は、貫通孔に挿通されており、前記基板本体を挟んでロータと反対側でターミナルに溶接されている。
【0007】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
ターミナルには、平面に含まれる第1方向に沿って延在する第1スリットが形成されており、
ターミナルは、
第1スリットを挟んで一方側に設けられた第1ターミナル部と、
第1スリットを挟んで他方側に設けられた第2ターミナル部と、
第1ターミナル部と第2ターミナル部とを接続する第3ターミナル部と、
第2ターミナル部から軸方向におけるロータと反対側に突出して設けられた突出部と、
を含み、
突出部は、コイル線に溶接されており、
第1ターミナル部は、基板本体に第1半田付け部を介して接続されてもよい。
【0008】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)の構成において、
第2ターミナル部は、基板本体に第2半田付け部を介して接続され、
第1半田付け部と第2半田付け部とは分離していてもよい。
【0009】
(4)幾つかの実施形態では、上記(2)又は(3)の構成において、
第3ターミナル部は、第1方向における前記第2ターミナル部の一端部に接続し、
突出部は、第1方向における前記第2ターミナル部の他端部に接続してもよい。
【0010】
(5)幾つかの実施形態では、上記(2)~(4)の何れか一つの構成において、
突出部は、鉤状に形成されるとともにヒュージングによりコイル線に溶接されたフック部を含んでいてもよい。
【0011】
(6)幾つかの実施形態では、上記(2)~(5)の何れか一つの構成において、
第1方向における第2ターミナル部の長さは、第1方向における第1ターミナル部の長さよりも長くてもよい。
【0012】
(7)幾つかの実施形態では、上記(3)の構成において、
電子基板は、
貫通孔に隣接し、基板本体におけるロータと反対側の面に沿って配置された金属箔端子部と、
金属箔端子部上に配置されるとともに第1半田付け部に対応する第1開口部及び第2半田付け部に対応する第2開口部を有するレジストと、を含み、
金属箔端子部には、1方向に延在する第2スリットが形成されており、
金属箔端子部は、
第2スリットを挟んで一方側に設けられ、第1開口部において第1半田付け部と接続された第1部分と、
第2スリットを挟んで他方側に設けられ、第2開口部において第2半田付け部と接続された第2部分と、
第1部分と第2部分とを接続する第3部分と、
を含んでいてもよい。
【0013】
(8)幾つかの実施形態では、上記(7)の構成において、
第2部分の面積が第1部分の面積より大きくてもよい。
【0014】
(9)幾つかの実施形態では、上記(8)の構成において、
第2部分の面積が第1部分の面積の1.2倍以上であってもよい。
【0015】
(10)幾つかの実施形態では、上記(1)~(9)の何れか一つの構成において、
電子基板は、複数のターミナルを含み、
複数のターミナルの各々が基板本体に対して同じ向きに配向されていてもよい。
【0016】
(11)幾つかの実施形態では、上記(1)~(10)の何れか一つの構成において、
電子基板と外部機器とを接続するためのコネクタターミナルと、
基板本体とブラシレスモータとの間に配置されて電子基板を支持するホルダと、を含むホルダユニットをさらに備え、
電子基板は、コネクタターミナルと接続するための第3半田付け部を含んでいてもよい。
【0017】
(12)幾つかの実施形態では、上記(11)の構成において、
ホルダは、ホルダを軸方向に貫通してブラシレスモータ側から基板本体の貫通孔にコイル線を案内するガイド穴を含んでいてもよい。
【0018】
(13)幾つかの実施形態では、上記(12)の構成において、
前記ガイド穴は、前記ロータから前記軸方向に離れるにつれて穴径が小さくなるように形成されたテーパ通路部を含んでいてもよい。
【0019】
(14)幾つかの実施形態では、上記(12)又は(13)の構成において、
前記ガイド穴における前記電子基板側の開口端の直径は、前記貫通孔の直径よりも小さくてもよい。
【0020】
(15)本発明の少なくとも一実施形態に係る車載用ブラシレスモータ装置の製造方法は、
ブラシレスモータの出力側と反対側にブラシレスモータのロータの軸方向と交差する平面に沿って電子基板の基板本体を配置するステップと、
電子基板の貫通孔にブラシレスモータのステータを構成するコイルのコイル線を通すステップと、
電子基板を挟んでロータと反対側で、基板本体におけるロータと反対側の面上に固定されたターミナルにコイル線を溶接するステップと、
を含む。
【発明の効果】
【0021】
本開示の少なくとも1つの実施形態によれば、ロータの軸方向に対して小型化できる車載用ブラシレスモータ装置およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本開示の一実施形態に係る車載用ブラシレスモータ装置の構成例を概略的に示す図である。
【
図2A】
図1に破線で示す領域IIを示す部分拡大図である。
【
図3】一実施形態におけるターミナルの構成例を示す上面図である。
【
図4】一実施形態におけるターミナルの構成例を示す側面図である。
【
図5】一実施形態におけるターミナルの構成例を示す下面図である。
【
図6】一実施形態におけるターミナルの構成例を概略的に示す平面図である。
【
図7】一実施形態における金属箔端子部を概略的に示す斜視図である。
【
図8】一実施形態におけるレジストの第1開口部及び第2開口部を概略的に示す斜視図である。
【
図9】一実施形態におけるターミナルを基板本体に搭載した状態を概略的に示す斜視図である。
【
図10】一実施形態における金属箔端子部の構成例を概略的に示す平面図である。
【
図11】一実施形態における電子基板の上方の領域を概略的に示す平面図である。
【
図12】一実施形態における電子基板の上方の領域を概略的に示す側面図である。
【
図13】一実施形態におけるガイド穴を概略的に示す模式図である。
【
図14】一実施形態におけるガイド穴の変形例を示す図である。
【
図15】一実施形態に係る車載用ブラシレスモータ装置の製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明のいくつかの実施形態について説明する。ただし、本発明の範囲は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、本発明の範囲をそれにのみ限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0024】
先ず、本開示の一実施形態に係る車載用ブラシレスモータ装置1の概略構成について説明する。
図1は本開示の一実施形態に係る車載用ブラシレスモータ装置1の構成例を概略的に示す図である。
図2Aは
図1に破線で示す領域IIを示す部分拡大図である。
図1及び
図2Aに示すように、車載用ブラシレスモータ装置1は、例えば車両に搭載され、エンジン又はクラッチ等に潤滑用、冷却用又は作動流体としてのオイルを供給する電動のオイル供給装置である電動オイルポンプ(Electric Oil Pump:EOP)として適用され得る。車載用ブラシレスモータ装置1は、ブラシやコミュテータのような機械的な接点を用いないブラシレスモータ10と、ブラシレスモータ10の駆動を制御するための電子基板30とを備えている。
【0025】
ブラシレスモータ10は、例えばロータ12と、ロータ12の周りに配置された複数のコイル18を含むステータ16と、を含むインナーロータ型のブラシレスモータである。
【0026】
ロータ12は、ステータ16の内側に配置されており、出力軸14(回転軸)と、出力軸14の外周に取り付けられた円筒形状のロータコア(不図示)と、ロータコアの外周に沿ってロータコアに固定されるとともに複数極(例えば6極)に着磁されたリング状のマグネット15(
図2B参照)とを同軸状に配して構成されている。
図2Bに示す例示的形態では、板状のS極のマグネット部15aと板状のN極のマグネット部15bとが周方向に交互に配置されており、6つのマグネット部15a,15b(3つのマグネット部15a及び3つのマグネット部15b)がロータ12の軸方向視において略六角形を形成するように配置されている。出力軸14には、オイルを輸送するための歯車(不図示)等の図示しないポンプロータが出力軸14とともに回転可能に接続されている。
【0027】
以下、ロータ12の軸方向を「軸方向X」と記載する。また、軸方向Xのうち電子基板30からブラシレスモータ10に向かう方向(ブラシレスモータ10の出力側と反対側からブラシレスモータ10の出力側に向かう方向)を「下方向」又は単に「下」と記載し、軸方向Xのうちブラシレスモータ10から電子基板30に向かう方向(ブラシレスモータ10の出力側からブラシレスモータ10の出力側と反対側に向かう方向)を「上方向」又は単に「上」と記載する。
【0028】
ステータ16は、ヨークを兼ねたハウジング(モータケース)4と、ハウジング4の内周側に固定された複数のステータコア(コア部材)5と、複数のステータコア5の各々に巻装された複数のコイル18とを含む。ハウジング4は、例えば鉄等の金属にて有底筒状に形成されている。ハウジング4の開口部には、例えば合成樹脂製のホルダユニット50(後述)が取り付けられている。ホルダユニット50の上部には電子基板30が取り付けられており、電子基板30の上部がトップカバー2で覆われている。ハウジング4、ホルダユニット50及びトップカバー2は、ネジ6によって固定される。各々のコイル18は、例えば銅等の導電性金属線をステータコア5に複数回巻き付けて構成される。
【0029】
電子基板30は、ブラシレスモータ10の出力側と反対側に軸方向Xと交差する平面Pに沿って配置された基板本体32と、基板本体32におけるロータ12と反対側の面32A上に固定されたターミナル40と、を含む。図示する例示的形態では、平面Pは軸方向Xと直交している。基板本体32には、軸方向Xに貫通する貫通孔34が形成されている。以下、基板本体32におけるロータ12と反対側の面32Aを基板本体32の「上面32A」と記載し、基板本体32におけるロータ12側の面を基板本体32の「下面32B」と記載する。
【0030】
基板本体32は、所謂プリント基板であって、例えばグラスファイバ等で織った布をエポキシ樹脂で固めた繊維強化樹脂で形成されたガラスエポキシ基板等のプリント配線板(printed wiring board:PWB)上に、各種の電子部品を搭載して構成されたプリント回路板(printed-circuit board:PCB)である。なお、プリント配線板は、例えば紙とガラス基材を混合したコンポジット基板や、フレキシブル基板、又はセラミック基板であってもよい。
【0031】
貫通孔34は、基板本体32の下面32Bから上面32Aに亘って形成されており、貫通孔34における軸方向Xに直交する断面形状は例えば円形に形成されている。
【0032】
ターミナル40は、例えば銅等の金属で形成された導電性の部材であり、コイル線20と接続されることで電子基板30とコイル18とが電気的に接続される。そして、上記コイル18のコイル線20は貫通孔34に挿通されており、基板本体32を挟んでロータ12と反対側でターミナル40にヒュージングにより溶接されている。
【0033】
ここで、車載用ブラシレスモータ装置1が適用される車載用の電動オイルポンプは、軸方向Xにおいてドライブシャフト等の隣に配置されることがある。このため、車載用ブラシレスモータ装置1を軸方向Xに小型化することができれば、ドライブシャフト等の可動部との干渉を回避することができるから、設計の自由度が向上する。
【0034】
この点、上述した本開示の構成によれば、コイル18のコイル線20が基板本体32を挟んでロータ12と反対側でターミナル40に直接的に溶接されるから、例えば電子基板とコイルとの間に配置されたリジッドな端子ピン等の部品を介してコイルと電子基板とを接続する場合に比べて、電子基板30とコイル18の巻き線部との距離を小さくすることが可能となり、軸方向Xにおいて小型化可能な車載用ブラシレスモータ装置1を提供することができる。また、端子ピンを介してコイルと電子基板とを接続する場合に比べて溶接箇所の数を低減することができるから、組み立て性が向上した車載用ブラシレスモータ装置1を提供できる。
【0035】
幾つかの実施形態では、例えば
図1及び
図2Aに示すように、上述した車載用ブラシレスモータ装置1は、電子基板30と不図示の外部機器とを接続するためのコネクタターミナル58と、基板本体32とブラシレスモータ10との間に配置されて電子基板30を支持するホルダ52と、を含むホルダユニット50をさらに備えていてもよい。
【0036】
ホルダ52は、ブラシレスモータ10が配置される空間と電子基板30が配置される空間とを仕切る仕切り部材として機能するとともに、不図示の軸受を介してブラシレスモータ10の出力軸14を回転可能に支持する支持部として機能する。ホルダ52は、樹脂で構成されており、例えばインサート成型によって形成されてもよい。なお、ホルダ52は、例えば
図1に示すように、その上面側の周縁部に、ホルダ52の外周に沿って形成された溝部51を含み、溝部51内に接着剤を充填することで、電子基板30が配置される空間と車載用ブラシレスモータ装置1の外部との気密性を確保できるようになっている。
【0037】
コネクタターミナル58は、コネクタターミナル58の一部がホルダ52内に埋設されることにより、ホルダ52と一体的に構成されている。例えばホルダユニット50は、コネクタターミナル58の一部を内部に埋設した状態でホルダ52をインサート成形することにより形成される。コネクタターミナル58の一端58Aは、ホルダ52の上面よりも上方に向けて突出するように設けられ、上方に配置される電子基板30に例えば半田付けにより接続される。コネクタターミナル58の他端58Bは、ホルダ52の周縁部から例えば水平方向に向けて突出した状態で設けられている。コネクタターミナル58は、例えば銅等の金属で形成された導電性の部材であり、その他端58Bが不図示の外部機器に接続されることで電子基板30と外部機器とが電気的に接続される。なお、コネクタターミナル58の他端58Bは、接続されるべき外部機器との相対的な配置に応じて、例えばホルダ52の周縁部から上方又は下方に向けて突出するように設けられていてもよい。
【0038】
第3半田付け部63は、例えば基板本体32を軸方向Xに貫通する貫通孔35を通って基板本体32の上面32Aから上方に突出するように設けられたコネクタターミナル58の一端58Aと基板本体32の上面32Aに設けられた金属箔端子部85とを接続するように設けられてもよい。
【0039】
かかる車載用ブラシレスモータ装置1によれば、電子基板30とブラシレスモータ10との間に、ホルダ52とコネクタターミナル58とが一体的に形成されたホルダユニット50を備えたことにより、ホルダユニット50を挟んでロータ12と反対側に配置された電子基板30をホルダ52により支持しつつ、電子基板30と外部機器とを容易に接続可能であり、且つ組み立てが容易な車載用ブラシレスモータ装置1を提供することができる。また、第3半田付け部63を介してコネクタターミナル58と金属箔端子部70とを接続する構成により、基板本体32の上方から半田付けを行うことができるから、組み立て性が向上した車載用ブラシレスモータ装置1を提供することができる。
【0040】
幾つかの実施形態では、例えば
図1及び
図2Aに示すように、上述したホルダユニット50を備えた構成において、ホルダ52は、ホルダ52を軸方向Xに貫通してブラシレスモータ10側から基板本体32の貫通孔34にコイル線20を案内するためのガイド穴54を含んでいてもよい。
【0041】
ガイド穴54は、ホルダ52の下面側から上面側に亘って、ホルダ52を軸方向Xに貫通するように形成されており、ガイド穴54における軸方向Xに直交する断面形状は例えば円形に形成されている。また、ガイド穴54は、ガイド穴54における電子基板30側(上側)の開口端である基板側開口端56が、軸方向X視にて貫通孔34と重なるように(より詳細には軸方向X視にて基板側開口端56が貫通孔34の内側に収まるように)形成されている。
【0042】
かかる車載用ブラシレスモータ装置1によれば、ホルダ52がガイド穴54を含むことにより、ホルダ52のブラシレスモータ10側(下側)から上側に向けてコイル線20を案内することができ、さらに電子基板30の貫通孔34にコイル線20を案内することができる。よって、例えば端子ピン等のリジッドな部材に比べて比較的柔軟で形が定まらないコイル線20の一端を電子基板30の貫通孔34に円滑に案内することができるから、組み立て性が向上した車載用ブラシレスモータ装置1を提供することができる。なお、コイル18のコイル線20の絶縁被膜を予め除去することで半田付けが容易になる。
【0043】
図3~
図5は一実施形態におけるターミナル40の構成例を示す図であり、
図3はターミナル40の上面図(軸方向X視図)、
図4はターミナル40の側面図、
図5はターミナル40の下面図(軸方向X視図)である。なお、
図3~
図5は、ターミナル40とコイル線20とのヒュージング溶接を行う前の状態のターミナル40を示している。
【0044】
幾つかの実施形態では、例えば
図3~
図5に示すように、上述した構成において、ターミナル40には、平面Pが含む第1方向a1に沿って延在する第1スリット41が形成されていてもよい。ターミナル40は、第1スリット41を挟んで一方側に設けられた第1ターミナル部43と、第1スリット41を挟んで他方側に設けられた第2ターミナル部44と、第1ターミナル部43と第2ターミナル部44とを接続する第3ターミナル部45と、第2ターミナル部44から軸方向におけるロータ12と反対側に突出して設けられた突出部80と、を含む。
【0045】
第1ターミナル部43、第2ターミナル部44及び第3ターミナル部45は、全体で平板上に形成されてターミナル40の基底部42を構成する。基底部42は、軸方向X視にて例えばJ字状、U字状又はV字状をなす平板状の部材であってもよく、基板本体32の上面32Aに対向して平面Pと平行に配置される。
【0046】
突出部80は、コイル線20にヒュージング溶接されており、第1ターミナル部43は、基板本体32に第1半田付け部90を介して接続されている。なお、本明細書において「半田付け部」とは、複数(例えば2つ)の部材を半田付けにより接続した場合における、当該複数の部材の間に位置する半田を意味する。
【0047】
典型的な鉛フリー半田の融点温度は、例えば摂氏約218度であることが知られている。一方、例えば銅を溶融するヒュージング溶接では、銅の融点である摂氏約1000度以上の温度が生じ、その熱によって半田付け部が再溶融し、電子基板からターミナルが脱落することが懸念される。
【0048】
これに対し、上記ブラシレスモータ装置1によれば、ターミナル40の形状が大型化することを抑制しつつ、突出部80から第1半田付け部90までのターミナル40の表面に沿った距離(
図3の矢印Kに沿った長さ)を長くすることができる。したがって、突出部80とコイル線20とのヒュージング溶接の際に溶接の熱が突出部80から第1半田付け部90に伝わることを抑制して、第1半田付け部90が再溶融することを抑制することができる。よって、ブラシレスモータ装置1の大型化を抑制しつつ、電子基板30とコイル18との良好な電気接続状態を実現することができる。
【0049】
幾つかの実施形態では、例えば
図5に示すように、第2ターミナル部44は、基板本体32に半田付けされた第2半田付け部92を含み、第1半田付け部90と第2半田付け部92とは分離している。第1半田付け部90と第2半田付け部92とは、第1スリット41を挟んで互いが平行に延在するように配置されている。
【0050】
かかる構成によれば、第1半田付け部90及び第2半田付け部92を介してコイル18と電子基板30とを電気的に接続することができる。そして、第1半田付け部90と第2半田付け部92とが分離しているため、突出部80とコイル線20との溶接の熱によって第2半田付け部92が再溶融しても、第1半田付け部90の再溶融を抑制することができる。これにより、電子基板30とコイル18との良好な電気接続状態を実現することができる。
【0051】
幾つかの実施形態では、例えば
図3~
図5に示すように、第3ターミナル部45は、第1方向a1における第2ターミナル部44の一端部44aに接続し、突出部80は、第1方向a1における第2ターミナル部44の他端部44bに接続する。
【0052】
かかる構成によれば、突出部80から第3ターミナル部45までのターミナル40の表面に沿った距離を長くすることができる。このため、ターミナル40の形状が大型化することを抑制しつつターミナル40の表面に沿った突出部80から第1半田付け部90までの距離を長くすることができる。したがって、突出部80とコイル線20とのヒュージング溶接の際に溶接の熱が突出部80から第1半田付け部90に伝わることを効果的に抑制して、第1半田付け部90が再溶融することを抑制することができる。
【0053】
幾つかの実施形態では、例えば
図3及び
図4に示すように、突出部80は、第2ターミナル部44の他端部44bに接続する基端部80aと、鉤状に形成されるとともにコイル線20と係合するフック部80bを含む。図示する例示的形態では、基端部80aは、矢印a1と交差する平面(図示する形態では矢印a1と直交する平面)に沿って平板状に形成されており、フック部80bは、基端部80aから延在するとともに湾曲又は屈曲した板状に形成されている。フック部80bは、基板本体32の上面32Aから突出したコイル線20の周りを囲むようにして先端が第2ターミナル部44側に折り返されるように曲成されていてもよい。なお、上述のように構成されたターミナル40は、基底部42と突出部80とが同一部材により一体に形成されていてもよい。
【0054】
かかる構成を有する車載用ブラシレスモータ装置1によれば、突出部80の先端に配置されてコイル線20とヒュージング溶接されるフック部80bから、突出部80の基端部80a、第2ターミナル部44及び第3ターミナル部45を介して第1ターミナル部43までの距離を長く確保することができるから、フック部80bとコイル線20との溶接の際に生じる熱が第1半田付け部90に伝達されることを抑制することができる。
【0055】
図6は
図3に示したターミナル40の構成例を概略的に示す平面図である。
幾つかの実施形態では、例えば
図6に示すように、上述したターミナル40が第1ターミナル部43と第2ターミナル部44を含む構成において、第1方向a1における第2ターミナル部44の長さL2は、第1方向a1における第1ターミナル部43の長さL1よりも長くてもよい。
【0056】
かかる構成の車載用ブラシレスモータ装置1によれば、突出部80から第1半田付け部90までのターミナル40の表面に沿った距離を長くすることができるため、突出部80とコイル線20との溶接の熱によって第1半田付け部90が再溶融することを抑制することができる。
【0057】
図7は一実施形態における金属箔端子部70を概略的に示す斜視図である。
図8は一実施形態におけるレジスト75の第1開口部76及び第2開口部78を概略的に示す斜視図である。
図9は一実施形態におけるターミナル40を基板本体32に搭載した状態を概略的に示す斜視図である。
図10は一実施形態における金属箔端子部70の構成例を概略的に示す平面図である。
【0058】
幾つかの実施形態では、上記第1半田付け部90及び第2半田付け部92を含む構成において、例えば
図7~
図10に示すように、電子基板30は、貫通孔34に隣接し、基板本体32におけるロータ12と反対側の面32Aに沿って配置された金属箔端子部70と、金属箔端子部70上に配置されるとともに第1半田付け部90に対応する第1開口部76及び第2半田付け部92に対応する第2開口部78を有するレジスト75と、を含んでいてもよい。
【0059】
例えば
図7に示すように、金属箔端子部70には、第1方向a1に沿って延在する第2スリット73が形成されている。すなわち、スリット41とスリット73とは同一方向に沿って延在している。金属箔端子部70は、第1部分71、第2部分72及び第3部分74を含む。
図7及び
図8に示すように、第1部分71は、一端が開放された第2スリット73を挟んで一方側に設けられ、第1開口部76において第1半田付け部90(
図5参照)と接続される。これにより、第1部分71は、第1開口部76内に位置する第1半田付け部90を介して第1ターミナル部43に接続される。第2部分72は、第2スリット73を挟んで他方側に設けられ、第2開口部78において第2半田付け部92(
図5参照)と接続される。これにより、第2部分72は、第2開口部78内に位置する第2半田付け部92を介して第2ターミナル部44に接続される。
【0060】
金属箔端子部70は、軸方向X視にて例えばJ字状、U字状又はV字状をなす平板状の部材であってもよく、基板本体32の上面32Aに対向して平面Pと平行に配置される。
【0061】
第2部分72は、フック部80bとコイル線20との溶接の際に生じる熱を放出するヒートシンクとして機能する。第1部分71と第2部分72とは、第2スリット73を挟んで互いが平行に延在するように配置されていてもよい。
【0062】
かかる構成を有する車載用ブラシレスモータ装置1によれば、フック部80bとコイル線20との溶接で生じる熱の伝達経路において、第1半田付け部90よりも手前で、第2部分72において大部分の熱を放熱することができる。よって、フック部80bとコイル線20との溶接で生じる熱によって第2半田付け部92が再溶融したとしても、少なくとも第1半田付け部90を介して電子基板30(より詳細には金属箔端子部70)とコイル18との電気的な接続を確保することができるから、電子基板30とコイル18との良好な電気接続状態を実現することができる。
【0063】
幾つかの実施形態では、例えば
図10に示すように、第2部分72の面積A2は第1部分71の面積A1より大きくてもよい。この場合、第2部分72の面積A2が第1部分71の面積A1の1.2倍以上であってもよい。また、より好ましくは、第2部分72の面積A2が第1部分71の面積A1の1.4倍以上であってもよい。
【0064】
かかる構成の車載用ブラシレスモータ装置1によれば、フック部80bとコイル線20との溶接で生じる熱の伝達経路において、第1ターミナル部43乃至第1半田付け部90よりも手前で、第1部分71よりも大きな面積L2を有する、或いは第1部分71の1.2倍以上の面積L2を有する第2部分72において大部分の熱を放熱することができる。よって、突出部80とコイル線20との溶接の熱によって第2半田付け部92が再溶融しても、第1半田付け部90の再溶融を抑制することができる。したがって少なくとも第1半田付け部90を介して電子基板30(より詳細には金属箔端子部70)とコイル18との電気的な接続をより確実に確保することができるから、車載用ブラシレスモータ装置1の歩留まりの低下を効率的に抑制することができる。
【0065】
幾つかの実施形態では、例えば
図9に示すように、上述した何れか一つの構成において、電子基板30は、複数のターミナル40を含み、複数のターミナル40の各々は、基板本体32に対して同じ向きに配向されるように構成されていてもよい。
【0066】
具体的には、例えば基板本体32に対する第1ターミナル部43、第2ターミナル部44、突出部80又はフック部80bの向きが各々のターミナル40において統一されるように電子基板30を構成してもよい。
【0067】
かかる構成の車載用ブラシレスモータ装置1によれば、例えば図示しないマウンタ装置(自動組立装置)などを用いて、各ターミナル40を基板本体32上に自動で搭載することができるとともに、各々のターミナル40を搭載する際にマウンタ装置又は基板本体32の向きを変える必要がないため、組み立てに要する時間を短縮することができ、組み立て性が向上した車載用ブラシレスモータを提供することができる。また、車載用ブラシレスモータ装置1を安価に組立することができる。
【0068】
図11は一実施形態における電子基板30の上方の領域を概略的に示す平面図である。
図12は一実施形態における電子基板30の上方の領域を概略的に示す側面図である。
本開示の上述した車載用ブラシレスモータ装置1によれば、例えば
図11及び
図12に示すように、電子基板30の上方に、ヒュージング溶接を行うためヒュージング装置の電極用のツールエリア84が確保される。よって、ターミナル40の周辺に配置された部品とヒュージング装置の電極との干渉を抑制し、車載用ブラシレスモータ装置1の組み立て性を向上することができる。
【0069】
図13は一実施形態におけるガイド穴54の構成例を示す側断面図である。
図14は一実施形態におけるガイド穴54の変形例を示す側断面図である。
幾つかの実施形態では、例えば
図2A、
図13及び
図14に示すように、上述したホルダ52がガイド穴54を含む車載用ブラシレスモータ装置1において、ガイド穴54は、ロータ12から軸方向Xに離れるにつれて穴径(通路径)が小さくなるように先細りに形成されたテーパ通路部57を含んでいてもよい。
【0070】
これにより、コイル線20の一端を電子基板30のテーパ通路部57を介して貫通孔34に円滑に案内することができるから、組み立て性が向上した車載用ブラシレスモータ装置1を提供することができる。例えば予め電子基板30を搭載したホルダユニット50とコイル18とを自動組立装置によって組立することが可能となる。その後、フック部80bとコイル線20とのヒュージング溶接を行うことで電子基板30とコイル18の電気接続が可能となる。
【0071】
なお、ガイド穴54におけるブラシレスモータ10側の開口端であるモータ側開口端55は、コイル線20の直径に比べて十分に大きな直径を有している。具体的に、モータ側開口端55は、例えば
図13及び
図14に示すように、コイル線20の直径をd1、モータ側開口端55の直径(モータ側開口端55の内径)をd2とすると、例えば3≦d2/d1を満たすように構成されていてもよい。なお、「モータ側開口端55の直径」とは、モータ側開口端55の位置でのガイド穴54の穴径(通路径)を意味する。
【0072】
幾つかの実施形態において、例えば
図13及び
図14に示すように、ガイド穴54は、通路径が軸方向に一定である基板側通路部60を含んでもよい。図示する形態では、基板側通路部60は、基板側開口端56とテーパ通路部57の上端とを接続するように構成されている。
【0073】
これにより、ガイド穴54に案内されたコイル線20が基板側通路部60を通過する際に、コイル線20に対して上方に向かう指向性を与えることができるから、コイル線20を電子基板30の貫通孔34に向けてより一層容易且つ円滑に案内することができる。なお、他の実施形態では、ガイド穴54は、例えばモータ側開口端55から基板側開口端56に亘ってテーパ通路部57が形成されていてもよい。つまり、テーパ通路部57の下端がモータ側開口端55であるとともにテーパ通路部57の上端が基板側開口端56であってもよい。
【0074】
幾つかの実施形態では、例えば
図13及び
図14に示すように、ホルダ52は、ロータ12と反対側に向けて突出する筒状部82を含んでもよい。
【0075】
この場合、ガイド穴54の少なくとも一部は筒状部82の内周面82Aによって形成される。また、この場合、筒状部82の内周面82Aの上端である基板側開口端56は、
図13に示すように貫通孔34の下方に配置されてもよいし、貫通孔34の内部に配置されていてもよいし、
図14に示すように電子基板30の上面32Aと面一に配置されてもよいし、電子基板30の上面32Aより上方に配置されていてもよい。また、
図14に示すように、筒状部82において基板側通路部60を内周面に形成する円筒状の基板側部分82Bの少なくとも一部は、貫通孔34の内部に配置されてもよい。
【0076】
図14に示すように筒状部82の基板側部分82Bを貫通孔34の内部に配置することにより、コイル線20の一端を電子基板30の貫通孔34により円滑に案内することができるから、組み立て性が向上した車載用ブラシレスモータ装置1を提供することができる。
【0077】
幾つかの実施形態では、例えば
図13及び
図14に示すように、上記ガイド穴54がテーパ通路部57を含む車載用ブラシレスモータ装置1において、基板側開口端56の直径D2(基板側開口端56の内径)は、貫通孔34の直径D1より小さくてもよい。かかる構成の車載用ブラシレスモータ装置1によれば、基板側開口端56を通過したコイル線20を電子基板30の貫通孔34に対してより一層容易且つ円滑に案内することができる。なお、「基板側開口端56の直径」とは、基板側開口端56の位置でのガイド穴54の穴径(通路径)を意味する。
【0078】
続いて、本開示の一実施形態に係る車載用ブラシレスモータ装置の製造方法について説明する。
図15は一実施形態に係る車載用ブラシレスモータ装置の製造方法を示すフローチャートである。
図15に示すように、車載用ブラシレスモータ装置1の製造方法は、ブラシレスモータ10の出力側と反対側に軸方向Xと交差する平面Pに沿って電子基板30の基板本体32を配置するステップS1と、電子基板30の貫通孔34にブラシレスモータ10のステータ16を構成するコイル18のコイル線20を通すステップS2と、電子基板30を挟んでロータ12と反対側で、基板本体32におけるロータ12と反対側の面32A上に固定されたターミナル40のフック部80bにコイル線20を溶接するステップS3と、を含む。
【0079】
ステップS1では、例えばブラシレスモータ10が配置される空間と電子基板30が配置される空間とを仕切るホルダユニット50の上面に、ブラシレスモータ10の駆動を制御するための各種電子部品が搭載された電子基板30を配置する。その際、例えばコイル線20を挿通させるために電子基板30に予め形成された貫通孔34と、貫通孔34にコイル線20を案内するためにホルダユニット50に予め形成されたガイド穴54と、が軸方向X視にて重なるようにして電子基板30を配置してもよい。さらに、コネクタターミナル58の一端58Aと金属箔端子部85とを接続する第3半田付け部63を形成する。
【0080】
なお、ステップS1の前工程として、基板本体32上に金属箔端子部70を設けるとともに、金属箔端子部70上にレジスト75を配置し、第1開口部76の内側に露出した第1部分71と第1ターミナル部43とを半田付けにより接続して第1半田付け部90を形成する。また第2開口部78の内側に露出した第2部分72と第2ターミナル部44とを半田付けにより接続して第2半田付け部92を形成する。
【0081】
ステップS2では、例えばガイド穴54としてホルダ52の下面側から上面側に向かうにつれて縮径するようにホルダユニット50のホルダ52に予め形成されたテーパ通路部57に沿ってコイル線20を案内して貫通孔34にコイル線20の一端を通す。
【0082】
ステップS3では、例えば貫通孔34を通って電子基板30の上側に突出したコイル線20の一端を、当該一端が上方を向くように配置し、コイル線20がフック部80bの内側に配置されるようにしてコイル線20とターミナル40とをヒュージング溶接する。また、基板本体32上に金属箔端子部70を設けるとともに、金属箔端子部70上にレジスト75を配置し、第1開口部76の内側に露出した第1部分71に第1半田付け部90を半田付けし、第2開口部78の内側に露出した第2部分72に第2半田付け部92を半田付けする。
【0083】
かかる車載用ブラシレスモータ装置1の製造方法によれば、上述したように、コイル18のコイル線20が基板本体32の貫通孔34を通ってロータ12と反対側でターミナル40に直接的にヒュージング溶接されるから、例えば端子ピン等のリジッドな部品を介してコイル18と電子基板30とを接続する場合に比べて、軸方向Xにおいて小型化可能な車載用ブラシレスモータ装置1を提供することができる。また、端子ピンを介してコイル18と電子基板30とを接続する場合に比べて溶接箇所の数を低減することができるから、車載用ブラシレスモータ装置1を容易に製造することができる。
【0084】
本開示の少なくとも1つの実施形態によれば、ロータの軸方向において小型化できる車載用ブラシレスモータ装置及びその製造方法を提供することができる。
【0085】
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変更を加えた形態や、これらの形態を組み合わせた形態も含む。
例えば、上述した幾つかの実施形態では、車載用ブラシレスモータ装置1として、ブラシレスモータ10が搭載された電動オイルポンプ1A(オイル供給装置)を例に説明したが、本開示の車載用ブラシレスモータ装置1はこれに限定されず、例えばブラシレスモータ10を搭載した電子制御式の可変バルブタイミングシステム(Variable Valve Timing system:VVT)、電動ウォーターポンプ(Electric Water Pump:EWP)、パーキングロックアクチュエータ(Parking Lock Actuator:PLA)等にも適用可能である。
【符号の説明】
【0086】
1 車載用ブラシレスモータ装置
10 ブラシレスモータ
12 ロータ
16 ステータ
18 コイル
20 コイル線
30 電子基板
32 基板本体
32A 上面
34 貫通孔
40 ターミナル
41 第1スリット
42 基底部
43 第1ターミナル部
44 第2ターミナル部
44B 一端部
44C 他端部
45 第3ターミナル部
47 フック部
50 ホルダユニット
52 ホルダ
54 ガイド穴
55 モータ側開口端
56 基板側開口端
57 テーパ面
58 コネクタターミナル
58A 一端
58B 他端
63 第3半田付け部
70 金属箔端子部
71 第1部分
72 第2部分
73 第2スリット
74 第3部分
75 レジスト
76 第1開口部
78 第2開口部
80 突出部
90 第1半田付け部
92 第2半田付け部
L1 第1方向a1における第1ターミナル部の長さ
L2 第1方向a1における第2ターミナル部の長さ
P 平面
X 軸方向