(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-20
(45)【発行日】2023-06-28
(54)【発明の名称】聴力検査装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/12 20060101AFI20230621BHJP
【FI】
A61B5/12
(21)【出願番号】P 2019140750
(22)【出願日】2019-07-31
【審査請求日】2022-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000115636
【氏名又は名称】リオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【氏名又は名称】上村 欣浩
(72)【発明者】
【氏名】野中 隆司
【審査官】▲高▼原 悠佑
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-518884(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0135719(US,A1)
【文献】特表2017-528929(JP,A)
【文献】特開2007-013708(JP,A)
【文献】特開2002-057786(JP,A)
【文献】特開2013-176413(JP,A)
【文献】特表2005-527289(JP,A)
【文献】特表2005-516644(JP,A)
【文献】特開2012-022487(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1566351(KR,B1)
【文献】特開2019-012501(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0225244(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
聴力検査装置本体、及び該聴力検査装置本体に接続されるヘッドホンを備え、該ヘッドホンから検査音を出力して被検者の聴力検査を行う聴力検査装置において、
前記ヘッドホンは、
前記聴力検査を行っているときに前記被検者に対して振動を与える振動子を有
し、
前記振動子は、前記検査音の周波数範囲とは異なる周波数で振動する、ことを特徴とする聴力検査装置。
【請求項2】
聴力検査装置本体、及び該聴力検査装置本体に接続されるヘッドホンを備え、該ヘッドホンから検査音を出力して被検者の聴力検査を行う聴力検査装置において、
前記ヘッドホンは、前記聴力検査を行っているときに前記被検者に対して振動を与える振動子を有し、
前記振動子は、前記検査音の提示パターンとは異なる提示パターンで振動する、ことを特徴とする聴力検査装置。
【請求項3】
前記ヘッドホンは、前記検査音を出力する受話器と、該受話器に連結するヘッドバンドとを備え、
前記振動子は、前記ヘッドバンドに設けられる、ことを特徴とする請求項1
又は2に記載の聴力検査装置。
【請求項4】
聴力検査装置本体、及び該聴力検査装置本体に接続されるヘッドホンを備え、該ヘッドホンから検査音を出力して被検者の聴力検査を行う聴力検査装置において、
前記聴力検査装置は、応答スイッチを備え、前記応答スイッチは、前記聴力検査を行っているときに前記被検者に対して振動を与える振動子を有し、
前記振動子は、前記検査音の周波数範囲とは異なる周波数で振動する、ことを特徴とする聴力検査装置。
【請求項5】
聴力検査装置本体、及び該聴力検査装置本体に接続されるヘッドホンを備え、該ヘッドホンから検査音を出力して被検者の聴力検査を行う聴力検査装置において、
前記聴力検査装置は、応答スイッチを備え、前記応答スイッチは、前記聴力検査を行っているときに前記被検者に対して振動を与える振動子を有し、
前記振動子は、前記検査音の提示パターンとは異なる提示パターンで振動する、ことを特徴とする聴力検査装置。
【請求項6】
前記振動子は、前記応答スイッチの持ち手部に設けられる、ことを特徴とする請求項
4又は5に記載の聴力検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は被検者の聴力を測定するための聴力検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
聞こえに異常を感じる場合や難聴等の疑いがあるとき、あるいは補聴器の調整を行うような際、医療機関等で聴力検査装置(例えばオージオメータ)を使用した聴こえの検査が行われる。この検査は一般に、純音聴力検査と称される方法で行われて、多くの場合、防音構造をもつ検査室内で行われる。聴力検査室には、被検者のみが入る小型のものや、被検者だけでなく検査者も入ることができる大型のものなどがある。検査を行う場合、聴力検査装置本体に接続したヘッドホンを被検者に装着し、検査者による聴力検査装置本体の操作に基づいて(又は検査者の操作に因らずに聴力検査装置本体が備える自動聴力検査機能に基づいて)ヘッドホンから検査音を出力し、検査音が聴こえた際に被検者に応答スイッチを操作させることによって、被検者の聴力を測定する。このような聴力検査装置や聴力検査室、検査方法については、例えば特許文献1~4に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-56820号公報
【文献】特開2014-117545号公報
【文献】特開2013-176413号公報
【文献】特開2002-153447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の検査では、125Hz~8kHzの周波数範囲で出力される検査音について、どの程度小さな音圧レベルまで聴き取れるかを測定している。具体的には、ある周波数の検査音について、音圧レベルを少しずつ上昇させながら被検者に提示し、検査音が聴こえた際に被検者に応答スイッチを操作させることによって、その周波数での聴こえの程度(閾値)を特定する。このため被検者は、検査音を聴き、聴こえたら応答スイッチを押すという単調な操作を繰り返し行う必要がある。
閾値を特定する際には一般に、検査の正確性を担保するべく、同じ音圧レベルの検査音を複数回提示して、応答が同じように行われるか確認している。また閾値は、気導についての標準的な検査では125Hz,250Hz,500Hz,1kHz,2kHz,4kHz,8kHzの7つの周波数についてそれぞれ確認している。しかもこの確認は、左耳と右耳の両方について行う必要がある。さらに、必要に応じて、骨導についての検査も行われる。
【0005】
このように聴力検査では、単調な操作の繰り返しを比較的長い時間に亘って行わなければならず、しかも聴力検査室という静かな環境で行われるため、被検者は検査の途中で眠気を感じることがある。眠い状態の中で検査を行うと、実際には検査音が聴こえていても応答スイッチが押されなかったり、明らかに聴こえていない状態であるのに応答スイッチが押されたりする状況に陥ることがあり、正確な検査を行えない。実際に、被検者が眠ってしまった場合には、一旦検査を中断し、被検者を起こしてから検査を再開しなければならない。
【0006】
本発明はこのような不具合を解消することを課題とするものであり、眠気によって聴覚検査が正しく行えない状態であっても、被検者を再び検査に集中させて、検査を続けることが可能な聴力検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、聴力検査装置本体、及び該聴力検査装置本体に接続されるヘッドホンを備え、該ヘッドホンから検査音を出力して被検者の聴力検査を行う聴力検査装置において、前記ヘッドホンは、前記聴力検査を行っているときに前記被検者に対して振動を与える振動子を有し、前記振動子は、前記検査音の周波数範囲とは異なる周波数で振動する、ことを特徴とする。
【0008】
また本発明は、聴力検査装置本体、及び該聴力検査装置本体に接続されるヘッドホンを備え、該ヘッドホンから検査音を出力して被検者の聴力検査を行う聴力検査装置において、前記ヘッドホンは、前記聴力検査を行っているときに前記被検者に対して振動を与える振動子を有し、前記振動子は、前記検査音の提示パターンとは異なる提示パターンで振動する、ことを特徴とするものでもある。
【0009】
このような聴力検査装置において、前記ヘッドホンは、前記検査音を出力する受話器と、該受話器に連結するヘッドバンドとを備え、前記振動子は、前記ヘッドバンドに設けられることが好ましい。
【0010】
また本発明は、聴力検査装置本体、及び該聴力検査装置本体に接続されるヘッドホンを備え、該ヘッドホンから検査音を出力して被検者の聴力検査を行う聴力検査装置において、前記聴力検査装置は、応答スイッチを備え、前記応答スイッチは、前記聴力検査を行っているときに前記被検者に対して振動を与える振動子を有し、前記振動子は、前記検査音の周波数範囲とは異なる周波数で振動する、ことを特徴とするものでもある。
また本発明は、聴力検査装置本体、及び該聴力検査装置本体に接続されるヘッドホンを備え、該ヘッドホンから検査音を出力して被検者の聴力検査を行う聴力検査装置において、前記聴力検査装置は、応答スイッチを備え、前記応答スイッチは、前記聴力検査を行っているときに前記被検者に対して振動を与える振動子を有し、前記振動子は、前記検査音の提示パターンとは異なる提示パターンで振動する、ことを特徴とするものでもある。
そして前記振動子は、前記応答スイッチの持ち手部に設けられることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
このような聴力検査装置によれば、被検者が眠気を感じていると判断される場合には、振動子によって被検者に振動を与えて被検者を再び検査に集中させることができるため、聴覚検査を継続することができる。また、振動を利用することで難聴者にも有効な手段となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に従う聴力検査装置の一実施形態を示した図である。
【
図2】
図1の聴力検査装置におけるヘッドホンを示した図である。
【
図3】
図1の聴力検査装置における応答スイッチを示した図である。
【
図4】
図2に示したヘッドホンの変形例を示した部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明に従う聴力検査装置の一実施形態について説明する。なお、以下の説明において「上」「下」「左」「右」「前」「後」を使って説明する向きは、聴力検査を受けている被検者にとっての向きをいう。
【0016】
図1に示すように本実施形態の聴力検査装置100は、聴力検査装置本体1と、聴力検査装置本体1にそれぞれ接続されるヘッドホン2と応答スイッチ3とを備えている。ヘッドホン2は、被検者が気導によって検査音を聴き取る際に使用される。なお図示は省略するが聴力検査装置本体1には、被検者が骨導によって検査音を聴き取る際に使用される骨導受話器も接続される場合がある。
【0017】
聴力検査装置本体1は、ヘッドホン2から所定の検査音を提示させるための信号を生成する機能や、被検者が応答スイッチ3を操作した際の信号を認識する機能の他、後述するオージオグラムを生成してこれを記憶する機能等を有する不図示の制御部を備えている。制御部にはこれら以外にも種々の機能を持たせることが可能であって、例えば応答スイッチ3からの応答に応じてヘッドホン2から提示させる検査音の音圧レベルを自動的に切り替えて閾値を特定し、特定した閾値を記録する機能(自動聴力検査機能)を持たせてもよい。このような制御部は、例えばCPUやメモリ等によって実現可能である。
【0018】
また聴力検査装置本体1は、上記の制御部を操作するための操作部4を備えている。操作部4には、検査音の周波数を切り替える際に使用される周波数切り替えスイッチや、検査音の音圧を増減させるための出力レベル可変スイッチ、検査音の出力先として右耳又は左耳を切り替えるための選択スイッチ等が設けられている。また操作部4には、検査音が提示されている時に点灯する表示灯も設けられている。このような操作部4を検査者が操作することによって、所定の聴力検査が実施される。なお、聴力検査装置本体1が上記の自動聴力検査機能を持つ場合は、検査者による逐次の操作は不要である。
【0019】
更に本実施形態の操作部4は、被検者が眠気を感じていると判断される場合に使用される振動発生スイッチも備えている。なお、振動発生スイッチの詳細な説明については後述する。
【0020】
また聴力検査装置本体1には、表示部5も設けられている。表示部5には、出力した検査音の周波数(Hz)と得られた検査結果の聴力レベル(dB)とから作成されるオージオグラムを表示することが可能である。なお表示部5は、被検者が応答スイッチ3を押したときに点灯する表示窓など、オージオグラム以外のものを表示させてもよい。また表示部5は、タッチパネルのように、各種の表示と各種の入力操作の両方を行えるものであってもよい。
【0021】
図2に示すようにヘッドホン2は、側面視において下方を開放させた略C字状となるヘッドバンド6を備えている。ヘッドバンド6は、左右方向の幅が狭まる向きに弾性を有するように構成されている。またヘッドバンド6は、図示した略C字状となる部位が1つで構成されるものでもよいし、略C字状となる部位を複数準備してこれらを前後方向に間隔をあけて連結したものでもよい。
【0022】
更に本実施形態におけるヘッドホン2のヘッドバンド6には、振動子(第一振動子)10が設けられている。本実施形態の第一振動子10は、ヘッドバンド6に連結する支持バンド11によってヘッドバンド6に支持されている。なお図示は省略するが、第一振動子10と聴力検査装置本体1はケーブルで接続されていて、上述した操作部4の振動発生スイッチを操作することによって第一振動子10が作動する。
【0023】
応答スイッチ3は、
図3に示すように概略直方体状をなし、聴力検査時に被検者が把持する持ち手部12と、持ち手部12に設けられた応答ボタン13と、持ち手部12に設けられた振動子(第二振動子)14と、応答スイッチ3と聴力検査装置本体1とを接続するケーブル15とを備えている。ケーブル15は、応答ボタン13の押下状態又は非押下状態を聴力検査装置本体1に伝えるとともに、上述した操作部4の振動発生スイッチが操作されたとの信号を応答スイッチ3に伝えるものである。
【0024】
このような構成になる聴力検査装置100によれば、被検者の頭部にヘッドホン2を装着させるとともに応答スイッチ3を手に持たせ、検査者が聴力検査装置本体1を操作することによって、従来通りに聴力検査を行うことができる。また、検査の途中で被検者が眠気を感じていると判断される場合、検査者が操作部4の振動発生スイッチを操作すると、ヘッドホン2の第一振動子10が作動して、その際に発せられる振動がヘッドバンド6を介して被検者の頭部に伝わるため、被検者を再び検査に集中させることができる。本実施形態においては、振動発生スイッチの操作に伴って応答スイッチ3の第二振動子14も作動し、その際に発せられる振動が持ち手部12を介して被検者の手にも伝わるようにしている。このため、より確実に被検者を検査に集中させることができる。
【0025】
第一振動子10と第二振動子14を振動させるにあたっては、検査音の周波数範囲(例えば純音聴力検査で使用する125Hz~8kHzの周波数範囲)とは異なる周波数(例えば50Hz)で振動させることが好ましい。すなわち、それまで提示されていた検査音と周波数や提示パターンが全く異なる振動が、受話器とは異なる場所から突然与えられることにより、被検者は何らかの注意情報を受けたことを知り、検査を続行できる状態に復帰できる。
【0026】
また第一振動子10と第二振動子14を振動させる際、検査音の提示パターンとは異なる提示パターンで振動させることが好ましい。ここで検査音の提示パターンとは、検査音が発せられて停止するまでの一音あたりの時間と、発せられた一音と次に発せられる一音との間の時間との組み合わせをいう。また検査音の提示パターンとは異なる提示パターンで振動させるとは、検査音の一音あたりの時間に対し、第一振動子10と第二振動子14が振動している時間やこれらの振動が停止している時間が相違するように第一振動子10と第二振動子14を振動させる、又は、発せられた一音と次に発せられる一音との間の時間に対し、第一振動子10と第二振動子14が振動している時間やこれらの振動が停止している時間が相違するように第一振動子10と第二振動子14を振動させることをいう。この点について具体例を挙げて説明すると、例えば検査音の提示パターンが2.2Hzの場合には、第一振動子10と第二振動子14の振動の提示パターンを1Hzや0.5Hzとしたり、異なる振動時間が組み合わされた提示パターンにしたりすることをいう。すなわち、この場合も検査音とは異なる提示パターンの振動が伝わるため、第一振動子10と第二振動子14の振動を検査音と誤認してしまう不具合が起きにくくなり、また眠気を覚ます効果をより有効に発揮させることができる。
【0027】
また聴力検査装置本体1の制御部に、被検者が眠気を感じていると判別できる際には第一振動子10と第二振動子14を振動させる信号を自動的に出力する機能を持たせてもよい。被検者が眠気を感じていると判別できる状態とは、例えば十分に大きな音圧レベルの検査音(聴覚検査を行う前の会話から十分に聴こえていると思われる音圧の音)を提示しても応答スイッチ3からの応答が得られない状態や、検査音を提示していないにもかかわらず応答スイッチ3が一定時間操作されたままになっている状態などが挙げられる。このような機能を持たせることによって、検査者の負担を軽くすることができる。
【0028】
ところで、
図2に示した第一振動子10をヘッドバンド6に支持するにあたっては、例えばヘッドバンド6に接着したり、ヘッドバンド6に内蔵したりなどして、支持バンド11を使用せずにヘッドバンド6に直接固定してもよい。
【0029】
また第一振動子10は、
図4に示すように他の部材を介してヘッドバンド6に連結してもよい。
図4に示す実施形態においては、ヘッドバンド6の前方に板バネ16を設け、板バネ16の先端部に第一振動子10を設けている。板バネ16は、被検者がヘッドホン2を頭部に装着した際に先端部が被検者の額に当接する長さで形成されていて、且つ被検者の額に向けて撓むように弾性を有するものである。このような板バネ16を備えるヘッドホン2においても、第一振動子10の振動が被検者の額に伝わるため、被検者を再び検査に集中させるようにすることができる。
【0030】
なお、第一振動子10と第二振動子14で被検者に振動を与える部位は、頭部や手、額に限られず、被検者に接触する部位であればよい。また、第一振動子10と第二振動子14を設けるにあたっては、上記のように両方でもよいし、何れか一方だけでもよい。
【0031】
また、特開2018―61786号公報に示されている実施の形態に、第一振動子10と第二振動子14を加え、ワイヤレスで構成させることもできる。例えば、同文献に示されている通信部41で振動の指示を受けたら、メイン制御部42が第一振動子10と第二振動子14を振動させるようにしてもよい。
【0032】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、上記の説明で特に限定しない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。また、上述した実施形態の効果は、本発明から生じる効果を例示したに過ぎず、本発明による効果が上記の効果に限定されることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0033】
1:聴力検査装置本体
2:ヘッドホン
3:応答スイッチ
6:ヘッドバンド
10:第一振動子(振動子)
12:持ち手部
14:第二振動子(振動子)
100:聴力検査装置