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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-20
(45)【発行日】2023-06-28
(54)【発明の名称】ユニット式建物
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/348 20060101AFI20230621BHJP
【FI】
E04B1/348 L
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019152389
(22)【出願日】2019-08-22
(65)【公開番号】P2021031934
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100161230
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 雅博
(72)【発明者】
【氏名】中田 将太
【審査官】齋藤 卓司
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-052514(JP,A)
【文献】特開平07-238625(JP,A)
【文献】特開平07-113283(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/348
E04B 7/02
E04B 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱及び梁により枠状に形成された枠体を含む複数の建物ユニットが互いに組み合わされることで構成された建物本体と、
その建物本体の上方に設けられた屋根部とを備えるユニット式の建物であって、
前記屋根部は、大棟と隅棟とを有する寄せ棟式の屋根であり、前記大棟及び前記隅棟により区画された4つの傾斜屋根部を有し、
前記4つの傾斜屋根部は、複数の屋根パネルが並設されることにより構成され、
前記4つの傾斜屋根部には、台形形状とされた一対の第1傾斜屋根部と、三角形状とされた一対の第2傾斜屋根部とが含まれており、
前記枠体上に立設されるとともに、隣り合う前記屋根パネルの境界部の下方に配置され、それら隣り合う屋根パネルを共通に支持する複数の束と、
隣り合う前記束の間に架け渡されて設けられているとともに、隣り合う前記屋根パネルの境界部を跨いで延び、それら隣り合う屋根パネルを共通に支持する支持梁と、
を備え
前記支持梁として、平面視にて前記大棟と直交する方向に延びる第1支持梁が設けられ、
前記第1支持梁は、前記隅棟を挟んで隣接する前記第1傾斜屋根部の前記屋根パネル及び前記第2傾斜屋根部の前記屋根パネルの境界部を跨いで延びているとともに、前記隣接する各屋根パネルのうち前記第2傾斜屋根部の前記屋根パネルの下面に沿って水平方向に延びる水平部と、前記第1傾斜屋根部の前記屋根パネルの下面に沿って傾斜して延びる傾斜部と、前記水平部と前記傾斜部との間で屈曲された屈曲部とを有し、
前記屈曲部は、前記隅棟の下方に位置し、
前記第1支持梁は、前記屈曲部において前記隣接する各屋根パネルを共通に支持することを特徴とするユニット式建物。
【請求項2】
前記支持梁は、前記隣り合う各束の上端部の間に架け渡されており、その全体が前記屋根パネルに沿って延びるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載のユニット式建物。
【請求項3】
前記支持梁として、平面視において前記第1支持梁と異なる方向に延びる第2支持梁が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のユニット式建物。
【請求項4】
前記第1支持梁及び前記第2支持梁は同じ前記束に連結されていることを特徴とする請求項3に記載のユニット式建物。
【請求項5】
前記複数の束にそれぞれ前記支持梁が連結されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のユニット式建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユニット式建物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建物の一種として、ユニット式建物が知られている。ユニット式建物では、その建物本体が直方体状をなす複数の建物ユニットが互いに組み合わされることで構成されている。建物ユニットは、柱、天井大梁及び床大梁により枠状に形成された枠体を有し、その枠体に壁パネルや天井パネル等が取り付けられることで形成されている。
【0003】
ユニット式建物では、建物本体の上方に屋根部が設けられ、その屋根部が複数の屋根パネルが並設されることにより構成される。かかる屋根においては、建物本体上に立設された複数の束により各屋根パネルが支持される支持構造が採用されることがある(例えば特許文献1参照)。かかる支持構造では、束が建物ユニットの枠体上、例えば天井大梁上に立設され、その束が隣り合う屋根パネルの境界部の下方(真下)に配置される。そして、その束により隣り合う屋根パネルが共通に支持される。この場合、束の本数増大を抑制しながら各屋根パネルを支持することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-080329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した束による屋根パネルの支持構造では、隣り合う屋根パネルの境界部の下方に建物ユニットの枠体(例えば天井大梁)が存在しない場合、それら隣り合う屋根パネルの境界部の下方に束を設置することができない。そのため、この場合には、隣り合う各屋根パネルを束により共通に支持することができなくなってしまう。つまり、上述した屋根パネルの支持構造では、建物ユニットの配置による制約を受けて、隣り合う屋根パネルを束により共通に支持することができない場合が想定される。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、建物ユニットの配置による制約を受けることなく、各屋根パネルを支持することができるユニット式建物を提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく、第1の発明のユニット式建物は、柱及び梁により枠状に形成された枠体を含む複数の建物ユニットが互いに組み合わされることで構成された建物本体と、その建物本体の上方に設けられた屋根部とを備えるユニット式の建物であって、前記屋根部は、複数の屋根パネルが並設されることにより構成され、前記枠体上に立設されるとともに、隣り合う前記屋根パネルの境界部の下方に配置され、それら隣り合う屋根パネルを共通に支持する複数の束と、隣り合う前記束の間に架け渡されて設けられているとともに、隣り合う前記屋根パネルの境界部を跨いで延び、それら隣り合う屋根パネルを共通に支持する支持梁と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、隣り合う束の間に支持梁が架け渡されて設けられ、その支持梁が隣り合う屋根パネルの境界部を跨いで延びている。そして、その支持梁により隣り合う屋根パネルが共通に支持されている。この場合、隣り合う屋根パネルの境界部の下方に建物ユニットの枠体(例えば天井大梁や柱)が存在しない場合にも、それら隣り合う屋根パネルを支持梁により支持することが可能となる。そのため、建物ユニットの配置による制約を受けることなく、各屋根パネルを支持することが可能となる。
【0009】
ここで、例えば、隣り合う屋根パネルの境界部の下方に建物ユニットの枠体が存在しない場合に、その枠体の天井大梁間に小梁を架け渡すことでその小梁を隣り合う屋根パネルの境界部下に位置させることが考えられる。そして、その小梁上において隣り合う屋根パネルの境界部の下方となる位置に束を設置し、その束により隣り合う屋根パネルを共通に支持することが考えられる。かかる支持構成によっても、建物ユニットの配置による制約を受けることなく、屋根パネルを支持することは可能である。
【0010】
しかしながら、かかる構成は、あくまで束により屋根パネルを支持する構成であるため、小屋裏空間を使用するに際し束による制約を受け易い。その点、上述した本発明の構成では、支持梁により隣り合う屋根パネルを支持するようにしているため、その分束の本数を減らすことができ、小屋裏空間にて束による制約を低減させることができる。そのため、小屋裏空間を広く確保しながら、建物ユニットの配置にかかわらず各屋根パネルを支持できる、という上述の効果を得ることができる。
【0011】
また、隣り合う束同士を支持梁により連結することで、地震や強風の際等に屋根に生じる水平力(横向きの力)に対して抵抗力を付与することができる。このため、各屋根パネルを束だけで支持する構成と比べ、屋根の強度を好適に確保することができる。
【0012】
第2の発明のユニット式建物は、第1の発明において、前記支持梁は、前記隣り合う各束の上端部の間に架け渡されており、その全体が前記屋根パネルに沿って延びるように形成されていることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、支持梁の全体が屋根パネルに沿って配置されているため、支持梁が小屋裏空間において邪魔になるのを抑制することができる。これにより、小屋裏空間を使用するに際し、同空間をより広く確保することが可能となる。
【0014】
第3の発明のユニット式建物は、第1又は第2の発明において、前記支持梁として、平面視において互いに異なる方向に延びる第1支持梁及び第2支持梁が設けられていることを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、平面視にて互いに異なる方向に延びる第1支持梁及び第2支持梁が設けられているため、地震の際等に屋根部にいずれの方向の水平力が生じても、その水平力に対して抵抗力を付与することができる。そのため、屋根の強度をより好適に確保することができる。
【0016】
第4の発明のユニット式建物は、第3の発明において、前記第1支持梁及び前記第2支持梁は同じ前記束に連結されていることを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、平面視にて互いに異なる方向に延びる第1支持梁及び第2支持梁が同じ束に連結されているため、それら各支持梁と複数の束とが互いに一体化されてなる立体構造を得ることができる。そのため、屋根の強度を好適に高めることが可能となる。
【0018】
第5の発明のユニット式建物は、第1乃至第4のいずれかの発明において、前記複数の束にそれぞれ前記支持梁が連結されていることを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、建物本体上に立設された複数(すべて)の束にそれぞれ支持梁が連結されているため、束の本数を大いに低減させることが可能となる。そのため、小屋裏空間にて束による制約を大いに低減させることができ、その結果、小屋裏空間をより広く確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】ユニット式建物の概略を示す斜視図。
図2】建物ユニットを示す斜視図。
図3】屋根部の全体を示す平面図。
図4】屋根パネルを示す平面図。
図5図3のA-A線断面図。
図6】束と支持梁との配置構成を模式的に示す斜視図。
図7】他の実施形態における屋根部の全体を示す平面図。
図8】他の実施形態における束と支持梁との配置構成を模式的に示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明を具体化した一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。図1はユニット式建物の概略を示す斜視図であり、図2はそのユニット式建物を構成する建物ユニットを示す斜視図である。
【0022】
図1に示すように、住宅等の建物10(ユニット式建物)は、基礎11上に設けられた建物本体12と、その建物本体12の上方に設けられた屋根部13とを備える。建物本体12は、2階建てとされ、直方体状の建物ユニット20が複数組み合わされることで構成されている。これらの建物ユニット20は予め製造工場にて製造され、その後、トラック等により施工現場に搬送されるようになっている。
【0023】
建物ユニット20は、図2に示すように、その四隅に配設される4本の柱21と、各柱21の上端部及び下端部をそれぞれ連結する各4本の天井大梁22及び床大梁23とを備える。建物ユニット20では、それら柱21、天井大梁22及び床大梁23により直方体状の枠体24が形成されている。柱21は四角筒状の角形鋼よりなる。天井大梁22及び床大梁23は断面コ字状の溝形鋼よりなり、その溝部を水平方向の内側に向けて配置されている。なお、天井大梁22及び床大梁23がそれぞれ「梁」に相当する。
【0024】
対向する天井大梁22の間には、複数の天井小梁25が架け渡されている。これら天井小梁25により天井面材(図示略)が支持されている。また、対向する床大梁23の間には、複数の床小梁26が架け渡されている。これら床小梁26により床面材(図示略)が支持されている。
【0025】
続いて、屋根部13の構成について図3に基づいて説明する。図3は、屋根部13の全体を示す平面図である。なお、図3では便宜上、建物本体12を構成する各建物ユニット20を二点鎖線で示している。
【0026】
図3に示すように、屋根部13は寄せ棟式の屋根となっており、平面視において長方形状とされている。屋根部13は、その頂部において水平方向に延びる大棟31と、その大棟31の両端部から当該屋根部13の隅部33に向かって延びる隅棟32とを有する。屋根部13は、大棟31及び隅棟32により区画された4つ(4面)の傾斜屋根部35を有している。これらの傾斜屋根部35には、屋根部13の平側(長辺側)において台形形状とされた一対の傾斜屋根部35Aと、屋根部13の妻側(短辺側)において三角形状とされた一対の傾斜屋根部35Bとが含まれている。これら各傾斜屋根部35(35A,35B)はいずれも軒先37に向かって下方に傾斜するよう形成されている。
【0027】
各傾斜屋根部35はそれぞれ横並びに設けられた複数の屋根パネル40により構成されている。各傾斜屋根部35では、屋根パネル40が軒先37の延びる方向に複数並べられている。複数の屋根パネル40には、形状が互いに異なる複数種類の屋根パネル40が含まれている。例えば、三角形状(詳しくは直角三角形状)の屋根パネル40、四角形状(矩形形状)の屋根パネル40、台形形状の屋根パネル40等が含まれている。
【0028】
図4は、屋根パネル40の構成を示す平面図である。以下、この図4に基づき、屋根パネル40の構成について説明する。なお、図4では、四角形状の屋根パネル40が示されているが、屋根パネル40の基本構成は屋根パネル40の形状にかかわらず同じであるため、以下では、この図4に基づき(各種形状の)屋根パネル40の構成について説明する。
【0029】
図4に示すように、屋根パネル40は、野地板41と、その野地板41の下面側に設けられた下地フレーム42とを有している。野地板41は、パーティクルボードにより形成され、その形状が屋根パネル40の形状に応じて定められている。野地板41は、ビス等により下地フレーム42に固定されている。
【0030】
下地フレーム42は、金属製又は木製のフレーム材が枠状に組まれることにより形成されている。下地フレーム42は、フレーム材として、野地板41の周縁部に沿って延びる複数の周縁フレーム材43を有している。これら周縁フレーム材43により下地フレーム42の外枠が形成されている。また、下地フレーム42は、フレーム材として、さらに周縁フレーム材43同士を繋ぐ繋ぎフレーム材44を有している。但し、繋ぎフレーム材44は不具備であってもよい。
【0031】
屋根パネル40は、建物本体12上に設けられた束45により支持されている。以下においては、その束45による屋根パネル40の支持構成について図3に加え図5に基づき説明する。図5図3のA-A線断面図である。なお、図5では便宜上、傾斜屋根部35Bの図示を省略している。
【0032】
図3及び図5に示すように、建物本体12上には、複数の箇所に束45が設けられている。各束45はいずれも平面視にて建物本体12の中央側に配置されている。各束45は屋根パネル40を下方から支持しており、その支持状態において屋根パネル40は建物本体12の外周側に向けて下方傾斜して配置されている。また、建物本体12の外周部上には短尺状のブラケット48が設けられている。屋根パネル40は、建物本体12の外周側では、そのブラケット48により支持されている。
【0033】
各束45は、建物本体12上において、隣り合う建物ユニット20(詳しくは二階部分の建物ユニット20)が隣接するユニット隣接部に配置されている。束45は、上下方向に延びる角形鋼管よりなり、その下端部に束脚部46が固定されている。束脚部46は平板状の金属製プレートからなり、束45の下端部に溶接により固定されている。束脚部46は、隣り合う建物ユニット20の枠体24上詳しくは天井大梁22上に跨がって配置され、その配置状態でそれら各天井大梁22にボルト等により固定されている。これにより、束45は束脚部46を介して各天井大梁22上に立設されている。
【0034】
束45は、平面視において大棟31を挟んだ両側にそれぞれ複数ずつ(具体的には3つずつ)配置されている。大棟31を挟んだ両側ではそれぞれ、複数の束45が大棟31の延びる方向(換言すると、平面視における屋根部13の長辺方向)に所定の間隔で並んで配置されている。なお、以下の説明では、大棟31を挟んだ両側のうち一方側に配置された複数の束45を束45Aといい、他方側に配置された複数の束45を束45Bという。
【0035】
各束45Aの配置間隔と各束45Bの配置間隔とはいずれも同じとなっている。そのため、各束45Aと各束45Bとは、屋根部13の長辺方向における位置関係が同じとされている。また、各束45Aは、屋根部13の短辺方向における位置が各束45Bよりも大棟31に近い位置に設定されている。このため、各束45Aは各束45Bよりも高さ寸法(上下長さ)が大きくされている。なお、屋根部13の長辺方向とは平面視における屋根部13の長辺方向のことであり、屋根部13の短辺方向とは平面視における屋根部13の短辺方向のことである。これは、以下の説明においても同様である。
【0036】
各束45(45A,45B)はいずれも隣り合う屋根パネル40の境界部の下方(真下)に配置されている。各束45は、その上端部においてそれら隣り合う屋根パネル40を共通に支持している。詳しくは、隣り合う屋根パネル40の境界部では、それら各屋根パネル40の下地フレーム42の周縁フレーム材43が隣接して配置されている。そして、それら各屋根パネル40の周縁フレーム材43が束45の上端面に載置され、その載置状態で束45にビス等により固定されている。
【0037】
ここで、上述した建物10では、隣り合う屋根パネル40の境界部の下方に天井大梁22(ひいては枠体24)が存在しない箇所がある。この場合、それら隣り合う屋根パネル40の境界部下には束45を設置することができないため、それら隣り合う屋根パネル40を束45により共通に支持することができなくなる。そこで、本実施形態では、このような場合にも、隣り合う屋根パネル40を共通に支持できるよう、特徴的な支持構成を採用している。以下においては、その支持構成について説明する。なお、図6は、束45と支持梁51,52との配置構成を模式的に示す斜視図である。
【0038】
図3図5及び図6に示すように、隣り合う束45の間には支持梁51,52が架け渡されて設けられている。支持梁51,52は、長尺状の鋼材により形成され、例えば断面コ字状の溝形鋼により形成されている。支持梁51,52は、その溝部を下方に向けた状態で配置され、その両端部がそれぞれ各束45にボルト等により固定されている。この場合、支持梁51,52は、隣り合う束45を連結した状態で設けられている。
【0039】
支持梁51,52は複数配置されており、本実施形態では4つの支持梁51,52が配置されている。この場合、各束45には、これら複数の支持梁51,52のうち少なくともいずれかの支持梁が連結された状態となっている。なお、図3では便宜上、各支持梁51,52にドットハッチを付して示している。
【0040】
各支持梁51,52はいずれも、隣り合う屋根パネル40に跨がって延びている。換言すると、各支持梁51,52はいずれも隣り合う屋根パネル40の境界部を跨いで延びている。そして、各支持梁51,52は、隣り合う屋根パネル40の境界部においてそれら隣り合う屋根パネル40を共通に支持している。なお、図3では、支持梁51,52により各屋根パネル40が支持されている支持箇所を黒丸印で示している(この点は後述する図7においても同様)。また、本実施形態では、各支持梁51,52において、支持梁51,52による支持箇所が支持梁51,52の長さ方向の略中央部に設定されている。
【0041】
詳しくは、隣り合う屋根パネル40の境界部では、それら各屋根パネル40の下地フレーム42の周縁フレーム材43が隣接して配置されている。そして、それら各屋根パネル40の周縁フレーム材43が支持梁51,52の上面に載置され、その載置状態で支持梁51,52にビス等により固定されている。このように、隣り合う屋根パネル40の境界部では、それら隣り合う屋根パネル40が支持梁51,52により支持固定されている。
【0042】
支持梁51,52には、屋根部13の短辺方向に延びる支持梁51と、屋根部13の長辺方向に延びる支持梁52とが含まれている。支持梁51と支持梁52とは平面視にて互いに直交する方向に延びている。なお、支持梁51が第1支持梁に相当し、支持梁52が第2支持梁に相当する。
【0043】
支持梁51は、平面視において大棟31を挟んだ両側にそれぞれ配置されている。これら各支持梁51(以下、51A,51Bという)は、隣り合う束45A,45Bの間に架け渡されて設けられている。この場合、支持梁51A,51Bは、各束45A,45Bの上端部の間に架け渡されている。各支持梁51A,51Bは、隣接する傾斜屋根部35A,35Bの境界部、すなわち隅棟32を跨いで延びている。この場合、支持梁51A,51Bは、隅棟32を挟んで隣接する各傾斜屋根部35A,35Bの屋根パネル40に跨がって延びており、換言するとそれら隣接する各屋根パネル40の境界部を跨いで延びている。
【0044】
支持梁51A,51Bは、傾斜屋根部35Bの屋根パネル40の下面に沿って水平方向に延びる水平部51aと、その水平部51aから傾斜屋根部35Aの屋根パネル40の下面に沿って傾斜して延びる傾斜部51bとを有する。水平部51aは、その全体が傾斜屋根部35Bの屋根パネル40の下面に沿って延びている。また、傾斜部51bは、その全体が傾斜屋根部35Aの屋根パネル40の下面に沿って延びている。これにより、支持梁51A,51Bは、その全体が屋根パネル40の下面に沿って配置されている。
【0045】
水平部51aと傾斜部51bとはそれぞれ長尺材(鋼材)により形成されている。そして、水平部51aと傾斜部51bとが溶接により互いに接合されることで支持梁51A,51Bが形成されている。この場合、支持梁51A,51Bは、水平部51aと傾斜部51bとの間で屈曲された形状を有し、その屈曲された部分が屈曲部51cとなている。なお、支持梁51A,51Bは必ずしも上記のように形成する必要はなく、例えば一の長尺材(鋼材)を屈曲させることにより支持梁51A,51Bを形成してもよい。
【0046】
支持梁51A,51Bは、その屈曲部51cが隅棟32の下方(真下)に位置している。つまり、支持梁51A,51Bの屈曲部51cは、隅棟32を挟んで隣接する各屋根パネル40の境界部の下方に位置している。そして、支持梁51A,51Bは、その屈曲部51cにおいて、それら各屋根パネル40を共通に支持している。
【0047】
支持梁52は、平面視において大棟31を挟んだ両側にそれぞれ配置されている。これら各支持梁52のうち一方の支持梁52Aは隣り合う束45Aの間に架け渡されており、他方の支持梁52Bは隣り合う束45Bの間に架け渡されている。支持梁52Aは、各束45Aの上端部の間に架け渡されており、支持梁52Bは各束45Bの上端部の間に架け渡されている。
【0048】
各支持梁52A,52Bは、傾斜屋根部35Aの隣接する屋根パネル40に跨がって延びている。換言すると、各支持梁52A,52Bは隣接する各屋根パネル40の境界部を跨いで延びている。各支持梁52A,52Bは、屋根パネル40の下面に沿って水平方向に延びており、直線状をなしている。詳しくは、各支持梁52A,52Bは、その全体が屋根パネル40の下面に沿って延びている。この場合、各支持梁52A,52Bは、傾斜屋根部35Aの傾斜方向と直交する方向に延びている。そして、各支持梁52A,52Bは、隣接する屋根パネル40の境界部においてそれら各屋根パネル40を共通に支持している。
【0049】
各支持梁52A,52Bは互いに対向して設けられ、支持梁51Aとともに平面視にてコ字状をなすように配置されている。各支持梁52A,51Aの境界部に位置する束45Aにはそれら各支持梁52A,51Aが共に連結されている。また、各支持梁52B,51Aの境界部に位置する束45Bにはそれら各支持梁52B,51Aが共に連結されている。この場合、3つの支持梁51A,52A,52Bと4つの束45A,45Bとが互いに一体化され、平面視にてコ字状をなす立体構造(骨組み)が構築されている。
【0050】
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0051】
隣り合う束45の間に支持梁51,52が架け渡されて設けられ、その支持梁51,52が隣り合う屋根パネル40の境界部を跨いで延びている。そして、その支持梁51,52により隣り合う屋根パネル40が共通に支持されている。この場合、隣り合う屋根パネル40の境界部の下方に建物ユニット20の枠体24(具体的には天井大梁22及び柱21)が存在しない場合にも、それら隣り合う屋根パネル40を支持梁51,52により支持することが可能となる。そのため、建物ユニット20の配置による制約を受けることなく、各屋根パネル40を支持することが可能となる。
【0052】
また、支持梁51,52により隣り合う屋根パネル40を支持することで、束45の本数をその分低減させることができる。この場合、屋根部13と建物本体12との間の小屋裏空間を収納空間等として利用する際、束45による制約を低減させることができる。そのため、小屋裏空間を広く確保しながら、上述の効果を得ることができる。
【0053】
また、隣り合う束45同士が支持梁51,52により連結されているため、地震や強風の際等に屋根部13に生じる水平力(横向きの力)に対し抵抗力を付与することができる。これにより、各屋根パネル40を束45だけで支持する構成と比べ、屋根の強度を好適に確保することができる。
【0054】
支持梁51,52の全体が屋根パネル40に沿って配置されているため、支持梁51、52が小屋裏空間において邪魔になるのを抑制することができる。これにより、小屋裏空間を使用するに際し、同空間をより広く確保することが可能となる。
【0055】
平面視にて互いに異なる方向に延びる複数の支持梁51,52が設けられているため、地震の際等に屋根部13にいずれの方向の水平力が生じても、その水平力に対して抵抗力を付与することができる。そのため、屋根の強度をより好適に確保することができる。
【0056】
平面視にて互いに異なる方向に延びる各支持梁51,52が同じ束45に連結されているため、それら各支持梁51,52と複数の束45とが互いに一体化されてなる立体構造を得ることができる。そのため、屋根の強度を好適に高めることが可能となる。
【0057】
建物本体12上に立設された複数(すべて)の束45にそれぞれ支持梁51,52が連結されているため、束45の本数を大いに低減させることが可能となる。そのため、小屋裏空間において束45による制約を大いに低減させることができ、その結果、小屋裏空間をより広く確保することが可能となる。
【0058】
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
【0059】
(1)上記実施形態では、本発明の屋根構造を寄せ棟式の屋根部13に適用したが、本発明の屋根構造を切り妻式の屋根や陸屋根等、その他の屋根に適用してもよい。また、本発明の屋根構造を複数の屋根形状が複合されてなる複合屋根に適用してもよい。その場合の具体例を図7及び図8に示す。なお、図7は、屋根部の全体を示す平面図であり、図8は、束と支持梁とを示す模式図である。
【0060】
図7及び図8に示す建物60では、屋根部62が寄棟式の屋根形状を有する複数の寄棟部63a,63bを有しており、それら各寄棟部63a,63bが平面視にてL字状をなすように組み合わせられることで形成されている。各寄棟部63a,63bでは、各々の大棟64a,64bが平面視にて互いに直交する方向に延びている。各寄棟部63a,63bは、複数の屋根パネル65が並設されることにより構成されている。隣り合う屋根パネル65の境界部の下方には束67が配置され、その束67により隣り合う屋根パネル65が共通に支持されている。
【0061】
隣り合う束67の間には支持梁68,69が架け渡されている。支持梁68,69は、隣り合う束67の上端部を連結して設けられている。支持梁68,69は、隣り合う屋根パネル65の境界部を跨いで延びており、その境界部にてそれら隣り合う屋根パネル65を共通に支持している。これにより、隣り合う屋根パネル65の境界部の下方に建物ユニット20の枠体24が存在しない場合にも、それら各屋根パネル65を共通に支持することが可能となる。
【0062】
支持梁68,69としては、平面視にて、寄棟部63aの大棟64aと同方向に延びる支持梁68(第1支持梁に相当)と、寄棟部63bの大棟64bと同方向に延びる支持梁69(第2支持梁に相当)とが含まれている。この場合、地震時等に屋根部62にいずれの方向の水平力が生じても、その水平力に対して抵抗力を付与することができる。そのため、屋根部62の強度を好適に確保しながら、上述した効果を得ることができる。
【0063】
支持梁68は寄棟部63aの下方に複数(具体的には2つ)配置され、支持梁69は寄棟部63bの下方に複数(具体的には2つ)配置されている。各支持梁68は、その長手方向に一列に並ぶように配置されている。詳しくは、寄棟部63aの下方では、3つの束67が大棟64aの延びる方向に並んで配置され、それら3つの束67において隣り合う束67の間ごとに支持梁68が配置されている。また、各支持梁69は、平面視にて大棟64bを挟んだ両側に配置されている。これら各支持梁69は互いに対向して配置されている。
【0064】
各支持梁68と各支持梁69とはいずれも屋根パネル65の下面に沿って水平方向に延びている。この場合、小屋裏空間においてこれら各支持梁68,69が邪魔になるのを抑制することができ、小屋裏空間を使用する際、同空間を広く確保することが可能となる。
【0065】
(2)上記実施形態では、屋根部13の短辺方向に延びる支持梁51と、屋根部13の長辺方向に延びる支持梁52とを設けたが、これら各支持梁51,52のうちいずれか一方の支持梁のみ設けるようにしてもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、支持梁51,52を4つ設けたが、支持梁51,52の数は任意であり、必要に応じて2つにしたり3つにしたり5つ以上にしたりすればよい。また、支持梁を1つだけ設けるようにしてもよい。
【0067】
(3)支持梁51,52の形態は必ずしも上記実施形態のものに限定されない。例えば、上記実施形態では、支持梁51を水平部51aと傾斜部51bとを有して形成したが、支持梁51の傾斜部51bをL字状をなすL字部に代えてもよい。この場合、L字部を、水平部51aから下方に延びる鉛直部分と、その鉛直部分の下端部から横向きに延びる水平部分とを有する構成とし、その水平部分を束45Bに連結する。
【符号の説明】
【0068】
10…建物、12…建物本体、13…屋根部、20…建物ユニット、21…柱、22…梁としての天井大梁、23…梁としての床大梁、24…枠体、40…屋根パネル、45…束、51…第1支持梁としての支持梁、52…第2支持梁としての支持梁。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8