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特許7299799潤滑剤攪拌装置、伸線加工用ダイスボックス及び伸線機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-20
(45)【発行日】2023-06-28
(54)【発明の名称】潤滑剤攪拌装置、伸線加工用ダイスボックス及び伸線機
(51)【国際特許分類】
   B21C 3/14 20060101AFI20230621BHJP
   B21C 9/00 20060101ALI20230621BHJP
   B21C 9/02 20060101ALI20230621BHJP
【FI】
B21C3/14
B21C9/00 M
B21C9/02
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019155403
(22)【出願日】2019-08-28
(65)【公開番号】P2021030288
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000231556
【氏名又は名称】日本精線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】宇都 和樹
【審査官】池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭49-090261(JP,A)
【文献】実開昭52-056063(JP,U)
【文献】実開昭55-077511(JP,U)
【文献】特開2004-073922(JP,A)
【文献】実開昭50-095433(JP,U)
【文献】米国特許第4445351(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21C 1/00 - 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸線加工される金属線材を水平方向に向けて保持し、かつ、前記金属線材が埋まるように潤滑剤が充填された潤滑剤保持部を有する伸線加工用ダイスボックスに用いられる潤滑剤攪拌装置であって、
前記潤滑剤保持部の内部かつ前記金属線材の下方に配されることにより、前記潤滑剤を少なくとも一部の区画で上下に区分する仕切部材と、
前記仕切部材に高圧気体を供給するための供給口と、
供給された前記高圧気体を前記仕切部材の下方側の前記潤滑剤に向けて噴出するための噴出口とを含み、
前記仕切部材には、前記高圧気体によって移動した前記潤滑剤を、前記仕切部材の上方側へ送るための開口部が形成されており、
前記仕切部材は、前記金属線材に沿って配される本体と、その両端から下方に延びる一対の脚部とを含み、
前記本体の下方に前記一対の脚部で囲まれる凹空間を有し、
前記仕切部材の前記一対の脚部の一方の側に、前記噴出口が設けられ、
前記本体の前記一対の脚部の他方の側にのみ、前記開口部が設けられており、
前記他方の側は、前記水平方向において、前記金属線材を伸線加工するためのダイスの側である、
潤滑剤攪拌装置。
【請求項2】
前記凹空間は、前記噴出口が設けられた第1凹部と、前記開口部が設けられた第2凹部とを含み、
前記第1凹部と前記第2凹部との間には、前記潤滑剤の移動を抑止するための絞り部が設けられている、請求項1に記載の潤滑剤攪拌装置。
【請求項3】
前記開口部の最大長さは、前記金属線材の直径よりも大きい、請求項1又は2に記載の潤滑剤攪拌装置。
【請求項4】
前記噴出口が複数設けられている、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の潤滑剤攪拌装置。
【請求項5】
前記噴出口は、斜め下向きに前記高圧気体を噴出する、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の潤滑剤攪拌装置。
【請求項6】
前記噴出口は、前記高圧気体を断続的に噴出する、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の潤滑剤攪拌装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の潤滑剤攪拌装置が内部に配されている、伸線加工用ダイスボックス。
【請求項8】
伸線加工される金属線材を水平方向に向けて保持し、かつ、前記金属線材が埋まるように潤滑剤が充填された潤滑剤保持部を有する伸線加工用ダイスボックスであって、
前記潤滑剤保持部の内部かつ前記金属線材の下方に配されることにより、前記潤滑剤を少なくとも一部の区画で上下に区分する仕切部材と、
前記仕切部材に高圧気体を供給するための供給口と、
供給された前記高圧気体を前記仕切部材の下方側の前記潤滑剤に向けて噴出するための噴出口とを含み、
前記仕切部材には、前記高圧気体によって移動した前記潤滑剤を、前記仕切部材の上方側へ送るための開口部が形成されており、
前記仕切部材は、前記金属線材に沿って配される本体と、その両端から下方に延びる一対の脚部とを含み、
前記本体の下方に前記一対の脚部で囲まれる凹空間を有し、
前記仕切部材の前記一対の脚部の一方の側に、前記噴出口が設けられ、
前記本体の前記一対の脚部の他方の側にのみ、前記開口部が設けられており、
前記他方の側は、前記水平方向において、前記金属線材を伸線加工するためのダイスの側である、
伸線加工用ダイスボックス。
【請求項9】
前記金属線材を伸線加工するための伸線機であって、
請求項7又は8に記載の伸線加工用ダイスボックスを含む、伸線機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属線材を伸線加工するための伸線加工用ダイスボックスに用いられる潤滑剤攪拌装置、当該伸線加工用ダイスボックス及びこれらを含む伸線機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属線材を伸線加工するための伸線加工用ダイスボックスが知られている。伸線加工用ダイスボックスは、例えば、伸線加工される金属線材を水平方向に向けて保持し、かつ、この金属線材が埋まるように潤滑剤が充填された潤滑剤保持部を有している。
【0003】
このような伸線加工用ダイスボックスで伸線加工を行うと、伸線加工に伴い潤滑剤が金属線材に付着し、金属線材の周囲の潤滑剤に空洞部が形成されるという問題があった。金属線材の周囲の潤滑剤に空洞部が形成されると、金属線材に潤滑剤が付着されないので、滑らかな伸線加工ができず、金属線材の品質やダイスの耐久性に影響を与えることがあった。
【0004】
このような問題に対して、金属線材の周囲の潤滑剤を攪拌することで、空洞部が形成されることを抑制するための試みが行われている。例えば、下記特許文献1は、潤滑剤を攪拌するために回転又は上下動する攪拌具を配設したダイスボックスを提案している。また、下記特許文献2は、線材に接するローラを振動させることで、潤滑剤を攪拌するダイスボックスを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実願昭63-165465号(実開平02-087504号)のマイクロフィルム
【文献】特開2004-082159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のダイスボックスは、攪拌具の周囲が空洞化し、攪拌具により潤滑剤を攪拌することができず、金属線材の周囲の潤滑剤に空洞部が形成されることを抑制できないという問題があった。また、特許文献2のダイスボックスは、伸線加工される金属線材が振動することにより、伸線加工の精度が悪化し、金属線材の品質が低下するという問題があった。
【0007】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、伸線加工される金属線材の良好な品質を維持しつつ、金属線材の周囲の潤滑剤を攪拌することができる潤滑剤攪拌装置、伸線加工用ダイスボックス及び伸線機を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、伸線加工される金属線材を水平方向に向けて保持し、かつ、前記金属線材が埋まるように潤滑剤が充填された潤滑剤保持部を有する伸線加工用ダイスボックスに用いられる潤滑剤攪拌装置であって、前記潤滑剤保持部の内部かつ前記金属線材の下方に配されることにより、前記潤滑剤を少なくとも一部の区画で上下に区分する仕切部材と、前記仕切部材に高圧気体を供給するための供給口と、供給された前記高圧気体を前記仕切部材の下方側の前記潤滑剤に向けて噴出するための噴出口とを含み、前記仕切部材には、前記高圧気体によって移動した前記潤滑剤を、前記仕切部材の上方側へ送るための開口部が形成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の潤滑剤攪拌装置において、前記仕切部材は、前記金属線材に沿って配される本体と、その両端から下方に延びる一対の脚部とを含み、前記本体の下方に前記一対の脚部で囲まれる凹空間を有するのが望ましい。
【0010】
本発明の潤滑剤攪拌装置において、前記仕切部材の前記一対の脚部の一方の側に、前記噴出口が設けられ、
前記本体の前記一対の脚部の他方の側に、前記開口部が設けられているのが望ましい。
【0011】
本発明の潤滑剤攪拌装置において、前記凹空間は、前記噴出口が設けられた第1凹部と、前記開口部が設けられた第2凹部とを含み、前記第1凹部と前記第2凹部との間には、前記潤滑剤の移動を抑止するための絞り部が設けられているのが望ましい。
【0012】
本発明の潤滑剤攪拌装置において、前記開口部の最大長さは、前記金属線材の直径よりも大きいのが望ましい。
【0013】
本発明の潤滑剤攪拌装置において、前記噴出口が複数設けられているのが望ましい。
【0014】
本発明の潤滑剤攪拌装置において、前記噴出口は、斜め下向きに前記高圧気体を噴出するのが望ましい。
【0015】
本発明の潤滑剤攪拌装置において、前記噴出口は、前記高圧気体を断続的に噴出するのが望ましい。
【0016】
本発明は、上述の潤滑剤攪拌装置が内部に配されている、伸線加工用ダイスボックスであることを特徴とする。
【0017】
本発明は、伸線加工される金属線材を水平方向に向けて保持し、かつ、前記金属線材が埋まるように潤滑剤が充填された潤滑剤保持部を有する伸線加工用ダイスボックスであって、前記潤滑剤保持部の内部かつ前記金属線材の下方に配されることにより、前記潤滑剤を少なくとも一部の区画で上下に区分する仕切部材と、前記仕切部材に高圧気体を供給するための供給口と、供給された前記高圧気体を前記仕切部材の下方側の前記潤滑剤に向けて噴出するための噴出口とを含み、前記仕切部材には、前記高圧気体によって移動した前記潤滑剤を、前記仕切部材の上方側へ送るための開口部が形成されていることを特徴とする。
【0018】
本発明は、前記金属線材を伸線加工するための伸線機であって、上述の伸線加工用ダイスボックスを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の潤滑剤攪拌装置は、潤滑剤保持部の内部かつ金属線材の下方に配されることにより、潤滑剤を少なくとも一部の区画で上下に区分する仕切部材と、前記仕切部材に高圧気体を供給するための供給口と、供給された前記高圧気体を前記仕切部材の下方側の前記潤滑剤に向けて噴出するための噴出口とを含んでいる。このような潤滑剤攪拌装置は、高圧気体で潤滑剤を攪拌することができるので、伸線加工される金属線材の良好な品質を維持しつつ、金属線材の周囲の潤滑剤を攪拌することができる。
【0020】
本発明の潤滑剤攪拌装置において、仕切部材には、高圧気体によって移動した潤滑剤を、前記仕切部材の上方側へ送るための開口部が形成されている。このような潤滑剤攪拌装置は、噴出口に潤滑剤が付着して噴出口が塞がることを抑制しつつ、金属線材の周囲の潤滑剤を攪拌することができる。このため、本発明の潤滑剤攪拌装置は、長期間にわたりメンテナンスをすることなく、伸線加工される金属線材の良好な品質を維持しつつ、金属線材の周囲の潤滑剤に空洞部が形成されることを抑制することができる。
【0021】
本発明の伸線加工用ダイスボックスは、潤滑剤保持部の内部かつ金属線材の下方に配されることにより、潤滑剤を少なくとも一部の区画で上下に区分する仕切部材と、前記仕切部材に高圧気体を供給するための供給口と、供給された前記高圧気体を前記仕切部材の下方側の前記潤滑剤に向けて噴出するための噴出口とを含んでいる。このような伸線加工用ダイスボックスは、高圧気体で潤滑剤を攪拌することができるので、伸線加工される金属線材の良好な品質を維持しつつ、金属線材の周囲の潤滑剤を攪拌することができる。
【0022】
本発明の伸線加工用ダイスボックスにおいて、仕切部材には、高圧気体によって移動した潤滑剤を、前記仕切部材の上方側へ送るための開口部が形成されている。このような伸線加工用ダイスボックスは、噴出口に潤滑剤が付着して噴出口が塞がることを抑制しつつ、金属線材の周囲の潤滑剤を攪拌することができる。このため、本発明の伸線加工用ダイスボックスは、長期間にわたりメンテナンスをすることなく、伸線加工される金属線材の良好な品質を維持しつつ、金属線材の周囲の潤滑剤に空洞部が形成されることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の伸線加工用ダイスボックスの一実施形態を示す断面図である。
図2】潤滑剤攪拌装置を上方側から見た平面図である。
図3】潤滑剤攪拌装置を下方側から見た斜視図である。
図4】第2の実施形態の潤滑剤攪拌装置を下方側から見た斜視図である。
図5】第3の実施形態の潤滑剤攪拌装置を上方側から見た平面図である。
図6】第4の実施形態の潤滑剤攪拌装置を上方側から見た平面図である。
図7】他の実施形態の伸線加工用ダイスボックスの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき詳細に説明される。
図1は、本実施形態の伸線加工用ダイスボックス1を示す断面図である。図1に示されるように、伸線加工用ダイスボックス1は、金属線材Wを伸線加工するための伸線機(図示省略)に好適に用いられる。
【0025】
本実施形態の伸線加工用ダイスボックス1は、金属線材Wを伸線加工するためのダイス2と、伸線加工される金属線材Wが埋まるように潤滑剤Pが充填された潤滑剤保持部3とを有している。潤滑剤保持部3は、伸線加工される金属線材Wを水平方向に向けて保持するのが望ましい。
【0026】
潤滑剤Pは、例えば、粉末状の潤滑剤Pが好適に用いられる。このような粉末状の潤滑剤Pは、金属線材Wに付着し、ダイス2による伸線加工を滑らかにさせ、伸線加工された金属線材Wの品質を向上させることができる。一方、粉末状の潤滑剤Pは、一般的に、金属線材Wへの付着に伴い、金属線材Wの周囲に部分的な空洞部Sが形成される傾向を有している。
【0027】
伸線加工用ダイスボックス1は、潤滑剤保持部3に充填された潤滑剤Pを攪拌するための潤滑剤攪拌装置4が内部に配されているのが望ましい。本実施形態の潤滑剤攪拌装置4は、潤滑剤保持部3の内部かつ金属線材Wの下方に配されている。このような潤滑剤攪拌装置4は、金属線材Wの下方から潤滑剤Pを攪拌することができるので、金属線材Wの周囲の潤滑剤Pに空洞部Sが形成されることを抑制することができる。
【0028】
図2は、潤滑剤攪拌装置4を上方側から見た平面図であり、図3は、潤滑剤攪拌装置4を下方側から見た斜視図である。図1ないし図3に示されるように、潤滑剤攪拌装置4は、潤滑剤Pを少なくとも一部の区画で上下に区分する仕切部材5を含むのが望ましい。本実施形態の潤滑剤攪拌装置4は、仕切部材5に高圧気体を供給するための供給口6と、供給された高圧気体を仕切部材5の下方側の潤滑剤Pに向けて噴出するための噴出口7とを含んでいる。供給される気体は、例えば、空気、窒素、ヘリウム等から適宜採用される。
【0029】
このような潤滑剤攪拌装置4は、高圧気体で潤滑剤Pを攪拌することができるので、伸線加工される金属線材Wの良好な品質を維持しつつ、金属線材Wの周囲の潤滑剤Pを攪拌して、潤滑剤Pに空洞部Sが形成されることを抑制することができる。
【0030】
本実施形態の仕切部材5には、高圧気体によって移動した潤滑剤Pを、仕切部材5の上方側へ送るための開口部8が形成されている。このような潤滑剤攪拌装置4は、噴出口7に潤滑剤Pが付着して噴出口7が塞がることを抑制しつつ、金属線材Wの周囲の潤滑剤Pを攪拌することができる。
【0031】
ここで、潤滑剤攪拌装置4は、例えば、噴出口7に潤滑剤Pが付着して噴出口7が塞がると、付着した潤滑剤Pを除去するためのメンテナンスをする必要がある。このメンテナンスは、潤滑剤保持部3内の潤滑剤Pを取り除いた上で、潤滑剤攪拌装置4を取り出して行うため、多大な時間を要するものである。
【0032】
本実施形態の潤滑剤攪拌装置4は、仕切部材5により、噴出口7に移動した潤滑剤Pが付着して噴出口7が塞がることを抑制しているので、メンテナンス頻度を低減することができる。このため、本実施形態の潤滑剤攪拌装置4は、長期間にわたりメンテナンスをすることなく、伸線加工される金属線材Wの良好な品質を維持しつつ、金属線材Wの周囲の潤滑剤Pに空洞部Sが形成されることを抑制することができる。また、このような潤滑剤攪拌装置4は、メンテナンスに伴う伸線機(図示省略)の停止頻度を低減することができ、伸線機の稼働率の低下を抑制することにも役立つ。
【0033】
仕切部材5は、例えば、金属線材Wに沿って配される本体5aと、その両端から下方に延びる一対の脚部5bとを含んでいる。本実施形態の仕切部材5は、本体5aの両側から下方に延びかつ一対の脚部5bを連結する一対の第2脚部5cを含んでいる。本体5aは、例えば、板状に延びている。
【0034】
仕切部材5は、本体5aの下方に少なくとも一対の脚部5bで囲まれる凹空間9を有するのが望ましい。このような仕切部材5は、本体5aの下方に高圧気体を噴出可能な空間を形成することができるので、噴出口7に潤滑剤Pが付着して噴出口7が塞がることを抑制することができる。
【0035】
本体5aは、例えば、上方から見たときに、矩形状に形成されている。本実施形態の一対の脚部5bは、本体5aの対向する一対の辺に沿って設けられている。一対の第2脚部5cは、脚部5bとは異なる本体5aの辺に沿って設けられるのが望ましい。このような仕切部材5は、凹空間9を大きく形成することができ、噴出口7に潤滑剤Pが付着して噴出口7が塞がることをより確実に抑制することができる。このため、本実施形態の潤滑剤攪拌装置4は、メンテナンス頻度をより低減することができる。
【0036】
供給口6は、供給管10を介して、高圧気体発生装置(図示省略)に連結されるのが望ましい。供給口6は、例えば、仕切部材5の上方に設けられている。供給口6は、金属線材Wの直下を除く位置に設けられるのが望ましい。本実施形態の供給口6は、矩形状の本体5aの1つの角部に設けられている。供給口6は、例えば、仕切部材5の側面に設けられていてもよい。このような供給口6は、金属線材Wと供給管10とが接触するおそれが小さく、伸線加工される金属線材Wの良好な品質を維持することができる。
【0037】
本実施形態の噴出口7は、仕切部材5の一対の脚部5bの一方の側に設けられている。本実施形態の開口部8は、本体5aの一対の脚部5bの他方の側に設けられている。このような仕切部材5は、噴出口7と開口部8との距離を大きくすることができる。このため、噴出口7は、開口部8を介して移動する潤滑剤Pにより塞がることをより確実に抑制することができる。このため、本実施形態の潤滑剤攪拌装置4は、メンテナンス頻度をより低減することができる。
【0038】
噴出口7は、複数設けられるのが望ましい。本実施形態では、噴出口7が3つ設けられているものが例示されている。このような噴出口7は、凹空間9の内部に均質に高圧気体を噴出することができ、潤滑剤Pの攪拌が部分的となることを抑制することができる。
【0039】
噴出口7は、例えば、本体5a側から斜め下向きに高圧気体を噴出している。このような噴出口7は、潤滑剤Pの下方側からその全体を攪拌させることができ、金属線材Wの周囲の潤滑剤Pに空洞部Sが形成されることを、長期間にわたり抑制することができる。また、このような噴出口7は、潤滑剤Pとの間に隙間を形成させ易く、噴出口7に潤滑剤Pが付着して噴出口7が塞がることを抑制し、潤滑剤攪拌装置4のメンテナンス頻度をより低減することに役立つ。
【0040】
本実施形態の噴出口7は、供給管10に設けられた制御弁(図示省略)により、高圧気体を断続的に噴出している。高圧気体の制御は、このような態様に限定されるものではなく、例えば、噴出口7が高圧気体の噴出を制御するための制御弁やシャッター(いずれも図示省略)を有していてもよい。また、高圧気体は、例えば、高圧気体発生装置(図示省略)により断続的に噴出するように制御されていてもよい。このような噴出口7は、高圧気体により噴出口7の近傍の潤滑剤Pが空洞化して潤滑剤Pが攪拌されなくなることを抑制でき、金属線材Wの周囲の潤滑剤Pに空洞部Sが形成されることをより確実に抑制することができる。
【0041】
本実施形態の開口部8は、金属線材Wの延びる方向に直交する方向(以下、「幅方向」という。)の長さが、金属線材Wに沿った方向の長さよりも大きい。開口部8の幅方向の最大長さは、金属線材Wの直径よりも大きいのが望ましい。このような開口部8は、噴出口7との距離を維持しつつ、金属線材Wの周囲の潤滑剤Pを確実に攪拌することができ、金属線材Wの周囲の潤滑剤Pに空洞部Sが形成されることを抑制することができる。
【0042】
本実施形態の開口部8は、幅方向の両端が円弧状に形成されている。開口部8の形状は、このような形状に限定されるものではなく、例えば、矩形状、楕円状、多角形状等、種々の形状が適宜採用され得る。
【0043】
図4は、第2の実施形態の潤滑剤攪拌装置20を下方側から見た斜視図である。上述の実施形態と同一の機能を有する構成要素は、同一の符号が付され、その説明が省略される。図4に示されるように、この実施形態の潤滑剤攪拌装置20は、上述の仕切部材5と共通する機能を有する仕切部材21と、仕切部材21に高圧気体を供給するための供給口6(図示省略)と、高圧気体を噴出するための複数の噴出口7とを含んでいる。
【0044】
仕切部材21は、例えば、上述の本体5aと共通する機能を有する本体21aと、その両端から下方に延びる一対の脚部21bと、一対の脚部21bを連結する一対の第2脚部21cとを含んでいる。仕切部材21は、さらに一対の第2脚部21cの間に配された少なくとも1つの、この実施形態では2つの第3脚部21dを含んでいる。
【0045】
この実施形態においても、噴出口7が、仕切部材21の一対の脚部5bの一方の側に設けられ、開口部8が、本体21aの一対の脚部21bの他方の側に設けられている。このような仕切部材21は、上述の仕切部材5と同様に、噴出口7と開口部8との距離を大きくすることができる。
【0046】
仕切部材21は、本体21aの下方に一対の脚部21b、一対の第2脚部21c及び第3脚部21dで囲まれる凹空間22を有するのが望ましい。このような仕切部材21は、本体21aの下方に高圧気体を噴出可能な空間を形成することができる。
【0047】
凹空間22は、噴出口7が設けられた第1凹部22aと、開口部8が設けられた第2凹部22bとを含むのが望ましい。凹空間22は、例えば、第3脚部21dにより分割された複数の第1凹部22aを含んでいる。この実施形態の凹空間22は、2つの第3脚部21dにより分割された3つの第1凹部22aを含んでいる。噴出口7は、第1凹部22aのそれぞれに少なくとも1つずつ設けられるのが望ましい。このような凹空間22は、噴出口7側へ移動する潤滑剤Pの量を低減することができ、噴出口7に潤滑剤Pが付着して噴出口7が塞がることを抑制することができる。このため、この実施形態の潤滑剤攪拌装置20は、メンテナンス頻度を低減することができる。
【0048】
第1凹部22aと第2凹部22bとの間には、潤滑剤Pの移動を抑止するための絞り部23が設けられるのが望ましい。このような凹空間22は、噴出口7側へ移動する潤滑剤Pの量をより低減することができ、長期間にわたり、噴出口7に潤滑剤Pが付着して噴出口7が塞がることを抑制することができ、潤滑剤攪拌装置20のメンテナンス頻度をより低減することができる。
【0049】
この実施形態の第2凹部22bの面積は、開口部8の面積よりも小さい。このような第2凹部22bは、第1凹部22a側へ移動する潤滑剤Pの量を低減することができ、噴出口7に潤滑剤Pが付着して噴出口7が塞がることを抑制し、潤滑剤攪拌装置20のメンテナンス頻度を低減することに役立つ。
【0050】
図5は、第3の実施形態の潤滑剤攪拌装置30を上方側から見た平面図である。上述の実施形態と同一の機能を有する構成要素は、同一の符号が付され、その説明が省略される。図5に示されるように、この実施形態の潤滑剤攪拌装置30は、上述の仕切部材5と共通する機能を有する仕切部材31と、仕切部材31に高圧気体を供給するための供給口6と、高圧気体を噴出するための噴出口7とを含んでいる。
【0051】
仕切部材31は、例えば、上述の本体5aと共通する機能を有する本体31aと、本体31aに設けられた開口部32とを含んでいる。この実施形態の本体31aは、矩形状に形成されている。本体31aの形状は、このような態様に限定されるものではなく、例えば、円形状に形成されていてもよい。
【0052】
この実施形態の開口部32は、本体31aの略中央に形成されている。開口部32は、例えば、円形状に形成されている。このような仕切部材31は、開口部32を大きく形成することができ、潤滑剤Pの流動化を促進することができる。
【0053】
図6は、第4の実施形態の潤滑剤攪拌装置40を上方側から見た平面図である。上述の実施形態と同一の機能を有する構成要素は、同一の符号が付され、その説明が省略される。図6に示されるように、この実施形態の潤滑剤攪拌装置40は、上述の仕切部材31と共通する機能を有する仕切部材41と、仕切部材41に高圧気体を供給するための供給口6と、高圧気体を噴出するための噴出口42とを含んでいる。
【0054】
仕切部材41は、例えば、上述の本体31aと共通する機能を有する本体41aと、本体41aに設けられた開口部43とを含んでいる。本体41aは、例えば、矩形状に形成されている。開口部43は、例えば、円形状に形成されている。このような仕切部材41は、開口部43を大きく形成することができ、潤滑剤Pの流動化を促進することができる。
【0055】
この実施形態の噴出口42は、矩形状の本体41aの4つの角部に形成されている。このような潤滑剤攪拌装置40は、噴出口42と開口部43との距離を大きくすることができ、長期間にわたり、噴出口42に潤滑剤Pが付着して噴出口42が塞がることを抑制することができ、潤滑剤攪拌装置40のメンテナンス頻度を低減することができる。
【0056】
上述の実施形態では、伸線加工用ダイスボックス1の内部に潤滑剤攪拌装置4が配される態様が説明されたが、潤滑剤攪拌装置4は、伸線加工用ダイスボックス1に一体的に形成されていてもよい。この場合の伸線加工用ダイスボックス50は、潤滑剤攪拌装置4の機能を有するものである。
【0057】
図7は、他の実施形態の伸線加工用ダイスボックス50の断面図である。上述の実施形態と同一の機能を有する構成要素は、同一の符号が付され、その説明が省略される。図7に示されるように、この実施形態の伸線加工用ダイスボックス50は、上述の伸線加工用ダイスボックス1と同様に、金属線材Wを伸線加工するための伸線機(図示省略)に好適に用いられる。
【0058】
この実施形態の伸線加工用ダイスボックス50は、上述の伸線加工用ダイスボックス1と同様に、金属線材Wを伸線加工するためのダイス2と、伸線加工される金属線材Wが埋まるように潤滑剤Pが充填された潤滑剤保持部51とを有している。潤滑剤保持部51は、上述の潤滑剤保持部3と同様の機能を有するのが望ましい。
【0059】
この実施形態の伸線加工用ダイスボックス50は、潤滑剤保持部51の内部かつ金属線材Wの下方に配されることにより、潤滑剤Pを少なくとも一部の区画で上下に区分する仕切部材52を含んでいる。伸線加工用ダイスボックス50は、さらに、仕切部材52に高圧気体を供給するための供給口53と、供給された高圧気体を仕切部材52の下方側の潤滑剤Pに向けて噴出するための噴出口54とを含むのが望ましい。
【0060】
仕切部材52には、上述の仕切部材5と同様に、高圧気体によって移動した潤滑剤Pを、仕切部材52の上方側へ送るための開口部55が形成されるのが望ましい。このような伸線加工用ダイスボックス50は、噴出口54に潤滑剤Pが付着して噴出口54が塞がることを抑制しつつ、金属線材Wの周囲の潤滑剤Pを攪拌することができる。このため、この実施形態の伸線加工用ダイスボックス50は、メンテナンス頻度を低減することができる。
【0061】
仕切部材52は、潤滑剤保持部51に取り外し自在に取り付けられるのが望ましい。このような仕切部材52は、メンテナンスが必要になったときにも容易に取り外すことができるので、メンテナンスに要する時間を比較的短くすることができる。また、このような仕切部材52は、異なる仕切部材52に交換する場合にも、交換に要する時間を短縮することができる。
【0062】
この実施形態の仕切部材52は、上述の本体5aと同様に、板状に延びている。このような仕切部材52は、その製造コストを低減することができる。仕切部材52は、上述の仕切部材5と同様に、例えば、複数の脚部5b等を有していてもよい。
【0063】
供給口53は、例えば、潤滑剤保持部51に設けられている。このような供給口53は、供給管10を潤滑剤保持部51の外部に配することができ、伸線加工される金属線材Wの良好な品質を維持することに役立つ。供給口53は、上述の供給口6と同様に、例えば、仕切部材52の角部に設けられていてもよい。
【0064】
噴出口54は、例えば、潤滑剤保持部51に設けられている。このような噴出口54を有することで、仕切部材52は、その構造を単純化することができる。このため、伸線加工用ダイスボックス50は、開口部55の形状の異なる複数の仕切部材52を低コストで準備することができ、伸線加工される金属線材Wに適した仕切部材52に交換して用いることができる。
【0065】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は、上述の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施され得る。
【符号の説明】
【0066】
1 伸線加工用ダイスボックス
3 潤滑剤保持部
4 潤滑剤攪拌装置
5 仕切部材
6 供給口
7 噴出口
8 開口部
W 金属線材
P 潤滑剤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7