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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-20
(45)【発行日】2023-06-28
(54)【発明の名称】保持装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20230621BHJP
【FI】
H01L21/68 R
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019163607
(22)【出願日】2019-09-09
(65)【公開番号】P2021044307
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】弁理士法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三輪 要
【審査官】鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-101773(JP,A)
【文献】国際公開第2019/082875(WO,A1)
【文献】特開2006-344766(JP,A)
【文献】特開2015-195346(JP,A)
【文献】特開2019-212910(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に略直交する第1の表面と、前記第1の表面とは反対側の第2の表面と、を有し、前記第2の表面に凹部が形成され、前記第2の表面の前記凹部と前記第1の表面とに開口する板状部材ガス流路が内部に形成され、セラミックスを含む材料により形成された板状部材と、
第3の表面を有し、前記第3の表面が前記板状部材の前記第2の表面側に位置するように配置され、ベース部材ガス流路が内部に形成されたベース部材と、
前記板状部材の前記第2の表面と前記ベース部材の前記第3の表面との間に配置されて前記板状部材と前記ベース部材とを接合し、前記板状部材の前記凹部と前記ベース部材ガス流路とに連通する貫通孔が形成された接合部と、
を備え、前記板状部材の前記第1の表面上に対象物を保持する保持装置において、さらに、
少なくとも一部分が前記板状部材の前記凹部内に配置され、前記板状部材より気孔率が高い多孔質部材と、
エラストマーにより形成された保護部材であって、前記多孔質部材を収容すると共に前記ベース部材ガス流路に連通する貫通孔が形成された筒状であり、
前記板状部材の前記凹部の内周面に当接する第1の部分と、
前記ベース部材の前記第3の表面に当接する部分と、少なくとも一部が前記ベース部材ガス流路内に挿入された部分と、の少なくとも一方を有する第2の部分と、
を有する、保護部材と、
を備える、
ことを特徴とする保持装置。
【請求項2】
請求項1に記載の保持装置において、
前記保護部材の前記第2の部分が、前記ベース部材ガス流路内に挿入された部分を有する場合、
前記第1の方向に直交する方向において、前記保護部材の前記第2の部分における前記ベース部材ガス流路内に挿入された部分と、前記ベース部材ガス流路の内周面と、の間に隙間が存在する、
ことを特徴とする保持装置。
【請求項3】
請求項1に記載の保持装置において、
前記保護部材の前記第2の部分は、前記第1の方向に延びる延伸部分と、前記ベース部材の前記第3の表面に当接する部分と、を有し、
前記保護部材の前記第2の部分における前記ベース部材の前記第3の表面に当接する部分は、前記延伸部分から前記第1の方向に交差する方向に延びて、前記ベース部材の前記第3の表面に当接する当接部分を有する、
ことを特徴とする保持装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の保持装置において、
前記多孔質部材における前記凹部の底面に対向する側の端面には、外周に沿って切り欠きが形成されており、
前記保護部材の前記貫通孔の内周面は、前記多孔質部材の前記切り欠きが形成された部分の少なくとも一部を含む外周面に当接している、
ことを特徴とする保持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、対象物を保持する保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体製造装置の真空チャンバー内でウェハを保持する保持装置として、静電チャックが用いられる。静電チャックは、例えばセラミックスを含む材料により形成された板状部材と、例えば金属により形成されたベース部材と、例えば樹脂を含む材料により形成され、板状部材とベース部材とを接合する接合部と、板状部材の内部に設けられたチャック電極とを備えている。静電チャックは、チャック電極に電圧が印加されることにより発生する静電引力を利用して、板状部材の表面(以下、「吸着面」という。)にウェハを吸着して保持する。
【0003】
板状部材の吸着面に保持されたウェハの温度が所望の温度にならないと、ウェハに対する各処理(成膜、エッチング等)の精度が低下するおそれがあるため、静電チャックにはウェハの温度分布を制御する性能が求められる。そのため、例えば、板状部材に配置されたヒータ電極による加熱や、ベース部材に形成された冷媒流路に冷媒を供給することによる冷却によって、板状部材の吸着面の温度分布の制御(ひいては、吸着面に保持されたウェハの温度分布の制御)が行われる。
【0004】
また、従来、板状部材とウェハとの間の伝熱特性を高めてウェハの温度分布の制御性を向上させるため、板状部材とウェハとの間の空間にヘリウムガス等の不活性ガスを供給するためのガス流路を設けた構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。より具体的には、該構成では、板状部材の下面(吸着面とは反対側の表面)に凹部が形成され、板状部材の内部に、該凹部と吸着面とに開口するガス流路が形成される。また、ベース部材の内部に、ガス流路が形成され、接合部に、板状部材の凹部とベース部材のガス流路とに連通する貫通孔が形成される。ベース部材のガス流路と、接合部の貫通孔と、板状部材のガス流路とが互いに連通することにより、不活性ガスを供給するためのガス流路が構成される。なお、板状部材の凹部を経由した板状部材とベース部材との間の放電やガスの放電等の発生を抑制するために、凹部内には、板状部材より気孔率が高い多孔質部材(「通気性プラグ」とも呼ばれる。)が配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-232641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の構成では、不活性ガスを供給するためのガス流路内に侵入したプラズマやプロセスガスが、接合部に形成された貫通孔の内周面付近に侵入し、該侵入に起因して接合部が劣化するおそれがある、という課題がある。
【0007】
なお、このような課題は、静電引力を利用してウェハを保持する静電チャックに限らず、板状部材と、ベース部材と、両者を接合する接合部とを備え、板状部材の表面上に対象物を保持する保持装置一般に共通の課題である。
【0008】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0010】
(1)本明細書に開示される保持装置は、第1の方向に略直交する第1の表面と、前記第1の表面とは反対側の第2の表面と、を有し、前記第2の表面に凹部が形成され、前記第2の表面の前記凹部と前記第1の表面とに開口する板状部材ガス流路が内部に形成され、セラミックスを含む材料により形成された板状部材と、第3の表面を有し、前記第3の表面が前記板状部材の前記第2の表面側に位置するように配置され、ベース部材ガス流路が内部に形成されたベース部材と、前記板状部材の前記第2の表面と前記ベース部材の前記第3の表面との間に配置されて前記板状部材と前記ベース部材とを接合し、前記板状部材の前記凹部と前記ベース部材ガス流路とに連通する貫通孔が形成された接合部と、を備え、前記板状部材の前記第1の表面上に対象物を保持する装置である。本保持装置は、さらに、少なくとも一部分が前記板状部材の前記凹部内に配置され、前記板状部材より気孔率が高い多孔質部材と、エラストマーにより形成された保護部材であって、前記多孔質部材を収容すると共に前記ベース部材ガス流路に連通する貫通孔が形成された筒状であり、前記板状部材の前記凹部の内周面に当接する第1の部分と、前記ベース部材の前記第3の表面に当接する部分と、少なくとも一部が前記ベース部材ガス流路内に挿入された部分と、の少なくとも一方を有する第2の部分と、を有する、保護部材と、を備える。本保持装置は、エラストマーにより形成された保護部材を備え、保護部材は、板状部材の凹部の内周面に当接する第1の部分と、ベース部材の第3の表面に当接する部分と、少なくとも一部がベース部材ガス流路内に挿入された部分と、の少なくとも一方を有する第2の部分と、を有している。そのため、保護部材の第1の部分の存在により、保護部材の貫通孔内に収容された多孔質部材を板状部材に固定することができると共に、板状部材ガス流路から接合部の貫通孔の内周面付近に至るプラズマやプロセスガスの侵入を抑止することができる。また、保護部材の第2の部分がベース部材の第3の表面に当接する部分を有する場合には、保護部材の第2の部分の存在により、板状部材ガス流路から多孔質部材を介して接合部の貫通孔の内周面付近に至るプラズマやプロセスガスの侵入を抑止することができ、保護部材の第2の部分がベース部材ガス流路内に挿入された部分を有する場合には、板状部材ガス流路を介して侵入したプラズマやプロセスガスが、多孔質部材を通過して接合部の貫通孔の内周面付近に至る経路を長くすることができるため、いずれの場合においても、接合部の貫通孔の内周面付近に至るプラズマやプロセスガスの侵入を抑止することができる。従って、本保持装置によれば、保護部材により、プラズマやプロセスガスが接合部の貫通孔の内周面付近に侵入することを確実に抑制することができ、該侵入に起因して接合部が劣化することを抑制することができる。
【0011】
(2)上記保持装置において、前記保護部材の前記第2の部分が、前記ベース部材ガス流路内に挿入された部分を有する場合、前記第1の方向に直交する方向において、前記保護部材の前記第2の部分における前記ベース部材ガス流路内に挿入された部分と、前記ベース部材ガス流路の内周面と、の間に隙間が存在する構成としてもよい。本保持装置では、仮に保護部材やベース部材ガス流路の寸法や位置のバラツキがあっても、板状部材とベース部材との接合の際に、保護部材の第2の部分がベース部材に干渉することを抑制することができる。従って、本保持装置によれば、該干渉に起因して板状部材とベース部材との間隔が不適切になることを抑制することができ、該間隔の不適切に起因する接合部の不備の発生を抑制することができる。
【0012】
(3)上記保持装置において、前記保護部材の前記第2の部分は、前記第1の方向に延びる延伸部分と、前記ベース部材の前記第3の表面に当接する部分と、を有し、前記保護部材の前記第2の部分における前記ベース部材の前記第3の表面に当接する部分は、前記延伸部分から前記第1の方向に交差する方向に延びて、前記ベース部材の前記第3の表面に当接する当接部分を有する構成としてもよい。本保持装置では、保護部材の第2の部分の当接部分を弾性変形容易に構成できるため、保護部材の寸法や板状部材とベース部材との間隔にバラツキがあっても、保護部材の第2の部分の当接部分が該バラツキに追従して弾性変形することによって、保護部材をベース部材の第3の表面に確実に当接させることができる。従って、本保持装置によれば、保護部材により、プラズマやプロセスガスが接合部の貫通孔の内周面付近に侵入することをより確実に抑制することができ、該侵入に起因して接合部が劣化することを効果的に抑制することができる。
【0013】
(4)上記保持装置において、前記多孔質部材における前記凹部の底面に対向する側の端面には、外周に沿って切り欠きが形成されており、前記保護部材の前記貫通孔の内周面は、前記多孔質部材の前記切り欠きが形成された部分の少なくとも一部を含む外周面に当接している構成としてもよい。本保持装置によれば、多孔質部材が保護部材に対して第1の方向に位置ずれすることを抑制することができる。
【0014】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、保持装置、静電チャック、それらの製造方法等の形態で実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態における静電チャック100の外観構成を概略的に示す斜視図
図2】第1実施形態における静電チャック100のXZ断面構成を概略的に示す説明図
図3】第1実施形態の静電チャック100における不活性ガスを供給するための構成を詳細に示す説明図
図4】第2実施形態の静電チャック100におけるにおける不活性ガスを供給するための構成を詳細に示す説明図
図5】第3実施形態の静電チャック100におけるにおける不活性ガスを供給するための構成を詳細に示す説明図
図6】第4実施形態の静電チャック100におけるにおける不活性ガスを供給するための構成を詳細に示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0016】
A.第1実施形態:
A-1.静電チャック100の構成:
図1は、第1実施形態における静電チャック100の外観構成を概略的に示す斜視図であり、図2は、第1実施形態における静電チャック100のXZ断面構成を概略的に示す説明図である。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を上方向といい、Z軸負方向を下方向というものとするが、静電チャック100は実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されてもよい。
【0017】
静電チャック100は、対象物(例えばウェハW)を静電引力により吸着して保持する装置であり、例えば半導体製造装置の真空チャンバー内でウェハWを固定するために使用される半導体製造装置用部品である。静電チャック100は、所定の配列方向(本実施形態では上下方向(Z軸方向))に並べて配置された板状部材10およびベース部材20を備える。板状部材10とベース部材20とは、板状部材10の下面S2(図2参照)とベース部材20の上面S3とが、後述する接合部30を挟んで上記配列方向に対向するように配置されている。すなわち、ベース部材20は、ベース部材20の上面S3が板状部材10の下面S2側に位置するように配置されている。板状部材10の下面S2は、特許請求の範囲における第2の表面に相当し、ベース部材20の上面S3は、特許請求の範囲における第3の表面に相当する。
【0018】
板状部材10は、Z軸方向視で略円形の板状の部材であり、セラミックス(例えば、アルミナや窒化アルミニウム等)を含む材料により形成されている。なお、本実施形態では、板状部材10は、セラミックスを主成分として含む材料により形成されている。本明細書において、主成分とは、体積含有率が最も高い成分を意味する。板状部材10は、外周に沿って上側に切り欠きが形成された部分である外周部OPと、外周部OPの内側に位置する内側部IPとから構成されている。板状部材10における内側部IPの厚さ(Z軸方向における厚さであり、以下同様。)は、外周部OPに形成された切り欠きの分だけ、外周部OPの厚さより厚くなっている。すなわち、板状部材10の外周部OPと内側部IPとの境界の位置で、板状部材10の厚さが変化している。
【0019】
板状部材10の内側部IPの直径は例えば50mm~500mm程度(通常は200mm~350mm程度)であり、板状部材10の外周部OPの直径は例えば60mm~510mm程度(通常は210mm~360mm程度)である(ただし、外周部OPの直径は内側部IPの直径より大きい)。また、板状部材10の内側部IPの厚さは例えば1mm~10mm程度であり、板状部材10の外周部OPの厚さは例えば0.5mm~9.5mm程度である(ただし、外周部OPの厚さは内側部IPの厚さより薄い)。
【0020】
板状部材10の上面S1のうち、内側部IPにおける上面(以下、「吸着面」ともいう。)S11は、Z軸方向に略直交する略円形の表面である。吸着面S11は、特許請求の範囲における第1の表面に相当し、Z軸方向は、特許請求の範囲における第1の方向に相当する。なお、本明細書では、Z軸方向に直交する方向を「面方向」という。
【0021】
板状部材10の上面S1のうち、外周部OPにおける上面(以下、「外周上面」ともいう。)S12は、Z軸方向に略直交する略円環状の表面である。板状部材10の外周上面S12には、例えば、静電チャック100を固定するための治具(不図示)が係合する。
【0022】
図2に示すように、板状部材10の内部には、導電性材料(例えば、タングステン、モリブデン、白金等)により形成されたチャック電極40が配置されている。Z軸方向視でのチャック電極40の形状は、例えば略円形である。チャック電極40にチャック用電源(不図示)から電圧が印加されると、静電引力が発生し、この静電引力によってウェハWが板状部材10の吸着面S11に吸着固定される。
【0023】
板状部材10の内部には、また、導電性材料(例えば、タングステン、モリブデン、白金等)を含む抵抗発熱体により構成されたヒータ電極50が配置されている。ヒータ電極50にヒータ用電源(不図示)から電圧が印加されると、ヒータ電極50が発熱することによって板状部材10が温められ、板状部材10の吸着面S11に保持されたウェハWが温められる。これにより、ウェハWの温度分布の制御が実現される。
【0024】
ベース部材20は、例えば板状部材10の外周部OPと同径の、または、板状部材10の外周部OPより径が大きい円形平面の板状部材であり、例えば金属(アルミニウムやアルミニウム合金等)により形成されている。ベース部材20の直径は例えば220mm~550mm程度(通常は220mm~350mm)であり、ベース部材20の厚さは例えば20mm~40mm程度である。
【0025】
ベース部材20は、板状部材10の下面S2とベース部材20の上面S3との間に配置された接合部30によって、板状部材10に接合されている。接合部30の厚さは、例えば0.1mm~1mm程度である。本実施形態では、接合部30は、樹脂材料(接着材料)を主成分として含んでいる。接合部30に含まれる樹脂材料としては、シリコーン樹脂やフッ素樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等の種々の樹脂材料を用いることができるが、耐熱性が高く、かつ、柔軟な樹脂材料であるシリコーン樹脂やフッ素樹脂を用いることが好ましい。また、接合部30は、樹脂材料に加えて、例えばセラミックスの充填材(フィラー)を含んでいてもよい。
【0026】
ベース部材20の内部には冷媒流路21が形成されている。冷媒流路21に冷媒(例えば、フッ素系不活性液体や水等)が流されると、ベース部材20が冷却され、接合部30を介したベース部材20と板状部材10との間の伝熱(熱引き)により板状部材10が冷却され、板状部材10の吸着面S11に保持されたウェハWが冷却される。これにより、ウェハWの温度分布の制御が実現される。
【0027】
また、図2に示すように、静電チャック100には、ベース部材20の下面S4から板状部材10の吸着面S11にわたって上下方向に延びるピン挿通孔140が形成されている。ピン挿通孔140は、板状部材10の吸着面S11上に保持されたウェハWを押し上げて吸着面S11から離間させるリフトピン(不図示)を挿通するための孔である。
【0028】
また、静電チャック100は、静電チャック100の周囲に存在するプラズマやプロセスガスから接合部30の外周面を保護するためのOリング110を備える。Oリング110は、例えばエラストマー(例えば、合成ゴム)により形成されている。Oリング110は、板状部材10の下面S2とベース部材20の上面S3とに当接しており、該当接箇所において封止機能を発揮することにより、接合部30の外周面がプラズマやプロセスガスに晒されて劣化することを抑制する。
【0029】
A-2.板状部材10の吸着面S11の構成:
図2に示すように、板状部材10の吸着面S11には、凹部79と複数の凸部70とが形成されている。より詳細には、板状部材10の吸着面S11において、凸部70が形成されていない部分が凹部79となっている。
【0030】
板状部材10の吸着面S11に形成された複数の凸部70は、吸着面S11の外周に沿って全周にわたって形成された凸部70(以下、「外周シールバンド72」という。)を含む。Z軸方向視での外周シールバンド72の形状は、板状部材10の吸着面S11の中心を中心とした略円環状である。また、図2に示すように、外周シールバンド72の断面(Z軸に平行で、かつ、吸着面S11の中心を通る断面)の形状は、略矩形である。外周シールバンド72の高さは、例えば、10μm~20μm程度である。また、外周シールバンド72の幅(Z軸方向視での外周シールバンド72の延伸方向に直交する方向の大きさ)は、例えば、0.5mm~5.0mm程度である。
【0031】
また、板状部材10の吸着面S11に形成された複数の凸部70は、板状部材10の吸着面S11における外周シールバンド72より内側の領域に形成された複数の独立した柱状の凸部70(以下、「柱状凸部73」という。)を含む。Z軸方向視での各柱状凸部73の形状は、略円形である。また、Z軸方向視で、複数の柱状凸部73は、略均等間隔で配置されている。また、図2に示すように、各柱状凸部73の断面(Z軸に平行な断面)の形状は、略矩形である。柱状凸部73の高さは、外周シールバンド72の高さと略同一であり、例えば、10μm~20μm程度である。また、柱状凸部73の幅(Z軸方向視での柱状凸部73の最大径)は、例えば、0.5mm~1.5mm程度である。
【0032】
ウェハWは、板状部材10の吸着面S11における複数の凸部70の頂面に支持される。すなわち、板状部材10の吸着面S11はウェハWを保持する吸着面として機能すると上述したが、より詳細には、ウェハWを保持するのは、吸着面S11の内、複数の凸部70の頂面である。ウェハWが複数の凸部70の頂面に支持された状態では、ウェハWの表面(下面)と、板状部材10の吸着面S11(より詳細には吸着面S11の凹部79)との間に、空間が存在することとなる。後述するように、この空間には、不活性ガスが供給される。
【0033】
A-3.不活性ガス供給のための構成:
図2に示すように、静電チャック100は、板状部材10とウェハWとの間の伝熱性を高めてウェハWの温度分布の制御性をさらに高めるため、ウェハWの表面(下面)と板状部材10の吸着面S11(吸着面S11の凹部79)との間に存在する空間に、不活性ガス(例えば、ヘリウムガス)を供給するための構成を備えている。図3は、第1実施形態の静電チャック100における不活性ガスを供給するための構成を詳細に示す説明図である。図3には、図2のX1部のXZ断面構成が拡大して示されている。本実施形態の静電チャック100は、Z軸方向視での接合部30の貫通孔32の中心を通り、Z軸方向に平行な任意の断面において、図3に示す構成と同様の構成となっている。
【0034】
図2および図3に示すように、ベース部材20には、ベース部材20の下面S4から上面S3にわたって上下方向に延びるベース部材ガス流路131が形成されている。また、板状部材10の下面S2には凹部18が形成されており、板状部材10の内部には、凹部18と吸着面S11とに開口する板状部材ガス流路130が形成されている。本実施形態では、板状部材ガス流路130は、凹部18の底面に連通すると共に上方に延びる縦流路138と、縦流路138に連通すると共に面方向に延びる横流路133と、横流路133から吸着面S11まで上方に延びて吸着面S11に開口するガス噴出流路132とから構成されている。また、接合部30には、貫通孔32が形成されている。貫通孔32は、板状部材10に形成された凹部18と、ベース部材20に形成されたベース部材ガス流路131と、に連通している。ベース部材20に形成されたベース部材ガス流路131と、接合部30に形成された貫通孔32と、板状部材10に形成された板状部材ガス流路130とが互いに連通することにより、不活性ガスを供給するためのガス流路が構成されている。
【0035】
また、板状部材10の凹部18を経由した板状部材10とベース部材20との間の放電やガスの放電等の発生を抑制するために、凹部18内には、通気性プラグ160が配置されている。通気性プラグ160は、絶縁性材料により形成された略円柱状の部材であり、板状部材10より気孔率が高い多孔質部材である。通気性プラグ160の形成材料としては、例えばセラミックス多孔質体やグラスファイバー、耐熱性ポリテトラフルオロエチレン樹脂スポンジ等を用いることができる。なお、本実施形態では、通気性プラグ160における凹部18の底面に対向する側の端面(上面)には、外周に沿って切り欠き162が形成されている。通気性プラグ160は、特許請求の範囲における多孔質部材に相当する。
【0036】
ガス源(不図示)から供給された不活性ガスが、ベース部材ガス流路131内に流入すると、流入した不活性ガスは、ベース部材ガス流路131から凹部18内に配置された通気性プラグ160の内部を通過して、板状部材10の内部に形成されたベース部材ガス流路131に流入する。より詳細には、不活性ガスは、ベース部材ガス流路131を構成する縦流路138内に流入し、その後、横流路133を介して面方向に流れつつガス噴出流路132内に流入し、ガス噴出流路132の吸着面S11における各開口から噴出する。このようにして、ウェハWの表面と板状部材10の吸着面S11(吸着面S11の凹部79)との間に存在する空間に、不活性ガスが供給される。
【0037】
ここで、本実施形態の静電チャック100は、プラズマやプロセスガスから接合部30(接合部30に形成された貫通孔32の内周面31)を保護するための保護部材170を備える。保護部材170は、エラストマー(例えば、合成ゴム)により形成されている。なお、保護部材170の形成材料は、弾性を有し、かつ、耐プラズマ性、耐熱性、耐薬品性に優れた材料であることが好ましい。
【0038】
図3に示すように、保護部材170は、Z軸方向視で貫通孔178が形成された略円筒状の部材である。保護部材170の貫通孔178には、通気性プラグ160が収容されている。また、保護部材170の貫通孔178は、ベース部材20のベース部材ガス流路131に連通している。
【0039】
より詳細には、保護部材170は、上側部分171と、上側部分171の下側に位置する下側部分172とを有する。保護部材170の上側部分171は、比較的大径の略円筒状部分である。ただし、上側部分171の上面および下面には、外周に沿ってテーパー179が形成されている。上側部分171の外周面は、板状部材10の凹部18の内周面に当接している。なお、本実施形態では、上側部分171は、径方向に圧縮されて弾性変形した状態となっており、上側部分171の外周面は、板状部材10の凹部18の内周面に密着している。これにより、通気性プラグ160を収容する保護部材170は、板状部材10に固定されている。また、本実施形態では、保護部材170の貫通孔178の内、主として上側部分171に形成された部分に、通気性プラグ160が収容されている。また、保護部材170における上側部分171の貫通孔178の内周面は、通気性プラグ160の切り欠き162が形成された部分の少なくとも一部を含む外周面に当接している。上側部分171は、特許請求の範囲における第1の部分に相当し、下側部分172は、特許請求の範囲における第2の部分に相当する。
【0040】
なお、保護部材170と板状部材10または通気性プラグ160とが当接していることは、静電チャック100の断面(Z軸方向に平行な断面)を露出させ、該断面を観察することにより確認することができる。後述する保護部材170とベース部材20との当接についても同様である。
【0041】
保護部材170の下側部分172は、上側部分171より小径の略円筒状部分であり、上側部分171の下端部に連続している。下側部分172の少なくとも一部(本実施形態では、下端部)は、ベース部材20に形成されたベース部材ガス流路131内に挿入されている。本実施形態では、下側部分172の外径は、ベース部材ガス流路131の内径より小さくなっており、面方向において、下側部分172におけるベース部材ガス流路131内に挿入された部分と、ベース部材ガス流路131の内周面38との間には、隙間GPが存在している。
【0042】
以上説明した構成を有する第1実施形態の静電チャック100は、例えば、以下のように製造することができる。すなわち、図3に示す断面形状を有する保護部材170を、例えば型による成形により作製する。なお、本実施形態では、後述するように、保護部材170が静電チャック100に設置された状態では、保護部材170が弾性変形しているため、厳密に言えば、作製する保護部材170の断面形状は、図3に示す断面形状とは当該変形分だけ異なっている。また、作製された保護部材170の貫通孔178内に、通気性プラグ160を配置する。具体的には、保護部材170の貫通孔178における上側の開口から通気性プラグ160を押し込むことにより、通気性プラグ160を貫通孔178内に入り込ませる。通気性プラグ160が保護部材170の貫通孔178内に入り込んだ状態では、通気性プラグ160の切り欠き162と保護部材170の貫通孔178の内周面との係合によって、保護部材170に対する通気性プラグ160のZ軸方向への移動が規制された状態となる。次に、通気性プラグ160を収容した状態の保護部材170を、板状部材10の下面S2に形成された凹部18内に押し込んで配置する。このとき、保護部材170の上側部分171が径方向に圧縮されて弾性変形し、保護部材170の上側部分171の外周面が、凹部18の内周面に密着した状態となり、通気性プラグ160を収容する保護部材170が板状部材10に固定される。なお、本実施形態では、保護部材170の上面にはテーパー179が形成されているため、保護部材170の凹部18内への挿入を円滑に行うことができる。
【0043】
その後、板状部材10とベース部材20とを接合部30により接合する。このとき、板状部材10に取り付けられた保護部材170における下側部分172の下端部が、ベース部材20に形成されたベース部材ガス流路131内に挿入された状態となる。上述したように、本実施形態では、保護部材170の下側部分172の外径がベース部材ガス流路131の内径より小さくされており、静電チャック100の製造完了時に、面方向において、保護部材170の下側部分172におけるベース部材ガス流路131内に挿入された部分と、ベース部材ガス流路131の内周面38との間に、隙間GPが存在するようになっている。そのため、仮に保護部材170やベース部材ガス流路131の寸法や位置のバラツキがあっても、板状部材10とベース部材20との接合の際に、保護部材170の下側部分172がベース部材20に干渉することを抑制することができ、該干渉に起因して板状部材10とベース部材20との間隔(Z軸方向における間隔)が不適切になることを抑制することができ、該間隔の不適切に起因する接合部30の不備の発生を抑制することができる。その後、Oリング110の取り付け等の残りの製造工程を行う。
【0044】
A-4.第1実施形態の効果:
以上説明したように、本実施形態の静電チャック100は、Z軸方向に略直交する吸着面S11と、吸着面S11とは反対側の下面S2と、を有し、セラミックスを含む材料により形成された板状部材10と、上面S3を有し、上面S3が板状部材10の下面S2側に位置するように配置されたベース部材20と、板状部材10の下面S2とベース部材20の上面S3との間に配置されて板状部材10とベース部材20とを接合する接合部30とを備え、板状部材10の吸着面S11上に対象物であるウェハWを保持する装置である。板状部材10の下面S2には、凹部18が形成され、板状部材10の内部には、凹部18と吸着面S11とに開口する板状部材ガス流路130が形成されている。また、ベース部材20には、ベース部材ガス流路131が形成されており、接合部30には、板状部材10の凹部18とベース部材20のベース部材ガス流路131とに連通する貫通孔32が形成されている。
【0045】
また、本実施形態の静電チャック100は、少なくとも一部分が板状部材10の凹部18内に配置された通気性プラグ160を備える。通気性プラグ160は、板状部材10より気孔率が高い多孔質部材である。
【0046】
さらに、本実施形態の静電チャック100は、エラストマーにより形成された保護部材170を備える。保護部材170は、貫通孔178が形成された筒状部材である。保護部材170の貫通孔178には、通気性プラグ160が収容されている。また、保護部材170の貫通孔178は、ベース部材ガス流路131に連通している。保護部材170は、上側部分171と、下側部分172とを有する。保護部材170の上側部分171は、板状部材10の凹部18の内周面に当接している。保護部材170の下側部分172の少なくとも一部は、ベース部材20のベース部材ガス流路131内に挿入されている。
【0047】
ここで、静電チャック100においては、例えばウェハレスクリーニング時等に、吸着面S11の側から板状部材ガス流路130内に侵入したプラズマが、板状部材10(の凹部18の内周面)と通気性プラグ160との間や通気性プラグ160の内部を通って、接合部30の貫通孔32の内周面31付近に至ることにより、接合部30が劣化するおそれがある。また、静電チャック100においては、例えばウェハのデチャック時等に、吸着面S11の側から板状部材ガス流路130内に侵入したプロセスガスが、板状部材10(の凹部18の内周面)と通気性プラグ160との間や通気性プラグ160の内部を通って、接合部30の貫通孔32の内周面31付近に至ることにより、接合部30が劣化するおそれがある。しかしながら上述したように、本実施形態の静電チャック100は、エラストマーにより形成された保護部材170を備え、保護部材170は、板状部材10の凹部18の内周面に当接する上側部分171と、少なくとも一部がベース部材20のベース部材ガス流路131内に挿入された下側部分172とを有している。そのため、保護部材170の上側部分171の存在により、保護部材170の貫通孔178内に収容された通気性プラグ160を板状部材10に固定することができると共に、板状部材ガス流路130から接合部30の貫通孔32の内周面31付近に至るプラズマやプロセスガスの侵入を抑止することができる。すなわち、保護部材170が配置されていない構成では、板状部材10と通気性プラグ160との間の密着性が低いため、板状部材10と通気性プラグ160との間を通ってプラズマやプロセスガスが侵入するおそれがある。しかし、保護部材170が配置された構成では、エラストマーにより形成された保護部材170と板状部材10との間の密着性は、上述した板状部材10と通気性プラグ160との間の密着性より高いため、板状部材10と通気性プラグ160との間を通ってプラズマやプロセスガスが侵入することを抑制することができる。また、保護部材170の下側部分172の存在により、上方から縦流路138を介して侵入したプラズマやプロセスガスが、通気性プラグ160を通過して接合部30の貫通孔32の内周面31付近に至る経路を長くすることができる。従って、本実施形態の静電チャック100によれば、保護部材170により、プラズマやプロセスガスが接合部30の貫通孔32の内周面31付近に侵入することを確実に抑制することができ、該侵入に起因して接合部30が劣化することを抑制することができる。なお、接合部30がセラミックス等の充填材(フィラー)を含んでいる場合には、該侵入に起因して該フィラーが飛散し、真空チャンバー内にパーティクルが発生することを抑制することができる。
【0048】
また、本実施形態の静電チャック100では、Z軸方向に直交する方向(面方向)において、保護部材170の下側部分172におけるベース部材ガス流路131内に挿入された部分と、ベース部材ガス流路131の内周面38との間に、隙間GPが存在している。そのため、本実施形態の静電チャック100では、仮に保護部材170やベース部材ガス流路131の寸法や位置のバラツキがあっても、板状部材10とベース部材20との接合の際に、保護部材170の下側部分172がベース部材20に干渉することを抑制することができる。従って、本実施形態の静電チャック100によれば、該干渉に起因して板状部材10とベース部材20との間隔が不適切になることを抑制することができ、該間隔の不適切に起因する接合部30の不備の発生を抑制することができる。
【0049】
また、本実施形態の静電チャック100では、通気性プラグ160における板状部材10の凹部18の底面に対向する側の端面(上面)に、外周に沿って切り欠き162が形成されている。また、保護部材170の貫通孔178の内周面は、通気性プラグ160の切り欠き162が形成された部分の少なくとも一部を含む外周面に当接している。そのため、本実施形態の静電チャック100によれば、通気性プラグ160が保護部材170に対してZ軸方向に位置ずれすることを抑制することができる。
【0050】
B.第2実施形態:
図4は、第2実施形態の静電チャック100におけるにおける不活性ガスを供給するための構成を詳細に示す説明図である。以下では、第2実施形態の静電チャック100の構成の内、上述した第1実施形態の静電チャック100の構成と同一の構成については、同一の符号を付すことによってその説明を適宜省略する。
【0051】
図4に示すように、第2実施形態では、保護部材170の構成が第1実施形態と異なる。より詳細には、第2実施形態では、保護部材170の下側部分172が、Z軸方向に延びる延伸部分173と、延伸部分173からZ軸方向に交差する方向に延びて、ベース部材20の上面S3に当接する当接部分174とを有する。本実施形態では、延伸部分173は、上側部分171の外周の位置から下方に延びている。また、当接部分174は、延伸部分173との境界からZ軸方向視での保護部材170の中心軸側に傾いた方向に延びている。
【0052】
以上説明した構成を有する第2実施形態の静電チャック100は、例えば、以下のように製造することができる。すなわち、図4に示す断面形状を有する保護部材170を、例えば型による成形により作製する。なお、本実施形態では、後述するように、保護部材170が静電チャック100に設置された状態では、保護部材170が弾性変形しているため、厳密に言えば、作製する保護部材170の断面形状は、図4に示す断面形状とは当該変形分だけ異なっている。より具体的には、作製された保護部材170における下側部分172の当接部分174は、延伸部分173からZ軸方向に略平行に延びている。また、作製された保護部材170の貫通孔178内に、通気性プラグ160を配置し、通気性プラグ160を収容した状態の保護部材170を、板状部材10の下面S2に形成された凹部18内に押し込んで配置する。その後、板状部材10とベース部材20とを接合部30により接合する。このとき、板状部材10に取り付けられた保護部材170における下側部分172の当接部分174が、ベース部材20の上面S3に当接して押圧されることにより、当接部分174が保護部材170の中心軸側に傾くように弾性変形する。そのため、仮に保護部材170の寸法や板状部材10とベース部材20との間隔にバラツキがあっても、保護部材170の下側部分172の当接部分174が該バラツキに追従して弾性変形することによって、ベース部材20の上面S3に確実に当接する。その後、Oリング110の取り付け等の残りの製造工程を行う。
【0053】
以上説明したように、第2実施形態の静電チャック100は、エラストマーにより形成された保護部材170を備える。保護部材170は、板状部材10の凹部18の内周面に当接する上側部分171と、ベース部材20の上面S3に当接する下側部分172とを有している。そのため、保護部材170の上側部分171の存在により、保護部材170の貫通孔178内に収容された通気性プラグ160を板状部材10に固定することができると共に、板状部材ガス流路130から接合部30の貫通孔32の内周面31付近に至るプラズマやプロセスガスの侵入を抑止することができる。また、保護部材170の下側部分172の存在により、板状部材ガス流路130から通気性プラグ160を介して接合部30の貫通孔32の内周面31付近に至るプラズマやプロセスガスの侵入を抑止することができる。従って、本実施形態の静電チャック100によれば、保護部材170により、プラズマやプロセスガスが接合部30の貫通孔32の内周面31付近に侵入することを確実に抑制することができ、該侵入に起因して接合部30が劣化することを抑制することができる。
【0054】
また、第2実施形態の静電チャック100では、保護部材170の下側部分172が、Z軸方向に延びる延伸部分173と、当接部分174とを有している。保護部材170の下側部分172における当接部分174は、延伸部分173からZ軸方向に交差する方向に延びて、ベース部材20の上面S3に当接している。そのため、第2実施形態の静電チャック100では、保護部材170の下側部分172の当接部分174を弾性変形容易に構成できるため、保護部材170の寸法や板状部材10とベース部材20との間隔にバラツキがあっても、保護部材170の下側部分172の当接部分174が該バラツキに追従して弾性変形することによって、保護部材170をベース部材20の上面S3に確実に当接させることができる。従って、第2実施形態の静電チャック100によれば、保護部材170により、プラズマやプロセスガスが接合部30の貫通孔32の内周面31付近に侵入することをより確実に抑制することができ、該侵入に起因して接合部30が劣化することを効果的に抑制することができる。
【0055】
C.第3実施形態:
図5は、第3実施形態の静電チャック100におけるにおける不活性ガスを供給するための構成を詳細に示す説明図である。以下では、第3実施形態の静電チャック100の構成の内、上述した第2実施形態の静電チャック100の構成と同一の構成については、同一の符号を付すことによってその説明を適宜省略する。
【0056】
図5に示すように、第3実施形態では、保護部材170の構成が第2実施形態と異なる。より詳細には、第3実施形態では、第2実施形態と同様に、保護部材170の下側部分172が、Z軸方向に延びる延伸部分173と、延伸部分173からZ軸方向に交差する方向に延びて、ベース部材20の上面S3に当接する当接部分174とを有する。ただし、第3実施形態では、第2実施形態と異なり、延伸部分173は、上側部分171の外周部より内側の位置(貫通孔178の外縁の位置)から下方に延びている。また、当接部分174は、延伸部分173との境界から、面方向に平行(Z軸方向視での保護部材170の中心軸から離れる方向)に延びている。
【0057】
以上説明した構成を有する第3実施形態の静電チャック100は、板状部材10とベース部材20との接合時における保護部材170の下側部分172の当接部分174を変形させる方向以外は、上述した第2実施形態の静電チャック100の製造方法と同様の方法により製造することができる。
【0058】
以上説明したように、第3実施形態の静電チャック100は、第2実施形態と同様に、エラストマーにより形成された保護部材170を備え、保護部材170は、板状部材10の凹部18の内周面に当接する上側部分171と、ベース部材20の上面S3に当接する下側部分172とを有している。また、第3実施形態の静電チャック100では、第2実施形態と同様に、保護部材170の下側部分172が、Z軸方向に延びる延伸部分173と、延伸部分173からZ軸方向に交差する方向に延びて、ベース部材20の上面S3に当接する当接部分174とを有している。そのため、第3実施形態の静電チャック100によれば、第2実施形態と同様に、保護部材170により、プラズマやプロセスガスが接合部30の貫通孔32の内周面31付近に侵入することをより確実に抑制することができ、該侵入に起因して接合部30が劣化することを効果的に抑制することができる。
【0059】
なお、第3実施形態の静電チャック100では、保護部材170の下側部分172の当接部分174が面方向に平行に延びているため、保護部材170の下側部分172とベース部材20の上面S3との接触面積を容易に大きくすることができ、保護部材170により、プラズマやプロセスガスが接合部30の貫通孔32の内周面31付近に侵入することを一層確実に抑制することができる。
【0060】
D.第4実施形態:
図6は、第4実施形態の静電チャック100におけるにおける不活性ガスを供給するための構成を詳細に示す説明図である。以下では、第4実施形態の静電チャック100の構成の内、上述した第2実施形態の静電チャック100の構成と同一の構成については、同一の符号を付すことによってその説明を適宜省略する。
【0061】
図6に示すように、第4実施形態では、保護部材170の構成が第2実施形態と異なる。より詳細には、第4実施形態では、第2実施形態と同様に、保護部材170の下側部分172が、ベース部材20の上面S3に当接している。ただし、第4実施形態では、第2実施形態と異なり、保護部材170の下側部分172が、Z軸方向に延びる円筒状部分として構成されており、Z軸方向に交差する方向に延びる部分を有していない。
【0062】
以上説明した構成を有する第4実施形態の静電チャック100は、板状部材10とベース部材20との接合時において、保護部材170の下側部分172の一部分がZ軸方向に交差する方向に延びる状態となるように変形するのではなく、下側部分172が単純にZ軸方向に圧縮変形すること以外は、上述した第2実施形態の静電チャック100の製造方法と同様の方法により製造することができる。
【0063】
以上説明したように、第4実施形態の静電チャック100は、第2実施形態と同様に、エラストマーにより形成された保護部材170を備え、保護部材170は、板状部材10の凹部18の内周面に当接する上側部分171と、ベース部材20の上面S3に当接する下側部分172とを有している。そのため、第4実施形態の静電チャック100によれば、第2実施形態と同様に、保護部材170により、プラズマやプロセスガスが接合部30の貫通孔32の内周面31付近に侵入することを確実に抑制することができ、該侵入に起因して接合部30が劣化することを抑制することができる。
【0064】
E.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0065】
上記実施形態における静電チャック100の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態における保護部材170や通気性プラグ160の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、通気性プラグ160に切り欠き162が形成されているが、切り欠き162は無くてもよい。また、上記実施形態では、保護部材170にテーパー179が形成されているが、テーパー179は無くてもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、Z軸方向視での接合部30の貫通孔32の中心を通り、Z軸方向に平行な任意の断面において、保護部材170等が図3等に示す構成と同様の構成となっているが、Z軸方向視での接合部30の貫通孔32の中心を通り、Z軸方向に平行な少なくとも1つの断面において、保護部材170等が図3等に示す構成と同様の構成となっていればよい。
【0067】
また、上記実施形態では、板状部材10に、不活性ガスの流通のためのトンネル流路(図2に示す横流路133および縦流路138)が形成されているが、これらのトンネル流路の少なくとも一部がベース部材20に形成されているとしてもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、板状部材10の上面側の外周に沿って上側に切り欠きが形成されているが、該切り欠きは形成されていなくてもよい。また、上記実施形態では、板状部材10の内部に1つのチャック電極40が設けられた単極方式が採用されているが、板状部材10の内部に一対のチャック電極40が設けられた双極方式が採用されてもよい。また、上記実施形態の静電チャック100の各部材(板状部材10、ベース部材20、接合部30、保護部材170、通気性プラグ160等)の形成材料は、あくまで一例であり、種々変更可能である。例えば、上記実施形態では、接合部30は樹脂材料(接着材料)を主成分として含んでいるが、接合部30は金属材料等の他の材料を主成分として含んでいてもよい。
【0069】
また、本発明は、静電チャック100に限らず、板状部材と、ベース部材と、両者を接合する接合部とを備え、板状部材の表面上に対象物を保持する他の保持装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0070】
10:板状部材 18:凹部 20:ベース部材 21:冷媒流路 30:接合部 31:内周面 32:貫通孔 38:内周面 40:チャック電極 50:ヒータ電極 70:凸部 72:外周シールバンド 73:柱状凸部 79:凹部 100:静電チャック 110:Oリング 130:板状部材ガス流路 131:ベース部材ガス流路 132:ガス噴出流路 133:横流路 138:縦流路 140:ピン挿通孔 160:通気性プラグ 162:切り欠き 170:保護部材 171:上側部分 172:下側部分 173:延伸部分 174:当接部分 178:貫通孔 179:テーパー GP:隙間 IP:内側部 OP:外周部 S11:吸着面 S12:外周上面 S1:上面 S2:下面 S3:上面 S4:下面 W:ウェハ
図1
図2
図3
図4
図5
図6