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特許7299843実験機器、実験機器ネットワークおよび実験サンプルを取り扱うための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-20
(45)【発行日】2023-06-28
(54)【発明の名称】実験機器、実験機器ネットワークおよび実験サンプルを取り扱うための方法
(51)【国際特許分類】
   B01L 1/00 20060101AFI20230621BHJP
   B01L 99/00 20100101ALI20230621BHJP
   G01N 35/00 20060101ALI20230621BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20230621BHJP
【FI】
B01L1/00 C
B01L99/00
G01N35/00 Z
C12M1/00 A
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019563179
(86)(22)【出願日】2018-05-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-16
(86)【国際出願番号】 EP2018062332
(87)【国際公開番号】W WO2018210721
(87)【国際公開日】2018-11-22
【審査請求日】2021-03-23
(31)【優先権主張番号】17171128.6
(32)【優先日】2017-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501186645
【氏名又は名称】エッペンドルフ・ソシエタス・エウロパエア
【氏名又は名称原語表記】Eppendorf SE
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100165191
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 章
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(72)【発明者】
【氏名】シュテッフェン ブラー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ティーメ
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ビルド
【審査官】小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-149232(JP,A)
【文献】特表2014-530358(JP,A)
【文献】特開2007-288748(JP,A)
【文献】特開2008-200671(JP,A)
【文献】特開2006-043569(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0215357(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0090320(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01L 1/00
B01L 99/00
G01N 35/00
C12M 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
実験サンプルを収容するための作業チャンバ(2)と、
前記作業チャンバに収容された前記実験サンプルの処置を実行するための処置装置(3)と、
前記処置装置を制御するためであり、かつ、第1のデータを処理するための第1の制御装置(4)と
を備える、実験サンプル(9)を取り扱うための実験機器(1、1’、1’’、1’’’)であって、
前記作業チャンバ(2)は、少なくともひとつの挿入可能機器(20、30)を収容するために構成され、前記挿入可能機器は、前記作業チャンバの挿入位置に挿入され、前記挿入可能機器は、データ交換を含む、前記作業チャンバの内部での作業ステップを実行するように構成され、
前記挿入可能機器の前記挿入位置において、少なくともひとつの前記第1の制御装置(4)と、少なくともひとつの挿入可能機器(20、30)とを含む、ネットワーク機器のグループから選択された、イーサネットネットワークである実験機器ネットワーク(100)の少なくとも2つのネットワーク機器の間のデータ接続を提供するように構成された、ネットワークインタフェース装置(6)を、前記実験機器は備え、
前記ネットワークインタフェース装置(6)が、前記実験機器ネットワーク(100)を外部ネットワーク(150)に接続するように構成されたネットワークルータを有することを特徴とする実験機器。
【請求項2】
前記ネットワークインタフェース装置は、イーサネットハブまたはイーサネットスイッチを備える、請求項1に記載の実験機器。
【請求項3】
前記実験機器はひとつまたは複数の以下の構成:
a)前記実験機器は、前記作業チャンバ(2)に挿入されて、前記ネットワークインタフェース装置(6)を介して前記第1の制御装置(4)と通信する、少なくともひとつの挿入可能機器(20、30)を備える;
b)前記実験機器は、前記作業チャンバ(2)に挿入されて、前記ネットワークインタフェース装置(6)を介して互いに通信する、少なくともひとつの第1の挿入可能機器(20、30)と、ひとつの第2の挿入可能機器(20、30)を備える、
を有する、請求項1または2に記載の実験機器。
【請求項4】
前記第1の制御装置(4)とデータを交換し、前記第1の制御装置(4)と前記ネットワークインタフェース装置(6)との間の通信を提供するように構成された第1の通信装置(5)を備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の実験機器。
【請求項5】
前記実験機器は、実験インキュベータ、実験サンプル混合装置、実験サンプルシェーカ、実験冷凍機、または、自動ピペッティング装置、サーモサイクラである、または、実験インキュベータ、実験サンプル混合装置、実験サンプルシェーカ、実験冷凍機、または、自動ピペッティング装置、サーモサイクラを備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の実験機器。
【請求項6】
前記実験機器は、前記作業チャンバに挿入され、前記作業チャンバから除去されるように構成され、前記実験機器ネットワーク内のデータ交換を含む、前記実験サンプル及び/又は作業チャンバに関連した作業ステップを実行するように構成された、少なくともひとつの挿入可能機器を備え、
前記挿入可能機器は、前記少なくともひとつの挿入可能機器の前記挿入位置において、前記実験機器ネットワークとデータを交換するように構成された、第2の制御装置(4’’)を備える、
請求項1~5のいずれか一項に記載の実験機器。
【請求項7】
ユーザがデータを入力するためのユーザインタフェースを備えるユーザインタフェース装置を備え、前記ユーザインタフェースは、データを処理し、前記実験機器ネットワークとの間でデータを交換するように構成された第3の制御装置を備える、請求項1~6のいずれか一項に記載の実験機器。
【請求項8】
前記実験機器は、前記作業チャンバに挿入される少なくともひとつの挿入可能機器(20、30)を備え、前記挿入可能機器は、互いに接続された第1部及び第2部を有し、前記挿入可能機器の前記挿入位置において、前記第1部は前記作業チャンバに挿入され、前記第2部は前記作業チャンバに挿入されない、請求項1~7のいずれか一項に記載の実験機器。
【請求項9】
前記挿入位置にある前記少なくともひとつの挿入可能機器の存在又は不在、及び/又は、少なくともひとつの位置を特定するように構成された、請求項1~8のいずれか一項に記載の実験機器。
【請求項10】
前記実験機器は、前記作業チャンバ(2)に挿入される少なくともひとつの挿入可能機器(20、30)を備え、前記挿入可能機器(20、30)は、少なくともひとつの実験サンプルを搬送するための搬送装置であり、前記作業チャンバは、前記少なくともひとつの搬送装置を受け入れるように構成された、請求項1~9のいずれか一項に記載の実験機器。
【請求項11】
前記搬送装置は、水平に配置されて、前記作業チャンバ内に搭載される棚面を有する棚である、請求項10に記載の実験機器。
【請求項12】
請求項1に記載の、少なくともひとつの実験機器(1)と、
請求項1に記載の実験機器の前記作業チャンバに挿入され、前記作業チャンバから除去されるように構成されて、前記挿入位置で、実験機器ネットワーク内で交換されたデータを用いて、前記実験サンプルに関する作業ステップを実行するように構成された、前記少なくともひとつの挿入可能機器(20、30)とを備え、
前記少なくともひとつの挿入可能機器の前記挿入位置で、前記実験機器ネットワークとのデータの交換を可能にするため、前記少なくともひとつの実験機器および前記少なくともひとつの挿入可能機器は、前記実験機器ネットワークに接続される、
実験機器ネットワーク(100)。
【請求項13】
前記実験機器ネットワークを、好ましくはインターネットである外部ネットワークに接続する、ネットワークルータを備える、請求項12に記載の実験機器ネットワーク。
【請求項14】
前記実験機器ネットワークは、ネットワーク機器のアドレスを指定する目的で、実験機器ネットワークに接続された各ネットワーク機器に割り当てられるリンク・ローカルアドレス(link-local address)を有するように構成され、前記リンク・ローカルアドレスは、イーサネットネットワークのリンク・ローカルIPアドレスである、請求項12または請求項13に記載の実験機器ネットワーク。
【請求項15】
前記実験機器ネットワークは、ネットワークルータおよびネットワークスイッチを含み、
前記ネットワークルータおよび前記ネットワークスイッチは、
ひとつの内部VLANを含む、少なくともひとつの仮想ローカルエリアネットワーク(VLAN)を実装
記ネットワーク機器、特に、前記少なくともひとつの実験機器と前記少なくともひとつの挿入可能機器とを接続し、
記内部VLANに続されたネットワーク機器を、インターネット等の外部ネットワークから隠し、
記実験機器ネットワークを、データ交換可能に前記外部ネットワークと接続する、
ように構成されている、請求項12~14のいずれか一項に記載の実験機器ネットワーク。
【請求項16】
ひとつまたは複数の以下の構成:
a)前記実験機器は、前記作業チャンバ(2)に挿入され、前記ネットワークインタフェース装置(6)を介して、前記第1の制御装置(4)と通信する、少なくともひとつの挿入可能機器(20、30)を備える;
b)前記実験機器は、前記作業チャンバ(2)に挿入されて、前記ネットワークインタフェース装置(6)を介して互いに通信する、少なくともひとつの第1の挿入可能機器(20、30)と、ひとつの第2の挿入可能機器(20、30)とを備える;
c)実験機器は、前記作業チャンバ(2)に挿入される挿入可能機器(20、30)を備え、前記実験機器ネットワークは、前記実験機器の外部に配置されて、前記ネットワークインタフェース装置(6)に接続される、少なくともひとつの外部ネットワーク機器を備え、前記実験機器ネットワークの挿入可能機器と外部ネットワーク機器は、前記ネットワークインタフェース装置(6)を介して通信する、
を含む、請求項12~15のいずれか一項に記載の実験機器ネットワーク(100)。
【請求項17】
請求項1に記載の少なくともひとつの実験機器と、前記実験機器ネットワーク内での第2のデータの交換を含む、前記実験サンプルに関連した作業ステップを実行するように構成された、少なくともひとつの挿入可能機器とを備える実験機器ネットワークを用いて、実験サンプルを取り扱う方法であって、
前記少なくともひとつの実験機器の前記作業チャンバの中に少なくともひとつの挿入可能機器を配置するステップと、
前記少なくともひとつの挿入可能機器と、前記実験機器ネットワークの間でデータ交換ができるように、前記少なくともひとつの挿入可能機器を、前記少なくともひとつの実験機器の前記ネットワークインタフェース装置に接続するステップとを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は実験機器、実験機器を含む実験機器ネットワークおよび実験機器を用いつつ実験サンプルを取り扱うための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ネットワークに接続された実験機器は、化学、生物学、生化学、医学または法医学の研究室において、実験サンプルを効率よく扱うために用いられている。ネットワーク接続は、実験機器の間でデータを交換して、実験サンプル、または、実験機器によって適用される作業工程に関連した情報を収集、配信するために用いられる。また、機器間のデータ交換は、分割されて、個々の実験機器によって局所的に実行される部分的なタスクに分散される、グローバルなタスクを実行するために用いられてもよい。同じネットワークの複数の機器が、類似のタスクを並行して遂行してもよいし、同じネットワークの機器が異なるタスクを実行するように割り当てられてもよい。
【0003】
典型的な作業ステップは保護された環境、典型的には保護された環境と外部との間に防護壁を提供する、機器の作業チャンバの中で、実験機器によって実験サンプルに対して行われる。従って、一般に、実験サンプルは、サンプルに対して異なるタスクを連続して実行するための実験機器ネットワークにおいて、ある機器の作業チャンバから他の機器の作業チャンバに移される。この種の実験機器ネットワークシステムのスループットを大きくするため、同じネットワークの複数の機器を用いて、同じタスクを並行して遂行してもよいし、同じネットワークの個々の機器が、異なるタスクを実行するほどに複雑に構成されてもよい。
【0004】
高スループットな実験機器は、ユーザの関与を最小限としつつ、実験サンプルに対し異なる作業ステップを実行するため、例えば、ネットワークを介して受信した制御データを用いることによって、しばしば自動化され、典型的には、サンプル処置の個々のステップは、コンピュータプログラム、ソフトウェアおよびロボットシステムによって制御される。この目的のため、実験機器と統合され、実験機器の基本的な機能を担う、相異なる内部処置装置を制御するように、典型的な実験機器は構成される。例えば、自動ピペットステーションは、液体を測定し、分配するピペットロボットと、実験サンプルを混合する混合装置と、実験サンプルに一または複数の温度を適用するための温度制御装置とを備え、これらの装置は、実験機器の制御プログラムによって、アクセスされ、制御される。こうした実験機器のアプリケーションの中には、統合された処置装置それぞれによって実験サンプルを連続して処置するように要求するものもあるが、他のタスクには、ひとつだけ、あるいは、統合された処置装置の一部だけを用いるように要求し、他の処置装置はもっと長期間、非活性のままにされてもよいようなものもある。本発明は、実験機器ネットワークシステムにおいて、実験サンプルを取り扱う際の効率性と柔軟性を改善する新規のアプローチを提供する。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、実験機器を含む実験機器ネットワークシステムを柔軟かつ効率的に使用できる実験機器と、実験機器ネットワークを用いて実験サンプルを取り扱う、対応した方法とを提供することである。
【0006】
本発明は、特に、請求項1に記載の実験機器と、請求項12に記載の実験機器ネットワークシステムと、請求項16に記載の方法とを用いてこの目的を達成する。本発明の好ましい実施の形態は、特に、従属項の主題である。
【0007】
本発明に従った実験機器は、サンプルを取り扱うための保護された環境として用いられる作業チャンバを提供し、作業チャンバの保護された環境の内部に、挿入可能機器(insertable instruments)が設置できるように構成され、挿入可能機器と実験機器ネットワークの間のデータ交換を可能とするための実験機器ネットワークへのネットワークインタフェース装置を介して接続される。挿入可能機器は作業チャンバから交換可能であり、本発明に従った実験機器の相異なるまたは類似した実施形態の中に設置され用いられて、同じまたは相異なる実験機器ネットワークによって用いられる。これにより、実験機器と挿入可能機器とを組み合わせて、アプリケーションに応じて、柔軟に実験機器ネットワークを構成することができる。好ましくは、2以上の挿入可能機器が用いられて、相異なるタスクを遂行するための相異なる作業ステップを実行するように構成される。
【0008】
挿入可能機器の挿入位置における、実験機器ネットワークとデータを交換する能力は、作業チャンバ内の挿入可能機器によって生成されたデータの処理は、どのようなものであっても、作業チャンバの内部で行われる必要はなく、作業チャンバの外、特に、他のネットワーク機器に移転可能であるという利点を提供する。これによって、データ処理による熱放散は作業チャンバの内部に影響を及ぼすことがなく、及び/又は、より高い熱放散が許容される、作業チャンバの外の環境において、より強力なデータ処理装置を用いることができる。
【0009】
実験機器ネットワークは、接続されてデータ交換を行う複数のネットワーク機器を備えるものと理解される。データ交換はデータの送信及び/又はデータの受信を含む。ネットワーク機器は、実験機器、挿入可能機器またはユーザインタフェース装置であってもよく、例えば以下に説明される。ネットワーク機器は、ネットワーク機器の少なくともひとつの電気的に制御可能な機能を制御する、制御装置を備えてよい。本説明に関連して、用語「第1の制御装置」は実験機器の制御装置を指し、用語「第2の制御装置」は挿入可能機器の制御装置を指し、用語「第3の制御機器」は、実験機器の外部に設置されて、同じ実験機器ネットワークの一部を形成する、外部機器の制御装置を指す。こうした外部機器は、他の実験機器であってもよいし、ユーザインタフェース装置であってもよい。
【0010】
実験機器ネットワークは、特に、ピアツーピアネットワークのような、非階層ネットワーク(non-hierarchical network)であることが好ましい。非階層ネットワークにおいて、各ネットワーク機器は同じ通信能力を有し、どちらのネットワーク機器も通信セッションを開始することができる。クライアントがサービス要求を発し、サーバが要求を遂行するクライアント/サーバ接続と異なり、本実験機器ネットワークは、ネットワーク機器が実験機器ネットワークの他のネットワーク機器、特に、他の挿入可能機器と通信ができるように構成される。非階層ネットワークの特定の定義によれば、非階層実験機器ネットワーク内の少なくとも2つのネットワーク機器が互いに非階層に関係するように構成されている限りにおいて、非階層実験機器ネットワークの中で少なくとも2つのネットワーク機器の階層を有することができる。
【0011】
更に、挿入可能機器をネットワークインタフェース装置を介して非階層実験機器ネットワークに接続することは利点である。とりわけ、ワークフローの中で挿入可能機器を統合するために、ポーリングが要求されないことは利点である。代わって、実験機器ネットワークまたは実験機器と挿入可能機器との間の通信は、イベントドリブン(event-driven)であってもよく、挿入可能機器によって開始されてもよく、ピアツーピア通信であってもよい。これにより、ポーリングを用いるシステムと比較して、挿入可能機器と実験機器ネットワークとの間のデータ通信を顕著に減らすことができる。
【0012】
実験機器ネットワークは、データ交換のためにスター型ネットワークトポロジーによって接続されることが好ましい。実験機器ネットワークのネットワーク機器のアドレスを指定するためのアドレス、特に、IPアドレスが動的に決定されるように、実験機器ネットワークは構成されてもよく、実験機器ネットワーク内にDNS SD(Domain Name Service Service Discovery)を実装することが好ましい。このようにして、ホットプラグ可能なネットワークが実現される。ホットプラグは、実験機器ネットワークの動作に対して大きな影響を及ぼす割り込みなしに、動作中の実験機器ネットワークにコンポーネントを追加することである。特に、ネットワーク機器のホットプラグ接続は、実験機器ネットワークの再起動を要求しない。
【0013】
また、ネットワーク機器は、前記機器の制御装置、第1、第2または第3の制御装置によって、例えば、第1、第2または第3の制御装置によって担われることとしてもよい。
【0014】
実験機器ネットワークはイーサネット(登録商標)ネットワークを用い、及び/又は、ネットワークインタフェース装置は、それぞれイーサネットネットワーク内で用いるように構成された、イーサネットハブまたはイーサネットスイッチであってもよい。ネットワークへのネットワーク機器のホットプラグ接続といった、良好なアドレス指定技術のように、イーサネットはいくつかの利点を提供し、確立された標準によって、インターネットのような外部ネットワークに簡単に接続することができる。本発明に関して、一般にOSI(Open Systems Interconnection)参照モデル第1層として説明される物理層を少なくとも用い、好ましくは、一般にOSI参照モデル第2層として説明されるデータ層を用い、一般には業界の水準であるΙΕΕΕ-Norm 802.3としてイーサネット技術によって実装されたネットワークを、イーサネットネットワークは説明する。好ましくは、インターネットプロトコル(internet protocol, IP)は、即ちOSI参照モデル第3層のようなネットワーク層として実装されて、例えば、論理アドレスを提供する。
【0015】
本発明に従った実験機器は、一または複数の以下の構成を有してよく、以下のネットワーク機器を備えることとしてもよい。各構成において、前記ネットワーク機器は、そのネットワーク機器の一部であるネットワークインタフェース装置を介して通信し、特に、実験機器に統合され、特に、堅固に実験機器に搭載され、または、モジュールとして実験機器に搭載されることが好ましい。ここで、ネットワークインタフェース装置は、挿入可能機器の挿入位置において、実験機器ネットワークの少なくとも2つのネットワーク機器の間のデータ通信を提供するように構成されてもよい。ネットワーク機器は、少なくともひとつの第1の制御装置、少なくともひとつの挿入可能機器、および、好ましくは少なくともひとつの外部ネットワーク機器を含む、ネットワーク機器のグループの中から取り上げられてよい。
【0016】
第1の好ましい構成(a)において、実験機器は少なくともひとつの挿入可能機器を備え、ネットワークインタフェース装置は、挿入可能機器の挿入位置において、少なくともひとつの第1の制御装置と一または複数の挿入可能機器とを含む、実験機器ネットワークの少なくとも2つの実験機器との間でのデータ通信を提供するように構成される。このような構成により、特に、第1の制御装置のような実験機器が、ネットワークインタフェース装置と接続されて、好ましくは実験機器の作業チャンバ内に設けられる、一または複数の挿入可能機器と通信を行うことができるようになる。
【0017】
挿入可能機器、特に、挿入可能機器に割り当てられた第2の制御装置に提供されたデータであって、実験機器ネットワークを介して受信されたデータに従う、一または複数の機能を実行するように、第1の制御装置は構成されてよい。第1の制御装置は、第1の制御プログラムとしても参照される制御プログラムであって、特に、一または複数の挿入可能機器によって提供されて、実験機器ネットワークを介して受信されたデータに従って、少なくともひとつの実験サンプルのプログラム制御された処置を制御するための制御プログラムを実行するように構成されてよい。一例では、挿入可能機器は、測定装置、特に、例えば環境センサやデジタル画像取得のための光学センサのようなセンサであり、環境データや画像データは、制御プログラムの指示に従って、制御プログラムによって取得され、または、データメモリに格納される。更に、例えば、環境データや画像データに従って、作業チャンバを加熱または冷却することによって、少なくともひとつの実験サンプルの処置に影響を与えるためにデータは用いられる。
【0018】
更に、挿入可能機器の第2の制御装置は、第1の制御装置によって提供されて、実験機器ネットワークを介して受信したデータに従って、一または複数の機能を実行するように構成されてもよい。第1の制御装置によって提供され、実験機器ネットワークを介して受信したデータに従って、少なくともひとつの実験サンプルへの作業ステップ、特に、プログラム制御された作業ステップを実行するように、第2の制御装置は構成されてもよい。例えば、挿入可能機器またはその第2の制御装置は、第2の制御プログラムとしても参照される制御プログラムであって、実験機器ネットワークを介して第1の制御装置によって提供されるデータを用いる制御プログラムを実行するように構成されてもよい。少なくともひとつの実験サンプルへの作業ステップを実行するための前記データに従って、測定装置及び/又は作業装置を制御する指示を、制御プログラムは含むこととしてもよい。
【0019】
第2の好ましい構成(b)において、実験機器は、少なくともひとつの第1の挿入可能機器と、一の第2の挿入可能機器とを備え、ネットワークインタフェース装置は、第1および第2の挿入可能機器を含む実験機器ネットワークの少なくとも2つのネットワーク機器の間のデータ接続を、挿入位置において提供する。このような構成により、ネットワークインタフェース装置に接続され、好ましくは実験機器の作業チャンバ内に設置された、実験機器ネットワークの2つ以上の挿入可能機器の間のデータ通信ができるようになり、前記通信は、挿入可能機器を収容する実験機器の機能から独立する。例えば、第1の挿入可能機器は棚であってもよい。棚は、棚の上に配置された、少なくともひとつの実験サンプルをシェイク(shake)するための、プログラム制御された動作機構を備えてもよい。第2の挿入可能機器は、例えば、サンプル画像を取得する、または、作業チャンバ内の湿度を測定するといった、少なくともひとつの実験サンプルの少なくともひとつのパラメータのプログラム制御された測定を実行するための、測定装置を備えてもよい。第2の挿入可能機器の制御装置によって実行されるプログラムは、作業ステップとして、ここでは棚によって提供されたデータに従った測定を実行してもよい。シェイクする工程が始まる前に測定してもよいし、終わった後に測定してもよいように、データは、シェイクする工程が始まったか否か、終了したか否かの情報や、これらに関する時間情報を含むこととしてもよい。
【0020】
第3の好ましい構成(c)において、実験機器は少なくとも第1の挿入可能機器を備え、また、実験ネットワークは少なくともひとつの外部ネットワーク機器を含み、挿入可能機器の挿入位置においてデータ接続を提供するようにネットワークインタフェース装置は構成される。このデータ接続は、実験機器ネットワークの少なくとも2つまたは3つのネットワーク機器の間で行われる。これらネットワーク機器は、実験機器の外部に設置されたネットワーク機器であって、外部ネットワーク機器としても参照され、ネットワークインタフェース装置に接続されたネットワーク機器を少なくともひとつ含み、更に、(i)第1の制御装置、及び/又は、(ii)作業チャンバ内に挿入された挿入可能機器を少なくともひとつ含む。
【0021】
このような構成によれば、外部ネットワーク機器は、特に、同じ実験機器の制御装置と通信することなく、実験装置の作業チャンバ内部に設置された、一または複数の挿入可能機器と通信することが可能となる。例えば、外部ネットワーク機器は、第2の実験機器の第1の制御装置、または、ユーザインタフェース装置であってもよい。ユーザインタフェース装置は第2の実験機器の一部であってもよい。例えば、第1の実験装置の作業チャンバ内の挿入可能機器の一または複数の機能は、第2の実験機器の制御装置、または、(外部)ユーザインタフェース装置によって制御されてもよい。他の例として、第1の実験装置の作業チャンバ内の挿入可能機器によって測定された、実験サンプルの状態データや環境データを、外部ネットワーク機器が受信することとしてもよい。
【0022】
更に、このような構成により、外部ネットワーク機器が第1の制御装置と通信することができるようになり、外部ネットワーク機器が実験機器の一または複数の機能を制御できるようになる。同時に、外部ネットワーク機器と実験機器との間の相互作用が、作業チャンバに挿入される、少なくともひとつの挿入可能機器によって実行される機能から独立していてもよい。例えば、実験機器によって実行される処置が、外部ネットワーク機器によって遠隔制御されてもよい。その一方で、第1の制御装置と少なくともひとつの挿入可能機器との間のデータ通信が、処置から独立して行われてもよいし、処置に従属して行われてもよい。その一方で、外部ネットワーク機器が、少なくともひとつの挿入可能機器とデータ交換を行ってもよいし、行わなくてもよいし、挿入可能機器は作業チャンバに挿入されていてもよい。例えば、第1の制御装置が、挿入可能機器によって実行される、例えば画像データや他の測定データ等のデータ取得の処理を自律的に制御する一方、サンプルの処置の開始及び/又は制御が、外部ネットワーク機器から行われてもよい。
【0023】
他の好ましい実施形態に従った実験機器は、実験機器ネットワークのネットワーク機器が、第1の制御装置と、作業チャンバ内に挿入された少なくともひとつの挿入可能機器とのみを含むように構成されるか、または、実験機器ネットワークのネットワーク機器が、作業チャンバ内に挿入された少なくとも2つの挿入可能機器のみを含むように構成される。例えば、一般に、ネットワークインタフェース装置は、イーサネット接続のように、恒久的にネットワークインタフェース装置に接続される。例えば、外部装置へのデータ接続を提供するためのどのようなインタフェースも取り除くことと、内部装置、即ち、作業チャンバ内に設置された少なくともひとつの挿入可能機器とのデータ接続を提供するためのネットワークインタフェース装置のインタフェースのみを提供することとによって、実験機器ネットワークは、いかなる外部ネットワーク機器もアクセスできないように構成されてもよい。このような構成は、外部実験機器へのデータ接続は要求されないスタンドアロン型の実験機器には十分である。どのような場合であれ、第1の制御装置と、少なくともひとつの挿入可能機器との間のネットワーク接続を用いる技術は、挿入される機器にホットプラグ接続機能を提供し、挿入可能機器の自己構成を可能とするが、これは、例えばCANバスを用いるときのような、他の多くのデータ転送のための技術では可能ではない。
【0024】
実験機器は、実験機器ネットワーク内のデータ交換を用いて、実験サンプルを取り扱うネットワーク機器である。ネットワーク機器であるユーザインタフェース装置は、実験機器ネットワークの一部でもよい。ユーザインタフェース装置は、スタンドアロンのネットワーク機器でもよい。他の実施形態において、ユーザインタフェース装置は、実験機器に機械的に接続されてよく、実験機器の交換可能なモジュールを形成するため、好ましくは、例えば固定機構を用いて、取り外し可能に接続されてよい。ユーザインタフェース装置は、実験機器の一部を形成するように、実験機器と一体化されてもよい。ユーザインタフェース装置がモジュールである、または、機械的に接続される、または、実験機器と一体化される場合、ユーザインタフェース装置は、実験機器の第1の制御装置、及び/又は、実験機器の第1の通信装置を含んでもよい。この場合、第3の制御装置と第1の制御装置は同一の装置であり、好ましくは、第3の通信装置と第1の通信装置は同一の装置である。複数の挿入可能機器、同じ実験機器ネットワークのネットワーク機器でもよい
【0025】
ユーザインタフェース装置は、好ましくは、ネットワークインタフェース装置を備える。
【0026】
他の典型的なシナリオでは、複数の実験機器ネットワークのネットワーク機器、実験機器ネットワークのネットワーク機器である、ユーザインタフェース装置によってアクセスされる。例えば、ひとつまたは複数の実験機器と、ひとつまたは複数の挿入可能機器を含む数のネットワーク機器を用いて処理される、実験サンプルを処理するための世界規模の作業過程を計画及び/又はスケジュールするため、ユーザインタフェース装置は、第1のユーザによって用いられてもよい。ネットワーク機器からユーザインタフェース装置に転送される第1のデータは、ネットワーク機器の利用可能性についての情報を含んでもよい。例えば、第2のユーザによって開始され、各実験機器が少なくとも一時的に利用できないような、現に実行中の作業工程によって、多数の実験機器が占有されてもよい。第1のデータは、タイムスケジュール、及び/又は、例えば、メンテナンス状態、例えば、ピペット、コンテナ、サンプル媒体、溶液、化学薬品等、ネットワーク機器のために必要な消耗品の供給といった、リソース情報に関する、ネットワーク機器の利用可能性についての情報を含んでよい。以下、「第1のデータ」は、好ましくは、外部ネットワーク機器から送信されたデータ、または、外部ネットワーク機器によって受信されたデータである。用語「第2のデータ」は、挿入可能機器と交換されるデータをいい、特に、同じ実験機器の挿入可能機器同士の間で交換されるデータ、および、挿入可能機器と、同じ実験機器の第1の制御装置との間で交換されるデータをいう。
【0027】
更に、実験機器の処置装置によって実行される処置は、実験機器ネットワーク内の第1のデータの交換を含む。ここで、第1のデータは、パラメータ、または、機器によって制御される処置を実行するためのプログラムパラメータを定義してよい。例えば、実験機器は、機器によって制御された処置の間、各処置装置によって実行されるべき処置のステップを定義する第1のデータを用いてもよい。こうしたステップには、自動ピペッティング及び/又は温度調整及び/又は混合及び/又は磁気分離及び/又は遠心分離及び/又は特にUV光の照射及び/又は照明及び/又は実験機器の物理的または化学的な分析を含んでよい。第1のデータは、実験サンプルの処置を特徴づける物理的なパラメータ、例えば、作業チャンバ内の空気を特徴づける物理的なパラメータについての情報を含んでもよく、環境データとも呼ばれる。こうした物理的なパラメータは、実験機器がインキュベータの場合、または、冷蔵庫または冷凍庫のような冷却装置の場合、作業チャンバ内の温度、または、インキュベータと関連がある、湿度及び/又はCO2量を含んでもよい。
【0028】
好ましくは、作業チャンバは、各側面が矩形である直方体として形成される。側面は実質的に平面である壁によって形成されてよい。しかし、作業チャンバは、実質的にシリンダー形状、楕円形状、または、球形状を有してもよい。実験機器は、厳密にひとつの作業チャンバを有してもよいが、実験機器が2または2を超える作業チャンバを有することも好ましい。直方体の作業チャンバの場合、典型的には、前方側面は、少なくともひとつのドアパネルで閉めることができる、少なくともひとつの開口を提供する。ドアパネルは、典型的には、前記少なくともひとつの開口を囲むフレームの境界領域にヒンジで固定される。そうしたインキュベータのチャンバの典型的な大きさは、50から400リットルである。好ましくは、作業チャンバは、金属でできているか、作業チャンバの内部空間を向いた金属面を備える。そうした金属は、例えば、ステンレス鋼のような実質的に非腐食性の金属である。少なくともひとつの壁または各壁の材料は、特にステンレス鋼または銅のような金属またはポリマーからなることとしてよい。
【0029】
作業チャンバは、ひとつまたは複数の棚を保持するための保持フレームを含んでもよい。棚は、作業チャンバ内で利用可能な格納領域を増やして、処置する実験サンプルの数を増やすために用いられる。保持フレームは、作業チャンバと交換可能でもよい。
【0030】
実験機器のネットワークインタフェース装置は、好ましくは、少なくともひとつの挿入可能機器をネットワークインタフェース装置に接続するためのインタフェース装置を備える。インタフェース装置は、好ましくはCat5またはCat6のイーサネットケーブルのようなデータケーブルを、ネットワークインタフェース装置のインタフェース装置に接続するため、基本的にはRJ-45タイプのソケットをひとつまたは複数備えてよい。データケーブルの他端は、挿入位置にある、少なくともひとつの挿入可能機器のインタフェース装置に接続されてもよく、または、接続可能でもよい。また、データケーブルの他端は、少なくともひとつの挿入可能機器のインタフェース装置と恒久的に接続されてよい。少なくともひとつのソケット、またはひとつのソケット、または各ソケットは、挿入位置にある少なくともひとつの挿入可能機器のための電源として動作するように構成されてもよい。挿入可能機器が電力供給を受けるために実験機器に接続されるとき、電流は、データケーブルを介して伝達されてもよいし、専用の電力線を介して伝達されてもよい。
【0031】
好ましくは、ネットワークインタフェース装置は、第1の制御装置と実験機器ネットワークとの間における第1のデータの交換ができるように、第1の通信装置に接続される。通信装置は、好ましくは、例えばイーサネットのような、特定の物理層とデータリンク層の標準を用いて通信するために必要な電子回路を実装したネットワークアダプタを含む。ネットワークアダプタによって、ネットワーク機器は、有線または無線で実験機器ネットワークと通信する。ネットワークアダプタは、好ましくは、物理層およびデータリンク層の装置であり、例えばIEEE 802および類似した実験機器ネットワークのためのネットワーク媒体への物理アクセスと、ネットワークアダプタにユニークに割り当てられた物理アドレスの使用を通じた、低レベルアドレス指定方式を提供する。
【0032】
好ましくは、ネットワークインタフェース装置は、ネットワークスイッチまたはネットワークハブを含むか、ネットワークスイッチまたはネットワークハブである。好ましくは、ネットワークインタフェース装置は、実験機器ネットワークを、好ましくは顧客のイントラネット、会社のイントラネットまたはインターネットのような外部ネットワークと接続するように構成された、ネットワークルータを備える。
【0033】
実験機器は電動である。従って、実験機器のエネルギー消費の一部は、挿入可能機器が電力供給を受けるために実験機器に接続されているとき、挿入位置にある少なくともひとつの挿入可能機器に分配されてよい。好ましくは、実験機器は、前記少なくともひとつの挿入可能機器によって用いられる電力を測定し、制御するための電力管理装置を備える。これにより、前記少なくともひとつの挿入可能機器のエネルギー消費が制御可能となり、及び/又は、前記少なくともひとつの挿入可能機器が作業チャンバ内に放射する廃熱が制御可能となる。後者は、実験機器が、例えば、作業チャンバ内に定められた温度を要求する、インキュベータまたはフリーザであるときに有用である。
【0034】
ネットワークインタフェース装置のインタフェース装置は、典型的には、作業チャンバの前部壁、後部壁または側部壁に、接して配置または統合される。好ましくは、前部壁に対面する、作業チャンバの後部壁に接して配置または統合される。更に好ましくは、インタフェース装置は、作業チャンバの前部壁または側部壁に接して配置または統合される。好ましくは、インタフェース装置は、データ転送ケーブル、または、データ転送および電力供給の兼用ケーブルを接続するためのコネクタを備える。ネットワークインタフェース装置のインタフェース装置は、実験機器のハウジングの前部壁、後部壁または側部壁、好ましくはハウジングの側部壁または前部壁に接して配置または統合されてもよい。
【0035】
例えば、無線伝送または光学データ交換のような無線技術を用いて、実験機器のネットワークインタフェース装置と、少なくともひとつの挿入可能機器との間で、第2のデータを交換することが可能であり、好ましい。ネットワークインタフェース装置は、作業チャンバ内に無線LANを提供するように構成されてよい。この場合、挿入可能機器は、好ましくは、挿入可能機器の通信装置の一部として、無線ネットワークアダプタを有してもよい。
【0036】
好ましくは、実験機器は、挿入可能機器の挿入位置にある、少なくともひとつの挿入可能機器の、存在または不存在、及び/又は、少なくともひとつの位置を見つけるように構成される。従って、ネットワークインタフェース装置は、好ましくはネットワークスイッチであり、特にイーサネットスイッチである。ネットワークスイッチは、ネットワーク機器、特に、挿入可能機器がネットワークスイッチの特定のポートに接続された旨の情報を提供する。好ましくは、作業チャンバ内の予め定められた位置に配置される挿入可能機器は、ネットワークインタフェースアダプタに沿って配置されたポートの地理的な位置に関する、予め定められた情報を用いて、物理アドレスによって識別される、特定のネットワーク装置と、そのネットワーク装置の地理的な位置との間の相互関係を得ることができる。
【0037】
好ましくは、実験機器は、実験機器の作業チャンバ内における、ひとつまたは複数の挿入可能機器の相対位置を表す位置データを判定するように構成される。この判定は、好ましくは、シリアル・ペリフェラル・インタフェース(SPI)を用いたイーサネットスイッチの操作を含む。好ましくは、位置は、識別コード、特に、ネットワークインタフェース装置の各インタフェース装置(特に、コネクタまたはポート)に割り当てられた番号によって表される。本発明に従った実験機器の好ましい実施形態では、SPIを用いることにより、第1の制御装置とネットワークインタフェース装置との間で制御データを交換することができる。制御データはメタデータとも呼ばれる。メタデータとして交換される位置データは、イーサネットスイッチのポートに関する情報を含んでもよい。この情報は、特定の挿入可能機器がイーサネットスイッチに接続されたときに用いられる。制御装置またはイーサネットスイッチは、この情報を、例えば、物理MACアドレスとイーサネットスイッチのイーサネットポート番号とを関連付けるテーブルの形でメモリに格納してもよい。更に、シンプル・ネットワーク・マネジメント・プロトコルまたはテイル・タギングを用いて位置データを判定してもよい。好ましくは、イーサネットスイッチはMicrel(商標)イーサネットスイッチであるか、または、テイル・タギングを用いるスイッチを備える。
【0038】
挿入可能機器は、作業チャンバ内の挿入位置に挿入され、実験機器ネットワーク内での第2のデータの交換を含む、実験サンプルに関連した作業ステップを実行するように構成される。
【0039】
第1の好ましい定義によれば、「作業チャンバに挿入される」という表現は、挿入可能機器は、少なくとも部分的に作業チャンバ内に挿入されることを意味すると解釈される。例えば、挿入可能機器は少なくとも第1部と第2部とを備える。第1部と第2部は、データ交換の目的のため、特にケーブルによって互いに接続されてよい。第1部は、作業チャンバ内、挿入可能機器の挿入位置に挿入されてよく、第2部は、作業チャンバ内、挿入可能機器の挿入位置に挿入されなくてよい。特に、第2部は、作業チャンバの外部、挿入可能機器の挿入位置に配置されてもよい。例えば、第2部は、作業チャンバの外部に配置され、他のチャンバの内部に配置されてよい。この他のチャンバは、第2の作業チャンバ、または、例えば実験機器の周辺に作業チャンバを接続するポートのような、実験機器の隙間の空間でもよい。
【0040】
第2の好ましい定義によれば、「作業チャンバに挿入される」という表現は、挿入可能機器が作業チャンバ内に完全に挿入されることを意味すると解釈される。
【0041】
第3の好ましい定義によれば、「作業チャンバに挿入される」という表現は、挿入可能機器が作業チャンバ内に挿入され、作業チャンバの少なくともひとつのドアパネルまたはすべてのドアパネルが閉じていることを意味すると解釈される。
【0042】
第4の好ましい定義によれば、「作業チャンバに挿入される」という表現は、挿入可能機器は、作業チャンバ内に提供された第2の接続手段と接続するように構成された第1の接続手段を有し、第1および第2の接続手段は、挿入可能機器の挿入位置で、第1および第2の接続手段の接続位置にて接続されることを意味すると解釈される。例えば、第1および第2の接続手段は、嵌め合い式の接続(positive-fit connection)を用いて、及び/又は、挿入可能機器の挿入位置で互いに解除可能にロックされることにより、係合するように構成されてよい。
【0043】
「作業チャンバに挿入される」という表現の定義は、組み合わせて用いられてもよい。可能な組み合わせは、それぞれ、実験機器の好ましい構成となる。例えば、複数の部分を有する挿入可能機器は、部分的に作業チャンバに挿入される一方、ドアパネルは閉じられることは好ましい。これは、ドアパネルまたは作業チャンバを構成する壁パネルに提供されたポートによって、または、ケーブルを、閉じたドアパネルと壁パネルとの間に配置される、変形可能なシール部材に置き換えることによって、達成されてよい。
【0044】
更に、「挿入される」は、挿入可能機器が、作業チャンバから取り外されるとの解釈を含む。例えば、挿入可能機器と作業チャンバとの接続を解除することによって、または、例えば少なくともひとつの挿入可能機器を保持するためのラックのような、作業チャンバ内に配置される部分と、挿入可能機器との接続を解除することによって、取り外される。
【0045】
好ましくは、挿入可能機器は、第2のデータを処理し、及び/又は、作業ステップ、及び/又は、測定装置、及び/又は、実験サンプルに関連した作業ステップを実行する作業装置、及び/又は、挿入位置において、第2の制御装置と実験機器ネットワークとの間で第2のデータを交換するように構成された第2の通信装置を制御するための第2の制御装置を備える。第2の通信装置は、前記制御装置の一部でもよいし、前記制御装置によって実装されてもよい。前記制御装置は集積回路を含んでもよい。
【0046】
挿入可能機器は、データを生成し、及び/又は、格納し、及び/又は、送信し、及び/又は、受信するように構成される。好ましくは、挿入可能機器は、プログラム制御される装置である。実験ネットワーク内の挿入可能機器を一義的に識別することを目的として、挿入可能機器は、例えば識別コードのように識別属性を有することが好ましい。識別属性は、少なくともオンデマンドでデータに含まれてよい。識別コードは、例えば、物理ネットワークセグメントでの通信のためのネットワークインタフェースに割り当てられる、ユニークな識別子である、媒体アクセス制御アドレス(MACアドレス)のような、ユニークな物理アドレスでよい。
【0047】
挿入可能機器は、好ましくは、挿入可能機器を、実験機器のネットワークインタフェース装置に接続するためのインタフェースアセンブリを有する。インタフェースアセンブリは、ケーブルを用いて前記接続を提供するプラグまたはソケットをひとつまたは複数備える。インタフェースアセンブリは、前記接続を提供するためのケーブルをひとつまたは複数備える。代替的にまたは追加的に、インタフェースアセンブリは、無線データ交換を実装するための無線ネットワークアダプタであるか、無線ネットワークアダプタを含んでもよい。
【0048】
挿入可能機器は、可能なすべての測定装置及び/又は作業装置及び/又は第2の制御装置及び/又は第2の通信装置の動作を含む、挿入可能機器の機能に電力を供給するためのバッテリを含んでもよい。
【0049】
挿入可能機器は、好ましくは、作業チャンパ内の少なくともひとつの測定パラメータを測定するように構成され、作業ステップの測定を実行する、少なくともひとつの測定装置を有する。この目的のため、測定装置は、測定パラメータを測定するための少なくともひとつのセンサを含んでよい。好ましくは、挿入可能機器は測定装置である。少なくともひとつの測定パラメータを用いて、挿入可能機器は、第2のデータを生成してよい。好ましくは、測定パラメータは、作業チャンバ内に載置された少なくともひとつの実験サンプルを特徴づけ、及び/又は、例えば、作業チャンバの壁の温度または雰囲気の温度、湿度、作業チャンバ内の例えばCO2のガス濃度等、作業チャンバまたは作業チャンバ内の雰囲気を特徴づける。
【0050】
測定パラメータは、例えば、サンプルの温度、体積、放射または透過した光の強度、pH値のような、ひとつまたは複数の実験サンプルの物理特性を特徴づけてよい。
【0051】
好ましい実施形態において、測定装置は、特にCCDまたはCMOSセンサといったイメージセンサを備える。この場合、第2のデータは、静止画または動画データであり、更なる評価のため、実験機器ネットワークに提供される。イメージセンサによって収集されたデータセットは、「画像」と呼ばれる。好ましくは、データセットは、イメージセンサによって、イメージセンサの感光素子の異なる位置に記録された、光の強度の値を含む。画像は、細胞の実際の光学的な画像を含んでもよいが、本発明に関する用語「画像」の解釈に従った、すべての画像に当てはまるものではない。カメラは、目標エリアに焦点を合わせる光学システムを備えてもよい。光学システムは、顕微鏡システムでもよい。光学システムは、固定焦点または可変焦点を有してよい。こうした光学測定装置は、特に、例えば、粒子または細胞を数えることによる、及び/又は、粒子または細胞の体積の判定による、静止画データの量の評価のため、生きている細胞またはバクテリアの成長をモニターするために用いてよい。
【0052】
好ましい実施形態において、挿入可能機器は、光学測定装置を備える光学カメラ機器である。
【0053】
好ましくは、挿入可能機器は、少なくともひとつの実験サンプルを搬送するための搬送装置であり、作業チャンバは、少なくともひとつの搬送装置を受容するように構成される。搬送装置は、作業チャンバに押し込まれ、作業チャンバから引き出される引き出し、サンプルコンテナ及び/又は他の実験装置を保持するためのフレーム、特に、ローラーボトルのためのフレームであってもよい。好ましくは、搬送装置は、作業チャンバ内に水平に配置され、搭載される棚面を有する棚である。
【0054】
好ましい実施形態において、挿入可能機器は、作業チャンバに挿入されて、実験サンプル、および、好ましくは他のサンプル処理器具及び/又は装置のための支持体として作用する棚である。好ましくは、棚は、その棚に恒久的に搭載される、または、その棚に接続可能であり、第2のデータを生成する、少なくともひとつの測定装置を含む。棚は、第2の制御装置、及び/又は、第2の通信装置を含んでよい。更に、棚は、実験機器ネットワーク内での第2のデータの交換を含む、実験サンプルに関連した作業ステップを実行するように構成された、作業装置を含んでもよい。追加の挿入可能機器を第2のネットワークインタフェース装置を介して実験機器ネットワークに接続できるようにするため、棚は、例えばネットワークスイッチまたはハブのような第2のネットワークインタフェース装置を備えてもよい。
【0055】
挿入可能機器、特に、棚の作業装置は、作業チャンバ内の動作部の動作を生成するためのムーブメント機構を備えてもよい。この場合、動作の生成は、挿入可能機器によって実行される作業ステップである。ムーブメント機構は電動モータを含んでもよい。こうしたムーブメント機構は、例えば、動作部としてロータを用いて、作業チャンバ内の流体の流れを動かし、及び/又は、加熱し、及び/又は、冷却するためのロータでもよく、こうしたロータを備えてもよい。例えば、空気を動かすためにベンチレータが設けられてもよく、液体を動かすためにポンプが設けられてもよい。更に、ムーブメント機構は、可動プラットフォームの振動動作を発生するための駆動機構でもよく、こうした駆動機構を含んでもよい。可動プラットフォームは、実験サンプルを搬送するための支持プラットフォームでもよい。こうした振動プラットフォームは、サンプル溶液を混合するため、または、実験サンプルを揺動するために用いてもよい。駆動機構は、駆動力を発生するための電磁コイルを含んでもよい。更に、ムーブメント機構は、攪拌される実験サンプルと共にユーザによってサンプルコンテナ内に配置されるマグネット攪拌棒を回すための磁力駆動機構でもよく、こうした磁力駆動機構を含んでもよい。
【0056】
作業装置、特に、ムーブメント機構は、挿入可能機器の第2の制御装置によって制御されてよい。作業装置、特に、ムーブメント機構の動作に含まれる第2のデータは、作業装置、特に、駆動電圧、電流、または出力を制御するための制御データを含んでよい。第2の制御装置は、作業装置の電力需要を測定するように構成されてよい。電力需要に関する情報は、第2のデータとして供給されてよい。
【0057】
挿入可能機器、または、第2の制御装置は、データ処理ユニット、及び/又は、第2のデータを格納するためのデータストレージ装置を含んでもよい。第2の通信装置は、好ましくは、データストレージ装置から第2のデータを受け取って、第2のデータを実験機器ネットワーク、つまり、実験機器ネットワークに接続された任意のネットワーク機器に提供するように構成される。
【0058】
また、作業装置は、少なくとも作業チャンバの一部に、特にUV光を照射するランプを含んでもよく、特に、作業チャンバの消毒のため、または、作業チャンバ内に挿入された、ひとつまたは複数の他の挿入可能機器に照射するために有用である。また、作業装置は、少なくとも作業チャンバの一部、特に実験サンプルを照らすためのランプを含んでもよい。光で照らすことにより、実験サンプル内での光反応性の化学反応を開始または促進してもよく、実験サンプルを光学的に測定またはモニターするために必要な光を提供してもよく、または、光エネルギーを吸収して熱に変換することにより、ひとつまたは複数の実験サンプルの温度を変えてもよい。
【0059】
好ましくは、挿入可能機器は、実験機器のひとつまたは複数のパラメータ、特に、実験機器の処置装置の動作のためのパラメータの較正を支援するための較正装置である。例えば、冷凍機やインキュベータのような実験機器の処置装置は、例えば、少なくとも、予め定められたまたはユーザによって定義された作業チャンバ内の温度を提供するように構成されてよい。これは、たいてい、実験機器の制御装置に関する、ひとつまたは複数の制御ループシステムによって達成される。制御ループシステムは、開ループシステムでも閉ループシステムでもよく、後者はフィードバックループシステムとも呼ばれる。フィードバックループシステムにおいて、ひとつまたは複数のセンサ、ひとつまたは複数の制御アルゴリズム、および、ひとつまたは複数のアクチュエータを含む制御ループは、変数を、設定値または参照値に調整するように構成される。実験サンプルの処置として、温度調整を実装するため、フィードバックループシステムのアクチュエータは、温度調整装置であり、例えば、加熱及び/又は冷却装置であり、例えばペルチェ素子であり、センサは、作業チャンバ内に熱的に接触して設置された温度センサである。センサの精度は、実験機器のパフォーマンスに影響する。このため、較正は、典型的にはメンテナンス技術者によって用いられて、センサのパフォーマンスのエラーまたはドリフトを補償する。較正装置である挿入可能機器は、好ましくは、実験システムの制御装置の制御ループシステム内で用いられているセンサよりも、信頼性があり、高精度なセンサを含む。ひとつの較正装置は、必要なときに用いられて、異なる実験機器のために用いることができるため、こうしたソリューションは効率がよい。
【0060】
挿入可能機器、特に、較正装置は、好ましくはケーブルまたはケーブル束によって互いに接続される、第1部および第2部を少なくとも有することが好ましい。第1部は、作業チャンバ内に挿入され、第2部は、挿入可能機器の挿入位置の作業チャンバに挿入されない。これにより、作業チャンバ内の雰囲気の最小限の干渉が達成される。
【0061】
また、本発明は、少なくともひとつのネットワーク機器、特に、本発明に従った、少なくともひとつの実験機器、及び/又は、本発明に従った実験機器の作業チャンバに挿入され、前記作業チャンバから取り外されるように構成され、実験機器ネットワーク内で交換される第2のデータを用いて実験サンプルに関する作業ステップを実行するように構成された、少なくともひとつの挿入可能機器を備える、実験機器ネットワークに関する。少なくともひとつの実験機器、および、少なくともひとつの挿入可能機器は、実験機器ネットワークを用いて接続されて、少なくともひとつの挿入可能装置の挿入位置において、特に、第1及び/又は第2のデータのデータ交換が可能である。好ましくは、実験機器ネットワークはイーサネットネットワークを用いる。
【0062】
好ましくは、実験機器ネットワーク、特に実験機器、特にネットワークインタフェース装置は、ネットワークルータを備え、実験機器ネットワークを、好ましくはインターネットのような外部ネットワークに接続する。
【0063】
特に、実験機器または挿入可能機器のようなネットワーク機器をアドレス指定する目的のため、好ましくは、実験機器ネットワークは、実験機器ネットワークに接続された各ネットワーク機器に割り当てられたリンク・ローカルアドレス、好ましくは、イーサネットネットワークのリンク・ローカルIPアドレスを有するように構成される。IPv4リンク・ローカルアドレスの動的構成は、IPv4を用いるときは好ましくはRFC3927に従って、IPv6を用いるときは好ましくはRFC7404に従って提供される。
【0064】
好ましくは、実験機器ネットワーク、及び/又は、実験機器は、少なくともひとつの仮想LAN(Virtual Local Area Network, VLAN)、特に、ネットワーク機器、特に、少なくともひとつの実験機器、及び/又は、少なくともひとつの挿入可能機器を接続する内部仮想LANを実装するように構成されたネットワークルータおよびネットワークスイッチを含む。ネットワークルータおよびネットワークスイッチは、好ましくは、外部ネットワークに対し、内部仮想LANによって接続されたネットワーク機器を隠す外部仮想LANを実装するように構成される。
【0065】
また、本発明は、本発明に従った少なくともひとつの実験機器、および、少なくともひとつの挿入可能機器を備える実験機器ネットワークを用いて、実験サンプルに対する作業を行う方法に関する。挿入可能機器は、実験機器ネットワーク内での第2のデータの交換を含む、実験サンプルに関する作業ステップを実行するように構成される。本方法は、少なくともひとつの挿入可能機器を、少なくともひとつの実験機器の作業チャンバ内に設置するステップと、前記少なくともひとつの挿入可能機器を前記少なくともひとつの実験機器のネットワークインタフェース装置に接続して、前記少なくともひとつの挿入可能機器と実験機器ネットワークとの間のデータ交換を可能にするステップとを含む。更に、本発明に従った方法のオプショナルで好ましい実施形態は、本発明に従った実験機器と実験機器ネットワークと、その好ましい実施形態についての説明から導かれる。
【0066】
実験機器という用語は、特に、少なくともひとつの実験サンプルの機器制御された処置のためと、実験室内での使用のために具体化された装置を意味する。この実験室は、特に、化学的、生物学的、生化学的、医学的または法医学的な実験室である。こうした実験室は、実験サンプルの調査及び/又は分析を行うが、実験サンプルを用いた製品の製造、または、実験サンプルの製造も行う。
【0067】
実験機器は、好ましくは、以下の実験機器であり、及び/又は、好ましくは少なくともひとつの以下の実験機器として具現化される:実験インキュベータ、本発明の説明の範囲内で「インキュベータ」とも呼ばれる;実験冷凍機、本発明の説明の範囲内で「冷凍機」とも呼ばれる;サーモサイクラ、本発明の説明の範囲内で「サイクラ」とも呼ばれる;実験サンプルシェーカ、本発明の説明の範囲内で「シェーカ」とも呼ばれる;実験ミキサ、混合器とも呼ばれる;液体サンプルを処置する実験マシン、特に、ピペッティングマシン。
【0068】
本発明の好ましい実施形態では、実験機器は実験インキュベータである。実験インキュベータは、様々な生物学的な発達および成長過程のための制御された気候条件を設定、維持することができる機器である。実験インキュベータは、インキュベータ空間内のガス及び/又は湿度及び/又は温度条件を調整しながら、微気候を設定、維持するように働く。この処置は、時間に依存してもよい。
【0069】
本発明に関し、実験インキュベータは、新生児インキュベータ、即ち、新生児に好適な環境条件を維持するために用いる装置ではない。新生児インキュベータは、異なる技術分野に関し、本発明に関連しない。
【0070】
実験インキュベータ、特に、実験インキュベータの処置装置は、特に、タイマー、特にタイマースイッチ、及び/又は、加熱/冷却装置、および、好ましくは、インキュベータ空間に供給される適切なガス、特に新鮮な空気を調整する設定、及び/又は、実験インキュベータのインキュベータ空間内のガスの組成、特に、CO2及び/又はO2ガス含有量のための設定装置、及び/又は、実験インキュベータのインキュベータ空間内の湿度を設定するための設定装置を備えてもよい。
【0071】
実験インキュベータ、特に、実験インキュベータの処置装置は、特に、インキュベータの少なくともひとつの作業チャンバを形成する、少なくともひとつのインキュベータチャンバ、更に好ましくは、少なくともひとつの加熱/冷却装置がアクチュエータとして割り当てられ、少なくともひとつの温度測定装置が測定部材として割り当てられた、少なくともひとつの制御ループを有する制御装置を備える。インキュベータ内の温度は制御システムによって調整される。
【0072】
CO2インキュベータは、特に、動物または人間の細胞を培養するために働く。インキュベータは、少なくともひとつの実験サンプルを回転するための回転装置、及び/又は、少なくともひとつの実験サンプルを揺動または動かすためのシェーカ装置を有してもよい。
【0073】
少なくともひとつの実験サンプルの機器制御処置は、前記処置の対象となる少なくともひとつのサンプルと共に、実験インキュベータ内の気候処置に対応してもよい。好ましくは、第1のデータは、パラメータ、特にプログラムパラメータ、特にユーザパラメータを含み、気候処置に影響を与えるために用いられる。第1のデータは、特に、少なくともひとつのサンプルが培養されるインキュベータ空間の温度、インキュベータ内部でのCO2及び/又はO2分圧、インキュベータ内部の湿度、及び/又は、複数のステップを含む、インキュベーション処置プログラムの進捗、特に、シーケンスに影響を与えるまたは明示する少なくともひとつの進捗パラメータを示す。
【0074】
作業チャンバ、ここではインキュベータチャンバは、典型的には、各側面が矩形である直方体によって形成される。しかし、作業チャンバは、シリンダー形状、楕円形状または球形状を実質的に有してもよい。前部側面は、典型的には、少なくともひとつの開口を提供する。開口は、少なくともひとつのドアパネルで閉じることができ、ドアパネルは、典型的には、その少なくともひとつの開口を囲むフレームの境界領域にヒンジ固定される。こうしたインキュベータチャンバの典型的な大きさは、50から400リットルである。
【0075】
好ましい実施形態において、本発明に従った実験インキュベータの挿入可能機器は、搬送装置であり、特に、棚である。
【0076】
インキュベータのネットワークインタフェース装置は、好ましくは、少なくともひとつの挿入可能機器をネットワークインタフェース装置に接続するためのインタフェース装置を備える。典型的には、インタフェース装置は、作業チャンバの側面に接触して、または、側面と一体化して配置される。この側面は、好ましくは、前部側面に向き合う後部側面である。更に、好ましくは、インタフェース装置は、作業チャンバの前部側面または側面と接触してまたは一体化して配置される。
【0077】
実験冷凍機は、調整された温度、特に、-18℃から-50℃の冷凍範囲、または、-50℃から-90℃の超冷凍範囲の冷凍室の中に少なくともひとつの実験サンプルを格納するために働く。特に、実験冷凍機は、特に0℃から10℃または-10℃から10℃の範囲の温度に冷却するために用いられる冷蔵庫ではない。
【0078】
実験冷凍機、特に、実験冷凍機の処置装置は、特に、少なくともひとつの冷却装置と、少なくともひとつの制御ループを有する、少なくともひとつの調整装置とを備える。制御ループに対し、少なくともひとつの冷却装置は、アクチュエータとして割り当てられ、少なくともひとつの温度測定装置が測定部材として割り当てられる。
【0079】
実験冷凍機、特に、実験冷凍機の処置装置は、特に、温度を測定するための監視測定装置、及び/又は、特に、少なくともひとつのアラーム装置を備える。冷凍庫内で測定された温度が、許容された温度範囲から逸脱すると、アラーム装置は、アラーム信号を発する。
【0080】
実験冷凍機、特に、実験冷凍機の処置装置は、特に、情報を読み出すための情報リーダを備える。この情報は、品物に接続可能な情報媒体に含めることができる。この品物は、特に、少なくともひとつの実験サンプルを収容することができるサンプルコンテナでもよい。情報媒体は、特に、RFIDチップまたは他の識別上の特徴、例えばバーコード、データマトリクスコード、QRコード(登録商標)を備える。これら識別上の特徴は、適切な方法によって読み出し可能である。
【0081】
少なくともひとつの実験サンプルの機器制御処置は、少なくともひとつのサンプルと共に、実験冷凍機内でそのサンプルを対象として行う低温処置に対応する。可能性があるパラメータ、特にプログラムパラメータ、特に低温処置に影響を与えるために用いられるユーザパラメータは、特に、少なくともひとつのサンプルが冷凍される冷凍室内の温度、及び/又は、好ましくは、情報媒体と共に提供される品物が、ユーザから実験冷凍機の中に移されたときに実行される、情報読み出し処理を示す。こうしたパラメータは、第1のデータを形成してもよく、第1のデータに含まれてもよい。
【0082】
好ましくは、実験冷凍機の作業チャンバは、冷凍室である。挿入可能機器は、好ましくは、搬送装置、特に、棚である。
【0083】
サーモサイクラは、時間的に連続して、少なくともひとつのサンプルの温度を、予め定められた温度に設定し、予め定められた期間の間、前記サンプルをこの温度レベルに維持することができる機器である。この温度制御の進行は周期的である。つまり、予め定められた温度サイクル、即ち、少なくとも2つの温度レベルのシーケンスは、繰り返し実行される。この方法は、特に、ポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction, PRC)を実行するために実行される。これに関連して、サーモサイクラは、PCRブロックとも呼ばれる。
【0084】
サーモサイクラ、特に、サーモサイクラの処置装置は、好ましくは、サーモブロックを有する。サーモブロックは、熱伝導材料からなるサンプルホルダーであり、通常は金属を含む材料または金属からなり、特に、アルミニウムまたは銀からなる。サンプルホルダーは、サーモサイクラの少なくともひとつの加熱/冷却装置、特にペルチェ素子によって接触される接触面を備える。
【0085】
サーモサイクラ、特に、サーモサイクラの処置装置は、少なくともひとつの制御ループを有する調整装置を備える。制御ループでは、少なくともひとつの加熱/冷却装置がアクチュエータとして割り当てられ、少なくともひとつの温度測定装置が測定部材として割り当てられる。温度は、制御システムによって、ひとつの温度レベルに調整される。サーモサイクラの冷却体、特に、サーモサイクラの処置装置の冷却体は、サーモサイクラの一部を冷却するため、特に、ペルチェ素子を冷却するために動作する。サーモサイクラ、特に、サーモサイクラの処置装置は、更に加熱/冷却素子を備えてもよい。
【0086】
サーモサイクラ、特に、サーモサイクラの処置装置は、好ましくは温度サイクルを設定するための時間パラメータを制御するためのタイマー装置を備える。少なくともひとつの実験サンプルの機器制御処置は、温度循環処置の対象である少なくともひとつのサンプルと共に、サーモサイクラ内のその温度循環処置に対応する。可能性があるパラメータ、特にプログラムパラメータ、特に温度循環処置に影響を与えるために用いられるユーザパラメータは、特に、温度レベルの温度、温度レベルの期間、更なる加熱及び/又は冷却素子の制御、及び/又は、温度レベルまたはサイクルの数、及び/又は、複数のステップを含む、温度管理プログラムの進捗、特にシーケンスに対して、影響を与えるまたは進捗を示す、少なくともひとつの進捗パラメータを示す。こうしたパラメータは、第1のデータを形成してもよく、第1のデータに含まれてもよい。
【0087】
サーモサイクラは、閉じた位置にあるとき、カバーした空間内の実験サンプルを含むサーモブロックをカバーする、可動カバーを含む。これにより、例えば、温度のかく乱またはサンプルの汚染に至る恐れがある、外部の影響から空間を保護する。挿入可能機器は、サーモブロックでもよい。作業チャンバはカバーされた空間によって形成され、サーモブロックは、カバーが開いた位置にあるとき、作業チャンバから取り外し可能である。
【0088】
実験シェーカは、実験サンプルを動かすため、特に、複数の構成物質を備える実験サンプルを混合するために動作する。実験シェーカには異なる形態があり、特に、オーバヘッドシェーカまたはフラットベッドシェーカがある。実験シェーカは、少なくともひとつの実験サンプルの温度を制御するための温度制御機能を備えてもよく、特に、制御された気候条件の下で少なくともひとつの実験サンプルを培養するための培養機能を備えてもよい。実験シェーカ、特に、実験シェーカの処置装置は、特に、例えばプラットフォームまたはサンプルラックを保持するサンプルコンテナホルダーに対して、周期的な振動動作を実行するように構成されてよい。
【0089】
実験シェーカ、特に、実験シェーカの処置装置は、特に、動作を駆動する駆動部を備え、特に、シェーカ処置の設定の時間パラメータを制御可能にするためのタイマー装置を備え、特に、少なくともひとつの加熱/冷却装置と、少なくともひとつの加熱/冷却装置がアクチュエータとして割り当てられ、少なくともひとつの温度測定装置が測定部材として割り当てられた制御ループを少なくともひとつ有する制御装置を少なくともひとつ備える。少なくともひとつの実験サンプルの機器制御処置は、実験シェーカでのシェーカ処理の対象である少なくともひとつのサンプルと共に、そのシェーカ処理に対応する。可能性があるパラメータ、特にプログラムパラメータ、特にシェーカの処置に影響を与えるユーザパラメータは、特に、運動強度、特にシェーカ処理の間の期間の振動駆動の場合の運動周期を示す 及び/又は、進捗、特に複数のステップからなるシェーカ処理プログラムのシーケンスに影響を与えるか又は示す少なくとも1つの進捗パラメータを示す。パラメータは、第1のデータを形成してもよく、第1のデータに含まれてもよい。実験シェーカは、実験サンプルを収容するための作業チャンバを含む。実験シェーカの挿入可能機器は、搬送装置でもよい。
【0090】
混合装置とも呼ばれる実験ミキサは、実験シェーカと同様に、実験サンプルを動かすため、特に、複数の構成物質を備える実験サンプルを混合するために動作する。実験シェーカと比較すると、実験ミキサは、より高い周波数での動作、特に、より高い回転速度での動作を可能とする。実験ミキサ、特に、実験ミキサの処置装置は、特に、例えばプラットフォームまたはサンプルラックのようなサンプルコンテナホルダーに対して、周期的な振動操作を実行するように構成される。
【0091】
実験ミキサ、特に、実験ミキサの処置装置は、特に、動作を駆動する駆動部を備え、特に、混合処置の設定の時間パラメータを制御可能にするためのタイマー装置を備え、特に、少なくともひとつの加熱/冷却装置と、少なくともひとつの加熱/冷却装置がアクチュエータとして割り当てられ、少なくともひとつの温度測定装置が測定部材として割り当てられた制御ループを少なくともひとつ有する制御装置を少なくともひとつ備える。少なくともひとつの実験サンプルの機器制御処置は、実験ミキサでの混合処理の対象である少なくともひとつのサンプルと共に、その混合処理に対応する。可能性があるパラメータ、特にプログラムパラメータ、特に混合処理に影響を与えるために用いられるユーザパラメータは、特に、混合処置の間の時間期間の運動強度、特に、振動駆動の場合の動作周波数、及び/又は、複数のステップを含む、混合処置プログラムの進捗、特に、シーケンスに影響するまたは進捗を表す、少なくともひとつの進捗パラメータを表す。前記パラメータは、第1のデータを形成してもよく、第1のデータに含まれてもよい。実験ミキサは、実験サンプルを収容するための作業チャンバを含む。実験ミキサの挿入可能機器は、搬送装置でもよい。
【0092】
流体サンプルを処置するための実験マシン、特に、自動化されたピペッティングマシンは、流体サンプルのプログラム制御された処置のために動作する。実験マシンは、実験機器でもよく、少なくともひとつの前述のタイプの実験機器を備えてもよく、及び/又は、前述の実験機器によって実行可能な、少なくともひとつ、複数またはすべての処置を実行するように具現化されてもよい。
【0093】
実験マシンは、少なくともひとつの実験サンプルの、自動的でプログラム制御された処置のための処置装置を備える。処置は、少なくとも一部がユーザによって選択された、複数のプログラムパラメータを用いることによって制御される。処理の中で、サンプルは、例えば、実験マシンまたは実験マシンの処置装置によって、動かされまたは移動されてもよい。可動サンプルコンテナ内で移送されることによって、または、チューブシステム、毛細管、ピペット先端を介した誘導によって、サンプルの動きはもたらされてもよい。ここで、液体サンプルは、特に、吸引、即ち、ピペッティングによって輸送されてもよいし、より一般的には、圧力差の適用によって輸送されてもよい。
【0094】
例として、サンプルの処置によって、サンプルは分割または希釈される。サンプルの内容は解析されるか、または、例えば化学反応を経由して、特にサンプルを用いて、新しい内容が生成される。これに関連して、特に、DNAまたはRNAまたはこれらの構成物質を処置および分析して、実験マシンは、適切な期間内に大量の情報を得る際に、または、そうしたサンプルを大量に分析する際に役に立つ。通常、実験マシンのこの処置装置は、ワークステーションを有するワークトップを備え、サンプルは様々な方法で処置され、格納される。
【0095】
例えば、液体サンプルを様々な位置の間、特に、サンプルコンテナ間で移動させる目的で、通常、処置装置は、機器制御された移動装置、および、例えばピペッティングシステムを備える機器制御された流体輸送装置を備える。様々なステーションにおける、サンプルの移送およびサンプルの処置は、どちらも、機器制御された方法によって実行され、特に、プログラム制御された方法によって実行される。そして、好ましくは、処置は、少なくとも一部または完全に自動化される。サンプル処理のために必要なパラメータは、すべて、第1のデータを形成してもよく、第1のデータに含まれてもよい。実験マシンは、実験サンプルを収容するための作業チャンバを含む。実験シェーカの挿入可能機器は、搬送装置でもよく、特に、棚でもよい。
【0096】
実験マシンは、更なる処置のタイプを実行するために用いられるように、修正されてもよい。これは、ファイル及び/又はプログラムまたはこれに必要なプログラムの構成要素、特に、処置タイプにマップされたプログラムモジュールによって達成され、その後、実験マシン、特に、そのストレージ装置に転送される。
【0097】
実験サンプルは、実験室で処置されるサンプルである。実験サンプルという用語の代わりに、本発明の説明では用語「サンプル」も用いられる。サンプルは流体でもよい。サンプルは、液体、ジェル状、粉末または固体でもよく、また、これらの相を備えてもよい。サンプルは、これらの相の混合物でもよく、特に、液体混合物、溶液、例えば細胞懸濁液等の懸濁液、乳液または分散系でもよい。溶液は、少なくとも2つの物質の均一な混合物である。液体サンプルは、通常、生物学、化学または医学実験室で処置されるタイプのサンプルである。液体サンプルは、分析試料、試薬、媒質、緩衝液等でもよい。溶液は、ひとつまたは複数の溶解した固体、液体またはガス状物質(溶質)を有し、更に、好ましくは、特に、溶液の体積のより大きな部分または最大の部分を形成する液体溶媒を備える。溶媒それ自身が溶液でもよい。
【0098】
サンプルコンテナは、単一のサンプルのみを収容する独立コンテナでもよく、互いに接続された複数の独立コンテナが配置された、マルチプルコンテナでもよい。
【0099】
単一のコンテナは、閉じていないコンテナでもよいし、密閉可能なコンテナでもよい。密閉可能なコンテナの場合、カバー要素、特にシーリングキャップが用意される。カバー要素は、例えば、ヒンジ固定されたカバー、または、ヒンジ固定された閉鎖キャップとして、コンテナにしっかりと接続されてもよいし、分離した構成要素として用いられてもよい。
【0100】
マルチプルコンテナにおいて、複数の単一コンテナは、好ましくは、お互いに固定されて配置され、特に、グリッドパターンの交点に従って配置される。これにより、位置への自動化アプローチ、特に、サンプルの個別のアドレス指定が単純化される。マルチプルコンテナは、独立コンテナが板状の配列になるように接続された、板状要素として具現化されてもよい。独立コンテナは、板のくぼみとして具現化されてもよいし、蜘蛛の巣状の要素によって相互接続されてもよい。板状要素は、単一のコンテナが保持されるフレーム要素を有してもよい。これらコンポーネント間の接続は、インテグラル・コネクション、即ち、粘着力がある接続、及び/又は、一般的な射出成型処理によって生成された接続でもよいし、圧力ばめ及び/又は形状ばめで生成されてもよい。特に、板状要素はマイクロタイタープレートでもよい。
【0101】
マルチプルコンテナは、複数(2から10)の単一コンテナを備えてもよい。更に、マルチプルコンテナは、(10を超える)多重度、典型的には、12、16、24、32、48、64、96、384、1536の単一コンテナを有してもよい。特に、マルチプルコンテナは、マイクロタイタープレートでもよい。マイクロタイタープレートは、ひとつまたは複数の業界標準、特に、業界標準ANSI/SBS 1-2004, ANSI/SBS 2-2004, ANSI/SBS 3-2004, ANSI/SBS 4-2004に従って具現化してもよい。
【0102】
輸送コンテナまたはサンプルコンテナによって保持することができる、サンプルの最大の体積は、典型的には、0.01mlから100mlの間であり、特に、選択した輸送コンテナまたはサンプルベゼルのタイプによって、10-100μl、100-500μl、0.5-5ml、5-25ml、50-100mlである。
【0103】
ひとつまたは複数の実験サンプルの処置は、以下に特定されるひとつまたは複数のプロセスを、特に同時にまたは連続して含んでもよい:
・特に、移動装置による、重力の作用の下、及び/又は、実験マシンによってもたらされる力の下での実験サンプルの移動;
・サンプルの非接触的(非侵襲的)物理処置、特に、熱的処置、特に、加熱及び/又は冷却、特に、サンプルの温度の制御;または、サンプルの冷凍または解凍、または、例えば蒸発、凝結等のサンプルの相転移を誘導する別の熱的誘導;サンプルの磁気処置;サンプルの光学的処置、特に、サンプルへの放射線、特に光、特に可視光、赤外線またはUV光の照射、または、そうした放射線、特に蛍光のこのサンプルからの検出;磁性体を用いたサンプルの磁気処置、特に、磁性体からの磁気分離、特に、サンプルの液相からの「電磁ビーズ」の分離;例えば、サンプルの混合、または、サンプル内の物質の分離、または、サンプルからまたはサンプルへの磁性体の移動を目的とする、それぞれの場合における、サンプルの移動、即ち、サンプルの機械的処置、特にシェイキング、ローテイティング、オシレイティング、バイブレーティング、遠心分離機による処置、特に超音波による音響処置;
・サンプルへの侵襲的物理処置、即ち、サンプルへの機械的処置の実行:攪拌具、例えば攪拌棒またはマグネティックステアリングバーのサンプルへの導入および攪拌、音響または超音波処置のためのソノトロードの導入、輸送手段、特に、サンプルへの輸送コンテナ、例えばディスペンサーチップまたはピペット先端または中空針またはチューブの導入;サンプルへの他の補助的な手段の追加;
・サンプルの化学的、生化学的または生物医学的処置:化学物質(例えば反応物質、試薬、溶媒、溶質)、生物化学物質(例えば生化学高分子、例えばDNA、DNA構成物質;薬学的活性成分)、または生物医学物質(血液、血清、細胞培地)の添加;
・サンプルの格納、特に、プログラム制御された方法で定められた期間内に、特に、特定の物理条件、例えば特定のひとつまたは複数の温度、温度の変化、特に、温度変化の繰り返し、例えば、周期的及び/又は定期的に繰り返される温度変化、及び/又は、周囲の圧力の設定、例えば、陽圧または陰圧、特に真空の適用、及び/又は、定められた周囲の雰囲気、例えば保護ガスまたは特定の湿度の設定、特定の放射線条件、例えば可視光からシールドされた暗闇の中、または、定められた放射線の中;
・サンプルの測定または分析、特に、サンプルの非侵襲的及び/又は侵襲的処置、特に、少なくともひとつまたは複数の化学的、物理的、生化学的及び/又は医学的なサンプルの属性を測定するため、特に、細胞カウンタを用いた細胞の計数のため;
・サンプルの取り扱い、特に、サンプルの少なくともひとつの属性の変化、特に、サンプルの非侵襲的及び/又は侵襲的処理を用いるもの。
【0104】
処置は、特に、少なくともひとつのプログラムパラメータを用いて、プログラム制御される。
【0105】
特に、この処置は、処置装置を用いた実験サンプルの処置を決定する、少なくともひとつの制御パラメータに従って行われる。制御パラメータは、期間、時刻、特定のサンプルの体積、及び/又は、体積の測定、特定のサンプル温度等を設定してよい。特定の輸送ヘッド、特定のタイプの輸送コンテナ、特定のタイプのサンプルコンテナ、ひとつまたは複数の独立サンプル、または、ワークスペース内のこれらのコンポーネントの特定の位置のひとつまたは複数の独立サンプルの自動使用に、制御パラメータは関連してもよい。制御パラメータは、独立サンプルの処置に関連してよく、また、複数または多数のサンプルの処置に関連してもよい。
【0106】
ユーザは、第1のデータの入力、または、実験機器からの第1のデータの取得を目的として、ユーザインタフェース装置を用いて、実験機器と第1のデータの交換を確立することができる。各ユーザは、同じユーザインタフェース装置を用いてもよいし、複数のユーザは、異なるユーザインタフェース装置を用いて、実験機器との第1のデータ交換を確立してもよい。ユーザインタフェース装置は、実験機器のコンポーネントでもよい。ユーザインタフェース装置は、実験機器の制御装置、特に、第1の制御装置のコンポーネントでもよい。
【0107】
ユーザインタフェース装置は、それぞれの場合において、第3の制御装置とも呼ばれる、ユーザインタフェース装置のための制御装置、第3の通信装置とも呼ばれ、インタフェース装置を用いて実験機器とのデータ接続を確立するための、ユーザインタフェース装置の通信装置、ユーザのユーザ入力を取得するための入力装置、特に、ユーザに対して情報を出力するための、指示ユニット及び/又は表示装置である、出力装置を備えることが好ましい。ここで、ユーザインタフェース装置の制御装置は、好ましくは、第3の制御プログラムとも呼ばれる、制御プログラムを実行することによって、第1のデータ接続を介して実験機器とデータを交換するように構成されることが好ましい。
【0108】
用語「機器制御処置」は、少なくともひとつの実験サンプルの処置が、実験機器によって、少なくとも部分的に制御され、特に、実行されることを意味する。処置が実験機器によって制御及び/又は実行される範囲において、この点における前記処置は、特に、ユーザによって制御及び/又は実行されず、特に、ユーザによって手作業で制御及び/又は実行されない。
【0109】
更に、機器制御処置は、少なくともひとつのユーザ入力の機能として、実験機器によって少なくとも部分的に制御され、特に実行される処置を意味すると理解されるのが好ましい。ユーザ入力は、処置の開始前及び/又は処置の間に発生してもよい。ユーザ入力は、好ましくは実験機器のコンポーネントであり、または、実験機器から分離して提供されたユーザインタフェース装置と、実験機器の制御装置及び/又はアクセス制御装置の制御装置に接続された信号とを用いて発生するのが好ましい。ユーザ入力は、特に、処置に影響及び/又は制御する値を有する、少なくともひとつのパラメータを入力するために用いられる。このパラメータは、特に、プログラムパラメータである。
【0110】
「機器制御処置」は、特に、少なくとも部分的に自動化された処置を示す。部分的に自動化された処置の場合、特に、例えば実験機器のユーザインタフェース装置を用いて、特に、入力の確認または拒否または他の入力の受付のためにもたらされる自動クエリに応答するため、処置の開始後、処置の完了前に、ユーザが現在の処置に影響を与えることができるユーザ入力が少なくともひとつ存在するようにして、処置を実行することができる。部分的に自動化された処置の場合、特に、処置が、複数の処置ステップを有することができる。この複数の処置ステップは、特に、自動的かつ時間的に連続して実行され、ユーザ入力を要求する処置ステップを少なくともひとつ有する。このユーザ入力は、特に、ユーザインタフェース装置を介して入力される。
【0111】
機器制御処置は、好ましくは、プログラム制御された処置であり、例えば、プログラムによって制御された処置である。サンプルのプログラム制御された処置は、処置のプロセスは、実質的には、複数または多数のプログラムステップを通じて動作することによって実行されることを意味すると解釈すべきである。好ましくは、プログラム制御された処置は、少なくともひとつのプログラムパラメータ、特に、ユーザによって選択された少なくともひとつのプログラムパラメータを用いて起きる。ユーザによって選択されたパラメータは、ユーザパラメータとも呼ばれる。プログラム制御された処置は、好ましくは、特に、実験機器の制御装置のコンポーネントである、デジタルデータ処理装置の支援の下で実行される。データ処理装置は、少なくともひとつのプロセッサ、即ち、CPU及び/又は少なくともひとつのマイクロプロセッサを備えてよい。プログラム制御された処置は、好ましくは、プログラム、特に、制御プログラムの指示に従って、制御され、実行される。特に、プログラム制御された処置の場合、少なくともユーザからプログラムパラメータを取得した後、ユーザの活動は実質的には何も要求されない。
【0112】
モジュールは、他の機器から分離された機器、及び/又は、他の機器から分離可能な機器であり、特に、実験機器である。実験機器は、特に、ユーザによって取り外し可能な接続によってモジュールが実験機器に接続されるための接続装置を備えてもよい。モジュールは、ポータブル、即ち、ユーザによって運搬可能でもよい。モジュールは、実験機器にしっかりと接続されてもよい。モジュールのデザインは、実験機器を製造する際に利点を提供する。ポータブルなモジュールは、実験機器を用いるときに、より大きな柔軟性を提供する。
【0113】
本発明に従った実験器具と、本発明に従った方法の好ましい構成は、図面とその説明と共に、実施形態についての以下の説明から明らかになる。特に説明していない場合、または、文脈から明らかにならない場合、実施形態の同じ構成要素が同じ参照符号によって特徴つけられる。詳しくは以下の通り。
【図面の簡単な説明】
【0114】
図1a】本発明の実施の形態に従った実験機器であるインキュベータを示す。
図1b】本発明の他の実施の形態に従った実験機器であるインキュベータを示す。
図1c図1a及び/又は図1bに従った実験機器を含む、実験機器ネットワーク100の基本的なネットワーク要素を示す。
図1d】本発明の他の実施の形態に従った実験機器であるインキュベータを示す。
図1e】挿入可能機器が、作業チャンバに部分的に挿入されて、実験機器のネットワークインタフェース装置の外部ポートに接続されたときの図1の実験機器を示す。
図1f】本発明の他の実施の形態に従った実験機器であるインキュベータを示す。
図1g】本発明に従った少なくともひとつの実験機器を含む、本発明の好ましい実施形態に従った実験機器ネットワークの要素を示す。
図1h】本発明に従った少なくともひとつの実験機器を含む、本発明の他の好ましい実施形態に従った実験機器ネットワークの要素を示す。
図2a図1aに従ったインキュベータの正面斜視図を示す。
図2b図2aのインキュベータの背面斜視図を示す。
図3】本発明の実施形態に従った、実験機器ネットワーク100を示す。
図4】本発明に従った方法の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0115】
図1aは、実験機器ネットワーク100内のデータ交換を用いて、実験サンプル9について作業を行うための、本発明の実施形態に従った実験機器1を示す。実験機器ネットワーク100は、実質的には非階層ネットワークであり、本発明の定義に従ったほとんどのネットワーク機器のためのピアツーピア構成を有する。ホットプラグが可能であり、特に挿入可能機器20、30やユーザインタフェース装置8等、どのようなネットワーク機器であっても、実験機器ネットワーク100の機能に重大な割込みをかけることなく、ネットワークに追加、除去することが可能である。
【0116】
図1aの実験ネットワーク100の部分120(図1eの実施形態のため図1gに同様に示す)は、ネットワーク機器を含み、少なくとも部分的にインキュベータの中に物理的に配置される。実験ネットワーク100の他の部分110は、インキュベータから分離していて、イーサネットスイッチ6の専用のポート6a’に接続される、ネットワーク機器を含む。ユーザインタフェース装置8もネットワーク機器であり、スイッチ6に接続されている。第1の制御装置4はスイッチ6に接続されているが、ネットワーク100の外部110のネットワーク機器から可視ではない。これは、VLAN技術を実装したユーザインタフェース装置8内のルータ(不図示)に固有の構成だからである。ルータは、ピアツーピア技術を用いて通信する、ネットワーク100の他のネットワーク機器から制御装置4を隠す。SPI線4a(図1a)を介してスイッチ6を通信する制御装置4によって構成されるVLANによって、分離は実現する。ネットワーク機器の部分110か部分120かへの接続を提供するため、ルータは、物理ネットワークアダプタ5を介して、2つの仮想アダプタを提供する。ユーザインタフェース装置8は、2つの仮想ネットワークアダプタを介して、ネットワーク部分110および120に到達することができる。更に、ユーザインタフェース装置8を介して、ネットワークの外部部分110のネットワーク機器が、ネットワーク部分120の可視のネットワーク機器と通信可能となることが、ルータによって確実になる。一般に、前記ルータは、ユーザインタフェース装置の一部ではなくともよいし、スイッチ6や制御装置4の一部であってもよい。
【0117】
本実施形態において、実験機器ネットワークは、以下の内部および外部ネットワーク機器、即ち、実験機器1を示す第1の制御装置、棚20、温度較正装置30、および、実験機器ネットワーク100の外部110によって構成される外部ネットワーク機器を含む。以下に更に説明するように、内部機器は、実験機器に搭載または統合され、外部機器は実験機器の外に配置される。ネットワークインタフェース装置6は、スター型トポロジーネットワーク100の物理的な中心となる装置を形成することが、図1cに示されている。内部および外部ネットワーク機器は、コネクタ6aを介して、ネットワークインタフェース装置6にホットプラグによって追加される。
【0118】
更なる好ましい実施形態において、外部ネットワーク機器への接続およびコネクタは、実験機器にて省略してもよいことに注意されたい。この場合、実験機器は、内部ネットワーク機器4、20、30、8のみを備える。
【0119】
実験機器は、ここではCO2インキュベータである実験インキュベータ1であり、細胞培養のために設計されたマイクロプロセッサ制御の機器である。実験インキュベータ1は、図1において、明色の長方形として図式的に示されたインキュベータ室2を形成する、直方体作業チャンバを有する。直接加熱されるファンレスの作業チャンバ2は、高レベルの湿度と、最小限の振動と、Tフラスコ、マイクロプレートおよびその他の培養用器具内に、細胞増殖に求められる精密に管理された温度及びガスの雰囲気とを提供するように設計される。それらは室内の実験室での使用のみを対象とする。
【0120】
インキュベータ室2は、前部壁、後部壁、2つの側部壁、下部壁および上部壁によって形成され、金属によって一体的に形成される。図2aおよび2bに例示するように、前部壁はドア16であり、閉じた位置にあるとき作業チャンバを密閉して、外部からの干渉に対してインキュベータ室の内部の雰囲気を保護する。ガス(CO 2 、O 2 )のコネクタ17は、図2bのインキュベータ1の後ろ側に配置される。追加ハウジング14は、例えば、第1の制御装置4およびネットワークアダプタ5を含む、実験機器1の電子機器をホストする。インキュベータ室の寸法は、例えば、幅54cm、高さ70cm、深さ45cmであり、体積は175リットルである。前記の値と比較すると、典型的な実験機器の寸法値と体積は、例えば、0.2から5の間の係数によって異なる。
【0121】
インキュベータ1は、10℃から50℃の間に定義された温度、例えば95%に定義された湿度、および、0.2%~20%の間に定義されたCO2の含有量を、作業チャンバ内の空気が保つように構成される。これは、作業チャンバ内に収容した実験サンプルの処置それぞれを実行するための3つの処置装置を形成し、インキュベータ室の内部の定義された雰囲気の気候に晒される、作業チャンバ2を直接加熱するための温度調整装置、水蒸気制御(不図示)、および、CO2流入バルブによって達成される。図1aに、作業チャンバ2と熱的に接触するコンポーネントとして、温度調整装置3が図示される。
【0122】
インキュベータは、データを処理し、制御プログラムその他を用いて処置装置3を制御するための第1の制御装置4を有する。また、インキュベータ1は、イーサネットスイッチ6を介して制御装置4に接続され、ユーザ入力を受け取り、ユーザインタフェース8のディスプレイに情報を表示するためのユーザインタフェース装置8を有する。ユーザインタフェース装置8は、実験機器ネットワーク100のネットワーク機器として作用する。ユーザインタフェース装置8はモジュールであり、インキュベータ1にしっかりと固定され、あるいは、取り外し可能に接続され、典型的には、ハウジングの前部壁またはドアに固定あるいは接続される。特に、異なる実験機器が、同じタイプのモジュールと共に提供されるために、モジュールを提供することは、一乃至複数の実験機器を製造するために利点となる。
【0123】
インキュベータ1は、作業チャンバ2の中の一乃至複数の挿入可能機器20、30の相対位置を示す位置データを特定するように構成される。イーサネットスイッチは、シリアル・ペリフェラル・インタフェース(SPI)接続4aを用いて操作されて、第1の制御装置4およびイーサネットスイッチ6が、特に、標準イーサネット接続6cを介した制御装置4とイーサネットスイッチとの間のデータ交換に割り当てられたメタデータのような、制御データを交換する。要求されるメタデータは、いずれも、特定の挿入可能機器が接続されるスイッチのポートを示してもよい。制御装置4とネットワークインタフェース装置6との間のデータ交換は、強制的にコネクタ6cを用いるものではない。ネットワークインタフェース装置6を介して通信を行う挿入可能機器を含むデータ交換は、どのようなものであれ、そうしたメタデータを、ネットワークインタフェース装置6に残してもよい。制御装置4は、特定の挿入可能機器が接続されるネットワークインタフェース装置6のポートを特定するために、前記メタデータを接続4aを介して受信することを要求してもよい。位置は、各コネクタ6a、6a’に割り当てられた、ユニークな識別番号によって表されてもよい。
【0124】
インキュベータ室2は、図1aに示すように、作業チャンバ内の挿入可能な棚の挿入位置に挿入されて、それぞれ、実験サンプルに関する作業ステップを実行するように構成された、多数の棚20と、温度較正装置30とを収容するために構成される。
【0125】
インキュベータは、挿入可能機器20、30と、実験機器ネットワーク100の他のネットワーク機器との間のデータ接続を提供するため、ネットワークインタフェース装置6を備え、挿入位置において、挿入可能機器20、30、第1の制御装置4と、UI8のルータ/VLANを介した、実験機器ネットワークの外部110内の任意の外部ネットワーク機器との間のデータ交換を提供する。制御装置4は、内部ネットワーク機器120の一部なので、原則として、制御装置4もネットワーク100の一部である。挿入可能機器20、30と制御装置4のデータ交換は、ユーザインタフェース装置8によって提供されるルータ/VLANを介して伝送されない。ネットワークの外部110のネットワーク機器を含むデータ交換を提供するためにのみ、ルータは用いられる。図1aにおいて、ネットワークインタフェース装置6はイーサネットスイッチ6である。イーサネットスイッチ6は、ソケットと挿入可能機器との間のイーサネットタイプの接続ケーブルを接続するためのソケット6aを有する、インタフェースアセンブリを用いる。従って、各挿入可能機器は、対応するソケット20a、30aを有する。図1の実施形態では、第1の制御装置4は、通信装置5を組み込み、イーサネットインタフェース、または、一体化されたイーサネットネットワークアダプタを有する、マイクロコントローラによって、それぞれ実現される。
【0126】
各挿入可能機器は、挿入可能機器の第2の制御装置(不図示)と、残りの実験機器ネットワークとの間で、第2の通信装置およびソケット20a、30aを介して、データ交換を行うための、第2の通信装置(不図示)を有する。第2の通信装置は、第2の制御装置(不図示)の一部でもよい。第2の制御装置は、較正温度センサ30または棚20の測定装置(不図示)を制御するための集積回路を備えてもよい。データは、棚20上にサンプルコンテナを載置した場所、または、載置していない場所の情報を含んでもよい。測定装置は、例えば光反射測定を用いて光学的に監視される、棚の保持面上の予め定義された位置に、サンプルコンテナが存在するか不存在かの光学的検出を含む。
【0127】
実験機器ネットワーク100が多数のインキュベータ1を備える場合、棚20と較正装置30は、インキュベータそれぞれと共に柔軟な方法で用いられる。
【0128】
図1bは、実験機器1’の他の好ましい実施形態を示す。同図は、基本的には、図1aの実験機器1の設計に対応するが、次のような違いがある。実験機器1’は、インタフェース装置の好ましい実施形態であり、ソケットバー6bに搭載されるソケット6aを備え、ソケットバー6bは作業チャンバ2の内側に搭載される。ソケットバー6bの内側には、ソケット6aのそれぞれから、ソケットバーの収集点に向かって束になったケーブルが延びる。ケーブルの束18は、ネットワークインタフェース装置6に繋がり、各ケーブルの端部(不図示)は、スイッチ6のコネクタのひとつに接続される。
【0129】
図1bの実験機器1’の他の特定の様相として、ユーザインタフェース装置8’が、実験機器1’に堅固に搭載された装置であることがある。ユーザインタフェース装置8は、タッチスクリーン8a、第1の制御装置4を含み、制御装置4が、従ってモジュール8が、イーサネットスイッチ6を経由して、残りの実験機器と通信できるように、イーサネットネットワークアダプタ5を含む。
【0130】
図3は、本発明の実施形態に従った実験機器ネットワーク100を示し、本発明に従った3つの実験機器1’’を含む、多数のネットワーク機器と、それぞれが棚である、4つの挿入可能機器20と、ユーザインタフェース装置40とを備える。3つの実験機器1’’と、4つの挿入可能機器20は、実験機器ネットワーク100内に接続され、挿入可能機器の挿入位置において、実験機器ネットワークを介してお互いに、データ、特に、第1および第2のデータの交換ができるようにする。インキュベータ1’’は、ネットワークインタフェース装置6、図1に図示したインキュベータ1に従って構成されたインキュベータ1’’のひとつのイーサネットスイッチ6、または、実験機器1’’の外部にある、任意の外部ネットワークインタフェース装置(即ちなんらかのスイッチ)に接続される。
【0131】
各ネットワーク機器は、例えばユーザインタフェース装置40を用いて、オンデマンドで明示的にアクセスされ、最小限の手間とエネルギー消費で、イーサネットネットワークを用いた制御データの転送を行う。作業チャンバの内部で生成された、任意の第2のデータは、例えばユーザインタフェース装置40の第3の制御装置44によって、作業チャンバの外部で評価される。これにより、作業チャンバの内部における、データ処理による使われない熱の放出を最小限に抑えて、作業チャンバ内の気候条件を安定させる。
【0132】
ユーザインタフェース装置40は、第3の制御装置とも呼ばれる、ユーザインタフェース装置のための制御装置44と、第3の通信装置とも呼ばれ、同じインタフェース装置を用いて実験機器とのデータ接続を確立するための、ユーザインタフェース装置の通信装置45と、ユーザのユーザ入力を取得し、ユーザに対して情報を出力するための、特に、指示装置及び/又は表示装置である出力装置47を含む、入力装置46とを含む。ここでは、ユーザインタフェース装置の制御装置44は、第1のデータの交換によって、実験機器1’’とデータをやり取りするように構成される。また、ユーザインタフェース装置40は、実験機器ネットワーク100のネットワーク機器を制御するためのユーザインタフェースとしても作動する。また、ユーザインタフェース装置40は、実験機器ネットワーク100をインターネット150に接続するルータを備える。
【0133】
図1dは、インキュベータ1’’である、本発明の他の実施形態に従った実験機器を示す。インキュベータ1’’は、インキュベータ1’’の外部である、ネットワーク部110のネットワーク機器を含む実験機器ネットワークの一部である。インキュベータと実験機器ネットワークは、図1aの例と同様に構成されるが、次のように異なる。
【0134】
また、インキュベータ1’’は、挿入可能機器と共に用いられるべきであるが、挿入可能機器は、内部コネクタ6aに接続されない。図1を参照すると、内部コネクタ6aは、挿入可能機器をネットワークインタフェース装置6に接続するために、作業チャンバの内部に配置される。インキュベータ1’’は、挿入可能機器をネットワークインタフェース装置に接続するためにインキュベータ1’’のハウジングの側壁に配置された、外部コネクタ6a、6dを介して、挿入可能機器と共に用いられる。例えば、コネクタ6a’は、ネットワーク部120のネットワーク機器を接続するためのコネクタでもよく、コネクタ6aは、ユーザが挿入可能機器を接続できるようにするコネクタでもよく、コネクタ1dは、例えば図1eに示した較正を実行するため、技術者が較正装置50を接続できるようにするサービスポートでもよい。インキュベータ1’’の応用サンプルにおいて、(不図示の)インキュベータ扉が閉じている一方、移動可能なセンサ部51、52を含む外部調整機器50(図1eを参照)が提供され、作業チャンバ2に部分的に挿入される。温度センサ53を含む移動可能部51は、ケーブル束55を用いて、調整機器50の制御装置4’に接続される。
【0135】
調整機器50は、図1aの較正棚30の機能を再配置し、較正装置として作動する。インキュベータ1’’の内部センサ(不図示)の較正が希望された場合、サービス技術者は、適切な方法を用いて、温度センサ53を作業チャンバ2の任意の利用可能な棚20に挿入する。更に、技術者は、作業チャンバ内部にガスセンサ54を挿入する。好ましい選択として、本例では、作業チャンバ内部にスマート棚52を挿入することによってこれを実現する。棚52は、通信装置5と同様に、ガスセンサ54と(第2の)制御装置4’’を含む。温度センサ53とガスセンサ54は、測定信号から測定データを生成するデジタイザを含んでもよい。しかし部分51は制御装置を含まない。これは、そうした制御装置で行われるデータ処理は、すべて、センサ53周辺の局地的な温度に影響を及ぼして、測定エラーを引き起こすおそれがあるからである。
【0136】
図1eの例において、調整機器50は、通信装置5を介して、調整機器50の制御装置4’に接続される、イーサネットスイッチ6’を含む。スマート棚52は、コネクタを介してイーサネットスイッチ6’に接続される。イーサネットスイッチ6’は、自動化されたベリフィケーション(verification)と調整処理とを目的として、サービスポート6dを介して、実験機器1’’内部のイーサネットスイッチ6に接続される。ベリフィケーションと調整とを自動的に実行するための制御プログラムは、選択に応じて、装置8’、4’、8または4のどれで実行してもよい。
【0137】
選択的に、調整機器50を制御するために用いてもよいユーザインタフェース装置8’が提供される。また、調整機器50は、ユーザインタフェースを含んでもよい。調整機器50は、実験機器ネットワーク100のネットワーク機器として作動する。また、スマート棚52は、実験機器ネットワーク100のネットワーク機器として作動し、原則として、イーサネットスイッチ6’に接続される代わりに、実験機器1’’内部のイーサネットスイッチ6に接続されてもよい。
【0138】
実験機器ネットワーク100の残りの部分110は、ルータ111を介してインターネット150に接続されてもよい。図1eの実施形態について単純化した図が、図1gに示される。制御装置4によって提供されるルータは、VLAN技術を提供し、ネットワーク100の内部で、ネットワーク機器20、30、50、8の外部110と内部120とを接続するが、一方で、制御装置4は、110内のネットワーク機器からは見えない。このことについては、図1aの実施形態を参照して既に説明した。図1hは、図1gと比較すると似た情報を示すが、追加の選択的な実施形態は、ネットワーク機器4’’、20、30、4’、8’を、2つの追加のスイッチ6‘と6’’を介して、インキュベータのネットワークインタフェース装置6にどのようにして接続するかが示される。
【0139】
図1fは、本発明の他の実施形態に従った実験機器を示し、インキュベータ1’’’である。ネットワーク機器であるスマート棚20を挿入し、接続するためのコネクタ6aを搬送するソケットバー6bが作業チャンバ2の内部に搭載される。ネットワーク機器ではない、標準的な棚20bも、作業チャンバ20の中に提供されてよい。インキュベータ1’’’は、作業チャンバ2の内部と実験機器1’’’を囲む環境とを接続する、アクセスポート21を含む。ケーブル束6b’は、ソケットバー6bのコネクタ6aを、アクセスポートを通じて、インキュベータ1’’’のハウジングに接続された外部イーサネットスイッチボックス6’’’のコネクタ6aに接続する。外部イーサネットスイッチボックス6’’’は、他の外部コネクタ6aを介して、インキュベータ1’’’の内部イーサネットスイッチ6に接続される。一般的には、外部イーサネットスイッチボックス6’’’を用いることなく、挿入可能機器20を、実験機器の外部コネクタ6aに直接接続することもできる。
【0140】
図4は、本発明に従った方法の実施形態を示す。実験機器ネットワークを用いて、実験サンプルに働きかける方法200は、本発明に従った少なくともひとつの実験機器と、本発明に従った実験機器ネットワーク内での第2のデータの交換を含む、実験サンプルに関する作業ステップを実行するように構成された、少なくともひとつの挿入可能機器とを備え、
少なくともひとつの実験機器(201)の作業チャンバの中に、少なくともひとつの挿入可能機器を配置し、
前記少なくともひとつの挿入可能機器を、前記少なくともひとつの実験機器のネットワークインタフェース装置に接続して、前記少なくともひとつの挿入可能機器と、前記実験機器ネットワーク(202)との間のデータ交換を確立する段階と
を含む。
図1a
図1b
図1c
図1d
図1e
図1f
図1g
図1h
図2a
図2b
図3
図4