(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-20
(45)【発行日】2023-06-28
(54)【発明の名称】蓄電装置
(51)【国際特許分類】
H01M 10/04 20060101AFI20230621BHJP
H01M 50/184 20210101ALI20230621BHJP
H01M 10/6556 20140101ALI20230621BHJP
H01G 11/10 20130101ALI20230621BHJP
H01G 11/78 20130101ALI20230621BHJP
H01G 11/80 20130101ALI20230621BHJP
H01G 11/18 20130101ALI20230621BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M50/184 Z
H01M10/6556
H01G11/10
H01G11/78
H01G11/80
H01G11/18
(21)【出願番号】P 2020009788
(22)【出願日】2020-01-24
【審査請求日】2022-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】大井手 竜二
(72)【発明者】
【氏名】植田 浩生
(72)【発明者】
【氏名】森岡 怜史
(72)【発明者】
【氏名】奥村 素宜
(72)【発明者】
【氏名】菊池 卓郎
【審査官】川村 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-160481(JP,A)
【文献】特開2019-192425(JP,A)
【文献】特開2019-186187(JP,A)
【文献】特開2018-106967(JP,A)
【文献】特開2017-037718(JP,A)
【文献】特開2019-114512(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/00-10/667
H01M 6/00- 6/48
H01M 50/10-50/198
H01M 50/50-50/598
H01G 11/00-11/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電板を介して複数の蓄電モジュールを積層してなるモジュール積層体を備えた蓄電装置であって、
前記蓄電モジュールは、
金属板の一方面に正極が形成され、他方面に負極が形成されたバイポーラ電極を含む電極を前記蓄電モジュールの積層方向に積層してなる電極積層体と、
前記積層方向に延在する前記電極積層体の側面を覆い、前記電極間において電解液が収容された内部空間を封止する封止体と、を備え、
前記導電板は、前記蓄電モジュールの前記積層方向の端部において前記電極が前記封止体から露出する電極露出領域に電気的に接続される接続面を有し、
前記導電板は、前記積層方向に延びる第1の側面と、前記第1の側面に対向する第2の側面とを有し、
前記導電板の前記接続面と前記封止体との間には、前記導電板における前記第1の側面側の縁部及び前記第2の側面側の縁部に沿って防液部材が配置され、
前記導電板における前記第1の側面及び前記第2の側面には、電気絶縁性を有する絶縁膜が設けられている蓄電装置。
【請求項2】
前記導電板は、前記第1の側面及び前記第2の側面に交差して互いに対向する第3の側面及び第4の側面を有し、
前記封止体には、前記第3の側面及び前記第4の側面に対応して、前記積層方向から見て蓄電モジュールの外方に向かって張り出す庇部が設けられている請求項1記載の蓄電装置。
【請求項3】
前記導電板の内部には、冷却用流体を流通させる流路が前記第3の側面と前記第4の側面とを結ぶ方向に設けられている請求項2記載の蓄電装置。
【請求項4】
前記電極積層体は、前記電極を構成する金属板を含み、
前記封止体は、金属板それぞれの縁部に枠状に溶着された第1封止部と、前記積層方向に沿って前記電極積層体の側面に延び、前記積層方向に隣り合う前記第1封止部同士を結合する第2封止部と、を有し、
前記防液部材は、前記導電板の前記接続面と、前記積層方向について最外層に位置する前記第1封止部との間に配置されている請求項1~3のいずれか一項記載の蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の蓄電モジュールとして、金属板の一方面に正極が形成され、他方面に負極が形成されたバイポーラ電極を備えたものがある(特許文献1参照)。蓄電モジュールは、セパレータを介して複数のバイポーラ電極を積層してなる電極積層体を備えている。電極積層体の側面には、積層方向に隣り合うバイポーラ電極間を封止する樹脂製の封止体が設けられており、バイポーラ電極間に形成された内部空間に電解液が収容されている。蓄電装置は、例えば導電板を介して蓄電モジュールを積層してなるモジュール積層体を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蓄電装置では、トラッキングを含む絶縁破壊の発生を抑えることが重要となる。例えば封止体に蓄電モジュールの内圧を調整するための圧力調整弁が設けられる場合、内圧上昇時の開弁の際に圧力調整弁からガスと共に電解液が蓄電モジュールの外部に漏液することが考えられる。また、電解液がアルカリ溶液を含む場合、いわゆるアルカリクリープ現象により、電解液が封止体と負極終端電極の金属板との間を通って蓄電モジュールの外部に漏液することが考えられる。蓄電モジュールの外部に漏れ出た電解液が蓄電モジュール間で滞留し、かつ電解液が帯電すると、電解液の滞留が無い場合に比べてモジュール積層体の絶縁距離が短くなる。このため、モジュール積層体においてトラッキングを含む絶縁破壊が生じ易くなるおそれがある。
【0005】
本開示は、上記課題の解決のためになされたものであり、電解液が蓄電モジュールの外部に漏れ出た場合でも、モジュール積層体における絶縁破壊の発生を抑えることができる蓄電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る蓄電装置は、導電板を介して複数の蓄電モジュールを積層してなるモジュール積層体を備えた蓄電装置であって、蓄電モジュールは、金属板の一方面に正極が形成され、他方面に負極が形成されたバイポーラ電極を含む電極を蓄電モジュールの積層方向に積層してなる電極積層体と、前記積層方向に延在する前記電極積層体の側面を覆い、電極間において電解液が収容された内部空間を封止する封止体と、を備え、導電板は、蓄電モジュールの積層方向の端部において電極が封止体から露出する電極露出領域に電気的に接続される接続面を有し、導電板は、積層方向に延びる第1の側面と、第1の側面に対向する第2の側面とを有し、導電板の接続面と封止体との間には、導電板における第1の側面側の縁部及び第2の側面側の縁部に沿って防液部材が配置され、導電板における第1の側面及び第2の側面には、電気絶縁性を有する絶縁膜が設けられている。
【0007】
この蓄電装置では、導電板の第1の側面側の縁部及び第2の側面側の縁部に沿って導電板の接続面と封止体との間に配置された防液部材により、蓄電モジュールの外部に漏れ出た電解液が導電板の接続面と封止体との間に浸入することを防止できる。また、この蓄電装置では、導電板における第1の側面及び第2の側面には、電気絶縁性を有する絶縁膜が設けられている。この絶縁膜により、蓄電モジュールの外部に漏れ出た電解液が蓄電モジュール間に滞留したとしても、電解液が帯電することを防止できる。これにより、モジュール積層体における絶縁距離を電解液の滞留が無い場合と同等程度に保つことが可能となり、モジュール積層体においてトラッキングを含む絶縁破壊の発生を抑えることができる。
【0008】
導電板は、第1の側面及び第2の側面に交差して互いに対向する第3の側面及び第4の側面を有し、封止体には、第3の側面及び第4の側面に対応して、積層方向から見て蓄電モジュールの外方に向かって張り出す庇部が設けられていてもよい。この場合、庇部により、蓄電モジュールの外部に漏れ出た電解液が蓄電モジュール間に滞留することを防止できる。また、庇部の張り出しにより、第3の側面側及び第4の側面側におけるモジュール積層体の絶縁距離を十分に確保できる。したがって、モジュール積層体においてトラッキングを含む絶縁破壊の発生をより確実に抑えることができる。
【0009】
導電板の内部には、冷却用流体を流通させる流路が第3の側面と第4の側面とを結ぶ方向に設けられていてもよい。この場合、導電板に冷却機能を持たせることができる。封止部材及び絶縁膜は、第1の側面及び第2の側面に対して設けられるため、流路が設けられる第3の側面及び第4の側面の構成の複雑化も回避できる。
【0010】
電極積層体は、電極を構成する金属板を含み、封止体は、金属板それぞれの縁部に枠状に溶着された第1封止部と、積層方向に沿って電極積層体の側面に延び、積層方向に隣り合う第1封止部同士を結合する第2封止部と、を有し、防液部材は、導電板の接続面と、積層方向について最外層に位置する第1封止部との間に配置されていてもよい。このような構成により、導電板を介して電極積層体に十分な面圧を付加できる。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、電解液が蓄電モジュールの外部に漏れ出た場合でも、モジュール積層体における絶縁破壊の発生を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態に係る蓄電装置を示す概略断面図である。
【
図2】蓄電モジュールの内部構成を示す概略断面図である。
【
図3】蓄電モジュールの外部構成を示す斜視図である。
【
図4】導電板を重ねた状態で示す蓄電モジュールの平面図である。
【
図5】長辺方向から見た蓄電装置の概略断面図である。
【
図6】短辺方向から見た蓄電装置の概略断面図である。
【
図7】蓄電装置の作用効果を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本開示の一側面に係る蓄電装置の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0014】
図1は、本実施形態に係る蓄電モジュールを備えて構成される蓄電装置の一例を示す概略断面図である。
図1に示される蓄電装置1は、例えばフォークリフト、ハイブリッド自動車、電気自動車等の各種車両のバッテリとして用いられる。蓄電装置1は、積層された複数の蓄電モジュール4を含むモジュール積層体2と、モジュール積層体2に対してモジュール積層体2の積層方向Dに拘束荷重を付加する拘束部材3とを備えている。
【0015】
モジュール積層体2は、複数(ここでは3つ)の蓄電モジュール4と、複数(ここでは4つ)の導電板5とを含む。蓄電モジュール4は、バイポーラ電池であり、積層方向Dから見て矩形状をなしている。蓄電モジュール4は、例えばニッケル水素二次電池、リチウムイオン二次電池等の二次電池、又は電気二重層キャパシタである。以下の説明では、ニッケル水素二次電池を例示する。
【0016】
積層方向Dに互いに隣り合う蓄電モジュール4同士は、導電板5を介して電気的に接続されている。ここでは、モジュール積層体2の積層端には、いずれも蓄電モジュール4が配置されており、導電板5は、積層方向Dに互いに隣り合う蓄電モジュール4間にそれぞれ配置されている。積層端に位置する蓄電モジュール4には、導電板5とは別の導電板Pが更に積層されている。一方の導電板Pには正極端子6が接続され、他方の導電板Pには負極端子7が接続されている。正極端子6及び負極端子7は、例えば導電板Pの縁部から積層方向Dに交差する方向に引き出されている。正極端子6及び負極端子7により、蓄電装置1の充放電が実施される。
【0017】
蓄電モジュール4間に配置された導電板5の内部には、空気等の冷却用流体G(
図6参照)を流通させる複数の流路5aが設けられている。流路5aは、例えば積層方向Dと、正極端子6及び負極端子7の引き出し方向とにそれぞれ交差(直交)する方向に沿って延在している。導電板5は、蓄電モジュール4同士を電気的に接続する接続部材としての機能を有している。また、導電板5は、これらの流路5aに冷却用流体Gを流通させることにより、蓄電モジュール4で発生した熱を放熱する放熱板としての機能を併せ持っている。
図1の例では、積層方向Dから見た導電板5の面積は、蓄電モジュール4の面積よりも小さくなっているが、放熱性の向上の観点から、導電板5の面積は、蓄電モジュール4の面積と同じであってもよく、蓄電モジュール4の面積よりも大きくなっていてもよい。
【0018】
拘束部材3は、モジュール積層体2を積層方向Dに挟む一対のエンドプレート8と、エンドプレート8同士を締結する締結ボルト9及びナット10とによって構成されている。エンドプレート8は、積層方向Dから見た蓄電モジュール4、導電板5、及び導電板Pの面積よりも一回り大きい面積を有する矩形の金属板である。エンドプレート8におけるモジュール積層体2側の面には、電気絶縁性を有するフィルムFが設けられている。フィルムFにより、エンドプレート8と導電板Pとの間が絶縁されている。
【0019】
エンドプレート8の縁部には、モジュール積層体2よりも外側となる位置に挿通孔8aが設けられている。締結ボルト9は、一方のエンドプレート8の挿通孔8aから他方のエンドプレート8の挿通孔8aに向かって通されている。他方のエンドプレート8の挿通孔8aから突出した締結ボルト9の先端部分には、ナット10が螺合されている。これにより、蓄電モジュール4、導電板5、及び導電板Pがエンドプレート8によって挟持され、モジュール積層体2としてユニット化されている。また、モジュール積層体2に対し、積層方向Dに拘束荷重が付加されている。
【0020】
次に、蓄電モジュール4の構成について詳細に説明する。
図2は、
図1に示された蓄電モジュールの内部構成を示す概略断面図である。
図2に示されるように、蓄電モジュール4は、電極積層体11と、電極積層体11を封止する樹脂製の封止体12とを備えている。電極積層体11は、セパレータ13を介して蓄電モジュール4の積層方向Dに沿って積層された複数の電極によって構成されている。これらの電極は、複数のバイポーラ電極14と、負極終端電極18と、正極終端電極19とを含む。
【0021】
バイポーラ電極14は、一方面15a及び一方面15aの反対側の他方面15bを含む金属板15と、一方面15aに設けられた正極16と、他方面15bに設けられた負極17とを有している。正極16は、正極活物質が金属板15に塗工されることにより形成されている。正極16を構成する正極活物質としては、例えば水酸化ニッケルが挙げられる。負極17は、負極活物質が金属板15に塗工されることにより形成されている。負極17を構成する負極活物質としては、例えば水素吸蔵合金が挙げられる。
【0022】
本実施形態では、金属板15の他方面15bにおける負極17の形成領域は、金属板15の一方面15aにおける正極16の形成領域に対して一回り大きくなっている。電極積層体11において、一のバイポーラ電極14の正極16は、セパレータ13を挟んで積層方向Dの一方に隣り合う別のバイポーラ電極14の負極17と対向している。電極積層体11において、一のバイポーラ電極14の負極17は、セパレータ13を挟んで積層方向Dの他方に隣り合う別のバイポーラ電極14の正極16と対向している。
【0023】
負極終端電極18は、金属板15と、金属板15の他方面15bに設けられた負極17とを有している。負極終端電極18は、他方面15bが電極積層体11における積層方向Dの中央側を向くように、積層方向Dの一端に配置されている。負極終端電極18の金属板15の一方面15aは、電極積層体11の積層方向Dにおける一方の外側面を構成し、蓄電モジュール4に隣接する一方の導電板5又は導電板P(
図1参照)と電気的に接続されている。負極終端電極18の金属板15の他方面15bに設けられた負極17は、セパレータ13を介して、積層方向Dの一端のバイポーラ電極14の正極16と対向している。
【0024】
正極終端電極19は、金属板15と、金属板15の一方面15aに設けられた正極16とを有している。正極終端電極19は、一方面15aが電極積層体11における積層方向Dの中央側を向くように、積層方向Dの他端に配置されている。正極終端電極19の一方面15aに設けられた正極16は、セパレータ13を介して、積層方向Dの他端のバイポーラ電極14の負極17と対向している。正極終端電極19の金属板15の他方面15bは、電極積層体11の積層方向Dにおける他方の外側面を構成し、蓄電モジュール4に隣接する他方の導電板5又は導電板P(
図1参照)と電気的に接続されている。
【0025】
金属板15は、例えば表面にめっきが施されたニッケル板や、表面にめっきが施された鋼板などからなる。ここでは、金属板15は、鋼板の表面にニッケルによるめっきを施してなるめっき鋼板によって構成されている。めっき鋼板の基材となる鋼板には、例えば圧延鋼などの普通鋼や、ステンレス鋼などの特殊鋼が用いられる。金属板15の縁部15cは、矩形枠状をなし、正極活物質及び負極活物質が塗工されない未塗工領域となっている。
【0026】
セパレータ13は、例えばシート状に形成されている。セパレータ13としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質フィルム、ポリプロピレン、メチルセルロース等からなる織布又は不織布等が例示される。セパレータ13は、フッ化ビニリデン樹脂化合物で補強されたものであってもよい。
【0027】
封止体12は、例えば絶縁性の樹脂によって、全体として矩形の枠状に形成されている。封止体12は、金属板15の縁部15cを包囲するように電極積層体11の側面11aに設けられている。封止体12は、側面11aにおいて縁部15cを保持している。封止体12は、金属板15の縁部15cに結合された複数の第1封止部21と、積層方向Dに沿って側面11aに延び、第1封止部21のそれぞれに結合された第2封止部22とを有している。第1封止部21及び第2封止部22は、耐アルカリ性を有する絶縁性の樹脂によって構成されている。第1封止部21及び第2封止部22の構成材料としては、例えばポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)などが挙げられる。
【0028】
第1封止部21は、金属板15の一方面15aにおいて縁部15cの全周にわたって連続的に設けられ、積層方向Dから見て矩形枠状をなしている。本実施形態では、バイポーラ電極14の金属板15のみならず、負極終端電極18の金属板15及び正極終端電極19の金属板15に対しても第1封止部21が設けられている。負極終端電極18では、金属板15の一方面15aの縁部15cに第1封止部21が設けられ、正極終端電極19では、金属板15の一方面15a及び他方面15bの双方の縁部15cに第1封止部21が設けられている。
【0029】
第1封止部21は、金属板15の縁部15cに重ねられ、重なり部分Kが形成されている。重なり部分Kにおいて、第1封止部21は、例えば超音波又は熱圧着によって金属板15に気密に溶着されている。第1封止部21は、例えば積層方向Dに所定の厚さを有するフィルムを用いて形成されている。第1封止部21の内側は、積層方向Dに互いに隣り合う金属板15の縁部15c同士の間に位置している。第1封止部21の外側は、金属板15の縁よりも外側に張り出しており、その先端部分は、第2封止部22によって保持されている。積層方向Dに沿って互いに隣り合う第1封止部21同士は、互いに離間していてもよく、接していてもよい。また、第1封止部21の外縁部分同士は、例えば熱板溶着などを用いて形成された溶着部Wによって互いに結合していてもよい。
【0030】
電極積層体11において、積層方向Dについて内層に位置する第1封止部21の内縁側には、セパレータ13の縁部を載置するための段部23が設けられている。段部23は、第1封止部21を構成するフィルムの外縁部分を内側に折り返すことによって形成されていてもよい。段部23は、下段を構成するフィルムに上段を構成するフィルムを重ね合わせることによって形成されていてもよい。
【0031】
本実施形態では、
図2に示すように、負極終端電極18の外層側及び正極終端電極19の外層側にそれぞれ金属板15が更に積層されている。これらの金属板15は、電極積層体11における最外層の金属板15となっている。最外層の金属板15は、正極16及び負極17のいずれも有しておらず、隣接する終端電極の金属板15に接触することにより、当該終端電極に対して電気的に接続されている。
【0032】
最外層の金属板15の縁部15cには、他の電極の金属板15と同様に、枠状の第1封止部21が溶着されている。また、最外層の金属板15の縁部15cは、隣接する終端電極の金属板15の縁部15cに溶着された第1封止部21に溶着されている。最外層の金属板15では、一方面15a及び他方面15bの双方に第1封止部21が溶着されるため、一方面15a及び他方面15bのいずれもが複数の突起状めっきによる粗化面となっている。
【0033】
第2封止部22は、電極積層体11及び第1封止部21の外側に設けられ、蓄電モジュール4の外壁(筐体)を構成している。第2封止部22は、例えば樹脂の射出成型によって形成され、積層方向Dに沿って電極積層体11の全長にわたって延在している。第2封止部22は、積層方向Dを軸方向として延在する矩形の枠状を呈している。第2封止部22は、例えば射出成型時の熱によって第1封止部21の外縁部分に溶着されている。
【0034】
第2封止部22は、積層方向Dにおける両端部にオーバーハング部24をそれぞれ有している。一方のオーバーハング部24は、積層方向Dの一端部において第1封止部21の内縁側に張り出し、負極終端電極18を構成する金属板15の一方面15a側に溶着された第1封止部21に結合している。他方のオーバーハング部24は、積層方向Dの他端部において第1封止部21の内縁側に張り出し、正極終端電極19を構成する金属板15の他方面15b側に溶着された第1封止部21に結合している。積層方向Dから見て、オーバーハング部24よりも内側の領域は、蓄電モジュール4の積層方向Dの端部において電極が封止体12から露出する電極露出領域Mとなっている。本実施形態では、負極終端電極18の外層側及び正極終端電極19の外層側にそれぞれ積層された金属板15が、電極露出領域Mにおいて封止体12から露出した状態となっている。
【0035】
第1封止部21及び第2封止部22は、隣り合う電極の間の内部空間Vを封止する。より具体的には、第2封止部22は、第1封止部21と共に、積層方向Dに沿って互いに隣り合うバイポーラ電極14の間、積層方向Dに沿って互いに隣り合う負極終端電極18とバイポーラ電極14との間、及び積層方向Dに沿って互いに隣り合う正極終端電極19とバイポーラ電極14との間をそれぞれ封止している。これにより、隣り合うバイポーラ電極14の間、負極終端電極18とバイポーラ電極14との間、及び正極終端電極19とバイポーラ電極14との間には、それぞれ気密に仕切られた内部空間Vが形成されている。この内部空間Vには、例えば水酸化カリウム水溶液等のアルカリ溶液を含む水系の電解液(不図示)が収容されている。電解液は、セパレータ13、正極16、及び負極17内に含浸されている。
【0036】
図3は、蓄電モジュールの外部構成を示す斜視図である。同図に示すように、蓄電モジュール4の蓄電モジュール4の外壁部分は、封止体12によって構成されている。封止体12は、電極積層体11の側面11a(
図2参照)に対応する4つの側面12A~12Dを有している。側面12A~12Dは、いずれも電極積層体11の積層方向Dに沿って延在する面である。
図3の例では、蓄電モジュール4を積層方向Dから見た場合の形状は、長方形状となっている。側面12A,12Bは、積層方向Dから見て短辺側の面である。側面12C,12Dは、積層方向Dから見て長辺側の面である。側面12C,12Dは、側面12A及び側面12Bに交差して互いに対向する面である。
【0037】
側面12A~12Dのうち、側面12Aには、複数(ここでは4体)の圧力調整弁28が所定の間隔をもって設けられている。圧力調整弁28は、内部空間V内のガスを蓄電モジュール4の外部に放出することによって内部空間Vの圧力を調整する弁である。圧力調整弁28が設けられた側面12A側では、圧力調整弁28及び内部空間Vと連通する貫通孔R(
図5参照)が封止体12に設けられており、圧力調整弁28は、側面12Aにおける貫通孔Rの開口部分に取り付けられている。
【0038】
次に、蓄電装置1における蓄電モジュール4と導電板5との接続構造について説明する。
【0039】
図4は、導電板を重ねた状態で示す蓄電モジュールの平面図である。
図5は、長辺方向(側面12C側)から見た蓄電装置の概略断面図であり、
図6は、短辺方向(側面12A側)から見た蓄電装置の概略断面図である。
図3~
図6に示すように、導電板5は、平面視において蓄電モジュール4の平面形状よりも一回り小さい長方形状をなしている。導電板5は、蓄電モジュール4を積層方向Dから見た場合に、第2封止部22のオーバーハング部24よりも内側の領域に重なるように配置されている。
【0040】
導電板5は、封止体12と同様に、電極積層体11の側面11a(
図2参照)に対応する4つの側面5A~5Dを有している。側面5A~5Dは、いずれも電極積層体11の積層方向Dに沿って延在する面である。側面5A,5Bは、積層方向Dから見て短辺側の面であり、導電板5における第1の側面及び第2の側面に相当している。側面5C,5Dは、積層方向Dから見て長辺側の面である。側面5C,5Dは、側面5A及び側面5Bに交差して互いに対向する面であり、導電板5における第3の側面及び第4の側面に相当している。導電板5の内部に設けられる複数の流路5aは、側面5Cと側面5Dとを結ぶ方向に設けられている。すなわち、冷却用流体Gの流れ方向は、
図6に示すように、側面5Cと側面5Dとを結ぶ方向となっている。
【0041】
導電板5の厚さ方向の両面のそれぞれは、
図5及び
図6に示すように、隣接する蓄電モジュール4と電気的に接続される接続面31となっている。蓄電モジュール4では、実際には、電極積層体11の中央領域(バイポーラ電極14において活物質層が配置されている領域)が縁部領域(金属板15の縁部15cに第1封止部21が溶着されている領域)に比べて積層方向Dに膨らんでいる。このため、接続面31の中央領域は、電極積層体11の積層方向Dの端部において電極露出領域M(封止体12から露出する最外層の金属板15:
図3参照)に接触した状態となっている。
【0042】
接続面31の縁部領域は、電極積層体11の積層方向の端部において第2封止部22のオーバーハング部24の内側に露出する最外層の第1封止部21に重なるように位置している。導電板5の接続面31と封止体12との間には、
図4に示すように、導電板5における側面5A側の縁部及び側面5B側の縁部に沿って防液部材32が配置されている。防液部材32は、例えば電解液に対する耐腐食性を有する液体ガスケットを用いて形成され、導電板5の接続面31における側面5A側の縁部及び側面5B側の縁部の全体にわたって延在している。
【0043】
導電板5の側面5A及び側面5Bには、
図4及び
図5に示すように、電気絶縁性を有する絶縁膜33が設けられている。絶縁膜33は、例えば電解液に対する耐腐食性を有するポリオレフィン系樹脂のコーティングによって、導電板5の側面5A及び側面5Bの全面にわたって形成されている。本実施形態では、導電板5の接続面31における側面5C側の縁部及び側面5D側の縁部には防液部材32が配置されておらず、導電板5の側面5C及び側面5Dには絶縁膜33が設けられていない。一方、封止体12の側面12C及び12Dには、
図4及び
図6に示すように、積層方向Dから見て蓄電モジュール4の外方に向かって張り出す庇部34がそれぞれ設けられている。
【0044】
庇部34は、封止体12の側面12C及び側面12Dにおける負極終端電極18側の端部から蓄電モジュール4の外方に張り出している。本実施形態では、庇部34は、平坦な形状であり、自モジュールの正極終端電極19側に傾斜した状態となっている。庇部34の張り出し量に特に制限はないが、ここでは、積層方向Dから見てオーバーハング部24の張り出し量と同程度の張り出し量となっている。また、庇部34の傾斜角度に特に制限はない。庇部34は、平坦な形状に限られず、少なくとも一部が湾曲形状となっていてもよい。
【0045】
以上のように、蓄電装置1では、各蓄電モジュール4の封止体12の短辺側の側面12Aに圧力調整弁28が設けられており、導電板5の接続面31において短辺側の面である側面5A側及び側面5B側の縁部に沿って防液部材32が配置されている。また、導電板5において短辺側の面である側面5A及び側面5Bの全面にわたって、電気絶縁性を有する絶縁膜33が設けられている。導電板5では、長辺側の面である側面5Cと側面5Dとを結ぶ方向に冷却用流体Gを流通させる流路5aが設けられており、側面5C及び側面5Dに対応する封止体12の側面12C及び側面12Dには、積層方向Dから見て蓄電モジュール4の外方に向かって張り出す庇部34が設けられている。
【0046】
このような構成を有する蓄電装置1では、側面5A側の縁部及び側面5B側の縁部に沿って導電板5の接続面31と封止体12との間に配置された防液部材32により、蓄電モジュール4の外部に漏れ出た電解液が導電板5の接続面31と封止体12との間に浸入することを防止できる。また、この蓄電装置1では、導電板5における側面5A及び側面5Bに設けられた絶縁膜33により、蓄電モジュール4の外部に漏れ出た電解液が蓄電モジュール4間に滞留したとしても、電解液が帯電することを防止できる。
【0047】
例えば
図7(a)に示すように、導電板105の短辺側の側面105A及び側面105Bに絶縁膜33が設けられていない蓄電装置101では、蓄電モジュール104の外部に漏れ出た電解液Eが蓄電モジュール104間に滞留すると、隣り合う蓄電モジュール104同士を電気的に接続する導電板5に電解液Eが接触することにより、電解液Eが帯電する。この場合、モジュール積層体102の絶縁距離は、一の蓄電モジュール104間に滞留する電解液Eから、蓄電モジュール104の側面(封止体112の側面112A,112B)を経て、一の蓄電モジュール104間と隣り合う蓄電モジュール104間に滞留する電解液Eに至る距離で表される。
【0048】
一方、
図7(b)に示すように、導電板5の側面5A及び側面5Bに絶縁膜33が設けられた蓄電装置1では、蓄電モジュール4の外部に漏れ出た電解液Eが蓄電モジュール4間に滞留したとしても、電解液Eが導電板5の導電部分に接触しないため、電解液Eが帯電することを防止できる。この場合、モジュール積層体2の絶縁距離は、一の導電板5の側面5A,5Bから、蓄電モジュール4の側面(封止体12の側面12A,12B)を経て、一の導電板5と隣り合う導電板5の側面5A,5Bに至る距離で表される。
【0049】
蓄電装置1では、内圧上昇時の開弁の際に圧力調整弁28からガスと共に電解液が蓄電モジュール4の外部に漏液することが考えられる。また、電解液がアルカリ溶液を含むため、いわゆるアルカリクリープ現象により、電解液が封止体12と負極終端電極18の金属板15との間を通って蓄電モジュール4の外部に漏液することが考えられる。これに対し、蓄電装置1では、導電板5の側面5A及び側面5Bに設けられた絶縁膜33により、モジュール積層体2における絶縁距離を電解液Eの滞留が無い場合と同等程度に保つことが可能となるため、モジュール積層体2においてトラッキングを含む絶縁破壊の発生を抑制することができる。
【0050】
蓄電装置1では、封止体12の側面12C及び側面12Dにおいて、積層方向Dから見て蓄電モジュール4の外方に向かって張り出す庇部34が設けられている。この庇部34により、蓄電モジュール4の外部に漏れ出た電解液が蓄電モジュール4間に滞留することを防止できる。また、庇部34の張り出しにより、封止体12の側面12C側及び側面12D側では、モジュール積層体2の絶縁距離を十分に確保できる。したがって、モジュール積層体2においてトラッキングを含む絶縁破壊の発生をより確実に抑えることができる。
【0051】
蓄電装置1では、導電板5の接続面31と、積層方向Dについて最外層に位置する第1封止部21との間に防液部材32が配置されている。このような構成により、導電板5から電極積層体11に対して十分な面圧を付加できる。
【0052】
蓄電装置1では、導電板5の内部において、冷却用流体Gを流通させる流路5aが側面5Cと側面5Dとを結ぶ方向に設けられている。この場合、導電板5に冷却機能を持たせることができる。防液部材32及び絶縁膜33は、導電板5の側面5A及び側面5Bに対して設けられるため、流路5aが設けられる側面5C及び側面5Dの構成の複雑化も回避できる。
【符号の説明】
【0053】
1…蓄電装置、2…モジュール積層体、4…蓄電モジュール、5…導電板、5a…流路、5A…側面(第1の側面)、5B…側面(第2の側面)、5C…側面(第3の側面)、5D…側面(第4の側面)、11…電極積層体、11a…側面、12…封止体、14…バイポーラ電極、15…金属板、15c…縁部、16…正極、17…負極、21…第1封止部、22…第2封止部、31…接続面、32…防液部材、33…絶縁膜、34…庇部、D…積層方向、G…冷却用流体、M…電極露出領域、V…内部空間。