(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-20
(45)【発行日】2023-06-28
(54)【発明の名称】水性化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/25 20060101AFI20230621BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20230621BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20230621BHJP
A61K 8/27 20060101ALI20230621BHJP
A61K 8/29 20060101ALI20230621BHJP
A61K 8/36 20060101ALI20230621BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20230621BHJP
A61K 8/46 20060101ALI20230621BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20230621BHJP
【FI】
A61K8/25
A61K8/02
A61K8/19
A61K8/27
A61K8/29
A61K8/36
A61K8/44
A61K8/46
A61Q19/10
(21)【出願番号】P 2020516264
(86)(22)【出願日】2019-04-17
(86)【国際出願番号】 JP2019016430
(87)【国際公開番号】W WO2019208350
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2022-02-17
(31)【優先権主張番号】P 2018085308
(32)【優先日】2018-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100149294
【氏名又は名称】内田 直人
(72)【発明者】
【氏名】尾島 晃司郎
(72)【発明者】
【氏名】八巻 悟史
【審査官】片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-273855(JP,A)
【文献】特開2006-328070(JP,A)
【文献】特開2003-113073(JP,A)
【文献】特開平11-199422(JP,A)
【文献】特開2002-087949(JP,A)
【文献】特開平04-226906(JP,A)
【文献】特開2017-043583(JP,A)
【文献】特開2003-104868(JP,A)
【文献】特表2007-514025(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K8/00-99
A61Q1/00-90/00
C11D1/00-19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)0.001~0.1質量%の、平均一次粒子径が5~100nmの親水性シリカ、
(b)0.001~0.1質量%の、着色顔料および白色顔料から選択される少なくとも1種の無機顔料、および
(c)界面活性剤を含有し、
粘度が950~10,000mPa・s
である、水性化粧料。
【請求項2】
前記(c)成分が起泡性界面活性剤である、請求項1に記載の化粧料。
【請求項3】
前記(c)成分がアニオン界面活性剤であり、その場合にさらに(d)両性界面活性剤を含有する、請求項1又は2に記載の化粧料。
【請求項4】
洗浄料である、請求項1から3のいずれか一項に記載の化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色鮮やかに着色された化粧料に関する。さらに詳しくは、多くの顔料を配合するにもかかわらず、顔料の再分散性に優れる化粧品に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧料の色材としては染料、天然色素、顔料等があるが、中でも、少ない量で鮮やかな着色が可能となる染料が多く用いられている。一方、近年では、人体および環境への安全性の観点から、顔料を色材として用いた化粧料が消費者に好まれる傾向にある。さらに、メイクアップ化粧品に加え、スキンケア化粧品に対しても色鮮やかに着色された化粧料が好まれる傾向にあり、販売価値の重要な要素となっている。
【0003】
上記のような消費者需要を満たすためには、安全性が高いとされている顔料を色材として化粧料に用い、鮮やかな色彩を実現するために従来よりも多くの量を化粧料に配合することが必要となる。しかしながら、顔料は再分散性が悪く、化粧料に高配合すると経時的に沈降および凝集し、ケーキングが生じるという問題がある。
【0004】
化粧料における顔料の分散性を改善する方法として、親水性シラン化合物又はシランカップリング剤を用いて表面処理した親水化処理顔料(特許文献1)や、特定のパーフルオロアルキル基を有するリン酸エステル化合物と特定のN-アシルアミノ酸と顔料粉体とを水系酸性領域下で中和処理して得た顔料(特許文献2)などが提案されている。
【0005】
しかしながら、上記の顔料は化粧料に配合する前に表面処理する工程が必要であるため、ケーキングを防止するためのより簡便な方法が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平9-104833
【文献】特開2007-154101
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、多くの顔料を配合しているにもかかわらず、顔料の再分散性に優れた化粧料を提供することを目的とする。中でも、従来にない色鮮やかな洗浄料等のケア化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、前記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、顔料と共に、微粒子粉末を配合し、化粧料の粘度を10,000mPa・s以下に調整することにより、配合された顔料の再分散性が優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、
(a)平均一次粒子径が1~550nmの微粒子粉末
(b)無機顔料
(c)界面活性剤
を含有し、粘度が10,000mPa・s以下である、化粧料を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、上記構成とすることにより、顔料を高配合しているにもかかわらず、顔料の再分散性に優れ、手で振り混ぜるあるいは手で揉むことによって容易に顔料が均一に再分散される化粧料を得ることができる。本発明によっては、染料を用いることなく化粧料を鮮やかに着色することができるので、より安全性の高い化粧料を実現することができる。また、本発明の化粧料にあっては、顔料を表面処理する必要が無いため製造工程が簡素化でき、製造コストを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の化粧料は、(a)平均一次粒子径が1~550nmの微粒子粉末、(b)無機顔料、および(c)界面活性剤を含有し、粘度が10,000mPa・s以下であることを特徴とする。以下、本発明の化粧料を構成する各成分について詳述する。
【0012】
<(a)平均一次粒子径が1~550nmの微粒子粉末>
本発明における微粒子粉末(以下、単に「(a)成分」と称する場合がある)は、通常化粧料に使用可能な粉体であって、平均一次粒子径が1~550nm、好ましくは3~300nm、より好ましくは5~100nmの微粒子粉末をいう。本発明の微粒子粉末としては、水系に安定して分散し得る表面親水性の微粒子粉末であることが好ましく、表面親水性の微粒子粉末には、表面処理をしていない親水性微粒子粉末、あるいは親水性物質で表面処理した疎水性又は親水性の微粒子粉末が包含される。本発明の微粒子粉末の具体例としては、シリカ、酸化チタン等が挙げられる。
【0013】
ここで、本発明における「平均一次粒子径」とは、化粧料の分野で一般的に用いられる方法で測定される一次粒子の径を意味するものであり、具体的には透過電子顕微鏡写真、あるいはレーザー散乱・回折法等から求められる、粒子の長軸と短軸の相加平均として求められる値である。
【0014】
本発明の微粒子粉末の形状は、特に限定されるものでなく、球状、板状、ロッド状等の形態であってよい。
【0015】
本発明の化粧料における(a)成分の配合量は、化粧料全量に対して0.001~0.1質量%、好ましくは0.005~0.05質量%、より好ましくは0.008~0.03質量%である。配合量が0.001質量%に満たないと再分散性が劣り、0.1質量%を超えると微粒子粉末層が目立ち外観が劣る。
【0016】
本発明は、シリカ又は酸化チタン等を母核とする微粒子粉末が他の粉末成分の再分散性を向上させる機能を有することを見出したことに基づく。本発明の(a)成分のような微粒子(「ナノ粒子」と呼ばれることもある)は、付着・凝集性が著しく高いため、その集合状態や分散の制御が極めて困難であることが知られている。本発明の系では、前記のような性質を持つ微粒子粉末((a)成分)を顔料((b)成分)とともに配合すると、微粒子粉末が顔料の間に適度に入り込みながら沈降してケーキングを防止し、「再分散性」を向上させるとも考えられる。このような効果は、従来技術から予測することが困難な有利な効果である。
【0017】
<(b)顔料>
本発明における顔料(以下、単に「(b)成分」と称する場合がある)は、色材として通常化粧料に汎用されている無機顔料であって、特に限定するものではないが、体質顔料、着色顔料、白色顔料、真珠光沢顔料(パール剤)、ラメ剤、機能性顔料等が含まれる。
【0018】
体質顔料としては、限定するものではないが、マイカ、セリサイト、タルク、カオリンなどの粘土鉱物の粉砕品、無水ケイ酸、酸化セリウム、シリカ、ステアリン酸亜鉛、合成タルク、硫酸バリウム、オキシ塩化ビスマス、アルミナ、炭酸マグネシウム等が挙げられる。
【0019】
着色顔料としては、酸化鉄(ベンガラ)、チタン酸鉄、γ-酸化鉄、黄酸化鉄(オキシ水酸化鉄)、黄土、黒酸化鉄、カーボン、低次酸化チタン、マンゴバイオレット、コバルトバイオレット、酸化クロム、水酸化クロム、チタン酸コバルト、群青、紺青等が挙げられる。
【0020】
白色顔料としては、二酸化チタン、酸化亜鉛等が挙げられる。
【0021】
真珠光沢顔料(パール剤)としては、二酸化チタン被覆雲母(雲母チタン)、酸化鉄被覆雲母チタン、カルミン被覆雲母チタン、カルミン・コンジョウ被覆雲母チタン、酸化鉄・カルミン処理雲母チタン、コンジョウ処理雲母チタン、酸化鉄・コンジョウ処理雲母チタン、酸化クロム処理雲母チタン、黒酸化チタン処理雲母チタン、アクリル樹脂被覆アルミニウム末、酸化チタン被覆マイカ、酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆タルク、着色酸化チタン被覆マイカ、酸化チタン被覆合成マイカ、酸化チタン被覆シリカ、酸化チタン被覆アルミナ、酸化チタン被覆ガラス粉、ポリエチレンテレフタレート・ポリメチルメタクリレート積層フィルム末、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔等が挙げられる。
【0022】
ラメ剤としては、樹脂や金属粉末を使用することができ、ポリエチレンテレフタレート・アルミニウム・エポキシ積層末、ポリエチレンテレフタレート・アルミニウム積層末、ポリエチレンテレフタレート・金積層末、ポリエチレンテレフタレート・ポリオレフィン積層フィルム末、ポリエチレンテレフタレート・ポリメチルメタクリレート積層フィルム末、ポリエチレン・ポリエステル積層末、ポリエチレン・ポリエチレンテレフタレート積層末、アクリル樹脂被覆アルミニウム末等が挙げられる。さらに、これらの粉末を法定色素または無機顔料で着色したものを用いることもできる。
【0023】
これら顔料として、親水化処理した顔料を用いてもよい。親水化処理した顔料としては、当分野で知られる親水化処理を施したものを用いることができる。親水化処理は有機処理、無機処理共に可能である。親水化処理剤としては、特に限定されるものではないが、多価アルコール、多糖類、水溶性高分子、金属アルコキシド、水ガラス等が挙げられる。
【0024】
機能性顔料としては、窒化ホウ素、フォトクロミック顔料、合成フッ素金雲母、鉄含有合成フッ素金雲母、微粒子複合粉体(ハイブリッドファインパウダー)等が挙げられる。
【0025】
本発明の化粧料における(b)成分の配合量は、化粧料全量に対して、0.001~0.1質量%、好ましくは0.005~0.08質量%、より好ましくは0.008~0.05質量%である。(b)成分の配合量が0.001質量%未満であると化粧料の発色が劣り、0.1質量%を超えると絵の具のような外観となり好ましくない。
【0026】
<(c)界面活性剤>
本発明における界面活性剤(以下、単に「(c)成分」と称する場合がある)は、界面活性剤として通常化粧料に用いられるものをいい、特に限定されない。
【0027】
本発明の化粧料を洗浄料として調製する場合には、(c)成分として起泡性界面活性剤を用いるのが良い。起泡性界面活性剤とは、乳化および分散性に優れ、化粧料に配合した場合に泡立ちを与える界面活性剤をいい、アニオン界面活性剤、非イオン性界面活性剤が包含される。中でも、アニオン界面活性剤を用いるのが好ましい。
【0028】
アニオン界面活性剤は、水に溶解したときに親水基の部分が陰イオンに解離するものであり、限定するものではないが、脂肪酸石鹸(例としてラウリン酸塩、ミリスチン酸塩、パルミチン酸塩等が挙げられ、塩としてはナトリウム、カリウム等がある)、長鎖アシルスルホン酸塩、N-アシルグルタミン酸塩、アルキルエーテル酢酸およびラウリルグリコール酢酸ナトリウム等のカルボン酸塩型、α-オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸等のスルホン酸型、高級アルコール硫酸エステル塩等の硫酸エステル塩型、リン酸エステル塩型等がある。本発明のアニオン界面活性剤としては、硫酸エステル塩型が好ましく用いられる。具体的には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩が挙げられる。
【0029】
具体的化合物としては、N-ラウロイル-N-メチルタウリン塩、N-ミリストイル-N-メチルタウリン塩、N-パルミトイル-N-メチルタウリン塩、N-ステアロイル-N-メチルタウリン塩、N-ココイル-N-メチルタウリン塩、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸トリエチルアミン、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸モノエタノールアミン、ラウリル硫酸ジエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム、ココイル硫酸アンモニウム、ココイル硫酸ナトリウム、ココイル硫酸カリウム、ココイル硫酸モノエタノールアミン、ラウレス硫酸アンモニウム(=POEラウリル硫酸アンモニウム)、ラウレス硫酸トリエチルアミン(=POEラウリル硫酸トリエチルアミン)、ラウレス硫酸トリエタノールアミン(=POEラウリル硫酸トリエタノールアミン)、ラウレス硫酸モノエタノールアミン(=POEラウリル硫酸モノエタノールアミン)、ラウレス硫酸ジエタノールアミン(=POEラウリル硫酸ジエタノールアミン)、ラウレス硫酸ナトリウム(=POEラウリルエーテル硫酸ナトリウム)、ラウレス硫酸カリウム(=POEラウリル硫酸カリウム)、トリデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウロイル硫酸アンモニウム、ラウロイル硫酸ナトリウム、ラウロイル硫酸カリウム、ラウロイル硫酸トリエタノールアミン、ラウロイル硫酸モノエタノールアミン、ポリオキシエチレン(2モル)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム等が挙げられる。中でも、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムを用いるのが好ましい。
【0030】
非イオン性界面活性剤は、水に溶解したときにイオン化しない親水基をもつものをいう。本発明の非イオン性界面活性剤としては、通常化粧料に用いられるものであれば特に限定されないが、ラウリン酸ポリグリセリル、ポリグリセリルラウリルエーテル、ジイソステアリン酸ポリエチレングリコール、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド(コカミドDEA)等を用いるのが好ましい。
【0031】
本発明の界面活性剤として、一種を単独で用いても良いし、二種以上を組み合わせて用いても良い。
【0032】
本発明の化粧料を、洗浄料以外の化粧料、例としてマッサージ化粧料として調製する場合には、(c)成分としてアニオン界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン界面活性剤および両性界面活性剤のいずれが用いられても良い。この場合、肌へ適用しやすくするために寒天ゲルの破砕物等が配合されるのが好ましい。
【0033】
本発明の化粧料における(c)成分の配合量は純分として、化粧料全量に対して1~30質量%、好ましくは3~20質量%、より好ましくは5~15質量%である。(c)成分の配合量が純分として1質量%未満であると化粧料に粘度が出ず、泡立ちや洗浄力が劣り、30質量%を超えると肌への刺激が強くなり、好ましくない。
【0034】
本発明の化粧料は、用途に応じて好適な粘度が異なるが、粉末の分散安定性の観点から、BL型粘度計を用いて30℃の条件下で測定した粘度が10,000mPa・s以下に調整することを特徴とする。本発明の化粧料を洗浄料として調製する場合には、8,000mPa・s以下とすることが好ましく、6,000mPa・s以下とすることがさらに好ましい。
【0035】
本発明の化粧料においては、上記(a)~(c)成分を配合し、かつ、化粧料全体の粘度を10,000mPa・s以下とすることにより、従来よりも多くの顔料が配合されているにもかかわらず、顔料の経時的な沈降・凝集が抑制され、粉末成分の再分散性に優れた化粧料を得ることができる。
【0036】
<(d)両性界面活性剤>
また、本発明の化粧料において、アニオン界面活性剤を(c)成分として用いて洗浄料として調製する場合には、さらに両性界面活性剤を配合すると、溶液中で紐状ミセルが形成されるので、他の増粘剤を配合しなくとも溶液に適度な粘性が生じ、静置時における顔料の分散性がさらに良くなる。
【0037】
本発明における両性界面活性剤(以下、単に「(d)成分」と称する場合がある)は、両性界面活性剤として通常化粧料に汎用されるものであって、特に限定されない。
両性界面活性剤は、カチオン性官能基とアニオン性官能基を少なくとも1つずつ有し、一般には、アルカリ性下でアニオン性を、酸性下でカチオン性の両イオンに解離する性質を有する。両性界面活性剤には、イミダゾリン系、アミドアミンオキシド系、アミドベタイン系、アミドスルホベタイン系、カルボベタイン系等がある。本発明の両性界面活性剤としては、カルボベタイン系が好ましく用いられる。具体的には、イミダゾリニウムベタイン、アルキルベタイン、アミドベタインが挙げられる。
【0038】
具体的化合物としては、2-ウンデシル-N,N,N-(ヒドロキシエチルカルボキシメチル)-2-イミダゾリンナトリウム、2-ココイル-2-イミダゾリニウムヒドロキシド-1-カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩、2-ヘプタデシル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、2-アルキル(C8~18)-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等が挙げられる。中でも、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタインを用いるのが好ましい。
【0039】
本発明の化粧料における(d)成分の配合量は純分として、化粧料全量に対して1~30質量%、好ましくは2~20質量%、より好ましくは3~10質量%である。(d)成分の配合量が純分として1質量%未満であると化粧料に粘度が出ず、30質量%を超えると肌への刺激が強くなり、好ましくない。
【0040】
また、本発明の洗浄料は、アニオン界面活性剤と両性界面活性剤の配合により化粧料全体に適度な粘度が付与されるので、化粧料の粘度調整のために汎用されている増粘剤の配合を必要としない。よって、本発明の洗浄料は、増粘剤を配合しない態様を含む。
【0041】
本発明の化粧料においては、寒天ゲルの破砕物を配合することにより、肌に適用した際にソフトなスクラブ効果を付与することができる。本発明の化粧料を洗浄料として調製する場合にも、マッサージ化粧料等として調製する場合にも、寒天ゲルを配合することができる。この場合の寒天ゲルの破砕物は、1mm以下の大きさであることが好ましい。
【0042】
本発明の化粧料には、上記必須成分以外に、化粧料に通常用いられる成分、例えば、水、油分、アルコール類、保湿剤、親油性界面活性剤、油性活性剤、油相増粘剤、美白剤、抗炎症剤、各種植物抽出液、pH調整剤、分散剤、酸化防止剤、香料、安定化剤等を必要に応じて適宜配合してよい。
【0043】
本発明にかかる化粧料の形態としては特に限定されず、スキンケア化粧料、メーキャップ化粧料等として利用することが可能である。中でも、特定の界面活性剤の配合により洗浄力とともに適度な粘性が得られるので、洗浄剤として特に好適である。本発明の化粧料によれば、顔料の高配合により従来の洗浄料に比して色鮮やかに発色した化粧料を得ることができる。
【0044】
本発明の化粧料は、粉末を配合する化粧料として常法により製造することができる。
【実施例】
【0045】
以下に具体例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例等における配合量は特に断らない限り質量%を示す。
【0046】
実施例に先立ち、微粒子粉末の再分散性に対する影響を検討した。具体的には、下記表1に示す成分を混合・溶解して、溶液A~Dを調製し、容器に移し、室温で5000rpmにて3時間遠心分離した後に容器をゆっくりと上下に10回振とうしたときの顔料の再分散性の状態を目視にて観察した。
【0047】
【0048】
ベントナイトは粉末成分の再分散性を良くするために従来より用いられる水性増粘剤である。試験の結果、シリカもベントナイトも配合していない溶液Dでは顔料のケーキングが生じたが、微粒子シリカを配合する溶液Aでは顔料(黄酸化鉄)が良好に再分散した。一方、今回の顔料を高配合した系においては、粉末成分の再分散性の改善のために従来より用いられるベントナイトを配合してもケーキングが生じた(溶液C)。また、平均一次粒子径が大きいシリカを用いた場合には顔料の再分散性を改善する効果が見られなかった(溶液B)。
【0049】
次に、下記表2および3に示す組成を有する化粧料を調製して、(1)粘度の測定、(2)顔料の再分散性の評価を行った。評価は以下のように行った。
【0050】
(1)粘度の測定
調製した試料を広口容器に入れ、30℃で1日間静置した後、BL型粘度計(ロータNo.6、10回転)により粘度(mPa・s)を測定した。
【0051】
(2)再分散性の評価
調製した試料をパウチ容器に入れ、70℃で3日間静置した後、手で揉むことによって粉末成分を再分散させたときの状態を評価した。
【0052】
(実施例1~3)
下記表2に示す組成のうち、水相成分を混合し、加熱・溶解させた後、寒天ゲルを添加・混合することによって、洗浄料を調製した。
【0053】
【0054】
表2に示されるように、いずれの洗浄料においても顔料のケーキングは生じず、顔料の再分散性に優れた、色鮮やかに発色した洗浄剤が得られた。また、実施例1~3の洗浄料は、粘度調整のために増粘剤を配合しなくとも、アニオン界面活性剤(POEラウリルエーテル硫酸ナトリウム)と両性界面活性剤(ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン)とを配合することにより、適度な粘度を得ることができた。
【0055】
(実施例4~6)
下記表3に示す組成のうち、寒天ゲルを除く成分を混合し、加熱・溶解させた後、寒天ゲルを添加・混合することによって、液体石鹸洗浄料を調製した。
【0056】
【0057】
表3に示されるように、いずれの液体洗浄料においても顔料のケーキングは生じず、顔料の再分散性に優れた、色鮮やかに発色した液体洗浄剤が得られた。