(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-20
(45)【発行日】2023-06-28
(54)【発明の名称】有機半導体層を含む有機電子デバイス
(51)【国際特許分類】
C07C 15/52 20060101AFI20230621BHJP
C07F 9/53 20060101ALI20230621BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20230621BHJP
H01L 29/786 20060101ALI20230621BHJP
H01L 31/0256 20060101ALI20230621BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20230621BHJP
H10K 50/16 20230101ALI20230621BHJP
C07C 255/50 20060101ALI20230621BHJP
【FI】
C07C15/52 CSP
C07F9/53
G09F9/30 365
H01L29/78 618B
H01L31/04 320
H05B33/14 A
H05B33/22 B
C07C255/50
(21)【出願番号】P 2020520578
(86)(22)【出願日】2018-10-10
(86)【国際出願番号】 EP2018077628
(87)【国際公開番号】W WO2019072928
(87)【国際公開日】2019-04-18
【審査請求日】2021-08-26
(32)【優先日】2017-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503180100
【氏名又は名称】ノヴァレッド ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ガラン,エレナ
(72)【発明者】
【氏名】カルディナリ,フロンソワ
(72)【発明者】
【氏名】シュルツェ,ベンヤミン
【審査官】坂口 岳志
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105001855(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0080322(KR,A)
【文献】特開平11-260551(JP,A)
【文献】特開平08-012600(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101445422(CN,A)
【文献】国際公開第2011/106990(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第105481672(CN,A)
【文献】特表2015-506092(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102276414(CN,A)
【文献】ZHAO, Zujin et al.,Chem. Commun.,2014年,50,1131-1133
【文献】HUANG, Jing et al.,J. Mater. Chem.,2012年,22,12001-12007
【文献】BANERJEE, Moloy et al.,J. Org. Chem.,2007年,72,8054-8061
【文献】LIU, Baiquan et al,APPLIED MATERIALS AND INTERFACES,2017年09月07日,9,34162 - 34171,https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28880519/
【文献】ZHAN, Xuejun et al. ,CHEMICAL SCIENCE,2016年,7(7),4355 - 4363,http://dx.doi.org/10.1039/C6SC00559D
【文献】SHIH PING-I,ADVANCED FUNCTIONAL MATERIALS,2007年11月05日,17(16),3141 - 3146,http://dx.doi.org/10.1002/adfm.200700355
【文献】KIM, Soo-Kang et al.,THIN SOLID FILMS,2008年12月31日,517(4),1349 - 1353,http://dx.doi.org/10.1016/j.tsf.2008.09.038
【文献】KIM, Soo-Kang et al. ,2007 SID INTERNATIONAL SYMPOSIUM, SOCIETY FOR INFORMATION DISPLAY / DIGEST,米国,2007年05月20日,XXXVIII,879 - 882,https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1889/1.2785449
【文献】HE, Bairong et al,Dyes and Pigments,2014年,106,87-93
【文献】HUANG, Jing et al.,Chem. Eur. J.,2014年,20,5317-5326
【文献】RUAN, ZHIJUN et al,SMALL,2016年,12(47),6623 - 6632,http://dx.doi.org/10.1002/smll.201602285
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C07F
H01L
H10K 50/00
G09F 9/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iによる化合物:
【化1】
式中、
X
1~X
20は、C-H、C-Zから独立して選択され、および/または化学結合によって互いに結合している、X
1~X
5、X
6~X
10、X
11~X
15、X
16~X
20のうちの少なくとも2つは、架橋されて縮環した非ヘテロ芳香環を形成し
、1つのX
1~X
20がC-Zから選択され;
Zは、式IIの置換基である:
【化2】
式中、
Ar
1は
、非置換のアントラセ
ンであ
り;
Ar
2は、置換
されたC
6-60非ヘテロアリールから独立して選択され、
ここで、前記C
6-60非ヘテロアリールの置換基は
、直鎖状フッ素化C
1-C
12アルキル、もしくは直鎖状フッ素化C
1-C
12アルコキシ;C
3-C
12分岐環状フッ素化アルキル、C
3-C
12環状フッ素化アルキル、C
3-C
12環状フッ素化アルコキシ、ニトリル、OR、SR、(C=O)R、(C=O)NR
2
、(S=O)R、(S=O)
2R、(P=O)R
2から独立して選択さ
れ;
Rは、H、C
1-C
20直鎖状アルキル、C
1-C
20アルコキシ、C
1-C
20チオアルキル、C
3-C
20分岐アルキル、C
3-C
20環状アルキル、C
3-C
20分岐アルコキシ、C
3-C
20環状アルコキシ、C
3-C
20分岐チオアルキル、C
3-C
20環状チオアルキル、C
6-C
20非ヘテロアリールから独立して選択され;
nは、
1であり;
mは、1、2または3から選択され
;
前記式Iの化合物は、少なくとも8個~14個の非ヘテロ芳香環を含み;
Ar
2の非ヘテロ6員芳香環は、単結合を介してAr
1に直接結合し;
前記式Iの化合物は、1つの非ヘテロテトラアリールエチレン基(TAE)のみを含み;かつ
ただ1つのテトラアリールエチレン基(TAE)は、単結合を介してAr
1に直接結合
する。
【請求項2】
前記式Iの化合物は、少なくとも8個~14個の非ヘテロ芳香環を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記式Iの化合物は、少なくとも8個~14個の非ヘテロ芳香族6員環を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
前記式Iの化合物は、N、O、Sの群から選択されたヘテロ原子、(P=O)R
2、および-CNを含む少なくとも1つの置換基を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
前記式Iの化合物は、少なくとも8個~14個の非ヘテロ芳香族6員環を含み、かつヘテロ原子を含まない、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
前記Ar
1基は、少なくとも1個~3個の非ヘテロ芳香族6員環を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
前記Ar
2基は、1個~9個の非ヘテロ芳香族6員環を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
少なくとも1つの非ヘテロC
6~C
18アリーレンは、少なくとも式(I)の非ヘテロ芳香環A、B、CおよびDに縮環される、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
式Iにおいて、
X
1~X
20は、C-H、C-Zから独立して選択され、ここで、1つのX
1~X
20がC-Zから選択され;
Zは、式IIの置換基である、請求項1に記載の化合物:
【化3】
式中、
Ar
1は
、非置換
のアントラセン
であり;
Ar
2は、置換
されたC
12-60アリールから独立して選択され、
ここで、前記置換基は、ニトリル、ジアルキルホスフィンオキシド、ジアリールホスフィンオキシド、フッ素化C
1-C
6アルキルまたはフッ素化C
1-C
6アルコキシ、OR、SR、(C=O)R、(C=O)NR
2
、(S=O)R、(S=O)
2R、(P=O)R
2から独立して選択され;
Rは、直鎖状C
1-C
20アルキル、直鎖状C
1-C
20アルコキシ、直鎖状C
1-C
20チオアルキル、分岐C
3-C
20アルキル、分岐C
3-C
20アルコキシ、分岐C
3-C
20チオアルキル、C
6-20アリールから独立して選択され;
nは、1
であり;
mは、1、2または3から選択される。
【請求項10】
式Iにおいて、
X
1~X
20は、C-H、C-Zから独立して選択され、ここで、1つのX
1~X
20がC-Zから選択され;
Zは、式IIの置換基である、請求項1に記載の化合物:
【化4】
式中、
Ar
1は
、非置換
のアントラセン
であり;
Ar
2は、置換
されたC
12-52アリールから独立して選択され、
ここで、前記置換基は、ニトリル、フッ素化C
1-C
6アルキルまたはフッ素化C
1-C
6アルコキシ、OR、SR、(C=O)R、(C=O)NR
2
、(S=O)R、(S=O)
2R、(P=O)R
2から独立して選択され;
Rは、直鎖状C
1-C
10アルキル、直鎖状C
1-C
10アルコキシ、直鎖状C
1-C
10チオアルキル、分岐C
3-C
10アルキル、分岐C
3-C
10アルコキシ、分岐C
3-C
10チオアルキル、C
6-12アリールから独立して選択され;
nは、1から選択され;
mは、1または2から選択される。
【請求項11】
Zは、式E
2~E
4から選択される、請求項1に記載の化合物:
【化5】
式中
、
Ar
2は、置換
された非ヘテロC
6-60アリールから独立して選択され、
ここで、前記置換基は、ニトリル、ジアルキルホスフィンオキシド、ジアリールホスフィンオキシド、フッ素化C
1-C
6アルキルまたはフッ素化C
1-C
6アルコキシ、OR、SR、(C=O)R、(C=O)NR
2
、(S=O)R、(S=O)
2R、(P=O)R
2から独立して選択され;
Rは、直鎖状C
1-C
20アルキル、直鎖状C
1-C
20アルコキシ、直鎖状C
1-C
20チオアルキル、分岐C
3-C
20アルキル、分岐C
3-C
20アルコキシ、分岐C
3-C
20チオアルキル、C
6-20非ヘテロアリールから独立して選択され;
mは、1、2または3から選択される。
【請求項12】
Ar
2は、式F
2またはF
3から選択される、請求項1に記載の化合物
。
【化6】
【請求項13】
Ar
2は、少なくとも1つの置換
された1,1,2,2-テトラフェニルエチレン基を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項14】
前記式Iの化合物は、G1
およびG31~G34から選択される、請求項1に記載の化合物。
【化7】
【請求項15】
有機半導体層を含む有機電子デバイスであって、
少なくとも1つの有機半導体層が、請求項1に記載の式Iの化合物を含む、有機電子デバイス。
【請求項16】
前記有機半導体層は、光活性層とカソード層との間に配置される、請求項
15に記載の有機電子デバイス。
【請求項17】
前記少なくとも1つの有機半導体層は、少なくとも1つのアルカリハロゲン化物またはアルカリ有機錯体をさらに含む、請求項
15に記載の有機電子デバイス。
【請求項18】
前記電子デバイスは、少なくとも1つの有機半導体層と、少なくとも1つのアノード層と、少なくとも1つのカソード層と、少なくとも1つの発光層とを含む、請求項
15に記載の有機電子デバイス。
【請求項19】
前記電子デバイスは、発光デバイス、薄膜トランジスタ、バッテリ、表示デバイスまたは光電池である、請求項
15に記載の有機電子デバイス。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明は、電子デバイスの層材料として使用される化合物、前記層材料を含む有機電子デバイス、および前記有機電子デバイスの製造方法に関する。
【0002】
[背景技術]
自己発光型デバイスである有機電子デバイス(例えば、有機発光ダイオードOLED)は、視野角が広く、コントラストが良好で、応答が速く、高輝度であり、動作電圧特性に優れ、色再現性を有する。典型的なOLEDは、アノード、正孔輸送層(HTL:hole transport layer)、発光層(EML:emission layer)、電子輸送層(ETL:electron transport layer)、およびカソードを含み、これらは基板上に順番に積層されている。なお、HTL、EMLおよびETLは、有機化合物から形成されている薄膜である。
【0003】
アノードおよびカソードに電圧を印加すると、アノードから注入された正孔はHTLを経由してEMLに移動する。また、カソードから注入された電子は、ETLを経由してEMLに移動する。正孔および電子は、EML中で再結合して励起子を生成する。励起子が励起状態から基底状態に遷移すると、光が放出される。前記構造を有するOLEDが優れた効率および/または長寿命を有するように、正孔および電子の注入と流量はバランスをとるべきである。
【0004】
有機発光ダイオードの性能は、有機半導体層の特性に影響され、中でも、有機半導体層の有機材料の特性に影響され得る。
【0005】
特に、有機電子デバイス(例えば、有機発光ダイオード)を大型のフラットパネルディスプレイに適用できるように、電子の移動度を高めると同時に電子の化学的安定性も高めることができる有機材料の開発が求められている。
【0006】
有機半導体層、有機半導体材料および有機電子デバイスの性能を向上させること、とりわけ、それらに含まれている化合物の特性を向上させることによって、高効率を実現する必要性が、依然としてある。
【0007】
特に、低動作電圧において高効率である、代替的な有機半導体材料および有機半導体層、ならびに有機電子デバイスが求められている。
【0008】
動作電圧を維持しつつ高効率であり、それによって、例えば携帯電子デバイスの消費電力が低くなり長い電池寿命をもたらす、代替的な化合物が求められている。
【0009】
[開示]
本発明の一態様は、式Iによる化合物を提供する:
【0010】
【0011】
式中、
X1~X20は、C-H、C-Zから独立して選択され、および/または化学結合によって互いに結合している、X1~X5、X6~X10、X11~X15、X16~X20のうちの少なくとも2つは、架橋されて縮環した芳香環を形成し、ここで、少なくとも1つのX1~X20がC-Zから選択され;
Zは、式IIの置換基である:
【0012】
【0013】
式中、
Ar1は、置換もしくは非置換のフェニレン、置換もしくは非置換のビフェニレン、置換もしくは非置換のトリフェニレン、置換もしくは非置換のアントラセン、または置換もしくは非置換のC14~C18融合非ヘテロアリールから独立して選択され、
ここで、前記置換されたフェニレン、前記置換されたビフェニレン、前記置換されたトリフェニレン、前記置換されたアントラセン、または前記置換されたC14~C18融合アリールの置換基は、ニトリル、直鎖状C1-20アルキル、分岐C3-20アルキルもしくはC3-20環状アルキル、直鎖状C1-12フッ素化アルキル、直鎖状C1-12フッ素化アルコキシ、分岐C3-12フッ素化アルキル、分岐C3-12フッ素化アルコキシ、C3-12環状フッ素化アルキル、C3-12環状フッ素化アルコキシ、OR、SR、(P=O)R2、-NR2R3またはBR2R3から独立して選択され;
Ar2は、置換または非置換のC6-60非ヘテロアリールから独立して選択され、
ここで、前記C6-60非ヘテロアリールの置換基は、C1-C20直鎖状アルキル、C3-C20分岐アルキルもしくはC3-C20環状アルキル;C1-C20直鎖状アルコキシ、C3-C20分岐アルコキシ;直鎖状フッ素化C1-C12アルキル、もしくは直鎖状フッ素化C1-C12アルコキシ;C3-C12分岐環状フッ素化アルキル、C3-C12環状フッ素化アルキル、C3-C12環状フッ素化アルコキシ、ニトリル、OR、SR、(C=O)R、(C=O)NR2、SiR3、(S=O)R、(S=O)2R、(P=O)R2から独立して選択されるか、あるいは
Ar2は、X1~X20がC-Zではないことを除く式Iであり;
R、R2およびR3は、H、C1-C20直鎖状アルキル、C1-C20アルコキシ、C1-C20チオアルキル、C3-C20分岐アルキル、C3-C20環状アルキル、C3-C20分岐アルコキシ、C3-C20環状アルコキシ、C3-C20分岐チオアルキル、C3-C20環状チオアルキル、C6-C20非ヘテロアリールから独立して選択され;
nは、1または2であり;
mは、1、2または3から選択され;
非ヘテロ芳香環A、B、CおよびDのいずれも、単結合を介してトリアジン環に連結されておらず;
式Iの化合物は、少なくとも約8個~約14個の非ヘテロ芳香環を含み;
Ar2の非ヘテロ6員芳香環は、単結合を介してAr1に直接結合し;
ただ1つのテトラアリールエチレン基(TAE)は、単結合を介してAr1に直接結合し;
その鏡像上に重ね合わせることができる式Iの化合物を任意に除く。
【0014】
式Iによる化合物は、例えば、有機電子デバイスのための層材料として使用することができる。
【0015】
一実施形態によれば、非ヘテロ芳香環A、B、Cおよび/またはDのいずれも、互いに直接的に架橋されて、縮環した芳香環を形成することができない。
【0016】
本明細書中で使用される場合、m=1は、Ar1が1つのAr2置換基で置換されていることを意味する。本明細書中で使用される場合、m=2は、Ar1が2つのAr2置換基で置換されていることを意味する。本明細書中で使用される場合、m=3は、Ar1が3つのAr2置換基で置換されていることを意味する。
【0017】
一実施形態によれば、化合物は、式Iに従って提供される:
【0018】
【0019】
式中、
X1~X20は、C-H、C-Zから独立して選択され、および/または化学結合によって互いに結合している、X1~X5、X6~X10、X11~X15、X16~X20のうちの少なくとも2つは、架橋されて縮環した芳香環を形成し、ここで、少なくとも1つのX1~X20がC-Zから選択され;
Zは、式IIの置換基である:
【0020】
【0021】
式中、
Ar1は、置換もしくは非置換のフェニレン、置換もしくは非置換のビフェニレン、置換もしくは非置換のトリフェニレン、置換もしくは非置換のアントラセン、または置換もしくは非置換のC14~C18融合非ヘテロアリールから独立して選択され、
ここで、前記置換されたフェニレン、前記置換されたビフェニレン、前記置換されたトリフェニレン、前記置換されたアントラセン、または前記置換されたC14~C18融合アリールの置換基は、ニトリル、直鎖状C1-20アルキル、分岐C3-20アルキルもしくはC3-20環状アルキル、直鎖状C1-12フッ素化アルキル、直鎖状C1-12フッ素化アルコキシ、分岐C3-12フッ素化アルキル、分岐C3-12フッ素化アルコキシ、C3-12環状フッ素化アルキル、C3-12環状フッ素化アルコキシ、OR、SR、(P=O)R2から独立して選択され;
Ar2は、置換または非置換のC6-60非ヘテロアリールから独立して選択され、
ここで、前記C6-60非ヘテロアリールの置換基は、C1-C20直鎖状アルキル、C3-C20分岐アルキルもしくはC3-C20環状アルキル;C1-C20直鎖状アルコキシ、C3-C20分岐アルコキシ;直鎖状フッ素化C1-C12アルキル、もしくは直鎖状フッ素化C1-C12アルコキシ;C3-C12分岐環状フッ素化アルキル、C3-C12環状フッ素化アルキル、C3-C12環状フッ素化アルコキシ、ニトリル、OR、SR、(C=O)R、(C=O)NR2、SiR3、(S=O)R、(S=O)2R、(P=O)R2から独立して選択されるか、または
Ar2は、X1~X20がC-Zではないことを除く式Iであり、
Rは、C1-C20直鎖状アルキル、C1-C20アルコキシ、C1-C20チオアルキル、C3-C20分岐アルキル、C3-C20環状アルキル、C3-C20分岐アルコキシ、C3-C20環状アルコキシ、C3-C20分岐チオアルキル、C3-C20環状チオアルキル、C6-C20非ヘテロアリールから独立して選択され;
nは、1または2であり;
mは、1、2または3から選択され;
非ヘテロ芳香環A、B、CおよびDのいずれも、単結合を介してトリアジン環に連結されておらず;
式Iの化合物は、少なくとも約8個~約14個の非ヘテロ芳香環を含み;
Ar2の非ヘテロ6員芳香環は、単結合を介してAr1に直接結合し;
1つ、2つまたは3つのテトラアリールエチレン基(TAE)は、単結合を介してAr1に直接結合し;
式Iの化合物は、三重結合を含まず;かつ、その鏡像上に重ね合わせることができる式Iの化合物を任意に除く。
【0022】
別の態様によれば、層材料は、有機電子デバイスに使用される有機半導体層とすることができる。例えば、有機電子デバイスは、OLED等であってもよい。
【0023】
一実施形態によれば、非ヘテロ芳香環A、B、Cおよび/またはDのいずれも、互いに直接的に架橋されて、縮環した芳香環を形成することができない。
【0024】
本明細書中で使用される場合、m=1は、Ar1が1つのAr2置換基で置換されていることを意味する。本明細書中で使用される場合、m=2は、Ar1が2つのAr2置換基で置換されていることを意味する。本明細書中で使用される場合、m=3は、Ar1が3つのAr2置換基で置換されていることを意味する。
【0025】
一実施形態によれば、化合物は、式Iに従って提供される:
【0026】
【0027】
式中、
X1~X20は、C-H、C-Zから独立して選択され、および/または化学結合によって互いに結合している、X1~X5、X6~X10、X11~X15、X16~X20のうちの少なくとも2つは、架橋されて縮環した芳香環を形成し、ここで、少なくとも1つのX1~X20がC-Zから選択され;
Zは、式IIの置換基である:
【0028】
【0029】
式中、
Ar1は、置換もしくは非置換のフェニレン、置換もしくは非置換のビフェニレン、置換もしくは非置換のトリフェニレン、置換もしくは非置換のアントラセン、または置換もしくは非置換のC14~C18融合非ヘテロアリールから独立して選択され、
ここで、前記置換されたフェニレン、前記置換されたビフェニレン、前記置換されたトリフェニレン、前記置換されたアントラセン、または前記置換されたC14~C18融合アリールの置換基は、ニトリル、直鎖状C1-20アルキル、分岐C3-20アルキルもしくはC3-20環状アルキル、直鎖状C1-12フッ素化アルキル、直鎖状C1-12フッ素化アルコキシ、分岐C3-12フッ素化アルキル、分岐C3-12フッ素化アルコキシ、C3-12環状フッ素化アルキル、C3-12環状フッ素化アルコキシ、OR、SR、(P=O)R2から独立して選択され;
Ar2は、置換または非置換のC6-60非ヘテロアリールから独立して選択され、
ここで、前記C6-60非ヘテロアリールの置換基は、C1-C20直鎖状アルキル、C3-C20分岐アルキルもしくはC3-C20環状アルキル;C1-C20直鎖状アルコキシ、C3-C20分岐アルコキシ;直鎖状フッ素化C1-C12アルキル、もしくは直鎖状フッ素化C1-C12アルコキシ;C3-C12分岐環状フッ素化アルキル、C3-C12環状フッ素化アルキル、C3-C12環状フッ素化アルコキシ、ニトリル、OR、SR、(C=O)R、(C=O)NR2、SiR3、(S=O)R、(S=O)2R、(P=O)R2から独立して選択されるか、または
Ar2は、X1~X20がC-Zではないことを除く式Iであり、
Rは、C1-C20直鎖状アルキル、C1-C20アルコキシ、C1-C20チオアルキル、C3-C20分岐アルキル、C3-C20環状アルキル、C3-C20分岐アルコキシ、C3-C20環状アルコキシ、C3-C20分岐チオアルキル、C3-C20環状チオアルキル、C6-C20非ヘテロアリールから独立して選択され;
nは、1または2であり;
mは、1、2または3から選択され;
非ヘテロ芳香環A、B、CおよびDのいずれも、単結合を介してトリアジン環に連結されておらず;
式Iの化合物は、少なくとも8個~14個の非ヘテロ芳香環を含み;
Ar2の非ヘテロ6員芳香環は、単結合を介してAr1に直接結合し;
式Iの化合物は、ヘテロ芳香環を含まず;かつ、その鏡像上に重ね合わせることができる式Iの化合物を任意に除く。
【0030】
一実施形態によれば、化合物は、式Iに従って提供される:
【0031】
【0032】
式中、
X1~X20は、C-H、C-Zから独立して選択され、および/または化学結合によって互いに結合している、X1~X5、X6~X10、X11~X15、X16~X20のうちの少なくとも2つは、架橋されて縮環した芳香環を形成し、ここで、少なくとも1つのX1~X20がC-Zから選択され;
Zは、式IIの置換基である:
【0033】
【0034】
式中、
Ar1は、置換もしくは非置換のフェニレン、置換もしくは非置換のビフェニレン、置換もしくは非置換のトリフェニレン、置換もしくは非置換のアントラセン、または置換もしくは非置換のC14~C18融合非ヘテロアリールから独立して選択され、
ここで、前記置換されたフェニレン、前記置換されたビフェニレン、前記置換されたトリフェニレン、前記置換されたアントラセン、または前記置換されたC14~C18融合アリールの置換基は、ニトリル、直鎖状C1-20アルキル、分岐C3-20アルキルもしくはC3-20環状アルキル、直鎖状C1-12フッ素化アルキル、直鎖状C1-12フッ素化アルコキシ、分岐C3-12フッ素化アルキル、分岐C3-12フッ素化アルコキシ、C3-12環状フッ素化アルキル、C3-12環状フッ素化アルコキシ、OR、SR、(P=O)R2から独立して選択され;
Ar2は、置換または非置換のC6-60非ヘテロアリールから独立して選択され、
ここで、前記C6-60非ヘテロアリールの置換基は、C1-C20直鎖状アルキル、C3-C20分岐アルキルもしくはC3-C20環状アルキル;C1-C20直鎖状アルコキシ、C3-C20分岐アルコキシ;直鎖状フッ素化C1-C12アルキル、もしくは直鎖状フッ素化C1-C12アルコキシ;C3-C12分岐環状フッ素化アルキル、C3-C12環状フッ素化アルキル、C3-C12環状フッ素化アルコキシ、ニトリル、OR、SR、(C=O)R、(C=O)NR2、SiR3、(S=O)R、(S=O)2R、(P=O)R2から独立して選択されるか、または
Ar2は、X1~X20がC-Zではないことを除く式Iであり、
Rは、C1-C20直鎖状アルキル、C1-C20アルコキシ、C1-C20チオアルキル、C3-C20分岐アルキル、C3-C20環状アルキル、C3-C20分岐アルコキシ、C3-C20環状アルコキシ、C3-C20分岐チオアルキル、C3-C20環状チオアルキル、C6-C20非ヘテロアリールから独立して選択されてよく;
nは、1または2であり;
mは、1、2または3から選択され;
非ヘテロ芳香環A、B、CおよびDのいずれも、単結合を介してトリアジン環に連結されておらず;
式Iの化合物は、少なくとも8個~14個の非ヘテロ芳香環を含み;
Ar2の非ヘテロ6員芳香環は、単結合を介してAr1に直接結合し;
式Iの化合物は、約8個~約14個の非ヘテロ芳香族6員環、好ましくは約8個~約12個の非ヘテロ芳香族6員環および約0個~約4個の非ヘテロ芳香族5員環、好ましくは約1個~約2個の非ヘテロ芳香族5員環を含み、任意の式Iの化合物は、ヘテロ芳香環を含まず;かつ、
その鏡像上に重ね合わせることができる式Iの化合物を任意に除く。
【0035】
一実施形態によれば、式Iによる化合物が提供され、当該式Iの化合物は、約8個~約14個の非ヘテロ芳香族6員環および約0個~約4個の非ヘテロ芳香族5員環を含む。
【0036】
一実施形態によれば、式Iによる化合物が提供され、当該式Iの化合物は、約8個~約14個の非ヘテロ芳香族6員環、好ましくは約9個~約13個の非ヘテロ芳香族6員環、さらに好ましくは約10個~約12個の非ヘテロ芳香族6員環を含む。
【0037】
一実施形態によれば、式Iによる化合物が提供され、当該式Iの化合物は、約0個~約4個の非ヘテロ芳香族5員環、好ましくは約1個~3個の非ヘテロ芳香族5員環、さらに好ましくは2個の非ヘテロ芳香族5員環を含む。
【0038】
一実施形態によれば、式Iによる化合物が提供され、当該式Iの化合物は、約8個~約14個の非ヘテロ芳香族6員環、好ましくは約9個~約13個の非ヘテロ芳香族6員環、さらに好ましくは約10個~約12個の非ヘテロ芳香族6員環と;約0個~約4個の非ヘテロ芳香族5員環、好ましくは約1個~3個の非ヘテロ芳香族5員環、さらに好ましくは2個の非ヘテロ芳香族5員環とを含む。
【0039】
一実施形態によれば、式Iによる化合物が提供され、Ar1は、約1個~約3個の非ヘテロ芳香族6員環、好ましくは約2個~約3個の非ヘテロ芳香族6員環を含む。
【0040】
一実施形態によれば、式Iによる化合物が提供され、Ar2は、約1個~約9個の非ヘテロ芳香族6員環、好ましくは約2個~約8個の非ヘテロ芳香族6員環または約4個~約6個の非ヘテロ芳香族6員環を含む。
【0041】
非ヘテロ芳香環の総数は、式Iの化合物が8個~14個の非ヘテロ芳香環を含むように選択されることに留意されたい。
【0042】
一実施形態によれば、8個~14個の非ヘテロ芳香環を含む式Iによる化合物が提供され、当該8個~14個の非ヘテロ芳香環は、6員非ヘテロ芳香環である。
【0043】
一実施形態によれば、式Iによる化合物が提供され、式Iの化合物の置換基は、ニトリルおよび/または(P=O)R2(式中、Rは、C1-C20直鎖状アルキル、C1-C20アルコキシ、C1-C20チオアルキル、C3-C20分岐アルキル、C3-C20環状アルキル、C3-C20分岐アルコキシ、C3-C20環状アルコキシ、C3-C20分岐チオアルキル、C3-C20環状チオアルキルまたはC6-C20非ヘテロアリールから独立して選択され、Rは同一であるかまたは異なってもよい)から独立して選択され得る。
【0044】
一実施形態によれば、式Iによる化合物が提供され、式Iの化合物の置換基は、ニトリルおよび/または(P=O)R2(式中、Rは、C1-C12直鎖状アルキル、C1-C12アルコキシ、C1-C12チオアルキル、C3-C12分岐アルキル、C3-C12環状アルキル、C3-C12分岐アルコキシ、C3-C12環状アルコキシ、C3-C12分岐チオアルキル、C3-C12環状チオアルキルまたはC12非ヘテロアリールから独立して選択され、Rは同一であるかまたは異なってもよい)から独立して選択され得る。
【0045】
一実施形態によれば、式Iによる化合物が提供され、式Iの化合物の置換基は、ニトリルおよび/または(P=O)R2(式中、Rは、C1-C6直鎖状アルキル、C1-C6アルコキシ、C1-C6チオアルキル,C3-C6分岐アルキル、C3-C6環状アルキル、C3-C6分岐アルコキシ、C3-C6環状アルコキシ、C3-C6分岐チオアルキル、C3-C6環状チオアルキルまたはC6非ヘテロアリールから独立して選択され、Rは同一であるかまたは異なってもよい)から独立して選択され得る。
【0046】
一実施形態によれば、8個~14個の非ヘテロ芳香環を含む式Iによる化合物が提供され、当該8個~14個の非ヘテロ芳香環は、6員非ヘテロ芳香環である。
【0047】
一実施形態によれば、式Iによる化合物が提供され、Ar2の置換基は、ニトリルおよび/または(P=O)R2(式中、Rは、C1-C20直鎖状アルキル、C1-C20アルコキシ、C1-C20チオアルキル、C3-C20分岐アルキル、C3-C20環状アルキル、C3-C20分岐アルコキシ、C3-C20環状アルコキシ、C3-C20分岐チオアルキル、C3-C20環状チオアルキルまたはC6-C20非ヘテロアリールから独立して選択され、Rは同一であるかまたは異なってもよい)から独立して選択され得る。
【0048】
一実施形態によれば、式Iによる化合物が提供され、Ar2の置換基は、ニトリルおよび/または(P=O)R2(式中、Rは、C1-C12直鎖状アルキル、C1-C12アルコキシ、C1-C12チオアルキル、C3-C12分岐アルキル、C3-C12環状アルキル、C3-C12分岐アルコキシ、C3-C12環状アルコキシ、C3-C12分岐チオアルキル、C3-C12環状チオアルキルまたはC12非ヘテロアリールから独立して選択され、Rは同一であるかまたは異なってもよい)から独立して選択され得る。
【0049】
一実施形態によれば、式Iによる化合物が提供され、Ar2の置換基は、ニトリルおよび/または(P=O)R2、(式中、Rは、C1-C6直鎖状アルキル、C1-C6アルコキシ、C1-C6チオアルキル、C3-C6分岐アルキル、C3-C6環状アルキル、C3-C6分岐アルコキシ、C3-C6環状アルコキシ、C3-C6分岐チオアルキル、C3-C6環状チオアルキルまたはC6非ヘテロアリールから独立して選択され、Rは同一であるかまたは異なってもよい)から独立して選択され得る。
【0050】
一実施形態によれば、式Iによる化合物が提供され、Ar1は、ヘテロ原子を含まない。
【0051】
その鏡像上に重ねることができ、かつ式Iの化合物から除かれる化合物は、例えば、化合物S1~S4を含む群から選択される:
【0052】
【0053】
【0054】
その鏡像上に重ねることができる化合物は、例えば、対称面を描くことができる分子式を有する化合物である。対称面は、分子を、互いに鏡像である半分に二等分する仮想平面である。そのような対称面は、化合物の狭窄部(S1~4)において破線で示されている。
【0055】
一実施形態によれば、化合物S1、S2およびS3、またはS1~S4は、式Iから除かれる:
【0056】
【0057】
【0058】
一実施形態によれば、有機電子デバイスの層材料として使用するための、式Iによる化合物が提供される:
【0059】
【0060】
式中、
X1~X20は、C-H、C-R1、C-Zから独立して選択され、および/または化学結合によって互いに結合している、X1~X5、X6~X10、X11~X15、X16~X20のうちの少なくとも2つは、架橋されて縮環した非ヘテロ芳香環を形成し、
ここで、少なくとも1つのX1~X20がC-Zから選択され;
R1は、-NR2R3またはBR2R3から選択され;
R2およびR3は、独立して選択されたC6-24アリールであり;
Zは、式IIの置換基である:
【0061】
【0062】
式中、
Ar1は、置換または非置換のC6-C60アリールから独立して選択され、C6-C60アリールの置換基は、直鎖状C1-20アルキル、分岐C3-20アルキルまたはC3-20環状アルキル、直鎖状C1-12フッ素化アルキル、直鎖状C1-12フッ素化アルコキシ、分岐C3-12フッ素化アルキル、分岐C3-12フッ素化アルコキシ、C3-12環状フッ素化アルキル、C3-12環状フッ素化アルコキシ、OR、SR、(P=O)R2から独立して選択され;
Ar2は、
- X1~X20がC-Zではないことを除く式I、
- 置換または非置換のC6-60アリール、および置換または非置換のC2-C60ヘテロアリール
から独立して選択され、
ここで、前記C6-60アリールの置換基は、C1-C20直鎖状アルキル、C3-C20分岐アルキルまたはC3-C20環状アルキル;C1-C20直鎖状アルコキシ、C3-C20分岐アルコキシ;直鎖状フッ素化C1-C12アルキル、または直鎖状フッ素化C1-C12アルコキシ;C3-C12分岐環状フッ素化アルキル、C3-C12環状フッ素化アルキル、C3-C12環状フッ素化アルコキシ;ニトリル;OR、SR、(C=O)R、(C=O)NR2、SiR3、(S=O)R、(S=O)2R、(P=O)R2から独立して選択され、
Rは、C1-C20直鎖状アルキル、C1-C20アルコキシ、C1-C20チオアルキル、C3-C20分岐アルキル、C3-C20環状アルキル、C3-C20分岐アルコキシ、C3-C20環状アルコキシ、C3-C20分岐チオアルキル、C3-C20環状チオアルキル、C6-C20アリールから独立して選択され;
nは、1または2であり;
mは、0、1、2または3から選択され;
非ヘテロ芳香環A、B、CおよびDのいずれも、単結合を介してトリアジン環に連結されておらず;
その鏡像上に重ね合わせることができる式Iの化合物は除かれ、かつ
Ar1およびAr2が同一である式Iの化合物が除かれる。
【0063】
一実施形態によれば、有機電子デバイスの層材料として使用するための、式Iによる化合物が提供される:
【0064】
【0065】
式中、
X1~X20は、C-H、C-R1、C-Zから独立して選択され、および/または化学結合によって互いに結合している、X1~X5、X6~X10、X11~X15、X16~X20のうちの少なくとも2つは、架橋されて縮環した非ヘテロ芳香環を形成し、
ここで、少なくとも1つのX1~X20がC-Zから選択され;
R1は、-NR2R3またはBR2R3から選択され;
R2およびR3は、独立して選択されたC6-24アリールであり;
Zは、式IIの置換基である:
【0066】
【0067】
式中、
Ar1は、置換または非置換のC6-C60アリールから独立して選択され、C6-C60アリールの置換基は、直鎖状C1-20アルキル、分岐C3-20アルキルまたはC3-20環状アルキル、直鎖状C1-12フッ素化アルキル、直鎖状C1-12フッ素化アルコキシ、分岐C3-12フッ素化アルキル、分岐C3-12フッ素化アルコキシ、C3-12環状フッ素化アルキル、C3-12環状フッ素化アルコキシ、OR、SR、(P=O)R2から独立して選択され;
Ar2は、
- X1~X20がC-Zではないことを除く式I、
- 置換または非置換のC6-60アリール、および置換または非置換のC2-C60ヘテロアリール
から独立して選択され、
ここで、前記C6-60アリールの置換基は、C1-C20直鎖状アルキル、C3-C20分岐アルキルまたはC3-C20環状アルキル;C1-C20直鎖状アルコキシ、C3-C20分岐アルコキシ;直鎖状フッ素化C1-C12アルキル、または直鎖状フッ素化C1-C12アルコキシ;C3-C12分岐環状フッ素化アルキル、C3-C12環状フッ素化アルキル、C3-C12環状フッ素化アルコキシ;ニトリル;OR、SR、(C=O)R、(C=O)NR2、SiR3、(S=O)R、(S=O)2R、(P=O)R2から独立して選択され、
Rは、C1-C20直鎖状アルキル、C1-C20アルコキシ、C1-C20チオアルキル、C3-C20分岐アルキル、C3-C20環状アルキル、C3-C20分岐アルコキシ、C3-C20環状アルコキシ、C3-C20分岐チオアルキル、C3-C20環状チオアルキル、C6-C20アリールから独立して選択され;
nは、1または2であり;
mは、0、1、2または3から選択され;
非ヘテロ芳香環A、B、CおよびDのいずれも、単結合を介してトリアジン環に連結されておらず;
その鏡像上に重ね合わせることができる式Iの化合物は除かれ、
Ar1およびAr2が同一である式Iの化合物が除かれ、かつ
Zは少なくとも4個のC6アリール環を含み、または好ましくは、Zは少なくとも4個のC6アリール環および少なくとも1個の6員N-ヘテロアリール環を含む。
【0068】
別の実施形態によれば、Zは少なくとも5個のC6アリール環を含み、または好ましくは、Zは少なくとも5個のC6アリール環および少なくとも1個の6員N-ヘテロアリール環を含む。
【0069】
別の実施形態によれば、Zは少なくとも6個のC6アリール環を含み、または好ましくは、Zは少なくとも6個のC6アリール環および少なくとも1個の6員N-ヘテロアリール環を含む。
【0070】
別の実施形態によれば、Zは少なくとも7個のC6アリール環を含み、または好ましくは、Zは少なくとも7個のC6アリール環および少なくとも1個の6員N-ヘテロアリール環を含む。
【0071】
別の実施形態によれば、Zは少なくとも8個のC6アリール環を含み、または好ましくは、Zは少なくとも8個のC6アリール環および少なくとも1個の6員N-ヘテロアリール環を含む。
【0072】
別の実施形態によれば、Zは少なくとも9個のC6アリール環を含み、または好ましくは、Zは少なくとも9個のC6アリール環および少なくとも1個の6員N-ヘテロアリール環を含む。
【0073】
別の実施形態によれば、Zは少なくとも10個のC6アリール環を含み、または好ましくは、Zは少なくとも10個のC6アリール環および少なくとも1個の6員N-ヘテロアリール環を含む。
【0074】
一態様によれば、層材料は、有機電子デバイスに使用される有機半導体層とすることができる。例えば、有機電子デバイスは、OLED等であってもよい。
【0075】
式Iの一実施形態によれば、非置換または置換のA、B、CおよびD非ヘテロアリーレン環(ここで、前記A、B、CおよびD非ヘテロアリーレン環の少なくとも1つは、C-Zによって置換されている)は、式Iの置換テトラアリールエチレン化合物(TAE)を形成するエチレン基に単結合を介してそれぞれ結合している。
【0076】
式IIの一実施形態によれば、Ar1およびAr2は、単結合を介して結合される。
【0077】
式1で表される化合物は、電子輸送特性が強く、電荷移動度および/または安定性が増強する。それによって、蛍光効率、電圧特性および/または長寿命特性が向上する。
【0078】
式1で表される化合物は、電子移動度が高く、動作電圧が低い。
【0079】
有機半導体層は、非発光性でよい。
【0080】
本明細書の文脈において、「実質的に非発光性」または「非発光」という用語は、その化合物または層の、デバイスからの可視発光スペクトルに対する寄与が、当該可視発光スペクトルに対して10%未満、好ましくは5%未満であることを意味する。可視発光スペクトルとは、波長が約380nm以上~約780nm以下の発光スペクトルである。
【0081】
好ましくは、式1の化合物を含む有機半導体層は、実質的に非発光性または非発光である。
【0082】
「有さない(free of)」、「含まない(does not contain)」、「備えない(does not comprise)」という記載は、堆積前の化合物に存在し得る不純物を排除しない。不純物は、本発明によって達成される目的に対して技術的な効果を有さない。
【0083】
動作電圧(Uとも呼ばれる)は、平方センチ当たり10ミリアンペア(mA/cm2)で、ボルト(V)で測定される。
【0084】
アンペア効率当たりのカンデラ(cd/A効率とも呼ばれる)は、平方センチメートル当たり10ミリアンペア(mA/cm2)で、アンペア当たりのカンデラで測定される。
【0085】
外部量子効率(EQEとも呼ばれる)は、パーセント(%)で測定される。
【0086】
色空間については、座標CIE-xおよびCIE-y(国際照明委員会、1931年)によって示される。青色発光には、CIE-yは特に重要である。CIE-yが小さいほど青色が濃くなる。
【0087】
最高被占分子軌道(HOMOとも呼ばれる)および最低空軌道(LUMOとも呼ばれる)は、電子ボルト(eV)で算出される。
【0088】
「OLED」、「有機発光ダイオード(organic light emitting diode)」、「有機発光デバイス」、「有機光電子デバイス」、および「有機発光ダイオード(organic light-emitting diode)」という語は同時に用いられ、同じ意味を持つ。
【0089】
「遷移金属」という語は、周期表のdブロック中の任意の元素を意味し、かつ包含している。dブロックは、周期表上で3族から12族の元素を含む。
【0090】
「III~VI族金属」という語は、周期表のIII~VI族中の任意の金属を意味し、かつ包含している。
【0091】
「寿命(life-span)」および「寿命(有効期間、lifetime)」という語は同時に用いられ、同じ意味を持つ。
【0092】
本明細書において、「重量パーセント(weight percent)」、「重量%(wt.-%)」、「重量パーセント(percent by weight)」、「重量%(% by weight)」、およびそれらの変形は、それぞれの電子輸送層の組成物、成分、物質、または剤の重量を、該電子輸送層の組成の総重量で割り、かつ100倍したときの、組成物、成分、物質、または剤を指す。それぞれの電子輸送層のすべての組成物、成分、物質、または剤の重量パーセントの合計は、100重量%を超えないように選択される。
【0093】
本明細書において、「体積パーセント(volume percent)」、「体積%(vol.-%)」、「体積パーセント(percent by volume)」、「体積%(% by volume)」およびそれらの変形は、それぞれの電子輸送層の元素金属、組成物、成分、物質、または剤の体積を、該それぞれ電子輸送層の組成の総体積で割り、かつ100倍したときの、元素金属、組成物、成分、物質、または剤を指す。それぞれのカソード電極層のすべての元素金属、組成物、成分、物質、または剤の体積パーセントの合計は、100体積%を超えないように選択される。
【0094】
本明細書において、数値はすべて、明示の有無を問わず、「約」という語によって修飾されていると見なされる。本明細書において、「約」という語は、数量において起こり得る変動を意味する。
【0095】
「約」という語による修飾の有無を問わず、本願請求項は前記量に対する均等物を含む。
【0096】
本明細書および添付の請求項において、単数形「a」、「an」、「the」は、明確な断りがない限り、複数の対象を含むことに留意されたい。
【0097】
アノード電極およびカソード電極は、アノード電極/カソード電極、またはアノード電極/カソード電極、またはアノード電極層/カソード電極層と記載してよい。
【0098】
別の一態様によれば、有機光電子デバイスは、互いに対向するアノード層およびカソード層、ならびに該アノード層およびカソード層の間にある少なくとも1つの有機半導体層を含んでおり、該有機半導体層は式Iの化合物を含むまたは式Iの化合物からなる。
【0099】
さらに別の一態様によれば、有機電子デバイス(有機光電子デバイスであり得る)を備える表示デバイスが提供される。
【0100】
本明細書において、他に定義されていない場合、「アルキル基」は脂肪族炭化水素基を意味し得る。アルキル基は、二重結合または三重結合を有しない「飽和アルキル基」を意味し得る。
【0101】
アルキル基は、C1~C20アルキル基、または好ましくはC1~C12アルキル基でよい。より具体的には、アルキル基はC1~C20アルキル基、または好ましくはC1~C10アルキル基もしくはC1~C6アルキル基でよい。例えば、C1~C4アルキル基は、アルキル鎖に1~4つの炭素を含み、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチルおよびt-ブチルから選択されてもよい。
【0102】
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基およびシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0103】
本明細書において、他に定義されていない場合、Rは、C1-C20直鎖状アルキル、C1-C20アルコキシ、C1-C20チオアルキル、C3-C20分岐アルキル、C3-C20環状アルキル、C3-C20分岐アルコキシ、C3-C20環状アルコキシ、C3-C20分岐チオアルキル、C3-C20環状チオアルキル、非ヘテロC6-C20アリールから独立して選択される。
【0104】
好ましくは、Rは、C1-C10直鎖状アルキル、C1-C10アルコキシ、C1-C10チオアルキル、C3-C10分岐アルキル、C3-C10環状アルキル、C3-C10分岐アルコキシ、C3-C10環状アルコキシ、C3-C10分岐チオアルキル、C3-C10環状チオアルキル、非ヘテロC6-C18アリールから独立して選択してもよい。
【0105】
より好ましくは、Rは、C1-C3直鎖アルキル、C6-C18アリールから独立して選択してもよい。
【0106】
本明細書において、「アリーレン基」は、少なくとも1つの炭化水素芳香族部分を含む基を指し得、該炭化水素芳香族部分のすべての元素はp軌道を有し、該p軌道は共役を形成する。例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、ピレニル基、フルオレニル基等である。
【0107】
アリーレン基は、単環、多環、または縮合環多環(つまり、炭素原子の対を共有する、隣接する環)の官能基を含んでもよい。
【0108】
「ヘテロアリーレン」という語は、少なくとも1つのヘテロ原子を有する芳香族ヘテロ環を指し得、炭化水素ヘテロ芳香族部分のすべての元素はp軌道を有し、該p軌道は共役を形成する。ヘテロ原子は、N、O、S、B、Si、P、Se、好ましくはN、OおよびSから選択されてよい。
【0109】
本明細書において、「ヘテロアリーレン」という語は、ピリジン、キノリン、キナゾリン、ピリジン、トリアジン、ベンズイミダゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾ[4,5]チエノ[3,2-d]ピリミジン、カルバゾール、キサンテン、フェノキサジン、ベンゾアクリジン、ジベンゾアクリジン等を含む。
【0110】
本明細書において、単結合とは直接結合を指す。
【0111】
本明細書において、他に定義されていない場合、X1~X20は、C-H、C-R1、C-Zから独立して選択され、および/または、化学結合によって互いに結合しているX1~X5、X6~X10、X11~X15、X16~X20の少なくとも2つは、架橋されて縮環した非ヘテロ芳香環を形成し、ここで、少なくとも1つのX1~X20がC-Zから選択される。
【0112】
より好ましくは、X1~X20は、C-H、C-R1、C-Zから独立して選択され、および/または、化学結合によって互いに結合しているX1~X5、X6~X10、X11~X15、X16~X20の少なくとも2つは、架橋されて縮環した芳香環を形成し、1つのX1~X20がC-Zである。
【0113】
さらに好ましくは、X1~X20は、C-H、C-Zから独立して選択され、少なくとも1つのX1~X20がC-Zであってもよい。
【0114】
また好ましくは、X1~X20は、C-H、C-Zから独立して選択され、少なくとも1つのX1~X20がC-Zであってもよい。
【0115】
本明細書において、他に定義されていない場合、R1は、-NR2R3または-BR2R3から選択され;R2およびR3は独立して非ヘテロC6-24アリールから選択される。
【0116】
さらに好ましくは、式IのX1~X20は、C-R1を有さない。
【0117】
本明細書において、他に定義されていない場合、Ar1は、置換もしくは非置換のC6-C60アリールから独立して選択される。非ヘテロC6-C60アリールの置換基は、直鎖状C1-C20アルキル、分岐C3-C20アルキルまたはC3-C20環状アルキル、直鎖状C1-C12フッ素化アルキル、直鎖状C1-C12フッ素化アルコキシ、分岐C3-C12フッ素化アルキル、分岐C3-C12フッ素化アルコキシ、C3-C12環状フッ素化アルキル、C3-C12環状フッ素化アルコキシ、OR、およびSRから独立して選択される。
【0118】
好ましくは、Ar1は、置換もしくは非置換の非ヘテロC6-C18アリールから独立して選択される。非ヘテロC6-C18アリールの置換基は、直鎖状C1-C10アルキル、分岐C3-C10アルキルまたはC3-C10環状アルキル、直鎖状C1-C12フッ素化アルキル、直鎖状C1-C12フッ素化アルコキシ、分岐C3-C12フッ素化アルキル、分岐C3-C12フッ素化アルコキシ、C3-C12環状フッ素化アルキル、C3-C12環状フッ素化アルコキシ、OR、およびSRから独立して選択される。
【0119】
より好ましくは、Ar1は、置換もしくは非置換の非ヘテロC6-C12アリールから独立して選択される。C6-C12非ヘテロアリールの置換基は、直鎖状C1-C3アルキル、分岐C3-C5アルキル、OR、およびSRから独立して選択される。
【0120】
さらに好ましくは、Ar1は、非置換のC6-C12非ヘテロアリールから独立して選択される。
【0121】
より好ましくは、Ar1は、置換されていない。
【0122】
本明細書において、他に定義されていない場合、Ar2は、以下から独立して選択される:
- 式I(但し、X1~X20がC-Zではない場合を除く)
- 置換または非置換のC6-60非ヘテロアリールであって、前記C6-60非ヘテロアリールの置換基は、C1-C20直鎖状アルキル、C3-C20分岐アルキルまたはC3-C20環状アルキル;C1-C20直鎖状アルコキシ、C3-C20分岐アルコキシ;直鎖状フッ素化C1-C12アルキルまたは直鎖状フッ素化C1-C12アルコキシ;C3-C12分岐環状フッ素化アルキル、C3-C12環状フッ素化アルキル、C3-C12環状フッ素化アルコキシ、ニトリル、OR、SR、(C=O)R、(C=O)NR2、SiR3、(S=O)R、(S=O)2R、および(P=O)R2から独立して選択される。
【0123】
好ましくは、Ar2は、以下から独立して選択される:
- 式I(但し、X1~X20がC-Zではない場合を除く)
- 置換または非置換のC12-C60非ヘテロアリールであって、前記C12-C60非ヘテロアリールの置換基は、C1-C10直鎖状アルキル、C3-C10分岐アルキルまたはC3-C10環状アルキル;C1-C10直鎖状アルコキシ、C3-C10分岐アルコキシ;直鎖状フッ素化C1-C6アルキルまたは直鎖状フッ素化C1-C6アルコキシ;C3-C6分岐環状フッ素化アルキル、C3-C6環状フッ素化アルキル、C3-C6環状フッ素化アルコキシ、ニトリル、OR、SR、(C=O)R、(C=O)NR2、SiR3、(S=O)R、(S=O)2R、および(P=O)R2から独立して選択される。
【0124】
より好ましくは、Ar2は、以下から独立して選択される:
- 式I(但し、X1~X20がC-Zではない場合を除く)
- 置換または非置換のC18-C60非ヘテロアリールであって、前記C18-C60非ヘテロアリールの置換基は、C1-C10直鎖状アルキル、C3-C10分岐アルキルまたはC3-C10環状アルキル;C1-C10直鎖状アルコキシ、C3-C10分岐アルコキシ;直鎖状フッ素化C1-C6アルキルまたは直鎖状フッ素化C1-C6アルコキシ;C3-C6分岐環状のフッ素化アルキル、C3-C6環状フッ素化アルキル、C3-C6環状フッ素化アルコキシ、ニトリル、OR、SR、(C=O)R、(C=O)NR2、SiR3、(S=O)R、(S=O)2R、および(P=O)R2から独立して選択される。
【0125】
さらに好ましくは、Ar2は、以下から独立して選択される:
- 式Iであって、X1~X20はNおよびC-Hから独立して選択され、好ましくはC-Hである
- 置換または非置換のC24-C60非ヘテロアリールであって、前記C24-C60非ヘテロアリールの置換基は、C1-C10直鎖状アルキル、C3-C10分岐アルキルまたはC3-C10環状アルキル;C1-C10直鎖状アルコキシ、C3-C10分岐アルコキシ;直鎖状フッ素化C1-C6アルキルまたは直鎖状フッ素化C1-C6アルコキシ;C3-C6分岐環状フッ素化アルキル、C3-C6環状フッ素化アルキル、C3-C6環状フッ素化アルコキシ、ニトリル、OR、SR、(C=O)R、(C=O)NR2、SiR3、(S=O)R、(S=O)2R、および(P=O)R2から選択される。
【0126】
また好ましくは、Ar2は、以下から独立して選択される:
- 式Iであって、X1~X20はNおよびC-Hから独立して選択され、好ましくはC-Hである
- 置換または非置換のC24-C60非ヘテロアリールであって、前記C24-C60非ヘテロアリールの置換基は、ニトリルおよび(P=O)R2から独立して選択される。
【0127】
より好ましくは、Ar2は、置換されていない。
【0128】
本明細書において、他に定義されていない場合、nは1または2であり、より好ましくはnが1であってもよい。
【0129】
本明細書において、他に定義されていない場合、mは1、2または3から選択される。より好ましくはmが1または2であってもよい。
【0130】
一実施形態によれば、式Iによる化合物は、
- 少なくとも8個~14個の非ヘテロ芳香環、好ましくは少なくとも9個~13個の非ヘテロ芳香環、さらに好ましくは少なくとも10個~12個の非ヘテロ芳香環を含む;および/または
- 少なくとも8個~14個の非ヘテロ芳香族6員環、好ましくは少なくとも9個~13個の非ヘテロ芳香族6員環、さらに好ましくは少なくとも10個~12個の非ヘテロ芳香族6員環を含む;および/または
- その鏡像上に重ね合わせることができない;および/または
- N、O、Sから選択されたヘテロ原子を含む少なくとも1つの置換基および/または(P=O)R2、-CNの少なくとも1つの置換基、好ましくは少なくとも1つのヘテロ原子N、2つもしくは3つのヘテロN原子、さらに好ましくは少なくとも1つのヘテロN、およびより好ましくは(P=O)R2、またはCNから選択された少なくとも1つの置換基、および最も好ましくは(P=O)R2から選択された少なくとも1つの置換基、を含む;および/または
- 1つの非ヘテロテトラアリールエチレン基(TAE)のみを含む。
【0131】
1つの好ましい実施形態によれば、式Iによる化合物は、少なくとも8個~14個の非ヘテロ芳香環、好ましくは少なくとも9個~13個の非ヘテロ芳香環、さらに好ましくは少なくとも10個~12個の非ヘテロ芳香環を含むことができる。
【0132】
1つの好ましい実施形態によれば、式Iによる化合物は、非ヘテロ芳香環A、B、CおよびDの少なくとも1つを含むことができ、その少なくとも1つの芳香環は異なって置換されており、さらに好ましくは式Iの非ヘテロ芳香環A、B、CおよびDの少なくとも2つは異なって置換されている。
【0133】
1つの好ましい実施形態によれば、式Iによる化合物は、その鏡像上に重ね合わせることができない。
【0134】
1つの好ましい実施形態によれば、式Iによる化合物は、N、Oおよび/またはSから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む少なくとも1つの置換基を含んでいてもよく、好ましくは、少なくとも1つのN、2つまたは3つのN原子を含んでいてもよい。
【0135】
1つの好ましい実施形態によれば、式Iによる化合物は、ニトリル、OR、SR、(C=O)R、(C=O)NR2、SiR3、(S=O)R、(S=O)2R、(P=O)R2から選択される少なくとも1つの置換基を含んでいてもよい。
【0136】
1つの好ましい実施形態によれば、式Iによる化合物は、N、Oおよび/またはSから選択される少なくとも1つのヘテロ原子、ならびに、ニトリル、OR、SR、(C=O)R、(C=O)NR2、SiR3、(S=O)R、(S=O)2R、(P=O)R2から選択される少なくとも1つの置換基を含んでいてもよい。
【0137】
1つの好ましい実施形態によれば、式Iによる化合物は、少なくとも1つのNを含む少なくとも1つの置換基を含み、さらに、N、Oおよび/またはSから選択される少なくとも1つのヘテロ原子、ならびに、ニトリルおよび/または(P=O)R2から選択される少なくとも1つの置換基を含んでいてもよい。
【0138】
好ましい一実施形態によれば、式Iによる化合物は、非ヘテロテトラアリールエチレン(TAE:tetraarylethylene)基を1つのみ含んでいてもよい。
【0139】
1つの好ましい実施形態によれば、式Iによる化合物は、非ヘテロテトラアリールエチレン(TAE)基を少なくとも2つ含んでいてもよい。
【0140】
非ヘテロテトラアリールエチレン(TAE)基は、エチレンにおけるアリール置換基がヘテロ原子(炭素または水素とは異なる原子である)を含まないことを意味する。
【0141】
ヘテロテトラアリールエチレン(TAE)基は、エチレンにおけるアリール置換基の少なくとも1つが、少なくとも1つのヘテロ原子(炭素または水素とは異なる原子である)を含むことを意味する。
【0142】
「C6-アリーレン環」という語は、単一のC6-アリーレン環、および、縮合環系を形成するC6-アリーレン環を意味する。例えば、ナフタレン基は2つのC6-アリーレン環として数えられる。
【0143】
式Iの他の実施形態によれば、式1の化合物は、少なくとも8~14個の非ヘテロ6員芳香環を含み、ヘテロ原子を含まない。
【0144】
他の実施形態によれば、式1の化合物の双極子モーメントは約0デバイ以上、約3デバイ以下であり、好ましくは約0デバイ以上、約2デバイ以下である。
【0145】
式Iの化合物の双極子モーメントは、好ましくは0デバイ以上、1デバイ以下、より好ましくは0デバイ以上、0.8デバイ以下であり、また好ましくは0デバイ以上、0.4デバイ以下から選択してもよい。
【0146】
驚くべきことに、式Iによる化合物の双極子モーメントが前記範囲から選択されるときに、式Iの化合物を含む有機半導体層は特に、高伝導性および低動作電圧であることを見出した。
【0147】
N原子を含む分子の双極子モーメント
【0148】
【0149】
は、以下の式によって与えられる。
【0150】
【0151】
【0152】
式中、
【0153】
【0154】
は、分子における部分電荷および原子の位置である。
【0155】
双極子モーメントは、半経験的な分子軌道法によって求められる。
【0156】
気相における部分電荷および原子の位置は、プログラムパッケージTURBOMOLE V6.5で実行されるhybrid functional B3LYP with the 6-31G* basis setを適用することによって得られる。複数の配座が可能な場合、もっとも低い全エネルギーを有する配座を選択して双極子モーメントを求める。
【0157】
他の実施形態によれば、式Iの化合物の還元電位は、テトラヒドロフランにおけるFc/Fc+に対して測定した場合、-1.9Vよりも負であり、-2.6Vよりも正であり、好ましくは、-2Vよりも負であり、-2.5Vよりも正である。
【0158】
還元電位は、定電位装置Metrohm PGSTAT30およびソフトウェアMetrohm Autolab GPESを用いて、室温でのサイクリックボルタンメトリーによって測定する。酸化還元電位は、式Iの化合物の0.1MのTHF溶液(アルゴンにより脱気してある、無水)中で、アルゴン雰囲気下にて測定した。支持電解質として、0.1Mのテトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェートを使用した。白金製作用電極間にて、塩化銀で被覆されている銀ワイヤーからなるAg/AgCl疑似基準電極(Metrohm銀製棒電極)を用いて測定した。測定溶液に直接浸漬し、スキャン速度は100mV/sとした。1回目の測定は、作用電極間に最も広い範囲の電位を設定し、その後の測定に際して、当該範囲を適宜調整した。最後の3回の測定は、標準としてフェロセン(濃度:0.1M)を添加して行った。化合物のカソードのピークおよびアノードのピークに対応する電位の平均は、Fc+/Fc標準酸化還元対について測定したカソード電位およびアノード電位の平均を差し引いて得られる。
【0159】
特に、還元電位が前記範囲から選択されるとき、エミッション層への良好な電子注入および/または電子輸送、および/または安定性を達成し得る。
【0160】
他の実施形態によれば、式Iの化合物のガラス転移温度Tgは、約105℃以上、約380℃以下、好ましくは約110℃以上、約350℃以下、さらに好ましくは約150℃以上、約320℃以下であってもよい。
【0161】
他の実施形態によれば、式Iの化合物のガラス転移温度Tgは、約105℃以上、約150℃以下であってもよい。
【0162】
ガラス転移温度は窒素下で測定され、当該測定は、示差走査熱量計Mettler Toledo DSC 822eを用いて10K/分の加熱速度で行われる。当該測定については、DIN EN ISO 11357(2010年3月公開)を参照されたい。
【0163】
他の実施形態によれば、式Iの化合物の、レート開始温度TRO(rate onset temperature)は、約150℃以上、約400℃以下、好ましくは約180℃以上、約380℃以下であってもよい。
【0164】
TGA(熱重量分析)における重量損失カーブは、Mettler Toledo TGA-DSC 1 systemによって測定される。純窒素を流しながら、加熱速度10K/分で室温から600℃に試料を加熱する。9~11mgの試料を、蓋が無い100μLのMettler Toledoアルミニウムパンに入れる。0.5重量%の重量損失が発生したときに温度を測定する。
【0165】
室温(周囲温度とも称する)は23℃である。
【0166】
気相への遷移に対するレート開始温度は、100mgの化合物をVTE源へ入れることで測定した。VTE源として、Kurt J. Lesker Company (www.lesker.com)またはCreaPhys GmbH (http://www.creaphys.com)によって提供されている、有機材料の点源を使用する。VTE(真空熱蒸着、vacuum thermal evaporation)源の温度は、VTE源中の化合物と直接接触するサーモカップルによって測定する。
【0167】
VTE源は、真空チャンバ内で10-7mbar~10-8mbarの圧力下において、15K/分の一定の割合で加熱し、サーモカップルを用いてVTE源の内部温度を測定する。化合物の蒸着を、QCM検出器を用いて検出する。当該検出器は、検出器の石英結晶上に積層された化合物を検出する。石英結晶上への積層速度は、1秒間当たりのオングストロームで測定する。レート開始温度を測定するために、VTE源の温度に対する積層速度(対数スケール)をプロットする。レート開始温度は、QCM検出器上に顕著な蒸着が起こるときの温度である(0.02Å/秒の速度で定義される)。VTE源を3回加熱冷却し、2回目および3回目のみの実施から得られた結果を、レート開始温度の測定に使用した。
【0168】
レート開始温度は、化合物の揮発性の間接的な尺度である。レート開始温度が高いほど、化合物の揮発性が低い。
【0169】
驚くべきことに、式1の化合物および本発明の有機電子デバイスは、従来技術で知られている有機エレクトロルミネセントデバイスおよび化合物に比べて、とりわけcd/A効率(電流効率とも称する)に関して優れており、それにより、本発明の課題を解決することがわかった。同時に、動作電圧は、同様の、またはさらに向上したレベルに保たれる。これは、例えば、携帯表示デバイスの電力消費を抑え、電池寿命を延ばすのに重要である。高いcd/A効率は高効率を達成するために重要であり、これにより、携帯デバイス(例えば携帯表示デバイス)の電池寿命が増す。
【0170】
有機エレクトロルミネセントデバイスを青色蛍光デバイスとして使用したときに、特に良好な性能が実現されることを発明者らは驚くべきことに発見した。
【0171】
本明細書に記載の、好ましい特定の構成が特に有益であることが分かった。
【0172】
同様に、本発明の最も広い定義の範囲に含まれるいくつかの化合物は、驚くべきことに、上述したcd/A効率の特性に関して特に良好な性能を示すことが分かった。本明細書において説明するこれらの化合物は特に好適である。
【0173】
さらに、高効率および/または長寿命の有機光電子デバイスを実現可能である。
【0174】
以下、一実施形態に係る有機光電子デバイス用の化合物について説明する。
【0175】
一実施形態に係る有機光電子デバイス用の化合物は、本発明の式1で表される。
【0176】
本発明の式1の化合物は、電子の注入もしくは輸送を促し、または、化合物のガラス転移温度を上昇させる。従って、分子間相互作用の抑制によって蛍光効率が上昇し、化合物の分子量に対する蒸着温度が低くなり得る。
【0177】
従って、式1で表される有機光電子デバイス用の化合物によってフィルムまたは層を形成するとき、式1の化合物の特異的な立体形状によって、正孔または電子の注入および輸送、ならびに、デバイスのフィルムまたは層の耐久性が最適化される。従って、電荷輸送基の良好な分子間配置が達成し得る。
【0178】
よって、式1の化合物を有機光電子デバイスに使用するとき、当該化合物によって、エミッション層への迅速な注入がもたらされ、蛍光効率が上昇し得る。一方、当該化合物を、正孔注入または輸送特性が優れている材料と混合してエミッション層を形成すると、当該化合物によって、効率的な電荷注入および励起子の発生がもたらされ、優れた蛍光効率を得ることができる。
【0179】
さらに、式1で表される有機光電子デバイス用の化合物は、優れた電子注入および輸送特性を有し得る。さらに、優れた正孔特性を有する化合物との混合物として電子注入補助層またはエミッション層の形成に使用されるときでさえ、式1の化合物は優れた電子注入および輸送特性を維持し得る。
【0180】
式Iによる化合物の一実施形態によれば、
- Ar1基は、少なくとも1~3個の非ヘテロ芳香族6員環、好ましくは1個または2個の非ヘテロ芳香族6員環を含むことができる;および/または
- Ar2基は、1個~9個の非ヘテロ芳香族6員環、好ましくは2個~8個の非ヘテロ芳香族6員環、さらに好ましくは3個~6個の非ヘテロ芳香族6員環;さらに好ましくは4個または5個の非ヘテロ芳香族6員環を含むことができる;および/または
- 少なくとも1個の非ヘテロC6~C18アリーレン、好ましくは少なくとも1個の非ヘテロC6~C12アリーレンは、少なくとも、式(I)の非ヘテロ芳香環A、B、CおよびD上で縮環される。
【0181】
一実施形態によれば、式Iにおいて、
X1~X20は、C-H、C-R1、C-Zから独立して選択され、ここで、少なくとも1つのX1~X20は、C-Zから選択され;
R1は、-NR2R3またはBR2R3から選択され;
R2およびR3は、独立して選択されたC6-16非ヘテロアリールであり;
Zは、式IIの置換基である:
【0182】
【0183】
式中、
Ar1は、置換または非置換の非ヘテロC6-18アリールから独立して選択され、
ここで、前記置換基は、ニトリル、ジアルキルホスフィンオキシド、ジアリールホスフィンオキシド、フッ素化C1-C6アルキルまたはフッ素化C1-C6アルコキシ、OR、SR、(C=O)R、(C=O)NR2、SiR3、(S=O)R、(S=O)2R、(P=O)R2から独立して選択され;
Ar2は、置換または非置換の非ヘテロC12-60アリールから独立して選択され、
ここで、前記置換基は、ニトリル、ジアルキルホスフィンオキシド、ジアリールホスフィンオキシド、フッ素化C1-C6アルキルまたはフッ素化C1-C6アルコキシ、OR、SR、(C=O)R、(C=O)NR2、SiR3、(S=O)R、(S=O)2R、(P=O)R2から独立して選択され;
Rは、直鎖状C1-C20アルキル、直鎖状C1-C20アルコキシ、直鎖状C1-C20チオアルキル、分岐C3-C20アルキル、分岐C3-C20アルコキシ、分岐C3-C20チオアルキル、C6-20非ヘテロアリールから独立して選択され;
nは、1または2であり;
mは、1、2または3から選択され、好ましくは1である。
【0184】
一実施形態によれば、式Iにおいて、
X1~X20は、C-H、C-R1、C-Zから独立して選択され、ここで、少なくとも1つのX1~X20はC-Zから選択され;
R1は、-NR2R3またはBR2R3から選択され;
R2およびR3は、独立して選択されたC6-16非ヘテロアリールであり;
Zは、式IIの置換基である:
【0185】
【0186】
式中、
Ar1は、置換または非置換の非ヘテロC6-18アリールから独立して選択され、
ここで、前記置換基は、ニトリル、ジアルキルホスフィンオキシド、ジアリールホスフィンオキシド、フッ素化C1-C6アルキルまたはフッ素化C1-C6アルコキシ、OR、SR、(C=O)R、(C=O)NR2、SiR3、(S=O)R、(S=O)2R、(P=O)R2から独立して選択され;
Ar2は、置換または非置換の非ヘテロC12-60アリールから独立して選択され、
ここで、前記置換基は、ニトリル、ジアルキルホスフィンオキシド、ジアリールホスフィンオキシド、フッ素化C1-C6アルキルまたはフッ素化C1-C6アルコキシ、OR、SR、(C=O)R、(C=O)NR2、SiR3、(S=O)R、(S=O)2R、(P=O)R2から独立して選択され;
Rは、直鎖状C1-C20アルキル、直鎖状C1-C20アルコキシ、直鎖状C1-C20チオアルキル、分岐C3-C20アルキル、分岐C3-C20アルコキシ、分岐C3-C20チオアルキル、C6-20非ヘテロアリールから独立して選択され;
nは、1であり;
mは、1または2から選択され、好ましくは1である。
【0187】
一実施形態によれば、式Iにおいて、
X1~X20は、C-HおよびC-Zから独立して選択され、ここで、少なくとも1つのX1~X20はC-Zから選択され;
Zは、式IIの置換基である:
【0188】
【0189】
式中、
Ar1は、置換または非置換の非ヘテロC6-18アリールから独立して選択され、
ここで、前記置換基は、ニトリル、ジアルキルホスフィンオキシド、ジアリールホスフィンオキシド、フッ素化C1-C6アルキルまたはフッ素化C1-C6アルコキシ、OR、SR、(C=O)R、(C=O)NR2、SiR3、(S=O)R、(S=O)2R、(P=O)R2から独立して選択され;
Ar2は、置換または非置換の非ヘテロC12-52アリールから独立して選択され、
ここで、前記置換基は、ニトリル、ジアルキルホスフィンオキシド、ジアリールホスフィンオキシド、フッ素化C1-C6アルキルまたはフッ素化C1-C6アルコキシ、OR、SR、(C=O)R、(C=O)NR2、SiR3、(S=O)R、(S=O)2R、(P=O)R2から独立して選択され;
Rは、直鎖状C1-C10アルキル、直鎖状C1-C10アルコキシ、直鎖状C1-C10チオアルキル、分岐C3-C10アルキル、分岐C3-C10アルコキシ、分岐C3-C10チオアルキル、C6-12非ヘテロアリールから独立して選択され;
nは、1または2から選択され;
mは、1または2から選択され、好ましくは1である。
【0190】
一実施形態によれば、式Iにおいて、
X1~X20は、C-HおよびC-Zから独立して選択され、ここで、1つのX1~X20はC-Zから選択され;
Zは、式IIの置換基である:
【0191】
【0192】
式中、
Ar1は、置換または非置換の非ヘテロC6-18アリールから独立して選択され、
ここで、前記置換基は、ニトリル、ジアルキルホスフィンオキシド、ジアリールホスフィンオキシド、フッ素化C1-C6アルキルまたはフッ素化C1-C6アルコキシ、OR、SR、(C=O)R、(C=O)NR2、SiR3、(S=O)R、(S=O)2R、(P=O)R2から独立して選択され;
Ar2は、置換または非置換の非ヘテロC12-52アリールから独立して選択され、
ここで、前記置換基は、ニトリル、ジアルキルホスフィンオキシド、ジアリールホスフィンオキシド、フッ素化C1-C6アルキルまたはフッ素化C1-C6アルコキシ、OR、SR、(C=O)R、(C=O)NR2、SiR3、(S=O)R、(S=O)2R、(P=O)R2から独立して選択され;
Rは、直鎖状C1-C10アルキル、直鎖状C1-C10アルコキシ、直鎖状C1-C10チオアルキル、分岐C3-C10アルキル、分岐C3-C10アルコキシ、分岐C3-C10チオアルキル、C6-12非ヘテロアリールから独立して選択され;
nは、1または2から選択され;
mは、1または2から選択され、好ましくは1である。
【0193】
一実施形態によれば、式Iにおいて、
X1~X20は、C-HおよびC-Zから独立して選択され、ここで、1つのX1~X20はC-Zから選択され;
Zは、式IIの置換基である:
【0194】
【0195】
式中、
Ar1は、非置換の非ヘテロC6-18アリールから独立して選択され、
Ar2は、置換または非置換の非ヘテロC12-52アリールから独立して選択され、
ここで、前記置換基は、ニトリル、ジアルキルホスフィンオキシド、ジアリールホスフィンオキシド、フッ素化C1-C6アルキルまたはフッ素化C1-C6アルコキシ、OR、SR、(C=O)R、(C=O)NR2、SiR3、(S=O)R、(S=O)2R、(P=O)R2から独立して選択され;
Rは、直鎖状C1-C10アルキル、直鎖状C1-C10アルコキシ、直鎖状C1-C10チオアルキル、分岐C3-C10アルキル、分岐C3-C10アルコキシ、分岐C3-C10チオアルキル、C6-12非ヘテロアリールから独立して選択され;
nは、1から選択され;
mは、1または2から選択され、好ましくは1である。
【0196】
一実施形態によれば、式Iにおいて、
X1~X20は、C-HおよびC-Zから独立して選択され、ここで、1つのX1~X20はC-Zから選択され;
Zは、式IIの置換基である:
【0197】
【0198】
式中、
Ar1は、非置換のC6-18アリールから独立して選択され、
Ar2は、置換または非置換の非ヘテロC12-52アリールから独立して選択され、
ここで、前記置換基は、ニトリルおよび(P=O)R2から独立して選択され;
Rは、直鎖状C1-C10アルキル、C6-12非ヘテロアリールから独立して選択され;
nは、1から選択され;
mは、1または2から選択され、好ましくは1である。
【0199】
一実施形態によれば、式Iにおいて、
X1~X20は、C-HおよびC-Zから独立して選択され、ここで、1つのX1~X20はC-Zから選択され;
Zは、式IIの置換基である:
【0200】
【0201】
式中、
Ar1は、非置換のC6-18アリールから独立して選択され、
Ar2は、置換または非置換の非ヘテロC12-48アリールから独立して選択され、
ここで、前記置換基は、ニトリルおよび(P=O)R2から独立して選択され;
Rは、直鎖状C1-C10アルキル、C6-12非ヘテロアリールから独立して選択され;
nは、1から選択され;
mは、1または2から選択され、好ましくは1である。
【0202】
一実施形態によれば、式Iにおいて、
X1~X20は、独立してC-HおよびC-Zから選択され、ここで、1つのX1~X20はC-Zから選択され;
Zは、式IIの置換基である:
【0203】
【0204】
式中、
Ar1は、非置換のC6-18アリールから独立して選択され、
Ar2は、置換または非置換の非ヘテロC12-48アリールから独立して選択され、
ここで、前記置換基は、ニトリルおよび(P=O)R2から独立して選択され;
Rは、直鎖状C1-C10アルキルから独立して選択され;
nは、1から選択され;
mは、1または2から選択され、好ましくは1である。
【0205】
一実施形態によれば、式Iにおいて、
X1~X20は、C-HおよびC-Zから独立して選択され、ここで、1つのX1~X20はC-Zから選択され;
Zは、式IIの置換基である:
【0206】
【0207】
式中、
Ar1は、非置換のC6-18アリールから独立して選択され、
Ar2は、非置換のC12-48アリールから独立して選択され、
ここで、前記置換基は、ニトリルおよび(P=O)R2から独立して選択され;
Rは、直鎖状C1-C10アルキルから独立して選択され;
nは、1から選択され;
mは、1または2から選択され、好ましくは1である。
【0208】
一実施形態によれば、式Iにおいて、
X1~X20は、C-HおよびC-Zから独立して選択され、ここで、1つのX1~X20はC-Zから選択され;
Zは、式IIの置換基である:
【0209】
【0210】
式中、
Ar1は、非置換のC6-18非ヘテロアリールから独立して選択され、
Ar2は、置換のC12-48非ヘテロアリールから独立して選択され、
ここで、前記置換基は、ニトリルおよび(P=O)R2から独立して選択され;
Rは、直鎖状C1-C10アルキルから独立して選択され;
nは、1から選択され;
mは、1または2から選択され、好ましくは1である。
【0211】
一実施形態によれば、式Iにおいて、
X1~X20は、C-H、C-Zから独立して選択され、ここで、1つのX1~X20はC-Zから選択され;
Zは、式IIの置換基である:
【0212】
【0213】
式中、
Ar1は、置換もしくは非置換の、フェニレン、ビフェニレン、トリフェニレンまたはアントラセン、好ましくはフェニレン、ビフェニレンまたはトリフェニレンから独立して選択され、
ここで、前記置換基は、ニトリル、フッ素化C1-C6アルキルまたはフッ素化C1-C6アルコキシ、OR、SR、(C=O)R、(C=O)NR2、SiR3、(S=O)R、(S=O)2R、(P=O)R2から独立して選択され;
Ar2は、置換または非置換のC12-60アリールから独立して選択され、
ここで、前記置換基は、ニトリル、ジアルキルホスフィンオキシド、ジアリールホスフィンオキシド、フッ素化C1-C6アルキルまたはフッ素化C1-C6アルコキシ、OR、SR、(C=O)R、(C=O)NR2、SiR3、(S=O)R、(S=O)2R、(P=O)R2から独立して選択され;
Rは、直鎖状C1-C20アルキル、直鎖状C1-C20アルコキシ、直鎖状C1-C20チオアルキル、分岐C3-C20アルキル、分岐C3-C20アルコキシ、分岐C3-C20チオアルキル、C6-20アリールから独立して選択され;
nは、1または2から選択され、好ましくは1であり;
mは、1、2または3から選択され、好ましくは1である。
【0214】
一実施形態によれば、式Iにおいて、
X1~X20は、C-HおよびC-Zから独立して選択され、ここで、1つのX1~X20はC-Zから選択され;
Zは、式IIの置換基である:
【0215】
【0216】
式中、
Ar1は、置換もしくは非置換の、フェニレン、ビフェニレン、トリフェニレンまたはアントラセン、好ましくはフェニレン、ビフェニレンまたはトリフェニレンから独立して選択され、
ここで、前記置換基は、ニトリル、フッ素化C1-C6アルキルまたはフッ素化C1-C6アルコキシ、OR、SR、(C=O)R、(C=O)NR2、SiR3、(S=O)R、(S=O)2R、(P=O)R2から独立して選択され;
Ar2は、置換または非置換のC12-52アリールから独立して選択され、
ここで、前記置換基は、ニトリル、ジアルキルホスフィンオキシド、ジアリールホスフィンオキシド、フッ素化C1-C6アルキルまたはフッ素化C1-C6アルコキシ、OR、SR、(C=O)R、(C=O)NR2、SiR3、(S=O)R、(S=O)2R、(P=O)R2から独立して選択され;
Rは、直鎖状C1-C10アルキル、直鎖状C1-C10アルコキシ、直鎖状C1-C10チオアルキル、分岐C3-C10アルキル、分岐C3-C10アルコキシ、分岐C3-C10チオアルキル、C6-12アリールから独立して選択され;
nは、1または2から選択され、好ましくは1であり;
mは、1、2または3から選択され、好ましくは1である。
【0217】
別の実施形態によれば、式IによるZは、式E1~E9から選択されてもよい:
【0218】
【0219】
式中、
Z1~Z15は、C-H、C-R1から独立して選択され、および/または化学結合によって互いに結合している、Z1~Z5、Z6~Z10、Z11~Z15のうちの少なくとも2つは、架橋されて縮環した非ヘテロ芳香環を形成し;
R1は、ニトリル、(P=O)R2、-NR2R3またはBR2R3、好ましくはニトリルまたは(P=O)R2から選択され;
R2およびR3は、H、直鎖状C1-C20アルキル、直鎖状C1-C20アルコキシ、直鎖状C1-C20チオアルキル、分岐C3-C20アルキル、分岐C3-C20アルコキシ、分岐C3-C20チオアルキル、C6-20非ヘテロアリール、好ましくはC6-16非ヘテロアリールから独立して選択され;
Ar2は、置換または非置換の非ヘテロC6-60アリールから独立して選択され、
ここで、前記置換基は、ニトリル、ジアルキルホスフィンオキシド、ジアリールホスフィンオキシド、フッ素化C1-C6アルキルまたはフッ素化C1-C6アルコキシ、OR、SR、(C=O)R、(C=O)NR2、SiR3、(S=O)R、(S=O)2R、(P=O)R2から独立して選択され;
Rは、直鎖状C1-C20アルキル、直鎖状C1-C20アルコキシ、直鎖状C1-C20チオアルキル、分岐C3-C20アルキル、分岐C3-C20アルコキシ、分岐C3-C20チオアルキル、C6-20非ヘテロアリールから独立して選択され;
mは、1、2または3から選択される。
【0220】
別の実施形態によれば、式IによるZは、式E1~E9から選択されてもよい:
【0221】
【0222】
式中、
Z1~Z15は、N、C-Hから独立して選択されおよび/または化学結合によって互いに結合している、Z1~Z5、Z6~Z10、Z11~Z15のうちの少なくとも2つは、架橋されて縮環した非ヘテロ芳香環を形成し;
Ar2は、置換または非置換の非ヘテロC6-60アリールから独立して選択され、
ここで、前記置換基は、ニトリル、ジアルキルホスフィンオキシド、ジアリールホスフィンオキシド、フッ素化C1-C6アルキルまたはフッ素化C1-C6アルコキシ、OR、SR、(C=O)R、(C=O)NR2、SiR3、(S=O)R、(S=O)2R、(P=O)R2から独立して選択され;
Rは、直鎖状C1-C20アルキル、直鎖状C1-C20アルコキシ、直鎖状C1-C20チオアルキル、分岐C3-C20アルキル、分岐C3-C20アルコキシ、分岐C3-C20チオアルキル、C6-20非ヘテロアリールから独立して選択され;
mは、1、2または3から選択される。
【0223】
別の実施形態によれば、式IによるZは、式E1~E9から選択されてもよい:
【0224】
【0225】
式中、
Z1~Z15は、C-Hであり;
Ar2は、置換または非置換の非ヘテロC6-60アリールから独立して選択され、
ここで、前記置換基は、ニトリル、ジアルキルホスフィンオキシド、ジアリールホスフィンオキシド、フッ素化C1-C6アルキルまたはフッ素化C1-C6アルコキシ、OR、SR、(C=O)R、(C=O)NR2、SiR3、(S=O)R、(S=O)2R、(P=O)R2から独立して選択され;
Rは、直鎖状C1-C20アルキル、直鎖状C1-C20アルコキシ、直鎖状C1-C20チオアルキル、分岐C3-C20アルキル、分岐C3-C20アルコキシ、分岐C3-C20チオアルキル、C6-20非ヘテロアリールから独立して選択され;
mは、1または2から選択される。
【0226】
別の実施形態によれば、式IによるZは、式E1~E9から選択されてもよい:
【0227】
【0228】
式中、
Z1~Z15は、C-Hであり;
Ar2は、置換または非置換の非ヘテロC6-60アリール、好ましくは独立して置換されていないC6-60アリールから独立して選択され、
ここで、前記置換基は、ニトリル、ジアルキルホスフィンオキシド、ジアリールホスフィンオキシド、フッ素化C1-C6アルキルまたはフッ素化C1-C6アルコキシ、OR、SR、(C=O)R、(C=O)NR2、SiR3、(S=O)R、(S=O)2R、(P=O)R2から独立して選択され;
Rは、直鎖状C1-C10アルキル、直鎖状C1-C10アルコキシ、直鎖状C1-C10チオアルキル、分岐C3-C10アルキル、分岐C3-C10アルコキシ、分岐C3-C10チオアルキル、C6-12非ヘテロアリールから独立して選択され;
mは、1または2から選択される。
【0229】
一実施形態によれば、式IにおけるAr2は、式F1~F4から選択される:
【0230】
【0231】
式中、
Y1~Y5は、C-H、C-R3から独立して選択され、および/または化学結合によって互いに結合しているY1~Y5の少なくとも2つは、架橋されて縮環した非ヘテロ芳香環を形成し、
ここで、R3は、直鎖状C1-C20アルキル、直鎖状C1-C20アルコキシ、直鎖状C1-C20チオアルキル、分岐C3-C20アルキル、分岐C3-C20アルコキシ、分岐C3-C20チオアルキル、置換または非置換の非ヘテロC6-20アリールから独立して選択され、
ここで、前記置換基は、ニトリル、ジアルキルホスフィンオキシド、ジアリールホスフィンオキシド、フッ素化C1-C6アルキルまたはフッ素化C1-C6アルコキシ、OR、SR、(C=O)R、(C=O)NR2,SiR3、(S=O)R、(S=O)2R、(P=O)R2から独立して選択される。
【0232】
【0233】
一実施形態によれば、式IにおけるAr2は、式F1から選択される:
【0234】
【0235】
式中、
Y1~Y5は、C-H、C-R3から独立して選択され、および/または化学結合によって互いに結合しているY1~Y5の少なくとも2つは、架橋されて縮環した非ヘテロ芳香環を形成し、
ここで、R3は、置換または非置換の非ヘテロC6-20アリールから独立して選択され、ここで、前記置換基は、ニトリル、(P=O)R2から独立して選択される。
【0236】
一実施形態によれば、式IのZは、式E1~E9から選択されてもよい。
【0237】
式Iの実施形態によれば、Ar2は、少なくとも1つのニトリルおよび/またはホスフィンオキシド置換基を含むことができる。
【0238】
一実施形態によれば、式IのAr2は、少なくとも1つの置換または非置換の1,1,2,2-テトラフェニルエチレン基、好ましくは非置換の1,1,2,2-テトラフェニルエチレン基を含むことができる。
【0239】
好ましい実施形態によれば、式Iの化合物は、G1~G34から選択することができる:
【0240】
【0241】
【0242】
【0243】
【0244】
【0245】
【0246】
この選択から式1の化合物を選択すると、特に良好な性能特性が得られる。
【0247】
[アノード]
アノードのための材料は、金属または金属酸化物、または有機材料であってよく、好ましくは約4.8eVを超える、より好ましくは約5.1eVを超える、最も好ましくは約5.3eVを超える仕事関数を有する材料であってもよい。好ましい金属は、Pt、AuまたはAgのような貴金属であり、好ましい金属酸化物は、ITOまたはIZOのような透明な金属酸化物であり、これは、反射カソードを有する底部発光OLEDにおいて有利に使用され得る。
【0248】
透明金属酸化物アノードまたは反射性金属アノードを含む装置では、アノードが約50nm~約100nmの厚さを有していてよく、半透明金属アノードは、約5nm~約15nmの薄さであってもよく、非透明金属アノードは、約15nm~約150nmの厚さを有していてよい。
【0249】
[正孔注入層(HIL)]
正孔注入層は、正孔輸送層に使用されるアノードと有機材料との間の界面特性を改善することができ、非平坦化アノード上に適用され、従って、アノードの表面を平坦化することができる。例えば、正孔注入層は、アノードの仕事関数と正孔輸送層のHOMOのエネルギー準位との差を調整するために、アノード材料の仕事関数と正孔輸送層のHOMOのエネルギー準位との間のその最高占有分子軌道(HOMO)のエネルギー準位の中央値を有する材料を含むことができる。
【0250】
正孔輸送領域が正孔注入層36を含む場合、正孔注入層は、例えば、真空蒸着、スピンコーティング、キャスティング、Langmuir-Blodgett(LB)法等の種々の方法のいずれかによって、アノード上に形成されてもよい。
【0251】
真空蒸着法を用いて正孔注入層を形成する場合、正孔注入層を形成するのに用いられる材料、ならびに、形成する正孔注入層の所望の構造および熱特性に応じて、真空蒸着条件を変えることができ、例えば、100℃~500℃程度の温度、10-6Pa~10-1Pa程度の圧力、0.1~10nm/sec程度の蒸着速度で真空蒸着を行うことができるが、蒸着条件はこれに限定されない。
【0252】
スピンコーティングを用いて正孔注入層を形成する場合、正孔注入層を形成するために使用される材料、および形成される正孔注入層の所望の構造および熱特性によって、コーティング条件が変わり得る。例えば、塗布速度は約2000rpm~約5000rpmの範囲であり、塗布後に溶媒を除去するために加熱処理を行う温度は約80℃~約200℃の範囲であるが、塗布条件はこれに限定されない。
【0253】
正孔注入層は、導電率および/またはアノードからの正孔注入を改善するためにp-ドーパントをさらに含んでもよい。
【0254】
正孔注入層は、式1の化合物を含むことができる。
【0255】
別の実施形態では、正孔注入層が式1の化合物からなってもよい。
【0256】
[p-ドーパント]
別の態様では、p-ドーパントは、正孔注入層中に均一に分散させることができる。
【0257】
別の態様では、p-ドーパントは、正孔注入層中に、アノードにより近い高濃度で、カソードにより近い低濃度で存在することができる。
【0258】
p-ドーパントは、キノン誘導体またはラジアレン化合物のうちの1つであってもよいが、これらに限定されない。p-ドーパントの非限定的な例は、テトラシアノキノンジメタン(TCNQ)、2,3,5,6-テトラフルオロ-テトラシアノ-1,4-ベンゾキノンジメタン(F4-TCNQ)、4,4’,4''-((1E,1’E,1''E)-シクロプロパン-1,2,3-トリイリデネトリス(シアノメタニリデン))-トリス(2,3,5,6-テトラフルオロベンゾニトリル)等のキノン誘導体である。
【0259】
[正孔輸送層(HTL)]
正孔輸送層および電子阻止層を形成するための条件は、正孔注入層について上述した形成条件に基づいて規定することができる。
【0260】
電荷輸送領域の正孔輸送部の厚さは、約10nm~約1000nm、例えば、約10nm~約100nmとすることができる。電荷輸送領域の正孔輸送部が正孔注入層および正孔輸送層を含む場合、正孔注入層の厚さは、約10nm~約1000nm、例えば、約10nm~約100nmとすることができ、正孔輸送層の厚さは、約5nm~約200nm、例えば、約10nm~約150nmとすることができる。電荷輸送領域の正孔輸送部、HIL、およびHTLの厚さがこれらの範囲内にあるとき、動作電圧の大幅な増加なしに満足な正孔輸送特性が得られる可能性がある。
【0261】
正孔輸送領域で使用される正孔輸送マトリックス材料は、特に限定されない。好ましいのは、少なくとも6個の非局在化電子の共役系を含む共有結合化合物であり、好ましくは少なくとも1個の芳香環を含む有機化合物であり、より好ましくは少なくとも2個の芳香環を含む有機化合物であり、さらにより好ましくは少なくとも3個の芳香環を含む有機化合物であり、最も好ましくは少なくとも4個の芳香環を含む有機化合物である。正孔輸送層に広く使用されている正孔輸送マトリックス材料の典型例は、多環式芳香族炭化水素、トリアリーレンアミン化合物および複素環式芳香族化合物である。正孔輸送領域の種々の層で有用な正孔輸送行列のフロンティア軌道エネルギー準位の適切な範囲はよく知られている。HTLマトリックスのレドックス対HTLマトリックス/カチオンラジカルのレドックス電位に関して、好ましい値(例えば、参照としてフェロセン/フェロセニウムレドックス対に対するサイクリックボルタンメトリーによって測定される場合)は、0.0~1.0Vの範囲、より好ましくは0.2~0.7Vの範囲、さらにより好ましくは0.3~0.5Vの範囲であり得る。
【0262】
正孔輸送層は、式1の化合物を含むことができる。
【0263】
別の実施形態では、正孔輸送層が式1の化合物からなってもよい。
【0264】
[バッファ層]
電荷輸送領域の正孔輸送部は、バッファ層をさらに含んでいてもよい。
【0265】
適切に使用することができるバッファ層は、US6140763、US6614176およびUS2016/248022に開示されている。
【0266】
バッファ層は、EMLから放射される光の波長に従って、光の光共鳴距離を補償することができ、従って、効率を高めることができる。バッファ層は、式1の化合物を含むことができる。
【0267】
別の実施形態では、緩衝層が式1の化合物からなってもよい。
【0268】
[発光層(EML)]
発光層は、真空蒸着、スピンコーティング、キャスティング、LB法等を用いることにより、正孔輸送領域上に形成することができる。真空蒸着またはスピンコーティングを用いて発光層を形成する場合、蒸着およびコーティングのための条件は、正孔注入層の形成のための条件と同様であり得るが、蒸着およびコーティングのための条件は、発光層を形成するために使用される材料に基づいて変化し得る。発光層は、エミッタホスト(EMLホスト)およびエミッタドーパント(さらなるエミッタのみ)を含んでもよい。
【0269】
[エミッタホスト]
別の実施形態によれば、発光層は、エミッタホストとして式1の化合物を含む。
【0270】
エミッタホスト化合物は、炭素環および複素環から独立して選択される少なくとも3つの芳香環を有する。
【0271】
エミッタホストとして使用することができる他の化合物は、下記の式400で表されるアントラセンマトリックス化合物である:
【0272】
【0273】
式400において、Ar111およびAr112は各々独立して、置換または非置換のC6-C60アリーレン基であってもよく、Ar113~Ar116は各々独立して、置換または非置換のC1-C10のアルキル基、または置換または非置換のC6-C60のアリーレン基であってもよく、そしてg、h、iおよびjは各々独立して、0~4までの整数であってもよい。
【0274】
いくつかの実施形態では、式400中のAr111およびAr112は各々独立して、フェニレン基、ナフタレン基、フェナントレニレン基、またはピレニレン基;または、各々がフェニル基、ナフチル基、またはアントリル基のうちの少なくとも1つで置換されているフェニレン基、ナフタレン基、フェナントレニレン基、フルオレニル基、またはピレニレン基のうちの1つであってよい。
【0275】
式400において、g、h、i、およびjは、それぞれ独立して、0、1、または2の整数であり得る。
【0276】
式400において、Ar113~Ar116は、それぞれ独立して、
フェニル基、ナフチル基、またはアントリル基の少なくとも1つで置換されたC1-C10アルキル基;
フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピレニル基、フェナントレニル基、またはフルオレニル基;
各々が重水素原子、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アミジノ基、ヒドラジン基、ヒドラゾン基、カルボキシル基またはこれらの塩の少なくとも1つで置換されているフェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピレニル基、フェナントレニル基、またはフルオレニル基
スルホン酸基またはその塩、リン酸基またはその塩
C1-C60のアルキル基、C2-C60のアルケニル基、C2-C60のアルキニル基、C1-C60のアルコキシ基、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピレニル基、フェナントレニル基、
またはフルオレニル基
【0277】
【0278】
あるいは式7または式8
【0279】
【0280】
であってよい。
【0281】
式7および式8において、Xは酸素原子および硫黄原子から選択されるが、本発明の実施形態はこれらに限定されない。
【0282】
式7において、R11~R14のいずれか1つは、Ar111への結合に使用される。Ar111への結合に使用されないR11~R14およびR15~R20は、R1~R8と同じである。
【0283】
式8において、R21~R24のいずれか1つは、Ar111への結合に使用される。Ar111への結合に使用されないR21~R24およびR25~R30は、R1~R8と同じである。
【0284】
好ましくは、EMLホストは、N、OまたはSからなる群から選択される1~3個のヘテロ原子を含む。より好ましくは、EMLホストは、SまたはOから選択される1個のヘテロ原子を含む。
【0285】
エミッタホスト化合物は、約0デバイ以上から約2.0デバイ以下の範囲の双極子モーメントを有していてよい。
【0286】
好ましくは、EMLホストの双極子モーメントは、0.2 デバイ以上および1.45デバイ以下、好ましくは0.4デバイ以上および1.2デバイ以下、また好ましくは0.6デバイ以上および1.1デバイ以下に選択される。
【0287】
双極子モーメントは、プログラムパッケージTURBOMOLE V6.5に実装されているような6-31G*基底関数系を有するハイブリッド関数のB3LYPを用いる最適化を用いて算出される。2つ以上のコンホメーションが実行可能である場合、最低の総エネルギーを有するコンホメーションが、分子の双極子モーメントを決定するために選択される。この方法を用いて、2-(10-フェニル-9-アントラセニル)-ベンゾ[b]ナフト[2,3-d]フラン(CAS 1627916-48-6)は0.88デバイの双極子を有し、2-(6-(10-フェニルアントラセン-9-イル)ナフタレン-2-イル)ジベンゾ[b,d]チオフェン(CAS 1838604-62-8)は0.89デバイ、2-(6-(10-フェニルアントラセン-9-イル)ナフタレン-2-イル)ジベンゾ[b,d]フラン(CAS 1842354-89-5)は0.69デバイ、2-(7-(フェナントレン-9-イル)テトラフェン-12-イル)ジベンゾ[b,d]フラン(CAS 1965338-95-7)は0.64デバイ、4-(4-(7-(ナフタレン-1-イル)テトラフェン-12-イル)フェニル)ジベンゾ[b,d]フラン(CAS 1965338-96-8)は1.01デバイである。
【0288】
[エミッタドーパント]
ドーパントは発光させるために少量混合されるものであり、通常、多重励起により発光して三重項以上となる金属錯体等の材料であればよい。ドーパントとしては、例えば、無機、有機、有機/無機化合物であってよく、それらの1種以上を用いることができる。
【0289】
エミッタは、赤、緑、または青色のエミッタであってよい。
【0290】
ドーパントは、蛍光ドーパント、例えば、ter-フルオレンであってもよく、構造を以下に示す。4.4’-ビス(4-ジフェニルアミオスチリル)ビフェニル(DPAVBI)、2,5,8,11-テトラ-tert-ブチルペリレン(TBPe)、および以下の化合物8は、蛍光青色ドーパントの例である。
【0291】
【0292】
ドーパントは、燐光ドーパントであってもよく、燐光ドーパントの例は、Ir、Pt、Os、Ti、Zr、Hf、Eu、Tb、Tm、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、またはこれらのそれらの組み合わせを含む有機金属化合物であってもよい。燐光性ドーパントは、例えば、式Zで表される化合物であってもよいが、これに限定されない:
J2MX (Z)
式Zにおいて、Mは金属であり、JおよびXは同一または異なり、Mと錯化合物を形成するリガンドである。
【0293】
Mは、例えば、Ir、Pt、Os、Ti、Zr、Hf、Eu、Tb、Tm、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pdまたはそれらの組み合わせであってもよく、JおよびXは例えば、二座配位しであってもよい。
【0294】
[電子輸送層(ETL)]
別の実施形態によれば、式1の化合物を含む有機半導体層は、電子輸送層である。別の実施形態では、電子輸送層が式1の化合物からなってもよい。
【0295】
例えば、本発明の一実施形態による有機発光ダイオードは、少なくとも1つの電子輸送層を含み、この場合、電子輸送層は、式1の化合物、または好ましくは式G1~G50の少なくとも1つの化合物を含む。
【0296】
別の実施形態では、有機電子デバイスは、2つ以上の電子輸送層によって形成された有機層の積み重なりの電子輸送領域を含み、少なくとも1つの電子輸送層は式1の化合物を含む。
【0297】
電子輸送層は、1つまたは2つ以上の異なる電子輸送化合物を含むことができる。
【0298】
別の実施形態によれば、第2の電子輸送層は、本発明による式1の化合物を少なくとも1つ含み、第1の電子輸送層は、本発明による式1の化合物とは異なるように選択され、る:
アントラセン系化合物またはヘテロ置換アントラセン系化合物、好ましくは2-(4-(9,10-ジ(ナフタレン-2-イル)アントラセン-2-イル)フェニル)-1-フェニル-1H-ベンゾ[d]イミダゾールおよび/またはN4,N4''-ジ(ナフタレン-1-イル)-N4,N4''-ジフェニル-[1,1’:4’,1''-テルフェニル]-4,4''-ジアミンから選ばれてもよいマトリックス化合物を含む。
【0299】
別の実施形態によれば、第1の電子輸送層は、本発明による式1の化合物を少なくとも1つ含み、第2の電子輸送層は、本発明による式1の化合物とは異なるように選択されから選択され、:
酸化ホスフィン系化合物、好ましくは(3-(ジベンゾ[c,h]アクリジン-7-イル)フェニル)ジフェニルホスフィンオキシドおよび/またはフェニルビス(3-(ピレン-1-イル)フェニル)ホスフィンオキシドおよび/または3-フェニル-3H-ベンゾ[b]ジナフト[2,1-d:1’,2’-f]ホスフェピン-3-オキシド;または
置換フェナントロリン化合物、好ましくは2,4,7,9-テトラフェニル-1,10-フェナントロリンまたは2,9-ジ(ビフェニル-4-イル)-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリンから選択されてもよいマトリックス化合物を含む。
【0300】
別の実施形態によれば、第1の電子輸送層は、本発明による式1の化合物を少なくとも1つ含み、第2の電子輸送層は、本発明による式1の化合物とは異なるように選択され、ホスフィンオキシド系化合物、好ましくは(3-(ジベンゾ[c,h]アクリジン-7-イル)フェニル)ジフェニルホスフィンオキシドおよび/またはフェニルビス(3-(ピレン-1-イル)フェニル)ホスフィンオキシドおよび/または3-フェニル-3H-ベンゾ[b]ジナフト[2,1-d:1’,2’-f]ホスフェピン-3-オキシドから選択されてもよいマトリックス化合物を含む。
【0301】
別の実施形態によれば、第1および第2の電子輸送層は、式1の化合物を含み、当該式1の化合物は、同じものが選択されない。
【0302】
第1の電子輸送層の厚さは、約0.5nm~約100nm、例えば約2nm~約40nmとすることができる。第一の電子輸送層の厚さがこれらの範囲内にあるとき、第一の電子輸送層は、動作電圧の大幅な増加なしに、改善された電子輸送能力を有することができる。
【0303】
任意の第2の電子輸送層の厚さは、約1nm~約100nm、例えば約2nm~約20nmとすることができる。電子輸送層の厚さがこれらの範囲内にあるとき、電子輸送層は、動作電圧の大幅な増加なしに、満足な電子輸送能力を有し得る。
【0304】
電子輸送層は、アルカリハロゲン化物および/またはアルカリ有機錯体をさらに含んでもよい。
【0305】
別の実施形態によれば、第1および第2の電子輸送層は、式1の化合物を含み、当該第2の電子輸送層は、アルカリハロゲン化物および/または有機アルカリ錯体をさらに含む。
【0306】
[アルカリハロゲン化物]
アルカリ金属ハロゲン化物としても知られるアルカリハロゲン化物は、化学式MXを有する無機化合物に含まれ、Mはアルカリ金属であり、Xはハロゲンである。
【0307】
Mは、Li、Na、カリウム、ルビジウムおよびセシウムから選択することができる。
【0308】
Xは、F、Cl、BrおよびIから選択することができる。
【0309】
本発明の様々な実施形態によれば、ハロゲン化リチウムが好ましい場合がある。ハロゲン化リチウムは、LiF、LiCl、LiBrおよびLiIを含む群から選択することができる。しかしながら、最も好ましいのはLiFである。
【0310】
アルカリハロゲン化物は、本質的に非発光性か、または非発光性である。
【0311】
[アルカリ有機錯体]
本発明の様々な実施形態によれば、リチウム有機錯体の有機配位子は、キノラート、ホウ酸塩、フェノラート、ピリジノラート、またはシッフ塩基配位子である;
好ましくは、リチウムキノラート錯体は、式III、IVまたはVを有する:
【0312】
【0313】
ここで、
A1~A6は、CH、CR、N、Oから同一にまたは独立して選択され;
Rは、水素、ハロゲン、1~20個の炭素原子を有するアルキルまたはアリーレンまたはヘテロアリーレンから同一にまたは独立して選択され、より好ましいA1~A6がCHであり;
好ましくは、ホウ酸塩系有機配位子がテトラ(1H-ピラゾール-1-イル)ホウ酸塩であり;
好ましくは、フェノラートが、2-(ピリジン-2-イル)フェノラート、2-(ジフェニルホスホリル)フェノラート、イミダゾールフェノラート、または2-(ピリジン-2-イル)フェノラートであり、より好ましくは2-(1-フェニル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)フェノラートであり;
好ましくは、ピリジノラートが、2-(ジフェニルホスホリル)ピリジン-3-オラートである。
【0314】
本発明の種々の実施形態によれば、アルカリ有機錯体、好ましくはリチウム有機錯体の有機配位子は、キノラートであり得る。使用するのに適し得るキノラートは、WO 2013079217 A1に開示され、参考文献として組み込まれている。
【0315】
本発明の様々な実施形態によれば、リチウム有機錯体の有機配位子は、ホウ酸塩系の有機配位子であることができ、好ましくは、リチウム有機錯体は、テトラ(1H-ピラゾール-1-イル)ホウ酸リチウムである。好適に用いることができるホウ酸塩系有機配位子は、WO 2013079676 A1に開示され、参考文献として組み込まれている。
【0316】
本発明の様々な実施形態によれば、リチウム有機錯体の有機配位子は、フェノラート配位子であることができ、好ましくは、リチウム有機錯体が、リチウム2-(ジフェニルホスホリル)フェノラートである。好適に用いることができるフェノール酸塩リガンドは、WO 2013079678 A1に開示され、参考文献として組み込まれている。
【0317】
さらに、フェノラートリガンドは、ピリジノラートの群から選択することができ、好ましくは2-(ジフェニルホスホリル)ピリジン-3-オラートである。好適に用いることができるピリジンフェノラートリガンドは、特開2008195623号公報に開示され、参考文献として組み込まれている。
【0318】
さらに、フェノラート配位子は、イミダゾールフェノラートの群から選択することができ、好ましくは2-(1-フェニル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)フェノラートである。適当に用いることができるイミダゾルフェノラートリガンドは、特開2001291593号公報に開示され、参考文献として組み込まれている。
【0319】
また、フェノラート配位子は、オキサゾールフェノラートの群から選択することができ、好ましくは2-(ベンゾ[d]オキサゾール-2-イル)フェノラートである。好適に用いることができるオキサゾールフェノラートリガンドは、米国20030165711に開示され、参考文献として組み込まれている。
【0320】
アルカリ有機錯体は、本質的に非発光性であってもよい。
【0321】
[n-ドーパント]
様々な実施形態によれば、式1の化合物を含む有機半導体層は、n-ドーパントをさらに含むことができる。
【0322】
n-ドーパントとして適切な電気的に中性の金属錯体は、例えば低酸化状態のいくつかの遷移金属の強い還元性錯体であってもよい。特に強いn-ドーパントは、WO2005/086251により詳細に記載されているように、例えばCr(II)、Mo(II)および/またはW2(hpp)4等のW(II)グアニジン酸塩錯体から選択することができる。
【0323】
n-ドーパントとして適切な電気的に中性の有機ラジカルは、例えば、EP 1 837 926 B1、WO2007/107306、またはWO2007/107356により詳細に記載されているように、それらの安定なダイマー、オリゴマー、または高分子からの追加のエネルギーの供給によって生成される有機ラジカルであってもよい。このような適切なラジカルの具体例は、ジアゾリルラジカル、オキサゾリルラジカルおよび/またはチアゾリルラジカルであり得る。
【0324】
別の実施形態では、有機半導体層は、元素金属をさらに含むことができる。元素金属とは、その元素形態の金属の状態にある金属、金属合金、または金属クラスタである。金属相から、例えばバルク金属から真空熱蒸発によって蒸着された金属は、それらの元素形態で気化することとされている。さらに、気化した元素金属が共有結合マトリックスと一緒に堆積される場合、金属原子および/またはクラスタが共有結合マトリックスに埋め込まれるとされている。言い換えれば、真空熱蒸発によって調製される任意の金属ドープ共有結合材料は、金属を少なくとも部分的にその元素形態で含有するとされている。
【0325】
家庭用電化製品での使用には、放射性崩壊の非常に長いハーフトーン時間を有する核種または安定な核種を含有する金属のみが適用可能であろう。許容可能なレベルの原子安定性として、天然カリウムの原子安定性を採用することができる。
【0326】
一実施形態では、n-ドーパントは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属および第1遷移期間の金属、Ti、V、CrおよびMnから選択される正電荷を有する金属から選択される。好ましくはn-ドーパントは、Li、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba、Sm、Eu、Tm、Ybから選択され、より好ましくはLi、Na、K、Rb、Cs、MgおよびYbから選択され、さらに好ましくはLi、Na、CsおよびYbから選択され、最も好ましくはLi、NaおよびYbから選択される。
【0327】
n-ドーパントは、本質的に非発光性であってもよい。
【0328】
[電子注入層(EIL)]
本発明の別の態様によれば、有機エレクトロルミネッセンスデバイスは、電子輸送層(第1-ETL)とカソードとの間に電子注入層をさらに含むことができる。
【0329】
電子注入層(EIL)は、カソードからの電子の注入を容易にすることができる。
【0330】
本発明の別の態様によれば、電子注入層は:
(i)実質的に元素の形態におけるアルカリ金属、アルカリ土類金属および希土類金属から選択され、好ましくはLi、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba、EuおよびYbから選択され、より好ましくはLi、Na、Mg、Ca、SrおよびYbから選択され、さらにより好ましくはLiおよびYbから選択され、最も好ましくはYbから選択される正電荷を有する金属、および/または、
(ii)アルカリ金属錯体および/またはアルカリ金属塩、好ましくはLi錯体および/または塩、より好ましくはLiキノリノラート、さらにより好ましくはリチウム8-ヒドロキシキノリノラート、最も好ましくは第2の電子輸送層(第2-ETL)のアルカリ金属塩および/または錯体は、注入層のアルカリ金属塩および/または錯体と同一である
を含む。
【0331】
電子注入層膜は、LiF、NaCl、CsF、Li2OおよびBaOから選択された少なくとも1つを含むことができる。
【0332】
EILの厚さは、約0.1nm~約10nm、または約0.3nm~約9nmとすることができる。電子注入層の厚さがこれらの範囲内にあるとき、電子注入層は、動作電圧の大幅な増加なしに、満足な電子注入能力を有することができる。
【0333】
電子注入層は、式1の化合物を含むことができる。
【0334】
[カソード]
カソードの材料としては、仕事関数の小さい金属、合金、導電性化合物、またはそれらの組み合わせを用いることができる。カソードの材料の具体例は、リチウム(Li)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、アルミニウム-リチウム(Al-Li)、カルシウム(Ca)、マグネシウム-インジウム(Mg-In)、マグネシウム-銀(Mg-Ag)、銀(Ag)等であり得る。基板上に堆積された反射アノードを有するトップエミッション発光デバイスを製造するために、カソードは、光透過性電極として、例えばインジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、または銀(Ag)から形成されてもよい。
【0335】
透明金属酸化物カソードまたは反射金属カソードを含む装置では、カソードは、約50nm~約100nmの厚さを有してもよく、一方、半透明金属カソードは、約5nm~約15nmの薄さであってもよい。
【0336】
基板は、アノードの下またはカソードの上にさらに配置されてもよい。基板は、一般的な有機発光ダイオードに用いられる基板であってもよく、機械的強度、熱安定性、透明性、表面平滑性、取り扱い易さおよび耐水性に優れたガラス基板または透明プラスチック基板であってもよい。
【0337】
正孔注入層は、アノードとしてのITOと正孔輸送層に使用される有機材料との間の界面特性を改善することができ、非平坦化ITO上に適用することができ、従って、ITOの表面を平坦化することができる。
【0338】
正孔注入層は、例えば真空蒸着、スピンコーティング、キャスティング、Langmuir-Blodgett(LB)法等の様々な方法のいずれかによってアノード上に形成されてもよい。
【0339】
正孔注入層が真空蒸着を用いて形成される場合、真空蒸着条件は、正孔注入層を形成するために使用される材料、ならびに、形成される正孔注入層の所望の構造および熱特性に応じて変化し得、例えば、真空蒸着は、約100℃~約500℃の温度、約10-8torr~約10-3torrの圧力、および約0.01~約100Å/秒の蒸着速度で実施され得るが、蒸着条件はこれに限定されない。
【0340】
スピンコーティングを用いて正孔注入層を形成する場合、コーティング条件は、正孔注入層を形成するために使用される材料、ならびに、形成される正孔注入層の所望の構造および熱特性に応じて変わり得る。例えば、塗布速度は、約2000rpm~約5000rpmの範囲であってよく、塗布後に溶媒を除去するために加熱処理を行うときの温度は約80℃~約200℃の範囲であってよいが、コーティング条件はこれに限定されない。
【0341】
正孔輸送層および電子阻止層を形成するための条件は、正孔注入層について上述した形成条件に基づいて規定することができる。
【0342】
正孔輸送領域の厚さは、約100Å~約10000Åであってよく、例えば、約100Å~約1000Åであってよい。正孔輸送領域が正孔注入層および正孔輸送層を含む場合、正孔注入層の厚さは、約100Å~約10,000Åであってよく、例えば、約100Å~約1000Åであってよく、そして、正孔輸送層の厚さは、約50Å~約2,000Åであってよく、例えば、約100Å~約1500Åであってよい。正孔輸送領域、HIL、およびHTLの厚さがこれらの範囲内にあるとき、動作電圧の大幅な増加なしに満足な正孔輸送特性が得られる可能性がある。
【0343】
発光層の厚さは、約100Å~約1000Åであってよく、例えば約200Å~約600Åであり得る。発光層の厚さがこれらの範囲内にある場合、発光層は、動作電圧の大幅な増加なしに、改善された発光特性を有し得る。
【0344】
次に、電子輸送領域を発光層上に配置する。
【0345】
電子輸送領域は、電子輸送層および電子注入層の少なくとも一方を含むことができる。
【0346】
電子輸送層の厚さは、約20Å~約1000Åであってよく、例えば約30Å~約300Åであってよい。電子輸送層の厚さがこれらの範囲内にあるとき、電子輸送層は、動作電圧の大幅な増加なしに、改善された電子輸送補助能力を有し得る。
【0347】
電子輸送層の厚さは、約100Å~約1000Åであってよく、例えば約150Å~約500Åであってよい。電子輸送層の厚さがこれらの範囲内にあるとき、電子輸送層は、動作電圧の大幅な増加なしに、満足な電子輸送能力を有し得る。
【0348】
また、電子輸送領域は、アノードからの電子の注入を容易にすることができる電子注入層(EIL)を含むことができる。
【0349】
電子注入層は、電子輸送層上に配置され、カソードからの電子注入を容易にし、最終的には電力効率を向上させる役割を果たすことができ、例えばLiF、Liq、NaCl、CsF、Li2O、BaO、Yb等の特に限定されない関連技術で用いられているいずれかの材料を用いて形成され得る。
【0350】
電子注入層膜は、LiF、NaCl、CsF、Li2OおよびBaOから選択された少なくとも1つを含むことができる。
【0351】
EILの厚さは、約1Å~約100Åであってよく、または約3Å~約90Åであってもよい。電子注入層の厚さがこれらの範囲内にあるとき、電子注入層は、動作電圧の大幅な増加なしに、満足な電子注入能力を有することができる。
【0352】
第2の電極は、有機層上に配置されてもよい。第2の電極の材料は、仕事関数の小さい金属、合金、導電性化合物、またはそれらの組み合わせであってよい。第2の電極の材料の具体例は、リチウム(Li)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、アルミニウム-リチウム(Al-Li)、カルシウム(Ca)、マグネシウム-インジウム(Mg-In)、マグネシウム-銀(Mg-Ag)、銀(Ag)等であり得る。トップエミッション型の発光デバイスを製造するために、第2の電極は、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)または酸化インジウム亜鉛(IZO)から、光透過性電極として形成されてもよい。第2の電極は、カソードであってもよい。
【0353】
本発明の別の態様によれば、アノード電極上に、正孔注入層、正孔輸送層、任意の電子阻止層、発光層、任意の正孔阻止層、第1の電子輸送層、任意の第2の電子輸送層、電子注入層、およびカソードの他の層がその順序で堆積されるか、またはカソードから始まって、反対方向に堆積される、有機エレクトロルミネセンスデバイスの製造方法が提供される。
【0354】
以下、実施例を参照して実施形態をより詳細に説明する。ただし、本開示は以下の実施例に限定されない。
【0355】
[図面の説明]
本発明のこれらおよび/または他の態様および利点は添付の図面と併せて、例示的な実施形態の以下の説明から明らかになり、より容易に理解されるのであろう:
図1は、発光層、1つの電子輸送層、および電子注入層を有する、本発明の例示的な実施形態に係る有機発光ダイオード(OLED)の概略断面図である;
図2は、発光層および2つの電子輸送層を有する本発明の例示的な実施形態に係る有機発光ダイオード(OLED)の概略断面図である;
図3は、発光層および3つの電子輸送層を有する本発明の例示的な実施形態に係るOLEDの概略断面図である;
図4は、発光層および1つの電子輸送層を有する本発明の例示的な実施形態に係る有機発光ダイオード(OLED)の概略断面図である;
図5は、発光層および2つの電子輸送層を有する本発明の例示的な実施形態に係る有機発光ダイオード(OLED)の概略断面図である;
図6は、発光層および3つの電子輸送層を有する本発明の例示的な実施形態に係るOLEDの概略断面図である。
【0356】
ここで、例示的な態様を詳細に参照し、その例を添付の図面に示し、全体を通して、同様の参照番号は同様の要素を指す。例示的な実施形態は図を参照することによって、その態様を説明するために、以下に記載される。
【0357】
ここで、第1の要素が第2の要素「上に」形成されるか、または配置されると言う場合、第1の要素は、第2の要素上に直接配置されてもよく、または1つ以上の他の要素がそれらの間に配置されてもよい。第1の要素が第2の要素「直上に」形成されるか、または配置されると言う場合、それらの間に他の要素は配置されない。
【0358】
用語「接触して挟まれて」は、中間の層が2つの隣接する層と直接接触する3つの層の配置を指す。
【0359】
本発明の一実施形態による有機発光ダイオードは、正孔輸送領域と、発光層と、式Iによる化合物を含む第1の電子輸送層とを含むことができる。
【0360】
図1は、本発明の一実施形態に係る有機発光ダイオード100の概略断面図である。OLED100は、発光層150、式Iの化合物を含む電子輸送層(ETL)161および電子注入層180を備え、第1の電子輸送層161は、発光層150直上に配置され、電子注入層180は、第1の電子輸送層161直上に配置されている。
【0361】
図2は、本発明の一実施形態による有機発光ダイオード100の概略断面図である。OLED100は、発光層150、ならびに式Iの化合物を含む第1の電子輸送層161および第2の電子輸送層162を含む電子輸送層スタック(ETL)160を含み、第2の電子輸送層162は、第1の電子輸送層161直上に配置されている。
【0362】
図3は、本発明の一実施形態に係る有機発光ダイオード100の概略断面図である。OLED100は、発光層150、ならびに、式Iの化合物を含む第1の電子輸送層161、式Iの化合物を含むが第1の電子輸送層の化合物とは異なる第2の電子輸送層162、および第3の電子輸送層163を含む電子輸送層スタック(ETL)160を含み、第2の電子輸送層162は、第1の電子輸送層161直上に配置され、第3の電子輸送層163は、第1の電子輸送層162直上に配置されている。
【0363】
図4は、本発明の一実施形態に係る有機発光ダイオード100の概略断面図である。OLED100は、基板110、第1のアノード電極120、正孔注入層(HIL)130、正孔輸送層(HTL)140、発光層(EML)150、1つの第1の電子輸送層(ETL)161、電子注入層(EIL)180、およびカソード電極190を含む。第1の電子輸送層(ETL)161は、式Iの化合物を、そして場合によってはアルカリハロゲン化物またはアルカリ有機錯体を含む。電子輸送層(ETL)161は、EML150直上に形成されている。
【0364】
図5は、本発明の一実施形態に係る有機発光ダイオード100の概略断面図である。OLED100は、基板110、第1のアノード電極120、正孔注入層(HIL)130、正孔輸送層(HTL)140、発光層(EML)150、電子輸送層スタック(ETL)160、電子注入層(EIL)180、およびカソード電極190を含む。電子輸送層(ETL)160は、第1電子輸送層161および第2電子輸送層162を含み、第1電子輸送層は、アノード(120)の近くに配置され、第2電子輸送層はカソード(190)の近くに配置されている。第1および/または第2の電子輸送層は、式Iの化合物を、そして場合によりアルカリハロゲン化物またはアルカリ有機錯体を含む。
【0365】
図6は、本発明の一実施形態に係る有機発光ダイオード100の概略断面図である。OLED100は、基板110、第1のアノード電極120、正孔注入層(HIL)130、正孔輸送層(HTL)140、発光層(EML)150、電子輸送層スタック(ETL)160、電子注入層(EIL)180、および第2のカソード電極190を含む。電子輸送層スタック(ETL)160は、第一の電子輸送層161、第二の電子輸送層162および第三の電子輸送層163を含む。第一電子輸送層161は、発光層(EML)150直上に形成されている。第1、第2および/または第3の電子輸送層は、各層について異なる式Iの化合物を、そして場合によりアルカリハロゲン化物またはアルカリ有機錯体を含む。
【0366】
基板は、アノード120の下またはカソード190の上にさらに配置されてもよい。基板は、一般的な有機発光ダイオードに用いられる基板であってよく、機械的強度、熱安定性、透明性、表面平滑性、取り扱い易さおよび耐水性に優れたガラス基板または透明プラスチック基板であってもよい。
【0367】
正孔注入層130は、アノードとしてのITOと正孔輸送層140に使用される有機材料との間の界面特性を改善することができ、非平坦化ITO上に適用することができ、従って、ITOの表面を平坦化することができる。例えば、正孔注入層130は、アノードとしてのITOの仕事関数と正孔輸送層140のHOMOとの差を調整するために、ITOの仕事関数および正孔輸送層140のHOMOの間に特に望ましい導電率を有する材料を含んでもよい。
【0368】
正孔輸送領域が正孔注入層130を含む場合、正孔注入層は、例えば真空蒸着、スピンコーティング、キャスティング、Langmuir-Blodgett(LB)法等の種々の方法のいずれかによって、アノード120上に形成されてもよい。
【0369】
正孔注入層が真空蒸着を用いて形成される場合、真空蒸着条件は、正孔注入層を形成するために使用される材料、ならびに形成される正孔注入層の所望の構造および熱特性に応じて変化し得、例えば、真空蒸着は、約100℃~約500℃の温度、約10-8torr~約10-3torrの圧力、および約0.01~約100Å/秒の蒸着速度で実施され得るが、蒸着条件はこれに限定されない。
【0370】
スピンコーティングを用いて正孔注入層を形成する場合、コーティング条件は、正孔注入層を形成するために使用される材料、ならびに形成される正孔注入層の所望の構造および熱特性に応じて変わり得る。例えば、塗布速度は約2000rpm~約5000rpmの範囲であってよく、塗布後に溶媒を除去するために行われる加熱処理での温度は約80℃~約200℃の範囲であってよいが、コーティング条件はこれに限定されない。
【0371】
正孔輸送層および電子阻止層を形成するための条件は、正孔注入層について上述した形成条件に基づいて規定することができる。
【0372】
正孔輸送領域の厚さは、約100Å~約10000Åであってよく、例えば、約100Å~約1000Åであってよい。正孔輸送領域が正孔注入層および正孔輸送層を含む場合、正孔注入層の厚さは、約100Å~約10,000Åであってよく、例えば約100Å~約1000Åであってよく、正孔輸送層の厚さは約50Å~約2,000Åであってよく、例えば約100Å~約1500Åであってよい。正孔輸送領域、HIL、およびHTLの厚さがこれらの範囲内にあるとき、動作電圧の大幅な増加なしに満足な正孔輸送特性が得られ得る。
【0373】
発光層の厚さは、約100Å~約1000Åであってよく、例えば、約200Å~約600Åであってよい。発光層の厚さがこれらの範囲内にある場合、発光層は、動作電圧の大幅な増加なしに、改善された発光特性を有し得る。
【0374】
次に、電子輸送領域は、発光層上に配置される。
【0375】
電子輸送領域は、第2の電子輸送層、式Iの化合物を含む第1の電子輸送層、および電子注入層のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0376】
電子輸送層の厚さは、約20Å~約1000Åであってよく、例えば、約30Å~約300Åであってよい。電子輸送層の厚さがこれらの範囲内にあるとき、電子輸送層は、動作電圧の大幅な増加なしに、改善された電子輸送補助能力を有し得る。
【0377】
電子輸送層の厚さは、約100Å~約1000Åであってよく、例えば、約150Å~約500Åであってよい。電子輸送層の厚さがこれらの範囲内にあるとき、電子輸送層は、動作電圧の大幅な増加なしに、満足な電子輸送能力を有し得る。
【0378】
また、電子輸送領域は、アノードからの電子の注入を容易にすることができる電子注入層(EIL)を含むことができる。
【0379】
電子注入層は、電子輸送層上に配置されてよく、カソードからの電子注入を容易にし、最終的には電力効率を向上させる役割を果たすことができ、例えばLiF、Liq、NaCl、CsF、Li2O、BaO、Yb等の、関連技術で用いられている特に限定されないいかなる材料を用いて形成することができる。
【0380】
電子注入層膜は、LiF、NaCl、CsF、Li2OおよびBaOから選択された少なくとも1つを含むことができる。
【0381】
EILの厚さは、約1Å~約100Åであってよく、または約3Å~約90Åであってもよい。電子注入層の厚さがこれらの範囲内にあるとき、電子注入層は、動作電圧の大幅な増加なしに、満足な電子注入能力を有することができる。
【0382】
アノードは、有機層上に配置することができる。アノードの材料は、仕事関数の小さい金属、合金、導電性化合物、またはそれらの組み合わせであってよい。アノード120の材料の具体例は、リチウム(Li)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、アルミニウム-リチウム(Al-Li)、カルシウム(Ca)、マグネシウム-インジウム(Mg-In)、マグネシウム-銀(Mg-Ag)、銀(Ag)等であってよい。トップエミッション型の発光デバイスを製造するために、アノード120は、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)または酸化インジウム亜鉛(IZO)から光透過性電極として形成されてもよい。
【0383】
本発明の別の態様によれば、アノード電極(120)上に、正孔注入層(130)、正孔輸送層(140)、任意の電子阻止層、発光層(130)、式Iの化合物を含む第1の電子輸送層(161)、第2の電子輸送層(162)、電子注入層(180)、およびカソード(190)の他の層がこの順序で堆積されるか、または層がカソード(190)から始まって、他の方法で堆積される、有機エレクトロルミネセンスデバイスの製造方法が提供される。
【0384】
[有機半導体層]
本発明に係る有機電子デバイスは、有機半導体層を含むことができ、少なくとも1つの有機半導体層は、式Iの化合物を含む。
【0385】
本発明に係る有機電子デバイスの有機半導体層は、本質的に非発光性または非発光性である。
【0386】
有機半導体層は、電子輸送層、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子阻止層、正孔阻止層または電子注入層、好ましくは電子輸送層または発光層、より好ましくは電子輸送層であり得る。
【0387】
一実施形態によれば、有機半導体層は、光活性層とカソード層との間、好ましくは発光層または光吸収層とカソード層との間に配置することができ、好ましくは、有機半導体層は電子輸送層である。
【0388】
一実施形態によれば、有機半導体層は、少なくとも1つのアルカリハロゲン化物またはアルカリ有機錯体を含んでいてもよい。
【0389】
[有機電子デバイス]
本発明に係る有機電子デバイスは、式Iによる化合物を含む有機半導体層を含む。
【0390】
一実施形態に係る有機電子デバイスは、基板、アノード層、式1の化合物を含む有機半導体層、およびカソード層を含むことができる。
【0391】
一実施形態に係る有機電子デバイスは、式Iの少なくとも1つの化合物を含む少なくとも1つの有機半導体層、少なくとも1つのアノード層、少なくとも1つのカソード層、および少なくとも1つの発光層を含み、有機半導体層は、好ましくは発光層とカソード層との間に配置される。
【0392】
本発明に係る有機発光ダイオード(OLED)は、基板上に順次積層されたアノード、正孔輸送層(HTL)、発光層(EML)、少なくとも1つの式1の化合物を含む電子輸送層(ETL)、およびカソードを含むことができる。なお、HTL、EML、ETLは、有機化合物からなる薄膜である。
【0393】
一実施形態に係る有機電子デバイスは、発光デバイス、薄膜トランジスタ、電池、表示デバイスまたは光発電電池、および好ましくは発光デバイスであり得る。
【0394】
一実施形態によれば、OLEDは、以下の層状構造を有することができ、当該層は、以下の順序を有する:
アノード層、正孔注入層、任意の第一の正孔輸送層、任意の第二の正孔輸送層、発光層、本発明に係る式1の化合物を含む電子輸送層、電子注入層、およびカソード層。
【0395】
本発明の別の態様によれば、有機電子デバイスの製造方法が提供され、当該方法は:
少なくとも1つの蒸着源、好ましくは2つの蒸着源およびより好ましくは少なくとも3つの蒸着源を用いる。
【0396】
適切であり得る堆積方法は:
真空熱蒸発による堆積;
溶液処理による堆積、好ましくは当該処理がスピンコーティング、印刷、キャスティングから選択され、および/または
スロットダイコーティング
を含む。
【0397】
本発明の様々な実施形態によれば、以下を使用する方法が提供され:
本発明に係る式1の化合物を放出するための第1の蒸着源、および
アルカリハロゲン化物またはアルカリ有機錯体、好ましくはハロゲン化リチウムまたはリチウム有機錯体を放出するための第2の蒸着源;
当該方法は、電子輸送層積層体を形成する工程を含み、それによって有機発光ダイオード(OLDE)を形成する:
第1の電子輸送層は、第1の堆積源から本発明に係る式1の化合物を放出することによって形成され、第2の堆積源からアルカリハロゲン化物またはアルカリ有機錯体、好ましくはハロゲン化リチウムまたはリチウム有機錯体を放出することによって形成される。
【0398】
本発明の様々な実施形態によれば、前記方法は、アノード電極上に、発光層、および、前記アノード電極と前記第1の電子輸送層との間に、正孔注入層を形成すること、正孔輸送層を形成すること、または正孔阻止層を形成すること、からなる群から選択される少なくとも1つの層とを形成することをさらに含むことができる。
【0399】
本発明の種々の実施形態によれば、前記方法は、さらに、有機発光ダイオード(OLED)を形成する工程を含んでもよく、
基板上に第1のアノード電極が形成され、
前記第1のアノード電極上に発光層が形成され、
前記発光層上に電子輸送層スタックが形成され、好ましくは第1の電子輸送層が発光層上に形成され、そして任意の第2の電子輸送層が形成され、
そして最後にカソード電極が形成され、
任意の正孔注入層、正孔輸送層および正孔阻止層が、第1のアノード電極と前記発光層との間にその順で形成され、前記任意の電子注入層が電子輸送層およびカソード電極の間に形成される。
【0400】
本発明の様々な実施形態によれば、前記方法は、第1の電子輸送層上に電子注入層を形成するステップをさらに含むことができる。しかしながら、本発明のOLEDの様々な実施形態によれば、OLEDは、電子注入層を含まなくてもよい。
【0401】
様々な実施形態によれば、OLEDは、以下の層状構造を有することができ、当該層は、以下の順序を有する:
アノード、第一の正孔輸送層、第二の正孔輸送層、発光層、任意の第二の電子輸送層、本発明に係る式1の化合物を含む第一の電子輸送層、任意の電子注入層、およびカソード。
【0402】
本発明の別の態様によれば、本出願全体にわたって記載される任意の実施形態に係る少なくとも1つの有機発光デバイスを含む電子デバイスが提供され、好ましくは、電子デバイスは、本出願全体にわたって記載される実施形態のうちの1つにおいて有機発光ダイオードを含む。より好ましくは、電子デバイスは表示デバイスである。
【0403】
以下、実施例を参照して実施形態をより詳細に説明する。
【0404】
ただし、本開示は以下の実施例に限定されない。ここで、例示的な態様を詳細に参照する。
【0405】
[式1の化合物の調製]
式1の化合物は、以下の記載のように調製してもよいし、HuangらChemical Communications (Cambridge, United Kingdom) (2012), 48(77), 9586-9588によって開示されたように調製してもよい。
【0406】
[鈴木カップリング(Suzuki coupling)の一般的手順]
【0407】
【0408】
セットアップは不活性雰囲気下で行われる。フラスコに、窒素の逆流中で、A、B、C、およびDを充填する。水(蒸留水)をN2(撹拌下)で約30分間脱気する。溶媒混合物を添加し、混合物を撹拌しながら加熱する(TLCコントロール)。
【0409】
[式1の化合物の合成]
ジメチル(3-(10-(3-(1,2,2-トリフェニルビニル)フェニル)アントラセン-9-イル)フェニル)ホスフィンオキシド(G1)の合成
【0410】
【0411】
試薬および反応条件:9-ブロモ-10-(3-(1,2,2-トリフェニルビニル)フェニル)アントラセン(1.0当量)、ジメチル(3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル)ホスフィンオキシド(1.2当量)、クロロ(クロチル)(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシビフェニル)パラジウム(II)(Pd-172)(0.02当量)、リン酸カリウム(3.0当量)。90℃で17時間(450mL、トルエン/エタノール/H2O 6/2/1)。
【0412】
TLCにより反応が完了したら、反応物を室温に冷却し、水相を分離した。水と塩水(brine)との混合物(1/1)を有機相に添加し、次いで沈殿物を濾過した。固体をクロロホルムに溶解し、フロリジル(florisil)パッドで濾過した(溶離液としてクロロホルムを最初に使用し、酢酸エチル/メタノール 24/1まで極性を徐々に上昇させた)。溶媒を部分的に蒸発させ、沈殿物を濾過した。化合物はDMF中で最初に再結晶させ、次にアセチルアセテート中で再結晶させた。8.6g(収率38%)。MS(ESI):661(M+H)。
【0413】
[中間体の合成]
Chemical Communications, 48(77), 9586-9588; 2012に従った、4,4,5,5-テトラメチル-2-(3-(1,2,2-トリフェニルビニル)フェニル)-1,3,2-ジオキサボロラン、4,4,5,5-テトラメチル-2-(4-(1,2,2-トリフェニルビニル)フェニル)-1,3,2-ジオキサボロラン、(2-(3-ブロモフェニル)-エテン-1,1,2-トリイル)トリベンゼンおよび(2-(4-ブロモフェニル)エテン-1,1,2-トリイル)トリベンゼンの合成。
【0414】
【0415】
9-ブロモ-10-(3-(1,2,2-トリフェニルビニル)フェニル)アントラセンの合成
【0416】
【0417】
9-(3-(1,2,2-トリフェニルビニル)フェニル)アントラセン(1.0当量)およびNBS(1.2当量)をフラスコに入れ、CHCl3(600ml)に溶解させた。得られた水溶液を40℃において4日間加熱し、次いで室温に冷却した。沈殿物を濾過し、クロロホルム中で粉砕した。31.3g(収率76%)。化合物を次のステップで直接使用した。
【0418】
9-(3-(1,2,2-トリフェニルビニル)フェニル)アントラセンの合成
【0419】
【0420】
試薬および反応条件:(2-(3-ブロモフェニル)エテン-1,1,2-トリイル)トリベンゼン(1.0当量)、アントラセン-9-イルボロン酸(1.7当量)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)(Pd(PPh3)4)(0.02当量)+[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)(Pd(dppf)Cl2)(0.02当量)、炭酸カリウム(3.0当量)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル(0.05当量)。90℃において7日間(525mL、グライム(glyme)/水 2.5/1.0)。
【0421】
TLCにより反応が完了したら、反応物を室温に冷却した。沈殿物を濾過し、水で洗浄した。固体を熱トルエンに溶解し、シリカゲルパッドで熱濾過し、次いで溶媒を部分的に蒸発させた。固体を濾過し、ジクロロメタン中で粉砕し(熱濾過)、トルエン中で再結晶させた。36.1g(収率71%)。ESI-MS:508(M)。
【0422】
3,3'''-ビス(1,2,2-トリフェニルビニル)-1,1’:3’,1'':3'',1'''-クアテルフェニル(G4)の調製
【0423】
【0424】
フラスコを窒素でフラッシュし、4,4,5,5-テトラメチル-2-(3-(1,2,2-トリフェニルビニル)フェニル)-1,3,2-ジオキサボロラン(20.0g、43.6mmol)および3,3’-ジブロモ-1,1’-ビフェニル(6.5g、20.8mmol)、Pd(dppf)Cl2(76mg、0.1mmol)を充填した。脱気トルエン/エタノール(3:1、200mL)とK2CO3(5.7g、42.0mmol)の脱気水溶液(21mL)との混合物を連続的に添加し、反応混合物を窒素雰囲気下で105℃に3時間加熱した。0℃に冷却した後、得られた沈殿物を吸引濾過によって単離し、トルエンおよびヘキサンで洗浄した。次に粗生成物をジクロロメタン(1.2L)に溶解させ、有機相を水(4×500mL)で洗浄した。MgSO4上で乾燥させた後、有機相を、シリカゲルパッドを通して濾過した。追加のジクロロメタン(1.5L)ですすいだ後、溶媒を真空下で完全に除去した。次に、粗固体をトルエン(170mL)中で再結晶させた。沈殿物を吸引濾過によって回収し、乾燥後に14.3g(84%)の白色固体を得た。昇華によって最終精製を達成した。HPLC:100%。
【0425】
3,3''-ビス(1,2,2-トリフェニルビニル)-1,1’:4’,1''-テルフェニル(G2)の調製
【0426】
【0427】
フラスコを窒素でフラッシュし、4,4,5,5-テトラメチル-2-(3-(1,2,2-トリフェニルビニル)フェニル)-1,3,2-ジオキサボロラン(13.8g、30.3mmol)および1,4-ジブロモベンゼン(3.4g、14.4mmol)、Pd(dppf)Cl2(53mg、0.07mmol)を充填した。脱気トルエン/エタノール(3:1、140mL)とK2CO3(4.0g、28.8mmol)の脱気水溶液(14.4mL)との混合物を連続的に添加し、反応混合物を窒素雰囲気下で105℃に3時間加熱した。室温に冷却した後、得られた沈殿物を吸引濾過によって単離し、トルエンおよびヘキサンで洗浄した。次いで、粗生成物をジクロロメタン(600mL)に溶解させ、有機相を水(3×300mL)で洗浄した。MgSO4上で乾燥させた後、有機相を、フロリジルパッドを通して濾過した。溶媒を真空下で完全に除去し、次いで粗固体をトルエン(80mL)中で再結晶させた。沈殿物を吸引濾過によって回収し、乾燥後に7.7g(72%)の白色固体を得た。昇華によって最終精製を達成した。HPLC:99.70%。
【0428】
3,3''-ビス(1,2,2-トリフェニルビニル)-5’-(3-(1,2,2-トリフェニルビニル)フェニル)-1,1’:3’,1''-テルフェニル(G5)の調製
【0429】
【0430】
フラスコを窒素でフラッシュし、4,4,5,5-テトラメチル-2-(3-(1,2,2-トリフェニルビニル)フェニル)-1,3,2-ジオキサボロラン(25.0g、54.5mmol)および1,3,5-トリブロモベンゼン(5.5g、17.3mmol)、Pd(dppf)Cl2(63mg、0.09mmol)を充填した。脱気トルエン/エタノール(3:1、240mL)とK2CO3(4.8g、34.6mmol)の脱気水溶液(17mL)との混合物を連続的に添加し、反応混合物を窒素雰囲気下で105℃に21時間加熱した。室温に冷却した後、追加のトルエン(250mL)を加え、粗反応物を水(4×300mL)で洗浄した。MgSO4上で乾燥させた後、有機相を、フロリジルパッドを通して濾過した。追加のトルエン(1.0L)ですすいだ後、溶媒を真空下で完全に除去し、粗混合物をエタノール(150mL)中で、室温で撹拌した。固体を吸引濾過によって回収し、アセトニトリル(300mL)中で再結晶させた。純粋な固体を70℃での吸引濾過によって回収し、乾燥後に16.3g(88%)の白色固体を得た。昇華によって最終精製を達成した。HPLC:99.0%。
【0431】
4’,5’,6’-トリフェニル-3'''-(1,2,2-トリフェニルビニル)-1,1’:2’,1'':3'',1'''-クアテルフェニル(G6)の調製
【0432】
【0433】
4,4,5,5-テトラメチル-2-(3’,4’,5’-トリフェニル-[1,1’:2’,1''-テルフェニル]-3-イル)-1,3,2-ジオキサボロラン(20.0g、34.2mmol)および(2-(3-ブロモフェニル)エテン-1,1,2-トリイル)トリベンゼン(12.8g、31.1mmol)、Pd(dppf)Cl2(113mg、0.16mmol)を充填した。脱気トルエン/エタノール(3:1、240mL)とK2CO3(4.8g、34.6mmol)の脱気水溶液(17mL)との混合物を連続的に添加し、反応混合物を窒素雰囲気下で105℃に5時間加熱した。室温に冷却した後、追加のトルエン(250mL)を加え、粗反応物を水(4×300mL)で洗浄した。MgSO4上で乾燥させた後、有機相を、フロリジルパッドを通して濾過した。追加のトルエン(2.0L)ですすいだ後、溶媒を真空下で部分的に除去し、ヘキサン(300mL)を添加して沈殿を誘導した。粗混合物を吸引濾過によって回収し、酢酸エチル(150mL)中で再結晶させて、乾燥後に16.9g(69%)の白色固体を得た。昇華によって最終精製を達成した。HPLC:99.9%。
【0434】
3,3''-ビス(1,2,2-トリフェニルビニル)-1,1’:3’,1''-テルフェニル(G3)の調製
【0435】
【0436】
フラスコを窒素でフラッシュし、4,4,5,5-テトラメチル-2-(3-(1,2,2-トリフェニルビニル)フェニル)-1,3,2-ジオキサボロラン(20.0g、44.0mmol)および1,3-ジブロモベンゼン(4.9g、20.8mmol)、Pd(dppf)Cl2(76mg、0.10mmol)を充填した。脱気トルエン/エタノール(3:1、200mL)とK2CO3(5.7g、42.0mmol)の脱気水溶液(21mL)との混合物を連続的に添加し、反応混合物を窒素雰囲気下で105℃に21時間加熱した。室温に冷却した後、追加のトルエン(300mL)を加え、粗反応物を水(4×300mL)で洗浄した。MgSO4上で乾燥させた後、有機相を、フロリジルパッドを通して濾過した。追加のトルエン(1.0L)ですすいだ後、溶媒を完全に除去した。粗混合物をアセトニトリル中で再結晶させた。沈殿物を60℃で吸引濾過によって回収した。最後に、それをエタノール(180mL)中で撹拌した。沈殿物を吸引濾過によって回収し、乾燥後に14.1g(92%)の白色固体を得た。昇華によって最終精製を達成した。HPLC:99.9%。
【0437】
<有機電子デバイスの製造に関する一般的手順>
一般的な有機電子デバイスとしては、有機発光ダイオード(OLED:organic light-emitting diode)、有機光電池(OSC:organic photovoltaic cell)、有機電界効果トランジスタ(OFET:organic field-effect transistor)または有機発光トランジスタ(OLET:organic light emitting transistor)が挙げられる。
【0438】
有機電子デバイスの任意の機能層は、式1の化合物を含んでもよく、または、式1の化合物からなってもよい。
【0439】
OLEDを個々の機能層から構成させて、上部電極を介して発光するトップエミッション型OLEDを形成してもよい。ここで、個々の機能層の順序は、以下のようであってよい:不透明アノード層(下部電極)/正孔注入層/正孔輸送層/電子ブロッキング層/発光層/正孔ブロッキング層/電子輸送層/電子注入層/透明カソード層(上部電極)。「/」は、個々の層間の接触面を示す。各層自体は、数層のサブ層(sub-layer)によって構成されていてもよい。
【0440】
OLEDを個々の機能層から構成させて、下部電極を介して発光するボトムエミッション型OLEDを形成してもよい。ここで、個々の機能層の順序は、以下のようであってよい:透明アノード層(下部電極)/正孔注入層/正孔輸送層/電子ブロッキング層/発光層/正孔ブロッキング層/電子輸送層/電子注入層/不透明カソード層(上部電極)。「/」は、個々の層間の接触面を示す。各層自体は、数層のサブ層によって構成されていてもよい。
【0441】
有機電子デバイスにおいて式1の化合物を利用する技術的利点を実証するために、トップエミッション型OLEDデバイスを作製した。
【0442】
<トップエミッション型デバイスの製造>
表3および表4におけるトップエミッション型デバイスについて、ガラス基板を50mm×50mm×0.7mmの大きさに切断し、イソプロピルアルコールで5分間超音波洗浄した後、純水で5分間超音波洗浄し、その後UVオゾンで30分間再度洗浄し、第1電極を作製した。100nmのAgを10-5mbar~10-7mbarの圧力で蒸着させて、アノードを形成した。次に、92体積%のビフェニル-4-イル(9,9-ジフェニル-9H-フルオレン-2-イル)-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-アミン(CAS 1242056-42-3)および8体積%の4,4’,4''-((1E,1’E,1''E)-シクロプロパン-1,2,3-トリイリデントリス(シアノメタニルイリデン))トリス(2,3,5,6-テトラフルオロベンゾニトリル)をAg電極に真空蒸着させて、10nmの厚さを有するHILを形成した。次に、ビフェニル-4-イル(9,9-ジフェニル-9H-フルオレン-2-イル)-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-アミン(CAS 1242056-42-3)をHILに真空蒸着させて、118nmの厚さを有するHTLを形成した。次に、N,N-ビス(4-(ジベンゾ[b,d]フラン-4-イル)フェニル)-[1,1’:4’,1''-テルフェニル]-4-アミン(CAS 1198399-61-9)をHTLに真空蒸着させて、5nmの厚さを有する電子ブロッキング層(EBL)を形成した。
【0443】
97体積%のH09(Sun Fine Chemicals)をEMLホストとして、3体積%のBD200(Sun Fine Chemicals)を蛍光青ドーパントとして、EBL上に共蒸着し、厚さ20nmの青色発光EMLを形成した。
【0444】
次に、30:70の体積比における2,4-ジフェニル-6-(3’-(トリフェニレン-2-イル)-[1,1’-ビフェニル]-3-イル)-1,3,5-トリアジン(CAS 1638271-85-8)と9-([1,1’-ビフェニル]-3-イル)-9’-([1,1’-ビフェニル]-4-イル)-9H,9’H-3,3’-ビカルバゾール(CAS 1643479-47-3)との混合物を本発明の実施例7の発光層に蒸着させて、5nmの厚さを有する正孔ブロッキング層を形成する。本発明の実施例10~12では、正孔ブロッキング層が化合物ET-1(ジフェニル(3’-(10-フェニルアントラセン-9-イル)-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)ホスフィンオキシド(WO2017178392A1))と式Iの化合物とを40:60の体積比で発光層に共蒸着させて、5nmの厚さを有する正孔ブロッキング層を形成する(表4参照)。
【0445】
次に、正孔ブロッキング層上に、電子輸送層を形成する。本発明の実施例7の電子輸送層は、70重量%の式1の化合物(または比較化合物)および30重量%のリチウムテトラ(1H-ピラゾール-1-イル)ボレート(CAS 14728-62-2)を含む。本発明の実施例10~12の電子輸送層は、75重量%の化合物ET-1および25重量%のリチウムテトラ(1H-ピラゾール-1-イル)ボレート(CAS 14728-62-2)を含む。
【0446】
次に、トップエミッション型デバイスについては、厚さ2nmのYbを蒸着して、電子注入層を電子輸送層上に形成する。Agを、10-7mbarにおいて0.01~1Å/sの割合で蒸着して、厚さ11nmのカソードを形成する。ビフェニル-4-イル(9,9-ジフェニル-9H-フルオレン-2-イル)-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-アミンのキャップ層を厚さ75nmでカソード上に形成する。
【0447】
OLED積層体は、ガラススライドを用いてデバイスを封入することにより、周囲環境から保護されている。これにより、さらなる保護のためのゲッター材料を含んだ空洞が形成される。
【0448】
先行技術と比較した本発明の実施例の性能を評価するために、トップエミッション型OLEDの光出力を周囲条件下(20℃)において測定する。Keithley 2400のソースメータを用いて電流電圧の測定を行い、「V」として記録する。トップエミッション型デバイスについて、10mA/cm2におけるCIE座標および輝度(単位:カンデラ)を、Instrument Systems製の分光計CAS140 CT(Deutsche Akkreditierungsstelle (DAkkS)によって較正されている)を用いて測定する。電流効率Ceffは、10mA/cm2(cd/A)で測定する。
【0449】
トップエミッション型デバイスにおいて、発光は前方に向けられ、非ランバート反射によるものであり、また、微小空洞に大きく依存する。従って、外部量子効率(EQE)および出力効率(lm/W)は、ボトムエミッション型デバイスと比べて高い。
【0450】
<使用した化合物>
【0451】
【0452】
【0453】
<融点>
融点(Tm)は、前述のTGA-DSC測定のDSC曲線から、または、個別のDSC測定から、ピーク温度として測定される(Mettler Toledo DSC 822e、サンプルを、室温から溶融の完了まで、純窒素を流しながら、10K/分の加熱速度で加熱する。4~6mgのサンプル量を、蓋付きの40μLのMettler Toledo アルミニウムパンに入れる。蓋には1mm未満の孔が開けられている)。
【0454】
<ガラス転移温度>
ガラス転移温度(Tg)は、DIN EN ISO 11357(2010年3月公開)に記載されているように、窒素下で測定され、当該測定は、示差走査熱量計Mettler Toledo DSC 822eを用いて10K/分の加熱速度で行われる。
【0455】
<レート開始温度(rate onset temperature)>
気相への遷移のためのレート開始温度(TRO)は、100mgの化合物をVTE源へ入れることで測定する。VTE源として、Kurt J. Lesker Company (www.lesker.com)またはCreaPhys GmbH (http://www.creaphys.com)によって提供されている、有機材料の点源を使用する。VTE(真空熱蒸着、vacuum thermal evaporation)源の温度は、VTE源中の化合物と直接接触するサーモカップルによって測定する。
【0456】
VTE源は、真空チャンバ内で10-7mbar~10-8mbarの圧力下において、15K/分の一定の割合で加熱し、サーモカップルを用いてVTE源の内部温度を測定する。化合物の蒸着を、QCM検出器を用いて検出する。当該検出器は、検出器の石英結晶上に積層された化合物を検出する。石英結晶上への積層速度は、1秒間当たりのオングストロームで測定する。レート開始温度を測定するために、VTE源の温度に対する積層速度(対数スケール)をプロットする。レート開始は、QCM検出器上に顕著な蒸着が起こるときの温度である(0.02Å/秒の速度で定義される)。VTE源を3回加熱冷却し、2回目および3回目のみの実施から得られた結果を、レート開始温度の測定に使用する。レート開始温度は、化合物の揮発性の間接的な尺度である。レート開始温度が高いほど、化合物の揮発性が低い。
【0457】
<本発明の技術的効果>
まとめると、固有の分子構造である式1の化合物を含む有機電デバイスの電子効率は、より高い電流効率を有する。ガラス転移温度およびレート開始温度は、有機半導体層の大量生産に許容される範囲内である。
【0458】
【0459】
【0460】
表1には、比較化合物のガラス転移温度、溶融温度、レート開始温度を示す。
【0461】
表2には、式1の化合物のガラス転移温度、溶融温度、レート開始温度を示す。
【0462】
【0463】
【0464】
本発明は、実用的な実施形態の例として現在考えられるものと関連させて説明したが、本発明は開示された実施形態に限定されるものではなく、反対に、添付されている特許請求の範囲の技術思想および範囲内に含まれる様々な変更および等価な構成を包含するものとして理解されるべきである。従って、前述の実施形態は、例示的であり、本発明をなんら限定しないと理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0465】
【
図1】
図1は、発光層、1つの電子輸送層、および電子注入層を有する、本発明の例示的な実施形態に係る有機発光ダイオード(OLED)の概略断面図である。
【
図2】
図2は、発光層および2つの電子輸送層を有する本発明の例示的な実施形態に係る有機発光ダイオード(OLED)の概略断面図である。
【
図3】
図3は、発光層および3つの電子輸送層を有する本発明の例示的な実施形態に係るOLEDの概略断面図である。
【
図4】
図4は、発光層および1つの電子輸送層を有する本発明の例示的な実施形態に係る有機発光ダイオード(OLED)の概略断面図である。
【
図5】
図5は、発光層および2つの電子輸送層を有する本発明の例示的な実施形態に係る有機発光ダイオード(OLED)の概略断面図である。
【
図6】
図6は、発光層および3つの電子輸送層を有する本発明の例示的な実施形態に係るOLEDの概略断面図である。