(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-20
(45)【発行日】2023-06-28
(54)【発明の名称】流体投与アセンブリ
(51)【国際特許分類】
A61M 15/08 20060101AFI20230621BHJP
【FI】
A61M15/08
(21)【出願番号】P 2020542642
(86)(22)【出願日】2019-02-04
(86)【国際出願番号】 FR2019050239
(87)【国際公開番号】W WO2019155150
(87)【国際公開日】2019-08-15
【審査請求日】2022-02-03
(32)【優先日】2018-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502343252
【氏名又は名称】アプター フランス エスアーエス
【氏名又は名称原語表記】APTAR FRANCE SAS
【住所又は居所原語表記】Lieu-dit Le Prieure,27110 Le Neubourg,France
(74)【代理人】
【識別番号】110001900
【氏名又は名称】弁理士法人 ナカジマ知的財産綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】ノルラン マテュー
(72)【発明者】
【氏名】ユッペ マキシム
【審査官】佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-271(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体投与アセンブリであって、
流体が収容された容器(30)と前記容器(30)上に組み立てられた投与口(10)を有する投与ヘッド(1)とを含む経鼻流体投与装置(1000)と、
スマートフォンのような遠隔移動機器(2000)とを備え、
前記流体投与装置(1000)は、
加速度計やジャイロのような、向きセンサ(113)を少なくとも1つ含み、
前記流体投与装置(1000)の作動時に前記流体投与装置(1000)の向きが最適な向きになるように、前記遠隔移動機器(2000)と通信してリアルタイムで前記ユーザに対する支援および案内を行い、
前記向きセンサ(113)は
、前記遠隔移動機器(2000)に対する前記流体投与装置(1000)の角度(α)をリアルタイムで検知
するためのセンサであり、
前記流体投与装置(1000)は、
前記ユーザによる前記流体投与装置の作動タイミングを検知するための、加速度計のようなセンサ(121)をさらに含み、
前記遠隔移動機器(2000)は、
鉛直方向に対する前記遠隔移動機器の角度(β)を計測可能である加速度計を含む
ことを特徴とする流体投与アセンブリ。
【請求項2】
前記流体投与装置(1000)は、
前記投与ヘッド(1)を取り囲んで配置される、上部支持体(110)と下部支持体(120)とをさらに含む
ことを特徴とする請求項1に記載の流体投与アセンブリ。
【請求項3】
前記上部支持体(110)は、前記投与ヘッド(1)の指当て(2)の上方に配置され、
前記下部支持体(120)は、前記投与ヘッド(1)のスカート(5)を取り囲んで配置される
ことを特徴とする請求項2に記載の流体投与アセンブリ。
【請求項4】
前記流体投与装置(1000)は、
前記遠隔移動機器(2000)との通信と、前記ユーザの鼻孔に対する前記流体投与装置(1000)の位置のリアルタイム中継とを行うための、無線通信モジュール(123
)をさらに含む
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の流体投与アセンブリ。
【請求項5】
前記流体投与装置(1000)は、
プリント回路のような電子モジュール(125)をさらに含み、
前記電子モジュール(125)は、
前記センサ(113、121)から提供される情報を処理するためのソフトウェアを有するマイクロプロセッサを含む
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の流体投与アセンブリ。
【請求項6】
前記流体投与装置(1000)は、
前記ユーザに情報をリアルタイムで伝達するための、
視覚指示器と、
聴覚指示器と、
触覚指示器とのうちの少なくとも1つをさらに含む
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の流体投与アセンブリ。
【請求項7】
前記流体投与装置(1000)は、
前記ユーザが見ることができる情報を表示するように構成された画面(124)をさらに含む
ことを特徴とする請求項6に記載の流体投与アセンブリ。
【請求項8】
前記流体投与装置(1000)は、
前記ユーザに音声情報を提供するためのスピーカー(112)と、
前記ユーザに触覚情報を提供するための振動要素(122)とのうちの少なくとも1つを
さらに含む
ことを特徴とする請求項6または7に記載の流体投与アセンブリ。
【請求項9】
前記遠隔移動機器(2000)は、
画面(2001)と、
カメラ(2002)とを含む
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の流体投与アセンブリ。
【請求項10】
前記容器(30)に収容された前記流体は、1回分または2回分の分量である
ことを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の流体投与アセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経鼻流体投与装置とスマートフォンのような遠隔移動機器とを備える流体投与アセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
経鼻投与装置は、公知技術であり、1回分以上の分量の流体が収容された容器と、容器内の流体を投与する投与ヘッドとを含むのが一般的である。投与ヘッドは具体的には、ポンプまたは計量弁あるいは容器の内部を摺動するピストンによって、容器に対して移動して流体を投与する。ユーザが投与装置を使用するには、投与ヘッドを鼻孔に挿入して投与装置を作動させる。そうすると、1回分の分量の流体が、通常は噴霧状で投与される。
【0003】
このような従来の投与装置では、脳に対する作用を目的とする場合は特に、鼻孔に投与される流体の有効性が問題になる。すなわち、脳疾患治療の目標領域である篩骨洞を含む嗅覚器領域には、投与流体のうちのわずかな量しか送達されない。その要因は、特に鼻孔内における装置の向きが患者によって異なることである。残念ながら、薬剤を付着させる目標領域に照準が合うか否かは、装置の向きに依存するようである。これは、薬剤を目標領域に最大限に付着させるための小型スプレーに特に当てはまる。
【0004】
特許文献1に記載の経鼻投与装置は、ユーザの上唇に押し当てられる向き決定手段を含む。この構成によれば、挿入の質は改善されるものの、投与時に装置の最適な向きを保証することはできない。
【0005】
特許文献2および3には、他の従来の装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第WO98/57690号
【文献】国際公開第WO02/085282号
【文献】仏国特許発明第3024655号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上述した欠点のない投与アセンブリを提供することである。
【0008】
本発明の目的は具体的には、患者の鼻腔形状や投与装置使用時の患者の姿勢(立っている、横たわっている、または寄り掛かっている姿勢)に応じて、鼻孔内における装置の向きを制御可能である経鼻投与アセンブリを提供することである。
【0009】
本発明の他の目的は、嗅覚器領域または篩骨洞あるいはその両方に付着する流体の有効率が改善された経鼻投与アセンブリを提供することである。
【0010】
本発明の他の目的は、装置の鼻孔内への挿入の質をユーザにリアルタイムで通知可能である経鼻投与アセンブリを提供することである。
【0011】
本発明の他の目的は、経鼻投与装置の作動時にユーザが鼻孔内における装置の向きを補正できる経鼻投与アセンブリを提供することである。
【0012】
本発明の他の目的は、製造および組立が容易で安価な経鼻投与アセンブリを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
したがって本発明は、流体投与アセンブリであって、流体が収容された容器と前記容器上に組み立てられた投与口を有する投与ヘッドとを含む経鼻流体投与装置と、スマートフォンのような遠隔移動機器とを備える流体投与アセンブリを提供する。前記流体投与装置は、加速度計やジャイロのような、向きセンサを少なくとも1つ含み、前記流体投与装置の作動時に前記流体投与装置の向きが最適な向きになるように、前記遠隔移動機器と通信してリアルタイムで前記ユーザに対する支援および案内を行う。前記向きセンサは、前記遠隔移動機器に対する前記流体投与装置の角度αをリアルタイムで検知するためのセンサである。前記流体投与装置は、前記ユーザによる前記流体投与装置の作動タイミングを検知するための、加速度計のようなセンサをさらに含む。前記遠隔移動機器は、鉛直方向に対する前記遠隔移動機器の角度βを計測可能である加速度計を含む。
【0014】
有利には、前記流体投与装置は、前記投与ヘッドを取り囲んで配置される、上部支持体と下部支持体とをさらに含む。
【0015】
有利には、前記上部支持体は、前記投与ヘッドの指当ての上方に配置され、前記下部支持体は、前記投与ヘッドのスカートを取り囲んで配置される。
【0016】
有利には、前記流体投与装置は、前記遠隔移動機器との通信と、前記ユーザの鼻孔に対する前記流体投与装置の位置のリアルタイム中継とを行うための、無線通信モジュールをさらに含む。
【0017】
有利には、前記流体投与装置は、プリント回路のような電子モジュールをさらに含み、前記電子モジュールは、前記センサから提供される情報を処理するためのソフトウェアを有するマイクロプロセッサを含む。
【0018】
有利には、前記流体投与装置は、前記ユーザに情報をリアルタイムで伝達するための、視覚指示器と、聴覚指示器と、触覚指示器とのうちの少なくとも1つをさらに含む。
【0019】
有利には、前記流体投与装置は、前記ユーザが見ることができる情報を表示するように構成された画面をさらに含む。
【0020】
有利には、前記流体投与装置は、前記ユーザに音声情報を提供するためのスピーカーと、前記ユーザに触覚情報を提供するための振動要素とのうちの少なくとも1つをさらに含む。
【0021】
有利には、前記遠隔移動機器は、画面と、カメラとを含む。
【0022】
有利には、前記容器に収容された前記流体は、1回分または2回分の分量である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
以下に示す詳細な説明および添付図面は、非限定的な例に基づいて本発明の特徴や利点を明確にするものである。
【
図1】有利な実施形態に係る経鼻投与装置の概略斜視図である。
【
図2】待機状態にある
図1の装置を示す概略断面図である。
【
図3】待機状態にある
図1の装置を、
図2とは異なる断面で示す概略断面図である。
【
図4】立っている姿勢のユーザを示す概略図である。
【
図5】横たわっている姿勢のユーザを示す概略図である。
【
図6】寄り掛かっている姿勢のユーザを示す概略図である。
【
図7】経鼻投与装置を使用中のユーザに、鼻孔内における装置の向きをリアルタイムで通知する画面、具体的にはスマートフォンの画面を示す概略図である。
【
図8】経鼻投与装置が作動可能であることをユーザに通知する画面を示す、
図7に類似した図である。
【
図9】鼻孔内における経鼻投与装置の向きの補正方法を作動前にユーザに示すために、
図7の画面に表示された装置を示す詳細図である。
【
図10】鼻孔内における経鼻投与装置の向きの補正方法を作動前にユーザに示すために、
図7の画面に表示された装置を示す詳細図である。
【
図11】作動後の
図1の装置を示す概略斜視図であって、流体の投与状態が良好であることが装置の画面に表示されている。
【
図12】作動後の
図1の装置を示す概略斜視図であって、流体の投与状態が普通であることが装置の画面に表示されている。
【
図13】作動後の
図1の装置を示す概略斜視図であって、流体の投与状態が不良であることが装置の画面に表示されている。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明はより詳細には、国際公開第WO02/45866号に開示されているような、1回使い切り型の投与装置に関する。ただし留意すべきは、本発明はそのような種類の装置に限定されるものではないということである。本発明は、1回きりの作動で投与される1回分の分量が収容された容器を含む1回使い切り型の投与装置、連続する2回の作動で投与される2回分の分量が収容された容器を含む2回使い切り型の投与装置、または3回分以上の分量が収容された容器を含む複数回使い切り型の投与装置といった、任意の流体または粉体の投与装置に適用することができる。
【0025】
以下の説明において、用語「上」、「下」、「上方」、「下方」、「水平」、および「垂直」は、
図2、
図3および
図11~
図13に示す起立した状態の投与装置に対する相対的位置を表す。用語「軸方向」および「半径方向」は、
図2に示す装置の縦中心軸Xに対する相対的方向を表す。
【0026】
一例としての投与装置1000は、1回分の分量の流体が収容された容器30を含む、1回使い切り型の装置である。容器30は空気入口31および流体出口32を有する。なお、収容される流体は、液体または粉体である。容器30の空気入口31は、送気装置20に接続されている。容器30の流体出口32は、投与装置1000の投与口10に接続されている。流体出口32は、その内部に閉鎖要素50が圧入されることにより閉鎖されている。空気入口31には、投与装置1000が作動するまで容器30内に流体を保持するように構成された流体保持部材40が設けられている。送気装置20はユーザによって手動で作動される。また送気装置20は、空気流を生成するように構成されており、生成された空気流は、容器30を通過することにより、容器内の流体を投与口10に向けて運ぶ。
【0027】
容器30は、投与口10を有する投与ヘッド1に固定されており、具体的には、密嵌されている。投与ヘッド1は有利には、作動を容易にするために、半径方向に延在する指当て2を含む。指当て2から軸方向上方には、鼻用エンドピースを構成する中空スリーブ3が、投与口10まで延在している。中空スリーブ3は、作動時に鼻孔内に挿入可能であるように、半径方向の寸法が小さいことが好ましい。投与ヘッド1は、指当て2から軸方向下方に延在するスカート5を含む。なお、
図2および
図3から分かるように、スカート5の半径方向外側には、中空管6が配置されてもよい。
【0028】
投与装置1000は、機械的開放システム61,62を含む。好ましくは、機械的開放システム61,62は、送気装置20に固定されている、すなわち、送気装置20の作動と同時に作動される。機械的開放システム61,62は、投与装置1000の作動中に閉鎖要素50をその閉鎖位置から機械的に押し出すように構成されている。図に示す実施形態では、機械的開放システムは、送気装置20に固定された第1ロッド部61と、投与装置1000の作動時に第1ロッド部61によって押される第2ロッド部62とからなる一組のロッド61,62を含む。一組のロッド61,62は、作動ストロークの終了時に、すなわち投与位置において、閉鎖要素50をその閉鎖位置から機械的に押し出す。
【0029】
流体保持部材40は、有利には第2ロッド部62と一体形成することができる。このように構成すれば、投与装置1000が作動するまでは、流体保持部材40を気密状態にすることができる。第1ロッド部61によって押されて流体保持部材40が第2ロッド部62とともに移動した時にのみ、送気装置20によって生成された空気圧が容器30に流入する。
【0030】
閉鎖要素50は、
図2および
図3に示すように球状とすることができる。例えば、ボール、具体的にはプラスチック材料からなるボールが挙げられる。
【0031】
送気装置20は、
図2および
図3に示すように、空気室22の内部を摺動するピストン21を含む。ピストン21は、ユーザによって手動で作動される。空気室22は、投与ヘッド1のスカート5から構成されてもよい。
【0032】
有利には、投与装置1000の作動は、ピストン21の上に組み付けられた押下要素25を用いて行われる。
【0033】
ピストン21は、第1ロッド部61に固定されており、有利には第1ロッド部61と一体形成されている。
【0034】
ユーザが投与装置1000を作動させるには、親指を投与ヘッド1の押下要素25に、他の指を指当て2にそれぞれ当てて、作動力を加える。そうすると、第1ロッド部61およびピストン21が投与位置に向かって移動する。送気装置20のピストン21が空気室22と気密状態で協働することにより、空気室22中の空気は作動中に次第に圧縮されていく。
【0035】
空気を圧縮するための最初の作動ストロークの後、第1ロッド部61の軸方向上端は、流体保持部材40ひいては第2ロッド部62に接触する。
【0036】
作動が継続していくと、流体保持部材40は、容器30の内部で軸方向上方に移動して、空気入口31を密封していた閉鎖位置から遠ざかる。よって、この時点で、空気室22内の圧縮空気は容器30に流入することができる。これと同時に、第2ロッド部62の軸方向上端が閉鎖要素50に接触する。
【0037】
このように作動が継続すると、閉鎖要素50は、軸方向上方に移動してその閉鎖位置から遠ざかる。
【0038】
閉鎖要素50は、その封止が解除されると容器30から押し出されて、圧縮空気の作用により流体または粉体が投与される。したがって、閉鎖要素50は投与ヘッド1のスプライン11内に押し込まれる。このスプラインは、特に閉鎖要素50が投与ヘッド1から押し出される危険を防止する。
【0039】
当然ながら本発明は、上述した1回使い切り型の装置に限定されるものではなく、1回使い切り型、2回使い切り型、または3回以上の複数回使い切り型であるかにかかわらず、任意の経鼻投与装置に適用されるものである。
【0040】
本発明によれば、経鼻投与装置1000は、向きセンサを少なくとも1つ含み、投与装置の作動時にその向きが最適な向きになるように、専用アプリケーションを介して遠隔移動機器2000と通信して、リアルタイムでユーザに対する支援および案内を行う。
【0041】
本発明の目的は、投与装置の作動と同時に、患者の鼻腔形状に応じて装置の最適な位置を確実に決めることである。これにより、鼻孔内に薬剤をより良好に付着させることができる。
【0042】
ユーザは、自身の鼻腔形状に最適な角度を知るために、医療専門家の元で事前に試験を受けることが任意でできる。これにより、ユーザは関連するアプリケーションを構成することができる。
【0043】
投与装置1000は、投与ヘッド1を取り囲んで配置される、上部支持体110および下部支持体120を含むことが好ましい。上部支持体および下部支持体は、本発明の要素を組み込んでいる。このように、流体投与装置の動作も性能も、本発明によって変更されるものではない。特に、上部支持体110は、投与ヘッド1の指当て2の上方に配置することができ、下部支持体120は、投与ヘッド1のスカート5または中空管6を取り囲んで配置することができる。
【0044】
本発明によれば、投与装置1000は、装置の3次元の向き、具体的には遠隔移動機器に対する装置の角度位置をリアルタイムで検知するための、加速度計やジャイロのような向きセンサ113を含む。
【0045】
投与装置1000は、ユーザによる装置の作動タイミングを検知するための、加速度計のような別のセンサ121を含む。センサ121は、投与装置1000の作動により生じる加速度のみが検知されるように、精密に調整されてもよい。
【0046】
遠隔移動機器2000は、3次元空間における自身の位置、具体的には鉛直方向に対する自身の角度βを計測可能である加速度計を含む。
【0047】
ソフトウェアは、患者の初期姿勢(立っている、座っている、例えば±45度傾斜して寄り掛かっている、または横たわっている)に応じて、最適な角度を算出する。
【0048】
投与装置1000は、無線通信モジュール123をさらに含む。無線通信モジュール123は、有利にはBluetooth(登録商標)モジュールであり、スマートフォンやタブレットのような遠隔移動機器2000との通信と、ユーザの鼻孔に対する投与装置1000の位置のリアルタイム中継を行うためのものである。
【0049】
投与装置1000はまた、プリント回路やプリント基板(PCB)のような電子モジュール125を含む。電子モジュール125は、センサから提供される情報を処理するためのソフトウェアを有するマイクロプロセッサを含む。
【0050】
有利には、投与装置1000はまた、ユーザに情報を伝達するための、視覚指示器と聴覚指示器と触覚指示器とのうちの、少なくとも1つを含む。よって、投与装置1000は、ユーザが見ることができる情報を表示するように構成された画面124、または発光ダイオード111、あるいはその両方を含んでもよい。投与装置1000はまた、ユーザに音声情報を提供するためのスピーカー112、またはユーザに触覚情報を提供するための振動要素122、あるいはその両方を含んでもよい。このような情報は、例えば視覚障害のあるユーザに有用であり得る。
【0051】
以下に、
図4~
図13を参照してアセンブリの動作を説明する。本実施形態では、遠隔移動機器2000はスマートフォンである。
【0052】
図4~
図6から分かるように、ユーザが、
図4のように立っている姿勢(d)、
図5のように横たわっている姿勢(a)、または
図6のように寄り掛かっている(i)姿勢のうちのいずれの姿勢を取っていても、ユーザの顔面はスマートフォンの画面2001に向いており、画面が顔面に平行になる。有利には、スマートフォンのフロントカメラ2002を用いることにより、確実にユーザが画面を真っすぐに見るようにすることができる。
【0053】
角度αd、αaおよびαi:スマートフォンに対する経鼻投与装置の角度は、ユーザの姿勢にかかわらず、常に同一である。
【0054】
角度βd、βaおよびβi:鉛直方向に対するスマートフォンの角度は、スマートフォンの加速度計によって計測される。この計測によりユーザの姿勢を特定して、スマートフォンの画面に装置の実際の位置を表示することができる。
【0055】
操作手順の説明:
・待機位置:投与装置の加速度計はいかなる動きも検知しない。装置の電子機器は待機状態にある。アプリケーションは、患者が装置を手にしていないことを示す。
【0056】
・ユーザの手に握られた操作開始位置:投与装置の加速度計が装置の動きを検知する。装置の電子機器が起動される。角度αおよびβの計測値の組み合わせにより、ユーザの姿勢およびユーザに対する装置の位置が特定される。
図7に示すように投与装置の位置が最適領域から外れている場合、スマートフォンの画面に例えば赤色点のような標識が表示される。これと同時に、3次元空間における装置の実際の位置P1および最適位置P2も画面に表示される。
図9および
図10に示されるように、少なくとも1つの矢印Fによって、装置の位置を最適位置P2に向けて補正するようにユーザを案内することができる。またこれと同時に、音声指示を出力することができる。例えば、「装置を上/下に傾けてください」という指示または「装置を左/右に向けてください」という指示、あるいはその両方が出力される。ユーザが装置を最適な向きに近づけると、上述の標識とは異なる橙色点のような標識をスマートフォンの画面に表示することができる。
【0057】
・最適位置:
図8に示すように、ユーザが投与装置を最適位置に配置すると、上述の標識とは異なる緑色点のような標識をスマートフォンの画面に表示することができる。ユーザは装置を作動させて薬剤を投与する。これと同時に、ユーザに装置の作動を促すメッセージをスマートフォンの画面に表示することができる。例えば、「作動してください」という言葉または薬剤投与の必要性を表す矢印の動画、あるいはその両方が表示される。さらに、音声指示を出力することもできる。例えば、「装置を作動させてください」という指示または「薬剤を投与してください」という指示、あるいはその両方が出力される。
【0058】
・作動中に投与装置が最適領域から外れた場合、例えば「最適な分量ではありません」や「分量が不十分のおそれがあります」といった視覚メッセージまたは聴覚メッセージを出力することができる。
【0059】
・作動後、スマートフォン2000の画面2001には、また、投与装置1000に画面124が含まれる場合には画面124にも、投与の瞬間における装置の位置に応じて、投与された分量の状態を表すメッセージを表示することができる。例えば、「正確な分量です」や「最適な分量ではありません」や「分量が不十分のおそれがあります」といったメッセージが表示される。
図11~
図13は、投与装置1000の画面124に表示され得るメッセージを示す。
【0060】
したがって、本発明は多くの利点を提供する。
【0061】
・流体の投与時に正確な角度位置決めを促進することによって、鼻孔内に投与される流体を最適に付着させること。
【0062】
・特に最適な位置を作動前に確認する安全機能を備えた、向き決定のための支援を「リアルタイムで」提供すること。
【0063】
・同種の多数の経鼻投与装置に適用可能な解決策を提供すること。よって、記載の実施形態に限定されないこと。
【0064】
・投与装置のデザインや嵩に対する影響が小さいので、持ち運びが容易であること。
【0065】
・投与装置の動作や性能に対する影響がないので、投与流体の性能が変更されないこと。
【0066】
・第三者に対する流体の容易な投与が可能であること。
【0067】
・患者が任意の姿勢、具体的には、立っている姿勢、座っている姿勢、または横になっている姿勢で、使用が可能であること。
【0068】
・医師、医療専門家、薬剤師、規制当局、保険会社に対して、データの転送が可能であること。
【0069】
・ユーザに、自身の鼻腔形状に応じた投与装置の適切な位置を習得させること。ユーザはより容易に最適な角度を見つけられるようになり、投与装置の適切な位置を無意識に記憶できるようになる。
【0070】
本発明について、実施形態に基づいて説明したが、当然ながら当業者は、添付の特許請求の範囲により定義した本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、任意の変形を適用可能である。