(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-20
(45)【発行日】2023-06-28
(54)【発明の名称】吸入器
(51)【国際特許分類】
A61M 15/00 20060101AFI20230621BHJP
【FI】
A61M15/00 Z
(21)【出願番号】P 2020545668
(86)(22)【出願日】2019-03-06
(86)【国際出願番号】 EP2019055521
(87)【国際公開番号】W WO2019170718
(87)【国際公開日】2019-09-12
【審査請求日】2022-02-28
(32)【優先日】2018-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391008951
【氏名又は名称】アストラゼネカ・アクチエボラーグ
【氏名又は名称原語表記】ASTRAZENECA AKTIEBOLAG
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】ビル・トレーンマン
(72)【発明者】
【氏名】シャーロット・リーダー
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・ハルケット
(72)【発明者】
【氏名】サイモン・イングラム
(72)【発明者】
【氏名】クリス・ハールストーン
(72)【発明者】
【氏名】バレリオ・レリオ・セレダ
(72)【発明者】
【氏名】ジョー・デイントリー
(72)【発明者】
【氏名】ウォレン・アイザックス
(72)【発明者】
【氏名】マルティン・カールソン
(72)【発明者】
【氏名】ジェイク・クリストフェション
(72)【発明者】
【氏名】ルーネ・ドゥッカ
(72)【発明者】
【氏名】シモン・ベリー
【審査官】関本 達基
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-526330(JP,A)
【文献】特表2002-526211(JP,A)
【文献】米国特許第06672304(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤を吸入によって送達するための吸入器であって、
分与弁を有するキャニスタを受け入れるための吸入器本体と、
付勢手段と可動構成要素とを含む駆動機構であって、前記駆動機構は、前記キャニスタを、前記吸入器本体内に受け入れられているときに、前記弁が閉鎖された静止位置から、少なくとも、前記弁が開放された作動位置に駆動するためのものであり、前記駆動機構は、前記可動構成要素を第1位置から第2位置に移動させるために前記付勢手段が荷重印加構成から解放されたときに前記キャニスタを駆動する、駆動機構と、
前記可動構成要素を前記第2位置から前記第1位置に移動させ、前記付勢手段を前記荷重印加構成にリロードすることによって前記駆動機構をリセットするためのリセット機構と、
前記キャニスタを前記作動位置から前記静止位置に戻すためのものであり、ダンピングシステムを含む復帰機構と、
を含み、
前記ダンピングシステムは前記キャニスタが、前記付勢手段の前記荷重印加構成からの前記解放から測定した所定時間内に前記作動位置から前記静止位置に自動的に戻ることを可能にするように構成され、
前記ダンピングシステムはロータリーダンパーおよびロッドを更に含み、前記ロッドは、前記ロッドがシャフトとともに回転するように前記ロータリーダンパーの前記シャフトと結合されており、前記ロッドの回転は、前記シャフトの少なくとも第1の回転方向の回転によって制御され、
前記ロッドは前記シャフトに対して軸方向に移動可能である、
吸入器。
【請求項2】
前記可動構成要素はカムフォロアを含み、前記ロッドは前記カムフォロアを受け入れるためのカムトラックを含み、前記カムトラック及び前記カムフォロアは、前記カムフォロアが前記カムトラックの縁部に当接し、前記可動構成要素が前記第1位置から前記第2位置に移動するときに前記ロッドに軸方向移動力を加えるように構成されている、請求項1に記載の吸入器。
【請求項3】
前記カムトラック及び前記カムフォロアは、前記カムフォロアによって前記カムトラックの前記縁部に加えられる前記軸方向移動力が前記ロッドを前記シャフトから離れる方向に軸方向に移動させ、それにより前記ロッドは前記キャニスタに駆動力を加え、前記キャニスタを前記静止位置から少なくとも前記作動位置に駆動するように構成されている、請求項2に記載の吸入器。
【請求項4】
前記カムトラックは少なくとも第1セクション及び第2セクションを含み、前記第1セクションは前記ロッドの軸線と整列し、前記第2セクションは、前記ロッドの外部表面の一部分の周りで前記トラックの前記第1セクションから離れる方向に湾曲している、請求項3に記載の吸入器。
【請求項5】
前記トラックの前記第1セクションは、前記カムフォロアに対する前記ロッドの軸方向移動を可能にするように構成されており、前記トラックの前記第2セクションは、前記カムフォロアに対する前記ロッドの軸方向移動及び回転移動を可能にするように構成されている、請求項4に記載の吸入器。
【請求項6】
前記ロッドの前記回転移動は回転ダンパーによって減衰され、前記ロッドの前記軸方向移動は前記回転ダンパーによって減衰されない、請求項5に記載の吸入器。
【請求項7】
前記トラックの前記第2セクションは前記ロッドの前記外部表面の前記一部分の周りで螺旋状である、請求項4、5、又は6に記載の吸入器。
【請求項8】
前記ロッドは、前記ロッドの外部表面上で対称位置に対向する一対のカムトラックを含み、任意選択的に、前記カムトラックの前記第2セクションは螺旋状であり、前記螺旋は、両方とも右巻き又は両方とも左巻きのいずれかである、請求項4~7のいずれか一項に記載の吸入器。
【請求項9】
前記カムトラックは、前記キャニスタが前記作動位置から前記静止位置に最初は第1速度で自動的に戻ることを前記ダンピングシステムが可能にするように前記カムトラックの第1セクションが構成されるように構成されており、前記キャニスタが前記所定時間内の後の時間に前記作動位置から前記静止位置に第2速度で自動的に戻ることを前記ダンピングシステムが可能にするように更に構成されている、請求項2~8のいずれか一項に記載の吸入器。
【請求項10】
前記キャニスタが前記吸入器本体内に受け入れられているとき、前記可動構成要素及び前記ダンピングシステムの少なくとも一部分のうちの少なくとも1つを、前記可動構成要素及び/又は前記ダンピングシステムの前記一部分が前記キャニスタに接触しない離隔した位置で支持するように構成された荷重解放機構を更に含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の吸入器。
【請求項11】
前記荷重解放機構は、前記キャニスタが前記吸入器本体内に受け入れられているとき、前記可動構成要素及び/又は前記ダンピングシステムの前記一部分を解放し、それにより前記可動構成要素及び/又は前記ダンピングシステムの前記一部分を前記付勢手段の荷重下で前記キャニスタに接触させるように構成されている、請求項10に記載の吸入器。
【請求項12】
前記ロッドが前記キャニスタに、前記キャニスタを前記静止位置から少なくとも前記作動位置に駆動するための前記駆動力を加えることが可能となるように、前記荷重解放機構は、前記キャニスタが前記吸入器本体内に受け入れられているとき、前記可動構成要素を解放し、それにより前記ダンピングシステムの前記ロッドを前記付勢手段の荷重下で前記キャニスタに接触させるように構成されている、請求項3~7のいずれか一項に従属する場合の請求項
11に記載の吸入器。
【請求項13】
前記荷重解放機構は、前記荷重解放機構が前記可動構成要素及び/又は前記ダンピングシステムの前記一部分を支持しているとき、前記カムフォロアが前記カムトラックの前記縁部に当接しないように構成されている、請求項12に記載の吸入器。
【請求項14】
前記付勢手段はばねを含み、前記ばねは、圧縮されたときに、45~85Nの範囲内のばね力を任意選択的に有する、請求項1~13のいずれか一項に記載の吸入器。
【請求項15】
前記ばね力が、50~80Nの範囲内である、請求項14に記載の吸入器。
【請求項16】
前記ばね力が、55~75Nの範囲内である、請求項14に記載の吸入器。
【請求項17】
前記ばね力が、55~65Nの範囲内である、請求項14に記載の吸入器。
【請求項18】
前記付勢手段を前記荷重印加構成に保持するように、及び前記吸入器内の空気流に応答して前記付勢手段を解放し、前記可動構成要素を前記第1位置から前記第2位置に移動させるように構成された呼吸起動式機構を更に含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の吸入器。
【請求項19】
前記呼吸起動式機構は、前記吸入器内の空気流に応答して旋回するように構成された羽根と、前記羽根が旋回すると前記付勢手段を解放するように構成されたラッチとを含む、請求項18に記載の吸入器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤を吸入によって送達するための吸入器及びその動作方法に関し、特に、薬剤用量を分与するための吸入器の機構、及び次の用量を分与するための機構のリセットに関する。本発明はまた、吸入器から薬剤を分与する方法に関し、特に、吸入器から薬剤用量を分与し、次の用量を分与するために吸入器をリセットする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば治療計画又はその他の一部として特に薬剤の複数用量を提供することが望ましい場合に、患者又は薬剤の他の対象服用者に薬剤用量を提供するための多くの手法が存在する。肺又は他の状態を処置するための薬剤など多くの薬剤は、適切な吸入器を用いた吸入によって服用者に送達/分与される。一般に使用されている、有効な種類の複数回投与吸入器の1つは、吸入器内の薬剤を収容するキャニスタが例えば押し込みによって作動され、マウスピースを介して使用者に定量の薬剤を送達/分与する加圧式定量噴霧吸入器(pMDI:pressurised metered dose inhaler)である。吸入器は、薬剤用量を自動的に送達/分与するように構成されてもよい。例えば、吸入器は、起動されるとキャニスタを作動させる作動機構を含んでもよい。作動機構は、呼吸作動式、すなわち、マウスピースを介した使用者の吸入によって起動されてもよい。これにより、使用者が吸入している間に薬剤用量が分与されることを確実にする。これは、薬剤用量の分与が用量の吸入と協調し、患者の吸気(又は吸息)の同期が、口及び咽頭内の沈着による損失を最小限にした気道内の標的部位へのエアロゾル剤の最適な送達を確実にするので特に有利である。複数回投与吸入器では、次の用量を必要な時に分与できるようにするために、起動機構及び分与機構は毎回作動させた後にリセットしなければならない。
【0003】
例示的な呼吸作動式pMDIは、特許文献1に記載されている。この吸入器の作動機構は、使用者による吸入に応答して定量の薬剤を送達するために、薬剤を収容するキャニスタを押し込むように動作可能である。作動機構は、キャニスタを押し込むためのばねと、用量が分与されるまでばねがキャニスタを押し込むことを阻止するためのトリガー機構とを含む。使用者がマウスピースを介して吸入すると、トリガー機構はばねを解放し、ばねは、次いで、キャニスタを押し込み、キャニスタの弁を通してマウスピース内に薬剤用量を送達する。リセット機構は、閉鎖位置へのカバーの移動がばねをリセットするように、マウスピースのカバーすなわちキャップと相互作用する。
【0004】
本出願に開示される吸入器は複数の連続する用量を使用者に分与するのに効果的であり且つ信頼性が高いが、いくつかの状況では、吸入器から分与された連続する用量が(作動重量として知られる)一貫した重量の有効成分を有しない場合があることが確認されている。いかなる理論にも束縛されるものではないが、この作動重量の非一貫性(したがって送達される用量のばらつき)は、吸入器の使用者が用量を分与した直後に分与機構をリセットしない(すなわち、マウスピースカバーを即座に閉じない)ことによる使用者の過失から生じ得ると考えられる。追加的に又は代替的に、キャニスタは弁がキャニスタの下の位置にある状態でリセットされるべきであるが、使用者はこの手順に必ずしも従うわけではない。これらの課題のいずれも、キャニスタ弁の測定チャンバの不完全なファイルにつながる場合があり、したがって、キャニスタ弁から分与される次の用量が期待薬剤重量を含まない場合がある。
【0005】
したがって、毎回の作動時に送達される用量が吸入器によって分与される他の用量と比較して一貫し且つ許容可能な公差内である、薬剤を吸入によって送達するための吸入器及び吸入器から薬剤を分与する方法が依然として必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2013/038170A号パンフレット
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明においては、先行技術の欠点の少なくとも1つ以上を克服する、薬剤を吸入によって送達するための吸入器及び吸入器から薬剤を分与する方法が提供される。第1の広範な態様により、薬剤を吸入によって送達するための吸入器であって、分与弁を有するキャニスタを受け入れるための吸入器本体と、付勢手段と可動構成要素とを含む駆動機構であって、駆動機構は、キャニスタを、吸入器本体内に受け入れられているときに、弁が閉鎖された静止位置から、少なくとも、弁が開放された作動位置に駆動するためのものであり、駆動機構は、可動構成要素を第1位置から第2位置に移動させるために付勢手段が荷重印加構成から解放されたときにキャニスタを駆動する、駆動機構と、可動構成要素を第2位置から第1位置に移動させ、付勢手段を荷重印加構成にリロードすることによって駆動機構をリセットするためのリセット機構と、キャニスタを作動位置から静止位置に戻すための復帰機構と、を含み、復帰機構はダンピングシステムを含み、ダンピングシステムはキャニスタが、付勢手段の荷重印加構成からの解放から測定した所定時間内に作動位置から静止位置に自動的に戻ることを可能にするように構成されている、吸入器が提供される。
【0008】
請求される吸入器は、先行技術の欠点の少なくとも1つを克服する。例えば、吸入器の使用者が吸入器をその発射前の構成に戻すためにリセット機構を起動するかどうかにかかわらず、吸入器は、キャニスタ弁が完全に所定時間内にその補充点に戻され、次の用量のために補充されるように、キャニスタをこの時間内に作動位置から静止位置に自動的に戻す。ダンピング機構はキャニスタの復帰があまりに迅速に起こらないようにするように構成されているため、これは、弁が現在の用量の全部を分与するのに十分な時間にわたって行われる。すなわち、弁は用量を分与するために十分な時間にわたり開いたままにされ、弁は、弁が完全に補充できるようにするために適切な速度で戻されるが、弁は、これらの動作の確実な実施に必要とするよりも長く開放構成に維持されない。更に、弁はその閉鎖位置に十分に素早くリセットされ、使用者は吸入器をまだ直立姿勢に維持しているため、弁はキャニスタの下に位置する。
【0009】
キャニスタのリセットは単一工程として全時間にわたり1つの速度で実施され得るが、任意選択的に、ダンピングシステムは、所定時間が第1の時間区分及び第2の時間区分を含むように構成され、作動位置から静止位置へのキャニスタの移動は第2の時間区分中よりも第1の時間区分中により遅くなる。この構成は、弁がその発射点未満で開いたままにされる時間(以下、発射点未満の時間(TBF:Time Below Fire)と呼ぶ)を最適化するので全用量を効果的に分与するが、キャニスタ弁がその補充点(以下、補充時間(TTR:Time To Refill)と呼ぶ)に到達する前の時間も最小限にする。上述のように、これは自動であり且つダンピング機構によって制御されるため、これは全て使用者がいかなる行動を取る必要もなく行われる。いくつかの実施形態では、第1の時間区分中、キャニスタは作動位置に維持され(すなわち、移動はない)、第2の時間区分中、キャニスタは作動位置から静止位置に戻る。
【0010】
所定時間は他の時間区分を含む可能性があるが、任意選択的に、ダンピングシステムは、第2の時間区分が第1の時間区分の直後であるように構成されているため、キャニスタの移動は遅い復帰又は実質的に移動なしから、速い又はより速い復帰に、それらの間にいかなる休止又は遅延もなく即座に移行する。
【0011】
本発明の実施形態による吸入器で使用するためのキャニスタはほぼ一貫したプロファイル及び構成を有するが、公差に起因するキャニスタ間の差が予想され、また、同一のキャニスタが異なる条件下では異なるように動作する場合がある。寿命開始(BOL)に比べるとキャニスタの寿命終了(EOL)にかけて、時間の経過とともに低下し得る復帰力のばらつきなどの他の課題に遭遇する可能性がある。したがって、ダンピングシステムは、任意選択的に、本発明の実施形態の吸入器における公差及び性能のばらつきに対処するように構成されている。任意選択的に、第1の時間区分は、約0.05~2.00秒の範囲内、任意選択的に約0.10~1.75秒の範囲内、任意選択的に約0.20~1.50秒の範囲内、任意選択的に約0.30~1.25秒の範囲内、任意選択的に約0.40~1.20秒の範囲内である。性能のばらつきへの対処において、並びにまた、キャニスタ及びキャニスタのバッチ等の間の公差及び差への対処において、これら範囲のうちの1つ以上の範囲内の時間区分が適切であることが見出された。任意選択的に、第1の時間区分は、少なくとも約0.20秒、任意選択的に少なくとも約0.30秒、任意選択的に少なくとも約0.40秒である。これら最小時間は、毎回の作動で弁内の全用量を確実に分与するのに最適であることが見出された。
【0012】
任意選択的に、第2の時間区分は、約0.10~2.00秒の範囲内、任意選択的に約0.30~1.80秒の範囲内、任意選択的に約0.40~1.70秒の範囲内、任意選択的に約0.60~1.60秒の範囲内、任意選択的に約0.80~1.50秒の範囲内、任意選択的に約1.00~1.40秒の範囲内である。この場合も、性能のばらつきへの対処において、並びにまた、キャニスタ及びキャニスタのバッチ等の間の公差及び差への対処において、これら範囲のうちの1つ以上の範囲内の時間区分が適切であることが見出された。任意選択的に、第2の時間区分は、約2.0秒未満、任意選択的に約1.75秒未満、任意選択的に約1.50秒未満、任意選択的に約1.25秒未満、任意選択的に約1.20秒である。これら最大時間は、弁が素早く且つ完全に補充するのを確実にするのに最適であることが見出された。上述のように、弁は、キャニスタがほぼ直立姿勢に維持されている間に、すなわち吸入器が使用者の口からまだ取り出されていない使用者の使用時間枠内に完全に補充されると特に有利であると考えられる。任意選択的に、第1の時間区分と第2の時間区分との合計は、合計時間約2.5秒未満、任意選択的に約2.00秒未満、任意選択的に約1.75秒未満、任意選択的に約1.50秒未満である。これは、弁が分与及び補充するための十分な時間を提供するが、弁補充の質に不利に影響するほど、又は使用者が吸入器を、それが使用されている直立姿勢から大きく位置変更できるほど長時間ではない。
【0013】
上述のように、吸入器は、減衰した移動を所定時間中に提供するためのダンピングシステムを含む。任意選択的に、ダンピングシステムはロータリーダンパーを含む。このようなダンパーは入手可能であり、複数回の使用にわたって確実に動作し、本発明の実施形態での使用に適している。このようなデバイスの例は、ACE Controls International/Inc.又はACE Stossdaempfer GmbH等により販売されているようなロータリーダンパーである。
【0014】
任意選択的に、ダンピングシステムはロッドを含み、ロッドはロータリーダンパーのシャフトと結合されており、ロッドはシャフトとともに回転し、ロッドの回転は、シャフトの少なくとも第1の回転方向の回転によって制御される。したがって、ロッドの移動はダンパーによって制御される。任意選択的に、ロッドはシャフトに対して軸方向に移動可能である。任意選択的に、可動構成要素はカムフォロアを含み、ロッドはカムフォロアを受け入れるためのカムトラックを含み、カムトラック及びカムフォロアは、カムフォロアがカムトラックの縁部に当接し、可動構成要素が第1位置から第2位置に移動するときにロッドに軸方向移動力を加えるように構成されている。したがって、ロッドが少なくとも1つ及び任意選択的に2つの方向に回転的に及び/又は軸方向に移動することができる機械的構成が提供される。任意選択的に、カムトラック及びカムフォロアは、カムフォロアによってカムトラックの縁部に加えられる軸方向移動力がロッドをシャフトから離れる方向に軸方向に移動させ、それによりロッドはキャニスタに駆動力を加え、キャニスタを静止位置から少なくとも作動位置に駆動するように構成されている。任意選択的に、カムトラックは少なくとも第1セクション及び第2セクションを含み、第1セクションはロッドの軸線と実質的に整列し、第2セクションは、ロッドの外部表面の一部分の周りでトラックの第1セクションから実質的に離れる方向に湾曲している。したがって、ロッドの2つの速度の移動が提供される。トラックの第1セクションは、カムフォロアに対するロッドの軸方向移動を可能にするように構成されており、トラックの第2セクションは、カムフォロアに対するロッドの軸方向移動及び回転移動を可能にするように構成されている。ロッドの回転移動は回転ダンパーによって減衰され、ロッドの軸方向移動は回転ダンパーによって減衰されないため、例えば、ロッドの回転移動と軸方向移動とを組み合わせると制御され且つ遅くなり、カムフォロアがトラックの軸方向部分に到達すると、軸方向におけるロッドのより迅速な移動が可能になる。任意選択的に、トラックの第2セクションはロッドの外部表面の一部分の周りで実質的に螺旋状である。これにより、カムフォロアの滑らか且つ制御された移動を提供する。任意選択的に、制御のバランスを取り且つ制御を向上させるために、ロッドは、ロッドの外部表面上で対称位置に対向する一対のカムトラックを含み、任意選択的に、カムトラックの第2セクションは螺旋状であり、螺旋は、両方とも右巻き又は両方とも左巻きのいずれかである。
【0015】
上述のように、任意選択的に、カムトラックは、キャニスタが作動位置から静止位置に最初は第1速度で自動的に戻ることをダンピングシステムが可能にするようにカムトラックの第1セクションが構成されるように構成されており、キャニスタが所定時間内の後の時間に作動位置から静止位置に第2速度で自動的に戻ることをダンピングシステムが可能にするように更に構成されている。これにより、適切な時間内にキャニスタ弁の効率的な用量分与及び補充を可能にする。代替的な実施形態では、キャニスタがその作動位置に到達したときにヨークはキャップの一部分に当接するその停止位置に到達していないため、カムトラックは、ダンピングシステムによりヨークが移動し続けることを可能にし、ヨークの移動中、キャニスタがその作動位置に維持されるように構成されており、カムトラックは、ダンピングシステムによりキャニスタが、ヨークの移動が停止した後の、所定時間内の後の時間に、作動位置から静止位置に自動的に戻ることを可能にするように更に構成されている。これにより、適切な時間内にキャニスタ弁の効率的な用量分与及び補充を可能にする。
【0016】
吸入器の起動前、吸入器はかなりの時間にわたり閉鎖構成に維持されている場合があり、例えば、1日に1回又は2回しか使用されない場合がある。したがって、いくつかの実施形態では、吸入器の特定の構成要素に対する応力を低減又は回避するために付勢手段の荷重を解放することが有用である。任意選択的に、吸入器は、キャニスタが吸入器本体内に受け入れられているとき、可動構成要素及びダンピングシステムの少なくとも一部分のうちの少なくとも1つを、可動構成要素及び/又はダンピングシステムの一部分がキャニスタに接触しない離隔した位置で支持するように構成された荷重解放機構を更に含む。したがって、荷重がかけられた付勢手段により吸入器の構成要素に与えられていた可能性のある応力が低減される又はそうでなければ緩和される。任意選択的に、荷重解放機構は、キャニスタが吸入器本体内に受け入れられているとき、可動構成要素及び/又はダンピングシステムの一部分を解放し、それにより可動構成要素及び/又はダンピングシステムの一部分を付勢手段の荷重下でキャニスタに接触させるように構成されている。これは、直接的、又は吸入器の別の構成要素若しくは機構を介して間接的であってもよい。
【0017】
任意選択的に、ロッドがキャニスタに、キャニスタを静止位置から少なくとも作動位置に駆動するための駆動力を加えることが可能となるように、荷重解放機構は、キャニスタが吸入器本体内に受け入れられているとき、可動構成要素を解放し、それによりダンピングシステムのロッドを付勢手段の荷重下でキャニスタに接触させるように構成されている。したがって、ロッドは、付勢力がキャニスタに加えられようとしているときにだけキャニスタに接触し、吸入器が使用される予定にないときのロッドの摩耗の可能性を低下させる。任意選択的に、荷重解放機構は、荷重解放機構が可動構成要素及び/又はダンピングシステムの一部分を支持しているとき、カムフォロアがカムトラックの縁部に当接しないように構成されている。この場合も、これにより、例えば、カムフォロアとトラックの縁部との間に発生していた可能性のあるあらゆる応力又は摩耗を軽減する。
【0018】
本発明の代替的な実施形態では、ダンピングシステムはリニアダンパーを含む。上記の実施形態及び任意の特徴は全て、適宜、この代替的な実施形態に適用可能であり、ロータリーダンパーを含む実施形態のみに限定されるものではない。代替的な実施形態では、リニアダンパーは、非圧縮性流体を収容する略円筒状のリザーバと、リザーバを通して同軸的に配置されており、吸入器本体内に受け入れられているときのキャニスタに対し、基端部及び先端部の両方がリザーバから突出した細長いピストンであって、ピストンは、同軸に沿ってリザーバ内を直線的に往復摺動するように構成されている、細長いピストンを含む。ピストンはロータリーダンパー実施形態のロッドと事実上同じ機能を実施し、本明細書の全体を通して記載されるロッドの特徴及び機能の説明は、適宜、ピストンにも適用可能である。
【0019】
上述のように、ピストンはリザーバ内を往復摺動するように構成されており、したがって、突出端部はリザーバに出入りする。特に、ピストンの端部がリザーバに出入りする際にピストンを密閉するために、任意選択的に、リニアダンパーは、リザーバからの流体の放出が実質的に最小限になる又は阻止されるように、ピストンの基端部をリザーバに対して密閉するための下部シールと、ピストンの先端部をリザーバに対して密閉するための上部シールとを更に含む。
【0020】
ロータリーダンパー実施形態に関して上述したように、任意選択的に、ロッドの、及びこの実施形態ではピストンの直線(軸方向)移動は2つの速度で起こり得る。1つの速度は別の速度よりも速い。この実施形態では、ダンパーは任意選択的にこのようにして構成される。リニアダンパーのリザーバは、第1直径を有する基端側チャンバと、第2直径を有する先端側チャンバとを含み、第1直径は第2直径よりも小さく、任意選択的に、基端側チャンバと先端側チャンバとの間に中間セクションを更に含み、中間セクションは、リザーバ基端側チャンバに隣接する基端部からリザーバ先端側チャンバに隣接する先端部まで増加する直径を有する。リニアダンパーは、任意選択的に、リザーバ内にピストンシールを更に含み、ピストンシールはピストンを包囲し且つピストンに取り付けられており、ピストンシールはリニアダンパーのリザーバの基端側チャンバの内側に対して密閉するような直径を有する。基端側チャンバはより小さな直径を有するため、ピストンシールは、任意選択的に、より大きな直径の先端側チャンバに対して接触及び/若しくは密閉しない、又は先端側チャンバの壁に接触し得るが壁に対して完全には密閉せず、したがって、以下で更に記載されるように、シールの外側周囲に流体が少なくともある程度は流れることを可能にする。
【0021】
ピストンシールが基端側チャンバ内に位置し且つチャンバの内壁に対して密閉しているとき、基端側チャンバと先端側チャンバとの間の流体の流れはピストンシールによって制限又は阻止される。しかしながら、ピストンが少なくとも低速で移動できるためには、チャンバ間にいくらかの流体の流れが必要である。したがって、ピストンは、任意選択的に流体フローチャネルを含み、流体フローチャネルは、ピストンシールの基端部を越える入口と、ピストンシールの先端部を越える出口とを有し、基端側チャンバを先端側チャンバから流体的に隔離するようにピストンシールが配置されているときでも流体が基端側チャンバと先端側チャンバとの間を流れることができるように構成されている。チャンバ間の流体の流れはチャネルの構成(例えば、その直径及び入口/出口の大きさ)によって調整されるため、ピストンの移動、特にピストンの移動速度は、ピストンシールが(先端側方向のピストンの移動によって)基端側チャンバから先端側チャンバ内に少なくとも移動するまで制御される。
【0022】
ロータリーダンパー実施形態と同様に、リニアダンパーは、付勢手段が荷重印加構成から解放されたときの第1位置から第2位置への可動構成要素の移動がピストンを基端側に駆動し、それによりピストンがキャニスタに、キャニスタを静止位置から少なくとも作動位置に駆動するための駆動力を加えるように、可動部材に結合されている。任意選択的に、ピストンのチャネルは、チャネルを通って流れる流体が制限され、それにより、リザーバに対するピストンの先端側方向の軸方向移動を、キャニスタが少なくとも作動位置に到達するまで最小限にする又は阻止するように構成されている。したがって、キャニスタを静止位置から少なくとも作動位置に駆動中(これは、例えば、10ms、任意選択的に8ms、任意選択的に6ms、任意選択的に5ms、任意選択的に4ms、任意選択的に3msなどの非常に短時間で行われる可能性がある)にピストンが可動部材に対して固定されるように、チャネルを通る流体の流れは付勢手段が解放されるときの顕著な荷重下で効果的に阻止される又は少なくとも最小限になる。しかしながら、この初期の迅速な移動後、流体はチャネル内を流れることが可能である。任意選択的に、ピストンのチャネルは、流体が制限された速度でチャネルを通って基端側チャンバから先端側チャンバまで流れ、それによりピストンが先端側方向に軸方向に制御された速度で移動することを可能にするように構成されている。任意選択的に、ピストンは、キャニスタの戻りばねの駆動力がピストンを先端側方向に軸方向に駆動するのに十分であるように構成され、任意選択的に、キャニスタの戻りばねは更に、吸入器の少なくとも1つの追加的な戻りばねによって支援される。本発明の実施形態によるこのような吸入器で使用するためのキャニスタは、(用量を分与するためにキャニスタ内に押し込まれた)弁を、弁(典型的には、所望の用量レベルに合わせた大きさに作られたチャンバを有するメータリングバルブ)がキャニスタの主要リザーバから補充され、次の用量を分与するための準備が整うその静止位置に戻すように構成されたばねを含む。このばねの力は、典型的には、キャニスタをその静止状態に戻すのに十分過ぎるほどであり、したがって、キャニスタを先端側方向に押すことができ、ピストンを先端側方向に軸方向に押すことができる。チャネルを通る流体の流れが、ピストンの移動速度、ゆえに、キャニスタ弁がその静止位置に移動する速度を制御する。任意選択的に、キャニスタの弁ばねを支援するために吸入器内に1つ以上の戻りばねが提供され、1つ以上の戻りばねは、吸入器が発射されるときに圧縮され、その後荷重解放され、キャニスタを先端側方向に押す。
【0023】
前述のように、リニアダンパーは、任意選択的に、ピストンの先端側方向の軸方向移動が、第1の時間区分の間はピストンチャネルによって決定された第1速度で、これに続く、ピストンシールが先端側チャンバ内に送られ、それにより流体がピストンシールの外側周囲を流れるときの第2の時間区分中は第2速度であるように構成されている。任意選択的に、ピストンシールは、より薄いセクションによって分離された同心リングを含むリップシールを含み、リップシールは、流体圧力下で半径方向内側に又は外側に曲がるように構成されており、ピストンシールの外側周囲の流体の流れを可能にする又は最小限にする。したがって、ピストンシールが基端側チャンバから先端側チャンバまで移動する際、外側リングは流体圧力下で内側リングに向かって半径方向に曲がることができ、シールの外側周囲でチャネルを更に開放し、これとは逆に、ピストンシールが先端側チャンバから基端側チャンバに移動する際、外側リングは(特にリング間の間隙内の)流体圧力下で内側リングから離れる方に半径方向に曲がることができ、ピストンシールと先端側チャンバ壁との間のシールを更に向上させ、シールの外側周囲の流体の流れを最小限にする又は阻止する。
【0024】
本明細書中に記載されるリニアダンパーの特定の実施形態の更なる利点は、動作条件、特に動作温度に対するリニアダンパーの感度がないことである。例えば、シールは低(冷)温ではより硬くなるため迂回が早期に起こり、これにより冷温によるダンピング流体の粘度増加をある程度補償する。これとは逆に、シールは高(higher)(高(hot))温ではより柔軟になるため迂回はより遅く起こり、これによりダンピング流体の粘度低下の影響を補償し、最小限にする。
【0025】
ロータリーダンパー実施形態に関して上述したように、この実施形態の吸入器は、任意選択的に、キャニスタが吸入器本体内に受け入れられているとき、可動構成要素及びダンピングシステムの少なくとも一部分のうちの少なくとも1つを、可動構成要素及び/又はダンピングシステムの一部分がキャニスタに接触しない離隔した位置で支持するように構成された荷重解放機構を更に含む。したがって、荷重がかけられた付勢手段により吸入器の構成要素に与えられていた可能性のある応力が低減される又はそうでなければ緩和される。任意選択的に、荷重解放機構は、キャニスタが吸入器本体内に受け入れられているとき、可動構成要素及び/又はダンピングシステムの一部分を解放し、それにより可動構成要素及び/又はダンピングシステムの一部分を付勢手段の荷重下でキャニスタに接触させるように構成されている。これは、直接的、又は吸入器の別の構成要素若しくは機構を介して間接的であってもよい。
【0026】
任意選択的に、ピストンがキャニスタに、キャニスタを静止位置から少なくとも作動位置に駆動するための駆動力を加えることが可能となるように、荷重解放機構は、キャニスタが吸入器本体内に受け入れられているとき、可動構成要素を解放し、それによりダンピングシステムのピストンの基端部を付勢手段の荷重下でキャニスタ接触させるように構成されている。したがって、ピストンは、付勢力がキャニスタに加えられようとしているときにだけキャニスタに接触し、吸入器が使用される予定にないときのピストンの摩耗の可能性を低下させる。
【0027】
上述のように、ダンパーのリザーバは非圧縮性流体を収容する。任意選択的に、非圧縮性流体は、シリコーン油、任意選択的に医療用シリコーン油、及び/又は任意選択的に、約5000cSt、任意選択的に約4500cSt、任意選択的に約4000cSt、任意選択的に約3500cSt、任意選択的に約3000cSt、任意選択的に約2500cSt、任意選択的に約2000cSt、任意選択的に約1500cSt、任意選択的に約1000cSt、任意選択的に約750cSt、任意選択的に約500cSt、任意選択的に約250cSt、任意選択的に約200cStの粘度を有するシリコーン油を含む。流体の粘度及び他の特性はリニアダンパーの特定の構成に合わせて最適化される。
【0028】
本発明の更なる代替的な実施形態では、ダンピングシステムは代替的なリニアダンパーを含む。上記の実施形態及び任意の特徴は全て、適宜、この代替的な実施形態に適用可能であり、ロータリーダンパー又は別のリニアダンパーを含む実施形態のみに限定されるものではない。代替的な実施形態では、リニアダンパーは、非圧縮性流体を収容する略円筒状のリザーバと、リザーバと同軸的に配置されており、吸入器本体内に受け入れられているときのキャニスタに対し、基端部がリザーバから突出した細長いピストンであって、ピストンは、同軸に沿って直線的に往復摺動してリザーバを出入りするように構成されている細長いピストンを含む油圧式ダンパーである。任意選択的に、リニアダンパーは、リザーバと同軸的に配置されており、先端部がリザーバから突出した細長いピストンを更に含み、細長いピストンは細長いピストンの基端部に密閉セクションを含み、リザーバは、密閉セクションによって流体的に隔離された先端側チャンバ及び基端側チャンバを含む。任意選択的に、密閉セクションは密閉セクションを通るチャネルを含み、チャネルは、密閉セクションの移動が可能となり、したがって、ピストンの移動も可能となるように、先端側チャンバと基端側チャンバとの間を流体が流れることを可能にするように構成されている。
【0029】
容易に理解できるように、この実施形態のリニアダンパーは他の実施形態のリニアダンパーに多くの点で類似し(及びロータリーダンパー実施形態と類似する多くの特徴及び機能を有する)、したがって、他の実施形態に関して述べた全ての特徴及び機能は、適宜、この実施形態の一部としても考えられる。
【0030】
更に、全ての実施形態は、共通する少なくともいくつかの特徴、例えば付勢手段、を有する。任意選択的に、付勢手段はばねを含み、ばねは、圧縮されたときに、約45~85Nの範囲内、任意選択的に約50~80Nの範囲内、任意選択的に約55~75Nの範囲内、任意選択的に約55~65Nの範囲内のばね力を任意選択的に有する。
【0031】
任意選択的に、吸入器は、付勢手段を荷重印加構成に保持するように、及び吸入器内の空気流に応答して付勢手段を解放し、可動構成要素を第1位置から第2位置に移動させるように構成された呼吸起動式機構を更に含む。任意選択的に、呼吸起動式機構は、吸入器内の空気流に応答して旋回するように構成された羽根と、羽根が旋回すると付勢手段を解放するように構成されたラッチとを含む。この実施形態は、吸入器の使用者は吸入だけを必要とし、吸入器は用量の分与を自動的に起動して、その後キャニスタをリセットし、この全てにそれ以上の使用者による介入は必要なく、全ては短時間内であり、以下で更に記載するように、特に次の用量に備えて弁を補充する際の吸入器の効率的且つ信頼性の高い動作を確実とするため有利である。
【0032】
更に広範な態様により、吸入器から薬剤を分与する方法であって、吸入器の駆動機構の付勢手段を荷重印加構成から解放することと、吸入器の本体内に受け入れられたキャニスタを、キャニスタの弁が閉鎖された静止位置から弁が開放された少なくとも作動位置に駆動するために、解放された付勢手段によって駆動機構の可動構成要素を第1位置から第2位置に移動させることと、付勢手段の荷重印加構成からの解放から測定した所定時間内にキャニスタを作動位置から静止位置に自動的に戻すことであって、キャニスタの自動復帰は、ダンピングシステムを含む復帰機構によって調整される、ことと、可動構成要素を第2位置から第1位置に移動させ、付勢手段を荷重印加構成にリロードするリセット機構によって駆動機構をリセットすることと、を含む方法が提供される。任意選択的に、キャニスタを所定時間内に自動的に戻す工程は、作動位置から静止位置へのキャニスタの移動が第2の時間区分中よりも遅い第1の時間区分中にキャニスタを自動的に戻すことを含む。任意選択的に、第2の時間区分は第1の時間区分の直後である。任意選択的に、第1の時間区分は、約0.05~2.00秒の範囲内、任意選択的に約0.10~1.75秒の範囲内、任意選択的に約0.20~1.50秒の範囲内、任意選択的に約0.30~1.25秒の範囲内、任意選択的に約0.40~1.20秒の範囲内である。任意選択的に、第1の時間区分は、少なくとも約0.20秒、任意選択的に少なくとも約0.30秒、任意選択的に少なくとも約0.40秒である。任意選択的に、第2の時間区分は、約0.10~2.00秒の範囲内、任意選択的に約0.30~1.80秒の範囲内、任意選択的に約0.40~1.70秒の範囲内、任意選択的に約0.60~1.60秒の範囲内、任意選択的に約0.80~1.50秒の範囲内、任意選択的に約1.00~1.40秒の範囲内である。任意選択的に、第2の時間区分は、約2.0秒未満、任意選択的に約1.75秒未満、任意選択的に約1.50秒未満、任意選択的に約1.25秒未満、任意選択的に約1.20秒である。任意選択的に、第1の時間区分と第2の時間区分との合計は、合計時間約2.5秒未満、任意選択的に約2.00秒未満、任意選択的に約1.75秒未満、任意選択的に約1.50秒未満である。
【0033】
任意選択的に、ダンピングシステムはロータリーダンパーを含む。ロータリーダンパーは当該技術分野で周知であり、打ち勝たなければならないトルクを有するように構成されており、これにより、ダンパーの回転速度が制御される。任意選択的に、ダンピングシステムはロッドを更に含み、ロッドはロータリーダンパーのシャフトと結合されており、ロッドはシャフトとともに回転し、ロッドの回転は、シャフトの少なくとも第1の回転方向の回転によって制御される。任意選択的に、ロッドはシャフトに対して軸方向に移動する。任意選択的に、可動構成要素はカムフォロアを含み、ロッドはカムフォロアを受け入れるためのカムトラックを含み、カムフォロアはカムトラックの縁部に当接し、可動構成要素が第1位置から第2位置に移動するときにロッドに軸方向移動力を加える。任意選択的に、カムフォロアによってカムトラックの縁部に加えられる軸方向移動力がロッドをシャフトから離れる方向に軸方向に移動させ、それによりロッドはキャニスタに駆動力を加え、キャニスタを静止位置から少なくとも作動位置に駆動する。任意選択的に、カムトラックは少なくとも第1セクション及び第2セクションを含み、第1セクションはロッドの軸線と実質的に整列し、第2セクションは、ロッドの外部表面の一部分の周りでトラックの第1セクションから実質的に離れる方向に湾曲している。任意選択的に、トラックの第1セクションはカムフォロアに対するロッドの軸方向移動を可能にし、トラックの第2セクションはカムフォロアに対するロッドの軸方向移動及び回転移動を可能にする。
【0034】
任意選択的に、回転ダンパーはロッドの回転移動を減衰させるがロッドの軸方向移動は減衰させない。任意選択的に、トラックの第2セクションはロッドの外部表面の一部分の周りで実質的に螺旋状である。任意選択的に、ロッドは、ロッドの外部表面上で対称位置に対向する一対のカムトラックを含み、任意選択的に、カムトラックの第2セクションは螺旋状であり、螺旋は、両方とも右巻き又は両方とも左巻きのいずれかである。
【0035】
任意選択的に、キャニスタは、カムトラックの第1セクションに沿って最初は第1速度で作動位置から静止位置に自動的に戻り、後の時間にカムトラックの第2セクションに沿って所定時間内に第2速度で作動位置から静止位置に自動的に戻る。任意選択的に、第1速度は実質的にゼロ、すなわち、キャニスタは最初は移動しないが、後の時間にカムトラックの第2セクションに沿って所定時間内に作動位置から静止位置に戻る。
【0036】
任意選択的に、方法は、可動構成要素及びダンピングシステムの少なくとも一部分のうちの少なくとも1つを、荷重解放機構によって離隔した位置で支持することを更に含み、可動構成要素及び/又はダンピングシステムの一部分は、荷重解放機構によって支持されているときにはキャニスタに直接接触しない。
【0037】
任意選択的に、方法は、可動構成要素及び/又はダンピングシステムの一部分を解放し、それにより可動構成要素及び/又はダンピングシステムの一部分を付勢手段の荷重下でキャニスタに接触させることを更に含む。任意選択的に、荷重解放機構は可動構成要素を解放し、それによりダンピングシステムのロッドを付勢手段の荷重下でキャニスタに接触させ、ロッドがキャニスタに駆動力を加えることを可能にし、キャニスタを静止位置から少なくとも作動位置に駆動する。任意選択的に、荷重解放機構が可動構成要素及び/又はダンピングシステムの一部分を支持しているとき、カムフォロアはカムトラックの縁部に当接しない。
【0038】
任意選択的に、ダンピングシステムはリニアダンパーを含む。任意選択的に、リニアダンパーは、非圧縮性流体を収容する略円筒状のリザーバと、リザーバを通して同軸的に配置されており、吸入器本体内に受け入れられているときのキャニスタに対し、基端部及び先端部の両方がリザーバから突出した細長いピストンであって、ピストンは、同軸に沿ってリザーバ内を直線的に往復摺動する、細長いピストンとを含む。任意選択的に、リニアダンパーは、リザーバからの流体の放出が実質的に最小限になる又は阻止されるように、ピストンの基端部をリザーバに対して密閉する下部シールと、ピストンの先端部をリザーバに対して密閉する上部シールとを更に含む。任意選択的に、リニアダンパーのリザーバは、第1直径を有する基端側チャンバと、第2直径を有する先端側チャンバとを含み、第1直径は第2直径よりも小さく、任意選択的に、基端側チャンバと先端側チャンバとの間に中間セクションを更に含み、中間セクションは、リザーバ基端側チャンバに隣接する基端部からリザーバ先端側チャンバに隣接する先端部まで増加する直径を有する。任意選択的に、リニアダンパーはリザーバ内にピストンシールを更に含み、ピストンシールはピストンを包囲し且つピストンに取り付けられており、ピストンシールはリニアダンパーのリザーバの基端側チャンバの内側に対して密閉するような直径を有する。
【0039】
任意選択的に、ピストンは流体フローチャネルを含み、流体フローチャネルは、ピストンシールの基端部を越える入口と、ピストンシールの先端部を越える出口とを有し、基端側チャンバを先端側チャンバから流体的に隔離するようにピストンシールが配置されているときでも流体は基端側チャンバと先端側チャンバとの間を流れる。任意選択的に、可動構成要素を第1位置から第2位置に移動させる工程は、ピストンを基端側に駆動することと、キャニスタに、キャニスタを静止位置から少なくとも作動位置に駆動するための駆動力を加えることと、を更に含む。任意選択的に、方法は、チャネルを通って流れる流体を制限する工程であって、それにより、リザーバに対するピストンの先端側方向の軸方向移動を、キャニスタが少なくとも作動位置に到達するまで最小限にする又は阻止する、工程を更に含む。任意選択的に、ピストンのチャネルは、流体が制限された速度でチャネルを通って基端側チャンバから先端側チャンバまで流れ、それによりピストンが先端側方向に軸方向に移動することを可能にするように構成されている。
【0040】
任意選択的に、方法は、キャニスタの戻りばねの駆動力によってピストンを先端側方向に軸方向に駆動する工程を更に含み、任意選択的に、吸入器の少なくとも1つの戻りばねの駆動力によってピストンを先端側方向に軸方向に更に駆動する工程を更に含む。任意選択的に、ピストンは、第1の時間区分の間はピストンチャネルによって決定された第1速度で、これに続く、ピストンシールが先端側チャンバ内に送られ、それにより流体がピストンシールの外側周囲を流れるときの第2の時間区分中は第2速度で、先端側方向に軸方向に移動する。任意選択的に、ピストンシールは、より薄いセクションによって分離された同心リングを含むリップシールを含み、リップシールは、流体圧力下で半径方向内側に又は外側に曲がり、ピストンシールの外側周囲の流体の流れを可能にする又は最小限にする。
【0041】
任意選択的に、方法は、可動構成要素及びダンピングシステムの少なくとも一部分のうちの少なくとも1つを、荷重解放機構によって離隔した位置で支持することを更に含み、可動構成要素及び/又はダンピングシステムの一部分は、荷重解放機構によって支持されているときにはキャニスタに直接接触しない。任意選択的に、方法は、可動構成要素及び/又はダンピングシステムの一部分を解放し、それにより可動構成要素及び/又はダンピングシステムの一部分を付勢手段の荷重下でキャニスタに接触させることを更に含む。任意選択的に、荷重解放機構は可動構成要素を解放し、それによりピストンの基端部を付勢手段の荷重下でキャニスタに接触させ、ピストンがキャニスタに駆動力を加えることを可能にし、キャニスタを静止位置から少なくとも作動位置に駆動する。
【0042】
任意選択的に、リニアダンパーはリザーバ内にピストンシールを更に含み、ピストンシールはピストンを包囲し且つピストンに取り付けられており、リニアダンパーのリザーバの内側に対して密閉する。任意選択的に、ピストンは流体フローチャネルを含み、流体フローチャネルは、ピストンシールの基端部を越える入口と、ピストンシールの先端部を越える出口とを有し、流体は、チャネルを通ってリザーバ基端側チャンバとリザーバ先端側チャンバとの間を流れ、基端側チャンバ及び先端側チャンバはピストンシールによって流体的に隔離される。例えば、流体フローチャネルはピストンの中実部分に、シール領域からいくらかの距離を隔てて形成されてもよい。
【0043】
任意選択的に、可動構成要素を第1位置から第2位置に移動させる工程はピストンを基端側に駆動し、ピストンはキャニスタに駆動力を加え、キャニスタを静止位置から少なくとも作動位置に駆動する。
【0044】
任意選択的に、方法は、吸入器内の空気流に応答して付勢手段を解放する呼吸起動式機構によって付勢手段を荷重印加構成に保持する工程を更に含む。任意選択的に、方法は、吸入器内の空気流に応答して呼吸起動式機構の羽根を旋回させる工程を更に含み、旋回する羽根は呼吸起動式機構のラッチを解放して付勢手段を解放する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
ここで、本発明の好ましい態様及び実施形態を、単なる例として、添付の図面を参照しながら記載する。
【
図1A】本発明の実施形態による吸入器の斜視図である。
【
図1B】本発明の実施形態による吸入器の切欠図である。
【
図2】本発明の実施形態によるダンピングシステムの斜視図である。
【
図3】ダンピングシステムをその位置で示す、
図1の吸入器システムの一部分の斜視図である。
【
図4】ダンピングシステムの内部部品を示す、
図3の切欠図である。
【
図6A】
図1~
図5のダンピングシステムのヨークプレートの斜視図である。
【
図8A】
図1~
図7の実施形態の吸入器及びダンピングシステムの動作を示す。
【
図8B】
図1~
図7の実施形態の吸入器及びダンピングシステムの動作を示す。
【
図8C】
図1~
図7の実施形態の吸入器及びダンピングシステムの動作を示す。
【
図8D】
図1~
図7の実施形態の吸入器及びダンピングシステムの動作を示す。
【
図8E】
図1~
図7の実施形態の吸入器及びダンピングシステムの動作を示す。
【
図9A】
図1~
図7による吸入器及びダンピングシステムの別の実施形態の動作を示す。
【
図9B】
図1~
図7による吸入器及びダンピングシステムの別の実施形態の動作を示す。
【
図9C】
図1~
図7による吸入器及びダンピングシステムの別の実施形態の動作を示す。
【
図9D】
図1~
図7による吸入器及びダンピングシステムの別の実施形態の動作を示す。
【
図9E】
図1~
図7による吸入器及びダンピングシステムの別の実施形態の動作を示す。
【
図9F】
図1~
図7による吸入器及びダンピングシステムの別の実施形態の動作を示す。
【
図9G】この実施形態のロッドのそれぞれ側面図、正面図、及び斜視図を示す。
【
図9H】この実施形態のロッドのそれぞれ側面図、正面図、及び斜視図を示す。
【
図9I】この実施形態のロッドのそれぞれ側面図、正面図、及び斜視図を示す。
【
図11A】
図1~
図7による吸入器及びダンピングシステムの別の実施形態の動作を示す。
【
図11B】
図1~
図7による吸入器及びダンピングシステムの別の実施形態の動作を示す。
【
図11C】
図1~
図7による吸入器及びダンピングシステムの別の実施形態の動作を示す。
【
図11D】
図1~
図7による吸入器及びダンピングシステムの別の実施形態の動作を示す。
【
図11E】
図1~
図7による吸入器及びダンピングシステムの別の実施形態の動作を示す。
【
図11F】
図1~
図7による吸入器及びダンピングシステムの別の実施形態の動作を示す。
【
図11G】この実施形態のロッドのそれぞれ側面図、正面図、及び斜視図を示す。
【
図11H】この実施形態のロッドのそれぞれ側面図、正面図、及び斜視図を示す。
【
図11I】この実施形態のロッドのそれぞれ側面図、正面図、及び斜視図を示す。
【
図12】本発明の代替的な実施形態によるダンピングシステムの正面図である。
【
図13A】様々な動作状態にある
図12のダンピングシステムの正面図である。
【
図13B】様々な動作状態にある
図12のダンピングシステムの正面図である。
【
図13C】様々な動作状態にある
図12のダンピングシステムの正面図である。
【
図15A】補助的なキャニスタ戻りばねが設けられた、本発明の実施形態によるマウスピースの斜視図である。
【
図15B】補助的なキャニスタ戻りばねが設けられた、本発明の実施形態によるマウスピースの斜視図である。
【
図17A】本発明の別の代替的な実施形態によるダンピングシステムの斜視図である。
【
図18A】本発明の別の代替的な実施形態によるダンピングシステムの斜視図である。
【
図19】
図1~
図8の実施形態の吸入器及びダンピングシステムの実際の動作を示すグラフである。
【
図20】本発明の実施形態による吸入器の理想的動作を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明の実施形態による吸入器及び吸入器を動作させる方法を図に示す。
【0047】
図1を参照すると、この図では後に詳述するような呼吸起動式機構32、34を備える呼吸起動吸入器10である吸入器10が示される。
図1Aは、吸入器10の斜視図であり、
図1Bは、吸入器10の内部構成要素を示すための、吸入器10の切欠断面図である。吸入器10は、吸入器10の構成要素のほとんどを収容する外ハウジングすなわちシェル12を有する。シェル12の基部に、シェル12に対して旋回し、吸入器10のマウスピース16を露出させる又は覆う可動マウスピースカバーすなわちキャップ14がある。閉鎖構成(例えば
図5Aに見られるような)にあるとき、シェル12及びキャップ14は吸入器10の正面プレートすなわち板18と組み合わせると吸入器10の全構成要素を完全に取り囲む。
【0048】
吸入器10の内部に、薬剤を収容するリザーバ52を有するキャニスタ50がある。当該技術分野で周知のように、キャニスタ50の弁54は薬剤の1回量を測定するための測定チャンバを有する。薬剤用量を分与するために、キャニスタ50は押し込まれ、マウスピース16のシート17内に着座した弁54の軸53がキャニスタ50内に強制的に入れられ、これにより弁54を開き、加圧された薬剤用量が使用者による吸入のためにマウスピース16内に放出される。キャニスタ50は主ばね20(
図5Bの吸入器10の分解図に示される)によって押し込まれる。主ばね20は、キャニスタ50の上方で荷重がかけられた状態に維持され、吸入器10内で下向きに伸長するように解放される。ここで、上向きに、下向きに、側方に、上部、下部、上方、下方等のような相対用語は単に参照を容易にするためのものであり、限定を意図するものでは一切なく、(ほとんどの図に示されるように)吸入のためのその直立姿勢にある吸入器10に対して用いられることに留意されたい。以下で更に記載されるように、解放されたばね20は吸入器10のヨーク22(先の
図3に最も良く示される)を下向きに押す。ヨーク22は荷重がかけられていないばね20によってその第1の発射前位置から駆動され、第2の発射位置に迅速に移動する。第2の発射位置は、吸入器10の別の部分に接触するヨーク22の最下部によって決定される。図示される実施形態においては、ヨーク22の脚25は足23(例えば
図7を参照)を有し、これら足23は駆動されて、開かれたキャップ14の支え面15に接触し、ヨーク22の下向きの移動を停止する。代替的構成では、異なる停止手段、例えばシャーシ(図示せず)上に停止部が設けられてもよい。
【0049】
典型的には、ばね20は圧縮されたときに約45~85Nの範囲内の力を有し、したがって、解放されたときにヨーク22をその発射位置に迅速に、例えば約4msなどわずか数ミリ秒で駆動する。ヨーク22がその発射位置に移動する際、ヨーク22は吸入器10のダンピングシステム100と相互作用し、先で
図2を参照して詳述するように、ダンピングシステム100のロッド120を下向きに駆動する。ロッド120は、マウスピース16のシート17内に保持された弁軸53をキャニスタ50内に駆動するために十分な力でキャニスタ50を下向きに押し(したがってキャニスタを静止位置から作動位置に駆動し)、このようにして弁を開き、弁54の測定チャンバ内の薬剤用量をマウスピース16内に放出することを可能にする。
【0050】
良く知られたpMDI吸入器などの当該技術分野で周知の吸入器10では、吸入器が直立に維持される以外の姿勢にある際に弁54がリセットされる場合に問題が生じる可能性があることが知られている。例えば、図に示される構成では、弁54は、ヨーク22がその第1位置に押し戻される(これはばね20もリロードする)までその開放位置に留まる。これは吸入器10の使用者がキャップ14を閉じることにより達成される。キャップ14の支え面15は、マウスピース16を覆うために使用者がキャップ14をその閉鎖位置に回転させるとヨーク22の足23に上向きの力を与えるカムである。その後、ラッチ機構34は係合してばね20をその圧縮された状態に保持し、次の作動に備える。この構成の課題は、使用者が使用直後にキャップ14を閉じるのを忘れる可能性があることであり、いくつかの場合では、このことは弁54の測定チャンバの補充効率低下につながり得ることが認められている。キャップ14が吸入器10の使用後比較的早く閉じられた場合でも、使用者は、吸入器10を吸入器10が概ね直立である分与姿勢から解除し、吸入器10が異なる向きにある状態で、例えばマウスピース16が上を向いた状態でキャップ14を閉じることが多い。特に流体レベルが低くなっているキャニスタ50の寿命終了近くには重力も弁54の充填に影響する可能性があるので、キャニスタ50がその静止位置に移動している(それにより弁54が補充する)ときのキャニスタ50の向きも、弁54がどれほど良好に補充するかに影響する可能性があるとともに、次の薬剤用量の質に影響を及ぼす可能性があることが最近では認められている。
【0051】
したがって、本発明の実施形態による吸入器10は、使用者が吸入器10の使用直後にキャップ14を閉じるかどうかとは無関係に、現在の用量が分与された後すぐにキャニスタ50をその静止位置に戻すことにより弁54の閉鎖を自動化するための機構を含む。更に、弁54の自動閉鎖は所定時間内に且つ用量の分与後十分にすぐに行われ、使用者が吸入器10をその直立姿勢から向き変更することはなさそうである或いは不可能である(すなわち、弁54の閉鎖は十分に素早く行われるため使用者は弁54が閉じられる前に大きく反応しないので、弁54は、使用者が吸入器10をなお使用時のその直立姿勢にしている間に閉じる)。
図1に示されるように、キャニスタ50及び弁54のリセットを自動化するための機構はダンピングシステム100を含む。
図2は、参照を容易にするために吸入器10から分離したダンピングシステム100の主要構成要素を示す。この実施形態のダンピングシステムは、上部ユニット112とそこから突き出たシャフト114とを有するロータリーダンパー110を含む。このようなロータリーダンパー110は、この出願の時点で入手可能であり、例えば、ACE Controls International/Inc.又はACE Stossdaempfer GmbH等により販売されている。したがって、更なる詳細は当業者には周知である。ロータリーダンパー110は上部ユニット112内の構成要素の回転移動を少なくとも1つの方向に制御(減衰)し、シャフト114の回転も少なくとも1つの方向に制御(減衰)する。したがって、以下で更に記載されるように、シャフト114に作用する力は、シャフト114を上部ユニット112によって決定された速度でのみ回転させる。
【0052】
ダンピングシステム100はロッド120を更に含む。ロッド120は概ね細長く、その中心軸線に沿って、ロータリーダンパー110のシャフト114(例えば、
図2、
図4、及び
図6に見られるような)を受け入れるための内部ボア122を有する。シャフト114とロッド120とが、少なくとも、ロッド120及びシャフト114の中心軸線を中心とした回転方向に動かないよう互いに固定されるように、内部ボア122の表面はシャフト114との係止嵌合(locking fit)を提供するように構成された形状を有する。例えば、
図2の実施形態では、内部ボア122はTorx(登録商標)インターフェイスを含むが、他の構成も本発明の範囲内である。ロッド120の内部ボア122の表面はダンパーシャフト114に対するロッド120の軸方向移動を妨げない。したがって、ロッド120はシャフト114を上下して直線軸方向に摺動することができる。参照を容易にするために、(
図1を参照すると、図示されるように吸入器10が直立のとき)上方向の移動は先端側方向の移動と定義され、下方向の移動は基端側方向の移動と定義される(
図3も参照)。したがって、ダンピングシステム100においては、これはキャニスタ50に対するものである(例えば、上部ユニット112はロッド120と比べるとキャニスタ50に対して先端側にある)、又は概して、先端側及び基端側はマウスピース16に対して定義される。
【0053】
ダンピングシステム100はプレート130を更に含み、
図6A及び
図7Aに見られるように、プレート130は、リングの中心に向かって半径方向内向きに突き出た一対の対向する歯又は突出部132を有するリングである。歯132はカムフォロアとして機能し、ロッド120の外部表面上のカムトラック124、126の2つのセクションをたどるように構成されている(
図6Bに示され、以下で更に記載する)。歯132は、ロッド120がダンパーシャフト114とともに回転する際、及びまた、ロッド120がシャフト114に対して基端側方向/先端側方向に軸方向に移動する際、トラック124、126をたどる。以下で更に記載されるように、プレート130はヨーク22の先端部内で動かないように固定されているため(
図7A及び
図7Bに見られるように、ヨークカラー24内の空洞26に受け入れられている)、ロッド120はヨークプレート130の歯132によってヨーク22に結合されている。この実施形態ではヨークプレート130は別個の構成要素として示されているが、必ずしもそうである必要はなく、例えば、ヨーク22はヨークプレート130を含んでもよい(すなわち、これらは、例えば一体形成された同じ構成要素の一部であってもよい)。
【0054】
図3及び
図4を参照すると、ダンピングシステム100は、吸入器10内で、キャニスタ50上方の吸入器10の概ね先端側部分に位置する。ダンパー上部ユニット112はカバー36によって所定の位置に保持され、カバー36は、吸入器10の各種部品をシェル12又は吸入器10の他の部品に対して適所に保持するように構成されたシャーシ11に取り付けられている。ロッド120は上部ユニット112から基端側に延び、ロータリーダンパー110のシャフト114上に受け入れられる。ロッド120はヨークプレート130を貫通し、ヨークプレート130の歯132はロッド120の外部表面のトラック124、126(図では1つのトラック124、126のみが見えるが、この実施形態では少なくとも、ロッド120の外部表面上に見えるトラック124、126に対向して、対応するトラックも設けられている)内に突き出ている。ヨークプレート130はその先端部がヨーク22内、ヨーク22のカラー24内で固定されている(
図7を参照)。ヨーク22はシャーシ11によって案内されるが、シャーシ11に対して先端側方向及び基端側方向の両方に移動することができる。主ばね20(
図3及び
図4には図示しない。
図5及び
図8を参照)がカバー36とヨーク22のカラー24との間に位置し、主ばね20は、以下で更に記載されるように、荷重印加構成から解放されたときにヨーク22及びヨークプレート130を下向きに押し、ヨーク22及びヨークプレート130を基端側方向に移動させる。
図5Bは、吸入器10の主要構成要素を各構成要素の参照を容易にするために分解図で示す。
【0055】
ここで、
図8A~
図8Eを参照し、この実施形態の吸入器10の動作を説明する。図では、吸入器10のダンピングシステム100と、吸入器10の周囲構成要素、特にキャニスタ50及びヨーク22とのその相互作用とに焦点を当てる。
図8Aは、キャップ14が閉じられており、圧縮された主ばね20の荷重が以下で記載されるように支持されている又は解放されている、その静止又は閉鎖位置にある吸入器10を示す。キャップ14は吸入器10が使用されるときにのみ開かれるため、これは吸入器10が主に維持される構成である。
図5Aに、閉じられた吸入器10が示される。この閉鎖位置において、ヨーク22は、閉じられたキャップ14の支え面15にヨーク22の足23が当接することにより、その最先端側位置に支持される。したがって、主ばね20の荷重はヨーク22の脚25を介して支え面15により支持され、ヨーク22はこのような荷重に耐えるように設計されている。この構成にある間、吸入器10の他の構成要素はあらゆる顕著な応力から解放され、例えば、ロッド120はキャニスタ50の上方に上がっているためキャニスタ底面56に接触しておらず、カムフォロア歯132はカムトラック126に載っておらず、呼吸起動式機構32、34のラッチ機構34(
図8に部分的に見え、
図4及び
図5Bにも示される)はばね20の荷重を実質的に保持していない。
【0056】
使用者が薬剤用量を吸入器10から吸入したいとき、第1の工程はキャップ14を開くことである(使用者は使用前に吸入器10を振る必要があり得ることに留意すべきであるが、これは当該技術分野で周知のため、この要件についての更なる説明は必要ない)。キャップ14を開くとキャップ14の支え面15が回転し、
図8Bに示すように、ヨーク22は主ばね20の力下で基端側方向にわずかに移動する。しかしながら、ヨーク22がこの第1の発射前位置に移動する際にラッチ34が係合するため、この発射前位置において主ばね20は解放されない。ヨーク22の移動はヨークプレート130も移動させ、カムフォロア歯132は移動してカムトラック126の縁部に接触し、ロッド120を押してキャニスタ50の底面56に接触させる。この構成において、吸入器10は、キャニスタ弁54から薬剤用量を放出するための発射の準備が整っている。
【0057】
これら実施形態の吸入器10は呼吸起動吸入器10であり、使用者がマウスピース16を通して吸入すると、空気流/圧力低下により羽根32(
図1B及び
図5Bを参照)が旋回して、ラッチ機構34を解放し、主ばね20がその荷重の多くを解放して伸長し、ヨーク22及びヨークプレート130を下向きに押す。ばね20の力は大きく、ヨーク22は
図8Cに示される第2の発射位置に迅速に移動する。この実施形態ではヨーク22の移動はヨーク22の足23がキャップ14の支え面15に当たると停止するが、他の停止手段が追加的に又は代替的に設けられてもよい。ヨーク22及びヨークプレート130の迅速な移動によりロッド120が強制的にキャニスタ50の底面56を同様に下向きに押し、(マウスピース16のシート17内に保持された)キャニスタ50の弁軸53をキャニスタ50内に駆動し、使用者による吸入のために定量をマウスピース16内に放出する。この実施形態では、吸入器10は、弁軸53がキャニスタ50内のその最も遠い位置に到達すると同時に、すなわちキャニスタ50が吸入器10内のその最下位置に到達したときにヨーク22の足23がキャップ14の支え面15に当たるように構成されている。ロッド120はカムトラック126の縁部を下向きに押すカムフォロア歯132の力によって軸方向に駆動され、ロッド120はダンパー110の上部ユニット112から離れる方に、シャフト114に沿って摺動するが回転しない。なぜなら、ロッド120が回転することは、ロータリーダンパー110の構成及びカムフォロア歯132の迅速な移動によって阻止されるからである。ロッド120がキャニスタ50を下向きに押す際、キャニスタ底面56とヨークカラー24との間の間隔は維持される。上述のように、
図8Bの発射前位置から
図8Cの発射位置への構成要素の移動は迅速であり、数ミリ秒以内などの非常に短時間で起こり得る。したがって、使用者は吸入器10のマウスピース16を通して吸入し始めた後非常に素早く薬剤用量を受け入れる。この実施形態は使用者がマウスピース16を通した吸入によって用量の分与を起動することに関連して記載されているものの、使用者が、発射ボタン30を使用して用量を発射すること(羽根32を旋回させるという同じ効果を有するが手動で行われる)も可能であり、これは例えば、デバイスのプライミングに有用であり得る。
【0058】
吸入器10が発射された後、
図8Cに示すように、ダンピングシステム100は、キャニスタ50をリセットし(キャニスタ50を
図8Cの作動位置から
図8Dの静止位置へと移動させる)、キャニスタ弁軸53をその閉鎖位置に移動させるために、キャニスタ50の底面56に対するロッド120の下向きの力を制御された状態で解放するように構成されている。キャニスタ弁54は弁軸53が閉じる際にその測定チャンバを補充する。発射及び/又は補充が不十分又は不完全になることを回避するために、キャニスタ50に対するキャニスタ弁軸53の移動(すなわち、弁54の発射及びその後の補充及びリセット)を、過度に短くも長くもない所定の時間にわたって制御することが重要である。これについては以下で更に述べる。
【0059】
図8に示される実施形態において、
図8Cと比較したときに
図8Dでは、キャニスタ50がヨーク22に対して上向きに(すなわち先端側方向に)移動し、キャニスタ底面56とヨークカラー24との間の間隔を閉じているのを見ることができる。この上向きの移動は、弁軸53をキャニスタ50から出してその静止位置に戻すのに十分な力を少なくとも有するキャニスタ50の戻りばねによって駆動される。キャニスタ50の戻りばねが完全な上向きの力を確実に提供するのに十分でない実施形態では、弁54に隣接する、キャニスタ50を上向きに押すための1つ以上の補助的な戻りばねが例えばマウスピース16上に設けられてもよい(
図15に示すように)。キャニスタ50は、それがキャニスタ50の更なる移動を防止するヨーク22に当接するまで先端側方向に移動する。
図8Cの発射位置においてキャニスタ底面56がロッド120に接触すると、キャニスタ50の先端側への移動によりロッド120を軸方向に押し、ロータリーダンパー100のシャフト114を後退させる。しかしながら、ロッド120の軸方向移動は制御される。なぜなら、カムフォロア歯132はカムトラック124、126内を摺動しなければならず、これを行うために、ロッド120は、カムトラックの上部分126に沿ってカムフォロア歯132を少なくとも移動させるために回転しなければならない(この上部分126が略螺旋形状であるため)からである。上部分126は一定の曲率半径を有してもよいが、この実施形態では、螺旋は2つの主部分、約25°の角度を有する下部分と約60°の角度を有する上部分とを有する(
図6Bに示すように)。他の移行部分及び/又は中間部分も想定される。
【0060】
ロッド120の回転はロータリーダンパー100によって制御され、ダンパー100のシャフト114を回転させるために打ち勝たなければならないダンパー100のトルクが原因で、シャフト114は制御された速度で回転し、ロッド120がシャフト114に沿って先端側方向に同じく制御された速度で軸方向に移動することを可能にする。しかしながら、カムトラックはその下部分124が直線であるため、カムフォロア歯132がカムトラックの下部分124の始端に到達すると、先端側への軸方向のロッド120の移動を可能にするためにロッド120のそれ以上の回転は必要ない。したがって、ロッド120の先端側方向の軸方向移動は、吸入器10の動作の所定時間のこの第2区分内に(カムフォロア歯132がカムトラックの螺旋状部分126に沿って移動する第1の時間区分と比較して)大幅に速くなる。事実上、ロッド120はそれがカムトラックの下部分124の始端に到達するとロータリーダンパー100の制御を迂回する。したがって、
図8Dに見られるように、吸入器10は、吸入器10の使用者の行動に関係なくキャニスタ50及びキャニスタ弁54をリセットする。すなわち、この点に関して吸入器10のリセットは自動である。
【0061】
図8Eに示すように、本発明のこの実施形態の動作の最終段階は、主ばね20がリロードされ、ここでキャニスタ50の弁54に測定されて入れられている次の用量を分与する準備が整うように、吸入器10の駆動機構がリセットされることである。上述のように、主ばね20の力下でのヨーク22の基端側への移動は、ヨーク足23がキャップ14の支え面15に接触することによって停止される。したがって、ヨーク22をその第1位置に戻すために、使用者はキャップ14を単に回転させて(
図5Aに示すようにキャップ14がマウスピース16を覆っている)閉鎖位置に戻す。これにより支え面15を回転させ、ヨーク足23を上向きに押し、ヨークカラー24を先端側方向に押し、主ばね20を圧縮する。吸入器10が計数機構40(
図5を参照)を有する場合、この動作工程におけるヨーク22の先端側への移動は計数機構40を起動し、分与された薬剤用量を計数する。ヨークプレート130はヨーク22とともに移動し、したがって、カムフォロア歯132はカムトラックの下部分124内を、次いでカムトラックの上部分126に沿って上向きに移動し、ロッド120を回転させて持ち上げ、ロッド120がキャニスタ底面56にもはや接触しないロッド120の初期位置に戻す。リセット方向におけるロッド120の回転はロータリーダンパー100によって制御される必要はなく、制御された回転の反対方向である。いくつかの実施形態では(図示せず)、「ゼロ」トルクの戻り回転を生じさせる戻り方向のクラッチを有するダンパーを使用することができると考えられる。吸入器をリセットする使用者が(例えばキャップ閉鎖中)ダンパーのリセットを感じず、且つリセット中、ダンパーに同じ応力ピークが存在しないため、これは有利となり得る。
【0062】
図12~
図16に、本発明の代替的な実施形態が示される。各種実施形態の吸入器の構成要素が同じである場合、同じ参照番号が使用される。上述のように、本発明の異なる実施形態の構成要素及び機能の多くは共通しており、交換可能であり、実施形態のいずれかの範囲内にある。
【0063】
図9に、本発明の代替的な実施形態が示される。この実施形態は
図8に示される前述の実施形態に類似し、適宜、同じ参照番号が使用される。しかしながら、この実施形態では、特定の構成要素の構成及び動作は以下のとおり異なる。
【0064】
図9A~
図9Fは、この実施形態の動作を前述の実施形態の
図8A~
図8Eと同様に示す。特に、
図9A~
図9Cは、吸入器10の、
図8A~
図8Cと同じ構成及び動作工程を示し、
図9Aは、キャップ14が閉じられており、圧縮された主ばね20の荷重が支持されている又は解放されている、その静止又は閉鎖位置にある吸入器10を示し、
図9Bは、発射前位置の吸入器10を示し、
図9Cは、吸入器10の発射位置を示す。しかしながら、この実施形態では、弁軸53がキャニスタ50内にその最大限押し込まれても(したがって、キャニスタ50と弁軸53はそれ以上互いに対して押し込むことはできない)ヨークの足23はキャップ14の支え面15にまだ当たっていないため、ヨーク22の移動が停止されていないということは、
図9Cからは認識できない。これは、
図10A及び
図10Bにより最も良く認識することができ、
図10Aは、本実施形態を
図9Cの動作状態(発射直後、弁軸53はキャニスタ50により完全に押し込まれている)で示し、
図10Bは、前述の実施形態を
図8Cの動作状態(同じく発射直後)で示す。
【0065】
図10Aに示すように、ヨーク足23と支え面15との間には間隙があり、ヨーク22は、ヨーク足23が支え面15に当たるまでばね20の荷重下で支え面15に向かって移動し続けている。この追加的なヨークの移動中、ヨークカラー24はキャニスタ底面56に向かって駆動され続け、キャニスタ底面56に対するロッド120からの力によってキャニスタ弁軸53をその完全発射又は開放構成に維持する。前述の実施形態と同様に、吸入器10が発射された後、キャニスタ50をリセットし(キャニスタ50を
図9Cの作動位置から
図9Eの静止位置へと移動させる、すなわち、キャニスタ底面56をヨークカラー24に向かって移動させる)、キャニスタ弁軸53をその閉鎖位置に移動させるために、ダンピングシステム100は、キャニスタ50の底面56に対するロッド120の下向きの力を制御された状態で解放するように構成されている。しかしながら、この実施形態におけるキャニスタ50、キャニスタ弁軸53、及びヨーク22の相対移動は、前述の
図8の実施形態のものと異なる。
図9D及び
図9Eに示されるように、この実施形態では、キャニスタ50の戻りばねはヨーク22を下向きに駆動し続ける駆動ばね20に比べてかなり小さな力を有するため、発射直後にキャニスタ50の上向きの移動はない。したがって、最初は、ロッド120の回転(打ち勝たなければならないダンパー100のトルクのせいでロータリーダンパー100により制御される)によりヨークカラー24に対するキャニスタ底面56の相対移動をなお制御するが、この場合、相対移動はヨーク22の継続的な下向きの移動によるものであり、キャニスタばねがキャニスタ50を上向きに押すことによるものではない。したがって、ヨーク足23が支え面15に最終的に当たるまで、キャニスタ弁軸53はキャニスタ50内でその完全に押し込まれた位置に維持される。この実施形態では、キャニスタ底面56に面するヨークカラー24の表面は湾曲している、すなわち凸状であり、この形状は、凹状であるキャニスタ底面56の形状を補完することがこれらの図で分かり得る。
【0066】
図9Eを参照すると、ヨーク足23が支え面15に当たるのとほぼ同時に、(ロッドが回転する120と)カムフォロア歯132がカムトラックの下部分124の始端に到達し、前述の実施形態と同様に、カムトラックはその下部分124が直線であるため、先端側への軸方向のロッド120の移動を可能にするためにロッド120のそれ以上の回転は必要ないことが分かる。したがって、事実上、ロッド120はそれがカムトラックの下部分124の始端に到達するとロータリーダンパー100の制御を迂回するため、この段階におけるロッド120の先端側方向の軸方向移動は迅速である。この実施形態では、この段階で、キャニスタ50とキャニスタ弁軸53との間の押し込みが低減され、弁54の戻りばね(及び/又は吸入器10の任意の更なる補助的な戻りばねが弁軸53をキャニスタ50からその静止位置へと出す。これらの動作は並行であるものとして記載されるが、
図10Cに関して以下で記載するように、いくつかの実施形態ではヨーク足23が支え面15に当たる前にカムフォロア歯132がカムトラックの下部分124の始端に到達することは可能である。
【0067】
前述の実施形態の
図8Eに類似する
図9Fに示すように、吸入器の動作の最終段階は、主ばね20がリロードされ、ここでキャニスタ50の弁54に測定されて入れられている次の用量を分与する準備が整うように、駆動機構がリセットされることである。前述のように、主ばね20の力下でのヨーク22の基端側への移動は、ヨーク足23がキャップ14の支え面15に接触することによって停止され、使用者はキャップ14を単に回転させて閉鎖位置に戻し、これにより支え面15が回転し、ヨーク足23を上向きに押して、ヨークカラー24を先端側方向に押し、主ばね20を圧縮する。ヨークプレート130はヨーク22とともに移動し、したがって、カムフォロア歯132はカムトラックの下部分124内を、次いでカムトラックの上部分126に沿って上向きに移動し、ロッド120を回転させて持ち上げ、ロッド120がキャニスタ底面56にもはや接触しないロッド120の初期位置に戻す。この動作の最終段階は前述の実施形態のものと同じである。
【0068】
図10に、2つの実施形態間の動作の違いを示す。
図10Cは、
図9の吸入器10の2つの構成要素の動作、特に移動を示す。
図10Dは、
図8の吸入器10の動作中の同一構成要素の移動を示す(参考のために、
図19もまた、この実施形態のこれら構成要素のうちの1つの移動を示すものであり、これについては以下で詳述する)。
図10A及び
図10Cを参照すると及び上述のように、
図9に示される実施形態の吸入器10を発射すると、キャニスタ弁軸53はヨーク22が下向きに移動するとキャニスタ内に押し込まれ、ヨーク22の脚25の足23がキャップの支え面15に当たる前にキャニスタ内への弁軸53の最大押し込みに達する。弁軸53がキャニスタ弁54内に押し込まれる際のキャニスタ50の下向きの移動は
図10Cの線501aによって示され、y軸は距離である。これは、
図10Dの線502aによって示されるように
図8の実施形態についても同じである。ヨーク22の最初の下向きの移動は
図10Cの線231aによって示される。キャニスタ50内への弁軸53の最大押し込みに達すると、キャニスタ50はx軸に沿って示される時間にわたって圧縮された状態に(すなわち弁54が完全に開いた状態で)維持される。すなわち、線501bによって示されるように、キャニスタ50は上向き又は下向きに移動しない。その一方で、ヨーク22は、足23が支え面15とまだ当接していないため、下向きに移動し続ける。線231a及び線501aは両方ともほぼ垂直であり、最初の、ばね20の力下でのこれら構成要素の迅速な動きを示す。しかしながら、ヨーク22の継続的な移動はキャニスタ50が完全に押し込まれると上述のようなダンピング機構100によって制御されるため、
図10Cの斜線231bによって示されるように移動は遅くなる。
【0069】
ロッド120がダンピング機構100の制御下で回転すると、カムフォロア歯132は下部カムトラック124との接合部に到達するまで上部カムトラック126に沿って移動する。この時点で、ロッド120は解放され、軸方向に迅速に移動することができ、弁軸53をキャニスタ50から解放することを可能にし、したがって、線501cによって示されるようにキャニスタを上向きに迅速に移動させる。この実施形態では、ヨーク足23は支え面15にまだ完全には接触していないため、ヨーク22は線231cによって示されるようにその静止点に下向きに迅速に移動する。戻りばねの力は駆動ばね20の力ほど大きくないため、線501c及び線231cは線501a及び線231aほど垂直に近似しない。
【0070】
これに対し、
図8に示される実施形態では、及び
図10Dを参照すると、ヨーク22は駆動用ばね20の力下で迅速に移動し、その後、線232a及び線232bによってそれぞれ示されるようにヨーク足23が支え面15に当接すると停止することが分かる。したがって、ヨーク22の移動はダンピング機構100によって制御されない。むしろ、ダンピング機構100により線502bによって示されるような第1の低速に制御され、その後、カムフォロア歯132がカムトラック124の第2部分に到達すると線502cによって示されるようにより迅速に解放されるのはキャニスタ50の移動である。これら2つの構成間の違いは、弁軸53が完全に押し込まれた状態にキャニスタ弁54が維持される時間の長さ、及び迅速な最終解放前の弁軸53の押し込みからの解放が迅速であるかより制御されているかである。両構成は定量の薬剤を分与するのに有利である。
【0071】
図11に、更に別の実施形態が示される。この実施形態は
図8及び
図9両方の実施形態に似ているが、変更を加えたロッド140又は他の実施形態のロッド120を所定の位置に有する。この実施形態では、ロッド140は、ロッド140がダンピング機構100のシャフト114に対して上向きに移動するか下向きに移動するかを問わず、1つの方向にのみ回転するような形状である。ロッド140はカムトラック部分144及びカムトラック部分146を有し、カムトラック部分144及びカムトラック部分146は他のロッド120と異なるように構成され、ロッド140が1つの方向にのみまだ回転している間にいずれかの方向に軸方向に移動すること可能にする。これは、ロッドが方向を変えるときに起こる可能性のあるあらゆる緩みに対応するという利点を有する。
【0072】
図12を参照すると、本発明による吸入器10で使用される代替的なダンピングシステム200が示される。ダンピングシステム200は前述の実施形態のダンピングシステム100と同様に機能するが、この実施形態では、ダンパーはロータリーダンパーではなくリニアダンパーである。リニアダンパー200は、ロータリーダンパー100実施形態のロッド120と同様の機能を実施するピストン220を含む。ピストン220は、シリコーン油などの非圧縮性流体を収容するリザーバ210を通過する。シリコーン油の粘度はリニアダンパー200の動作のために最適化され、例えば約250cStの粘度を有してもよい。ピストン220はリザーバ210の上端及び下端から突き出ており、したがって先端側突出端部228及び基端側突出端部227を有し、以下で更に記載されるように、吸入器10が動作しているとき、基端側突出端部227はキャニスタ50に接触している。ピストン220はリザーバ210内で、ピストン220の先端側突出端部228を密閉する上部先端側シール230及びプラグ235によって並びに基端側突出端部227を密閉する下部基端側シール240によって密閉されている。シール230、240は、特に、以下で更に記載されるようにピストン220が軸方向に移動する際、リザーバ210からシリコーン油(又は使用される作動液が何であれ)が出るのを阻止する又は少なくとも最小限にするように構成されている。この実施形態では単一ピストン220を記載しているが、代替的に、一対の整列されたピストン(
図17及び
図18に示すような)がこの実施形態のピストン220と同じ機能を実施することは可能である。
【0073】
ダンピングシステム200のリザーバ210は略円筒状であり、2つのチャンバ212、214を有する。上部すなわち先端側チャンバ214は下部すなわち基端側チャンバ212の内径よりも大きな内径を有する。
図12及び
図13に示すように、この実施形態では、2つのチャンバ212、214間の移行部はテーパした縁部であるが、これは必須ではない。これらの図に更に示されるように、ダンピングシステム200はピストンシール250を更に含む(
図14も参照)。ピストンシール250はピストン220を包囲及び密閉し、基端側チャンバ212の内径も密閉するような外径を有する。したがって、ピストンシール250が基端側チャンバ212内に位置するとき、ピストンシール250は基端側チャンバ212を先端側チャンバ214から流体的に隔離する。しかしながら、ピストンシール250の外径は先端側チャンバ214の内径よりも小さいため、ピストンシール250が先端側チャンバ214内に位置するとき(
図13Cに示すように)、ピストンシール250は基端側チャンバ212を先端側チャンバ214から流体的に隔離しない。ピストンシール250はピストン220の突き出たリング223とリング225との間に保持される(例えば
図14Aに見られるように)ため、ピストンシール250の移動はピストン220の位置によって調整される。ダンピングシステム200は、ピストン220がリザーバ210内を軸方向に移動し、したがってピストン220の突出端部227、228をリザーバ210に向かう方に又はリザーバ210から離れる方に移動させ、ピストンシール250をチャンバ212とチャンバ214との間で移動させるように構成されている。
【0074】
図14A及び
図14Bに示されるように、ピストンシール250は、より狭い分離セクション253によって離隔した同心直立リング部分252、254と、中にピストン220が受け入れられる中心ボア256とを有するリップシールを含む。したがって、ピストンシール250は、以下で更に記載されるようにある程度の半径方向可撓性を有する。ピストン220の外部表面内の、使用中にピストンシール250が位置するピストン220の領域内に軸方向チャネル222がある。チャネル222は、ピストンシール250の深さよりも長いような長さのものであり、チャネル222のいずれかの端部に入口/出口224、226を有する。入口/出口224、226は、リザーバ210内の流体に対して開かれており、
図14Aに示すように、ピストンシール250の上方及び下方に開かれている。ピストン220の表面に切られた或いは形成若しくは成形された開チャネルであるチャネル220の中間部分の大部分はピストンシール250によって密閉される。
【0075】
ここで、
図12~
図16を参照し、この実施形態のリニアダンピングシステム200を有する吸入器10の動作を説明する。この実施形態の吸入器10の動作の多くはロータリーダンピングシステム100を有する実施形態の吸入器10の動作と同じであり、前述の開示もまたこの実施形態に当てはまる。
図16Aを参照すると、吸入器10はその静止又は閉鎖位置で示されている。静止又は閉鎖位置では、前述のように、キャップ14が閉じられており、圧縮された主ばね20の荷重が、ヨーク22の足23に当接することで主ばね20の荷重を保持するキャップ14の支え面15によって支持されている又は解放されている。この場合も、キャップ14は吸入器10が使用されるときにのみ開かれるため、これは吸入器10が主に維持される構成(
図5Aに示される)である。前述のように、この構成にある間、吸入器10の他の構成要素は、あらゆる顕著な応力から解放され、この実施形態では、ピストン220はキャニスタ50の上方に上がっているためキャニスタ底面56に接触しておらず、ラッチ機構34(
図16Aに部分的に見え、
図16Eにも示される)はばね20の荷重を実質的に保持していない。
【0076】
前述のように、使用者が用量を吸入器10から吸入したいとき、第1の工程はキャップ14を開くことであり、これにより、
図16Bに示すように、キャップ14の支え面15が回転し、ヨーク22は主ばね20の力下で基端側方向にわずかに移動する。この場合も、ヨーク22がこの第1の発射前位置に移動する際にラッチ34が係合するため、この発射前位置において主ばね20は解放されない。リニアダンピングシステム200はヨーク22内に形成される(又はそうでなければヨーク22に取り付けられる)ため、ヨーク22の移動はまた、ピストン220を移動させてキャニスタ50の底面56に接触させる。この構成において、吸入器10は、キャニスタ弁54から薬剤用量を放出するための発射の準備が整っている。
【0077】
上述のように、使用者がマウスピース16を通して吸入すると、ラッチ機構34は解放され、主ばね20は荷重解放され、ヨーク22を下向きに押す。ばね20の力は大きく、ヨーク22は
図16Cに示される第2の発射位置に迅速に移動する。ヨーク22の移動はこの場合もヨーク22の足23がキャップ14の支え面15に当たると停止する。ヨーク22の迅速な移動は、ピストン220を同様に強制的に下向きに迅速に移動させ、キャニスタ50の底面56を押し、前述のように使用者による吸入のために定量を弁54からマウスピース16内に放出する。
図16B及び
図16Cに示されるように(
図13Aも参照)、ピストンシール250は吸入器10の動作のこれら段階の全体を通して基端側チャンバ212内に位置し、基端側チャンバ212を先端側チャンバ214から流体的に隔離するため、流体はピストン220の狭いチャネル222を通り抜ける以外、基端側チャンバ212と先端側チャンバ214との間を通過することはできない。発射時のヨーク22の移動は速すぎて(わずか数ミリ秒)、流体はこの時間内に又は少なくとも顕著な量若しくは大量にチャネル222内を流れることはできないため、ピストン220はヨーク22とともに移動し、ヨーク22を移動させるのと事実上同じ力でキャニスタ底面56を下向きに押す。
【0078】
前述の実施形態に関しては、
図16Cに示すように、キャニスタ底面56とヨークカラー24との間の最初の間隔が維持される。その後、キャニスタ50をリセットし(キャニスタ50を
図16Cの作動位置から
図16Dの静止位置へと移動させる)、キャニスタ弁54をその閉鎖位置に移動させるように、ダンピングシステム200は、キャニスタ50の底面56に対するピストン220の下向きの力を制御された状態で解放するように構成されている。この場合も、
図16Cと比較したときに
図16Dでは、キャニスタ50がヨーク22に接触するまでキャニスタ50が上向きに(すなわち先端側方向に)移動し、キャニスタ底面56とヨークカラー24との間の間隔を閉じているのを見ることができる。この場合も、この上向きの移動は、弁軸53をキャニスタ50から出してその静止位置に戻すのに十分な力を少なくとも有するキャニスタ50の戻りばねによって駆動される。しかしながら、この構成では、キャニスタばねは弁軸53を所望の時間内にその静止位置に駆動するために支援を必要とし得る。したがって、
図15に示すように、例えばマウスピース16の戻りばね突出部59上に、弁54に隣接してキャニスタ50を上向きに押すための1つ以上の補助的な戻りばね58が設けられてもよい。前述のように、キャニスタ50はそれがキャニスタ50の更なる移動を阻止するヨーク22に当接するまで先端側方向に移動する。
図16Cの発射位置においてキャニスタ底面56がピストン220に接触すると、キャニスタ50の先端側への移動によりピストン220をリザーバ210内において軸方向に押す。しかしながら、ピストン220を先端側方向に移動させるためには流体を先端側チャンバ214から基端側チャンバ212に送らなければならない。しかし、これはピストンシール250が基端側チャンバ212の内壁に対して密閉している間にチャネル222を通してのみ行うことができるため、ピストン220の軸方向移動は制御される。チャネル222は比較的狭く、流体の流れを制限するので、ピストン220の移動は最初は比較的遅く且つ制御されている。
図13Aに示されるように、先端側チャンバ214内、特にピストンシール250のリング252、254間の流体による下向きの圧力がピストン220の移動を阻止する。
【0079】
しかしながら、ピストンシール250が2つのチャンバ212、214間のテーパ部に到達すると、リザーバ210の内部表面に対するシールが漏れ始め、流体がピストンシール250の外側を通る。その後すぐにピストンシール250は先端側チャンバ214内に送られ、先端側チャンバ214の大きな直径のせいでリザーバ210の内部表面にもはや接触しない。ここで流体はチャンバ212、214間をかなり自由に流れることができ、ピストン220は(ピストンシール250が基端側チャンバ212の内部表面に対して密閉されている第1の時間区分と比較すると)吸入器10の動作の所定時間のこの第2区分でははるかに迅速に軸方向に先端側方向に移動する。事実上、ピストンシール250が基端側チャンバ212を離れて先端側チャンバ214に入るとピストン220は流体迂回路に到達し、この段階では、たとえあったとしても極めてわずかな減衰が生じ、更に、ピストンシール250はチャンバ壁に接触していないため、移動を阻止するピストンシールの摩擦もない。したがって、
図16D及び
図16Eに見られるように(
図16Eは、
図16Dの吸入器10の側面図である)、吸入器10は、吸入器10の使用者の行為とは無関係にキャニスタ50及びキャニスタ弁54をリセットする。この点に関して、吸入器10のリセットはこの場合も自動である。
【0080】
本発明のこの実施形態の動作の最終段階は、この場合も、主ばね20がリロードされ、ここでキャニスタ50の弁54に測定されて入れられている次の用量を分与する準備が整うように、吸入器10の駆動機構がリセットされることである。上述のように、主ばね20の力下でのヨーク22の基端側への移動は、ヨーク足23がキャップ14の支え面15に接触することによって停止される。したがって、ヨーク22をその第1位置に戻すために、使用者はキャップ14を単に回転させて(
図16Aに示すようにキャップ14がマウスピース16を覆っている)閉鎖位置に戻す。これにより支え面15を回転させ、ヨーク足23を上向きに押し、ヨークカラー24を先端側方向に押し、主ばね20を圧縮する。しかしながら、ピストン220(このピストン220は前述のようにキャニスタ50によって先端側方向に軸方向にすでに移動している)の先端側突出端部228がここで(ピストン220をキャニスタ底面56との接触から分離するのに十分な)短い距離だけ移動した主ばねカバー236と当接するため、先端側方向へのピストン220の移動は吸入器本体12の上部部分にある主ばねカバー236によって制限される。したがって、ヨーク22がその最先端側位置まで上昇し、その代わりにリザーバ210が上昇しているため、ピストン220はそれ以上移動することはできない。したがって、ピストン220はリザーバ210に対して基端側に移動し、このため、ピストンシール250は基端側チャンバ212に戻り、
図16Aに示されるように次の作動に備える。これら実施形態の利点は、デバイスのリセット中に圧力解放が行われることである。キャップ14の閉鎖中、シール250は効果的に崩壊し、高応力イベント中におけるダンパー200内の圧力蓄積はなくなる。
【0081】
図17及び
図18に、本発明の更に別の実施形態が示される。これらの図は、前述の実施形態と類似するように動作するがいくつかの態様では異なる構成を有する2つの更なるリニアダンパー300、400を示す。リニアダンパー300、400は、本発明の吸入器10を第1のリニアダンピングシステム200に関して上述したものと同様に動作させる。
【0082】
図17は、リザーバ310の基端部から突き出るピストン部分320を有するリザーバ310を有するリニアダンパー300を示す。ピストン320の基端側部分は、前述の実施形態に関して記載したように吸入器のキャニスタ50を押すためにリザーバ310に対して軸方向に移動可能である。この実施形態のダンピングシステム300は、リザーバ310の先端部から突き出る第2ピストン部分330を含む。先端側ピストン部分330は、(シール350の支援により)リザーバ310の内側に対して密閉するシーリング部分340を有する。シーリング部分340はリザーバ310の基端側チャンバ312をリザーバ310の先端側チャンバ314から流体的に隔離し、シーリング部分340の流出穴332は、上述と同様に、ピストン部分320、330が基端側方向及び先端側方向に軸方向に移動するのを制御するために、基端側チャンバ312と先端側チャンバ314との間において流体の制御された流れを可能にする。
図17の実施形態では、先端側ピストン部分330は、リザーバ310のハウジング内の差込取付具360によってリザーバ310内に密閉されている。
図18は、ダンピングシステム400が、ダンピングシステム400の先端側部分を覆うリザーバ410のハウジング内のクリップ構成460によって先端側ピストン部分430をリザーバ410内に密閉する非常に似た代替的な実施形態を示す。
【0083】
上述のように、本発明の実施形態は、用量を分与した後、使用者による吸入器10との相互作用と無関係に自動的にリセットする吸入器10を有利に提供する。このような吸入器10からの効果的且つ信頼性の高い投与はこれらデバイスの重要な要件であり、用量のばらつきは使用者に提供される投薬量の観点から望ましくないため、これは重要である。本発明の実施形態の吸入器10はこの点に関して非常に効果的である。例えば、
図19を参照すると、ロータリーダンパー実施形態の性能が示されている。グラフのx軸は時間を示し、時間ゼロは、吸入器10から用量を発射するために主ばね20を解放するまさにその時である。グラフのy軸は、キャニスタ50の移動(キャニスタ50の、その静止位置からの変位として測定される)を示す。上述の実施形態に関して記載したように、ヨーク22を移動させて用量を分与するために主ばね20が点68で解放されると、キャニスタ50は点70に、弁54を駆動するためのその最大変位まで迅速に変位される。
図19に見られるように、この変位はほぼ瞬時であり、わずか数ミリ秒である。この変位によって弁軸53がキャニスタ50内に押し込まれると、弁軸53はその発射点に到達する(実際には発射点を越えて移動する)。総用量が確実に分与されるために、弁54は十分な時間(発射点未満の時間、TBF60として知られる)にわたり発射点において又は発射点を越えて開いたままにすべきである。この実施形態では、TBFは、最低限、275msを上回るべきであり、これは線80によって示される。
図19に示される実施形態はこの最小時間を大幅に超え、弁54を約800msの点72の後まで開いたままにする。これは上述したように、ロータリーダンパー100構成を用い、ヨークプレート130のカムフォロア歯132を介してキャニスタ50の移動を制御するロッド120の減衰によって達成される。これらの位置は、
図19に、TBF60の下の第1の時間区分64、及びTBF62の上の第2の時間区分66として示される。上述のように、カムフォロア歯132がロッド120のカムトラック124の直線部分に到達すると、ロッド120は、
図19に点72から点74までで示されるようなこの第2の時間区分において先端側方向に軸方向にはるかにより迅速に移動することができる。この場合も、この動作段階におけるロッドの移動は非常に迅速であり、弁54が第1の時間区分にわたって開かれたままにされた後、キャニスタ50が静止位置に素早く戻ることを可能にする。弁54は上昇工程中(すなわち、キャニスタ50が位置72から位置74に向かって移動する際)にその測定チャンバに次の用量を補充する。弁54が補充のために開かれることが必要な時間の理想的範囲が存在し、弁54を(例えば、それが押し込まれ、用量が送達されたときに大気に)長時間開いたままにすると次の用量に有害な影響を及ぼす可能性がある。この補充時間、TTR62は、
図19の実施形態では、線82によって示されるように例えば2秒未満にすべきである。
図19に示されるように、この実施形態は、補充が悪影響を及ぼし得る前の最大許容時間に十分に先だってキャニスタ50がその閉鎖構成に迅速に移行する際に特に有効である。実際、
図19に示されるこの実施形態は、
図20に示される、TBFがTTRに実質的に等しく且つ迂回が発射点に一致する理想的性能に非常に近似して動作する。
【0084】
したがって、本発明の実施形態による吸入器は、先行技術の欠点の少なくとも1つに対処し、キャニスタ及びその弁の自動リセットを提供し、吸入器の性能並びにデバイスの寿命全体にわたる用量間のその信頼性及び均一性を向上させる。