(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-20
(45)【発行日】2023-06-28
(54)【発明の名称】電気光学ディスプレイを駆動する方法
(51)【国際特許分類】
G09G 3/34 20060101AFI20230621BHJP
G02F 1/167 20190101ALI20230621BHJP
G02F 1/16757 20190101ALI20230621BHJP
G02F 1/16766 20190101ALI20230621BHJP
G02F 1/1681 20190101ALI20230621BHJP
G09G 3/20 20060101ALI20230621BHJP
【FI】
G09G3/34 C
G02F1/167
G02F1/16757
G02F1/16766
G02F1/1681
G09G3/20 622J
G09G3/20 632F
G09G3/20 660J
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021017248
(22)【出願日】2021-02-05
(62)【分割の表示】P 2019554522の分割
【原出願日】2018-04-04
【審査請求日】2021-02-05
(32)【優先日】2017-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500080214
【氏名又は名称】イー インク コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ペリー-イヴス エミリー
(72)【発明者】
【氏名】アナ エル. ラッテス
(72)【発明者】
【氏名】ケネス アール. クラウンス
(72)【発明者】
【氏名】チー-シアン ホー
【審査官】橋本 直明
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-064421(JP,A)
【文献】特開2016-191961(JP,A)
【文献】特開2009-265768(JP,A)
【文献】特開2000-352950(JP,A)
【文献】国際公開第2015/017624(WO,A1)
【文献】特開2008-164793(JP,A)
【文献】特開2014-074889(JP,A)
【文献】特開2014-199466(JP,A)
【文献】特表2008-529052(JP,A)
【文献】特表2009-538451(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 3/34
G02F 1/167
G02F 1/16757
G02F 1/16766
G02F 1/1681
G09G 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の行および複数の列に位置付けられている複数のディスプレイピクセルを有する電気光学ディスプレイであって、前記電気光学ディスプレイは、
前記複数のディスプレイピクセルを少なくとも第1の群のディスプレイピクセルと第2の群のディスプレイピクセルとに分割する手段と、
第1の電圧波形を前記第1の群のディスプレイピクセルに印加し、第2の電圧波形を前記第2の群のディスプレイピクセルに印加するように構成されているコントローラであって、前記コントローラは、前記第1の電圧波形が前記第1の群のディスプレイピクセルに印加される第1の時間と、前記第2の電圧波形が前記第2の群のディスプレイピクセルに印加される第2の時間との間にオフセットが存在するように、異なる更新時間に前記第1の電圧波形および前記第2の電圧波形を印加することにより、前記電気光学ディスプレイにわたって平滑な視覚的な遷移効果を生成するようにさらに構成されている、コントローラと
を備え
、
前記第1の電圧波形および前記第2の電圧波形のそれぞれは、駆動区分とエッジクリア区分とを有し、前記第1の電圧波形および前記第2の電圧波形は、時間的に重複するが、前記第2の電圧波形の駆動区分は、前記第1の電圧波形の駆動区分より少なくとも1フレーム遅れる、電気光学ディスプレイ。
【請求項2】
前記コントローラは、フレームオフセットを提供するようにさらに構成されており、前記フレームオフセットは、設計された遷移効果を達成するためにコード化されている、請求項1に記載の電気光学ディスプレイ。
【請求項3】
複数の行および複数の列に位置付けられている複数のディスプレイピクセルを有する電気光学ディスプレイであって、前記電気光学ディスプレイは、
前記複数のディスプレイピクセルを少なくとも第1の群のディスプレイピクセルと第2の群のディスプレイピクセルとに分割する手段と、
第1の電圧波形を前記第1の群のディスプレイピクセルに印加し、第2の電圧波形を前記第2の群のディスプレイピクセルに印加するように構成されているコントローラであって、前記コントローラは、前記第1の電圧波形が前記第1の群のディスプレイピクセルに印加される第1の時間と、前記第2の電圧波形が前記第2の群のディスプレイピクセルに印加される第2の時間との間にオフセットが存在するように、異なる更新時間に前記第1の電圧波形および前記第2の電圧波形を印加することにより、前記電気光学ディスプレイにわたって平滑な視覚的な遷移効果を生成するようにさらに構成されている、コントローラと
を備え、
前記コントローラは、フレームオフセットを提供するようにさらに構成されており、前記フレームオフセットは、設計された遷移効果を達成するためにコード化されており、
前記フレームオフセットは、前記設計された遷移効果が前記電気光学ディスプレイ上で進捗するにつれて増加するように構成されている
、電気光学ディスプレイ。
【請求項4】
複数の行および複数の列に位置付けられている複数のディスプレイピクセルを有する電気光学ディスプレイであって、前記電気光学ディスプレイは、
前記複数のディスプレイピクセルを少なくとも第1の群のディスプレイピクセルと第2の群のディスプレイピクセルとに分割する手段と、
第1の電圧波形を前記第1の群のディスプレイピクセルに印加し、第2の電圧波形を前記第2の群のディスプレイピクセルに印加するように構成されているコントローラであって、前記コントローラは、前記第1の電圧波形が前記第1の群のディスプレイピクセルに印加される第1の時間と、前記第2の電圧波形が前記第2の群のディスプレイピクセルに印加される第2の時間との間にオフセットが存在するように、異なる更新時間に前記第1の電圧波形および前記第2の電圧波形を印加することにより、前記電気光学ディスプレイにわたって平滑な視覚的な遷移効果を生成するようにさらに構成されている、コントローラと
を備え、
前記コントローラは、前記複数のディスプレイピクセルを少なくとも前記第1の群のディスプレイピクセルと前記第2の群のディスプレイピクセルとに分割することに適応させるように前記コントローラに記憶された前記複数のディスプレイピクセルの現在の状態を変更するために、偽の更新を実行するようにさらに構成されている
、電気光学ディスプレイ。
【請求項5】
前記第1の群のディスプレイピクセルおよび前記第2の群のディスプレイピクセルのそれぞれは、ディスプレイピクセルの少なくとも1つの行を有する、請求項1に記載の電気光学ディスプレイ。
【請求項6】
前記電気光学ディスプレイは、電気泳動材料の層を有する電気泳動ディスプレイである、請求項1に記載の電気光学ディスプレイ。
【請求項7】
前記電気泳動材料は、流体中に配置されている複数の荷電粒子を備え、前記複数の荷電粒子は、電場の影響のもとで前記流体を通して移動することが可能である、請求項
6に記載の電気光学ディスプレイ。
【請求項8】
前記複数の荷電粒子および前記流体は、複数のカプセルまたは複数のマイクロセル内に閉じ込められている、請求項
7に記載の電気光学ディスプレイ。
【請求項9】
前記複数の荷電粒子および前記流体は、ポリマー材料を備えている連続相によって包囲されている複数の別々の液滴として存在する、請求項
7に記載の電気光学ディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の参照)
本願は、米国仮出願第62/481,339号(2017年4月4日出願)に関連する。上記出願の全開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、電気光学ディスプレイ、特に、双安定性電気光学ディスプレイを駆動する方法に関する。より具体的には、本発明は、1つの画像から別のものへの遷移中の望ましくない視覚効果を低減させることが意図される駆動方法に関する。本発明は、特に、排他的ではないが、1つ以上のタイプの荷電粒子が液体中に懸濁され、ディスプレイの外観を変化させるために電場の影響のもとで液体を通して移動させられる粒子ベースの電気泳動ディスプレイとの使用を意図される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
上で議論されるように、電気泳動ディスプレイにおける遷移の明滅を低減させるために、包括的限定および他の駆動スキームを使用する種々の技法が、公知である。しかしながら、ある場合、または、ある製品および/または用途では、平滑な外観を生成するために、各遷移画像においてディスプレイを完全にリフレッシュすることが、望ましくあり得る。
【0004】
ここで提供されるものは、複数のディスプレイピクセルを有する電気光学ディスプレイのための駆動方法であり、方法は、複数のディスプレイピクセルをピクセルの複数の群に分割することと、少なくとも1つの波形構造をピクセルの複数の群に印加することであって、少なくとも1つの波形構造は、ピクセルの複数の群を更新するための駆動区分を有する、ことと、ディスプレイピクセルの1つの群のみが任意の所与の時間に駆動区分を完了するような連続的方式でピクセルの複数の群を更新することとを含む。
例えば、本願は以下の項目を提供する。
(項目1)
複数の行および列に位置付けられた複数のディスプレイピクセルを有する電気光学ディスプレイを駆動する方法であって、前記方法は、
前記複数のディスプレイピクセルを複数の群に分割することと、
少なくとも1つの波形をピクセルの各群に印加することによって、連続的方式で前記ピクセルの複数の群を更新することと
を含み、
ピクセルの少なくとも2つの群は、同時に更新される、方法。
(項目2)
前記ピクセルの複数の群の各々は、ディスプレイピクセルの少なくとも1つの行を有する、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記ピクセルの複数の群を更新することは、前記ピクセルの複数の群の更新時間に互いに少なくとも1つのフレームだけ間隔を保たせることを含む、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記電気光学ディスプレイは、電気泳動材料の層を有する電気泳動ディスプレイである、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記電気泳動材料は、流体中に配置された複数の荷電粒子を備え、前記複数の荷電粒子は、電場の影響のもとで前記流体を通して移動することが可能である、項目4に記載の方法。
(項目6)
前記荷電粒子および前記流体は、複数のカプセルまたはマイクロセル内に閉じ込められている、項目5に記載の方法。
(項目7)
前記電気泳動材料は、マイクロセル内に閉じ込められた染色された流体中の単一のタイプの電気泳動粒子を備えている、項目6に記載の方法。
(項目8)
前記荷電粒子および前記流体は、ポリマー材料を備えている連続相によって包囲された複数の別々の液滴として存在する、項目7に記載の方法。
(項目9)
前記流体は、ガス状である、項目8に記載の方法。
(項目10)
複数のディスプレイピクセルを有する電気光学ディスプレイを駆動する方法であって、前記方法は、
前記複数のディスプレイピクセルをピクセルの複数の群に分割することと、
少なくとも1つの波形構造を前記ピクセルの複数の群に印加することであって、前記少なくとも1つの波形構造は、前記ピクセルの複数の群を更新するための駆動区分を有する、ことと、
ディスプレイピクセルの1つの群のみが任意の所与の時間に前記駆動区分を完了するような連続的方式で前記ピクセルの複数の群を更新することと
を含む、方法。
(項目11)
前記少なくとも1つの波形構造は、光学アーチファクトを除去するためのエッジクリア区分をさらに備えている、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記更新するステップは、時間において少なくとも1つのフレームを共有する前記ピクセルの複数の群のための前記エッジクリア区分を有することをさらに含む、項目11に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0005】
本願の種々の側面および実施形態が、以下の図を参照して説明されるであろう。図は、必ずしも縮尺通りに描かれないことを理解されたい。複数の図に現れるアイテムは、それらが現れる全ての図において、同一の参照番号によって示される。
【0006】
【
図1】
図1は、スクロールバーを用いて更新されているディスプレイ画面の例示的実施形態を図示する。
【0007】
【
図2】
図2は、拡大リングを用いて更新されているディスプレイ画面の例示的実施形態を図示する。
【0008】
【
図3-1】
図3A-3Cは、本明細書に提示される主題による、ディスプレイを更新するために採用され得る例示的波形である。
【0009】
【
図3-2】
図3Dは、本明細書に提示される主題による、ディスプレイピクセルの複数の群およびこれらの群を更新することから生じ得るエッジ効果を図示する図面である。
【0010】
【
図4】
図4は、本明細書に提示される主題による、平滑な更新のための16個の遷移を示す波形エンコードの例を図示する。
【0011】
【
図5】
図5は、本明細書に提示される主題を使用して、上部から底部へのスクロールバー効果を用いて白色-黒色遷移を生成するために要求されるステップを詳述する例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の方法が使用される電気光学ディスプレイは、多くの場合、電気光学材料が固体の外面を有するという意味で固体である電気光学材料を含むが、材料は、内部液体またはガス充填空間を有し得、多くの場合、そうである。固体電気光学材料を使用するそのようなディスプレイは、以降では、便宜上、「固体電気光学ディスプレイ」と称され得る。
【0013】
材料またはディスプレイに適用されるような用語「電気光学」は、画像化技術分野におけるその従来の意味で使用され、少なくとも1つの光学特性において異なる第1および第2の表示状態を有する材料であり、材料への電場の印加によって、その第1からその第2の表示状態に変化させられる材料を指すために、本明細書で使用される。光学特性は、典型的には、人間の眼に知覚可能な色であるが、それは、光学透過率、反射率、ルミネッセンス、または、機械読み取りのために意図されるディスプレイの場合、可視範囲外の電磁波長の反射率における変化の意味における擬似色等の別の光学特性であり得る。
【0014】
用語「グレー状態」は、画像化技術分野におけるその従来の意味で本明細書で使用され、ピクセルの2つの極限光学状態の中間の状態を指し、必ずしもこれらの2つの極限状態の間の黒色-白色遷移を示唆するわけではない。例えば、下で参照される特許および公開済出願のうちのいくつかは、極限状態が白色および濃青色であり、したがって、中間の「グレー状態」が実際には薄青色になるであろう電気泳動ディスプレイを説明している。実際、既述のように、2つの極限状態の間の遷移は、色の変化では全くないこともある。用語「グレーレベル」は、2つの極限光学状態を含むピクセルの可能な光学状態を表すために本明細書で使用される。
【0015】
用語「双安定性」および「双安定」は、当技術分野におけるそれらの従来の意味で使用され、少なくとも1つの光学特性が異なる第1および第2の表示状態を有する表示要素を備えているディスプレイを指し、それは、その第1または第2の表示状態のうちのいずれかをとるように、有限持続時間のアドレッシングパルスを用い、任意の所与の要素が駆動され、アドレッシングパルスが終了した後、その状態が、表示要素の状態を変化させるために要求されるアドレッシングパルスの最小持続時間の少なくとも数倍、例えば、少なくとも4倍、持続するようなものである。公開済米国特許第2002/0180687号では、グレースケールが可能ないくつかの粒子ベースの電気泳動ディスプレイが、それらの極限黒色および白色状態においてのみならず、それらの中間グレー状態においても安定し、同じことが、いくつかの他のタイプの電気光学ディスプレイにも当てはまることが示されている。このタイプのディスプレイは、適切には、双安定性ではなく、「多安定性」と呼ばれるが、便宜上、用語「双安定性」が、本明細書では、双安定性および多安定性ディスプレイの両方を対象とするために使用され得る。
【0016】
用語「インパルス」は、時間に対する電圧の積分のその従来の意味で本明細書で使用される。しかしながら、いくつかの双安定性電気光学媒体は、電荷トランスデューサとしての機能を果たし、そのような媒体では、インパルスの代替定義、すなわち、経時的電流の積分(印加される総電荷に等しい)が、使用され得る。インパルスの適切な定義は、媒体が電圧-時間インパルストランスデューサの機能を果たすか、または電荷インパルストランスデューサとしての機能を果たすかに応じて使用されるべきである。
【0017】
下記の議論の多くは、初期グレーレベルから最終グレーレベル(初期グレーレベルと異なることも、そうではないこともある)への遷移を通して電気光学ディスプレイの1つ以上のピクセルを駆動する方法に焦点を当てるであろう。用語「波形」は、1つの具体的初期グレーレベルから具体的最終グレーレベルへの遷移をもたらすために使用される時間に対する電圧の曲線全体を表すために使用されるであろう。典型的には、そのような波形は、複数の波形要素を備え、これらの要素は、本質的に長方形であり(すなわち、所与の要素が、ある期間にわたる一定電圧の印加を備えている)、要素は、「パルス」または「駆動パルス」と呼ばれ得る。用語「駆動スキーム」は、具体的ディスプレイのためのグレーレベル間の全ての可能な遷移をもたらすために十分な波形の組を表す。ディスプレイは、2つ以上の駆動スキームを利用し得、例えば、前述の米国特許第7,012,600号は、駆動スキームが、ディスプレイの温度またはその寿命の間に動作する時間等のパラメータに応じて、修正される必要があり得ることを教示し、したがって、ディスプレイは、異なる温度等で使用される複数の異なる駆動スキームを提供され得る。このように使用される駆動スキームの組は、「関連駆動スキームの組」と称され得る。下で言及されるディスプレイを駆動する方法出願のうちのいくつかに説明されるように、2つ以上の駆動スキームを同一のディスプレイの異なるエリア上で同時に使用することも可能であり、このように使用される駆動スキームの組は、「同時駆動スキームの組」と称され得る。
【0018】
いくつかのタイプの電気光学ディスプレイが、公知である。1つのタイプの電気光学ディスプレイは、例えば、米国特許第5,808,783号、第5,777,782号、第5,760,761号、第6,054,071号、6,055,091号、第6,097,531号、第6,128,124号、第6,137,467号、および第6,147,791号に説明されるような回転二色部材タイプである(このタイプのディスプレイは、多くの場合、「回転二色ボール」ディスプレイと称されるが、上で言及される特許のうちのいくつかでは、回転部材が球状ではないので、用語「回転二色部材」がより正確なものとして好ましい)。そのようなディスプレイは、異なる光学特性を伴う2つ以上の区分と、内部双極子とを有する、多数の小さい本体(典型的には、球状または円筒形)を使用する。これらの本体は、マトリクス内の液体で充填された液胞内に懸濁され、液胞は、本体が自由に回転するように、液体で充填されている。ディスプレイの外観は、それに電場を印加し、したがって、本体を種々の位置に回転させ、視認表面を通して見られる本体の区分を変動させることによって、変更される。このタイプの電気光学媒体は、典型的には、双安定性である。
【0019】
別のタイプの電気光学ディスプレイは、エレクトロクロミック媒体、例えば、少なくとも部分的に半導体金属酸化物から形成される電極と、電極に付着させられた可逆的色変化が可能な複数の染色分子とを備えているナノクロミックフィルムの形態におけるエレクトロクロミック媒体を使用する。例えば、O’Regan,B.、他、Nature 1991,353,737,およびWood,D.,Information Display,18(3),24(2002年3月)を参照されたい。Bach,U.、他、Adv.Mater.,2002,14(11),845も参照されたい。このタイプのナノクロミックフィルムは、例えば、米国特許第6,301,038号、第6,870,657号、および第6,950,220号においても説明されている。このタイプの媒体も、典型的には、双安定性である。
【0020】
別のタイプの電気光学ディスプレイは、Philipsによって開発され、Hayes,R.A.、他、「Video-Speed Electronic Paper Based on Electrowetting」,Nature,425,383-385(2003年)に説明されているエレクトロウェッティングディスプレイである。米国特許第7,420,549号では、そのようなエレクトロウェッティングディスプレイが双安定性にされ得ることが示されている。
【0021】
長年にわたり研究および開発の関心の対象である1つのタイプの電気光学ディスプレイは、粒子ベースの電気泳動ディスプレイであり、複数の荷電粒子が、電場の影響のもとで流体を通して移動する。電気泳動ディスプレイは、液晶ディスプレイと比較したとき、良好な輝度およびコントラスト、広視野角、状態双安定、ならびに低電力消費の属性を有することができる。それにもかかわらず、これらのディスプレイの長期の画像品質に関する問題は、その広範な使用を妨げている。例えば、電気泳動ディスプレイを構成する粒子は、沈降する傾向があり、これらのディスプレイに対する不適正な運用寿命をもたらす。
【0022】
上記のように、電気泳動媒体は、流体の存在を要求する。殆どの従来技術の電気泳動媒体では、この流体は、液体であるが、電気泳動媒体は、ガス状流体を使用して生産されることができる(例えば、Kitamura,T.,他、「Electrical toner movement for electronic paper-like display」,IDW Japan,2001,Paper HCS1-1、およびYamaguchi,Y.,他.、「Toner display using insulative particles charged triboelectrically」,IDW Japan,2001,Paper AMD4-4参照)。米国特許第7,321,459号および第7,236,291号も参照されたい。そのようなガスベースの電気泳動媒体は、例えば、媒体が垂直平面に配置される看板において、媒体がそのような沈降を可能にする向きにおいて使用されると、粒子沈降に起因して液体ベースの電気泳動媒体と同一のタイプの問題の影響を受けやすいと考えられる。実際、粒子沈降は、電気泳動粒子のより高速の沈降を可能にする流体の粘度と比較して、ガス状懸濁流体のより低い粘度により、液体ベースの電気泳動媒体よりもガスベースの電気泳動媒体において深刻な問題であると考えられる。
【0023】
Massachusetts Institute of Technology(MIT)、E Ink Corporation、E Ink California,LLC.および関連企業に譲渡された、またはそれらの名義の多数の特許および出願が、カプセル化電気泳動媒体、マイクロセル電気泳動媒体、および他の電気光学媒体に使用される種々の技術を説明している。カプセル化電気泳動媒体は、多数の小型カプセルを備え、それらの各々自体は、電気泳動により移動可能な粒子を流体媒体中に含む内相と、内相を包囲するカプセル壁とを備えている。典型的には、カプセルは、それ自体が、2つの電極間に位置付けられるコヒーレント層を形成するポリマー結合剤内に保持される。マイクロセル電気泳動ディスプレイでは、荷電粒子および流体は、マイクロカプセル内にカプセル化されないが、代わりに、キャリア媒体、典型的には、ポリマーフィルム内に形成される複数の空洞内に保持される。これらの特許および出願に説明される技術は、以下を含む。
(a)電気泳動粒子、流体、および流体添加物(例えば、米国特許第7,002,728号および第7,679,814号参照)(b)カプセル、結合剤、およびカプセル化プロセス(例えば、米国特許第6,922,276号および第7,411,719号参照)
(c)マイクロセル構造、壁材料、およびマイクロセルを形成する方法(例えば、米国特許第7,072,095号および第9,279,906号参照)
(d)マイクロセルを充填およびシールする方法(例えば、米国特許第7,144,942号および第7,715,088号参照)
(e)電気光学材料を含むフィルムおよびサブアセンブリ(例えば、米国特許第6,982,178号および第7,839,564号参照)
(f)バックプレーン、接着剤層、および他の補助層、ならびにディスプレイにおいて使用される方法(例えば、米国特許第7,116,318号および第7,535,624号参照)
(g)色形成および色調節(例えば、米国特許第7,075,502号および第7,839,564号参照)
(h)ディスプレイを駆動する方法(例えば、米国特許第5,930,026号、第6,445,489号、第6,504,524号、第6,512,354号、第6,531,997号、第6,753,999号、第6,825,970号、第6,900,851号、第6,995,550号、第7,012,600号、第7,023,420号、第7,034,783号、第7,061,166号、第7,061,662号、第7,116,466号、第7,119,772号、第7,177,066号、第7,193,625号、第7,202,847号、第7,242,514号、第7,259,744号、第7,304,787号、第7,312,794号、第7,327,511号、第7,408,699号、第7,453,445号、第7,492,339号、第7,528,822号、第7,545,358号、第7,583,251号、第7,602,374号、第7,612,760号、第7,679,599号、第7,679,813号、第7,683,606号、第7,688,297号、第7,729,039号、第7,733,311号、第7,733,335号、第7,787,169号、第7,859,742号、第7,952,557号、第7,956,841号、第7,982,479号、第7,999,787号、第8,077,141号、第8,125,501号、第8,139,050号、第8,174,490号、第8,243,013号、第8,274,472号、第8,289,250号、第8,300,006号、第8,305,341号、第8,314,784号、第8,373,649号、第8,384,658号、第8,456,414号、第8,462,102号、第8,514,168号、第8,537,105号、第8,558,783号、第8,558,785号、第8,558,786号、第8,558,855号、第8,576,164号、第8,576,259号、第8,593,396号、第8,605,032号、第8,643,595号、第8,665,206号、第8,681,191号、第8,730,153号、第8,810,525号、第8,928,562号、第8,928,641号、第8,976,444号、第9,013,394号、第9,019,197号、第9,019,198号、第9,019,318号、第9,082,352号、第9,171,508号、第9,218,773号、第9,224,338号、第9,224,342号、第9,224,344号、第9,230,492号、第9,251,736号、第9,262,973号、第9,269,311号、第9,299,294号、第9,373,289号、第9,390,066号、第9,390,661号、および第9,412,314、ならびに米国特許出願公開第2003/0102858号、第2004/0246562号、第2005/0253777号、第2007/0091418号、第2007/0103427号、第2007/0176912号、第2008/0024429号、第2008/0024482号、第2008/0136774号、第2008/0291129号、第2008/0303780号、第2009/0174651号、第2009/0195568号、第2009/0322721号、第2010/0194733号、第2010/0194789号、第2010/0220121号、第2010/0265561号、第2010/0283804号、第2011/0063314号、第2011/0175875号、第2011/0193840号、第2011/0193841号、第2011/0199671号、第2011/0221740号、第2012/0001957号、第2012/0098740号、第2013/0063333号、第2013/0194250号、第2013/0249782号、第2013/0321278号、第2014/0009817号、第2014/0085355号、第2014/0204012号、第2014/0218277号、第2014/0240210号、第2014/0240373号、第2014/0253425号、第2014/0292830号、第2014/0293398号、第2014/0333685号、第2014/0340734号、第2015/0070744号、第2015/0097877号、第2015/0109283号、第2015/0213749号、第2015/0213765号、第2015/0221257号、第2015/026
2255号、第2015/0262551号、第2016/0071465号、第2016/0078820号、第2016/0093253号、第2016/0140910号、および第2016/0180777号参照)(i)ディスプレイの用途(例えば、米国特許第7,312,784号および第8,009,348号参照)
(j)米国特許第6,241,921号および米国特許出願公開第2015/0277160号に説明されるような非電気泳動ディスプレイならびにディスプレイ以外のカプセル化およびマイクロセル技術の用途(例えば、米国特許第7,615,325号ならびに米国特許出願公開第2015/0005720号および第2016/0012710号参照)。
【0024】
前述の特許および出願の多くは、カプセル化電気泳動媒体中の別々のマイクロカプセルを包囲する壁が、連続相と置換されることができ、したがって、いわゆるポリマー分散電気泳動ディスプレイを生産し得、ポリマー分散電気泳動ディスプレイにおいて、電気泳動媒体は、電気泳動流体の複数の別々の液滴と、ポリマー材料の連続相とを備えていることを認識し、そのようなポリマー分散電気泳動ディスプレイ内の電気泳動流体の別々の液滴が、いかなる別々のカプセル膜も各個々の液滴に関連付けられない場合でも、カプセルまたはマイクロカプセルと見なされ得ることを認識する。例えば、前述の米国特許第6,866,760号を参照されたい。故に、本願の目的のために、そのようなポリマー分散電気泳動媒体は、カプセル化電気泳動媒体の亜種と見なされる。
【0025】
関連タイプの電気泳動ディスプレイは、いわゆる「マイクロセル電気泳動ディスプレイ」である。マイクロセル電気泳動ディスプレイでは、荷電粒子および流体は、マイクロカプセル内にカプセル化されないが、代わりに、キャリア媒体、典型的には、ポリマーフィルム内に形成される複数の空洞内に保持される。例えば、米国特許第6,672,921号および第6,788,449号を参照されたい(両方は、Sipix Imaging,Incに譲渡されている)。
【0026】
電気泳動媒体は、多くの場合、不透明であり(例えば、多くの電気泳動媒体では、粒子は、ディスプレイを通した可視光の透過を実質的に遮断する)、反射モードで動作するが、多くの電気泳動ディスプレイは、1つのディスプレイ状態が実質的に不透明であり、1つが光透過性である、いわゆる「シャッタ」モードで動作するように作製されることができる。例えば、米国特許第5,872,552号、第6,130,774号、第6,144,361号、第6,172,798号、第6,271,823号、第6,225,971号、および第6,184,856号を参照されたい。誘電泳動ディスプレイは、電気泳動ディスプレイと類似するが、電場強度の変動に依拠し、類似するモードで動作することができる。米国特許第4,418,346号を参照されたい。他のタイプの電気光学ディスプレイも、シャッタモードで動作することが可能であり得る。シャッタモードで動作する電気光学媒体は、フルカラーディスプレイのための多層構造において有用であり得、そのような構造では、ディスプレイの視認面に隣接する少なくとも1つの層は、シャッタモードで動作し、視認面からより遠くにある第2の層を露出するか、または隠す。
【0027】
カプセル化電気泳動ディスプレイは、典型的には、伝統的な電気泳動デバイスのクラスタリングおよび沈降故障モードに悩まされることがなく、多種多様な可撓な基板上、および剛体基板上にディスプレイを印刷またはコーティングする能力等のさらなる利点を提供する。(単語「印刷」の使用は、限定ではないが、パッチダイコーティング、スロットまたは押出コーティング、スライドまたはカスケードコーティング、カーテンコーティング等の前計量コーティング、ナイフオーバーロールコーティング、フォワードおよびリバースロールコーティング等のロールコーティング、グラビアコーティング、浸漬コーティング、スプレーコーティング、メニスカスコーティング、スピンコーティング、ブラシコーティング、エアナイフコーティング、シルクスクリーン印刷プロセス、静電印刷プロセス、熱印刷プロセス、インクジェット印刷プロセス、電気泳動堆積(米国特許第7,339,715号参照)、ならびに他の類似する技法を含むあらゆる形態の印刷およびコーティングを含むことを意図している。)したがって、結果として生じるディスプレイは、可撓であり得る。さらに、ディスプレイ媒体は(種々の方法を使用して)印刷され得るので、ディスプレイ自体は、安価に作製されることができる。
【0028】
他のタイプの電気光学媒体も、本発明のディスプレイにおいて使用され得る。
【0029】
粒子ベースの電気泳動ディスプレイおよび類似する挙動を示す他の電気光学ディスプレイ(そのようなディスプレイは、以降では、便宜上、「インパルス駆動ディスプレイ」と称され得る)の双安定性または多安定性挙動は、従来の液晶(「LC」)ディスプレイのそれと著しく対照的である。ねじれネマティック液晶は、双または多安定性ではないが、電圧トランスデューサとしての機能を果たし、所与の電場をそのようなディスプレイのピクセルに印加することは、ピクセルに以前に存在したグレーレベルにかかわらず、ピクセルに特定のグレーレベルを生産する。さらに、LCディスプレイは、一方向(非透過性または「暗」から透過性または「明」)にのみ駆動され、より明るい状態からより暗い状態への逆遷移は、電場を低減または排除することによってもたらされる。最後に、LCディスプレイのピクセルのグレーレベルは、電場の極性に敏感ではなく、その大きさにのみ敏感であり、実際、技術的理由から、商業的LCディスプレイは、通常、頻繁な間隔で駆動場の極性を逆転させる。対照的に、双安定性電気光学ディスプレイは、第一近似に対してインパルストランスデューサとしての機能を果たし、ピクセルの最終状態は、印加される電場およびこの場が印加される時間のみならず、電場の印加に先立つピクセルの状態にも依存し得る。
【0030】
使用される電気光学媒体が双安定性であるかどうかにかかわらず、高分解能ディスプレイを得るために、ディスプレイの個々のピクセルは、隣接ピクセルからの干渉を伴わずに、アドレス可能でなければならない。この目的を達成するための1つの方法は、少なくとも1つの非線形要素(トランジスタまたはダイオード等)が各ピクセルに関連付けられた非線形要素のアレイを提供し、「アクティブマトリクス」ディスプレイを生成することである。1つのピクセルをアドレスするアドレッシングまたはピクセル電極は、関連付けられた非線形要素を通して、適切な電圧源に接続される。典型的には、非線形要素がトランジスタであるとき、ピクセル電極は、トランジスタのドレインに接続され、この配列は、以下の説明において仮定されるが、これは、本質的に恣意的であり、ピクセル電極は、トランジスタのソースにも接続され得る。従来、高分解能アレイでは、ピクセルは、任意の特定のピクセルが、1つの規定された行および1つの規定された列の交点によって固有に画定されるように、行および列の2次元アレイで配列される。各列内の全てのトランジスタのソースは、単一列電極に接続される一方、各行内の全てのトランジスタのゲートは、単一行電極に接続され、再び、行へのソースおよび列へのゲートの割り当ては、従来のものであるが、本質的に恣意的であり、所望に応じて、逆転され得る。行電極は、行ドライバに接続され、行ドライバは、任意の所与の瞬間において1つの行のみが選択されること、すなわち、選択された行内の全てのトランジスタが伝導性であることを確実にするような電圧が選択された行電極に印加されるが、これらの選択されていない行内の全てのトランジスタが非伝導性のままであることを確実にするような電圧が全ての他の行に印加されることを本質的に確実にする。列電極は、列ドライバに接続され、列ドライバは、選択された行内のピクセルをそれらの所望の光学状態に駆動するための選択された電圧を種々の列電極にかける。(前述の電圧は、従来、電気光学媒体の非線形アレイと反対側に提供され、ディスプレイ全体にわたって延びている共通正面電極に対するものである。)「ラインアドレス時間」として公知の事前に選択された間隔の後、選択された行は、選択解除され、次の行が、選択され、列ドライバへの電圧は、ディスプレイの次のラインが書き込まれるように変更される。このプロセスは、ディスプレイ全体が行毎様式で書き込まれるように繰り返される。
【0031】
そのようなインパルス駆動電気光学ディスプレイをアドレスするための理想的方法は、いわゆる「総合グレースケール画像フロー」であろうと最初に考えられ得、このフローにおいて、コントローラは、各ピクセルがその初期グレーレベルからその最終グレーレベルに直接遷移するように、画像の各書き込みを配列する。しかしながら、不可避的に、インパルス駆動ディスプレイに画像を書きこむことにおいていくつかの誤差が存在する。実践において遭遇されるいくつかのそのような誤差は、以下を含む。(a)以前の状態依存性;少なくともいくつかの電気光学媒体を用いると、ピクセルを新しい光学状態に切り替えるために要求されるインパルスは、現在および所望の光学状態のみならず、ピクセルの以前の光学状態にも依存する。
(b)滞留時間依存性;少なくともいくつかの電気光学媒体を用いると、ピクセルを新しい光学状態に切り替えるために要求されるインパルスは、ピクセルがその種々の光学状態において費やした時間に依存する。この依存性の精密な性質は、あまり理解されていないが、一般に、より多くのインパルスが、ピクセルがその現在の光学状態にあったものより長く要求される。
(c)温度依存性;ピクセルを新しい光学状態に切り替えるために要求されるインパルスは、温度に大きく依存する。
(d)湿度依存性;ピクセルを新しい光学状態に切り替えるために要求されるインパルスは、少なくともいくつかのタイプの電気光学媒体を用いると、周囲湿度に依存する。
(e)機械的均一性;ピクセルを新しい光学状態に切り替えるために要求されるインパルスは、ディスプレイ内の機械的変動、例えば、電気光学媒体または関連付けられる積層接着剤の厚さの変動によって影響され得る。他のタイプの機械的非均一性も、媒体の異なる製造バッチ間の不可避な変動、製造公差、および材料変動から生じ得る。
(f)電圧誤差;ピクセルに印加される実際のインパルスは、ドライバによって送達される電圧における不可避のわずかな誤差により、理論的に印加されるものと不可避的にわずかに異なるであろう。
【0032】
総合グレースケール画像フローは、「誤差の蓄積」現象に悩まされる。例えば、温度依存性は、各遷移において、正方向に0.2L*(L*は、以下の通常のCIE定義を有し:
L*=116(R/R0)1/3-16
式中、Rは、反射率であり、R0は、標準反射率値である)誤差をもたらすことを想像する。50回の遷移後、この誤差は、10L*まで蓄積するであろう。おそらく、より現実的には、ディスプレイの理論的反射率と実際の反射率との間の差異の観点から表される各遷移における平均誤差が、±0.2L*であると仮定する。100回の連続遷移後、ピクセルは、2L*のそれらの予期される状態から平均偏差を示し、そのような偏差は、あるタイプの画像において平均観察者に明白である。
【0033】
誤差現象のこの蓄積は、温度に起因する誤差のみならず、上で列挙される全てのタイプの誤差にも適用される。前述の米国特許第7,012,600号に説明されるように、そのような誤差の補償が、可能であるが、限定された精度までにすぎない。例えば、温度誤差は、温度センサおよびルックアップテーブルを使用することによって補償されることができるが、温度センサは、限定された分解能を有し、電気光学媒体のそれとわずかに異なる温度を読み取り得る。同様に、以前の状態依存性は、以前の状態を記憶し、多次元遷移マトリクスを使用することによって補償されることができるが、コントローラメモリは、記録され得る状態の数および記憶され得る遷移マトリクスのサイズを限定し、このタイプの補償の精度に限界を課す。
【0034】
したがって、総合グレースケール画像フローは、良好な結果を与えるために、印加されるインパルスの非常に精密な制御を要求し、経験的に、電気光学ディスプレイの技術のこの状態では、総合グレースケール画像フローは、商業的ディスプレイにおいて実行不可能であることが見出されている。
【0035】
いくつかの状況のもとで、単一ディスプレイが、複数の駆動スキームを利用することが望ましくあり得る。例えば、3つ以上のグレーレベルが可能なディスプレイは、全ての可能なグレーレベル間の遷移をもたらし得るグレースケール駆動スキーム(「GSDS」)と、2つのグレーレベル間でのみ遷移をもたらし得る単色駆動スキーム(「MDS」)とを利用し得、MDSは、GSDSよりも迅速なディスプレイの書き換えを提供する。MDSは、ディスプレイの書き換え中に変更される全てのピクセルが、MDSによって使用される2つのグレーレベル間でのみ遷移をもたらしているときに使用される。例えば、前述の米国特許第7,119,772号は、グレースケール画像を表示することが可能であり、ユーザが表示された画像に関連するテキストを入力することを可能にする単色ダイアログボックスを表示することも可能な電子書籍または類似するデバイスの形態におけるディスプレイを説明している。ユーザがテキストを入力しているとき、高速MDSが、ダイアログボックスの迅速な更新のために使用され、したがって、ユーザに入力されているテキストの高速確認を提供する。一方、ディスプレイ上に示されるグレースケール画像全体が変更されているとき、より低速のGSDSが、使用される。
【0036】
代替として、ディスプレイは、GSDSを「直接更新」駆動スキーム(「DUDS」)と同時に利用し得る。DUDSは、2つ以上、典型的には、GSDSよりも少ないグレーレベルを有し得るが、DUDSの最も重要な特性は、遷移が、多くの場合、GSDSにおいて使用される「間接」遷移とは対照的に、初期グレーレベルから最終グレーレベルへの単純な一方向性駆動によって取り扱われることであり、GSDSの場合、少なくともいくつかの遷移において、ピクセルは、初期グレーレベルから1つの極限光学状態に駆動され、そして、最終グレーレベルへと逆方向に駆動される;ある場合、遷移は、初期グレーレベルから1つの極限光学状態に、そこから、反対極限光学状態に、そして、その後にのみ、最終極限光学状態に駆動することによってもたらされ得る(例えば、前述の米国特許第7,012,600号の
図11Aおよび11Bに図示される駆動スキーム参照)。したがって、この電気泳動ディスプレイは、グレースケールモードでは、飽和パルスの長さ(「飽和パルスの長さ」は、ディスプレイのピクセルを1つの極限光学状態から他の極限光学状態に駆動するために足りる特定の電圧における期間として定義される)の約2~3倍、または約700~900ミリ秒の更新時間を有し得る一方、DUDSは、飽和パルスの長さに等しい、または約200~300ミリ秒の最大更新時間を有する。
【0037】
しかしながら、駆動スキームにおける変動は、使用されるグレーレベルの数における差異に制約されない。例えば、駆動スキームは、包括的更新駆動スキーム(より正確には、「包括的完全」または「GC」駆動スキームと称される)が適用されている領域(全体的ディスプレイまたはそのいくつかの画定された部分であり得る)内の全てのピクセルに駆動電圧が印加される包括的駆動スキームと、非ゼロ遷移(すなわち、初期および最終グレーレベルが互いに異なる遷移)を受けているピクセルにのみ駆動電圧が印加されるが、ゼロ遷移(初期および最終グレーレベルが同一である)中にいかなる駆動電圧も印加されない部分的更新駆動スキームとに分割され得る。駆動スキームの中間形態(「包括的限定」または「GL」駆動スキームとして指定される)は、いかなる駆動電圧もゼロ白色-白色遷移を受けるピクセルに印加されないことを除いて、GC駆動スキームと類似する。例えば、電子書籍リーダとして使用されるディスプレイでは、黒色テキストを白色背景上に表示することは、多数の白色ピクセルが存在し、特に、余白およびテキストのライン間にテキストの1つのページから次のページにかけて変化しないままである多数の白色ピクセルが存在し、したがって、これらの白色ピクセルを書き換えないことは、ディスプレイ書き換えの見掛け「明滅」を実質的に低減させる。しかしながら、ある問題が、このタイプのGL駆動スキームに残っている。第1に、前述のディスプレイを駆動する方法出願のいくつかにおいて詳細に議論されるように、双安定性電気光学媒体は、典型的には、完全に双安定性ではなく、1つの極限光学状態に設置されるピクセルは、中間グレーレベルに向かって、数分から数時間の期間にわたって、徐々にドリフトする。特に、白色に駆動されるピクセルは、明グレー色に向かって緩慢にドリフトする。したがって、GL駆動スキームにおいて、白色ピクセルが、他の白色ピクセル(例えば、テキスト文字の部分を形成するもの)が駆動される間、いくつかのページ捲りを通して非駆動のままであることを可能にされる場合、新しく更新された白色ピクセルは、非駆動の白色ピクセルよりもわずかに明るく、最終的に、差異は、訓練されていないユーザにも明白となるであろう。
【0038】
第2に、非駆動のピクセルが更新されているピクセルに隣接して位置するとき、「焦点ぼけ」として公知の現象が、起こり、駆動されるピクセルの駆動は、駆動されるピクセルのそれよりもわずかに大きいエリアにわたって光学状態の変化を引き起こし、このエリアは、隣接するピクセルのエリアの中に侵入する。そのような焦点ぼけ自体は、エッジ効果として非駆動のピクセルが駆動されるピクセルに隣接して位置するエッジに沿って現れる。類似するエッジ効果は、局部的更新に伴って、エッジ効果が更新されている領域の境界において起こることを除いて、局部的更新(例えば、画像を示すために、ディスプレイの特定領域のみが更新される)を使用するときに起こる。経時的に、そのようなエッジ効果は、視覚的に気を散らすようになり、クリアされなければならない。従来は、そのようなエッジ効果(および非駆動白色ピクセルにおける色ドリフトの効果)は、典型的には、間隔を空けた単一GC更新を使用することによって除去されている。残念ながら、そのような随時のGC更新の使用は、「明滅」更新の問題を再導入し、実際に更新の明滅は、明滅更新が長い間隔においてのみ起こるという事実によって、強調され得る。
【0039】
米国出願第13/755,111号(公開第2013/0194250号)は、背景ピクセルの完全な更新が複数の遷移後にのみ起こるように、背景ピクセルのより小さい部分のみが任意の単一の遷移中に更新される包括的限定駆動スキームを含むディスプレイにおける明滅を低減させるための種々の技法を説明している。
【0040】
本発明は、依然として、可能な限り明滅更新を回避しながら、上で議論される問題を低減または排除することに関する。
【0041】
既述のように、本明細書に開示される主題の一側面は、一部のユーザにより視覚的に魅力的であり得る平滑な更新(例えば、包括的完全(GC)更新)を実施する方法に関する。平滑なGC更新は、システムの制約内で所望に応じて調整され得る遷移効果を生成する。一実施形態では、
図1に図示されるように、新しい画像100が、特殊な遷移効果(例えば、スクロールバー104)を用いて以前の画像102に取って代わり得る。実践では、ディスプレイのピクセルは、複数の重複しない群に分割され得る。種々の群のための更新は、時間において互いにオフセットされ、所望の遷移効果を伴う平滑な遷移をもたらし得る。例えば、垂直もしくは水平に移動するスクロールバー(
図1は、垂直に移動するスクロールバー102を図示する)、または「円形更新」(
図2に図示されるように、遷移がディスプレイの中心エリアに、もしくはそれから、外向きまたは内向きに移動するように、ピクセルの種々の群は、環として配列される)、もしくは次の画像を明らかにする時計のように回転するバー(ピクセルの種々の群は、中心点から放射するセクタにおいて配列される)である。多くの他の遷移効果も、生成されることができるが、全ては、ディスプレイの完全なリフレッシュが遅れずに広がり、ディスプレイの小さい領域のみが所与の時間にアクティブに更新されているように、ディスプレイのエリアを横断して広がるので、遷移がより平滑であり、より明滅的ではないように見える特徴を共有する。
【0042】
いくつかの実施形態では、ピクセルの群の場所は、少なくとも1つの遷移画像(例えば、チェッカーボード、企業ロゴ、時計、ページ番号)またはアニメーションのような効果(例えば、ディソルブ、ワイプ、スクロールバー、中心から拡大するリングまたは螺旋)が画像更新中に更新され得るように配列されるべきである。例えば、
図1では、ディスプレイのエリアは、固定の高さとディスプレイの幅に等しい幅との長方形領域に分割され得る。スクロールバーの変形では、より大きいディスプレイ看板(例えば、単一のスクロールバーの使用が大きいバーおよび/または許容不可能な全体的遷移時間をもたらし得る)では、ディスプレイは、長方形領域に分割され得、それらの各々は、それ自身の長方形領域のみを横断するそれ自身のスクロールバーを提供される。例えば、ディスプレイ全体が、長方形領域のマトリクスに分割され、領域は、垂直および水平スクロールバー間で両方の軸に沿って交互し得る。いくつかの他の実施形態では、
図2に示されるように、ディスプレイは、リングに分割され得、所与の領域のためのより大きい円の半径は、中心から外向きに進むその近傍領域のためのより小さい円の半径に等しい。次いで、種々の群のための更新は、時間においてオフセットされ、所望の効果を伴う平滑な遷移をもたらす。より多数の群を有することは、更新をより平滑にすることにおいて有益であり、更新中の異なる領域の可視性を低減させることもできるが、これは、メモリまたはルックアップテーブルサイズ等のシステムの制約によって限定され得る。時間オフセットは、それが遷移の速度に影響を及ぼすので、所望の遷移効果を達成するために制御されることができる。時間オフセットを小さくすることは、更新をより高速にするであろうが、更新は、時間オフセットが小さすぎる場合、より明滅的な状態にもなり得る。時間オフセットを高くすることは、遷移を長く、平滑にするであろうが、種々の領域は、領域の数が少ない場合、可視状態になり、更新を過剰にブロックノイズ状態にし得る。実践では、システムの制約内で所望の効果を伴う最も平滑な遷移を達成するために、領域の数および時間オフセットを共同最適化することが、望ましくあり得る。いくつかの実施形態では、ピクセルの領域は、ピクセルの1つの行または列から成り得、他の実施形態では、ピクセルの領域は、ピクセルの複数の行または列から成り得る。一実施形態では、ディスプレイの更新は、ピクセルの複数の行を有するピクセルの1つの領域または群から開始され得、ピクセルの全ての行が更新されるまで、一度に1つの行を継続する。一例では、1,600行×1,200列のディスプレイピクセルを有し、250ミリ秒の更新時間(例えば、駆動波形がピクセルのある行を完全に更新するための時間)を伴うディスプレイに対して、更新が一度に1つの行に行われた場合、ディスプレイ全体を更新するために400秒かかるであろう。代替として、例としてスクロールバーを使用して、ピクセルの複数の行が所与の時間に一緒に更新され得るような特定の方式で波形および更新構造を設計し得、時間遅延が、下方のピクセル行に組み込まれ、バーは、ディスプレイを横断してスクロールし、ディスプレイが連続的に更新されているように見える。この構成では、ピクセルの行は、連続的方式で更新され、ディスプレイピクセルの行は、連続的かつ規則的方式で更新される。
【0043】
いくつかの実施形態では、各群内のピクセルは、特定の用途に応じて、連続的であることも、そうではないこともあり、例えば、ディスプレイのピクセルは、異なる群にランダムに割り当てられ得る。これは、小売店、モール、または屋外ディスプレイの看板、例えば、レストランのメニューボードとして意図される大型ディスプレイに適用されると、特に有利であることが見出されている。そのような看板は、長い間隔においてしか更新されないこともあり(例えば、メニューボードは、朝食、昼食、および夕食のための異なるメニューを表示するために、1日あたり数回しか更新され得ない)、そのような状況では、約5~60秒の長い更新時間が、許容されることができる。そのような長い更新時間は、ピクセルの多数の群の使用を可能にする。例えば、50Hzの走査速度を有し、メニューボードとしての使用を意図される32インチ(812mm)アクティブマトリクス看板は、64個の群のうちの1つにランダムに割り当てられたピクセルを更新され、種々の群のための波形は、互いから0.12秒(6回の走査)だけ遅延され、最初の群と最後の群との間に7.56秒の合計遅延をもたらし、10秒を超えない(下で議論されるような)エッジクリア区分を含む合計更新時間をもたらし、それは、このタイプの看板に対して容易に許容可能である。このタイプの看板は、典型的には、カウンタに接近する顧客によって容易に読み取り可能であるように、サービスカウンタの後方かつ頭の高さの上方に設置さ
れるので、これは、典型的には、少なくとも8フィート(約2.4メートル)の距離において読み取られ、この距離において、個々のピクセルは、読み取る人にとって不可視であり、その人は、フェードし、遷移において本質的にいかなる明滅も伴わずに新しい画像によって置換される1つの画像のみを見る。
【0044】
いくつかの他の実施形態では、任意の所与のピクセルが、同一の群内に恒久的に留まる必要性がないこともある。実際に、隣接する群の間の同一の境界を使用する繰り返される遷移が、そのような境界に沿ってエッジ効果等の不要な光学アーチファクトを生産する傾向があり得る(下で議論されるように、そのような境界を横断してエッジクリア区分の必要な相関を配列することが可能ではないこともあるから)限り、ある周期および/または所与の数の遷移後に群を変更することが、有利であり得る。例えば、
図2に示される配列では、規定された数の遷移後、隣接する環の間の境界を1つ以上のピクセルだけ外向きに移動させ、新しい環が、ディスプレイの中心の周囲に徐々に現れ得る。代替として、中心を徐々に移動させ、それによって、全ての境界をシフトさせ得る。しかしながら、アクティブマトリクス電気光学ディスプレイの当業者が、そのようなディスプレイでは、駆動パルスの印加が全ての行内のピクセルに関して同時に起こらないことを理解するであろうことに留意されたい。何故なら、ディスプレイが行毎に走査されるので、例えば、ディスプレイの最初の行への駆動パルスの印加と最後の行への同一の駆動パルスの印加との間にほぼ1フレーム期間の遅延が存在する。容易な解説のために、そのような「行内遅延」は、本明細書では無視され、同一のフレーム期間内で開始される駆動パルスは、実践では、それらがわずかに異なる時間において異なる行に印加されるであろうにもかかわらず、同時に印加されると見なされる。
【0045】
いくつかの実施形態では、ピクセルの各群のための波形または波形構造は、全ての異なる群内のピクセルの色変化が同時にもたらされないことを所与として、必ずしも同一ではない。
図3A-3Cは、同一の光学遷移のための異なる群のための波形の例を図示する。
図3Aでは、波形構造は、ピクセルの少なくとも2つの群が一度に更新される(すなわち、ピクセルに印加される波形を更新する)ように、グループ間で1フレーム時間オフセットされて同一である。一方、波形構造は、
図3Bおよび3Cに図示されるように、異なり得る。例えば、
図3Bの波形は、少なくとも部分的に、駆動区分に関するエッジクリア区分のタイミングの差異に起因して、互いに類似しない。群1の波形におけるエッジクリア区分304が駆動区分302から5フレーム離れている場合、比較して、群4のエッジクリア区分306および駆動区分308は、2フレームのみ離れている。
図3Cは、エッジクリア区分が異なる持続時間を有し、駆動区分に関して異なる時間に起こりることが可能な波形構造をさらに図示する。しかしながら、提示される全てのこれらの場合、電気光学媒体が黒色から白色または白色から黒色に遷移し始める時間(
図3A-3Cに赤色および緑色矢印によってマーキングされる)は、平滑な遷移を確実にするために、全ての他の群のための対応する時間から分離される。
【0046】
図3B-3Cは、隣接するピクセル間のエッジ効果に対処するように設計される波形に関する重要な問題も図示する。そのような波形は、2つの区分、すなわち、駆動区分(例えば、
図3A-3Cの各々の左側に示される一連の2つの正および2つの負のパルス)と、エッジクリア区分(例えば、
図3B-3Cの各々の右側に示される一連の1つ以上の負のパルス)とを有する。エッジ残影問題を軽減するために、各波形のエッジクリア区分が、少なくとも1つの他の群の波形の対応する区分と共通した少なくとも1つのフレームを有することが、望ましい。例えば、
図3Dに図示されるエッジ12に沿った残影は、
図3Cに示されるように、少なくとも1つのフレーム(例えば、フレーム17)における群1および2に関する波形の重複によって改良されることができる。
図3Cに示される別の例では、
図3Dのエッジ14 310のクリアは、フレーム15における群4の波形の駆動区分の最後のフレームと群1のエッジクリア区分の最初のフレームとの間の重複によって達成される。任意の群のピクセルが、任意の他の群のピクセルとエッジを共有し得る群へのピクセルのランダムな割り当ての場合、例えば、
図3Bに図示されるように、全てのエッジクリア区分が、共通して少なくとも1つのフレームを有することが、望ましく、全ての4つの群の駆動区分は、異なる時点で始まるが、全ての4つの波形は、共通の単一のフレームエッジクリア区分を共有する。しかしながら、全ての群によるエッジクリアのそのような同時適用は、遷移において増加された明滅を生産する傾向があり、したがって、妥協が、徹底的なエッジクリアと明滅との間で行われる必要性があり得る。
【0047】
図3Bおよび3Cに図示されるように、この更新構成を使用して、ピクセルの1つの領域または群のみが、任意の所与の時間に波形の駆動区分を受信または完了し、それによって、更新プロセスがユーザに平滑に見えるディスプレイ更新の遷移外観を生成する。加えて、ピクセルの複数の領域のエッジクリア区分は、上で説明されるように、時間において少なくとも1つのフレームを共有し、ピクセルの群の間の不要なエッジ効果をクリアする。
【0048】
本明細書で既述のように、本主題の方法は、いくつかの異なる方法で実装され得る。一実施形態では、標準的な既存のアーキテクチャを使用して、波形が、コントローラが、所与のピクセルのために、遷移k→nを呼び出すであろうような方法でエンコードされる遷移のルックアップテーブル(前述のディスプレイを駆動する方法出願参照)内に記憶され得、kは、ピクセルの現在の光学状態に対応する一意の状態であり、「n」は、次の入力画像によって要求されるようなピクセルの次の光学状態に対応する一意の状態である。典型的な画像は、8ビットであり、典型的なコントローラは、4ビットまたは5ビットであるルックアップテーブルサイズをサポートし、したがって、入力画像0~255からの所望の状態は、コントローラによって所望の波形状態0~15(4ビットコントローラに対して)または0~31(5ビットコントローラに対して)に変換される。これを説明するための別の方法は、入力画像が8ビットであるが、典型的なコントローラが16グレーレベル(4ビットコントローラに対して)または32グレーレベル(5ビットコントローラに関して)のみをサポートすることである。
【0049】
いくつかの実施形態では、本明細書に提示される主題は、既存のコントローラを使用して、単一の可能な遷移毎にN個の波形遷移を配分することによっても実装され得、Nは、方法において使用されるピクセルの群の数に等しい。例えば、4ビットコントローラを用いて
図1の垂直スクロールバー更新方法を実装することを検討すると、ピクセルの16個の群が使用される場合、更新は、各実際の遷移が16個の異なる波形の記憶を要求し、4×4×16=256であるので、4つのグレーレベルのみをサポートすることができる。第1のステップは、各実際の遷移に、それらの間に所望の時間オフセットを伴う16個の可能な遷移を配分する波形エンコードを決定することである。
図4は、8フレームの最小時間オフセットを伴う白色→黒色遷移を示す波形エンコードの例を示す。この場合、遷移(13,14,15,16)→(1,2,3,4)が、白色→黒色の16個の可能な波形に対して配分されている。遷移13→1は、時間において最初に更新されるように見えるであろう白色→黒色に対応し(すなわち、群1のための波形)一方、16→4は、最後に更新されるであろう対応する波形である(すなわち、群16のための波形)。上部から底部にスクロールするバーの場合、ディスプレイの上部における領域内で白色→黒色を経験するピクセルは、波形13→1を受信するであろう一方、ディスプレイの底部における領域内で白色→黒色を被るピクセルは、波形16→4を受信するであろう。
【0050】
図5は、
図4に示される波形を使用して、上部から底部への垂直スクロールバー効果を用いて白色→黒色遷移を達成するために要求される種々のステップをより詳細に解説する。第1のステップは、波形によって要求される初期状態に合致させるために、コントローラ内に記録される各ピクセルの現在の状態を修正することである。この場合、マスクが、画像に適用され、状態16は、ディスプレイ内の領域に応じて、状態13~16に修正される。これは、例えば、空の波形および適切に処理された画像を使用して、コントローラに偽の更新を要求することによって達成されることができる。この偽の更新の目的は、コントローラ内に記憶されるようなピクセルの現在の状態を変更することである。次のステップは、この特定の例に対して
図4に示されるように適切に処理された次の画像を使用して、
図4に示される波形を用いて本当の更新を要求することである。この特定の実装は、偽の更新を要求することを要求する。
【0051】
異なる領域間の境界に沿ったエッジ残影が、方法における懸念であり得るが、以前の経験は、それがこれらのタイプの更新において深刻な問題ではなく、異なる領域内で使用される波形間の時間オフセットが、エッジ残影を最小化するために注意深く設計され得ることを示唆している。
【0052】
コントローラは、更新を要求することなくピクセルの現在の状態の操作を可能にするように設計され得、したがって、偽の更新をコントローラによって記憶されるようなピクセルの現在の状態の処理と置換することによって、
図5を参照して説明されるような余分な偽の更新の排除を可能にし、したがって、このステップの実装を潜在的に促進するように設計され得る。ピクセル毎に、現在のコントローラは、現在の状態、次の状態、およびフレームカウントを記憶する。コントローラは、フレームオフセットを追加のフィールドとして記憶し、したがって、コントローラの内側で、種々の領域のための波形間のフレーム、したがって、時間オフセットを可能にし得る。例えば、図に示されるもの等の垂直スクロールバー更新に対して、コントローラ内のフレームオフセットフィールドは、ディスプレイの上部領域内に位置するピクセルのためにフレームオフセットを0に設定することによって、所望のスクロールバー遷移効果を達成するようにプログラムされ、フレームオフセットは、ディスプレイの上部エッジから増加する距離におけるピクセルのために増加するであろう。フレームカウントおよびフレームオフセットは、更新を実施するためにコントローラによって使用されるであろう。例えば、(フレームカウント-フレームオフセット)が負である場合、いかなる更新も、そのピクセルのために実施されない。そうでなければ、更新が、フレーム数(=フレームカウント-フレームオフセット)にわたって実施される。
【0053】
このように既存のコントローラを修正することは、修正が1つの余分なフィールド、典型的には、4ビットフィールドを記憶することのみを要求するので、比較的に安価であるはずである。そのような修正されたコントローラは、
図4を参照して上で説明されるような波形の特殊なエンコードの必要性を除去するが、平滑な更新を可能にするであろう。そのようなコントローラ修正は、波形ルックアップテーブルサイズ、レンダリングされるグレーレベルの数、および使用される領域(ピクセルの群)の数の間に要求される妥協も除去するであろう。最後に、そのような修正されたコントローラは、潜在的に、非常に平滑な更新を可能にするであろう。何故なら、ディスプレイ内の領域の数が、非常に大きくされ得、着目すべき平滑な遷移効果を生成することにおけるより高い柔軟性を可能にするからである。
【0054】
前述から、本発明が、標準的な全画面包括的更新と比較して、ある顧客により魅力的であり得る遷移効果を伴う平滑な完全リフレッシュ遷移を提供し得ることが分かるであろう。本発明は、ウェアラブルおよびモバイルデバイス用途のために特に有用であり得る。
【0055】
多数の変更および修正が、本発明の範囲から逸脱することなく、上で説明される本発明の具体的実施形態において行われ得ることが当業者に明白であろう。故に、前述の説明の全体は、限定的意味ではなく、例証的意味において解釈されるものである。