(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-20
(45)【発行日】2023-06-28
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
G06F 1/20 20060101AFI20230621BHJP
G06F 1/16 20060101ALI20230621BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20230621BHJP
【FI】
G06F1/20 C
G06F1/20 B
G06F1/16 312E
G06F1/16 312U
H05K7/20 H
H05K7/20 G
(21)【出願番号】P 2021187825
(22)【出願日】2021-11-18
【審査請求日】2021-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北村 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】橋場 惇輝
(72)【発明者】
【氏名】陳 柏翰
(72)【発明者】
【氏名】堂薗 賢
【審査官】征矢 崇
(56)【参考文献】
【文献】特許第6846547(JP,B1)
【文献】米国特許第10871809(US,B1)
【文献】特開2012-053611(JP,A)
【文献】国際公開第2016/022145(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F1/16;1/20
H05K7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器であって、
筐体と、
複数のキーキャップと、前記複数のキーキャップの下方で各キーキャップを支持するプレート状部材と、前記プレート状部材を上下方向に貫通する開口部とを有し、前記筐体の上面側に設けられたキーボード装置と、
前記キーキャップが配置されるキー配置孔と、前記キー配置孔の周囲を囲んで隣接する前記キーキャップ間を仕切る仕切り壁とを有し、前記プレート状部材の上面で支持されたフレームと、
上面に吸気口を有し、前記筐体内に設けられたファン装置と、
を備え、
少なくとも一部の前記仕切り壁は、その下端面を切り欠くように形成され、前記プレート状部材の上面との間に空気流路を形成することで、隣接する前記キー配置孔同士を連通させる連通路を有し、
前記筐体の平面視において、前記ファン装置とオーバーラップしない領域にある前記連通路の高さが、前記ファン装置とオーバーラップする領域にある前記連通路の高さよりも低い
ことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器であって、
前記連通路の高さは、3種類以上設けられ、
前記連通路は、前記ファン装置とオーバーラップする領域から離間する方向に向かって、次第に前記高さが低くなるように階段状に配置されている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電子機器であって、
前記ファン装置は、一対設けられ、
前記筐体の平面視において、前記フレームは、前記一対のファン装置の間にある前記仕切り壁に前記連通路を形成していない領域を有する
ことを特徴とする電子機器。
【請求項4】
電子機器であって、
筐体と、
複数のキーキャップと、前記複数のキーキャップの下方で各キーキャップを支持するプレート状部材とを有し、前記筐体の上面側に設けられたキーボード装置と、
前記キーキャップが配置されるキー配置孔と、前記キー配置孔の周囲を囲んで隣接する前記キーキャップ間を仕切る仕切り壁とを有し、前記プレート状部材の上面で支持されたフレームと、
を備え、
少なくとも一部の前記仕切り壁は、その下端面を切り欠くように形成され、前記プレート状部材の上面との間に空気流路を形成することで、隣接する前記キー配置孔同士を連通させる連通路を有し、
前記フレームは、少なくとも、
前記連通路の高さが第1高さとされた複数の前記仕切り壁を有する第1領域と、
前記連通路の高さが前記第1高さよりも低い第2高さとされた複数の前記仕切り壁を含む第2領域と、
を有する
ことを特徴とする電子機器。
【請求項5】
請求項4に記載の電子機器であって、
前記フレームは、さらに、前記連通路の高さが前記第2高さよりも低い第3高さとされた複数の前記仕切り壁を含む第3領域を有し、
前記第1領域と、前記第2領域と、前記第3領域とが、この順に並んでいる
ことを特徴とする電子機器。
【請求項6】
請求項
4に記載の電子機器であって、
上面に吸気口を有し、前記筐体内に設けられたファン装置をさらに備え、
前記キーボード装置は、前記プレート状部材を上下方向に貫通する開口部をさらに有し、
前記筐体の平面視において、前記第1領域が前記ファン装置とオーバーラップし、前記第2領域は前記ファン装置とオーバーラップしていない
ことを特徴とする電子機器。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか1項に記載の電子機器であって、
前記仕切り壁は、
前記キーボード装置の左右方向に沿って延在する横壁部と、
前記キーボード装置の前後方向に沿って延在する縦壁部と、
を有し、
前記連通路は、前記横壁部及び前記縦壁部のいずれにも形成されている
ことを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファン装置を備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、ノート型PCのような電子機器において、筐体の上面にあるキーボード装置に外気を吸気するための開口部を設けた構成を提案している(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の開口部は、各キーキャップ間を仕切るフレームに設けた切欠と、各キーキャップを支持するプレート状部材に設けた貫通孔とを有する。ところで、この開口部は、切欠及び貫通孔がいずれもファン装置の上方のみに設けられている。このため、この構成では、ファン装置の吸気量の増加による冷却性能の向上は限定的であることが分かってきた。一方、キーボード装置は、ユーザが直接的に操作する装置であるため、高い剛性や強度が求められる。このため、キーボード装置は、単に開口部の設置範囲を拡大しただけでは剛性が低下し、操作性や質感が低下する。
【0005】
他方、ノート型PCのような電子機器に搭載されたキーボード装置は、筐体内の熱が伝わり易く、ユーザに不快感を与える懸念がある。特に、上記特許文献1のキーボード装置は、各キーキャップの周囲がフレームで囲まれている。このため、このような構成は、筐体内からキーボード装置に伝達された熱の逃げ道が少なく、温度上昇の問題が一層問題となる。
【0006】
本発明の主たる目的は、キーボード装置の操作性や質感の低下を抑制しつつ冷却性能を向上させることができる電子機器を提供することにある。また、本発明の別の目的は、筐体の上面側に設けたキーボード装置の温度上昇を抑制することができる電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様に係る電子機器は、筐体と、複数のキーキャップと、前記複数のキーキャップの下方で各キーキャップを支持するプレート状部材と、前記プレート状部材を上下方向に貫通する開口部とを有し、前記筐体の上面側に設けられたキーボード装置と、前記キーキャップが配置されるキー配置孔と、前記キー配置孔の周囲を囲んで隣接する前記キーキャップ間を仕切る仕切り壁とを有し、前記プレート状部材の上面で支持されたフレームと、上面に吸気口を有し、前記筐体内に設けられたファン装置と、を備え、少なくとも一部の前記仕切り壁は、その下端面を切り欠くように形成され、前記プレート状部材の上面との間に空気流路を形成することで、隣接する前記キー配置孔同士を連通させる連通路を有し、前記筐体の平面視において、前記ファン装置とオーバーラップしない領域にある前記連通路の高さが、前記ファン装置とオーバーラップする領域にある前記連通路の高さよりも低い。
【0008】
本発明の第2態様に係る電子機器は、筐体と、複数のキーキャップと、前記複数のキーキャップの下方で各キーキャップを支持するプレート状部材とを有し、前記筐体の上面側に設けられたキーボード装置と、前記キーキャップが配置されるキー配置孔と、前記キー配置孔の周囲を囲んで隣接する前記キーキャップ間を仕切る仕切り壁とを有し、前記プレート状部材の上面で支持されたフレームと、を備え、少なくとも一部の前記仕切り壁は、その下端面を切り欠くように形成され、前記プレート状部材の上面との間に空気流路を形成することで、隣接する前記キー配置孔同士を連通させる連通路を有し、前記フレームは、少なくとも、前記連通路の高さが第1高さとされた複数の前記仕切り壁を有する第1領域と、前記連通路の高さが前記第1高さよりも低い第2高さとされた複数の前記仕切り壁を含む第2領域と、を有する。
【0009】
本発明の第3態様に係る電子機器は、筐体と、複数のキーキャップと、前記複数のキーキャップの下方で各キーキャップを支持するプレート状部材とを有し、前記筐体の上面側に設けられたキーボード装置と、前記キーキャップが配置されるキー配置孔と、前記キー配置孔の周囲を囲んで隣接する前記キーキャップ間を仕切る仕切り壁とを有し、前記プレート状部材の上面で支持されたフレームと、を備え、少なくとも一部の前記仕切り壁は、隣接する前記キー配置孔同士を連通させる連通路を有し、前記フレームは、少なくとも、前記連通路の断面積が第1の断面積とされた複数の前記仕切り壁を有する第1領域と、前記連通路の断面積が前記第1の断面積よりも小さい第2の断面積とされた複数の前記仕切り壁を含む第2領域と、を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、キーボード装置の操作性や質感の低下を抑制しつつ冷却性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る電子機器を上から見下ろした模式的な平面図である。
【
図2】
図2は、筐体の内部構造を模式的に示す要部拡大側面断面図である。
【
図3】
図3は、フレームの一部を拡大して斜め上方から見た斜視図である。
【
図4】
図4は、フレームが一体に形成されたカバー部材21の下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る電子機器について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
図1は、一実施形態に係る電子機器10を上から見下ろした模式的な平面図である。
図1に示すように、電子機器10は、キーボード装置12を搭載した筐体14と、ディスプレイ16を搭載したディスプレイ筐体18とを備える。電子機器10は、筐体14とディスプレイ筐体18とをヒンジ20で相対的に回動可能に連結したクラムシェル型のノート型PCである。
図1は、ディスプレイ筐体18を筐体14から開いて使用形態とした状態を示す。電子機器10は、クラムシェル型以外の電子機器でもよい。
【0014】
ディスプレイ筐体18は、薄い扁平な箱体である。ディスプレイ筐体18には、ディスプレイ16が搭載されている。ディスプレイ16は、例えば有機ELや液晶で構成される。
【0015】
以下、筐体14及びこれに搭載された各要素について、
図1に示すキーボード装置12を操作する姿勢を基準として、手前側を前、奥側を後、幅方向を左右、高さ方向(筐体14の厚み方向)を上下、と呼んで説明する。
【0016】
図2は、筐体14の内部構造を模式的に示す要部拡大側面断面図である。
【0017】
筐体14は、薄い扁平な箱体である。筐体14は、上面14a及び四周の側面を形成するカバー部材21と、下面14bを形成するプレート状のカバー部材22とを有する。カバー部材21,22は、厚み方向に重ね合わされて互いに着脱可能に連結される。筐体14は、後端部がヒンジ20を用いてディスプレイ筐体18と連結されている。
【0018】
上側のカバー部材21は、キーボード装置12が下から挿入される開口21aを有する。カバー部材21は、開口21aに代えて浅いバスタブ状の凹部を有し、この凹部の底板にキーボード装置12を上から載置する構成でもよい。カバー部材21,22は、例えばマグネシウム等の金属で形成されている。
【0019】
筐体14の上面14aには、キーボード装置12及びタッチパッド24が設けられている。キーボード装置12は、上面14aの大部分を構成している。筐体14の内部には、基板26と、冷却モジュール28とが収容されている。筐体14の内部には、さらにバッテリ装置等の各種電子部品や機械部品等が設けられる。
【0020】
基板26は、電子機器10のマザーボードである。基板26は、CPU(Central Processing Unit)30が実装されたプリント基板である。基板26は、さらに、GPU(Graphics Processing Unit)、通信モジュール、メモリ、及び接続端子等の各種電子部品が実装されている。基板26は、キーボード装置12の下方に配置されている。基板26は、キーボード装置12の裏面やカバー部材21の内面にねじ止めされ、これにより筐体14に固定されている。基板26は、上面がカバー部材21に対する取付面となり、下面がCPU30等の実装面となる。
【0021】
CPU30は、電子機器10の主たる制御や処理に関する演算を行う処理装置である。CPU30は、電子機器10に搭載されたデバイス中で最大級の発熱体である。
【0022】
冷却モジュール28は、主としてCPU30が発生する熱を吸熱して輸送し、筐体14外へと排出する装置である。冷却モジュール28は、CPU30以外の発熱体、例えばGPU31等の熱も筐体14外に排出可能である。冷却モジュール28の大部分は、基板26の下方に配置されている。冷却モジュール28は、基板26の下面、キーボード装置12の裏面、及びカバー部材21の内面等にねじ止めされ、これにより筐体14に固定されている。
【0023】
冷却モジュール28は、ファン装置32,33と、冷却フィン34,35と、ヒートパイプ36と、を備える。
【0024】
本実施形態の冷却モジュール28は、CPU30及びGPUの冷却のために用いられるため、ファン装置及び冷却フィンをそれぞれ一対ずつ搭載している。冷却モジュール28は、その冷却対象や必要能力等によっては、ファン装置及び冷却フィンをそれぞれ1台ずつ搭載した構成としてもよい。ファン装置32,33は、大きさや形状が多少異なる以外、基本的な構成は同一又は同様である。冷却フィン34,35についても大きさや形状が多少異なる以外、基本的な構成は同一又は同様である。そこで、以下ではファン装置32及び冷却フィン34について代表的に説明し、ファン装置33及び冷却フィン35の説明は省略する。
【0025】
ファン装置32,33は、それぞれ筐体14の左右の後角部付近に配置されている(
図1参照)。
図2に示すように、ファン装置32は、ファン筐体40と、回転部41と、インペラ42とを備える。ファン装置32は、回転部41がモータによって回転することで、その外周側に設けられたインペラ42が回転する遠心ファンである。
【0026】
ファン筐体40は、回転部41及びインペラ42を収納する扁平な箱体である。ファン筐体40は、下板40Aと、上板40Bと、側板40Cとを有する。各板40A~40Cは、例えば金属板である。
【0027】
下板40Aは、矩形板の一側を円形状に形成した略弾丸形状の薄板である。下板40Aは、ファン装置32の下面32aを形成する。下板40Aには、下吸気口44が形成されている。下吸気口44は、例えば円形状、ドーナツ形状、又は複数の楕円を周方向に並べた形状の貫通孔である。
【0028】
上板40Bは、下板40Aと同一の外形形状を有する薄板である。上板40Bは、ファン装置32の上面32bを形成する。上板40Bには、上吸気口45が形成されている。上吸気口45は、下吸気口44と同一又は同様な形状でよい。吸気口44,45は、インペラ42の回転によってファン筐体40の外部の空気を内部へと取り込むための開口である。
【0029】
側板40Cは、下板40Aと上板40Bとの間に形成されるファン筐体40の内部空間の側部を覆う湾曲板である。本実施形態の側板40Cは、上板40Bと一体に構成されている。ファン筐体40の後方を向いた側面は、側板40Cが設けられていないか又は側板40Cに穴が設けられることで、開口が形成されている。この開口がファン装置32の排気口46となる。排気口46は、冷却フィン34と対向配置される。
【0030】
冷却フィン34,35の前面は、それぞれファン装置32,33の直後に配置され、排気口46に面している。冷却フィン34,35の後面は、筐体14の後側面に開口した筐体排気口14cに面している。冷却フィン34は、複数のプレート状の金属フィンをプレートの表面で左右方向に等間隔に並べた構造である。各フィンは、上下方向に起立し、前後方向に延在している。隣接するフィンの間には、ファン装置32から送られた空気が通過する隙間が形成されている。冷却フィン34は、ヒートパイプ36を介してCPU30と熱的に接続されている。
【0031】
ヒートパイプ36は、パイプ型の熱輸送デバイスである。ヒートパイプ36は、1本又は2本以上の組で用いられる。ヒートパイプ36は、金属パイプを薄く扁平に潰して断面楕円形状に形成し、内部の密閉空間に作動流体が封入されたものであり、公知のヒートパイプでよい。ヒートパイプ36は、例えば一端の吸熱部がCPU30と熱的に接続され、他端の放熱部が冷却フィン34,35と接続されている。
【0032】
このような冷却モジュール28は、ヒートパイプ36によって運ばれたCPU30等の熱が冷却フィン34,35に伝達される。冷却フィン34,35に伝達された熱は、ファン装置32,33の排気口46からの送風により、筐体排気口14cを通過して筐体14の外部に排出される。
図1中の参照符号47,48は、CPU30等の熱を拡散するプレート型の熱輸送デバイスであり、例えば金属プレート又はベーパーチャンバである。
【0033】
図1及び
図2に示すように、キーボード装置12は、複数のキースイッチ50と、プレート状部材52と、フレーム54とを備える。
【0034】
各キースイッチ50は、プレート状部材52の上面52a側で支持されている。各キースイッチ50は、ガイド機構50a及びラバードーム50bで上下動可能に支持されたキーキャップ56を有する。ガイド機構50aは、キーキャップ56の下面とプレート状部材52の上面との間を連結するシザー機構である。ラバードーム50bは、シリコーンゴム等の可撓性を有する弾性材料で形成されたドーム形状部材である。ラバードーム50bは、ガイド機構50aの中央に配置され、キーキャップ56とプレート状部材52との間に介在している。各キーキャップ56は、例えば樹脂で成形され、平面視で略矩形に形成されている。各キーキャップ56は、操作面を形成する上板の四周縁部から側壁を垂下させた構成である。
【0035】
図1に示すように、キーボード装置12の略中央には、ポインティングスティック51が設けられている。ポインティングスティック51は、マウスの代わりとなる操作デバイスである。
【0036】
プレート状部材52は、上から下に向かって順に、メンブレンシート57と、ベースプレート58と、導光板59とを積層したものである。メンブレンシート57は、例えば押圧された場合に接点が閉じる三層構造のスイッチシートである。メンブレンシート57は、キーキャップ56が押し下げされた際に圧縮されるラバードーム50bによって接点が閉じられる。ベースプレート58は、各所に切り起こしや孔部が形成された金属プレートである。導光板59は、下面に取り付けられた光源が発する光を左右方向に導き、光反射面で反射して各キーキャップ56を裏面から照射するための透明な樹脂板である。導光板59は省略してもよく、この場合はベースプレート58の下面に防水シートを積層するとよい。
【0037】
フレーム54は、樹脂や金属等で形成された網目状のプレートである。フレーム54は、各キーキャップ56の周囲を仕切るものである。フレーム54には、各キーキャップ56が上下動可能に配置される複数のキー配置孔65が設けられている。すなわちフレーム54は、隣接するキーキャップ56,56間を仕切る仕切り壁66を有し、この仕切り壁66で四周が囲まれた空間がキー配置孔65となる。
【0038】
フレーム54は、仕切り壁66の下端面67がプレート状部材52の上面52aに支持され、固定される。本実施形態の場合、フレーム54は、カバー部材21と一体成形されている(
図4参照)。フレーム54は、カバー部材21と別体に構成されてもよい。この場合、フレーム54は、プレート状部材52に固定され、実質的にキーボード装置12の一部となる。
【0039】
図2に示すように、筐体14は、下面14bから内部に空気Aを流入させるための下連通孔60を備える。
図2中に1点鎖線で示す矢印Aは、空気の流れを模式的に示したものである。
【0040】
下連通孔60は、筐体14の下面14bを形成するカバー部材22に形成された貫通孔である。下連通孔60は、例えば複数本のスリット状の孔部を並列した構成である。下連通孔60は、平面視でファン装置32,33の下吸気口44とオーバーラップした位置に設けられ、これと対向している。
【0041】
図2に示すように、筐体14は、上部から内部に空気Aを流入させるための上連通孔62を備える。
【0042】
上連通孔62は、キーボード装置12を上下方向に貫通した貫通孔であり、ファン装置32,33の上吸気口45と連通している。上連通孔62は、上から下に向かって順に、隣接するキーキャップ56と仕切り壁66との間の隙間と、連通路54a~54cと、開口部61とが連通することで形成されている。連通路54a~54cは、仕切り壁66の下端面67を切り欠くことで空気Aの流路を形成したものである。連通路54a~54cの詳細は後述する。開口部61は、プレート状部材52に形成された貫通孔である。開口部61は、例えばフレーム54の左右方向に沿う横壁部66aの下方に設けられ、左右方向に延びた複数の矩形状の長孔である。開口部61の形状は、上吸気口45と同一又は同様としてもよい。
【0043】
従って、
図2に示すように、ファン装置32,33は、筐体14の下側の空気Aをカバー部材22の下連通孔60から下吸気口44を介して吸気する。同時に、ファン装置32,33は、筐体14の上側の空気Aを上連通孔62から上吸気口45を介して吸気する。ファン装置32,33は、各吸気口44,45から吸い込んだ空気Aを排気口46から筐体14外に排出する際、冷却フィン34,35を空冷する。これによりファン装置32,33は、筐体14の上下面から十分に空気を取り込むことができ、高い冷却効率が得られる。
【0044】
図2中の参照符号63a,63bは、スポンジ等で形成されたシール材である。シール材63aは、下吸気口44の周囲に止水壁を形成する。シール材63bは、上吸気口45の周囲に止水壁を形成する。シール材63a,63bは、キーボード装置12上に飲料等の液体がこぼされた際、筐体14内の基板26等への浸水を防止する。
【0045】
次に、フレーム54に形成された連通路54a~54cの具体的な構成を説明する。
図3は、フレーム54の一部を拡大して斜め上方から見た斜視図である。
図4は、フレーム54が一体に形成されたカバー部材21の下面図である。
【0046】
図4において、連通路54aは、クロックポジションで略2時(8時)方向に傾斜した斜線パターンで示している。連通路54bは、ドットパターンで示している。連通路54cは、クロックポジションで略10時(4時)方向に傾斜した斜線パターンで示している。
【0047】
図2及び
図3に示すように、連通路54a~54cは、仕切り壁66で仕切られたキー配置孔65,65間を連通させ、空気Aの移動を可能とするものである。フレーム54は、下端面67がプレート状部材52の上面52aで支持されている。連通路54a~54cは、フレーム54を下端面67側から上に向かって切り欠いた形状の凹部である。これにより連通路54a~54cは、隣接するキー配置孔65,65間を連通するトンネルとなる。連通路54a~54cは、フレーム54の成形と同時に形成してもよいし、フレーム54の成形後に機械加工等で形成してもよい。
【0048】
フレーム54の仕切り壁66は、キーボード装置12の左右方向に沿って延在する横壁部66aと、前後方向に沿って延在する縦壁部66bとを有する。本実施形態の連通路54a~54cは、横壁部66a及び縦壁部66bのいずれにも形成されている(
図3及び
図4参照)。連通路54a~54cは、横壁部66a及び縦壁部66bの一方のみに形成されていてもよい。
【0049】
図4に示すように、連通路54aは、カバー部材21の平面視、つまり筐体14の平面視において、左右のファン装置32,33とオーバーラップする位置及びその周辺を含む第1領域R1に設けられている。連通路54bは、第1領域R1の周囲を囲む第2領域R2に設けられている。連通路54cは、第2領域R2の周囲を囲む第3領域R3に設けられている。本実施形態の場合、連通路54b,54cは、左右のファン装置32,33とオーバーラップしない位置にある。
【0050】
図4に示す構成例では、ファン装置32,33がフレーム54の左右の後角部に配置されている。このため第2領域R2は、第1領域R1の全周ではなく、略2辺を囲むように略L字状に形成されている。第3領域R3は、第2領域R2の全周ではなく、略1辺を囲むように略直線状に形成されている。第2領域R2は、第1領域R1の1辺又は3辺以上を囲むように配置されてもよい。第3領域R3は、第2領域R2の2辺以上を囲むように配置されてもよい。
【0051】
このように、連通路54a~54cは、フレーム54の大部分に設けられ、各領域R1~R3が順に並んで連続している。これにより連通路54a~54cは、領域R1~R3にある複数のキー配置孔65の全てを連通する空気流路を、プレート状部材52の上面52a上に形成する。
【0052】
具体的には、
図4に示すように、連通路54a~54cは、第3領域R3から第2領域R2を経て第1領域R1まで連続する空気流路を形成している。本実施形態の場合、この空気流路は、左右のファン装置32,33の対応するように左右一対設けられている。
【0053】
一方、左側の領域R1~R3と、右側の領域R1~R3との間の中央には第4領域R4が形成されている。第4領域R4は、フレーム54の略中央で前後方向に亘って延在している。第4領域R4に位置する仕切り壁66は、連通路54a~54cが形成されていない。つまり第4領域R4は、左側のファン装置32に対応した左側の領域R1~R3の空気流路と、右側のファン装置33に対応した右側の領域R1~R3の空気流路との間を仕切る遮蔽壁となっている。
【0054】
本実施形態の第4領域R4は、
図4に示す平面視で、例えば階段状の山形状に構成されている。これにより第4領域R4は、左側の領域R1~R3と右側の領域R1~R3との間に遮蔽壁を形成しつつ、ポインティングスティック51を含む範囲に延在している。第4領域R4は省略し、全ての仕切り壁66に連通路54a~54cを設けてもよい。
【0055】
ここで、
図3に示すように、各連通路54a~54cの高さをHと呼ぶ。高さHは、実質的にプレート状部材52の上面52aから連通路54a~54cの天井までの高さを指す。つまり高さHは、連通路54a~54cで形成される空気流路の高さを示す。
図2に示すように、各連通路54a~54cの高さHはそれぞれ異なる。以下、連通路54aの高さHを第1高さと呼び、連通路54bの高さHを第2高さと呼び、連通路54cの高さHを第3高さと呼ぶ。
【0056】
本実施形態の場合、連通路54aの第1高さが最も高く、連通路54cの第3高さが最も低く、連通路54bの第2高さは第1高さと第3高さの中間である。本実施形態の場合は、第1高さが0.5mm、第2高さが0.3mm、第3高さが0.1mmに設定されている。従って、連通路54a~54cは、ファン装置32,33とオーバーラップする第1領域R1から離間する方向に向かって、次第に高さHが低くなるように階段状に配置されている(
図2及び
図4参照)。
【0057】
以上のように、本実施形態の電子機器10では、少なくとも一部の仕切り壁66が連通路54a~54cを有する。そして、連通路54a~54cは、ファン装置32,33とオーバーラップしない領域R2,R3にある連通路54b,54cの高さHが、ファン装置32,33とオーバーラップする第1領域R1にある連通路54aの高さHよりも低い。
【0058】
このように、電子機器10は、ファン装置32,33とオーバーラップする第1領域R1の連通路54aに加えて、オーバーラップしない領域R2,R3の仕切り壁66にも連通路54b,54cを設けている。このため、
図2に示すように、ファン装置32,33は、その直上の連通路54aだけでなく、他の連通路54b,54cも含む広い範囲から空気吸入を行うことができる。その結果、電子機器10は、ファン装置32,33の風量が増大し、冷却モジュール28による冷却性能が向上する。
【0059】
この際、ファン装置32,33とオーバーラップしない領域R2,R3の連通路54b,54cは、その高さHがオーバーラップする第1領域R1の連通路54aよりも低い。このため、フレーム54は、広範囲の仕切り壁66に連通路54a~54cを形成しているにも関わらず、全体としての強度及び剛性の低下が最小限となる。その結果、電子機器10は、キーボード装置12の操作性や質感の低下を抑制できる。高さHの低い連通路54b,54cは、高さHの高い連通路54aに比べてフレーム54の剛性低下に対する影響が小さいためである。
【0060】
しかも電子機器10は、ファン装置32,33とオーバーラップする第1領域R1の連通路54aの高さHが最も高いため、連通路54aがボトルネックとなって上吸気口45からの吸気量を低下させることもない。
【0061】
なお、連通路54a~54cを設けた本実施形態の電子機器10と、ファン装置32,33の直上のみに連通路54aを設けた比較例の電子機器について、キーボード装置12の表面温度を測定する実験と、煙の吸込み量を目視にて観察してファン風量の大小を比較する実験を行った。その結果、表面温度の測定実験では、本実施形態の電子機器10は、比較例に比べて、筐体14の上面14a全体の温度が低下し、さらにファン装置32,33の直上部分等の高温になり易い局所的な部分でも温度が低下した。また、ファン装置32,33の風量の比較実験では、本実施形態の電子機器10は、比較例に比べて、煙の吸込み量が増加し、ファン風量が増大した。
【0062】
仕切り壁66は、左右方向に沿って延在する横壁部66aと、前後方向に沿って延在する縦壁部66bとを有する。そして、連通路54a~54cは、横壁部66a及び縦壁部66bのいずれにも形成されている。従って、
図2及び
図4に示すように、電子機器10は、連通路54aに向かって他の連通路54b,54cを通した空気Aが円滑に流通する。その結果、電子機器10は、ファン装置32,33の風量が一層増大し、冷却性能を一層向上させることができる。他方、このように横壁部66a及び縦壁部66bに連通路54a~54cを形成したことにより、フレーム54は、剛性の低下を生じ易くなる。しかしながら、上記したように、電子機器10は、連通路54a~54cの高さHを変化させることで、フレーム54の剛性低下を最小限に抑えることができる。
【0063】
連通路の高さは、3種類以外、例えば2種類としてもよいし、4種類以上としてもよい。ここで、例えば連通路の高さを2種類とし、連通路54cを持たない構成とした場合を考えてみる。この場合は、空気流量の確保のため、例えば連通路54bを領域R2,R3を含む広範囲に設置する必要があり、フレーム54の剛性が低下する懸念がある。そこで、連通路の高さは、
図4に示す3種類又はそれ以上とし、階段状に配置することがフレーム54の剛性の点、及びフレーム54内での円滑な空気流通の点からも好ましい。勿論、例えば連通路の高さを2種類とした構成であっても、1種類とした場合に比べてフレーム54の剛性を高く維持することができるため、フレーム54の材質や大きさ等の条件次第では2種類とした構成も十分有効である。
【0064】
上記では、各連通路54a~54cを切欠形状の凹部とし、それぞれの高さHを異ならせることで、冷却モジュール28の冷却性能向上とフレーム54の剛性確保とを両立する構成を例示した。しかしながら、各連通路54a~54cは、例えば仕切り壁66の一部を上下方向に薄肉に構成することで形成されてもよく、また例えば仕切り壁66を貫通する貫通孔で形成されてもよい。このように薄肉や貫通孔で形成した連通路54a~54cも含め、当該電子機器10は、各連通路54a~54cの断面積(流路断面積)を異ならせることで、冷却モジュール28の冷却性能向上とフレーム54の剛性確保とを両立させてもよい。この場合、電子機器10は、第1領域R1にある連通路54aの断面積(第1の断面積)よりも第2領域R2にある連通路54bの断面積(第2の断面積)を小さくし、さらにこの第2の断面積よりも第3領域R3にある連通路54cの断面積(第3の断面積)を小さく構成するとよい。
【0065】
電子機器10は、左右一対のファン装置32,33を備える。そして、フレーム54は、筐体14の平面視において、一対のファン装置32,33の間にある仕切り壁66に連通路54a等を形成していない第4領域R4を有する。つまり電子機器10は、左側のファン装置32の吸気範囲と、右側のファン装置33の吸気範囲とが、遮蔽壁となる第4領域R4で仕切られている。これにより電子機器10は、左右のファン装置32,33による吸気範囲が重複し、例えば一方のファン装置32の吸気量が大幅に低下するようなアンバランスな空気流通の発生を抑制できる。その結果、電子機器10は、冷却性能が一層安定し、向上する。
【0066】
本実施形態の第4領域R4は、ポインティングスティック51の設置領域を含む。ポインティングスティック51は、ユーザが押圧しながら操作するため、各キーキャップ56以上に高い剛性が要求される。この点、当該電子機器10は、ポインティングスティック51の設置位置の周囲の仕切り壁66に連通路を設けていないため(
図4参照)、ポインティングスティック51の取付剛性の低下を抑制できる。
【0067】
ところで、当該電子機器10は、フレーム54の広範囲に連通路54a~54cを設けたことにより、CPU30等からプレート状部材52に伝達された熱を連通路54a~54cを通過する空気Aの流れによって放熱することもできる。従って、当該電子機器10において、キーボード装置12を貫通する上連通孔62は必須ではない。つまり電子機器10は、上連通孔62を持たない構成としたとしても、連通路54a~54cを介してプレート状部材52の上面52aの広範囲に外気が流通し易く、キーボード装置12の温度上昇の抑制が可能である。この場合、連通路54a~54cは、可能な限り多く、好ましくは全ての仕切り壁66に設けられていることが望ましい。
【0068】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0069】
10 電子機器
12 キーボード装置
14 筐体
28 冷却モジュール
30 CPU
32,33 ファン装置
45 上吸気口
52 プレート状部材
54 フレーム
54a~54c 連通路
61 開口部
62 上連通孔
65 キー配置孔
66 仕切り壁