(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-20
(45)【発行日】2023-06-28
(54)【発明の名称】汽水淡水化のためのエネルギー効率の良い低ファウリング高回収逆浸透システム
(51)【国際特許分類】
C02F 1/44 20230101AFI20230621BHJP
B01D 61/58 20060101ALI20230621BHJP
B01D 65/02 20060101ALI20230621BHJP
【FI】
C02F1/44 G
B01D61/58
B01D65/02
C02F1/44 A
(21)【出願番号】P 2021509225
(86)(22)【出願日】2019-08-19
(86)【国際出願番号】 US2019046984
(87)【国際公開番号】W WO2020041160
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2022-08-18
(32)【優先日】2018-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521553025
【氏名又は名称】サープラス マネージメント,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】アグニホトリ,ディリープ,クマー
(72)【発明者】
【氏名】バレッリ,ジョン,ジョセフ
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-221466(JP,A)
【文献】米国特許第06299766(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0244339(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0067341(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/44
B01D 61/00-71/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各段階が圧力容器内に複数の膜要素を有する前記圧力容器で構成された第1段階、第2の段階、及び第3段階の3段階逆浸透システムを用いて水を処理するための淡水化プロセスであって、
前記第1の段階、
前記第2の段階、及び
前記第3の段階
の各段階は、供給入口流、濃縮物出口流、及び透過物出口流を有し、
各段階の圧力容器の数は後続の段階において減少し、
前記3つの段階は、前記透過流が並列に流れ、前記濃縮流が後続の段階を通って直列に流れるよう構成され、
定置洗浄(CIP)システムを備え、前記CIPシステムは、前記3つの段階から複合透過物フロー若しくは複合濃縮物フロー、又はその両方を受け取り、
複数のバルブ及び並列配管を用いて、前記供給流の第1の成分は、前記第1の段階の入口に流れるよう構成され、前記供給流の第2の成分は、前記第2の段階の入口に流れるよう構成され、前記供給流の第3の成分は、前記第3の段階の入口に流れるよう構成され、
前記第1の段階からの濃縮物出口流は、前記供給流の前記第2の成分と混合して、前記第2の段階のための混合供給入口流を作り、前記第2の段階の前記濃縮物出口流は、前記供給流の前記第3の成分と混合して、前記第3の段階のための混合供給入口流を作り、
前記供給流の前記第2の成分は、前記供給流の15~30%であり、前記供給流の前記第3の成分は、前記供給流の10~20%であり、
通常運転中
、前記供給流の前記
第2の成分は
前記第2の段階へ連続的又は断続的
に流入し、前記供給流の前記第3の成分は連続的又は断続的に第3の段階へ流入し、
前記通常運転中に用いられる前記第2及び第3の段階への前記複数のバルブ及び並列配管もまた、
前記3段階逆浸透システムが前記通常運転を停止するオフラインCIPプロセスに用いられる、
淡水化プロセス。
【請求項2】
前記3段階逆浸透システムは3:2:1のステージング比を有する、請求項1に記載の淡水化プロセス。
【請求項3】
前記第3の段階は、前記
第1段階及び前記第2段階が運転している間、断続的にオフラインにされ、保守のために隔離され、前記隔離の期間は1~100分であり、前記隔離の頻度は1~100時間に1回である、請求項1に記載の淡水化プロセス。
【請求項4】
前記
3段階逆浸透システムの前記第3の段階は、直列に接続された2つの圧力容器の直列の組み合わせであ
る、請求項1に記載の淡水化プロセス。
【請求項5】
プロセスフローは、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)を介して制御され、新規のプロセス特性を達成するための決定は、調整可能な期間、頻度、生産速度、流量、回収率、圧力、及びフロー条件を用いてPLC内でプログラムされる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
前記第3の段階は、保守の一部として、ファウリングを破壊し、スケール形成種子を溶解するために化学物質の断続的な注入を受け、断続的な化学物質注入の期間は0.5~60分であり、断続性は1~100時間であり、通常運転中又は保守のための前記第3の段階の分離の開始時のどちらか一方に生じる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
前記
3段階逆浸透システムの前記第3の段階は、10~50%の追加供給流により定期的に洗浄される、請求項1に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
本発明は、一般に、淡水化の分野に関し、主に、汽水(100~20,000mg/Lの範囲における全溶解固形物、TDSとして定義される)淡水化に焦点を当てている。この出願において開示する新規の概念は、ナノろ過(NF)及び逆浸透(RO)システム、並びに、RO及びNF膜を2つ以上の段階においてタンデムで利用するプロセスに特有のものである。この発明は、新規の淡水化方法を中心として、1)ファウリング及びファウリングの可能性を低減すること、2)エネルギー消費を削減すること、及び3)機器のコストを削減すると同時に、洗浄性を向上させ、定置洗浄(CIP)プロセスを簡素化すること、に対して焦点を当てている。最終的な成果は、汽水淡水化のための新規な低ファウリング、高回収、エネルギー効率の良い逆浸透システムである。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
発明の範囲を制限することなく、その背景は、NF/RO膜技術を用いて全溶解固形物(TDS)を除去するための浄水膜に関している。浄水の一次処理は、凝固/凝集プロセスと、それに続く、バッグフィルタ、カートリッジフィルタ、複合媒体、サンドフィルタ、及び微細又は限外ろ過膜等の多孔質媒体を用いる浮遊物質の除去による、バイオリアクタ又は清澄器等の生物学的又は化学的方法を伴っていてもよい。一次処理プロセスにおいて、溶解固形物及び不純物を除去することはできず、有機物及び浮遊物質にのみ焦点を当てている。加えて、冷式石灰軟化法、NF又はRO法等の二次処理プロセスが、ナトリウム、塩化物、硫酸塩、炭酸塩、ケイ酸塩、カルシウム、マグネシウム等の溶解固形物の除去(淡水化)のために実施されている。
【0003】
膜は、淡水化用途に対して極めて効率的でエネルギーに優しいことが証明されている。それらは、流入水から特定の物質、例えば、Na+、Cl-、Mg2+、Ca2+、SO4
2-、Al3+、N3-等の一価、二価及び三価イオン、並びに、糖、化学物質、有機分子、及び他の高分子等の他の高分子量物質の形での全溶解固形物(TDS)を除去するよう設計され、高度に最適化されている。RO膜は、Na+Cl-イオン等のイオンの最小物を排除するよう最適化される一方で、NF膜は、僅かに大きく、より帯電したCa++及びMg++イオンを排除するよう最適化され、溶解塩類を除去するために採用されている。
【0004】
RO又はNF膜は、大部分の分離が生じる帯電した高密度のバリア層(通常はポリアミドフィルム)を有するポリマーマトリクスを有しており、バリア層は、大部分の水を通過させる一方で、塩イオン等の溶質の通過を拒絶する。これらの膜は、様々な塩濃度(10~40,000パーツパーミリオン[ppm])の水を処理することができ、供給流から塩の98~99.8%(NF膜の場合は50~90%)を除去することができる。プロセスは、塩分濃度に対応する浸透圧を克服するために、通常、汽水(100~10000ppm TDS)に対して50~300psi、高TDS(10000~25,000ppm TDS)の汽水に対して300~600psi、及び海水(30,000~40,000ppm TDS)に対して600~1,000psiの高圧を膜の供給側にかける必要がある。
【0005】
ろ過中、NF/RO膜は、水を透過させる一方で、溶解固形物を排除し、結果として溶解イオンの濃度を増加させ、膜表面近傍に濃度分極(CP)層の形成を可能にする。膜表面近傍で濃度分極が発生すると、汚染物質、硫酸塩、炭酸塩、ケイ酸塩、コロイドシリカ等のスケーリングイオン、及びバクテリア、バイオフィルム、バクテリアの餌(硝酸塩)等のような生物元素の濃度が増幅し、多くの場合、膜表面のスケーリング及びファウリングを加速させる。加えて、CP層は浸透圧を増加させ、結果として、同じ透過性に対してより高い正味駆動力に対するニーズを生じる。結果として、膜は定期的な洗浄及び保守を必要とする。時間の経過と共に、不可逆的なファウリングが発生し、膜の性能、回収率、エネルギー消費量、CIPの期間、CIPの頻度、CIPの容易さに悪影響を及ぼし、全体的な効率及び運用コストに直接影響を及ぼす。
【0006】
膜表面上、特に低混合の領域において、高濃度のCP層及び汚染物質の濃度の増加は、イオンの析出の原因となり、スケーリング及び生物付着を加速する種地に対して好ましい条件を作成する。膜表面近傍のケーキ形成又は濃度分極層形成の問題を軽減するため、幾つかのストラテジーが現在の最先端のNF/ROシステムで用いられる。これらのストラテジーは以下を含む。
1.膜モジュールの長さに沿った混合を促進する特殊な形状及び大きさを有する膜スペーサ。Shenwei[001]による博士論文は、様々なスペーサ設計及びクロスフロー速度がどのように混合を提供し、CP層へのその影響、及びデッドゾーンが形成される領域への反映をモデル化しようとしている。Sheweiの論文に示されているように、スペーサ接合部のすぐ近くの領域は、最小の流速及び最大の塩分濃度を有している。これらは、初期の結晶化又は生物付着シードにとって理想的な場所となる。時間の経過と共に、シードは接合領域から大きく外側に向かって成長し、混合及びクロスフロー速度が浮遊物質又は沈殿物を遠ざけるのに十分な開いた膜空間に影響を与え始めるが、しかし、スケール又は生体汚染のシードが確立されると、それらは乱流域でも急速に成長して、膜表面の大部分を汚染及びスケール化する。
2.結果としてより高いエネルギー消費を生じる摩擦損失の増加を代償にして得られる、膜表面近傍のより高いクロスフロー流体速度。一部の膜メーカーは、より高い摩擦損失を有するが、CPと特定のスペーサ設計の改善した混合を有してファウリングを低減する膜を提供している。Geraldes他[002]は、はしご形スペーサを有するNF/RO渦巻形モジュールにおける流体力学及び濃度分極を示した。
3.親水性を高め、電荷を減らし、平滑にして、種地の形成を遅らせる汚染物質の付着を低減させる膜表面の改質。多くの膜メーカーは、ポリアミド層をより親水性にするためにそれに製造後の表面改質を施しているが、しかし、それら市販の膜はせいぜい50~60度程度の水滴接触角に及ぶ。最近、UT-TexasのFreeman他[003]によるポリドーパミンベースのコーティングが、NF/RO膜上で25~35度の範囲の水滴接触角と共に、親水性及び表面電荷の大幅な改善、従って、膜表面への汚染物質の付着の大幅な減少、洗浄プロセスに対する良好な反応を示した。
4.特定の種類の水に対して臨界流束の限界で動作するNF/RO膜システムの設計及び操作。臨界流束は、膜の単位面積当たりの生成率として定義され、ここで流束は長期間にわたって安定したままであり、圧力及び質量流量の条件が安定している場合、損失はほとんど又は全くない。
【0007】
上記のストラテジーの他に、スケール防止剤の使用がスケーリングを抑制するために頻繁に行われている。スケール防止剤は、CaCO3、CaSO4、CaPO4、BaSO4、MgSO4等のスケール生成イオン種の析出を遅らせるか又はそれらの溶解限界を拡大する化学物質の配合物であり、Fe、Mn、及びAl等の酸化金属種を隔離する可能性がある。これらはNF/ROシステムの供給流に注入され、回収限界をより高いレベルに引き上げるが、しかし、スケーリング挙動を解消するのではなく、開始を遅らせるか、又は回収限界を引き上げるだけである。殺生物剤の使用は、NF/RO膜の生物付着を防ぐためにも広く行われている。工業用途において、殺生物剤の使用に対する抵抗は少ないが、しかし、飲料水用途の場合、殺生物剤の使用は極めて少ない。
【0008】
ファウリングプロセス中、種地が共形の汚染物質/スケール化物質膜に成長する期間と比較して、種地が形成される期間は桁違いに長くなり、結果として後の期間で膜性能が指数関数的に失われる。従って、種地の形成を防止、遅延、又は阻害することが極めて望ましい。残念ながら、今日のNF/ROシステムのほとんどは、設定された生産ポイント(生産需要)で稼働され、運転作業圧を上げることにより、ファウリング及びスケーリングによる流束の損失を自動的に補償している。オペレータは、時間の経過と共に運転作業圧の上昇があること、これはまた、複数の要因、(a)給水温度の低下、b)膜の汚染、c)塩分濃度の増加による可能性のあることを観察する以外に、システムが時間の経過と共にどのように汚染されているかを知らない。そして、ポンプがその圧力限界に達すると、システムはもはや要求された製品の需要を生成することができなくなる。この時点で、オペレータはシステム全体をCIPプロセスにかける以外に選択肢はなく、これには、8~12時間かかる可能性があり、低pH若しくは高pH、又はそれらの組み合わせによる洗浄ステップを必要とする場合がある。運転作業圧の上昇に対する3つの原因のうち、温度及び塩分濃度の変化はプローブを通して見ることができるが、しかし、ファウリング情報を監視するのは容易ではない。温度及び塩分濃度が正規化されたデータのみが、膜がファウリング(又はスケーリング)を被っているかどうかを示すことができる。大部分の実用的な実装において、NF/ROシステムは通常、汚染又はスケールが生じ、先制介入に対するオプション無しでは動作不能な状態のポイントに達する。そして最終的には、システムがサービスを停止している間にオフラインCIPを実行しなければならない。CIPサイクルが繰り返され、膜除去性能が繰り返されるCIPにより低下し、最終的には交換が必要となる。
【0009】
理想的なシナリオにおいて、ファウリング及びスケーリング種子が形成された状態の大部分を解消する操作中に形成された場合の種地の除去に加えて、種子成長プロセスの中断と共に、NF/ROシステムが種地形成の開始を遅らせることができる場合、それらの急速な成長が差し迫っており、結果として、流束の損失又は圧力の上昇を伴う共形スケーリング又は生物付着が発生し、システムをCIP無しで復帰できない点にしてしまう。この発明の淡水化プロセスにおいて、出願人は、本明細書で説明する理想的なシナリオを達成すると同時に、上の段落9で概説したエネルギー損失及び臨界流束の問題に対処するための進歩性を教示している。
【0010】
CIPプロセス中、効果のない洗浄は、特に、洗浄化学物質の濃度、pH、温度、又はCIPの期間が十分でない場合、一般的に遭遇する課題である。加えて、効果のない洗浄の場合、ファウリング/スケーリングの領域がCIPの後に残り、後続のファウリング/スケーリングサイクルの種地になる可能性があり、これは、種地の存在により加速され、結果として運用期間が短くなり、後続のCIPサイクル間の膜システムに対するエネルギー需要が増加する。この課題は、この出願において教示する進歩性により最小限に抑えることができる。
【0011】
過去2~30年間、汽水淡水化は、単位膜面積当たりの生産量を最大化し、単位製品当たりのエネルギー使用量を最小化することに焦点を当て、広く採用されてきた。エネルギー回収法の使用は海水産業において広く用いられているが、しかし、汽水淡水化システムは高回収率(75~90%)及び低圧(100~300psi)で動作するため、加圧濃縮物からのエネルギー回収の実施に対する機会は、容量が重要ではなく、濃縮流の圧力が低い(50~250psi)ため、あまりない。これは、エネルギー回収タービン又は交換器の使用を非効率的且つ高価にする。最小のエネルギーで最大の回収率という目標を達成するため、多段NF/ROシステムが進化してきており、ここで、1つの高圧ポンプが、通常、各圧力容器内に複数の膜を有する直列(又は複数段階)に結合される複数の圧力容器に供給する。各段階における圧力容器(PV)の数は徐々に減少して、供給流量の減少を補償し(供給流量の一部がろ過され、透過水生成を通して除去されるため)、圧力容器内の流速を最適な範囲内に維持する。3段階のRO構成は、一般に、A-B-C:xMと表記され、ここで、A、B、及びCは、第1、第2、及び第3の段階におけるPVの数に対応し、及びxMは各PV内の膜の数に対応している。かかる設計には決まったルールはないが、しかし、ベンダーは通常、3-2-1(3段階の3-6M)又は4-2(3-6Mを有する2段階)のラインに沿ったステージング比率を設計し、更には2-1-1又は3-2-1-1は市場で見られる。最適な構成を考案するため、膜ベンダーはROSA(Dow Chemicals製)、WINFLOWS(GE/SUEZ製)、IMSDesign(Hydranautics製)等のシミュレーションソフトウェアを提供し、ユーザは、膜の種類、水の化学的性質、温度、処理すべき流れのpHを入力し、ステージ構成にとって最適な設計を考案する。ガロン/分(gpm)での流量、1日当たりのガロン/平方フィート(gfd)での流束、psi(デルタP、DP)での供給圧力及び圧力損失、並びに、TDSとしてのmg/Lでの供給及び浸透水品質に対するソフトウェアWinflowsからのかかるシミュレーションの一例を、ここで以下の表1に示す。
【0012】
【0013】
上記の例は、各PV内に6つの膜要素を有し、合計54の膜要素(それぞれ400ft
2)を有する4-3-2設計について説明している。表から見て取ることができるように、各段階に対する供給圧力は(摩擦及び透過水の容積損失による膜要素内の圧力損失により)減少する一方で、各段階に対する供給のTDSは流束回収率に比例して増加する。以下の段落で検討するように、多段階設計には、システムのファウリング及びスケーリングを助長する幾つかの重大な欠点がある。以下で検討する欠点は、提案された新規の淡水化システムにより対処される。
1.上の例において、段階1、2、及び3の透過水回収率(供給に対する透過水の比率)は極めて類似する(42~46%)が、しかし、3つの段階の平均流束(gfdでの)は大幅に異なり15.0~10.7、実質的に変化する(>25%)。更に各要素の流束を調べると、第1の段階における先頭要素と第3の段階における末端要素との間の差は大きい可能性がある(>50%)。システム全体から必要な生産を達成するため、単一のポンプからの初期供給圧力を利用しながら、最高圧力及び最低塩分濃度により、第1の段階において先頭要素からの生産量が最高となり、結果として、大幅に高い流速での第1の段階の運転を生じる。膜を通過できない任意の粒子又は有機物は、第1の段階の膜を汚染する可能性が高い一方で、第3の段階及びその末端要素は、圧力が最小且つ塩分濃度が最大となり、結果として流束が大幅に低下する。この過剰流束(第1の段階)及び不足流束(第3の段階)は望ましくなく、第1の段階の生物付着及び粒子付着の主な原因となる。
2.上の例において、供給流イオンは段階的に濃縮され(その99%以上が膜によって除去され、後続の段階において供給内に残るため)、それらが最終段階の最後の要素に到達するまでに、イオン濃度は約4~6倍に増加し、段落10で検討したように、様々なイオン対種の析出条件を作る。イオン対種の溶解度指数、水の化学的性質、温度、pH、及び対イオンの利用可能性によっては、すぐに析出するものもあれば、析出するのに時間がかかるものもある。更に、流速及び表面相互作用によって、スケール種子を形成するものもあれば、単にシステムを出るものもある。残念ながら、最終段階におけるスケール形成種の濃度は最大濃度状態に達するため、それはもしもとしての問題ではないが、析出がいつ生じ、膜がスケーリングし始めるかが問題である。
3.今日のシステムは、また、回収率を管理する一方で、設定された透過水生成率を要求するための「濃縮制御バルブ」も用いている。これらのバルブは一般に手動で静的であり、最初は所定位置に設定され、長期間そこに放置される。加えて、
図1に示すように、バイパスバルブが、また、システムのCIP、浸透洗浄、又は供給洗浄中に用いるための「濃縮制御バルブ」と並列してより高い流量を可能にするために用いられ、濃縮制御バルブは設定後に変更されることはほとんどない。ROシステムの終端近傍の給水の高いスケーリング傾向により、スケーリングは「濃縮制御バルブ」で始まる可能性があり、最後の要素に向かって後方に伝播し、次いで、更にシステムの前面に伝播する。
4.表1に示すように、第1の段階において大幅な圧力損失があり、続いて第2の段階において圧力損失が幾らか減少し、第3の段階において圧力損失が最小になる。第1の段階での圧力損失は、段階間の流束の大幅な違いの背後にある主な要因である。供給流のイオン濃度が増加すると、同じ流束を達成するために必要な浸透圧も同様に増加する。従って、第1の段階における圧力損失は第2及び第3の段階における生産に対して作用し、第2の段階における圧力損失は第3の段階における生産に対して作用する。理想的には、複数の段階にわたる流束のバランスを改善し、第1の段階のファウリングを減らすために、第1の段階における圧力損失を減らすことが重要である。
5.多段設計は、流速の最適化に対して極めて興味深い利点を可能にするが、しかし、給水の変化に対応するための柔軟性には欠ける。透過水の生成は段階を経て生じるため、後続の段階に対するPVの数を減らすことで、任意の特別な労力を必要とせずに、ある特定の範囲におけるクロスフロー速度を維持することが可能となる。クロスフロー速度が低すぎると混合が不十分になり、従って、CP層が強くなり、汚染物質と膜表面との間の接触時間が長くなり、結果としてスケーリング及びファウリングの可能性が高くなる。同様に、クロスフロー速度が高すぎると、過度の圧力損失及び摩耗損傷の可能性が高まるが、接触時間の短縮によるファウリング/スケーリングの低減に役立つ。推測すると、第1の段階は主に過剰流束運転による有機物及び粒子ファウリングの影響を受けやすい一方で、最終段階は主にイオン濃度及び析出の増加によるスケールファウリングの影響を受けやすくなる。従って、第1の段階において高すぎる速度を引き起こさないよう保護しながら、最終段階においてより高い交差速度を達成することが望ましい。かかる目標は、静的な設計で後続の段階における容器の数を減らすことによって達成され、従って、水の塩分濃度及び温度の変化に対応する柔軟性が低くなる。
【0014】
多段ROシステムの洗浄性には大きな課題が存在する。
図1は、全ての段階を組み合わせた保守のための順次及び段階的CIPを利用する現在最先端の段階的RO/NF汽水システムのプロセスレイアウトを示している。図面から明らかなように、CIP中、洗浄液は、膜表面上の汚染物質及びスケール化物質と相互作用するよう、3つの段階を順番に通過しなければならない。これにより、先頭段階から末端段階に移動するにつれて洗浄化学物質の濃度が低下する(消費される)ため、後端段階と比較して、段階を先導することにおいて洗浄剤と汚染物質との間の高い反応速度が可能となる。これにより、結果として先頭段階における洗浄が比較的効果的になり、より汚染された流れが、CIP中に生成された微粒子、特に鋭いスケール微粒子による後の段階の膜の摩耗損傷の危険がある後の段階を通過することを可能にする。加えて、溶液全体の流量は、第3の段階により可能となる最大流量によって制限され、従って、先頭段階の流速が制限される。一実施例において、3-2-1 8インチの圧力容器構成は、75GPMの最大流量を制限し、第1の段階における25GPM、第2の段階における37.5GPM、第3の段階における75GPMのみを可能としてもよい。これにより、各膜を通過する化学物質が増えるにつれて、後の段階に対する反応速度の損失を幾らか回復することが可能となるが、しかし、流速が大幅に増加し、最終段階における反応速度を幾らか支援するが、摩耗による膜表面への重大なリスクが生じる。
図1に示すプロセスレイアウトは、操作の観点からプロセスが単純であり、バルブ/制御要件が少ないために機器の初期コストが削減されるため、一般的に用いられている。しかし、これには、洗浄サイクル毎に膜の寿命及び性能が悪影響を受けるというトレードオフを伴う。
【0015】
上で特定及び検討した欠点の幾つかは、他の方法で対処されてきたが、限界がある。例えば、過剰及び過少流束の問題は、最終濃縮物の一部が高圧ポンプの前に供給段階の入口において供給され、給水のTDSの全体的な増加が可能となる濃縮物再循環ループによって改善されてきた。これにより、結果としてより高い圧力における運転が生じ、先頭段階の過剰流束に役立つが、しかし、次のコストがかかる-a)より高いエネルギー使用量、b)透過水の塩分濃度の増加、c)スケーリング種がシステム内でより多くの滞留時間を取り、第1の段階においてスケール種子を生成する可能性さえあり、これにより長期的にはシステム全体のスケーリングを促進する第1の段階へのスケーリング条件の導入。最新世代のスケール防止剤(AS)は、AS剤の溶解限度及び金属イオン封鎖能力を押し上げ、85~90%の範囲の回収率を可能にしたが、しかし、未だ、回収率を更に高め、濃縮物の容積を削減する差し迫った要求がある。
【0016】
Dows Reverse Osmosis Membrane Technical Manual[004]及びErickson他によるGE/SUEZのプレゼンテーション[005]等の引用文献を更に参照して、RO膜を通る流束を計算することができる方法及びイオン濃度(浸透圧)、温度、並びに、速度及び浸透による圧力損失等の給水化学へのその依存性を理解することができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
発明の概要
この出願において教示する新規発明は、段落15で概説した6つの課題全てに対処しており、以下を提供する-a)段階間の流束バランスを増加させ、結果として第1の段階のファウリングを低減し、-b)定常スケール形成条件を分断し、結果として最終段階のスケーリングを低減し、-c)複数の段階を通してより柔軟で最適なクロスフロー速度による運転を可能にすると同時に、4~10%のエネルギー消費を提供する第1の段階により圧力損失を低減し、-d)濃縮バルブのスケール可能性を低減し、-e)幾つかの方法を通してスケーリング又はファウリングを積極的に分断することによってCIPのためにシステムをオフラインにする頻度を減らし、-f)バルブの数を減らしたCIPの容易さ及び有効性、最後に-g)残りのシステムを生産モードにしながら、保守のために最終段階を分離することによりシステムの運用を維持する。この出願における進歩性は、「発明の説明」の節に更に要約されている。
【0018】
図面の簡単な説明
本実施形態及びその利点のより完全で徹底的な理解は、添付図面と併せて取り入れる以下の説明を参照することによって得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】組み合わせた全ての段階の洗浄のための順次及び段階的CIPを利用する、現在最先端の段階的RO/NF汽水システムのためのプロセスレイアウトである。システムは、4つの自動バルブ(AVx)、1つの調整可能な玉形バルブ(AGVx)、及び自動又は手動動作することができる4つのバルブ(AVx/HVx)により動作して、CIPプロセスを支援することができる。CIPセグメントの一部であるバルブを除いて、適切なシステムの運転及び保守には、合計9つのバルブが必要である。
【
図2】各段階の保守のために並列又は独立したCIPを利用する、現在最先端の段階的RO/NF汽水システムのためのプロセスレイアウトである。システムは、4つの自動バルブ(AVx)、1つの調整可能な玉形バルブ(AGVx)、及び自動又は手動動作することができる8つのバルブ(AVx/HVx)により動作して、CIPプロセスを支援することができる。CIPセグメントの一部であるバルブを除き、適切なシステムの運転及び保守には、合計13個の調整可能なバルブ(バルブ1~13として識別される)が必要である。
【
図3】各段階の保守のために並列又は独立したCIPを利用する、新規の(赤及び破線でマークした)段階的RO/NF汽水システムのためのプロセスレイアウトである。システムは、3つの自動バルブ(AVx)、2つの調整可能な玉形バルブ(AGVx)、1つの静的逆止弁、及び自動又は手動動作することができる4つのバルブ(AVx/HVx)により動作して、CIPプロセスを、各段階に対して独立するか又は各段階に対して並列するかのどちらか一方により支援することができる。CIPセグメントの一部であるバルブを除き、適切なシステムの運転及び保守には、合計9つの調整可能なバルブ(バルブ1~9として識別される)及び1つの静的逆止弁が必要である。
【
図4】第1及び第2の段階から透過水供給に向かう生産を維持しながら、運転中に第3の段階の部分的及び完全分離を示す、新規の段階的RO/NF汽水システムのプロセスレイアウトの一部(
図3の文脈において赤でマークした)である。部分的分離において、第3の段階からの透過水は透過水迂回ラインに送られ、システム設計に追加される自動化3方向バルブを必要とする。完全分離において、部分的分離ステップに加えて、第1及び第2の段階からの濃縮物は、自動バルブAV10を通って且つ逆止弁CV3と共に第3の段階を完全にバイパスしてAGV7に直接送られる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
発明の説明
本発明の様々な実施形態の作成及び使用を以下で詳細に検討するが、本発明は、広範な特定の文脈において具現化することができる多くの適用可能な発明の概念を提供することを正しく認識するべきである。本明細書中で検討する特定の実施形態は、発明を作成及び用いるための独特な方法の単なる例示であり、発明の範囲を定めるものではない。
【0021】
この発明の理解を容易にするため、幾つかの用語を以下に定義する。本明細書中で定義する用語は、本発明に関連する分野の当業者によって一般的に理解されるような意味を有する。「a」、「an」及び「the」等の用語は、単一の実在物のみを指すことを意図したものではなく、特定の実施例を説明に用いる可能性がある一般的な部類を含んでいる。本明細書中の用語は、発明の特定の実施形態を説明するために用いられるが、それらの使用法は、特許請求の範囲に概説するものを除いて、発明を定めるものではない。
【0022】
図1及び2を含む背景技術の節における現在の技術、課題、及び限界の開示と共に、この節は、更に、先に要約し、
図3及び4を参照して更に検討する発明の説明的な詳細を提供する。
【0023】
本発明の一実施形態において、供給量の一部は、ROの第1の段階をバイパスし、バルブAV4/HV4を有するラインとして
図3及び4に示す並列ラインを直接利用して第2の段階のNF又はROに送られる。バイパス量は、総供給量の15~30%の範囲である。第1の段階における圧力損失は、第2の段階に供給する配管における圧力損失よりも大きいため、注入ポンプ又は圧力ブーストを必要としない。これにより、結果として以下の影響-a)システムから同じ全体的な生産を達成する運転作業圧の低下、-b)第2の段階に進む体積の圧力損失が解消されると同時に、第2の段階においてブーストされ、結果として、第2及び第3の段階における生産量が増加するため、第1及び最終段階の間の増加した流束バランス、を生じる。4%を超える一般的なエネルギー節約がすぐに達成され、流束範囲が40%を超えて減少する。以下の表は、一実施例として、一般的なRO膜による200GPMの透過水を生成するための4-3-2:6M構成を有するROに対する発明の影響を示している。以下の表に示すように、現在最先端の3段階システムは183.1psiで200GPMを生成し、第1及び第3の段階においてそれぞれ14.8及び11.4の平均流束を有する一方で、20%バイパスは172.8psiで同量を生成し、5.6%のエネルギー節約並びに第1及び第3の段階においてそれぞれ14.2及び11.8の流束を有し、ユニット全体で3.4GFDから2.4GFDに流束の不均衡の縮小に至る。この発明の実施形態内で、システムはエネルギーを節約し、結果として、流束がより均一に分配されるように、第1の段階のファウリングが減少している。
【0024】
【0025】
本発明の一実施形態において、段落27の発明は、適切な大きさのライン又はラインサイズの組み合わせと共に自動バルブ(AV)若しくは手動バルブ(HV)又は自動玉形バルブ(AGV4)を有するAV4/HV4の実装によって達成され、バルブは、発明に必要な総供給量バイパス能力の15~30%を達成するために用いられる。
【0026】
本発明の一実施形態において、ROの複数段階にわたる流束の範囲は、標準的な膜と比較して、低エネルギー(LE)又は超低エネルギー(ULE)膜と共に用いられる場合に大幅に減少する。これは、ROの運転作業圧に対するROの3つの段階にわたる圧力降下の比率が、高い透過膜により大幅に高くなるためである。
【0027】
本発明の一実施形態において、ROの複数段階にわたる流束の範囲は、それらがファウリング及びスケーリングに対して耐性であることを可能にする親水性コーティングを有するRO膜と共に用いられる場合、著しく減少し、従って、より高い流束での運転が達成可能であるが、しかし、流束範囲は、より高い流束の利点を活用するにはボトルネックとなる。3段階にわたる流束範囲の狭小化により、親水性コーティング[3]の利点は、提案する発明により、より利用し易いものとなる。
【0028】
本発明の一実施形態において、供給量の一部は、ROの第1及び第2の段階をバイパスし、バルブAGV3を有するラインとして
図3及び4に示す並列ラインを断続的に利用して第3の段階のROに送られる。AGV3は、スケールの生成を防ぐために必要な頻度で、膜表面近くの低速でCP層及びスケール種の発生しやすい領域を攪拌及び洗い流すのに十分な期間、断続的に開放される。バイパス量は、総供給量の10~20%の範囲である。再度、第1及び第2の段階における圧力損失は、第3の段階に供給する配管における圧力損失よりも大きいため、注入ポンプ又は圧力ブーストを必要としない。AGV3は、濃縮物回収バルブAGV7の開放及び供給ポンプの起動と共にゆっくりと開かれて、断続的な注入期間中にシステムにおいて同じ生産量を維持する。発明のこの実施形態は、結果として第3の段階における定常状態のスケール形成条件の分断をもたらす。断続的な注入期間中、以下の変化がシステムに生じる-a)第3の段階内の流れのTDSが20~40%減少し、スケール形成定常状態の完全な分断をもたらす、-b)第3の段階における速度が25~50%増加し、スケール種が形成される可能性が高いデッドゾーンの急速な混合をもたらす、-c)システムの全体的な回収が一時的に5~10%低下する。第3の段階におけるスケール形成条件のこの分断をもたらすよう、全体的な回収に幾らかのコストを支払うが、しかし、かかる分断の頻度は、全体の運転期間の10%未満である可能性があり、結果として全体の回収に関して0.5~1%のみの減少である。しかし、システムがスケーリング条件からの汚染を受け難く、CIP要件の前に大幅に長い運転期間が可能になるので、洗浄サイクルが短縮又は廃止されるため、全体的な生産性は高くなる。
【0029】
本発明の一実施形態において、HGV4及びAV3として
図1に示し、HGV12及びAV11として
図2に示す静的濃縮バルブ及びCIPバイパス用の並列バルブは、AGV7として
図3及び4に示す単一の自動玉形バルブで置き換えられる。段落15.3で先に検討したように、静的濃縮バルブは、システム内のスケール形成の開始点であり、第3の段階の断続的な洗浄中に定期的に開放され(段落29)、他の時間の間に通常状態に閉じて戻る自動玉形バルブは、スケールが形成される可能性が大幅に低く、断続的な洗浄ステップ毎にそれ自体を継続的に洗浄することが期待される。バルブからスケールを除去する他に、これは、スケールが大きくなり、濃縮物回収フローが更に減少するように、ROシステムが濃縮物回収バルブ上でスケールを発生させて濃縮物回収バルブを通る流量が減少するシナリオを防ぎ、システムは、繰り返して(最大回収限界を超えて)加速スケーリングの範囲に入り、結果として最終的にシャットダウン及び化学洗浄の要件をもたらす数時間にわたる加速スケーリングを可能にする。この発明は、膜及びバルブを含むシステム全体の低減されたスケーリング特性を提供し、同時に、全体的な生産を安定して保ちながら、CP分断のための断続的な洗浄も同様に支援する。
【0030】
本発明の一実施形態において、高圧注入ポンプが第3の段階の入口に配管され、以下の対策を可能にする-a)スケール析出限界を管理するようpH調整化学物質又はスケール防止剤のどちらか一方のリアルタイム連続注入、-b)通常のオンライン運転中に形成された可能性のあるスケール種子を除去するよう化学物質の断続的な注入、又は-c)第3の段階が回収及び保守のためにオフラインにされる一方で、残りのシステムが生産のためにオンラインである場合の状態の間、特に
図4に示すように、第3の段階を浸すよう化学物質の注入。本発明のこの実施形態は、生産をオンラインに維持しながら、スケール形成条件の連続的又は周期的な分断の別の次元を可能にすると共に、オフラインモードでの第3の段階の部分的保守を可能にしている。
【0031】
段落27~31において説明した発明の4つの実施形態は全て、第1の段階におけるファウリングの可能性を減らし、次いで、システム全体にわたるスケーリング現象を頻繁に且つ積極的に分断することによって、CIPのために完全にオフラインにするニーズを必要とせずROシステムの長期運用を可能にする。
【0032】
図1の文脈内で段落16において検討したCIPの限界は、
図2に示すプロセスレイアウトによって対処される。
図2に設定された追加のバルブの助けにより、3つの段階全てを並列に又は一度に1つずつ、化学物質の最適なフロースルー速度で洗浄することができる。例えば、8インチ当たり30GPMの圧力容器は、最適化されたCIP流量であり、これは高いクロスフロー速度を排除し、従って、粒子摩耗による損傷のリスクが軽減され、膜への化学物質の供給速度(接触時間)を同じにすることが可能となり、従って、3つの容器全てについて同様の速度で洗浄し、これはオペレータに対する簡単な指示に変換する。良好に計画された配管ヘッダは、全ての段階を同時に洗浄する場合、3つの段階に分割される供給水の3-2-1の比率を可能にする。代替として、各段階に対するポンプ流量を調整して、一度に1つずつの段階洗浄することができる。
図2のレイアウトは、また、現在の最先端技術も反映しており、
図1の文脈内で検討した課題に対処するが、しかし、特に自動ではないバルブを用いて手動で行う場合、機器のコスト並びにCIP操作の複雑さが大幅に増加する。
【0033】
本発明の一実施形態において、一対のバルブが第1/第2及び第2/第3の段階の間に追加され、
図3及び4にAV5/HV5及びAV6/HV6として示されている。この発明の実施形態内で、これら2つのバルブは、バルブAV2/HV2、AGV3、AV4/HV4、CV2(逆止弁)と組み合わされる場合に、全ての段階の同時CIPを可能にしている。
図3に示すこの新規プロセスレイアウトは、
図2で参照するような複雑さ及びコストの削減(13バルブ対9バルブ)と共に、
図1で参照する問題(段階的CIP)を解決する。
図2に示すように、3段階システムの並列CIPを実現するには、合計13個のアクティブバルブを必要とする。しかし、2つの段間バルブ、及び段落27~31に開示した機能を有する追加バルブにより、合計9つだけのバルブが、同じ3段階システムの並列CIPを実現するために必要とされる。これは結果として、元の機器のコストが削減され、多段式の洗浄性が向上し、膜の寿命が長くなり、及び、年間の洗浄サイクルが全体的に少なくなり、NF/ROシステムのCIPに対する時間が短縮されるため、稼働時間が向上する。9つのアクティブバルブのみを用いるCIPプロセスのためのフロー矢印については、
図3を参照されたい。
【0034】
本発明の一実施形態において、
図4の文脈において排他的に検討したように、自動バルブAV10、3方向バルブ3WV1、及び逆止弁CV3に対するオプションが、最初の2つの段階の運転を可能にするよう利用可能である一方で、第3の段階は、保守のためにオフラインにされるか、又は、結果として限界の生成水質を生じ、第3の段階からの透過水の分流を必要とする可能性がある段落31に開示したオンラインの断続的な保守が行われる。
図4に示すように(
図3との違いを示すために赤でマークされる)、第1及び第2の段階から「透過水供給」に向かう生産を維持しながら、第3の段階の部分的又は完全な分離が達成される。部分的分離の場合、第3の段階からの透過水は「透過水迂回ライン」に送られ、
図3のシステム設計に追加される自動3方向バルブを必要とする一方で、完全分離の場合、部分的分離ステップに加えて、第1及び第2の段階からの濃縮物は、自動バルブAV10を通って且つ逆止弁CV3と共に第3の段階を完全にバイパスしてAGV7に直接送られる。本発明のこの開示内で、段階1及び段階2は、保守又はCIPのために停止させることなく運転させることができ、第3の段階は、短い保守期間に運転から分離させることができるため、システム全体の生産性は、最初の2つの段階の連続運転により大幅に向上する。
【0035】
本発明の一実施形態において、
図3及び4に示すような逆止弁CV2を有するCIP入口は、高圧ポンプP2の前、CV1とP2との間、特に、それを横切る顕著な圧力損失を生じることのない遠心ポンプの場合に配管されてもよい。P2のような容積式ポンプの場合、かかるアプローチは依然として可能であってもよいが、しかし、ポンプを通過することを可能にするよう、CIPプロセス中のポンプの運転を必要とする。
【0036】
本発明の一実施形態において、段落31において説明したCP分断の利点の文脈内で、システムの第3の段階は、比例濃縮物回収バルブの緩和と共に、システム全体に10~50%の追加供給量を注入することによって、10~20%の追加供給量により定期的に洗浄され、結果として、全ての段階が生産を継続し、透過水を供給しながら、3つの段階全てを部分的に洗浄する。
【0037】
上記の段落27~35における発明の方法を、3段階ROシステムを中心として教示しているが、同様の機能は、2段階システム、又は、最後の2つの段階が単一の段階として扱われ、中間の2つの段階が1つの段階として扱われる4段階システムにより達成可能である。ここで教示するように、3段階の実装に対する開示により、当業者(PHOSITA)は、低塩分レベルにおける4段階の適用又は更により高い塩分レベルでの2段階の適用において概念及び進歩性を実施することができる可能性がある。
【0038】
参考文献
1.Ma Shenwei,Concentration Polarization in Spacer Filled Reverse Osmosis Membrane Systems-PhD Thesis Submitted at National University of Singapore,2005
2.Geraldes V.,Semiao V.,Pinho,M.N.(2002)-Hydrodynamics and concentration polarization in NF / RO spiral-wound modules with ladder type spacers,Desalination,157,395-402.
3.Freeman et.al.US8017050B2 Water purification membranes with improved fouling resistance
4.Dow Reverse Osmosis Membrane Technical Manual(Section 3.11.2)-Http://msdssearch.dow.com/PublishedLiteratureDOWCOM/dh_095b/0901b8038095b91d.pdf?filepath=liquidseps/pdfs/noreg/609-00071.pdf
5.Peter K Eriksson-The International Desalination Association World Congress on Desalination and Water Reuse 2015/San Diego,CA,USA
【0039】
以下の特許請求の範囲は、このPCT出願の出願日から有効な2018年8月20日の優先日を有する米国特許出願第16/105,103号において係属中である。