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特許7299977接続および自動化された車両の予測最適制御を可能にするためのV2Xデータ拡張に基づくニューラルネットワークを使用する車両速度予測器
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-20
(45)【発行日】2023-06-28
(54)【発明の名称】接続および自動化された車両の予測最適制御を可能にするためのV2Xデータ拡張に基づくニューラルネットワークを使用する車両速度予測器
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20230621BHJP
   G06N 20/00 20190101ALI20230621BHJP
   G06N 3/04 20230101ALI20230621BHJP
【FI】
G08G1/00 D
G06N20/00 130
G06N3/04
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021519819
(86)(22)【出願日】2019-10-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-13
(86)【国際出願番号】 US2019056397
(87)【国際公開番号】W WO2020081611
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-08-23
(31)【優先権主張番号】16/162,256
(32)【優先日】2018-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507342261
【氏名又は名称】トヨタ モーター エンジニアリング アンド マニュファクチャリング ノース アメリカ,インコーポレイティド
(73)【特許権者】
【識別番号】511000957
【氏名又は名称】ザ・リージェンツ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・ミシガン
【氏名又は名称原語表記】THE REGENTS OF THE UNIVERSITY OF MICHIGAN
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(72)【発明者】
【氏名】リウ コアン エックス
(72)【発明者】
【氏名】マイク エックス.ファン
(72)【発明者】
【氏名】イリヤ ブイ.コルマノフスキー
【審査官】上野 博史
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-183150(JP,A)
【文献】特開2016-201088(JP,A)
【文献】国際公開第2017/223192(WO,A1)
【文献】特開2007-091104(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0164111(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
G01C 21/00-21/36
23/00-25/00
G06N 3/00-3/12
7/08-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが、センサデータ、全地球測位システム(GPS)データ、および車両の走行中に時間の経過においてに収集された車両状態データを備えている複数の時系列データセットを受信することと、
車両の将来の速度を示す前記複数の時系列データセットのそれぞれから、前記センサデータ、前記GPSおよび前記車両状態データを備えている特徴を抽出することと、
それぞれの時間に対応する複数の値を備えている時系列ベクトルを作成すること、または、それぞれの位置に対応する複数の値を備えている位置系列ベクトルを作成することであって、時系列または位置系列の前記複数の値のそれぞれは、
加速事象が存在する、
減速事象が存在する、または
加速事象または減速事象は存在しないということの1つを示していることと、
前記加速事象または前記減速事象を示すために、前記複数の時系列データセットのそれぞれの前記抽出された特徴に標識を付けることと、
前記加速事象または前記減速事象を示すために、前記複数の時系列データセットのそれぞれの前記抽出された特徴に標識を付けた後に、ある時間後の車両速度を予測する機械学習モデルをトレーニングするために、前記抽出されて標識が付けられた時系列データセットの少なくともサブセットを使用することと、
を有する、方法。
【請求項2】
前記加速事象または前記減速事象を示すために、前記複数の時系列データセットのそれぞれの前記抽出された特徴に標識を付けることは、
運転を開始しようとしている車両、運転を終了しようとしている車両、停止標識、交通信号灯、道路の曲がり角、幹線道路の曲がり角、および特別な曲率半径を有している道路の1つ以上の事象を示すために前記抽出された特徴に標識を付けることを有し、
前記位置系列の前記複数の値のそれぞれは、1、0、または-1に規格化されている、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数の時系列データセットのそれぞれの前記抽出された特徴に標識を付けた後に、前記抽出されて標識が付けられた時系列データセットを、前記機械学習モデルをトレーニングするために使用されるトレーニングデータセットと、テストデータセットに分割することと、
前記機械学習モデルをトレーニングした後に、目標車両速度を、前記トレーニングされたモデルにより予測された車両速度と比較することを含んでいる、少なくとも前記テストデータセットの前記抽出されて標識が付けられた時系列データセットを使用して、前記トレーニングされた機械学習モデルをテストすることと、
を更に有し、
前記機械学習モデルをテストすることは、前記目標車両速度と、前記トレーニングされた機械学習モデルにより予測された前記車両速度との間の時間シフトを測定することを有している、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記時間シフトは、
【数1】
に基づいて測定され、ここにおいて、δは予測された車両速度時系列の時間シフトを表わしており、MAEは、
【数2】
により与えられる平均絶対誤差を表わしており、ここにおいてy1、・・・、ynは、前記機械学習モデルを使用して、ある時間後のn回予測された車両速度であり、t1、・・・、tnは前記車両速度が予測されたときの前記時間に対応する、測定された車両速度である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ある時間後の車両速度を予測するためにトレーニングされた前記機械学習モデルは、外因性入力を伴う非線形自己回帰シャローニューラルネットワークモデルを有している、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
ある時間後の車両速度を予測するためにトレーニングされた前記機械学習モデルは、長・短期記憶(LSTM)ディープニューラルネットワークモデルを有している、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
運転中に、1~10秒後の車両速度を予測するために前記トレーニングおよびテストされた機械学習モデルに対応する予測アルゴリズムを使用するように、車両の制御ユニットを構成することを更に有しており、
前記制御ユニットは、前記予測アルゴリズムへの入力として、
前記車両のGPSユニットにより収集された前記GPSデータと、
前記車両の先行交通センサユニットにより収集された先行交通の前記センサデータと、
前記車両の1つ以上の車両状態センサにより収集された前記車両状態データと、
特別な時間または位置における加速事象または減速事象を示すものを提供する標識を受信するように構成されている、
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記車両の前記制御ユニットが、格納されているマップデータから、加速事象または減速事象を示すものを提供する、前記予測アルゴリズムへの入力である前記標識を抽出することを更に有している、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記車両の前記制御ユニットが、加速事象または減速事象を示すものを提供する、前記予測アルゴリズムへの入力である前記標識を動的に生成することを更に有している、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記時系列ベクトルのセルの値が、道路の曲率半径が所定の値より大きい場合は1に等しく、そうでない場合は0である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
格納されている実行可能な命令を有している非一時的なコンピュータ可読媒体であって、前記命令は、プロセッサにより実行されると、前記プロセッサに、
それぞれが、センサデータ、全地球測位システム(GPS)データ、および車両の走行中に時間の経過において収集された車両状態データを備えている複数の時系列データセットを受信する動作と、
車両の将来の速度を示す前記複数の時系列データセットのそれぞれから、前記センサデータ、前記GPSおよび前記車両状態データを備えている特徴を抽出する動作と、
それぞれの時間に対応する複数の値を備えている時系列ベクトルを作成する動作、または、それぞれの位置に対応する複数の値を備えている位置系列ベクトルを作成する動作であって、時系列または位置系列の前記複数の値のそれぞれは、
加速事象が存在する、
減速事象が存在する、または
加速事象または減速事象は存在しないということの1つを示している、動作と、
前記加速事象または前記減速事象を示すために、前記複数の時系列データセットのそれぞれの前記抽出された特徴に標識を付ける動作と、
前記加速事象または前記減速事象を示すために、前記複数の時系列データセットのそれぞれの前記抽出された特徴に標識を付けた後に、ある時間後の車両速度を予測する機械学習モデルをトレーニングするために、前記抽出されて標識が付けられた時系列データセットの少なくともサブセットを使用する動作を行わせる、
非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項12】
前記命令は、前記プロセッサにより実行されると、
前記複数の時系列データセットのそれぞれの前記抽出された特徴に標識を付けた後に、前記抽出されて標識が付けられた時系列データセットを、前記機械学習モデルをトレーニングするために使用されるトレーニングデータセットと、テストデータセットに分割する動作と、
前記機械学習モデルをトレーニングした後に、目標車両速度を、前記トレーニングされたモデルにより予測された車両速度と比較することと、前記目標車両速度と、前記トレーニングされたモデルにより予測された前記車両速度との間の時間シフトを測定することとを有している、少なくとも前記テストデータセットの前記抽出されて標識が付けられた時系列データセットを使用して、前記トレーニングされた機械学習モデルをテストする動作と、
をさらに行う、請求項11に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項13】
ある時間後の車両速度を予測するためにトレーニングされた前記機械学習モデルは、長・短期記憶(LSTM)ディープニューラルネットワークモデル、または外因性入力を伴う非線形自己回帰シャローニューラルネットワークモデルを有している、請求項11に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項14】
車両であって、
GPSセンサと、
車両状態センサと、
前記車両に先行する交通のデータを収集する先行交通センサと、
電子制御ユニットであって、
前記GPSセンサを使用して生成されたGPSデータを受信する動作と、
前記車両状態センサを使用して生成された車両状態センサデータを受信する動作と、
前記先行交通センサを使用して生成された先行交通データを受信する動作と、
特別な時間または位置における加速事象または減速事象を示すものを提供する標識を得る動作と、
前記受信したGPSデータ、前記受信した車両状態センサデータ、前記受信した先行交通データ、および前記得られた標識を、トレーニングおよびテストされた車両速度予測モデルに対応する車両速度予測アルゴリズムへの入力として提供する動作と、
前記車両速度予測アルゴリズムを使用して、ある時間後の車両速度を予測する動作と、を繰り返す電子制御ユニットと、
を備え、
前記車両速度予測アルゴリズムは、
それぞれの時間に対応する複数の値を備えている時系列ベクトルを作成する、または、それぞれの位置に対応する複数の値を備えている位置系列ベクトルを作成するように構成され、時系列または位置系列の前記複数の値のそれぞれは、
加速事象が存在する、
減速事象が存在する、または
加速事象または減速事象は存在しないということの1つを示している、
車両。
【請求項15】
特別な時間または位置において、加速事象または減速事象を示すものを提供する標識を得ることは、
前記車両の前記電子制御ユニットが、格納されているマップデータから前記標識を抽出すること、または
前記車両の前記電子制御ユニットが、前記標識を動的生成すること、
を有している、請求項14に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
インテリジェント輸送システム(ITS)は、輸送ネットワークをより安全に且つスマートに利用するために、自動車産業における大変革を先導してきている。ITSの適用は、下記に制限されないが、高度運転手支援システム(ADAS)、車両対車両(V2V)通信、および車両対インフラ(V2I)通信をカバーしている。そのような適用は、燃料経済性(FE)、輸送状況および安全性における大きな改善を産み出すことを目的としている。ITSの適用は、一般的には、将来の車両速度および局所的交通状況に依存している。例えば、車両速度の予測は、FEを改善し、排気ガスを削減するために、エネルギー管理戦略を最適にするために使用できる。また、将来の車両速度の予測は、将来の車両衝突を予測することにより事故を回避することを支援できる。しかし、予測精度は、使用される予測方式に大いに依存する可能性がある。
【0002】
そのため、自動車の燃料経済性、燃料効率、運転性および安全性を強化するために、車両速度を予測するための正確且つ強靭なアプローチを開発する必要性がある。一般的に、車両速度予測方法は、予測アルゴリズムを評価するために、予測された速度と、実際の速度結果との間の平均絶対誤差(MAE)と平均2乗誤差の平方根(RMSE)を最小にすることを目指している。
【発明の概要】
【0003】
開示の実現形態は、車両の加速事象または減速事象と関連付けられている特徴を示すものを提供する、標識が付けられた特徴を使用して車両速度予測のためのモデルをトレーニングすることにより、車両速度予測における時間ラグを削減または除去することに向けられている。
【0004】
1つの実施形態においては、方法は、それぞれが、センサデータ、全地球測位システム(GPS)データ、および車両の走行中に時間の経過において収集された車両状態データを含んでいる複数の時系列データセットを受信することと、車両の将来の速度を示す複数の時系列データセットのそれぞれから、センサデータ、GPSおよび車両状態データを備えている特徴を抽出することと、車両の加速事象または減速事象を示すために、複数の時系列データセットのそれぞれの抽出された特徴に標識を付けることと、車両の加速事象または減速事象を示すために、複数の時系列データセットのそれぞれの抽出された特徴に標識を付けた後に、ある時間後の車両速度を予測する機械学習モデルをトレーニングするために、抽出されて標識が付けられた時系列データセットの少なくともサブセットを使用することを含んでいる。
【0005】
幾つかの実現形態においては、抽出された特徴に標識を付けることは、それぞれの時間に対応する複数の値を含んでいる時系列ベクトルを作成すること、または、それぞれの位置に対応する複数の値を備えている位置系列ベクトルを作成することを含んでおり、時系列ベクトルまたは位置系列ベクトルの複数の値のそれぞれは、下記のi)加速事象が存在する、ii)減速事象が存在する、またはiii)加速事象または減速事象は存在しないということの1つを示している。特別な実現形態においては、抽出された特徴に標識を付けることは、GPS経度および緯度位置それぞれに対応する複数の値を備えている位置系列ベクトルを作成することを備えており、位置系列の複数の値のそれぞれは、下記の、加速事象が存在する、減速事象が存在する、または、加速事象または減速事象は存在しないということの1つを示ために、1、0、または-1に規格化されている。特別な実現形態においては、抽出された特徴に標識を付けることは、それぞれの時間に対応する複数の値を備えている時系列ベクトルを作成することを備えている。
【0006】
実現形態においては、車両の加速事象または減速事象を示すために、複数の時系列データセットのそれぞれの抽出された特徴に標識を付けることは、下記の、運転を開始しようとしている車両、運転を終了しようとしている車両、停止標識、交通信号灯、道路の曲がり角、幹線道路(highway)の曲がり角、および特別な曲率半径を有している道路の事象の1つ以上を示すために、抽出された特徴に標識を付けることを含んでいる。
【0007】
実現形態においては、方法は更に、複数の時系列データセットのそれぞれの抽出された特徴に標識を付けた後に、抽出されて標識が付けられた時系列データセットを、機械学習モデルをトレーニングするために使用されるトレーニングデータセットと、テストデータセットに分割することと、機械学習モデルをトレーニングした後に、目標車両速度を、トレーニングされたモデルにより予測された車両速度と比較することを含んでいる、少なくともテストデータセットの、抽出されて標識が付けられた時系列データセットを使用して、トレーニングされた機械学習モデルをテストすることを含んでいる。幾つかの実現形態においては、機械学習モデルをテストすることは、目標車両速度と、トレーニングされたモデルにより予測された車両速度との間の時間シフトを測定することを含んでいる。特別な実現形態においては、時間シフトは、
【数1】
に基づいて測定され、ここにおいて、δは予測された車両速度時系列の時間シフトを表わしており、MAEは、
【数2】
により与えられる平均絶対誤差を表わしており、ここにおいてy1、・・・、ynは、機械学習モデルを使用して、n回予測された将来の車両速度であり、t1、・・・、tnは車両速度が予測されたときの時間に対応する、測定された車両速度(目標)である。
【0008】
特別な実現形態においては、ある時間後の車両速度を予測するためにトレーニングされた機械学習モデルは、外因性入力を伴う非線形自己回帰シャローニューラルネットワークモデルを備えている。特別な実現形態においては、ある時間後の車両速度を予測するためにトレーニングされた機械学習モデルは、長・短期記憶(LSTM)ディープニューラルネットワークモデルを備えている。
【0009】
実現形態においては、方法は、運転中に、1~10秒後の車両速度を予測するためにトレーニングおよびテストされた機械学習モデルに対応する予測アルゴリズムを使用するように、車両の制御ユニットを構成することを更に含んでいる。
【0010】
実現形態においては、制御ユニットは、予測アルゴリズムへの入力として、車両のGPSユニットにより収集されたGPSデータと、車両の先行交通センサ(例えば、ライダー、レーダー、カメラ、超音波センサなど)により収集された先行交通のセンサデータ、車両の1つ以上の車両状態センサにより収集された車両状態データ、および特別な時間または位置における加速事象または減速事象を示すものを提供する標識を受信するように構成されている。
【0011】
実現形態においては、方法は、車両の電子制御ユニットが、格納されているマップデータから、加速事象または減速事象を示すものを提供する、予測アルゴリズムへの入力である標識を抽出することを更に含んでいる。
【0012】
実現形態においては、方法は、車両の電子制御ユニットが、加速事象または減速事象を示すものを提供する、予測アルゴリズムへの入力である標識を動的に生成することを更に含んでいる。
【0013】
1つの実施形態においては、車両は、GPSセンサ、車両状態センサ、車両に先行する交通のデータを収集する先行交通センサ、および、GPSセンサを使用して生成されたGPSデータを受信する動作、車両状態センサを使用して生成された車両状態センサデータを受信する動作、先行交通センサを使用して生成された先行交通データを受信する動作、特別な時間または位置における加速事象または減速事象を示すものを提供する標識を得る動作、受信したGPSデータ、受信した車両状態センサデータ、受信した先行交通データ、および得られた標識を、トレーニングおよびテストされた車両予測モデルに対応する車両速度予測アルゴリズムへの入力として提供する動作、および車両速度予測アルゴリズムを使用して、ある時間後の車両速度を予測する動作を繰り返す電子制御ユニットを含んでいる。実現形態においては、特別な時間または位置における加速事象または減速事象を示すものを提供する標識を得ることは、車両の電子制御ユニットが、格納されているマップデータから標識を抽出すること、または、車両の電子制御ユニットが、標識を動的に生成することを含んでいる。
【0014】
開示される技術の他の特徴と態様は、開示される技術の実現形態に従う特徴を例示する付随する図面と併用される下記の詳細な記述から明白となるであろう。発明の概要は、請求項および等価物により定義される、ここにおいて記述されている如何なる発明の範囲も制限することは意図されていない。
【0015】
前記の概念(そのような概念が互いに矛盾しないという条件で)のすべての組み合わせは、ここにおいて開示される発明の主題の一部と考えられるということは認識されるべきである。特に、この開示の最後に現れる請求項の主題のすべての組み合わせは、ここにおいて開示される発明の主題の一部であると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
1つ以上の種々の実施形態に従う本開示は、下記の図面を参照して詳細に記述される。図面は、例示の目的のためのみに提供され、典型的または例としての実施形態を表現しているに過ぎない。
【0017】
図1】車両速度予測における時間ラグ問題を例示している、車両速度予測と車両速度測定(目標)時系列のグラフを示している。
図2A】車両速度予測を、動力分割制御に対する開示に従って実現できる、例としてのハイブリッド電気車両の模式図である。
図2B図2Aの電子制御ユニットに含めることができる制御機能の例としての要素を示している機能ブロック図である。
図3】開示に従う、標識が付けられた特徴での学習済みモデルを作成し、それを使用して車両速度を予測するための例としての処理フローを示している動作フロー図である。
図4】開示の実現形態に従う、事前車両走行時系列から特徴を抽出し、車両の加速/減速事象を示すためにそれらに標識を付けるためにデータベースを活用するための例としての方法を示している動作フロー図である。
図5】開示の実現形態に従う、事前車両走行からの抽出できる時系列データを示している。
図6】開示に従う、後輪駆動ハイブリッド車両を運転した人間の運転手により、幹線道路ルートに沿って20回繰り返された運転から収集されたデータセットに適用された標識のセットを例示している。
図7】開示に従う、3台の車両を同時に運転した3人の人間の運転手により、都市部ルートに沿って数百回繰り返された運転サイクルから収集されたデータセットに適用された標識のセットを例示している。
図8】開示の実現形態に従う、車両速度を予測するために使用される1つ以上のモデルを作成、トレーニングおよびテストするための例としての方法を示している動作フロー図である。
図9A】開示の実現形態に従う、予測のために使用されるフィードフォワードネットワークの構造を例示している。
図9B】開示の実現形態に従う、予測のために使用されるNARXモデルの構造を例示している。
図10A】開示の実現形態に従う、LSTMセルの内部構造を例示している。
図10B】開示の実現形態に従う、LSTMにより、時系列シーケンス入力がどのように処理されるかを示している。
図10C】開示の実現形態に従う、5層LSTM構造を示している。
図11A】目標速度時系列曲線と、標識なしの図6の幹線道路運転データセットに対してARMAモデルをテストすることにより生成された、予測された速度時系列曲線とを例示しているグラフである。
図11B】目標速度時系列曲線と、標識ありの図6の幹線道路運転データセットに対してNARXモデルをテストすることにより生成された、予測された速度時系列曲線とを例示しているグラフである。
図11C】目標速度時系列曲線と、標識ありの図6の幹線道路運転データセットに対してLSTMモデルをテストすることにより生成された、予測された速度時系列曲線とを例示しているグラフである。
図12】目標速度時系列曲線と、標識が付けられた入力と標識が付けられていない入力を使用して、図6の幹線道路運転データセットに対してLSTMモデルをテストすることにより生成された、予測された速度時系列曲線とを例示している2つの異なるグラフを示している。
図13】目標速度時系列曲線と、標識が付けられた入力と標識が付けられていない入力を使用して、図7の都市部運転データセットに対してLSTMモデルをテストすることにより生成された、予測された速度時系列曲線とを例示している2つの異なるグラフを示している。
図14】開示に従う、運転の間の車両速度を予測するための学習済み車両速度予測モデルを使用するための処理フローを例示しており、モデルは、加速/減速事象を示す標識が付けられた入力を使用してトレーニングされた。
図15】本開示において記述される実施形態の種々の特徴を実現するために使用できる例としての演算構成要素である。
【0018】
図はすべてを網羅しているわけではなく、本開示を、開示されている正確な形態に制限しない。
【発明を実施するための形態】
【0019】
ここにおいて使用されているように、「最適化する」、「最適な」などのような用語は、可能な限り効果的または完全な性能を作り出す、または達成することを意味するために使用できるということに留意すべきである。更に、ここにおいて開示される技術は、例えば、「更に正確な」決定という結果になる計算を行うことなどを指し示すことができる。しかし、この技術において通常の技量を有する者がこの文献を読むことにより認識するように、完全性は常には達成できない。従って、これらの用語はまた、可能な限り良好または効果的な、または、所与の状況において実用的な性能を作り出す、または達成することも含むことができ、または、他の設定またはパラメータにより達成できるものよりも良好な性能を作り出す、または達成することも含むことができる。
【0020】
上記のように、車両速度を予測するための正確且つ強靭なアプローチを開発する必要がある。車両速度予測においてはいくらかの進歩はなされているが、依然として幾つかの問題が存在する。一般的な問題は、車両速度予測方法は、車両が着実な状態(つまり、速度が時間の経過において変化しない)において動作するときに良好な結果を産み出すのみであるということである。しかし、過渡的状態(例えば、加速および減速事象による車両速度の突然の変化)に対しては、車両速度予測方法は、典型的には良好な結果を生成しない。
【0021】
そのような速度予測方法の良好でない性能の理由の1つは、それらの方法は一般的に、予測アルゴリズムを評価するために、予測された速度と、実際の速度結果との間の平均絶対誤差(MAE)と平均2乗誤差の平方根(RMSE)を最小化することを目指すのみであるということである。しかし、車両速度予測のためのこれらの方法は、車両速度予測における時間ラグを考慮しない。一般的に述べれば、将来のデータを予測するために履歴データを使用するときは、予測はしばしば、実際の結果に遅れをとるように見える。幾つかの例においては、既知の車両速度予測方法による将来の車両速度の推定を生成するために掛る時間量は、車両速度予測が所望される将来における時間に接近するであろう。
【0022】
例えば、図1は、時間ラグ問題を例示している、車両速度予測と、車両速度目標時系列とのグラフを示している。このグラフにおいては、目標速度曲線は、時間の経過における車両の実際に記録された速度を表わしており、予測速度曲線は、時間ラグを考慮しない方法を使用しての、車両の予測された速度を表わしている。例示されているように、予測された曲線は、着実な状態の速度の間(例えば、1220から1260秒)は目標曲線に非常に近く追従しているが、目標時系列曲線に対する予測された時系列曲線の時間ラグは、加速および減速事象の間においては、特には、1330から1340秒において明白になる。この例に対する予測曲線の全体のMAEは相対的に小さい(例えば、時間期間の半分以上において、相対的に着実な状態において車両が動作しているため)かもしれないが、予測方法は、速度の過渡期の間は良好には機能しない。
【0023】
そのため、車両速度予測においては時間ラグを考慮する必要がある。このため、開示の実現形態は、車両速度予測結果における時間ラグを、車両の加速事象または減速事象に関連付けられている特徴を示すものを提供する、標識が付けられた特徴を使用して、車両速度予測のための機械学習アルゴリズムをトレーニングすることにより、減少または除去することに向けられている。実現形態に従って、標識は、下記の、運転を開始しようとしている車両、運転を終了しようとしている車両、停止標識、交通信号灯、道路または幹線道路の曲がり角、および、車両が加速または減速するであろうということを示すものを提供する他の事象の、加速事象または減速事象の1つ以上を示すために使用できる。ここにおいて記述されている特定の実現形態は、標識が付けられた特徴を、1から10秒後の車両速度を予測するための、ニューラルネットワークへの入力として使用することに向けられている。ここにおいて更に記述されるように、車両速度を予測するために使用される特徴に、加速事象または減速事象を示すために標識を付けることにより、過渡期の速度のシナリオに対して車両速度予測における相当な改善を得ることができる。
【0024】
車両速度予測技術の実現形態を更に詳細に記述する前に、そのような実現形態を使用できる車両を記述することは有益である。図2Aは、車両速度予測を、動力分割制御に対する開示に従って実現できる、例としてのハイブリッド電気車両(HEV)10の模式図である。例えば、HEV10は、将来の車両速度を予測する機械学習モデルをトレーニングするために抽出されて標識が付けられた特徴を有しているトレーニングデータセットを収集するために使用できる。追加的に、HEV10は、運転中に将来の車両速度を予測するために開示に従って学習したモデルを使用できる。
【0025】
図2Aは、車両速度予測を使用できる、1つの例としての車両(HEV)と1つの例としての適用(動力分割制御)を示しているが、ここにおいて記述される車両速度予測技術は、他の車両(例えば、内燃機関車両、完全な電気車両など)および他の適用(例えば、支援された運転、完全な自己運転、衝突回避など)においても使用できるということに留意すべきである。図2Aは、実施形態を実現できる特別パワートレイン構成を有している1つの例としてのHEVを示しているが、ここにおいて記述される技術は、他のパワートレイン構成を有しているHEVにおいても実現できるということにも留意すべきである。例えば、ここにおいて開示される技術は、1台のモータシステム、2台のモータシステム、または、3台以上のモータを有するシステムを有しているHEVにおいて実現できる。追加的に、ここにおいて開示される技術は、遊星ギアセットなどのような他のギアセットを有しているHEVにおいて実現できる。
【0026】
例示の簡潔性のために、HEV10のすべての要素に参照番号を付けてはいないということに留意すべきである。例えば、幾つかの例においては、HEV10の2つ以上の要素または構成要素の1つにしか参照番号が付けられていない。しかし、同様に例示される要素または構成要素の機能および/または動作は、そうでないと記述されない限り、この技術において通常の技量を有する者により理解されるように、同じまたは類似していると仮定することができる。更に、HEV10の態様は、要素または構成要素の1つまたは1つのセットの観点から記述できる。それらの要素または構成要素の従属的な例は、同じまたは類似するように動作できると仮定することができる。記述を容易にし、および図の明確性のために、HEVのすべての構成要素が例示されているわけではなく、図および対応する記述は、制限的であることは意図されていないということにも留意すべきである。HEVは、ここにおいて考えられているその要素または構成要素に関して、ある変形例を含むことができるということにも更に留意すべきである。例えば、HEV10は、単一のモータのみで構成できる。
【0027】
図2Aは、エンジン14とモータ12を駆動源として含むことができるHEV10の例としての構成要素を示している。エンジン14とモータ12で生成される駆動力は、トルクコンバータ16、オートマティックトランスミッション18、差動歯車装置28、および車輪心棒対30を介して車輪対34に伝達できる。モータ12、トルクコンバータ16、およびオートマティックトランスミッション18のそれぞれは、トランスミッションケースに格納できる。トランスミッションケースは、例えば、アルミニウム鋳造部品で製造された分割可能ケースであることができ、車両本体のような非回転部材に固定される。
【0028】
HEV10は、走行のための駆動源としてのエンジン14およびモータ12の少なくとも1つで駆動/動力供給ができる。言い換えれば、HEV10においては、複数の走行モードの如何なるモードも選択的に確立できる。第1走行モードは、走行のための駆動源としてエンジン14を使用するのみの、エンジンのみの走行モードであってよい。第2走行モードは、走行のための駆動源としてモータ12を使用するのみの、EV走行モードであってよい。第3走行モードは、走行のための駆動源としてエンジン14とモータ12を使用する、ハイブリッド走行モードであってよい。エンジンのみの、およびハイブリッド走行モードにおいては、HEV10は、クラッチ15が係合している間、少なくともエンジン14により生成される駆動力を使用することにより走行する。EV走行モードにおいては、HEV10は、エンジン14が停止し、クラッチ15の係合が解除されている間、モータ12により生成される駆動力を使用することにより走行する。
【0029】
エンジン14は、燃料が燃焼室に直接注入される、シリンダー内注入タイプのガソリンエンジンまたはディーゼルエンジンのような内燃機関であってよい。出力制御装置14Aは、エンジン14の駆動(出力トルク)を制御するために提供される。出力制御装置14Aは、電子スロットル弁の開閉を制御するスロットルアクチュエータ、燃料注入を制御する燃料注入装置、点火タイミングを制御する点火装置などを含むことができる。出力制御装置14Aは、下記に記述される電子制御ユニット50から供給されるコマンド制御信号に従って、エンジン14の出力制御を実行できる。そのような出力制御は、例えば、スロットル制御のためのスロットルアクチュエータにより、電子スロットル弁の開閉の制御を含むことができる。出力制御は、燃料注入制御のための燃料注入装置による燃料注入の制御も含むことができる。更に、出力制御は、点火タイミング制御のための点火装置の点火タイミングの制御を含むことができる。
【0030】
トランスミッション入力シャフト36は、モータ12および/またはエンジン14からの動力を、トランスミッション出力シャフト24が取り付けられているオートマティックトランスミッション18に転送できる。トランスミッション出力シャフト24には、差動歯車装置28に結合されているプロペラシャフト26が接続されている。オートマティックトランスミッション18は、例えば、複数の所定のギア(ギア比)の何れをも選択的に確立する段階的トランスミッション機構であることができ、そのようなギア比変更を行うための複数の係合要素を含むように構成されている。オートマティックトランスミッション18は、係合が油圧アクチュエータにより制御される、多ディスククラッチおよびブレーキなどのような複数の油圧摩擦係合装置を含むことができる。これらの油圧摩擦係合装置は、油圧制御回路40から供給される油圧に従って、選択的に係合または係合を解除できる。従って、複数の前進ギア(つまり、前進ギア位置または前進走行ギア位置)または後退ギア(つまり、後退ギア位置または後退走行ギア位置)の何れも、油圧摩擦係合装置の結合状態の組み合わせに従って選択的に確立できる。例えば、油圧摩擦係合装置の結合状態は、前進および後退ギアの間のシフトアップおよびシフトダウンを可能にできる。
【0031】
モータ12は、ロータ(回転子)およびステータ(固定子)を含むことができる。モータ12は、駆動力を生成するモータ、および反力を生成する発電機として機能するモータ発電機であることができる。モータ12は、バッテリ44および、インバータ42を介してのコンデンサなどのような蓄電装置に接続できる。下記に記述される電子制御ユニット50はインバータ42を制御でき、モータ12のコイルに供給され、またはそこから受け取る駆動電流を調整し、モータ12の駆動を制御できる。つまり、モータ12の出力トルクは、インバータ42を通して、電子制御ユニット50により増大または減少できる。
【0032】
エンジン14とモータ12との間の動力伝達経路においては、クラッチ15は、係合状態に従って、動力伝達経路における動力伝達を制御する。つまり、エンジン14の出力部材であるクランクシャフト32は、クラッチ15を介してモータ12のロータに選択的に結合される。クラッチ15は、例えば、その係合が油圧アクチュエータにより制御される、多ディスクタイプの油圧摩擦係合装置である。クラッチ15は、油圧制御回路40から供給される油圧に従って、係合(完全な係合)、スリップ係合、および係合の解除(完全な係合の解除)モードを達成するためにその係合状態が制御されるように制御される。つまり、クラッチ15のトルク容量は、油圧制御回路40から供給される油圧に従って制御される。クラッチ15が係合されると、動力伝達は、クランクシャフト32とトルクコンバータ16のフロントカバーとの間の動力伝達経路において提供される。他方、クラッチ15の係合が解除されると、動力伝達は、クランクシャフト32とトルクコンバータ16のフロントカバーとの間の動力伝達経路に出力されることが妨げられる。スリップ係合状態またはモードにおいては、クラッチ15は係合され、クラッチ15のトルク容量(伝達トルク)に従う動力伝達が、クランクシャフト32とトルクコンバータ16のフロントカバーとの間の動力伝達経路に提供される。
【0033】
HEV10は、電子制御ユニット50を含むことができる。電子制御ユニット50は、CPU、RAM、ROM,入出力インタフェースなどを含んでいるマイクロコンピュータを含むことができる。電子制御ユニット50においては、CPUは、ROMに格納されているプログラムに従って信号処理を行うために、RAMの一時格納機能を利用できる。従って、電子制御ユニット50は、エンジン14の駆動制御、モータ12の駆動制御、オートマティックトランスミッション18の速度変更制御、クラッチ15の係合力制御、ロックアップクラッチ38の係合制御などのような種々の種類の制御を行うことができる。これらの制御機能は、予測された将来の速度を考慮する動力分割制御アルゴリズムに従って行うことができる。電子制御ユニット50は、必要に応じて、エンジン14の制御、モータ12の制御、オートマティックトランスミッション18の制御、およびクラッチ15の制御などのようなために、複数の制御装置と共に別個に構成でき、それぞれの制御を、互いの情報の通信を通して実行できる。この実施形態においては、電子制御ユニット50は、HEV10の制御装置に対応している。
【0034】
図2Aにおいて示されているように、電子制御ユニット50には、HEV10において提供されている各センサにより検出される種々の種類の出力信号が供給される。例えば、電子制御ユニット50は、加速装置動作量ACC、エンジン14の回転速度NE(エンジン回転速度)、タービンホイール16Bの回転速度NT(タービン回転速度)、モータ12の回転速度TMG(モータ回転速度)、車両速度V、およびエネルギー備蓄量(残容量、充電量)、例えばバッテリ44のバッテリSOCを示す信号を受信できる。HEV10の他の動作態様、例えば、モータ12の温度、HEV10の冷却剤の温度、エンジン14の取り込み空気の量などを示すより多くの信号を電子制御ユニット50は受信可能であるということに留意すべきである。
【0035】
電子制御ユニット50は、HEV10の関連する動作特性、HEV10が走行しているルート、および/または、HEV10が現在運転している道路を感知するように構成されている種々のセンサから入力信号を受信できる。例えば、加速装置動作量ACCは、アクセルペダルが踏み込まれた/動作された程度を決定する加速装置動作量センサにより検出できる。例えば、ブレーキ動作量Bは、フットブレーキセンサにより検出できる。例えば、エンジン回転速度Neは、エンジン回転速度センサにより検出できる。エンジントルクTeは、エンジントルクセンサにより検出できる。モータ回転速度NMGは、モータ回転速度センサにより検出できる。車両速度vは、車両速度センサにより検出できる。バッテリSOCは、SOCセンサ46により検出できる。
【0036】
センサ52の他の例は、HEV10の位置に対応する位置情報を提供できる全地球測位システム(GPS)受信器などのような測位または位置センサであることができる。追加的に、測位または位置情報を提供するセンサ52は、HEV10の現在の位置および、HEV10の予期されるルートに対する交通情報を提供できる。追加的に、電子制御ユニット50は、ネットワークインタフェース装置48からの入力信号を受信できる。ネットワークインタフェース装置48は、マップデータ、道路状況情報、交通情報などのような情報を、1つ以上の情報サービスプロバイダから受信できる。例えば、そのような情報は、車両対車両(V2V)通信、車両対インフラ(V2I)通信、および/または、車両対クラウド(V2C)通信を使用して検索できる。GPS受信器のみに依存するのではなく、HEV10の位置は、ネットワークインタフェース装置48により受信される情報から決定できる。
【0037】
センサ52の更なる例は、車両と、他の車両などのような他の周囲の対象物との間の相対距離および/または速度を計算するために、無線波を放射/受信するレーダートランシーバを使用するレーダーセンサであることができる。
【0038】
電子制御ユニット50は、HEV10において提供されている1つ以上の装置/構成要素/要素に種々の出力信号を供給できる。例えば、電子制御ユニット50は、エンジン14の駆動制御を実現するために、エンジン14の出力制御装置14Aに信号を供給できる。電子制御ユニット50は、モータ12の駆動制御を実現するために、インバータ42に信号を供給できる。電子制御ユニット50は、オートマティックトランスミッション18の速度制御のために、油圧制御回路40における複数の電磁制御弁に信号を供給できる。電子制御ユニット50は、クラッチ15の係合制御のために、油圧制御回路40におけるリニアソレノイド弁に信号を供給できる。
【0039】
図2Bは、電子制御ユニット50に含めることができる、制御機能の例としての要素を示している機能ブロック図である。図2Bに示されているエンジン制御構成要素50Aは、出力制御装置14Aを介して、エンジン14の駆動(出力トルク)を制御する。具体的には、エンジン制御構成要素50Aは、電子スロットル弁のストッロル弁開口部により出力制御装置14Aを制御し、燃料注入装置により供給される燃料の量、点火装置の点火タイミングなどを制御する。従って、電子制御ユニット50は、エンジン14により要求されるエンジン出力を達成できるように、どのようにエンジン14が駆動動力を提供するかを制御する。
【0040】
エンジン制御構成要素50Aは、エンジンのみの、およびハイブリッド走行モードにおいてエンジン14を駆動する。例えば、エンジン制御構成要素50Aは、エンジン14をいつ始動するか、例えば、EV走行モードからエンジンのみの走行モードまたはハイブリッド走行モードにいつ切り替えるかを制御できる。これは、HEVがEV走行モードからハイブリッド走行モードに遷移しているときに起こり得る。同様に、エンジン制御構成要素50Aは、エンジンをいつ停止するか、例えば、エンジンのみの、またはハイブリッド走行モードからEV走行モードにいつ切り替えるかを制御できる。
【0041】
エンジン14を制御するために、クラッチ15を、エンジン14を動力伝達経路に接続するように係合できる(スリップまたは完全な係合)。これは、下記に記述されるクラッチ係合制御構成要素50Bにより達成できる。エンジン制御構成要素50Aは、エンジン14に回転するように指示でき、エンジン回転速度NEという結果になり、エンジン14への燃料の供給が、出力制御装置14Aを介して開始される。
【0042】
HEV10がEVモードで動作されるとき、エンジン制御構成要素50Aは、エンジン14を停止するために、出力制御装置14Aに制御信号を出力する。クラッチ15の係合を解除でき、エンジン14は停止する。更に、出力制御装置14Aに、エンジン14への燃料の供給を停止するように命令できる。
【0043】
モータ制御構成要素50Cは、インバータ42を介して、モータ12の始動を制御する。具体的には、電気エネルギーが、インバータ42を介してバッテリ44からモータ12に供給される。モータ制御構成要素50Cは、モータ12の要求される出力を得るために、モータ12が回転し、正または負のモータトルクを生成するようにモータ12を駆動するための制御信号を出力する。例えば、モータ制御構成要素50Cは、HEV10が減速するような負のモータトルクを生成するように電流がバッテリ44に流れるように、インバータ42を切り替えるための制御信号を出力する。
【0044】
ギアシフト構成要素50Dは、現在のギア比から、より低いギア比へのシフトダウンを実現するために、油圧制御回路40を通して、1つ以上の油圧摩擦係合装置の係合/係合の解除を指示する制御信号を出力できる。シフトダウンは、下記に記述される走行モード決定構成要素50Eからの制御信号により開始できる。
【0045】
走行モード決定構成要素50Eは、現在および将来の運転状況に基づいて、HEV10において確立される走行モードに関して決定を行うことができる。決定は、例えば、車両速度v、加速装置動作量ACC、バッテリSOC、ブレーキ動作量B、動力要求、エンジン回転速度Ne、エンジントルクTe、トルク要求などに基づいて、HEVが何れの走行モード(EV、エンジンのみの、ハイブリッド)であるかに関して行うことができる。走行モード決定構成要素は、下記に更に記述される、リアルタイム動力分割アルゴリズムを使用して、何れの走行モードを利用するかについての決定を行うために使用できる。
【0046】
道路状況/位置構成要素50Fは、走行に対して予測される道路状況および/または交通状況と共に、HEV10の位置に関する決定を行うことができる。1つの実施形態においては、道路状況/位置構成要素50Fは、多くの現在の車両、ハイブリッドなどにおいて一般的に見られるナビゲーションユニットを含むことができる。道路状況/位置構成要素50Fは、道路状況に関する情報を、ネットワークインタフェース装置48、および/または、センサ52の1つの実施形態であってよいGPS受信器から受信できる。例えば、HEVが走行中の任意の地点におけるHEVの位置は、例えば、GPS受信器により決定でき、この位置は、その位置に関連する道路状況情報と相関させることができる。
【0047】
例えば、HEV10の始動時または動作中に、道路状況/位置構成要素50Fは、走行されるべきルートは既知であると決定できる。ルートは、アドレス、注目点識別子等が、例えば、ナビゲーションシステムユーザインタフェースを介してHEV10の運転手により道路状況/位置構成要素50Fに提供されれば知ることができる。道路状況/位置構成要素50Fは、例えば、ルートに沿って存在している/予期される如何なる下り坂の勾配のような道路状況と共に、走行すべきルートを示すマップまたはマップ情報を有する、または受信することができる。
【0048】
図3は、開示に従う、標識が付けられた特徴での学習済みモデルを作成し、それを、車両速度を予測するために使用するための例としての処理フロー100を示している動作フロー図である。より特別には、処理フロー100は、運転中に、車両速度を自動的に予測するためのモデルを構築するための事前車両走行時系列データ(例えば、事前運転からの下記の、ルートデータ、GPSデータ、レーダーデータ、車両状態データ、マップデータなどのパラメータの1つ以上)を含んでいる1つ以上のデータベース205を活用する。例示されているように、ステージ200において、特徴が事前車両走行時系列データから抽出され、車両の加速/減速事象を示すために標識が付けられる。ステージ300において、標識が付けられた特徴は、将来の車両速度を予測する機械学習モデルを作成し、トレーニングおよびテストするために使用される。機械学習モデルが十分にトレーニングおよびテストされて、容認可能な精度を有するようになると、ステージ400において、モデルは、運転中に車両速度を予測するために使用される。例えば、トレーニングおよびテストされたモデルは、運転中に電子制御ユニット50が使用できる。処理フロー100のステージ200~400のそれぞれのより詳細な記述が、図4図14を参照して下記に続く。
【0049】
図4は、開示の実現形態に従う、事前車両走行時系列から特徴を抽出して、車両の加速/減速事象を示すためにそれらに標識を付けるためにデータベース205を活用するための例としての方法200を示している動作フロー図である。実現形態においては、方法200の1つ以上の動作は、プロセッサがコンピュータ可読媒体に格納されている命令を実行することにより実現できる。
【0050】
動作210においては、車両の将来の速度を示すことができる事前車両走行時系列から特徴は抽出できる。上記のように、将来の車両速度を予測するための学習済みモデルを作成する処理の間に、運転中に自動的に車両速度を予測するためのモデルを構築するために、事前車両走行時系列データを含んでいる1つ以上のデータベース205を活用できる。
【0051】
例として、図5は、事前車両走行から抽出できる時系列データを示している。この例において示されているように、時系列データは、各走行に対して時間の経過において収集された特徴データの3つの主なカテゴリ、つまり、走行の間に車両により運転されたルートに対応するレーダーデータ、車両状態データ、およびGPSデータを含むことができる。例として、レーダーデータは、経度方向の距離、側方向の距離、相対速度、新しい対象物フラッグ、対象物移動フラッグ、対象物追尾フラッグ、レーダーカウンタ、および抽出できる他のレーダー特徴データを含むことができる。GPSデータは、経度、緯度、高度、時間、および抽出できる他のGPS特徴データを含むことができる。車両状態データは、エンジン速度、車両速度、アクセルペダル状態、ブレーキペダル状態、ステアリング角度/トルク状態、方向指示器状態、エンジン負荷トルク状態、および抽出できる他の車両状態データを含むことができる。図5に示されているもの以外の他の特徴データおよび/または特徴データの追加的カテゴリも、各走行時系列から抽出できるということは認識されるべきである。例えば、幾つかの実現形態においては、マップサービスデータ、インテリジェント輸送システムデータ、および/または他のセンサデータを抽出できる。例えば、データは、ライダー、超音波センサ、カメラ(例えば、カラーカメラ)などのような他のセンサから抽出できる。これらのセンサは、レーダーセンサに追加して、またはその代替として使用できる。幾つかの場合においては、車両速度予測を示すことができる抽出された特徴の数は、数百または数千の範囲に及ぶことができる。
【0052】
動作220においては、抽出された特徴は、時系列における車両の加速事象または減速事象を示すために標識を付けることができる。標識は、下記の、運転を開始しようとしている車両、運転を終了しようとしている車両、停止標識、交通信号灯、道路の曲がり角、幹線道路の曲がり角、特別な曲率半径を有している道路、および車両が加速または減速するということを示すものを提供する他の事象の、加速事象または減速事象の1つ以上を示すために使用できる。
【0053】
幾つかの実現形態においては、抽出された特徴に標識を付けることは、それぞれの値が各時間(例えば、データが収集された元の時系列の特別な時間)に対応し、それぞれの値は、下記の、加速事象が存在する、減速事象が存在する、または、加速事象または減速事象は存在しないということの1つ示している複数の値を含んでいる時系列ベクトルを作成することを含むことができる。例えば、事前車両走行に関連付けられている時系列ベクトルの値は、その時点において加速度が正であれば1に設定でき、その時点で加速度が負であれば0に設定できる。他の例としては、時系列ベクトルは、道路の曲率半径が100mを超える場合を示すために1の値を使用でき、それ以外では0を使用できる。
【0054】
幾つかの実現形態においては、抽出された特徴に標識を付けることは、それぞれの値が各GPS位置(例えば、運転の特別な時系列から収集されたような位置)に対応し、それぞれの値は、下記の、加速事象が存在する、減速事象が存在する、または、加速事象または減速事象は存在しないということの1つ示している複数の値を含んでいる位置系列ベクトルを作成することを含むことができる。
【0055】
例として、図6は、後輪駆動ハイブリッド車両を運転した人間の運転手により、幹線道路ルートに沿って20回繰り返された運転から収集されたデータセットに適用された標識のセットを示している。ルートはマップ225により例示されている。この例においては、データセットは合計で164の信号(特徴)を含んでいた。特に、運転軌道(車両GPS座標)および全体的な車両の経度方向/側方向状態情報はデータセットにおいて利用可能であった。加えて、周囲の交通についての情報を提供したレーダー信号チャネルが利用可能であった。
【0056】
データセットから抽出されたGPS経度および緯度データを使用して生成されたグラフ226により例示されているように、運転の開始221においては、車両位置軌道は第1標識(標識1)で印が付けられ、曲がり角222~223および運転の終了224においては、関連付けられているGPS位置は、第2標識(標識ー1)で印が付けられた。軌道の他の部分には標識は付けられなかった(標識0)。この例においては1、0、および-1の正規化された標識が使用されているが、他の標識も使用できるということは認識されるべきである。
【0057】
他の例として、図7は、3台の車両を同時に運転した3人の人間の運転手により、都市部のルートに沿って数百回繰り返された運転サイクルから収集されたデータセットに適用された標識のセットを例示している。ルートはマップ227により例示されている。この例においては、データセットは、上記の164の特徴を含んでいた。追加的に、この例においては、車両対インフラ(V2I)情報が収集された。データセットから抽出された車両速度データを使用して生成されたグラフ228により例示されているように、車両速度が非ゼロのときは、所与の時間に対して標識1の印が付けられた。この例においては、1と0の正規化された標識が使用されているが、他の標識を使用できるということは認識されるべきである。
【0058】
動作230においては、抽出された特徴データをクリーン(clean)または正規化できる。例えば、幾つかの実現形態においては、車両走行時系列特徴データのカテゴリは、単一の特徴に融合できる。他の例として、車両速度予測に貢献する可能性がより低い車両走行時系列特徴データのカテゴリは、後続の機械学習処理を、車両速度に貢献する可能性の高い重要な特徴を含むトレーニングデータに焦点を置くために、データセットから除去でき、または、より低い優先度で重み付けできる。幾つかの実現形態においては、特徴のカテゴリは多数の特徴に分割できる。実現形態においては、クリーニング動作(cleaning operation)230は、動作210~220と同時に、または動作210~220の後に実行できる。
【0059】
事前車両走行時系列データの特徴の抽出と標識付けに続いて、それらの特徴は、車両速度を予測するために使用される1つ以上の機械学習モデルをトレーニングおよびテストするために使用できる、抽出されて標識が付けられた時系列データセット301としてデータベース/ストレージ305に格納できる。処理200は、前述の機械学習モデルをトレーニングおよびテストするために使用されるデータセットを改良するために時間の経過において繰り返すことができるということに留意すべきである。例えば、時間の経過において、将来の車両速度を示すある特徴、および/または、加速/減速事象を示す標識は、車両速度予測を改善する可能性がより高いということが発見され得る。更に、新しい特徴が発見され、または、利用可能になると(例えば、新しい車両センサを使用して、追加的時系列データを収集することにより)、抽出されて標識が付けられた時系列データセット301を拡張できる。そのため、特徴、カテゴリ化、および抽出されて標識が付けられた時系列データセット301のサイズは時間の経過において変化する可能性があるということは認識されるべきである。
【0060】
図8は、開示の実現形態に従う、車両速度を予測するために使用される1つ以上のモデルを作成、トレーニング、およびテストするための例としての方法300を示している動作フロー図である。動作310において、データベース305に格納されている、抽出されて標識が付けられた時系列データセット301は、トレーニングデータセットとテストデータセットに分割できる。実現形態においては、トレーニングデータセットとテストデータセットのそれぞれは、抽出されて標識が付けられた車両走行時系列のサブセットを備えることができる。実現形態においては、トレーニングデータセットは、データセットの大半(例えば、60%、70%、80%など)を備えることができる。実現形態においては、データセットは、データのパターンの均等分布を確実にするために、分割の前にランダム化できる。例えば、1,000回の走行に対応する1,000時系列に対する特徴が抽出されて標識が付けられた場合を考えてみる。この場合、抽出されて標識が付けられた時系列の700をトレーニングに使用でき、残りの300をテストに使用できる。
【0061】
動作320において、標識が付けられた入力を受け入れ可能な機械学習モデルは、トレーニングデータセットを使用するトレーニングを実行するために初期化できる。初期化の間、アルゴリズムのハイパーパラメータを設定できる。幾つかの実現形態においては、多数の統計モデル化技術を組み合わせているアンサンブルモデルを利用できる。
【0062】
実現形態においては、モデルは、標識が付けられた入力および既知の出力を使用してパターンを学習する1つ以上の教師あり学習アルゴリズムを選択することにより初期化できる。例えば、幾つかの実現形態においては、既知の入力は、GPSデータ、車両状態データ、またはセンサデータなどのような標識が付けられた特徴を含むことができ、既知の出力は、将来のある時点における車両速度を含むことができる。例えば、車両速度を予測するための適用条件によっては、モデルは、1秒後、5秒後、または10秒後の車両速度を予測するためにトレーニングできる。例えば、下記の予測速度の予測範囲は、下記の適用、i)1~10秒、ハイブリッドエネルギー管理、ii)1~3秒、ターボラグ補償、およびiii)100ミリ秒~1秒、ディーゼルエンジン排気削減において有用であり得る。
【0063】
特別な実現形態においては、ニューラルネットワークのような決定論的予測モデルを、将来の車両速度を予測するためにトレーニングできる。実現形態に従って利用できる決定論的予測モデルの2つの例を下記に更に詳細に記述する。
【0064】
外因性入力を伴う非線形自己回帰(NARX)シャローニューラルネットワーク
【0065】
1つの実現形態においては、NARXシャローニューラルネットワークモデルは、将来の車両速度を予測するためにトレーニングできる。時系列モデル化において、非線形自己回帰外因性モデル(NARX)は、外因性入力を有する非線形自己回帰モデルである。これはモデルが、時系列における出力変数の現在の値を、i)同じ出力の過去の値と、ii)外因性入力の現在および過去の値の両者と関連付けることを意味する。
【0066】
数学的には、NARXモデルは、式(1)により表わすことができる。
【数3】
ここにおいて、yは注目出力変数、xは外因性入力変数、およびeはノイズである。関数Fは非線形関数であり、ニューラルネットワークである。式(1)から、NARXモデルは、多数の入力を含む能力を有している。
【0067】
図9Aにより例示されているように、静的フィードフォワードニューラルネットワークモデルは、1ステップ先の予測のためにトレーニングでき、または多数ステップ先を予測するために直接トレーニングできる。図9Bにより例示されているNARX構造もまた、モデル化される現象が本質的に動的であるときに使用できる。
【0068】
長・短期メモリ(LSTM)ディープニューラルネットワークモデル
【0069】
他の実現形態においては、LSTMディープニューラルネットワークモデルは、将来の車両速度を予測するためにトレーニングできる。LSTMディープニューラルネットワークは、匂配消失/爆発問題を回避しながら、大量データセット(例えば、多くの入力を有するデータセット)からの長期依存性を学習できる回帰型ニューラルネットワーク(RNN)の特別な種類である。
【0070】
すべての回帰型ニューラルネットワークは、繰り返しモジュールのチェーンの形状に構成されている。標準RNNにおいては、この繰り返しモジュールは、単一の「ハイパボリックタンジェント(双曲線正接(tanh))」関数により与えられるような、非常に単純な構造を有している。同様に、LSTMもまた、このチェーンに類似した構造を有しているが、繰り返しモジュールは異なる。ニューロンにおける単一起動関数を有する代わりに、非常に特別な方法で相互作用する3つのゲート(忘却ゲート、入力ゲート、および出力ゲート)がある。LSTMニューロンは、時系列データに対処する能力を有している。
【0071】
図10Aは、実現形態に従う、LSTMセルの内部構造を例示している。LSTMセルへのキーはセル状態であり、図10Aにおいては、破線のボックスにおける図の先頭を通して延伸している水平線により表わされている。LSTMセルは、図10Aにおいてそれぞれ(1)、(2)、および(3)により示されている、忘却ゲート、入力ゲート、および出力ゲートと呼ばれる構造により決定されるように、セル状態から情報を除去でき、セル状態に情報を追加できる。これらのゲートは、随意的に情報を通過されるための経路である。それらは、シグモイドニューラルネット層およびポイントワイズ(点毎)乗算演算から構成されている。シグモイド層は、各構成要素のどれだけの量を通過させるべきかを示している0と1との間の数を出力する。ゲートの詳細な構成は下記に記述される。
【0072】
忘却ゲートは、式(2)に示されているように、前回のステップ(状態ht-1および出力ot-1)からどれだけの量の情報を忘却させるかを決定する。
【数4】
【0073】
入力ゲートは、何れの新しい情報をセル状態に格納するかを決定し、式(3)および(4)に示されている2つのファクタを計算する。
【数5】
【数6】
これは、下記のように解釈できる。まず、「入力ゲート層」と呼ばれるシグモイド層は、何れの値を更新するかを決定する。次に、ハイパボリックタンジェント層は、状態に追加できる新しい候補値
【数7】
のベクトルを作成する。そして、状態の更新が、式(5)に示されているように実行される。
【数8】
ここにおいて、LSTMセルは、古い状態Ct-1についての情報を除去し、前回のステップで決定されたように新しい情報を追加する。
【0074】
出力ゲートは、式(6)と(7)により示されているように、セル状態に基づいて最終出力を決定する。
【数9】
【0075】
図10Bは、実現形態に従う、LSTMにより時系列シーケンス入力がどのように処理されるかを示している。X0、X1、...Xtは、時系列シーケンス入力である。A0、A1、...Anは、第1隠れ層におけるニューロンである。各ニューロンは、ある特徴を捕捉すると想定されている。図10Cは、実現形態に従う、5層LSTM構造を示している。底部層は入力層である。中間の3層は、LSTMニューロンを有している隠れ層である。典型的には、より低い層におけるニューロンは、低レベルの特徴を捕捉できる。より高い層におけるニューロンは、抽象特徴を捕捉できる。上部層は出力層である。
【0076】
動作330において、モデルは、標識が付けられたトレーニングデータセットを使用してトレーニングできる。例えば、上記の決定論的予測モデル(NARX、LSTM)の1つ以上を使用して、マシンは、ある時間先の将来の車両速度を予測できるモデルを改良するために、車両運転特徴の間の関係を解析および決定できる。
【0077】
動作340において、トレーニングの間に改良されたモデルを、テストデータセットを使用してテストできる。例えば、既知の特徴および既知の速度を有しているデータセットがあれば、モデルにより(例えば、10秒先を見ることにより)予測される車両速度時系列はその後、走行中に測定された実際の既知車両速度と比較できる。実現形態においては、モデルの性能はテストから、すべての予測に対する平均誤差得点として計算できる。平均誤差得点があまりにも高い場合、方法300(そして、随意的に方法200)の追加的反復を実行できる。例えば、モデルにおいて使用されるアルゴリズムのハイパーパラメータを調整でき、モデルのアルゴリズムは変更でき、および/または、データの異なる特徴をモデルにおいて考えることができる。
【0078】
下記に更に記述される種々の実現形態においては、時間シフト、つまり、時系列信号における時間ラグの量は、テストデータセットのテスト中に評価される。
【0079】
方法300の幾つかの実現形態においては、交差検証処理を実行でき、それにより、トレーニングおよびテストデータは、種々の組み合わせに分割され、これらの種々の組み合わせにおいてトレーニングおよびテストされる。例えば、徹底的な交差検証またはk-重検証処理を実行できる。
【0080】
シミュレーション結果
【0081】
開示に従って学習したモデルを使用して得られた予測結果を評価するために、2つの評価基準が考察された。それは平均絶対誤差(MAE)と時間シフトである。MAEは、2つの連続する変数間の差の大きさである。y1、...、ynを予測結果と仮定する。t1、...、tnは目標値である。MAEは、式(8)により与えられる。
【数10】
より小さいMAEは、予測結果と目標値との間のより小さい誤差を意味する。
【0082】
時間シフトは、時系列信号における時間ラグの大きさである。それは、式(9)により表わすことができる。
【数11】
ここにおいて、δは予測された車両速度時系列の時間シフトを表わしている。より小さい時間シフトは、予測結果と目標値との間のより小さい時間ラグを示している。
【0083】
予測結果は、図6を参照して上述した幹線道路運転データセットおよび図7を参照して上述した都市部運転データセットを使用して、目標値に対して評価された。車両速度は、10秒後の速度が予測された。
【0084】
図11Aは、目標速度時系列曲線と、標識なしの図6の幹線道路運転データセットに対して自己回帰移動平均(ARMA)モデルをテストすることにより生成された、予測された速度時系列曲線とを例示しているグラフである。ARMAモデルは、将来の車両速度を予測するためにトレーニングできるモデルの例である。ARMAモデルは、標識が付けられた入力を取り入れない。時系列データy(t)があると、ARMAモデルは2つの部分、つまり、自己回帰(AR)部分と移動平均(MA)部分を含む。AR部分は、それ自身の履歴値の出力変数を回帰推定することを含んでいる。MA部分は誤差項を、過去に同時に起こり、種々の時点において起きた誤差項の線形組み合わせとしてモデル化することを含んでいる。数学的には、ARMAモデルは式(10)により表わすことができる。
【数12】
ここにおいて、yは注目変数、eは誤差、pは自己回帰部分の次数、そしてqは移動平均部分の次数である。省略表現ARMA(p,q)はそのようなモデルを指定するためにしばしば使用される。図11Aにより例示されているように、ARMAモデルは良好には機能しなかった。予測と目標との間には明白な誤差と時間シフトがある。
【0085】
図11Bは、目標速度時系列曲線と、標識のある図6の幹線道路運転データセットに対してNARXモデルをテストすることにより生成された、予測された速度時系列曲線とを例示しているグラフである。テストの間、NARXモデルの構造は、3つの隠れ層を有する4層ニューラルネットワークとして選択された。3つの隠れ層は{2、5、6}ニューロンをそれぞれ有している。起動関数は「tanh」として選択された。NARXモデルは、関数Narxnetで有するMatlabにおいて改良された。予測と目標との間の誤差と時間シフトは平均して、10秒予測結果に対するARMAモデルよりも小さかった。
【0086】
図11Cは、目標速度時系列曲線と、標識のある図6の幹線道路運転データセットに対してLSTMモデルをテストすることにより生成された、予測された速度時系列曲線とを例示しているグラフである。テストの間、LSTMを改良するために、テンソルフローが使用された。LSTMの構造は、3つの隠れ層を有する4層ニューラルネットワークとして選択された。3つの隠れ層は{64、32、13}ニューロンを有していた。起動関数は、匂配消失を回避し、トレーニング処理を加速するために、「ReLu」として選択された。正則化およびドロップアウト層は、オーバーフィッティングを回避すると考えられた。例示されているように、予測と目標との間の誤差および時間シフトは、10秒予測結果に対しては小さかった。誤差と時間シフトは幾つかの領域に存在するだけである。
【0087】
図6の幹線道路運転データセットを使用した、異なる機械学習モデル間の比較は、下記に示されている表1に例示されている下記の結果となった。
【表1】
【0088】
ARMAモデルは、金融においては最も広く使用されている時系列予測モデルであるが、幹線道路運転における車両速度予測に対しては良好に機能しなかった。車両速度を予測する問題は、ARMAモデルの強みである、市場における季節性のような特徴を有していない。NARXモデルは2番目に良好な予測性能を達成した。それはMAEと時間シフトを削減した。LSTMは、最良の予測性能と最小時間シフトを達成した。車両速度予測のために開発された、マルコフ鎖(MC)モデルと条件付き線形ガウス(CLG)モデルを含む確率論的予測モデルもまたテストされた。確率論的予測モデルは、幹線道路運転データセットについての車両速度予測に対して良好に機能しなかった。
【0089】
図12は、目標速度時系列曲線と、標識が付けられた入力と、標識が付けられていない入力を使用して、図6の幹線道路運転データセットに対してLSTMモデルをテストすることにより生成された、予測された車両時系列曲線とを例示している2つの異なるグラフを示している。左上のグラフは、図6を参照して上述したマップ標識を入力として使用して生成された。左下のグラフは、標識が付けられた入力なしで生成された。右上のグラフは、左上のグラフの一区間を拡大している。右下のグラフは、左下のグラフの一区間を拡大している。上部のグラフは、0.90m/sにおける10秒予測MAEを有していた。下部のグラフは、1.09m/sにおける10秒予測MAEを有していた。例示されているように、標識が付けられた入力(この例においては、マップ標識)の使用は、時間シフトとMAEを相当に削減した。
【0090】
図13は、目標速度時系列曲線と、標識が付けられた入力と、標識が付けられていない入力を使用して、図7の都市部運転データセットに対してLSTMモデルをテストすることにより生成された、予測された速度時系列曲線とを例示している2つの異なるグラフを示している。左上のグラフは、図7を参照して上述した標識を入力として使用して生成された。左下のグラフは、標識が付けられた入力なしで生成された。右上のグラフは、左上のグラフの一区間を拡大している。右下のグラフは、左下のグラフの一区間を拡大している。上部のグラフは、1.07m/sにおける10秒予測MAEを有していた。下部のグラフは、1.66m/sにおける10秒予測MAEを有していた。下記の表2は、表形式での結果を示している。
【表2】
例示されているように、標識が付けられた入力の使用は、結果を相当に改善した。
【0091】
図14は、開示に従う、運転中に車両速度を予測するために、加速/減速事象を示す標識が付けられた入力を使用してトレーニングされた学習済み車両速度予測モデルを使用するための処理フロー400を例示している。例示されているように運転中、車両は、先行交通についてのデータを提供できるセンサ信号401(例えば、レーダー、ライダー、または他のセンサ)、GPS信号402、車両状態信号403、および他の信号404を受信するように構成されており、ある時間T(例えば、1~10秒)後の車両速度を予測するために、動作420で使用される学習済み車両速度予測モデル410への入力としてこれらの信号を使用するように構成されている。学習済み車両速度予測モデル410は、車両の電子制御ユニットに格納されるアルゴリズムとして実現できる。幾つかの実現形態においては、センサ信号401は、学習済み車両速度予測モデル410に提供される前に、前処理することができる。モデル、モデルの予測時間、および、予測モデルを必要とする適用を使用する車両のタイプによっては、予測された将来の速度は、動力分割制御430(例えば、HEVにおいて)に対して、ターボラグ補償(例えば、ICE車両において)、または、自動化運転制御(例えば、すべての車両において)に対して使用できる。
【0092】
この場合、加速事象または減速事象の標識はマップに格納でき(例えば、停止標識の位置または道路の曲率に対応する標識)、運転中に、標識が付けられた入力を提供するために車両の制御ユニットにより検索される。代替として、標識は動的に生成できる(例えば、交通信号灯信号の認識から、または、交通状況のマップから)。
【0093】
ここにおいて使用されているように、構成要素という用語は、本願の1つ以上の実施形態に従って実行できる機能の所与のユニットを記述することができる。ここにおいて使用されているように、構成要素は、ハードウェア、ソフトウェア、またはそれらの組み合わせの任意の形式を利用して実現できる。例えば、1つ以上のプロセッサ、コントローラ、ASIC、PLA、PAL、CPLD、FPGA、論理構成要素、ソフトウェアルーチン、または他の機構は、構成要素を構成するために実現できる。ここにおいて記述されている種々の構成要素は、分離した構成要素として実現でき、または、記述されている機能および特徴は、一部または全体を1つ以上の構成要素間で共有できる。言い換えると、この技術における通常の技量を有する者にはこの記述を読んだ後に明白になるように、ここにおいて記述されている種々の特徴および機能は、任意の所与の適用において実現できる。それらの特徴および機能は、種々の組み合わせおよび並べ替えにおいて、1つ以上の別個の、または共有構成要素において実現できる。種々の特徴または機能要素は、別個の構成要素として個々に記述または主張できるが、これらの特徴/機能は、1つ以上の共通ソフトウェアおよびハードウェア要素間で共有できるということは理解されるべきである。そのような記述は、別個のハードウェアまたはソフトウェア構成要素が、そのような特徴または機能を実現するために使用されることを要求するものでも暗示するものでもない。
【0094】
構成要素が、その全部または一部がソフトウェアを使用して実現される場合、これらのソフトウェア要素は、それらに関して記述されている機能を実行できる演算または処理構成要素と共に動作するように実現できる。1つのそのような例としての演算構成要素が図15に示されている。種々の実施形態は、この例としての演算構成要素800に関して記述されている。この記述を読んだ後は、関連技術における技量を有する者には、他の演算構成要素またはアーキテクチャを使用して適用をどのようにして実現するかは明白となるであろう。
【0095】
ここで図15を参照すると、演算構成要素800は、例えば、コンピュータ処理ユニット、または所与の適用または環境に対して望ましく、または適切であり得るような特殊目的または汎用演算装置の任意の他のタイプにおいて見出される演算または処理能力を代表することができる。演算構成要素800はまた、所与の装置に埋め込まれている、または所与の装置が利用可能な演算能力も代表することができる。例えば、演算構成要素は、例えば、処理能力の何らかの形状を含むことができる電子装置のような、他の電子装置において見出すことができる。
【0096】
演算構成要素800は、例えば、1つ以上のプロセッサ、コントローラ、制御構成要素、または他の処理装置を含むことができる。これは、プロセッサ、および/または、電子制御装置50および/またはその構成要素部品、油圧制御回路40、または車両の他の構成要素または要素、例えば信号センサなどを構成する構成要素の任意の1つ以上を含むことができる。プロセッサ804は、例えば、マイクロプロセッサ、コントローラ、または他の制御論理回路などのような、汎用または特殊目的処理エンジンを使用して実現できる。プロセッサ804はバス802に接続できる。しかし、如何なる通信媒体も、演算構成要素800の他の構成要素との相互作用を促進にするために、または外部と通信するために使用できる。
【0097】
演算構成要素800はまた、ここにおいては単にメインメモリ808と称される1つ以上のメモリ構成要素も含むことができる。例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)または他の動的メモリを、情報、および、プロセッサ804により実行される命令を格納するために使用できる。メインメモリ808はまた、プロセッサ804により実行される命令の実行中に、一時的変数または他の中間情報を格納するためにも使用できる。演算構成要素800は同様に、プロセッサ804に対する静的情報および命令を格納するために、リードオンリメモリ(「ROM」)または、バス802に結合されている他の静的格納装置を含むことができる。
【0098】
演算構成要素800はまた、例えば、メディアドライブ812および格納ユニットインタフェース820を含むことができる情報格納機構810の1つ以上の種々の形状も含むことができる。メディアドライブ812は、ドライブまたは、固定または取外し可能格納媒体814をサポートするための他の機構を含むことができる。例えば、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ、磁気テープドライブ、光ドライブ、コンパクトディスク(CD、)、デジタルビデオディスク(DVD)ドライブ、またはBlu-ray(登録商標)ドライブ(RまたはRW)、または他の取外し可能または固定メディアドライブを提供できる。格納媒体814は、例えば、ハードディスク、ソリッドステートドライブ、集積回路アセンブリ、磁気テープ、カートリッジ、光ディスク、CD、DVD、またはBlue-rayを含むことができる。格納媒体814は、メディアドライブ812により読み込まれ、そこに書き込まれ、またはそれによりアクセスされる任意の他の固定または取外し可能媒体であってよい。これらの例が示しているように、格納媒体814は、コンピュータソフトウェアまたはデータをその中に格納しているコンピュータ使用可能格納媒体を含むことができる。
【0099】
代替の実施形態においては、情報格納機構810は、コンピュータプログラムまたは他の命令またはデータが演算構成要素800にロードされることを可能にするために、他の類似の手段を含むことができる。そのような手段は、例えば、固定または取外し可能格納ユニット822およびインタフェース820を含むことができる。そのような格納ユニット822およびインタフェース820の例としては、プログラムカートリッジおよびカートリッジインタフェース、取外し可能メモリ(例えば、フラッシュメモリまたは他の取外し可能メモリ構成要素)およびメモリスロットを含むことができる。他の例としては、PCMCIAスロットおよびカード、および他の固定または取外し可能格納ユニット822、およびソフトウェアとデータが格納ユニット822から演算構成要素800に転送されることを可能にするインタフェース820を含むことができる。
【0100】
演算構成要素800はまた、通信インタフェース824も含むことができる。通信インタフェース824は、ソフトウェアとデータが、演算構成要素800と外部装置との間で転送されることを可能にするために使用できる。通信インタフェース824の例としては、モデムまたはソフトモデム、ネットワークインタフェース(Ethernet(登録商標)、ネットワークインタフェースカード、WiMedia、IEEE802.XXまたは他のインタフェースなど)を含むことができる。他の例としては、通信ポート(例えば、USBポート、IRポート、RS232ポート、Bluetooth(登録商標)インタフェース、または他のポートなど)、または他の通信インタフェースがある。通信インタフェース824を介して転送されるソフトウェア/データは、電子信号、電磁信号(光信号を含む)、または所与の通信インタフェース824により交換可能な他の信号であってよい信号上で搬送できる。これらの信号は、通信インタフェース824に、チャネル828を介して提供できる。チャネル828は信号を搬送でき、有線または無線通信媒体を使用して実現できる。チャネルの幾つかの例としては、電話線、セルラーリンク、RFリンク、光リンク、ネットワークインタフェース、ローカルまたはワイドエリアネットワーク、および他の有線または無線通信チャネルを含むことができる。
【0101】
この文献においては、「コンピュータ可読媒体」、「コンピュータ使用可能媒体」、および「コンピュータプログラム媒体」という用語は、例えば、メモリ808、格納ユニット822、および媒体814などのような非一時的媒体、または揮発性媒体または不揮発性媒体を一般的に指し示すために使用されている。コンピュータプログラム媒体またはコンピュータ使用可能媒体のこれらの、および他の種々の形式は、1つ以上の命令の1つ以上のシーケンスを、実行のために処理装置に搬送することに関与させることができる。媒体上に含まれるそのような命令は一般的に、「コンピュータプログラムコード」または「コンピュータプログラム製品」(これらは、コンピュータプログラムまたは他のグループ化の形式でグループ化できる)と称される。実行されると、そのような命令は、演算構成要素800が、ここにおいて検討されているように、本願の特徴または機能を実行することを可能にする。
【0102】
個々の実施形態の1つ以上において記述されている種々の特徴、態様、および機能は、それらの適用可能性において、それらを記述した特別な実施形態に制限されないということは理解されるべきである。そうではなく、それらの特徴、態様、および機能は単独で、または種々の組み合わせにおいて、そのような実施形態が記述されていようがいまいが、およびそのような特徴が、記述されている実施形態の一部として提示されていようがいまいが、1つ以上の他の実施形態に適用できる。そのため、本願の領域および範囲は、上述した例としての実施形態の何れによっても制限されるべきではない。
【0103】
この文献において使用される用語およびフレーズ、およびそれらの変形は、別途、明示的に記述されない限り、制限的とは反対に、非制限的なものとして解釈されるべきである。上記の例として、「含んでいる」という用語は、「制限なしに含んでいる」などを意味していると読まれるべきである。「例」という用語は、検討されている事項の実例を提供するために使用されており、それらを網羅しているリスト、またはそれらを制限しているリストではない。「1つの」という用語は、「少なくとも1つの」、「1つ以上の」などを意味していると読まれるべきであり、そして「従来の」、「慣習的な」、「通常の」、「標準の」、「既知の」などのような、類似の意味の形容詞の用語は、記述されている事項を、所与の時間期間または、所与の時間において利用可能な事項に制限するとは解釈されるべきではない。そうではなく、それらは、現在または将来の何れかの時間において利用可能であることができ、または既知であることができる、従来の、慣習的な、通常の、または標準の技術を含んでいると読まれるべきである。この文献が、この技術において通常の技量を有する者にとって明白または既知の技術に言及するときは、そのような技術は、現在および将来の何れかの時間において当業者に明白または既知の技術も含んでいる。
【0104】
幾つかの例における、「1つ以上の」、「少なくとも」、「しかし~に制限されない」、または他の類似のフレーズなどのような、意味を広げる語句とフレーズの存在は、そのような意味を広げるフレーズが存在しなくてよい例においては、より狭い場合が意図されている、または要求されているということを意味しているとは読まれるべきではない。「構成要素」という用語の使用は、構成要素の一部として記述または主張されている態様または機能がすべて、共通のパッケージにおいて構成されているということを意味として含んではいない。実際には、構成要素の種々の態様の何れかまたはすべては、制御論理回路であろうが他の構成要素であろうが、単一のパッケージに組み合わせることができ、または、別個に維持でき、多数のグループ化またはパッケージにおいて、または多数の箇所にわたり更に分散できる。
【0105】
追加的に、ここにおいて記述された種々の実施形態は、例としてのブロック図、フローチャート、および他の例示に関して記述されている。この技術における通常の技量を有する者には、この文献を読んだ後に明白になるように、例示されている実施形態およびそれらの種々の代替は、示されている例に制限されることなく実現できる。例えば、ブロック図およびその付随する記述は、特別なアーキテクチャまたは構成を義務付けているとは解釈されるべきではない。
本明細書に開示される発明は以下の態様を含む。
〔態様1〕
それぞれが、センサデータ、全地球測位システム(GPS)データ、および車両の走行中に時間の経過においてに収集された車両状態データを備えている複数の時系列データセットを受信することと、
車両の将来の速度を示す前記複数の時系列データセットのそれぞれから、前記センサデータ、前記GPSおよび前記車両状態データを備えている特徴を抽出することと、
車両の加速事象または減速事象を示すために、前記複数の時系列データセットのそれぞれの前記抽出された特徴に標識を付けることと、
車両の加速事象または減速事象を示すために、前記複数の時系列データセットのそれぞれの前記抽出された特徴に標識を付けた後に、ある時間後の車両速度を予測する機械学習モデルをトレーニングするために、前記抽出されて標識が付けられた時系列データセットの少なくともサブセットを使用することと、
を有する、方法。
〔態様2〕
前記抽出された特徴に標識を付けることは、
それぞれの時間に対応する複数の値を備えている時系列ベクトルを作成すること、または、それぞれの位置に対応する複数の値を備えている位置系列ベクトルを作成することを有しており、
前記時系列または位置系列の前記複数の値のそれぞれは、
加速事象が存在する、
減速事象が存在する、または
加速事象または減速事象は存在しないということの1つを示しており、
示されている車両の加速事象または減速事象は、運転を開始しようとしている車両、運転を終了しようとしている車両、停止標識、交通信号灯、道路の曲がり角、幹線道路の曲がり角、および特別な曲率半径を有している道路の事象の1つ以上を有しており、
前記位置系列ベクトルの前記複数の値は、GPS経度および緯度位置それぞれに対応しており、
前記位置系列ベクトルの前記複数の値のそれぞれは、加速事象が存在する、減速事象が存在する、または、加速事象または減速事象は存在しないということを示すために、1、0、または-1に規格化されている、態様1に記載の方法。
〔態様3〕
前記複数の時系列データセットのそれぞれの前記抽出された特徴に標識を付けた後に、前記抽出されて標識が付けられた時系列データセットを、前記機械学習モデルをトレーニングするために使用されるトレーニングデータセットと、テストデータセットに分割することと、
前記機械学習モデルをトレーニングした後に、目標車両速度を、前記トレーニングされたモデルにより予測された車両速度と比較することを含んでいる、前記目標車両速度と、少なくとも前記テストデータセットの、前記抽出されて標識が付けられた時系列データセットを使用して、前記トレーニングされた機械学習モデルにより予測された前記車両速度との間の時間シフトを測定することにより、前記トレーニングされた機械学習モデルをテストすることと、
を更に有している、態様1に記載の方法。
〔態様4〕
前記時間シフトは、
〔数1〕
に基づいて測定され、ここにおいて、δは予測された車両速度時系列の時間シフトを表わしており、MAEは、
〔数2〕
により与えられる平均絶対誤差を表わしており、ここにおいてy1、・・・、ynは、前記機械学習モデルを使用して、ある時間後のn回予測された車両速度であり、t1、・・・、tnは前記車両速度が予測されたときの前記時間に対応する、測定された車両速度である、態様3に記載の方法。
〔態様5〕
ある時間後の車両速度を予測するためにトレーニングされた前記機械学習モデルは、外因性入力を伴う非線形自己回帰シャローニューラルネットワークモデルを有している、態様3に記載の方法。
〔態様6〕
ある時間後の車両速度を予測するためにトレーニングされた前記機械学習モデルは、長・短期記憶(LSTM)ディープニューラルネットワークモデルを有している、態様3に記載の方法。
〔態様7〕
運転中に、1~10秒後の車両速度を予測するために前記トレーニングおよびテストされた機械学習モデルに対応する予測アルゴリズムを使用するように、車両の制御ユニットを構成することを更に有しており、
前記制御ユニットは、前記予測アルゴリズムへの入力として、
前記車両のGPSユニットにより収集されたGPSデータと、
前記車両の先行交通センサユニットにより収集された先行交通のセンサデータと、
前記車両の1つ以上の車両状態センサにより収集された車両状態データと、
特別な時間または位置における加速事象または減速事象を示すものを提供する標識を受信するように構成されている、
態様6に記載の方法。
〔態様8〕
前記車両の前記電子制御ユニットが、格納されているマップデータから、加速事象または減速事象を示すものを提供する、前記予測アルゴリズムへの入力である前記標識を抽出することを更に有している、態様7に記載の方法。
〔態様9〕
前記車両の前記電子制御ユニットが、加速事象または減速事象を示すものを提供する、前記予測アルゴリズムへの入力である前記標識を動的に生成することを更に有している、態様7に記載の方法。
〔態様10〕
格納されている実行可能な命令を有している非一時的なコンピュータ可読媒体であって、前記命令は、プロセッサにより実行されると、前記プロセッサに、
それぞれが、センサデータ、全地球測位システム(GPS)データ、および車両の走行中に時間の経過において収集された車両状態データを備えている複数の時系列データセットを受信する動作と、
車両の将来の速度を示す前記複数の時系列データセットのそれぞれから、前記センサデータ、前記GPSおよび前記車両状態データを備えている特徴を抽出する動作と、
車両の加速事象または減速事象を示すために、前記複数の時系列データセットのそれぞれの前記抽出された特徴に標識を付ける動作と、
車両の加速事象または減速事象を示すために、前記複数の時系列データセットのそれぞれの前記抽出された特徴に標識を付けた後に、ある時間後の車両速度を予測する機械学習モデルをトレーニングするために、前記抽出されて標識が付けられた時系列データセットの少なくともサブセットを使用する動作を行わせる、
非一時的なコンピュータ可読媒体。
〔態様11〕
前記抽出された特徴に標識を付けることは、それぞれの時間に対応する複数の値を備えている時系列を作成すること、または、それぞれのGPS位置に対応する複数の値を備えている位置系列を作成することを有しており、
前記時系列または位置系列の前記複数の値のそれぞれは、
加速事象が存在する、
減速事象が存在する、または
加速事象または減速事象は存在しないということの1つを示している、
態様10に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
〔態様12〕
前記命令は、前記プロセッサにより実行されると、
前記複数の時系列データセットのそれぞれの前記抽出された特徴に標識を付けた後に、前記抽出されて標識が付けられた時系列データセットを、前記機械学習モデルをトレーニングするために使用されるトレーニングデータセットと、テストデータセットに分割する動作と、
前記機械学習モデルをトレーニングした後に、目標車両速度を、前記トレーニングされたモデルにより予測された車両速度と比較することと、前記目標車両速度と、前記トレーニングされたモデルにより予測された前記車両速度との間の時間シフトを測定することとを有している、少なくとも前記テストデータセットの前記抽出されて標識が付けられた時系列データセットを使用して、前記トレーニングされた機械学習モデルをテストする動作と、
をさらに行う、態様11に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
〔態様13〕
ある時間後の車両速度を予測するためにトレーニングされた前記機械学習モデルは、長・短期記憶(LSTM)ディープニューラルネットワークモデル、または外因性入力を伴う非線形自己回帰シャローニューラルネットワークモデルを有している、態様11に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
〔態様14〕
車両であって、
GPSセンサと、
車両状態センサと、
前記車両に先行する交通のデータを収集する先行交通センサと、
電子制御ユニットであって、
前記GPSセンサを使用して生成されたGPSデータを受信する動作と、
前記車両状態センサを使用して生成された車両状態センサデータを受信する動作と
前記先行交通センサを使用して生成された先行交通データを受信する動作と、
特別な時間または位置における加速事象または減速事象を示すものを提供する標識を得る動作と、
前記受信したGPSデータ、前記受信した車両状態センサデータ、前記受信した先行交通データ、および前記得られた標識を、トレーニングおよびテストされた車両速度予測モデルに対応する車両速度予測アルゴリズムへの入力として提供する動作と、
前記車両速度予測アルゴリズムを使用して、ある時間後の車両速度を予測する動作と、を繰り返す電子制御ユニットと、
を備えている、車両。
〔態様15〕
特別な時間または位置において、加速事象または減速事象を示すものを提供する標識を得ることは、
前記車両の前記電子制御ユニットが、格納されているマップデータから前記標識を抽出すること、または
前記車両の前記電子制御ユニットが、前記標識を動的生成すること、
を有している、態様14に記載の車両。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図11C
図12
図13
図14
図15