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特許7299984ビルダグリプチン含有乾式造粒末、ビルダグリプチン含有錠剤及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-20
(45)【発行日】2023-06-28
(54)【発明の名称】ビルダグリプチン含有乾式造粒末、ビルダグリプチン含有錠剤及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/40 20060101AFI20230621BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230621BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20230621BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20230621BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20230621BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20230621BHJP
【FI】
A61K31/40
A61P43/00 111
A61P3/10
A61K9/14
A61K9/20
A61K47/38
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021535391
(86)(22)【出願日】2020-07-29
(86)【国際出願番号】 JP2020029098
(87)【国際公開番号】W WO2021020455
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2022-01-31
(31)【優先権主張番号】P 2019142438
(32)【優先日】2019-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000209049
【氏名又は名称】沢井製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】高田 新也
(72)【発明者】
【氏名】小林 真紀子
【審査官】石井 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/097234(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02578208(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61P 1/00-43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビルダグリプチンを71.4重量%以上含む、ビルダグリプチン含有乾式造粒末。
【請求項2】
請求項1に記載のビルダグリプチン含有乾式造粒末を含む混合物を打錠して製造されるビルダグリプチン含有錠剤。
【請求項3】
前記混合物は、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースをさらに含む請求項2に記載のビルダグリプチン含有錠剤。
【請求項4】
ビルダグリプチンを71.4重量%以上含む混合物を乾式造粒する、ビルダグリプチン含有乾式造粒末の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載のビルダグリプチン含有乾式造粒末を含む混合物を打錠する、ビルダグリプチン含有錠剤の製造方法。
【請求項6】
前記混合物は、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースをさらに含む請求項5に記載のビルダグリプチン含有錠剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビルダグリプチン含有乾式造粒末、ビルダグリプチン含有錠剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビルダグリプチン((2S)-1-{[(3-Hydroxytricyclo[3.3.1.1 3,7 ]dec-1-yl)amino]acetyl}-pyrrolidine-2-carbonitrile)は、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)などの分解酵素であるジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)の阻害薬である。ビルダグリプチンはDPP-4を選択的かつ可逆的に阻害する2型糖尿病治療薬であり、内因性のGLP-1濃度を高めることで、血糖依存性にインスリン分泌を促進させるとともにグルカゴン分泌を抑制し、血糖降下作用を示す。ビルダグリプチンを含有する2型糖尿病治療薬は、例えば、エクア(登録商標)錠(Equa(登録商標)Tablets)がある(非特許文献1)。
【0003】
しかしながら、ビルダグリプチンは吸湿性であり、安定性の問題が存在することが知られている。
【0004】
例えば、特許文献1には、ビルダグリプチンの粒度と錠剤中の水分量を調節した直接圧縮錠剤が開示されている。また、特許文献2には、安定性を改善させるためにビルダグリプチンをポリオールとともに乾式造粒し、打錠することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5122144号明細書
【文献】国際公開第2018/050892号
【非特許文献】
【0006】
【文献】エクア(登録商標)錠 医薬品インタビューフォーム 2016年4月改訂(第16版)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、保存時にビルダグリプチンの類縁物質の生成が抑制されたビルダグリプチン含有乾式造粒末、ビルダグリプチン含有錠剤及びその製造方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態によると、ビルダグリプチンを50重量%以上含む、ビルダグリプチン含有乾式造粒末が提供される。
【0009】
本発明の一実施形態によると、上記ビルダグリプチン含有乾式造粒末を含む混合物を打錠して製造されるビルダグリプチン含有錠剤が提供される。
【0010】
混合物は、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースをさらに含んでもよい。
【0011】
本発明の一実施形態によると、ビルダグリプチンを50重量%以上含む混合物を乾式造粒する、ビルダグリプチン含有乾式造粒末の製造方法が提供される。
【0012】
本発明の一実施形態によると、上記ビルダグリプチン含有乾式造粒末を含む混合物を打錠する、ビルダグリプチン含有錠剤の製造方法が提供される。
【0013】
混合物は、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースをさらに含んでもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、保存時にビルダグリプチンの類縁物質の生成が抑制されたビルダグリプチン含有乾式造粒末、ビルダグリプチン含有錠剤及びその製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るビルダグリプチン含有乾式造粒末、ビルダグリプチン含有錠剤及びその製造方法について詳細に説明する。ただし、本発明のビルダグリプチン含有乾式造粒末、ビルダグリプチン含有錠剤及びその製造方法は、以下に示す実施の形態及び実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0016】
本発明者らが検討した結果、ビルダグリプチン含有乾式造粒末を用いてビルダグリプチン含有錠剤を製造したところ、ビルダグリプチン含有乾式造粒末中におけるビルダグリプチン含有割合が高いほど類縁物質の生成が抑制されることを見いだした。特許文献2には、乾式造粒法で製造されたビルダグリプチン含有錠剤が開示されている。しかしながら、乾式造粒末中におけるビルダグリプチンの含有割合がビルダグリプチンの安定性に寄与し得ることは開示も示唆もされていない。
【0017】
本実施形態のビルダグリプチンは、(2S)-1-{[(3-Hydroxytricyclo[3.3.1.1 3,7 ]dec-1-yl)amino]acetyl}-pyrrolidine-2-carbonitrileである。ビルダグリプチンは、本発明に係るビルダグリプチン含有錠剤の1錠中に、例えば50mg含まれている。ビルダグリプチン原薬の粒子径は、ビルダグリプチン含有錠剤の保存時に類縁物質の生成を抑制可能な大きさであれば制限はない。
【0018】
本実施形態のビルダグリプチン含有錠剤には、錠剤の形態であれば、特に制限はなく、口腔内崩壊錠、チュアブル錠、発泡錠、分散錠、溶解錠も含まれる。
【0019】
本実施形態のビルダグリプチン含有錠剤は、錠剤の形態とするために必要な添加剤を含有する。添加剤としては、賦形剤、結合剤、崩壊剤、安定化剤、抗酸化剤、矯味剤、滑沢剤、流動化剤等が挙げられる。添加剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。また2種以上である場合、あらかじめ複数の添加剤を混合して造粒した、いわゆるプレミックス添加剤を含有していても良い。本実施形態のビルダグリプチン含有錠剤は、乾式造粒法により、まずビルダグリプチン含有乾式造粒末を製造し、次いでビルダグリプチン含有乾式造粒末を含む混合物を打錠することでビルダグリプチン含有錠剤を製造する。
【0020】
添加剤は、ビルダグリプチン含有乾式造粒末の造粒前(前添部)に加えてもよく、ビルダグリプチン含有錠剤の打錠前(後添部)に加えてもよい。前添部に加えられる添加物としては、例えば、賦形剤、結合剤、滑沢剤、流動化剤等が挙げられる。本実施形態のビルダグリプチン含有乾式造粒末は、前添部としてビルダグリプチンを50重量%以上含む混合物から製造される。ビルダグリプチンを50重量%以上含む混合物からビルダグリプチン含有乾式造粒末を製造し、このビルダグリプチン含有乾式造粒末を含む混合物を打錠したビルダグリプチン含有錠剤は、ビルダグリプチンと添加物との接触面積が減少することから保存時の類縁物質の生成を抑制することができる。
【0021】
後添部に加えられる添加物としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、流動化剤等が挙げられる。本実施形態のビルダグリプチン含有錠剤は、ビルダグリプチン含有乾式造粒末に後添部の添加物として低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを加えて製造することが好ましい。ビルダグリプチン含有乾式造粒末と低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを含む混合物を打錠したビルダグリプチン含有錠剤は、保存時の類縁物質の生成をさらに抑制することができる。
【0022】
賦形剤は、例えば、糖類、糖アルコール類、デンプン類、セルロース類、カルメロース類、アラビアゴム、デキストラン、プルラン、ケイ酸塩類、リン酸塩、炭酸塩及び硫酸塩等から選択することができる。糖類としては、例えば、乳糖、白糖、ブドウ糖、トレハロース、マルトース等が挙げられる。糖アルコール類としては、マンニトール、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、イソマルト等が挙げられる。また、デンプン類としては、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、アルファー化デンプン、部分アルファー化デンプン 、デキストリン等が挙げられる。セルロース類としては、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。カルメロース類としては、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム等が挙げられる。ケイ酸塩類としては、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等が挙げられる。リン酸塩としては、リン酸水素カルシウム等が挙げられる。炭酸塩としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等が挙げられる。硫酸塩としては、硫酸カルシウム等が挙げられる。賦形剤は、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを含むことが好ましい。これらの賦形剤は、単独又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0023】
結合剤は、例えば、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、エチルセルロースおよびメチルセルロースなどのセルロース類、ポビドン、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルアルコール完全けん化物、ポリビニルアルコール部分けん化物、カルボキシビニルポリマー、ポリ塩化ビニルなどのビニル系高分子物質、アミノアルキルメタクリレートコポリマー(E、RS)、メタクリル酸コポリマー(L、S、LD)、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー分散液などのアクリル系高分子物質、ステアリルアルコール、ゼラチン、デキストリン、アラビアゴム、プルラン、マクロゴール、デンプン等から選択することができる。
【0024】
結合剤は、より好ましくは、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、エチルセルロースおよびメチルセルロースなどのセルロース類、ポビドン、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルアルコール完全けん化物、ポリビニルアルコール部分けん化物、カルボキシビニルポリマー、ポリ塩化ビニルなどのビニル系高分子物質、ステアリルアルコール、ゼラチン、デキストリン、アラビアゴム、プルラン、マクロゴール、デンプン等から選択することができる。
【0025】
崩壊剤は、例えば、カルメロース、カルメロースカルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウムおよびメチルセルロースなどのセルロース類、部分アルファー化デンプンおよびトウモロコシデンプンなどのデンプン類、クロスポビドン等から選択することができる。
【0026】
安定化剤は、例えば、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスパラギン酸、アスパラギン酸ナトリウム、アルギニン、エデト酸ナトリウム、無水クエン酸、クエン酸水和物、クエン酸ナトリウム水和物、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、ステアリン酸、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸マグネシウム等から選択することができる。
【0027】
抗酸化剤は、例えば、アスコルビン酸、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム水和物、無水クエン酸、クエン酸水和物、ジブチルヒドロキシトルエン、トコフェロール、トコフェロール酢酸エステル、ピロ硫酸ナトリウム等から選択することができる。
【0028】
矯味剤は、例えば、アスコルビン酸、アスパラギン酸、アスパラギン酸ナトリウム、アスパルテーム、カラメル、還元麦芽糖水アメ、グリチルリチン酸、サッカリン、サッカリンナトリウム、スクラロース、ステビア抽出精製物、精製白糖、メントール等から選択することができる。
【0029】
滑沢剤は、例えば、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、ステアリン酸、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ロイシン等から選択することができる。
【0030】
流動化剤は、例えば、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、トウモロコシデンプン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等から選択することができる。
【0031】
本発明に係るビルダグリプチン含有乾式造粒末は、ビルダグリプチンを50重量%以上と添加剤を混合し、得られた混合物を乾式造粒法により製造する。また、本発明に係るビルダグリプチン含有錠剤は、このようにして得られたビルダグリプチン含有乾式造粒末と添加剤を混合し、得られた混合物を打錠することにより製造することで、保存時の類縁物質の生成を抑制することができる。
【0032】
(製造方法)
本発明に係るビルダグリプチン含有錠剤は、公知の乾式造粒法によって製造することができる。乾式造粒法としては、圧片造粒法、ブリケット造粒法などがあげられる。乾式造粒法は、有効成分に添加剤を加えて混和して均質としたものを、そのまま圧縮、成型し、適当な大きさに粉砕して造粒する方法である。このため溶媒を必要とせず、また乾燥工程が不要な点から、溶媒に不安定な薬物や乾燥時の熱に不安定な薬物に適している。
【0033】
本発明の一実施形態において、ビルダグリプチン含有乾式造粒末は、通常用いられる混合機を用いて、ビルダグリプチンを50重量%以上と必要な添加剤とを混和して均質な粉末混合物としたものを、通常用いられる乾式造粒装置で圧縮成形した後、整粒機にかけて粉砕することにより製造することができる。混合工程の回数には特に制限はなく、数回に分けて混合しても良い。得られたビルダグリプチン含有乾式造粒末は、粉砕機にかけて目的とする粒子径の乾式造粒末を得ることができる。
【0034】
本発明の一実施形態において、ビルダグリプチン含有錠剤は、通常用いられる混合機を用いて、ビルダグリプチン含有乾式造粒末と必要な添加剤とを混和して均質な混合物としたものを、通常用いられる打錠機で圧縮成形することにより製造することができる。添加剤として低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを加えて製造することがより好ましい。成形に関しては、どのような形状をも採用することができ、例えばタブレット型、楕円形、球形、棒状型の形状に成形することができる。
【実施例
【0035】
本発明に係るビルダグリプチン含有錠剤の製造方法の一例を以下に示すが、この記載は一例にすぎず、これに限定されるものではない。
【0036】
(実施例1)
ビルダグリプチン50.0mg(kyongbo)当たりステアリン酸マグネシウム2.0mg(植物、太平化学産業)を加え混合後、ローラーコンパクター(TF-MINI、フロイント産業株式会社)を使用しロール圧100kgf/cm2にて乾式造粒を行い、ビルダグリプチン含有量96.2重量%の乾式造粒末を得た。この乾式造粒末をパワーミル(スクリーン径1.0mm)で整粒したのち、結晶セルロース94.0mg(PH-102、旭化成)、無水乳糖47.0mg(DCL-21、DMV International)、デンプングリコール酸ナトリウム5.0mg(Primojel、DMV International)、ステアリン酸マグネシウム2.0mg(植物、太平化学産業)を加え十分混合後、ロータリー打錠機(VELA、株式会社菊水製作所)により打錠圧7.1kNで打錠成形し、厚み3.53mmで200.0mgのビルダグリプチン含有錠剤を得た。
【0037】
(実施例2)
ビルダグリプチン50.0mg(kyongbo)当たり、結晶セルロース12.0mg(PH-102、旭化成)、無水乳糖6.0mg(DCL-21、DMV International)、ステアリン酸マグネシウム2.0mg(植物、太平化学産業)を加え混合後、ローラーコンパクター(TF-MINI、フロイント産業株式会社)を使用しロール圧100kgf/cmにて乾式造粒を行い、ビルダグリプチン含有量71.4重量%の乾式造粒末を得た。この乾式造粒末をパワーミル(スクリーン径1.0mm)で整粒したのち、結晶セルロース82.0mg(PH-102、旭化成)、無水乳糖41.0mg(DCL-21、DMV International)、デンプングリコール酸ナトリウム5.0mg(Primojel、DMV社)、ステアリン酸マグネシウム2.0mg(植物、太平化学産業)を加え十分混合後、ロータリー打錠機(VELA、株式会社菊水製作所)により打錠圧6.7kNで打錠成形し、厚み3.53mmで200.0mgのビルダグリプチン含有錠剤を得た。
【0038】
(実施例3)
ビルダグリプチン50.0mg(kyongbo)当たり、結晶セルロース32.0mg(PH-102、旭化成)、無水乳糖16.0mg(DCL-21、DMV International)、ステアリン酸マグネシウム2.0mg(植物、太平化学産業)を加え混合後、ローラーコンパクター(TF-MINI、フロイント産業株式会社)を使用しロール圧100kgf/cmにて乾式造粒を行い、ビルダグリプチン含有量50重量%の乾式造粒末を得た。この乾式造粒末をパワーミル(スクリーン径1.0mm)で整粒したのち、結晶セルロース62.0mg(PH-102、旭化成)、無水乳糖31.0mg(DCL-21、DMV International)、デンプングリコール酸ナトリウム5.0mg(Primojel、DMV社)、ステアリン酸マグネシウム2.0mg(植物、太平化学産業)を加え十分混合後、ロータリー打錠機(VELA、株式会社菊水製作所)により打錠圧6.7kNで打錠成形し、厚み3.53mmで200.0mgのビルダグリプチン含有錠剤を得た。
【0039】
(比較例1)
ビルダグリプチン50.0mg(kyongbo)当たり、結晶セルロース72.0mg(PH-102、旭化成)、無水乳糖36.0mg(DCL-21、DMV International)、ステアリン酸マグネシウム2.0mg(植物、太平化学産業)を加え混合後、ローラーコンパクター(TF-MINI、フロイント産業株式会社)を使用しロール圧100kgf/cmにて乾式造粒を行い、ビルダグリプチン含有量31.3重量%の乾式造粒末を得た。この乾式造粒末をパワーミル(スクリーン径1.0mm)で整粒したのち、結晶セルロース22.0mg(PH-102、旭化成)、無水乳糖11.0mg(DCL-21、DMV International)、デンプングリコール酸ナトリウム5.0mg(Primojel、DMV社)、ステアリン酸マグネシウム2.0mg(植物、太平化学産業)を加え十分混合後、ロータリー打錠機(VELA、株式会社菊水製作所)により打錠圧6.6kNで打錠成形し、厚み3.53mmで200.0mgのビルダグリプチン含有錠剤を得た。
【0040】
(比較例2)
ビルダグリプチン50.0mg(kyongbo)当たり、結晶セルロース94.0mg(PH-102、旭化成)、無水乳糖47.0mg(DCL-21、DMV International)、ステアリン酸マグネシウム2.0mg(植物、太平化学産業)を加え混合後、ローラーコンパクター(TF-MINI、フロイント産業株式会社)を使用しロール圧100kgf/cmにて乾式造粒を行い、ビルダグリプチン含有量25.9重量%の乾式造粒末を得た。この乾式造粒末をパワーミル(スクリーン径1.0mm)で整粒したのち、デンプングリコール酸ナトリウム5.0mg(Primojel、DMV社)、ステアリン酸マグネシウム2.0mg(植物、太平化学産業)を加え十分混合後、ロータリー打錠機(VELA、株式会社菊水製作所)により打錠圧6.5kNで打錠成形し、厚み3.53mmで200.0mgのビルダグリプチン含有錠剤を得た。
【0041】
(比較例3)
ビルダグリプチン50.0mg(kyongbo)当たり、結晶セルロース94.0mg(PH-102、旭化成)、無水乳糖47.0mg(DCL-21、DMV International)、デンプングリコール酸ナトリウム5.0mg(Primojel、DMV社)を加え十分混合し、篩過後、ステアリン酸マグネシウム4.0mg(植物、太平化学産業)を加え十分混合し、ロータリー打錠機(VELA、株式会社菊水製作所)により打錠圧5.5kNで直接打錠成形し、厚み3.55mmで200.0mgのビルダグリプチン含有錠剤を得た。
【0042】
(類縁物質)
本明細書において、安定性の評価として、液体クロマトグラフィーを用いてビルダグリプチンの純度を評価した。面積百分率法により、クロマトグラム上に得られたビルダグリプチン及びビルダグリプチン由来の類縁物質の各成分のピーク面積の総和を100とし、ピーク面積の比からビルダグリプチン由来の総類縁物質量(%)および個々最大類縁物質量(%)を算出した。
【0043】
実施例1~3および比較例1~3のビルダグリプチン含有錠剤を各種条件下で保存し、保存後のビルダグリプチン含有錠剤について、総類縁物質量(%)および個々最大類縁物質量(%)を測定した。具体的には、40℃75%RHの条件または60℃60%RHの条件でそれぞれ4週間保存した場合について、総類縁物質量(%)および個々最大類縁物質量(%)を測定した。
【0044】
液体クロマトグラフィーの具体的な条件としては、L-Column2 ODS、φ3.0×150mm、3μmを用いて、10mMリン酸塩緩衝液(pH7.0)及びアセトニトリルを移動相として、フォトダイオードアレイ検出器(測定波長:210nm)を用いて検出した。
【0045】
表1は、実施例1~3および比較例1~3における総類縁物質量(%)および個々最大類縁物質量(%)の測定結果を示す。
【表1】
【0046】
表1より、実施例1~3に係るビルダグリプチンを50重量%以上含む混合物を乾式造粒法により製造したビルダグリプチン含有錠剤と、比較例1~3に係るビルダグリプチン含有錠剤とを比較すると、実施例1~3における40℃75%RHの条件で4週間、または60℃60%RHの条件で4週間保存した場合の総類縁物質量(%)および個々最大類縁物質量(%)は何れも、比較例1~3における40℃75%RHの条件で4週間、60℃60%RHの条件で4週間保存した場合の総類縁物質量(%)および個々最大類縁物質量(%)よりも小さいことがわかる。
【0047】
したがって、実施例1~3のビルダグリプチン含有錠剤を保存した後の類縁物質の生成は抑制されているといえる。実施例1~3に係るビルダグリプチンを50重量%以上含む混合物からビルダグリプチン含有乾式造粒末を製造し、このビルダグリプチン含有乾式造粒末を含む混合物を打錠したビルダグリプチン含有錠剤は、ビルダグリプチンと添加物との接触面積が減少することから保存時の類縁物質の生成を抑制することが考えられる。
【0048】
(実施例4)
ビルダグリプチン50.0mg(kyongbo)当たりD-マンニトール19.0mg(ペアリトール200SD、Roquette)およびステアリン酸マグネシウム1.0mg(植物、太平化学産業)を加え混合後、ローラーコンパクター(TF-MINI、フロイント産業株式会社)を使用しロール圧100kgf/cm2にて乾式造粒を行い、ビルダグリプチン含有量71.4重量%の乾式造粒末を得た。この乾式造粒末をパワーミル(スクリーン径1.0mm)で整粒したのち、D-マンニトール80.0mg(ペアリトール200SD、Roquette)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース48.0mg(NBD-021、信越化学工業)、ステアリン酸マグネシウム2.0mg(植物、太平化学産業)を加え十分混合後、ロータリー打錠機(VELA、株式会社菊水製作所)により打錠圧9.9kNで打錠成形し、厚み3.60mmで200.0mgのビルダグリプチン含有錠剤を得た。
【0049】
(実施例5)
ビルダグリプチン50.0mg(kyongbo)当たりD-マンニトール19.0mg(ペアリトール200SD、Roquette)およびステアリン酸マグネシウム1.0mg(植物、太平化学産業)を加え混合後、ローラーコンパクター(TF-MINI、フロイント産業株式会社)を使用しロール圧100kgf/cmにて乾式造粒を行い、ビルダグリプチン含有量71.4重量%の乾式造粒末を得た。この乾式造粒末をパワーミル(スクリーン径1.0mm)で整粒したのち、D-マンニトール80.0mg(ペアリトール200SD、Roquette)、結晶セルロース48.0mg(UF-702、旭化成)、ステアリン酸マグネシウム2.0mg(植物、太平化学産業)を加え十分混合後、ロータリー打錠機(VELA、株式会社菊水製作所)により打錠圧8.4kNで打錠成形し、厚み3.56mmで200.0mgのビルダグリプチン含有錠剤を得た。
【0050】
(類縁物質)
液体クロマトグラフィーを用いてビルダグリプチンの純度を評価した。面積百分率法により、クロマトグラム上に得られたビルダグリプチン及びビルダグリプチン由来の類縁物質の各成分のピーク面積の総和を100とし、ピーク面積の比からビルダグリプチン由来の総類縁物質量(%)および個々最大類縁物質量(%)を算出した。
【0051】
実施例4および実施例5のビルダグリプチン含有錠剤を各種条件下で保存し、保存後のビルダグリプチン含有錠剤について、総類縁物質量(%)および個々最大類縁物質量(%)を測定した。具体的には、40℃75%RHの条件で1週間保存した場合について、総類縁物質量(%)および個々最大類縁物質量(%)を測定した。
【0052】
表2は、実施例4および実施例5における総類縁物質量(%)および個々最大類縁物質量(%)の測定結果を示す。
【表2】
【0053】
表2より、実施例4に係るビルダグリプチン乾式造粒末に低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを加えて製造したビルダグリプチン含有錠剤と、実施例5に係るビルダグリプチン乾式造粒末に結晶セルロースを加えて製造したビルダグリプチン含有錠剤とを比較すると、実施例4における40℃75%RHの条件で1週間保存した場合の総類縁物質量(%)および個々最大類縁物質量(%)は何れも、実施例5における40℃75%RHの条件で1週間保存した場合の総類縁物質量(%)および個々最大類縁物質量(%)よりも小さいことがわかる。
【0054】
したがって、実施例4のビルダグリプチン含有錠剤を保存した後の類縁物質の生成は抑制されているといえる。すなわち、実施例4に係るビルダグリプチン乾式造粒末に低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを加えた混合物を打錠したビルダグリプチン含有錠剤は、保存時の類縁物質の生成をさらに抑制することがわかる。
【0055】
上述した各実施形態の態様によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、または、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。