(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-20
(45)【発行日】2023-06-28
(54)【発明の名称】複合材電気泳動粒子およびこれを含む可変式透過性フィルム
(51)【国際特許分類】
G02F 1/167 20190101AFI20230621BHJP
G02F 1/16757 20190101ALI20230621BHJP
G02F 1/1681 20190101ALI20230621BHJP
【FI】
G02F1/167
G02F1/16757
G02F1/1681
(21)【出願番号】P 2021545732
(86)(22)【出願日】2020-01-29
(86)【国際出願番号】 US2020015726
(87)【国際公開番号】W WO2020176193
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2021-08-04
(32)【優先日】2019-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500080214
【氏名又は名称】イー インク コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】パク, ジン-ギュ
(72)【発明者】
【氏名】パオリニ, リチャード ジェイ. ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】ウィドガー, ピーター カルステン ベイリー
(72)【発明者】
【氏名】スミス, ジリアン
(72)【発明者】
【氏名】アンセス, ジェイ ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】ハーブ, クレイグ エー.
(72)【発明者】
【氏名】ハリス, ジョージ ジー.
(72)【発明者】
【氏名】ロマノフスキー, マーク ベンジャミン
【審査官】鈴木 俊光
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-508588(JP,A)
【文献】特表2007-531016(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0109659(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0366069(US,A1)
【文献】特表2013-526727(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0187758(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/15 - 1/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結合材および複数のマイクロカプセルを含む電気光学媒体であって、各マイクロカプセルは、分散物を含み、前記分散物は、複数の荷電複合粒子および懸濁流体を含み、前記荷電
複合粒子は、電場の影響下で前記懸濁流体を通って動き、
ここで前記
荷電複合粒子は、ポリマー材料で少なくとも部分的にコーティングされた1またはこれより多くの顔料粒子を含み、前記顔料粒子は、
0.01~0.2μmの直径を有し、そしてマンガンフェライトブラックスピネル、銅クロマイトブラックスピネル、カーボンブラック、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され、
前記結合材、前記
荷電複合粒子、および前記懸濁流体の各々は、屈折率を有し、前記
荷電複合粒子の屈折率と、前記懸濁流体および
前記結合材
の屈折率との間の差異は、550nmにおいて0.05未満またはこれに等しい、
電気光学媒体。
【請求項2】
前記屈折率の各々は、550nmにおいて1.5より大きいかまたはこれに等しい、請求項1に記載の電気光学媒体。
【請求項3】
前記顔料粒子は、カーボンブラックを含む、請求項1に記載の電気光学媒体。
【請求項4】
前記ポリマー材料は、メタクリル酸メチル、ジメタクリル酸ヘキサンジオール、メタクリル酸トリフルオロエチル、メタクリル酸トリメトキシシリルプロピル、メタクリル酸tert-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2-フルオロエチル、アクリル酸トリフルオロエチル、アクリル酸ヘプタフルオロブチル、アクリル酸ヘプタフルオロイソプロピル、アクリル酸2-メトキシエチル、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるモノマーに由来する、請求項1に記載の電気光学媒体。
【請求項5】
前記ポリマー材料は、ポリメタクリル酸メチルを含む、請求項1に記載の電気光学媒体。
【請求項6】
前記ポリマー材料は、ポリエチレン
イミンと、スチレンおよびマレイン酸無水物を含むコポリマーとの反応生成物を含む、請求項1に記載の電気光学媒体。
【請求項7】
前記ポリマー材料は、0.3~0.7μmの厚みを有する、請求項1に記載の電気光学媒体。
【請求項8】
前記懸濁流体は、脂肪族炭化水素、テルペン、芳香族炭化水素、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される溶媒を含む、請求項1に記載の電気光学媒体。
【請求項9】
前記結合材は、水溶性ポリマー、水性ポリマー、油溶性ポリマー、熱硬化性および熱可塑性ポリマー、放射線硬化性ポリマー、ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の電気光学媒体。
【請求項10】
前記結合材は、フィッシュゼラチンおよびポリアニオンを含む、請求項1に記載の電気光学媒体。
【請求項11】
15:1~50:1のマイクロカプセル 対 結合材の重量比を含む、請求項1に記載の電気光学媒体。
【請求項12】
前記ポリマー材料の屈折率は、550nmにおいて1.5より大きいかまたはこれに等しい、請求項1に記載の電気光学媒体。
【請求項13】
請求項1に記載の電気光学媒体の層および前記電気光学媒体の層に近接した光透過性導電性材料の層を含む、可変式透過性フィルム。
【請求項14】
電気光学媒体の層は、光透過性導電性材料の第1の層と第2の層との間に配置される、請求項
13に記載の可変式透過性フィルム。
【請求項15】
複数のシールされたマイクロセルを含むポリマーシートを含む電気光学媒体であって、各マイクロセルは、分散物を含み、前記分散物は、複数の荷電複合粒子および懸濁流体を含み、前記荷電複合粒子は、電場の影響下で前記懸濁流体を通って動き、
前記
荷電複合粒子は、ポリマー材料で少なくとも部分的にコーティングされた1またはこれより多くの顔料粒子を含み、前記顔料粒子は、
0.01~0.2μmの直径を有し、そしてマンガンフェライトブラックスピネル、銅クロマイトブラックスピネル、カーボンブラック、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され、
前記ポリマーシート、前記荷電複合粒子、および前記懸濁流体の各々は、屈折率を有し、前記
荷電複合粒子の屈折率と、前記懸濁流体および
前記ポリマーシート
の屈折率との間の差異は、550nmにおいて0.05未満またはこれに等しい、
電気光学媒体。
【請求項16】
前記ポリマー材料の屈折率は、550nmにおいて1.5より大きいかまたはこれに等しい、請求項
15に記載の電気光学媒体。
【請求項17】
連続ポリマー相中に複数の液滴を含む電気光学媒体であって、各液滴は、分散物を含み、前記分散物は、複数の荷電複合粒子および懸濁流体を含み、前記荷電複合粒子は、電場の影響下で前記懸濁流体を通って動き、
ここで前記
荷電複合粒子は、ポリマー材料で少なくとも部分的にコーティングされた1またはこれより多くの顔料粒子を含み、前記顔料粒子は、
0.01~0.2μmの直径を有し、そしてマンガンフェライトブラックスピネル、銅クロマイトブラックスピネル、カーボンブラック、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され、
前記連続ポリマー相、前記荷電複合粒子、および前記懸濁流体の各々は、屈折率を有し、前記
荷電複合粒子の屈折率と、前記懸濁流体および
前記連続ポリマー相
の屈折率との間の差異は、550nmにおいて0.05未満またはこれに等しい、
電気光学媒体。
【請求項18】
前記ポリマー材料の屈折率は、550nmにおいて1.5より大きいかまたはこれに等しい、請求項
17に記載の電気光学媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への参照
本出願は、2019年2月25日出願の米国特許出願第62/809,978号(これは、その全体において参考として援用される)の優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
本発明は、可変式透過性デバイスに関する。より具体的には、本発明は、可変式透過性デバイスの光学的性能を改善し得る複合粒子を含む電気泳動媒体を含む可変式透過性デバイスに関する。
【0003】
光変調器は、電気光学媒体の潜在的に重要な市場の代表である。建物および乗り物のエネルギー性能は、ますます重要になっていることから、電気光学媒体は、窓を通過して透過される入射放射線の割合が、電気光学媒体の光学的状態を変動させることによって電気的に制御されることを可能にするために、窓に対するコーティングとして使用され得る(天窓およびサンルーフを含む)。建物におけるこのような「可変式透過性(variable-transmissivity)」(「VT」)技術の効果的な実行は、以下を提供すると期待される:(1)気候が暑い間に、不要な加熱効果を低減する、従って、冷却に必要とされるエネルギー量、空調機器のサイズ、およびピーク電力需要を低減する;(2)自然の日光の使用の増大、従って、照明に使用されるエネルギーおよびピーク電力需要を低減する;ならびに(3)温熱および視覚的な快適性の両方を増大させることによる占有者の快適性の増大。さらにより大きな利益は、自動車において生じると期待される。その場合、取り囲まれた容積に対するガラス面の比は、代表的な建物におけるより顕著に大きい。具体的には、自動車におけるVT技術の効果的な実行は、前述の利益のみならず、(1)自動車運転の安全性の増大、(2)ギラつきの低減、(3)ミラー性能の増強(ミラーに電気光学式コーティングを使用することによる)、および(4)ヘッドアップディスプレイを使用する能力の増大をも提供すると期待される。VT技術の他の潜在的な適用としては、電子デバイスにおけるのぞき見防止ガラスおよびグレアガードが挙げられる。
【0004】
米国特許第7,327,511号は、非極性溶媒中に分布されかつ被包されている荷電顔料粒子を含む可変式透過性デバイスを記載する。これらの可変式透過性デバイスは、AC駆動電圧に伴って開いた状態へ駆動され得、それによって荷電性顔料粒子は、カプセル壁へと駆動される。よって、このような可変式透過性デバイスは、意図して透過性を変更することが望ましい場合(例えば、のぞき見防止ガラス、サンルーフ、および建物の窓)に、表面を見るために有用である。
【0005】
米国特許第7,327,511号はまた、光変調器における最適性能のために、電気泳動媒体を適合させることにおいて重要な種々の要因を記載する。1つの重要な要因は、曇価の最小化である。本出願において、「曇価(haze)」とは、全透過光と比較して、透過光を拡散するパーセンテージ(透過した場合に散乱した光)に言及する。開いた、透明な状態から、閉じた不透明な状態へと電気的に切り替えられ得る光変調器を設計する場合、その開いた状態は、10%未満、より好ましくは2%未満の曇価を有することが望ましい。
【0006】
VTデバイスに使用される顔料(例えは、カーボンブラックのような)は、散乱および吸収の組み合わせによって、透過光を減弱する。概して、カーボンブラック粒子の最小のグレードは、光の最も有効な減弱を提供する。光散乱の性質はまた、これらの粒子の集合体のサイズによって影響を及ぼされる。その集合体のサイズが増大するにつれて、さらにより多くの光が、前方方向に散乱する。この散乱光は、窓において曇価の出現を生じる。最小の粒子は、最も小さい集合体を有し、最少量の曇価をもたらす傾向にある。曇価の低減は、VT適用において好ましいことから、可能な最小の粒子(または集合体)サイズを使用することは、望ましいことであり得る。しかし、粒子の電気泳動操作は、それらのサイズが増大するにつれて改善し、最小の最も効果的な光遮断因子は、非常に制御が難しい。VT窓の切り替え速度および最終的なダイナミックレンジはまた、重要なパラメーターであることから、より大きな粒子は、望ましいことがある;従って、粒度に基づいて濁度を低減する能力は、VTデバイスにおける光学的切り替えの速度を制御するために必要とされる最小粒度の要件によって制限され得る。
【0007】
被包した粒子ベースの可変式透過性デバイスは、双安定性であり得る。用語「双安定性の(bistable)」および「双安定性(bistability)」とは、当該分野での従来の意味において、第1のおよび第2のディスプレイ状態を有するディスプレイ要素を含むディスプレイに言及するために、本明細書で使用され、上記第1のおよび第2のディスプレイ状態は、少なくとも1つの光学的特性において異なり、そのようにして、任意の所定の要素が駆動された後に、有限の継続時間のアドレス指定パルスによって、その第1のまたは第2のいずれかのディスプレイ状態を呈し、そのアドレス指定パルスが終了した後に、その状態が、ディスプレイ要素の状態を変化させるために必要とされるアドレス指定パルスの最小の継続時間を、少なくとも数回、例えば、少なくとも4回持続する。双安定性は、顔料-顔料間および顔料-枯渇因子(depletor)分子間の浸透圧差を誘導する凝集剤(または枯渇因子ともいわれる)を添加することによって増強され得る。結果として、マイクロカプセル内部の内部相は、顔料リッチ相および枯渇因子リッチ相へと分かれる。しかし、顔料リッチ相中の大きな集合体は、カプセルが開いた状態にある場合、散乱および曇価を引き起こし得る。
従って、受容可能な切り替え速度および低曇価を有する可変式透過性デバイスに組み込まれ得る改善された双安定性電気光学媒体の必要性が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の要旨
1つの局面において、電気光学媒体は、結合材中に複数のマイクロカプセルを含み、上記マイクロカプセルは、分散物を含み、上記分散物は、複数の荷電複合粒子および懸濁流体を含み、上記荷電複合粒子は、電場の影響下で上記懸濁流体を通って動く。上記複合粒子は、マンガンフェライトブラックスピネル、銅クロマイトブラックスピネル、カーボンブラック、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される1またはこれより多くの顔料粒子を含み、ポリマー材料で少なくとも部分的にコーティングされる。上記結合材、上記荷電複合粒子、および上記懸濁流体の各々は、屈折率を有し、上記複合粒子と、上記結合材および懸濁流体のうちの少なくとも一方との間の屈折率の差異は、550nmにおいて0.05未満またはこれに等しい。
【0010】
別の局面において、電気光学媒体は、複数のシールされたマイクロセルを含むポリマーシートを含み、各マイクロセルは、分散物を含み、上記分散物は、複数の荷電複合粒子および懸濁流体を含み、上記荷電複合粒子は、電場の影響下で上記懸濁流体を通って動く。上記複合粒子は、マンガンフェライトブラックスピネル、銅クロマイトブラックスピネル、カーボンブラック、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される1またはこれより多くの顔料粒子を含み、ポリマー材料で少なくとも部分的にコーティングされる。上記ポリマーシート、上記荷電複合粒子、および上記懸濁流体の各々は、屈折率を有し、上記複合粒子と、上記ポリマーシートおよび懸濁流体のうちの少なくとも一方との間の屈折率の差異は、550nmにおいて0.05未満またはこれに等しい。
【0011】
さらに別の局面において、電気光学媒体は、連続ポリマー相中の複数の液滴を含み、各液滴は、分散物を含み、上記分散物は、複数の荷電複合粒子および懸濁流体を含み、上記荷電複合粒子は、電場の影響下で上記懸濁流体を通って動く。上記複合粒子は、マンガンフェライトブラックスピネル、銅クロマイトブラックスピネル、カーボンブラックおよびこれらの組み合わせからなる群より選択される1またはこれより多くの顔料粒子を含み、ポリマー材料で少なくとも部分的にコーティングされる。上記連続ポリマー相、上記荷電複合粒子、および上記懸濁流体の各々は、屈折率を有し、上記複合粒子と、上記連続ポリマー相および懸濁流体のうちの少なくとも一方との間の屈折率の差異は、550nmにおいて0.05未満またはこれに等しい。
【0012】
本発明のこれらおよび他の局面は、以下の詳細な説明に鑑みれば明らかになる。
【0013】
図面は、例証によるのみで、限定によるのではなく、本発明の概念に従う1またはこれより多くの実施を示す。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、第1のおよび第2の光透過性電極層であって、電気光学媒体がこれら層の間に配置された第1のおよび第2の光透過性電極層を含む可変式透過性デバイスの図示である。粒子は、電場の印加とともにカプセル壁に隣接して動かされ、それによって、光が媒体を通過することを可能にし得る(すなわち、開いた状態)。
【0015】
【
図2A】
図2Aは、本発明の1つの実施形態に従って複合粒子を作製するためのプロセスの模式図である。
【0016】
【
図2B】
図2Bは、本発明の別の実施形態に従って複合粒子を作製するための第2のプロセスの模式図である。
【0017】
【
図3】
図3Aおよび3Bは、本発明の種々の実施形態に従う複合粒子の微細構造の透過型電子顕微鏡図である。
【0018】
【
図4A】
図4Aおよび4Bは、電荷制御剤濃度の関数としての、本発明の種々の実施形態に従う複合顔料に対するカーボンブラックのζ電位のプロットである。
【
図4B】
図4Aおよび4Bは、電荷制御剤濃度の関数としての、本発明の種々の実施形態に従う複合顔料に対するカーボンブラックのζ電位のプロットである。
【0019】
【
図5】
図5は、凝集しているポリマーの非存在下および存在下での、本発明の一実施形態に従う複合粒子または顔料のいずれかを含む被包化分散物の透過性に対する曇価のプロットである。
【0020】
【
図6】
図6Aおよび6Bは、本発明の別の実施形態に従う水性プロセスを使用して作製した被包化複合粒子の顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
詳細な説明
一般に、本発明の種々の実施形態は、荷電複合粒子および懸濁流体の被包化分散物を含む電気光学媒体であって、ここで上記荷電複合粒子は、電場の影響下で上記懸濁流体を通って動く電気光学媒体を提供する。上記複合粒子は、好ましくは、ポリマー材料の中に埋め込まれた顔料粒子から構成される。上記媒体の光学的特性は、顔料粒子タイプおよびサイズ、ならびに上記ポリマーコーティングのタイプおよび厚みによって制御される。上記流体の屈折率は、好ましくは、上記複合粒子の全体の屈折率にマッチし、その結果、上記複合粒子のサイズは、光の散乱に影響を及ぼされず、従って、曇価のレベルに寄与しない。同時に、上記複合粒子は、上記システムの良好な電気泳動制御を提供するために十分の大きい。さらに、上記ポリマーコーティングは、顔料粒子間の分離を提供して、曇価を生じ得る大きな集合体の形成を阻害する。
【0022】
可変式透過性デバイスに関して、電気泳動デバイスは、
図1に図示されるいわゆる「シャッターモード(shutter mode)」において作動するように作製され得る。ここで1つの作動状態は、実質的に不透明であり、別の作動状態は、光透過性である。この「シャッターモード」の電気泳動デバイスが、透明な基材上に構築される場合、上記デバイスを通る光の透過を調節することは可能である。
【0023】
図1のデバイス10は、開いた状態で図示される。デバイス10は、ポリマー結合材14の中にカプセル16を含む電気光学媒体を含む。カプセル16は、電場に応じて動く懸濁流体19の中に荷電顔料粒子18を含む分散物を含む。カプセル16は、代表的には、以下により詳細に記載されるゼラチン材料から形成される。電気光学媒体の層は、好ましくは、光透過性導電性材料の層に近接しており、より好ましくは、電気光学媒体の層は、第1の光透過性導電性層と第2の光透過性導電性層(例えば、
図1において電極層11a、11b)との間に配置され、これは、酸化インジウムスズ(ITO)でコーティングされたポリエチレンテレフタレート(PET)のような公知の材料から作製され得る。あるいは、電極層は、金属電極を含み得、これは、画素として配列され得る。その画素は、アクティブマトリクスとして制御可能であり得、それによって、上記デバイスの不連続領域の切り替えを可能にする。さらなる接着層12は、代表的には、上記電気光学媒体と電極層11a、11bのうちの一方との間に存在する。上記接着層は、UV硬化性であり得、代表的には、上記カプセルによって引き起こされる偏位を埋めることによって、最終デバイスの平面性を改善する。適切な接着製剤は、U.S. 2017/0022403(これは、本明細書に参考として援用される)に記載される。デバイス10は、上記電気光学媒体からの導電性材料11a、11bの層のうちの一方の反対側に、少なくとも1つの光透過性基材20をさらに含み得る;明らかに、このような基材は、電極層の各々に関して提供され得る。
【0024】
DC場が
図1のデバイス10に印加される場合、粒子18は、視認面に向かって動き、それによって、光学的状態を暗から明へと変更する。
図1では、交流電場が電極11a、11bのうちの一方に印加される場合、その荷電性顔料粒子18は、カプセル16の壁に駆動され、光の透過のために、カプセル16を通る開口部を生じる(すなわち、開いた状態)。電荷制御剤および/または安定化剤をも含む懸濁流体19として非極性溶媒を使用することによって、光学的状態(開/閉)は、電場を維持する必要性なしに、長期間(数週間)にわたって維持され得る。結果として、上記デバイスは、1日に2~3回だけ「切り替えられ(switched)」てもよく、電力消費は非常に少ない。以下で考察されるシャッターモードデバイスの場合、その2つの極端な光学的状態は、「暗(dark)」および「明(clear)」または「開いた(open)」および「閉じた(closed)」といわれ得る。
【0025】
多くの特許および出願は、Massachusetts Institute of Technology(MIT)、E Ink Corporation、E Ink California, LLCにまたはこれらの名で譲渡された。そして関連会社が、被包化およびマイクロセル電気泳動媒体および他の電気光学媒体において使用される種々の技術を記載する。被包化された電気泳動媒体は、多くの小さなカプセルを含み、その各々は、それ自体が流体媒体中で、電気泳動で移動性の粒子を含む内部相およびその内部相を取り囲むカプセル壁を含む。代表的には、上記カプセルは、2つの電極の間に配置された粘着層を形成するために、ポリマー結合材内でそれら自体を保持される。マイクロセル電気泳動ディスプレイにおいて、上記荷電粒子および上記流体は、マイクロカプセル内で被包化されないが、代わりに、キャリア媒体、代表的にはポリマーフィルム内で形成される複数の空洞内に保持される。これらの特許および出願において記載される技術としては、以下が挙げられる:
(a)電気泳動粒子、流体および流体添加剤; 例えば、米国特許第5,961,804号;同第6,017,584号;同第6,120,588号;同第6,120,839号;同第6,262,706号;同第6,262,833号;同第6,300,932号;同第6,323,989号;同第6,377,387号;同第6,515,649号;同第6,538,801号;同第6,580,545号;同第6,652,075号;同第6,693,620号;同第6,721,083号;同第6,727,881号;同第6,822,782号;同第6,831,771号;同第6,870,661号;同第6,927,892号;同第6,956,690号;同第6,958,849号;同第7,002,728号;同第7,038,655号;同第7,052,766号;同第7,110,162号;同第7,113,323号;同第7,141,688号;同第7,142,351号;同第7,170,670号;同第7,180,649号;同第7,226,550号;同第7,230,750号;同第7,230,751号;同第7,236,290号;同第7,247,379号;同第7,277,218;号;同第7,286,279号;同第7,312,916号;同第7,375,875号;同第7,382,514号;同第7,390,901号;同第7,411,720号;同第7,473,782号;同第7,532,388号;同第7,532,389号;同第7,572,394号;同第7,576,904号;同第7,580,180号;同第7,679,814号;同第7,746,544号;同第7,767,112号;同第7,848,006号;同第7,903,319号;同第7,951,938号;同第8,018,640号;同第8,115,729号;同第8,119,802号;同第8,199,395号;同第8,257,614号;同第8,270,064号;同第8,305,341号;同第8,361,620号;同第8,363,306号;同第8,390,918号;同第8,582,196号;同第8,593,718号;同第8,654,436号;同第8,902,491号;同第8,961,831号;同第9,052,564号;同第9,114,663号;同第9,158,174号;同第9,341,915号;同第9,348,193号;同第9,361,836号;同第9,366,935号;同第9,372,380号;同第9,382,427号;および同第9,423,666号;ならびに米国特許出願公開第2003/0048522号;同第2003/0151029号;同第2003/0164480号;同第2003/0169227号;同第2003/0197916号;同第2004/0030125号;同第2005/0012980号;同第2005/0136347号;同第2006/0132896号;同第2006/0281924号;同第2007/0268567号;同第2009/0009852号;同第2009/0206499号;同第2009/0225398号;同第2010/0148385号;同第2011/0217639号;同第2012/0049125号;同第2012/0112131号;同第2013/0161565号;同第2013/0193385号;同第2013/0244149号;同第2014/0011913号;同第2014/0078024号;同第2014/0078573号;同第2014/0078576号;同第2014/0078857号;同第2014/0104674号;同第2014/0231728号;同第2014/0339481号;同第2014/0347718号;同第2015/0015932号;同第2015/0177589号;同第2015/0177590号;同第2015/0185509号;同第2015/0218384号;同第2015/0241754号;同第2015/0248045号;同第2015/0301425号;同第2015/0378236号;同第2016/0139483号;および同第2016/0170106号を参照のこと;
(b)カプセル、結合材および被包プロセス; 例えば、米国特許第5,930,026号;同第6,067,185号;同第6,130,774号;同第6,172,798号;同第6,249,271号;同第6,327,072号;同第6,392,785号;同第6,392,786号;同第6,459,418号;同第6,839,158号;同第6,866,760号;同第6,922,276号;同第6,958,848号;同第6,987,603号;同第7,061,663号;同第7,071,913号;同第7,079,305号;同第7,109,968号;同第7,110,164号;同第7,184,197号;同第7,202,991号;同第7,242,513号;同第7,304,634号;同第7,339,715号;同第7,391,555号;同第7,411,719号;同第7,477,444号;同第7,561,324号;同第7,848,007号;同第7,910,175号;同第7,952,790号;同第7,955,532号;同第8,035,886号;同第8,129,655号;同第8,446,664号;および同第9,005,494号;ならびに米国特許出願公開第2005/0156340号;同第2007/0091417号;同第2008/0130092号;同第2009/0122389号;および同第2011/0286081号を参照のこと;
(c)マイクロセル構造、壁材料、およびマイクロセルを形成する方法; 例えば、米国特許第7,072,095号および同第9,279,906号を参照のこと;
(d)マイクロセルを満たし、シールするための方法; 例えば、米国特許第7,144,942号および同第7,715,088号を参照のこと;
(e)電気光学式材料を含むフィルムおよび部分アセンブリ; 例えば、米国特許第6,982,178号および同第7,839,564号を参照のこと;
(f)バックプレーン、接着層および他の補助層ならびにディスプレイにおいて使用される方法; 例えば、米国特許第7,116,318号および同第7,535,624号を参照のこと;
(g)カラー形成およびカラー調節; 例えば、米国特許第7,075,502号および同第7,839,564号を参照のこと;
(h)ディスプレイを駆動するための方法; 例えば、米国特許第7,012,600号および同第7,453,445号を参照のこと;ならびに
(i)ディスプレイの適用; 例えば、米国特許第7,312,784号および同第8,009,348号を参照のこと。
【0026】
前述の特許および出願の多くは、被包化された電気泳動媒体中に不連続のマイクロカプセルを取り囲む壁が、連続相によって置き換えられ得、従って、いわゆるポリマー分散性の電気泳動ディスプレイ(ここで上記電気泳動媒体は、電気泳動流体の複数の不連続液滴およびポリマー材料の連続相を含む)を生成すること、およびこのようなポリマー分散性の電気泳動ディスプレイ内の電気泳動流体の不連続液滴が、たとえ不連続カプセル膜が、各個々の液滴と会合されるとしても、カプセルまたはマイクロカプセルと見做され得ることを認識する;例えば、前述の米国特許第6,866,760号および同第7,079,305号を参照のこと。よって、本出願の目的のために、このようなポリマー分散性電気泳動媒体は、被包化電気泳動媒体の亜種として見做される。
【0027】
荷電性顔料粒子は、種々のカラーおよび組成のものであり得る。さらに、その荷電性顔料粒子は、状態の安定性を改善するために、表面ポリマーで官能化され得る。このような顔料は、米国特許出願公開第2016/0085132号(これは、その全体において本明細書に参考として援用される)に記載される。例えば、上記荷電粒子が、白色カラーのものである場合、それらは、無機顔料(例えば、TiO2、ZrO2、ZnO、Al2O3、Sb2O3、BaSO4、PbSO4など)から形成され得る。それらはまた、白色カラーを示すために、高屈折率(550nmにおいて>1.5)を有し、ある特定のサイズ(>100nm)のポリマー粒子、または所望の屈折率を有するように操作された複合粒子であり得る。黒色荷電粒子は、CIピグメントブラック26もしくは28など(例えば、マンガンフェライトブラックスピネルまたは銅クロマイトブラックスピネル)またはカーボンブラックから形成され得る。他のカラー(非白色および非黒色)は、有機顔料(例えば、CIピグメントPR 254、PR122、PR149、PG36、PG58、PG7、PB28、PB15:3、PY83、PY138、PY150、PY155またはPY20)から形成され得る。他の例としては、Clariant Hostaperm Red D3G 70-EDS、Hostaperm Pink E-EDS、PVファストレッドD3G、HostapermレッドD3G 70、Hostaperm Blue B2G-EDS、Hostaperm Yellow H4G-EDS、Novoperm Yellow HR-70-EDS、Hostaperm Green GNX、BASF IrgazineレッドL 3630、Cinquasia Red L 4100 HD、およびIrgazin Red L 3660 HD; Sun Chemical フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ダイアリライドイエロー(diarylide yellow)またはダイアリライドAAOTイエローが挙げられる。カラー粒子はまた、無機顔料(例えば、CIピグメントブルー28、CIピグメントグリーン50、CIピグメントイエロー227などから形成され得る。上記荷電粒子の表面は、米国特許第6,822,782号、同第7,002,728号、同第9,366,935号、および同第9,372,380号、ならびに米国特許出願公開第2014-0011913号(これらの全ての内容は、それらの全体において本明細書に参考として援用される)に記載されるように、必要とされる粒子の電荷極性および電荷レベルに基づく公知の技術によって改変され得る。
【0028】
上記粒子は、天然の電荷を示してもよいし、電荷制御剤を使用して明確に荷電されてもよいし、溶媒または溶媒混合物中で分散される場合に電荷を獲得してもよい。適切な電荷制御剤は、当該分野で周知である;それらは、天然においてポリマーであってもポリマーでなくてもよいし、イオン性であっても非イオン性であってもよい。電荷制御剤の例としては、Solsperse 17000(活性ポリマー分散剤)、Solsperse 9000(活性ポリマー分散剤)、OLOA(登録商標) 11000(スクシンイミド無灰分分散剤)、Unithox 750(エトキシレート)、Span(登録商標) 85(ソルビタントリオレエート)、Petronate L(スルホン酸ナトリウム)、Alcolec LV30(ダイズレシチン)、Petrostep B100(石油スルホン酸塩)またはB70(スルホン酸バリウム)、Aerosol OT、ポリイソブチレン誘導体またはポリ(エチレンco-ブチレン)誘導体などが挙げられ得るが、これらに限定されない。懸濁流体および荷電性顔料粒子に加えて、内部相は、安定化剤、界面活性剤および電荷制御剤を含み得る。安定化している材料は、荷電性顔料粒子が溶媒中に分散される場合に、その荷電性顔料粒子上に吸着され得る。この安定化している材料は、可変式透過性媒体が、上記粒子がそれらの分散状態にある場合に、実質的に非透過性であるように、互いから上記粒子を分離して維持する。
【0029】
本発明の1つの局面によれば、複合顔料粒子を含む電気光学媒体および上記複合顔料粒子を生成するための方法は、凝集剤の存在下で調整可能な表面電荷および低曇価とともに提供される。上記複合粒子は、
図2Aに模式的に図示されるとおり、有機ポリマーがシード粒子の表面に沈着されるように、非極性溶媒中でのシード分散重合を経て合成され得る。その得られた複合粒子は、電気泳動および誘電泳動切り替えが効果的である数百ナノメートル程度の寸法、ならびに枯渇凝集による状態安定化にある。上記顔料粒子は、好ましくは、約0.01~0.2μmの直径を有し、上記顔料粒子の表面にコーティングされたポリマー材料は、約0.5~2μmの厚み、より好ましくは、約0.3~0.7μmの厚みを有し得る。上記複合粒子の全体の直径は、5μm未満、より好ましくは約0.5~2μm、および最も好ましくは約0.5~1μmであり得る。
【0030】
本発明の第1の実施形態に従う複合顔料粒子は、他の構成要素と容易に混合して、被包化プロセスに適した内部相を作り出し得る非極性溶媒中で合成され得る。理論によって拘束されることは望まないが、シード顔料をポリマーマトリクス中に埋め込むことによって、上記顔料の電気光学的特性は、それらの表面特徴および電荷特性から切り離されると考えられる。結果として、上記顔料粒子の屈折率は、上記顔料粒子の運動性をも改善する様式において改変され得る。
【0031】
第1の工程において、密な懸濁物が、上記顔料粒子を非極性溶媒または2もしくはこれより多くの溶媒の混合物中ですり潰すことによって調製される。溶媒の例としては、脂肪族炭化水素(例えば、ヘプタン、オクタン、および石油蒸留物(例えば、Isopar(登録商標)(Exxon Mobil)またはIsane(登録商標)(Total)));テルペン(例えば、リモネン、例えば、l-リモネン);ならびに芳香族炭化水素(例えば、トルエン)が挙げられるが、これらに限定されない。選択肢的な界面活性剤は、上記すり潰しプロセスを補助するために分散物中に組み込まれ得る(例えば、1.0g 界面活性剤/g 顔料)。その懸濁物は、10~50重量%の上記顔料粒子、より好ましくは15~35重量%、および最も好ましくは約25重量%を含み得る。
【0032】
第2に、上記顔料懸濁物は、上記顔料濃度が15重量%未満を下回って、より好ましくは10重量%未満、および最も好ましくは約6.0重量%未満に低下されるように、溶媒(例えば、Isopar Eまたはヘキサン)、および先に言及した選択肢的な電荷制御剤で希釈され得る。上記希釈溶媒に対する上記懸濁物中の非極性溶媒の重量比が、20.0重量%未満またはこれに等しいことは好ましい。
【0033】
第3の工程において、上記希釈した懸濁物は撹拌され、1もしくはこれより多くのモノマーおよび/またはオリゴマーならびに1もしくはこれより多くの開始剤の混合物を添加する前に加熱される。上記顔料に対する上記モノマー溶液の容積比、Vポリマー/Vシードは、好ましくは、約1.0~約10.0である。上記モノマー混合物は、好ましくは、少なくとも3種の異なるモノマーを含み、それらモノマーとしては、アクリレートおよびメタクリレート(例えば、メタクリル酸メチル、ジメタクリル酸ヘキサンジオール、メタクリル酸トリフルオロエチル、メタクリル酸トリメトキシシリルプロピル、メタクリル酸tert-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2-フルオロエチル、アクリル酸トリフルオロエチル、アクリル酸ヘプタフルオロブチル、アクリル酸ヘプタフルオロイソプロピル、アクリル酸2-メトキシエチル)、およびこれらのオリゴマーが挙げられるが、これらに限定されない。上記モノマー混合物中に含まれ得る開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル(azobisobutyronitrile)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチル)バレロニトリル、過酸化ベンゾイル、tert-ブチルペルオキシネオデカノエート、ジイソピロピルペルオキシジカーボネート、メチルエチルケトンペルオキシド、tert-ブチルペルオキシピバレート、およびこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。上記モノマー混合物中の開始剤の濃度は、モノマー総重量に基づいて、好ましくは、約5%未満もしくはこれに等しい、より好ましくは約3%未満もしくはこれに等しい、および最も好ましくは約1.5重量%未満もしくはこれに等しい。
図2Aを参照すると、上記顔料粒子26、非極性溶媒22、モノマー、開始剤、および電荷制御剤を含む混合物20は加熱および撹拌されて、上記顔料粒子26が、少なくとも部分的に、好ましくは完全に、得られるポリマー24でコーティングされて複合粒子を形成するように、上記モノマーの重合を可能にする。重合後に、上記複合粒子は、洗浄および乾燥され得る。
【0034】
上記複合粒子を調製するための、本発明の第2の実施形態に従う別のプロセスは、水性プロセスを利用する。第1の工程において、上記顔料粒子は、水性溶液中で分散されて、必要であれば選択肢的な分散剤を含むナノ分散相(NDP)を形成し、ポリエチレンイミン(「PEI」)が、上記NDPに添加される。第2の工程において、上記NDPは、安息香酸プロピルおよび/または安息香酸メチルの非極性連続相へと、溶解した界面活性剤、ポリ(ヒドロキシステアリン酸)(「PHSA」)で乳化される。第3の工程において、安息香酸プロピルおよび/または安息香酸メチル中にスチレン/マレイン酸無水物コポリマー(「SMA」)を含む溶液は、エマルジョンに添加され、上記SMAコポリマーは、界面反応生成物が、水性顔料分散物の液滴の周りにゲルネットワークまたはシェルを形成するように、上記PEIと反応させられる。上記界面反応の模式図は、
図2Bに図示される。選択肢的な第4の工程において、上記複合材、すなわち、PEI-SMAシェルを有する水性顔料分散物の表面は、ラウロイルクロリドを添加することによって官能化される。上記ラウロイルクロリドは、上記PEI中の任意の反応していないアミン基と反応し、上記複合材表面をより疎水性にする。
【0035】
前述の水性プロセスは、いくつかの点で改変されてもよい。例えば、上記PEIは、上記界面反応の結果としてのゲルネットワークを生成するために、550nmにおいて約1.5の屈折率および十分なアミン官能性を有する別の水溶性アミン含有化合物と置き換えられてもよい。同様に、SMAは、ゲルネットワークを促進するために、550nmにおいて約1.5の屈折率および十分な無水官能性を有する別のポリマーと置き換えられてもよい。さらに、上記SMAの屈折率または疎水性は、スチレンおよび/もしくはマレイン酸無水物の量を改変する、ならびに/または他のモノマーユニットをコポリマーへと組み込む(例えば、エチレン、メタクリル酸ラウリル、またはメタクリル酸トリフルオロエチル)ことによって合成される特注のコポリマーを形成することによって、調節され得る。1つの例示的実施形態において、上記顔料粒子は、550nmにおいて1.5より大きいかまたはこれに等しい屈折率を有するポリマー材料でコーティングされ得るが、より広い屈折率範囲、例えば、1.43、1.44、1.45、1.46、1.47、1.48、または1.49より大きいかまたはこれに等しい屈折率範囲がまた、企図される。別段述べられなければ、本明細書で報告される屈折率の範囲は、20℃~30℃の間の温度で測定される。
【0036】
界面反応前にSMAを改変することはまた、複合粒子が分散される溶媒の最終的選択に依存して、望ましいことであり得る。例えば、上記複合粒子が、Isoparのようなアルカン中で最終的に分散されるべきである場合、アルカン基は、溶媒中でのその適合性を改善するために、上記SMAに添加され得る。最終的に、水性懸濁物を形成するよりむしろ、上記顔料粒子は、NDPを形成するために、グリセロールまたは他のポリオール中に分散され得る。
【0037】
当該分野で公知のように、荷電粒子(代表的には、上記で記載されるように、カーボンブラック)を低誘電率の溶媒中に分散させることは、界面活性剤の使用によって補助され得る。このような界面活性剤は、代表的には、極性「ヘッド基(head group)」、および溶媒と適合性であるかまたは溶媒中で可溶性である非極性「テール基(tail group)」を含む。本発明において、上記非極性テール基が、飽和もしくは不飽和の炭化水素部分であるか、または炭化水素溶媒中に可溶性である別の基(例えば、ポリ(ジアルキルシロキサン)のような)であることは、好ましい。上記極性基は、イオン性物質(例えば、アンモニウム、スルホネートまたはホスホネート塩)、または酸性もしくは塩基性基を含め、任意の極性有機性官能基であり得る。特に好ましいヘッド基は、カルボン酸またはカルボキシレート基である。本発明での使用に適した安定化剤としては、ポリイソブチレンおよびポリスチレンが挙げられる。いくつかの実施形態において、分散剤(例えば、ポリイソブチレンスクシンイミドおよび/またはソルビタントリオレエート、および/または2-ヘキシルデカン酸)が添加される。
【0038】
本発明の可変式透過性媒体で使用される流体は、代表的には、低誘電率(好ましくは10未満、および望ましくは3未満)のものである。上記流体は、好ましくは、低粘性、比較的高い屈折率、低コスト、低反応性、および低蒸気圧/高沸点を有する溶媒である。上記懸濁流体は、好ましくは液体であるが、電気泳動媒体は、ガス状の流体を使用して生成され得る;例えば、Kitamura, T.ら, 「Electrical toner movement for electronic paper-like display」, IDW Japan, 2001, Paper HCS1-1、およびYamaguchi, Y.ら, 「Toner display using insulative particles charged triboelectrically」, IDW Japan, 2001, Paper AMD4-4)を参照のこと。米国特許第7,321,459号および同第7,236,291号も参照のこと。
【0039】
本発明の種々の実施形態に従う電気光学媒体の懸濁流体中に組み込まれ得る溶媒の例としては、脂肪族炭化水素(例えば、ヘプタン、オクタン、および石油蒸留物(例えば、Isopar(登録商標)(Exxon Mobil)またはIsane(登録商標)(Total)のような);テルペン(例えば、リモネン、例えば、l-リモネン);ならびに芳香族炭化水素(例えば、トルエン)が挙げられるが、これらに限定されない。特に好ましい溶媒は、リモネンである。なぜならそれは、低誘電率(2.3)と比較的高い屈折率(1.47)とを併せ持つからである。上記内部相の屈折率は、屈折率適合薬剤(index matching agent)の添加で改変され得る。例えば、前述の米国特許第7,679,814号は、上記電気泳動粒子を取り囲む流体が、部分的に水素化した芳香族炭化水素およびテルペンの混合物(好ましい混合物は、d-リモネンおよびCargille-Sacher Laboratories(55 Commerce Rd, Cedar Grove N.J. 07009)からCargille(登録商標) 5040として市販されている部分的に水素化したターフェニルである)を含む可変式透過性デバイスにおける使用に適切な電気泳動媒体を記載する。本発明の種々の実施形態に従って作製された被包化媒体において、被包化分散物の屈折率は、その被包化している物質のものに可能な限り近くマッチして、曇価を低減することが好ましい。大部分において、550nmにおいて少なくとも1.50、より好ましくは550nmにおいて1.51~1.57の間、および最も好ましくは550nmにおいて約1.54の屈折率を有する内部相を有することは有益である。
【0040】
本発明の好ましい実施形態において、被包化流体は、1またはこれより多くの非共役型オレフィン性炭化水素、好ましくは環式炭化水素を含み得る。非共役型オレフィン性炭化水素の例としては、テルペン(例えば、リモネン);フェニルシクロヘキサン;安息香酸ヘキシル;シクロドデカトリエン;1,5-ジメチルテトラリン;部分的に水素化したターフェニル(例えば、Cargille(登録商標) 5040);フェニルメチルシロキサンオリゴマー;ならびにこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の一実施形態に従う被包化流体の最も好ましい組成は、シクロドデカトリエンおよび部分的に水素化したターフェニルを含む。
【0041】
可変式透過性デバイスにおいて使用されるゼラチンベースのカプセル壁は、E InkおよびMIT特許の多く、ならびに上述の適用において記載されている。上記ゼラチンは、種々の商業的業者(例えば、Sigma AldrichまたはGelitia USA)から入手可能である。それは、適用の必要性に応じて、種々のグレードおよび純度で得られ得る。ゼラチンは主に、動物製品(ウシ、ブタ、家禽、魚類)から集められ、加水分解されたコラーゲンを含む。それは、ペプチドおよびタンパク質の混合物を含む。本明細書で記載される実施形態の多くにおいて、上記ゼラチンは、アカシアの木の硬化した樹液から得られるアカシア(アラビアガム)と合わせられる。アカシアは、糖タンパク質およびポリサッカリドの複雑な混合物であり、それはしばしば、食料品において安定化剤として使用される。アカシアおよびゼラチンの水性溶液のpHは、以下に記載されるように、非極性内部相の液滴を被包化し得るポリマーリッチコアセルベート相を形成するために調整され得る。
【0042】
ゼラチン/アカシアを組み込むカプセルは、以下のように調製され得る;例えば、米国特許第7,170,670号(その全体において本明細書に参考として援用される)を参照のこと。このプロセスにおいて、ゼラチンおよび/またはアカシアの水性混合物は、内部相を被包するために炭化水素内部相(または被包することが望ましい、他の水と非混和性の相)で乳化される。上記溶液は、ゼラチンを溶解するために、乳化する前に40℃へと加熱され得る。pHは、代表的には、所望の液滴サイズ分布が達成された後、コアセルベートを形成するために低下される。カプセルは、エマルジョンの制御された冷却および混合の際に-代表的には室温またはこれより低くして、形成される。均一な様式で内部相液滴の周りのコアセルベートを不連続にゲル化するための適切な混合およびある特定の被包化製剤(例えば、ゼラチンおよびアカシア濃度ならびにpH)は、内部相組成によって主に規定される、湿潤および拡散の条件が正確であれば達成される。上記プロセスは、20~100μmの範囲のカプセルを生じ、しばしば、出発物質のうちの50%超を使用可能なカプセルへと組み込む。次いで、その精製されたカプセルは、篩にかけるかまたは他のサイズ排除分類によって、サイズによって分離される。100μmより大きなカプセルは、代表的には排除される。なぜならそれらは、裸眼で見ることができ、より大きなカプセルは、電極間の間隙を増大させ、これは、必要な駆動電圧を増大させるからである。
【0043】
サイズ分類の後に、そのカプセルは、例えば、スロットコーティング、ナイフコーティング、スピンコーティングなどを使用して、コーティングのためにスラリーを作製するために、結合材と混合され得る。上記結合材は、好ましくは、550nmにおいて少なくとも1.5nmの屈折率を有する。結合材材料の例としては、水溶性ポリマー(例えば、ポリサッカリド、ポリビニルアルコール、N-メチルピロリドン、N-ビニルピロリドン、種々のCarbowax(登録商標)種(Union Carbide, Danbury, Conn.)、およびポリ-2-ヒドロキシエチルアクリレート)、水性ポリマー(例えば、必要に応じて、1またはこれより多くのアクリル樹脂、ポリエステル、ポリカーボネートまたはシリコーンと化合されるポリウレタンの格子)、油溶性ポリマー、熱硬化性および熱可塑性ポリマー、放射線硬化性ポリマー、ならびにこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。特に、フィッシュゼラチンおよびポリアニオン(例えば、アカシア)の混合物は、(ブタ)ゼラチンおよびアカシアのコアセルベートから形成されるカプセルでの使用のために優れた結合材であることが見出された。フィッシュゼラチンとともに、上記結合材中に含まれ得るポリアニオンとしては、炭水化物ポリマー(例えば、デンプンおよびセルロース誘導体)、植物抽出物(例えば、アカシア)、およびポリサッカリド(例えば、アルギネート);タンパク質(例えば、ゼラチンまたはホエイタンパク質);脂質(例えば、ワックスまたはリン脂質);ならびにこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。本発明のいくつかの実施形態において、電気泳動媒体は、約15:1~約50:1のカプセル 対 結合材重量比を含み得る。本発明の他の実施形態において、上記電気泳動媒体は、より高い割合の結合材(例えば、各15重量部のカプセルに対して少なくとも1重量部の結合材から各4重量部のカプセルに対して1重量部の結合材まで)を含み得る。
【0044】
上記の分散物中に組み込まれる複合粒子の屈折率は、上記懸濁流体および上記結合材のうちの少なくとも一方の屈折率と合うように調整され得る。好ましくは、上記結合材、上記荷電複合粒子、および上記懸濁流体の各々は、屈折率を有し、上記複合粒子と上記結合材および懸濁流体のうちの少なくとも一方との間の屈折率の差異は、550nmにおいて0.05未満またはこれに等しい。より好ましくは、上記複合粒子の屈折率と、上記結合材および懸濁流体の両方の屈折率との間の差異は、550nmにおいて0.05未満またはこれに等しい。
【0045】
上記で注記されるように、マイクロ被包化の代わりに、本発明の種々の実施形態は、上記電気泳動流体の複数の不連続液滴がポリマー材料の連続相内に分散されるポリマー分散層中に、電気泳動分散物を組み込み得る。ポリマー分散層において、上記荷電複合粒子、懸濁流体、および連続相は、好ましくは、屈折率を有し、上記複合粒子の屈折率と、上記連続ポリマー相および懸濁流体のうちの少なくとも一方の、好ましくは両方の屈折率との間の差異は、550nmにおいて0.05未満またはこれに等しい。あるいは、上記電気泳動流体は、ポリマーシートから形成される複数のマイクロセル内にシールされ得、ここで上記複合粒子の屈折率と、上記懸濁流体およびポリマーシートのうちの少なくとも一方の、好ましくは両方の屈折率との間の差異は、550nmにおいて0.05未満またはこれに等しい。
【実施例】
【0046】
実施例はここで、例示によるが、本発明の好ましい複合粒子の詳細を示すために示される。
【0047】
実施例1
【0048】
リモネンおよびOLOA11000中のカーボンブラック(Marietta, GAのBirla Carbon U.S.A. Inc.によって製造されるRaven 3500)の懸濁物を、最初に調製した。25重量%の濃度のカーボンブラックおよび12.5重量%のOLOA11000を含む懸濁物を分散させ、カーボンブラックの粒度が約120nmになるまですり潰した。次いで、その懸濁物を使用して、複合粒子の2つの群を調製した。
【0049】
複合粒子の第1の群を、150gの懸濁物と570.0gのIsopar Eとを混合することによって、1.5のVポリマー/Vシード比を使用して調製し、続いて、その希釈した懸濁物を、44.99gのメタクリル酸メチル(MMA)、5.62gのジメタクリル酸ヘキサンジオール(HDDM)、5.62g メタクリル酸トリフルオロエチル(TFEM)、および0.84gのアゾビスイソブチロニトリル(初期)のモノマー混合物と加熱および混合した。重合後、上記複合粒子を洗浄および乾燥させた。
【0050】
複合粒子の第2の群を、75gの懸濁物と570.0gのIsopar Eとを混合することによって2.0のVポリマー/Vシード比を使用して調製し、続いて、その希釈した懸濁物と、37.49gのメタクリル酸メチル、4.69gのジメタクリル酸ヘキサンジオール、4.69g メタクリル酸トリフルオロエチル、および0.70gのアゾビスイソブチロニトリルのモノマー混合物とを加熱および混合した。重合後、上記複合粒子を洗浄および乾燥させた。
【0051】
その得られた複合粒子の微細構造は、
図3Aおよび3Bの透過型電子顕微鏡写真において観察され得る。
図3Aにおいて1.5という低容積比を使用して製造された複合粒子は、部分的にのみコーティングされた一方で、
図3Bにおいて2.0というより高い容積比を使用して製造された粒子は、ポリマーによって完全に覆われた。
【0052】
実施例2
【0053】
第2の懸濁物を、リモネンおよびOLOA11000中のカーボンブラック(Marietta, GAのBirla Carbon U.S.A. Inc.によって製造されたRaven 1200)を使用して調製した。25重量%のカーボンブラック濃度および12.5重量%のOLOA11000を含む懸濁物を分散させ、カーボンブラックの粒度が約115nmになるまですり潰した。
【0054】
複合粒子に対する電荷制御剤(CCA)濃度に効果を調べるために、複合粒子の種々のサンプルを、顔料懸濁物ならびにモノマーのタイプおよび量がいくつかのサンプルに関してわずかに改変されたことを除いて、実施例1における複合粒子の第1の群に関する同じ手順を使用して調製した。上記サンプルの各々を生成するために使用した顔料懸濁物のタイプおよび量(g)、ならびにモノマーのタイプおよび量(g)を、以下の表に提供する:
【表1】
*メタクリル酸トリメトキシシリルプロピル
【0055】
4つの別個の5重量% 分散物を調製した。各々、表1に記載される手順に従って調製した複合粒子の群のうちの1つをリモネン中に含む。2つのコントロールサンプル、リモネン中のRaven 3500の5重量% 懸濁物およびリモネン中のRaven 1200の5重量% 懸濁物もまた、調製した。上記複合粒子の各々の荷電能力を、上記懸濁物の音の速度、密度、および粘性を測定するために、Acoustosizer II X and M(Colloidal Dynamics)を使用して決定した。このデータを用いて、上記顔料粒子のζ電位を計算した。そのζ電位が、CCA負荷に伴ってどのように変化するかをモニターするために、上記分散物を、0.02mLの出発用量でさらなるCCAを添加することによって滴定した。
図4Aおよび4BにおけるRaven 3500を含むコントロール懸濁物に関するζ電位のプロットを、記号「白四角」を使用して表し、
図4BにおけるRaven 1200を含むコントロール懸濁物に関するζ電位のプロットを、記号「白丸」を使用して表す。
【0056】
図4Aおよび4Bにおける結果を参照すると、Raven 3500を含むコントロール懸濁物は、CCAの量が増大するにつれ、ζ電位においてごくわずかな変化を示すことが観察された。しかし、官能性モノマー(例えば、メタクリル酸トリフルオロエチルまたはメタクリル酸トリメトキシシリルプロピル)と共重合した場合、荷電レベルに劇的な増大が観察された。例えば、
図4Aに示されるように、ポリ(MMA-co-TMSPM)を含む複合粒子のζ電位は、複合粒子(10mg/g)に対するCCAのおよそ20%質量比において約-130mVへと低下した。異なる荷電レベルを有する2つの異なるタイプのカーボンブラック顔料を、同じコポリマー組成物でコーティングした場合、その得られた粒子は、類似の荷電レベルを示した(例えば、
図4Bにおいてポリ(MMA-co-TFEM中に被包化されるRaven 3500およびRaven 1200顔料)。この測定から、本発明者らは、上記複合粒子の表面電位が調整可能であり得、複合粒子のシェルおよびマトリクスを構成するモノマーのタイプによって支配され得ると結論づける。
【0057】
実施例3
【0058】
上記顔料粒子の曇価に対する効果を決定するために、リモネン中の1.0重量% ハイブリッド顔料分散物を、実施例2に従って調製したMMA-TFEMのコポリマー中に被包化されたRaven 3500を含む顔料粒子を使用して調製した。カーボンブラック(Raven 3500)の1.0重量%分散物の第2のコントロールサンプルもまた、調製した。次いで、その2つの分散物の種々のサンプルを、上記サンプルの顔料濃度が0.5~0.01重量%まで変動するように、凝集しているポリマー(ポリスチレン、Mw 約35,000)ありまたはなしで、溶媒の混合物(水素化ターフェニル/リモネン 1/1, w/w))で希釈した。各サンプルを混合し、透明な液体容器の中に注ぎ入れ、10分間凝集させ、その後、分光光度計(CM-3600A, Konica Minolta)を使用して、その容器を通る光の透過および曇価を測定した。
図5は、凝集しているポリマーの存在下(塗りつぶした記号)および非存在下(白抜きの記号)での、コントロールサンプル(四角の記号)および複合顔料粒子(丸の記号)の透過に対する曇価のデータのプロットである。
図5に図示されるように、凝集しているポリマーの存在下での複合顔料粒子は、コントロールサンプルより、凝集しているポリマーを欠いている分散物に近い成績であった。
【0059】
実施例4
【0060】
水性プロセス1: NDPを、予め分散させた顔料Cab-o-Jet 465Mマゼンタもしくは450Cシアン(水中15重量%分散物として受け取った)、または乾燥Emperor 2000カーボンブラック(乾燥粉末として受け取った)のいずれかを使用することによって、最初に形成した。上記カーボンブラックを、顔料を分散剤溶液へとブレンドし、その混合物を超音波処理することによって、20重量% 顔料、10重量% 分散剤Kolliphor P188で水の中に分散させた。このストックにおける粒度は、動的光散乱によって決定した場合、約80nmであった。これらの顔料分散物を、5重量% 顔料、5重量% PEI、2.5重量% 分散剤(存在する場合)、および残りの水を含む最終NDPとなるように、PEI(分枝状、1200MW,Sigma製)およびさらなる水の50重量% 水性溶液と各々ブレンドした。
【0061】
次に、10gのNDPを、最初の粗いエマルジョンのためにインペラーを先ず使用し、次いで、ローター-ステーター式ホモジナイザー(IKA 1cmローター-ステーターを7,000~10,000 RPMにおいて3分間実行)を使用することによって最終的な液滴サイズを達成して、500mlのガラス製反応器の中で100gの安息香酸エステルへと乳化した。そのローターローター-ステーター式混合の後に、本発明者らは、インペラーによって、300RPMにおいてそのプロセスの残りの間、再び撹拌を続けた。
【0062】
最後に、安息香酸プロピル中1%重量において溶解した1600 MWの25gのSMAを、少なくとも60分間、連続して撹拌しながら、5~10分間にわたって、そのエマルジョンの液体表面の下にピペットを介して注入した。
【0063】
最終工程において、上記複合粒子を、安息香酸プロピル中5重量% ラウロイルクロリドの10gを添加して、PEIに残っているアミン基と反応させ、その混合物をさらに60分間継続して撹拌することによって疎水性にし、次いで、その混合物を、ポリプロピレンボトルに移し、それをロールミル上で一晩回転させた。
【0064】
水性プロセス2: 安息香酸プロピル中10重量% オレイルアミンの3.3gを、安息香酸プロピル中1重量% SMAの25gに撹拌しながら添加することによってSMAを改変したことを除いて、上記水性プロセス1を反復した。この溶液(28.3g)を、水性プロセス1における25gの非改変SMA溶液の代わりとして使用した。
【0065】
得られた複合粒子の顕微鏡写真を、
図6A(顔料複合材をオレイルアミン官能化SMAから作製)および
図6B(非官能化SMA)において提供する。顕微鏡写真を比較すると、官能化SMAで調製した粒子は、非官能化SMAを使用して調製した粒子より幾分高い割合の成功裡のマイクロ被包化を有した。
【0066】
多くの変更および改変が、本発明の範囲から逸脱することなく、上記で記載される発明の具体的実施形態において行われ得ることは、当業者に明らかである。よって、前述の説明の全体は、例示の意味で解釈されるべきであって、限定の意味で解釈されるべきではない。
【0067】
前述の特許および出願の全ての内容は、それらの全体において本明細書に参考として援用される。
例えば、本発明は、以下の項目を提供する。
(項目1)
結合材および複数のマイクロカプセルを含む電気光学媒体であって、各マイクロカプセルは、分散物を含み、前記分散物は、複数の荷電複合粒子および懸濁流体を含み、前記荷電粒子は、電場の影響下で前記懸濁流体を通って動き、
ここで前記複合粒子は、ポリマー材料で少なくとも部分的にコーティングされた1またはこれより多くの顔料粒子を含み、前記顔料粒子は、マンガンフェライトブラックスピネル、銅クロマイトブラックスピネル、カーボンブラック、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され、
前記結合材、前記複合粒子、および前記懸濁流体の各々は、屈折率を有し、前記複合粒子の屈折率と、前記懸濁流体および結合材のうちの少なくとも一方の屈折率との間の差異は、550nmにおいて0.05未満またはこれに等しい、
電気光学媒体。
(項目2)
前記屈折率の各々は、550nmにおいて1.5より大きいかまたはこれに等しい、項目1に記載の電気光学媒体。
(項目3)
前記複合粒子の屈折率と前記懸濁流体および前記結合材の屈折率との間の差異は、550nmにおいて0.05未満またはこれに等しい、項目1に記載の電気光学媒体。
(項目4)
前記顔料粒子は、カーボンブラックを含む、項目1に記載の電気光学媒体。
(項目5)
前記ポリマー材料は、メタクリル酸メチル、ジメタクリル酸ヘキサンジオール、メタクリル酸トリフルオロエチル、メタクリル酸トリメトキシシリルプロピル、メタクリル酸tert-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2-フルオロエチル、アクリル酸トリフルオロエチル、アクリル酸ヘプタフルオロブチル、アクリル酸ヘプタフルオロイソプロピル、アクリル酸2-メトキシエチル、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるモノマーに由来する、項目1に記載の電気光学媒体。
(項目6)
前記ポリマー材料は、ポリメタクリル酸メチルを含む、項目1に記載の電気光学媒体。
(項目7)
前記ポリマー材料は、ポリエチレンアミンと、スチレンおよびマレイン酸無水物を含むコポリマーとの反応生成物を含む、項目1に記載の電気光学媒体。
(項目8)
前記顔料粒子は、0.01~0.2μmの直径を有する、項目1に記載の電気光学媒体。
(項目9)
前記ポリマー材料は、0.3~0.7μmの厚みを有する、項目1に記載の電気光学媒体。
(項目10)
前記懸濁流体は、脂肪族炭化水素、テルペン、芳香族炭化水素、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される溶媒を含む、項目1に記載の電気光学媒体。
(項目11)
前記結合材は、水溶性ポリマー、水性ポリマー、油溶性ポリマー、熱硬化性および熱可塑性ポリマー、放射線硬化性ポリマー、ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される、項目1に記載の電気光学媒体。
(項目12)
前記結合材は、フィッシュゼラチンおよびポリアニオンを含む、項目1に記載の電気光学媒体。
(項目13)
4:1~50:1のマイクロカプセル 対 結合材の重量比を含む、項目1に記載の電気光学媒体。
(項目14)
前記ポリマー材料の屈折率は、550nmにおいて1.5より大きいかまたはこれに等しい、項目1に記載の電気光学媒体。
(項目15)
項目1に記載の電気光学媒体の層および前記電気光学媒体の層に近接した光透過性導電性材料の層を含む、可変式透過性フィルム。
(項目16)
電気光学媒体の層は、光透過性導電性材料の第1の層と第2の層との間に配置される、項目15に記載の可変式透過性フィルム。
(項目17)
複数のシールされたマイクロセルを含むポリマーシートを含む電気光学媒体であって、各マイクロセルは、分散物を含み、前記分散物は、複数の荷電複合粒子および懸濁流体を含み、前記荷電複合粒子は、電場の影響下で前記懸濁流体を通って動き、
前記複合粒子は、ポリマー材料で少なくとも部分的にコーティングされた1またはこれより多くの顔料粒子を含み、前記顔料粒子は、マンガンフェライトブラックスピネル、銅クロマイトブラックスピネル、カーボンブラック、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され、
前記ポリマーシート、前記荷電複合粒子、および前記懸濁流体の各々は、屈折率を有し、前記複合粒子の屈折率と、前記懸濁流体およびポリマーシートのうちの少なくとも一方の屈折率との間の差異は、550nmにおいて0.05未満またはこれに等しい、
電気光学媒体。
(項目18)
前記複合粒子の屈折率と、前記懸濁流体および前記ポリマーシートの屈折率との間の差異は、550nmにおいて0.05未満またはこれに等しい、項目17に記載の電気光学媒体。
(項目19)
前記ポリマー材料の屈折率は、550nmにおいて1.5より大きいかまたはこれに等しい、項目17に記載の電気光学媒体。
(項目20)
連続ポリマー相中に複数の液滴を含む電気光学媒体であって、各液滴は、分散物を含み、前記分散物は、複数の荷電複合粒子および懸濁流体を含み、前記荷電複合粒子は、電場の影響下で前記懸濁流体を通って動き、
ここで前記複合粒子は、ポリマー材料で少なくとも部分的にコーティングされた1またはこれより多くの顔料粒子を含み、前記顔料粒子は、マンガンフェライトブラックスピネル、銅クロマイトブラックスピネル、カーボンブラック、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され、
前記連続ポリマー相、前記荷電複合粒子、および前記懸濁流体の各々は、屈折率を有し、前記複合粒子の屈折率と、前記懸濁流体および連続ポリマー相のうちの少なくとも一方の屈折率との間の差異は、550nmにおいて0.05未満またはこれに等しい、
電気光学媒体。
(項目21)
前記複合粒子と屈折率と前記懸濁流体および前記連続ポリマー相の屈折率との間の差異は、550nmにおいて0.05未満またはこれに等しい、項目20に記載の電気光学媒体。
(項目22)
前記ポリマー材料の屈折率は、550nmにおいて1.5より大きいかまたはこれに等しい、項目20に記載の電気光学媒体。