(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-20
(45)【発行日】2023-06-28
(54)【発明の名称】自動変速機の制御装置及び制御方法
(51)【国際特許分類】
F16H 61/12 20100101AFI20230621BHJP
F16H 61/68 20060101ALI20230621BHJP
【FI】
F16H61/12
F16H61/68
(21)【出願番号】P 2021561376
(86)(22)【出願日】2020-11-20
(86)【国際出願番号】 JP2020043351
(87)【国際公開番号】W WO2021106774
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】P 2019216988
(32)【優先日】2019-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 安範
(72)【発明者】
【氏名】濱野 正宏
【審査官】倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-232355(JP,A)
【文献】特開2003-160046(JP,A)
【文献】国際公開第2017/022771(WO,A1)
【文献】特開2004-100746(JP,A)
【文献】国際公開第2019/031177(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 59/00-61/12
F16H 61/68-61/688
B60T 8/88、17/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有段変速機構に有する複数の摩擦要素のそれぞれに設けられた変速系ソレノイドを制御し、前記複数の摩擦要素の締結状態を変更することにより複数のギヤ段を切替える変速制御を行う変速機コントロールユニットを備える自動変速機の制御装置であって、
前記変速機コントロールユニットは、
所定ギヤ段による走行中、実ギヤ比が設定ギヤ比から乖離するギヤ比異常条件と、ブレーキ非操作のときに車両減速度が所定値以上になる減速度条件とが所定時間継続して成立すると、前記有段変速機構がインターロック状態であると判定するインターロック判定を行うインターロック判定部と、
前記ブレーキ非操作を検出する
ブレーキ液圧センサ値を入力し、車両の加減速挙動と前記
ブレーキ液圧センサ値の対応関係が整合しない場合、前記
ブレーキ液圧センサ値が異常と判定するブレーキ
液圧センサ値異常判定部と、
を有し、
前記ブレーキ液圧センサ値異常判定部は、車両が加速側挙動であるとき前記ブレーキ液圧センサ値が第1閾値以下であるとハイ側正常判定フラグを立て、車両が減速側挙動であるとき前記ブレーキ液圧センサ値が第2閾値以上であるとロー側正常判定フラグを立て、
前記ハイ側正常判定フラグと前記ロー側正常判定フラグが共に立っていると正常判定成立とし、前記ブレーキ液圧センサ値の正常判定確定フラグを立て、
前記ハイ側正常判定フラグと前記ロー側正常判定フラグの少なくとも一方のフラグが立っていないと異常判定成立とし、前記正常判定確定フラグを降ろし、
前記インターロック判定部は、前記ブレーキ
液圧センサ値異常判定部により前記
ブレーキ液圧センサ値が異常と判定されると前記インターロック判定を許可しない
自動変速機の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載された自動変速機の制御装置において、
前記インターロック判定部は、前記ブレーキ液圧センサ値異常判定部により前記ブレーキ液圧センサ値が正常と判定されると前記インターロック判定を許可し、前記ブレーキ非操作を前記ブレーキ液圧センサ値が所定値以下であることにより検出する
自動変速機の制御装置。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載された自動変速機の制御装置において、
前記変速機コントロールユニットは、前記インターロック判定後に退避ギヤ段に固定することで車両走行を確保するリンプホーム制御部を有し、
前記リンプホーム制御部は、前記インターロック判定部により前記有段変速機構がインターロック状態を判定すると、複数の摩擦要素を全て解放する解放指示を出力し、
前記解放指示の出力によりニュートラル状態への移行が確認されると、複数の摩擦要素のうち特定の摩擦要素の締結・解放の判定情報に基づいて前記退避ギヤ段を決定し、
前記ニュートラル状態への移行から決定した前記退避ギヤ段へ変速した後、前記退避ギヤ段に固定する
自動変速機の制御装置。
【請求項4】
請求項1から
3までの何れか一項に記載された自動変速機の制御装置において、
前記変速機コントロールユニットは、前記摩擦要素の締結状態を維持するインギヤ中、クラッチ滑りを抑えることができる入力トルク相当の中間圧指令を前記変速系ソレノイドへ出力する変速系ソレノイド制御部を有する
自動変速機の制御装置。
【請求項5】
有段変速機構に有する複数の摩擦要素のそれぞれに設けられた変速系ソレノイドを制御し、前記複数の摩擦要素の締結状態を変更することにより複数のギヤ段を切替える変速制御を行う変速機コントロールユニットを備える自動変速機の制御方法であって、
所定ギヤ段による走行中、実ギヤ比が設定ギヤ比から乖離するギヤ比異常条件と、ブレーキ非操作のときに車両減速度が所定値以上になる減速度条件とが所定時間継続して成立すると、前記有段変速機構がインターロック状態であると判定するインターロック判定を行い、
前記ブレーキ非操作を検出する
ブレーキ液圧センサ値を入力し、車両の加減速挙動と前記
ブレーキ液圧センサ値の対応関係が整合しない場合、前記
ブレーキ液圧センサ値が異常と判定し、
車両が加速側挙動であるとき前記ブレーキ液圧センサ値が第1閾値以下であるとハイ側正常判定フラグを立て、車両が減速側挙動であるとき前記ブレーキ液圧センサ値が第2閾値以上であるとロー側正常判定フラグを立て、
前記ハイ側正常判定フラグと前記ロー側正常判定フラグが共に立っていると正常判定成立とし、前記ブレーキ液圧センサ値の正常判定確定フラグを立て、
前記ハイ側正常判定フラグと前記ロー側正常判定フラグの少なくとも一方のフラグが立っていないと異常判定成立とし、前記正常判定確定フラグを降ろし、
前記
ブレーキ液圧センサ値が異常と判定されると前記インターロック判定を許可しない、
自動変速機の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される自動変速機の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
WO2017/051755A1には、トルクコンバータと、トルクコンバータから駆動輪への動力伝達経路上に設けられた有段変速機構とを備える自動変速機を制御する自動変速機の制御装置であって、自動変速機の非走行レンジ選択中に、有段変速機構の出力軸の減速度と、トルクコンバータの変化とに基づいて、有段変速機構におけるインターロック判定を実行することが開示されている。
【発明の概要】
【0003】
しかしながら、WO2017/051755A1にあっては、車両減速度に基づき、インターロック判定を行う場合、インターロック発生時にインターロックでないと判定したり、又、インターロック非発生時にインターロックと判定したりする場合がある、という課題があった。
【0004】
本発明は、上記課題に着目してなされたもので、走行中にインターロックの発生を判定する際、ブレーキ操作の情報入力系を冗長構成にすることなく、インターロック発生時及びインターロック非発生時にインターロック誤判定を防止することを目的とする。
【0005】
上記目的を達成するため、本発明のある態様に係る自動変速機の制御装置は、有段変速機構に有する複数の摩擦要素のそれぞれに設けられた変速系ソレノイドを制御し、複数の摩擦要素の締結状態を変更することにより複数のギヤ段を切替える変速制御を行う変速機コントロールユニットを備える。
変速機コントロールユニットは、所定ギヤ段による走行中、実ギヤ比が設定ギヤ比から乖離するギヤ比異常条件と、ブレーキ非操作のときに車両減速度が所定値以上になる減速度条件とが所定時間継続して成立すると、有段変速機構がインターロック状態であると判定するインターロック判定を行うインターロック判定部と、ブレーキ非操作を検出するブレーキ液圧センサ値を入力し、車両の加減速挙動とブレーキ液圧センサ値の対応関係が整合しない場合、ブレーキ液圧センサ値が異常と判定するブレーキ液圧センサ値異常判定部とを有する。
ブレーキ液圧センサ値異常判定部は、車両が加速側挙動であるときブレーキ液圧センサ値が第1閾値以下であるとハイ側正常判定フラグを立て、車両が減速側挙動であるときブレーキ液圧センサ値が第2閾値以上であるとロー側正常判定フラグを立て、
ハイ側正常判定フラグとロー側正常判定フラグが共に立っていると正常判定成立とし、ブレーキ液圧センサ値の正常判定確定フラグを立て、
ハイ側正常判定フラグとロー側正常判定フラグの少なくとも一方のフラグが立っていないと異常判定成立とし、正常判定確定フラグを降ろす。
インターロック判定部は、ブレーキ液圧センサ値異常判定部によりブレーキ液圧センサ値が異常と判定されるとインターロック判定を許可しない。
【0006】
上記態様によれば、上記解決手段を採用したため、走行中にインターロックの発生を判定する際、ブレーキ操作の情報入力系を冗長構成にすることなく、インターロック発生時及びインターロック非発生時にインターロック誤判定を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施例1の制御装置が適用された自動変速機を搭載するエンジン車を示す全体システム図である。
【
図2】
図2は、自動変速機のギヤトレーンの一例を示すスケルトン図である。
【
図3】
図3は、自動変速機での変速用摩擦要素の各ギヤ段での締結状態を示す締結表図である。
【
図4】
図4は、自動変速機での変速マップの一例を示す変速マップ図である。
【
図5】
図5は、自動変速機のコントロールバルブユニットを示す油圧制御系構成図である。
【
図6】
図6は、変速機コントロールユニットの変速制御部の詳細構成を示すブロック図である。
【
図7】
図7は、変速制御部のブレーキ液圧センサ値異常判定部において実行されるブレーキ液圧センサ値異常判定処理の流れを示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、ブレーキ液圧センサ値と加減速の二次元座標面においてブレーキ液圧センサ値異常判定処理でのHi側診断NG領域とLow側診断NG領域を示す図である。
【
図9】
図9は、ブレーキ液圧センサ値の正常/異常判定結果を用いて変速制御部において実行される変速制御処理の流れを示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、5速ギヤ段での走行中であってインターロックが判定されたとき第1ブレーキが誤締結である場合の5速ギヤ段→ニュートラル→8速ギヤ段固定への移行作用を示すタイムチャートである。
【
図11】
図11は、5速ギヤ段での走行中であってインターロックが判定されたとき第1ブレーキが誤締結以外である場合の5速ギヤ段→ニュートラル→2速ギヤ段固定への移行作用を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態に係る自動変速機の制御装置を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0009】
実施例1の制御装置は、前進9速・後退1速のギヤ段を有するシフト・バイ・ワイヤ及びパーク・バイ・ワイヤによる自動変速機を搭載したエンジン車(車両の一例)に適用したものである。以下、実施例1の構成を「全体システム構成」、「自動変速機の詳細構成」、「油圧制御系の詳細構成」、「変速制御部の詳細構成」、「ブレーキ液圧センサ値異常判定処理構成」、「変速制御処理構成」に分けて説明する。
【0010】
[全体システム構成(
図1)]
以下、
図1に基づいて全体システム構成を説明する。エンジン車の駆動系には、
図1に示すように、エンジン1(走行用駆動源)と、トルクコンバータ2と、自動変速機3と、プロペラシャフト4と、駆動輪5と、を備える。トルクコンバータ2は、締結によりエンジン1のクランク軸と自動変速機3の変速機入力軸INを直結するロックアップクラッチ2aを内蔵する。自動変速機3は、ギヤトレーン3aとパークギヤ3bを内蔵する。自動変速機3には、変速のためのスプールバルブや油圧制御回路やソレノイドバルブ等により構成されるコントロールバルブユニット6が取り付けられている。
【0011】
コントロールバルブユニット6は、ソレノイドバルブとして、摩擦要素毎に6個設けられるクラッチソレノイド20と、それぞれ1個設けられるライン圧ソレノイド21、潤滑ソレノイド22、ロックアップソレノイド23を有する。即ち、合計9個のソレノイドバルブを有する。これらのソレノイドバルブは何れも3方向リニアソレノイド構造であり、変速機コントロールユニット10からの制御指令を受けて調圧作動する。
【0012】
エンジン車の電子制御系には、
図1に示すように、変速機コントロールユニット10(略称:「ATCU」という。)と、エンジンコントロールモジュール11(略称:「ECM」という。)と、車両挙動コントローラ8(略称:「VDC」)と、CAN通信線70と、を備える。ここで、変速機コントロールユニット10は、センサモジュールユニット71(略称:「USM」という。)からのイグニッション信号によって起動/停止をする。つまり、変速機コントロールユニット10の起動/停止を、イグニッションスイッチによる起動/停止の場合に比べて起動バリエーションが増える「ウェイクアップ/スリープ制御」としている。
【0013】
変速機コントロールユニット10は、コントロールバルブユニット6の上面位置に機電一体に設けられ、ユニット基板にメイン基板温度センサ31と、サブ基板温度センサ32と、を互いに独立性を担保しながら冗長系により備える。即ち、メイン基板温度センサ31とサブ基板温度センサ32は、センサ値情報を変速機コントロールユニット10に送信するが、周知の自動変速機ユニットとは異なり、オイルパン内で変速機作動油(ATF)に直接接触していない温度情報を送信する。この変速機コントロールユニット10は、他にタービン回転センサ13、出力軸回転センサ14、第3クラッチ油圧センサ15からの信号を入力する。さらに、シフタコントロールユニット18、中間軸回転センサ19、等からの信号を入力する。
【0014】
タービン回転センサ13は、トルクコンバータ2のタービン回転速度(=変速機入力軸回転速度)を検出し、タービン回転速度Ntを示す信号を変速機コントロールユニット10に送信する。出力軸回転センサ14は、自動変速機3の出力軸回転速度を検出し、出力軸回転速度No(=車速VSP)を示す信号を変速機コントロールユニット10に送信する。第3クラッチ油圧センサ15は、第3クラッチK3のクラッチ油圧を検出し、第3クラッチ油圧PK3を示す信号を変速機コントロールユニット10に送信する。
【0015】
シフタコントロールユニット18は、運転者によるシフタ181へのセレクト操作により選択されたレンジ位置を判定し、レンジ位置信号を変速機コントロールユニット10に送信する。なお、シフタ181は、モーメンタリ構造であり、操作部181aの上部にPレンジボタン181bを有し、操作部181aの側部にロック解除ボタン181c(N→R時のみ)を有する。そして、レンジ位置として、Hレンジ(ホームレンジ)とRレンジ(リバースレンジ)とDレンジ(ドライブレンジ)とN(d),N(r)(ニュートラルレンジ)を有する。中間軸回転センサ19は、中間軸(インターミディエイトシャフト=第1キャリアC1に連結される回転メンバ)の回転速度を検出し、中間軸回転速度Nintを示す信号を変速機コントロールユニット10に送信する(
図2を参照)。
【0016】
変速機コントロールユニット10では、変速マップ(
図4を参照)上での車速VSPとアクセル開度APOによる運転点(VSP,APO)の変化を監視することで、
1.オートアップシフト(アクセル開度を保った状態での車速上昇による)
2.足離しアップシフト(アクセル足離し操作による)
3.足戻しアップシフト(アクセル戻し操作による)
4.パワーオンダウンシフト(アクセル開度を保っての車速低下による)
5.小開度急踏みダウンシフト(アクセル操作量小による)
6.大開度急踏みダウンシフト(アクセル操作量大による:「キックダウン」)
7.緩踏みダウンシフト(アクセル緩踏み操作と車速上昇による)
8.コーストダウンシフト(アクセル足離し操作での車速低下による)
と呼ばれる基本変速パターンによる変速制御を行う。
【0017】
車両挙動コントローラ8は、運転者操作や車両速度を検知して、ブレーキやエンジン1の出力の制御を自動的に行い、滑りやすい路面やカーブ路を曲がるときや障害物を回避するときに車両の横滑りを軽減する制御を行う。この車両挙動コントローラ8は、入力センサとしてブレーキ液圧センサ81を有し、ブレーキ制御時に必要なブレーキ液圧情報を取得するようにしている。また、変速機コントロールユニット10とは、CAN通信線70により接続され、変速機コントロールユニット10から情報リクエストを出すと、車両挙動コントローラ8からCAN通信線70を介してブレーキ液圧センサ値の情報が変速機コントロールユニット10へ送信される。なお、車両挙動コントローラ8において診断しているブレーキ液圧センサ故障は、電気異常(ショート/断線)とLow側固着異常である。
【0018】
エンジンコントロールモジュール11は、アクセル開度センサ16、エンジン回転センサ17、等からの信号を入力する。
【0019】
アクセル開度センサ16は、運転者のアクセル操作によるアクセル開度を検出し、アクセル開度APOを示す信号をエンジンコントロールモジュール11に送信する。エンジン回転センサ17は、エンジン1の回転速度を検出し、エンジン回転速度Neを示す信号をエンジンコントロールモジュール11に送信する。
【0020】
エンジンコントロールモジュール11は、双方向に情報交換可能なCAN通信線70を介して変速機コントロールユニット10と接続されている。エンジンコントロールモジュール11には、変速機コントロールユニット10からCAN通信線70を介してトルク制限要求が入力されると、エンジントルクを所定の上限トルクにより制限したトルクとするトルク制限制御部110を有する。また、変速機コントロールユニット10から情報リクエストが入力されると、アクセル開度APOやエンジン回転速度Neの情報を変速機コントロールユニット10に出力する。さらに、推定算出によるエンジントルクTeやタービントルクTtの情報を変速機コントロールユニット10に出力する。
【0021】
[自動変速機の詳細構成(
図2~
図4)]
以下、
図2~
図4に基づいて自動変速機3の詳細構成を説明する。自動変速機3は、複数のギヤ段が設定可能なギヤトレーン3a(有段変速機構)と複数の摩擦要素を有するもので、下記の点を特徴とする。
(a) 変速要素として、機械的に係合/空転するワンウェイクラッチを用いていない。
(b) 摩擦要素である第1ブレーキB1、第2ブレーキB2、第3ブレーキB3、第1クラッチK1、第2クラッチK2、第3クラッチK3は、変速時にクラッチソレノイド20によってそれぞれ独立に締結/解放状態が制御される。
(c) 摩擦要素の締結圧制御において締結状態を維持するインギヤ中、クラッチソレノイドに最大圧指令を出力するのではなく、クラッチ滑りを抑えることができる入力トルク相当の中間圧指令をクラッチソレノイド20に出力する。
(d) 第2クラッチK2と第3クラッチK3は、クラッチピストン油室に作用する遠心力による遠心圧を相殺する遠心キャンセル室を有する。
【0022】
自動変速機3は、
図2に示すように、ギヤトレーン3aを構成する遊星歯車として、変速機入力軸INから変速機出力軸OUTに向けて順に、第1遊星歯車PG1と、第2遊星歯車PG2と、第3遊星歯車PG3と、第4遊星歯車PG4と、を備えている。
【0023】
第1遊星歯車PG1は、シングルピニオン型遊星歯車であり、第1サンギヤS1と、第1サンギヤS1に噛み合うピニオンを支持する第1キャリアC1と、ピニオンに噛み合う第1リングギヤR1と、を有する。
【0024】
第2遊星歯車PG2は、シングルピニオン型遊星歯車であり、第2サンギヤS2と、第2サンギヤS2に噛み合うピニオンを支持する第2キャリアC2と、ピニオンに噛み合う第2リングギヤR2と、を有する。
【0025】
第3遊星歯車PG3は、シングルピニオン型遊星歯車であり、第3サンギヤS3と、第3サンギヤS3に噛み合うピニオンを支持する第3キャリアC3と、ピニオンに噛み合う第3リングギヤR3と、を有する。
【0026】
第4遊星歯車PG4は、シングルピニオン型遊星歯車であり、第4サンギヤS4と、第4サンギヤS4に噛み合うピニオンを支持する第4キャリアC4と、ピニオンに噛み合う第4リングギヤR4と、を有する。
【0027】
自動変速機3は、
図2に示すように、変速機入力軸INと、変速機出力軸OUTと、第1連結メンバM1と、第2連結メンバM2と、トランスミッションケースTCと、を備えている。変速により締結/解放される摩擦要素として、第1ブレーキB1と、第2ブレーキB2と、第3ブレーキB3と、第1クラッチK1と、第2クラッチK2と、第3クラッチK3と、を備えている。
【0028】
変速機入力軸INは、エンジン1からの駆動力がトルクコンバータ2を介して入力される軸で、第1サンギヤS1と第4キャリアC4に常時連結している。そして、変速機入力軸INは、第2クラッチK2を介して第1キャリアC1に断接可能に連結している。
【0029】
変速機出力軸OUTは、プロペラシャフト4及び図外のファイナルギヤ等を介して駆動輪5へ変速した駆動トルクを出力する軸であり、第3キャリアC3に常時連結している。そして、変速機出力軸OUTは、第1クラッチK1を介して第4リングギヤR4に断接可能に連結している。
【0030】
第1連結メンバM1は、第1遊星歯車PG1の第1リングギヤR1と第2遊星歯車PG2の第2キャリアC2を、摩擦要素を介在させることなく常時連結するメンバである。第2連結メンバM2は、第2遊星歯車PG2の第2リングギヤR2と第3遊星歯車PG3の第3サンギヤS3と第4遊星歯車PG4の第4サンギヤS4を、摩擦要素を介在させることなく常時連結するメンバである。
【0031】
第1ブレーキB1は、第1キャリアC1の回転を、トランスミッションケースTCに対し係止可能な摩擦要素である。第2ブレーキB2は、第3リングギヤR3の回転を、トランスミッションケースTCに対し係止可能な摩擦要素である。第3ブレーキB3は、第2サンギヤS2の回転を、トランスミッションケースTCに対し係止可能な摩擦要素である。
【0032】
第1クラッチK1は、第4リングギヤR4と変速機出力軸OUTの間を選択的に連結する摩擦要素である。第2クラッチK2は、変速機入力軸INと第1キャリアC1の間を選択的に連結する摩擦要素である。第3クラッチK3は、第1キャリアC1と第2連結メンバM2の間を選択的に連結する摩擦要素である。
【0033】
図3に基づいて、各ギヤ段を成立させる変速構成を説明する。1速段(1st)は、第2ブレーキB2と第3ブレーキB3と第3クラッチK3の同時締結により達成する。2速段(2nd)は、第2ブレーキB2と第2クラッチK2と第3クラッチK3の同時締結により達成する。3速段(3rd)は、第2ブレーキB2と第3ブレーキB3と第2クラッチK2の同時締結により達成する。4速段(4th)は、第2ブレーキB2と第3ブレーキB3と第1クラッチK1の同時締結により達成する。5速段(5th)は、第3ブレーキB3と第1クラッチK1と第2クラッチK2の同時締結により達成する。以上の1速段~5速段が、ギヤ比が1を超えている減速ギヤ比によるアンダードライブギヤ段である。
【0034】
6速段(6th)は、第1クラッチK1と第2クラッチK2と第3クラッチK3の同時締結により達成する。この第6速段は、ギヤ比=1の直結段である。
【0035】
7速段(7th)は、第3ブレーキB3と第1クラッチK1と第3クラッチK3の同時締結により達成する。8速段(8th)は、第1ブレーキB1と第1クラッチK1と第3クラッチK3の同時締結により達成する。9速段(9th)は、第1ブレーキB1と第3ブレーキB3と第1クラッチK1の同時締結により達成する。以上の7速段~9速段は、ギヤ比が1未満の増速ギヤ比によるオーバードライブギヤ段である。
【0036】
さらに、1速段から9速段までのギヤ段のうち、隣接するギヤ段へのアップ変速を行う際、或いは、ダウン変速を行う際、
図3に示すように、掛け替え変速により行う構成としている。即ち、隣接するギヤ段への変速は、三つの摩擦要素のうち、二つの摩擦要素の締結は維持したままで、一つの摩擦要素の解放と一つの摩擦要素の締結を行うことで達成される。
【0037】
Rレンジ位置の選択による後退速段(Rev)は、第1ブレーキB1と第2ブレーキB2と第3ブレーキB3の同時締結により達成する。なお、Nレンジ位置及びPレンジ位置を選択したときは、基本的に6個の摩擦要素B1,B2,B3,K1,K2,K3の全てが解放状態とされる。
【0038】
そして、変速機コントロールユニット10には、
図4に示すような変速マップが記憶設定されていて、Dレンジの選択により前進側の1速段から9速段までのギヤ段の切り替えによる変速は、この変速マップに従って行われる。即ち、そのときの運転点(VSP,APO)が
図4の実線で示すアップシフト線を横切るとアップシフト変速要求が出される。又、運転点(VSP,APO)が
図4の破線で示すダウンシフト線を横切るとダウンシフト変速要求が出される。
【0039】
[油圧制御系の詳細構成(
図5)]
以下、
図5に基づいて油圧制御系の詳細構成を説明する。変速機コントロールユニット10によって油圧制御されるコントロールバルブユニット6は、
図5に示すように、油圧源として、メカオイルポンプ61と電動オイルポンプ62を備える。メカオイルポンプ61は、エンジン1によりポンプ駆動され、電動オイルポンプ62は、電動モータ63によりポンプ駆動される。
【0040】
コントロールバルブユニット6は、油圧制御回路に設けられる弁として、ライン圧ソレノイド21とライン圧調圧弁64とクラッチソレノイド20とロックアップソレノイド23を備える。そして、潤滑ソレノイド22と潤滑調圧弁65とブースト切り替え弁66を備える。さらに、P-nP切り替え弁67とパーク油圧アクチュエータ68を備える。
【0041】
ライン圧調圧弁64は、メカオイルポンプ61と電動オイルポンプ62の少なくとも一方からの吐出油を、ライン圧ソレノイド21からのバルブ作動信号圧に基づいてライン圧PLに調圧する。
【0042】
ここで、ライン圧ソレノイド21は、変速機コントロールユニット10に有するライン圧制御部100から制御指令により調圧駆動する。ライン圧制御部100は、ギヤトレーン3aへの入力トルクの大きさに対する目標ライン圧特性に基づいてライン圧PLを制御する。
【0043】
クラッチソレノイド20は、ライン圧PLを元圧とし、摩擦要素(B1,B2,B3,K1,K2,K3)毎に締結圧や解放圧を制御する変速系ソレノイドである。なお、
図5ではクラッチソレノイド20が1個であるように記載しているが、摩擦要素(B1,B2,B3,K1,K2,K3)毎に6個のソレノイドを有する。ここで、クラッチソレノイド20は、変速機コントロールユニット10に有する変速制御部101からの制御指令により調圧駆動し、燃費性能の向上を意図し、インギヤ中に締結状態とされる摩擦要素に対し、クラッチ滑りを抑えることができる入力トルク相当の中間圧指令をクラッチソレノイド20へ出力する。
【0044】
ロックアップソレノイド23は、ロックアップクラッチ2aの締結時、ライン圧調圧弁64により作り出されたライン圧PLと調圧余剰油を用い、ロックアップクラッチ2aのクラッチ差圧を制御する。
【0045】
ここで、ロックアップソレノイド23は、変速機コントロールユニット10に有するロックアップ制御部102からの制御指令により調圧駆動する。ロックアップ制御部102は、低車速域に設定された所定車速以上の領域での走行中、ロックアップクラッチ2aの微小スリップを許容するゼロスリップ締結状態を維持するクラッチ差圧制御を、ギヤトレーン3aのギヤ段や変速にかかわらず実行する。即ち、完全締結状態を保つクラッチ差圧制御ではなく、ギヤトレーン3aへの変動するトルク入力に対してロックアップクラッチ2aを滑らせることにより変動トルクを吸収するようにしている。
【0046】
潤滑ソレノイド22は、潤滑調圧弁65へのバルブ作動信号圧と、ブースト切り替え弁66への切替え圧とを作り出し、摩擦要素へ供給する潤滑流量を、発熱を抑える適正な流量に調圧する機能を有する。そして、連続変速プロテクション以外のときに摩擦要素の発熱を抑える最低潤滑流量をメカ保証し、最低潤滑流量に上乗せされる潤滑流量分を調整するソレノイドである。
【0047】
潤滑調圧弁65は、潤滑ソレノイド22からのバルブ作動信号圧によって、摩擦要素とギヤトレーン3aを含むパワートレーン(PT)へクーラー69を介して供給する潤滑流量をコントロールすることができる。そして、潤滑調圧弁65によってPT供給潤滑流量を適正化することでフリクションを低減する。
【0048】
ブースト切り替え弁66は、潤滑ソレノイド22からの切替え圧によって、第2クラッチK2と第3クラッチK3の遠心キャンセル室の供給油量を増加する。このブースト切り替え弁66は、遠心キャンセル室の油量が不足しているシーンで一時的に供給油量を増やすときに使用する。
【0049】
P-nP切り替え弁67は、潤滑ソレノイド22(又はパークソレノイド)からの切替え圧によってパーク油圧アクチュエータ68へのライン圧路を切り替える。Pレンジへの選択時にパークギヤ3bを噛合わせるパークロックと、PレンジからPレンジ以外のレンジへの選択時にパークギヤ3bの噛合を解除するパークロック解除を行う。
【0050】
このように、運転者が操作するシフトレバーと機械的に連結され、Dレンジ圧油路やRレンジ圧油路やPレンジ圧油路等を切り替えるマニュアルバルブを廃止したコントロールバルブユニット6の構成としている。そして、シフタ181によりD,R,Nレンジを選択した際、シフタコントロールユニット18からのレンジ位置信号に基づいて、6個の摩擦要素を独立に締結/解放する制御を採用することで「シフト・バイ・ワイヤ」を達成している。さらに、シフタ181によりPレンジを選択した際、シフタコントロールユニット18からのレンジ位置信号に基づいて、パークモジュールを構成するP-nP切り替え弁67とパーク油圧アクチュエータ68を作動させることで「パーク・バイ・ワイヤ」を達成している。
【0051】
[変速制御部の詳細構成(
図6)]
以下、
図6に基づいて変速機コントロールユニット10の変速制御部101の詳細構成を説明する。変速制御部101は、
図6に示すように、ブレーキ液圧センサ値異常判定部101a(ブレーキ操作情報異常判定部)と、インターロック判定部101bと、ソレノイド機能異常判定部101cと、通常変速制御部101dと、リンプホーム制御部101eと、変速系ソレノイド制御部101fと、を備える。
【0052】
ブレーキ液圧センサ値異常判定部101aは、車両挙動コントローラ8からブレーキ液圧センサ値の情報を入力し、車両の加減速挙動とブレーキ液圧センサ値の対応関係が整合しない場合にブレーキ液圧センサ値が異常と判定する。ここで、車両の加減速挙動は、出力軸回転センサ14からの出力軸回転速度Noを入力し、出力軸回転速度Noの時間微分演算処理を行い、単位時間当たりの回転速度変化(回転速度上昇:加速挙動、回転速度低下:減速挙動)を求めることで取得する。
【0053】
インターロック判定部101bは、所定ギヤ段による走行中、実ギヤ比が設定ギヤ比から乖離するギヤ比異常条件と、ブレーキ非操作のときに車両減速度が所定値以上になる減速度条件とが所定時間継続して成立すると、ギヤトレーン3aがインターロック状態であると判定する。このインターロック判定部101bは、ブレーキ液圧センサ値異常判定部101aからの判定結果を入力し、ブレーキ液圧センサ値が異常と判定されると、インターロック判定を許可しない。一方、ブレーキ液圧センサ値異常判定部101aによりブレーキ液圧センサ値が正常と判定されると、インターロック判定を許可し、ブレーキ非操作をブレーキ液圧センサ値が所定値以下であることにより検出する。ブレーキ液圧センサ値の所定値は、例えば、ブレーキが作動してインギヤ中の摩擦要素が互いに滑る減速度が生じる値に設定することができる。
【0054】
ここで、実ギヤ比が設定ギヤ比から乖離するギヤ比異常条件は、1速ギヤ段~9速ギヤ段の何れかのギヤ段による前進走行中、変速機入力軸回転速度(タービン回転速度Nt)と変速機出力軸回転速度(出力軸回転速度No)から実ギヤ比を算出する。そして、算出される実ギヤ比とそのときの所定ギヤ段における設定ギヤ比の差が設定値(正常時の設定ギヤ比に対して±H%)未満であるとギヤ比が正常であると判定し、算出される実ギヤ比とそのときの所定ギヤ段における設定ギヤ比の差が設定値以上になるとギヤ比異常と判定する。車両減速度の所定値は、例えば、ギヤトレーン3aがインターロック状態になって車両が急減速するインターロック減速での減速値を多数の実験により取得し、ブレーキ緩減速とインターロック減速を切り分ける減速閾値により与える。
【0055】
ソレノイド機能異常判定部101cは、1速ギヤ段~9速ギヤ段の何れかのギヤ段による前進走行中、ギヤ比異常の異常が確定すると、クラッチソレノイド20のソレノイド機能異常と判定する。ここで、ギヤ比異常の異常確定は、変速過渡期を除くインギヤ中において、ギヤトレーン3aにおけるギヤ比異常を開始してから設定時間(>累積時間)までの間でのギヤ比異常時間を累積し、累積時間がギヤ比異常異常確定タイマー時間以上になるとギヤ比異常異常確定とする。
【0056】
通常変速制御部101dは、インターロック状態でもソレノイド機能異常でもないと判定されている場合、そのときの運転点(VSP,APO)と
図4に示す変速マップを用いてアップシフト及びダウンシフトを行う通常変速制御を実行する。通常変速制御では、各ギヤ段における6個のクラッチソレノイド20a,20b,20c,20d,20e,20fに対する締結指令/解放指令を
図3に示す締結表に従って決め、決めた締結指令/解放指令を変速系ソレノイド制御部101fへ出力する。なお、20aは第1ブレーキソレノイド、20bは第2ブレーキソレノイド、20cは第3ブレーキソレノイド、20dは第1クラッチソレノイド、20eは第2クラッチソレノイド、20fは第3クラッチソレノイドである。
【0057】
リンプホーム制御部101eは、インターロック状態であると判定された場合、又は、ソレノイド機能異常と判定された場合、2種類の異常判定態様に共通する異常対応のリンプホーム制御を実行する。リンプホーム制御では、インターロック判定結果、又は、ソレノイド機能異常判定結果を入力すると、6個のクラッチソレノイド20a,20b,20c,20d,20e,20fを全て解放する解放指示を出力する。そして、解放指示の出力によりニュートラル状態への移行が確認されると、ギヤトレーン3aに有する中間軸回転センサ19からの回転/停止情報に基づいて、6個の摩擦要素のうち中間軸をトランスミッションケースTCに固定する第1ブレーキB1の締結・解放を判定する。次に、第1ブレーキB1の締結・解放の判定情報に基づいて退避ギヤ段を決定し、そのときのギヤ段から決定した退避ギヤ段へ変速する指令を変速系ソレノイド制御部101fへ出力し、その後、退避ギヤ段へ固定する。
【0058】
ここで、ソレノイド機能異常が判定された場合、退避ギヤ段への変速後、退避ギヤ段による前進走行中、再度、ソレノイド機能異常判定部101cにおいて、実ギヤ比と退避ギヤ段における設定ギヤ比の差に基づいて、退避ギヤ段でのギヤ比異常を判定する。そして、退避ギヤ段でのギヤ比異常が判定され、且つ、解放故障要素が推定されると、リンプホーム制御部101eでは、解放故障要素の推定に基づいて退避ギヤ段を変更し、退避ギヤ段から変更した第2の退避ギヤ段に変速する。一方、ソレノイド機能異常判定部101cにて退避ギヤ段でのギヤ比異常が判定されたが解放故障要素が推定されないと、リンプホーム制御部101eでは、ライン圧制御の機能異常と判定し、エンジン1の上限トルクを制限する要求をトルク制限制御部110へ出力する。
【0059】
ここで、リンプホーム制御部101eは、インターロック又はソレノイド機能異常が判定された時に選択されているギヤ段が第1ブレーキB1を締結状態として成立する8速ギヤ段又は9速ギヤ段であるか否かを判定する。そして、8速ギヤ段又は9速ギヤ段による走行中にギヤ比異常を判定すると、ニュートラル状態へ移行することなく、8速ギヤ段の場合は退避ギヤ段を3速ギヤ段と決定し、9速ギヤ段の場合は退避ギヤ段を2速ギヤ段と決定し、それぞれ決定したギヤ段へ変速する。なお、8速ギヤ段の場合に3速ギヤ段を、9速ギヤ段の場合に2速ギヤ段を退避ギヤ段として決定するのは、
図3に示すように、複数の摩擦要素の締結/解放の組み合わせ関係が逆の組み合わせ関係であり、8速ギヤ段又は9速ギヤ段でいずれかの摩擦要素に誤締結又は誤解放が生じていても3速ギヤ段又は2速ギヤ段であれば成立させることができるからである。即ち、変速系ソレノイド異常が判定された時に選択されているギヤ段が第1ブレーキB1を解放状態として成立する1速ギヤ段~7速ギヤ段であるとき、ニュートラル状態から退避ギヤ段固定へと移行する。そして、1速ギヤ段~7速ギヤ段であるときの退避ギヤ段は、各ギヤ段において第1ブレーキB1が誤締結のときと誤締結以外のときとで切り分けて決定する。
【0060】
変速系ソレノイド制御部101fは、通常変速制御部101d又はリンプホーム制御部101eからの指令に基づいて、6個のクラッチソレノイド20a,20b,20c,20d,20e,20fに対する締結指令/解放指令を出力する。この変速系ソレノイド制御部101fは、各ギヤ段において3個の摩擦要素の締結状態を維持するインギヤ中、ライン圧PLを元圧とし、クラッチ滑りを抑えることができる入力トルク相当の中間圧指令をクラッチソレノイド20(変速系ソレノイド)へ出力する。
【0061】
[ブレーキ液圧センサ値異常判定処理構成(
図7、
図8)]
以下、
図7に基づいて変速制御部101のブレーキ液圧センサ値異常判定部101aにて実行されるブレーキ液圧センサ値異常判定処理構成を説明する。なお、
図7のブレーキ液圧センサ値異常判定処理は、イグニッションオン中(イグニッション起動中)において繰り返し実行される。
【0062】
ステップS1では、処理スタートに続き、禁止条件非成立であるか否かを判断する。YES(禁止条件非成立)の場合はステップS2とステップS6へ進み、NO(禁止条件成立)の場合はステップS13へ進む。
ここで、「禁止条件非成立」とは、下記の(1),(2),(3)の何れの条件にも該当しない場合をいい、「禁止条件成立」とは、下記の(1),(2),(3)のうち少なくとも1つの条件に該当する場合をいう。
(1)ブレーキ液圧センサ値として異常値を受信したとき。
(2)車両挙動コントローラ8からのCAN受信異常のとき。
(3)出力軸回転センサ14が異常であるとき。
【0063】
ステップS2では、S1での禁止条件非成立との判断に続き、Hi側診断許可条件成立であるか否かを判断する。YES(Hi側診断許可条件成立)の場合はステップS3へ進み、NO(Hi側診断許可条件不成立)の場合はステップS13へ進む。
ここで、Hi側診断許可条件は、下記の(1),(2),(3)の条件により与え、3条件の成立によりHi側診断許可条件成立とし、3条件のうち何れかの条件に該当しないとHi側診断許可条件不成立とする。
(1)P,Rレンジ以外のとき。
(2)車両加減速度が各ギヤ段で異ならせて設定される閾値A以上のとき(
図8を参照)。
(3)車速VSPが閾値Jを超えているとき。
【0064】
ステップS3では、S2でのHi側診断許可条件成立との判断に続き、Hi側診断正常/異常判定成立か否かを判断する。YES(Hi側診断正常/異常判定成立)の場合はステップS4へ進み、NO(Hi側診断正常/異常判定不成立)の場合はステップS13へ進む。ここで、車両加減速度が閾値A以上の加速側であるとき、ブレーキ液圧センサ値が閾値K以下であるとHi側診断正常判定成立とする。そして、ブレーキ液圧センサ値が閾値Bを超えるとHi側診断異常判定成立とする(
図8のHi側診断NG領域を参照)。なお、閾値Kと閾値Bは、インターロックの発生時に車両の減速特性が各ギヤ段で異なるため、各ギヤ段で異ならせて設定される。
【0065】
ステップS4では、S3でのHi側診断正常/異常判定成立との判断に続き、Hi側診断正常/異常判定成立と判断されてから所定時間以上経過したか否かを判断する。YES(所定時間以上経過した)の場合はステップS5へ進み、NO(所定時間以上経過していない)の場合はステップS13へ進む。
【0066】
ステップS5では、S4での所定時間以上経過したとの判断に続き、Hi側診断正常判定成立と判断されてから所定時間以上経過した場合はHi側正常判定フラグを立て、Hi側診断異常判定成立と判断されてから所定時間以上経過した場合はHi側異常判定フラグを立て、ステップS10へ進む。
【0067】
ステップS6では、S1での禁止条件非成立との判断に続き、Low側診断許可条件成立であるか否かを判断する。YES(Low側診断許可条件成立)の場合はステップS7へ進み、NO(Low側診断許可条件不成立)の場合はステップS13へ進む。
ここで、Low側診断許可条件は、下記の(1),(2),(3)の条件により与え、3条件の成立によりLow側診断許可条件成立とし、3条件のうち何れかの条件に該当しないとLow側診断許可条件不成立とする。
(1)P,Rレンジ以外のとき。
(2)車両加減速度が各ギヤ段で異ならせて設定される閾値D未満のとき(
図8を参照)。
(3)車速VSPが閾値Lを超えているとき。
【0068】
ステップS7では、S6でのLow側診断許可条件成立との判断に続き、Low側診断正常/異常判定成立か否かを判断する。YES(Low側診断正常/異常判定成立)の場合はステップS8へ進み、NO(Low側診断正常/異常判定不成立)の場合はステップS13へ進む。
ここで、車両加減速度が閾値D未満の減速側であるとき、ブレーキ液圧センサ値が閾値M以上であるとLow側診断正常判定成立とする。そして、ブレーキ液圧センサ値が閾値E未満であるとLow側診断異常判定成立とする(
図8のLow側診断NG領域を参照)。なお、閾値Mと閾値Eは、インターロックの発生時に車両の減速特性が各ギヤ段で異なるため、各ギヤ段で異ならせて設定される。
【0069】
ステップS8では、S7でのLow側診断正常/異常判定成立との判断に続き、Low側診断正常/異常判定成立と判断されてから所定時間以上経過したか否かを判断する。YES(所定時間以上経過した)の場合はステップS9へ進み、NO(所定時間以上経過していない)の場合はステップS13へ進む。
【0070】
ステップS9では、S8での所定時間以上経過したとの判断に続き、Low側診断正常判定成立と判断されてから所定時間以上経過した場合はLow側正常判定フラグを立て、Low側診断異常判定成立と判断されてから所定時間以上経過した場合はLow側異常判定フラグを立て、ステップS10へ進む。
【0071】
ステップS10では、S5とS9に続き、Hi側正常判定フラグとLow側正常判定フラグが共に立っているか否かを判断する。YES(2つの正常判定フラグが共に立っている)の場合はS11へ進み、NO(2つの正常判定フラグのうち一方又は両方が立っていない)の場合はステップS12へ進む。
【0072】
ステップS11では、S10での2つの正常判定フラグが共に立っているとの判断に続き、ブレーキ液圧センサ値の正常判定確定フラグを、正常判定確定フラグ=1とし、リターンへ進む。
【0073】
ステップS12では、S10での2つの正常判定フラグのうち一方又は両方が立っていないとの判断に続き、ブレーキ液圧センサ値の正常判定確定フラグを、ブレーキ液圧センサ値が異常であることを示す正常判定確定フラグ=0とし、リターンへ進む。
【0074】
ステップS13では、S1,S2,S3,S4,S6,S7,S8の何れかでのNOとの判断に続き、正常判定確定フラグの前回値を維持し、リターンへ進む。
【0075】
[変速制御処理構成(
図9)]
以下、
図9に基づいて変速機コントロールユニット10の変速制御部101にて実行される変速制御処理構成を説明する。なお、
図9の変速制御処理は、イグニッションオン(イグニッション起動)により開始する。
【0076】
ステップS21では、処理スタートに続き、変速系ソレノイド診断条件が成立しているか否かを判断する。YES(変速系ソレノイド診断条件成立)の場合はステップS22へ進み、NO(変速系ソレノイド診断条件不成立)の場合はステップS28へ進む。
ここで、変速系ソレノイド診断条件は、診断禁止条件が不成立で、且つ、診断許可条件が成立であると、変速系ソレノイド診断条件成立と判定される。診断禁止条件としては、タービン回転センサ異常、車速センサ異常、ライン圧ソレノイド電気異常等の条件が与えられる。診断許可条件としては、P,R,Nレンジ以外であって、車速が所定車速以上、タービン回転速度が所定値以上、エンジン回転速度が所定値以上等の条件が与えられる。そして、診断禁止条件のうち一つの条件が成立していても、又、診断許可条件のうち一つの条件が不成立であっても診断条件不成立と判断される。
【0077】
ステップS22では、S21での変速系ソレノイド診断条件成立との判断、或いは、S24での所定時間未経過であるとの判断に続き、ブレーキ液圧センサ値の正常判定確定フラグ=1であるか否かを判断する。YES(正常判定確定フラグ=1)の場合はステップS23へ進み、NO(正常判定確定フラグ=0)の場合はステップS27へ進む。なお、ブレーキ液圧センサ値の正常判定確定フラグの情報は、ブレーキ液圧センサ値異常判定部101aから読み込まれる。
【0078】
ステップS23では、S22での正常判定確定フラグ=1であるとの判断に続き、インターロック判定条件成立か否かを判断する。YES(インターロック判定条件成立)の場合はステップS24へ進み、NO(インターロック判定条件不成立)の場合はステップS27へ進む。
ここで、インターロック判定条件は、実ギヤ比が設定ギヤ比から乖離するギヤ比異常条件と、ブレーキ液圧センサ値が所定値以下のときに車両減速度が所定値以上になる減速度条件とで与える。そして、ギヤ比異常条件と減速度条件が共に成立している状態であるとインターロック判定条件成立と判断する。
【0079】
ステップS24では、S23でのインターロック判定条件成立との判断に続き、インターロック判定条件が成立したままで所定時間が経過したか否かを判断する。YES(所定時間経過)の場合はステップS25へ進み、NO(所定時間未経過)の場合はステップS22へ戻る。
【0080】
ステップS25では、S24での所定時間経過との判断、或いは、S26でのIGN ONとの判断、或いは、S27でのソレノイド機能異常判定条件成立との判断に続き、リンプホーム制御を実行し、ステップS26へ進む。なお、インターロック判定、又は、ソレノイド機能異常判定に対するリンプホーム制御としては、例えば、ニュートラル状態へ移行した後、退避ギヤ段固定へと移行する制御が実行される。
【0081】
ステップS26では、S25でのリンプホーム制御処理に続き、イグニッション起動停止(イグニッションオフ)であるか否かを判定する。YES(IGN OFF)の場合はエンドへ進み、NO(IGN ON)の場合はステップS25へ戻る。
【0082】
ステップS27では、S22での正常判定確定フラグ=0との判断、或いは、S23でのインターロック判定条件不成立との判断に続き、クラッチソレノイド20のソレノイド機能異常判定条件成立であるか否かを判断する。YESの場合はステップS27へ進み、NOの場合はステップS28へ進む。
ここで、ソレノイド機能異常判定条件は、1速ギヤ段~9速ギヤ段の何れかのギヤ段による前進走行中、ギヤ比異常が発生してからのギヤ比異常時間を累積し、累積時間がギヤ比異常異常確定タイマー時間に到達したという条件により与える。
【0083】
ステップS28では、S21での変速系ソレノイド診断条件不成立との判断、或いは、S27でのソレノイド機能異常判定条件不成立との判断に続き、そのときの運転点(VSP,APO)と
図4に示す変速マップを用いてアップシフト及びダウンシフトを行う通常変速制御処理を実行し、ステップS29へ進む。
【0084】
ステップS29では、S28での通常変速制御処理に続き、イグニッション起動停止(イグニッションオフ)であるか否かを判定する。YES(IGN OFF)の場合はエンドへ進み、NO(IGN ON)の場合はステップS21へ戻る。
【0085】
次に、「背景技術と課題解決方策」について説明する。そして、実施例1の作用を、「ブレーキ液圧センサ値異常判定処理作用」、「変速制御処理作用」、「5速ギヤ段での走行中におけるインターロック発生作用」に分けて説明する。
【0086】
[背景技術と課題解決方策]
自動変速機のギヤトレーンにてインターロックが発生したときのインターロック判定技術としては、所定ギヤ段による走行中、ギヤ比異常条件と減速度条件とが所定時間継続して成立することをインターロック判定条件として与えることが知られている。なお、ギヤ比異常条件は、実ギヤ比が所定ギヤ段における設定ギヤ比から乖離する条件であり、減速度条件は、ブレーキ非操作のときに車両減速度が所定値以上になる条件である。
【0087】
しかしながら、上記インターロック判定技術にあっては、ブレーキ非操作であることの判断を、ブレーキ系のセンサやスイッチからのブレーキ操作情報を用いて行っているが、ブレーキ操作情報そのものが正常であるか異常であるかの判定をしていない。このため、ブレーキ非操作のときにブレーキ操作情報がブレーキ操作を示す異常時には、インターロックによる減速をブレーキによる減速と誤認し、インターロック状態であることを判定できない。逆に、ブレーキ操作のときにブレーキ操作情報がブレーキ非操作を示す異常時には、ブレーキによる減速をインターロックによる減速と誤認し、インターロック状態を誤判定する、という課題があった。
【0088】
特に、燃費性能の向上を狙い、各ギヤ段にて締結される複数の摩擦要素のそれぞれのクラッチソレノイドに対して、最大圧指令より低い入力トルク相当の中間圧指令を出力し、締結状態を維持する中間圧クラッチ制御を行うものとする。この場合、ブレーキ操作を行うと駆動輪からの高い制動力がギヤトレーンへ入力されることで、摩擦要素で滑りが発生し易くなり、ギヤ比異常条件が成立する頻度が高くなる。ギヤ比異常条件が成立すると、減速度条件を判定する頻度も高くなり、ブレーキ操作情報が異常であるときにインターロック状態を誤判定する可能性も高くなってしまう。即ち、摩擦要素への締結油圧を低く抑えて燃費性能の向上を達成しながらも、インターロック誤判定を確実に防止したい、という要求がある。
【0089】
本発明者等は、上記課題や上記要求に対する解決策を検証した結果、
(A) インターロック判定の前提として、ブレーキ操作情報そのものが正常であるか異常であるかを確認しておく必要がある。
(B) ブレーキ操作の有無との関連性が高い車両の加減速挙動を用いると、センサ等を冗長構成にすることなく、ブレーキ操作情報の正常/異常を判定することができる。
(C) ブレーキ操作情報が異常と判定されるとインターロック判定を許可しない内容にすると、ブレーキ操作情報の正常/異常判定結果をインターロック誤判定の防止に反映することができる。
という点に着目した。
【0090】
上記着目点に基づいて、本開示の変速機コントロールユニット10は、所定ギヤ段による走行中、実ギヤ比が設定ギヤ比から乖離するギヤ比異常条件と、ブレーキ非操作のときに車両減速度が所定値以上になる減速度条件とが所定時間継続して成立すると、ギヤトレーン3aがインターロック状態であると判定するインターロック判定を行うインターロック判定部101bと、ブレーキ非操作を検出するブレーキ操作情報を入力し、車両の加減速挙動とブレーキ操作情報の対応関係が整合しない場合、ブレーキ操作情報が異常と判定するブレーキ操作情報異常判定部(ブレーキ液圧センサ値異常判定部101a)と、を有する。インターロック判定部101bは、ブレーキ操作情報異常判定部によりブレーキ操作情報が異常と判定されるとインターロック判定を許可しない、という解決手段を採用した。
【0091】
即ち、車両の加減速挙動とブレーキ操作情報の対応関係が整合しない場合、ブレーキ操作情報が異常と判定される。つまり、ブレーキ操作時の車両挙動は急減速挙動になり、ブレーキ非操作時の車両挙動はアクセル操作に応じて急減速挙動以外の挙動(緩減速、一定速、加速)になる。この車両挙動とブレーキ操作情報の対応関係を用いることで、センサやスイッチ等を二以上設けて信号比較する冗長構成にすることなく、一つのブレーキ操作情報を入力情報としながらもブレーキ操作情報の正常/異常を判定することができる。
【0092】
そして、ブレーキ操作情報が異常と判定されるとインターロック判定が許可されない。つまり、ブレーキ非操作のときにブレーキ操作情報がブレーキ操作を示す異常時には、インターロックによる減速をブレーキによる減速と誤認することが防止される。逆に、ブレーキ操作のときにブレーキ操作情報がブレーキ非操作を示す異常時には、ブレーキによる減速をインターロックによる減速と誤認することが防止される。
【0093】
この結果、走行中にインターロックの発生を判定する際、ブレーキ操作の情報入力系を冗長構成にすることなく、インターロック発生時及びインターロック非発生時にインターロック誤判定を防止できる。特に、摩擦要素の締結状態を維持するインギヤ中、クラッチ滑りを抑えることができる入力トルク相当の中間圧指令をクラッチソレノイド20へ出力する場合、摩擦要素の滑り発生により頻度が高くなるインターロック判定において誤判定を防止することができる。
【0094】
[ブレーキ液圧センサ値異常判定処理作用(
図7)]
ブレーキ液圧センサ値異常判定処理作用を
図7のフローチャートに基づいて説明する。まず、判定必要情報が異常であったり判定必要情報の受信が異常であったりし、ブレーキ液圧センサ値異常判定の禁止条件成立の場合は、S1からS13→リターンへ進み、正常判定確定フラグ=0とされる。一方、ブレーキ液圧センサ値異常判定の禁止条件不成立の場合は、S1からS2以降へ進むHi側診断処理と、S1からS6以降へ進むLow側診断処理とが並行して実行される。
【0095】
正常判定確定フラグ=0のときのHi側診断処理においては、Hi側診断許可条件が成立し、且つ、Hi側診断正常判定が成立であると、S1からS2→S3→S4へと進み、S4では、2つの条件成立状態のままで所定時間以上経過したか否かが判断される。そして、所定時間以上経過しない間は、S4からS13→リターンへ進み、正常判定確定フラグ=0が維持される。しかし、所定時間以上経過すると、S4からステップS5へと進み、S5では、Hi側正常判定フラグが立てられる。
【0096】
一方、正常判定確定フラグ=1のときのHi側診断処理においては、Hi側診断許可条件が成立し、且つ、Hi側診断異常判定が成立であると、S1からS2→S3→S4へと進み、S4では、2つの条件成立状態のままで所定時間以上経過したか否かが判断される。そして、所定時間以上経過しない間は、S4からS13→リターンへ進み、正常判定確定フラグ=1が維持される。しかし、所定時間以上経過すると、S4からステップS5へと進み、S5では、Hi側異常判定フラグが立てられる。
【0097】
正常判定確定フラグ=0のときのLow側診断処理においては、Low側診断許可条件が成立し、且つ、Low側診断正常判定が成立であると、S1からS2→S6→S7→S8へと進み、S8では、2つの条件成立状態のままで所定時間以上経過したか否かが判断される。そして、所定時間以上経過しない間は、S8からS13→リターンへ進み、正常判定確定フラグ=0が維持される。しかし、所定時間以上経過すると、S8からステップS9へと進み、S9では、Low側正常判定フラグが立てられる。
【0098】
一方、正常判定確定フラグ=0のときのLow側診断処理においては、Low側診断許可条件が成立し、且つ、Low側診断異常判定が成立であると、S1からS2→S6→S7→S8へと進み、S8では、2つの条件成立状態のままで所定時間以上経過したか否かが判断される。そして、所定時間以上経過しない間は、S8からS13→リターンへ進み、正常判定確定フラグ=0が維持される。しかし、所定時間以上経過すると、S8からステップS9へと進み、S9では、Low側異常判定フラグが立てられる。
【0099】
Hi側診断処理によりHi側正常判定フラグ又はHi側異常判定フラグが立てられるとS5からS10へ進む。また、Low側診断処理によりLow側正常判定フラグ又はLow側異常判定フラグが立てられるとS9からS10へ進む。S10では、Hi側正常判定フラグとLow側正常判定フラグが共に立っているか否かが判断される。
【0100】
S10において、Hi側正常判定フラグとLow側正常判定フラグのうち一方又は両方が立っていないと判断された場合、S10からS12へと進み、S12では、ブレーキ液圧センサ値が異常であることを示す正常判定確定フラグ=0とされる。つまり、Hi側異常判定フラグ又はLow側異常判定フラグが立てられていると、正常判定確定フラグ=0とされる。しかし、S10において、Hi側正常判定フラグとLow側正常判定フラグが共に立っていると判断された場合は、S10からS11へ進み、S11では、ブレーキ液圧センサ値が正常であることを示す正常判定確定フラグ=1とされる。
【0101】
[変速制御処理作用(
図9)]
変速制御処理作用を
図9のフローチャートに基づいて説明する。まず、イグニッション起動中、変速系ソレノイド診断条件が不成立のときは、S21→S28→S29へと進む流れが繰り返される。S28では、そのときの運転点(VSP,APO)と
図4に示す変速マップを用いてアップシフト及びダウンシフトを行う通常変速制御が実行される。
【0102】
Dレンジでの走行中、変速系ソレノイド診断条件が成立すると、S21からS22へ進み、S22では、ブレーキ液圧センサ値の正常判定確定フラグ=1であるか否かが判断される。正常判定確定フラグ=1の場合はS22からS23へ進み、S23では、インターロック判定条件成立か否かが判断される。正常判定確定フラグ=0の場合はS22からS27へ進み、S27では、ソレノイド機能異常判定条件成立か否かが判断される。
【0103】
よって、変速系ソレノイド診断条件が成立、且つ、ブレーキ液圧センサ値の正常判定確定フラグ=0、且つ、ソレノイド機能異常判定条件不成立であるときは、S21→S22→S27→S28→S29へと進む流れが繰り返され、S28では通常変速制御が実行される。また、変速系ソレノイド診断条件が成立、且つ、ブレーキ液圧センサ値の正常判定確定フラグ=1、且つ、インターロック判定条件不成立、且つ、ソレノイド機能異常判定条件不成立であるときは、S21→S22→S23→S27→S28→S29へと進む流れが繰り返され、S28では通常変速制御が実行される。
【0104】
一方、通常変速制御によって1速ギヤ段~9速ギヤ段の何れかのギヤ段を選択しての前進走行中、ギヤ比異常が発生してからのギヤ比異常時間を累積し、累積時間がギヤ比異常異常確定タイマー時間に到達したというソレノイド機能異常判定条件が成立したとする。この場合、S27からS25へと進み、S25では、通常変速制御に代え、ニュートラル状態へ移行してから退避ギヤ段固定へ移行する等によるリンプホーム制御が実行される。
【0105】
さらに、通常変速制御によって1速ギヤ段~9速ギヤ段の何れかのギヤ段を選択しての前進走行中、実ギヤ比が設定ギヤ比から乖離するギヤ比異常条件と、正常判定が確定しているブレーキ液圧センサ値が所定値以下のときに車両減速度が所定値以上になる減速度条件が成立したとする。この場合、インターロック判定条件の成立に基づいてS22→S23→S24へと進み、インターロック判定条件が成立したままでS24では所定時間が経過したか否かが判断される。そして、S24にて所定時間が経過したと判断されると、S24からS25へ進み、S25では、ソレノイド機能異常判定条件が成立した場合と同じリンプホーム制御が通常変速制御に代えて実行される。
【0106】
例えば、5速ギヤ段での走行中にインターロック判定が確定したときに第1ブレーキB1が誤締結であると、5速ギヤ段→ニュートラル状態→8速ギヤ段固定へと移行するリンプホーム制御が行われる(
図11を参照)。また、5速ギヤ段での走行中にインターロック判定が確定したときに第1ブレーキB1が誤締結以外であると、5速ギヤ段→ニュートラル状態→2速ギヤ段固定へと移行するリンプホーム制御が行われる(
図12を参照)。なお、リンプホーム制御は、イグニッション起動停止まで継続される。
【0107】
[5速ギヤ段での走行中におけるインターロック発生作用(
図10、
図11)]
5速ギヤ段での走行中であってインターロックが判定されたとき第1ブレーキB1が誤締結である場合の5速ギヤ段→ニュートラル→8速ギヤ段固定への移行作用を、
図10に示すタイムチャートにより説明する。
【0108】
例えば、Dレンジ5速での減速中、時刻t1にて実ギヤ比が5速ギヤ段での設定ギヤ比から-H%の閾値を超えてギヤ比異常が生じ、且つ、正常判定が確定しているブレーキ液圧センサ値が所定値以下のときに減速度が所定値以上になったとする。この場合、時刻t1からギヤ比異常条件と減速度条件が成立したままで時間が経過し、時刻t2にて急減速異常確定タイマーによる設定時間に到達すると、インターロックの確定と判定する。
【0109】
よって、時刻t2にて6個のクラッチソレノイド20a,20b,20c,20d,20e,20fの全てに対して解放指令を出力し、5速ギヤ段からニュートラル状態へと移行する。そして、時刻t2から所定時間を経過した時刻t3にてニュートラル状態への移行を確認する。時刻t3からは中間軸回転センサ19からの中間軸回転(=インタミ回転)を監視し、インタミ回転が時刻t3から所定時間を経過した時刻t4までインタミ回転速度=0の状態が継続すると、時刻t4にて第1ブレーキB1が誤締結であると判定する。
【0110】
このように、5速ギヤ段での減速中、インターロックの確定判定に基づき、ニュートラル状態へ移行した後、第1ブレーキB1が誤締結であると判定されたため、時刻t4にてニュートラル状態から退避ギヤ段である第8速ギヤ段へ変速し、その後、第8速ギヤ段のままでギヤ段を固定する。このため、時刻t4以降は、第1ブレーキB1を締結状態とする第8速ギヤ段固定を退避ギヤ段とし、車両のリンプホーム走行が確保されることになる。
【0111】
次に、5速ギヤ段での走行中であってインターロックが判定されたとき第1ブレーキB1が誤締結以外である場合の5速ギヤ段→ニュートラル→2速ギヤ段固定への移行作用を、
図11に示すタイムチャートにより説明する。
【0112】
例えば、Dレンジ5速での減速中、時刻t1にて実ギヤ比が5速ギヤ段での設定ギヤ比から-H%の閾値を超えてギヤ比異常が生じ、且つ、正常判定が確定しているブレーキ液圧センサ値が所定値以下のときに減速度が所定値以上になったとする。この場合、時刻t1からギヤ比異常条件と減速度条件が成立したままで時間が経過し、時刻t2にて急減速異常確定タイマーによる設定時間に到達すると、インターロックの確定と判定する。
【0113】
よって、時刻t2にて6個のクラッチソレノイド20a,20b,20c,20d,20e,20fの全てに対して解放指令を出力し、5速ギヤ段からニュートラル状態へと移行する。そして、時刻t2から所定時間を経過した時刻t3にてニュートラル状態への移行を確認する。時刻t3からは中間軸回転センサ19からの中間軸回転(=インタミ回転)を監視し、インタミ回転が時刻t3から所定時間を経過した時刻t4までインタミ回転速度>0の状態が継続すると、時刻t4にて第1ブレーキB1が解放であると判定する。
【0114】
このように、5速ギヤ段での減速中、インターロックの確定判定に基づき、ニュートラル状態へ移行した後、第1ブレーキB1は解放であると判定されたため、時刻t4にてニュートラル状態から退避ギヤ段である第2速ギヤ段へ変速し、その後、第2速ギヤ段のままでギヤ段を固定する。このため、時刻t4以降は、第1ブレーキB1を解放状態とする第2速ギヤ段固定を退避ギヤ段とし、車両のリンプホーム走行が確保されることになる。
【0115】
なお、インターロック判定によるリンプホーム制御を、8速ギヤ段又は9速ギヤ段でインターロック判定の場合、1速ギヤ段~7速ギヤ段でインターロック判定(B1誤締結)の場合、1速ギヤ段~7速ギヤ段でインターロック判定(B1誤締結以外)の場合、に分けると下記の通りである。
【0116】
〈8速ギヤ段又は9速ギヤ段でインターロック判定の場合〉
・8速ギヤ段でインターロック判定の場合、ニュートラル状態へ移行することなく、3速ギヤ段固定⇒ギヤ比異常⇒トルク制限。
・9速ギヤ段でインターロック判定の場合、ニュートラル状態へ移行することなく、2速ギヤ段固定⇒ギヤ比異常⇒トルク制限。
【0117】
〈1速ギヤ段~7速ギヤ段でインターロック判定(B1誤締結)の場合〉
・1速ギヤ段でインターロック判定(B1誤締結)の場合、ニュートラル状態⇒8速ギヤ段固定⇒ギヤ比異常⇒9速ギヤ段固定。
・2速ギヤ段でインターロック判定(B1誤締結)の場合、ニュートラル状態⇒8速ギヤ段固定⇒ギヤ比異常⇒9速ギヤ段固定。
・3速ギヤ段でインターロック判定(B1誤締結)の場合、ニュートラル状態⇒8速ギヤ段固定⇒ギヤ比異常⇒トルク制限。
・4速ギヤ段でインターロック判定(B1誤締結)の場合、ニュートラル状態⇒8速ギヤ段固定⇒ギヤ比異常⇒3速ギヤ段固定。
・5速ギヤ段でインターロック判定(B1誤締結)の場合、ニュートラル状態⇒8速ギヤ段固定⇒ギヤ比異常⇒3速ギヤ段固定。
・6速ギヤ段でインターロック判定(B1誤締結)の場合、ニュートラル状態⇒8速ギヤ段固定⇒ギヤ比異常⇒3速ギヤ段固定。
・7速ギヤ段でインターロック判定(B1誤締結)の場合、ニュートラル状態⇒8速ギヤ段固定⇒ギヤ比異常⇒3速ギヤ段固定。
【0118】
〈1速ギヤ段~7速ギヤ段でインターロック判定(B1誤締結以外)の場合〉
・1速ギヤ段でインターロック判定(B1誤締結以外)の場合、ニュートラル状態⇒5速ギヤ段固定⇒ギヤ比異常⇒6速ギヤ段固定。
・2速ギヤ段でインターロック判定(B1誤締結以外)の場合、ニュートラル状態⇒4速ギヤ段固定⇒ギヤ比異常⇒5速ギヤ段固定。
・3速ギヤ段でインターロック判定(B1誤締結以外)の場合、ニュートラル状態⇒6速ギヤ段固定⇒ギヤ比異常⇒7速ギヤ段固定。
・4速ギヤ段でインターロック判定(B1誤締結以外)の場合、ニュートラル状態⇒6速ギヤ段固定⇒ギヤ比異常⇒3速ギヤ段固定。
・5速ギヤ段でインターロック判定(B1誤締結以外)の場合、ニュートラル状態⇒2速ギヤ段固定⇒ギヤ比異常⇒1速ギヤ段固定。
・6速ギヤ段でインターロック判定(B1誤締結以外)の場合、ニュートラル状態⇒4速ギヤ段固定⇒ギヤ比異常⇒3速ギヤ段固定。
・7速ギヤ段でインターロック判定(B1誤締結以外)の場合、ニュートラル状態⇒3速ギヤ段固定⇒ギヤ比異常⇒2速ギヤ段固定。
【0119】
以上述べたように、実施例1の自動変速機3の制御装置にあっては、下記に列挙する効果を奏する。
【0120】
(1) 有段変速機構に有する複数の摩擦要素B1,B2,B3,K1,K2,K3のそれぞれに設けられた変速系ソレノイド(クラッチソレノイド20a,20b,20c,20d,20e,20f)を制御し、複数の摩擦要素の締結状態を変更することにより複数のギヤ段を切替える変速制御を行う変速機コントロールユニット10を備える自動変速機3の制御装置であって、
変速機コントロールユニット10は、所定ギヤ段による走行中、実ギヤ比が設定ギヤ比から乖離するギヤ比異常条件と、ブレーキ非操作のときに車両減速度が所定値以上になる減速度条件とが所定時間継続して成立すると、有段変速機構(ギヤトレーン3a)がインターロック状態であると判定するインターロック判定部101bと、ブレーキ非操作を検出するブレーキ操作情報を入力し、車両の加減速挙動とブレーキ操作情報の対応関係が整合しない場合、ブレーキ操作情報が異常と判定するブレーキ操作情報異常判定部(ブレーキ液圧センサ値異常判定部101a)と、を有し、
インターロック判定部101bは、ブレーキ操作情報異常判定部(ブレーキ液圧センサ値異常判定部101a)によりブレーキ操作情報が異常と判定されるとインターロック判定を許可しない。
このため、走行中にインターロックの発生を判定する際、ブレーキ操作の情報入力系を冗長構成にすることなく、インターロック発生時及びインターロック非発生時にインターロック誤判定を防止することができる。
【0121】
(2) ブレーキ操作情報異常判定部は、ブレーキ液圧センサ値の情報を入力し、車両の加減速挙動とブレーキ液圧センサ値の対応関係が整合しない場合、ブレーキ液圧センサ値が異常と判定するブレーキ液圧センサ値異常判定部101aであり、
インターロック判定部101bは、ブレーキ液圧センサ値異常判定部101aによりブレーキ液圧センサ値が正常と判定されるとインターロック判定を許可し、ブレーキ非操作をブレーキ液圧センサ値が所定値以下であることにより検出する。
このため、インターロック判定において、正常と判定されたブレーキ液圧センサ値を用い、ブレーキ非操作であることを検出することができる。
【0122】
(3) ブレーキ液圧センサ値異常判定部101aは、車両が加速側挙動であるときブレーキ液圧センサ値が第1閾値(閾値K)以下であるとハイ側正常判定フラグを立て、車両が減速側挙動であるときブレーキ液圧センサ値が第2閾値(閾値M)以上であるとロー側正常判定フラグを立て、
ハイ側正常判定フラグとロー側正常判定フラグが共に立っていると正常判定成立とし、ブレーキ液圧センサ値の正常判定確定フラグを立て、
ハイ側正常判定フラグとロー側正常判定フラグの少なくとも一方のフラグが立っていないと異常判定成立とし、正常判定確定フラグを降ろす。
このため、ブレーキ液圧センサ値の正常/異常の判定を、ブレーキ液圧センサ値のハイ側とロー側とで切り分けて行うことにより、ブレーキ液圧センサ値が正常であるか異常であるかを精度良く判定することができる。
【0123】
(4) 変速機コントロールユニット10は、インターロック判定後に退避ギヤ段に固定することで車両走行を確保するリンプホーム制御部101eを有し、
リンプホーム制御部101eは、インターロック判定部101bにより有段変速機構(ギヤトレーン3a)がインターロック状態を判定すると、複数の摩擦要素B1,B2,B3,K1,K2,K3を全て解放する解放指示を出力し、
解放指示の出力によりニュートラル状態への移行が確認されると、複数の摩擦要素B1,B2,B3,K1,K2,K3のうち特定の摩擦要素(第1ブレーキB1)の締結・解放の判定情報に基づいて退避ギヤ段を決定し、
ニュートラル状態への移行から決定した退避ギヤ段へ変速した後、退避ギヤ段に固定する。
このため、有段変速機構(ギヤトレーン3a)がインターロック状態であると判定された場合、インターロックによる急減速を回避しつつ、リンプホーム制御に移行して車両の走行性を確保することができる。
【0124】
(5) 変速機コントロールユニット10は、摩擦要素の締結状態を維持するインギヤ中、クラッチ滑りを抑えることができる入力トルク相当の中間圧指令を変速系ソレノイド(クラッチソレノイド20a,20b,20c,20d,20e,20f)へ出力する変速系ソレノイド制御部101fを有する。
このため、ブレーキ操作時に摩擦要素の滑り発生によりギヤ比異常条件が成立する頻度が高くなり、これに伴って頻度が高くなる減速度判定において誤判定を防止することができる。加えて、エンジン車の場合には、インギヤ中の締結油圧を低く抑えることで、ポンプ負荷の低減による燃費性能の向上を図ることができる。
【0125】
以上、本発明の実施形態に係る自動変速機の制御装置を実施例1に基づき説明してきた。しかし、具体的な構成については、この実施例1に限られるものではなく、請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0126】
実施例1では、ブレーキ操作情報異常判定部として、ブレーキ液圧センサ値の情報を入力し、車両の加減速挙動とブレーキ液圧センサ値の対応関係が整合しない場合、ブレーキ液圧センサ値が異常と判定するブレーキ液圧センサ値異常判定部101aの例を示した。しかし、ブレーキ操作情報異常判定部としては、ブレーキ操作情報を検出することができる情報であれば、ブレーキ液圧センサ値に限定されない。例えば、ブレーキスイッチからのブレーキスイッチ信号やブレーキストロークセンサからのブレーキストローク値、等を用いても良い。
【0127】
実施例1では、変速機コントロールユニット10として、摩擦要素の締結圧制御において締結状態を維持するインギヤ中、クラッチ滑りを抑えることができる入力トルク相当の中間圧指令をクラッチソレノイド20へ出力する変速系ソレノイド制御部101fを有する例を示した。しかし、変速機コントロールユニットとしては、摩擦要素の締結圧制御において締結状態を維持するインギヤ中、最大圧指令をクラッチソレノイドへ出力する変速制御部を有する例に対しても適用することができる。
【0128】
実施例1では、自動変速機として、6個の摩擦要素を有し、3個の摩擦要素の締結により前進9速後退1速を達成する自動変速機3の例を示した。しかし、自動変速機としては、2個の摩擦要素の締結により複数の前進段や後退段を達成する例としても良いし、4個の摩擦要素の締結により複数の前進段や後退段を達成する例としても良い。また、自動変速機としては、前進9速後退1速以外の有段ギヤ段を持つ自動変速機の例としても良いし、ベルト式無段変速機と多段変速機とを組み合わせた副変速機付き無段変速機としても良い。
【0129】
実施例1では、エンジン車に搭載される自動変速機3の制御装置の例を示した。しかし、エンジン車に限らず、ハイブリッド車や電気自動車等の自動変速機の制御装置としても適用することが可能である。
【0130】
本願は、2019年11月29日付けで日本国特許庁に出願した特願2019-216988号に基づく優先権を主張し、その出願の全ての内容は、参照により本明細書に組み込まれる。