(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-20
(45)【発行日】2023-06-28
(54)【発明の名称】低免疫原性かつ低ADCC/CDC機能の抗TNF-αヒト化モノクローナル抗体TCX060およびその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20230621BHJP
C07K 16/24 20060101ALI20230621BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20230621BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230621BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20230621BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20230621BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20230621BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230621BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230621BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20230621BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230621BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20230621BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230621BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/24 ZNA
C12P21/08
C12N5/10
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
A61P35/00
A61P29/00
A61P37/02
A61K39/395 U
A61K39/395 N
G01N33/53 D
C12N15/63 Z
(21)【出願番号】P 2021566946
(86)(22)【出願日】2020-04-30
(86)【国際出願番号】 CN2020088253
(87)【国際公開番号】W WO2020224529
(87)【国際公開日】2020-11-12
【審査請求日】2021-12-22
(31)【優先権主張番号】201910376223.0
(32)【優先日】2019-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521489779
【氏名又は名称】アブマックス バイオファーマシューティカルズ
【氏名又は名称原語表記】ABMAX BIOPHARMACEUTICALS
【住所又は居所原語表記】Bldg 18-2-201 99 Kechuang 14th St.,Economic and Technological Development Zone Beijing 101111 China
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】ソン,リー
(72)【発明者】
【氏名】レン,ウェンリン
【審査官】松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-502692(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0356357(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00- 15/90
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗TNF-αヒト化モノクローナル抗
体であって、
該抗体はヒトIgG1サブタイプの全長抗体であり、
重鎖のCDR3領域とCH2領域との間に挿入されたアミノ酸フラグメントを含み、
軽鎖の全長配列および重鎖の可変領域の配列がそれぞれ、配列番号1および配列番号2が示すとおりであり、
ヒトTNF-αに結合し、ヒトTNF-α
と、TNF受容体との結合を遮断する機能を有することを特徴とする
抗体。
【請求項2】
前
記アミノ酸フラグメン
トが、配列番号3
に示されるアミノ酸配列の237番目の
後ろに挿入されており、
2個以上のグリシンと
、1個以上のセリン
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の
抗体。
【請求項3】
前
記アミノ酸フラグメントの配列が、GGGS、GGSGGS、およびGSGSGSから選択される1種であることを特徴とする、請求項
1または2に記載の
抗体。
【請求項4】
腫瘍、炎症または自己免疫疾患を予防または治療するための医薬品として用いられることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の
抗体をコードする遺伝子。
【請求項6】
重鎖の全長をコードするヌクレオチド配列が配列番号5が示す通りであり、軽鎖の全長をコードするヌクレオチド配列が配列番号6が示す通りであることを特徴とする、請求項5に記載の遺伝子。
【請求項7】
発現カセット、ベクター、宿主細胞、人工細菌または細胞株を含むことを特徴とする、請求項5または6に記載の遺伝子を含む生物学的材料。
【請求項8】
ヒトTNF-αを標的とする医薬品の調製における、請求項1から4のいずれか一項に記載の
抗体、請求項5または6に記載の遺伝子、もしくは、請求項7に記載の生物学的材料の使
用。
【請求項9】
前記ヒトTNF-αを標的とする医薬品が、腫瘍、炎症または自己免疫疾患を予防または治療するための医薬品である、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
ヒトTNF-α検出試薬の調製における、請求項1から4のいずれか一項に記載の
抗体、請求項5または6に記載の遺伝子、もしくは、請求項7に記載の生物学的材料の使用。
【請求項11】
請求項1から4のいずれか一項に記載の
抗体を含む医薬品または検出試薬。
【発明の詳細な説明】
【相互参照】
【0001】
本願は、2019年5月7日に出願された中国特許出願第201910376223.0号の優先権を主張し、その開示内容全体を援用により本願に組み込む。
【技術分野】
【0002】
本発明は、バイオテクノロジー分野に関するものであり、特に、低免疫原性かつ低ADCC/CDC機能の抗TNF-αヒト化モノクローナル抗体TCX060およびその使用に関するものである。
【背景技術】
【0003】
腫瘍壊死因子α(TNF-α)は、免疫細胞から分泌され、炎症と免疫応答で自然に分泌されるサイトカインである。研究によると、TNF-αはさまざまな慢性疾患(例えば、クローン病、多発性硬化症、関節リウマチ、潰瘍性大腸炎など)の患者の体内で、含有量が高くなる傾向があり(たとえば、関節リウマチ(RA)患者の滑液において、TNF-αのレベルが上昇する)、病理学的炎症と関節破壊などの過程で重要な役割を果たすものである。ヒトTNF-αの分子量は17kDaであり、単量体または三量体として体内に存在し、その活性型は三量体である。TNF-αは、細胞表面の受容体p55およびp75と相互作用することによりその生物学的活性を発揮する。現在、モノクローナルIgG抗体または可溶性TNF-α受容体を用いて、体内のTNF-αを中和するのが一般的である。
【0004】
現在市販されているTNF-αを標的とするモノクローナル抗体には、主にエタネルセプト、インフリキシマブ、アダリムマブ、およびセルトリズマブが含まれ、そのうち、エタネルセプトは2本のヒトTNF-α受容体(p75)がFc末端に結合してなる融合蛋白質であり、インフリキシマブはヒト化TNF-αマウスモノクローナル抗体であり、アダリムマブはヒト化TNF-α抗体である。放射性標識されたTNF-αを利用して結合能を測定した結果、インフリキシマブは単量体(活性なし)タイプおよび三量体(活性あり)タイプの可溶性TNF-αと結合でき、エタネルセプトは活性のある多量体形式のTNF-αおよびTNF-βと結合する傾向があり、アダリムマブはTNF-αにのみ結合し、TNF-βに結合しない。
【0005】
Celltech UCB社によって開発されたセルトリズマブ(Certolizumab)は、TNF-αに特異的に結合し、TNF-αと細胞表面のTNF受容体p55およびp75との相互作用を遮断するヒト化モノクローナル抗体である。ただし、Certolizumabモノクローナル抗体の宿主体内での免疫原性が高く、当該モノクローナル抗体を使用する場合、免疫反応を引き起こす患者は23%にも達している。免疫反応により、免疫複合体が媒介する抗体またはフラグメントが循環から排除され、繰り返し投与する必要が生じ、治療に適さなくなり、これによって患者の治療効果が低下し、抗体の再投与が制限される可能性がある。同時に、セルトリズマブの先発医薬品は免疫抑制剤と併用する必要があり、これにより副作用のリスクが大幅に高まる。しかし、今までのところ、免疫原性の低いTNF-α抗体に関する報告はない。したがって、比較的高い親和性と特異性を有し、かつ、比較的低いADCC/CDC機能と免疫原性を備えるTNF-α抗体を開発することが強く求められている。
【発明の概要】
【0006】
従来技術に存在する課題を解決するために、本発明は、低多量体、低免疫原性、および低ADCC/CDC機能の抗TNF-αヒト化モノクローナル抗体、その調製方法およびその使用を提供することを目的とする。
【0007】
上記の目的を実現するための本発明の技術案は下記の通りである。
【0008】
本発明は、セルトリズマブモノクローナル抗体のアミノ酸配列を、商業化されたDNAStarTMソフトウェアで分析したところ、PEG修飾されていないセルトリズマブモノクローナル抗体のアミノ酸配列の免疫原性が非常に低い一方で、PEG化されたセルトリズマブモノクローナル抗体が多量体の産生を引き起こす恐れがあり、それにより免疫原性が向上すること、つまり、PEG化によってADCC/CDC機能が低下するが、免疫性の問題が生じることを見出した。上記の分析に基づいて、本発明は、セルトリズマブの比較的高いTNF-αとの結合親和性および特異性を維持するとともに、その多量体の産生、免疫原性およびADCC/CDC機能を低下させるために、セルトリズマブモノクローナル抗体の配列に基づいて、モノクローナル抗体の配列を改変した。具体的な改変は、下記のことを含む。
【0009】
まず、セルトリズマブモノクローナル抗体の多量体と免疫原性を低下させるために、セルトリズマブモノクローナル抗体のPEG修飾を除去する。しかしながら、PEG修飾が除去された抗体は、ADCC/CDC機能が向上する。
【0010】
さらに、抗体がADCC/CDCを媒介する作用機序に基づいて、セルトリズマブモノクローナル抗体をヒトIgG1全長抗体に改変する。これに基づいて、Pymolなどのタンパク質構造分析ソフトウェアで抗体の構造を分析し、抗体の可変領域と定常領域との間で、比較的柔軟な領域を探し、柔軟なアミノ酸の挿入による改変を行う。最後に、抗体の重鎖のCDR3領域とCH2領域との間に柔軟なアミノ酸フラグメントを挿入することで、抗体の可変領域が抗原と結合した後に生じるメカニカルストレスの伝達を遮断し、抗体の重鎖の定常領域と、Fc受容体および/または補体との結合部位を十分に露出させず、それによって、抗体と、NK細胞、マクロファージおよび好中球などのIgG Fc受容体を発現するキラー細胞との結合、または補体との結合を弱め、抗体がADCC、CDCを誘導できないようにするか、もしくはADCC、CDCを誘導するシグナルを低減させる。
【0011】
本発明の第1の目的は、Certolizumabモノクローナル抗体を下記のように改変することによって得られる抗TNF-αヒト化モノクローナル抗体TCX060であって、前記Certolizumabモノクローナル抗体の軽鎖の全長配列および重鎖の可変領域の配列がそれぞれ、配列番号1および配列番号2が示すとおりであり、ヒトTNF-αに結合し、ヒトTNF-αとTNF受容体との結合を遮断する機能を有する、抗TNF-αヒト化モノクローナル抗体TCX060を提供することである。
(1)PEG修飾を除去する。
(2)改変されたヒトIgG1サブタイプの抗体の重鎖の定常領域を追加することにより、ヒトIgG1サブタイプの全長抗体に改変する。
(3)得られたヒトIgG1サブタイプの全長抗体の重鎖CDR3領域とCH2領域との間に柔軟なアミノ酸フラグメントを挿入する。
【0012】
上記のステップ(3)では、得られたヒトIgG1サブタイプの全長抗体のCDR3領域とCH2領域との間に柔軟なアミノ酸フラグメントを挿入すると、抗体の可変領域と定常領域との間のストレスの伝達を遮断し、抗体のFc受容体および/または補体との結合部位を十分に露出させず、抗体のADCC/CDC効果を効果的に低下させることができる。
【0013】
抗体の可変領域が抗原と結合した後に生じるメカニカルストレスの伝達をよりよく遮断するために、好ましくは、前記柔軟なアミノ酸フラグメントの挿入位置は、配列番号3が示す配列の237番目のアミノ酸と238番目のアミノ酸との間である。前記柔軟なアミノ酸フラグメントは、グリシンまたはセリンを1つまたは複数含む。
【0014】
さらに好ましくは、前記柔軟なアミノ酸フラグメントの配列は、GGGS、GGSGGSまたはGSGSGSである。
【0015】
本発明の好ましい実施形態として、前記柔軟なアミノ酸フラグメントの挿入位置は、配列番号3が示す配列の237番目のアミノ酸と238番目のアミノ酸との間であり、前記柔軟なアミノ酸フラグメントの配列はGGGSである。
【0016】
本発明では、上記の改変に基づいて得られた抗TNF-αヒト化モノクローナル抗体の重鎖に対して多数のスクリーニングを行うことで、免疫原性およびADCC/CDC機能における性能が最も優れる抗TNF-αヒト化モノクローナル抗体の重鎖を得ており、その全長配列は配列番号4が示すとおりであるか、または、配列番号4が示すアミノ酸配列の1つまたは複数のアミノ酸の置換、欠失または挿入により得られる同じ機能を有するポリペプチドのアミノ酸配列である。
【0017】
本発明において、上記「1つまたは複数のアミノ酸の置換、欠失または挿入により得られる同じ機能を有するタンパク質のアミノ酸配列」とは、1つまたは複数のアミノ酸残基が、示されている配列と異なるが、得られる分子の生物学的活性が保持された配列を意味し、配列番号4が示すアミノ酸配列の重鎖の全長を有する「保存的に修飾された変異体」、または「保存的アミノ酸置換」により改変されたものであってもよく、「保存的に修飾された変異体」または「保存的アミノ酸置換」は、当業者にとって既知のアミノ酸置換を指し、このような置換を行う場合、通常、得られる分子の生物学的活性は変化しない。一般的に言えば、当業者は、ポリペプチドの非必須領域における単一のアミノ酸置換が生物学的活性を実質的に変化させないことを認識している。例示的な置換は、好ましくは、表1に示される置換に従って実施する。
【表1】
【0018】
上記配列、例えば、配列番号4が示す配列の重鎖は、改変または非改変のCertolizumabモノクローナル抗体の軽鎖と組み合わせることができ、PEG化されていないCertolizumabモノクローナル抗体のADCC/CDC機能を効果的に低下させるとともに、比較的低い免疫原性を有する。
【0019】
上記の軽鎖および重鎖の全長配列を有するモノクローナル抗体をスクリーニングすることにより、本発明は、最も優れる軽鎖および重鎖の全長の組み合わせから構成されるヒトTNF-αモノクローナル抗体TCX060を得ており、その重鎖の全長アミノ酸配列は配列番号4が示すとおりであり、軽鎖の全長アミノ酸配列は配列番号1が示すとおりであり、当該モノクローナル抗体は、Certolizumab抗体の抗原との結合部位を保留しており、Certolizumab抗体と近い発現量を有し、また、ヒトTNF-αとの結合親和性がCertolizumab抗体と近似しており、TNF-αと細胞表面のTNF受容体p55およびp75との結合を特異的に遮断できる。そのADCC/CDC機能はPEG化されたCertolizumab抗体と近似しているが、Certolizumab抗体と比較して、当該モノクローナル抗体はより低い免疫原性を有する。
【0020】
本発明の第2の目的は、抗TNF-αヒト化モノクローナル抗体TCX060をコードする遺伝子を提供することである。
【0021】
抗TNF-αヒト化モノクローナル抗体TCX060をコードする遺伝子は、本発明で提供される抗TNF-αヒト化モノクローナル抗体の重鎖または軽鎖をコードする任意の核酸を含み、コドンの縮退によれば、任意の宿主のコドンバイアスに従ってコドン最適化を行うことにより得られた、前記軽鎖および重鎖の全長アミノ酸配列をコードする核酸であってもよい。
【0022】
好ましくは、前述の遺伝子において、重鎖の全長をコードするヌクレオチド配列は、配列番号5が示すとおりであり、軽鎖の全長をコードするヌクレオチド配列は、配列番号6が示すとおりである。
【0023】
本発明の第3の目的は、前記抗TNF-αヒト化モノクローナル抗体TCX060をコードする遺伝子を含む生物学的材料を提供することである。
【0024】
前記生物学的材料は、発現カセット、ベクター、宿主細胞、人工細菌または細胞株を含む。
【0025】
本発明の第4の目的は、前記重鎖の全長および軽鎖の全長をコードする遺伝子を発現することにより実現される、前記抗TNF-αヒト化モノクローナル抗体TCX060の調製方法を提供することである。
【0026】
本発明の一実施形態として、前記抗TNF-αヒト化モノクローナル抗体TCX060の調製方法は、以下のステップを含む。
(1)前記抗TNF-αヒト化モノクローナル抗体の重鎖の全長遺伝子と軽鎖の全長遺伝子を合成する。
(2)上記の合成遺伝子を発現ベクターに接続する。
(3)上記の抗TNF-αヒト化モノクローナル抗体の重鎖の全長遺伝子および軽鎖の全長遺伝子が接続された発現ベクターを形質転換法により宿主細胞に導入する。
(4)前記抗TNF-αヒト化モノクローナル抗体を安定して発現する宿主細胞をスクリーニングし、前記宿主細胞を培養して、抗TNF-αヒト化モノクローナル抗体を発現させる。
(5)抽出および精製して、抗TNF-αヒト化モノクローナル抗体を得る。
【0027】
本発明の第5の目的は、ヒトTNF-αを標的とする医薬品の調製における、前記抗TNF-αヒト化モノクローナル抗体TCX060、前記抗TNF-αヒト化モノクローナル抗体TCX060をコードする遺伝子、または前記遺伝子を含む生物学的材料の使用を提供する。
【0028】
好ましくは、前記ヒトTNF-αを標的とする医薬品は、腫瘍、炎症または自己免疫疾患を予防または治療するための医薬品である。
【0029】
前記疾患は、クローン病、関節リウマチ、乾癬性関節炎、活動性強直性脊椎炎などを含むが、これらに限定されない。
【0030】
本発明の第6の目的は、ヒトTNF-α検出試薬の調製における、前記抗TNF-αヒト化モノクローナル抗体TCX060、前記抗TNF-αヒト化モノクローナル抗体TCX060をコードする遺伝子、または前記遺伝子を含む生物学的材料の使用を提供することである。
【0031】
本発明の第7の目的は、前記抗TNF-αヒト化モノクローナル抗体TCX060を含む医薬品または検出試薬を提供することである。
【0032】
前記抗TNF-αヒト化モノクローナル抗体TCX060を含む前記医薬品はまた、他の薬学的に許容される有効成分または賦形剤を含んでもよい。
【0033】
本発明の有益な効果は下記のとおりである。
【0034】
本発明では、セルトリズマブモノクローナル抗体に基づき、人工的改変により抗TNF-αヒト化モノクローナル抗体を得ており、本発明で提供されるヒト化抗TNF-αモノクローナル抗体は、セルトリズマブモノクローナル抗体と同じTNF-α抗原への結合部位を有するが、その抗体のコンフォメーションおよび免疫原性などの性質はセルトリズマブと異なる。本発明で提供されるヒト化抗TNF-αモノクローナル抗体TCX060は、セルトリズマブモノクローナル抗体の抗原に対する親和性および特異性を保持しており、それにより媒介されるADCC/CDC機能は、PEG化されたセルトリズマブモノクローナル抗体と近似しているが、その免疫原性はセルトリズマブより著しく低くなっている。同時に、本発明で提供されるヒト化抗TNF-αモノクローナル抗体の製造プロセスは、より簡易である。より低い免疫原性は、体内での抗体の免疫原性によって引き起こされる免疫反応による医薬品の副作用のリスクを低減させるとともに、免疫原性の低下により、本発明で提供されるヒト化抗TNF-αモノクローナル抗体から調製される抗体医薬品の体内での半減期が延長され、抗体医薬品ADAによる薬効の低下が大幅に回避される一方で、抗体医薬品の使用量を減らして治療費を削減することができる。さらに、抗TNF-αモノクローナル抗体医薬品と免疫抑制剤との併用モードを回避し、抗TNF-αモノクローナル抗体医薬品の単回投与の効果を実現し、免疫抑制剤との併用による副作用を排除して、医薬品の使用の安全性を向上させることができる。本発明で提供されるヒト化抗TNF-αモノクローナル抗体TCX060は、極めて大きな応用の可能性および価値を有し、理想的な生物学的標的治療用抗体として期待されている。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明の実施例2のセルトリズマブモノクローナル抗体をコードする遺伝子および本発明で提供されるH2L0モノクローナル抗体をコードする遺伝子の、発現ベクターの二重消化の電気泳動の結果を示す図である。そのうち、aはセルトリズマブモノクローナル抗体の軽鎖L0プラスミドのHind IIIおよびEcoRIによる二重消化の結果であり、左から右へのレーンはそれぞれ、消化前のプラスミド、消化後のプラスミドおよびDNAマーカーであり、bは、本発明で提供されるモノクローナル抗体TCX060の重鎖H2プラスミドのHind IIIおよびEcoRIによる二重消化の結果であり、左から右へのレーンはそれぞれ、消化前のプラスミド、消化後のプラスミド、およびDNAマーカーである。
【
図2】本発明の実施例4におけるモノクローナル抗体TCX060のSDS-PAGE電気泳動図である。左から右へのレーンは順に、発現が見られた培養上清、マーカー、および精製された抗体である。
【
図3】本発明の実施例5におけるモノクローナル抗体TCX060の親和性EC
50を示す図である。そのうち、H2L0は、TCX060を表す。
【
図4】本発明の実施例5におけるモノクローナル抗体TCX060のTNF-αが媒介する細胞毒性実験の結果を示す。そのうち、Adalimumabはアダリムマブの先発医薬品を表し、Certolizumabはセルトリズマブの先発医薬品を表し、H2L0は本発明の抗体であるTCX060 H2L0を表す。
【
図5】本発明の実施例6におけるモノクローナル抗体TCX060のマウスADA評価の結果を示す図である。そのうち、Certolizumab Day 0、Certolizumab Day 7、Certolizumab Day 14はそれぞれ、セルトリズマブの先発医薬品の免疫前、免疫後の7日目および免疫後の14日目の血清サンプルを表し、H2L0 Day 0、H2L0 Day 7、H2L0 Day 14はそれぞれ、本発明の抗体医薬品TCX060 H2L0の免疫前、免疫後の7日目および免疫後の14日目の血清サンプルを表す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、実施例を組み合わせて、本発明の好ましい実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施例は、説明のために例示されたものであり、本発明の範囲を限定するためのものではないことを理解されたい。当業者は、本発明の趣旨および本質から逸脱しない限り、本発明に対して様々な修正および置換を行うことができる。
【0037】
特に断りがない限り、下記の実施例で使用される実験方法は、いずれも常法である。
【0038】
特に断りがない限り、下記の実施例で使用される材料、試薬などは、いずれも商業ルートから入手できる。
【0039】
実施例1 免疫原性が低減された低ADCC/CDC機能のCertolizumabモノクローナル抗体の分析と設計
本発明では、セルトリズマブモノクローナル抗体の元の配列を、商業化されたDNAStarTMソフトウェアで分析・評価したところ、セルトリズマブモノクローナル抗体の先発医薬品の配列の免疫原性が非常に低いことを示すことが明らかとなった。このことから、ADCC/CDC機能を除去するために、セルトリズマブモノクローナル抗体の先発医薬品に対してPEG化を行った後、抗体の多量体が増加し、その結果、薬物のADAが23%にも達していると推測される。したがって、セルトリズマブモノクローナル抗体の先発医薬品のPEG修飾を除去しながら、そのADCC/CDC機能を低下させる必要がある。元のセルトリズマブの軽鎖の全長および重鎖の可変領域のアミノ酸配列はそれぞれ、配列番号1および配列番号2が示すとおりである。
【0040】
まず、セルトリズマブモノクローナル抗体の先発医薬品からPEG修飾を除去し、ヒトIgG1サブタイプの完全抗体への改変を行い、これに基づき、得られたヒトIgG1サブタイプの完全抗体の可変領域と定常領域との間で比較的柔軟な領域を探し、柔軟な領域に柔軟なアミノ酸配列を挿入することにより、抗体の可変領域が抗原に結合した後に生じるメカニカルストレスの伝達を遮断し、抗体の重鎖の定常領域とFc受容体および/または補体との結合部位を十分に露出させず、抗体と、NK細胞、マクロファージ、および好中球などのIgG Fc受容体を発現するキラー細胞との結合、または、補体との結合を弱め、ADCCとCDCを誘導できないようにするか、又はADCCとCDCを誘導するシグナルを低減した。Pymolソフトウェアによる分析により、上記のセルトリズマブのヒトIgG1サブタイプの完全抗体の重鎖CDR3領域とCH2領域との間に柔軟なアミノ酸配列を挿入すると、抗体が抗原に結合した後の抗体の可変領域と定常領域との間のストレスの伝達をよりよく遮断し、ADCC/CDC機能を低下させながら、抗体の多量体の形成を有意に増加させないことができると確認した。大量の配列分析、構造のシミュレーション・予測により、重鎖配列が配列番号3が示すとおりであるセルトリズマブのヒトIgG1サブタイプの完全抗体を確定し、配列番号3が示す配列の237番目のアミノ酸と238番目のアミノ酸の間に、柔軟なアミノ酸配列GGGSを挿入することで、改変後のヒトIgG1サブタイプの完全抗体の重鎖H2が得られ、その配列が配列番号4が示すとおりであると確定した。異なる軽鎖と重鎖を組み合わせることにより得られるモノクローナル抗体の全体的な性能を初歩的に評価することで、最終的に、軽鎖L0(セルトリズマブの元の軽鎖配列、配列番号1)と重鎖H2(配列番号4)からなる抗TNF-αヒト化モノクローナル抗体H2L0を得た。当該モノクローナル抗体をTCX060と命名した。
【0041】
実施例2 抗TNF-αヒト化モノクローナル抗体TCX060の発現ベクターの構築
実施例1で得られた抗TNF-α完全ヒト化モノクローナル抗体H2L0の重鎖および軽鎖の全長アミノ酸配列、ならびに宿主のコドンバイアスに基づき、重鎖H2および軽鎖L0をコードするヌクレオチド配列を設計し(そのうち、L0のヌクレオチド配列は配列番号6が示すとおりであり、H2のヌクレオチド配列は配列番号5が示すとおりである)、軽鎖配列の両側の酵素切断部位をHindIII+EcoRIとし、重鎖配列の両側の酵素切断部位をHindIII+EcoRIとし、酵素切断部位を有する重鎖の全長配列および軽鎖の全長配列をGENEWIZ,Inc.に送り、全遺伝子配列を合成してもらい、合成に使用された接続ベクターはpUC57である。pEE12.4(重鎖発現用)とpEE6.4(軽鎖発現用)を発現ベクターとし、上記の発現ベクターと合成された遺伝子配列に対してそれぞれ対応する二重消化を行い、消化により得られた標的遺伝子と発現ベクターをそれぞれアガロースゲル電気泳動により分離してから、ターゲットバンドを切り取り、Qiagen Gel Extraction Kitで回収し、T4 DNAリガーゼシステムに従って16℃で一晩連結させた後、大腸菌DH5αを形質転換し、得られた形質転換体に対してPCR、プラスミド抽出および配列決定を行い、重鎖H2と軽鎖L0の全長遺伝子をそれぞれ有する発現ベクターを得た。セルトリズマブの先発医薬品を対照とし、セルトリズマブの先発医薬品の重鎖H0(配列番号2が示す配列)を有するpEE12.4発現ベクターを構築し、構築方法は重鎖H2の発現ベクターと同じであった。
【0042】
上記の重鎖および軽鎖の全長遺伝子を有する発現ベクターの二重消化の電気泳動の結果を
図1に示す。
【0043】
実施例3 抗TNF-αヒト化モノクローナル抗体TCX060の一過性発現
実施例2で得られた、重鎖H2、H0および軽鎖L0の全長遺伝子をそれぞれ有する大腸菌DH5α株を培養し、培養物を回収して、Qiagen UltraPureプラスミドDNA精製キットで、重鎖と軽鎖の全長遺伝子を有する発現ベクターを抽出・精製した。上記の精製されたプラスミドDNAは、Invitrogen社のリポソーム法キットを使用して293F細胞にトランスフェクションし、トランスフェクションの方法はキットの説明書を参照した。
【0044】
トランスフェクションにより得られた陽性細胞で抗体を発現させ、重鎖と軽鎖の組み合わせがH2L0であるモノクローナル抗体TCX060の発現量を表2に示す。
【表2】
【0045】
上記の発現により得られた抗体H2L0に対して、TNF-αをプレコーティングする実験を行い、モノクローナル抗体H2L0をTNF-αでプレーコーティングされた96ウェルプレートに添加し、間接ELISAにより、分泌された抗体のTNF-αとの結合活性を初歩的に評価した。試験結果を表3に示す。NCは陰性対照としての抗体希釈液である。
【表3】
【0046】
表3の結果は、H2L0の組み合わせに対応するモノクローナル抗体TCX060が発現していることを示しており、表3の結果は、モノクローナル抗体TCX060がTNF-αを識別できることを表している。
【0047】
実施例4 抗TNF-αヒト化モノクローナル抗体TCX060の発現および精製
実施例3の検出結果に基づき、重鎖と軽鎖の組み合わせがH2L0であるモノクローナル抗体TCX060の発現ベクターに対して、安定的遺伝子導入を行った。
【0048】
一過性トランスフェクション法により293F細胞をトランスフェクションし、珠海ガイ瑞社の293培地とトランスフェクション試薬を使用して、トランスフェクション後の7日目に細胞培養上清を回収した。
【0049】
モノクローナル抗体TCX060(H2L0の組み合わせ)とセルトリズマブモノクローナル抗体の先発医薬品(H0L0)の培養上清を直接分離し、GE社のMabSelect Sure LXを使用して精製を行った。実験プロセスの詳細については、UCB社の説明書を参照した。UV分光光度計を用いて精製された製品に対して定量検出を行い、計算式は下記のとおりである。
濃度計算:収集した溶出ピークのOD280を読み取った後、濃度を計算する。抗体濃度=OD280/1.4。
【0050】
抗体精製後、検証のため、SDS-PAGe電気泳動を行い、結果を
図2に示す。電気泳動の結果は、精製された抗体の純度が80%以上であり、かつ、バンドが比較的単一で、濃度が同等であり、後の実験に使用できることを示した。
【0051】
実施例5 抗TNF-αヒト化モノクローナル抗体TCX060の生物学的活性の測定
1.親和性評価
本実施例では、間接ELISAにより、抗体のEC50を測定し、抗体の親和性を評価した。
【0052】
実験方法は下記のとおりである。PBSで抗原であるTNF-α(Nearshore Technology Co.,Ltd.から購入)を1μg/mlに希釈し、希釈された抗原を100μl/ウェルで96ウェルプレートに加え、蓋をし、4℃で一晩おいた。ウェル内の液体を振り棄て、PBSで、200μl/ウェルで3回洗浄し、軽くたたいて乾燥させた。5%ミルク-PBSを200μl/ウェルで1時間密封し、15分ごとに軽く叩いた。ウェル内の液体を振り棄て、PBSで、200μl/ウェルで1回洗浄し、軽くたたいて乾燥させた。精製された抗体を0~10μg/mlの濃度勾配で加え(抗体名については表4を参照してください)、5%ミルク-PBSを100μl/ウェルで希釈し、1時間インキュベートし、15分ごとに軽くたたいた。ウェル内の液体を振り棄て、PBSで200μl/ウェルで3回洗浄し、軽くたたいて乾燥させた。二次抗体を加え、5%ミルク-PBSで、100μl/ウェルで希釈し、1時間インキュベートし、15分ごとに軽くたたいた。TMB基質を室温で予熱しながら、マイクロプレートリーダーを起動して予熱した。PBSで、250μl/ウェルで5回洗浄し、最初の3回は5分間、後の2回は10分間洗浄し、軽くたたいて乾燥させた。TMB基質A、Bをそれぞれ50μl/ウェルで加え、室温で20分間発色させ、スキャナーを使用して写真をスキャンして記録し、50μl/ウェルの停止液を加え、マイクロプレートリーダーを使用してOD
450を読み取った。実験データを表4と
図3に示す。
【表4】
【0053】
上記の結果は、モノクローナル抗体TCX060のヒトTNF-αに対する親和性が、セルトリズマブの先発医薬品のヒトTNF-αに対する親和性よりわずかに高いことを示した。
【0054】
2.細胞毒性実験
CCK-8キットを用いて、マウス線維芽細胞株L929に対してアポトーシスの検出を行った。具体的な手順は下記のとおりである。
【0055】
100μlの3倍に段階希釈されたモノクローナル抗体(10%FBS含有RPMI-1640培地で希釈)を96ウェルプレートに加え(モノクローナル抗体TCX060の添加濃度は、FDAに記載されたセルトリズマブに関する当該実験のIC50に準拠して、上下3~5段階の濃度をそれぞれ設定した)、その後、最終濃度が500pg/mlとなるよう、50μlのrhTNF-α(10%FBS含有RPMI-1640培地で希釈)を添加し、室温で30分間インキュベートした。最終濃度1μg/mlのアクチノマイシン-Dを含む50μlのL929細胞を5×104/ウェルで各ウェルに加えた。37℃のインキュベーターで一晩インキュベートした(18~24時間)。対照には、陰性対照と陽性対照が含まれ、陰性対照ではRPMI-1640と細胞のみを加え、陽性対照ではrhTNFαと細胞のみを加え、前記rhTNFαは2ng/mlから8.2pg/mlまでの濃度勾配で加えた。各ウェルに20μLのCCK8溶液を加え(ODの読み取りに影響を与えないように、ウェル内に気泡が発生しないように注意)、培養プレートを37℃のインキュベーターで1~4時間インキュベートした。マイクロプレートリーダーで450nmの吸光度を測定した。OD値を一時的に測定しない場合、各ウェルに10μLの0.1M HCl溶液または1%w/v SDS溶液を加え、培養プレートに蓋をし、室温条件で暗所にて保存すればよい。24時間以内に測定すれば、吸光度は変化しない。
【0056】
さまざまな濃度での抗体の細胞死滅率とIC50を計算した。
計算式:(モノクローナル抗体TCX060処理細胞-TNF-α処理細胞)/TNF-α処理細胞×100%。
【0057】
実験結果を
図4に示す。IC50データを表5に示す。TCX060(H2L0)のIC50は、アダリムマブの先発医薬品と同等であり、TCX060(H2L0)のIC50はセルトリズマブよりも低くなっている。
【表5】
【0058】
実施例6 抗TNF-αヒト化モノクローナル抗体TCX060の免疫原性の評価
マウスの体内で抗TNF-αヒト化モノクローナル抗体TCX060の免疫実験を行い、TCX060の免疫原性を解析した。詳細は下記のとおりである。
(1)基本免疫:TCX060(H2L0)、セルトズマブの先発医薬品およびフロイント完全アジュバントを同体積で混合して完全に乳化し、注射箇所を分け、Balb/cマウス1匹あたりの1回の注射量を70μgとして、皮下注射した。
(2)追加免疫:追加免疫では、抗原とフロイント不完全アジュバントのエマルジョンを使用した。
【0059】
上記の実験が完了した後、ELISA検出試験を行った。実験方法は下記のとおりである。
【0060】
PBSでTCX060(H2L0)またはセルトリズマブの先発医薬品を1μg/mlに希釈し、希釈された抗原を100μl/ウェルで96ウェルプレートに加え、蓋をし、4℃で一晩おいた。ウェル内の液体を振り棄て、PBSで、200μl/ウェルで3回洗浄し、軽くたたいて乾燥させた。5%ミルク-PBSを200μl/ウェルで1時間密封し、15分ごとに軽く叩いた。ウェル内の液体を振り棄て、PBSで、200μl/ウェルで1回洗浄し、軽くたたいて乾燥させた。免疫後の異なる日数で異なる希釈比(1:500/1:1000/1:5000/1:10000/1:50000)の血清サンプルを加え、5%ミルク-PBSで、100μl/ウェルで希釈し、1時間インキュベートして、15分ごとに軽くたたいた。ウェル内の液体を振り棄て、PBSで、200μl/ウェルで3回洗浄し、軽くたたいて乾燥させた。二次抗体を加え、5%ミルク-PBSで、100μl/ウェルで希釈し、1時間インキュベートして、15分ごとに軽くたたいた。TMB基質を室温で予熱しながら、マイクロプレートリーダーを起動して予熱した。PBSで、250μl/ウェルで5回洗浄し、最初の3回は5分間、後の2回は10分間洗浄し、軽くたたいて乾燥させた。TMB基質A、Bをそれぞれ50μl/ウェルで加え、室温で20分間発色させ、スキャナーを使用して写真をスキャンして記録し、50μl/ウェルの停止液を加え、マイクロプレートリーダーを使用してOD450を読み取った。
【0061】
結果を
図5に示す。結果として、本発明の抗TNF-αヒト化モノクローナル抗体TCX060 H2L0がセルトリズマブモノクローナル抗体と比較して、血清における抗体の感染価が有意に低下したことを表した。したがって、H2L0の免疫原性はセルトリズマブモノクローナル抗体と比較して、効果的に低下した。
【0062】
上記において、一般的な説明及び具体的な実施形態で本発明を詳しく説明したが、本発明に基づき、いくつかの補正や改善を行い得ることは、当業者にとって明らかである。従って、本発明の趣旨から逸脱しない範疇で行われるこれらの補正や改善は、いずれも本発明の保護しようとする範囲に属する。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、低免疫原性かつ低ADCC/CDC機能の抗TNF-αヒト化モノクローナル抗体TCX060およびその使用を提供する。本発明で提供される抗TNF-αヒト化モノクローナル抗体TCX060は、セルトリズマブモノクローナル抗体を下記のように改変することによって得られるものである:(1)PEG修飾を除去する;(2)ヒトIgG1サブタイプの全長抗体に改変する;(3)CDR3領域とCH2領域との間に柔軟なアミノ酸フラグメントを挿入する。TCX060は、ヒトTNF-αとの結合親和性がセルトリズマブと近似しており、TNF-αと細胞表面のTNF受容体との結合を特異的に遮断でき、そのADCC/CDC機能はPEG化セルトリズマブモノクローナル抗体と近似しているが、免疫原性はセルトリズマブモノクローナル抗体より顕著に低くなっており、ADCC/CDC機能を除去するとともに、抗体が体内で免疫原性を引き起こすリスクを低減でき、良好な経済的価値と使用の見通しを有する。
【配列表】