(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-20
(45)【発行日】2023-06-28
(54)【発明の名称】真空コーティングデバイス
(51)【国際特許分類】
C23C 14/24 20060101AFI20230621BHJP
【FI】
C23C14/24 A
(21)【出願番号】P 2022519382
(86)(22)【出願日】2020-09-25
(86)【国際出願番号】 CN2020117881
(87)【国際公開番号】W WO2021057920
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-05-20
(31)【優先権主張番号】201910915430.9
(32)【優先日】2019-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】514216801
【氏名又は名称】バオシャン アイアン アンド スティール カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100170184
【氏名又は名称】北脇 大
(72)【発明者】
【氏名】レン、サンビン
(72)【発明者】
【氏名】ファン、ジュンフェイ
(72)【発明者】
【氏名】リ、シャンチン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、チュンウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ジン、シャオリ
【審査官】山本 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-70679(JP,A)
【文献】特開2010-013731(JP,A)
【文献】国際公開第2013/122058(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空コーティングデバイスであって、当該真空コーティングデバイスは:
るつぼを有し;
前記るつぼの周囲に提供された誘導ヒーターを有し;
蒸気パイプを介して前記るつぼの頂部に接続された流れ分配ボックスを有し、
前記流れ分配ボックスは、水平圧力安定プレートを内部に備え、前記流れ分配ボックスは、ノズルと頂部で接続され、前記蒸気パイプは圧力調整バルブを備え;
前記圧力安定化プレートは多孔構造を有し、前記圧力安定化プレートの下面は水平流れ抑制プレートに接続され、かつ、前記流れ抑制プレートの側と前記流れ分配ボックスの内壁との間には空間が形成され;
前記流れ分配ボックスおよび前記蒸気パイプが接続される接合部と前記圧力安定化プレートの下面との間には噴射緩和領域が形成され、かつ、前記圧力安定化プレートの上面と前記流れ分配ボックスおよび前記ノズルが接続される接合部との間には噴射加速領域が形成される、
前記真空コーティングデバイス。
【請求項2】
前記圧力安定化プレートがT字形状部分を有し、前記圧力安定化プレートの水平方向に沿う端部が前記流れ分配ボックスの内壁に接続され、かつ、前記圧力安定化プレートの鉛直方向に沿う端部が前記流れ抑制プレートに接続される、請求項1に記載の真空コーティングデバイス。
【請求項3】
前記流れ抑制プレートが長方形であり、前記流れ抑制プレートの一対の対辺と前記流れ分配ボックスの内壁との間の間隔Dが0.1~5mmである、請求項2に記載の真空コーティングデバイス。
【請求項4】
前記噴射加速領域の容量V2に対する前記噴射緩和領域の容量V1の比が1~5である、請求項1に記載の真空コーティングデバイス。
【請求項5】
前記圧力安定化プレートにおける孔が、長方形、円または三角形の形状であり、かつ、直線、曲線方向に走るか、または、多層構造を有する、請求項1に記載の真空コーティングデバイス。
【請求項6】
前記ノズルがノズル出口を有し、前記ノズル出口の面積S
出口に対する前記圧力安定化プレート上の孔の総面積S
孔の比が0.1以上であり、すなわち、
S
孔/S
出口≧0.1である、
請求項5に記載の真空コーティングデバイス。
【請求項7】
前記ノズル出口がスリット状または多孔のものであり、かつ、前記蒸気パイプと前記るつぼの頂部との間の接合部の面積S
入口に対する前記ノズル出口の面積S
出口の比が0.05~5である、請求項6に記載の真空コーティングデバイス。
【請求項8】
前記ノズル出口が直線状スリットまたは曲線状スリットのものである、請求項7に記載の真空コーティングデバイス。
【請求項9】
前記流れ分配ボックスの内壁の長さに対する前記流れ抑制プレートの他方の一対の対辺間の間隔の比が0.1~0.4である、請求項3に記載のコーティングデバイス。
【請求項10】
前記ノズルが、グラファイト、セラミックまたは金属製である、請求項7に記載の真空コーティングデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は真空コーティング分野に関し、かつ、とりわけ真空コーティングデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
背景
物理蒸着(PVD)とは、真空下でコーティングされる金属を加熱して、基材上に気体状の様式で金属を堆積させてコーティングを形成する加工技術のことをいう。PVDは、加熱方法によって電気加熱PVD(抵抗タイプまたは誘導タイプ)、電子ビーム加熱PVD(EBPVD)、および、その他の方式に分類され得る。表面修飾およびコーティング加工として、電子工学、ガラス、プラスチック、および、その他の産業において、真空コーティングが広く用いられてきた。真空コーティング技術の主たる利点としては、環境保護、良好なコーティング性能およびコーティング材料の多様性が挙げられる。連続帯鋼に真空コーティング技術を適用するための鍵としては、連続的であり、領域が広く、高速であり、かつ、大規模のコーティング製造のようないくつかの態様が挙げられる。1980年代以来、世界の主要な鉄鋼会社は、この技術について多くの研究を実行してきた。溶融亜鉛メッキおよび電気亜鉛メッキ技術の成熟とともに、この技術は、これまでにない注目を集めてきており、かつ、革新的な表面コーティング加工であると考えられている。
【0003】
真空コーティング加工において鍵となる問題は、どのようにノズルの配置構成を通して一貫した厚さを有する均一なコーティングを得るかである。現在、外国の公開された情報は主として、次の態様を含む。
【0004】
1)蒸発るつぼ、および、流れ分配ノズルの一体構造
出願BE1009321A6およびBE1009317A61は各々、
図1および
図2に示されているようなるつぼノズル構造を開示している。
図1の構造では、るつぼ1の上部に上蓋2が配置され、上蓋2と炉壁との間に、蒸発した金属の直接噴霧のためのノズル構造が形成されるようになっている。
図2の構造では、蒸発るつぼにフィルタープレート3が追加的に配置され、かつ、そのときには頂部におけるスリットノズルから金属蒸気が噴霧される。2つのデバイスのノズル設計工程では、一方はドラバルノズルを採用し、かつ、他方は先細ノズルを採用する。ノズルの配向に関しては、一方は横方向噴霧を採用し、かつ、他方は鉛直方向噴霧を採用する。
【0005】
出願JPS59177370AおよびUS4552092Aもまた、関連する蒸発るつぼおよびノズル構造を開示している。
図3は、溶融金属の自動補充を伴う、るつぼノズル構造を示している。ノズル4が幅の広い出口を用い、かつ、るつぼの上部にはるつぼを加熱するためのヒーター5もまた配置される。
図4に示されているるつぼノズル構造では、該構造は一方の側でアーク6によって広げられ、横方向噴霧を実現し;かつ、るつぼ壁の周囲には、周面を加熱するための加熱チューブ7もまた配置される。
【0006】
2)蒸発るつぼ、および、流れ分配ノズルの分割構造
出願WO2018/020311A1は、分割るつぼノズル構造を開示している。
図5に示されているように、該デバイスでは、るつぼの底が溶融金属供給タンク8に接続され、かつ、供給タンク8の上部が、分割パイプライン9を通して前端にて管状分配器および蒸気ノズルへと金属蒸気を搬送し;かつ、その後、ノズルが高速で金属板に金属蒸気を噴霧する。
【0007】
出願CN103249860Aは、流れ分配器およびノズルの分割構造を開示している。
図6に示されているように、鉛直方向パイプを通して上部水平パイプ10の中へと蒸気が送達される。水平パイプ10は、頂部に多孔ノズルを備え、金属板の表面上に金属蒸気を均一に噴霧する。
【0008】
出願CN101175866Aは、金属蒸気流れ分配器およびノズル形態を開示している。
図7に示されているようなノズルの断面形状については、流れ分配器パイプ11の外側にワイヤーが巻かれてパイプを加熱し;かつ、ノズルは正方形シェルを有する。
図8に示されているように、別の材料製のリング状パイプが、正方形シェル12の内部に入れ子になり、かつ、金属蒸気を噴霧するために用いられる。ノズルの蒸気出口は、多孔である。
【0009】
上記出願はすべて、ノズルの特定の形態に関する。しかしながら、これらのノズルがすべて、十分に均一なコーティングを達成し得るわけではない。例えば、
図6および
図7に示されているように、ノズルの小さい孔が離間した丸孔であるので、高圧ガスが小さい孔に沿って噴霧された後には、放射状の丸いスポットが形成される。鋼板の移動工程では、丸いスポットが互いに重複していなければ、長い帯状のコーティングを形成することは非常に容易である。他方、丸いスポットが互いに近過ぎると、丸いスポットの重複部分が容易にいっそう厚いコーティングを形成する一方で、非重複部分がいっそう薄いコーティングを形成し、このことは鋼板の平らでないコーティングをもたらす。しかしながら、鋼板表面上のコーティングの均一性は、曲げ、および、スタンピングのような鋼板の後に続く使用に重要な役割を果たす。
【発明の概要】
【0010】
概要
先行技術における上記の欠点を解決するために、本発明は、均一な噴射蒸気を形成し得る真空コーティングデバイスを提供することを目的とする。高温の蒸気が低温の鋼板に達したときに、鋼板表面上に均一なコーティングが形成され得る。
【0011】
前記の目的を達成するために、本発明は以下の技術的解決策を提供する。
【0012】
真空コーティングデバイスであって、当該真空コーティングデバイスは:るつぼを有し;るつぼの周囲に提供された誘導ヒーターを有し;蒸気パイプを介して前記るつぼの頂部に接続された流れ分配ボックスを有し、前記流れ分配ボックスは水平圧力安定化プレートを内部に備え、前記流れ分配ボックスはノズルと頂部で接続され、前記蒸気パイプは圧力調整バルブを備える。
【0013】
前記圧力安定化プレートは、多孔構造を有する。当該真空デバイスは流れ抑制プレートをさらに有し、該流れ抑制プレートは前記圧力安定化プレートの下面に接続される。前記流れ抑制プレートはまた、水平であるように設定され、かつ、前記流れ抑制プレートの側と前記流れ分配ボックスの内壁との間には空間が形成される。
【0014】
前記流れ分配ボックスおよび前記蒸気パイプが接続される接合部と前記圧力安定化プレートの下面との間には噴射緩和領域が形成され、かつ、前記圧力安定化プレートの上面と前記流れ分配ボックスおよび前記ノズルが接続される接合部との間には噴射加速領域が形成される。
【0015】
蒸気パイプから吐出された金属蒸気は主として圧力安定化プレートの中央領域に集中するので、吐出された蒸気は鋼板上に等しく分配され得ない。上記の技術的解決策を採用することによって、圧力安定化プレートの直下に集中した蒸気は、圧力安定化プレートの下面に取り付けられた流れ抑制プレートによって圧力安定化プレートの縁領域へと回されて、蒸気パイプの出口を塞ぐ。その後、蒸気は噴射緩和領域において再分配され、かつ、圧力安定化プレートの孔を通して噴射加速領域へと均一に吐出される。噴射加速領域における蒸気はさらに、金属蒸気が鋼板の幅方向に吐出され、かつ、該板を覆うように等しく分配されるように、ノズルを通る噴射経路を定める。
【0016】
圧力安定化プレートはT字形状部分を有し、前記圧力安定化プレートの水平方向に沿う端部が前記流れ分配ボックスの内壁に接続され、前記圧力安定化プレートの鉛直方向に沿う端部が前記流れ抑制プレートに接続される。圧力安定化プレートおよび流れ抑制プレートは、前記圧力安定化プレートの鉛直方向に沿う端部が流れ抑制プレートの中央に接続される限り(すなわち、圧力安定化プレートの頂部が水平方向に沿って延び、かつ、その底が流れ抑制プレートに接続される限り)、一体的に形成され得、または、別個に形成され得る。この技術的解決策では、圧力安定化プレートおよび流れ抑制プレートの長手方向部分はI字形状であり、それらは構造が単純であり、かつ、製造が容易である。
【0017】
さらに、流れ抑制プレートは、それが蒸気パイプから流れ分配ボックスの中へと蒸気を再分配し得る限り、長方形、円形、三角形、台形などの種々の形状であり得る。
【0018】
本願の技術的解決策のうちの1つでは、流れ抑制プレートは長方形であり、前記流れ抑制プレートの一対の対辺と前記流れ分配ボックスの内壁との間の間隔Dが0.1~5mmである。例えば、この技術的解決策では、圧力安定化プレートの4つの側壁が流れ分配ボックスの内壁に接続され、かつ、圧力安定化プレートより下に配置された流れ抑制プレートは、流れ分配ボックスの内壁に接続されない。流れ抑制プレートは長方形であり、流れ抑制プレートの一対の対辺(幅方向に
図9に示されている流れ抑制プレートの対辺)と前記流れ分配ボックスの内壁との間の間隔Dが0.1~5mmである。該間隔が0.1mmより小さければ、それは抵抗材料の組立困難性を増大させるであろうし、かつ、蒸気が通過することを可能にする役割を果たさないであろう。該間隔が5mmより大きければ、蒸気は未だに圧力安定化プレートの中央に集まり過ぎ(≧60%)、かつ、両側で少な過ぎるであろうし、このことは蒸気の均一な分配を達成し得ない。流れ分配ボックス内壁の長さに対する流れ抑制プレートの他方の一対の対辺間の間隔(または流れ抑制プレートの長さ)の比は、0.1~0.4である。該比が0.1より小さければ、流れ抑制プレートが小さ過ぎ、かつ、その側の蒸気が大き過ぎる一方で、該比が0.4より大きければ、中央領域における蒸気分配が小さ過ぎる。
【0019】
さらに、噴射加速領域の容量V2に対する噴射緩和領域の容量V1の比は、1~5である。V2に対するV1の比が1より小さければ、噴射緩和領域における蒸気分配が適切ではなく、かつ、噴射加速領域における有効利用面積が減少する。V2に対するV1の比が大き過ぎれば(例えば、該比が5より大きければ)、噴射加速領域における蒸気の速度が減少し、不十分な蒸気加速をもたらす。
【0020】
圧力安定化プレートにおける孔は、形状が長方形、円形もしくは三角形であるか、または、該孔は、形状が任意の多角形もしくは円のものであってもよい。圧力安定化プレートの孔は、蒸気の上昇方向に沿って直線、曲線方向に走るか、または、多層構造を有する。圧力安定化プレートは特定の厚さを有するので、孔の方向とは、蒸気が圧力安定化プレートの厚さ方向を通過する経路のことをいう。すなわち、蒸気が圧力安定化プレートを通過するときには、蒸気の分配は、圧力安定化プレートにおける孔の位置分布を通して変化するであろうし;かつ、蒸気の上昇経路もまた、孔の方向を通して変化するであろう。多層構造とは、孔の方向によって蒸気が段階的に上昇するようにガイドされる構造のことをいい、例えば多数の折り線のグループによって形成される気流ステップである。該構造は、気流に対する圧力安定化プレートの抵抗を増大させるであろうが、蒸気をいっそう均一に分配させ得る。
【0021】
前記ノズルは、ノズル出口を有する。本明細書に記載のノズル出口は、オリフィスであって、そこから蒸気が放出される前記オリフィスである。前記ノズル出口の面積S出口に対する前記圧力安定化プレート上の孔の総面積S孔の比は、0.1より大きいか、または、0.1に等しく、すなわち、S孔/S出口≧0.1である。ノズル出口の圧力および速度は、面積の比によって調整されてもよい。該比が0.1より小さいときには、ノズル出口を通過する空気の速度が低過ぎ、そのことによってコーティングの接着力が低下する。さらに、S孔/S出口≦10である。該比が10より大きければ、エネルギー消散が起こり、ノズル出口における気流の速度の有意な増大の不能をもたらす。
【0022】
ノズル出口はスリット形状または多孔のものであり、かつ、蒸気パイプとるつぼの頂部の接合部の面積S入口に対するノズル出口の面積S出口の比は、0.05~5である。該比が0.05より小さければ、蒸気の噴霧流量が小さ過ぎ、コーティング厚さ要求を満たし得ない。該比が大き過ぎれば(例えば、該比が5より大きければ)、ノズル出口における蒸気の速度が極度に低くなるであろうし、コーティング接着の低下をもたらす。
【0023】
この技術的解決策では、ノズルは、圧力安定化プレートの長さに沿って直線的に延び、かつ、圧力安定化プレートの中央の折り目と平行に、かつ、圧力安定化プレートより上に配置される。さらに、ノズルの幅は通常、コーティングされる鋼板の幅に対応する。
【0024】
ノズル出口は、直線状スリットであるか、または、曲線状スリットである。
【0025】
多孔出口は、形状が長方形、丸または台形である。
【0026】
好ましくは、ノズルは、耐高温性、耐摩耗性であり、かつ、加工され得る材料製である。例えば、ノズルは、グラファイト、セラミックまたは不活性金属製である。
【0027】
本発明は、流れ抑制ノズルを有する真空コーティングデバイスを開示し、金属蒸気は、るつぼにおいて金属材料を溶融させ、かつ、蒸発させることによって得られる。金属蒸気は流れ分配ボックスに入り、流れ分配ボックスは流れ抑制プレートおよび圧力安定化プレートを有して配置され、かつ、金属蒸気の流れ方向は流れ抑制プレートの通過後に変えられ、このことは、蒸気の初期分配を促進する。金属蒸気は流れチャンバーにおいて圧力安定化プレートによって緩衝され続け、かつ、金属蒸気はさらに等しくされる。金属蒸気が圧力安定化プレートを通過し、かつ、ノズルから吐出されるとき、均一な噴射流が生じる。高温の蒸気が低温の鋼板に接触するとき、鋼板表面上に均一なコーティングが形成され、かつ、真空コーティングされた鋼板の品質が改善される。本発明は、低コストであり、操作が容易であり、かつ、将来的に真空コーティング技術とともに完全なセットで輸出され得る。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、出願BE1009321A6の概略図である。
【
図2】
図2は、出願BE1009317A61の概略図である。
【
図3】
図3は、出願JPS59177370Aの概略図である。
【
図4】
図4は、出願US4552092Aの概略図である。
【
図5】
図5は、出願WO2018/020311A1の概略図である。
【
図6】
図6は、出願CN103249860Aの概略図である。
【
図7】
図7は、出願CN101175866Aの概略図である。
【
図9】
図9は、幅方向の本発明の真空コーティングデバイスの断面図である。
【
図10】
図10は、長さ方向の
図9の真空コーティングデバイスにおける流れ分配ボックスの断面図である。
【
図11】
図11は、
図9の真空コーティングデバイスにおける領域の分布の概略図である(幅方向)。
【
図12】
図12は、
図9の真空コーティングデバイスにおけるパラメーターの領域分類の概略図である(幅方向)。
【発明を実施するための形態】
【0029】
実施形態の詳細な説明
本発明の技術的解決策は、添付の図面および実施形態を参照して、以下でさらに説明される。
【0030】
図9~
図12を参照すると、本発明は真空コーティングデバイスを提供する。当該真空コーティングデバイスは、るつぼ13を有する。るつぼ13は、溶融金属14を含有する。るつぼ13の周囲に、誘導ヒーター15が配置される。るつぼ13の頂部は、蒸気パイプ16を介して流れ分配ボックス17に接続される。蒸気パイプライン16には、圧力調整バルブ18が配置される。前記流れ分配ボックス17には、水平圧力安定化プレート19が配置される。前記圧力安定化プレート19はT字形状部分を有し、前記圧力安定化プレート19の水平方向に沿う端部が前記流れ分配ボックス17の内壁に接続され、前記圧力安定化プレート19の鉛直方向に沿う端部が流れ抑制プレート20に接続される。流れ分配ボックス17の頂部は、ノズル21に接続される。
【0031】
好ましくは、前記圧力安定化プレート19は多孔構造を有し、かつ、前記圧力安定化プレートにおける孔は、長方形、円または三角形のような種々の形状であり得る。それらの孔は、直線、曲線方向に走るか、または、多層構造を有する。前記ノズル出口の面積S出口に対する前記圧力安定化プレート19上の孔の総面積S孔の比は0.1以上であり、かつ、同時に10以下であり、すなわち、0.1≦S孔/S出口≦10である。
【0032】
好ましくは、前記流れ分配ボックス17および前記蒸気パイプ16が接続される接合部(すなわち、流れ分配ボックス17の入口であり、接合部の面積はS入口として示される)と前記圧力安定化プレート19の下面との間には、噴射緩和領域が形成され、噴射緩和領域の容量はV1である。前記圧力安定化プレート19の上面と前記流れ分配ボックス17および前記ノズル21が接続される接合部(すなわち、流れ分配ボックス17の出口)との間には噴射加速領域が形成され、噴射加速領域の容量はV2である。
【0033】
好ましくは、前記流れ抑制プレート20もまた、水平方向に配置され、流れ抑制プレートの一対の対辺(
図9における幅方向に沿う一対の対辺)と前記流れ分配ボックス17の内壁との間の間隔がDである。流れ抑制プレート20は、長方形、円形、三角形、台形などのような種々の形状であり得、その主たる機能は、蒸気パイプ16から噴射緩和領域の中に入る蒸気を再分配することである。再分配された蒸気は圧力安定化プレート19に入り、かつ、その後で圧力安定化プレート19の孔を通って噴射加速領域に入り、したがって、間接的に蒸気の移動経路を延ばし、かつ、圧力安定化プレート19に入る前にかなり均一な分配を達成する。
【0034】
好ましくは、前記ノズル21はノズル出口を有し、前記ノズル出口はスリット形状または多孔のものである。ノズル出口は直線状スリットまたは曲線状スリットのものであり、かつ、多孔タイプの出口は、形状が長方形、丸または台形である。るつぼの頂部の接合部の面積に対するノズル出口の面積の比は、0.05~5である。
【0035】
好ましくは、前記ノズル21は500~500,000Paの内圧で作動する。
【0036】
好ましくは、前記ノズル21は、グラファイト、セラミックもしくは不活性金属または加工され得るその他の材料製である。
【0037】
好ましくは、前記溶融金属14は、亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、錫、ニッケル、銅、鉄などの金属、加えてこれらの金属の低融点(2000℃より低い)酸化物を含有する。
【0038】
好ましくは、鋼板100は、真空コーティング前にプラズマ、または、その他のデバイスによってクリーニングされ、かつ、予熱温度は80~300℃に達する。
【0039】
本発明の真空コーティングデバイスを用いるための特定のステップは、以下の通りである。
1)誘導ヒーター15によって、るつぼ13において固体金属が溶融金属14へと溶かされ、かつ、その後で溶融金属14は、高い過熱温度および低圧にて蒸発し始め、次第に金属蒸気22を形成する。
【0040】
2)初期段階では、るつぼ13に接続された蒸気パイプ16に配置された圧力調整バルブ18は閉じている。溶融金属14が連続的に蒸発するにつれて、るつぼ13の内部チャンバーの蒸気圧は連続的に増大する。るつぼ13の内部チャンバーが特定の圧力(例えば、5000~500,000Pa)に達したとき、圧力調整バルブ18が開かれて、一定の圧力出力を保証する。一方、誘導ヒーター15の動力は、圧力調整バルブ18が開いたことに起因する減圧を補償するために増大し;かつ、誘導ヒーター15の動力範囲は、るつぼ13の内部チャンバーの圧力を特定の範囲内に保つために調整される。
【0041】
3)圧力調整バルブ18が開かれた後、金属蒸気22は蒸気パイプライン16に沿って流れる。流れ分配ボックス17の中に入るとき、流れ抑制プレート20の制限に起因して、蒸気パイプから流出する蒸気の元々の方向が変えられ、蒸気のほとんどが流れ抑制プレート20の両側(長さ方向の流れ抑制プレートの周囲、
図10参照)から分配され、かつ、流れ制御領域23(すなわち、幅方向の流れ抑制プレートの周囲、
図9参照)を通過して噴射緩和領域の中に入る蒸気の別の部分が存在する。
【0042】
その後、金属蒸気によって形成された高速の流れの圧力は、圧力安定化プレート19の制限に起因して減少する。そして、蒸気は圧力安定化プレート19における孔に沿って均一に流れ、かつ、後に続いて流れ分配ボックス17の頂部におけるノズルから均一に流れる。
【0043】
4)ノズルの狭い出口に起因して、金属蒸気22は大きい速度で流出する。このとき、移動する鋼板100がノズル出口より上に配置され、金属蒸気22の温度は高く、金属蒸気が低温の鋼板100に達するときには、それは素早く固くなり、金属コーティング24を形成する。
【実施例】
【0044】
実施形態
鋼板100は亜鉛メッキされ、かつ、鋼板100の幅は1,000mmである。クリーニングおよび乾燥後、鋼板100は120℃まで加熱される。鋼板表面上の亜鉛は誘導ヒーター15によって蒸発し、かつ、その後で誘導ヒーターの動力を調整して、るつぼ13における圧力を20,000Paまで上昇させ、かつ、圧力調整バルブ18は、その前に閉じられる。るつぼ13における圧力が20,000Paに達したとき、圧力調整バルブ18は開かれ、かつ、その後で金属蒸気22は蒸気パイプ16を通って流れ分配ボックス17の中に入る。流れ抑制プレート20は長方形であり、V1/V2=2であり、D=1mmである。圧力安定化プレート19は多孔構造を有し、S孔/S出口=3であり、ノズル21における圧力は5,000Paである。ノズル21はグラファイト製であり、かつ、ノズル出口は長方形スリットのものである。S出口/S入口=0.95である。
【0045】
当業者であれば、上記の実施形態は本発明を説明するために用いられただけであり、本発明を限定するために用いられたのではないことを理解すべきである。本発明の本質的精神範囲から逸脱することなく上記の実施形態に対してなされる変更および修正は、すべて本発明の請求の範囲内に属するべきである。