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特許7300069接合体、保持装置、および、静電チャック
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-20
(45)【発行日】2023-06-28
(54)【発明の名称】接合体、保持装置、および、静電チャック
(51)【国際特許分類】
   C04B 37/02 20060101AFI20230621BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20230621BHJP
【FI】
C04B37/02 B
H01L21/68 R
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022543306
(86)(22)【出願日】2021-06-25
(86)【国際出願番号】 JP2021024111
(87)【国際公開番号】W WO2022038898
(87)【国際公開日】2022-02-24
【審査請求日】2022-06-10
(31)【優先権主張番号】P 2020139760
(32)【優先日】2020-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(72)【発明者】
【氏名】吉本 修
(72)【発明者】
【氏名】荒川 竜一
(72)【発明者】
【氏名】田中 智雄
【審査官】神▲崎▼ 賢一
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-050267(JP,A)
【文献】特開2017-033983(JP,A)
【文献】国際公開第2018/230446(WO,A1)
【文献】特開2018-006737(JP,A)
【文献】特開2007-331026(JP,A)
【文献】特開昭59-156976(JP,A)
【文献】特開2020-109806(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 37/02
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに連通する複数の孔を有する金属層を含む接合部を介して第1部材と第2部材とが接合された接合体であって、
前記第1部材と前記金属層には、互いに連通する貫通孔がそれぞれ形成されており、
前記金属層に形成された貫通孔の内側と前記金属層の内部との間に、筒状部材が配置されており、
前記筒状部材の外周には、周方向にわたって蛇腹部が形成されている、
ことを特徴とする接合体。
【請求項2】
互いに連通する複数の孔を有する金属層を含む接合部を介して第1部材と第2部材とが接合された接合体であって、
前記第1部材と前記金属層には、互いに連通する貫通孔がそれぞれ形成されており、
前記金属層に形成された貫通孔の内側と前記金属層の内部との間に、筒状部材が配置されており、
前記筒状部材は、前記金属層と同じ材料から形成される、
ことを特徴とする接合体
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の接合体であって、
前記第2部材には、前記第1部材と前記金属層にそれぞれ形成された貫通孔と連通する貫通孔が形成されている、
ことを特徴とする接合体。
【請求項4】
請求項に記載の接合体であって、
前記筒状部材の一方の端部は、前記第1部材に形成された貫通孔の内側に配置され、
前記筒状部材の他方の端部は、前記第2部材に形成された貫通孔の内側に配置される、
ことを特徴とする接合体。
【請求項5】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の接合体であって、
前記筒状部材の軸線方向に垂直な断面は、円形状である、
ことを特徴とする接合体。
【請求項6】
保持装置であって、
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の接合体を備え、
前記第2部材は、保持対象物が載置される載置面を備える、
ことを特徴とする保持装置。
【請求項7】
静電チャックであって、
請求項に記載の保持装置を備え、
前記第2部材は、内部に静電吸着電極を有する、
ことを特徴とする静電チャック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合体、保持装置、および、静電チャックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、2つの部材が接合された接合体が知られている。一般的に、ウェハを保持する保持装置は、ウェハが載置される載置面を備えるセラミック部材と、ウェハを冷却する金属部材と、セラミック部材と金属部材とを接合する接合部と、を備えた接合体を有している(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許3485390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
接合体の接合部には、セラミック部材と金属部材との熱膨張差による応力を緩和するために、金属層が配置されることがある。この金属層に、流体が流れる貫通孔が形成されると、貫通孔の流体が貫通孔の内側から金属層の内部に漏れ出したり、保持装置の外側の流体が金属層の孔を介して貫通孔に流入したりするおそれがあった。また、金属層の破片などが貫通孔に落ちるおそれがあった。
【0005】
本発明は、貫通孔が形成されている金属層を備える接合体において、貫通孔の内側と金属層の内部との間における流体の移動を規制しつつ、金属層の破片が貫通孔に落ちることを抑制する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、互いに連通する複数の孔を有する金属層を含む接合部を介して第1部材と第2部材とが接合された接合体が提供される。この接合体は、前記第1部材と前記金属層には、互いに連通する貫通孔がそれぞれ形成されており、前記金属層に形成された貫通孔の内側と前記金属層の内部との間に、筒状部材が配置されている。
【0008】
この構成によれば、接合部に含まれる金属層は、互いに連通する複数の孔を有しており、金属層には、第1部材に形成された貫通孔に連通する貫通孔が形成されている。この金属層の貫通孔の内側と金属層の内部との間には、筒状部材が配置されている。これにより、貫通孔の内側に流体が流れるとき、筒状部材によって流体が金属層の内部に漏れ出すことを抑制することができる。また、筒状部材によって金属層の複数の孔から貫通孔の内側に流体が流入しにくくなり、貫通孔の外部の流体が貫通孔に流入することを抑制することができる。また、金属層の破片などが筒状部材によって貫通孔に落ちることを抑制することができる。
【0009】
(2)上記形態の接合体において、前記第2部材には、前記第1部材と前記金属層にそれぞれ形成された貫通孔と連通する貫通孔が形成されていてもよい。この構成によれば、第1部材と金属層にそれぞれ形成された貫通孔と、第2部材に形成された貫通孔とは、連通している。金属層に形成された貫通孔では、貫通孔の流体が金属層に漏れ出したり、金属層の内部の流体が貫通孔に流入したりすることが筒状部材によって抑制されるため、第1部材の貫通孔を流れる流体の流量に対する第2部材の貫通孔を流れる流体の流量の変化は小さくなる。これにより、接合体を挟んで、第1部材側から第2部材側、または、第2部材側から第1部材側に、安定して流体を供給することができる。
【0010】
(3)上記形態の接合体において、前記筒状部材の一方の端部は、前記第1部材に形成された貫通孔の内側に配置され、前記筒状部材の他方の端部は、前記第2部材に形成された貫通孔の内側に配置されてもよい。この構成によれば、筒状部材は、一方の端部が第1部材の貫通孔の内側に配置され、他方の端部が第2部材の貫通孔の内側に配置される。これにより、接合部によって第1部材と第2部材とを接合するときや接合体を高温で使用するときに生じる熱応力によって、筒状部材が第1部材や第2部材から離れることが抑制される。したがって、貫通孔の内側と金属層の内部との間における流体の移動をさらに規制しつつ、金属層の破片が貫通孔に落ちることをさらに抑制することができる。
【0011】
(4)上記形態の接合体において、前記筒状部材の外周には、周方向にわたって蛇腹部が形成されていてもよい。この構成によれば、筒状部材の外周には、周方向にわたって蛇腹部が形成されている。これにより、例えば、第1部材と第2部材とが熱膨張率が異なる材料から形成されている場合に第1部材と第2部材とを接合するときや接合体を高温で使用するとき、熱膨張差によって生じる応力の大きさに応じて蛇腹部が変形する。蛇腹部が変形すると、第1部材と第2部材との接合界面や応力に比較的弱い部材での残留応力を緩和することができる。したがって、接合体の破損を抑制することができる。
【0012】
(5)上記形態の接合体において、前記筒状部材は、前記金属層と同じ材料から形成されてもよい。この構成によれば、筒状部材は、金属層と同じ材料から形成されている。これにより、接合部は、筒状部材および金属層の材料と、ろう材の材料との2種類の材料から形成されるため、筒状部材と、金属層と、ろう材とが別々の材料から形成される場合に比べ、接合部の組成が部位によらず均一となる。したがって、接合部において部位による熱応力の差が生じにくくなり、接合体の破損をさらに抑制することができる。
【0013】
(6)上記形態の接合体において、前記筒状部材の軸線方向に垂直な断面は、円形状であってもよい。この構成によれば、筒状部材は、軸線方向に垂直な断面が、円形状となるように形成されている。これにより、筒状部材は、軸線に交差する方向から作用する力によって変形しにくくなるため、貫通孔と金属層との間での流体の移動や貫通孔への金属層の破片の落下をさらに抑制することができる。
【0014】
(7)本発明の別の形態によれば、保持装置が提供される。この保持装置は、上記の接合体を備え、前記第2部材は、保持対象物が載置される載置面を備える。この構成によれば、例えば、第1部材と金属層にそれぞれ形成された貫通孔と、第2部材の貫通孔とが連通している場合、これらの貫通孔を流れる流体の流量変化が抑制されるため、保持対象物と載置面との間に流体を安定して供給することができる。また、貫通孔への金属層の破片の落下が抑制されるため、金属層の破片による保持対象物の汚染を抑制することができる。これにより、製品の歩留まりを向上することができる。
【0015】
(8)本発明のさらに別の形態によれば、静電チャックが提供される。この静電チャックは、上記の保持装置を備え、前記第2部材は、内部に静電吸着電極を有する。この構成によれば、接合体には、載置面に流体を供給する貫通孔が形成されている。上記の保持装置では、金属層の貫通孔の内側と金属層の内部との間に配置されている筒状部材によって、貫通孔への接合材の漏れ出しによる貫通孔の閉塞を抑制することができる。これにより、貫通孔への金属層の破片の落下が抑制されるため、金属層の破片による汚染を抑制することができる。したがって、静電チャックを用いて製造される製品の歩留まりを向上することができる。
【0016】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、接合体を含む装置、接合体および保持装置の製造方法等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態の静電チャックの外観を示す斜視図である。
図2】静電チャックの全体断面図である。
図3】静電チャックの部分断面図である。
図4】筒状部材を説明する第1の図である。
図5】筒状部材を説明する第2の図である。
図6】比較例の静電チャックの断面図である。
図7】第2実施形態の静電チャックの断面図である。
図8】静電チャックの拡大断面図である。
図9】第3実施形態の静電チャックの断面図である。
図10】静電チャックの拡大断面図である。
図11】第3実施形態の静電チャックの変形例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の静電チャック1の外観を示す斜視図である。図2は、静電チャック1の全体断面図である。図3は、静電チャック1の部分断面図である。第1実施形態の静電チャック1は、ウェハWを静電引力により吸着することで保持する保持装置であり、例えば、エッチング装置に備えられる。静電チャック1は、セラミック部材10と、電極端子15と、リフトピン18と、金属部材20と、接合部30と、を備える。静電チャック1では、z軸方向(上下方向)に、セラミック部材10、接合部30、金属部材20の順に積層されている。静電チャック1において、セラミック部材10と、接合部30と、金属部材20とからなる接合体1aは、略円形状の柱状体になっている。セラミック部材10は、特許請求の範囲の「第2部材」に該当する。金属部材20は、特許請求の範囲の「第1部材」に該当する。ウェハWは、特許請求の範囲の「保持対象物」に該当する。
【0019】
セラミック部材10は、略円形状の板状部材であり、アルミナ(Al)により形成されている。セラミック部材10の直径は、例えば、50mm~500mm程度(通常は200mm~350mm程度)であり、セラミック部材10の厚さは、例えば、1mm~10mm程度である。セラミック部材10は、一対の主面11、12を有する。一対の主面11、12のうちの一方の主面11には、ウェハWが載置される載置面13が形成される。載置面13に載置されるウェハWは、セラミック部材10の内部に配置されている静電吸着電極100(図2および図3参照)が発生する静電引力によって、載置面13に吸着固定される。他方の主面12には、凹部14が形成される。凹部14には、図示しない電源からの電力を静電吸着電極100に供給する電極端子15の端部15aが配置される。なお、セラミック部材10を形成するセラミックは、窒化アルミニウム(AlN)、ジルコニア(ZrO)、窒化珪素(Si)、炭化珪素(SiC)、イットリア(Y)などであってもよい。
【0020】
セラミック部材10には、2つの貫通孔16、17が形成される。貫通孔16は、z軸方向にセラミック部材10を貫通しており、リフトピン18が挿入される。貫通孔17は、載置面13にウェハWが載置されているときに、載置面13とウェハWとの間に供給されるヘリウムガスが流れる流路となる。
【0021】
金属部材20は、ステンレス鋼により形成される略円形平面状の板状部材であり、一対の主面21、22を有する。金属部材20の直径は、例えば、220mm~550mm程度(通常は220mm~350mm)であり、金属部材20の厚さは、例えば、20mm~40mm程度である。金属部材20の内部には、冷媒流路200が形成されている(図2参照)。冷媒流路200に、例えば、フッ素系不活性液体や水などの冷媒が流れると、接合部30を介してセラミック部材10が冷却され、セラミック部材10に載置されたウェハWが冷却される。なお、金属部材20を形成する金属の種類は、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、アルミニウム合金、チタン(Ti)、チタン合金などであってもよい。
【0022】
金属部材20には、3つの貫通孔23、24、25が形成される。3つの貫通孔23、24、25のそれぞれは、図3に示すように、z軸方向にセラミック部材10を貫通している。貫通孔23には、電極端子15が挿通される。貫通孔24には、リフトピン18が挿入される。貫通孔25は、載置面13にウェハWが載置されているときに、載置面13とウェハWとの間に供給されるヘリウムガスが流れる流路となる。
【0023】
接合部30は、金属層31と、筒状部材32と、ろう材33と、を備えており、セラミック部材10と金属部材20とを接合する。金属層31は、略円形平面状の板状部材であり、互いに連通する複数の孔を有する多孔質体である。本実施形態では、金属層31は、チタン(Ti)を含む金属繊維から形成されるフェルトであり、セラミック部材10と金属部材20との間に配置されている。なお、金属層31は、金属繊維から形成されるフェルトに限定されず、ポーラス材や網目構造材であってもよい。また、金属層31を形成する金属は、ニッケル(Ni)、アルミニウム、銅、真鍮、これらの合金、または、ステンレス鋼などから形成されてもよい。
【0024】
金属層31には、3つの貫通孔31a、31b、31cが形成されている。貫通孔31aは、セラミック部材10の凹部14と、金属部材20の貫通孔23とを連通する。貫通孔31bは、セラミック部材10の貫通孔16と、金属部材20の貫通孔24とを連通する。貫通孔31cは、セラミック部材10の貫通孔17と、金属部材20の貫通孔25とを連通する。すなわち、金属部材20と金属層31には、互いに連通する貫通孔23、25、31a、31cがそれぞれ形成されており、セラミック部材10には、金属部材20と金属層31にそれぞれ形成された貫通孔25、31cと連通する貫通孔17が形成されている。
【0025】
筒状部材32は、円筒形状の部材であり、上下に開口し、側面が封止されている部材である。筒状部材32は、図3に示すように、貫通孔31aと、貫通孔31cのそれぞれの内側に配置されている。本実施形態では、筒状部材32は、金属層31と同じ材料のチタンを含む金属から形成されており、高温環境下での使用に適している。本実施形態では、筒状部材32は、高さが0.5mm~2.0mmであり、外壁の厚みが0.01mm~0.15mmである。
【0026】
図4は、筒状部材32を説明する第1の図であって、図3のA部拡大図である。図5は、筒状部材32を説明する第2の図であって、筒状部材32の軸線C32に垂直な断面図である。筒状部材32は、2つの端部32a、32bのうちの一方の端部32aが、金属部材20の一方の主面21に接触しており、他方の端部32bが、セラミック部材10の他方の主面12に接触している。本実施形態では、一方の端部32aと金属部材20の一方の主面21とは図示しないろう材によって接合されており、他方の端部32bとセラミック部材10の他方の主面12とは図示しないろう材によって接合されている。本実施形態では、筒状部材32の軸線C32方向に垂直な断面は、円形状である(図5参照)。
【0027】
貫通孔31aの内側に配置される筒状部材32は、貫通孔31aの内側と金属層31の内部との間における流体の移動を規制する。これにより、エッチング装置においてウェハWを加工するときに静電チャック1の外側に滞留する加工ガスなどが金属層31を介して貫通孔23、31aや凹部14に流入しにくくなり、金属層31を形成する金属繊維の破片が貫通孔31aに落下することが抑制される。
【0028】
貫通孔31cの内側に配置される筒状部材32は、貫通孔31cの内側と金属層31の内部との間における流体の移動を規制する。これにより、金属部材20の貫通孔25と、金属層31の貫通孔31cと、セラミック部材10の貫通孔17を流れるヘリウムガスが金属層31の内部に漏れ出すことが抑制されるとともに、金属層31の金属繊維の破片が貫通孔31cに落下することが抑制される。
【0029】
ろう材33は、銀(Ag)系ろう材であり、金属層31が有する複数の孔に入り込みつつ、セラミック部材10の他方の主面12と、金属部材20の一方の主面21とのそれぞれに接合している。なお、ろう材33は、チタン(Ti)を含むろう材や、半田などの溶加材、シリコーン系樹脂やアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂等の接着材、ガラスペースト等の無機系接着材などであってもよい。
【0030】
次に、静電チャック1の製造方法について説明する。静電チャック1の製造方法では、最初に、貫通孔23、24、25と冷媒流路200が形成されている金属部材20の一方の主面21にろう材33となる金属箔(以下、「金属部材側の金属箔」という)を配置する。次に、貫通孔31a、31b、31cが形成されている金属層31を金属部材側の金属箔上に配置し、貫通孔31a、31cのそれぞれに筒状部材32を挿入する。次に、金属層31の金属部材20とは反対側に、ろう材33となる別の金属箔(以下、「セラミック部材側の金属箔」という)を配置する。このセラミック部材側の金属箔上にセラミック部材10を配置し、セラミック部材側の金属箔を用いてセラミック部材10と金属層31とを接合し、金属部材側の金属箔を用いて金属部材20と金属層31とを接合する。これにより、接合体1aが完成する。完成した接合体1aに電極端子15やリフトピン18を組み付けることで、静電チャック1が完成する。
【0031】
図6は、比較例の静電チャック5の断面図である。次に、本実施形態の静電チャック1における筒状部材32の効果について、比較例の静電チャック5と比較して説明する。比較例の静電チャック5は、接合部30の貫通孔31a、31cの内側に、筒状部材が配置されていない。
【0032】
比較例の静電チャック5を用いて、ウェハWをプラズマによって加工するとき、静電チャック5の周囲には加工ガスが滞留する。この加工ガスは、金属層31の内部に形成されている複数の孔を通って貫通孔31aに流入するおそれがある(図6の点線矢印F01参照)。また、このときの加工ガスの流入に伴って金属層31の金属繊維の破片が貫通孔31aに落ちるおそれがある。
【0033】
比較例の静電チャック5では、ウェハWを加工するとき、載置面13とウェハWとの間には、金属部材20の貫通孔25と、接合部30の貫通孔31cと、セラミック部材10の貫通孔17とを介してヘリウムガスが供給される。比較例の静電チャック5では、接合部30の貫通孔31cの内側を通るヘリウムガスは、貫通孔31cから金属層31が有する複数の孔に漏れ出すため(図6の点線矢印F02参照)、貫通孔31cを流れるヘリウムガスの流量が減少するおそれがあり、載置面13とウェハWとの間にヘリウムガスを安定して供給することが難しい。また、接合部30内の残留ガスが貫通孔31cに流入するおそれがあり、この残留ガスの貫通孔31cへの流入によってウェハWが汚染されるおそれがある。さらに、残留ガスの流入に伴って、金属層31の金属繊維の破片が貫通孔31cに落ちることでヘリウムガスとともに載置面13に移動し、ウェハWに付着することでウェハWが汚染されるおそれがある。
【0034】
本実施形態の静電チャック1では、接合部30の貫通孔31aの内側に、筒状部材32が配置されている(図3参照)。これにより、静電チャック1の周囲に滞留する加工ガスは、貫通孔31aの内側に配置される筒状部材32によって遮られるため、貫通孔23、31aや凹部14に流入しにくくなる(図3の点線矢印F11参照)。また、金属層31の金属繊維の破片も、筒状部材32によって、貫通孔23、31aや凹部14に入ることが抑制される。
【0035】
本実施形態の静電チャック1では、接合部30の貫通孔31cの内側に、筒状部材32が配置されている(図3参照)。これにより、接合部30の貫通孔31cを流れるヘリウムガスは、貫通孔31cにおいて金属層31の内部に漏れ出すことなく、載置面13とウェハWとの間に安定して供給されるため(図3の点線矢印F12参照)、載置面13とウェハWとの間のヘリウムガス雰囲気を安定させることができる。また、接合部30内の残留ガスが貫通孔31cに流入することが抑制されるため、ウェハWの汚染が抑制される。さらに、接合部30の残留ガスの流入に伴って金属層31の金属繊維の破片が貫通孔31cに落ちることが抑制されるため、破片によってウェハWが汚染されることが抑制される。
【0036】
以上説明した、本実施形態の接合体1aによれば、接合部30に含まれる金属層31は、互いに連通する複数の孔を有しており、金属層31には、金属部材20に形成された貫通孔23、25のそれぞれに連通する貫通孔31a、31cが形成されている。この金属層31の貫通孔31a、31cのそれぞれ内側には、貫通孔31a、31cのそれぞれの内側と金属層31の内部との間における気体の移動を規制する筒状部材32が配置されている。これにより、貫通孔31aの内側に配置される筒状部材32は、貫通孔31aへのウェハWの加工ガスの流入を抑制しつつ、金属層31の金属繊維の破片の貫通孔31aへの落下を抑制することができる。また、貫通孔31cの内側に配置される筒状部材32は、貫通孔31cを流れるヘリウムガスの金属層31の内部への漏れ出しを抑制しつつ、金属層31の金属繊維の破片の貫通孔31aへの落下を抑制することができる。
【0037】
また、本実施形態の接合体1aによれば、金属部材20と金属層31にそれぞれ形成された貫通孔25、31cと、セラミック部材10に形成された貫通孔17とは、連通している。金属層31に形成された貫通孔31cでは、貫通孔31cを流れるヘリウムガスが金属層31に漏れ出したり、金属層31の内部の流体が貫通孔31cの内側に流入したりすることが抑制されるため、金属部材20の貫通孔25を流れるヘリウムガスの流量に対するセラミック部材10の貫通孔17を流れるヘリウムガスの流量の変化は、小さくなる。これにより、接合体1aを挟んで、金属部材20側からセラミック部材10側に、安定してヘリウムガスを供給することができるため、ウェハWと載置面13との間にヘリウムガスを安定して供給することができる。
【0038】
また、本実施形態の接合体1aによれば、筒状部材32は、金属層31と同じ材料から形成されている。これにより、接合部30は、金属層31および筒状部材32の材料と、ろう材33の材料との2種類の材料から形成されるため、ろう材と金属層と筒状部材とが別々の材料から形成される場合に比べ、接合部30の組成が部位によらず均一となる。したがって、接合部30において部位による熱応力の差が生じにくくなり、接合体1aの破損を抑制することができる。
【0039】
また、本実施形態の接合体1aによれば、筒状部材32は、図5に示すように、軸線C32方向に垂直な断面が、円形状となるように形成されている。これにより、筒状部材32は、軸線C32に交差する方向から作用する力によって変形しにくくなるため、貫通孔31a、31cと金属層31との間での流体の移動や、貫通孔31a、31cへの金属層31の破片の落下をさらに抑制することができる。
【0040】
また、本実施形態の静電チャック1によれば、例えば、金属部材20と金属層31にそれぞれ形成された貫通孔25、31cと、セラミック部材10の貫通孔17とが連通しており、貫通孔31cを流れるヘリウムガスの流量変化が抑制されるため、ウェハWと載置面13との間のヘリウムガスを安定して供給することができる。また、貫通孔31cへの金属層31の破片の落下が抑制されるため、金属層31の破片によるウェハWの汚染を抑制することができる。これにより、製品の歩留まりを向上することができる。
【0041】
<第2実施形態>
図7は、第2実施形態の静電チャック2の断面図である。第2実施形態の静電チャック2は、第1実施形態の静電チャック1(図3)と比較すると、筒状部材の形状が異なる。
【0042】
本実施形態の静電チャック2は、セラミック部材10と、電極端子15と、リフトピン18と、金属部材20と、接合部40と、を備える。接合部40は、セラミック部材10と金属部材20とを接合しており、金属層31と、筒状部材42と、ろう材33と、を備える。静電チャック2において、セラミック部材10と、接合部40と、金属部材20とからなる接合体2aは、略円形状の柱状体になっている。
【0043】
筒状部材42は、略円筒形状の部材であり、上下に開口し、側面が封止されている部材である。筒状部材42は、図7に示すように、貫通孔31aと、貫通孔31cのそれぞれの内側に配置されている。貫通孔31aの内側に配置されている筒状部材42は、貫通孔31aへのウェハWの加工ガスの流入を抑制しつつ、金属層31の金属繊維の破片の貫通孔31aへの落下を抑制する。貫通孔31cの内側に配置されている筒状部材42は、貫通孔31cを流れるヘリウムガスの金属層31の内部への漏れ出しを抑制しつつ、金属層31の金属繊維の破片の貫通孔31aへの落下を抑制する。
【0044】
図8は、静電チャック2の拡大断面図であって、図7のB部拡大図である。筒状部材42は、2つの端部42a、42bと、2つの端部42a、42bを接続する蛇腹部42cと、を有する。一方の端部42aは、筒状部材42のz軸方向のマイナス側に位置し、金属部材20の一方の主面21に接触する。他方の端部42bは、筒状部材42のz軸方向のプラス側に位置し、セラミック部材10の他方の主面12に接触する。蛇腹部42cは、筒状部材42の外周において、周方向にわたって形成されている。蛇腹部42cは、一方の端部42aの位置と他方の端部42bの位置との関係に応じて、変形する。
【0045】
以上説明した、本実施形態の静電チャック2によれば、筒状部材42の外周には、周方向にわたって蛇腹部42cが形成されている。これにより、例えば、セラミック部材10と金属部材20とを接合するときや、静電チャック2を高温で使用するとき、セラミック部材10と金属部材20との熱膨張差によって生じる応力の大きさに応じて蛇腹部42cが変形する。蛇腹部42cが変形すると、セラミック部材10と金属部材20との接合界面や応力に比較的弱いセラミック部材10の残留応力を緩和することができる。したがって、静電チャック2の破損を抑制することができる。
【0046】
<第3実施形態>
図9は、第3実施形態の静電チャック3の部分断面図である。第3実施形態の静電チャック3は、第1実施形態の静電チャック1(図3)と比較すると、筒状部材の端部の位置が異なる。
【0047】
本実施形態の静電チャック3は、セラミック部材10と、電極端子15と、リフトピン18と、金属部材20と、接合部50と、を備える。接合部50は、セラミック部材10と金属部材20とを接合しており、金属層31と、筒状部材52、53と、ろう材33と、を備える。静電チャック3において、セラミック部材10と、接合部50と、金属部材20とからなる接合体3aは、略円形状の柱状体になっている。
【0048】
筒状部材52は、円筒形状の部材であり、上下に開口し、側面が封止されている部材であって、金属層31の貫通孔31aの内側に配置されている。筒状部材52は、図9に示すように、2つの端部52a、52bのうちの一方の端部52aが、金属部材20の貫通孔23の内側に配置されている。他方の端部52bは、セラミック部材10の他方の主面12に接触している。これにより、金属部材20と筒状部材52との間には隙間が形成されにくくなるため、貫通孔31aへのウェハWの加工ガスの流入が抑制され、金属層31の金属繊維の破片の貫通孔31aへの落下が抑制される。なお、筒状部材52の他方の端部52bは、セラミック部材10の他方の主面12に形成される溝などに配置されていてもよい。
【0049】
図10は、静電チャック3の拡大断面図であって、図9のC部拡大図である。筒状部材53は、円筒形状の部材であり、上下に開口し、側面が封止されている部材であって、金属層31の貫通孔31cの内側に配置されている。筒状部材53は、2つの端部53a、53bのうちの一方の端部53aが、金属部材20の貫通孔25の内側に配置されている。他方の端部53bは、セラミック部材10の貫通孔17の内側に配置されている。これらにより、セラミック部材10および金属部材20と筒状部材53との間には隙間が形成されにくくなるため、貫通孔31cを流れるヘリウムガスの金属層31の内部への漏れ出しが抑制され、金属層31の金属繊維の破片の貫通孔31aへの落下が抑制される。
【0050】
以上説明した、本実施形態の静電チャック3によれば、筒状部材52は、一方の端部52aが金属部材20の貫通孔23の内側に配置されている。筒状部材53は、一方の端部53aが金属部材20の貫通孔25の内側に配置されており、他方の端部53bがセラミック部材10の貫通孔17の内側に配置されている。これにより、接合部50によってセラミック部材10と金属部材20とを接合するときや静電チャック3を高温で使用するときに静電チャック3の内部で生じる熱応力によって、筒状部材52、53がセラミック部材10や金属部材20から離れることが抑制される。したがって、貫通孔31cの内側と金属層31の内部との間における流体の移動をさらに規制しつつ、金属層31の破片が貫通孔31cに落ちることをさらに抑制することができる。
【0051】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0052】
[変形例1]
上述の実施形態では、「接合体」は、セラミック部材10と金属部材20とを備えるとした。しかしながら、「接合体」を構成する部材の組み合わせは、これに限定されない。例えば、セラミック部材同士が接合された接合体であってもよいし、金属部材同士が接合された接合体であってもよい。さらに、セラミックおよび金属以外の他の材料によって形成されてもよい。例えば、ガラス、ガラスエポキシ、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂などの樹脂、紙フェノール、紙エポキシ、ガラスコンポジット、これらの絶縁部材を表面に形成した金属部材などによって形成してもよい。
【0053】
[変形例2]
上述の実施形態では、セラミック部材10は、接合部30の貫通孔31aに連通する凹部14と、貫通孔31cに連通する「第2部材の貫通孔」としての貫通孔17を有するとした。しかしながら、「第2部材」には、接合部の貫通孔に連通する凹部または「貫通孔」のいずれかが形成されていてもよい。また、凹部および貫通孔が形成されていなくてもよいし、貫通孔が複数形成されていてもよい。
【0054】
[変形例3]
上述の実施形態では、筒状部材は、金属層と同じ材料のチタンを含む金属から形成されるとした。しかしながら、筒状部材を形成する材料と、金属層を形成する材料とは異なっていてもよく、チタンを含む金属に限定されない。チタン以外の金属でもよく、アルミナ、窒化アルミニウムなどのセラミック材料であってもよい。また、筒状部材は、緻密体であることが望ましい。筒状部材と金属層とを同じ材料から形成することで、接合部の組成が部位によらず均一となるため、接合部において部位による熱応力の差が生じにくくなり、接合体の破損を抑制することができる。
【0055】
[変形例4]
上述の実施形態では、筒状部材は、筒状部材の軸線方向に垂直な断面が円形状であるとした。しかしながら、筒状部材の軸線方向に垂直な断面は、円形状でなくてもよい。
【0056】
[変形例5]
上述の実施形態では、静電チャックは、エッチング装置に備えられるとした。しかしながら、静電チャックの適用分野はこれに限定されない。例えば、ウェハを加熱するためのヒータを備えた静電チャックであってもよい。静電チャックがヒータを備える場合、静電チャックは高温環境下で使用されるため、筒状部材を形成する材料は、耐熱温度が高い金属から形成されることが望ましい。また、静電チャックは、半導体製造装置においてウェハの固定、矯正、搬送などを行うために用いられてもよい。さらに、接合体を備える「保持装置」を備える装置は、静電チャックに限定されず、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)装置、PVD(Physical Vapor Deposition)装置、PLD(Pulsed Laser Deposition)装置などの真空装置用ヒータ、サセプタ、載置台として用いられてもよい。したがって、保持対象物を保持する力は、静電引力に限定されない。
【0057】
[変形例6]
上述の実施形態では、接合体において、セラミック部材と接合部との間、および、金属部材と接合部との間の少なくともいずれか一方に、金属層などの他の層を備えてもよい。この他の層は、例えば、接合部を形成するろう材中のチタンの蒸発により形成される層や、予め形成されたメタライズ層などであってもよい。
【0058】
[変形例7]
上述の実施形態では、セラミック部材10と、接合部30、40、50と、金属部材20との接合体1a、2a、3aは、略円形状の柱状体であるとした。しかしながら、「接合体」の形状は、これに限定されない。例えば、矩形形状であってもよいし、多角形形状などであってもよい。
【0059】
[変形例8]
第3実施形態では、電極端子15の周囲に配置されている筒状部材52の一方の端部52aは、金属部材20の一方の主面21側において貫通孔23の内側に配置されている。しかしながら、筒状部材の端部が配置される位置は、これに限定されない。
【0060】
図11は、第3実施形態の静電チャック3の変形例の断面図である。図11に示すように、筒状部材52の一方の端部52aは、金属部材20の他方の主面22側において、貫通孔25の内側に配置されている。すなわち、筒状部材52は、金属部材20を貫くように配置されていてもよい。また、第3実施形態において、筒状部材53も、セラミック部材10や金属部材20を貫くように配置されていてもよい。
【0061】
[変形例9]
第3実施形態では、筒状部材52は、一方の端部52aが金属部材20の貫通孔23の内側に配置されており、他方の端部52bがセラミック部材10の他方の主面12に接触している。このように、接合部の筒状部材は、2つの端部のうちのいずれか1つが、接合部に隣り合う部材のいずれか1つの貫通孔の内側に配置されていればよい。これにより、筒状部材は、筒状部材の端部を貫通孔の内側に挿入されている部材から離れることが抑制されるため、金属層の貫通孔の内側と金属層の内部との間における流体の移動をさらに規制しつつ、金属層の破片が貫通孔に落ちることをさらに抑制することができる。
【0062】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【符号の説明】
【0063】
1,2,3…静電チャック
1a,2a,3a…接合体
10…セラミック部材
13…載置面
16,17…(セラミック部材の)貫通孔
20…金属部材
23,24,25…(金属部材の)貫通孔
30,40,50…接合部
31…金属層
31a,31c…貫通孔
32,42,52,53…筒状部材
32a,42a,52a,53a…一方の端部
32b,42b,52b,53b…他方の端部
42c…蛇腹部
W…ウェハ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11