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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-20
(45)【発行日】2023-06-28
(54)【発明の名称】スパークプラグ
(51)【国際特許分類】
   H01T 13/54 20060101AFI20230621BHJP
   H01T 21/02 20060101ALI20230621BHJP
   H01T 13/20 20060101ALI20230621BHJP
   F02P 13/00 20060101ALI20230621BHJP
   F02B 19/12 20060101ALI20230621BHJP
【FI】
H01T13/54
H01T21/02
H01T13/20 E
F02P13/00 301J
F02P13/00 303D
F02B19/12 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022552284
(86)(22)【出願日】2021-10-11
(86)【国際出願番号】 JP2021037591
(87)【国際公開番号】W WO2022168371
(87)【国際公開日】2022-08-11
【審査請求日】2022-08-29
(31)【優先権主張番号】P 2021015131
(32)【優先日】2021-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】後澤 達哉
(72)【発明者】
【氏名】中川 律果
【審査官】片岡 弘之
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-199236(JP,A)
【文献】特開2020-149924(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/185888(US,A1)
【文献】特開2016-062664(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01T 13/54
H01T 21/02
H01T 13/20
F02P 13/00
F02B 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周に先端向き面を有し、軸線に沿って延びる軸孔を有する筒状の絶縁体と、
前記絶縁体の前記軸孔に配置された中心電極と、
前記絶縁体の前記先端向き面を係止する棚部が内周に設けられた筒状の主体金具と、
前記主体金具に電気的に接続され、前記中心電極の先端部と自身の端部との間に火花ギャップを設ける接地電極と、
溶融部を介して前記主体金具に接合されたキャップと、を備え、
前記キャップは、前記中心電極の前記先端部と前記接地電極の前記端部とを先端側から覆って副室を形成し、自身の内面から外面まで突き抜けた噴口を有するスパークプラグであって、
前記棚部よりも先端側の前記主体金具の内周面と前記主体金具の外周面とを接続する第1の面と、前記内面と前記外面とを接続する前記キャップの第2の面と、の間には前記副室から前記溶融部へ至る隙間があり、
前記隙間は、前記副室に対して径方向に開口する開口部を有するスパークプラグ。
【請求項2】
前記隙間は、前記開口部から径方向の外側に向かって延びるように前記第1の面と前記第2の面とが対向する第1対向部と、
前記第1対向部に連なり、前記第1対向部が延びる方向と異なる方向に向かって延びる第2対向部と、を有する請求項1記載のスパークプラグ。
【請求項3】
前記主体金具の前記内周面と前記第1の面とが交わる第1の線、又は、前記キャップの前記内面と前記第2の面とが交わる第2の線であって、前記2つの線のうち径方向の外側に位置する外側線と前記棚部より先端側における前記外周面または前記外面との間の径方向の最短距離Aと、前記溶融部のうち前記隙間に露出した部分と前記外側線との間の径方向の最短距離Bと、の間にB/A≧0.1の関係がある請求項1又は2に記載のスパークプラグ。
【請求項4】
前記軸線を含む断面において、前記噴口の前記内面側の縁を結んだ線分の中点から引いた垂線は、前記開口部の縁を結んだ線分に交わらない請求項1から3のいずれかに記載のスパークプラグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、副室を形成するキャップが主体金具に接合されたスパークプラグに関する。
【背景技術】
【0002】
副室を形成するキャップが、エンジンに取り付けられる主体金具に溶融部を介して接合されたスパークプラグが知られている(特許文献1)。この種のスパークプラグは、キャップの噴口から副室に流入した燃料ガスに点火して副室に火炎を生成し、火炎を含むガス流を噴口から燃焼室に噴射して、その噴流によって燃焼室内の燃料ガスを燃焼させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-62664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
先行技術では、絶縁体の先端向き面を係止する主体金具の棚部よりも先端側の主体金具の内周面に、キャップや主体金具に比べて熱伝導率の低い溶融部が露出している。主体金具の内周面に露出した溶融部が、火炎を含む高温のガス流に曝されると、溶融部に熱が蓄積され過熱のおそれがある。過熱した溶融部は、副室に流入した燃料ガスの過早着火(プレイグニッション)を起こす火種となる。
【0005】
本発明はこの問題点を解決するためになされたものであり、副室に流入した燃料ガスのプレイグニッションを低減できるスパークプラグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために本発明のスパークプラグは、外周に先端向き面を有し、軸線に沿って延びる軸孔を有する筒状の絶縁体と、絶縁体の軸孔に配置された中心電極と、絶縁体の先端向き面を係止する棚部が内周に設けられた筒状の主体金具と、主体金具に電気的に接続され、中心電極の先端部と自身の端部との間に火花ギャップを設ける接地電極と、溶融部を介して主体金具に接合されたキャップと、を備え、キャップは、中心電極の先端部と接地電極の端部とを先端側から覆って副室を形成し、自身の内面から外面まで突き抜けた噴口を有する。棚部よりも先端側の主体金具の内周面と主体金具の外周面とを接続する第1の面と、内面と外面とを接続するキャップの第2の面と、の間には副室から溶融部へ至る隙間があり、隙間は、副室に対して径方向に開口する開口部を有する。
【発明の効果】
【0007】
第1の態様によれば、絶縁体の先端向き面を係止する主体金具の棚部よりも先端側の主体金具の内周面と外周面とを接続する第1の面と、内面と外面とを接続するキャップの第2の面と、の間に、副室から溶融部へ至る隙間がある。隙間の開口部は副室に対して径方向に開口しているので、副室に生じた軸線方向の旋回流(火炎を含むガス流)が隙間に入り難くなる。その結果、火炎を含むガス流の温度に比べて温度が低いガス(以下「低温ガス」と称す)が隙間に滞留し易くなる。
【0008】
隙間に低温ガスが滞留すると、噴口から副室に流入した燃料ガスが溶融部に当たり難くなり、低温ガスの温度よりも温度が低い燃料ガスによって溶融部が冷やされ難くなる。噴口からガス流を噴射した後、噴口から副室へ燃料ガスが流入したときの溶融部の温度変化を低減できるので、熱応力によって溶融部に生じるクラックを低減できる。
【0009】
さらに隙間に低温ガスが滞留し、火炎を含むガス流によって溶融部が加熱され難くなると、溶融部の過熱を低減できる。これにより副室に流入した燃料ガスのプレイグニッションを低減できる。
【0010】
第2の態様によれば、隙間は、開口部から径方向の外側に向かって延びる第1対向部と、第1対向部に連なる第2対向部と、を有する。第2対向部は第1対向部が延びる方向と異なる方向に向かって延びるので、副室内のガス流が溶融部に到達し難くなる。溶融部の過熱をさらに低減できるので、第1の態様の効果に加え、副室に流入した燃料ガスのプレイグニッションをさらに低減できる。
【0011】
第3の態様によれば、主体金具の内周面と第1の面とが交わる第1の線、又は、キャップの内面と第2の面とが交わる第2の線のうち径方向の外側に位置する線(外側線)と棚部より先端側における外周面または外面との間の径方向の最短距離Aと、溶融部のうち隙間に露出した部分と外側線との間の径方向の最短距離Bと、の間にB/A≧0.1の関係がある。隙間の開口部から溶融部までの径方向の長さを確保できるので、火炎を含むガス流に溶融部がさらに曝され難くなる。また、開口部から溶融部までの経路を長くできるので、開口部から隙間に進入したガス流が溶融部に至るまでに主体金具やキャップにガス流から熱が伝わり、ガス流の温度が低下して溶融部の過熱をさらに低減できる。第1又は第2の態様の効果に加え、副室に流入した燃料ガスのプレイグニッションをさらに低減できる。
【0012】
第4の態様によれば、軸線を含む断面において、噴口の内面側の縁を結んだ線分の中点から引いた垂線は、開口部の縁を結んだ線分に交わらない。噴口から副室に流入した燃料ガスが溶融部にさらに当たり難くなるので、溶融部の温度変化をさらに低減できる。第1から第3の態様のいずれかの効果に加え、熱応力によって溶融部に生じるクラックをさらに低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施の形態におけるスパークプラグの部分断面図である。
図2図1のIIで示す部分を拡大したスパークプラグの断面図である。
図3図2のIIIで示す部分を拡大したスパークプラグの断面図である。
図4】第2実施の形態におけるスパークプラグの断面図である。
図5図4のVで示す部分を拡大したスパークプラグの断面図である。
図6】第3実施の形態におけるスパークプラグの断面図である。
図7】第4実施の形態におけるスパークプラグの断面図である。
図8】第5実施の形態におけるスパークプラグの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照して説明する。図1は第1実施の形態におけるスパークプラグ10の部分断面図である。図1には、スパークプラグ10の先端側の部位の軸線Oを含む断面が図示されている。図2図1のIIで示す部分を拡大したスパークプラグ10の軸線Oを含む断面図である。図1及び図2では、紙面下側をスパークプラグ10の先端側、紙面上側をスパークプラグ10の後端側という(図3から図8においても同じ)。図1に示すようにスパークプラグ10は、絶縁体11、中心電極14、主体金具20、接地電極30及びキャップ40を備えている。
【0015】
絶縁体11は、軸線Oに沿って延びる軸孔12を有する略円筒状の部材であり、機械的特性や高温下の絶縁性に優れるアルミナ等のセラミックスにより形成されている。絶縁体11は外周に先端向き面13(図2参照)が設けられている。本実施形態では、先端向き面13は先端側に向かうにつれて縮径する円錐面だが、これに限られない。先端向き面13は軸線Oに垂直な面であっても良い。
【0016】
絶縁体11の軸孔12の先端側には中心電極14が配置されている。中心電極14の先端部15(図2参照)は、絶縁体11から先端側に突き出している。中心電極14は、軸孔12内で端子金具16と電気的に接続されている。端子金具16は、高圧ケーブル(図示せず)が接続される棒状の部材であり、導電性を有する金属材料(例えば低炭素鋼等)によって形成されている。端子金具16は絶縁体11の後端に固定されている。
【0017】
主体金具20は、導電性を有する金属材料(例えば低炭素鋼等)によって形成された略円筒状の部材である。主体金具20は絶縁体11の外周に配置されている。主体金具20の胴部21の外周には、おねじ22が設けられている。おねじ22は、エンジンのねじ穴(図示せず)にはまる。主体金具20の胴部21、接地電極30及びキャップ40の熱は、おねじ22を通ってエンジンに移動する。
【0018】
図2に示すように胴部21の内周には、絶縁体11の先端向き面13の先端側に位置する棚部23が設けられている。棚部23は、絶縁体11の先端向き面13を係止する。本実施形態では、棚部23よりも先端側の主体金具20の内周面24は、棚部23の内周面よりも径方向の外側に位置する。これにより、棚部23よりも先端側の主体金具20の内周面24と棚部23の内周面とが同一の面内にある場合に比べ、胴部21の径方向の内側にできる空間の体積を大きくできる。
【0019】
主体金具20は、胴部21に接地電極30が接合されている。接地電極30は、例えばPt,Ni,Ir等のうちの1種以上を主成分とする金属製の棒状の部材である。本実施形態では接地電極30はおねじ22の位置に配置されており、胴部21を貫通している。接地電極30の端部31は、中心電極14の先端部15に対向している。中心電極14の先端部15と接地電極30の端部31との間に火花ギャップ32が設けられている。
【0020】
主体金具20の胴部21にキャップ40が接続されている。キャップ40は半球状の部材であり、例えばFe,Ni,Cu等の1種以上を主成分とする金属材料で形成されている。キャップ40は、溶融部41を介して主体金具20に接合されている。溶融部41はキャップ40と主体金具20とが溶けてなる。
【0021】
キャップ40は、中心電極14の先端部15と接地電極30の端部31とを先端側から覆い、主体金具20の胴部21とキャップ40とに囲まれた副室42を形成する。キャップ40には、キャップ40の内面43から外面44まで突き抜けた噴口45が設けられている。噴孔45はエンジン(図示せず)の燃焼室と副室42とを連通する。噴口45の内面43側の縁45a,45aを結んだ線分45bの中点から引いた垂線45cは、開口部48(図1参照、後述する)よりも後端側の主体金具20の胴部21に交わる。
【0022】
図3図2のIIIで示す部分を拡大したスパークプラグ10の軸線Oを含む断面図である。溶融部41は、主体金具20及びキャップ40の全周に亘って連続している。スパークプラグ10は、棚部23(図2参照)よりも先端側の主体金具20の内周面24と棚部23よりも先端側の主体金具20の外周面25とを接続する主体金具20の第1の面26と、キャップ40の内面43と外面44とを接続するキャップ40の第2の面46と、の間に、副室42から溶融部41へ至る隙間47がある。
【0023】
隙間47は、主体金具20及びキャップ40の全周のうちの一部に存在していても良いし、主体金具20及びキャップ40の全周に断続的に存在していても良い。本実施形態では、隙間47は、主体金具20及びキャップ40の全周に亘って連続している。第1の面26は、隙間47に接する面、及び、主体金具20と溶融部41との間の界面からなる。第2の面46は、隙間47に接する面、及び、キャップ40と溶融部41との間の界面からなる。
【0024】
隙間47は、副室42に対して径方向に開口する開口部48を有している。開口部48は、隙間47のうち、第1の面26と内周面24とが交わる第1の線27と、第2の面46と内面43とが交わる第2の線49と、の間の部分である。第1の線27及び第2の線49は、開口部48の縁を示す。開口部48の周方向の寸法(長さ)は、開口部48の軸線方向の寸法(幅)よりも長い。本実施形態では、第1の面26と第2の面46との間の軸線方向の距離は、隙間47の開口部48から溶融部41へ向かうにつれて次第に短くなる。
【0025】
エンジン(図示せず)に取り付けられたスパークプラグ10は、エンジンのバルブ操作により、エンジンの燃焼室から噴口45を通って副室42に燃料ガスが流入する。スパークプラグ10は、中心電極14と接地電極30との間の放電により、火花ギャップ32に火炎核を生成する。火炎核が成長すると副室42内の燃料ガスに点火し燃料ガスが燃焼する。燃料ガスの燃焼によって生じる膨張圧力により、火炎を含むガス流が生じ、火炎を含むガスを噴口45から燃焼室に噴射する。その火炎の噴流によって燃焼室内の燃料ガスが燃焼する。
【0026】
スパークプラグ10は、副室42に対して径方向に開口する開口部48を含む隙間47が、副室42から溶融部41へ至るので、燃料ガスが燃焼して副室42内に生成された軸線方向の旋回流(縦渦のガス流)が、開口部48から隙間47に入り難くなる。これにより火炎を含むガス流の温度に比べて温度が低いガス(低温ガス)が隙間47に滞留し易くなり、溶融部41は低温ガスに曝される。従って溶融部41の過熱を低減できる。よって噴口45を通って燃焼室から副室42に流入した燃料ガスの、溶融部41が火種となって生じるプレイグニッションを低減できる。
【0027】
隙間47に低温ガスが滞留すると、エンジンのバルブ操作によって燃焼室から噴口45を通って副室42に流入した燃料ガスが溶融部41に当たり難くなるので、低温ガスの温度よりも温度が低い燃料ガスによって溶融部41が冷やされ難くなる。噴口45からガス流を噴射した後、噴口45から副室42へ燃料ガスが流入したときの溶融部41の温度変化を低減できるので、熱応力によって溶融部41に生じるクラックを低減できる。
【0028】
軸線Oを含む断面において(図3参照)、第1の線27を示す点と第2の線49を示す点を通る直線50と軸線Oとのなす角θは30°以下が好ましい。これにより第1の面26と第2の面46との間の段差を低減できるので、ガス流の乱れを抑え、ガス流の隙間47への侵入を低減できる。本実施形態では、第1の線27よりも第2の線49が径方向の内側に位置するが、これに限られない。第1の線27が、第2の線49よりも径方向の内側に位置していても良い。角θは15°以下がより好ましく、10°以下がさらに好ましい。
【0029】
なお、第1の面26と内周面24とが交わる角に面取りや丸みが付されている場合には、軸線Oを含む断面において、第1の面26を延長した直線と内周面24を延長した直線との交点を、第1の線27を示す点とする。第2の面46と内面43とが交わる角に面取りや丸みが付されている場合には、軸線Oを含む断面において、第2の面46を延長した直線と内面43を延長した直線との交点を、第2の線49を示す点とする。これにより第1の線27を示す点と第2の線49を示す点を通る直線50を決定する。
【0030】
開口部48の縁27,47を結ぶ線分(直線50のうち縁27,47で切り取られる部分)は、噴口45(図1及び図2参照)の内面43側の縁45a,45aを結んだ線分45bの中点から引いた垂線45cに交わらない。これにより噴口45から副室42に流入した燃料ガスが溶融部41にさらに当たり難くなるので、溶融部41の温度変化をさらに低減できる。従って熱応力によって溶融部41に生じるクラックをさらに低減できる。
【0031】
距離Aは、第1の線27と第2の線49のうち径方向の外側に位置する外側線(本実施形態では第1の線27)と、主体金具20とキャップ40のうち外側線を含む部材(本実施形態では主体金具20)の外周面25と、の間の径方向の最短距離である。距離Bは、溶融部41のうち隙間47に露出した部分51と第1の線27(外側線)との間の最短距離である。
【0032】
最短距離Bと最短距離Aとの間にB/A≧0.1の関係があると好ましい。隙間47の開口部48から溶融部41までの径方向の長さを確保できるので、火炎を含むガス流に溶融部41がさらに曝され難くなるからである。溶融部41の過熱をさらに低減できるので、副室42に流入した燃料ガスのプレイグニッションをさらに低減できる。また、開口部48から溶融部41までの経路を長くできるので、開口部48から隙間47に進入したガス流が溶融部41に至るまでに主体金具20やキャップ40にガス流から熱が伝わり、ガス流の温度が低下する。よって溶融部41の過熱をさらに低減できる。
【0033】
なお、第1の面26と内周面24とが交わる角に面取りや丸みが付されている場合には、軸線Oを含む断面において、第1の面26を延長した直線と内周面24を延長した直線との交点を、第1の線27を示す点とする。第2の面46と内面43とが交わる角に面取りや丸みが付されている場合には、軸線Oを含む断面において、第2の面46を延長した直線と内面43を延長した直線との交点を、第2の線49を示す点とする。第1の線27を示す点と第2の線49を示す点のうち径方向の外側に位置する点を、外側線を示す点として最短距離A,Bを決定する。
【0034】
隙間47の径方向の長さ(最短距離B)は、開口部48の軸線方向の寸法(幅)よりも長い。これにより火炎を含むガス流に溶融部41がさらに曝され難くなる。
【0035】
図4及び図5を参照して第2実施の形態について説明する。第1実施形態では、棚部23よりも先端側の主体金具20の内周面24が、棚部23の内周面よりも径方向の外側に位置する場合について説明した。これに対し第2実施形態では、棚部23よりも先端側の主体金具60の内周面61と棚部23の内周面とが同一の面内にある場合について説明する。なお、第1実施形態で説明した部分と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
【0036】
図4は第2実施の形態におけるスパークプラグの断面図である。図5図4のVで示す部分を拡大したスパークプラグの軸線Oを含む断面図である。図4は、図2と同様に、図1のIIで示す部分を拡大した軸線Oを含む断面図である。第2実施形態の主体金具60及びキャップ64は、第1実施形態の主体金具20及びキャップ40と同様に、絶縁体11を主体金具60が保持し、主体金具60に溶融部41を介してキャップ64が接合されている。
【0037】
図4に示すように主体金具60には、絶縁体11の先端向き面13の先端側に位置する棚部23が設けられている。本実施形態では、棚部23よりも先端側の主体金具60の内周面61と棚部23の内周面とが同一の面内にある。キャップ64は、溶融部41を介して主体金具60に接合されている。溶融部41は、主体金具60及びキャップ64の全周に亘って連続している。
【0038】
図5に示すように、棚部23(図4参照)よりも先端側の主体金具60の内周面61と外周面25とを接続する主体金具60の第1の面62と、キャップ64の内面65と外面44とを接続するキャップ64の第2の面66と、の間に、副室42から溶融部41へ至る隙間68がある。第1の面62は、隙間68に接する面、及び、主体金具60と溶融部41との間の界面からなる。第2の面66は、隙間68に接する面、及び、キャップ64と溶融部41との間の界面からなる。
【0039】
隙間68は、副室42に対して径方向に開口する開口部69を有している。開口部69は、隙間68のうち、第1の面62と内周面61とが交わる第1の線63と、第2の面66と内面65とが交わる第2の線67と、の間の部分である。隙間68によって、副室42内に生成された火炎を含むガス流に溶融部41が曝され難くなるので、溶融部41の過熱を低減できる。
【0040】
距離Aは、第1の線63と第2の線67のうち径方向の外側に位置する外側線(本実施形態では第2の線67)と、主体金具60とキャップ64のうち外側線を含む部材(本実施形態ではキャップ64)の外面44と、の間の径方向の最短距離である。溶融部41のうち隙間68に露出した部分51と第2の線67(外側線)との間の最短距離Bと最短距離Aとの間にB/A≧0.1の関係があると好ましいのは、第1実施形態と同じである。
【0041】
第1の面62と内周面61とが交わる角に面取りや丸みが付されている場合に、第1の面62を延長した直線と内周面61を延長した直線との交点を第1の線63を示す点とすることや、第2の面66と内面65とが交わる角に面取りや丸みが付されている場合に、第2の面66を延長した直線と内面65を延長した直線との交点を第2の線67を示す点とすることは、第1実施形態と同じである。
【0042】
図6を参照して第3実施の形態について説明する。第1実施形態および第2実施形態では、隙間47,68に接する第1の面26,62や第2の面46,66がほぼ平らな場合について説明した。これに対し第2実施形態では、第1の面71及び第2の面74が屈曲している場合について説明する。なお、第1実施形態で説明した部分と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
【0043】
図6は第3実施の形態におけるスパークプラグの断面図である。図6は、図3と同様に、図2のIIIで示す部分を拡大した軸線Oを含む断面図である。第3実施形態の主体金具70及びキャップ73は、第1実施形態の主体金具20及びキャップ40と同様に、絶縁体11(図1参照)を主体金具70が保持し、主体金具70に溶融部41を介してキャップ73が接合されている。
【0044】
棚部23(図2参照)よりも先端側の主体金具70の内周面24と外周面25とを接続する主体金具70の第1の面71と、キャップ73の内面43と外面44とを接続するキャップ73の第2の面74と、の間に、副室42から溶融部41へ至る隙間76がある。第1の面71は、隙間76に接する面、及び、主体金具70と溶融部41との間の界面からなる。第2の面74は、隙間76に接する面、及び、キャップ73と溶融部41との間の界面からなる。第1の面71のうち隙間76に接する面は、第1の面71と内周面24とが交わる第1の線72から径方向の外側へ延び、後端側へ屈曲している。第2の面74のうち隙間76に接する面は、第2の面74と内面43とが交わる第2の線75から径方向の外側へ延び、後端側へ屈曲している。
【0045】
隙間76は、副室42に対して径方向に開口する開口部77を有している。開口部77は、隙間76のうち第1の線72と第2の線75との間の部分である。隙間76は、開口部77から径方向の外側へ向かって延びる第1対向部78と、第1対向部78に連なり、第1対向部78が延びる方向と異なる方向に向かって延びる第2対向部79と、を含む。本実施形態では、第2対向部79は第1対向部78から後端側へ向かって延びている。
【0046】
副室42から溶融部41へ至る隙間76があるので、副室42内に生成された火炎を含むガス流に溶融部41が曝され難くなる。よって溶融部41の過熱を低減できる。さらに第1対向部78が延びる方向と異なる方向に向かって延びる第2対向部79があるので、副室内のガス流が溶融部41に到達し難くなる。溶融部41の過熱をさらに低減できるので、副室42に流入した燃料ガスのプレイグニッションをさらに低減できる。
【0047】
開口部77の軸線方向の寸法(幅)は、第2対向部79の径方向の寸法(幅)よりも狭い。これにより副室42内のガス流が開口部77に進入し難くなる。よって溶融部41の過熱をさらに低減できる。
【0048】
第2対向部79は第1対向部78から後端側へ向かって延びているので、第2対向部79が第1対向部78から先端側へ向かって延びる場合に比べ、おねじ22(図2参照)のより近くに溶融部41を配置できる。溶融部41の熱がおねじ22を通ってエンジン(図示せず)に移動し易くなるので、溶融部41の過熱をさらに低減できる。
【0049】
距離Aは、第1の線72と第2の線75のうち径方向の外側に位置する外側線(本実施形態では第1の線72)と、主体金具70とキャップ73のうち外側線を含む部材(本実施形態では主体金具70)の外周面25と、の間の径方向の最短距離である。溶融部41のうち隙間76に露出した部分51と第1の線72(外側線)との間の最短距離Bと最短距離Aとの間にB/A≧0.1の関係があると好ましいのは第1実施形態と同じである。
【0050】
第1対向部78に接する第1の面71と内周面24とが交わる角に面取りや丸みが付されている場合に、第1の面71を延長した直線と内周面24を延長した直線との交点を第1の線72を示す点とすることや、第1対向部78に接する第2の面74と内面43とが交わる角に面取りや丸みが付されている場合に、第2の面74を延長した直線と内面43を延長した直線との交点を第2の線75を示す点とすることは、第1実施形態と同じである。
【0051】
図7を参照して第4実施の形態について説明する。第3実施形態では、第1の面71及び第2の面74が同じ方向に屈曲している場合について説明した。これに対し第4実施形態では、第1の面81及び第2の面84が異なる方向に屈曲している場合について説明する。なお、第1実施形態で説明した部分と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
【0052】
図7は第4実施の形態におけるスパークプラグの断面図である。図7は、図3と同様に、図2のIIIで示す部分を拡大した軸線Oを含む断面図である。第4実施形態の主体金具80及びキャップ83は、第1実施形態の主体金具20及びキャップ40と同様に、絶縁体11(図1参照)を主体金具80が保持し、主体金具80に溶融部41を介してキャップ83が接合されている。
【0053】
棚部23(図2参照)よりも先端側の主体金具80の内周面24と外周面25とを接続する主体金具80の第1の面81と、キャップ83の内面43と外面44とを接続するキャップ83の第2の面84と、の間に、副室42から溶融部41へ至る隙間86がある。第1の面81は、隙間86に接する面、及び、主体金具80と溶融部41との間の界面からなる。第2の面84は、隙間86に接する面、及び、キャップ83と溶融部41との間の界面からなる。第1の面81のうち隙間86に接する面は、第1の面81と内周面24とが交わる第1の線82から径方向の外側へ延び、先端側へ屈曲している。第2の面84のうち隙間86に接する面は、第2の面84と内面43とが交わる第2の線85から径方向の外側へ延び、後端側へ屈曲している。
【0054】
隙間86は、副室42に対して径方向に開口する開口部87を有している。開口部87は、隙間86のうち第1の線82と第2の線85との間の部分である。副室42から溶融部41へ至る隙間86があるので、副室42内に生成された火炎を含むガス流に溶融部41が曝され難くなる。よって溶融部41の過熱を低減できる。
【0055】
距離Aは、第1の線82と第2の線85のうち径方向の外側に位置する外側線(本実施形態では第2の線85)と、主体金具80とキャップ83のうち外側線を含む部材(本実施形態ではキャップ83)の外面44と、の間の径方向の最短距離である。溶融部41のうち隙間86に露出した部分51と第2の線85(外側線)との間の最短距離Bと最短距離Aとの間にB/A≧0.1の関係があると好ましいのは、第1実施形態と同じである。
【0056】
第1の面81と内周面24とが交わる角に面取りや丸みが付されている場合に、第1の面81を延長した直線と内周面24を延長した直線との交点を第1の線82を示す点とすることや、第2の面84と内面43とが交わる角に面取りや丸みが付されている場合に、第2の面84を延長した直線と内面43を延長した直線との交点を第2の線85を示す点とすることは、第1実施形態と同じである。
【0057】
図8を参照して第5実施の形態について説明する。第1実施形態から第4実施形態では、突合せ溶接によって主体金具とキャップとの間に溶融部41が設けられる場合について説明した。これに対し第5実施形態では、重ね継ぎ溶接によって主体金具90とキャップ93との間に溶融部41が設けられる場合について説明する。なお、第1実施形態で説明した部分と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
【0058】
図8は第5実施の形態におけるスパークプラグの断面図である。図8は、図3と同様に、図2のIIIで示す部分を拡大した軸線Oを含む断面図である。第5実施形態の主体金具90及びキャップ93は、第1実施形態の主体金具20及びキャップ40と同様に、絶縁体11(図1参照)を主体金具90が保持し、主体金具90に溶融部41を介してキャップ93が接合されている。キャップ93は、主体金具90の一部の内側に配置されている。
【0059】
棚部23(図2参照)よりも先端側の主体金具90の内周面24と外周面25とを接続する主体金具90の第1の面91と、キャップ93の内面94と外面95とを接続するキャップ93の第2の面96と、の間に、副室42から溶融部41へ至る隙間98がある。第1の面91は、隙間98に接する面、及び、主体金具90と溶融部41との間の界面からなる。第2の面96は、隙間98に接する面、及び、キャップ93と溶融部41との間の界面からなる。キャップ93と溶融部41との間の界面は、キャップ93の外面95と第2の面96のうち隙間98に接する面とを接続している。
【0060】
隙間98は、副室42に対して径方向に開口する開口部99を有している。開口部99は、隙間98のうち、第1の面91と内周面24とが交わる第1の線92と、第2の面96と内面94とが交わる第2の線97と、の間の部分である。副室42から溶融部41へ至る隙間98があるので、副室42内に生成された火炎を含むガス流に溶融部41が曝され難くなる。よって溶融部41の過熱を低減できる。
【0061】
距離Aは、第1の線92と第2の線97のうち径方向の外側に位置する外側線(本実施形態では第1の線92)と、主体金具90とキャップ93のうち外側線を含む部材(本実施形態では主体金具90)の外周面25と、の間の径方向の最短距離である。溶融部41のうち隙間98に露出した部分51と第1の線92(外側線)との間の最短距離Bと最短距離Aとの間にB/A≧0.1の関係があると好ましいのは、第1実施形態と同じである。
【0062】
第1の面91と内周面24とが交わる角に面取りや丸みが付されている場合に、第1の面91を延長した直線と内周面24を延長した直線との交点を第1の線92を示す点とすることや、第2の面96と内面94とが交わる角に面取りや丸みが付されている場合に、第2の面96を延長した直線と内面94を延長した直線との交点を第2の線97を示す点とすることは、第1実施形態と同じである。
【0063】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0064】
実施形態では、球冠状の内面43,65及び外面44を有する半球状のキャップ40,64,73,83,93を主体金具20,60,70,80,90に接合する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。キャップの形状は適宜設定できる。例えば有底円筒状や円板状のキャップを採用することは当然可能である。
【0065】
実施形態では、主体金具20,60のおねじ22の位置に直線状の接地電極30が接合される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。接地電極30は主体金具20,60に接合されていても、キャップ40,64,73,83,93に接合されていても構わない。接地電極30は直線状であるものに限られない。接地電極30は屈曲していても良い。中心電極14の先端部15の先端側に火花ギャップ32を設けるものに限られない。中心電極14の先端部15の径方向の外側に火花ギャップ32を設けても良い。
【0066】
第3実施形態では、第2対向部79が、第1対向部78よりも後端側に位置する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。第2対向部79が、第1対向部78よりも先端側に位置するように、隙間76の形を設定することは当然可能である。
【0067】
第4実施形態では、第1の面81と第2の面84の両方が屈曲している場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。第1の面81又は第2の面84のいずれかを平坦な面にすることは当然可能である。
【0068】
第5実施形態では、主体金具90の内側にキャップ93を重ねた状態で、重ね継ぎ溶接によって溶融部41が設けられる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。これとは逆に、キャップ93の内側に主体金具90を重ねた状態で、重ね継ぎ溶接によって溶融部41を設けることは当然可能である。
【符号の説明】
【0069】
10 スパークプラグ
11 絶縁体
12 軸孔
13 先端向き面
14 中心電極
15 先端部
20,60,70,80,90 主体金具
23 棚部
24,61 内周面
25 外周面
26,62,71,81,91 第1の面
27,72,92 第1の線(外側線、開口部の縁)
30 接地電極
31 端部
32 火花ギャップ
40,64,73,83,93 キャップ
41 溶融部
42 副室
43,65,94 内面
44,95 外面
45 噴口
45a 噴口の縁
45b 線分
45c 垂線
46,66,74,84,96 第2の面
47,68,76,86,98 隙間
48,69,77,87,99 開口部
49,75,97 第2の線
51 隙間に露出した部分
63,82 第1の線(開口部の縁)
67,85 第2の線(外側線、開口部の縁)
78 第1対向部
79 第2対向部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8