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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-21
(45)【発行日】2023-06-29
(54)【発明の名称】硬化物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/50 20060101AFI20230622BHJP
   C08F 4/36 20060101ALI20230622BHJP
   C08F 20/20 20060101ALI20230622BHJP
【FI】
C08F2/50
C08F4/36
C08F20/20
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019214814
(22)【出願日】2019-11-28
(65)【公開番号】P2020094196
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2022-09-20
(31)【優先権主張番号】P 2018223646
(32)【優先日】2018-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今井 奨
(72)【発明者】
【氏名】矢野 章世
【審査官】今井 督
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-010769(JP,A)
【文献】特開昭54-074887(JP,A)
【文献】特開平08-045604(JP,A)
【文献】国際公開第2018/221177(WO,A1)
【文献】Davies, Alwyn G,Organic peroxides. Part 12. The preparation and properties of some triazinyl peroxides,Journal of the Chemical Society, Perkin Transactions 2: Physical Organic Chemistry,1981年,vol. 11,pages 1512-1519,https://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/1981/p2/p29810001512
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/50
C08F 4/36
C08F 20/00
CAPlus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化物の製造方法であって、
ラジカル重合性化合物と下記一般式(1)で表されるトリアジンペルオキシド誘導体を含む組成物に活性エネルギー線を照射する工程(I)を含み、
前記硬化物の厚みが300μm超であることを特徴とする硬化物の製造方法。
【化1】
(式(1)中、RおよびRは独立してメチル基またはエチル基を表す。Rは炭素数1~5の脂肪族炭化水素基、またはアルキル基を有してもよい炭素数6~9の芳香族炭化水素基を表す。Xは下記一般式(2):Ar、Ar、ArまたはArで表されるアリール基である。nは0から2の整数を表す。)
【化2】
(式(2)中、mは0から3の整数を表す。Rは、独立した置換基であって、炭素数1から6のアルキル基、一般式(3):R-Y-で表される置換基、ニトロ基、またはシアノ基を表す。前記Yは、酸素原子または硫黄原子を表す。前記Rは、炭素骨格中に、エーテル結合、チオエーテル結合、および、末端に水酸基のいずれか1つ以上を有していてもよい炭素数1~6の炭化水素基、またはアルキル基を有してもよい炭素数6~9の芳香族炭化水素基を表す。あるいは、Rは隣接する2つの前記一般式(3):R-Y-により5~6員環を形成してもよい。)
【請求項2】
前記一般式(2)中、mは0から3の整数を表し、Rは、独立した置換基であって、炭素数1から6のアルキル基、または一般式(3):R-Y-で表される置換基を表し、前記Yは、酸素原子を表し、前記Rは、炭素骨格中に、エーテル結合、および、末端に水酸基のいずれか1つ以上を有していてもよい炭素数1~6の炭化水素基、またはアルキル基を有してもよい炭素数6~9の芳香族炭化水素基を表し、あるいは、Rは隣接する2つの前記一般式(3):R-Y-により5~6員環を形成してもよいことを特徴とする請求項1に記載の硬化物の製造方法。
【請求項3】
硬化物の製造方法であって、
ラジカル重合性化合物と下記一般式(1)で表されるトリアジンペルオキシド誘導体を含む組成物の一部分に活性エネルギー線を照射する工程(I´)、及び
前記工程(I´)により生じた重合熱により、前記組成物における前記活性エネルギー線が照射されていない部分を熱重合する工程(II)を含むことを特徴とする硬化物の製造方法。
【化3】
(式(1)中、RおよびRは独立してメチル基またはエチル基を表す。Rは炭素数1~5の脂肪族炭化水素基、またはアルキル基を有してもよい炭素数6~9の芳香族炭化水素基を表す。Xは下記一般式(2):Ar、Ar、ArまたはArで表されるアリール基である。nは0から2の整数を表す。)
【化4】
(式(2)中、mは0から3の整数を表す。Rは、独立した置換基であって、炭素数1から6のアルキル基、一般式(3):R-Y-で表される置換基、ニトロ基、またはシアノ基を表す。前記Yは、酸素原子または硫黄原子を表す。前記Rは、炭素骨格中に、エーテル結合、チオエーテル結合、および、末端に水酸基のいずれか1つ以上を有していてもよい炭素数1~6の炭化水素基、またはアルキル基を有してもよい炭素数6~9の芳香族炭化水素基を表す。あるいは、Rは隣接する2つの前記一般式(3):R-Y-により5~6員環を形成してもよい。)
【請求項4】
前記一般式(2)中、mは0から3の整数を表し、Rは、独立した置換基であって、炭素数1から6のアルキル基、または一般式(3):R-Y-で表される置換基を表し、前記Yは、酸素原子を表し、前記Rは、炭素骨格中に、エーテル結合、および、末端に水酸基のいずれか1つ以上を有していてもよい炭素数1~6の炭化水素基、またはアルキル基を有してもよい炭素数6~9の芳香族炭化水素基を表し、あるいは、Rは隣接する2つの前記一般式(3):R-Y-により5~6員環を形成してもよいことを特徴とする請求項3に記載の硬化物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光重合開始剤とラジカル重合性化合物を含む光重合性組成物は、光硬化によって短時間で硬化することができ、また、フォトマスクやレーザー照射によってパターン形成することができるという利点をもつ。しかしながら光が到達しづらい厚膜の成形体の深部においては硬化が不十分になるという問題がある。
【0003】
この問題を解決する方法として、特許文献1では、光硬化性組成物を厚膜シート状に成形した後、シートの両面から光照射することで厚膜の内部まで硬化する方法が提案されている。また、特許文献2では、光重合開始剤と熱重合開始剤を併用し、光照射によって光重合開始剤から生成したラジカルが重合反応を起こし、その反応熱によって熱重合開始剤からラジカルを生成させ、深部まで硬化させる方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-163684号公報
【文献】特開2017-8132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の方法では、硬化方法が煩雑であり、かつ硬化できる膜厚が10mm以下に限られていた。また、特許文献2の方法では、深部(光の未照射部分)において光励起されなかった光重合開始剤は、未反応のまま硬化物中に残存することになり、高温高湿環境下では当該開始剤のブリードアウトや、硬化物の白化や黄変を引き起こす懸念があった。
【0006】
本発明の第1の目的は、上記の実情を鑑みてなされたものであり、ラジカル重合性化合物を含む組成物に活性エネルギー線を照射することのみで、一定以上の厚みを有する硬化物が得られる硬化物の製造方法を提供するものである。
【0007】
また、本発明の第2の目的は、上記の実情を鑑みてなされたものであり、ラジカル重合性化合物を含む組成物の一部分に活性エネルギー線を照射することで、前記組成物における前記活性エネルギー線の未照射部分を十分に硬化できる、硬化物の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、硬化物の製造方法であって、ラジカル重合性化合物と下記一般式(1)で表されるトリアジンペルオキシド誘導体を含む組成物に活性エネルギー線を照射する工程(I)を含み、前記硬化物の厚みが300μm超であることを特徴とする硬化物の製造方法に関する。
【化1】
(式(1)中、RおよびRは独立してメチル基またはエチル基を表す。Rは炭素数1~5の脂肪族炭化水素基、またはアルキル基を有してもよい炭素数6~9の芳香族炭化水素基を表す。Xは下記一般式(2):Ar、Ar、ArまたはArで表されるアリール基である。nは0から2の整数を表す。)
【化2】
(式(2)中、mは0から3の整数を表す。Rは、独立した置換基であって、炭素数1から6のアルキル基、一般式(3):R-Y-で表される置換基、ニトロ基、またはシアノ基を表す。前記Yは、酸素原子または硫黄原子を表す。前記Rは、炭素骨格中に、エーテル結合、チオエーテル結合、および、末端に水酸基のいずれか1つ以上を有していてもよい炭素数1~6の炭化水素基、またはアルキル基を有してもよい炭素数6~9の芳香族炭化水素基を表す。あるいは、Rは隣接する2つの前記一般式(3):R-Y-により5~6員環を形成してもよい。)
【0009】
また、本発明は、硬化物の製造方法であって、ラジカル重合性化合物と前記一般式(1)で表されるトリアジンペルオキシド誘導体を含む組成物の一部分に活性エネルギー線を照射する工程(I´)、及び前記工程(I´)により生じた重合熱により、前記組成物における前記活性エネルギー線が照射されていない部分を熱重合する工程(II)を含むことを特徴とする硬化物の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の硬化物の製造方法における効果の作用メカニズムの詳細は不明な部分があるが、以下のように推定される。ただし、本発明は、この作用メカニズムに限定して解釈されなくてもよい。
【0011】
本発明の第1の硬化物の製造方法は、ラジカル重合性化合物と一般式(1)で表されるトリアジンペルオキシド誘導体を含む組成物に活性エネルギー線を照射する工程(I)を含み、前記硬化物の厚みが300μm超である。また、本発明の第2の硬化物の製造方法は、ラジカル重合性化合物と一般式(1)で表されるトリアジンペルオキシド誘導体を含む組成物の一部分に活性エネルギー線を照射する工程(I´)、及び前記工程(I´)により生じた重合熱により、前記組成物における前記活性エネルギー線が照射されていない部分を熱重合する工程(II)を含む。前記組成物は、当該組成物の表面に活性エネルギー線を照射することによって、前記トリアジンペルオキシド誘導体が励起されてラジカルを発生するため、重合反応が開始する。さらに、当該製造方法は、当該重合反応の重合熱の拡散によって、前記トリアジンペルオキシド誘導体のペルオキシエステル基の分解が促進されることにより、外部から加熱を行うことなく、組成物の硬化反応を継続できるため、一定以上の厚さを有する硬化物が得られ、また、組成物の硬化反応を深部(活性エネルギーの未照射部分)に至るまで十分に硬化できる。よって、本発明の硬化物中には、未反応の前記トリアジンペルオキシド誘導体が残存しないことが期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の組成物は、ラジカル重合性化合物と一般式(1)で表されるトリアジンペルオキシド誘導体を含有する。
【0013】
<ラジカル重合性化合物>
前記ラジカル重合性化合物としては、エチレン性不飽和基を有する化合物を好ましく用いることができる。ラジカル重合性化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル類、スチレン類、マレイン酸エステル類、フマル酸エステル類、イタコン酸エステル類桂皮酸エステル類、クロトン酸エステル類、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、ビニルケトン類、アリルエーテル類、アリルエステル類、N-置換マレイミド類、N-ビニル化合物類、不飽和ニトリル類、オレフィン類等が挙げられる。これらの中でも、反応性が高い(メタ)アクリル酸エステル類を含むことが好ましい。ラジカル重合性化合物は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0014】
前記(メタ)アクリル酸エステル類は、単官能化合物および多官能化合物を使用することができる。単官能化合物としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレ-ト、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレ-ト、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレ-ト、2―エチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と脂環族アルコールとのエステル化合物;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等のアリール(メタ)アクリレート;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシ-1-アダマンチル(メタ)アクリレート、水酸基末端ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、水酸基末端ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシ基を有するモノマー等;メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、(3-エチルオキセタン-3-イル)メチル(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマール(メタ)アクリレート等の鎖状または環状のエーテル結合を有するモノマー等;N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、N-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド等の窒素原子を有するモノマー;2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート等のイソシアネート基を有するモノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル等のエポキシ基を有するモノマー;リン酸2-((メタ)アクリロイルオキシ)エチル等のリン原子を有するモノマー;3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のケイ素原子を有するモノマー;2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート等のフッ素原子を有するモノマー;(メタ)アクリル酸、コハク酸モノ(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)、フタル酸モノ(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)、マレイン酸モノ(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート等のカルボキシル基を有するモノマー等が挙げられる。
【0015】
前記多官能化合物としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートモノステアレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレートトリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、9,9-ビス(4-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)エトキシ)フェニル)フルオレン等の多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化合物;ビス(4-(メタ)アクリロキシフェニル)スルフィド、ビス(4-(メタ)アクリロイルチオフェニル)スルフィド、トリス(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、エチレンビス(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸亜鉛、(メタ)アクリル酸ジルコニウム、脂肪族ウレタンアクリレート、芳香族ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート等が挙げられる。
【0016】
なお、前記組成物は、前記ラジカル重合性化合物から得られた共重合体を加えることができる。
【0017】
<トリアジンペルオキシド誘導体>
前記トリアジンペルオキシド誘導体は、下記一般式(1)で表される。
【化3】
(式(1)中、RおよびRは独立してメチル基またはエチル基を表す。Rは炭素数1~5の脂肪族炭化水素基、またはアルキル基を有してもよい炭素数6~9の芳香族炭化水素基を表す。Xは下記一般式(2):Ar、Ar、ArまたはArで表されるアリール基である。nは0から2の整数を表す。)
【化4】
(式(2)中、mは0から3の整数を表す。Rは、独立した置換基であって、炭素数1から6のアルキル基、一般式(3):R-Y-で表される置換基、ニトロ基、またはシアノ基を表す。前記Yは、酸素原子または硫黄原子を表す。前記Rは、炭素骨格中に、エーテル結合、チオエーテル結合、および、末端に水酸基のいずれか1つ以上を有していてもよい炭素数1~6の炭化水素基、またはアルキル基を有してもよい炭素数6~9の芳香族炭化水素基を表す。あるいは、Rは隣接する2つの前記一般式(3):R-Y-により5~6員環を形成してもよい。)
【0018】
前記一般式(1)中、RおよびRは独立してメチル基またはエチル基を表す。RおよびRは、トリアジンペルオキシド誘導体の分解温度が高くなり、組成物の貯蔵安定性が高くなる観点から、メチル基が好ましい。
【0019】
前記一般式(1)中、Rは、炭素数が1~5の脂肪族炭化水素基、またはアルキル基を有してもよい炭素数6~9の芳香族炭化水素基である。前記アルキル基は、直鎖であってもよく、分岐鎖であってもよい。Rの具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、フェニル基、イソプロピルフェニル基が挙げられる。これらの中でも、トリアジンペルオキシド誘導体の合成が容易である観点から、メチル基、エチル基、プロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、フェニル基であることが好ましい。照射光に対する感度が高い点から、メチル基、エチル基であることがより好ましい。
【0020】
前記一般式(1)中の、nは、0から2の整数で表される。トリアジンペルオキシド誘導体の合成が容易である観点から、nが0または1であることが好ましい。nが0の場合においては、XがAr、Ar、またはArであり、nが1の場合においては、XがArであることが、照射光を効率よく吸収し、硬化物の黄色度が低減できる観点から、より好ましい。
【0021】
前記一般式(2)中の、mは、0から3の整数で表される。トリアジンペルオキシド誘導体の合成が容易である観点から、mが0から2であることが好ましく、照射光を効率よく吸収する観点から、mが1であることがより好ましい。
【0022】
前記一般式(2)中の、Rは、独立した置換基であって、炭素数1から6のアルキル基、一般式(3):R-Y-で表される置換基、ニトロ基、またはシアノ基を表す。Yは、酸素原子または硫黄原子を表す。前記Rは、炭素骨格中に、エーテル結合、チオエーテル結合、および、末端に水酸基のいずれか1つ以上を有していてもよい炭素数1~6の炭化水素基、またはアルキル基を有してもよい炭素数6~9の芳香族炭化水素基を表す。あるいは、Rは隣接する2つの前記一般式(3):R-Y-により5~6員環を形成してもよい。
【0023】
前記Rは、照射光を効率よく吸収する観点から、独立した置換基であって、炭素数1から6のアルキル基、または一般式(3):R-Y-で表される置換基を表し、Yは、酸素原子を表し、Rは、炭素骨格中に、エーテル結合、および、末端に水酸基のいずれか1つ以上を有していてもよい炭素数1~6の炭化水素基、またはアルキル基を有してもよい炭素数6~9の芳香族炭化水素基であることが好ましい。あるいは、Rは隣接する2つの前記一般式(3):R-X-により5~6員環を形成することが好ましい。
【0024】
前記Rの具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ヘキシル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、sec-ブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、n-ペンチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、2-ヒドロキシエトキシ基、2-メトキシエトキシ基、2-エトキシエトキシ基、2-ブトキシエトキシ基、2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ基、2-(2-エトキシエトキシ)エトキシ基、1,2-ジヒドロキシプロポキシ基、メチレンジオキシ基、ジメチルメチレンジオキシ基、エチレンジオキシ基等のアルコキシ基;フェニルオキシ基、4-イソプロピルフェニルオキシ基等のアリールオキシ基;メチルスルファニル基、エチルスルファニル基、ヘキシルスルファニル基、2-メトキシエチルスルファニル基、2-(2-メトキシエトキシ)エチルスルファニル基等のアルキルスルファニル基;フェニルスルファニル基、2-メチルフェニルスルファニル基、4-メチルフェニルスルファニル基等のアリールスルファニル基等が挙げられる。これら官能基を有する一般式(1)で表される化合物は、365nmの吸光度が高く、照射光を効率よく吸収するため好ましい。
【0025】
さらに、これらの中でも、トリアジンペルオキシド誘導体の組成物への溶解性が高く、合成が容易であり、照射光に対する感度が高い観点から、前記Rは、メトキシ基、エトキシ基、2-ヒドロキシエトキシ基がより好ましい。
【0026】
前記Rの置換位置は、特に限定されないが、XがArの場合、Rの少なくとも一つが、トリアジン基が置換されたベンゼン環の4位に置換されていることが好ましい。また、XがArの場合、Rの少なくとも一つが、トリアジン基が置換されたベンゼン環とは別のベンゼン環の4位に置換されていることが好ましい。また、XがArの場合、Rの少なくとも一つが、1位に置換されたトリアジン基の4位に置換されていることが好ましい。また、XがArの場合、Rの少なくとも一つが、トリアジン基が置換されたベンゼン環とは別のベンゼン環の4位に置換されていることが照射光を効率よく吸収するため好ましい。
【0027】
以下に、本発明のトリアジンペルオキシド誘導体の具体例を示すが、これらに限定されるものではない。
【化5】
【0028】
前記トリアジンペルオキシド誘導体としては、好ましくは化合物23、化合物25、化合物26、化合物27、化合物28、化合物31、化合物32、化合物33、化合物35、化合物37、化合物38、化合物39、化合物40、化合物41、化合物42、化合物43、化合物44、化合物46が挙げられ、より好ましくは化合物25、化合物26、化合物31、化合物32、化合物35、化合物37、化合物38、化合物41、化合物44が挙げられる。
【0029】
<トリアジンペルオキシド誘導体の製造方法>
前記一般式(1)で表されるトリアジンペルオキシド誘導体の製造方法は、例えば、下記反応式のように、塩化シアヌル誘導体を得る工程(以下、工程(A)とも称す)と、続いて、得られた塩化シアヌル誘導体と、ヒドロペルオキシドを、アルカリの存在下で、反応させる工程(以下、工程(B)とも称す)を含む方法が挙げられる。なお、上記の工程(A)および/または工程(B)の後には、余剰の原料等を減圧留去(除去)する工程や、精製工程を含んでもよい。
【化6】
(上記反応式において、n、R、R、RおよびXは前記一般式(1)と同じである。)
【0030】
前記工程(B)において、前記塩化シアヌル誘導体は、市販品を利用できる。なお、市販品がない場合、前記工程(A)において、グリニャール反応、リチオ化反応、鈴木カップリング反応、またはフリーデル・クラフツ反応等の公知の合成法に準じて合成することができる。
【0031】
<グリニャール反応による塩化シアヌル誘導体の合成>
前記工程(A)において、グリニャール反応により、塩化シアヌル誘導体を合成する場合、特開平6-179661号公報等に記載の公知の合成法に準じて合成することができる。前記工程(A)における芳香族化合物のZは塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子で表される芳香族化合物を使用することができる。芳香族化合物とマグネシウムを反応させることでグリニャール試薬を調製し、次いで得られたグリニャール試薬を塩化シアヌルと反応させることにより塩化シアヌル誘導体を合成することができる。
【0032】
上記のグリニャール試薬の調製において、マグネシウムは、芳香族化合物1モルに対して、0.8から2.0モル用いることが好ましく、1から1.5モル用いることがより好ましい。反応開始剤として、ヨウ素、ブロモエタン、ジブロモエタン等を用いてもよく、芳香族化合物1モルに対して、0.0001から0.01モル用いることが好ましい。反応温度は0から70℃が好ましく、10から60℃がより好ましい。反応時間は30分から20時間が好ましく、1時間から10時間がより好ましい。
【0033】
上記のグリニャール試薬の調製において、例えば、テトラヒドロフラン等のエーテル類等の溶媒を用いることができる。
【0034】
また、上記のグリニャール試薬と塩化シアヌルと反応において、塩化シアヌルは、芳香族化合物1モルに対して、0.7から1.5モル用いることが好ましく、0.8から1.2モル用いることがより好ましい。反応温度は-30から70℃が好ましく、-10から40℃がより好ましい。反応時間は10分から10時間が好ましく、30分から5時間であることがより好ましい。なお、調製したグリニャール試薬に塩化シアヌルを投入してもよく、塩化シアヌルの溶液にグリニャール試薬を投入してもよい。
【0035】
上記のグリニャール試薬と塩化シアヌルと反応において、例えば、テトラヒドロフラン等のエーテル類等の溶媒を用いることができる。
【0036】
<リチオ化反応による塩化シアヌル誘導体の合成>
前記工程(A)において、リチオ化反応により、塩化シアヌル誘導体を合成する場合、国際公開第2012/096263号等に記載の公知の合成法に準じて合成することができる。前記工程(A)における芳香族化合物のZは塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子で表される芳香族化合物を使用することができる。芳香族化合物とリチオ化剤を反応させることでリチオ化合物を調製し、次いで得られたリチオ化合物と塩化シアヌルを反応させることにより塩化シアヌル誘導体を合成することができる。
【0037】
前記リチオ化剤としては、メチルリチウム、n-ブチルリチウム、s-ブチルリチウム、t-ブチルリチウム等のアルキルリチウム類;フェニルリチウム等のアリールリチウム類;リチウムジイソプロピルアミド、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド等のリチウムアミド類を挙げることができ、n-ブチルリチウム、s-ブチルリチウム、t-ブチルリチウム、フェニルリチウムであることが好ましい。
【0038】
上記のリチオ化合物の調製において、リチオ化剤は、芳香族化合物1モルに対して、0.8から3.0モル用いることが好ましく、1.0から2.2モル用いることがより好ましい。反応温度は-100から50℃が好ましく、-80から0℃がより好ましい。反応時間は0.2から20時間が好ましく、0.5から10時間がより好ましい。
【0039】
上記のリチオ化合物の調製において、例えば、テトラヒドロフラン等のエーテル類等の溶媒を用いることができる。
【0040】
また、上記のリチオ化合物と塩化シアヌルと反応において、塩化シアヌルは、芳香族化合物1モルに対して、0.7から1.5モル用いることが好ましく、0.8から1.2モル用いることがより好ましい。反応温度は-30から70℃が好ましく、-10から40℃がより好ましい。反応時間は10分から10時間が好ましく、30分から5時間であることがより好ましい。なお、調製したリチオ化合物に塩化シアヌルを投入してもよく、塩化シアヌルの溶液にリチオ化合物を投入してもよい。
【0041】
上記のリチオ化合物と塩化シアヌルと反応において、例えば、テトラヒドロフラン等のエーテル類等の溶媒を用いることができる。
【0042】
<鈴木カップリングによる塩化シアヌル誘導体の合成>
前記工程(A)において、鈴木カップリング反応により、塩化シアヌル誘導体を合成する場合、国際公開第2012/096263号等に記載の公知の合成法に準じて合成することができる。例えば、前述のリチオ化合物をホウ素試薬と反応させることによって、芳香族化合物のZがボロニル基またはボロン酸に変換されたホウ素化合物を合成することができる。次いで得られたホウ素化合物を塩化シアヌルと反応させることにより塩化シアヌル誘導体を合成することができる。なお、ホウ素化合物の市販品が販売されている場合、そのまま使用することができる。
【0043】
前記ホウ素試薬としては、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリイソプロピル、2-イソプロポキシ-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン等が挙げられる。
【0044】
上記のホウ素化合物の合成において、ホウ素試薬は、リチオ化合物1モルに対して、0.8から3.0モル用いることが好ましく、1.0から2.0モル用いることがより好ましい。反応温度は-100から50℃が好ましく、-80から20℃がより好ましい。反応時間は10分から20時間が好ましく、30分から10時間がより好ましい。
【0045】
上記のホウ素化合物の合成において、例えば、テトラヒドロフラン等のエーテル類等の溶媒を用いることができる。
【0046】
また、上記のホウ素化合物と塩化シアヌルと反応において、塩化シアヌルは、ホウ素化合物1モルに対して、0.7から1.5モル用いることが好ましく、0.8から1.2モル用いることがより好ましい。反応温度は-30から70℃が好ましく、-10から40℃がより好ましい。反応時間は10分から10時間が好ましく、30分から5時間であることがより好ましい。なお、ホウ素化合物に塩化シアヌルを投入してもよく、塩化シアヌルの溶液にホウ素化合物を投入してもよい。
【0047】
上記のホウ素化合物と塩化シアヌルの反応において、パラジウム触媒およびアルカリを用いることが好ましく、必要に応じて配位子を添加しても良い。
【0048】
前記パラジウム触媒としては、酢酸パラジウム、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジクロリド、(ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン)パラジウムジクロリド-塩化メチレン錯体等が挙げられる。
【0049】
前記アルカリとしては、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、リン酸カリウム等のアルカリ金属塩等の無機塩基;トリエチルアミン等の有機塩基が挙げられる。
【0050】
前記配位子としては、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、2,2‘-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフタレン、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2,6‘-ジメトキシビフェニル等の有機リン系配位子等が挙げられる。
【0051】
上記のホウ素化合物と塩化シアヌルの反応において、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル類;メタノール、2-プロパノール等のアルコール類;トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素類;N,N-ジメチルホルムアミド等のアミド類等の有機溶媒を用いることができる。前記有機溶媒は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。さらに、前記有機溶媒と水との混合溶媒を用いることができる。
【0052】
<フリーデル・クラフツ反応による塩化シアヌル誘導体の合成>
前記工程(A)において、フリーデル・クラフツ反応により、塩化シアヌル誘導体を合成する場合、米国特許第5322941号等に記載の公知の合成法に準じて合成することができる。前記工程(A)における芳香族化合物のZは水素原子、n=0で表される芳香族化合物を使用することができる。塩化アルミニウム等のルイス酸の存在下、芳香族化合物と塩化シアヌルを反応させることにより塩化シアヌル誘導体を合成することができる。
【0053】
前記ルイス酸としては、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、塩化鉄(III)、塩化チタン(IV)、塩化スズ(IV)、塩化亜鉛、ビスマス(III)トリフラート、ハフニウム(IV)トリフラート、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体等を用いることができる。
【0054】
上記の芳香族化合物と塩化シアヌルの反応において、塩化シアヌルは、芳香族化合物1モルに対して、0.7から1.5モル用いることが好ましく、0.8から1.2モル用いることがより好ましい。塩化アルミニウムは、芳香族化合物1モルに対して、1.0から3.0モル用いることが好ましく、1.0から2.0モル用いることがより好ましい。反応温度は-50から60℃が好ましく、0から40℃がより好ましい。反応時間は10分から10時間が好ましく、30分から5時間であることがより好ましい。なお、芳香族化合物と塩化シアヌルの溶液に塩化アルミニウムを加えてもよく、塩化シアヌルと塩化アル
ミニウムの溶液に芳香族化合物を加えてもよい。
【0055】
上記の芳香族化合物と塩化シアヌルの反応において、例えば、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、キシレン等の溶媒を用いることができる。
【0056】
<トリアジンペルオキシド誘導体の合成>
前記工程(B)において、一般式(1)で表されるトリアジンペルオキシド誘導体の製造方法は、特に限定されないが、特公昭45-39468号公報等に記載の公知のトリアジンペルオキシドの合成法に準じて合成することができる。
【0057】
上記の工程(A)で得られた塩化シアヌル誘導体と、ヒドロペルオキシドを、アルカリの存在下で、反応させる工程(B)により、トリアジンペルオキシド誘導体が得られる。
【0058】
前記工程(B)において、ヒドロペルオキシドは、塩化シアヌル誘導体1モルに対して、目的物の収率性を高める観点から、1.8モル以上反応させることが好ましく、2.0モル以上反応させることがより好ましく、そして、5.0モル以下反応させることが好ましく、3.8モル以下反応させることがより好ましい。なお、ヒドロペルオキシドは、市販品を利用でき、市販品がない場合、特開昭58-72557号公報等に記載の公知の合成法に準じて合成することができる。
【0059】
前記工程(B)において、反応温度は、目的物の収率性を高める観点から、-10℃以上であることが好ましく、0℃以上であることがより好ましく、そして、40℃以下であることが好ましく、30℃以下であることがより好ましい。
【0060】
前記工程(B)において、反応時間は、原料や反応温度等によって異なるので一概には決定できないが、通常、目的物の収率性を高める観点から、10分から6時間が好ましい。
【0061】
前記工程(B)において、使用するアルカリは、特に制限はないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ピリジン、α―ピコリン、γ―ピコリン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン等が挙げられる。アルカリは、塩化シアヌル誘導体1モルに対して、目的物の収率性を高める観点から、1.8モル以上使用することが好ましく、2.0モル以上使用することがより好ましく、そして、5.0モル以下使用することが好ましく、3.8モル以下使用することがより好ましい。
【0062】
前記工程(B)では、塩化シアヌル誘導体が液状である場合は、有機溶媒を用いずに反応を行うことができる。また、塩化シアヌル誘導体が固体である場合は、有機溶媒を用いることが好ましい。有機溶媒としては、塩化シアヌル誘導体の種類により溶解度が異なるため、特に限定されないが、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族系炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類等が挙げられる。前記有機溶媒は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0063】
前記有機溶媒の使用量は、通常、原料の合計量100質量部に対して30~500質量部程度である。有機溶媒は工程(B)の後に留去することで、トリアジンペルオキシド誘導体を取り出してもよく、取り扱い性の向上や熱分解時の危険性を低減させるため、トリアジンペルオキシド誘導体を有機溶媒の希釈品として使用してもよい。
【0064】
前記工程(B)は、常圧下で、空気下で行うことができるが、窒素気流下または窒素雰囲気下で行ってもよい。
【0065】
前記精製工程としては、余剰の原料や副生物を除去するために、例えば、イオン交換水や、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基性水溶液、亜硫酸ナトリウム水溶液等を用いて洗浄し、目的物を精製する工程が挙げられる。
【0066】
以下、本発明の組成物の配合量等について説明する。
【0067】
前記トリアジンペルオキシド誘導体の含有量は、ラジカル重合性化合物100質量部に対して、0.01から20質量部であることが好ましく、0.02から10質量部であることがより好ましく、0.05から5質量部であることがさらに好ましい。前記トリアジンペルオキシド誘導体の含有量は、ラジカル重合性化合物100質量部に対して、0.01質量部未満では硬化反応が進行しないため好ましくない。また、前記トリアジンペルオキシド誘導体の含有量は、ラジカル重合性化合物100質量部に対して、20質量部より多い場合、ラジカル重合性化合物への溶解度が飽和に達し、組成物の成膜時に前記トリアジンペルオキシド誘導体の結晶が析出し、皮膜表面の荒れが問題になる場合や、前記トリアジンペルオキシド誘導体の分解残渣の増加により、硬化物の塗膜の強度が低下する場合があるため、好ましくない。
【0068】
また、前記組成物には、前記トリアジンペルオキシド誘導体以外にも、他の重合開始剤を用いることで、組成物の表面硬化性、深部硬化性、透明性等を改良することができる。他の重合開始剤の選択に当たっては、ラジカル重合性化合物、その他添加剤の種類、硬化物の膜厚等が考慮される。
【0069】
<その他の成分>
前記組成物には、コーティング剤や塗料、印刷インキ、感光性印刷版、接着剤、カラーレジストやブラックレジスト等の各種フォトレジスト等の用途で一般的に使用されている添加剤を配合できる。添加剤としては、例えば、増感剤(イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、9,10-ジブトキシアントラセン、クマリン、ケトクマリン、アクリジンオレンジ、カンファーキノン等)、重合禁止剤(p-メトキシフェノール、ヒドロキノン、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、フェノチアジン等)、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、レベリング剤、表面調整剤、界面活性剤、増粘剤、消泡剤、接着促進剤、可塑剤、エポキシ化合物、チオール化合物、エチレン性不飽和結合を有する樹脂、飽和樹脂、着色染料、蛍光染料、顔料(黄色顔料、青色顔料、赤色顔料、白色顔料、黒色顔料等)、炭素系材料(炭素繊維、カーボンブラック、黒鉛、黒鉛化カーボンブラック、活性炭、カーボンナノチューブ、フラーレン、グラフェン、カーボンマイクロコイル、カーボンナノホーン、カーボンエアロゲル等)、金属酸化物(酸化チタン、酸化イリジウム、酸化亜鉛、アルミナ等)、金属(銀、銅等)、無機化合物(シリカ、ガラス粉末、層状粘度鉱物、マイカ、タルク、炭酸カルシウム等)、無機充填剤(水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、ケイ酸ジルコニウム等)、分散剤、難燃剤等が挙げられる。添加剤は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0070】
前記添加剤は使用目的に応じて適宜選択され、特に制限されるものではないが、顔料、炭素系材料、金属酸化物、無機化合物、無機充填剤が好ましく、黒色顔料、カーボンブラック、アルミナ、シリカがより好ましい。
【0071】
前記添加剤の含有量は、使用目的に応じて適宜選択され、特に制限されるものではないが、通常、ラジカル重合性化合物100質量部に対して、500質量部以下であることが好ましく、100質量部以下であることがより好ましい。
【0072】
前記組成物には、粘度や塗装性、硬化膜の平滑性の改良のため、更に溶媒を加えることもできる。溶媒は、前記ラジカル重合性化合物、前記トリアジンペルオキシド誘導体、前記その他の成分を、溶解または分散することができるものであり、乾燥温度において揮発する溶媒であれば、特に制限されるものではない。
【0073】
前記溶媒としては、例えば、水、アルコール系溶媒、カルビトール系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、ラクトン系溶媒、不飽和炭化水素系溶媒、セロソルブアセテート系溶媒、カルビトールアセテート系溶媒やプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。溶媒は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0074】
前記溶媒を使用する場合、前記溶媒の使用量は、前記組成物の固形分100質量部に対して、10から1000質量部であることが好ましく、20から500質量部であることがより好ましい。
【0075】
<組成物の調製方法>
前記組成物を調整する場合には、収納容器内に前記ラジカル重合性化合物、前記トリアジンペルオキシド誘導体、必要に応じて、前記その他の成分を投入し、ペイントシェーカー、ビーズミル、サンドグラインドミル、ボールミル、アトライターミル、2本ロールミル、3本ロールミル等を用いて、常法に従って溶解または分散させればよい。また、必要に応じて、メッシュまたはメンブレンフィルター等を通してもろ過してもよい。
【0076】
なお、前記組成物の調整において、前記トリアジンペルオキシド誘導体は、組成物に最初から添加しておいてもよいが、組成物を比較的長時間保存する場合には、使用直前に前記トリアジンペルオキシド誘導体を、ラジカル重合性化合物を含む組成物中に溶解または分散させることが好ましい。
【0077】
<硬化物の製造方法>
本発明の第1の硬化物の製造方法は、前記ラジカル重合性化合物と前記一般式(1)で表されるトリアジンペルオキシド誘導体を含む組成物に活性エネルギー線を照射する工程(I)を含み、前記硬化物の厚みが300μm超である。また、本発明の第2の硬化物の製造方法は、ラジカル重合性化合物と一般式(1)で表されるトリアジンペルオキシド誘導体を含む組成物の一部分に活性エネルギー線を照射する工程(I´)、及び前記工程(I´)により生じた重合熱により、前記組成物における前記活性エネルギー線が照射されていない部分を熱重合する工程(II)を含む。
【0078】
前記組成物は、前記トリアジンペルオキシド誘導体を含むため、活性エネルギー線を照射することによって、固体状の硬化物が形成できる。よって、前記組成物およびその硬化物の形状は、何ら制限されるものではなく、例えば、シート状、板状、バルク状(塊状)などが挙げられる。前記組成物は、例えば、スピンコート法、バーコート法、スプレーコート法、ディップコート法、フローコート法、スリットコート法、ドクターブレードコート法、グラビアコート法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法、ディスペンサー印刷法等の種々の塗布方法で基板に塗布してもよく、また、深さのある容器に注型してもよい。また、前記基板及び容器は、例えば、ガラス、シリコンウエハ、金属、プラスチック等のフィルムやシート、および立体形状の成形品等が挙げられ、基板及び容器の形状が制限されることは無い。
【0079】
前記活性エネルギー線は、電子線、紫外線、可視光線、放射線等の活性エネルギー線が挙げられる。
【0080】
活性エネルギー線は、活性エネルギー線の波長が250から450nmの光を含むことが好ましく、硬化を迅速に行うことができる観点から、350から410nmの光を含むことがより好ましい。
【0081】
前記活性エネルギー線の照射の光源としては、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、紫外線無電極ランプ、発光ダイオード(LED)、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、太陽光、YAGレーザー等の固体レーザー、半導体レーザー、アルゴンレーザー等のガスレーザー等を使用することができる。なお、前記トリアジンペルオキシド誘導体の吸収が少ない可視光から赤外光の光を用いる場合には、前記添加剤として、その光を吸収する増感剤を使用することにより硬化を行なうことができる。
【0082】
前記活性エネルギー線の露光量は、前記組成物が、活性エネルギー線を照射することにより開始する重合反応の重合熱の拡散によって、前記トリアジンペルオキシド誘導体のペルオキシエステル基の分解が促進されることにより硬化できる露光量に適宜設定すべきであり、活性エネルギー線の波長や強度、前記組成物の成分に応じて適宜設定すべきである。一例として、UV-A領域での露光量は、10から5,000mJ/cmであることが好ましく、30から1,000mJ/cmであることがより好ましい。また、前記組成物に遮光成分を含有する場合は、UV-A領域での露光量は、100から500,000mJ/cmであることが好ましく、1,000から200,000mJ/cmであることがより好ましい。
【0083】
本発明の第1の硬化物の製造方法において、前記硬化物の厚みは、300μm超である。当該厚みは、前記硬化物の形状により、その厚さや長さを示すものであり、例えば、前記硬化物の形状が、シート状の場合、その膜厚を示し、また、バルク状の場合、その厚さや長さを示す。前記硬化物の厚みは、前記組成物が、活性エネルギー線を照射することにより開始する重合反応の重合熱の拡散によって、前記トリアジンペルオキシド誘導体のペルオキシエステル基の分解が促進されることにより硬化できる範囲であれば、その上限値に何ら制限されるものではないが、例えば、上限値として、例えば、500mm以下、300mm以下が例示できる。また、前記組成物の活性エネルギー線の届かない部分を硬化できる利点を活かす観点から、前記硬化物の厚みは、下限値として、例えば、400μm以上、500μm以上が例示できる。
【0084】
なお、本発明の第1および第2の硬化物の製造方法には、必要に応じ、加熱する工程を含むことができる。
【0085】
本発明の第1および第2の硬化物の製造方法、および得られる硬化物は、ハードコート剤、光ディスク用コート剤、光ファイバー用コート剤、モバイル端末用塗料、家電用塗料、化粧品容器用塗料、光学素子用内面反射防止塗料、高・低屈折率コート剤、遮熱コート剤、放熱コート剤、防曇剤等の塗料・コーティング剤;オフセット印刷インキ、グラビア印刷インキ、スクリーン印刷インキ、インクジェット印刷インキ、導電性インキ、絶縁性インキ、導光板用インキ等の印刷インキ;感光性印刷版;ナノインプリント材料;3Dプリンター用樹脂;ホログラフィー記録材料;歯科用材料;導波路用材料;レンズシート用ブラックストライプ;コンデンサ用グリーンシートおよび電極材料;FPD用接着剤、HDD用接着剤、光ピックアップ用接着剤、イメージセンサー用接着剤、有機EL用シール剤、タッチパネル用OCA、タッチパネル用OCR等の接着剤・シール剤;カラーレジスト、ブラックレジスト、カラーフィルター用保護膜、フォトスペーサー、ブラックカラムスペーサー、額縁レジスト、TFT配線用フォトレジスト、層間絶縁膜等のFPD用レジスト;液状ソルダーレジスト、ドライフィルムレジスト等のプリント基板用レジスト;半導体レジスト、バッファーコート膜等の半導体用材料等の各種用途に使用でき、その用途に特に制限は無い。
【実施例
【0086】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
【0087】
<トリアジンペルオキシド誘導体の合成>
[合成例1:化合物23の合成]
ヒートドライ乾燥した500mL三つ口フラスコに、マグネシウム1.69g(69.5mmol)、脱水テトラヒドロフラン57mL、触媒量のヨウ素を入れ、室温下で撹拌した。ここに、1-ブロモナフタレン7.07g(50.7mmol)と脱水テトラヒドロフラン57mLの混合溶液を滴下した後、還流撹拌させた。1時間後、内温を-60℃以下まで冷却した。別途調製した塩化シアヌル8.92g(48.4mmol)と脱水テトラヒドロフランの混合溶液を15分かけ滴下した。その後、30分かけて室温にあげ、水浴下で撹拌した。62時間後、反応液を氷浴で冷却し、1M塩酸を加え、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液でpHを8に調整した。次いで、イオン交換水160mLを加え、酢酸エチルで抽出した。油相を飽和食塩水で1回洗浄した後、硫酸マグネシウムで脱水した。ろ過後、油相を減圧下で濃縮し、粗体14.6gを得た。粗体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン/酢酸エチル=1/1から1/3)で精製し、5.14g(収率38%)の2,4-ジクロロ-6-(1-ナフタレニル)-1,3,5-トリアジンを得た。
【0088】
30mLナスフラスコにイオン交換水0.815g、48質量%水酸化ナトリウム水溶液0.272g(3.26mmol)を加え、30℃以下で69質量%tert-ブチルヒドロペルオキシド水溶液0.343g(2.61mmol)を徐々に加えた。ここに、2,4-ジクロロ-6-(1-ナフタレニル)-1,3,5-トリアジン0.300g(1.09mmol)とテトラヒドロフラン3mLの混合溶液を、10℃で10分かけて滴下し、20℃にて2時間反応させた。反応終了後、反応溶液を氷水50mLに投入した。析出した結晶をろ過し、イオン交換水で洗浄し、減圧下で乾燥させ、0.216g(収率52%)で本発明の化合物23を得た。得られた化合物23の性状、EI-MSおよびH-NMRによる分析結果を表1および表2に示す。
【0089】
[合成例2:化合物25の合成]
300mLナスフラスコに、1-メトキシナフタレン5.01g(31.7mmol)、脱水ジクロロメタン100mL、塩化シアヌル6.12g(33.2mmol)を入れ、氷浴下撹拌した。15分後、塩化アルミニウム4.43g(33.2mmol)を加え、室温に昇温した。1時間後、反応液を氷冷1M塩酸75mLに注ぎ、水相を分液した。油相を飽和食塩水100mLで洗浄し、無水硫酸ナトリウムにて脱水した。ろ過後、減圧濃縮し、粗体を9.59gの黄色固体を得た。粗体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン/トルエン=4/1から1.5/1)で精製し、8.05g(収率83%)の2,4-ジクロロ-6-(4-メトキシ-1-ナフタレニル)-1,3,5-トリアジンを得た。
【0090】
30mLナスフラスコにイオン交換水0.245g、48質量%水酸化ナトリウム水溶液0.0817g(0.98mmol)を加え、30℃以下で69質量%tert-ブチルヒドロペルオキシド水溶液0.103g(0.78mmol)を徐々に加えた。ここに、2,4-ジクロロ-6-(4-メトキシ-1-ナフタレニル)-1,3,5-トリアジン0.100g(0.33mmol)とテトラヒドロフラン2mLの混合溶液を、10℃で10分かけて滴下し、20℃にて4時間反応させた。反応終了後、酢酸エチル50mL、イオン交換水50mLを添加した後に、水相を分液した。油相を5%水酸化ナトリウム水溶液およびイオン交換水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。ろ過後、油相を減圧下で濃縮し、0.125g(収率93%)の本発明の化合物25を得た。得られた化合物25の性状、EI-MSおよびH-NMRによる分析結果を表1および表2に示す。
【0091】
[合成例3:化合物26の合成]
本発明の化合物26は、合成例1に記載の1-ブロモナフタレンを、2-ブロモ-6-メトキシナフタレンに変更したこと以外は、合成例1に記載の方法に準じて合成した。得られた化合物26の性状、EI-MSおよびH-NMRによる分析結果を表1および表2に示す。
【0092】
[合成例4:化合物31の合成]
本発明の化合物31は、合成例2に記載の1-メトキシナフタレンを、1-エトキシナフタレンに変更したこと以外は、合成例2に記載の方法に準じて合成した。得られた化合物31の性状、EI-MSおよびH-NMRによる分析結果を表1および表2に示す。
【0093】
[合成例5:化合物32の合成]
本発明の化合物32は、合成例2に記載の69質量%tert-ブチルヒドロペルオキシド水溶液を、85質量%tert-アミルヒドロペルオキシドに変更したこと以外は、合成例2に記載の方法に準じて合成した。得られた化合物32の性状、EI-MSおよびH-NMRによる分析結果を表1および表2に示す。
【0094】
[合成例6:化合物35の合成]
本発明の化合物35は、合成例1に記載の1-ブロモナフタレンを、4-ブロモ-4’-メトキシビフェニルに変更したこと以外は、合成例1に記載の方法に準じて合成した。得られた化合物35の性状、EI-MSおよびH-NMRによる分析結果を表1および表2に示す。
【0095】
[合成例7:化合物37の合成]
本発明の化合物37は、合成例1に記載の1-ブロモナフタレンを、4-ブロモ-4’-メトキシビフェニルに、及び69質量%tert-ブチルヒドロペルオキシド水溶液を85質量%tert-アミルヒドロペルオキシドに変更したこと以外は、合成例1に記載の方法に準じて合成した。得られた化合物37の性状、EI-MSおよびH-NMRによる分析結果を表1および表2に示す。
【0096】
[合成例8:化合物38の合成]
本発明の化合物38は、合成例1に記載の1-ブロモナフタレンを、4-ブロモ-4’-メトキシビフェニル、及び69質量%tert-ブチルヒドロペルオキシド水溶液を90質量%tert-ヘキシルヒドロペルオキシドに変更したこと以外は、合成例1に記載の方法に準じて合成した。得られた化合物38の性状、EI-MSおよびH-NMRによる分析結果を表1および表2に示す。
【0097】
[合成例9:化合物40の合成]
本発明の化合物40は、合成例1に記載の1-ブロモナフタレンを、4-ブロモ-4’-メトキシビフェニルに、及び69質量%tert-ブチルヒドロペルオキシド水溶液を80質量%クメンヒドロペルオキシドに変更したこと以外は、合成例1に記載の方法に準じて合成した。得られた化合物40の性状、EI-MSおよびH-NMRによる分析結果を表1および表2に示す。
【0098】
[合成例10:化合物41の合成]
本発明の化合物41は、合成例1に記載の1-ブロモナフタレンを、4-ブロモスチルベンに変更したこと以外は、合成例1に記載の方法に準じて合成した。得られた化合物41の性状、EI-MSおよびH-NMRによる分析結果を表1および表2に示す。
【0099】
[合成例11:化合物44の合成]
本発明の化合物44は、合成例1に記載の1-ブロモナフタレンを、p-(2-ブロモ)ビニルアニソールに変更したこと以外は、合成例1に記載の方法に準じて合成した。得られた化合物44の性状、EI-MSおよびH-NMRによる分析結果を表1および表2に示す。
【0100】
【表1】
【0101】
【表2】
【0102】
<実施例1>
<組成物の調整>
トリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学工業製)を100質量部、光重合開始剤として化合物23を0.2質量部混合、攪拌し、組成物を得た。
【0103】
<実施例2~11および比較例1>
表3に示す光重合開始剤に変更した以外は、実施例1と同様の方法で組成物を調製した。比較例1では、公知の光重合開始剤として、化合物R1(フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(IGM製))を使用した。
【0104】
<硬化物の製造>
試験管(直径10mm、高さ90mm)内に、上記の方法で調製した組成物を高さ50mmとなるよう充填した。試験管上部以外をアルミホイルで遮光し、試験管上部から365nmLED光源を用いて10mW/cmで5秒間(=50mJ/cm)照射し、硬化物を製造した。硬化物(硬化層)の形成は試験管から硬化物を取り出して確認し、硬化物(硬化層)の厚み(mm)を計測した。
【0105】
【表3】
【0106】
<実施例12>
<組成物の調整>
トリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学工業製)を100質量部、黒色顔料として3,7-ビス(2-オキソ-1H-インドール-3(2H)-イリデン)ベンゾ[1,2-b:4,5-b‘]ジフラン-2,6-(3H、7H)-ジオンを1質量部、光重合開始剤として化合物25を0.2質量部混合、攪拌し、組成物を得た。
【0107】
<実施例13~15および比較例2>
表4に示す光重合開始剤に変更した以外は、実施例12と同様の方法で組成物を調製した。比較例2では、公知の光重合開始剤として、化合物R1(フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(IGM製))を使用した。
【0108】
<黒色硬化物の製造>
試験管(直径10mm、高さ90mm)内に、上記の方法で調製した組成物を高さ50mmとなるよう充填した。試験管上部以外をアルミホイルで遮光し、試験管上部から365nmLED光源を用いて350mW/cmで5秒間(=1750mJ/cm)照射し、硬化物を製造した。硬化物(硬化層)の形成は試験管から硬化物を取り出して確認し、硬化物(硬化層)の厚み(mm)を計測した。
【0109】
【表4】
【0110】
<実施例16>
<組成物の調整>
トリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学工業製)を100質量部、コロイダルシリカ(扶桑化学工業製)を60質量部、光重合開始剤として化合物25を1質量部混合、攪拌し、組成物を得た。
【0111】
<実施例17~19および比較例3>
表5に示す光重合開始剤に変更した以外は、実施例16と同様の方法で組成物を調製した。比較例3では、公知の光重合開始剤として、化合物R1(フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(IGM製))を使用した。
【0112】
<無機フィラー配合硬化物の製造>
試験管(直径10mm、高さ90mm)内に、上記の方法で調製した組成物を高さ50mmとなるよう充填した。試験管上部以外をアルミホイルで遮光し、試験管上部から365nmLED光源を用いて650mW/cmで90秒間(=58500mJ/cm)照射し、硬化物を製造した。硬化物(硬化層)の形成は試験管から硬化物を取り出して確認し、硬化物(硬化層)の厚み(mm)を計測した。
【0113】
【表5】
【0114】
各実施例の組成物は、活性エネルギー線の照射により、目視での観察において、組成物の上部に硬化物(硬化層)の形成が確認され、活性エネルギー線の照射後も、当該硬化層の界面が徐々に下方に下がることが確認できた。また、試験管から硬化物を取り出して硬化物(硬化層)の厚み(mm)を計測し、厚みが50mmであることが確認できた。よって、各実施例の組成物は、活性エネルギー線を照射する工程のみで、一定以上の厚さを有する硬化物が得られることが明らかである。
【0115】
また、比較例の組成物は、活性エネルギー線の照射後では、硬化層の界面が変化しなかった。よって、各実施例の組成物は、ラジカル重合性化合物を含む組成物の一部分に活性エネルギー線を照射することで、前記組成物における前記活性エネルギー線の未照射部分を十分に硬化できることが明らかである。