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特許7300110シアン酸エステル化合物及びその製造方法、樹脂組成物、硬化物、単層樹脂シート、積層樹脂シート、プリプレグ、金属箔張積層板、プリント配線板、封止用材料、繊維強化複合材料、接着剤、並びに半導体装置
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  • 特許-シアン酸エステル化合物及びその製造方法、樹脂組成物、硬化物、単層樹脂シート、積層樹脂シート、プリプレグ、金属箔張積層板、プリント配線板、封止用材料、繊維強化複合材料、接着剤、並びに半導体装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-21
(45)【発行日】2023-06-29
(54)【発明の名称】シアン酸エステル化合物及びその製造方法、樹脂組成物、硬化物、単層樹脂シート、積層樹脂シート、プリプレグ、金属箔張積層板、プリント配線板、封止用材料、繊維強化複合材料、接着剤、並びに半導体装置
(51)【国際特許分類】
   C07C 261/02 20060101AFI20230622BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20230622BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20230622BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20230622BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20230622BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20230622BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20230622BHJP
【FI】
C07C261/02 CSP
B32B15/08 J
C08J5/24
C09J11/06
C09J201/00
C09K3/10
H05K1/03 610H
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020548265
(86)(22)【出願日】2019-09-03
(86)【国際出願番号】 JP2019034528
(87)【国際公開番号】W WO2020059476
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2022-07-12
(31)【優先権主張番号】P 2018174777
(32)【優先日】2018-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】中西 講平
(72)【発明者】
【氏名】片桐 俊介
【審査官】藤代 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-70552(JP,A)
【文献】国際公開第2012/057144(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
・IPC
C07C 261/02
B32B 15/08
C08J 5/24
C09J 11/06
C09J 201/00
C09K 3/10
H05K 1/03
・DB
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるシアン酸エステル化合物。
【化1】
(式(1)中、R、R、R、及びRは、1価の置換基を示し、各々独立に、水素原子、炭素数1~6の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基、又はハロゲン原子を示す。m、l、k、及びjは、各々独立に、1~4の整数を示す。nは、1~50の整数を示す。)。
【請求項2】
前記式(1)で表されるシアン酸エステル化合物が、下記式(2)で表される、請求項1に記載のシアン酸エステル化合物。
【化2】
【請求項3】
下記式(3)で表されるヒドロキシ置換芳香族化合物のシアネート化物である、請求項1又は2に記載のシアン酸エステル化合物。
【化3】
(式(3)中、R、R、R、及びRは、1価の置換基を示し、各々独立に、水素原子、炭素数1~6の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基、又はハロゲン原子を示す。m、l、k、及びjは、各々独立に、1~4の整数を示す。nは、1~50の整数を示す。)。
【請求項4】
下記式(3)で表されるヒドロキシ置換芳香族化合物をシアネート化する工程を含む、下記式(1)で表されるシアン酸エステル化合物の製造方法。
【化4】
(式(3)中、R、R、R、及びRは、1価の置換基を示し、各々独立に、水素原子、炭素数1~6の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基、又はハロゲン原子を示す。m、l、k、及びjは、各々独立に、1~4の整数を示す。nは1~50の整数を示す。)
【化5】
(式(1)中、R、R、R、及びRは、1価の置換基を示し、各々独立に、水素原子、炭素数1~6の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基、又はハロゲン原子を示す。m、l、k、及びjは、各々独立に、1~4の整数を示す。nは、1~50の整数を示す。)
【請求項5】
請求項1~3のいずれか一項に記載のシアン酸エステル化合物を含む、樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか一項に記載のシアン酸エステル化合物以外のシアン酸エステル化合物、マレイミド化合物、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、ベンゾオキサジン化合物、及び重合可能な不飽和基を有する化合物からなる群より選択される1種以上を更に含む、請求項5に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
充填材を更に含む、請求項5又は6に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
シート状成形体用である、請求項5~7のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
請求項5~8のいずれか一項に記載の樹脂組成物を含む、硬化物。
【請求項10】
請求項5~8のいずれか一項に記載の樹脂組成物を含む、単層樹脂シート。
【請求項11】
支持体と、
前記支持体の片面又は両面に配された樹脂層と、を有し、
前記樹脂層が、請求項5~8のいずれか一項に記載の樹脂組成物を含む、
積層樹脂シート。
【請求項12】
基材と、
前記基材に含浸又は塗布された、請求項5~8のいずれか一項に記載の樹脂組成物と、
を有する、プリプレグ。
【請求項13】
請求項10に記載の単層樹脂シート、請求項11に記載の積層樹脂シート、及び請求項12に記載のプリプレグからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む層と、
前記層の片面又は両面に配された金属箔と、
を有し、
前記層が、前記樹脂組成物の硬化物を含む、金属箔張積層板。
【請求項14】
絶縁層と、
前記絶縁層の片面又は両面に形成された導体層と、
を有し、
前記絶縁層が、請求項5~8のいずれか一項に記載の樹脂組成物を含む、プリント配線板。
【請求項15】
請求項5~8のいずれか一項に記載の樹脂組成物を含む、封止用材料。
【請求項16】
請求項5~8のいずれか一項に記載の樹脂組成物と、強化繊維と、を含む、繊維強化複合材料。
【請求項17】
請求項5~8のいずれか一項に記載の樹脂組成物を含む、接着剤。
【請求項18】
請求項5~8のいずれか一項に記載の樹脂組成物を含む、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シアン酸エステル化合物及びその製造方法、樹脂組成物、硬化物、単層樹脂シート、積層樹脂シート、プリプレグ、金属箔張積層板、プリント配線板、封止用材料、繊維強化複合材料、接着剤、並びに半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器、通信機、及びパーソナルコンピューター等に広く用いられている半導体の高集積化、並びに微細化は、ますます加速している。これに伴い、プリント配線板に用いられる半導体パッケージ用積層板に求められる諸特性は、ますます厳しいものとなっている。求められる特性としては、例えば、低吸水性、吸湿耐熱性、難燃性、低誘電率、低誘電正接、低熱膨張率、耐熱性、耐薬品性、及び高めっきピール強度等の特性が挙げられる。
【0003】
従来から、耐熱性及び電気特性に優れるプリント配線板用樹脂としては、シアン酸エステル化合物が知られている。シアン酸エステル化合物に、エポキシ樹脂、及びビスマレイミド化合物等を併用した樹脂組成物が、半導体プラスチックパッケージ用等の高機能のプリント配線板用材料等に幅広く使用されている。
例えば、特許文献1においては、特定構造のシアン酸エステル化合物と、その他の成分とを含む樹脂組成物が、低吸水性、及び低熱膨張率等の特性に優れることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2012/105547号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の樹脂組成物は、低吸水性及び低熱膨張率等の特性について良好な物性を有しているといえるが、熱伝導率の観点からは、依然として改良の余地を有する。例えば、プリント配線板のような絶縁材料や、その他の樹脂シートとしたとき、これらの熱伝導率が十分でないと、放熱性が要求される用途には適用し難い。
【0006】
本発明は、前記問題点に鑑みてなされたものであり、優れた熱伝導性を発現する、シアン酸エステル化合物及びその製造方法、樹脂組成物、硬化物、単層樹脂シート、積層樹脂シート、プリプレグ、金属箔張積層板、プリント配線板、封止用材料、繊維強化複合材料、接着剤、並びに半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した。その結果、特定構造を有するシアン酸エステル化合物により、前記課題が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の態様を包含する。
[1]下記式(1)で表されるシアン酸エステル化合物。
【0009】
【化1】
【0010】
式(1)中、R、R、R、及びRは、1価の置換基を示し、各々独立に、水素原子、炭素数1~6の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基、又はハロゲン原子を示す。m、l、k、及びjは、各々独立に、1~4の整数を示す。nは、1~50の整数を示す。
【0011】
[2]前記式(1)で表されるシアン酸エステル化合物が、下記式(2)で表される、[1]に記載のシアン酸エステル化合物。
【0012】
【化2】
【0013】
[3]下記式(3)で表されるヒドロキシ置換芳香族化合物のシアネート化物である、[1]又は[2]に記載のシアン酸エステル化合物。
【0014】
【化3】
【0015】
式(3)中、R、R、R、及びRは、1価の置換基を示し、各々独立に、水素原子、炭素数1~6の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基、又はハロゲン原子を示す。m、l、k、及びjは、各々独立に、1~4の整数を示す。nは、1~50の整数を示す。
【0016】
[4]下記式(3)で表されるヒドロキシ置換芳香族化合物をシアネート化する工程を含む、下記式(1)で表されるシアン酸エステル化合物の製造方法。
【0017】
【化4】
【0018】
式(3)中、R、R、R、及びRは、1価の置換基を示し、各々独立に、水素原子、炭素数1~6の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基、又はハロゲン原子を示す。m、l、k、及びjは、各々独立に、1~4の整数を示す。nは、1~50の整数を示す。
【0019】
【化5】
【0020】
式(1)中、R、R、R、及びRは、1価の置換基を示し、各々独立に、水素原子、炭素数1~6の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基、又はハロゲン原子を示す。m、l、k、及びjは、各々独立に、1~4の整数を示す。nは、1~50の整数を示す。
【0021】
[5][1]~[3]のいずれかに記載のシアン酸エステル化合物を含む、樹脂組成物。
[6][1]~[3]のいずれかに記載のシアン酸エステル化合物以外のシアン酸エステル化合物、マレイミド化合物、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、ベンゾオキサジン化合物、及び重合可能な不飽和基を有する化合物からなる群より選択される1種以上を更に含む、[5]に記載の樹脂組成物。
[7]充填材を更に含む、[5]又は[6]に記載の樹脂組成物。
[8]シート状成形体用である、[5]~[7]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[9][5]~[8]のいずれかに記載の樹脂組成物を含む、硬化物。
[10][5]~[8]のいずれかに記載の樹脂組成物を含む、単層樹脂シート。
【0022】
[11]支持体と、前記支持体の片面又は両面に配された樹脂層と、を有し、前記樹脂層が、[5]~[8]のいずれかに記載の樹脂組成物を含む、積層樹脂シート。
[12]基材と、前記基材に含浸又は塗布された、[5]~[8]のいずれかに記載の樹脂組成物と、を有する、プリプレグ。
[13][10]に記載の単層樹脂シート、[11]に記載の積層樹脂シート、及び[12]に記載のプリプレグからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む層と、前記層の片面又は両面に配された金属箔と、を有し、前記層が、前記樹脂組成物の硬化物を含む、金属箔張積層板。
[14]絶縁層と、
前記絶縁層の片面又は両面に形成された導体層と、
を有し、
前記絶縁層が、[5]~[8]のいずれかに記載の樹脂組成物を含む、プリント配線板。
[15][5]~[8]のいずれかに記載の樹脂組成物を含む、封止用材料。
【0023】
[16][5]~[8]のいずれかに記載の樹脂組成物と、強化繊維と、を含む、繊維強化複合材料。
[17][5]~[8]のいずれかに記載の樹脂組成物を含む、接着剤。
[18][5]~[8]のいずれかに記載の樹脂組成物を含む、半導体装置。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、優れた熱伝導性を発現する、シアン酸エステル化合物及びその製造方法、樹脂組成物、硬化物、単層樹脂シート、積層樹脂シート、プリプレグ、金属箔張積層板、プリント配線板、封止用材料、繊維強化複合材料、接着剤、並びに半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、実施例1で得られたシアン酸エステル化合物(Twin 8BP-CN)のH-NMRのチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
本明細書における「(メタ)アクリル」とは「アクリル」及びそれに対応する「メタクリル」の両方を意味する。「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」及びそれに対応する「メタクリレート」の両方を意味する。「(メタ)アリル」とは「アリル」及びそれに対応する「メタアリル」の両方を意味する。また、本実施形態において、「樹脂固形分」又は「樹脂組成物中の樹脂固形分」とは、特に断りのない限り、樹脂組成物における、光硬化開始剤、硬化促進剤、難燃剤及び表面処理剤等の添加剤、溶剤及び充填材を除いた成分をいい、「樹脂固形分100質量部」とは、樹脂組成物における、光硬化開始剤、添加剤、溶剤及び充填材を除いた成分の合計が100質量部であることをいうものとする。
【0027】
[シアン酸エステル化合物]
本実施形態のシアン酸エステル化合物は、下記式(1)で表される。このような構造を有することにより、本実施形態のシアン酸エステル化合物は、優れた熱伝導性を発現することができる。
【0028】
【化6】
【0029】
式(1)中、R、R、R、及びRは、1価の置換基を示し、各々独立に、水素原子、炭素数1~6の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基、又はハロゲン原子を示す。m、l、k、及びjは、各々独立に、1~4の整数を示す。nは、1~50の整数を示す。
炭素数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基としては、特に限定されず、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、及びtert-ブチル基が挙げられる。これらの中でも、優れた熱伝導性に加えて、低吸水性、溶媒に対する良好な溶解性、低融点、他の樹脂との良好な相溶性、及び低溶融粘度を発現することから、炭素数1~4のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、n-プロピル、及びi-プロピル基がより好ましく、メチル基及びエチル基であることが更に好ましい。
【0030】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。
式(1)中、m、l、k、及びjは、各々独立に、1~4の整数を示し、各々独立に、1~3の整数であることが好ましく、優れた熱伝導性に加えて、低吸水性、溶媒に対する良好な溶解性、低融点、他の樹脂との良好な相溶性及び低溶融粘度が得られる点から、m、l、k、及びjが、各々独立に、1~2の整数であることがより好ましく、m、l、k、及びjが、全て1であることが更により好ましい。
【0031】
、R、R、及びRは、各々独立に、それらの位置は特に限定されない。
、R、R、及びRは、各々独立に、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、及びtert-ブチル基であることが好ましく、入手性を考慮すると、水素原子及びメチル基であることがより好ましく、R、R、R及びRが、全て水素原子であることが、入手性及びより優れた熱伝導性に加えて、低吸水性、溶媒に対する良好な溶解性、低融点、他の樹脂との良好な相溶性及び低溶融粘度が得られることから更に好ましい。
【0032】
nは、1~50の整数を示し、2~32であることが好ましく、溶媒への溶解性、配向性、耐熱性及び難燃性の観点から、4~8であることがより好ましい。メチレン鎖は、長すぎると良好な熱伝導性が発現し難くなる傾向にある。
【0033】
本実施形態のシアン酸エステル化合物は、より良好な熱伝導率に加えて、低吸水性、溶媒に対するより良好な溶解性、低融点、他の樹脂とのより良好な相溶性、及び低溶融粘度を発現する観点から、下記式(2)で表されることが好ましい。また、本実施形態のシアン酸エステル化合物は、より良好な熱伝導率に加えて、低吸水性、溶媒に対するより良好な溶解性、低融点、他の樹脂とのより良好な相溶性、及び低溶融粘度を発現する観点から、下記式(3)で表されるヒドロキシ置換芳香族化合物のシアネート化物であることも好ましい。
【0034】
【化7】
【0035】
【化8】
【0036】
式(3)中、R、R、R、及びRは、1価の置換基を示し、各々独立に、水素原子、炭素数1~6の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基、又はハロゲン原子を示す。m、l、k、及びjは、各々独立に、1~4の整数を示す。nは、1~50の整数を示す。
なお、R、R、R、R、炭素数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、ハロゲン原子、m、l、k、j、及びnについては、好ましい態様も含めて、前記と同じである。
【0037】
[シアン酸エステル化合物の製造方法]
本実施形態のシアン酸エステル化合物の製造方法としては、式(3)で表されるヒドロキシ置換芳香族化合物をシアネート化して、式(1)で表されるシアン酸エステル化合物を得るシアネート化工程を有する。また、本実施形態のシアン酸エステル化合物の製造方法としては、式(3)で表されるヒドロキシ置換芳香族化合物をシアネート化して、式(2)で表されるシアン酸エステル化合物を得るシアネート化工程を有するものであることが好ましい。
【0038】
(式(3)で表されるヒドロキシ置換芳香族化合物の合成方法)
式(3)で表されるヒドロキシ置換芳香族化合物は、特に限定されないが、例えば、次の方法により合成することができる。すなわち、塩基性触媒の基で、置換もしくは非置換のヒドロキノンに対して、過剰量の1,8-ジブロモオクタン等のα,ω-ジブロモアルカンを反応させ、その後、酸性触媒の基で、置換もしくは非置換のヒドロキシ安息香酸と反応させることによって合成することができる。
【0039】
合成に際しては、種々公知の合成用溶媒及び合成用触媒を使用することができる。
合成用溶媒としては、以下に限定されないが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、及びシクロヘキサノン等のケトン系溶媒;プロピレングリコールモノメチルエーテル、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のセロソルブ系溶媒;乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソアミル、乳酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、及びヒドロキシイソ酪酸メチル等のエステル系溶媒;ジメチルアセトアミド、及びN,N-ジメチルホルムアミド等のアミド類等の極性溶剤類;メタノール、エタノール、イソプロパノール、及び1-エトキシ-2-プロパノール等のアルコール系溶媒;トルエン、キシレン、及びアニソール等の芳香族系炭化水素が挙げられる。これらの合成用溶媒は、1種単独又は2種以上を適宜混合して使用することも可能である。
【0040】
塩基性触媒としては、周知の塩基性触媒を適宜選択することができ、特に限定されない。具体例としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及びナトリウムメトキシド等が挙げられる。これらの塩基性触媒は、1種単独又は2種以上を適宜混合して使用することも可能である。
【0041】
酸性触媒としては、周知の無機酸、有機酸より適宜選択することができ、特に限定されない。具体例としては、塩酸、リン酸、硫酸等の鉱酸、ギ酸、シュウ酸、トリフルオロ酢酸、及びp-トルエンスルホン酸等の有機酸;塩化亜鉛、塩化アンモニウム、及び塩化鉄等のルイス酸あるいは固体酸等が挙げられる。これらの酸性触媒は、1種単独又は2種以上を適宜混合して使用することも可能である。
【0042】
(シアネート化工程)
次に、前記のようにして得られた式(3)で表されるヒドロキシ置換芳香族化合物をシアネート化する工程について述べる。
シアネート化工程は、ヒドロキシ置換芳香族化合物をシアネート化して、式(1)で表される構造を有するシアン酸エステル化合物、好ましくは式(2)で表される構造を有するシアン酸エステル化合物を得る工程である。具体的には、式(3)で表されるヒドロキシ置換芳香族化合物が有するヒドロキシ基をシアネート化して、式(1)で表される構造を有するシアン酸エステル化合物、好ましくは式(2)で表される構造を有するシアン酸エステル化合物を得る工程である。
【0043】
シアネート化方法は、特に限定されず、公知の方法を適用することができる。具体的には、ヒドロキシ置換芳香族化合物とハロゲン化シアンを、溶媒中で、塩基性化合物存在下で反応させる方法;溶媒中、塩基の存在下で、ハロゲン化シアンが常に塩基より過剰に存在するようにして、ヒドロキシ置換芳香族化合物とハロゲン化シアンを反応させる方法(米国特許第3553244号明細書参照);塩基として3級アミンを用い、これをハロゲン化シアンよりも過剰に用いながら、溶媒の存在下、ヒドロキシ置換芳香族化合物に3級アミンを添加した後、ハロゲン化シアンを滴下する、あるいは、ハロゲン化シアンと3級アミンを併注滴下する方法(特許第3319061号明細書参照);連続プラグフロー方式で、ヒドロキシ置換芳香族化合物、トリアルキルアミン、及びハロゲン化シアンを反応させる方法(特許第3905559号明細書参照);ヒドロキシ置換芳香族化合物とハロゲン化シアンとを、4級アミンの存在下、非水溶液中で反応させる際に副生するtert-アンモニウムハライドを、カチオン及びアニオン交換対で処理する方法(特許第4055210号明細書参照);ヒドロキシ置換芳香族化合物に対して、水と分液可能な溶媒の存在下で、3級アミンとハロゲン化シアンとを同時に添加して反応させた後、水洗分液し、得られた溶液から2級もしくは3級アルコール類又は炭化水素の貧溶媒を用いて沈殿精製する方法(特許第2991054号明細書参照);ヒドロキシ置換芳香族化合物、ハロゲン化シアン、及び3級アミンを、水と有機溶媒との二相系溶媒中、酸性条件下で反応させる方法(特許第5026727号明細書参照)等により、本実施形態のシアン酸エステル化合物を得ることができる。
【0044】
以下、ヒドロキシ置換芳香族化合物とハロゲン化シアンとを、溶媒中で、塩基性化合物の存在下で反応させる方法を例に説明する。この場合、反応基質であるヒドロキシ置換芳香族化合物を、ハロゲン化シアン溶液及び塩基性化合物溶液のいずれかに予め溶解させた後、ハロゲン化シアン溶液と塩基性化合物溶液とを接触させる。
【0045】
ハロゲン化シアン溶液と塩基性化合物溶液を接触させる方法(接触方法)としては、特に限定されず、例えば、(A)撹拌混合させたハロゲン化シアン溶液に塩基性化合物溶液を注下していく方法、(B)撹拌混合させた塩基性化合物溶液にハロゲン化シアン溶液を注下していく方法、(C)ハロゲン化シアン溶液と塩基性化合物溶液を連続的に交互に又は同時に供給していく方法等が挙げられる。
(A)、(B)及び(C)の方法の中でも副反応を抑制し、より高純度のシアン酸エステル化合物を高収率で得ることができるため、(A)の方法が好ましい。
また、ハロゲン化シアン溶液と塩基性化合物溶液の接触方法は、半回分形式又は連続流通形式のいずれであってもよい。
(A)の方法を用いた場合、ヒドロキシ置換芳香族化合物が有するヒドロキシ基を残存させずに反応を完結させることができ、かつ、より高純度のシアン酸エステル化合物を高収率で得ることができることから、塩基性化合物を分割して注下することが好ましい。分割回数は、特に限定されないが、1~5回が好ましい。また、塩基性化合物の種類としては、1分割ごとに、同一であっても異なっていてもよい。
【0046】
本実施形態で用いるハロゲン化シアンとしては、特に限定されないが、例えば、塩化シアン及び臭化シアンが挙げられる。ハロゲン化シアンは、シアン化水素又は金属シアニドとハロゲンとを反応させる方法等の公知の製造方法により得られたハロゲン化シアンを用いてもよいし、市販品を用いてもよい。また、シアン化水素又は金属シアニドとハロゲンとを反応させて得られたハロゲン化シアンを含有する反応液をそのまま用いることもできる。
【0047】
本実施形態におけるシアネート化工程において、ハロゲン化シアンのヒドロキシ置換芳香族化合物に対する使用量は、ヒドロキシ置換芳香族化合物のヒドロキシ基1モルに対して、0.5~5モルが好ましく、より好ましくは1.0~3.5モルである。
前記範囲とする場合、シアン酸エステル化合物の収率が高まる傾向にある。
【0048】
ハロゲン化シアン溶液に用いる溶媒としては、特に限定されないが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、及びシクロペンタノン等のケトン系溶媒;n-ヘキサン、シクロヘキサン、及びイソオクタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;ベンゼン、トルエン、及びキシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、ジメチルセルソルブ、ジグライム、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、及びテトラエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼン、及びブロモベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール、メチルソルソルブ、及びプロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリドン、及びジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒;アセトニトリル、及びベンゾニトリル等のニトリル系溶媒;ニトロメタン、及びニトロベンゼン等のニトロ系溶媒;酢酸エチル、及び安息香酸エチル等のエステル系溶媒;水溶媒が挙げられる。これら溶媒は、反応基質に合わせて、1種単独又は2種以上を適宜混合して使用することも可能である。
【0049】
本実施形態におけるシアネート化工程に用いられる塩基性化合物としては、有機塩基及び無機塩基のいずれでも用いることができる。これらの塩基性化合物は、1種単独又は2種以上を適宜混合して使用することも可能である。
【0050】
有機塩基としては、特に限定されないが、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ-n-ブチルアミン、トリアミルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジエチル-n-ブチルアミン、メチルジ-n-ブチルアミン、メチルエチル-n-ブチルアミン、ドデシルジメチルアミン、トリベンジルアミン、トリエタノールアミン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン、ジフェニルメチルアミン、ピリジン、ジエチルシクロヘキシルアミン、トリシクロヘキシルアミン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン、及び1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン等の3級アミンが好ましい。これらの中でも、収率よく目的物が得られること等から、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ-n-ブチルアミン、及びジイソプロピルエチルアミンがより好ましく、トリエチルアミンが更に好ましい。
【0051】
前記有機塩基の使用量は、ヒドロキシ置換芳香族化合物のヒドロキシ基1モルに対して、好ましくは0.1~8.0モルであり、より好ましくは1.0~3.5モルである。
前記範囲とする場合、シアン酸エステル化合物の収率が高まる傾向にある。
【0052】
無機塩基としては、特に限定されないが、アルカリ金属の水酸化物が好ましい。アルカリ金属の水酸化物としては、例えば、工業的に一般的に用いられる水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及び水酸化リチウム等が挙げられる。安価に入手できる点から、水酸化ナトリウムが好ましい。
【0053】
前記無機塩基の使用量は、ヒドロキシ置換芳香族化合物のヒドロキシ基1モルに対して、好ましくは1.0~5.0モルであり、より好ましくは1.0~3.5モルである。
前記範囲とする場合、シアン酸エステル化合物の収率が高まる傾向にある。
【0054】
本実施形態の反応において、塩基性化合物は、前記したとおり、溶媒に溶解させた塩基性化合物溶液として用いることができる。溶媒としては、有機溶媒又は水を用いることができる。
【0055】
塩基性化合物溶液に用いる溶媒の使用量は、ヒドロキシ置換芳香族化合物を塩基性化合物溶液に溶解させる場合、ヒドロキシ置換芳香族化合物1質量部に対して、好ましくは0.1~100質量部であり、より好ましくは0.5~50質量部である。
ヒドロキシ置換芳香族化合物を塩基性化合物溶液に溶解させない場合、溶媒の使用量は、塩基性化合物1質量部に対して、好ましくは0.1~100質量部であり、より好ましくは0.25~50質量部である。
【0056】
塩基性化合物を溶解させる有機溶媒は、塩基性化合物が有機塩基の場合に好ましく用いられる。例えば、アセトン、メチルエチルケトン、及びメチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;ベンゼン、トルエン、及びキシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、ジメチルセルソルブ、ジグライム、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、及びテトラエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼン、及びブロモベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール、メチルソルソルブ、及びプロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリドン、及びジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒;アセトニトリル、及びベンゾニトリル等のニトリル系溶媒;ニトロメタン、及びニトロベンゼン等のニトロ系溶媒;酢酸エチル、及び安息香酸エチル等のエステル系溶媒;シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒が挙げられる。有機溶媒は、塩基性化合物、反応基質、及び反応に用いられる原料に合わせて適宜選択することができる。これらの有機溶媒は、1種単独又は2種以上を適宜混合して使用することも可能である。
【0057】
塩基性化合物を溶解させる水は、塩基性化合物が無機塩基の場合に好ましく用いられる。例えば、水道水、蒸留水、及び脱イオン水が挙げられる。効率良く目的とするシアン酸エステル化合物を得る観点から、不純物の少ない蒸留水、及び脱イオン水が好ましい。これらの水は、1種単独又は2種以上を適宜混合して使用することも可能である。
【0058】
塩基性化合物溶液に用いる溶媒が水の場合、界面活性剤として触媒量の有機塩基を用いることが、より十分な反応速度を確保する観点から好ましい。中でも副反応の少ない3級アミンがより好ましい。3級アミンとしては、例えば、アルキルアミン、アリールアミン、及びシクロアルキルアミンが挙げられる。具体的には、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ-n-ブチルアミン、トリアミルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジエチル-n-ブチルアミン、メチルジ-n-ブチルアミン、メチルエチル-n-ブチルアミン、ドデシルジメチルアミン、トリベンジルアミン、トリエタノールアミン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン、ジフェニルメチルアミン、ピリジン、ジエチルシクロヘキシルアミン、トリシクロヘキシルアミン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン、及び、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネンが挙げられる。これらの中でも、水への溶解度の観点、及び、より収率よく目的物が得られる観点から、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ-n-ブチルアミン、及びジイソプロピルエチルアミンが好ましく、トリエチルアミンがより好ましい。これらの3級アミンは、1種単独又は2種以上を適宜混合して使用することも可能である。
【0059】
本実施形態におけるシアネート化工程に用いられる溶媒の総量としては、ヒドロキシ置換芳香族化合物1質量部に対して、2.5~100質量部であることがヒドロキシ置換芳香族化合物をより均一に溶解させ、シアン酸エステル化合物をより効率良く製造する観点から好ましい。
【0060】
本実施形態におけるシアネート化工程における反応温度は、イミドカーボネート、シアン酸エステル化合物の重合物、及びジアルキルシアノアミド等の副生物の生成、反応液の凝結、並びにハロゲン化シアンとして塩化シアン又は臭化シアンを用いる場合には塩化シアン又は臭化シアンの揮発を抑制する観点から、好ましくは-20~+50℃、より好ましくは-15~15℃、更により好ましくは-10~10℃である。
【0061】
本実施形態におけるシアネート化工程における反応時の圧力は、特に限定されず、常圧でも加圧でもよい。必要に応じて、反応系内に窒素、ヘリウム、及びアルゴン等の不活性ガスを通気してもよい。
また、反応時間は、特に限定されないが、接触方法が(A)及び(B)の場合の注下時間、及び(C)の場合の接触時間は、1分~20時間が好ましく、3分~10時間がより好ましい。更にその後10分~10時間反応温度を保持しながら撹拌させることが好ましい。
【0062】
反応条件を前記のような範囲とすることで、目的とするシアン酸エステル化合物がより経済的に、かつより工業的に得られる。
【0063】
シアネート化工程における、反応の進行度は、例えば、液体クロマトグラフィー又はIR(赤外吸収)スペクトル法等で分析することができる。副生するジシアン及びジアルキルシアノアミド等の揮発成分は、例えば、ガスクロマトグラフィーで分析することができる。
【0064】
反応終了後は、通常の後処理操作、及び所望により分離・精製操作を行うことにより、目的とするシアン酸エステル化合物を単離することができる。具体的には、反応液からシアン酸エステル化合物を含む有機溶媒相を分取し、水洗後、濃縮、沈殿化又は晶析、あるいは水洗後、溶媒置換すればよい。洗浄の際には、過剰のアミン類を除去するため、希薄塩酸等の酸性水溶液を用いる方法も採用できる。十分に洗浄された反応液から水分を除去するために、硫酸ナトリウム及び/又は硫酸マグネシウム等を用いた一般的な方法により乾燥することができる。濃縮及び溶媒置換の際には、シアン酸エステル化合物の重合を抑えるため、減圧下、90℃以下の温度に加熱して有機溶媒を留去する。沈殿化又は晶析の際には、溶解度の低い溶媒を用いることができる。例えば、エーテル系の溶剤、ヘキサン等の炭化水素系溶剤、及び/又はアルコール系溶剤を反応溶液に滴下、あるいは逆注下する方法を採用することができる。得られた粗生成物を洗浄するために、反応液の濃縮物及び沈殿した結晶をエーテル系の溶剤、ヘキサン等の炭化水素系溶剤、及び/又はアルコール系の溶剤で洗浄する方法を採用することができる。反応溶液を濃縮して得られた結晶を再度溶解させた後、再結晶させることもできる。また、晶析は、反応液を単純に濃縮又は冷却することで行ってもよい。
【0065】
得られたシアン酸エステル化合物は、NMR(核磁気共鳴分析)等の公知の方法により同定することができる。シアン酸エステル化合物の純度は、例えば、液体クロマトグラフィー又はIRスペクトル法等で分析することができる。シアン酸エステル化合物中のジアルキルシアノアミド等の副生物及び残存溶媒等の揮発成分は、例えば、ガスクロマトグラフィーで定量分析することができる。シアン酸エステル化合物中に残存するハロゲン化合物は、例えば、液体クロマトグラフ質量分析計で同定することができ、また、硝酸銀溶液を用いた電位差滴定又は燃焼法による分解後イオンクロマトグラフィーで定量することができる。シアン酸エステル化合物の重合反応性は、例えば、熱板法又はトルク計測法によるゲル化時間で評価することができる。
【0066】
[樹脂組成物]
本実施形態の樹脂組成物は、本実施形態のシアン酸エステル化合物を含有する。このように構成されているため、本実施形態の樹脂組成物は、優れた熱伝導性を発現することができる。本実施形態において、より優れた熱伝導性を得る観点から、本実施形態の樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部中における本実施形態のシアン酸エステル化合物の含有量は、5質量部以上であることが好ましく、より好ましくは10質量部以上である。なお、本実施形態の樹脂組成物中に後述の樹脂又は化合物を含む場合、本実施形態のシアン酸エステル化合物の含有量は、特に限定されないが、本実施形態の樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部中に、40質量部以上99.99質量部以下であってもよい。本実施形態のシアン酸エステル化合物の含有量の上限は特に限定されないが、例えば、100質量部以下である。
【0067】
〔樹脂又は化合物〕
本実施形態の樹脂組成物は、樹脂又は化合物として、本実施形態のシアン酸エステル化合物以外のシアン酸エステル化合物(以下、「他のシアン酸エステル化合物」ともいう。)、マレイミド化合物、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、ベンゾオキサジン化合物、及び重合可能な不飽和基を有する化合物からなる群より選択される1種以上を更に含むことができる。以下、これらの各成分について説明する。
【0068】
(他のシアン酸エステル化合物)
他のシアン酸エステル化合物としては、シアナト基(シアン酸エステル基)で少なくとも1個置換された芳香族部分を分子内に有する化合物であれば、特に限定されない。シアン酸エステル化合物を用いた樹脂組成物は、硬化物とした際に、ガラス転移温度、低熱膨張性、及びめっき密着性等に優れた特性を有する。
【0069】
他のシアン酸エステル化合物の例としては、特に限定されないが、下記式(4)で表されるものが挙げられる。
【0070】
【化9】
【0071】
前記式(4)中、Ar1は、芳香環を表す。複数ある場合は互いに同一であっても異なっていてもよい。前記芳香環としては、特に限定されないが、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、及び2つのベンゼン環が単結合したものが挙げられる。Raは、各々独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルケニル基、炭素数6~12のアリール基、炭素数1~4のアルコキシル基、及び炭素数1~6のアルキル基と炭素数6~12のアリール基とが結合された基を示す。Raにおける芳香環は置換基を有していてもよく、Ar1及びRaにおける置換基は任意の位置を選択できる。pはAr1に結合するシアナト基の数を示し、各々独立に、1~3の整数である。qはAr1に結合するRaの数を示し、Ar1がベンゼン環のときは4-p、ナフタレン環のときは6-p、2つのベンゼン環が単結合したもののときは8-pである。tは平均繰り返し数を示し、0~50の整数であり、他のシアン酸エステル化合物は、tが異なる化合物の混合物であってもよい。Xは、複数ある場合は、各々独立に、単結合、炭素数1~50の2価の有機基(水素原子がヘテロ原子に置換されていてもよい。)、窒素数1~10の2価の有機基(例えば-N-R-N-(ここでRは有機基を示す。))、カルボニル基(-CO-)、カルボキシ基(-C(=O)O-)、カルボニルジオキサイド基(-OC(=O)O-)、スルホニル基(-SO2-)、2価の硫黄原子、及び2価の酸素原子のいずれかを示す。
【0072】
前記式(4)のRaにおけるアルキル基は、直鎖もしくは分岐の鎖状構造、及び環状構造(例えば、シクロアルキル基等)のいずれを有していてもよい。
前記式(4)におけるアルキル基及びRaにおけるアリール基中の水素原子は、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子、メトキシ基、フェノキシ基等のアルコキシル基、又はシアノ基等で置換されていてもよい。
【0073】
アルキル基の具体例としては、特に限定されないが、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、1-エチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、及びトリフルオロメチル基が挙げられる。
アルケニル基の具体例としては、ビニル基、(メタ)アリル基、イソプロペニル基、1-プロペニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、1,3-ブタンジエニル基、2-メチル-2-プロペニル、2-ペンテニル基、及び2-ヘキセニル基等が挙げられる。
アリール基の具体例としては、特に限定されないが、フェニル基、キシリル基、メシチル基、ナフチル基、フェノキシフェニル基、エチルフェニル基、o-,m-又はp-フルオロフェニル基、ジクロロフェニル基、ジシアノフェニル基、トリフルオロフェニル基、メトキシフェニル基、及びo-,m-又はp-トリル基等が挙げられる。
【0074】
アルコキシル基としては、特に限定されないが、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、及びtert-ブトキシ基が挙げられる。
前記式(4)のXにおける炭素数1~50の2価の有機基としては、特に限定されないが、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、ジメチルメチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、トリメチルシクロヘキシレン基、ビフェニルイルメチレン基、ジメチルメチレン-フェニレン-ジメチルメチレン基、フルオレンジイル基、及びフタリドジイル基等が挙げられる。前記2価の有機基中の水素原子は、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子、メトキシ基、フェノキシ基等のアルコキシル基、又はシアノ基等で置換されていてもよい。
【0075】
前記式(4)のXにおける窒素数1~10の2価の有機基としては、特に限定されないが、例えば、-N-R-N-で表される基、イミノ基、及びポリイミド基等が挙げられる。
【0076】
また、前記式(4)中のXの有機基として、例えば、下記式(5)又は下記式(6)で表される構造が挙げられる。
【0077】
【化10】
【0078】
前記式(5)中、Ar2は芳香環を示し、uが2以上の場合、互いに同一であっても異なっていてもよい。前記芳香環としては、特に限定されないが、例えば、ベンゼンテトライル基、ナフタレンテトライル基及びビフェニルテトライル基が挙げられる。Rb、Rc、Rf、及びRgは各々独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、トリフルオロメチル基、又はフェノール性ヒドロキシ基を少なくとも1個有するアリール基を示す。Rd及び、Reは各々独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、炭素数1~4のアルコキシル基、又はヒドロキシ基のいずれか一種から選択される。uは0~5の整数を示す。
【0079】
【化11】
【0080】
式(6)中、Ar3はフェニレン基、ナフチレン基又はビフェニレン基を示し、vが2以上の場合、互いに同一であっても異なっていてもよい。Ri、及びRjは各々独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、ベンジル基、炭素数1~4のアルコキシル基、ヒドロキシ基、トリフルオロメチル基、又はシアナト基が少なくとも1個置換されたアリール基を示す。vは0~5の整数を示すが、vが異なる化合物の混合物であってもよい。
【0081】
更に、式(4)中のXとしては、下記式で表される2価の基が挙げられる。
【0082】
【化12】
【0083】
前記式中、zは4~7の整数を示す。Rkは各々独立に、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を示す。
【0084】
式(5)のAr2及び式(6)のAr3の具体例としては、1,4-フェニレン基、1,3-フェニレン基、4,4’-ビフェニレン基、2,4’-ビフェニレン基、2,2’-ビフェニレン基、2,3’-ビフェニレン基、3,3’-ビフェニレン基、3,4’-ビフェニレン基、2,6-ナフチレン基、1,5-ナフチレン基、1,6-ナフチレン基、1,8-ナフチレン基、1,3-ナフチレン基、1,4-ナフチレン基、及び2,7-ナフチレン基が挙げられる。
式(5)のRb、Rc、Rd、Re、Rf、及びRg、並びに式(6)のRi、Rjにおけるアルキル基、アリール基、及びアルコキシル基は、前記式(4)におけるものと同義である。フェノール性ヒドロキシ基を少なくとも1個有するアリール基としては、特に限定されず、例えば、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、o-キシレノール、m-キシレノール、p-キシレノール、o-エチルフェノール、m-エチルフェノール、p-エチルフェノール、及び2,3,5-トリメチルフェノール等のフェノール性化合物から水素原子を1個除いた1価の基が挙げられる。
【0085】
前記式(4)で表されるシアン酸エステル化合物としては、特に限定されないが、例えば、シアナトベンゼン、1-シアナト-2-メチルベンゼン、1-シアナト-3-メチルベンゼン、1-シアナト-4-メチルベンゼン、1-シアナト-2-メトキシベンゼン、1-シアナト-3-メトキシベンゼン、1-シアナト-4-メトキシベンゼン、1-シアナト-2,3-ジメチルベンゼン、1-シアナト-2,4-ジメチルベンゼン、1-シアナト-2,5-ジメチルベンゼン、1-シアナト-2,6-ジメチルベンゼン、1-シアナト-3,4-ジメチルベンゼン、1-シアナト-3,5-ジメチルベンゼン、シアナトエチルベンゼン、シアナトブチルベンゼン、シアナトオクチルベンゼン、シアナトノニルベンゼン、2-(4-シアナフェニル)-2-フェニルプロパン(4-α-クミルフェノールのシアネート)、1-シアナト-4-シクロヘキシルベンゼン、1-シアナト-4-ビニルベンゼン、1-シアナト-2-クロロベンゼン、1-シアナト-3-クロロベンゼン、1-シアナト-2,6-ジクロロベンゼン、1-シアナト-2-メチル-3-クロロベンゼン、シアナトニトロベンゼン、1-シアナト-4-ニトロ-2-エチルベンゼン、1-シアナト-2-メトキシ-4-アリルベンゼン(オイゲノールのシアネート)、メチル(4-シアナトフェニル)スルフィド、1-シアナト-3-トリフルオロメチルベンゼン、4-シアナトビフェニル、1-シアナト-2-アセチルベンゼン、1-シアナト-4-アセチルベンゼン、4-シアナトベンズアルデヒド、4-シアナト安息香酸メチルエステル、4-シアナト安息香酸フェニルエステル、1-シアナト-4-アセトアミノベンゼン、4-シアナトベンゾフェノン、1-シアナト-2,6-ジ-tert-ブチルベンゼン、1,2-ジシアナトベンゼン、1,3-ジシアナトベンゼン、1,4-ジシアナトベンゼン、1,4-ジシアナト-2-tert-ブチルベンゼン、1,4-ジシアナト-2,4-ジメチルベンゼン、1,4-ジシアナト-2,3,4-ジメチルベンゼン、1,3-ジシアナト-2,4,6-トリメチルベンゼン、1,3-ジシアナト-5-メチルベンゼン、1-シアナトナフタレン、2-シアナトナフタレン、1-シアナト4-メトキシナフタレン、2-シアナト-6-メチルナフタレン、2-シアナト-7-メトキシナフタレン、2,2’-ジシアナト-1,1’-ビナフチル、1,3-,1,4-,1,5-,1,6-,1,7-,2,3-,2,6-又は2,7-ジシアナトシナフタレン、2,2’- ジシアナトビフェニル、4,4’-ジシアナトビフェニル、4,4’-ジシアナトオクタフルオロビフェニル、2,4’-又は4,4’-ジシアナトジフェニルメタン、ビス(4-シアナト-3,5-ジメチルフェニル)メタン、1,1-ビス(4-シアナトフェニル)エタン、1,1-ビス(4-シアナトフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-シアナトフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-シアナト-3-メチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(2-シアナト-5-ビフェニルイル)プロパン、2,2-ビス(4-シアナトフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-シアナト-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-シアナトフェニル)ブタン、1,1-ビス(4-シアナトフェニル)イソブタン、1,1-ビス(4-シアナトフェニル)ペンタン、1,1-ビス(4-シアナトフェニル)-3-メチルブタン、1,1-ビス(4-シアナトフェニル)-2-メチルブタン、1,1-ビス(4-シアナトフェニル)-2,2-ジメチルプロパン、2,2-ビス(4-シアナトフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-シアナトフェニル)ペンタン、2,2-ビス(4-シアナトフェニル)ヘキサン、2,2-ビス(4-シアナトフェニル)-3-メチルブタン、2,2-ビス(4-シアナトフェニル)-4-メチルペンタン、2,2-ビス(4-シアナトフェニル)-3,3-ジメチルブタン、3,3-ビス(4-シアナトフェニル)ヘキサン、3,3-ビス(4-シアナトフェニル)ヘプタン、3,3-ビス(4-シアナトフェニル)オクタン、3,3-ビス(4-シアナトフェニル)-2-メチルペンタン、3,3-ビス(4-シアナトフェニル)-2-メチルヘキサン、3,3-ビス(4-シアナトフェニル)-2,2-ジメチルペンタン、4,4-ビス(4-シアナトフェニル)-3-メチルヘプタン、3,3-ビス(4-シアナトフェニル)-2-メチルヘプタン、3,3-ビス(4-シアナトフェニル)-2,2-ジメチルヘキサン、3,3-ビス(4-シアナトフェニル)-2,4-ジメチルヘキサン、3,3-ビス(4-シアナトフェニル)-2,2,4-トリメチルペンタン、2,2-ビス(4-シアナトフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、ビス(4-シアナトフェニル)フェニルメタン、1,1-ビス(4-シアナトフェニル)-1-フェニルエタン、ビス(4-シアナトフェニル)ビフェニルメタン、1,1-ビス(4-シアナトフェニル)シクロペンタン、1,1-ビス(4-シアナトフェニル)シクロヘキサン、2,2-ビス(4-シアナト-3-イソプロピルフェニル)プロパン、1,1-ビス(3-シクロヘキシル-4-シアナトフェニル)シクロヘキサン、ビス(4-シアナトフェニル)ジフェニルメタン、ビス(4-シアナトフェニル)-2,2-ジクロロエチレン、1,3-ビス[2-(4-シアナトフェニル)-2-プロピル]ベンゼン、1,4-ビス[2-(4-シアナトフェニル)-2-プロピル]ベンゼン、1,1-ビス(4-シアナトフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、4-[ビス(4-シアナトフェニル)メチル]ビフェニル、4,4-ジシアナトベンゾフェノン、1,3-ビス(4-シアナトフェニル)-2-プロペン-1-オン、ビス(4-シアナトフェニル)エーテル、ビス(4-シアナトフェニル)スルフィド、ビス(4-シアナトフェニル)スルホン、4-シアナト安息香酸-4-シアナトフェニルエステル(4-シアナトフェニル-4-シアナトベンゾエート)、ビス-(4-シアナトフェニル)カーボネート、1,3-ビス(4-シアナトフェニル)アダマンタン、1,3-ビス(4-シアナトフェニル)-5,7-ジメチルアダマンタン、3,3-ビス(4-シアナトフェニル)イソベンゾフラン-1(3H)-オン(フェノールフタレインのシアネート)、3,3-ビス(4-シアナト-3-メチルフェニル)イソベンゾフラン-1(3H)-オン(o-クレゾールフタレインのシアネート)、9,9’-ビス(4-シアナトフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-シアナト-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(2-シアナト-5-ビフェニルイル)フルオレン、トリス(4-シアナトフェニル)メタン、1,1,1-トリス(4-シアナトフェニル)エタン、1,1,3-トリス(4-シアナトフェニル)プロパン、α,α,α’-トリス(4-シアナトフェニル)-1-エチル-4-イソプロピルベンゼン、1,1,2,2-テトラキス(4-シアナトフェニル)エタン、テトラキス(4-シアナトフェニル)メタン、2,4,6-トリス(N-メチル-4-シアナトアニリノ)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(N-メチル-4-シアナトアニリノ)-6-(N-メチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、ビス(N-4-シアナト-2-メチルフェニル)-4,4’-オキシジフタルイミド、ビス(N-3-シアナト-4-メチルフェニル)-4,4’-オキシジフタルイミド、ビス(N-4-シアナトフェニル)-4,4’-オキシジフタルイミド、ビス(N-4-シアナト-2-メチルフェニル)-4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタルイミド、トリス(3,5-ジメチル-4-シアナトベンジル)イソシアヌレート、2-フェニル-3,3-ビス(4-シアナトフェニル)フタルイミジン、2-(4-メチルフェニル)-3,3-ビス(4-シアナトフェニル)フタルイミジン、2-フェニル-3,3-ビス(4-シアナト-3-メチルフェニル)フタルイミジン、1-メチル-3,3-ビス(4-シアナトフェニル)インドリン-2-オン、及び2-フェニル-3,3-ビス(4-シアナトフェニル)インドリン-2-オンが挙げられる。
【0086】
前記式(4)で表される化合物の別の具体例としては、特に限定されないが、フェノールノボラック樹脂及びクレゾールノボラック樹脂(公知の方法により、フェノール、アルキル置換フェノール又はハロゲン置換フェノールと、ホルマリン及び/又はパラホルムアルデヒド等のホルムアルデヒド化合物とを、酸性溶液中で反応させたもの)、トリスフェノールノボラック樹脂(ヒドロキシベンズアルデヒドとフェノールとを酸性触媒の存在下に反応させたもの)、フルオレンノボラック樹脂(フルオレノン化合物と9,9-ビス(ヒドロキシアリール)フルオレン類とを酸性触媒の存在下に反応させたもの)、フェノールアラルキル樹脂、クレゾールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂及びビフェニルアラルキル樹脂(公知の方法により、Ar’-(CH2Y)2(Ar’はフェニル基を示し、Yはハロゲン原子を示す)で表されるようなビスハロゲノメチル化合物とフェノール化合物とを酸性触媒もしくは無触媒で反応させたもの、Ar’-(CH2OR)2(Ar’はフェニル基を示す)で表されるようなビス(アルコキシメチル)化合物とフェノール化合物とを酸性触媒の存在下に反応させたもの、Ar’-(CH2OH)2(Ar’はフェニル基を示す)で表されるようなビス(ヒドロキシメチル)化合物とフェノール化合物とを酸性触媒の存在下に反応させたもの、芳香族アルデヒド化合物とアラルキル化合物とフェノール化合物とを重縮合させたもの、フェノール変性キシレンホルムアルデヒド樹脂(公知の方法により、キシレンホルムアルデヒド樹脂とフェノール化合物とを酸性触媒の存在下に反応させたもの)、変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂(公知の方法により、ナフタレンホルムアルデヒド樹脂とヒドロキシ置換芳香族化合物とを酸性触媒の存在下に反応させたもの)、フェノール変性ジシクロペンタジエン樹脂、ポリナフチレンエーテル構造を有するフェノール樹脂(公知の方法により、フェノール性ヒドロキシ基を1分子中に2つ以上有する多価ヒドロキシナフタレン化合物を、塩基性触媒の存在下に脱水縮合させたもの)等のフェノール樹脂を、前記と同様の方法によりシアネート化したもの等、並びにこれらのプレポリマー等が挙げられる。
【0087】
他のシアン酸エステル化合物の例としては、下記式(7)で表されるものも挙げられる。
【化13】
【0088】
式(7)中、Ar4は芳香環を表し、複数ある場合は互いに同一であっても異なっていてもよい。R1は、各々独立に、メチレン基、メチレンオキシ基、メチレンオキシメチレン基又はオキシメチレン基を表し、これらが連結していてもよい。R2は一価の置換基を表し、各々独立に水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、R3は各々独立に水素原子、炭素数が1~3のアルキル基、アリール基、ヒドロキシ基又はヒドロキシメチレン基を表し、mは1以上の整数を表し、nは0以上の整数を表す。m及びnが異なる化合物の混合物であってもよい。各繰り返し単位の配列は任意である。lはシアナト基の結合個数を表し、1~3の整数である。xはR2の結合個数を表し、Ar4の置換可能基数から(l+2)を引いた数を表す。yはR3の結合個数を表し、Ar4の置換可能基数から2を引いた数を表す。
【0089】
前記式(7)におけるAr4としては、特に限定されず、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、及びアントラセン環等が挙げられる。
式(7)のR2及びR3におけるアルキル基は、直鎖もしくは分岐の鎖状構造、及び環状構造(例えば、シクロアルキル基等)の何れを有していてもよい。
また、式(7)のR2及びR3におけるアリール基中の水素原子は、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子、メトキシ基、フェノキシ基等のアルコキシ基、又はシアノ基等で置換されていてもよい。
前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、1-エチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、及びトリフルオロメチル基が挙げられる。
前記アリール基としては、特に限定されず、例えば、フェニル基、キシリル基、メシチル基、ナフチル基、フェノキシフェニル基、エチルフェニル基、o-,m-又はp-フルオロフェニル基、ジクロロフェニル基、ジシアノフェニル基、トリフルオロフェニル基、メトキシフェニル基、o-,m-又はp-トリル基等が挙げられる。更にアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、及びtert-ブトキシ基が挙げられる。
【0090】
式(7)で表されるシアン酸エステル化合物としては、特に限定されず。例えば、フェノール変性キシレンホルムアルデヒド樹脂(公知の方法により、キシレンホルムアルデヒド樹脂とフェノール化合物とを酸性触媒の存在下に反応させたもの)、変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂(公知の方法により、ナフタレンホルムアルデヒド樹脂とヒドロキシ置換芳香族化合物とを酸性触媒の存在下に反応させたもの)等のフェノール樹脂を後述と同様の方法によりシアネート化したもの等が挙げられる。
【0091】
これらの他のシアン酸エステル化合物は、1種単独又は2種以上を適宜混合して使用することも可能である。
【0092】
これらの中でも、フェノールノボラック型シアン酸エステル化合物、ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物、ビフェニルアラルキル型シアン酸エステル化合物、ナフチレンエーテル型シアン酸エステル化合物、キシレン樹脂型シアン酸エステル化合物、及びアダマンタン骨格型シアン酸エステル化合物が好ましく、ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物がより好ましい。
【0093】
本実施形態に係る樹脂組成物において、他のシアン酸エステル化合物を含む場合、他のシアン酸エステル化合物の合計の含有量(ただし、本実施形態のシアン酸エステル化合物を除く)は、特に限定されないが、本実施形態の樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部中に、通常0.01~60質量部である。
【0094】
(マレイミド化合物)
マレイミド化合物としては、特に限定されず、1分子中に1個以上のマレイミド基を有する樹脂又は化合物であれば、一般に公知のものを使用できる。例えば、4,4-ジフェニルメタンビスマレイミド、フェニルメタンマレイミド、m-フェニレンビスマレイミド、2,2-ビス(4-(4-マレイミドフェノキシ)-フェニル)プロパン、3,3-ジメチル-5,5-ジエチル-4,4-ジフェニルメタンビスマレイミド、4-メチル-1,3-フェニレンビスマレイミド、1,6-ビスマレイミド-(2,2,4-トリメチル)ヘキサン、4,4-ジフェニルエーテルビスマレイミド、4,4-ジフェニルスルフォンビスマレイミド、1,3-ビス(3-マレイミドフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-マレイミドフェノキシ)ベンゼン、ポリフェニルメタンマレイミド、ノボラック型マレイミド化合物、ビフェニルアラルキル型マレイミド化合物、及びこれらマレイミド化合物のプレポリマー、もしくはマレイミド化合物とアミン化合物のプレポリマー等が挙げられる。これらのマレイミド化合物は、1種単独又は2種以上を適宜混合して使用することも可能である。これらの中でも、ノボラック型マレイミド化合物、及びビフェニルアラルキル型マレイミド化合物が好ましい。
本実施形態に係る樹脂組成物において、マレイミド化合物を含む場合、その合計の含有量は、特に限定されないが、本実施形態の樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部中に、通常0.01~60質量部である。
【0095】
(フェノール樹脂)
フェノール樹脂としては、特に限定されず、1分子中に2個以上のヒドロキシ基を有するフェノール樹脂であれば、一般に公知のものを使用できる。例えば、ビスフェノールA型フェノール樹脂、ビスフェノールE型フェノール樹脂、ビスフェノールF型フェノール樹脂、ビスフェノールS型フェノール樹脂、フェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック型フェノール樹脂、グリシジルエステル型フェノール樹脂、アラルキルノボラック型フェノール樹脂、ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂、クレゾールノボラック型フェノール樹脂、多官能フェノール樹脂、ナフトール樹脂、ナフトールノボラック樹脂、多官能ナフトール樹脂、アントラセン型フェノール樹脂、ナフタレン骨格変性ノボラック型フェノール樹脂、フェノールアラルキル型フェノール樹脂、ナフトールアラルキル型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、ビフェニル型フェノール樹脂、脂環式フェノール樹脂、ポリオール型フェノール樹脂、リン含有フェノール樹脂、及び水酸基含有シリコーン樹脂類が挙げられる。これらのフェノール樹脂は、1種単独又は2種以上を適宜混合して使用することも可能である。これらの中でも、ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂、ナフトールアラルキル型フェノール樹脂、リン含有フェノール樹脂、及び水酸基含有シリコーン樹脂が難燃性の点で好ましい。
本実施形態に係る樹脂組成物において、フェノール樹脂を含む場合、その合計の含有量は、特に限定されないが、本実施形態の樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部中に、通常0.01~60質量部である。
【0096】
(エポキシ樹脂)
エポキシ樹脂としては、特に限定されず、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であれば、公知のものを適宜使用することができる。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、アラルキルノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、多官能フェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ジヒドロアントラセン型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格変性ノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、イソシアヌル酸型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、キサンテン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ポリオール型エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、ブタジエン等の二重結合をエポキシ化した化合物、及び水酸基含有シリコーン樹脂類とエピクロルヒドリンとの反応により得られる化合物が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、1種単独又は2種以上を適宜混合して使用することも可能である。これらの中でも、難燃性、及び耐熱性の観点から、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、多官能フェノール型エポキシ樹脂、及びナフタレン型エポキシ樹脂が好ましい。
本実施形態に係る樹脂組成物において、エポキシ樹脂を含む場合、その合計の含有量は、特に限定されないが、本実施形態の樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部中に、通常0.01~60質量部である。
【0097】
(オキセタン樹脂)
オキセタン樹脂としては、特に限定されず、一般に公知のものを使用できる。例えば、オキセタン、2-メチルオキセタン、2,2-ジメチルオキセタン、3-メチルオキセタン、3,3-ジメチルオキセタン等のアルキルオキセタン、3-メチル-3-メトキシメチルオキセタン、3,3-ジ(トリフルオロメチル)パーフルオキセタン、2-クロロメチルオキセタン、3,3-ビス(クロロメチル)オキセタン、ビフェニル型オキセタン、OXT-101(東亞合成製、商品名)、及びOXT-121(東亞合成製、商品名)等が挙げられる。これらのオキセタン樹脂は、1種単独又は2種以上を適宜混合して使用することも可能である。
本実施形態に係る樹脂組成物において、オキセタン樹脂を含む場合、その合計の含有量は、特に限定されないが、本実施形態の樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部中に、通常0.01~60質量部である。
【0098】
(ベンゾオキサジン化合物)
ベンゾオキサジン化合物としては、特に限定されず、1分子中に2個以上のジヒドロベンゾオキサジン環を有する化合物であれば、一般に公知のものを用いることができる。例えば、ビスフェノールA型ベンゾオキサジンBA-BXZ(小西化学工業(株)社製、商品名)、ビスフェノールF型ベンゾオキサジンBF-BXZ(小西化学工業(株)社製、商品名)、ビスフェノールS型ベンゾオキサジンBS-BXZ(小西化学工業(株)社製、商品名)、P-d型ベンゾオキサジン(四国化成工業(株)社製、商品名)、及びF-a型ベンゾオキサジン(四国化成工業(株)社製、商品名)等が挙げられる。これらのベンゾオキサジン化合物は、1種単独又は2種以上を適宜混合して使用することも可能である。
本実施形態に係る樹脂組成物において、ベンゾオキサジン化合物を含む場合、その合計の含有量は、特に限定されないが、本実施形態の樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部中に、通常0.01~60質量部である。
【0099】
(重合可能な不飽和基を有する化合物)
重合可能な不飽和基を有する化合物としては、特に限定されず、一般に公知のものを使用できる。例えば、エチレン、プロピレン、スチレン、ジビニルベンゼン、及びジビニルビフェニル等のビニル化合物;メチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、及びジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の1価又は多価アルコールの(メタ)アクリレート類;ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート、及びビスフェノールF型エポキシ(メタ)アクリレート等のエポキシ(メタ)アクリレート類;ベンゾシクロブテン樹脂が挙げられる。これらの重合可能な不飽和基を有する化合物は、1種単独又は2種以上を適宜混合して使用することも可能である。
本実施形態に係る樹脂組成物において、重合可能な不飽和基を有する化合物を含む場合、その合計の含有量は、特に限定されないが、本実施形態の樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部中に、通常0.01~60質量部である。
【0100】
(充填材)
本実施形態の樹脂組成物は、熱膨張特性、寸法安定性、難燃性、熱伝導率、及び誘電特性等の観点から、充填材を含んでもよい。充填材としては、公知のものを適宜使用することができ、その種類は特に限定されない。積層板用途において一般に使用されている充填材を、充填材として用いることができる。充填材の具体例としては、特に限定されないが、天然シリカ、溶融シリカ、合成シリカ、アモルファスシリカ、アエロジル、及び中空シリカ等のシリカ類;ホワイトカーボン、チタンホワイト、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、及び酸化ジルコニウム等の酸化物;窒化ホウ素、凝集窒化ホウ素、窒化ケイ素、及び窒化アルミニウム等の窒化物;硫酸バリウム等の硫化物;水酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム加熱処理品(水酸化アルミニウムを加熱処理し、結晶水の一部を減じたもの)、ベーマイト、及び水酸化マグネシウム等の水酸化物;酸化モリブデン及びモリブデン酸亜鉛等のモリブデン化合物;ホウ酸亜鉛、錫酸亜鉛、アルミナ、クレー、カオリン、タルク、焼成クレー、焼成カオリン、焼成タルク、マイカ、E-ガラス、A-ガラス、NE-ガラス、C-ガラス、L-ガラス、D-ガラス、S-ガラス、M-ガラスG20、ガラス短繊維(Eガラス、Tガラス、Dガラス、Sガラス、Qガラス等のガラス微粉末類を含む。)、中空ガラス、及び球状ガラス等の無機系の充填材;スチレン型、ブタジエン型、及びアクリル型等のゴムパウダー、コアシェル型のゴムパウダー、シリコーンレジンパウダー、シリコーンゴムパウダー、並びにシリコーン複合パウダー等の有機系の充填材等が挙げられる。これらの充填材は、1種単独又は2種以上を適宜混合して使用することも可能である。
これらの充填材は、後述のシランカップリング剤等で表面処理されていてもよい。
【0101】
本実施形態の樹脂組成物において、充填材の含有量は、特に限定されないが、硬化物の耐熱性を良好にするという観点から、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対して、2000質量部以下とすることが好ましく、1500質量部以下とすることがより好ましく、1000質量部以下とすることが更に好ましい。なお、充填材を含有する場合、下限値は、特に限定されないが、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対して、通常10質量部である。
【0102】
(シランカップリング剤及び湿潤分散剤)
充填材を樹脂組成物に含有させるにあたり、シランカップリング剤や湿潤分散剤を併用してもよい。
シランカップリング剤としては、一般に無機物の表面処理に用いられるものを用いることができ、その種類は特に限定されない。例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルジメトキシメチルシラン、3-アミノプロピルジエトキシメチルシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルジメトキシメチルシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルジエトキシメチルシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、[3-(6-アミノヘキシルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン、及び[3-(N,N-ジメチルアミノ)-プロピル]トリメトキシシラン等のアミノシラン系;3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルジメトキシメチルシラン、3-グリシドキシプロピルジエトキシメチルシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、及び[8-(グリシジルオキシ)-n-オクチル]トリメトキシシラン等のエポキシシラン系;ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ジメトキシメチルビニルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、トリメトキシ(7-オクテン-1-イル)シラン、及びトリメトキシ(4-ビニルフェニル)シラン等のビニルシラン系;3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルジメトキシメチルシラン、及び3-メタクリロキシプロピルジエトキシメチルシラン等のメタクリルシラン系;3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、及び3-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のアクリルシラン系;3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、及び3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネートシラン系;トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート等のイソシアヌレートシラン系;3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、及び3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン等のメルカプトシラン系;3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のウレイドシラン系;p-スチリルトリメトキシシラン等のスチリルシラン系;N-[2-(N-ビニルベンジルアミノ)エチル]-3-アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩等のカチオニックシラン系;[3-(トリメトキシシリル)プロピル]コハク酸無水物等の酸無水物系シラン;フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン、ジエトキシメチルフェニルシラン、及びp-トリルトリメトキシシラン等のフェニルシラン系;トリメトキシ(1-ナフチル)シラン等のアリールシラン系が挙げられる。これらのシランカップリング剤は、1種単独又は2種以上を適宜混合して使用することも可能である。
【0103】
本実施形態の樹脂組成物において、シランカップリング剤の含有量は、特に限定されないが、通常、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対して、0.1~20質量部である。
【0104】
湿潤分散剤としては、一般に塗料用に用いられているものを用いることができ、その種類は特に限定されない。湿潤分散剤としては、共重合体ベースの湿潤分散剤を用いることができ、市販品であってもよい。市販品としては、特に限定されないが、例えば、ビックケミー・ジャパン(株)製のDisperbyk(登録商標)-110、111、161、180、BYK(登録商標)-W996、BYK(登録商標)-W9010、BYK(登録商標)-W903、及びBYK(登録商標)-W940等が挙げられる。これらの湿潤分散剤は、1種単独又は2種以上を適宜混合して使用することも可能である。
本実施形態の樹脂組成物において、湿潤分散剤の含有量は、特に限定されないが、通常、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対して、0.1~20質量部である。
【0105】
(硬化促進剤)
本実施形態の樹脂組成物には、必要に応じて、硬化速度を適宜調節するための硬化促進剤を含んでもよい。硬化促進剤としては、特に限定されず、シアン酸エステル化合物やエポキシ樹脂等の硬化促進剤として一般に使用されているものを好ましく用いることができる。硬化促進剤としては、例えば、オクチル酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸銅、アセチルアセトン鉄、オクチル酸ニッケル、及びオクチル酸マンガン等の有機金属塩類;フェノール、キシレノール、クレゾール、レゾルシン、カテコール、オクチルフェノール、及びノニルフェノール等のフェノール化合物;1-ブタノール、及び2-エチルヘキサノール等のアルコール類;2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、及び2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール類及びこれらのイミダゾール類のカルボン酸もしくはその酸無水類の付加体等の誘導体;ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、及び4-メチル-N,N-ジメチルベンジルアミン等のアミン類;ホスフィン系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、ホスホニウム塩系化合物、及びダイホスフィン系化合物等のリン化合物;エポキシ-イミダゾールアダクト系化合物;ベンゾイルパーオキサイド、p-クロロベンゾイルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、及びジ-2-エチルヘキシルパーオキシカーボネート等の過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物が挙げられる。これらの硬化促進剤は、1種単独又は2種以上を適宜混合して使用することも可能である。
本実施形態の樹脂組成物において、硬化促進剤の含有量は、特に限定されないが、通常、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対して、0.1~20質量部である。
【0106】
(他の添加剤)
本実施形態の樹脂組成物には、本発明の特性が損なわれない範囲において、これまでに挙げられていない熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、及びそのオリゴマー、エラストマー類等の種々の高分子化合物;これまでに挙げられていない難燃性化合物;添加剤等を含んでもよい。これらは一般に使用されているものであれば、特に限定されない。難燃性化合物としては、特に限定されないが、例えば、4,4’-ジブロモビフェニル等の臭素化合物;リン酸エステル、リン酸メラミン、及びリン含有エポキシ樹脂等のリン含有化合物又はリン含有樹脂;メラミン、及びベンゾグアナミン等の窒素化合物;オキサジン環含有化合物;シリコーン系化合物等が挙げられる。添加剤としては、特に限定されないが、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光重合開始剤、蛍光増白剤、光増感剤、染料、顔料、増粘剤、流動調整剤、滑剤、消泡剤、分散剤、レベリング剤、光沢剤、及び重合禁止剤等が挙げられる。これらの他の添加剤は、1種単独又は2種以上を適宜混合して使用することも可能である。
本実施形態の樹脂組成物において、他の添加剤の含有量は、特に限定されないが、通常、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対して、それぞれ0.1~20質量部である。
【0107】
(有機溶剤)
本実施形態の樹脂組成物は、必要に応じて、有機溶剤を含んでもよい。有機溶剤を用いると、樹脂組成物の調製時における粘度を調整することができる。この場合、本実施形態の樹脂組成物は、前記した各種樹脂成分の少なくとも一部、好ましくは全部が有機溶剤に溶解又は相溶した態様(溶液又はワニス)として用いることができる。有機溶剤としては、前記した各種樹脂成分の少なくとも一部、好ましくは全部を溶解又は相溶可能なものであれば、公知のものを適宜用いることができ、その種類は特に限定されない。有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、シクロペンタノン、及びシクロヘキサノン等の脂環式ケトン類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のセロソルブ系溶媒;乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソアミル、乳酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、及びヒドロキシイソ酪酸メチル等のエステル系溶媒;ジメチルアセトアミド、及びジメチルホルムアミド等のアミド類等の極性溶剤類;トルエン、及びキシレン等の芳香族炭化水素等の無極性溶剤が挙げられる。これらの有機溶媒は、1種単独又は2種以上を適宜混合して使用することも可能である。
【0108】
〔樹脂組成物の製造方法〕
本実施形態の樹脂組成物は、常法にしたがって調製することができ、本実施形態のシアン酸エステル化合物、及び前記したその他の任意成分を均一に含有する樹脂組成物が得られる方法であれば、その調製方法は特に限定されない。例えば、本実施形態のシアン酸エステル化合物、及び前記したその他の任意成分を溶剤に順次配合し、十分に撹拌することで本実施形態の樹脂組成物を容易に調製することができる。本実施形態の樹脂組成物は、後述する本実施形態の樹脂シートを作製する際のワニスとして、好ましく使用することができる。
【0109】
樹脂組成物の製造時には、必要に応じて、各成分を均一に溶解又は分散させるための公知の処理(加熱溶融、撹拌、混合、及び混練処理等)を行うことができる。例えば、充填材の均一分散にあたり、適切な撹拌能力を有する撹拌機を付設した撹拌槽を用いて撹拌分散処理を行うことで、樹脂組成物に対する分散性を向上させることができる。前記の加熱溶融としては、公知の溶融押出機等を用いることができる。前記の撹拌、混合、混練処理は、例えば、ボールミル、及びビーズミル等の混合を目的とした装置、又は、公転・自転型の混合装置等の公知の装置を用いて適宜行うことができる。また、本実施形態の樹脂組成物の調製時においては、必要に応じて有機溶剤を使用することができる。有機溶剤の種類は、樹脂組成物中の樹脂を溶解可能なものであれば、特に限定されず、その具体例は、前記したとおりである。
【0110】
[硬化物]
本実施形態の硬化物は、本実施形態の樹脂組成物を硬化させてなる。硬化物は、特に限定されないが、例えば、樹脂組成物を溶融又は溶媒に溶解させた後、型内に流し込み、熱や光等を用いて通常の条件で硬化させることにより得ることができる。熱硬化の場合、硬化温度は、特に限定されないが、硬化が効率的に進み、かつ得られる硬化物の劣化を防止する観点から、120℃から300℃の範囲内が好ましい。光硬化の場合、光の波長領域は、特に限定されないが、光重合開始剤等により効率的に硬化が進む100nmから500nmの範囲で硬化させることが好ましい。
【0111】
[プリプレグ、単層樹脂シート、積層樹脂シート、金属箔張積層板、プリント配線板、及び半導体パッケージの構成材料]
本実施形態の樹脂組成物は、プリプレグ、単層樹脂シート、積層樹脂シート、金属箔張積層板、プリント配線板、及び半導体パッケージの構成材料として用いることができる。本実施形態の樹脂組成物は、熱伝導性により優れているため、シート状成形体用であることが好ましい。例えば、本実施形態の樹脂組成物を溶剤に溶解させた溶液を基材に含浸又は塗布し乾燥することでプリプレグを得ることができる。
また、支持体として剥離可能なプラスチックフィルムを用い、本実施形態の樹脂組成物を溶剤に溶解させた溶液を、そのプラスチックフィルムに塗布し乾燥することでビルドアップ用フィルム又はドライフィルムソルダーレジストを得ることができる。ここで、溶剤は、20℃~150℃の温度で1~90分間乾燥することで除去することができる。
また、本実施形態の樹脂組成物は、溶剤を除去した状態(未硬化の状態)で使用することもできるし、必要に応じて半硬化(Bステージ化)の状態にして使用することもできる。
【0112】
[樹脂シート]
本実施形態の積層樹脂シートは、支持体と、前記支持体の片面又は両面に配された樹脂層と、を有し、前記樹脂層が、本実施形態の樹脂組成物を含む。積層樹脂シートの製造方法は、常法にしたがって行うことができ、特に限定されない。例えば、本実施形態の樹脂組成物を溶剤に溶解させた溶液を支持体に塗布し乾燥することで得ることができる。
【0113】
支持体としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、及びエチレンテトラフルオロエチレン共重合体フィルム、並びにポリイミドフィルム等の有機系のフィルム;これらのフィルムの表面に離型剤を塗布した離型フィルム;銅箔、及びアルミ箔等の導体箔;ガラス板、SUS板、及びFRP等の板状のものが挙げられる。
【0114】
塗布方法としては、特に限定されないが、例えば、本実施形態の樹脂組成物を溶剤に溶解させた溶液を、バーコーター、ダイコーター、ドクターブレード、及びベーカーアプリケーター等で支持体上に塗布する方法が挙げられる。
【0115】
本実施形態の単層樹脂シートは、本実施形態の樹脂組成物をシート状に成形してなる。単層樹脂シートの製造方法は、常法にしたがって行うことができ、特に限定されない。例えば、前記積層樹脂シートの製法において、本実施形態の樹脂組成物を溶剤に溶解させた溶液を支持体上に塗布して乾燥させた後に、積層樹脂シートから支持体を剥離又はエッチングする方法が挙げられる。なお、本実施形態の樹脂組成物を溶剤に溶解させた溶液を、シート状のキャビティを有する金型内に供給し乾燥する等してシート状に成形することで、支持体を用いることなく単層樹脂シート(樹脂シート)を得ることもできる。
【0116】
本実施形態の単層樹脂シート又は積層樹脂シートの作製において、溶剤を除去する際の乾燥条件は、特に限定されないが、低温であると樹脂組成物中に溶剤が残り易く、高温であると樹脂組成物の硬化が進行することから、20℃~170℃の温度で1~90分間が好ましい。
【0117】
本実施形態の単層あるいは積層シートの樹脂層の厚みは、本実施形態の樹脂組成物の溶液の濃度と塗布の厚みにより調整することができ、特に限定されないが、一般的には塗布の厚みが厚くなると乾燥時に溶剤が残り易くなることから、0.1~500μmが好ましい。
【0118】
本実施形態の樹脂シートは、多層プリント配線板の絶縁層の製造用として使用することができる。
【0119】
(プリプレグ)
以下、本実施形態のプリプレグについて詳述する。本実施形態のプリプレグは、基材と、前記基材に含浸又は塗布された樹脂組成物とを有する。本実施形態のプリプレグの製造方法は、本実施形態の樹脂組成物と、基材とを組み合わせてプリプレグを製造する方法であれば、特に限定されない。具体的には、本実施形態の樹脂組成物を基材に含浸又は塗布させた後、120~220℃の乾燥機中で、2~15分程度乾燥させる方法等によって半硬化させることで、本実施形態のプリプレグを製造することができる。このとき、基材に対する樹脂組成物の付着量、すなわち半硬化後のプリプレグの100質量部に対する樹脂組成物の含有量(充填材を含む。)は、20~99質量部の範囲であることが好ましい。
【0120】
本実施形態のプリプレグを製造する際に用いられる基材としては、各種プリント配線板材料に用いられている公知のものを用いることができる。基材としては、特に限定されないが、例えば、ガラス繊維、クォーツ等のガラス以外の無機繊維;ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル等の有機繊維;液晶ポリエステル等の織布が挙げられる。基材の形状としては、織布、不織布、ロービング、チョップドストランドマット、及びサーフェシングマット等が知られており、これらのいずれであってもよい。基材は、1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。織布の中では、超開繊処理や目詰め処理を施した織布が、寸法安定性の観点から好ましい。液晶ポリエステル織布は、電気特性の面から好ましい。基材の厚さは、特に限定されないが、積層板用途であれば、0.01~0.2mmの範囲が好ましい。
【0121】
(金属箔張積層板)
本実施形態の金属箔張積層板は、本実施形態の単層樹脂シート、本実施形態の積層樹脂シート、及び、本実施形態のプリプレグからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む層と、前記層の片面又は両面に配された金属箔と、を有し、前記層が、本実施形態の樹脂組成物の硬化物を含む。プリプレグを用いる場合の具体例としては、前記のプリプレグ1枚に対して、又はプリプレグを複数枚重ねたものに対して、その片面又は両面に銅やアルミニウム等の金属箔を配置して、積層成形することにより作製することができる。ここで用いられる金属箔は、プリント配線板材料に用いられているものであれば、特に限定されないが、圧延銅箔及び電解銅箔等の銅箔が好ましい。金属箔の厚さは、特に限定されないが、2~70μmであることが好ましく、3~35μmであることがより好ましい。成形条件としては、通常のプリント配線板用積層板及び多層板の作製時に用いられる手法を採用できる。例えば、多段プレス機、多段真空プレス機、連続成形機、又はオートクレーブ成形機等を用い、温度180~350℃、加熱時間100~300分、及び面圧20~100kg/cm2の条件で積層成形することにより本実施形態の金属箔張積層板を製造することができる。また、前記のプリプレグと、別途作製した内層用の配線板とを組み合わせて積層成形することにより、多層板を作製することもできる。多層板の製造方法としては、例えば、前記したプリプレグ1枚の両面に35μmの銅箔を配置し、前記条件にて積層形成した後、内層回路を形成し、この回路に黒化処理を実施して内層回路板を形成する。さらに、この内層回路板と前記のプリプレグとを交互に1枚ずつ配置し、さらに最外層に銅箔を配置して、前記条件にて好ましくは真空下で積層成形する。こうして、多層板を作製することができる。
【0122】
(プリント配線板)
本実施形態の金属箔張積層板は、更にパターン形成することにより、プリント配線板として好ましく用いることができる。プリント配線板は、常法に従って製造することができ、その製造方法は特に限定されない。以下、プリント配線板の製造方法の一例を示す。
まず、前記の金属箔張積層板を用意する。次に、金属箔張積層板の表面にエッチング処理を施して内層回路を形成することにより、内層基板を作製する。この内層基板の内層回路表面に、必要に応じて接着強度を高めるための表面処理を施し、次いで、その内層回路表面に前記のプリプレグを所要枚数重ねる。さらに、その外側に外層回路用の金属箔を積層し、加熱及び加圧して一体成形する。このようにして、内層回路と外層回路用の金属箔との間に、基材及び熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層が形成された多層の積層板が製造される。次いで、この多層の積層板にスルーホールやバイアホール用の穴あけ加工を施した後、この穴の壁面に内層回路と外層回路用の金属箔とを導通させるめっき金属皮膜を形成する。さらに、外層回路用の金属箔にエッチング処理を施して外層回路を形成することで、プリント配線板が製造される。
【0123】
前記の製造例で得られるプリント配線板は、絶縁層と、この絶縁層の片面又は両面に形成された導体層とを有し、絶縁層が本実施形態の樹脂組成物を含む構成となる。例えば、本実施形態のプリプレグ(基材、及びこれに含浸又は塗布された本実施形態の樹脂組成物)、本実施形態の金属箔張積層板の樹脂組成物の層(本実施形態の樹脂組成物からなる層)が、本実施形態の樹脂組成物を含む絶縁層を構成するものとすることができる。
【0124】
〔封止用材料〕
本実施形態の封止用材料は、本実施形態の樹脂組成物を含む。封止用材料の製造方法としては、一般に公知の方法を適宜適用でき、特に限定されない。例えば、本実施形態の樹脂組成物と、封止材料用途で一般的に用いられる各種公知の添加剤あるいは溶媒等を、公知のミキサーを用いて混合することで封止用材料を製造することができる。なお、混合の際の、シアン酸エステル化合物、各種添加剤、溶媒の添加方法は、一般に公知の方法を適宜適用でき、特に限定されない。
【0125】
〔繊維強化複合材料〕
本実施形態の繊維強化複合材料は、本実施形態の樹脂組成物と、強化繊維とを含む。強化繊維としては、一般的に公知のものを用いることができ、特に限定されない。例えば、Eガラス、Dガラス、Lガラス、Sガラス、Tガラス、Qガラス、UNガラス、NEガラス、球状ガラス等のガラス繊維;炭素繊維;アラミド繊維;ボロン繊維;PBO繊維;高強力ポリエチレン繊維;アルミナ繊維;炭化ケイ素繊維が挙げられる。強化繊維の形態や配列については、特に限定されず、織物、不織布、マット、ニット、組み紐、一方向ストランド、ロービング、及びチョップド等から適宜選択できる。また、強化繊維の形態としてプリフォーム(強化繊維からなる織物基布を積層したもの、又はこれをステッチ糸により縫合一体化したもの、あるいは立体織物や編組物などの繊維構造物)を適用することもできる。
【0126】
これら繊維強化複合材料の製造方法としては、一般に公知の方法を適宜適用でき、特に限定されない。例えば、リキッド・コンポジット・モールディング法、レジン・フィルム・インフュージョン法、フィラメント・ワインディング法、ハンド・レイアップ法、及びプルトルージョン法等が挙げられる。これらの中でも、リキッド・コンポジット・モールディング法の一つであるレジン・トランスファー・モールディング法は、金属板、フォームコア、及びハニカムコア等プリフォーム以外の素材を成形型内に予めセットしておくことができることから、種々の用途に対応可能であるため、比較的、形状が複雑な複合材料を短時間で大量生産する場合に好ましく用いられる。
【0127】
〔接着剤〕
本実施形態の接着剤は、本実施形態の樹脂組成物を含む。接着剤の製造方法としては、一般に公知の方法を適宜適用でき、特に限定されない。例えば、本実施形態の樹脂組成物と、接着剤用途で一般的に用いられる各種公知の添加剤あるいは溶媒等を、公知のミキサーを用いて混合することで接着剤を製造することができる。なお、混合の際の、シアン酸エステル化合物、各種添加剤、及び溶媒の添加方法は、一般に公知の方法を適宜適用でき、特に限定されない。
【0128】
[半導体装置]
本実施形態の半導体装置は、本実施形態の樹脂組成物を含む。具体的には、以下の方法により製造することができる。本実施形態のプリント配線板の導通箇所に、半導体チップを実装することにより半導体装置を製造することができる。ここで、導通箇所とは、プリント配線板における電気信号を伝える箇所のことであって、その場所は表面であっても、埋め込まれた箇所であってもよい。また、半導体チップは、半導体を材料とする電気回路素子であれば特に限定されない。
【0129】
本実施形態の半導体装置を製造する際の半導体チップの実装方法は、半導体チップが有効に機能すれば、特に限定されないが、具体的には、ワイヤボンディング実装方法、フリップチップ実装方法、バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法、異方性導電フィルム(ACF)による実装方法、及び非導電性フィルム(NCF)による実装方法等が挙げられる。
【0130】
また、半導体チップや半導体チップを搭載してある基板に本実施形態の樹脂組成物を含む絶縁層を形成することによっても、半導体装置を製造することができる。半導体チップを搭載してある基板の形状はウェハ状でもパネル状でも良い。形成後は前記の多層プリント配線板と同様の方法を用いて製造することができる。
【実施例
【0131】
以下、本実施形態を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本実施形態は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0132】
[実施例1]ツインメソゲン型シアン酸エステル化合物(以下、Twin 8BP-CNと略記する。)の合成
下記式(8)で表されるTwin 8BP-CNを後述のようにして合成した。
【0133】
【化14】
【0134】
<ツインメソゲン型ビスフェノール(以下、「Twin 8BP-OH」と略記する。)の合成>
まず、下記式(9)で表されるTwin 8BP-OHを下記の方法にて合成した。
【0135】
【化15】
【0136】
上部に還流冷却器、温度計、及び窒素フロー用ガラス製三方コックを備え付けた200mlの三口フラスコにDMF(N,N-ジメチルホルムアミド)150ml、ヒドロキノン41.29g(375.0mmol)、炭酸カリウム15.55g、及び1,8-ジブロモオクタン10.20g(37.50mmol)を仕込み、窒素気流下、及びスターラーで攪拌しつつ150℃まで加熱し、そのまま8時間反応させた。反応終了後、純水200mlを添加して再沈殿させた。吸引ろ過を行い、純水100ml×3で洗浄を行った。得られた粉末を真空乾燥させ、4,4’-(オクタン-1,8-ジイルビス(オキシ))ジフェノールを得た。
上部に還流冷却器、温度計、及び窒素フロー用ガラス製三方コックを備え付けた200mlの三口フラスコに4,4’-(オクタン-1,8-ジイルビス(オキシ))ジフェノール9.58g(29.0mmol)、4-ヒドロキシ安息香酸8.01g(58.0mmol)、p-トルエンスルホン酸・一水和物1.60g、及びパラキシレン100mlを仕込み、窒素気流下、スターラーで攪拌しつつ還流させた。そのまま24時間反応させて室温まで冷却した後、吸引ろ過を行った。エタノール50mlで3回と、水洗50mlで3回洗浄を行い、真空乾燥させて薄茶色の粉末を得た。
【0137】
H-NMR測定を行い、式(9)で表されるTwin 8BP-OHであることを確認した。
式(9)で表されるTwin 8BP-OHのH-NMRの帰属を以下に示す。
【0138】
H NMR (500MHz、DMSO-d):δ1.4(br、4H、-CH-)、1.4(br、4H、-CH-)、1.7(quin、4H、-CH-)、4.0(t、4H、-CH-O-)、6.8(d、4H、-Ar)、6.9(d、4H、-Ar)、7.1(d、4H、-Ar)、8.0(d、4H、-Ar)、10.5(s、2H、-OH)
【0139】
<Twin 8BP-CNの合成>
アルゴン吹き込み口、及び温度計を備えた2L四口フラスコに、アルゴン気流下、前記方法で得られたTwin 8BP-OH40.0g(70.1mmol)、及びテトラヒドロフラン1.2Lを加えた。更に臭化シアン20.8g(196mmol)を添加した後、ドライアイス・アセトンバスで内温を-10℃に調整した。内温が-5℃を超えないようにトリエチルアミン21.2g(210mmol)を20分かけて滴下し、-10℃で2時間攪拌した。H-NMRで終点確認後、反応溶液をろ過し、固体を得た。得られた固体をクロロホルム3.2Lに懸濁し、クロロホルム懸濁液を2.5%食塩水1Lで3回、水1Lで1回洗浄した後、減圧濃縮し、固体を得た。得られた固体にヘキサン1Lを加え、懸濁攪拌した後、固体をろ過回収して乾燥し、Twin 8BP-CN 32.47g(52.3mmol)を得た。H-NMR測定を行い、式(8)で表されるTwin 8BP-CNを確認した。
シアン酸エステル化合物(Twin 8BP-CN)のH-NMRの帰属を以下に示す。H-NMRチャートを図1に示す。
【0140】
H-NMR(400MHz、CDCl)δ(ppm):8.31(d、4H、Ar)、7.44(d、4H、Ar)、7.11(d、4H、Ar)、6.93(d、4H、Ar)、3.95(m、4H、-CH-)、1.82(m、4H、-CH-)、1.45(m、8H、-CH-)
【0141】
<樹脂組成物の調製及び硬化物の作製>
[実施例2]
実施例1で得られたシアン酸エステル化合物(Twin 8BP-CN)100質量部とオクチル酸亜鉛(日本化学産業株式会社製、ニッカオクチックス亜鉛(商品名)、金属含有量18%)0.05質量部とを加熱溶融して、樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物を金型に充填し、真空加熱プレス(220℃、90分間、プレス圧力7MPa)により硬化物を作製した。
【0142】
[実施例3]
実施例1で得られたシアン酸エステル化合物(Twin 8BP-CN)100質量部を加熱溶融して、樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を金型に充填し、真空熱プレス(160℃、60分間の後、220℃、90分間、プレス圧力7MPa)により硬化物を作製した。
【0143】
[比較例1]
シアン酸エステル化合物(Twin 8BP-CN)を100質量部用いる代わりに、2,2-ビス(4-シアナトフェニル)プロパン(三菱ガス化学株式会社製、TAと略記)を100質量部用いたこと以外は、実施例2と同様にして樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物を金型に充填し、実施例2と同様の方法で真空加熱プレス(220℃、90分間、プレス圧力2MPa)を用いて硬化物を作製した。
【0144】
[比較例2]
シアン酸エステル化合物(Twin 8BP-CN)を100質量部用いる代わりに、1,1-ビス(4-シアナトフェニル)エタン(三菱ガス化学株式会社製、E-CNと略記)を100質量部用いた以外は、実施例2と同様にして樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物を金型に充填し、実施例2と同様の方法で真空加熱プレス(220℃、90分間、プレス圧力2MPa)を用いて硬化物を作製した。
【0145】
<硬化物の評価>
前記のようにして得られた各硬化物について、熱伝導率の測定を行った。
【0146】
<硬化物の熱伝導率>
得られた硬化物の「熱拡散係数」は、1cm角の大きさに加工した硬化物をキセノンフラッシュ法熱拡散率測定装置(NETZSCH製、LFA447 NanoFlash)中の試料ホルダにセットし、25℃、大気中の条件下で測定を行うことによって求めた。
硬化物の「比熱」は、DSC(セイコーインスツル株式会社製、EXSTAR6000 DSC6220)を用い、JIS K7123(プラスチックの比熱容量測定方法)に従って求めた。
硬化物の「密度」は、水中置換法により、密度測定機(メトラー・トレド株式会社製、MS-DNY-43)を用いて求めた。
求めた熱拡散係数、比熱、及び密度から、硬化物の熱伝導率を下記式により求めた。
【0147】
式:λ=α・Cp・ρ
〔λ:熱伝導率(W/m・K)、α:熱拡散係数(m/s)、Cp:比熱(J/g・K)、ρ:密度(kg/m)〕
【0148】
測定結果は、表1に示されるとおりであった。なお、表1中、配合における数値の単位は、質量部を表し、「-」の記載部分は該当する原料の配合がないことを意味する。
【0149】
【表1】
【0150】
表1からも明らかなように、本発明のシアン酸エステル化合物を含む樹脂組成物の硬化物は、従来品のシアン酸エステル化合物を用いたものに比して、優れた熱伝導性を有することが確認された。
【0151】
本出願は、2018月9月19日出願の日本特許出願(特願2018-174777)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0152】
本発明のシアン酸エステル化合物及び樹脂組成物は、優れた熱伝導性を発現するため、工業的に有用であり、例えば、プリプレグ、樹脂シート、回路基板(積層板用途、多層プリント配線板用途等)、半導体封止材、穴埋め樹脂、部品埋め込み樹脂、繊維強化複合材料、及び接着剤等の用途に使用することができる。
図1