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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-21
(45)【発行日】2023-06-29
(54)【発明の名称】電気外科用鉗子器具
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/14 20060101AFI20230622BHJP
   A61B 18/18 20060101ALI20230622BHJP
【FI】
A61B18/14
A61B18/18 100
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2018542179
(86)(22)【出願日】2017-05-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-06-20
(86)【国際出願番号】 EP2017061741
(87)【国際公開番号】W WO2017198672
(87)【国際公開日】2017-11-23
【審査請求日】2020-04-30
【審判番号】
【審判請求日】2022-02-08
(31)【優先権主張番号】1608632.4
(32)【優先日】2016-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】512008495
【氏名又は名称】クレオ・メディカル・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CREO MEDICAL LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハンコック,クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ウルリヒ,ジョージ
(72)【発明者】
【氏名】ウェッブ,デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】モリス,スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】バーン,パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ホワイト,マルコム
(72)【発明者】
【氏名】クレイブン,トーマス
【合議体】
【審判長】佐々木 正章
【審判官】村上 聡
【審判官】松田 長親
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/097472(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B18/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波エネルギを搬送する同軸ケーブルと、
前記同軸ケーブルの遠位端に装着される一対のジョーとを備え、前記一対のジョーの各々は、その対向する内面間の間隙を開閉するように相互に対して移動可能であり、
前記一対のジョー間での相対的移動を起こさせるための作動部材と、を備え、
前記一対のジョーは、第1ジョーを有し、この第1ジョーは、
作動部材に作動可能に係合され前記一対のジョー間を相対移動させる外側ジョー部材を備え、前記外側ジョー部材は前記一対のジョーに構造的強度を付与するための剛性材料により形成され
前記外側ジョー部材に取付けられて前記第1ジョーの内面を形成する内側ジョー部材とを有し、前記内側ジョー部材はその上に形成される第1電極及び第2電極を有するアプリケータパッドを備え、更に、
マイクロ波エネルギを前記同軸ケーブルから前記第1電極及び第2電極に伝達するエネルギ伝達部材を有し、前記エネルギー伝達部材は前記同軸ケーブルと前記アプリケータパッド上の前記第1電極及び第2電極との間のインピーダンスを整合し、
前記エネルギ伝達部材は、その上に形成される一対の導電性トラックを有する可撓性誘電体基板を備える、電気外科用鉗子。
【請求項2】
前記一対のジョーは、前記第1ジョーに対向配置される第2ジョーを備え、前記第2ジョーは、
追加の作動部材に作動可能に係合可能で前記一対のジョー間を相対移動させる追加の外側ジョー部材と、
前記外側ジョー部材に取付けられて前記第2ジョーの内面を形成する追加の内側ジョー部材とを有し、前記内側ジョー部材はその上に形成された追加の第1電極及び追加の第2電極を有する追加のアプリケータパッドを備え、更に、
マイクロ波エネルギを前記同軸ケーブルから前記追加の第1電極及び追加の第2電極に伝達する追加のエネルギ伝達部材を有し、
前記追加のエネルギ伝達部材は、その上に形成される追加の一対の導電性トラックを有する追加の可撓性誘電体基板を備える、請求項1に記載の電気外科用鉗子。
【請求項3】
前記第1ジョー上の前記第1電極及び第2電極は、前記第2ジョー上の前記追加の第1電極及び追加の第2電極に前記一対のジョーの間の間隙を跨いで対向し、前記間隙を跨いで互いに対向する前記電極は反対の電気極性を有する、請求項2に記載の電気外科用鉗子。
【請求項4】
前記一対の導電性トラックは、可撓性誘電体基板の対向側に形成される、請求項1からのいずれか1項に記載の電気外科用鉗子。
【請求項5】
前記一対の導電性トラックは、前記同軸ケーブルの内側導電体に電気的に接続される第1導電性トラックと、前記同軸ケーブルの外側導電体に電気的に接続される第2導電性トラックとを備える、請求項1からのいずれか1項に記載の電気外科用鉗子。
【請求項6】
前記第1導電性トラックは、前記第1電極に電気的に接続され、前記第2導電性トラックは前記第2電極に電気的に接続される、請求項に記載の電気外科用鉗子。
【請求項7】
前記アプリケータパッドは、それを貫通して形成された孔を有し、前記第1電極及び第2電極の一方は、前記孔を介して前記一対の導電性トラックの一方に接続される、請求項1からのいずれか1項に記載の電気外科用鉗子。
【請求項8】
前記可撓性誘電体基板は、前記一対の導電性トラックの幅よりも大きな幅を有するリボンである、請求項1からのいずれか1項に記載の電気外科用鉗子。
【請求項9】
前記アプリケータパッドは、セラミック、PEEKまたはPTFEの部材である、請求項1からのいずれか1項に記載の電気外科用鉗子。
【請求項10】
前記第1電極及び第2電極は、前記内側ジョー部材に導電性材料の平行な細長いストリップを備える、請求項1からのいずれか1項に記載の電気外科用鉗子。
【請求項11】
前記作動部材は、前記同軸ケーブルに摺動可能に装着されるスリーブである、請求項1から1のいずれか1項に記載の電気外科用鉗子。
【請求項12】
前記スリーブは、可撓性近位部分と剛性遠位部分とを備える、請求項1に記載の電気外科用鉗子。
【請求項13】
前記剛性遠位部分は、10mm以下の長さを有する、請求項1に記載の電気外科用鉗子。
【請求項14】
マイクロ波エネルギを供給する電気外科的発電機と、
患者の体内に挿入するための器具コードを有する外科用スコープ装置とを備え、前記器具コードは、それを通して延びる器具チャンネルを有し、
前記器具チャンネル内に装着される請求項1から13のいずれか1項に記載の電気外科用鉗子と、
前記鉗子を作動するハンドルとを備え、
前記同軸ケーブルは、その近位端において前記電気外科的発電機からマイクロ波エネルギを受取るために接続され、
前記作動部材は、前記ハンドルに作動可能に接続される、電気外科的装置。
【請求項15】
前記作動部材は、周りに延びるスリーブであり、前記同軸ケーブルに対して軸方向に摺動可能である、請求項14に記載の電気外科的装置。
【請求項16】
前記ハンドルは、前記スリーブの軸方向移動を制御する作動機構を備え、前記作動機構は、
前記ハンドルに固定されるボディと、
前記ボディに対して摺動可能なキャリッジと、
前記ボディに枢動可能に装着され、前記キャリッジに作動可能に係合するレバーとを備え、前記レバーの回転により前記キャリッジが摺動運動を生じさせ、
前記スリーブは、前記キャリッジに取付けられる、請求項15に記載の電気外科的装置。
【請求項17】
前記作動機構は、前記キャリッジを近位方向に付勢するように配置される付勢部材を含む、請求項16に記載の電気外科的装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体組織を把持し、把持した組織にマイクロ波エネルギを出力し、組織を凝固または焼灼または封止する電気外科用鉗子に関する。特に、鉗子は、電磁放射線(好ましくは、マイクロ波エネルギ)を照射して血管(複数可)を封止する前に、1つまたは複数の血管を閉じる圧力をかけるために使用してもよい。鉗子は、例えば高周波(RF)エネルギまたはブレード等の機械的な切断部材を使用して、凝固または封止後に組織を切断するために準備してもよい。本発明は、内視鏡、胃内視鏡、もしくは気管支鏡の器具チャンネルを挿通することができるか、または腹腔鏡手術もしくは開腹手術に使用することができる鉗子に適用してもよい。
【背景技術】
【0002】
把持した生体組織に熱エネルギを出力することのできる鉗子が知られている[1]。例えば、鉗子のジョー内に配置された双極電極から高周波(RF)エネルギを出力することが知られている[2,3]。RFエネルギは、血管壁内の細胞外基質タンパク質の熱変性により血管を封止するために使用し得る。熱エネルギは更に、把持した組織を焼灼し、凝固を容易とし得る。
【0003】
US6,585,735は、内視鏡的バイポーラ鉗子を記載し、ここでは、鉗子のジョーがバイポーラエネルギをその間に保持した組織を通して導くように配置される。
【0004】
EP2233098は、組織を封止するマイクロ波鉗子を記載し、ここでは、ジョーの封止面が、鉗子のジョー間に把持した組織内にマイクロ波エネルギを照射する1つまたは複数のマイクロ波アンテナを含む。
【0005】
WO2015/097572は、電気外科用鉗子を記載し、ここでは、1つまたは複数対の非共鳴不均衡損失伝送線路構造が、一対のジョーの内面に配置される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
最も一般的には、本発明は、同軸ケーブルから鉗子ジョーの電極に電磁エネルギ(例えば、マイクロ波エネルギ及び/または高周波エネルギ)を効果的に伝達するエネルギ伝達構造が、コンパクトなジョー開口構造内に設けられる電気外科用鉗子器具を提供する。ジョー開構造は、内視鏡または他のスコープ装置の器具チャンネルに挿通するために適切な寸法とし得る。代替的に、この装置は、腹腔鏡装置のように構成してもよく、または開腹処置に使用してもよい。この器具は、経管腔的内視鏡手術(NOTES)等の新たな低侵襲手術を実行するためのツールとして使用し得る。
【0007】
この器具は血管シーラとして使用してもよく、そのために、ジョー構造は、効果的に血管を封止可能な凝固プラグを生じさせるために血管の壁部にマイクロ波エネルギを加える前に、血管の壁部に十分な圧力を作用させて血管を閉じるように構成される。この器具は、組織を切断するためにRFエネルギを出力可能としてもよい。例えば、血管は、マイクロ波エネルギを使用して2つのシール部を生成し、この後、2つのマイクロ波シール部間の位置にRFエネルギを加えて血管またはこの一部を切断することにより、切断してもよい。このような機能は、例えば肺または肝臓の肺葉切除の実行の際に使用してもよい。
【0008】
エネルギ伝達構造は、同軸ケーブルからジョー構造に電磁エネルギを伝達するために可撓性、すなわち変形可能な構造を使用する。これは、電磁エネルギを出力するのに影響を与えることなく、同軸ケーブルに対してジョー構造が移動するのを可能とする。可撓性構造は、伝送線路構造のベースを形成する可撓性基板を備えてもよく、これは、同軸構造、マイクロストリップタイプの伝送線路構造、またはシールド付きストリップ線路とすることができる。伝送線路構造は、同軸ケーブルと鉗子のジョーの電極との間のインピーダンス整合を改善するように調整することができる。
【0009】
本発明によると、マイクロ波エネルギを伝達する同軸ケーブルと、同軸ケーブルの遠位端に装着可能な一対のジョーとを備え、この一対のジョーは、その対向する内面間の間隙を開閉するために互いに対して移動可能であり、一対のジョーは第1ジョーを有し、この第1ジョーは、作動部材に作動可能に係合可能で一対のジョー間を相対移動させる外側ジョー部材と、外側ジョー部材に取付けられて第1ジョーの内面を形成する内側ジョー部材とを有し、この内側ジョー部材は、その上に形成された第1電極と第2電極とを有するアプリケータパッドを備え、更に、同軸ケーブルから第1電極及び第2電極にマイクロ波エネルギを伝達するエネルギ伝達部材を有し、エネルギ伝達部材は、その上に形成された一対の導電性トラックを有する可撓性誘電体基板を備える電気外科用鉗子が提供される。使用の際、一対のジョーは、例えば血管である生体組織を把持するように配置され、マイクロ波エネルギをジョーの内面間の間隙を跨いで加え、血管内の組織、すなわち生体組織内のコラーゲン、エラスチン、脂肪もしくは血液またはその組み合わせを凝固し、これにより把持した血管を封止し得る。封止の後、例えばブレードまたはマイクロ波エネルギを出力する同じ電極から出力されるRFエネルギを使用して、血管を切断することができる。したがって、移動可能なブレードを鉗子に組み込んでもよい。
【0010】
電極はジョーの一方にのみ設けてもよいが、マイクロ波エネルギの凝固効果が均等な態様で加えられるように、双方のジョーにこれらの電極を設けることが望ましく、これはより好適な封止を生成する。したがって、一対のジョーは、第1ジョーに対向配置される第2ジョーを備えてもよく、第2ジョーは第1ジョーと同じ構造を有する。
【0011】
第1及び第2電極は、アプリケータパッドに形成される細長い導電部材でもよい。これらは平行な伝送線路でもよく、アプリケータパッド上の共平面線路構造に形成してもよい。共平面線路または平行な伝送線路間の離間する距離は、RF切断機能を提供するように、すなわち組織の切断または切開/切除を行うために十分高いRFエネルギを加えた際に電界を生成することができるように、選択してもよい。平行な伝送電極は、ジョー間の間隙を挟んで互いに対向する電極が反対の極性を有する、すなわち一方の線路の正電荷が対向する線路の負電荷に対面するように、配置してもよい。組織切断作用は、ジョーが近接近し、例えば1mm以下に離間し、好ましくは0.5mm以下に離間したときに、2つの対向する面の対向する電界により増大し得る。ジョーの第1,第2電極間の間隔は、0.5mm以下でもよい。
【0012】
RFエネルギは、第1,第2電極間に加えてもよく、及び/または、従来のRFバイポーラシーラのそれと同様な方法で加えてもよく、ここでは、一方のジョーが1つの極性で対向するジョーが反対の極性である。この場合、対向するジョーへの接続を交換することにより、ジョーが互いに近接近したときに、互いに対向する2つの電極セットの極性すなわち同様な電極が引き付け合うのが好ましい。
【0013】
本発明は、以下の1つまたは複数の特徴を任意の組み合わせで備えてもよい。
導電性トラックの対は、可撓性誘電体基板の対向する側に形成してもよい。例えば、対の導電性トラックは、同軸ケーブルの内側導電体に電気的に接続される第1導電性トラックと、同軸ケーブルの外側導電体に電気的に接続される第2導電体とを備えてもよい。
【0014】
第1導電性トラックは、第1電極に電気的に接続し、第2導電性トラックは、第2電極に電気的に接続してもよい。これらの接続は、アプリケータパッドの接合部において行ってもよい。導電性トラックは、アプリケータパッドの反対側に接続してもよい。アプリケータパッドは、それを貫通して形成された孔を有してもよく、これにより第1電極及び第2電極の一方が、この孔を介して対の導電性トラックの一方に接続される。
【0015】
外側ジョー部材は、剛性材料により形成し、対のジョーに構造的強度を付与してもよい。例えば、外側ジョー部材は、ステンレス鋼またはニチノールから形成してもよい。外側ジョー部材は、ジョーの内面を互いに離隔して保持する形状に予成形(例えば、熱処理により)してもよい。したがって、ジョーは必然的に開構造を占めてもよい。
【0016】
予測可能または繰返し可能な態様に変形するため、外側ジョー部材は関節接合してもよい。例えば、外側ジョー部材は、例えば外側ジョー部材の材料厚さを減じた領域により形成される1つまたは複数の一体成形ヒンジを備えてもよい。外側ジョー部材は、関節接合され、アプリケータパッド間の間隙が、ジョーが開閉するときにジョーの長さに沿って均一であるパンタグラフタイプの構造を形成してもよい。この構造は、ジョーが閉じるときに、組織がジョーの外側に押出されるのを防止することができる。
【0017】
可撓性誘電体基板は、対の導電性トラックの幅よりも大きな幅を有するリボンでもよい。アプリケータパッドは、内側ジョー部材に装着された追加の誘電体部材(例えば、セラミックまたはPTFEまたはPTFEを装着したセラミック)を備えてもよい。代替的に、アプリケータパッドは、可撓性基板の露出した遠位部分でもよい。同軸給電ケーブルをエネルギ出力アプリケータに接続する可撓性基板の電力損失を最小にし、RF切断に関連する電圧、すなわち400V以上のピーク電圧に材料が確実に耐えることができるように、材料は、低散逸係数またはタンデルタ、すなわち0.001以下を有し、高絶縁耐力または絶縁破壊電圧、すなわち100kV/mm以上までを有することが好ましい。ポリイミドまたは同様な材料を使用可能である。
【0018】
第1電極及び第2電極は、ジョーの内面の導電性材料の平行な細長いストリップを備えてもよい。
【0019】
エネルギ伝達部材は、同軸ケーブルのインピーダンスを第1電極及び第2電極及び電極と接触する生体組織のインピーダンスと整合するような寸法としてもよい。
【0020】
作動部材は、同軸ケーブルに摺動可能に装着されるスリーブでもよい。使用の際、スリーブは外側ジョー部材の背面上を摺動し、それらを互い向けさせて対のジョーを閉じてもよい。スリーブは、2つの部分を備えてもよい。第1(近位)部分は、関節結合されまたは機器チャンネル内を移動可能であるが、変形または屈曲することのないレベルの剛性を設けた長い(例えば、1m以上)可撓性部分を備えてもよい。第1部分は、PEEK等から形成してもよい。第2(遠位)部分は、例えば、金属または硬質プラスチックのより剛性の大きな材料の10mm以下の短い部分を備えてもよく、これはジョーの上を押圧されてジョーを閉じるために十分な力を作用することができる。
【0021】
対のジョーは、外科用スコープ装置の器具チャンネル内に適合する寸法としてもよい。例えば、対のジョー(及びスリーブ)の最大外径は、2mm以下としてもよい。
【0022】
他の態様では、本発明は、マイクロ波エネルギを供給する電気外科用発電機と、患者の体内に挿入する器具コードを有する外科用スコープ装置(例えば、内視鏡等)とを備え、器具コードはそれを通して延びる器具チャンネルを有し、上述のように器具チャンネルに装着される電気外科用鉗子と、鉗子を作動するハンドルとを備え、同軸ケーブルがその近位端において電気外科用発電機からマイクロ波エネルギを受取るよう接続され、作動部材はハンドルに作動可能に接続される電気外科用装置を提供する。上述のように、鉗子は更に、RFエネルギを、例えば組織を切断する目的で出力するように配置してもよい。RFエネルギは、マイクロ波エネルギとして同じ発電機から生じてもよい。
【0023】
作動部材は、同軸ケーブルの周りに延び、同軸ケーブルに対して軸方向に摺動可能なスリーブでもよい。ハンドルは、スリーブの軸方向移動を制御する作動機構を備えてもよく、この作動機構は、ハンドルに固定されるボディと、ボディに対して摺動可能なキャリッジと、ボディに枢動可能に装着されかつキャリッジに作動可能に係合するレバーとを備え、レバーの回転によりキャリッジの摺動運動を生じさせ、スリーブはキャリッジに取付けられる。作動機構は、キャリッジを近位方向に付勢、すなわち鉗子が常時開位置を占めるようにスリーブをジョーから離隔させて付勢するように配置されるバイアス部材(例えば、ばね)含んでもよい。
【0024】
第1電極及び第2電極は、(i)同軸ケーブルにより搬送されるRFエネルギ用の活性電極及びリターン電極、(ii)同軸ケーブルにより搬送されるマイクロ波エネルギ用損失伝送線路構造の双方として作用するように配置される平行な細長い導電性部材でもよい。ここでは、用語「損失伝送線路構造」は、進行波としてマイクロ波エネルギを支持する不均一な不平衡損失伝送線路を意味してもよく、不均一な不平衡損失伝送線路は、進行波に沿うマイクロ波エネルギに対して非共鳴である。細長い導電性部材は、同軸ケーブルの内側導電体または外側導電体に電気的に接続される近位端と、開回路遠位端とを有してもよい。この配置は、電極が放射アンテナを形成する必要のあるマイクロ波鉗子よりも、電極構造の制約をより少なくする。平行線路の他の構造、すなわち2つの蛇行線路、2つの平行曲線線路、2つの「L」字状線路等も可能である。電極の形状は、達成すべき所要の組織効果に基づいて選択してもよい。
【0025】
ここで、用語「非共鳴」は、伝送線路の電気的長さ(マイクロ波エネルギ進行波に沿って)が、進行波の多重反射を抑制する、すなわち放射定常波の生成を防止または抑制するように設定されることを意味する。実際には、これは、伝送線路の電気的長さが、マイクロ波エネルギの4分の1波長の倍数(伝送線路の遠位端が開回路または短絡回路かどうかにしたがって、奇数倍または偶数倍を避けることが必要である)とは実質的に相違することを意味する。間隙内に生体組織が存在する、すなわちジョー部材に接触するときに、伝送線路は非共鳴であることが特に望ましい。したがって、伝送線路の電気的長さは、伝送線路がこのように生体組織により負荷がかかったときに、マイクロ波エネルギの4分の1波長の倍数を避けて設定することがある。伝送線路の遠位端は、これが装置を高周波(RF)エネルギ及びマイクロ波エネルギで作用可能にし得るため、開回路であることが好ましい。
【0026】
非共鳴伝送ラインの形成は、装置が放射するのを防止し得る。したがって、マイクロ波エネルギは、伝送線路構造からの漏洩を通して組織内に出力される。マイクロ波エネルギの周波数における生体組織内への損失レベルの知識を持って伝送線路の長さを設定することにより、本発明の電気外科用鉗子は、伝送線路に沿う進行波の単一の通過における伝送線路の近位端において受取った電力の実質的に全てを出力するように配置され、したがって、可能な最短時間内で最適の組織凝固を生成する。
【0027】
換言すると、伝送線路の幾何学形状は、例えば、シミュレーション等に基づいて、マイクロ波エネルギの周波数の生体組織における高い損失を示すように、選択される。同様に、伝送線路の幾何学形状は、間隙内に組織がなく、代わりに空気が存在するときにより電力損失がより少ないことを確保し得る。例えば、装置は、約1dBの反射減衰量を示してもよく、すなわち、組織が存在するときの20%に比較して、発電機に80%の電力が反射されて戻る。したがって、組織が間隙内に存在するときは、4倍に等しい電力を出力することができる。生体組織は、損失が多く、すなわちマイクロ波エネルギの良好な吸収体である。
【0028】
電極は、それぞれその上に形成された導電性突条を有してもよい。これは、電流路末端に対する優先的な場所として作用する導電性線路を提供する。突条は、細長い導電性部材に一体的に形成してもよく、または、それぞれの電極にロッドを取付けることにより(例えば、半田付け)により形成してもよい。したがって、隆起した突条は、RFエネルギが供給されるときに切断機能を実行する電場用電極を生成する。それぞれの突条の高さは、0.5mm以下としてもよい。誘電体フィルムを同じアプリケータパッドの突条間に付してもよい。これは、突条の頂面間に優先的経路の形成を支援し、破損の防止を支援することができる。
【0029】
ここでは、高周波(RF)は、10kHzから300MHzの範囲の安定固定周波数を意味し、マイクロ波エネルギは、300MHzから100GHzの範囲の安定固定周波数を有してもよい。RFエネルギは、エネルギが神経を刺激するのを防止するために十分に高い周波数、及び、エネルギが組織の白化または不必要な熱的余裕または組織構造に対する損傷を生じさせるのを防止するために十分に低いエネルギを有するべきである。RFエネルギについての好ましいスポット周波数は、100kHz、250kHz、400kHz、500kHz、1MHz、5MHzの任意の1つまたは複数を含む。マイクロ波エネルギについての好ましいスポット周波数は、915MHz、2.45GHz、5.8GHz、14.5GHz、24GHzを含む。
【0030】
上述のように、本発明の電気外科用鉗子は、上部消化管及び下部消化管に挿入するために内視鏡の器具チャネルに挿入するように構成してもよく、または腹腔鏡手術もしくはNOTES処置もしくは一般的開腹処置に使用するように配置してもよい。
【0031】
本発明は、血管壁が2mmより小さな経から7mmを越える経の血管を封止するために使用することができる。
【0032】
本発明は更に、マイクロ波エネルギを出力して血管を封止するプラグを生成するために使用することができ、及び、血管または血管の一部を切断するために平坦な平行マイクロストリップ線路及び/または異極性である対向するジョーの線路間の電場を使用して出力されるRFエネルギを使用することができる電気外科的装置として表してもよい。
【0033】
本発明は更に、マイクロ波エネルギを出力して血管を封止するプラグを生成するために使用でき、血管または血管の一部を切断する機械的ブレードを有する電気外科的装置として表してもよい。
【0034】
本発明は、血管封止処置に使用してもよく、そのために、マイクロ波エネルギを使用して2つの封止部またはプラグを形成し、この後、RFエネルギまたは機械的なブレードの一方を使用して血管が分割される(例えば、2つのプラグの間の中心点において)。後者の場合、ブレードは2つの放射ジョーの間に位置するように配置し、血管を分割するために必要なときに、別箇の作動装置を使用して封止処置の終わりに機械的ブレードを展開してもよい。
【0035】
本発明の実施形態を以下に添付図面を参照して詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本願が使用可能な電気外科的装置を示す概略図である。
図2】本発明の実施形態である電気外科用鉗子用遠位チップ組立体を通る概略的な断面図である。
図3A】閉位置における図2に示す電気外科用鉗子の遠位部分を通る断面図である。
図3B図3Aに示す電気外科用鉗子の底面図である。
図4A】本発明の他の実施形態である電気外科用鉗子用遠位チップ組立体を通る概略的な斜視図である。
図4B図4Aに示す電気外科用鉗子の側面図である。
図4C】ジョー構造を除去した図4Aに示す電気外科用鉗子の斜視図である。
図5A】本発明の実施形態である電気外科用鉗子の閉作用を示す斜視図である。
図5B】本発明の実施形態である電気外科用鉗子の閉作用を示す斜視図である。
図5C】本発明の実施形態である電気外科用鉗子の閉作用を示す斜視図である。
図6】本発明の実施形態である電気外科用鉗子用ジョー構造の展開図である。
図7】実施形態の電気外科用鉗子と共に使用するために適切な摺動スリーブ用作動装置を通る概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
詳細な説明、他のオプション及び選択
本発明は、マイクロ波エネルギを出力して血管を封止することのできる電気外科的鉗子装置に関する。装置は、開腹手術に使用してもよいが、処置部位へのアクセスが規制されている処置に特に使用され得る。例えば、本発明の電気外科用鉗子は、外科スコープ装置、すなわち腹腔鏡、内視鏡等の器具チャンネル内に適合するように構成してもよい。図1は、本発明の電気外科用鉗子を使用し得る電気外科的装置100の概略図を示す。
【0038】
電気外科的装置100は、内視鏡または腹腔鏡等の外科スコープ装置102を備える。外科スコープ装置102は、患者の体内に挿入するのに適した器具コード103を有する。器具コード内を器具チャンネル105が延び、これは外科器具が器具コード104の遠位端に対するアクセスを提供する。この実施例では、鉗子器具106の遠位チップ組立体が器具チャンネル105の遠位先端部から突出しているのを見ることができる。
【0039】
電気外科的装置は、器具106に、例えば電力ケーブル110を介して出力すべき電力を発生及び制御することが可能な電気外科的発電機108を備えてもよく、この電力ケーブルは発電機108からスコープ装置102及び器具チャンネル105を通って遠位先端部に延びる。このような電気外科的発電機は、例えばWO2012/076844に記載されているように、既知である。電気外科的発電機108は、器具106に出力される電力を選択及び/または制御するユーザインタフェース(図示しない)を有してもよい。発電機108は、選択されたエネルギ出力モードを示すディスプレイ112を有してもよい。
【0040】
外科スコープ装置102は、従来のものでよい。例えば、これは、遠位先端部の画像を提供するアイピース114または他の光学システムを備えてもよい。器具106の操作は、器具チャンネル105を通して延びる制御ワイヤ102またはスリーブ112を介して行ってもよい。オペレータは、摺動可能なトリガーまたは回転可能なダイアルもしくはレバーでもよい作動装置118を備えるハンドル116を介して、制御ワイヤ120またはスリーブ122の動きを制御してもよい。
【0041】
本発明の実施形態は、WO2015/097472に記載の電気外科用鉗子、特に遠位チップ組立体の構造に関する発展を表し、これは、鉗子の開閉を制御し、更に、凝固による血管の封止を達成するために必要な電力を出力する。
【0042】
図2は、本発明の実施形態である電気外科用鉗子用遠位チップ組立体200の概略的な断面図を示す。遠位チップ組立体200は、一対の可動ジョー部材206a、206bの構造的ベースとして作用する近位支持スリーブ202を備える。近位支持スリーブ202は、鉗子に電力を出力する同軸ケーブル(図示しない)に固定(例えば、適切な剛性フレームまたはコネクタを介して)してもよい。ジョー基部204は、近位支持スリーブ202の遠位端に装着されまたはこれと一体に形成される。この実施形態では、ジョー基部204は、これから遠位方向に延びる一対の対向するジョー部材を有する。それぞれのジョーは、外側ジョー部材206a、206b及び内側ジョー部材202a、202bを備える。ジョーは、ステンレス鋼等の剛性の不活性材料から形成してもよい。外側ジョー部材206a、206bのそれぞれは、ジョーの近位端に向けてそれに一体的に形成される一対の一体成形ヒンジ208a、208bを備える。同様に、内側ジョー部材212a、212bのそれぞれは、一対の一体成形ヒンジ214a、214bを有する。一体成形ヒンジは、ジョーの内側対向面が互いに向けて及び互いから離れて移動し、ジョーを開閉することができる態様において、内側及び外側ジョー部材を関節接合できるように配置される。ジョー部材の動きは、器具チャンネルを通して延び、オペレータが制御することのできる1つまたは複数の軸方向移動可能な制御ワイヤ(図示しない)により制御してもよい。
【0043】
マイクロ波電力をジョーの内側対向面間に把持される生体組織に出力するため、外側ジョー部材206a、206bのそれぞれは、その内面に取付けられる誘電体のアプリケータパッド210a、210bを有する。アプリケータパッド210a、210bは、例えばセラミックから形成してもよい。一対の電極(図示しない)は、マイクロ波エネルギを出力するために、アプリケータパッド210a、210bの露出した対向面に形成してもよい。電極は、他の構成も可能であるが、WO2015/097472に開示されたものと同様な方法で構成してもよい。しかし、それぞれのアプリケータパッド210a、210bの一対の電極は、遠位チップ組立体200に電力を供給する同軸ケーブル(図示しない)の内側及び外側導電体とそれぞれ電気的に連通することが望ましい。
【0044】
同軸ケーブルからアプリケータパッド210a、210bに電力を供給するため、遠位チップ組立体200は、アプリケータパッド210a、210bの近位部分から、ジョー基部204に形成されたチャンネル217及び近位支持スリーブ202に形成されたチャンネル216を介して、近位支持スリーブ202に近接して配置された同軸ケーブルの遠位端に延びる一対の可撓性基板218a、218bを備える。
【0045】
それぞれの可撓性基板218a、218bは、Rogers Corporationによって製造されたRflexマイクロ波基板等の誘電体材料のリボンの形態でもよい。可撓性基板218a、218bのそれぞれは、その上に形成された一対の導電性ストリップを有してもよく、これはアプリケータパッド210a、210bにそれぞれ形成された電極を同軸ケーブルの内側及び外側導電体に電気的に接続する作用をなす。導電性ストリップは、可撓性基板218a、218bの対向面に形成された金属化した層でもよい。誘電体リボンの寸法(例えばその幅及び長さ)及び金属化トラックは、同軸ケーブルとアプリケータパッド210a、210bの電極との間に良好な整合を達成するように選択してもよい。
【0046】
図3Aは、閉じた構造の遠位チップ組立体200の側面図を示し、ここではアプリケータパッド210a、210bの対向面が接合されている。この図では、可撓性基板218a、218bが近位支持スリーブ202から遠位方向に延びることがわかる。基板は、このポイントで分離し、内側導電体222の突出部分に係合(及び、電気的に接続)し、これは同様に同軸ケーブル220の残部から遠位方向に延びる。この接続が行われる方法の実施例を以下により詳細に説明する。
【0047】
図3Bは、図3Aに示す鉗子器具の底面図を示す。ここでは、可撓性誘電体のリボンがジョーの幅と同様な幅を有することが可能なことを見ることができる。
【0048】
図4Aは、本発明の他の実施形態である電気外科用鉗子用遠位チップ組立体300の斜視図を示す。この実施形態は、構造的に単純なジョー構造を表し、ここでは、外側ジョー部材は、図4Aに示す開位置に向けてジョーが付勢されるように、組立て前に熱成形される材料の単一部材(例えば、ニチノールまたはステンレス鋼)から形成される。
【0049】
図4Aに示す遠位チップ組立体300は、そのそれぞれの近位ジョー基部304a、304bにおいて同軸ケーブル302の遠位端に一緒に装着される一対の分離したジョー部材を備える。それぞれのジョー部材は、3つの部分、すなわち同軸ケーブル302に取付けるジョー基部304a、304b、中間可撓性部分308a、308b、及び遠位電極支持体306a、306bを備える。セラミックパッド310a、310bがそれぞれのジョー部材の遠位部分306a、306bの対向する内面に上述と同様な方法で取付けられる。
【0050】
この実施形態では、可撓性基板312a、312bは、それぞれのジョー部材の内面に取付けられる(例えば、接着される)。可撓性基板は、そのそれぞれのアプリケータパッドの下側に延びてもよい。上述の実施形態と同様に、それぞれの可撓性基板は、その上、例えばその対向側に形成される一対の導電部材を有する。図4Aでは、下側ジョー部材の可撓性基板312bを見ることができ、この上に導電部材314bが延び、アプリケータ310bに形成された電極318bに接続する。第2電極316bが、アプリケータパッド310bの電極318bに隣接して形成される。電極316b、318bは一緒に平行線路構造を形成し、マイクロ波及び高周波(RF)エネルギを出力する。電極316bが、可撓性基板312bの第2導電部材(図4Aには示してない)に、以下に記載する方法で取付けられる。
【0051】
図4Aに示すアプリケータパッド及び電極の寸法は、マイクロ波電力を効果的に出力することができるように選択してもよい。例えば、アプリケータパッド310b(セラミックで形成してもよい)の長さは10mmとすることができる。その幅は、2mm以下としてもよい。電極316b、318b間の間隙は、0.4mm以下としてもよい。可撓性基板312bの幅は、そのそれぞれのアプリケータの幅よりも狭く、例えば1.8mm以下としてもよい。同軸ケーブルとアプケータパッドとの間の可撓性基板312bの長さは、22mmでもよい。上述のように、可撓性基板は、任意の適切な誘電体材料、例えば、Rogers Corporationによって製造されたRflex(登録商標)、または、例えば液晶ポリマーから形成されるこれもRogers Corporationによって製造されるUltralam(登録商標)誘電体ラミネート材料から形成してもよい。
【0052】
図4Bは、その自然の開構造にある誘電体チップ組立体300の側面図を示す。ここでは、同軸ケーブル302の内側導電体320がその遠位端から突出し、ここで可撓性基板312a、312bの内面の導電部材に電気的に接続されることを見ることができる。使用の際、この実施形態における鉗子ジョーは、外側スリーブ(図示しない)を装置に沿って摺動し、ジョーを一緒にすることにより閉じることができる。この機能性モードは、図5Aから5Cについて以下に説明する。
【0053】
図4Cは、図4Aに示す遠位端組立体のジョー部材を除いた図を示す。ここで、可撓性基板312a、312bが同軸ケーブル302の遠位端におけるインタフェース322からアプリケータパッド310a、310bのそれぞれの近位領域に延びることを見ることができる。図4Cに示すように、上側可撓性基板312aは第1導電部材315aをその上側面に有し、これは、その近位端において同軸ケーブル302の外側導電体に接続される。この導電部材は、アプリケータパッド310aの内側露出面の電極に、アプリケータパッドの通孔317aを介して接続し、これには導電性材料を充填される。可撓性基板312aは、他の導電性トラック(図4Cでは見えない)をこの対向面に有し、これは同軸ケーブル302の内側導電体からアプリケータパッド310aの他の電極に対する電気接続部を提供する。
【0054】
図4Cに示す下側可撓性基板は、上側可撓性基板312aと同じ方法で構成される。したがって、下側可撓性基板312bはその内側面に内側導電部材314bを有し、これは接合部319bにおいてアプリケータパッド310bの電極318bに接続する。アプリケータパッド310bの第2電極316bは、外側導電部材(図4Cでは見えない)に上述のようにアプリケータパッド310bの通孔を介して接続する。
【0055】
図5A、5B及び5Cは、上述のように遠位チップ組立体300の閉操作における異なる段階を示す。これらの図では、スリーブ324がジョー326に対して軸方向に移動可能である。遠位方向に移動すると、スリーブは、ジョー部材がその中間部分を係合するように、互いに向けて移動させる。図5Cは、閉じた構造の鉗子装置を示し、ここではアプリケータパッドが接合されている。スリーブは、ジョー部材を一緒に移動させるために適切な強さを有する任意の材料で形成してもよい。例えば、PEEKから作成してもよい。可動スリーブ324は、同軸ケーブルに対して摺動することが必要であるため、同軸ケーブルはその上に形成した潤滑被覆を有してもよい。
【0056】
使用に際し、本発明の鉗子装置は、外科用スコープ装置の器具チャンネルに挿入し、または、任意の他の処置、例えば開腹手術または腹腔鏡と共に使用することができる。装置は図5Aに示すように、開構造で開始し、生体組織(例えば、ポリープの幹部等)がジョーの間に位置するように操作することができる。所定位置となると、組織を把持し、電極と組織との間を良好に接触させるため、スリーブを移動することにより、ジョーを物理的に閉じることができる。マイクロ波エネルギは、同軸ケーブルを通して電極に供給することができ、ここで組織内に出力し、把持した血管または複数の血管を凝固する。鉗子は、良好な封止を生成するためにエネルギを供給すると同時に血管に圧力を作用させることができる。血管が封止された後、例えば高周波(RF)エネルギを電極に出力することにより、または、展開可能な装置内に機械的切断部材(例えば、ブレード等)を装着することにより、切断してもよい。
【0057】
図6は、本発明の他の実施形態である電気外科用鉗子用遠位チップ組立体400の展開図を示す。遠位チップ組立体400は、自然に開構造に静止するように熱成形または他の前処理された一対のジョー部材を備える図4A、4B及び4Cに示すものと同様な方法で機能する。ジョーを閉じるため、軸方向に摺動可能なスリーブ(図示しない)がジョー部材の上を移動し、相互に向けて付勢する。
【0058】
上述の実施形態と同様に、遠位チップ組立体は同軸ケーブル402の遠位端に取付けられる。この実施形態では、同軸ケーブル402は、誘電体材料406により外側導電体408から分離された内側導電体404を備える。この構造は、外側ジャケット410内に囲まれ、このジャケットはPTFE等で作成してもよく、その上を作動リーブ(図示しない)が摺動する。
【0059】
内側導電体404及び外側導電体408の一部は、後述するように、ジョー部材に形成された電極に電気的に接続するために、同軸ケーブル402の遠位端が露出される。
【0060】
この実施形態では、それぞれのジョーは、上述のように開構造に予成形されたステンレス鋼またはニチノールで形成される外側ジョー部材412a、412bを備える。それぞれの外側ジョー部材412a、412bの内面に内側ジョー部材414a、414bが取付けられ、これは、本実施形態では多層積層構造である。積層構造は、一側の導電材料(例えば、金等)の接地層と、他側に形成された導電性トラックとを有する可撓性基板の層を備える。導電性トラックは、活性電極418bを形成する遠位長さ及び第1導電性アダプタ426を介して内側導電体404に電気的に接続される近位長さ420bを除き、その長さに沿う可撓性基板の第2層で覆われる。可撓性基板の第2層は、そのそれぞれの内側ジョー部材に接着または他の方法で取付けてもよい。
【0061】
導電性材料のリターン電極416bは、活性電極418bに隣接して形成され、可撓性基板を貫通する孔422を介して導電性材料の接地層と電気的に連通する。内側ジョー部材の導電性材料の接地層は、第2導電性アダプタ428を介して外側導電体に電気的に接続される。外側ジョー部材412a、412bは、そのそれぞれの内側ジョー部材に半田付けしてもよい。適切な金属で形成してもよい取付けパッド424が、それぞれの内側ジョー部材414a、414bの背面に形成され、確実な半田結合を確保する。
【0062】
第1導電性アダプタ426は第2導電性アダプタ428から遠位側に配置してもよい。第1導電性アダプタ426は、内側導電体404をこれらの部材が互いに電気的に接続するように受入れる孔を有してもよい。活性電極を形成する導電性トラックは、第1導電性アダプタ426の対向側と接触してもよい。
【0063】
第2導電性アダプタ428は、外側導電体408に適合しかつ電気的に接続されるチューブとしてもよい。チューブは、それぞれ個々の内側ジョー部材414a、414bの導電性材料の接地層に重なりかつ電気的に接続されるように突出する2つの遠位フィンガを有する。第1導電性アダプタ426及び第2導電性アダプタ428を含む接合部は、適切な材料(例えば、UV硬化された接着剤)に埋め込まれ、電気絶縁を提供してもよい。1つの実施形態では、接合部は、対のジョー部材を同軸ケーブルに固定する管状ハウジング内に収容してもよい。
【0064】
図7は、摺動可能なスリーブを移動して上記のいくつかの実施形態に記載した電気外科用鉗子を操作する作動機構500の概略的な断面図を示す。作動機構500は、上記図1を参照して説明したハンドル116の一部でもよい。作動機構500は、可撓性スリーブ504が延びる前端に開口を有し、ハンドルと一体的に形成してもよいボディ502を備える。スリーブ504は、同軸ケーブルを受入れるように配置され(例えば、更にその長さに沿う側部入口を介して)、同軸ケーブルと共に遠位端組立体に向けて延びる。作動機構は、スリーブ504を同軸ケーブルに対して摺動し、鉗子を駆動(すなわち、ジョーを開閉)するように配置される。同軸ケーブルの近位端は、作動機構のハウジング内の剛性ガイドチューブに囲まれ、ハウジング内で屈曲しないことを確保してもよい。
【0065】
スリーブ504の近位端は、ボディ502に形成されたトラック508上を摺動するキャリッジ506に装着(例えば、接着剤または他の方法で固定)される。回転可能なレバー510がボディに枢動可能に装着される。レバーは、ラックアンドピニオンタイプの装置を介してキャリッジ506と作動可能に係合し、これにより、ボディ502に対してレバー510を回転すると、キャリッジ506がボディに対して直線状に駆動され、これは、次にスリーブ504を駆動する。ばね512が、キャリッジを付勢して引込み位置(開の鉗子に対応する)とするように作用する態様で、ボディに装着される。摺動可能なスリーブ504は、ボディ502に固定される外側保護スリーブ(図示しない)内に装着してもよい。
【0066】
参照
[1]Presthus,et al.:Vessel sealing using a pulsed bipolar system and open forceps,J Am Assoc Gynecol Laparosc 10(4):528-533,2003.
[2]Carbonell,et al.:A comparison of laparoscopic bipolar vessel sealing devices in the hemostasis of small-,medium-,and large-sized arteries,J Laparoendosc Adv Surg Tech 13(6):377-380,2003
[3]Richter,et al.:「Efficacy and quality of vessel sealing,Surg Endosc (2006)20:890-894
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6
図7