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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-21
(45)【発行日】2023-06-29
(54)【発明の名称】バルブ
(51)【国際特許分類】
   F16K 1/32 20060101AFI20230622BHJP
【FI】
F16K1/32 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019120696
(22)【出願日】2019-06-28
(65)【公開番号】P2021006730
(43)【公開日】2021-01-21
【審査請求日】2022-04-25
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【氏名又は名称】岸本 瑛之助
(72)【発明者】
【氏名】小林 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】薬師神 忠幸
(72)【発明者】
【氏名】八幡 聡太
(72)【発明者】
【氏名】堀河 裕生
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0246306(US,A1)
【文献】特開2017-129256(JP,A)
【文献】特開2001-078596(JP,A)
【文献】特開2016-121776(JP,A)
【文献】特開平07-217767(JP,A)
【文献】特開2016-014405(JP,A)
【文献】実開平05-047630(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 1/00- 1/54
F16K 31/12-31/165
F16K 31/36-31/62
G05D 7/00- 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路を有するバルブボディと、
前記流路を開閉する弁体と、
上昇または下降することにより弁体を開または閉方向に移動させるステムと、
前記ステムを上下動させるアクチュエータと、を有するバルブであって、
前記アクチュエータは駆動機構が配置される内部空間を有するケーシングを有し、前記ケーシング頂部には開度調整器が備えられ、
前記開度調整器は、外周に雄ねじが形成された円柱体または円筒体と、当該円柱体または円筒体と前記ステムとの間に介在する摺動体とからなり、
前記雄ねじは、前記ケーシングの頂部に形成され前記内部空間に連なる雌ねじと螺合され、前記円柱または円筒の下端部と、前記摺動体の上端部、及び、前記ステムの上端部と前記摺動体の下端部とは、バルブ全開時に当接することを特徴とするバルブ。
【請求項2】
請求項1に記載のバルブであって、前記摺動体の上端部及び前記円柱体の下端部の当接面の一方が凸状面であって、他方が平面または前記凸状面に相応する凹状面であるバルブ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のバルブであって、前記摺動体は、上端部に鍔部を有し、前記円柱体または円筒体は下端部に前記鍔部が収容される鍔部収容空間と当該鍔部収容空間と交差するように側面から形成されたピン挿入孔が形成され、前記ピン挿入孔に挿入されたピンにより前記鍔部が支持されるバルブ。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のバルブであって、前記内部空間に前記ステムと一体に設けられ、駆動流体の導入により上昇させられるピストンと、当該ピストンを下方に押圧するように設けられた圧縮コイルバネが備えられているバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、バルブを開にしたままでバルブの開度を調整することができるバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
流体の流量を調節し、開閉を行うことができるバルブとして、特許文献1に記載するような流体の流路を有するバルブボディと、弁座に当接・離間して流路を開閉する弁体と、弁体を先端に備えるステムを上下動させるアクチュエータとを備えているものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-129256公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のバルブにおいて、バルブの開度を調整する方法として、バルブを全開にして流量を測定し、目標流量との差を測定する。その目標流量に対して、測定流量に許容できない差異がある場合は、一旦、バルブを閉として、バルブの全開時のステムの上端位置を開度調整器により調整して、開度を感覚的に調整する。その後、再度、バルブを全開にして流量を測定し、目標流量との差を測定する。再度、目標流量に対して、測定流量に許容できない差異がまだある場合は、同じ操作を繰り返して、バルブの全開時の流量を目標流量の許容範囲内となるようにする。この操作は、煩雑であり、手間のかかるものである。
【0005】
従来の開度調整器では、流体を流しながらバルブの全開時のステムの上端位置の調整をすると、ステムには強い力がかかっているため、その状態で開度調整器を回すと、ステムが共回りし、グランドパッキンやステムとピストンの接続部等が破損するおそれがある。
【0006】
この発明の目的は、バルブが全開状態で流体を流しながら、バルブ全開時の流量を調整することができるバルブを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明(1)は、流路を有するバルブボディと、前記流路を開閉する弁体と、上昇または下降することにより弁体を開または閉方向に移動させるステムと、前記ステムを上下動させるアクチュエータと、を有するバルブであって、前記アクチュエータは駆動機構が配置される内部空間を有するケーシングを有し、前記ケーシング頂部には開度調整器が備えられ、前記開度調整器は、外周に雄ねじが形成された円柱体または円筒体と、当該円柱体または円筒体と前記ステムとの間に介在する摺動体とからなり、前記雄ねじは、前記ケーシングの頂部に形成され前記内部空間に連なる雌ねじと螺合され、前記円柱部または円筒部の下端部と、前記摺動体の上端部、及び、前記ステムの上端部と前記摺動体の下端部とは、バルブ全開時に当接することを特徴とするバルブである。
【0008】
従来のバルブでは、開度調整器とステム上端部とは直接に当接せられているので、バルブ全開状態では、開度調整器とステム上端部との当接面には、高い圧力がかかり、開度調整器を回転すると、ステムも強い力がかかったまま回転することになる。その結果、ステムに設けられたグランドパッキンやOリング等のシールリング、ステムとピストンの接続部等が破損するおそれがある。破損を防止するためには、バルブを閉としてから開度の調整をする必要があるために、手間のかかる作業が必要であった。
【0009】
これに対し、この発明(1)のバルブにおいては、開度調整器は、ステムとの間に摺動体を設けていることにより、ステムが共回りするよりも先に摺動体が回転するので、ステムの共回りを防止することができ、ステムの共回りによる破損が生じない。
【0010】
本発明(2)は、本発明(1)のバルブであって、前記当接面の一方が凸状面であって、他方が平面または前記凸状面に相応する凹状面であるバルブである。
【0011】
本発明(2)では、当接面が平面同士でないため、当接面に発生する摩擦が小さくなり、開度調整器からステムへ伝達される回転方向の摩擦力が小さくなる。その結果、ステムの共回りをより防ぐことができる。
【0012】
本発明(3)は、本発明(1)または(2)に記載のバルブであって、前記摺動体は、上端部に鍔部を有し、前記円柱体または円筒体は下端部に前記鍔部が収容される鍔部収容空間と当該鍔部収容空間と交差するように側面から形成されたピン挿入孔が形成され、前記ピン挿入孔に挿入されたピンにより前記鍔部が支持されるバルブである。
【0013】
本発明(4)は、本発明(1)~(3)のいずれか1つのバルブであって、前記内部空間に前記ステムと一体に設けられ、駆動流体の導入により上昇させられるピストンと、当該ピストンを下方に押圧するように設けられた圧縮コイルバネが備えられているバルブである。
【0014】
本発明(4)は、駆動機構がピストンと圧縮コイルバネを備えている本発明(1)~(3)のいずれか1つのバルブである。ピストンとステムとが一体となっているので、従来の開度調整器を回転させると、ステムが共周りをし、ステムとピストンを一体化させるためのCリング等や、ピストンとケーシングの間のパッキン等の破損可能性があるが、本発明の開度調整器を備えるバルブでは、そのような破損が起こりにくくなる。
【0015】
摺動体は、鍔部を有し、円柱体または円筒体は下端部にこの鍔部が収容される鍔部収容空間と鍔部収容空間と交差するように側面から形成されたピン挿入孔が形成されている。ピン挿入孔には、ピンが挿入されているので、鍔部がこのピンで支持され、摺動体が脱落することがなくなる。
【発明の効果】
【0016】
この発明のバルブによると、バルブを全開状態で流体を流しながら、バルブ全開時の流量を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】この発明によるバルブの1実施例の外観を示す。
図2】この発明によるバルブの1実施例の断面図を示す。
図3】この発明によるバルブに用いられる開度調整器の1実施例を示す。
図4図3に示す開度調整器の断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
この発明の実施の形態を、以下図面を参照して説明する。以下の説明において、上下は、図の上下をいうものとする。この「上下」は便宜的なもので、設置に際しては、上下が逆になったり、水平になったりすることもある。
【0019】
図1及び図2示すバルブは、Y型バルブと呼ばれるバルブであるが、本発明によるバルブは、このY型に限るものではない。また、方向に関しては、右上方に向かう方向を上方向として、左下方に向かう方向を下方向として、「上下」を用いている。
【0020】
図1の実施例に係るバルブ1は、配管に接続される入口フランジ21と出口フランジ22につながるバルブボディ2を有し、バルブボディ2の斜め上には、ボンネット3が備えられ、ボンネット3の上側には、アクチュエータ5が備えられている。このアクチュエータの頂部に開度調整器6が配置されている。
【0021】
バルブボディ2は、入口フランジ21と連通する入口通路23、出口フランジ22と連通する出口通路24が形成され、弁体と当接・離間して流体の流れを制御するための弁座25が形成されている。
【0022】
バルブボディ2は、斜め上方向に延設された枝管部26を備えている。枝管部26の内部には、当接部材44を備える弁体43が収納されている。弁体43はステム4のステム先端部41に固定されている。枝管部26は、上部に突出部27を有している。突出部27の内面に切られた雌ねじと接続する雄ねじが切られたボンネット下端部31を有するボンネット3が配されている。
【0023】
ボンネット3には、バルブを流れる被処理流体が外部に漏れださないようにするための、グランドパッキン32、ワッシャー33及び圧縮コイルバネ34が配置されている。ボンネット3の上部のボンネット上端部36には、グランドパッキン32を上から加圧するための雄ねじ部材35が螺合している。
【0024】
ボンネット上端部36は、アクチュエータ下部ケーシング51が螺子接続で結合されており、アクチュエータ下部ケーシング51の上部は、内面に雌ねじが切られ、この雌ねじと下部に雄ねじが切られたアクチュエータ上部ケーシング52が螺子接続で結合されている。アクチュエータ下部ケーシング51とアクチュエータ上部ケーシング52とで、ケーシングを形成し、駆動機構を収容する内部空間57を形成している。
【0025】
駆動機構として、ステム4とOリング53bを介して一体化しているピストン53と、ピストン53の上面に配置され、ピストン53を下方に押圧する圧縮コイルバネ54が備えられている。ピストン53は、中央にステム4が貫通するに貫通孔53aがあけられ、ステム4に形成された段部により支持される。また、ピストン53は、分割されステム側面に円周状に形成された溝部に挿入されたワリリングにより上方への移動が制限され固定される。ワリリングはCリングが嵌められることで溝部からの脱落が防止される。圧縮コイルバネ54は、強度を増すために直径の小さなバネと直径の大きなバネを有する2重構造になっている。ピストン53とアクチュエータ下部ケーシング51との間は、Oリング53Bによって気密性が保たれている。
【0026】
駆動ガス出入口51aが、アクチュエータ下部ケーシング51にあけられ、ここから駆動ガスが流入すると、駆動ガス通路51bを通って、内部空間57に入り、ピストン53を上方に押し上げる。駆動ガスの圧力を下げると、圧縮コイルバネ54によって、ピストン53は下方に下がり、駆動ガスは、駆動ガス通路51bを通って、駆動ガス出入口51aから外部に流出する。
【0027】
アクチュエータ上部ケーシング52の頂部55には、貫通孔55aがあけられ、内面に雌ねじが切られ、図2に示すような雄ねじ62aが形成された円柱体62が螺入している。頂部55の上部には内面に雌ねじ56aが切られた雌ねじ部材56が固定され、この雌ねじ56aとも雄ねじ62aは螺合して、円柱体62を安定化している。
【0028】
ステム4の上端のステム上端部42には、本発明の主たる構成要素である摺動体63(図3、4参照)が配置されている。摺動体63は、上部に摺動体上端部63aがあり、その摺動体上端部63aは、鍔状に横に張り出した鍔部63bを形成している。摺動体63の下部に形成された摺動体下端部63dは、下面にステムと当接する摺動体下側当接面63eが形成されている。この摺動体下側当接面63eの端面は、ざぐられた平面となっている。ざぐっているのは、ステム4の上端部が外れないようにするためである。
【0029】
円柱体62の下部には、鍔部63bを収容する鍔部収容空間62bが形成され、ピン64が入るピン挿入孔62dが形成されている。ピン64は、抜け落ちを防止するためにスプリングピンが好ましい。
【0030】
摺動体上端部63aの上側端面の摺動体上側当接面63cは、凸状の面となっている。球面が好ましい。この摺動体上側当接面63cに対する、円柱体当接面62cは平面であり、図4においては、中央が円錐形に削られている。このような削られている部分があっても支障はない。また、円柱体当接面62cは平面でなくとも、摺動体上側当接面63cと相応する凹面であっても良い。
【0031】
このような摺動体63を、円柱体62とステム4との間に介在させることによって、円柱体62の回転による摩擦力のステム4に伝達されるのが緩和され、ステム4へ回転力の伝達が減殺され、ステム4が共回りすることを防ぐことができる。
【0032】
円柱体62の上部には、円柱体62を回すための2面が切り欠かれた切り欠き部62dが形成されている。円柱体62とステム4の材質は、ステンレス鋼が好ましく、特にSUS316L材が好ましい。摺動体63の材質は、これらのステンレス鋼よりも硬度の高い材料が好ましく、特に、フェライト相とオーステナイト相が概ね1:1の金属組織からなる二相ステンレス鋼が好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0033】
この発明によるバルブは、バルブを全開状態で流体を流しながら、バルブが損傷することがなく、バルブ全開時の流量を調整することができる。
【符号の説明】
【0034】
1:バルブ
2:バルブボディ
3:ボンネット
4:ステム
5:アクチュエータ
6:開度調整器
21:入口フランジ
22:出口フランジ
23:入口通路
24:出口通路
25:弁座
26:枝管部
27:突出部
31:ボンネット下端部
32:グランドパッキン
33:ワッシャー
34:圧縮コイルバネ
35:雄ねじ部材
36:ボンネット上端部
41:ステム先端部
42:ステム上端部
43:弁体
44:当接部材
51:アクチュエータ下部ケーシング
51a:駆動ガス出入口
51b:駆動ガス通路
52:アクチュエータ上部ケーシング
53:ピストン
53a:貫通孔
53b:Oリング
54:圧縮コイルバネ
55:頂部
55a:貫通孔
56:雌ねじ部材
56a:雌ねじ
57:内部空間
62:円柱体
62a:雄ねじ
62b:鍔部収容空間
62c:円柱体当接面
62d:切り欠き部
62e:ピン挿入孔
63:摺動体
63a:摺動体上端部
63b:鍔部
63c:摺動体上側当接面
63d:摺動体下端部
63e:摺動体下側当接面
64:ピン

図1
図2
図3
図4