IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ NKワークス株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-クランプ装置及び輸液ポンプ装置 図1
  • 特許-クランプ装置及び輸液ポンプ装置 図2
  • 特許-クランプ装置及び輸液ポンプ装置 図3
  • 特許-クランプ装置及び輸液ポンプ装置 図4
  • 特許-クランプ装置及び輸液ポンプ装置 図5
  • 特許-クランプ装置及び輸液ポンプ装置 図6
  • 特許-クランプ装置及び輸液ポンプ装置 図7
  • 特許-クランプ装置及び輸液ポンプ装置 図8
  • 特許-クランプ装置及び輸液ポンプ装置 図9
  • 特許-クランプ装置及び輸液ポンプ装置 図10
  • 特許-クランプ装置及び輸液ポンプ装置 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-21
(45)【発行日】2023-06-29
(54)【発明の名称】クランプ装置及び輸液ポンプ装置
(51)【国際特許分類】
   F16B 2/12 20060101AFI20230622BHJP
   B23Q 3/06 20060101ALI20230622BHJP
   A61M 5/14 20060101ALI20230622BHJP
【FI】
F16B2/12 B
B23Q3/06 303E
A61M5/14 532
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019124867
(22)【出願日】2019-07-04
(65)【公開番号】P2021011882
(43)【公開日】2021-02-04
【審査請求日】2022-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】311001347
【氏名又は名称】ノーリツプレシジョン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100179213
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 未知子
(74)【代理人】
【識別番号】100170542
【弁理士】
【氏名又は名称】桝田 剛
(72)【発明者】
【氏名】仲岡 伸哲
【審査官】松林 芳輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-180666(JP,A)
【文献】特許第6273765(JP,B2)
【文献】特開2009-045114(JP,A)
【文献】特開2013-257004(JP,A)
【文献】特開2015-232366(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 2/00-2/26
B23Q 3/00-3/154
B23Q 3/16-3/18
A61M 3/00-9/00
A61M 31/00
A61M 39/00-39/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部と、
前記基部の第1の端部側に配置された固定部材と、
前記基部の第2の端部側に、前記固定部材と対向するように配置された支持機構と、
前記支持機構を貫通して前記基部に沿って延び、前記支持機構に歯合する雄ネジ部が形成された軸体と、
前記軸体の第1の端部に回転自在に取り付けられ、前記固定部材との間でクランプ対象物を挟持する可動部材と、
前記軸体の第2の端部に取り付けられ、ユーザによる回転操作を受け付ける操作部材とを備え、
前記支持機構は、雌ネジ部が形成されており、前記雌ネジ部と前記雄ネジ部とが離間する第1のポジションと、前記雌ネジ部と前記雄ネジ部とが歯合する第2のポジションとの間で移動可能な雌ネジ部材を含み、
前記雌ネジ部材に前記操作部材の回転を伝達する回転伝達機構をさらに備え、
前記回転伝達機構は、
前記操作部材が第1の方向に第1の所定量回転した場合に前記雌ネジ部材が前記第1のポジションに移動するように前記雌ネジ部材に前記操作部材の回転を伝達し、
前記操作部材が第2の方向に第2の所定量回転した場合に前記雌ネジ部材が前記第2のポジションに移動するように前記雌ネジ部材に前記操作部材の回転を伝達する一方、
前記操作部材が前記第2の方向に前記第2の所定量以上回転した場合に前記雌ネジ部材に前記操作部材の回転を伝達しないように構成され、
前記回転伝達機構は、
前記操作部材に取り付けられ、前記軸体の延びる方向に伸縮可能な切替ピンと、
前記軸体の周囲を回転可能であり、前記切替ピンが伸びた状態で前記切替ピンが嵌合する嵌合部を有する切替プレートと、
一部分が前記切替プレートに取り付けられるとともに、一部分が前記雌ネジ部材に接する歯合解除部材とを含み、
前記嵌合部の前記第2の方向側の側面は、傾斜している、
クランプ装置。
【請求項2】
基部と、
前記基部の第1の端部側に配置された固定部材と、
前記基部の第2の端部側に、前記固定部材と対向するように配置された支持機構と、
前記支持機構を貫通して前記基部に沿って延び、前記支持機構に歯合する雄ネジ部が形成された軸体と、
前記軸体の第1の端部に回転自在に取り付けられ、前記固定部材との間でクランプ対象物を挟持する可動部材と、
前記軸体の第2の端部に取り付けられ、ユーザによる回転操作を受け付ける操作部材とを備え、
前記支持機構は、雌ネジ部が形成されており、前記雌ネジ部と前記雄ネジ部とが離間する第1のポジションと、前記雌ネジ部と前記雄ネジ部とが歯合する第2のポジションとの間で移動可能な雌ネジ部材を含み、
前記雌ネジ部材に前記操作部材の回転を伝達する回転伝達機構をさらに備え、
前記回転伝達機構は、
前記操作部材が第1の方向に第1の所定量回転した場合に前記雌ネジ部材が前記第1のポジションに移動するように前記雌ネジ部材に前記操作部材の回転を伝達し、
前記操作部材が第2の方向に第2の所定量回転した場合に前記雌ネジ部材が前記第2のポジションに移動するように前記雌ネジ部材に前記操作部材の回転を伝達する一方、
前記操作部材が前記第2の方向に前記第2の所定量以上回転した場合に前記雌ネジ部材に前記操作部材の回転を伝達しないように構成され、
前記支持機構は、前記雌ネジ部材を前記第1のポジション側に押圧する弾性部材をさらに含む、
クランプ装置。
【請求項3】
前記支持機構は、前記雌ネジ部材を前記第1のポジション側に押圧する弾性部材をさらに含む、請求項1に記載のクランプ装置。
【請求項4】
前記切替プレートは、
第1の面に前記嵌合部を有し、第2の面に凸部を有する第1の切替プレートと、
第1の面に前記凸部が配置される凹部を有し、第2の面に前記歯合解除部材が取り付けられる第2の切替プレートとを含み、
前記凹部の幅は前記凸部の幅よりも広い、請求項1または請求項3に記載のクランプ装置。
【請求項5】
輸液を送出する輸液ポンプ本体と、
前記輸液ポンプ本体に取り付けられ、前記輸液ポンプ本体を被固定物に固定する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のクランプ装置とを備える、輸液ポンプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランプ装置及び輸液ポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許第6273765号公報(特許文献1)は、クランプ装置を開示する。このクランプ装置は、雌ネジ部が形成された雌ネジ部材を含む支持機構と、支持機構を貫通して延び、上記雌ネジ部に歯合する雄ネジ部が形成された軸体と、第1及び第2操作部材とを備えている。このクランプ装置においては、第2操作部材を操作することによって、雄ネジ部と雌ネジ部との歯合状態が調整され、第1操作部材を操作することによって、軸体の締込み状態が調整される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6273765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示されているクランプ装置においては、雄ネジ部と雌ネジ部との歯合状態の調整と、軸体の締込み状態の調整とを行なうために、第1及び第2操作部材の両方を操作する必要がある。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであって、その目的は、雄ネジ部と雌ネジ部との歯合状態の調整と、軸体の締込み状態の調整とをより簡単な操作で行なうことが可能なクランプ装置、及び、輸液ポンプ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある局面に従うクランプ装置は、基部と、固定部材と、支持機構と、軸体と、可動部材と、操作部材とを備えている。固定部材は、基部の第1の端部側に配置されている。支持機構は、基部の第2の端部側に、固定部材と対向するように配置されている。軸体は支持機構を貫通して前記基部に沿って延び、軸体には支持機構に歯合する雄ネジ部が形成されている。可動部材は、軸体の第1の端部に回転自在に取り付けられ、固定部材との間でクランプ対象物を挟持する。操作部材は、軸体の第2の端部に取り付けられ、ユーザによる回転操作を受け付ける。支持機構は、雌ネジ部が形成されており、雌ネジ部と雄ネジ部とが離間する第1のポジションと、雌ネジ部と雄ネジ部とが歯合する第2のポジションとの間で移動可能な雌ネジ部材を含む。クランプ装置は、雌ネジ部材に操作部材の回転を伝達する回転伝達機構をさらに備える。回転伝達機構は、操作部材が第1の方向に第1の所定量回転した場合に雌ネジ部材が第1のポジションに移動するように雌ネジ部材に操作部材の回転を伝達し、操作部材が第2の方向に第2の所定量回転した場合に雌ネジ部材が第2のポジションに移動するように雌ネジ部材に操作部材の回転を伝達する一方、操作部材が第2の方向に第2の所定量以上回転した場合に雌ネジ部材に操作部材の回転を伝達しないように構成されている。
【0007】
このクランプ装置においては、操作部材が第1の方向に第1の所定量回転した場合に雌ネジ部材が第1のポジションに移動するように雌ネジ部材に操作部材の回転が伝達され、操作部材が第2の方向に第2の所定量回転した場合に雌ネジ部材が第2のポジションに移動するように雌ネジ部材に操作部材の回転が伝達される一方、操作部材が第2の方向に第2の所定量以上回転した場合に雌ネジ部材に操作部材の回転が伝達されない。したがって、このクランプ装置によれば、雌ネジ部材に操作部材の回転を伝達すること、及び、雌ネジ部材に操作部材の回転を伝達せず軸体を回転させることを操作部材の操作のみで実現できるため、雌ネジ部と雄ネジ部との歯合状態、及び、軸体の締込み状態を操作部材の回転のみで調整することができる。
【0008】
上記クランプ装置において、回転伝達機構は、操作部材に取り付けられ、軸体の延びる方向に伸縮可能な切替ピンと、軸体の周囲を回転可能であり、切替ピンが伸びた状態で切替ピンが嵌合する嵌合部を有する切替プレートと、一部分が切替プレートに取り付けられるとともに、一部分が雌ネジ部材に接する歯合解除部材とを含み、嵌合部の第2の方向側の側面は、傾斜していてもよい。
【0009】
このクランプ装置においては、操作部材が第2の方向に第2の所定量以上回転する場合に、切替ピンが縮みながら嵌合部の側面を乗り上げ、切替プレートを回転させずに軸体を回転させる。したがって、このクランプ装置によれば、雌ネジ部材に操作部材の回転を伝達すること、及び、雌ネジ部材に操作部材の回転を伝達せず軸体を回転させることを操作部材の操作のみで実現できるため、雌ネジ部と雄ネジ部との歯合状態、及び、軸体の締込み状態を操作部材の回転のみで調整することができる。
【0010】
上記クランプ装置において、支持機構は、雌ネジ部材を第1のポジション側に押圧する弾性部材をさらに含んでもよい。
【0011】
上記クランプ装置において、切替プレートは、第1の面に嵌合部を有し、第2の面に凸部を有する第1の切替プレートと、第1の面に凸部が配置される凹部を有し、第2の面に歯合解除部材が取り付けられる第2の切替プレートとを含み、凹部の幅は凸部の幅よりも広くてもよい。
【0012】
このクランプ装置においては、たとえば、操作部材が第1の方向に回転して第1の切替プレートが回転したとしても即座に第2の切替プレートが回転するわけではない。すなわち、このクランプ装置においては、操作部材が回転しても即座に雌ネジ部と雄ネジ部との歯合状態が解除されるわけではない。したがって、このクランプ装置によれば、誤って操作部材が回転された場合に雌ネジ部と雄ネジ部との歯合状態が即座に解除される事態を抑制することができる。
【0013】
本発明の他の局面に従う輸液ポンプ装置は、輸液ポンプ本体と、上記クランプ装置とを備える。輸液ポンプ本体は、輸液を送出する。クランプ装置は、輸液ポンプ本体に取り付けられ、輸液ポンプ本体を被固定物に固定する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、雄ネジ部と雌ネジ部との歯合状態の調整と、軸体の締込み状態の調整とをより簡単な操作で行なうことが可能なクランプ装置、及び、輸液ポンプ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】クランプ装置が適用された輸液ポンプ装置を示す図である。
図2】クランプ装置を示す斜視図である。
図3】クランプ装置の分解斜視図である。
図4】回転伝達機構の一部分の分解斜視図である。
図5】切替ピン、第1の切替プレート及び第2の切替プレートの関係を説明するための図である。
図6】凸部が凹部における右回転方向側の側面に当接した状態を示す断面図である。
図7】凸部が凹部における左回転方向の側面に当接した状態を示す断面図である。
図8】軸体と雌ネジブロックとが歯合した状態における支持機構の一部分を示す斜視図である。
図9】軸体と雌ネジブロックとの歯合が解除された状態における支持機構の一部分を示す斜視図である。
図10】変形例において軸体と雌ネジ部材とが歯合した状態における支持機構の一部分を示す図である。
図11】変形例において軸体と雌ネジ部材との歯合が解除された状態における支持機構の一部分を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0017】
[1.クランプ装置の概略構成]
図1は、本実施の形態に従うクランプ装置11が適用された輸液ポンプ装置10を示す図である。図1に示されるように、輸液ポンプ装置10は、クランプ装置11と、輸液ポンプ本体12とを含んでいる。輸液ポンプ本体12は、たとえば、輸液を送出するように構成されている。輸液ポンプ本体12としては、公知のものを用いることができる。たとえば、クランプ装置11が被固定物(クランプ対象物)を挟み込むことによって、輸液ポンプ装置10はクランプ対象物に取り付けられる。
【0018】
図2は、クランプ装置11を示す斜視図である。図3は、クランプ装置11の分解斜視図である。図2及び図3に示されるように、クランプ装置11は、基部100と、固定部材110と、支持機構120と、軸体140と、可動部材130と、操作部材160と、回転伝達機構150と、ポンプ取付け台170とを含んでいる。
【0019】
基部100は、軸体140の延びる方向(以下、単に「軸方向」とも称する。)に延びる板状の部材である。基部100は、第1の端部101と第2の端部102とを有している。基部100の第1の端部101側には、基部100と垂直に連結された矩形状の固定部材110が配置されている。固定部材110のうち可動部材130側には、円弧状の凹部が形成されている。これは、可動部材130と固定部材110とによって、円弧状の外形を有するクランプ対象物(たとえば、円柱状のポール)を挟み込むためである。
【0020】
基部100の第2の端部102側には、基部100と垂直に連結された矩形状の支持機構120が配置されている。クランプ装置11において、支持機構120は、固定部材110と対向している。支持機構120は、ベース部材121と、カバー部材122と、雌ネジブロック123と、圧縮バネ124とを含んでいる。ベース部材121においては、軸体140等が貫通する孔が固定部材110側の面に形成されているとともに、雌ネジブロック123及び圧縮バネ124等を収容する空間が内部に形成されている。カバー部材122には、軸体140等が貫通する孔が形成されている。カバー部材122は、ベース部材121に固定される。支持機構120については、後程詳しく説明する。
【0021】
基部100、固定部材110及び支持機構120は、一体的に構成されてもよいし、個別に構成されてもよい。また、基部100、固定部材110及び支持機構120によって構成される形状は、本実施の形態のようなコの字状であってもよいし、それ以外の形状であってもよい。
【0022】
軸体140は、基部100に沿って延びており、支持機構120に貫通している。軸体140の外周面には、支持機構120に歯合するための雄ネジ部141が形成されている。軸体140は、雄ネジ部141が支持機構120と歯合することによって、支持機構120に支持されている。より詳細には、軸体140は、雄ネジ部141が雌ネジブロック123に形成されている雌ネジ部126(後述)と歯合することによって、支持機構120に支持されている。なお、雄ネジ部141は、軸体140の軸方向全体に形成されていてもよいし、軸体140の軸方向の一部に形成されていてもよい。
【0023】
可動部材130は、軸体140の第1の端部142に回転自在に取り付けられている。軸体140の第1の端部142は、固定部材110側に位置している。可動部材130は、軸体140とともに軸方向に移動可能である。つまり、可動部材130は、固定部材110と支持機構120との間において、固定部材110に対して隣接自在に移動可能である。すなわち、可動部材130は、固定部材110との間でクランプ対象物を挟持することができる。
【0024】
可動部材130は、側面板131,132を含む。側面板131,132の各々には、円弧状の凹部が形成されている。これは、可動部材130と固定部材110とによって、円弧状の外形を有するクランプ対象物を挟み込むためである。なお、クランプ対象物が水平な面を有する机の天板等である場合には、固定部材110及び可動部材130の各々のクランプ対象物側の面は水平に形成されてもよい。
【0025】
操作部材160は、軸体140の第2の端部143に取り付けられている。操作部材160は、ユーザによる回転操作を受け付けるように構成されている。操作部材160は、ノブ、取手等と称されてもよい。軸体140は操作部材160に取り付けられているため、軸体140は操作部材160の回転に従って軸周りを回転する。
【0026】
回転伝達機構150は、圧縮バネ156と、切替ピン155と、パッキン154と、第1の切替プレート153と、第2の切替プレート152と、歯合解除パイプ151と、ロックプレート157とを含んでいる。回転伝達機構150は、操作部材160の回転を必要に応じて支持機構120に伝達するように構成されている。回転伝達機構150については、後程詳しく説明する。
【0027】
ポンプ取付け台170は、上面に輸液ポンプ本体12が取り付けられるように構成されている。ポンプ取付け台170は、矩形状であり、基部100に連結されている。
【0028】
上述のように、クランプ装置11においては、操作部材160を回転させることによって、可動部材130を軸方向に移動させることができる。しかしながら、可動部材130の軸方向の全ての移動を操作部材160の回転操作によって行なうと、可動部材130の移動距離によっては、ユーザに大きな負担となる可能性がある。すなわち、軸体140の移動はネジ機構によるものであるため、可動部材130の移動に時間を要する可能性がある。このような負担を軽減するために、クランプ装置11においては、軸体140の雄ネジ部141と雌ネジブロック123の雌ネジ部126との歯合状態が解除可能になっている。雄ネジ部141と雌ネジ部126との歯合状態が解除されると、操作部材160を回転操作することなく、操作部材160を押し引きすることによって軸体140を軸方向に移動させることができる。
【0029】
さらに、クランプ装置11においては、回転伝達機構150及び支持機構120を用いることによって、雄ネジ部141と雌ネジ部126との歯合状態の調整と、軸体140の締込み状態の調整とをより簡単な操作で行なうことが可能となっている。次に、回転伝達機構150及び支持機構120について順に説明する。
【0030】
[2.主要機構の構成]
(2-1.回転伝達機構の構成)
図4は、回転伝達機構150の一部分の分解斜視図である。図4に示されるように、操作部材160には、軸体140及び切替ピン155が固定されている。切替ピン155の一端は半球状に構成されており、切替ピン155の他端には圧縮バネ156(図3)が取り付けられている。切替ピン155において、端部と端部との間は円筒形状である。切替ピン155の一端には圧縮バネ156が取り付けられているため、切替ピン155は軸方向に伸縮する。
【0031】
パッキン154、第1の切替プレート153及び第2の切替プレート152の各々は、平面視円形状であり、軸体140の周方向に回転可能である。パッキン154、第1の切替プレート153及び第2の切替プレート152の各々においては、中央部分に軸体140が貫通する孔が形成されている。第2の切替プレート152には、歯合解除パイプ151が取り付けられている。歯合解除パイプ151は、軸体140に沿って軸方向に延びている。軸体140は、歯合解除パイプ151によって部分的に覆われている。第2の切替プレート152が軸体140の周方向に回転すると、歯合解除パイプ151も軸体140の周方向に回転する。
【0032】
図5は、切替ピン155、第1の切替プレート153及び第2の切替プレート152の関係を説明するための図である。図5に示されるように、第1の切替プレート153の切替ピン155側の面には複数の凸部P1が形成されており、凸部P1と凸部P1との間には嵌合部F1が形成されている。嵌合部F1において、右回転方向側の側面部F11は切替ピン155側に向かう程嵌合部F1の幅が広がるように傾斜している一方、左回転方向側の側面部F12は傾斜していない。第1の切替プレート153の第2の切替プレート152側の面には複数の凸部P2が形成されている。第2の切替プレート152の第1の切替プレート153側の面には複数の凸部P3が形成されており、凸部P3と凸部P3との間には凹部F2が形成されている。凸部P2の幅X2は、凹部F2の幅X1よりも短い。
【0033】
嵌合部F1には切替ピン155が嵌まり、凹部F2には凸部P2が位置する。操作部材160が右方向に回転操作されると、切替ピン155が右回転方向に移動し、切替ピン155が側面部F11に当接する。さらに操作部材160が右方向に回転操作されると、切替ピン155が第1の切替プレート153を右方向に回転させ、凸部P2が凹部F2における右回転方向側の側面に当接する。
【0034】
図6は、凸部P2が凹部F2における右回転方向側の側面に当接した状態を示す断面図である。再び図5を参照して、さらに操作部材160が右方向に回転操作されると、凸部P2が第2の切替プレート152を右方向に回転させる。これにより、歯合解除パイプ151(図4)が右方向に回転する。
【0035】
歯合解除パイプ151が右回転方向の可動範囲の端部に達すると、それ以上操作部材160が右方向に回転操作されたとしても、切替ピン155が縮み、切替ピン155が凸部P1を乗り上げる。すなわち、切替ピン155は、それ以上第1の切替プレート153を右方向に回転させない。この場合には、操作部材160が右方向に回転操作されることによって、歯合解除パイプ151が右方向に回転することなく、軸体140が右方向に回転する。
【0036】
一方、操作部材160が左方向に回転操作されると、切替ピン155が左回転方向に移動し、切替ピン155が側面部F12に当接する。さらに操作部材160が左方向に回転操作されると、切替ピン155が第1の切替プレート153を左方向に回転させ、凸部P2が凹部F2における左回転方向の側面に当接する。
【0037】
図7は、凸部P2が凹部F2における左回転方向の側面に当接した状態を示す断面図である。図7に示されるように、凸部P2が凹部F2における右回転方向の側面に当接している状態から、凸部P2が凹部F2における左回転方向の側面に当接している状態に遷移するためには、操作部材160を角度An1回転させる必要がある。角度An1は、たとえば、15°~60°であり、好ましくは30°~50°であり、さらに好ましくは35°~45°である。再び図5を参照して、さらに操作部材160が左方向に回転操作されると、凸部P2が第2の切替プレート152を左方向に回転させる。これにより、歯合解除パイプ151が左方向に回転する。すなわち、回転伝達機構150においては、いわゆるラチェット機構が用いられているといえる。
【0038】
(2-2.支持機構の構成)
図8は、軸体140と雌ネジブロック123とが歯合した状態における支持機構120の一部分を示す斜視図である。図9は、軸体140と雌ネジブロック123との歯合が解除された状態における支持機構120の一部分を示す斜視図である。図8及び図9に示されるように、ベース部材121には、雌ネジ部材123A,123Bが含まれている。すなわち、本実施の形態においては、雌ネジブロック123が雌ネジ部材123A,123Bによって実現されている。雌ネジ部材123A,123Bの各々の軸体140に対向する側面には雌ネジ部126が形成されている。図8に示される状態においては、雌ネジ部材123A,123Bの各々の雌ネジ部126が軸体140の雄ネジ部141と歯合している。
【0039】
雌ネジ部材123Aは、下部に取り付けられた軸部125Aを介してベース部材121に回動可能に取り付けられている。雌ネジ部材123Bは、上部に取り付けられた軸部125Bを介してベース部材121に回動可能に取り付けられている。ベース部材121には、ベース部材121の幅方向に伸縮するように構成された圧縮バネ124A,124Bが取り付けられている。圧縮バネ124Aは、雌ネジ部材123Aを軸体140から引き離す方向(右方向から左方向)に押圧する。圧縮バネ124Bは、雌ネジ部材123Bを軸体140から引き離す方向(左方向から右方向)に押圧する。
【0040】
歯合解除パイプ151においては、複数(2つ)の歯合解除部151Pが軸方向に延びている。ロックプレート157は板状部材であり、ロックプレート157には軸体140が貫通する貫通孔、及び、該貫通孔に隣接する係合部157Fが形成されている。各歯合解除部151Pは、ロックプレート157に形成された係合部157Fに係合している。すなわち、歯合解除パイプ151の回転に従って、ロックプレート157も回転する。
【0041】
ロックプレート157には、軸方向の固定部材110側に延びる位置決めピン158A,158Bが取り付けられている。位置決めピン158A,158Bの側面の一部は、それぞれ雌ネジ部材123A,123Bの側面(雌ネジ部126が形成されていない面)の一部に当接している。すなわち、歯合解除パイプ151、ロックプレート157及び位置決めピン158A,158Bを含む構成が本発明における歯合解除部材の一例である。
【0042】
また、位置決めピン158A,158Bの側面の一部は、軸体140と雌ネジブロック123との歯合状態においては、それぞれ当て面121P1,121P2に当接している。当て面121P1,121P2の各々は、ベース部材121の内壁面の一部である。したがって、この構成によれば、位置決めピン158A,158Bがそれぞれ圧縮バネ124A,124Bから受ける圧力を当て面121P1,121P2によって受けることができるため、位置決めピン158A,158Bに過度な負担が生じる事態を抑制することができる。
【0043】
本実施の形態においては、歯合解除パイプ151が右方向に回転することによって、位置決めピン158Aが雌ネジ部材123Aを軸体140に近付く方向に押圧し、位置決めピン158Bが雌ネジ部材123Bを軸体140に近付く方向に押圧する。右回転方向の可動範囲の端部まで歯合解除パイプ151が回転した状態において、軸体140の雄ネジ部141(図2)と雌ネジ部材123Aの雌ネジ部126とが歯合し、軸体140の雄ネジ部141と雌ネジ部材123Bの雌ネジ部126とが歯合する。この状態における雌ネジブロック123の位置が、本発明における第2ポジションの一例である。
【0044】
一方、本実施の形態においては、歯合解除パイプ151が左方向に回転することによって、圧縮バネ124Aが雌ネジ部材123Aを軸体140から離れる方向に押圧し、圧縮バネ124Bが雌ネジ部材123Bを軸体140から離れる方向に押圧する。左回転方向の可動範囲の端部まで歯合解除パイプ151が回転した状態において、軸体140の雄ネジ部141(図2)と雌ネジ部材123Aの雌ネジ部126とが離間し、軸体140の雄ネジ部141と雌ネジ部材123Bの雌ネジ部126とが離間する。この状態における雌ネジブロック123の位置が、本発明における第1ポジションの一例である。
【0045】
[3.クランプ装置の動作]
再び図5を参照して、ユーザが操作部材160を右方向に回転操作すると、切替ピン155が右回転方向に移動し、切替ピン155が側面部F11に当接する。ユーザがさらに操作部材160を右方向に回転操作すると、切替ピン155が第1の切替プレート153を右方向に回転させ、凸部P2が凹部F2における右回転方向側の側面に当接する。ユーザがさらに操作部材160を右方向に回転操作すると、凸部P2が第2の切替プレート152を右方向に回転させる。これにより、歯合解除パイプ151(図4)が右方向に回転する。歯合解除パイプ151の右方向の回転は、ロックプレート157を介して雌ネジブロック123に伝達される。
【0046】
歯合解除パイプ151が右回転方向の可動範囲の端部に達し(図8)、軸体140と雌ネジブロック123とが歯合すると、それ以上操作部材160が右方向に回転操作されたとしても、切替ピン155が縮み、切替ピン155が凸部P1を乗り上げる。すなわち、切替ピン155は、操作部材160の回転を第1の切替プレート153に伝達せず、それ以上第1の切替プレート153を右方向に回転させない。この場合には、ユーザが操作部材160を右方向に回転操作することによって、歯合解除パイプ151が右方向に回転することなく、軸体140が右方向に回転し、可動部材130が固定部材110方向に移動する。
【0047】
一方、ユーザが操作部材160を左方向に回転操作すると、切替ピン155が左回転方向に移動し、切替ピン155が側面部F12に当接する。ユーザがさらに操作部材160を左方向に回転操作すると、切替ピン155が第1の切替プレート153を左方向に回転させ、凸部P2が凹部F2における左回転方向の側面に当接する。ユーザがさらに操作部材160を左方向に回転操作すると、凸部P2が第2の切替プレート152を左方向に回転させる。これにより、歯合解除パイプ151が左方向に回転する。歯合解除パイプ151が左回転方向の可動範囲の端部に達し(図9)、軸体140と雌ネジブロック123との歯合状態が解除されると、ユーザは、操作部材160を軸方向に押し引きすることによって、可動部材130を軸方向に移動させることができる。
【0048】
[4.特徴]
以上のように、本実施の形態に従うクランプ装置11においては、操作部材160が左方向に第1の所定量回転した場合に雌ネジブロック123が第1のポジション(歯合解除状態)に移動するように雌ネジブロック123に操作部材160の回転が伝達され、操作部材160が右方向に第2の所定量回転した場合に雌ネジブロック123が第2のポジション(歯合状態)に移動するように雌ネジブロック123に操作部材160の回転が伝達される一方、操作部材160が右方向に第2の所定量以上回転した場合に雌ネジブロック123に操作部材160の回転が伝達されない。したがって、クランプ装置11によれば、雌ネジブロック123に操作部材160の回転を伝達すること、及び、雌ネジブロック123に操作部材160の回転を伝達せず軸体140を回転させることを操作部材160の操作のみで実現できるため、雌ネジ部126と雄ネジ部141との歯合状態、及び、軸体140の締込み状態を操作部材160の回転のみで調整することができる。
【0049】
また、本実施の形態に従うクランプ装置11においては、たとえば、操作部材160が左方向に回転して第1の切替プレート153が回転したとしても即座に第2の切替プレート152が回転するわけではない。すなわち、クランプ装置11においては、操作部材160が左方向に回転しても即座に雌ネジ部126と雄ネジ部141との歯合状態が解除されるわけではない。したがって、クランプ装置11によれば、誤って操作部材160が回転された場合に雌ネジ部126と雄ネジ部141との歯合状態が即座に解除される事態を抑制することができる。
【0050】
[5.変形例]
以上、実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。以下、変形例について説明する。
【0051】
(5-1)
上記実施の形態においては、軸体140と雌ネジブロック123との歯合状態において、位置決めピン158A,158Bがそれぞれ当て面121P1,121P2に押し当てられた。しかしながら、位置決めピン158A,158Bが押し当てられる先は、必ずしもこれらに限定されない。
【0052】
図10は、変形例において軸体140と雌ネジ部材123AX,123BXとが歯合した状態における支持機構の一部分を示す図である。図11は、変形例において軸体140と雌ネジ部材123AX,123BXとの歯合が解除された状態における支持機構の一部分を示す図である。
【0053】
図10及び図11に示されるように、この例においては、雌ネジ部材123AX,123BXと軸体140との歯合状態において、位置決めピン158A,158Bは、それぞれ位置決めブロック200A,200Bに押し当てられている。位置決めブロック200A,200Bは、ベース部材121Xにおいて幅方向の両端に配置されており、それぞれ圧縮バネ210A,210Bによって幅方向に押圧されている。位置決めブロック200A,200Bの各々には、ベース部材121Xの幅方向内側に突出する凸部が形成されている。この例においては、操作部材160が回転された場合に、位置決めピン158A,158Bがそれぞれ位置決めブロック200A,200Bに形成された凸部を乗り越えることによって、雌ネジ部材123AX,123BXと軸体140との歯合状態が切り替えられる。この例によれば、雌ネジ部材123AX,123BXと軸体140との歯合状態が切り替えられる場合に、位置決めピン158A,158Bがそれぞれ位置決めブロック200A,200Bに形成された凸部を乗り越えるため、いわゆるクリック感をユーザに与えることができる。
【0054】
(5-2)
上記実施の形態においては、回転伝達機構150がいわゆるラチェット機構によって実現された。しかしながら、回転伝達機構150は、必ずしもラチェット機構によって実現される必要はない。たとえば、回転伝達機構150は、いわゆるパウダークラッチ機構によって実現されてもよい。要するに、操作部材160が左方向に第1の所定量回転した場合に雌ネジブロック123が第1のポジション(歯合解除状態)に移動するように雌ネジブロック123に操作部材160の回転が伝達され、操作部材160が右方向に第2の所定量回転した場合に雌ネジブロック123が第2のポジション(歯合状態)に移動するように雌ネジブロック123に操作部材160の回転が伝達される一方、操作部材160が右方向に第2の所定量以上回転した場合に雌ネジブロック123に操作部材160の回転が伝達されなければよい。
【0055】
(5-3)
上記実施の形態においては、操作部材160が右方向に回転操作された場合に、軸体140と雌ネジブロック123とが歯合し、操作部材160が左方向に回転操作された場合に、軸体140と雌ネジブロック123との歯合状態が解除された。しかしながら、回転方向と歯合状態との関係は逆であってもよい。すなわち、操作部材160が右方向に第1の所定量回転した場合に雌ネジブロック123が第1のポジション(歯合解除状態)に移動するように雌ネジブロック123に操作部材160の回転が伝達され、操作部材160が左方向に第2の所定量回転した場合に雌ネジブロック123が第2のポジション(歯合状態)に移動するように雌ネジブロック123に操作部材160の回転が伝達される一方、操作部材160が左方向に第2の所定量以上回転した場合に雌ネジブロック123に操作部材160の回転が伝達されない構成であってもよい。
【0056】
(5-4)
上記実施の形態においては、雌ネジブロック123が雌ネジ部材123A,123Bによって構成されることとした。しかしながら、雌ネジブロック123は、必ずしもこのような構成である必要はない。たとえば、雌ネジブロック123は、1つの雌ネジ部材によって構成されてもよいし、3つ以上の雌ネジ部材によって構成されてもよい。
【符号の説明】
【0057】
10 輸液ポンプ装置、11 クランプ装置、12 輸液ポンプ本体、100 基部、101,142 第1の端部、102,143 第2の端部、110 固定部材、120 支持機構、121,121X ベース部材、121P1,121P2 当て面、122 カバー部材、123 雌ネジブロック、123A,123AX,123B,123BX 雌ネジ部材、124,124A,124B,156,210A,210B 圧縮バネ、125A,125AX,125B,125BX 軸部、126 雌ネジ部、130 可動部材、131,132 側面板、140 軸体、141 雄ネジ部、150 回転伝達機構、151 歯合解除パイプ、151P 歯合解除部、152 第2の切替プレート、153 第1の切替プレート、154 パッキン、155 切替ピン、157 ロックプレート、157F 係合部、158A,158B 位置決めピン、160 操作部材、170 ポンプ取付け台、200A,200B 位置決めブロック、An1 角度、F1 嵌合部、F2 凹部、F11,F12 側面部、P1,P2,P3 凸部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11