(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-21
(45)【発行日】2023-06-29
(54)【発明の名称】吹流し用ポール固定台
(51)【国際特許分類】
E01F 9/692 20160101AFI20230622BHJP
B64F 1/36 20170101ALI20230622BHJP
E01F 9/604 20160101ALI20230622BHJP
E01F 9/623 20160101ALI20230622BHJP
E01F 9/681 20160101ALI20230622BHJP
G01P 13/00 20060101ALN20230622BHJP
【FI】
E01F9/692
B64F1/36
E01F9/604
E01F9/623
E01F9/681
G01P13/00 E
(21)【出願番号】P 2020010543
(22)【出願日】2020-01-27
【審査請求日】2022-09-29
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、権利譲渡・実施許諾の用意がある。
(73)【特許権者】
【識別番号】592040767
【氏名又は名称】有限会社伊藤鉄工所
(74)【代理人】
【識別番号】100083655
【氏名又は名称】内藤 哲寛
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 康紀
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-021333(JP,A)
【文献】特開2012-123348(JP,A)
【文献】実開昭62-176207(JP,U)
【文献】特開2007-120213(JP,A)
【文献】特開2002-123201(JP,A)
【文献】特開2005-042372(JP,A)
【文献】特開2013-127166(JP,A)
【文献】特開2007-070916(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 9/692
B64F 1/36
E01F 9/604
E01F 9/623
E01F 9/681
G01P 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のタイヤを載せることで、その重量で地表面に対して固定される長方形状の地表面固定板の長手方向の一端部に固着されて、先端に吹流しが取付けられるポールの基端部を挿入して、当該ポールを直立姿勢を維持して固定するための吹流し用ポール固定台であって、
前記地表面固定板に対して設定間隔をおいて対向して垂直に固着されて、設定幅のスライド案内長孔が上下方向に沿って対向して形成されている一対の起立固定板と、
前記一対の起立固定板の間に垂直に配置されて、前記ポールの基端部が挿入されることで当該ポールの垂直姿勢を維持させる固定筒体と、
前記地表面固定板における前記固定筒体の配置位置に、当該固定筒体の全方向への微動を防止して、当該配置位置を確定させるための移動規制具と、
を備え、
前記固定筒体の下端に近い部分の外周面の対向位置には、前記スライド案内長孔に挿通されて上下方向にスライド可能であって、当該固定筒体の傾動時には傾動支点としての機能を果す断面円形のスライド支点軸が前記固定筒体の半径方向に沿ってそれぞれ一体に設けられ、
前記固定筒体が前記一対の起立固定板の間に配置されて、当該固定筒体の各スライド支点軸が前記一対の起立固定板の各スライド案内長孔に挿通された状態で、当該固定筒体を前記移動規制具から外れる位置まで上方にスライドさせた状態で、当該固定筒体は、前記各スライド支点軸を支点にして地表面固定板の側に傾動して折り畳まれる構成であることを特徴とする吹流し用ポール固定台。
【請求項2】
前記固定筒体の筒体本体の下端に近い部分の外周面の対向位置に、一対の起立固定板の間に配置された前記固定筒体を前記スライド案内長孔に沿って上方に持ち上げる際に、当該固定筒体が前記一対のスライド支点軸を結ぶ線分に沿って微動するのを防止すべく、前記各起立固定板のスライド案内長孔の内幅に対応する外寸法を有する一対の内側案内体が一体に設けられ、当該各内側案内体に前記各スライド支点軸が一体に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の吹流し用ポール固定台。
【請求項3】
前記各スライド案内長孔の上端は、各起立固定板の内部に留まっていて、当該各起立固定板の上端に開口されておらず、
各起立固定板の各スライド案内長孔の上端には、互いに逆の水平方向に向けた組付け長孔が直交して設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の吹流し用ポール固定台。
【請求項4】
前記一対の起立固定板は、人手による僅かな曲げ変形が可能な肉厚の金属板で形成されて、当該各起立固定板に対する固定筒体の組付け時には、前記各起立固定板を外方に僅かに変形させて組み付けることが可能であり、使用時には、各起立固定板は、前記固定筒体の傾動時に当該固定筒体と干渉しない位置で連結ボルトを介して一体に連結されることで一体剛性を高められていることを特徴とする請求項3に記載の吹流し用ポール固定台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ドクターヘリ(救急医療用ヘリコプター)の緊急着陸位置の風情報をパイロットに知らせる吹流しのポールを任意の地表面に設置可能な吹流し用ポール固定台に関するものである。
【背景技術】
【0002】
諸事故の際に、ドクターヘリを事故現場又はその周辺に緊急着陸させる際に、安全着陸のために、そのパイロットに風向、風速等の風情報を知らせるのに吹流しが使用されている。ドクターヘリの着陸場所である事故現場は定まってはいないので、前記吹流しは、地表面の任意の場所に設置可能とする必要がある。しかも、ドクターヘリのパイロットが視認可能にするには、サイズの大きな吹流しが必要となり、その結果、先端部に吹流しを取付けているポールの基端部を固定支持する固定台には、大きな力が作用するので、地表面に対してしっかりと、しかも緊急時のため迅速に設置する必要がある。
【0003】
従来の吹流し用ポールの固定台は、車両のタイヤを載せることで、その重量により地表面に固定される長方形状の地表面固定板の長手方向の一端部に溶接により形成された固定筒体保持部と、当該固定筒体保持部に固定保持される円筒状の固定筒体とから成り、固定筒体保持部に対して固定筒体を複数本のボルトを用いて強固に固定する構造であった。このため、固定台に対して吹流しのポールを固定するのに手間と時間がかかるのみならず、非使用時には、保管場所及び運搬時の省スペース化の観点から、地表面固定板に対して固定筒体を分離させる必要があるが、この固定筒体の取外し作業は、複数本の固定ボルトをいちいち取り外す必要があるため、これも面倒な作業であった。
【0004】
なお、特許文献1には、吹流しのポールを柵体に設置する設置機構が開示されているが、上記したようにドクターヘリの着陸場所は、任意の地表面であるため、柵体の存在する特定位置に吹流しのポールを柵体に設置する当該設置機構は利用できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、事故発生の緊急時に、地表面の任意の場所に複数本の固定ボルトを用いることなく迅速に設置でき、しかも非使用時には、簡単に折り畳んで保管できる吹流し用ポール固定台の提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための請求項1の発明は、車両のタイヤを載せることで、その重量で地表面に対して固定される長方形状の地表面固定板の長手方向の一端部に固着されて、先端に吹流しが取付けられるポールの基端部を挿入して、当該ポールを直立姿勢を維持して固定するための吹流し用ポール固定台であって、
前記地表面固定板に対して設定間隔をおいて対向して垂直に固着されて、設定幅のスライド案内長孔が上下方向に沿って対向して形成されている一対の起立固定板と、
前記一対の起立固定板の間に垂直に配置されて、前記ポールの基端部が挿入されることで当該ポールの垂直姿勢を維持させる固定筒体と、
前記地表面固定板における前記固定筒体の配置位置に、当該固定筒体の全方向への微動を防止して、当該配置位置を確定させるための移動規制具と、
を備え、
前記固定筒体の下端に近い部分の外周面の対向位置には、前記スライド案内長孔に挿通されて上下方向にスライド可能であって、当該固定筒体の傾動時には傾動支点としての機能を果す断面円形のスライド支点軸が前記固定筒体の半径方向に沿ってそれぞれ一体に設けられ、
前記固定筒体が前記一対の起立固定板の間に配置されて、当該固定筒体の各スライド支点軸が前記一対の起立固定板の各スライド案内長孔に挿通された状態で、当該固定筒体を前記移動規制具から外れる位置まで上方にスライドさせた状態で、当該固定筒体は、前記各スライド支点軸を支点にして地表面固定板の側に傾動して折り畳まれる構成であることを特徴としている。
【0008】
請求項1の発明によれば、使用時には、一対の起立固定板の間に垂直に配置された固定筒体の下端部は、全方向への微動が防止された状態で、地表面固定板における一対の起立固定板の間に固着された移動規制具で支持されることで、垂直を維持している。緊急事故の発生時には、当該事故現場に近い部分の地表面に前記地表面固定板を配置して、当該地表面固定板における一対の起立固定板が配置されている部分を除く残りの部分に、車両のタイヤを載せると、当該地表面固定板は、前記車両の重量により地表面に対して強固に固定される。事故現場に近い部分に固定された地表面固定板の長手方向の一端部に垂直に支持された前記固定筒体に、上端部に吹流しが取付けられたポールの下端部を挿入すると、当該ポールは垂直に維持されて、その先端の吹流しは、風向に対応した方向を向き、しかも風速に対応した姿勢となって、空中において配置位置をほぼ保った状態で浮遊することで、ドクターヘリのパイロットは、吹流しの浮遊姿勢を目視することで、風速、風向等の風情報を視認できる。
【0009】
一方、吹流し用のポール固定台の非使用時には、固定筒体の下端部が移動規制具から外れるまで、当該固定筒体の一対のスライド支点軸を、一対の起立固定板のスライド案内長孔に案内させることで、当該固定筒体を上方に持ち上げると、当該固定筒体は、一対のスライド支点軸を傾動支点として傾動可能となるので、当該固定筒体の上端部が地表面固定板に当接するまで当該固定筒体を傾動させると、ポール固定台は、地表面固定板に対して折り畳まれて非使用姿勢となり、コンパクトに格納される。このように、請求項1の発明によれば、固定ボルトの取外し等の面倒な操作を一切行うことなく、固定筒体を上方に持ち上げて、一対のスライド支点軸を中心に傾動させるというワンタッチ操作でポール固定台を折り畳むことができる。また、ポール固定台の非使用状態において、固定筒体は、地表面固定板に固着された一対の起立固定板に連結されているので、ポール固定台の運搬中又は保管中において、固定筒体が紛失される恐れは皆無である。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記固定筒体の筒体本体の下端に近い部分の外周面の対向位置に、一対の起立固定板の間に配置された前記固定筒体を前記スライド案内長孔に沿って上方に持ち上げる際に、当該固定筒体が前記一対のスライド支点軸を結ぶ線分に沿って微動するのを防止すべく、前記各起立固定板のスライド案内長孔の内幅に対応する外寸法を有する一対の内側案内体が一体に設けられ、当該各内側案内体に前記各スライド支点軸が一体に設けられていることを特徴としている。
【0011】
請求項2の発明は、固定筒体の筒体本体における下端部に近い部分の対向部に、一対の内側案内体が一体に設けられて、当該各内側案内体に前記一対のスライド支点軸がそれぞれ一体に形成されており、前記各内側案内体が一対の起立固定板の各内面に摺接又は近接しているので、一対の起立固定板に対して上下動する前記固定筒体の当該一対の起立固定板に対する配置姿勢が確定される。よって、ポール固定台の使用時において、一対の起立固定板に対する固定筒体の配置姿勢が確定されるため、強風により固定筒体に大きな力が作用しても、当該固定筒体は、がたつくことはないので、ポール固定台を安定して使用できると共に、前記固定筒体の折畳み時において、傾動操作の前に行う当該固定筒体の上方への移動をスムーズに行えるため、固定筒体の折畳み操作が容易となる。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、前記各スライド案内長孔の上端は、各起立固定板の内部に留まっていて、当該各起立固定板の上端に開口されておらず、
各起立固定板の各スライド案内長孔の上端には、互いに逆の水平方向に向けた組付け長孔が直交して設けられていることを特徴としている。
【0013】
請求項3の発明によれば、前記固定筒体の各スライド支点軸を結ぶ線分が各起立固定板の板面に対して傾斜するようにして、当該固定筒体を各起立固定板の間に配置した状態で、前記線分が前記各起立固定板に対して垂直となるまで、当該固定筒体を回動させることで、各スライド支点軸は、その一部が前記各組付け長孔に入り込んだ後に前記スライド案内長孔に入り込み、この状態で、固定筒体を下動させると、当該固定筒体は、その外周部の一対のスライド支点軸が挿通されている各スライド案内長孔に案内させて、最下端までスライドされて、地表面固定板に固着された移動規制具により全方向に対する微動が規制されることで、一対の起立固定板に対して固定筒体が組み付けられる。よって、固定筒体の損傷等により、当該固定筒体を交換する場合等において、一対の起立固定板に対する固定筒体の組付け作業(交換作業)が容易となる。
【0014】
請求項4の発明は、請求項3の発明において、前記一対の起立固定板は、人手による僅かな曲げ変形が可能な肉厚の金属板で形成されていることを特徴としている。
【0015】
請求項4の発明によれば、前記一対の起立固定板に対する固定筒体の組付け時には、前記各起立固定板は外方に僅かに変形可能であるので、前記各組付け長孔と協働することで、一対の起立固定板に対する固定筒体の組付けが一層に容易となる。また、ポール固定台の使用時には、前記固定筒体の傾動時に当該固定筒体と干渉しない位置において一対の起立固定板を連結ボルトを介して一体に連結されることで、肉厚の小さな金属板で構成される当該一対の起立固定板の一体剛性が高められる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、固定筒体が一対の起立固定板の間に配置されて、当該固定筒体の各スライド支点軸が前記一対の起立固定板の各スライド案内長孔に挿通されており、当該固定筒体を移動規制具から外れる位置まで上方にスライドさせた状態で、当該固定筒体は、前記各スライド支点軸を支点にして地表面固定板に対して傾動により折り畳まれた状態とするのに、面倒なボルトの取外し作業を一切必要としないため、固定筒体の折畳み作業が容易である。また、ポール固定台の非使用時において、地表面固定板に対して傾動姿勢で折り畳まれている固定筒体は、地表面固定板に固着された一対の起立固定板に連結されたままであるので、運搬時又は保管時において当該固定筒体の紛失の恐れが皆無となる。
【0017】
また、ポール固定台を構成する起立固定板の各スライド案内長孔の上端に、互いに逆の水平方向に向けた組付け長孔を直交して設けることで、固定筒体の当初の組付け時、及び当該固定筒体の交換時において、当該一対の起立固定板に対する固定筒体の組付け作業が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係る吹流し用のポール固定台Fの使用状態の斜視図である。
【
図2】本発明に係るポール固定台Fと、当該固定台Fにより垂直に固定支持される伸縮式のポールPと、当該ポールPの先端部に取付けられる吹流しSとの分離状態の斜視図である。
【
図3】地表面固定板41に固着された本発明に係るポール固定台Fと、当該ポール固定台Fにより垂直に固定支持される伸長状態のポールPとの斜視図である。
【
図4】本発明に係るポール固定台Fの分解斜視図である。
【
図5】本発明に係るポール固定台Fの正面図である。
【
図6】(a),(b)は、それぞれ本発明に係るポール固定台Fの平面図、及び側面図である。
【
図7】ポール固定台Fを構成する一対の地表面固定板41に対して固定筒体Dを組み付ける状態を示す斜視図である。
【
図8】同じく一対の起立固定板1の一対の組付け長孔3の部分で破断した平面図である。
【
図9】(a)は、ポールPの下端部がポール移動規制具32で規制支持されて、固定筒体Dに挿入された状態の一部を破断した正面図であり、(b)は、(a)のX-X線断面図である。
【
図10】(a),(b)は、固定筒体Dを折り畳む順序の説明図である。
【
図11】(a),(b)は、それぞれ本発明に係るポール固定台Fの使用状態、及び折畳み状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、実施例を挙げて、本発明について更に詳細に説明する。最初に、
図1~
図3を参照にして、本発明に係る吹流し用のポール固定台Fは、長方形状の地表面固定板41の長手方向の一端部に溶接により固着され、当該ポール固定台Fの固定筒体Dに、先端に吹流しSが取付けられたポールPの下端部が挿入支持されることで、当該ポールPは垂直を維持する。
図1に示されるように、地表面固定板41におけるポール固定台Fが固着されていない残りの大部分の箇所に、車両の車輪Tを載せると、当該車両の大きな重量により、地表面固定板41は地表面Gに対してしっかり固定される。なお、ポールは、カーボンファイバーで形成され、非使用時における取り扱いが容易な伸縮構造となっている。
【0020】
ポール固定台Fは、
図4~
図9に示されるように、長方形状の前記地表面固定板41の長手方向の一端部に、当該地表面固定板41の幅方向に沿って所定間隔をおいて溶接により固着される金属板製の一対の起立固定板1と、当該一対の起立固定板1の間に配置位置が固定され、しかも所定範囲の垂直方向に上下動可能に配置される固定筒体Dと、前記地表面固定板41に対する当該固定筒体Dの下端部の配置位置を確定して固定状態にするための筒体移動規制具31とから成る。筒体移動規制具31は、前記固定筒体Dが全方向に微動しないように、その下端部が内嵌される正方形状の短枠体からなる。なお、前記一対の起立固定板1は、その下端部が外側に直角に折り曲げられ、当該折曲げ部が前記地表面固定板41に溶接されている。平板状の地表面固定板41は、自身の曲げ強度を高めると共に、車両の車輪Tが載せられた場合に、当該車輪Tがずれるのを防止するための補強を兼用したずれパイプ状のずれ止め材42が幅方向の両端部に長手方向に全長に亘って形成されており、当該地表面固定板41の長手方向に沿ってポール固定台Fが固着された側の端部には、手で持って運搬するのを可能とする把手43が設けられている。
【0021】
所定間隔をおいて対向配置された一対の起立固定板1には、固定筒体Dの各スライド支点軸14がスライド可能に挿通される設定幅の各スライド案内長孔2が上下方向に沿って対向して形成されている。各スライド案内長孔2の幅は、断面円形の前記一対のスライド支点軸14の外径に対応している。各スライド案内長孔2の上端部には、互いに逆方向を向いた各組付け長孔3が直交して形成されることで、両長孔2,3の合成形状は、逆L字状をなしている。組付け作業を容易にするために、組付け長孔3の幅は、スライド案内長孔2の幅よりも広くなっている。また、一対の起立固定板1は、当該一対の起立固定板1に対する前記固定筒体Dの組付け・分離の際に、当該組付け・分離の作業を容易にするために、手の力で上端自由端部が僅かにわん曲可能な金属板で形成されている。このように、一対の起立固体板1は、単独では剛性が低いので、当該一対の起立固体板1に対する固定筒体Dの組付け・分離の際に、前記一対のスライド支点軸14を中心にして回動する前記固定筒体Dが干渉しない位置において、各起立固定板1の間に配置されるスペーサロッド4及び当該各起立固定板1の外側に配置される六角孔付の小ボルトBにより互いに連結されることで、一対の起立固定板1の全体としての剛性が高められている。この結果、一対の固定起立板1の間の空間のうち前記スペーサロッド4と反対の部分は、前記一対のスライド支点軸14を中心にして前記固定筒体Dが干渉することなく回動可能な非干渉空間18となっている。
【0022】
前記固定筒体Dは、
図4~
図6に示されるように、円筒状の筒体本体11の長手方向の中央部と下端部との中間部(下端部に近い部分)に、当該筒体本体11の外径を部分的に増径させるためのリング状の増径部12が一体に設けられ、当該増径部12の外周面の対向部に、前記一対の起立固定板1の内面に摺接又は近接する内面案内体13が当該筒体本体11の半径方向に沿ってそれぞれ突設され、更に、各内面案内体13の先端面には、前記一対の起立固定板1の各スライド案内長孔2に挿通される断面円形の一対のスライド支点軸14がそれぞれ前記半径方向に突設されている。
図8に示されるように、一対の起立固定板1の内幅W
1 は、固定筒体Dの一対の内面案内体13の外寸法W
2 よりも僅かに大きくなっている。固定筒体Dの筒体本体11の対向部にそれぞれ設けられた一対のスライド支点軸14の各中心を結ぶ線は、当該固定筒体Dの傾動支点軸心C
1 となる。また、
図4及び
図9に示されるように、筒体本体11の上端部には、上端内周面がテーパー凹円錐面15に形成された接続カラー16が一体に外嵌されている。当該接続カラー16のテーパー凹円錐面15は、ポールPの基端のポール単体P
1 に外嵌された接続カラー52の外周のテーパー円錐面51が嵌合されることで、固定筒体Dに対してポールPを一体に接続する部分である。
【0023】
地表面固定板41におけるポール固定台Fの一対の起立固定板1の間には、固定筒体Dを内嵌させることで、当該固定筒体Dの全方向への微動を防止する正方形枠状の筒体移動規制具31が設けられ、当該筒体移動規制具31の内側には、ポールPの下端の被移動規制体53を外嵌させて、当該ポールPの下端部の微動を規制する前記筒体移動規制具31に対して小サイズのポール移動規制具32が同心となって固着されている。
【0024】
そして、地表面固定板41に固着された一対の起立固定板1の間に固定筒体Dの配置位置を定めて垂直に配置するには、
図8に示されるように、固定筒体Dの軸心C
2 を各起立固定板1の各スライド案内長孔2の中心を結ぶ線分上に位置させ、しかも固定筒体Dに一体に設けられた一対のスライド支点軸14の傾動支点軸心C
1 を一対の起立固定板1の板面に対して傾斜させた状態で、当該固定筒体Dを自身の軸心C
2 を中心にして所定方向に回動させると、各スライド支点軸14の一部が各地表面固定板41の各組付け長孔3に挿入され、引き続いて固定筒体Dを回動させると、
図7及び
図8に示されるように、固定筒体Dの各スライド支点軸14は、各起立固定板1の各スライド案内長孔2の上端部に挿通される。上記した組付け操作を可能にするために、固定筒体Dの筒体本体11の外周面に対向して半径方向に設けられた一対のスライド支点軸14の突出長を極力短くしてある。なお、上記の操作を行うのが難しい場合には、スペーサロッド4を取り外して、一対の起立固定板1の連結を解いて、各起立固定板1の上端側を手で外方に拡げることで、容易に作業を行える。
【0025】
この状態で、固定筒体Dを下げると、当該固定筒体Dの各スライド支点軸14は、スライド案内長孔2に案内されて下方にスライドされて、固定筒体Dの下端部は、筒体移動規制具31の外側に内嵌されて、地表面固定板41に対する固定筒体Dの配置位置が確定され、しかも固定筒体Dの各スライド支点軸14は、各起立固定板1の各スライド案内長孔2に挿通されて、当該各スライド支点軸14と各スライド案内長孔2とが互いに係合した状態となるため、地表面固定板41に対して固定筒体Dが垂直となって固定配置される。この状態が、
図3及び
図11(a)に示されるようなポール固定台Fの使用状態であり、各スライド支点軸14は、その中心部の雌螺子部に各起立固定板1の外側においてスペーサリング17を介して小ボルトBが螺合されて、各スライド支点軸14がスライド案内長孔2から抜け出ない構造にしてある。
【0026】
一方、使用後において、運搬又は保管のために、地表面固定板41に対して垂直に起立している固定筒体Dを折り畳むには、
図10(a)~(c)に示されるように、一対の起立固定板1に対して固定筒体Dを固定している一対の小ボルトBを緩めて、固定筒体Dを上昇端まで持ち上げると、当該固定筒体Dの下端部は、筒体移動規制具31から外れ、当該固定筒体Dを、一対のスライド支点軸14の傾動支点軸心C
1 を中心にして傾動させると、当該固定筒体Dの上端部は、地表面固定板41に当接して折り畳まれる。このように、本発明においては、ポール固定台Fの使用状態から折畳み状態にするには、面倒な複数本のボルトの取外しを行うことなく、固定筒体Dを持ち上げて傾動させるのみでよいので、折り畳み操作が極めて容易である。そして、必要ならば、一対のスライド支点軸14の部分で、一旦緩めた2本の小ボルトBを締め付けることで、当該固定筒体Dを一対の起立固定板1に固定しておくと、運搬時において、固定筒体Dががたつかなくなる。なお、
図10(a)~(c)の各図の部分拡大図では、実線の部分のみを拡大表示し、2点鎖線の部分は図示していない。
【0027】
そして、
図1及び
図9に示されるように、上端部に吹流しSを取付けられたポールPの基端のポール単体P
1 を、ポール固定台Fの固定筒体Dに挿入すると、当該ポール単体P
1 の下端部に一体に取付けられた被移動規制体53がポール移動規制具32に外嵌されると共に、当該ポール単体P
1 に一体に固着された接続カラー52の外周面のテーパー円錐面51が、固定筒体Dに一体に固着されたテーパー凹円錐面15に嵌着されることで、ポールPの下端部が固定筒体Dに対して半径方向にがたつくことなく、しっかりと固定支持される。なお、ポール単体P
1 の下端面は、地表面固定板41に対して当接させることなく、僅かに浮き上がらすことで、接続カラー16のテーパー凹円錐面15と、接続カラー52のテーパー円錐面51との嵌着が確実となって、固定筒体Dに対してポールPを一層しっかり固定支持できる。
【0028】
なお、固定筒体Dの損傷等が原因で交換の必要が生じた場合には、一対の起立固定板1に対して固定筒体Dを組み付ける上記した操作と逆の操作を行えばよいので、当該交換作業は容易である。
【0029】
また、一対の起立固定板1に組付け長孔3を形成することで、各長孔2,3の合成形状を逆L字状とすることで、ポール固定台Fの折畳み時においても、一対の起立固定板1に対して固定筒体Dが分離されない利点がある。しかし、本発明では、一対の起立固定板1に対向して形成される各スライド案内長孔2は、各起立固定板1の上端まで形成して、開放した形状にして、各スライド案内長孔2の上端部において、固定筒体Dの各スライド支点軸14が抜け出るのを防止するストッパを設ける構造にすることも可能である。本構造であると、一対の起立固定板1に対する固定筒体Dの組付けは、当該各組付け長孔3の上端開口から単に挿入するのみでよいので、固定筒体Dの組付け、及び交換の各作業が容易となると共に、固定筒体Dの筒体本体11の外周面に対向して半径方向に形成される一対スライド支点軸14の半径方向の突出長を短くする必要もなくなるという各利点がある。
【符号の説明】
【0030】
C1 :固定筒体の傾動支点軸心
C2 :固定筒体の軸心
D:固定筒体
F:ポール固定台
G:地表面
P:ポール
S:吹流し
W1 :一対の起立固定板の内寸法
W2 :一対の内面案内体の外寸法
1:起立固定板
2:スライド案内長孔
3:組付け長孔
11:筒体本体
13:内面案内体
14:スライド支点軸
31:筒体移動規制具
32:ポール移動規制具
41:地表面固定板