(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-21
(45)【発行日】2023-06-29
(54)【発明の名称】バッテリーマネジメントシステム、及び、バッテリーマネジメント方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/48 20060101AFI20230622BHJP
G01N 21/17 20060101ALI20230622BHJP
【FI】
H01M10/48 P
H01M10/48 A
G01N21/17 Z
(21)【出願番号】P 2020057040
(22)【出願日】2020-03-27
【審査請求日】2022-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】520107663
【氏名又は名称】ユウラシア真空技術株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【氏名又は名称】辻田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】菊池 正志
(72)【発明者】
【氏名】馬場 守
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-131405(JP,A)
【文献】特開平11-230919(JP,A)
【文献】特開2016-017924(JP,A)
【文献】特表2018-504614(JP,A)
【文献】特開2012-202951(JP,A)
【文献】特開2016-122634(JP,A)
【文献】特開2016-040763(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 -21/01
21/17 -21/61
G01R 1/06 - 1/073
H01M 10/00 -10/04
10/06 -10/34
10/42 -10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池セルを構成する活物質の少なくとも一部を含む領域における光学密度の計測を行う計測手段と、
前記光学密度に少なくとも基づき
充放電容量-光学密度特性(C-O.D.特性)のサイクル特性を決定し、
サイクル数=1において所定の充放電容量を呈する光学密度と、前記サイクル特性として決定されたサイクル数≧2において前記所定の充放電容量を呈する光学密度と、の差分に相当する光学密度変化量により決定されるサイクル数-ΔO.D.特性における勾配に基づき前記二次電池セルの充放電状態を評価する評価手段と、を有するバッテリーマネジメントシステム。
【請求項2】
前記評価手段は、前記勾配が所定の閾値を超過した場合、前記二次電池セルが所定の充放電状態に相当すると評価する、請求項1に記載のバッテリーマネジメントシステム。
【請求項3】
前記光学密度及び前記二次電池セルの充放電容量のオペランド計測を行い、
前記オペランド計測の結果であって、異なるサイクル数の前記光学密度及び前記二次電池セルの充放電容量に基づき前記C-O.D.特性のサイクル特性を決定し、
前記計測手段は、評価対象とする二次電池セルの光学密度を計測し、
前記評価手段は、前記光学密度に基づき前記サイクル特性を決定する、
請求項1又は請求項2に記載のバッテリーマネジメントシステム。
【請求項4】
前記領域は、前記活物質である正極活物質の少なくとも一部を含む
請求項1~請求項3の何れか一項に記載のバッテリーマネジメントシステム。
【請求項5】
前記領域は、前記活物質である負極活物質の少なくとも一部を含む
請求項1~請求項4の何れか一項に記載のバッテリーマネジメントシステム。
【請求項6】
前記領域は、前記二次電池セルを構成する集電体の少なくとも一部をさらに含む
請求項1~5の何れか一項に記載のバッテリーマネジメントシステム。
【請求項7】
前記領域は、前記二次電池セルを構成する電解質の少なくとも一部をさらに含む
請求項1~6の何れか一項に記載のバッテリーマネジメントシステム。
【請求項8】
前記計測手段は、前記領域に対して計測用光を入射し前記領域を透過した前記計測用光を受光し前記光学密度の計測を行う
請求項1~7の何れか一項に記載のバッテリーマネジメントシステム。
【請求項9】
前記計測用光は、
可視光、紫外光、赤外光から選択される少なくとも1つの単波長光である
請求項8に記載のバッテリーマネジメントシステム。
【請求項10】
前記評価手段は、異なるサイクル数の前記光学密度及び前記二次電池セルの充放電容量に基づき前記C-O.D.特性のサイクル特性を決定し、
ΔO.D.-ΔV特性と、前記C-O.D.特性のサイクル特性における光学密度変化量(ΔO.D.)
と、に基づき前記二次電池セルの電圧降下量(ΔV)の評価を行う
請求項3に記載のバッテリーマネジメントシステム。
【請求項11】
前記評価手段は、前記光学密度に基づき前記活物質における電荷量を評価する
請求項1~10の何れか一項に記載のバッテリーマネジメントシステム。
【請求項12】
二次電池セルを構成する活物質の少なくとも一部を含む領域における光学密度の計測を行う計測ステップと、
前記光学密度に少なくとも基づき
充放電容量-光学密度特性(C-O.D.特性)のサイクル特性を決定し、
サイクル数=1において所定の充放電容量を呈する光学密度と、前記サイクル特性として決定されたサイクル数≧2において前記所定の充放電容量を呈する光学密度と、の差分に相当する光学密度変化量により決定されるサイクル数-ΔO.D.特性における勾配に基づき前記二次電池セルにおける充放電状態の評価を行う評価ステップと、を含むバッテリーマネジメント方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリーマネジメントシステム、及び、バッテリーマネジメント方法に関する。
【背景技術】
【0002】
低炭素社会の実現に向けて、リチウムイオン電池(以下、「LiB」と記す。)等の充放電可能な二次電池の適用範囲を、車載用途・定置用途へ拡充させる潮流がある。また、LiB等の二次電池の適用範囲は、民生用途からインフラ用途へ拡充されつつある。
【0003】
二次電池の車載用途とは、電気自動車(以下、「xEV」と記す。)への二次電池の搭載等を指す。xEVを含むモビリティの航続距離は二次電池の容量に左右されるため、二次電池は、モビリティの性能向上において重要なコンポーネントである。なお、非特許文献1によれば、xEV用蓄電池としての二次電池において、2030年までにそのエネルギー密度を500Wh/kg以上とすることが目標とされている。
【0004】
二次電池の定置用途とは、太陽光発電・風力発電を含むエネルギーハーベスター(以下、「EH」と記す。)により得られる電気エネルギーの貯蔵等を指す。EHは、天候等により発電量が左右され、化石燃料を活用するような火力発電と比較して不安定な電源である。そのため、二次電池は、電力供給の安定化においても重要なコンポーネントである。
【0005】
これらの用途に共通して、二次電池セルの電荷量・内部抵抗等のパラメータを評価可能なバッテリーマネジメント(以下、「BM」と記す。)技術は、xEV・EH等のシステムへの二次電池の導入において重要な技術の1つである。また、これらの用途に共通して、二次電池セルの充放電状態を評価可能なBM技術は、重要な技術の1つである。
【0006】
換言すれば、xEV・EH等のシステムが要求する性能を発揮できる期間としての二次電池セルのサイクル寿命を評価可能なBM技術は、重要な技術の1つである。また、二次電池セルの劣化診断・故障予測が可能なBM技術は、重要な技術の1つである。
【0007】
LiB等の二次電池セルの劣化機構は、例として、以下のように把握される。
・ゲストカチオンM+(例としてLi+)がホスト負極活物質に挿入されたまま当該ホスト負極活物質から抽出されなくなることで活性ゲストカチオンM+の総量が減少する。
・ゲストカチオンM+がホスト負極活物質表面で還元され電解質と反応することで、二次電池セルにおける活性ゲストカチオンM+の総量が減少する。
・ホスト負極活物質表面において電解質との化学反応により皮膜が形成されることで、ゲストカチオンM+の拡散係数が低下し二次電池セルの内部抵抗が増加する。
【0008】
LiB等の二次電池セルの性能指標は、放電電圧及び電荷量を含むパラメータに基づくエネルギー密度、又は、開放電圧・内部抵抗・電流を含むパラメータに基づく出力密度であるため、当該パラメータの低下を評価可能なBM技術は、重要な技術の1つである。
【0009】
特許文献1によれば、LiBの余剰電解液の光学的性質を容易に調べうる構成とした電池、余剰電解液のリチウム塩濃度を検知しうる電池システム、また、余剰電解液のリチウム塩濃度を検知して、電池の内部抵抗の増大を抑制・減少させて電池の劣化を回復させ、内部抵抗を適切な範囲に収めうる電池システムについての発明が開示されている。
【0010】
特許文献1記載の発明は、光学的計測に基づき上記パラメータを評価可能なBM技術の1つである、と把握することができる。しかしながら、当該発明は、活物質における光学的計測に基づき二次電池セルの評価を行う、という観点において改善の余地がある。
【0011】
LiB等の二次電池における充放電可逆性は、原則として、活物質をホストとするゲストカチオンM+のインターカレーション反応に担保される。このとき、ホスト活物質は、ゲストカチオンM+の挿入・抽出に起因してその結晶構造が変化する。ホスト活物質における結晶構造の変化は、ゲストカチオンM+の貯蔵量に影響を及ぼす。
【0012】
LMO系材料に例示されるように、R3-m構造を持つLiMnO2は、充放電の繰り返しに起因してスピネル型であるLiMn2O4に相転移する。LMO系化合物では、空孔八面体サイトへのLi+の挿入が3V vs. Li/Li+未満で起きJahn-Teller歪による正方晶相LiMn2O4が形成される。このとき、LMO系材料は、その結晶構造がc軸方向に伸長され粒子が破砕するため、その容量が低下する。
【0013】
上記事情を鑑みて、LiB等の二次電池セルの活物質における結晶構造を検出し当該二次電池の充放電状態を評価可能なBM技術は、重要な技術の1つである。
【0014】
LiB等の二次電池の活物質における結晶構造の検出(構造決定に相当。)は、例として、X線回折を利用して結晶構造を決定するX線回折法(XRD)や、電子線回析を利用して空間群を決定する透過型電子顕微鏡観察(TEM)や、活物質表面近傍を構成する組成・化学結合状態を決定するX線光電子分光法(XPS)により実現される。
【0015】
しかしながら、上記XRD・TEM・XPS等は、二次電池に対するX線・電子線の照射を要する分析手法であるため、システムにおいて動作中の二次電池セルにおける活物質を簡便に評価可能なBM技術を実現することができる手法である、とは言い難い。
【0016】
また、LiB等の二次電池の活物質における元素組成比の特定は、例として、誘導結合高周波プラズマ(ICP)中でイオン化された試料構成元素の光スペクトルから試料構成元素の元素種を特定するICP-AESにより実現される。
【0017】
しかしながら、上記ICP-AES等は、二次電池における元素組成比(例として、活物質におけるゲストカチオンM+の量に相当。)の特定のためにプラズマを要する分析手法であるため、システムにおいて動作中の二次電池の活物質を簡便に評価可能なBM技術を実現することができる手法である、とは言い難い。
【0018】
なお、LiB等の二次電池の活物質における結晶構造の検出を行う光学的手法として、ラマン分光法が知られている。当該光学的手法は、可視光を含む光波を利用した分析手法であるため、上記XRD・TEM・XPS・ICP-AES等の手法と比較して、簡便に二次電池の活物質を評価可能な分析手法である、と把握することができる。
【0019】
しかしながら、ラマン分光法は、活物質の結晶粒度を含む幅広い情報を得る過程で分析データに対するピーク分離・ピーク形状評価等のポストプロセスを要求する分析手法であるため、システムにおいて動作中の二次電池セルにおける活物質を簡便に評価可能なBM技術を実現することができる手法である、とは言い難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【非特許文献】
【0021】
【文献】独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO),“二次電池技術開発ロードマップ2013(Battery RM 2013)”,NEDO,平成25年8月.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
上記事情を鑑み、本発明は、新規なBM技術の提供を解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記課題を解決するため、本発明は、バッテリーマネジメントシステムであって、二次電池セルを構成する活物質の少なくとも一部を含む領域における光学密度の計測を行う計測手段と、前記光学密度に少なくとも基づき前記二次電池セルの充放電状態を評価する評価手段と、を有することを技術的特徴とする。このような構成とすることで、本発明は、少なくとも二次電池セルの活物質における光吸収量に相当する光学密度に基づき、簡便に二次電池セルのパフォーマンスを評価可能なBM技術を提供することができる。また、このような構成とすることで、本発明は、従来のBM技術に対して二次電池セルの光学密度をパラメータとして導入することで、二次電池セルのモニタリングの最適化に寄与することができる。
【0024】
本発明の好ましい形態では、前記領域は、前記活物質である正極活物質の少なくとも一部を含むことを技術的特徴とする。このような構成とすることで、本発明は、例として、二次電池セルを構成する正極活物質におけるゲストカチオンM+の貯蔵量と関係する計測パラメータである光学密度を得ることができる。また、このような構成とすることで、本発明は、例として、二次電池セルを構成する正極活物質の結晶構造と関係する計測パラメータである光学密度を得ることができる。
【0025】
本発明の好ましい形態では、前記領域は、前記活物質である負極活物質の少なくとも一部を含むことを技術的特徴とする。このような構成とすることで、本発明は、例として、二次電池セルを構成する負極活物質におけるゲストカチオンM+の貯蔵量と関係する計測パラメータである光学密度を得ることができる。また、このような構成とすることで、本発明は、例として、二次電池セルを構成する負極活物質の結晶構造と関係する計測パラメータである光学密度を得ることができる。
【0026】
本発明の好ましい形態では、前記領域は、前記二次電池セルを構成する集電体の少なくとも一部をさらに含むことを技術的特徴とする。このような構成とすることで、本発明は、例として透明電極である集電体を光学窓とする、活物質の光学密度の計測を実現することができる。
【0027】
本発明の好ましい形態では、前記領域は、前記二次電池セルを構成する電解質の少なくとも一部をさらに含むことを技術的特徴とする。このような構成とすることで、本発明は、電解質における皮膜・デンドライトの形成等に応じて変化し得る光学密度を得ることができる。
【0028】
本発明の好ましい形態では、前記計測手段は、前記領域に対して計測用光を入射し前記領域を透過した前記計測用光を受光し前記光学密度の計測を行うことを技術的特徴とする。このような構成とすることで、本発明は、二次電池を含む従来の電源構成に対し二次電池セルのパフォーマンスを評価可能な光学系統を付与することができる。
【0029】
本発明の好ましい形態では、前記計測用光は、単波長光であることを技術的特徴とする。また、本発明の好ましい形態では、前記単波長光は、可視光であることを技術的特徴とする。また、本発明の好ましい形態では、前記単波長光は、紫外光であることを技術的特徴とする。また、本発明の好ましい形態では、前記単波長光は、赤外光であることを技術的特徴とする。このような構成とすることで、本発明は、二次電池セルを構成する活物質の光学密度における波長選択性を考慮した上で、当該活物質におけるゲストカチオンM+の貯蔵量等に露わに依存する所定の波長を採用することができる。
【0030】
本発明の好ましい形態では、前記計測手段は、前記光学密度及び前記二次電池セルの充放電容量のオペランド計測を行うことを技術的特徴とする。このような構成とすることで、本発明は、xEV・EH等のシステムを構成する動作中の二次電池セルについて、その電気特性及び光学特性のオペランド計測を行うことができるため、上記領域の光学密度に基づく二次電池セルの充放電状態の評価をより好適に実現することができる。
【0031】
本発明の好ましい形態では、前記評価手段は、前記充放電容量及び光学密度に基づき充放電容量-光学密度特性(C-O.D.特性)を決定することを技術的特徴とする。このような構成とすることで、本発明は、xEV・EH等のシステムを構成する動作中の二次電池セルに係る電気特性及び光学特性の相関を評価することができるため、上記領域の光学密度に基づく二次電池セルの充放電状態の評価をより好適に実現することができる。
【0032】
本発明の好ましい形態では、前記評価手段は、異なるサイクル数の前記光学密度及び前記二次電池セルの充放電容量に基づき前記C-O.D.特性のサイクル特性を決定し、前記C-O.D.特性のサイクル特性における光学密度変化量(ΔO.D.)に基づき前記二次電池セルの電圧降下量(ΔV)の評価を行うことを技術的特徴とする。このような構成とすることで、本発明は、xEV・EH等のシステムを構成する動作中の二次電池セルに係る劣化及び光学特性の相関に基づき、二次電池セルの充放電状態の評価をより好適に実現し、二次電池セルの劣化予測等の実現に寄与することができる。
【0033】
本発明の好ましい形態では、前記評価手段は、前記光学密度に基づき前記活物質における電荷量を評価することを技術的特徴とする。このような構成とすることで、本発明は、少なくとも二次電池セルの活物質における光学密度に基づき、簡便に、二次電池セルの充放電容量を含むパフォーマンスを評価可能なBM技術を提供することができる。
【0034】
また、上記課題を解決するため、本発明は、バッテリーマネジメント方法であって、二次電池セルを構成する活物質の少なくとも一部を含む領域における光学密度の計測を行う計測ステップと、前記光学密度に少なくとも基づき前記二次電池セルにおける充放電状態の評価を行う評価ステップと、を含むことを技術的特徴とする。このような構成とすることで、本発明は、少なくとも二次電池セルの活物質における光学密度に基づき、簡便に、二次電池セルのパフォーマンスを評価可能なBM技術を提供することができる。また、このような構成とすることで、本発明は、従来のBM技術に対して二次電池セルの光学密度をパラメータとして導入することで、二次電池セルのモニタリングの最適化に寄与することができる。
【0035】
また、上記課題を解決するため、本発明は、バッテリーマネジメントシステムであって、二次電池セルの活物質を含む領域における光学密度に少なくとも基づき前記二次電池セルにおける充放電状態の評価を行う評価手段を有するコンピュータを備えることを技術的特徴とする。このような構成とすることで、本発明は、少なくとも二次電池セルの活物質における光学密度に基づき、簡便に、二次電池セルのパフォーマンスを評価可能なBMコンピューティングに係る技術を提供することができる。
【0036】
また、上記課題を解決するため、本発明は、バッテリーマネジメント方法であって、二次電池セルの活物質を含む領域における光学密度に少なくとも基づき前記二次電池セルにおける充放電状態の評価を行う評価ステップを、コンピュータのプロセッサに実行させることを技術的特徴とする。このような構成とすることで、本発明は、少なくとも二次電池セルの活物質における光学密度に基づき、簡便に、二次電池セルのパフォーマンスを評価可能なBMコンピューティングに係る技術を提供することができる。
【0037】
また、上記課題を解決するため、本発明は、バッテリーマネジメントプログラムであって、コンピュータを、二次電池セルの活物質を含む領域における光学密度に少なくとも基づき前記二次電池セルにおける充放電状態の評価を行う評価手段として機能させることを技術的特徴とする。このような構成とすることで、本発明は、少なくとも二次電池セルの活物質における光学密度に基づき、簡便に、二次電池セルのパフォーマンスを評価可能なBMコンピューティングに係る技術を提供することができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明は、新規なBM技術の提供を実現することができる。「BM技術」とは、バッテリーマネジメントシステム(以下、「BMシステム」と記す。)・バッテリーマネジメント方法(以下、「BM方法」と記す。)・バッテリーマネジメントプログラム(以下、「BMプログラム」と記す。)の少なくとも1つにおける技術的特徴を指す。
【0039】
なお、他の課題・特徴・利点は、図面・特許請求の範囲と共に取り上げられる「発明を実施するための形態」により適宜、明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】実施形態1に係るBMシステム1の機能ブロック図を示す。
【
図2】実施形態1に係るBMのフローチャートを示す。
【
図3】実施形態1に係る領域200における光学特性計測の説明図を示す。
【
図4】実施形態2に係る領域200における光学特性計測の説明図を示す。
【
図5】実施形態3に係る領域200における光学特性計測の説明図を示す。
【
図6】実施形態4に係る領域200における光学特性計測の説明図を示す。
【
図7】実施形態5に係る領域200における光学特性計測の説明図を示す。
【
図8】実施例1に係る二次電池セル2のC-V特性を示す。
【
図9】実施例1に係る正極活物質22の光学特性を示す。
【
図10】実施例1に係る二次電池セル2のC-O.D.特性を示す。
【
図11】実施例1に係る二次電池セル2のΔO.D.-ΔV特性を示す。
【
図12】実施例2に係る正極活物質22の光学特性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本明細書は、本発明の一実施形態に係る構成や作用効果等について、図面を交えて説明する。本発明は、以下の一実施形態に限定されず、様々な構成を採用し得る。また、本発明の一実施形態は、互いに、その構成の少なくとも一部を適宜、採用し得る。
【0042】
BMシステム1及びBM方法のそれぞれは、同様の作用効果を奏する。BMシステム1における各手段と、BM方法における各ステップと、は同様の作用効果を奏する。
【0043】
また、BMシステム1・BM方法・BMプログラム・BMプログラム媒体のそれぞれは、同様の作用効果を奏する。BMシステム1・BMプログラム・BMプログラム媒体のそれぞれの各手段と、BM方法の各ステップと、は同様の作用効果を奏する。
【0044】
なお、BMプログラム媒体とは、BMプログラムが格納された非一過性の記録媒体を指す。当該記録媒体は、例として、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリを指す。
【0045】
《実施形態1》
本明細書は、以下に、本発明の実施形態1について説明する。なお、本明細書中の説明における符号の一部は、図示されない場合がある。
【0046】
図1に例示されるように、BMシステム1は、二次電池セル2の活物質を含む領域200における光学密度の計測を行う計測手段11(計測ステップに相当。)と、当該光学密度に少なくとも基づき二次電池セル2の充放電状態を評価する評価手段12(評価ステップに相当。)と、を有する。
【0047】
〈二次電池セル2〉
二次電池セル2は、充放電可能な既知又は慣用の二次電池である。二次電池セル2は、少なくとも集電体21・正極活物質22・電解質23・負極活物質24を含む。また、二次電池セル2は、バインダ・セパレータ・導電助剤・SEI膜等をさらに含み得る。
【0048】
二次電池セル2は、例として、LiBである。また、二次電池セル2は、例として、ナトリウムイオン電池である。また、二次電池セル2は、例として、全固体電池である。また、二次電池セル2は、例として、バルク型全固体電池である。また、二次電池セル2は、例として、薄膜型全固体電池である。二次電池セル2は、充放電可能な金属イオン電池であれば、その種別に制限はない。
【0049】
集電体21は、既知又は慣用の導電材料を採用し得る。集電体21は、例として、酸化インジウムスズ(ITO)等の透明電極材料により構成される。
【0050】
正極活物質22は、ゲストカチオンM+(例としてLi+)のホストとして機能し所望のPotential vs. M/M+を担保する材料であれば、その種別に制限はない。正極活物質22は、例として、Li-Nb-O系材料やLi-V-O系材料である。
【0051】
電解質23は、ゲストカチオンM+(例としてLi+)に係るイオン伝導体として機能し所望のイオン伝導性を担保する材料であれば、その種別に制限はない。なお、電解質23は、既知又は慣用の電解液であってよく、既知又は慣用の固体電解質であってよい。
【0052】
負極活物質24は、ゲストカチオンM+(例としてLi+)のホストとして機能し所望のCapacity / mAh g-1を担保する材料であれば、その種別に制限はない。負極活物質24は、例として、透明性を有する当該材料である。
【0053】
〈計測手段11〉
計測手段11(測定器に相当。)は、光源111aから領域200に対して集電体21及び活物質の積層方向Xに沿って計測用光111cを入射し、領域200において透過した計測用光111cを受光素子111bにおいて受光し、領域200における光学密度(O.D.)の計測を行う光学特性計測手段111(光学測定器に相当。)を有する。
【0054】
受光素子111bは、領域200における反射/多重反射を経た計測用光111cを受光する、と把握することができる。また、受光素子111bは、領域200における屈折を経た計測用光111cを受光する、と把握することができる。また、受光素子111bは、領域200における散乱を経た計測用光111cを受光する、と把握することができる。また、受光素子111bは、領域200における吸収を経た計測用光111cを受光する、と把握することができる。なお、例として、本明細書中の説明における「領域200における散乱を経た計測用光111c」とは、領域200において散乱した/散乱された計測用光111cに相当する。
【0055】
受光素子111bは、領域200の粒子表面/粒子境界/その近傍における吸収/反射/多重反射/屈折/散乱等を経た計測用光111cを受光する、と把握することができる。また、受光素子111bは、領域200の粒界/その近傍における吸収/反射/多重反射/屈折/散乱等を経た計測用光111cを受光する、と把握することができる。また、受光素子111bは、領域200の界面/その近傍における吸収/反射/多重反射/屈折/散乱等を経た計測用光111cを受光する、と把握することができる。また、受光素子111bは、領域200の局所構造/その近傍における吸収/反射/多重反射/屈折/散乱等を経た計測用光111cを受光する、と把握することができる。当該近傍の幅に制限はない。
【0056】
本明細書中の説明における「光学密度」は、光吸収量に相当する。また、光学密度は、着色量に相当する。また、光学密度は、入射光強度及び透過光強度の比(透過率に相当。)に基づく計測パラメータに相当し、当該透過率の常用対数に基づき表される。
【0057】
ここで、計測手段11は、光源111a・受光素子111bを含み既知又は慣用の光学手段である光学特性計測手段111を有する。なお、光学特性計測手段111により入射される計測用光111cの光強度・スポット径に、制限はない。なお、光学特性計測手段111における計測用光111cの光路長に、制限はない。
【0058】
光源111aは、計測用光111cを照射可能な既知又は慣用の発振器を含む光学素子である。光源111aは、例として、He-Neレーザ・Arレーザ等の気体レーザであってよく、YAGレーザ等の固体レーザであってよく、GaAlAs・InGaAsP・GaN結晶(混晶)等を活性媒質とする半導体レーザであってよく、その活性媒質・励起法に制限はない。光源111aは、白色光等の光を照射可能な光学素子であってよい。
【0059】
光学特性計測手段111は、既知又は慣用の分波素子・分光素子をさらに備えてよい。また、光源111aは、既知又は慣用のグレーティングをさらに備えてよい。また、光源111aは、計測用光111cのアラインメント(集光位置調整に相当。)及び走査が可能な光スキャナをさらに備えてよい。当該光スキャナは、例として、ガルバノミラー・軸回転モータ・集光レンズを備える既知又は慣用のガルバノスキャナである。
【0060】
受光素子111bは、計測用光111cの光強度を計測可能な光度計・分光光度計・吸光光度計等の既知又は慣用の光学素子である。また、受光素子111bは、既知又は慣用のフォトダイオードであってよく、既知又は慣用のレーザセンサであってよい。
【0061】
計測用光111cは、例として、単波長光である。ここで、単波長光は、例として、380-700nmの波長帯における可視光、200-380nmの波長帯における紫外光、又は、0.7-2.5μmの波長帯における赤外光である。なお、当該赤外光は、例として、2.5-4.0μmの波長帯における波長を有する。本発明の一実施形態における計測用光111cの波長は、光波に分類され得る波長であれば、制限はない。なお、当該単波長光は、例として、指向性を有するレーザ光である。
【0062】
計測手段11は、二次電池セル2の充放電容量(C)・放電電圧・インピーダンスを含むパラメータを計測可能な既知又は慣用の手段である電気特性計測手段112(電気測定器に相当。)を有する。電気特性計測手段112は、異なるサイクル回数の当該パラメータを計測するような、既知又は慣用のサイクル計測(サイクル試験)を行う。
【0063】
ここで、計測手段11は、光学特性計測手段111による領域200の光学密度の計測と、電気特性計測手段112による二次電池セル2の充放電容量の計測と、を同時に行うような、オペランド計測/リアルタイム計測/実時間計測が可能である。
【0064】
なお、計測手段11は、領域200を透過しない場合の計測用光111cの光強度(入射光強度に相当。)を計測可能である構成であってよい。当該光強度は、領域200の光学密度の計測(決定)の用に適宜、供され得る。当該光強度は、受光素子111bにより計測されてよく、受光素子111bとは異なる別の受光素子により計測されてよい。
【0065】
〈評価手段12〉
評価手段12は、計測手段11により計測された光学密度に少なくとも基づき二次電池セル2の充放電状態を評価する。
【0066】
本明細書中の説明における「充放電状態」とは、例として、二次電池セル2の残存性能(パフォーマンスに相当。)を示す。また、充放電状態とは、例として、二次電池セル2の電気特性を示す。また、充放電状態とは、例として、二次電池セル2の充放電容量・内部抵抗・開放電圧の何れか又は組み合わせを示す。また、充放電状態とは、例として、充電時・放電時・消費時の残存容量に相当する充放電レベルを示す。また、充放電状態とは、例として。二次電池セル2の劣化又は故障の程度・状態を示す。また、充放電状態とは、例として、二次電池セル2のサイクル寿命を示す。
【0067】
評価手段12は、計測手段11により計測された充放電容量及び光学密度に基づき充放電容量-光学密度特性(C-O.D.特性)を決定する。
【0068】
評価手段12は、計測手段11により計測された異なるサイクル数の光学密度及び二次電池セル2の充放電容量に基づきC-O.D.特性のサイクル特性を決定し、C-O.D.特性のサイクル特性における光学密度変化量(ΔO.D.)に基づき二次電池セル2の電圧降下量(ΔV)の評価を行う。このとき、評価手段12は、二次電池セル2のΔO.D.-ΔV特性にさらに基づき、当該ΔVの評価を行う。
【0069】
本明細書中の説明における「ΔO.D.」は、例として、二次電池セル2(サイクル数=1)において所定の充放電容量を呈するときの光学密度と、二次電池セル2(サイクル数≧2)において当該所定の充放電容量を呈するときの光学密度と、の差分に相当する。当該所定の充放電容量は、例として、0mAh/gである。また、本明細書中の説明における「ΔV」は、例として、二次電池セル2(サイクル数=1)における開放電圧と、二次電池セル2(サイクル数≧2)における開放電圧と、の差分に相当する。
【0070】
評価手段12は、C-O.D.特性のサイクル特性に基づき二次電池セル2の劣化診断・故障予測・サイクル寿命評価の何れかを含む充放電状態の評価を行ってよい。具体的には、評価手段12は、C及び/又はΔO.D.がそれぞれ所定の閾値を超過した場合、二次電池セル2が所定の状態(例として、劣化状態・故障状態。)に相当する、と評価する構成であってよい。当該所定の閾値は、領域200に含まれる材料の光学特性(例として、光学密度の波長依存性。)に基づき予め設定される、と把握することができる。
【0071】
評価手段12は、サイクル数-ΔO.D.特性における勾配に基づき二次電池セル2の劣化診断・故障予測・サイクル寿命評価の何れかを含む充放電状態の評価を行ってよい。具体的には、評価手段12は、当該勾配が所定の閾値を超過した場合、二次電池セル2が所定の状態(例として、劣化状態・故障状態。)に相当する、と評価する構成であってよい。当該所定の閾値は、領域200に含まれる材料の光学特性(例として、光学密度の波長依存性。)に基づき予め設定される、と把握することができる。
【0072】
評価手段12は、C-O.D.特性に関連する各種パラメータ(例として、C・O.D.・ΔO.D.・サイクル数-ΔO.D.特性における勾配。)の少なくとも1つを入力値とするような予測モデルに基づき当該評価を行う構成であってよい。当該予測モデルは、例として、統計モデルであってよい。また、当該予測モデルは、例として、深層学習モデル等の機械学習モデルであってよく、訓練データの有無に制限はない。
【0073】
評価手段12は、ΔO.D.-ΔV特性における勾配に基づき二次電池セル2の劣化診断・故障予測・サイクル寿命評価の何れかを含む充放電状態の評価を行ってよい。具体的には、評価手段12は、当該勾配が所定の閾値を超過した場合、二次電池セル2が所定の状態(例として、劣化状態・故障状態。)に相当する、と評価する構成であってよい。当該所定の閾値は、領域200に含まれる材料の光学特性(例として、光学密度の波長依存性。)に基づき予め設定される、と把握することができる。
【0074】
評価手段12は、ΔO.D.-ΔV特性に基づき、二次電池セル2における所定のΔV到達の蓋然性を判定することで、二次電池セル2の劣化診断・故障予測・サイクル寿命評価の何れかを含む充放電状態の評価を行ってよい。具体的には、評価手段12は、例として、ΔO.D.-ΔV特性において近似関数を適用することでフィッティングカーブを描画し当該蓋然性に係る判定を行ってよい。また、評価手段12は、例として、ΔO.D.-ΔV特性においてベイズ推定を行うことで当該蓋然性に係る判定を行ってよい。ここで、評価手段12は、当該蓋然性が所定の閾値を超過した場合、二次電池セル2が所定の状態(例として、劣化状態・故障状態。)に相当する、と評価する構成であってよい。
【0075】
評価手段12は、ΔO.D.-ΔV特性に関連する各種パラメータの少なくとも1つを入力値とするような予測モデルに基づき当該評価を行う構成であってよい。当該予測モデルは、例として、統計モデルであってよい。また、当該予測モデルは、例として、深層学習モデル等の機械学習モデルであってよく、訓練データの有無に制限はない。
【0076】
本明細書中の説明における「サイクル寿命評価」とは、二次電池セル2における充放電可能回数(サイクル回数に相当。)の残り回数を予測・推定し定量化することを指す。
【0077】
図2に例示されるように、本発明の一実施形態におけるBMのフローチャートは、以下の複数のステップを含む。先ず、計測手段11は、二次電池セル2の領域200における光学密度を計測する。次に、二次電池セル2の充放電容量を計測する。次に、評価手段12は、C-O.D.特性を決定する。次に、計測手段11による計測結果に基づき評価手段12は、C-O.D.特性のサイクル特性を決定する。次に、評価手段12は、当該サイクル特性に基づきΔO.D.を決定する。最後に、評価手段12は、ΔO.D.に基づきΔVを決定し、二次電池セル2の充放電状態を評価する。
【0078】
図3に例示されるように、実施形態1の領域200は、活物質・集電体21・電解質23のそれぞれの少なくとも一部を含む。また、領域200は、バインダ・セパレータ・導電助剤・固体電解質界面(SEI)層等の、二次電池を構成する部材のそれぞれの少なくとも一部をさらに含んでよい。また、実施形態1の領域200は、正極活物質22及び負極活物質24の何れかを当該活物質として含む態様をとってよい。
【0079】
《実施形態2》
本明細書は、以下に、本発明の実施形態2について説明する。本明細書は、実施形態2について、他の実施形態と共通する構成の説明を省略し、同一の符号を適用する。
【0080】
図4に例示されるように、実施形態2の領域200は、正極側の集電体21及び正極活物質22のそれぞれの一部を含む。ここで、二次電池セル2は、空隙25を有する。実施形態2の空隙25は、二次電池セル2の一部において設けられてよい。
【0081】
実施形態2の領域200は、例として、正極活物質22の一部を含んでよい。実施形態2の領域200は、集電体21・正極活物質22・電解質23・負極活物質24の少なくとも1つのそれぞれの一部を含む構成をとり得る。
【0082】
実施形態2の評価手段12は、領域200が正極活物質22及び負極活物質24の何れかを含み電解質23を含まない場合、領域200の光学密度に基づき領域200に含まれる活物質のゲストカチオンM+(例としてLi+)の量を評価し当該量に基づき当該活物質における電荷量を評価する。このとき、評価手段12は、例として、当該活物質の光学特性にさらに基づき当該電荷量を評価する。
【0083】
なお、実施形態2の評価手段12は、領域200における活物質の電荷量に基づき充放電容量を決定し、二次電池セル2の充放電状態を評価する構成であってよい。
【0084】
《実施形態3》
本明細書は、以下に、本発明の実施形態3について説明する。本明細書は、実施形態3について、他の実施形態と共通する構成の説明を省略し、同一の符号を適用する。
【0085】
図5に例示されるように、実施形態3の領域200は、正極活物質22及び負極活物質24の何れかの一部を含む。実施形態3の計測手段11は、領域200に対して集電体21及び活物質の積層方向Xと直交する直交方向Yに沿って計測用光111cを入射する。
【0086】
実施形態3の評価手段12は、領域200の光学密度に基づき領域200に含まれる活物質の電荷量を評価する。このとき、評価手段12は、例として、当該活物質の光学特性にさらに基づき当該電荷量を評価する。
【0087】
なお、実施形態3の評価手段12は、領域200における活物質の電荷量に基づき充放電容量を決定し、二次電池セル2の充放電状態を評価する構成であってよい。
【0088】
《実施形態4》
本明細書は、以下に、本発明の実施形態4について説明する。本明細書は、実施形態4について、他の実施形態と共通する構成の説明を省略し、同一の符号を適用する。
【0089】
図6に例示されるように、実施形態4の領域200は、正極活物質22及び負極活物質24の何れかの一部を少なくとも含む。実施形態2の領域200は、集電体21及び/又は電解質23の一部をさらに含む構成をとり得る。
【0090】
実施形態4の計測手段11は、領域200に対して集電体21及び活物質の積層方向Xと直交する直交方向Yに沿って計測用光111cを入射する。
【0091】
実施形態4における計測用光111cのスポット径・アラインメント等は、計測対象としての領域200に含まれる二次電池の部材の種数に依って調整され得る。
【0092】
実施形態4の評価手段12は、領域200が正極活物質22及び負極活物質24の何れかを含み電解質23を含まない場合、領域200の光学密度に基づき領域200に含まれる活物質の電荷量を評価する。このとき、評価手段12は、例として、当該活物質の光学特性にさらに基づき当該電荷量を評価する。
【0093】
なお、実施形態4の評価手段12は、領域200における活物質の電荷量に基づき充放電容量を決定し、二次電池セル2の充放電状態を評価する構成であってよい。
【0094】
《実施形態5》
本明細書は、以下に、本発明の実施形態5について説明する。本明細書は、実施形態5について、他の実施形態と共通する構成の説明を省略し、同一の符号を適用する。
【0095】
図7に例示されるように、実施形態5における光学特性計測では、光学特性計測手段111は、光源111aから計測用光111cを領域200に対して照射した際に生じる散乱光を受光素子111bで検出する。このとき、受光素子111bは、当該散乱光の散乱光強度を計測可能である。なお、光学特性計測手段111は、レイリー散乱光を除去可能な既知又は慣用のフィルターをさらに備える構成であってよい。
【0096】
なお、実施形態5における光学特性計測手段111は、領域200における散乱光強度に加えて、領域200における透過光強度を計測する構成であってよい。
【0097】
本発明の一実施形態における計測手段11は、領域200の光学密度に代えて/加えて、散乱光強度を計測する構成であってよい。また、本発明の一実施形態における評価手段12は、領域200の光学密度に代えて/加えて、散乱光強度に基づき二次電池セル2の充放電状態を評価する構成であってよい。ここで、光学特性計測手段111は、透過光強度を計測するための受光素子111b、及び/又は、散乱光強度を計測するための受光素子111bを備える構成であってよい。
【0098】
本発明の一実施形態における計測手段11は、複数の二次電池セル2に亘る領域200に対して計測用光111cを入射し領域200の光学密度を計測する構成であってよい。
【0099】
本発明の一実施形態における計測手段11は、例として、領域200に含まれる材料の少なくとも一部の光学特性に基づき計測用光111cの波長を採用・選択し得る。
【0100】
本発明の一実施形態における評価手段12は、既知又は慣用のコンピュータ121及びデータベース122を含む。
【0101】
コンピュータ121は、命令セットを実行可能な既知又は慣用のプロセッサを有する演算装置、命令セットを記憶可能な既知又は慣用の揮発性メモリを有する主記憶装置、プログラム等を記録可能な既知又は慣用の記録媒体を有する補助記憶装置、及び、バスインタフェースを少なくとも有する。評価手段12の作用効果は、当該プロセッサにより実現される、と把握することができる。また、コンピュータ121は、入力装置・出力装置・通信装置をさらに備えてよい。
【0102】
データベース122は、コンピュータ121が有するローカルストレージ(補助記憶装置に相当。)、又は、コンピュータ121と相互通信可能な外部ストレージである。また、データベース122は、計測手段11により計測された計測パラメータを格納し得る。また、データベース122は、評価手段12により決定された各種特性、及び/又は、評価手段12により評価された充放電状態を、データ1200の態様で格納する。
【0103】
本発明の一実施形態におけるコンピュータ121は、計測手段11と協調して、二次電池セル2に係る計測を行う手段を有する。当該手段は、例として、計測手段11の少なくとも一部における制御を行う構成であってよい。また、当該手段は、光学特性計測手段111による計測と、電気特性計測手段112による計測と、を同期させる構成であってよい。当該制御は、例として、計測用光111cのアラインメント・走査等の制御を指す。また、当該制御は、例として、充放電特性の計測における充放電電流の調整を指す。
【0104】
本発明の一実施形態における計測手段11及び/又は評価手段12が得る、各種パラメータ・特性等は、二次電池セル2の制御の用に供され得る、と把握することができる。
【0105】
本発明の一実施形態における計測手段11及び/又は評価手段12の少なくとも一部の構成は、二次電池セル2を電源とする態様をとってよい。
【0106】
本発明の一実施形態における計測手段11及び評価手段12は、同一の筐体に収納された装置群によりその作用効果の少なくとも一部が実現されてよい。また、計測手段11及び評価手段12は、同一のシステムとしてパッケージングされてよい。なお、当該筐体・システムは、その内部に二次電池セル2を有する構成であってよい。
【0107】
本発明の一実施形態における負極活物質24は、当該負極活物質24が領域200に含まれる場合、好ましくは、上記透明電極材料により構成される。
【0108】
《実施例1》
本明細書は、以下に、本発明の実施例1について説明する。本明細書は、実施例について、本発明の実施形態と共通する構成の説明を省略し、同一の符号を適用する。
【0109】
実施例1における二次電池セル2は、NESAガラス(集電体21に相当。)上にスパッタリング法により成膜された400nm膜厚のNb2O5薄膜(正極活物質22に相当。)と、空隙(空隙25と異なる。)を有するセパレータと、Li片(負極活物質24に相当。)と、パイレックス(登録商標)ガラスと、が積層方向Xに沿って重ね合わされてなる構造物である。なお、当該空隙は、電解液であるLiC104-PC(電解質23に相当。)が充填されている。
【0110】
実施例1におけるNb2O5薄膜は、充放電に伴いゲストカチオンLi+の貯蔵量が変化するLixNb2O5薄膜である、と把握することができる。なお、実施例1におけるNb2O5薄膜は、成膜後にアニール時間60minの条件下で熱処理されている。
【0111】
実施例1における領域200は、集電体21・正極活物質22・電解質23・負極活物質24を含む、と把握することができる。
【0112】
実施例1における計測手段11は、光源111aから領域200に対して集電体21及び活物質の積層方向Xに沿って計測用光111cを入射する。また、計測手段11は、領域200を透過した計測用光111cをダブルビーム分光光度計(受光素子111bに相当。)において受光することで入射光強度及び透過光強度を計測し、領域200における光学密度の計測を行う。また、計測手段11は、二次電池セル2の充放電特性を、Ar雰囲気・充放電電流10μA・雰囲気温度500℃の条件下で計測する。
【0113】
図8に示すように、実施例1における二次電池セル2(特に、Li
xNb
2O
5薄膜。)の光学特性は、光学密度の波長依存性及びLi量(x)依存性を呈する。
【0114】
実施例1の光学特性では、x=0.0-1.0において、Li量(x)の増加に伴う可視光領域における光学密度の増加を把握することができる。また、光学特性では、x<1.0において、可視光領域と比較して長波長側の領域における光学密度の増加が飽和傾向にある、と把握することができる。また、当該光学特性では、x>1.0において、可視光領域と比較して短波長側(例として、400-500nm波長帯。)における光学密度はLi量(x)に依存して増加傾向にある、と把握することができる。
【0115】
このような光学特性を鑑みて、本発明の一実施形態は、二次電池セル2を構成する活物質の光学密度におけるゲストカチオンM+量依存性等を考慮した、活物質を含む領域200の充放電状態を評価可能なBM技術を提供する、と把握することができる。
【0116】
図9及び
図10のサイクル特性は、それぞれ、実施例1における二次電池セル2の充放電特性、及び、実施例1における二次電池セル2のC-O.D.特性を示す。なお、図中の「1・2・5」はサイクル回数を示す。
図9及び
図10によれば、二次電池セル2における充放電特性及びC-O.D.特性のそれぞれが、各特性における縦軸パラメータの増減の観点において対応している、と把握することができる。
【0117】
図11に示すように、実施例1における二次電池セル2のΔO.D.-ΔV特性によれば、ΔO.D.(サイクル特性における光学密度変化量)及びΔV(サイクル特性における電圧降下量)は正の相関関係を有する、と把握することができる。なお、ΔO.D.-ΔV特性におけるカーブ序盤・終盤の急激な上昇は、活物質における分極によるものでありゲストカチオンLi
+の移動によるものではない、と把握することができる。
【0118】
このような特性を鑑みて、本発明の一実施形態は、二次電池セル2を構成する活物質を含む領域200の光学密度に基づき、二次電池セル2の劣化診断・故障予測等を含む充放電状態の評価を可能とするBM技術を提供する、と把握することができる。
【0119】
《実施例2》
本明細書は、以下に、本発明の実施例2について説明する。本明細書は、実施例について、本発明の実施形態・実施例と共通する構成の説明を省略し、同一の符号を適用する。
【0120】
実施例2における二次電池セル2は、Nb2O5薄膜に代えて、V2O5薄膜を正極活物質22としている。また、実施例1におけるV2O5薄膜は、充放電に伴いゲストカチオンLi+の貯蔵量が変化するLixV2O5薄膜である、と把握することができる。なお、当該V2O5薄膜は、実施例1と同様の手法、又は、実施例1に相当する手法により成膜される。
【0121】
図12に示すように、実施例2における二次電池セル2(特に、Li
xV
2O
5薄膜。)の光学特性は、光学係数の波長依存性及びLi量(x)依存性を呈する。
【0122】
実施例2における正極活物質22の光学特性は、波長帯によってLi量(x)の増加に伴う光学密度の増減の傾向が異なる、と把握することができる。
【0123】
実施例2における正極活物質22の光学特性では、例として、≧500nmの波長帯においてLi量(x)の増加によって着色中心の形成に伴う光学密度の増大傾向がある、と把握することができる。しかしながら、当該光学特性では、≦500nmの波長帯(紫外光波長帯を含む。)においてLi量(x)の増加によって基礎吸収端の短波長側への移動に伴う光学密度の減少傾向がある、と把握することができる。なお、当該着色中心は、タングステンブロンズ様の点欠陥状の着色中心に相当し可視光域におけるブロードな吸収帯の形成に寄与する、と把握することができる。なお、当該基礎吸収端は、光学特性における短波長域の立ち上がりに相当する。
【0124】
このような光学特性を鑑みて、本発明の一実施形態は、二次電池セル2を構成する活物質の光学密度における波長選択性・サイクル数依存性等を考慮した、活物質を含む領域200の充放電状態を評価可能なBM技術を提供する、と把握することができる。
【0125】
本発明によれば、電子光融合型の新規なBM技術の提供を実現することができる。
【0126】
また、本発明によれば、二次電池の充放電状態に係る簡便な評価を可能とする、新規なBM技術の提供を実現することができる。
【0127】
また、本発明によれば、二次電池の充放電状態に係る非侵襲・非接触・非破壊な評価を可能とする、新規なBM技術の提供を実現することができる。
【0128】
また、本発明によれば、二次電池の充放電状態に係る、リアルタイム性に富んだ評価を可能とする、新規なBM技術の提供を実現することができる。
【符号の説明】
【0129】
1 :BMシステム
2 :二次電池セル
11 :計測手段
12 :評価手段
21 :集電体
22 :正極活物質
23 :電解質
24 :負極活物質
25 :空隙
111 :光学特性計測手段
111a :光源
111b :受光素子
111c :計測用光
112 :電気特性計測手段
121 :コンピュータ
122 :データベース
200 :領域
X :積層方向
Y :直交方向