(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-21
(45)【発行日】2023-06-29
(54)【発明の名称】ダイヤフラムバルブおよびその監視方法
(51)【国際特許分類】
F16K 37/00 20060101AFI20230622BHJP
F16K 7/12 20060101ALI20230622BHJP
F16J 3/02 20060101ALI20230622BHJP
【FI】
F16K37/00 G
F16K7/12 A
F16K7/12 Z
F16J3/02 A
F16J3/02 Z
(21)【出願番号】P 2020527275
(86)(22)【出願日】2019-05-17
(86)【国際出願番号】 JP2019019635
(87)【国際公開番号】W WO2020003799
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2022-04-15
(31)【優先権主張番号】P 2018125652
(32)【優先日】2018-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】110002893
【氏名又は名称】弁理士法人KEN知財総合事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 裕也
(72)【発明者】
【氏名】丹野 竜太郎
(72)【発明者】
【氏名】土口 大飛
(72)【発明者】
【氏名】中村 伸夫
(72)【発明者】
【氏名】篠原 努
【審査官】篠原 将之
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-317658(JP,A)
【文献】特表2013-500455(JP,A)
【文献】特開平02-309079(JP,A)
【文献】特開2004-019792(JP,A)
【文献】特開昭57-128902(JP,A)
【文献】国際公開第2014/196313(WO,A1)
【文献】特開平06-101774(JP,A)
【文献】特開平08-285090(JP,A)
【文献】特開2004-176828(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 37/00
F16K 7/12
F16J 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流通する流路と、当該流路の途中で外部に開口する開口部とを画定するバルブボディと、
前記開口部を覆いつつ前記流路と外部とを隔て、かつ、前記流路の断面積を変更する可撓性隔壁部材と、
前記可撓性隔壁部材の前記流路側とは反対の裏面側に配置された可撓性支持部材と、
前記バルブボディに前記可撓性隔壁部材および可撓性支持部材の周縁部を介して固定されるハウジングと、
前記可撓性支持部材および前記ハウジングの内面が画定する空間内の雰囲気の
湿度またはその変化を検出する
湿度センサと、を有し
、
前記湿度センサは、前記可撓性支持部材とコンプレッサとの間に配置されている、ダイヤフラムバルブ。
【請求項2】
前記可撓性隔壁部材は、前記可撓性支持部材よりも耐用期間が長くなるように設計されている、請求項1に記載のダイヤフラムバルブ。
【請求項3】
前記可撓性隔壁部材は、前記可撓性支持部材の形成材料とは、特定のガスに対する透過率が異なる材料で形成されている、請求項1または2に記載のダイヤフラムバルブ。
【請求項4】
前記可撓性隔壁部材は、水蒸気を透過する材料で形成され、前記可撓性支持部材は水蒸気を透過しない材料で形成されている、請求項1または2に記載のダイヤフラムバルブ。
【請求項5】
前記湿度センサは、
前記コンプレッサ表面に配置され
ている、請求項
1に記載のダイヤフラムバルブ。
【請求項6】
前記可撓性隔壁部材は、ポリマーで形成されている、請求項1ないし
5のいずれかに記載のダイヤフラムバルブ。
【請求項7】
前記可撓性隔壁部材は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)で形成されている、請求項
6に記載のダイヤフラムバルブ。
【請求項8】
前記可撓性支持部材は、エラストマーで形成されている、請求項1ないし
7のいずれかに記載のダイヤフラムバルブ。
【請求項9】
前記可撓性支持部材は、天然ゴム、ニトリルゴム、スチレンゴム、ブタジエンゴム、イソブチレン合成ゴム、ポリクロロプレンゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム、シリコンゴム、ポリウレタンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)からなるグループから選択された材料で形成されている、請求項
8に記載のダイヤフラムバルブ。
【請求項10】
流体が流通する流路と、当該流路の途中で外部に開口する開口部とを画定するバルブボディと、前記開口部を覆いつつ前記流路と外部とを隔て、かつ、前記流路の断面積を変更する可撓性隔壁部材と、
前記可撓性隔壁部材の前記流路側とは反対の裏面側に配置された可撓性支持部材と、前記バルブボディに前記可撓性隔壁部材および可撓性支持部材の周縁部を介して固定されるハウジングと、を有するダイヤフラムバルブの監視方法であって、
前記可撓性支持部材および前記ハウジングの内面が画定する空間内の雰囲気の
湿度またはその変化を、
前記可撓性支持部材とコンプレッサとの間に配置されている湿度センサを用いて検出すること
と、
前記検出結果に基づいて異常を判断すること、を有するダイヤフラムバルブの監視方法。
【請求項11】
流体が流通する流路と、当該流路の途中で外部に開口する開口部とを画定するバルブボディと、前記開口部を覆いつつ前記流路と外部とを隔て、かつ、前記流路の断面積を変更する可撓性隔壁部材と、
前記可撓性隔壁部材の前記流路側とは反対の裏面側に配置された可撓性支持部材と、前記バルブボディに前記可撓性隔壁部材および可撓性支持部材の周縁部を介して固定されるハウジングと、を有するダイヤフラムバルブの監視方法であって、
前記可撓性支持部材および前記ハウジングの内面が画定する空間内の雰囲気の状態またはその変化を検出すること
と、
前記検出結果に基づいて異常を判断すること
と、
前記検出の開始から終了までの間に、前記ダイヤフラムバルブに流通させる流体を水溶液と高温の水蒸気との間で切り替えること、を有する、ダイヤフラムバルブの監視方法。
【請求項12】
流体が流通する流路と、当該流路の途中で外部に開口する開口部とを画定するバルブボディと、前記開口部を覆いつつ前記流路と外部とを隔て、かつ、前記流路の断面積を変更する可撓性隔壁部材と、
前記可撓性隔壁部材の前記流路側とは反対の裏面側に配置された可撓性支持部材と、前記バルブボディに前記可撓性隔壁部材および可撓性支持部材の周縁部を介して固定されるハウジングと、を有するダイヤフラムバルブの監視方法であって、
前記可撓性支持部材および前記ハウジングの内面が画定する空間内の雰囲気の状態またはその変化を検出すること
と、
前記検出結果に基づいて異常を判断すること
と、
前記ダイヤフラムバルブに流通させる流体を水溶液と高温の水蒸気との間で切り替え、
当該切り替え後に、空間内の雰囲気の状態またはその変化を検出し、
所定条件を満たしたところで前記検出を終了すること、を有する、ダイヤフラムバルブの監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイヤフラムバルブおよびその監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイヤフラムバルブは、バイオ工学、製薬、化学、食品加工、飲料、化粧品、及び半導体業界で多用されている。これらの業界は、バルブ、作業場、及び周辺環境内において製品汚染や漏洩を防ぐバルブを必要とする。
ダイヤフラムバルブのダイヤフラムはゴム製等各種存在する。ダイヤフラムに要求される変形量や耐腐食性やバルブを流通する流体の汚染を防ぐ等の観点から、接液側に配置されるフッ素系樹脂等のポリマー製の可撓性隔壁部材と、この可撓性隔壁部材の接液側とは反対の裏面側に配置される緩衝(クッション)を主目的とするエラストマー製の可撓性支持部材とで構成されるいわゆるツーピースタイプのダイヤフラムが知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
ツーピースタイプのダイヤフラムは、清浄度や耐久性の点では、ゴム製のダイヤフラムより優れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2013-500455号公報
【文献】特開平08-303617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1,2は、接液側の可撓性隔壁部材の破損を検出するセンサを設ける技術を開示している。
しかしながら、この技術では、接液側の可撓性隔壁部材の破損を検知したときには、ダイヤフラムバルブ内の流体が外部に既に漏出してしまっている可能性がある。
【0005】
本発明の目的の一つは、ダイヤフラムの破損によるダイヤフラムバルブ内の流体が外部に漏出するのを未然に回避できるダイヤフラムバルブおよびこのダイヤフラムバルブの監視方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のダイヤフラムバルブは、流体が流通する流路と、当該流路の途中で外部に開口する開口部とを画定するバルブボディと、
前記開口部を覆いつつ前記流路と外部とを隔て、かつ、前記流路の断面積を変更する可撓性隔壁部材と、
前可撓性隔壁部材の前記流路側とは反対の裏面側に配置された可撓性支持部材と、
前記バルブボディに前記可撓性隔壁部材および可撓性支持部材の周縁部を介して固定されるハウジングと、
前記可撓性支持部材および前記ハウジングの内面が画定する空間内の雰囲気の状態またはその変化を検出するセンサと、を有する。
【0007】
好適には、前記可撓性隔壁部材は、前記可撓性支持部材よりも耐用期間が長くなるように設計されている。
【0008】
前記可撓性隔壁部材は、前記可撓性支持部材の形成材料とは、特定のガスに対する透過率が異なる材料で形成されている、構成を採用できる。
特定的には、前記可撓性隔壁部材は、水蒸気を透過する材料で形成され、前記可撓性支持部材は水蒸気を透過しない材料で形成されている、構成を採用できる。
この場合に、前記センサは、湿度センサを含む、構成を採用できる。
【0009】
代替的には、前記センサは、前記雰囲気中の特定ガスの濃度またはその変化、もしくは、前記雰囲気中の湿度又はその変化を検出する、ことも可能である。
【0010】
好適には、前記可撓性隔壁部材は、ポリマーで形成され、さらに好適には、前記可撓性隔壁部材は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)で形成されている。
【0011】
好適には、前記可撓性支持部材は、エラストマーで形成されている。さらに好適には、前記可撓性支持部材は、天然ゴム、ニトリルゴム、スチレンゴム、ブタジエンゴム、イソブチレン合成ゴム、ポリクロロプレンゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム、シリコンゴム、ポリウレタンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)からなるグループから選択された材料で形成されている。
【0012】
本発明のダイヤフラムの監視方法は、流体が流通する流路と、当該流路の途中で外部に開口する開口部とを画定するバルブボディと、前記開口部を覆いつつ前記流路と外部とを隔て、かつ、前記流路の断面積を変更する可撓性隔壁部材と、前可撓性隔壁部材の前記流路側とは反対の裏面側に配置された可撓性支持部材と、前記バルブボディに前記可撓性隔壁部材および可撓性支持部材の周縁部を介して固定されるハウジングと、を有するダイヤフラムバルブの監視方法であって、
前記可撓性支持部材および前記ハウジングの内面が画定する空間内の雰囲気の状態またはその変化を検出すること、
前記検出結果に基づいて異常を判断すること、を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ダイヤフラムの破損によるダイヤフラムバルブ内の流体の外部漏出を未然に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第一の実施形態に係るダイヤフラムバルブの外観斜視図。
【
図3】流路が閉鎖された状態の、
図1のダイヤフラムバルブの縦断面図。
【
図4】流路が開放された状態の、
図1のダイヤフラムバルブの縦断面図。
【
図5】可撓性支持部材が破損した状態を説明する拡大断面図。
【
図6】処理回路における第一の監視方法を示すフローチャート。
【
図7】処理回路における第二の監視方法を示すフローチャート。
【
図8】本発明の第二の実施形態に係るダイヤフラムバルブの縦断面図。
【
図11】本発明の第三の実施形態に係るダイヤフラムバルブの要部の拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。説明において同様の要素には同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
図1は本発明の第一の実施形態に係るダイヤフラムバルブ1の外観斜視図であり、
図2は
図1のダイヤフラムバルブ1の分解斜視図、
図3は流路が閉鎖された状態にあるダイヤフラムバルブ1の縦断面図、
図4は流路が開放された状態にあるダイヤフラムバルブ1の縦断面図である。
【0016】
ダイヤフラムバルブ1は、バルブボディ10と、ダイヤフラム20と、アクチュエータ30と、アクチュエータ30に連結されたコンプレッサ50と、コンプレッサ50を駆動するピストン33と、アクチュエータ30に固定された後述するハウジング41をバルブボディ10に固定するクランパ80とを備えている。
【0017】
バルブボディ10は、金属合金製であり、流路11と、この流路11の途中で外部に開口する開口部12とを備えており、流路11の両端部に図示しない管がそれぞれ接続される。
図3に示すように、バルブボディ10の流路11内には、後述する可撓性隔壁部材21が当接するシール面13が形成されている。
【0018】
ダイヤフラム20は、可撓性隔壁部材21と可撓性支持部材22とを有する。
可撓性隔壁部材21は、ポリマーで形成されている。本実施形態では、可撓性隔壁部材21は、特定ガスとして水蒸気を透過する、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)で形成されている。
図2や
図3に示すように、ダイヤフラム20はベルカップ形状を有する。可撓性隔壁部材21は、先端中心部を含む下側部分が厚肉部21aとなっており、これと連続して外周側部分が薄肉部21bとなっている。薄肉部21bの外周縁部は、バルブボディ10の開口部12の周縁部に形成された支持部12sと当接するように円環状のシール突起21cが形成されている。可撓性隔壁部材21のシール突起21cのさらに外側の外周縁部は、バルブボディ10の支持部に形成された凹状のガイド部によりガイドされる。可撓性隔壁部材21の接液面には、一本のシール突起21tが形成され(
図2,4参照)、可撓性隔壁部材21が流路11を閉鎖する際に、シール突起21tがシール面13に押し付けられることにより、流路11を遮断する。可撓性隔壁部材21の接液面とは反対側の裏面側の中心部には、金属製の連結部材25が係止する係止凹部21dが形成されている。連結部材25は、可撓性支持部材22を貫通し、その連結部25aによりコンプレッサ50に連結されている。
【0019】
可撓性支持部材22は、可撓性隔壁部材21の接液面とは反対側の裏面に対向して配置されている。可撓性支持部材22は可撓性隔壁部材21の摩耗、破損を防ぐことを主目的とするクッションとしての役割を果たす。可撓性支持部材22にはゴムやエラストマーが用いられ、例えば、耐熱性、耐寒性、屈曲性及び腐食性に優れた天然ゴム、ニトリルゴム、スチレンゴム、ブタジエンゴム、イソブチレン合成ゴム、ポリクロロプレンゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム、シリコンゴム、ポリウレタンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等を用いることができ、本実施形態では、特定ガスとして水蒸気を透過しないEPDMを用いて可撓性支持部材22を形成している。
可撓性支持部材22の外周縁部には、環状凸部22cが形成され、これが後述するハウジング41の下端部に固定された円環部材42の凹溝に嵌っている。
【0020】
アクチュエータ30は、有底円筒状のケーシング31と、ケーシング31の天井部分に設けられた上側支持プレート32と、ケーシング31の内周面31fにシール部材SL2を介してケーシング31内を移動自在に設けられたピストン33と、ピストン33に支持された下側支持プレート34と、ケーシング31の中心部に設けられピストン33と連結されるとともにケーシングの下部プレート40を貫通してバルブボディ10側に向けて延在するステム35と、下部プレート40の下面側に固定されたハウジング41と、ステム35の下端部に固定されたコンプレッサ50と、を有する。
上側支持プレート32とピストン33および下側支持プレート34との間には、2つのコイルばね38,39が設けられ、ピストン33を下部プレート40に向けて常時付勢している。上側支持プレート32には、複数の通気孔32aが形成され、ケーシング31内部と外部とを連通している。
ステム35の上端部の外周には、ガイド部材36および固定部材37が設けられており、ガイド部材36とステム35との間はシール部材SL1によりシールされている。
ケーシング31の外周面には、ケーシング31のピストン33と下部プレート40との間の空間に圧縮エアCAを供給し、あるいは、当該空間からエアを排出するためのエアポート43が設けられている。
【0021】
ハウジング41は、アクチュエータ30の下部プレート40に固定されており、ダイヤフラム20の可撓性支持部材22とともにコンプレッサ50を収容する収容空間SPを形成している。ハウジング41の収容空間SP内の内壁には、後述する湿度センサ100が設けられており、ハウジング41の外壁には、湿度センサ100と電気的に接続された処理回路を内蔵する回路ボックス110が固定されている。
ハウジング41の下端部には、円環部材42が一体固定されている。円環部材42は、バルブボディ10の支持部12sに可撓性隔壁部材21および可撓性支持部材22を介して、クランパ80により締結される。
クランパ80は、一対の半円形部材81と、各半円形部材81に設けられた連結孔部81aを貫通するボルトBTと、ボルトBTと螺合するナットNTとを有し、ボルトBTとナットNTの締結力を、円環部材42をバルブボディ10の支持部12sに押し付ける力に変換する。
【0022】
コンプレッサ50は、金属合金製であり、可撓性支持部材22に直接接触するとともに連結部材25と連結される押圧部51を有する。押圧部51の押圧面51fと可撓性支持部材22との接触状態は、コンプレッサ50の上下動により変化する。
【0023】
ここで、上記のダイヤフラムバルブ1の基本動作について説明する。
図3に示す状態では、コイルばね38,39がピストン33を下方に向けて付勢し、コンプレッサ50の押圧部51は可撓性支持部材22を介して可撓性隔壁部材21をバルブボディ10のシール面13に押し付け、バルブボディ10の流路11が閉鎖された状態にある。
この状態から、
図4に示すように、エアポート43を通じて圧縮エアCAをケーシング31内に供給すると、圧縮エアCAの圧力によりピストン33がコイルばね38,39の付勢力に抗して上方向に移動する。これに伴い、ステム35も上方向に移動する。これにより、コンプレッサ50の押圧部51から可撓性支持部材22を介して可撓性隔壁部材21に作用する押圧力が解放され、バルブボディ10の流路11が開放される。
ステム35が上方向に移動すると、
図4に示すように、可撓性隔壁部材21の薄肉部21bが屈曲するのが分かる。可撓性隔壁部材21の屈曲する薄肉部21bに対応して可撓性支持部材22も屈曲する。可撓性支持部材22の屈曲部22bは、
図3から分かるように、コンプレッサ50の押圧部51の押圧面51fにより押圧される部分でもある。可撓性支持部材22の屈曲部22bは、ダイヤフラムバルブ1の開閉動作に伴い、コンプレッサ50の押圧部51の押圧面51fからの押圧力の印加およびこの押圧力の解放後の屈曲が繰り返される。したがって、ダイヤフラム20の構成部材のうち、可撓性支持部材22の屈曲部22bが摩耗や破損に対して最も厳しい条件下に置かれる。
【0024】
本実施形態では、可撓性支持部材22の屈曲部22bが摩耗や破損に対して最も厳しい条件下に置かれることに着目し、可撓性隔壁部材21および可撓性支持部材22の設計段階において、可撓性支持部材22の屈曲部22bが最初に破損するように設計している。すなわち、可撓性支持部材22の耐用期間が可撓性隔壁部材21よりも短くなるように予め設計している。このような耐用期間の設定する設計は、可撓性隔壁部材21および可撓性支持部材22の形状、寸法、材料、印加される負荷、コンプレッサ50の材料、使用条件、各種の実験等を考慮することで容易に可能である。
【0025】
湿度センサ100は、ハウジング41の収容空間SP内の湿度又はその変化を検出し、電気信号として回路ボックス110内の処理回路に出力する。湿度センサ100としては周知のものを採用できる。
回路ボックス110内の処理回路は、図示しないが、プロセッサ、入出力回路、通信回路メモリ等のハードウエアと所要のソフトウエアで構成される。
【0026】
次に、
図5および
図6を参照して、本実施形態に係るダイヤフラムバルブ1の第一の監視方法について説明する。
例えば、水溶液Asが流通するダイヤフラムバルブ1の流路11においては、水溶液Asの一部の水が気化して水蒸気が形成される。この水蒸気の一部は、可撓性隔壁部材21を形成するPTFEを透過するが、可撓性支持部材22を形成するEPDMは水蒸気を透過しないので、ハウジング41の収容空間SP内の湿度は大きくは変動しない。
【0027】
ダイヤフラムバルブ1の開閉動作を繰り返すと、上記した可撓性支持部材22の屈曲部22bの摩耗劣化が進み、
図5に示すように、最初に、可撓性支持部材22の屈曲部22bに破損部BKが発生する。
破損部BKが発生すると、可撓性支持部材22を形成するEPDMにより収容空間SPへの侵入が食い止められていた水蒸気VPは、可撓性支持部材22の破損部BKを通じて収容空間SPに侵入する。この結果、ハウジング41の収容空間SP内の湿度は急に上昇する。
本実施形態では、この可撓性支持部材22の破損部BKにより生じる収容空間SP内の湿度変動を検知することにより、ダイヤフラムバルブ1の異常を検出する。
【0028】
具体的には、
図6に示すように、回路ボックス110内の処理回路は、所定のサンプリング時間間隔で、湿度センサ100からの電気信号に基づいて湿度を検出している(ステップS1)。検出された湿度データは、メモリに記憶される(ステップS2)。
処理回路では、記録されたデータを用いて異常検出処理を実行する。
異常判断処理(ステップS3)では、メモリに記憶されたハウジング41の収容空間SP内の湿度データの変動から異常を判断するが、平均化処理や外部環境の湿度情報を参照するなどして、検出精度を高めることができる。収容空間SP内の湿度の変動を精度よく検出するための処理であれば、あらゆる処理を採用できる。
処理回路では、異常かどうかを判断し(ステップS4)、異常でない場合は、上記ステップS1~S3の処理を繰り返す。異常と判断した場合には、アラームを出力する(ステップS5)。例えば、ダイヤフラムバルブ1からアラーム信号を無線信号で出力し、パーソナルコンピュータ等で構成される監視装置でこれを受信する。
【0029】
次に、第二の監視方法を、
図5および
図7を参照して説明する。
第二の監視方法では、ダイヤフラムバルブ1を流通させる流体を水溶液Asと高温の水蒸気との間で切り替えた際の、湿度センサ100で検出した湿度データの変化から、異常を判断する。
図5のように可撓性支持部材22に破損部BKが存在する場合、上述の通り湿度センサ100は外気よりも高い湿度を検出するものの、破損部BKの大きさが一定の場合その湿度はある定常値に収束する。これは、収容空間SPが外気に対して呼吸孔を通じて水分を一部放出していることに起因する。ここで、流体を水溶液から高温の水蒸気に切り替えると、高温の水蒸気は水溶液よりも蒸気圧が高いため、破損部BKを通じて収容空間SPに送り込まれる水分量が増加し、湿度センサ100の検出する湿度が上昇する。一方、破損部BKが存在しない場合は、収容空間SP内の湿度は流体の切り替えに関わらずほぼ一定の値を保つ。この違いを検出することで、破損部BKの有無やその大きさを検出できる。
【0030】
具体的な手順について
図7を参照して説明する。
まず、回路ボックス110へ測定開始の信号が送られ、回路ボックス110は湿度センサ100で湿度を検出して、所定のサンプリング間隔で湿度データをメモリに記憶する動作を開始する(ステップS11)。
次に、ダイヤフラムバルブ1に流す流体を水溶液から高温の水蒸気へと切り替える(ステップS12)。そして、流体が十分に切り替わるまで検出を続けた後、検出を終了する(ステップS13)。検出を終了するタイミングは、例えばステップS11の検出開始から所定の時間が経過するまでとする。
検出された湿度データを元に、処理回路でその異常を判断する(ステップS14)。具体的には、時間変化する湿度データM(t)に対して、x(t)=A+B・H(t-T
0)という関数でA,B,T
0を変数としてカーブフィッティングを行う。ここで、H(t)は単位ステップ関数である。カーブフィッティングにより得られたBの値の絶対値|B|が流体切り替えに伴う湿度変化であると推測でき、この湿度変化|B|が所定の値Bthより大きい場合に異常と判断される。
異常判断の結果に基づき(ステップS15)、異常と判断した場合には、アラームを出力する(ステップS16)。ステップS15で異常なしと判断された後もしくはステップS16でアラーム出力した後、処理回路は省電力状態である待機状態に移行し(ステップS17)、処理を終了する。
【0031】
この高温水蒸気へと流体を切り替えるプロセスは、主にサニタリー用途のバルブにおいて高温殺菌を目的として通常定期的に行われるプロセスであり、バルブの異常検出のための追加プロセスを設ける必要がない。
また、第二の監視方法ではデータを常に取得し続ける必要がない点で第一の監視方法と異なる。このため、回路ボックス110における消費電力を低減できる。特に、無線通信のために回路ボックス110が内蔵の電池で動作する場合、電池の交換頻度を低減できる。
【0032】
本実施形態では、可撓性隔壁部材21よりも先に可撓性支持部材22が破損するように予め設計しておき、可撓性支持部材22の破損によってハウジング41の収容空間SP内の雰囲気の湿度変動から異常を検出することで、可撓性隔壁部材21にも破損が生じてダイヤフラムバルブ1の流路11を流通する液体が外部に漏出するのを未然に防ぐことができる。
【0033】
第二実施形態
図8に、本発明の第二の実施形態に係るダイヤフラムバルブ2の縦断面図を示す。なお、第一の実施例と同様の部品については、同じ番号を付して説明を省略する。
【0034】
ダイヤフラムバルブ2は、収容空間SP中に平面型湿度センサ101を有する。
平面型湿度センサ101について、拡大断面図を
図9に、斜視図を
図10に示す。平面型湿度センサ101は、吸湿性を持つ感湿層101A(誘電体部)を挟んで、上部電極101Bと下部電極101Cが形成されており、平行平板構造を成している。感湿層101Aは親水性の高く吸湿に伴ってインピーダンスが変化する材料から構成され、例えばセルロース系のフィルムやポリイミドによって作られる。下部電極101Cは、例えば、小さい孔を多数持つ薄膜や多孔質構造を持つ薄膜として導電性物質で形成されている。これにより、感湿層101Aが収容空間SPの空気に対して水分を吸収・放出することできる。上部電極101Bは金属薄膜と、金属薄膜を絶縁コートするレジストからなり、収容空間SPの上部で下部プレート40に固定されている。
平面型湿度センサ101は、
図10に示すように、円盤型の平板形状の感湿部101aと、感湿部101aを回路ボックス110に接続するための接続部101wを含む。
感湿部101aは、中央部にステム35が貫通するための孔101hを有しており、収容空間SP内においてダイヤフラム20の中心の直上にステム35を配した上でダイヤフラム20の上部全体を覆う事ができるため、ダイヤフラム20の全域のどこで亀裂が発生した場合であっても後述の濡れ検知を確実に行うことができる。接続部101wは感湿部101aの外周から伸びる細長い長方形平板であり、回路ボックス110内の図示せぬコネクタにその一端が差し込まれて接続される。感湿部101aと接続部101wは一体で形成されていても良い。
【0035】
収容空間SPの湿度が上昇すると、感湿部101aの感湿層101Aが吸湿し、上部電極101Bと下部電極101Cの間のインピーダンスが変化し、回路ボックス110の回路によりインピーダンス測定を行って湿度を検知することができる。
また、感湿層101Aが液体の水によって濡れた場合、上部電極101Bと下部電極101Cの間のインピーダンスが極端に低下する。測定されたインピーダンスを所定の閾値と比較することで、平面型湿度センサ101の一部に液体の水による濡れがあるか判定する濡れ検知を行うことができる。これにより、ダイヤフラム20に破損が生じて、ダイヤフラムバルブ1を流通する水溶液Asが収容空間SPに漏れ出した事を検知できる。
【0036】
第三実施形態
図11に、本発明の第三の実施例であるダイヤフラムバルブの要部の拡大断面図を示す。なお、上述した各実施形態と同様の部品については、同じ番号を付して説明を省略する。
【0037】
本実施形態に係るダイヤフラムバルブは、そのコンプレッサ50の押圧面(下面)51fに沿うように、湿度センサ102を持つ。
図11は湿度センサ102の構造がわかりやすいように、コンプレッサ50の周辺を切り出して、湿度センサ102の厚みを強調した図である。
湿度センサ102は、吸湿性を持つ感湿層102A(誘電体部)を挟んで、上部電極102Bと下部電極102Cが形成されており、平行平板構造を成している。感湿層102Aは親水性の高く吸湿に伴ってインピーダンスが変化する材料から構成され、例えばセルロース系のフィルムやポリイミドによって作られる薄膜である。下部電極102Cは、例えば、小さい孔を多数持つ薄膜や多孔質構造を持つ薄膜であり、導電性物質で形成されている。これにより、感湿層102Aが収容空間SPの空気に対して水分を吸収・放出することできる。上部電極102Bはコンプレッサ50の表面に形成された導電性の薄膜であるが、金属で形成されるコンプレッサ50自身を上部電極102Bとして用いても良い。
上部電極102Bと下部電極102Cはそれぞれ回路ボックス110の回路に配線102w1,102w2により電気的に接続されている。
【0038】
収容空間SPの湿度が上昇すると、感湿層102Aが吸湿し、上部電極102Bと下部電極102Cの間のインピーダンスが変化する。回路ボックス110の回路により、上部電極102Bと下部電極102Cの間のインピーダンスを測定することにより、湿度を検知することができる。
また、感湿層102Aが液体の水によって濡れた場合、上部電極102Bと下部電極102Cの間のインピーダンスが極端に低下する。測定されたインピーダンスを所定の閾値と比較することで、平面型湿度センサ102の一部に液体の水による濡れがあるか判定する濡れ検知を行うことができる。これにより、ダイヤフラム20に破損が生じて、ダイヤフラムバルブ1を流通する水溶液Asが収容空間SPに漏れ出した事を検知できる。
湿度センサ102はダイヤフラム20の直近に、かつダイヤフラム20の上面を覆うように配置されるため、ダイヤフラム20の破損の場所に関わらず、即座に漏れを検知できる。
【0039】
上記実施形態では、センサとして湿度センサを用い、特定ガスを水蒸気とし、可撓性隔壁部材21を水蒸気透過性のPTFEで形成し、可撓性支持部材22を水蒸気不透過性のEPDMで形成したが、本発明はこれに限定されない。
例えば、ダイヤフラムバルブ1を流通する液体が特定ガスを発生させる場合、可撓性隔壁部材と可撓性支持部材とを、特定のガスに対する透過率が異なる材料で形成する。そして、湿度センサに代えて、特定ガスの濃度またはその変化を検出可能なセンサを収容空間SP内に設置する。このような構成を採用すれば、液体が外部に漏出するのを未然に防ぐことが可能となる。液体は、例えばエタノールなどの低沸点の有機溶媒である。
【0040】
上記実施形態では、湿度センサ100を収容空間SP内に設置したが、収容空間SP内の湿度又は湿度変化が検出できるのであれば、収容空間SP外に設置することも可能である。
【0041】
上記実施形態では、流路に沿ったシール面を備えたダイヤフラムバルブを例示したが、いわゆるウエアタイプのダイヤフラムバルブにも本発明は適用可能である。
【0042】
以上、本発明を実施形態に基づき説明したが、本発明は実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲での種々の変更が可能であることも言うまでもない。
したがって、そのような要旨を逸脱しない範囲での種々の変更を行ったものも本発明の技術的範囲に含まれるものであり、そのことは、当業者にとって特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0043】
1,2 :ダイヤフラムバルブ
10 :バルブボディ
11 :流路
12 :開口部
12s :支持部
13 :シール面
20 :ダイヤフラム
21 :可撓性隔壁部材
21a :厚肉部
21b :薄肉部
21c :シール突起
21d :係止凹部
21t :シール突起
22 :可撓性支持部材
22b :屈曲部
22c :環状凸部
25 :連結部材
25a :連結部
30 :アクチュエータ
31 :ケーシング
31f :内周面
32 :上側支持プレート
32a :通気孔
33 :ピストン
34 :下側支持プレート
35 :ステム
36 :ガイド部材
37 :固定部材
38 :コイルばね
39 :コイルばね
40 :下部プレート
41 :ハウジング
42 :円環部材
43 :エアポート
50 :コンプレッサ
51 :押圧部
51f :押圧面
80 :クランパ
81 :半円形部材
81a :連結孔部
100 :湿度センサ
101 :平面型湿度センサ
102 :湿度センサ
110 :回路ボックス
As :水溶液
BK :破損部
BT :ボルト
CA :圧縮エア
NT :ナット
SL1 :シール部材
SL2 :シール部材
SP :収容空間
VP :水蒸気