(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-21
(45)【発行日】2023-06-29
(54)【発明の名称】溶融ガラス切断装置
(51)【国際特許分類】
C03B 7/10 20060101AFI20230622BHJP
【FI】
C03B7/10
(21)【出願番号】P 2021087465
(22)【出願日】2021-05-25
【審査請求日】2023-03-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000231800
【氏名又は名称】日本耐酸壜工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【氏名又は名称】北 裕介
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】堀田 利信
【審査官】有田 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-182947(JP,A)
【文献】特開昭61-270223(JP,A)
【文献】特開昭58-199729(JP,A)
【文献】特開昭59-013635(JP,A)
【文献】特開昭60-246229(JP,A)
【文献】特開平08-119638(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 7/00-7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のシャーブレード(30,40)と、
一対の前記シャーブレードそれぞれの基端部に対して設けられたベース部(50,70)と、
を備え、
一対の前記ベース部を近づける側へ相対移動させることによって一対の前記シャーブレードの先端部が重なり、一対の前記シャーブレードの刃先(31a,41a)による剪断力で上方から落ちてくる溶融ガラス(Gm)を切断する溶融ガラス切断装置において、
一対の前記シャーブレードそれぞれにおいて、刃先側の幅方向両側には、前記シャーブレードの長さ方向に突出する突出部(32,42)が形成されており、
一対の前記シャーブレードそれぞれの前記突出部は、前記近づける側への相対移動によって一対の前記シャーブレードの先端部を重ねる場合のガイドとなるように、前記先端部の重なる側とは逆方向に傾斜しており、
一対の前記シャーブレードのうち一方(40)の基端部に設けられ、前記シャーブレードの幅方向に延びる第1軸線まわりに回転可能に前記シャーブレードを前記ベース部(70)に対して支持する第1支持部(60,71,72a,72b;60,90~93)と、
一対の前記シャーブレードのうち一方(40)の基端部に設けられ、前記シャーブレードの長さ方向に延びる第2軸線まわりに回転可能に前記シャーブレードを前記ベース部(70)に対して支持する第2支持部(60,71,72a,72b;60,90~93)と、
一対の前記シャーブレードが離間している場合、一対の前記シャーブレードそれぞれの前記突出部の傾斜部分が対向した状態となるように、前記第1支持部が設けられた前記シャーブレードの前記第1軸線まわりの回転を規制する規制部(80a,80b)と、
一対の前記シャーブレードを互いに押圧するための前記第1軸線まわりの弾性力を、前記第1支持部が設けられた前記シャーブレードに対して付与する付与部(83a,83b,175,183)と、
を備える、溶融ガラス切断装置。
【請求項2】
前記第1支持部、前記第2支持部及び前記付与部は、一対の前記シャーブレードのうち一方(40)に集約して設けられている、請求項1に記載の溶融ガラス切断装置。
【請求項3】
一対の前記シャーブレードのうち、前記第1支持部及び前記第2支持部が設けられたシャーブレードは、一対の前記シャーブレードの先端部が重なる場合、他方のシャーブレード(30)の上側となるように配置される、請求項2に記載の溶融ガラス切断装置。
【請求項4】
前記第1支持部及び前記第2支持部として、
前記シャーブレードの基端部に取り付けられた取付部(60)と、
前記取付部に取り付けられ、前記第1軸線及び前記第2軸線まわりに回転可能に前記シャーブレードを前記ベース部に対して支持する回転部(71,72a,72b;90~93)と、
を備え、
前記付与部として、
前記取付部のうち前記シャーブレードの幅方向における中央部に前記第1軸線まわりの方向の弾性力を付与するスプリング(183)を備える、請求項3に記載の溶融ガラス切断装置。
【請求項5】
前記スプリングの下端が前記ベース部に支持されており、
前記付与部として、
前記スプリングの上端が当接する座面(175a)が形成されたスプリング受け部(175)を備え、
前記回転部又は前記取付部の前記幅方向における中央部と、前記スプリング受け部の上端部とのうち、一方(175)に凸部(175b)が形成され、他方(74)に前記凸部が当接する凹部(74a)が形成されており、
前記凸部の幅方向寸法は、前記スプリングの外径寸法よりも小さい、請求項4に記載の溶融ガラス切断装置。
【請求項6】
前記付与部は第1付与部であり、
一対の前記シャーブレードそれぞれの刃先側を互いに沿わせるための前記第2軸線まわりの弾性力を、前記第2支持部が設けられた前記シャーブレードに対して付与する第2付与部(83a,83b)を備える、請求項1に記載の溶融ガラス切断装置。
【請求項7】
前記第1支持部、前記第2支持部、前記第1付与部及び前記第2付与部は、一対の前記シャーブレードのうち一方(40)に集約して設けられている、請求項6に記載の溶融ガラス切断装置。
【請求項8】
一対の前記シャーブレードのうち、前記第1支持部及び前記第2支持部が設けられたシャーブレードは、一対の前記シャーブレードの先端部が重なる場合、他方のシャーブレード(30)の上側となるように配置される、請求項7に記載の溶融ガラス切断装置。
【請求項9】
前記第1支持部及び前記第2支持部として、
前記シャーブレードの基端部に取り付けられた取付部(60)と、
前記取付部に取り付けられ、前記第1軸線及び前記第2軸線まわりに回転可能に前記シャーブレードを前記ベース部に対して支持する回転部(71,72a,72b;90~93)と、
を備え、
前記第1付与部及び前記第2付与部として、
前記取付部のうち前記シャーブレードの幅方向中央に対して幅方向の一方側にずれた部分に、前記第1軸線まわりの方向の弾性力を付与する第1スプリング(83a)と、
前記取付部のうち前記シャーブレードの幅方向中央に対して幅方向の他方側にずれた部分に、前記第1軸線まわりの方向の弾性力を付与する第2スプリング(83b)と、
を備える、請求項8に記載の溶融ガラス切断装置。
【請求項10】
前記規制部は第1規制部であり、
一対の前記ベース部の相対移動によって一対の前記シャーブレードの先端部が重なる場合に一対の前記シャーブレードの先端部が上下方向に離間しないように、前記取付部が取り付けられた前記シャーブレードの前記第1軸線まわりの回転を規制する第2規制部(81a,81b,181a,181b)を備える、請求項4又は9に記載の溶融ガラス切断装置。
【請求項11】
前記回転部は、
前記ベース部に固定され、前記ベース部から上方に延びる軸支部(71)と、
前記第1軸線方向に延び、前記第1軸線まわりに回転可能に前記軸支部に支持される第1回転軸(72a)と、
前記第1回転軸の中間部から前記第2軸線方向に延び、前記軸支部に対して前記取付部を前記第2軸線まわりに回転可能に支持する第2回転軸(72b)と、
を備える、請求項4,9又は10に記載の溶融ガラス切断装置。
【請求項12】
前記回転部は、
前記ベース部に固定され、前記ベース部から上方に延びる支持軸(93)と、
前記支持軸に固定されるとともに球状の外周面が形成された内輪(91)、及び前記外周面に対応する凹状の面が形成されるとともに前記取付部に取り付けられた外輪(92)を有する球面滑り軸受(90)と、
を備える、請求項4,9又は10に記載の溶融ガラス切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融ガラス切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載されているように、一対のシャーブレードを備える溶融ガラス切断装置が知られている。この装置では、一対のシャーブレードそれぞれの刃先による剪断力で上方から落ちてくる溶融ガラスが切断される。切断された溶融ガラスであるゴブは、ガラス容器などのガラス製品の製造に用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
溶融ガラスを良好に切断するためには、一対のシャーブレードの先端部が重なった状態において、一対のシャーブレードの刃先側の間に大きな隙間ができるのを防止する必要がある。このために、一対のシャーブレードが互いに押圧しながら重なる必要があり、次に説明する構成が用いられる。
【0005】
一対のシャーブレードそれぞれにおいて、刃先側の幅方向両側には、シャーブレードの長さ方向に突出する突出部が形成されている。一対のシャーブレードそれぞれの突出部は、一対のシャーブレードの先端部を重ねる場合のガイドとなるように、先端部の重なる側とは逆方向に傾斜している。
【0006】
一対のシャーブレードのうち一方の基端部は、第1ベース部に取り付けられている。一対のシャーブレードのうち他方の基端部は、第1ベース部に取り付けられたシャーブレードに対して上下方向においてややずれた位置になるように第2ベース部に取り付けられている。一対のシャーブレードが離間している状態において、一対のシャーブレードそれぞれの突出部の傾斜部分は対向している。
【0007】
第1ベース部と第2ベース部とを近づける側へ相対移動させることにより、一対のシャーブレードそれぞれの突出部の傾斜部分が互いに当接する。この場合、一対のシャーブレードの先端部の重なる側とは逆方向に各突出部が傾斜しているため、一対のシャーブレードのうち一方が他方の上面に乗り上げる。この場合、一対のシャーブレードは弾性変形した状態になっている。これにより、シャーブレードの弾性を利用した押圧力を適正範囲内にしつつ、一対のシャーブレードが互いに押圧する状態にできる。
【0008】
ところで、シャーブレードが歪むことがある。例えば、シャーブレードがプレス成型されて製造されている場合、プレス成型されたシャーブレードの焼入れが実施されることにより、シャーブレードの長さ方向及び幅方向に反りが発生し、シャーブレードが歪む。シャーブレードが歪んでいる場合、シャーブレードの弾性を利用した押圧力が適正範囲内からずれ得る。押圧力が適正範囲内からずれた状態でシャーブレードが使用されると、ガラス製品の製造に用いられるゴブの品質が低下したり、シャーブレードの寿命が短くなったりし得る。
【0009】
また、次に説明する問題も発生する。シャーブレードの使用によりシャーブレードが摩耗すると、一対のシャーブレードが互いに押圧する力が適正範囲の下限値を下回り、刃先側の隙間が大きくなり得る。この場合、溶融ガラスを良好に切断できなくなり、ゴブの品質が低下したり、シャーブレードの寿命が短くなったりし得る。ゴブの品質が低下したり、シャーブレードの寿命が短くなったりすることを防止すべく、シャーブレードの弾性を利用した押圧力を適正範囲内にすることが必要となる。このために、一対のシャーブレードの上下方向における位置関係の調整が必要となる。しかしながら、この調整作業は、作業者にとって負担が大きい。
【0010】
このように、シャーブレードの弾性を利用した押圧力に大きく依存する切断方法では、作業者の負担が大きくなり得る。このため、溶融ガラスを切断する技術については、未だ改善の余地がある。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、作業者の負担を軽減しつつ、ゴブの品質が低下したり、シャーブレードの寿命が短くなったりすることを防止できる溶融ガラス切断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、一対のシャーブレードと、
一対の前記シャーブレードそれぞれの基端部に対して設けられたベース部と、
を備え、
一対の前記ベース部を近づける側へ相対移動させることによって一対の前記シャーブレードの先端部が重なり、一対の前記シャーブレードの刃先による剪断力で上方から落ちてくる溶融ガラスを切断する溶融ガラス切断装置において、
一対の前記シャーブレードそれぞれにおいて、刃先側の幅方向両側には、前記シャーブレードの長さ方向に突出する突出部が形成されており、
一対の前記シャーブレードそれぞれの前記突出部は、前記近づける側への相対移動によって一対の前記シャーブレードの先端部を重ねる場合のガイドとなるように、前記先端部の重なる側とは逆方向に傾斜しており、
一対の前記シャーブレードのうち一方の基端部に設けられ、前記シャーブレードの幅方向に延びる第1軸線まわりに回転可能に前記シャーブレードを前記ベース部に対して支持する第1支持部と、
一対の前記シャーブレードのうち一方の基端部に設けられ、前記シャーブレードの長さ方向に延びる第2軸線まわりに回転可能に前記シャーブレードを前記ベース部に対して支持する第2支持部と、
一対の前記シャーブレードが離間している場合、一対の前記シャーブレードそれぞれの前記突出部の傾斜部分が対向した状態となるように、前記第1支持部が設けられた前記シャーブレードの前記第1軸線まわりの回転を規制する規制部と、
一対の前記シャーブレードを互いに押圧するための前記第1軸線まわりの弾性力を、前記第1支持部が設けられた前記シャーブレードに対して付与する付与部と、
を備える。
【0013】
本発明では、一対のシャーブレードのうち一方の基端部には、シャーブレードの幅方向に延びる第1軸線まわりに回転可能にシャーブレードをベース部に対して支持する第1支持部が設けられている。また、一対のシャーブレードのうち一方の基端部には、シャーブレードの長さ方向に延びる第2軸線まわりに回転可能にシャーブレードをベース部に対して支持する第2支持部が設けられている。
【0014】
一対のシャーブレードが離間している場合、一対のシャーブレードそれぞれの突出部の傾斜部分が対向した状態となるように、第1支持部が設けられたシャーブレードの第1軸線まわりの回転が規制部により規制される。このため、一対のベース部を近づける側へ相対移動させる場合、一対のシャーブレードそれぞれの突出部の傾斜部分を互いに当接させることができる。
【0015】
その後、第1支持部が設けられたシャーブレードが第1軸線まわりに回転しつつ、一対のシャーブレードの先端部が重なる。この重なり状態において、第1支持部が設けられたシャーブレードに対しては、一対のシャーブレードを互いに押圧するための第1軸線まわりの弾性力が付与部によって付与される。このため、例えばシャーブレードの長さ方向における反りが発生している場合であっても、シャーブレードの弾性を利用した押圧力に大きく依存することなく、一対のシャーブレードが互いに押圧する力を適正範囲内にすることができる。
【0016】
また、一対のシャーブレードの先端部が重なっている状態において、第2支持部が設けられたシャーブレードは、第1支持部が設けられたシャーブレードから押圧されることにより、一対のシャーブレードそれぞれの刃先側を互いに沿わせるように第2軸線まわりに回転する。このため、例えばシャーブレードの幅方向における反りが発生している場合であっても、シャーブレードの弾性を利用した押圧力に大きく依存することなく、一対のシャーブレードが互いに押圧し合う力を適正範囲内にすることができる。
【0017】
また、本発明によれば、シャーブレードに対して付与部によって上述した力が付与されるため、シャーブレードが摩耗した場合であっても、一対のシャーブレードが互いに押圧する力を適正範囲内に維持することができる。
【0018】
以上説明した本発明によれば、シャーブレードの取り付け作業及び調整に要する作業者の負担を軽減しつつ、ゴブの品質が低下したり、シャーブレードの寿命が短くなったりすることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1実施形態に係るガラス容器の製造装置の全体構成図。
【
図3】切断装置を第1シャーブレードの基端部側から見た図。
【
図7】第2シャーブレードが前傾姿勢となる状態を示す図。
【
図8】第2シャーブレードの基端部側の構成を示す図。
【
図9】第1,第2シャーブレードの水平方向における移動態様を示す図。
【
図10】第1,第2シャーブレードの先端部が重なった状態を示す図。
【
図11】第2実施形態に係る切断装置のうち第2シャーブレード側の構成の平面図。
【
図13】(a)は
図11の13-13線断面図であり、(b),(c)は傾斜状態を示す断面図。
【
図15】切断装置のうち第2シャーブレード側の構成の側面図。
【
図16】第3実施形態に係る切断装置のうち第2シャーブレード側の構成の平面図。
【
図19】第4実施形態に係る切断装置のうち第2シャーブレード側の構成の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<第1実施形態>
以下、本発明の溶融ガラス切断装置を具体化した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。溶融ガラス切断装置は、
図1に示すガラス容器の製造装置10を構成する。なお、各図面のうち、便宜上、一部の構成の図示を省略している図もある。
【0021】
図1に示すように、製造装置10は、スパウト11と、スパウト11を保持するスパウトケース12とを備えている。スパウト11には、図示しないガラス溶融炉から供給された溶融ガラスGmが溜められている。
【0022】
製造装置10は、クレイチューブ13と、チューブ駆動部14とを備えている。クレイチューブ13は、筒状をなしている。クレイチューブ13の下端部は、スパウト11内の溶融ガラスGmに浸されている。クレイチューブ13は、チューブ駆動部14により、上下方向に延びる中心軸線まわりに回転可能になっている。これにより、スパウト11内の溶融ガラスGmを攪拌する。また、クレイチューブ13は、チューブ駆動部14により上下方向の位置が調節可能となっている。クレイチューブ13の下端部とスパウト11の底面とによって溶融ガラスGmの通路が形成されている。このため、クレイチューブ13の上下方向の位置を変えることにより、スパウト11の底部に形成された流出孔11a側への溶融ガラスGmの流出量が調整される。スパウト11の底部には、円形状のオリフィス17が形成されている。
【0023】
製造装置10は、プランジャ15と、プランジャ駆動部16とを備えている。プランジャ15は、プランジャ駆動部16により上下方向に往復運動が可能になっている。プランジャ15の下降によりプランジャ15の先端部が流出孔11aに進入すると、溶融ガラスGmがオリフィス17を介してスパウト11の外側へ押出される。これにより、溶融ガラスGmは、円柱状に垂れ下がる。一方、プランジャ15の上昇動作によりプランジャ15の先端部が流出孔11aから離脱すると、垂れ下がった溶融ガラスGmがオリフィス17の方に吸い込まれる。
【0024】
なお、
図1には、製造装置10がプランジャ15を1つ備える例が示されているが、これに限らず、製造装置10がプランジャ15を複数備えていてもよい。この場合、プランジャ15の数と同数のオリフィス17がスパウト11の底部に形成されていればよい。
【0025】
製造装置10は、溶融ガラス切断装置を備えている。溶融ガラス切断装置は、第1シャーブレード30、第2シャーブレード40及び刃駆動部18を備えている。第1シャーブレード30及び第2シャーブレード40は、オリフィス17の下方に配置されている。第1シャーブレード30は、水平方向において第2シャーブレード40に対向して配置されている。第1シャーブレード30及び第2シャーブレード40は、刃駆動部18が備えるサーボモータ等により、プランジャ15の上下運動に同期して水平方向に往復運動が可能になっている。第1シャーブレード30の刃先と第2シャーブレード40の刃先との剪断力により、オリフィス17より流下した溶融ガラスGmが切断される。切断された溶融ガラスGmは、棒状のゴブGbとなって重力により落下する。
【0026】
溶融ガラス切断装置は、供給部19を備えている。供給部19は、第1,第2シャーブレード30,40等を冷却する冷却水を第1,第2シャーブレード30,40等に対して供給する。
【0027】
製造装置10は、ファンネル20、分配装置21及び複数の金型22を備えている。ファンネル20は、オリフィス17の下方に配置され、漏斗形状をなしている。ファンネル20は、落下したゴブGbを分配装置21に導く。分配装置21は、ファンネル20を介して導かれたゴブGbを、図示しない樋を介して複数の金型22のそれぞれに順次供給する。各金型22において、ゴブGbを用いて壜などのガラス容器が成形される。
【0028】
製造装置10は、制御部としてのコントローラ23を備えている。コントローラ23は、マイコン及びメモリ等を備え、チューブ駆動部14、プランジャ駆動部16、刃駆動部18、供給部19及び分配装置21の作動を制御する。
【0029】
続いて、
図2~
図8を用いて、溶融ガラス切断装置について詳しく説明する。
【0030】
第1シャーブレード30は、板状材により構成された部材である。第1シャーブレード30は、例えば、セラミック、チタン又はタングステンで構成されている。
【0031】
第1シャーブレード30において長さ方向における先端部の断面形状は、
図4に示すように、上側にいくほど突出した形状となっている。これにより、第1シャーブレード30の先端部には、傾斜面である第1刃面31bが形成されている。第1刃面31bの先端が第1刃先31aとされている。第1シャーブレード30の平面視において、第1刃先31aの輪郭は、幅方向において中央にいくほど第1シャーブレード30の基端部側に後退している。これにより、本実施形態では、第1シャーブレード30の平面視において第1刃先31aの輪郭がU字状をなしている。
【0032】
第1シャーブレード30において、第1刃先31a側の幅方向両側には、第1シャーブレード30の長さ方向に突出する第1突出部32が形成されている。第1突出部32は、斜め下方に傾斜している。第1突出部32は、第1シャーブレード30の長さ方向において先端にいくほど幅方向寸法が小さくなっている。
【0033】
第1シャーブレード30の基端部は、第1ベース部50に固定されている。詳しくは、第1シャーブレード30には、長さ方向における基端部側の端から先端部側に向かって延びる切り欠き33が形成されている。第1ベース部50には、ボルト51が挿通されるボルト孔52が形成されている。本実施形態では、ボルト孔52が第1シャーブレード30の長さ方向に並んで複数(2つ)形成されている。ボルト51の座面と第1ベース部50との間に第1シャーブレード30を介在させた状態において、切り欠き33及びボルト孔52にボルト51が挿通され、ボルト51が締め付けられている。これにより、第1シャーブレード30が第1ベース部50に固定されている。
【0034】
第2シャーブレード40は、板状材により構成された部材である。第2シャーブレード40は、例えば、セラミック、チタン又はタングステンで構成されている。本実施形態において、第2シャーブレード40は、第1シャーブレード30と同じ材料で構成されている。なお、第2シャーブレード40は、第1シャーブレード30と異なる材料で構成されていてもよい。
【0035】
第2シャーブレード40において長さ方向における先端部の断面形状は、
図4に示すように、下側にいくほど突出した形状となっている。これにより、第2シャーブレード40の先端部には、傾斜面である第2刃面41bが形成されている。第2刃面41bの先端が第2刃先41aとされている。第2シャーブレード40の平面視において、第2刃先41aの輪郭は、幅方向において中央にいくほど第2シャーブレード40の基端部側に後退している。これにより、本実施形態では、第2シャーブレード40の平面視において第2刃先41aの輪郭がU字状をなしている。なお、第2刃先41a及び第1刃先31aの輪郭は、U字状ではなく、例えばV字状をなしていてもよい。
【0036】
第2シャーブレード40において、第2刃先41a側の幅方向両側には、第2シャーブレード40の長さ方向に突出する第2突出部42が形成されている。第2突出部42は、斜め上方に傾斜している。第2突出部42は、第2シャーブレード40の長さ方向において先端にいくほど幅方向寸法が小さくなっている。
【0037】
第1シャーブレード30及び第2シャーブレード40のそれぞれは、幅方向の中央に対して対称の形状をなしている。このため、第1刃先31aの輪郭は、幅方向の中央に対して対称になっている。また、第2刃先41aの輪郭は、幅方向の中央に対して対称になっている。本実施形態において、第1シャーブレード30は、第2シャーブレード40と同じ形状をなしている。
【0038】
切断装置は、取付部60を備えている。取付部60は、刃取付部61を備えている。刃取付部61の上面は平坦面とされており、その平坦面には、第2シャーブレード40の基端部が固定されている。詳しくは、刃取付部61には、ボルト63が挿通されるボルト孔64が形成されている。本実施形態では、ボルト孔64が第2シャーブレード40の長さ方向に並んで複数(2つ)形成されている。一方、第2シャーブレード40には、長さ方向における基端部側の端から先端部側に向かって延びる切り欠き43が形成されている。ボルト63の座面と刃取付部61との間に第2シャーブレード40を介在させた状態において、切り欠き43及びボルト孔64にボルト63が挿通され、ボルト63が締め付けられている。これにより、第2シャーブレード40が刃取付部61に固定されている。
【0039】
取付部60は、支持取付部62を備えている。支持取付部62は、刃取付部61のうち第2シャーブレード40の長さ方向において第2シャーブレード40とは反対側に設けられている。
【0040】
切断装置は、第2ベース部70と、軸支部71と、回転部材72とを備えている。軸支部71は、第2ベース部70に固定され、第2ベース部70から上方に延びている。軸支部71は、一対設けられており、各軸支部71は、第2シャーブレード40の幅方向に離間して配置されている。
【0041】
回転部材72は、円柱状をなす第1回転軸72aと、第1回転軸72aの長さ方向の中央から第1回転軸72aの軸方向と直交する方向に延びる第2回転軸72bとを備えている。各軸支部71には、第2シャーブレード40の幅方向に延びる孔が形成されている。第1回転軸72aの両端のそれぞれは、軸支部71に形成された孔に挿通されている。これにより、回転部材72は、第2シャーブレード40の幅方向に延びる第1軸線まわりに回転可能に第2ベース部70に対して支持されている。第1回転軸72aの中心軸線は第1軸線と一致する。
【0042】
支持取付部62の下側には、
図4及び
図6に示すように、半円弧状に凹む凹状部分62aが一対形成されている。支持取付部62の下側に固定される受け部73には、半円弧状に凹む凹状部分73aが形成されている。支持取付部62の凹状部分62a及び受け部73の凹状部分73aにより、第2回転軸72bの両端のそれぞれが挿通される軸受孔が形成されている。支持取付部62の下側において、長さ方向に並ぶ一対の凹状部分62aの間は、凹状部分62aよりも上側に凹んでいる。これは、第2軸線まわりに回転部材72が回転した場合に回転部材72が支持取付部62の下面に干渉しないようにするためである。
【0043】
以上説明した支持取付部62及び受け部73により、第2シャーブレード40の長さ方向に延びる第2軸線まわりに回転部材72が回転可能となっている。これにより、第2シャーブレード40は、第2ベース部70に対して第2軸線まわりに回転可能に支持されている。第2回転軸72bの中心軸線は第2軸線と一致する。なお、本実施形態において、取付部60、軸支部71及び第1,第2回転軸72a,72bが「第1,第2支持部」に相当する。また、軸支部71及び第1,第2回転軸72a,72bが「回転部」に相当する。
【0044】
切断装置は、第1上側ストッパ部80aと、第1下側ストッパ部80bとを備えている。第1上側ストッパ部80aは、刃取付部61の下面のうち第2シャーブレード40の幅方向における中央に設けられている。第1上側ストッパ部80aは、刃取付部61の下面から下方に突出している。本実施形態において、第1上側ストッパ部80aは、ボルトで構成されている。
【0045】
第1下側ストッパ部80bは、第2ベース部70のうち、上下方向において第1上側ストッパ部80aと対向する位置に設けられている。第1下側ストッパ部80bは、第2ベース部70から上方に延びている。本実施形態において、第1下側ストッパ部80bは、ボルトで構成されている。なお、本実施形態において、第1上側ストッパ部80a及び第1下側ストッパ部80bが「第1規制部」に相当する。
【0046】
取付部60が第1軸線まわりの特定方向に回転して第1上側ストッパ部80aが第1下側ストッパ部80bに当接すると、第1軸線まわりの特定方向における取付部60の回転が規制される。この場合、
図7に示すように、第2シャーブレード40が前傾姿勢となり、第2突出部42が水平方向において第1突出部32と対向した状態となる。
【0047】
取付部60は、延出部65を備えている。延出部65は、支持取付部62のうち第2シャーブレード40の長さ方向において刃取付部61とは反対側に設けられている。
【0048】
切断装置は、
図4及び
図6に示すように、第2上側ストッパ部81aと、第2下側ストッパ部81bとを備えている。第2上側ストッパ部81aは、延出部65の下面のうち第2シャーブレード40の幅方向における中央に設けられている。第2上側ストッパ部81aは、延出部65の下面から下方に突出している。本実施形態において、第2上側ストッパ部81aは、ボルトで構成されている。
【0049】
第2下側ストッパ部81bは、第2ベース部70のうち、上下方向において第2上側ストッパ部81aと対向する位置に設けられている。第2下側ストッパ部81bは、第2ベース部70から上方に延びている。本実施形態において、第2下側ストッパ部81bは、ボルトで構成されている。
【0050】
取付部60が第1軸線まわりの特定方向とは逆方向に回転して第2上側ストッパ部81aが第2下側ストッパ部81bに当接すると、第1軸線まわりの特定方向とは逆方向における取付部60の回転が規制される。この場合、
図4に示すように、第2シャーブレード40が水平状態とされる。なお、本実施形態において、第2上側ストッパ部81a及び第2下側ストッパ部81bが「第2規制部」に相当する。
【0051】
切断装置は、
図6に示すように、第1調整ボルト82a、第2調整ボルト82b、第1スプリング83a及び第2スプリング83bを備えている。本実施形態において、第1スプリング83a及び第2スプリング83bは、圧縮コイルスプリングであり、自由長及びバネ定数が同じに設定されている。なお、本実施形態において、第1,第2スプリング83a,83bが「第1,第2付与部」に相当する。
【0052】
延出部65のうち第2シャーブレード40の幅方向における中央に対して幅方向の一方に所定距離だけずれた部分には、延出部65の厚さ方向に貫通する貫通孔が形成されている。その貫通孔に第1調整ボルト82aが挿通されるとともに、第1調整ボルト82aがナットで固定されている。第1調整ボルト82aの頭部は、延出部65の下面から下方に突出している。
【0053】
延出部65のうち第2シャーブレード40の幅方向における中央に対して幅方向の他方に上記所定距離だけずれた部分には、延出部65の厚さ方向に貫通する貫通孔が形成されている。その貫通孔に第2調整ボルト82bが挿通されるとともに、第2調整ボルト82bがナットで固定されている。第2調整ボルト82bの頭部は、延出部65の下面から下方に突出している。
【0054】
第2ベース部70のうち上下方向において第1調整ボルト82aの頭部と対向する部分には、第2ベース部70の上面から下方に延びる第1溝部74aが形成されている。第1溝部74aの底面には、第1スプリング83aの一端の水平方向の移動を規制する突起が形成されている。
【0055】
第2ベース部70のうち上下方向において第2調整ボルト82bの頭部と対向する部分には、第2ベース部70の上面から下方に延びる第2溝部74bが形成されている。第2溝部74bの底面には、第2スプリング83bの一端の水平方向の移動を規制する突起が形成されている。
【0056】
第1調整ボルト82aは、フランジボルトであり、第1調整ボルト82aの鍔部が第1スプリング83aの第1端の座面とされ、第1調整ボルト82aの頭部が第1スプリング83aの第1端の水平方向の移動を規制する役割を果たしている。第1溝部74aの底面が第1スプリング83aの第2端の座面とされている。また、第2調整ボルト82bは、フランジボルトであり、第2調整ボルト82bの鍔部が第2スプリング83bの第1端の座面とされ、第2調整ボルト82bの頭部が第2スプリング83bの第1端の水平方向の移動を規制する役割を果たしている。第2溝部74bの底面が第2スプリング83bの第2端の座面とされている。
【0057】
第1上側ストッパ部80aが第1下側ストッパ部80bに当接している状態において、第1,第2スプリング83a,83bの第1端が第1,第2調整ボルト82a,82bの鍔部に当接して、かつ、第1,第2スプリング83a,83bの第2端が第1,第2溝部74a,74bの底面に当接している。これにより、第1上側ストッパ部80aが第1下側ストッパ部80bに当接した状態から、第2シャーブレード40が第1軸線まわりに特定方向とは逆方向に回転し始めることに伴い、第2シャーブレード40を特定方向に回転させるような弾性力を取付部60に迅速に付与する。また、第1上側ストッパ部80aが第1下側ストッパ部80bに当接している状態において、第1,第2スプリング83a,83bが圧縮状態とされている。これにより、第2シャーブレード40を特定方向に回転させるような弾性力を大きくできる。
【0058】
第2上側ストッパ部81aが第2下側ストッパ部81bに当接して、かつ、取付部60が水平状態にされている場合において、第1調整ボルト82aの鍔部から第1溝部74aの底面までの距離と、第2調整ボルト82bの鍔部から第2溝部74bの底面までの距離とが等しくなっている。つまり、取付部60が幅方向に傾いていない場合、第1,第2スプリング83a,83bそれぞれが取付部60に付与する弾性力が等しくなっている。このため、取付部60が幅方向に傾くと、その傾きを無くすような第2軸線まわりの弾性力が第1,第2スプリング83a,83bから取付部60に付与される。
【0059】
続いて、溶融ガラスGmを切断する場合における第1シャーブレード30及び第2シャーブレード40の動作について説明する。
【0060】
図9(a)に示すように、水平方向において第2シャーブレード40と第1シャーブレード30とが離間している場合、
図7に示すように、第1突出部32の傾斜部分が水平方向において第2突出部42の傾斜部分と対向した状態となるように、第1軸線まわりの取付部60の回転が第1上側ストッパ部80a及び第1下側ストッパ部80bにより規制される。このため、第1ベース部50と第2ベース部70とを互いに近づける側に移動させることにより、第1,第2突出部32,42の傾斜部分を互いに当接させることができる。第1,第2突出部32,42は、第1,第2シャーブレード30,40の先端部を重ねる場合におけるガイドの役割を果たす。
【0061】
また、第1軸線まわりの取付部60の回転が第1上側ストッパ部80a及び第1下側ストッパ部80bにより規制された状態において、第1スプリング83a及び第2スプリング83bが圧縮状態とされている。このため、第1ベース部50と第2ベース部70とを互いに近づける場合において、第2シャーブレード40を前傾姿勢に維持できる。これにより、第1ベース部50と第2ベース部70とを互いに近づける場合において、何らかの外力が第2シャーブレード40に作用したとしても、第2シャーブレード40が第1軸線まわりの特定方向に回転することを防止できる。
【0062】
その後、第1ベース部50と第2ベース部70とがさらに近づくことにより、第2シャーブレード40が固定された取付部60が第1軸線まわりに回転し、
図9(b)及び
図10に示すように、第2シャーブレード40の下面と第1シャーブレード30の上面とが当接しながら、第1シャーブレード30の先端部と第2シャーブレード40の先端部とが重なる。この場合、第1スプリング83a及び第2スプリング83bがさらに圧縮されるため、特定方向とは逆方向に取付部60を第1軸線まわりに回転させる力が、第1スプリング83a及び第2スプリング83bから取付部60に付与される。このため、第2シャーブレード40が第1シャーブレード30を押圧するようになり、第1,第2シャーブレード30,40の長さ方向における反りが発生している場合であっても、シャーブレードの弾性を利用した押圧力に大きく依存することなく、第2シャーブレード40を第1シャーブレード30に押圧する力を適正範囲内にすることができる。
【0063】
一方、第1,第2シャーブレード30,40の幅方向における反りが発生していると、第1シャーブレード30の先端部と第2シャーブレード40の先端部とが重なっている場合において、
図8(b)又は
図8(c)に示すように、取付部60が第2軸線まわりに回転し、第2シャーブレード40が幅方向に傾く。この場合、本実施形態では、その傾きを無くすような第2軸線まわりの弾性力が第1,第2スプリング83a,83bから取付部60に付与される。このため、第1,第2シャーブレード30,40の幅方向における反りが発生している場合であっても、シャーブレードの弾性を利用した押圧力に大きく依存することなく、第1,第2刃先31a,41a側を互いに沿わせるようにすることができる。これにより、第2シャーブレード40を第1シャーブレード30に押圧する力を適正範囲内にすることができる。
【0064】
また、本実施形態によれば、第1,第2シャーブレード30,40が摩耗した場合であっても、第1,第2シャーブレード30,40が互いに押圧する力を適正範囲内に維持することができる。
【0065】
以上説明した本実施形態によれば、第1,第2シャーブレード30,40の取り付け作業及び調整に要する作業者の負担を軽減しつつ、ゴブの品質が低下したり、第1,第2シャーブレード30,40の寿命が短くなったりすることを防止できる。
【0066】
第1,第2シャーブレード30,40の摩耗を抑制する上では、第1,第2シャーブレード30,40の硬度は高い方がよい。しかしながら、硬度が高いと、シャーブレードの弾性を利用した押圧力を適正範囲内にすることが難しい。この点、本実施形態によれば、硬度の高いシャーブレードが用いられる場合であっても、シャーブレードの弾性を利用した押圧力を適正範囲内にすることができる。
【0067】
本実施形態では、第2シャーブレード40を第1シャーブレード30に押圧するように取付部60を第1軸線まわりに回転させる力と、第2シャーブレード40の幅方向の傾きを無くすように取付部60を第2軸線まわりに回転させる力との双方を、第1,第2スプリング83a,83bによって付与できる。このように、第1,第2シャーブレード30,40のうち第2シャーブレード40側に、押圧力を付与する構成が集約されることにより、溶融ガラス切断装置の構成を簡素化することができる。
【0068】
第2突出部42の傾斜部分と第1突出部32の傾斜部分とが当接することにより、第1シャーブレード30によって第2シャーブレード40が跳ね上げられ、第2シャーブレード40が第1軸線まわりの特定方向に回転する。この場合、第2シャーブレード40と第1シャーブレード30との間の隙間が大きくなり、溶融ガラスGmの切断時において、第2シャーブレード40と第1シャーブレード30との間の隙間に溶融ガラスGmが入り込むことがある。この場合、例えば、入り込んだ溶融ガラスGmは急速に冷却されて固まる。その結果、第2シャーブレード40及び第1シャーブレード30の相対移動に起因して、固化したガラスが砕けるおそれがある。ガラスが砕けると、砕けたガラス片が周辺に飛散したり、飛散したガラス片がゴブGbに混入したりするおそれがある。
【0069】
この点、本実施形態によれば、第1,第2シャーブレード30,40の先端部が重なる場合、第1,第2シャーブレード30,40の先端部が上下方向に離間しないように、第2シャーブレード40の第1軸線まわりの回転が第2上側ストッパ部81a及び第2下側ストッパ部81bにより規制される。このため、第1,第2突出部32,42の傾斜部分が当接することに起因して第2シャーブレード40と第1シャーブレード30との間に隙間が発生することを抑制できる。
【0070】
第1上側ストッパ部80aが第1下側ストッパ部80bに当接した状態において、第1スプリング83a及び第2スプリング83bが圧縮状態とされている。このため、第2シャーブレード40が第1軸線まわりに特定方向とは逆方向に回転し始めることに伴い、第2シャーブレード40を特定方向に回転させるような第1,第2スプリング83a,83bの弾性力を大きくできる。その結果、第1,第2突出部32,42の傾斜部分が当接することに起因して第2シャーブレード40と第1シャーブレード30との間に隙間が発生することを好適に抑制できる。
【0071】
押圧力を付与する取付部60、回転部材72及び各スプリング83a,83b等を備える構成が第2シャーブレード40側に適用されている。この場合、第2シャーブレード40及び刃取付部61等の自重を、第1シャーブレード30に対する押圧力の一部として利用することができる。これにより、第1,第2突出部32,42の傾斜部分が当接することに起因して第2シャーブレード40と第1シャーブレード30との間に隙間が発生することをいっそう好適に抑制できる。
【0072】
<第2実施形態>
以下、第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、第1,第2軸線まわりに取付部を回転させる構成として、球面滑り軸受が用いられる。
【0073】
図11~
図15を用いて、切断装置のうち第2シャーブレード40側の構成について説明する。なお、
図11~
図15において、先の第1実施形態で説明した構成と同一の構成又は対応する構成については、便宜上、同一の符号を付しているものもある。また、各図面のうち、便宜上、一部の構成の図示を省略している図もある。
【0074】
切断装置は、軸受90及び支持軸93を備えている。軸受90は、球面滑り軸受であり、球状の外周面を有する内輪91と、その外周面に対応する凹状の面を有する外輪92とを備えている。外輪92は、円環状をなしている。
【0075】
内輪91には、軸受孔が形成されている。支持軸93は、軸方向において第1端側が小径部93aとされ、軸方向において小径部93aに隣り合う部分が大径部93bとされている。大径部93bの外径寸法は、小径部93aの外径寸法よりも大きい。
【0076】
内輪91の軸受孔には、小径部93aが挿通されており、小径部93aには、小径部93aよりも外径寸法が大きい円板部94の板面が当接している。円板部94の中央部には貫通孔が形成され、支持軸93の第1端にはボルト孔が形成されている。小径部93a及び内輪91が円板部94に当接した状態において、円板部94の貫通孔及び支持軸93のボルト孔にボルト95が挿通され、ボルト95が締め付けられている。これにより、軸受90が支持軸93に固定されている。
【0077】
支持軸93の軸方向における第2端側には、ボルト孔が形成されている。第2ベース部70には貫通孔が形成されている。第2ベース部70の貫通孔及び支持軸93のボルト孔にボルト96が挿通され、ボルト96が締め付けられている。これにより、支持軸93が第2ベース部70に固定されている。その結果、第2ベース部70に対して軸受90が固定されている。
【0078】
取付部60を構成する支持取付部62の下面側は凹部とされており、その凹部が軸受90の収容空間になっている。支持取付部62の下面側のうち周壁部62bには、外輪92が固定されている。支持取付部62の下端には、軸受90を覆う環状の蓋部66が固定されている。蓋部66の中央部には、支持軸93が挿通される貫通孔が形成されている。
【0079】
蓋部66の内径側と、支持軸93の大径部93bとの間は離間している。大径部93bには、円板状のシール部材67が取り付けられている。シール部材67は、変形が容易な材料で構成され、例えばフェルトシールである。シール部材67の外縁は、蓋部66に当接している。シール部材67により、支持取付部62及び蓋部66によって区画される軸受90の収容空間に外部から異物又は供給部19からの冷却水が入り込むのを防止しつつ、支持軸93に対する取付部60の回転変位を可能にしている。異物又は冷却水が入り込むことが防止されることにより、軸受90の動作不良の発生を抑制できる。
【0080】
切断装置は、軸支部100及びピン101を備えている。軸支部100は、第2ベース部70に固定され、第2ベース部70から上方に延びている。軸支部100は、一対設けられており、各軸支部100は、第2シャーブレード40の幅方向に離間して配置されている。軸支部100には、上端から下方向に延びるガイド溝100aが形成されている。ガイド溝100aの下端は円弧状をなしている。
【0081】
支持取付部62の周壁部62bのうち幅方向において対向する部分のそれぞれには、貫通孔62cが形成されている。外輪92のうち軸方向とは直交する方向において対向する部分のそれぞれには、ピン101の第1端が固定されている。ピン101の第2端側は、貫通孔62cを通ってガイド溝100aに支持されている。ガイド溝100aにより、第2シャーブレード40の長さ方向におけるピン101の移動が規制されつつ、ピン101の上下方向の移動及び幅方向の傾きが許容される。このため、取付部60は、第1軸線まわり及び第2軸線まわりに回転可能に第2ベース部70に支持されることとなる。なお、本実施形態において、軸受90及び支持軸93が「回転部」に相当する。
【0082】
以上説明した本実施形態によれば、第1実施形態と同様に、第1,第2シャーブレード30,40の長さ方向における反りが発生している場合であっても、シャーブレードの弾性を利用した押圧力に大きく依存することなく、第2シャーブレード40を第1シャーブレード30に押圧する力を適正範囲内にすることができる。
【0083】
第1,第2シャーブレード30,40の幅方向における反りが発生していると、第1,第2シャーブレード30,40の先端部が重なっている場合において、
図13(b)又は
図13(c)に示すように、取付部60が第2軸線まわりに回転して第2シャーブレード面41が幅方向に傾く。この場合であっても、本実施形態によれば、第1実施形態と同様に、その傾きを無くすように取付部60を第2軸線まわりに回転させる力が、第1,第2スプリング83a,83bから取付部60に付与される。このため、第1,第2シャーブレード30,40の幅方向における反りが発生している場合であっても、シャーブレードの弾性を利用した押圧力に大きく依存することなく、第2シャーブレード40を第1シャーブレード30に押圧する力を適正範囲内にすることができる。
【0084】
<第3実施形態>
以下、第3実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、切断装置のうち第2シャーブレード40側の構成が備えるスプリングの数が2つから1つに変更されている。
【0085】
図16~
図18を用いて、切断装置のうち第2シャーブレード40側の構成について説明する。なお、
図16~
図18において、先の第1実施形態で説明した構成と同一の構成又は対応する構成については、便宜上、同一の符号を付しているものもある。また、各図面のうち、便宜上、一部の構成の図示を省略している図もある。
【0086】
切断装置は、第2上側ストッパ部181aと、第2下側ストッパ部181bとを備えている。第2上側ストッパ部181aは、延出部65の下面のうち第2シャーブレード40の幅方向における中央に対して幅方向両側それぞれに所定距離だけずれた部分に設けられている。第2上側ストッパ部181aは、延出部65の下面から下方に突出している。本実施形態において、第2上側ストッパ部181aは、ボルトで構成されている。
【0087】
第2下側ストッパ部181bは、第2ベース部70のうち、上下方向において第2上側ストッパ部181aと対向する位置に設けられている。第2下側ストッパ部181bは、第2ベース部70から上方に延びている。本実施形態において、第2下側ストッパ部181bは、ボルトで構成されている。
【0088】
第2シャーブレード40の幅方向に延びる第1軸線まわりの特定方向に取付部60が回転すると、第1上側ストッパ部80aが第1下側ストッパ部80bに当接する。一方、取付部60が第1軸線まわりの特定方向とは逆方向に回転して第2上側ストッパ部181aが第2下側ストッパ部181bに当接すると、第1軸線まわりの特定方向とは逆方向における取付部60の回転が規制される。なお、本実施形態において、第2上側ストッパ部181a及び第2下側ストッパ部181bが「第2規制部」に相当する。
【0089】
ちなみに、各第2上側ストッパ部181aが各第2下側ストッパ部181bに当接した状態では、第2シャーブレード40の長さ方向に延びる第2軸線まわりの取付部60の回転が規制される。このため、第1シャーブレード30の先端部と第2シャーブレード40の先端部とが重なる場合において、第2軸線まわりの取付部60の回転が許容されるように、第2上側ストッパ部181aに対する第2下側ストッパ部181bの上下方向における当接位置が調整されていればよい。
【0090】
第2回転軸72bのうち軸方向において第2シャーブレード40とは反対側は、軸方向において第2シャーブレード40とは反対側に延びる当接部74とされている。当接部74の下面は平坦面とされている。
【0091】
切断装置は、スプリング183と、スプリング受け部175とを備えている。本実施形態において、スプリング183は、圧縮コイルスプリングである。なお、本実施形態において、スプリング183及びスプリング受け部175が「付与部」に相当する。
【0092】
第2ベース部70のうち第2シャーブレード40の幅方向中央には、第2ベース部70の上面から下方に延びる溝部174が形成されている。溝部174の底面には、スプリング183の下端の水平方向の移動を規制する突起が形成されている。
【0093】
スプリング受け部175には、スプリング183の上端が当接する座面175aが形成されている。スプリング受け部175のうち座面175aよりも内側の部分には、スプリング183の上端の水平方向の移動を規制する突起が形成されている。スプリング受け部175の上側の先端部は、凸部175bとされており、凸部175bは円錐状をなしている。凸部175bは、当接部74の下面のうち幅方向中央に形成された凹部74aに当接している。凸部175bの外径寸法は、スプリング183の外径寸法よりも小さい。
【0094】
第1上側ストッパ部80aが第1下側ストッパ部80bに当接している状態において、スプリング受け部175の凸部175bが当接部74の凹部74aに当接している。これにより、第1上側ストッパ部80aが第1下側ストッパ部80bに当接した状態から、第2シャーブレード40が第1軸線まわりに特定方向とは逆方向に回転し始めることに伴い、第2シャーブレード40を特定方向に回転させるような弾性力を取付部60に迅速に付与する。また、第1上側ストッパ部80aが第1下側ストッパ部80bに当接している状態において、スプリング183が圧縮状態とされている。これにより、第2シャーブレード40を特定方向に回転させるような弾性力を大きくできる。
【0095】
続いて、溶融ガラスGmを切断する場合における第1シャーブレード30及び第2シャーブレード40の動作について説明する。第1軸線まわりの取付部60の回転が第1上側ストッパ部80a及び第1下側ストッパ部80bにより規制された状態において、スプリング183が圧縮状態とされている。このため、第1ベース部50と第2ベース部70とを互いに近づける場合において、第2シャーブレード40を前傾姿勢に維持できる。
【0096】
その後、第1ベース部50と第2ベース部70とがさらに近づくことにより、第2シャーブレード40が固定された取付部60が第1軸線まわりに回転し、第2シャーブレード40の下面と第1シャーブレード30の上面とが当接しながら、第1シャーブレード30の先端部と第2シャーブレード40の先端部とが重なる。この場合、スプリング183がさらに圧縮されるため、特定方向とは逆方向に取付部60を第1軸線まわりに回転させる力が、スプリング183から取付部60に付与される。このため、第2シャーブレード40が第1シャーブレード30を押圧するようになり、第1,第2シャーブレード30,40の長さ方向における反りが発生している場合であっても、シャーブレードの弾性を利用した押圧力に大きく依存することなく、第2シャーブレード40を第1シャーブレード30に押圧する力を適正範囲内にすることができる。
【0097】
一方、第1,第2シャーブレード30,40の幅方向における反りが発生していると、第1シャーブレード30の先端部と第2シャーブレード40の先端部とが重なっている場合において、取付部60が第2軸線まわりに回転し、第2シャーブレード40が幅方向に傾く。このため、第1,第2シャーブレード30,40の幅方向における反りが発生している場合であっても、シャーブレードの弾性を利用した押圧力に大きく依存することなく、第1,第2刃先31a,41a側を互いに沿わせるようにすることができる。
【0098】
スプリング受け部175の凸部175bが、当接部74の下面のうち幅方向中央に形成された凹部74aに当接している。このため、取付部60が第2軸線まわりに回転する場合であっても、スプリング受け部175の凸部175bが、当接部74の下面のうち幅方向中央からずれることを防止できる。その結果、スプリング183の曲がりが発生することを防止でき、スプリング183の荷重が小さくなったり、スプリング183の寿命が短くなったりすることを防止できる。
【0099】
<第4実施形態>
以下、第4実施形態について、第2実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、切断装置のうち第2シャーブレード40側の構成が備えるスプリングの数が2つから1つに変更されている。
【0100】
図19~
図21を用いて、切断装置のうち第2シャーブレード40側の構成について説明する。なお、
図19~
図21において、先の第2,第3実施形態で説明した構成と同一の構成又は対応する構成については、便宜上、同一の符号を付しているものもある。また、各図面のうち、便宜上、一部の構成の図示を省略している図もある。
【0101】
切断装置は、
図21に示すように、当接部190を備えている。当接部190は、延出部65の下面のうち第2シャーブレード40の幅方向における中央に設けられている。当接部190は、延出部65の下面から下方に突出している。本実施形態において、当接部190は、ボルトで構成されている。スプリング受け部175の上側部分の先端部が当接部190に当接している。なお、当接部190であるボルトの頭部に、スプリング受け部175の凸部175bが当接する凹部が形成されていてもよい。
【0102】
以上説明した本実施形態によれば、第3実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0103】
<その他の実施形態>
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0104】
・第1上側ストッパ部80a及び第1下側ストッパ部80bのうちいずれかが切断装置に備えられていなくてもよい。この場合、第1,第2シャーブレード30,40が離間しているときにおいて、第1,第2突出部32,42の傾斜部分が水平方向において対向した状態となるように、第1上側ストッパ部80a及び第1下側ストッパ部80bのうちいずれかの高さ寸法が調整されていればよい。
【0105】
・第1,第2実施形態において、第2上側ストッパ部81a及び第2下側ストッパ部81bのうちいずれかが切断装置に備えられていなくてもよい。この場合、第1,第2シャーブレード30,40の先端部が重なる場合に第1,第2シャーブレード30,40の先端部が上下方向に離間しないように、第2上側ストッパ部81a及び第2下側ストッパ部81bのうちいずれかの高さ寸法が調整されていればよい。
【0106】
・第3実施形態において、当接部74が設けられることなく、延出部65の下面に、凸部175bが当接する凹部が形成されていてもよい。
【0107】
・第3実施形態において、当接部74に凸部が形成され、スプリング受け部175の上端部に、凸部が当接する凹部が形成されていてもよい。
【0108】
・取付部60に弾性力を付与する構成としては、上記各実施形態に例示したものに限らない。例えば、第1上側ストッパ部80aが第1下側ストッパ部80bに当接した状態において、延出部65を上方に引っ張り上げるような弾性力が延出部65に付与されるように、延出部65の上部にスプリングが取り付けられていてもよい。
【0109】
・上記各実施形態では、第1,第2シャーブレード30,40の先端部が重なる場合、第2シャーブレード40が第1シャーブレード30の上側となるように配置されたがこれに限らず、第1シャーブレード30が第2シャーブレード40の上側となるように配置されてもよい。この場合、第1突出部32は、斜め上方に傾斜し、第2突出部42は、斜め下方に傾斜していればよい。また、第2シャーブレード40を第1シャーブレード30に押圧するための第1軸線まわりの特定方向の弾性力が取付部60に付与されるように溶融ガラス切断装置が構成されていればよい。
【0110】
・上記各実施形態では、第1,第2軸線まわりに回転可能にシャーブレードを支持する構成が第2シャーブレード40側に集約されていたがこれに限らない。例えば、第1,第2シャーブレード30,40のうち、第2シャーブレード40の基端部に、第1軸線まわりに回転可能に第2シャーブレード40を第2ベース部70に対して支持する構成が設けられ、第1シャーブレード30の基端部に、第2軸線まわりに回転可能に第1シャーブレード30を第1ベース部50に対して支持する構成が設けられていてもよい。この場合、第1,第2シャーブレード30,40それぞれの刃先側を互いに沿わせるための第2軸線まわりの弾性力を第1シャーブレード30に対して付与する構成が、第1シャーブレード30側に設けられていればよい。
【符号の説明】
【0111】
30,40…第1,第2シャーブレード、32,42…第1,第2突出部、50,70…第1,第2ベース部、60…取付部、71…軸支部、72a,72b…第1,第2回転軸、80a…第1上側ストッパ部、80b…第1下側ストッパ部、83a,83b…第1,第2スプリング。