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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-21
(45)【発行日】2023-06-29
(54)【発明の名称】圧電振動片、及び圧電振動子
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/19 20060101AFI20230622BHJP
【FI】
H03H9/19 L
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018204806
(22)【出願日】2018-10-31
(65)【公開番号】P2020072365
(43)【公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】713005174
【氏名又は名称】エスアイアイ・クリスタルテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096655
【弁理士】
【氏名又は名称】川井 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100091225
【弁理士】
【氏名又は名称】仲野 均
(72)【発明者】
【氏名】市村 直也
【審査官】▲高▼橋 徳浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-081570(JP,A)
【文献】国際公開第2005/008888(WO,A1)
【文献】特開2011-087279(JP,A)
【文献】特開2003-204240(JP,A)
【文献】特開2002-280870(JP,A)
【文献】特開2007-158386(JP,A)
【文献】特開2008-079033(JP,A)
【文献】特開2008-85743(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H3/007-H03H3/10
H03H9/00-H03H9/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部と、
前記基部から並んで延設された1対の振動腕部と、
前記1対の振動腕部の両主面に、長手方向に沿って形成された溝部と、
前記溝部の各々により、当該溝部の両側に形成される土手部と、
前記1対の振動腕部における、一方の振動腕部の両側面と、他方の振動腕部の溝部の両側面に形成された第1側面電極と、
前記1対の振動腕部における、前記一方の振動腕部の溝部の両側面と、前記他方の振動腕部の両側面に形成された第2側面電極と、
前記1対の振動腕部における、前記一方の振動腕部の4つの前記土手部の主面に、前記一方の振動腕部の両側面に形成された前記第1側面電極から延出して形成された第1主面電極と、
前記1対の振動腕部における、前記他方の振動腕部の4つの前記土手部の全主面に、前記他方の振動腕部の両側面に形成された前記第2側面電極から延出して形成された第2主面電極と、を具備し、
前記第1主面電極と前記第2主面電極は、各々が形成されている土手部の短手方向の幅をLとした場合に、L/2よりも短く形成され、
前記他方の振動腕部の前記溝部の両側面に形成された第1側面電極の先端と、前記一方の振動腕部の前記溝部の両側面に形成された第2側面電極の先端は、土手部の主面よりも下側に形成されている、
ことを特徴とする圧電振動片。
【請求項2】
前記振動腕部の外側に並んで前記基部から延設された、実装用の1対の支持腕部を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の圧電振動片。
【請求項3】
基部と、
前記基部から並んで延設された1対の振動腕部と、
前記1対の振動腕部の両主面に、長手方向に沿って形成された溝部と、
前記溝部の各々により、当該溝部の両側に形成される土手部と、
前記1対の振動腕部における、一方の振動腕部の両側面と、他方の振動腕部の溝部の両側面に形成された第1側面電極と、
前記1対の振動腕部における、前記一方の振動腕部の溝部の両側面と、前記他方の振動腕部の両側面に形成された第2側面電極と、
前記1対の振動腕部における、前記一方の振動腕部の4つの前記土手部の主面と、前記他方の振動腕部の4つの前記土手部の主面、のうちの少なくとも1つの主面に、前記第1側面電極から延出して形成された第1主面電極と、
前記1対の振動腕部の各々において、4つの前記土手部の主面のうち、前記第1主面電極が、全ての主面に形成されている場合には最大3つの主面に、全ての主面には形成されていない場合には最大4つの主面に、前記第2側面電極から延出して形成された第2主面電極と、
前記1対の振動腕部の間に前記基部から延設された、実装用の1つの支持腕部と、
を具備し、
前記1対の振動腕部における前記支持腕部に対向する側の土手部を内側土手部とし、対向しない側の土手部を外側土手部とした場合、
前記第1主面電極は、4つの前記外側土手部と、前記一方の振動腕部における2つの前記内側土手部又は前記他方の振動腕部における2つの前記内側土手部に形成され、
前記第2主面電極は、4つの前記外側土手部と、4つの前記内側土手部のうち、前記第1主面電極が形成されていない2つの前記内側土手部に形成されている、
ことを特徴とする圧電振動片。
【請求項4】
前記土手部の主面に第1主面電極が延出していない前記第1側面電極の先端と、前記土手部の主面に第2主面電極が延出していない前記第2側面電極の先端は、土手部の主面よりも下側に形成されている、
ことを特徴とする請求項3に記載の圧電振動片。
【請求項5】
基部と、
前記基部から並んで延設された1対の振動腕部と、
前記1対の振動腕部の両主面に、長手方向に沿って形成された溝部と、
前記溝部の各々により、当該溝部の両側に形成される土手部と、
前記1対の振動腕部における、一方の振動腕部の両側面と、他方の振動腕部の溝部の両側面に形成された第1側面電極と、
前記1対の振動腕部における、前記一方の振動腕部の溝部の両側面と、前記他方の振動腕部の両側面に形成された第2側面電極と、
前記1対の振動腕部における、前記一方の振動腕部の4つの前記土手部の主面と、前記他方の振動腕部の4つの前記土手部の主面、のうちの少なくとも1つの主面に、前記第1側面電極から延出して形成された第1主面電極と、
前記1対の振動腕部の各々において、4つの前記土手部の主面のうち、前記第1主面電極が、全ての主面に形成されている場合には最大3つの主面に、全ての主面には形成されていない場合には最大4つの主面に、前記第2側面電極から延出して形成された第2主面電極と、
前記1対の振動腕部の外側に並んで前記基部から延設された、実装用の1対の支持腕部と、を具備し、
前記1対の振動腕部における土手部のうち、前記1対の支持腕部のいずれかの支持腕部に対向する側の土手部を外側土手部とし、対向しない側の土手部を内側土手部とした場合、
前記第1主面電極は、4つの前記内側土手部と、前記一方の振動腕部における2つの前記外側土手部又は前記他方の振動腕部における2つの前記外側土手部に形成され、
前記第2主面電極は、4つの前記内側土手部と、4つの前記外側土手部のうちの前記第1主面電極が形成されていない2つの前記外側土手部に形成され、
前記第1主面電極と前記第2主面電極は、各々が形成されている土手部の短手方向の幅をLとした場合に、L/2よりも短く形成され、
前記土手部の主面に第1主面電極が延出していない前記第1側面電極の先端と、前記土手部の主面に第2主面電極が延出していない前記第2側面電極の先端は、土手部の主面よりも下側に形成されている、
ことを特徴とする圧電振動片。
【請求項6】
実装部を備えたパッケージと、
前記実装部に接合材を介して実装された、請求項1から請求項のうちのいずれか1の請求項に記載の圧電振動片と、
を具備したことを特徴とする圧電振動子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動片、及び圧電振動子に係り、詳細には、振動腕部を励振させる電極に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、携帯電話や携帯情報端末機器等の電子機器には、時刻源や制御信号等のタイミング源、リファレンス信号源等に用いられるデバイスとして、水晶等を利用した圧電振動子が用いられる。
この種の圧電振動子として、特許文献1に示すように、パッケージと蓋体で形成されるキャビティ内に圧電振動片を気密封止したものが知られている。
【0003】
図6は、従来の一般的な圧電振動片600の構造についての、斜視図(a)とP-P断面からの斜視図(b)を表したものである。
図6(a)、(b)に示すように、圧電振動片600は、圧電材料により形成された所定長さの基部800と、基部800から並んで延びる一対の振動腕部700a、bを備えている。
両振動腕部700a、bには、その主面(表裏面)に振動腕の長手方向に延びる溝720a、bが形成されると共に、その主面と側面に駆動用の電圧が印加される2系統の電極910、920が形成されている。
電極910、920の形成は、溝720a、b内を含めた圧電振動片600の全体に対して電極材料を蒸着やスパッタリングによって成膜する。そして両振動腕部700a、bの主面に形成された成膜のうち、図6に示す白色部分をフォトリソグラフにより取り除くことで、電極910と電極920とを分割している。
このようにして形成した圧電振動片600は、電極910と電極920とに異なる系統の電圧を掛けることで、両振動腕部700a、bが互いに振動する。
【0004】
しかし、電極910と電極920とを振動腕部700a、bの主面において分割しているため、導電性の異物Sが付着するとショートしてしまうという課題がある。
この導電性の異物Sとしては、例えば、圧電振動片を収容したパッケージと蓋体を接着する際の銀ロウのスプラッシュがある。
また、両振動腕部700a、bの両サイドや両者間に形成されたアームにより、圧電振動片をパッケージ内に接着し固定する場合には、導電性接着剤が異物Sとなる場合がある。
特に圧電振動片が小型化する傾向にあるが、小型化するほど両電極910、920間の幅も狭くなるため、より小さな異物Sもショートの原因になっていた。
【0005】
一方、それぞれの電極910と電極920を主面上には形成せず、振動腕部700a、bの側面と、溝720a、bの内側面に、主面よりも低い位置まで形成する技術も存在する(特許文献1)。
しかし、主面に電極を形成しないことで、導電性の異物Sによるショートは回避できるが、電極面積が減少してしまい、電界効率が低下(CI値が上昇)してしまうという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2008-118254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、異物によるショートが生じにくく、振動に寄与する電極部分の面積をより大きく確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)請求項1に記載の発明では、基部と、前記基部から並んで延設された1対の振動腕部と、前記1対の振動腕部の両主面に、長手方向に沿って形成された溝部と、前記溝部の各々により、当該溝部の両側に形成される土手部と、前記1対の振動腕部における、一方の振動腕部の両側面と、他方の振動腕部の溝部の両側面に形成された第1側面電極と、前記1対の振動腕部における、前記一方の振動腕部の溝部の両側面と、前記他方の振動腕部の両側面に形成された第2側面電極と、前記1対の振動腕部における、前記一方の振動腕部の4つの前記土手部の主面に、前記一方の振動腕部の両側面に形成された前記第1側面電極から延出して形成された第1主面電極と、前記1対の振動腕部における、前記他方の振動腕部の4つの前記土手部の全主面に、前記他方の振動腕部の両側面に形成された前記第2側面電極から延出して形成された第2主面電極と、を具備し、前記第1主面電極と前記第2主面電極は、各々が形成されている土手部の短手方向の幅をLとした場合に、L/2よりも短く形成され、前記他方の振動腕部の前記溝部の両側面に形成された第1側面電極の先端と、前記一方の振動腕部の前記溝部の両側面に形成された第2側面電極の先端は、土手部の主面よりも下側に形成されている、ことを特徴とする圧電振動片を提供する。
)請求項に記載の発明では、前記振動腕部の外側に並んで前記基部から延設された、実装用の1対の支持腕部を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の圧電振動片を提供する。
)請求項に記載の発明では、基部と、前記基部から並んで延設された1対の振動腕部と、前記1対の振動腕部の両主面に、長手方向に沿って形成された溝部と、前記溝部の各々により、当該溝部の両側に形成される土手部と、前記1対の振動腕部における、一方の振動腕部の両側面と、他方の振動腕部の溝部の両側面に形成された第1側面電極と、前記1対の振動腕部における、前記一方の振動腕部の溝部の両側面と、前記他方の振動腕部の両側面に形成された第2側面電極と、前記1対の振動腕部における、前記一方の振動腕部の4つの前記土手部の主面と、前記他方の振動腕部の4つの前記土手部の主面、のうちの少なくとも1つの主面に、前記第1側面電極から延出して形成された第1主面電極と、前記1対の振動腕部の各々において、4つの前記土手部の主面のうち、前記第1主面電極が、全ての主面に形成されている場合には最大3つの主面に、全ての主面には形成されていない場合には最大4つの主面に、前記第2側面電極から延出して形成された第2主面電極と、前記1対の振動腕部の間に前記基部から延設された、実装用の1つの支持腕部と、を具備し、前記1対の振動腕部における前記支持腕部に対向する側の土手部を内側土手部とし、対向しない側の土手部を外側土手部とした場合、前記第1主面電極は、4つの前記外側土手部と、前記一方の振動腕部における2つの前記内側土手部又は前記他方の振動腕部における2つの前記内側土手部に形成され、前記第2主面電極は、4つの前記外側土手部と、4つの前記内側土手部のうち、前記第1主面電極が形成されていない2つの前記内側土手部に形成されている、ことを特徴とする圧電振動片を提供する。
)請求項に記載の発明では、前記土手部の主面に第1主面電極が延出していない前記第1側面電極の先端と、前記土手部の主面に第2主面電極が延出していない前記第2側面電極の先端は、土手部の主面よりも下側に形成されている、ことを特徴とする請求項3に記載の圧電振動片を提供する。
)請求項に記載の発明では、基部と、前記基部から並んで延設された1対の振動腕部と、前記1対の振動腕部の両主面に、長手方向に沿って形成された溝部と、前記溝部の各々により、当該溝部の両側に形成される土手部と、前記1対の振動腕部における、一方の振動腕部の両側面と、他方の振動腕部の溝部の両側面に形成された第1側面電極と、前記1対の振動腕部における、前記一方の振動腕部の溝部の両側面と、前記他方の振動腕部の両側面に形成された第2側面電極と、前記1対の振動腕部における、前記一方の振動腕部の4つの前記土手部の主面と、前記他方の振動腕部の4つの前記土手部の主面、のうちの少なくとも1つの主面に、前記第1側面電極から延出して形成された第1主面電極と、前記1対の振動腕部の各々において、4つの前記土手部の主面のうち、前記第1主面電極が、全ての主面に形成されている場合には最大3つの主面に、全ての主面には形成されていない場合には最大4つの主面に、前記第2側面電極から延出して形成された第2主面電極と、前記1対の振動腕部の外側に並んで前記基部から延設された、実装用の1対の支持腕部と、を具備し、前記1対の振動腕部における土手部のうち、前記1対の支持腕部のいずれかの支持腕部に対向する側の土手部を外側土手部とし、対向しない側の土手部を内側土手部とした場合、前記第1主面電極は、4つの前記内側土手部と、前記一方の振動腕部における2つの前記外側土手部又は前記他方の振動腕部における2つの前記外側土手部に形成され、前記第2主面電極は、4つの前記内側土手部と、4つの前記外側土手部のうちの前記第1主面電極が形成されていない2つの前記外側土手部に形成され、前記土手部の主面に第1主面電極が延出していない前記第1側面電極の先端と、前記土手部の主面に第2主面電極が延出していない前記第2側面電極の先端は、土手部の主面よりも下側に形成されている、ことを特徴とする圧電振動片を提供する。
)請求項に記載の発明では、実装部を備えたパッケージと、前記実装部に接合材を介して実装された、請求項1から請求項のうちのいずれか1の請求項に記載の圧電振動片と、を具備したことを特徴とする圧電振動子を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、1対の励振腕部の各々における、4つの土手部の主面のうちの少なくとも1つの主面に、第1側面電極から延出して第1主面電極が形成され、4つの土手部の主面のうち、第1主面電極が、全ての主面に形成されている場合には最大3つの主面に、全ての主面には形成されていない場合には最大4つの主面に、第2側面電極から延出して第2主面電極が形成されているので、異物によるショートが生じにくく、振動に寄与する電極部分の面積を主面までの延設によって、より大きく確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】圧電振動片の構成と断面を表した図である。
図2】圧電振動片の変形例の構成を表した断面図である。
図3】圧電振動片の他の変形例を表した断面図である。
図4】圧電振動片の更に他の変形例を表した断面図である。
図5】圧電振動子の構成を表した斜視図である。
図6】従来の圧電振動片の構造について表した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の圧電振動片、及び圧電振動子における好適な実施形態について、図1から図5を参照して詳細に説明する。
(1)実施形態の概要
本実施形態の圧電振動片6は、音叉形の圧電振動片であり、基部8から1対の振動腕部7が延設されると共に、基部8から振動腕部7の両外側に並列して延設された支持腕部9を備える。1対の振動腕部7の長手方向には、その主面(裏表面)に一定幅の溝部72が形成されている。この溝部72により、振動腕部7には、外側土手部73と内側土手部74が形成されている。
【0012】
振動腕部7の外周面を構成する側面と主面及び溝部72内には、第1励振電極、第2励振電極として機能する、異なる2系統の励振電極91、92が形成されている。
本実施形態および各変形例によれば、振動腕部7に形成された、各4箇所の主面(外側土手部73の両主面2箇所と、内側土手部74の両主面2箇所の合計4箇所)のうちの少なくとも1箇所に対して、励振電極91、92の一方が側面から主面まで延設され、励振電極91、92の他方が側面における主面よりも低い位置まで形成されている。
これにより、導電性異物Sが主として飛来する土手部の主面箇所において、励振電極91と励振電極92とのショートを回避することができる。
なお、第1励振電極のうち、各土手の側面に形成されている部分が第1側面電極として機能し、土手の主面に形成されている部分が第1主面電極として機能する。また第2励振電極のうち、各土手の側面に形成されている部分が第2側面電極として機能し、土手の主面に形成されている部分が第2主面電極として機能する。
【0013】
(2)実施形態の詳細
図1は、実施形態に係る圧電振動片6の構成と断面を表した図である。
圧電振動片6は、水晶やタンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム等の圧電材料から形成された、いわゆる音叉形の振動片であり、所定の電圧が印加されたときに振動するものである。本実施形態では、圧電材料として水晶を使用して形成した圧電振動片を例に説明する。
【0014】
図1(a)に示すように、圧電振動片6は、一対の振動腕部7a、7bと、基部8と、一対の支持腕部9a、9bを備えている。
以下、振動腕部7a、7bの長さ方向(図1の左右方向)を長手方向、振動腕部7a、7bが対向する方向(図1(a)の上下方向)を短手方向、圧電振動片6の厚さの方向(図1(b)の上下方向)を厚さ方向という。
また、本実施形態及び変形例の圧電振動片6や後述する圧電振動子1は左右対称な構造となっているため、振動腕部7aと振動腕部7bというように、対称配置された両部分を同一の数字で表すと共に、両部分を区別するため、一方に区別符合a、A、他方に区別符合b、Bを付して説明する。ただし、区別符号を適宜省略して説明した場合には、両部分を指しているものとする。
【0015】
基部8は、一対の振動腕部7a、7bにおける長手方向の一方の端部同士を連結している。
基部8には、短手方向を向く両端面から外側に延びる連結部81a、81bが連結され、この連結部81a、81bには、長手方向に延びる支持腕部9a、9bが連結されている。一対の支持腕部9a、9bは、短手方向において、振動腕部7a、7bの両外側に配置されている。
【0016】
一対の振動腕部7a、7bは、互いに平行となるように配置されており、基部8側の端部を固定端とし、先端が自由端として振動する。
一対の振動腕部7a、7bは、その全長のほぼ中央部分の幅を基準幅とした場合、この基準幅よりも両側に広くなるように形成された拡幅部71a、71bを備えている。この拡幅部71a、71bは、振動腕部7a、7bの重量及び振動時の慣性モーメントを増大する機能を有している。これにより、振動腕部7a、7bは振動し易くなり、振動腕部7a、7bの長さを短くすることができ、小型化が図られている。
なお、本実施形態の圧電振動片6は、振動腕部7a、7bに拡幅部71a、71bが形成されているが、拡幅部のない圧電振動片を使用してもよい。
【0017】
また、本実施形態の圧電振動片6では、図示しないが、振動腕部7a、7bの先端部(拡幅部71a、71b)に、所定周波数の範囲内で振動するように調整(周波数調整)するための重り金属膜(粗調膜及び微調膜からなる)が形成されている。この重り金属膜を、例えばレーザ光を照射して適量だけ取り除くことで、周波数調整を行い、一対の振動腕部7a、7bの周波数をデバイスの公称周波数の範囲内に収めることができるようになっている。この重り金属膜についても、拡幅部と同様に形成しないことも可能である。
【0018】
図1(b)は、図1(a)に示すV-V線に沿った断面を矢印の方向に見た振動腕部7a、7bの断面図である。
図1(b)に示すように、一対の振動腕部7a、7bには、一定幅の溝部72a、72bが形成されている。
溝部72a、72bは、一対の振動腕部7a、7bの両主面(表裏面)上において、厚さ方向に凹むとともに、基部8側から長手方向に沿って延在している。溝部72a、72bは、振動腕部7a、7bの基端(基部8の先端側の端部)から、拡幅部71a、71bの手前までに形成されている。
溝部72a、72bにより、一対の振動腕部7a、7bは、それぞれ図1(b)に示すように断面H型となっている。
【0019】
そして、振動腕部7a、7bの主面には、溝部72a、72bが形成されることで、振動腕部7a、7bの短手方向外側の側面と、溝部72a、72bの短手方向外側の側面との間に外側土手部73a、73bが形成されている。
また、振動腕部7a、7bの短手方向内側の側面(振動腕部7a、7bの互いに対応する側の面)と、溝部72a、72bの短手方向内側の側面との間に内側土手部74a、74bが形成されている。
【0020】
図1(b)に示すように、一対の振動腕部7a、7bの外表面上(外周面)には、一対の(2系統の)励振電極91、92(第1励振電極、第2励振電極)が形成されている。この励振電極91、92は、電圧が印加されたときに一対の振動腕部7a、7bを互いに接近又は離間する方向に所定の共振周波数で振動させる電極であり、電気的に切り離された状態で振動腕部7a、7b上にパターニングされて形成されている。
具体的には、一方の励振電極91が、主に一方の振動腕部7aの溝部72a内と、他方の振動腕部7bの側面上とに互いに電気的に接続された状態で形成されている。
また、他方の励振電極92が、主に他方の振動腕部7bの溝部72b内と、一方の振動腕部7aの側面上とに互いに電気的に接続された状態で形成されている。
【0021】
本実施形態では、振動腕部7a、7bの外側と内側の両側面に形成された側の励振電極は、外側土手部73a、73bと内側土手部74a、74bの主面まで延設されている。
一方、溝部72a、72bの短手方向の両側面に形成された側の励振電極は、振動腕部7a、7bの主面よりも低い位置まで形成されていて、両土手部73a、73b、74a、74bの主面まで延設されていない。
具体的には、図1(b)に示されるように、振動腕部7aでは、その両側面に形成された励振電極92が外側土手部73aと内側土手部74aの主面まで延設され、溝部72aの短手方向の側面に形成された励振電極91が主面よりも低い位置(主面よりも底面側の位置)まで形成されている。
また振動腕部7bでは、その両側面に形成された励振電極91が外側土手部73bと内側土手部74bの主面まで延設され、溝部72bの短手方向の側面に形成された励振電極92が主面よりも低い位置(主面よりも底面側の位置)まで形成されている。
【0022】
圧電振動片6の一方の主面側の面(図1(a)の反対側の面)には、点線で示すように、支持腕部9a、9bに2系統のマウント電極99a、99bが形成されている。このマウント電極99a、99bは、図5で後述するように、パッケージに形成された実装部14A、14Bに圧電振動片6をマウントする際に、電極パッド20A、20Bと導電性接着剤51a、b、52a、bで接続される。
両マウント電極99a、99bと電気的に接続した2系統の引回し電極(図示しない)が連結部81a、81bと基部8に形成されている。
そして、支持腕部9aに形成された第1系統のマウント電極99aが引回し電極を介して励振電極92(図1(b)参照)と接続され、支持腕部9bに形成された第2系統のマウント電極99bが引回し電極を介して励振電極91と接続されている。
2系統の励振電極91、92は、一対のマウント電極99a、99bを介して電圧が印加されるようになっている。
【0023】
なお、励振電極91、92、マウント電極99a、99b、及び引回し電極は、例えば、クロム(Cr)と金(Au)との積層膜であり、水晶と密着性の良いクロム膜を下地として成膜した後に、表面に金の薄膜を施したものである。但し、この場合に限られず、例えば、クロムとニクロム(NiCr)の積層膜の表面にさらに金の薄膜を積層しても構わないし、クロム、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)やチタン(Ti)等の単層膜でも構わない。
【0024】
これら励振電極91、92、マウント電極99a、99b、及び、引回し電極の形成は従来と同様にして行われる。すなわち、各電極を形成する前の圧電振動片6の、溝部72a、72b内を含めた全体に電極材料を成膜する。この成膜は、電極材料の蒸着やスパッタリングによる。
そして、励振電極91、92、マウント電極99a、99b、引回し電極を形成する部分を残し、それ以外の部分をフォトリソグラフにより取り除くことで、2系統の電極ラインが形成される。
【0025】
以上説明したように、本実施形態の圧電振動片6によれば、図1(b)に示すように、2系統の励振電極91、92のうち、振動腕部7a、7bの側面に形成された側の励振電極が、両土手部73a、73b、74a、74bの主面上にまで延出して形成され、他方側の励振電極は、溝部72a、72bの側面の途中まで形成されている。
すなわち、両土手部73a、73b、74a、74bには、励振電極91、92のうちの何れか一方だけが形成されている。
このため、図1(c)に示すように、振動腕部7a、7bの主面上に導電性の異物Sが付着したとしても、溝部72a、72bの側面側の励振電極は主面よりも低い位置までしか形成されていないので、励振電極91と励振電極92とのショートを回避することができる。
また、本実施形態の圧電振動片6によれば、振動腕部7a、7bの側面に形成された側の励振電極が、両土手部73a、73b、74a、74bの主面上にまで延出して形成されることで、励振電極91、92を土手部の主面に形成しない場合(例えば、特許文献1)に比べて、主面上の延出分だけ電極面積を確保でき、その結果電界効率を上げることができる。
【0026】
なお、説明した実施形態では、外側土手部73a、73b、内側土手部74a、74bの各主面に延出している励振電極91又は励振電極92の長さは、各土手部の短手方向の幅をLとした場合に、L/2よりも短く形成しているが、L/2よりも広く形成するようにしてもよい。例えば、各主面の延出長さとしてL/2や、2L/3、3L/4の長さとしてもよい。
主面部にまで延出する励振電極91又は励振電極92の長さを長くすることで、異物Sによるショートを回避しつつ、より電界効率を上げることができる。
なお、励振電極91又は励振電極92の長さをL/2よりも長くすることについては、後述する各変形例において、各土手部の主面に励振電極91と励振電極92の何れか一方だけを延出させる場合に適用可能である。
【0027】
次に、圧電振動片6の変形例について図2~4を参照して説明する。
図2は圧電振動片6の変形例の構成を表した断面図である。
図2に示した変形例の圧電振動片6では、両土手部73a、73b、74a、74bの主面に形成する励振電極91、92が異なる点を除き、他は実施形態と同じである。
図2(a)に示した第1変形例では、図1(b)で説明した実施形態と逆に、2系統の励振電極91、92のうち、溝部72a、72bの短手方向の側面に形成された側の励振電極が、両土手部73a、73b、74a、74bの主面上にまで延出して形成され、他方側の励振電極は、振動腕部7a、7bの側面の途中まで形成されている。
具体的には、振動腕部7aでは、溝部72aの短手方向の側面に形成された励振電極91が外側土手部73aと内側土手部74aの主面まで延設され、振動腕部7aの両側面に形成された励振電極92が主面よりも低い位置まで形成されている。
また、振動腕部7bでは、溝部72bの短手方向の側面に形成された励振電極92が外側土手部73bと内側土手部74bの主面まで延設され、振動腕部7bの両側面に形成された励振電極91が主面よりも低い位置まで形成されている。
この第2変形例においても、振動腕部7a、7bの主面上に導電性の異物Sが付着したとしても、振動腕部7a、7bの両側面側の励振電極が主面よりも低い位置までしか形成されていないので、励振電極91と励振電極92とのショートを回避することができる。
また、主面上の延出分だけ電極面積を確保できるため、電界効率を上げることができる。
【0028】
実施形態と第1変形例は、振動腕部7a、7bにおける外側土手部73a、73b、内側土手部74a、74bの各主面には、励振電極91、92のうちの何れか一方だけを形成することで、導電性の異物Sによるショートを回避するものである。
しかし、ショートの原因である導電性の異物Sは、上述したように、圧電振動片6をパッケージ内にマウントする際の導電性接着剤や、パッケージと蓋体を接着する際の銀ロウ等のスプラッシュが原因である。
そして、いずれの場合の異物Sも、圧電振動片6の短手方向外側から飛来するものであるため、異物Sによる励振電極91、92のショートは、主として外側土手部73a、73bに生じている。
【0029】
そこで、図2(b)(c)に示した第2、第3変形例では、外側土手部73a、73bの各主面にだけ励振電極91、92のうちの何れか一方を形成し、内側土手部74a、74bでは、励振電極91、92の両者を主面まで延出させている。
これにより、導電性異物Sによる励振電極91、92のショートを有効に回避しつつ、励振に寄与する励振電極の面積をより大きく確保することができる。
【0030】
すなわち、図2(b)に示した第2変形例では、振動腕部7aの外側土手部73aには、溝部72aに形成された励振電極91が主面に延設され、振動腕部7aの外側面の励振電極92は主面より低く形成されている。
振動腕部7bの外側土手部73bには、溝部72bに形成された励振電極92が主面に延設され、振動腕部7bの外側面の励振電極91は主面より低く形成されている。
一方、振動腕部7a、7bの内側土手部74a、74bは、両励振電極91、92が共に主面まで延設されている。
【0031】
図2(c)に示した第3変形例では、振動腕部7aの外側土手部73aには、振動腕部7aの外側面の励振電極92が主面まで延設され、溝部72aの外側土手部73a側に形成された励振電極91は主面より低く形成されている。
振動腕部7bの外側土手部73bには、振動腕部7bの外側面の励振電極91が主面まで延設され、溝部72bの外側土手部73b側に形成された励振電極92は主面より低く形成されている。
一方、振動腕部7a、7bの内側土手部74a、74bは、両励振電極91、92が共に主面まで延設されている。
【0032】
図3は、圧電振動片6の他の変形例を表した断面図である。
実施形態や第1~第3変形例で説明した圧電振動片6は、いずれも振動腕部7a、7bの両外側にマウント用の支持腕部9a、9bが形成された、いわゆるサイドアーム型の例である。
これに対して図3(a)に示した第4変形例、同(b)の第5変形例は、両振動腕部7a、7bの間に1本の支持腕部9cが配設されている、いわゆるセンターアーム型の例である。
第4、第5変形例の圧電振動片6は、この支持腕部9cにより圧電振動子のパッケージにマウントされる。そして、1本の支持腕部9cに、2系統のマウント電極99a、99b(図示しない)が、図面下側の主面に形成されている。
【0033】
図3に示した第4、第5変形例では、中央の支持腕部9c側に近い側の内側土手部74a、74bの各主面にだけ励振電極91、92のうちの何れか一方を形成し、外側土手部73a、73bでは、励振電極91、92の両者を主面まで延出させている。
図3(a)に示した第4変形例では、振動腕部7aの内側土手部74aに、溝部72aに形成された励振電極91が主面に延設され、振動腕部7aの内側(支持腕部9c側)面の励振電極92は主面より低く形成されている。
振動腕部7bの内側土手部74bには、溝部72bに形成された励振電極92が主面に延設され、振動腕部7bの内側(支持腕部9c側)面の励振電極91は主面より低く形成されている。
一方、振動腕部7a、7bの外側土手部73a、73bは、両励振電極91、92が共に主面まで延設されている。
【0034】
図3(b)に示した第5変形例では、振動腕部7aの内側(支持腕部9c側)面の励振電極92が主面まで延設され、溝部72aの内側土手部74a側に形成された励振電極91は主面より低く形成されている。
振動腕部7bの内側土手部74bには、振動腕部7bの内側(支持腕部9c側)面の励振電極91が主面まで延設され、溝部72bの内側土手部74b側に形成された励振電極92は主面より低く形成されている。
一方、振動腕部7a、7bの外側土手部73a、73bは、両励振電極91、92が共に主面まで延設されている。
【0035】
なお、図3に示したセンターアーム型の圧電振動片6では、導電性の異物Sの主原因が、支持腕部9cで圧電振動片6をマウントする際の導電性接着剤であり、パッケージに蓋体を接着する際のスプラッシュによる異物Sではない場合の例である。
マウントによる導電性接着剤と、接着によるスプラッシュの両者が異物Sとなる場合には、実施形態や第1変形例(図1(b)、図2(a)参照)と同様に、外側土手部73a、73bと内側土手部74a、74b共に、励振電極91、92の何れか一方のみを主面まで延設することができる。
【0036】
逆に、センターアーム型の圧電振動片6において、導電性の異物Sの主原因が、支持腕部9cで圧電振動片6をマウントする際の導電性接着剤ではなく、パッケージに蓋体を接着する際のスプラッシュによる異物Sである場合には、図2(b)、(c)で示した第2、第3変形例と同様に、外側土手部73a、73bに対して励振電極91、92の何れか一方のみを主面まで延設することができる。
この場合、内側土手部74a、74bは、両励振電極91、92が共に主面まで延設される。
【0037】
次に、更に別の変形例について説明する。
圧電振動片6では、主面が2つ存在している。すなわち、振動腕部7a、7bの外側土手部73a、73bと内側土手部74a、74bに対して、図1(b)、図2図3に示した圧電振動片6では、図面上側の主面と下側の主面が存在する。
説明した実施形態と第1~第5変形例の圧電振動片6では、外側土手部73a、73b、内側土手部74a、74bの両主面とも、励振電極91、92の延設状態が同じである。
例えば、図2(b)に示した第2変形例では、外側土手部73a、73b共に、両主面まで励振電極91、92の一方が延設され、他方が主面よりも低く形成されている。また、内側土手部74a、74b共に、両主面まで励振電極91、92の両方が延設されている。
【0038】
これに対して、次に説明する変形例では、励振電極91、92のうちの一方だけが主面まで延設されるのは、圧電振動片6の両主面のうちの一方側の主面だけであり、他方側の主面では両励振電極91、92が主面まで延設される。
ここで、「一方側の主面」とは、導電性異物Sの原因になる導電性接着剤(マウント部)とスプラッシュを生じる部分(蓋の接続部)に近い側の主面が該当する。
そして、両主面のうち、一方の主面がマウント部に近く、他方の主面が蓋の接続部に近い場合、いずれか導電性の異物Sの主原因となっている側だけを対象とする。但し、両者が導電性異物Sの主原因となっている場合には、実施形態又は第1~第5変形例による。
なお、圧電振動片6の支持腕部9a、9bは振動腕部7a、7bとほぼ同じ厚さに形成されるため、支持腕部9a、9bにマウント電極99a、99bが形成される側の面が「一方側の主面」となる。
【0039】
図4は、圧電振動片の第6、第7変形例を表した断面図である。
この第6、第7変形例は、サイドアーム型の圧電振動片6で、マウントによる導電性接着剤よりも、図面上方からのスプラッシュが主原因となる場合の例である。
図4(a)に示した圧電振動片6では、振動腕部7aの外側土手部73aの両主面のうち、上側の主面にだけ、溝部72aに形成された励振電極91が延設され、振動腕部7aの外側面の励振電極92は主面より低く形成されている。
振動腕部7bの外側土手部73bの両主面のうち、上側の主面にだけ、溝部72bに形成された励振電極92が主面に延設され、振動腕部7bの外側面の励振電極91は主面より低く形成されている。
そして、外側土手部73a、73bの下側の主面、及び、内側土手部74a、74bの両主面は、両励振電極91、92が共に主面まで延設されている。
【0040】
図4(b)に示した第7変形例は、第6変形例と同様に、外側土手部73a、73bの上側の主面にだけ、励振電極91、92の一方を主面まで延設し、他方を主面より低く形成した例である。
すなわち、第7変形例では、第6変形例とは逆に、振動腕部7a、7bにおける各外側面の励振電極92、91が外側土手部73a、73bの上側主面まで延設され、溝部72a、72bの励振電極91、92が主面よりも低く形成されている。
そして、外側土手部73a、73bの下側の主面、及び、内側土手部74a、74bの両主面は、両励振電極91、92が共に主面まで延設されている。
【0041】
なお、図4に示した第6、第7変形例では、圧電振動片6の主面のうち、図面上側の主面に導電性異物Sが付着する場合、すなわち、主として図面上方からのスプラッシュが原因である場合を例に説明した。これに対し、上方からのスプラッシュよりも、マウント電極99a、99bが形成される側の主面への、マウントによる導電性接着剤が主原因になる場合には、外側土手部73a、73bの下側の主面にだけ、励振電極91、92の一方を主面まで延設し、他方を主面より低く形成する。
【0042】
また、図4に示した第6、第7変形例は、サイドアーム型(図1(a)参照)の圧電振動片6を対象にしているが、図3で説明したセンターアーム型の圧電振動片6に対しても同様に適用することができる。
更に、基部8から延びる支持腕部9を備えていない、圧電振動片6においても、外側土手部73a、73b、内側土手部74a、74bの両主面のうちの何れかの主面に対して、側面から延設する励振電極を励振電極91、92の一方とする、実施形態、変形例を適用することができる。この場合の圧電振動片6は、基部8にマウント電極99a、99bが形成される。
【0043】
以上説明した実施形態および各変形例によれば、振動腕部7aと振動腕部7bの各々に形成された、各4箇所の主面(外側土手部73a、73bの両主面2箇所と、内側土手部74a、74bの両主面2箇所の合計4箇所)のうちの少なくとも1箇所に対して、励振電極91、92のうちの一方が側面から主面まで延設され、他方が側面における主面よりも低い位置まで形成されている。
これにより、導電性異物Sが主として飛来する土手部の主面箇所において、励振電極91と励振電極92とのショートを回避することができる。
【0044】
次に、圧電振動片6を実装した圧電振動子1について説明する。
この圧電振動子1は、図1(a)で説明したサイドアーム型の圧電振動片を例に説明するが、センターアーム型の圧電振動片6や、支持腕部9を有しない圧電振動片6についても、マウント部の構造とマウント箇所が異なることを除き同様である。
図5は、上述した実施形態又は変形例に係るサイドアーム型の圧電振動片6を備えた圧電振動子1の分解斜視図である。
図5に示すように、本実施形態の圧電振動子1は、内部に気密封止されたキャビティCを有するパッケージ2と、キャビティC内に収容された圧電振動片6と、を備えたセラミックパッケージタイプの表面実装型振動子である。
パッケージ2は、概略直方体状に形成されている。パッケージ2は、パッケージ本体3と、パッケージ本体3に対して接合されるとともに、パッケージ本体3との間にキャビティCを形成する封口板4と、を備えている。
パッケージ本体3は、互いに重ね合わされた状態で接合された第1ベース基板10および第2ベース基板11と、第2ベース基板11上に接合されたシールリング12と、を備えている。
【0045】
第1ベース基板10および第2ベース基板11の四隅には、平面視1/4円弧状の切欠部15が、両ベース基板10、11の厚み方向の全体に亘って形成されている。これら第1ベース基板10および第2ベース基板11は、例えばウエハ状のセラミック基板を2枚重ねて接合した後、両セラミック基板を貫通する複数のスルーホールを行列状に形成し、その後、各スルーホールを基準としながら両セラミック基板を格子状に切断することで作製される。その際、スルーホールが4分割されることで、切欠部15となる。
【0046】
なお、第1ベース基板10および第2ベース基板11はセラミックス製としたが、その具体的なセラミック材料としては、例えばアルミナ製のHTCC(High Temperature Co-Fired Ceramic)や、ガラスセラミック製のLTCC(Low Temperature Co-Fired Ceramic)等が挙げられる。
【0047】
第1ベース基板10の上面は、キャビティCの底面に相当する。
第2ベース基板11は、第1ベース基板10に重ねられており、第1ベース基板10に対して焼結などにより結合されている。すなわち、第2ベース基板11は、第1ベース基板10と一体化されている。
なお、後述するように第1ベース基板10と第2ベース基板11の間には、両ベース基板10、11に挟まれた状態で接続電極(図示せず)が形成されている。
【0048】
第2ベース基板11には、貫通部11aが形成されている。貫通部11aは、四隅が丸みを帯びた平面視長方形状に形成されている。貫通部11aの内側面は、キャビティCの側壁の一部を構成している。貫通部11aの短手方向で対向する両側の内側面には、内方に突出する実装部14A、14Bが設けられている。実装部14A、14Bは、貫通部11aの長手方向略中央に形成されている。実装部14A、14Bは、貫通部11aの長手方向の長さの1/3以上の長さに形成されている。
【0049】
シールリング12は、第1ベース基板10および第2ベース基板11の外形よりも一回り小さい導電性の枠状部材であり、第2ベース基板11の上面に接合されている。具体的には、シールリング12は、銀ロウ等のロウ材や半田材等による焼付けによって第2ベース基板11上に接合、あるいは、第2ベース基板11上に形成(例えば、電解メッキや無電解メッキの他、蒸着やスパッタ等により)された金属接合層に対する溶着等によって接合されている。
【0050】
シールリング12の材料としては、例えばニッケル基合金等が挙げられ、具体的にはコバール、エリンバー、インバー、42-アロイ等から選択すれば良い。特に、シールリング12の材料としては、セラミック製とされている第1ベース基板10および第2ベース基板11に対して熱膨張係数が近いものを選択することが好ましい。例えば、第1ベース基板10および第2ベース基板11として、熱膨張係数6.8×10-6/℃のアルミナを用いる場合には、シールリング12としては、熱膨張係数5.2×10-6/℃のコバールや、熱膨張係数4.5~6.5×10-6/℃の42-アロイを用いることが好ましい。
【0051】
封口板4は、シールリング12上に重ねられた導電性基板であり、シールリング12に対する接合によってパッケージ本体3に対して気密に接合されている。そして、封口板4、シールリング12、第2ベース基板11の貫通部11a、および第1ベース基板10の上面により画成された空間が、気密に封止されたキャビティCとして機能する。
【0052】
封口板4の溶接方法としては、例えばローラ電極を接触させることによるシーム溶接や、レーザ溶接、超音波溶接等が挙げられる。また、封口板4とシールリング12との溶接をより確実なものとするため、互いになじみの良いニッケルや金等の接合層を、少なくとも封口板4の下面と、シールリング12の上面とにそれぞれ形成することが好ましい。
【0053】
第2ベース基板11の実装部14A、14Bの上面には、圧電振動片6との接続電極である一対の電極パッド20A、20Bが形成されている。また、第1ベース基板10の下面には、一対の外部電極21A、21Bがパッケージ2の長手方向に間隔をあけて形成されている。電極パッド20A、20Bおよび外部電極21A、21Bは、例えば蒸着やスパッタ等で形成された単一金属による単層膜、または異なる金属が積層された積層膜である。
電極パッド20A、20Bと外部電極21A、21Bとは、第2ベース基板11の実装部14A、14Bに形成された第2貫通電極22A、22B、第1ベース基板10と第2ベース基板11の間に形成された接続電極(図示せず)、及び、第1ベース基板10に形成された第1貫通電極(図示せず)を介して互いにそれぞれ導通している。
【0054】
圧電振動片6は、一対の支持腕部9a、9bにより実装部14A、14B上に実装された状態で、気密封止されたパッケージ2のキャビティC内に収容されている。
すなわち、図5に示すように、圧電振動片6は、支持腕部9a、9bに設けられた各マウント電極99a、99b(図1(a)参照)が、実装部14A、14B上の電極パッド20A、20B(上面にメタライズ層が形成されている場合は該メタライズ層)にそれぞれ接合材51a、51b、52a、52bを介して電気的および機械的に接合されている。
このように、本実施形態の圧電振動片6は、支持腕部9a、9bのそれぞれが、その長さ方向(長手方向)の2箇所で実装部14A、14B上に接合保持(2点支持)される。
【0055】
接合材51a、51b、52a、52bは、導電性を有し、かつ接合初期の段階において流動性を持ち、接合後期の段階において固化して接合強度を発現する性質を有するものが使用され、例えば、銀ペースト等の導電性接着剤や、金属バンプ等の使用が好適である。
接合材51a、51b、52a、52bが導電性接着剤により構成されている場合、塗布装置の移動ヘッドに支持されたディスペンサノズルにより塗布される。
本実施形態では、各接合材のサイズは圧電振動子1のサイズによるが、例えば、1.2mm×1.0mmサイズの圧電振動子1の場合、半径0.1mm程度に塗布される。
【0056】
このように構成された圧電振動子1を作動させる場合には、外部電極21A、21Bに所定の電圧を印加する。外部電極21A、21Bに所定の電圧が印加されると、2系統の励振電極91、92に電流が流れ、2系統の励振電極91、92間に発生する電界による逆圧電効果によって、一対の振動腕部7a、7bは、例えば互いに接近、離間する方向(短手方向)に所定の共振周波数で振動する。一対の振動腕部7a、7bの振動は、時刻源、制御信号のタイミング源やリファレンス信号源などとして用いられる。
本実施形態の圧電振動片6では、上述したように、外側土手部73a、73b、内側土手部74a、74bの主面には、励振電極91、92の少なくとも一方の励振電極が側面(外側側面又は溝部72a、72bの側面)から延設しているので、導電性異物の付着によるショートを回避しつつ、振動に寄与する面積を大きくすることができ、圧電効果を良くすることができる。
【0057】
以上説明した圧電振動子1は、電波時計、携帯電話や携帯情報端末機器には、時刻源や制御信号等のタイミング源、リファレンス信号源等として、また、ジャイロセンサなどの計測機器等として使用される。
【0058】
本発明は、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、上記実施形態においては、圧電振動片6を用いた圧電振動子1として、セラミックパッケージタイプの表面実装型振動子について説明したが、圧電振動片6を、ガラス材によって形成されるベース基板およびリッド基板が陽極接合によって接合されるガラスパッケージタイプの圧電振動子1に適用することも可能である。
また、説明した実施形態の電極パッド20は、実装部14のほぼ全面に形成されているが、接合材51、52の少なくとも一方に対応する領域に形成されていればよい。
【0059】
また、本実施形態として圧電振動片、圧電振動子を次のように構成するようにしてもよい。
(1)構成1
基部と、
前記基部から並んで延設された1対の振動腕部と、
前記1対の振動腕部の両主面に、長手方向に沿って形成された溝部と、
前記溝部の各々により、当該溝部の両側に形成される土手部と、
一方側の前記振動腕部の側面と、他方側の前記振動腕部の溝部に形成された第1励振電極と、
前記他方側の前記振動腕部の側面と、前記一方側の前記振動腕部の溝部に形成された第2励振電極と、を備え、
前記振動腕部の各々は、4つのうちの少なくとも1つの前記土手部において、前記第1励振電極と前記第2励振電極のうちの一方の励振電極が当該土手部の一方の側面から主面まで延設され、他方の励振電極が他方の側面から主面よりも下側まで形成されている、
ことを特徴とする圧電振動片。
この構成の圧電振動片によれば、振動腕部の各々は、4つのうちの少なくとも1つの土手部において、第1励振電極と第2励振電極のうちの一方の励振電極が当該土手部の一方の側面から主面まで延設され、他方の励振電極が他方の側面から主面よりも下側まで形成されているので、異物によるショートが生じにくく、振動に寄与する電極部分の面積を主面までの延設によって、より大きく確保することができる。
【0060】
(2)構成2
前記4つのうちの他の土手部が存在する場合には当該他の土手部において、前記第1励振電極と前記第2励振電極の両方が前記土手部の側面から主面まで延設されている、
ことを特徴とする構成1に記載の圧電振動片。
(3)構成3
前記4つの全土手部において、前記一方の励振電極が当該土手部の一方の側面から主面まで延設され、前記他方の励振電極が他方の側面から主面よりも下側まで形成されている、
ことを特徴とする構成1、又は構成2に記載の圧電振動片。
(4)構成4
前記4つの土手部のうち、
前記他方の振動腕部から離れた側の外側土手部において、前記一方の励振電極が当該土手部の一方の側面から主面まで延設され、前記他方の励振電極が他方の側面から主面よりも下側まで形成され、
前記他方の振動腕部に近い側の内側土手部において、前記第1励振電極と前記第2励振電極の両方が前記土手部の側面から主面まで延設されている、
ことを特徴とする構成1、又は構成2に記載の圧電振動片。
(5)構成5
前記振動腕部の外側に並んで前記基部から延設された、実装用の1対の支持腕部を有する、
ことを特徴とする構成1から構成4のうちのいずれか1の構成に記載の圧電振動片。
(6)構成6
前記1対の振動腕部の間に前記基部から延設された、実装用の1つの支持腕部を備え、
前記4つの土手部のうち、少なくとも前記他方の振動腕部に近い側の内側土手部において、前記一方の励振電極が当該土手部の一方の側面から主面まで延設され、前記他方の励振電極が他方の側面から主面よりも下側まで形成されている、
ことを特徴とする構成1、又は請求項2に記載の圧電振動片。
(7)構成7
実装部を備えたパッケージと、
前記実装部に接合材を介して実装された、構成1から構成6のうちのいずれか1の構成に記載の圧電振動片と、
を具備したことを特徴とする圧電振動子。
【符号の説明】
【0061】
1 圧電振動子
2 パッケージ
3 パッケージ本体
4 封口板
6 圧電振動片
7 振動腕部
8 基部
9 支持腕部
10 第1ベース基板
11 第2ベース基板
14 実装部
20 電極パッド
21 外部電極
22 第2貫通電極
51、52 接合材
72 溝部
73 外側土手部
74 内側土手部
91 励振電極
92 励振電極
99 マウント電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6