(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-21
(45)【発行日】2023-06-29
(54)【発明の名称】スイッチング電源用回路
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20230622BHJP
【FI】
H02M3/155 H
H02M3/155 B
(21)【出願番号】P 2018219581
(22)【出願日】2018-11-22
【審査請求日】2021-10-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和智 貴嗣
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ ジー タン ジュニア
【審査官】白井 孝治
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-090384(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0257055(US,A1)
【文献】特開2012-139023(JP,A)
【文献】特開2013-094015(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00~3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力トランジスタのスイッチング動作により入力電圧から出力電圧を生成するスイッチング電源用回路において、
前記出力電圧に応じた帰還電圧と基準電圧との差分に応じた誤差電圧を生成するエラーアンプ、及び、前記出力トランジスタに流れる電流に応じたスロープ電圧を生成するスロープ電圧生成部を有して、前記誤差電圧及び前記スロープ電圧に基づき前記出力トランジスタを制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記誤差電圧と所定のスキップ判定電圧との比較結果に基づくスキップ信号を生成するスキップコンパレータを更に有し、基本区間においてクロック信号に同期して前記スイッチング動作を実行する基本スイッチング制御を行い、
前記基本区間では前記スキップ信号が第1レベルで維持され、
前記制御部は、前記基本区間にて前記基本スイッチング制御を
行う状態を経て、前記スキップ信号が前記第1レベルから前記第1レベルと異なる第2レベルに変化すると前記クロック信号に同期した前記基本スイッチング制御を停止するスキップ制御を行い、その後、前記スキップ信号が前記第2レベルから前記第1レベルに遷移したとき、前記基本スイッチング制御における前記クロック信号とは非同期で前記出力トランジスタをターンオンする
、スイッチング電源用回路。
【請求項2】
前記基本スイッチング制御において、前記出力電圧の供給を受ける負荷の電流が大きくなるほど前記誤差電圧が第1方向に向けて変化してゆき、且つ、前記負荷の電流が小さくなるほど前記誤差電圧が前記第1方向とは逆の第2方向に向けて変化してゆき、
前記スキップコンパレータは、前記誤差電圧の前記第2方向への変化により前記誤差電圧及び前記スキップ判定電圧間の高低関係が逆転したとき、前記スキップ信号を前記第1レベルから前記第2レベルに変化させ、且つ、前記誤差電圧の前記第1方向への変化により前記誤差電圧及び前記スキップ判定電圧間の高低関係が逆転したとき、前記スキップ信号を前記第2レベルから前記第1レベルに変化させ、
前記エラーアンプは、前記出力電圧の低下に伴って前記誤差電圧が前記第1方向に変化するよう構成されており、
前記スキップ制御の開始後、前記出力電圧の低下に伴って前記誤差電圧が前記第1方向に変化し、これによって前記スキップ信号が前記第2レベルから前記第1レベルに遷移したとき、前記制御部は、前記基本スイッチング制御における前記クロック信号とは非同期で前記出力トランジスタをターンオンする
、請求項1に記載のスイッチング電源用回路。
【請求項3】
前記制御部は、前記スキップ信号の前記第2レベルから前記第1レベルへの遷移に応答して特定信号を生成する特定信号生成部を有し、前記特定信号に基づき前記出力トランジスタをターンオンする
、請求項1又は2に記載のスイッチング電源用回路。
【請求項4】
前記制御部は、前記特定信号に基づき前記出力トランジスタをターンオンした後、前記誤差電圧と前記スロープ電圧との比較結果に基づき前記出力トランジスタのターンオフタイミングを決定する
、請求項3に記載のスイッチング電源用回路。
【請求項5】
前記制御部は、前記基本区間にて前記基本スイッチング制御を
行う状態を経て、前記スキップ信号が前記第1レベルから前記第2レベルに変化する
と前記スキップ制御を行い、その後、前記スキップ信号が特定のタイミングにて前記第2レベルから前記第1レベルに遷移し、且つ、前記特定のタイミング以降、前記特定のタイミングより所定時間後のタイミングを超えて前記スキップ信号が前記第1レベルにて維持されるとき、前記特定のタイミングより前記所定時間経過後の他の区間において、第2クロック信号に同期した前記出力トランジスタのPWM制御を実行し、前記PWM制御を前記誤差電圧及び前記スロープ電圧に基づいて実行する
、請求項4に記載のスイッチング電源用回路。
【請求項6】
前記制御部は、前記基本区間にて前記基本スイッチング制御を
行う状態を経て、前記スキップ信号が前記第1レベルから前記第2レベルに変化する
と前記スキップ制御を行い、その後、前記スキップ信号が特定のタイミングにて前記第2レベルから前記第1レベルに遷移し、且つ、前記特定のタイミングから所定時間内に前記スキップ信号の前記第2レベルから前記第1レベルへの再度の遷移があったときには、前記再度の遷移に応答した前記特定信号に基づき前記出力トランジスタを再度ターンオンする
、請求項4に記載のスイッチング電源用回路。
【請求項7】
前記制御部は、前記特定信号に基づき前記出力トランジスタを所定のオン時間だけオンとした後、前記出力トランジスタをターンオフする
、請求項3に記載のスイッチング電源用回路。
【請求項8】
当該スイッチング電源用回路の動作モードを設定する動作モード設定部を更に備え、
前記動作モード設定部は、前記動作モードを、前記エラーアンプ及び前記スキップコンパレータとともに前記スイッチング電源用回路内の特定の回路を動作させる第1モード、又は、前記エラーアンプ及び前記スキップコンパレータを動作させつつも前記特定の回路の動作を停止させることで前記第1モードよりも当該スイッチング電源用回路の消費電力を低減する第2モードに設定することが可能であり、
前記動作モードが前記第1モードに設定されている状態において、前記スキップ信号の前記第1レベルから第2レベルへの遷移があった後、所定の設定時間以上、前記スキップ信号が前記第2レベルに維持されているとき、前記動作モード設定部は、前記動作モードを前記第2モードに切り替える
、請求項1~7の何れかに記載のスイッチング電源用回路。
【請求項9】
前記制御部は、当該スイッチング電源用回路の起動時において、前記基準電圧より低い電位から前記基準電圧より高い電位に向けて徐々に電位が上昇するソフトスタート電圧を生成するソフトスタート電圧生成部を更に有し、
前記エラーアンプは、前記ソフトスタート電圧が前記基準電圧よりも低いときには、前記帰還電圧と前記ソフトスタート電圧との差分に応じて前記誤差電圧を生成し、前記ソフトスタート電圧が前記基準電圧よりも高いときには、前記帰還電圧と前記基準電圧との差分に応じて前記誤差電圧を生成し、
前記スキップコンパレータは、前記誤差電圧が前記スキップ判定電圧より高いときに前記第1レベルの前記スキップ信号を出力し、前記誤差電圧が前記スキップ判定電圧より低いときに前記第2レベルの前記スキップ信号を出力するよう構成され、
前記制御部は、前記ソフトスタート電圧が前記基準電圧以上の所定電圧に達するまでにおいて、それ以降よりも、前記スキップ判定電圧を低く設定する
、請求項1~8の何れかに記載のスイッチング電源用回路。
【請求項10】
当該スイッチング電源用回路は半導体集積回路を用いて形成される
、請求項1~9の何れかに記載のスイッチング電源用回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング電源装置を形成するためのスイッチング電源用回路に関する。
【背景技術】
【0002】
図20にカレントモードで動作するスイッチング電源装置900の構成例を示す。スイッチング電源装置900は、入力電圧Vinを出力トランジスタ911にてスイッチングすることで出力電圧Voutを得る降圧型のDC/DCコンバータである。出力トランジスタ911と、出力電圧Voutが加わる出力コンデンサ913との間にインダクタ912が配置される。スイッチング電源装置900では、出力電圧Voutに応じた帰還電圧Vfbと基準電圧Vrefとの差分に応じた誤差電圧Vcmpをエラーアンプ914にて生成し、誤差電圧Vcmpと出力トランジスタ911の電流情報(従ってインダクタ912の電流情報)とを用いて出力トランジスタ911を制御することで出力電圧Voutを所望の目標電圧に安定化させる。
【0003】
図20のスイッチング電源装置900では、クロック信号clkに同期して出力トランジスタ911のターンオンを指定するセット信号setが生成される。そして、出力トランジスタ911に流れる電流に応じたスロープ電圧Vslpが誤差電圧Vcmpに達するとリセット信号rstが発行されて出力トランジスタ911がターンオフされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
カレントモードで動作するスイッチング電源装置900では、原理上、出力電圧Voutの供給を受ける負荷の電流に応じて誤差電圧Vcmpが変動する。そして、誤差電圧Vcmpに基づき負荷が軽いと判断される状況下では、クロック信号clkをマスクして出力トランジスタ911のスイッチングを停止させるといった軽負荷制御が可能である。軽負荷制御により、軽負荷時におけるスイッチング損失を低減することが可能である。
【0006】
軽負荷制御が開始された後、出力電圧Voutの低下が検知された場合には、出力トランジスタ911を通じた出力コンデンサ913の充電を行うべきである。しかしながら、
図20の構成では、セット信号setがクロック信号clkに同期して生成されており、且つ、出力電圧Voutの低下の検知信号とクロック信号clkとは非同期であることから、出力コンデンサ913の充電を行うべきタイミングにおいて直ちに出力トランジスタ911をオンとすることができないことがあり、結果、出力電圧Voutのリプルが大きくなることがある(この点については後に詳説される)。出力電圧Voutのリプル低減は重要である。また、PWM制御への移行をスムーズにすることも重要である。
【0007】
本発明は、出力電圧のリプル低減に寄与するスイッチング電源用回路を提供することを目的とする。より具体的には例えば、本発明は、軽負荷制御時における出力電圧のリプル低減と、PWM制御へのスムーズな移行に寄与するスイッチング電源用回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るスイッチング電源用回路は、出力トランジスタのスイッチング動作により入力電圧から出力電圧を生成するスイッチング電源用回路において、前記出力電圧に応じた帰還電圧と基準電圧との差分に応じた誤差電圧を生成するエラーアンプ、及び、前記出力トランジスタに流れる電流に応じたスロープ電圧を生成するスロープ電圧生成部を有して、前記誤差電圧及び前記スロープ電圧に基づき前記出力トランジスタを制御する制御部を備え、前記制御部は、前記誤差電圧と所定のスキップ判定電圧との比較結果に基づくスキップ信号を生成するスキップコンパレータを更に有し、前記スキップ信号が第1レベルであるとき、クロック信号に同期して前記スイッチング動作を実行する基本スイッチング制御を行うことが可能であり、前記基本スイッチング制御を行っているときに前記スキップ信号が前記第1レベルから前記第1レベルと異なる第2レベルに変化すると前記クロック信号に同期した前記スイッチング動作を停止するスキップ制御を行い、その後、前記スキップ信号が前記第2レベルから前記第1レベルに遷移したとき、前記基本スイッチング制御における前記クロック信号とは非同期で前記出力トランジスタをターンオンすることを特徴とする。
【0009】
具体的には例えば、前記スイッチング電源用回路に係る前記基本スイッチング制御において、前記出力電圧の供給を受ける負荷の電流が大きくなるほど前記誤差電圧が第1方向に向けて変化してゆき、且つ、前記負荷の電流が小さくなるほど前記誤差電圧が前記第1方向とは逆の第2方向に向けて変化してゆき、前記スキップコンパレータは、前記誤差電圧の前記第2方向への変化により前記誤差電圧及び前記スキップ判定電圧間の高低関係が逆転したとき、前記スキップ信号を前記第1レベルから前記第2レベルに変化させ、且つ、前記誤差電圧の前記第1方向への変化により前記誤差電圧及び前記スキップ判定電圧間の高低関係が逆転したとき、前記スキップ信号を前記第2レベルから前記第1レベルに変化させ、前記エラーアンプは、前記出力電圧の低下に伴って前記誤差電圧が前記第1方向に変化するよう構成されており、前記スキップ制御の開始後、前記出力電圧の低下に伴って前記誤差電圧が前記第1方向に変化し、これによって前記スキップ信号が前記第2レベルから前記第1レベルに遷移したとき、前記制御部は、前記基本スイッチング制御における前記クロック信号とは非同期で前記出力トランジスタをターンオンすると良い。
【0010】
また具体的には例えば、前記スイッチング電源用回路において、前記制御部は、前記スキップ信号の前記第2レベルから前記第1レベルへの遷移に応答して特定信号を生成する特定信号生成部を有し、前記特定信号に基づき前記出力トランジスタをターンオンすると良い。
【0011】
より具体的には例えば、前記スイッチング電源用回路において、前記制御部は、前記特定信号に基づき前記出力トランジスタをターンオンした後、前記誤差電圧と前記スロープ電圧との比較結果に基づき前記出力トランジスタのターンオフタイミングを決定すると良い。
【0012】
更に具体的には例えば、前記スイッチング電源用回路において、前記制御部は、前記スキップ信号の前記第2レベルから前記第1レベルへの遷移のタイミングから所定時間内に、前記スキップ信号の前記第2レベルから前記第1レベルへの再度の遷移が無かったとき、それ以降において前記誤差電圧及び前記スロープ電圧に基づく所定周波数での前記出力トランジスタのPWM制御を実行すると良い。
【0013】
更に具体的には例えば、前記スイッチング電源用回路において、前記制御部は、前記スキップ信号の前記第2レベルから前記第1レベルへの遷移のタイミングから前記所定時間内に、前記スキップ信号の前記第2レベルから前記第1レベルへの再度の遷移があったときには、前記再度の遷移に応答した前記特定信号に基づき前記出力トランジスタを再度ターンオンすると良い。
【0014】
また例えば、前記スイッチング電源用回路において、前記制御部は、前記特定信号に基づき前記出力トランジスタを所定のオン時間だけオンとした後、前記出力トランジスタをターンオフしても良い。
【0015】
また例えば、前記スイッチング電源用回路において、当該スイッチング電源用回路の動作モードを設定する動作モード設定部を更に設けておいても良く、前記動作モード設定部は、前記動作モードを、前記エラーアンプ及び前記スキップコンパレータとともに前記スイッチング電源用回路内の特定の回路を動作させる第1モード、又は、前記エラーアンプ及び前記スキップコンパレータを動作させつつも前記特定の回路の動作を停止させることで前記第1モードよりも当該スイッチング電源用回路の消費電力を低減する第2モードに設定することが可能であり、前記動作モードが前記第1モードに設定されている状態において、前記スキップ信号の前記第1レベルから第2レベルへの遷移があった後、所定の設定時間以上、前記スキップ信号が前記第2レベルに維持されているとき、前記動作モード設定部は、前記動作モードを前記第2モードに切り替えるようにしても良い。
【0016】
また例えば、前記スイッチング電源用回路において、前記制御部は、当該スイッチング電源用回路の起動時において、前記基準電圧より低い電位から前記基準電圧より高い電位に向けて徐々に電位が上昇するソフトスタート電圧を生成するソフトスタート電圧生成部を更に有し、前記エラーアンプは、前記ソフトスタート電圧が前記基準電圧よりも低いときには、前記帰還電圧と前記ソフトスタート電圧との差分に応じて前記誤差電圧を生成し、前記ソフトスタート電圧が前記基準電圧よりも高いときには、前記帰還電圧と前記基準電圧との差分に応じて前記誤差電圧を生成し、前記スキップコンパレータは、前記誤差電圧が前記スキップ判定電圧より高いときに前記第1レベルの前記スキップ信号を出力し、前記誤差電圧が前記スキップ判定電圧より低いときに前記第2レベルの前記スキップ信号を出力するよう構成され、前記制御部は、前記ソフトスタート電圧が前記基準電圧以上の所定電圧に達するまでにおいて、それ以降よりも、前記スキップ判定電圧を低く設定しても良い。
【0017】
また例えば、前記スイッチング電源用回路は半導体集積回路を用いて形成されると良い。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、出力電圧のリプル低減に寄与するスイッチング電源用回路を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るスイッチング電源装置の全体構成図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る電源ICの外観図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係り、複数の信号間の関係図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係り、スロープ電圧生成部の構成図(a)と、スロープ電圧の説明図(b)である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係り、クロック信号及びセット信号の説明図である。
【
図6】本発明の第1実施形態に係り、基本スイッチング制御のタイミングチャートである。
【
図7】本発明の第1実施形態に係り、負荷電流の低下に伴う波形変動の様子を示す図である。
【
図8】本発明の第1実施形態に係り、パルススキップ制御を説明するためのタイミングチャートである。
【
図9】本発明の第1実施形態に係り、参考復帰制御を説明するためのタイミングチャートである。
【
図10】本発明の第1実施形態に係り、ワンショットパルスに関わる複数の信号間の関係図である。
【
図11】本発明の第1実施形態に係り、ワンショットパルスの生成に伴う動作の説明図である。
【
図12】本発明の第1実施形態に係り、特定の条件下における信号波形図である。
【
図13】本発明の第2実施形態に係る動作を説明するためのタイミングチャートである。
【
図14】本発明の第4実施形態に係り、動作モードの設定に関わる説明図である。
【
図15】本発明の第4実施形態に係り、複数の信号と設定される動作モードとの関係図である。
【
図16】本発明の第5実施形態に係り、ソフトスタート動作に関わる部位の構成図である。
【
図17】本発明の第5実施形態に係り、ソフトスタート動作に関わるタイミングチャートである。
【
図18】本発明の第5実施形態に係り、スイッチング電源装置の起動時における出力電圧の変化の様子を示す図である。
【
図19】本発明の第5実施形態に係るスキップ判定電圧の設定方法を示す図である。
【
図20】本発明の関連技術に係るスイッチング電源装置の全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態の例を、図面を参照して具体的に説明する。参照される各図において、同一の部分には同一の符号を付し、同一の部分に関する重複する説明を原則として省略する。尚、本明細書では、記述の簡略化上、情報、信号、物理量、素子又は部材等を参照する記号又は符号を記すことによって、該記号又は符号に対応する情報、信号、物理量、素子又は部材等の名称を省略又は略記することがある。例えば、後述の“M1”によって参照される出力トランジスタは(
図1参照)、出力トランジスタM1と表記されることもあるし、トランジスタM1と略記されることもあり得るが、それらは全て同じものを指す。
【0021】
まず、本実施形態の記述にて用いられる幾つかの用語について説明を設ける。
グランドとは、0V(ゼロボルト)の基準電位を有する導電部を指す又は基準電位そのものを指す。各実施形態において、特に基準を設けずに示される電圧は、グランドから見た電位を表す。レベルとは電位のレベルを指し、任意の信号又は電圧についてハイレベルはローレベルよりも高い電位を有する。
任意の信号又は電圧において、ローレベルからハイレベルへの切り替わりをアップエッジと称し、ローレベルからハイレベルへの切り替わりのタイミングをアップエッジタイミングと称する。同様に、任意の信号又は電圧において、ハイレベルからローレベルへの切り替わりをダウンエッジと称し、ハイレベルからローレベルへの切り替わりのタイミングをダウンエッジタイミングと称する。
FET(電界効果トランジスタ)として構成された任意のトランジスタについて、オン状態とは、当該トランジスタのドレイン及びソース間が導通状態となっていることを指し、オフ状態とは、当該トランジスタのドレイン及びソース間が非導通状態(遮断状態)となっていることを指す。以下、オン状態、オフ状態を、単に、オン、オフと表現することもある。任意のトランジスタについて、オフ状態からオン状態への切り替わりをターンオンと表現し、オン状態からオフ状態への切り替わりをターンオフと表現する。
【0022】
<<第1実施形態>>
本発明の第1実施形態を説明する。
図1は、第1実施形態に係るスイッチング電源装置AAの全体構成図である。
図1のスイッチング電源装置AAは、入力電圧V
INから入力電圧V
INよりも低い出力電圧V
OUTを生成する降圧型DC/DCコンバータとして構成されている。入力電圧V
IN及び出力電圧V
OUTは正の直流電圧である。スイッチング電源装置AAは、スイッチング電源用回路としての電源IC1と、電源IC1の外部に設けられたインダクタL1、出力コンデンサC1、帰還抵抗R1及びR2を備える。
【0023】
図2に電源IC1の外観の例を示す。電源IC1は、半導体集積回路を樹脂にて構成された筐体(パッケージ)内に封入することで形成された電子部品(半導体装置)であり、電源IC1を構成する各回路が半導体にて集積化されている。電源IC1としての電子部品の筐体には、IC1の外部に対し筐体から露出した外部端子が複数設けられている。尚、
図2に示される外部端子の数は例示に過ぎない。
【0024】
電源IC1に設けられる複数の外部端子の一部として、
図1には外部端子TM1~TM4が示されている。外部端子TM1には入力電圧V
INが入力される。外部端子TM2は後述のノードND1に接続される。外部端子TM3はグランドに接続される。外部端子TM4には後述の帰還電圧V
FBが加わる。
【0025】
電源IC1には、出力トランジスタM1及び同期整流トランジスタM2と、制御部10と、内部電源回路30と、が設けられる。制御部10に属さず且つ内部電源回路30と異なるブロック(リセット回路、保護回路等)が更に電源IC1に含まれうるが、ここでは、必要の無い限り、当該ブロックの図示及び機能説明を省略する。トランジスタM1及びM2はNチャネル型のMOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)として構成されている。但し、トランジスタM1をPチャネル型のMOSFETとして構成する変形も可能である。
【0026】
スイッチング電源装置AAは、出力トランジスタM1及び同期整流トランジスタM2を用いて同期整流方式にて直流-直流変換を行う。但し、トランジスタM2をダイオードに置きかえることもでき、この場合、スイッチング電源装置AAは非同期整流方式にて直流-直流変換を行うことになる。尚、トランジスタM1及びM2を含む任意のトランジスタについて、当該トランジスタがオン状態となっている区間をオン区間と称することがあり、当該トランジスタがオフ状態となっている区間をオフ区間と称することがある。
【0027】
トランジスタM1のドレインは外部端子TM1に接続され、従って入力電圧VINの入力を受ける。トランジスタM1のソースとトランジスタM2のドレインはノードND1にて共通接続される。トランジスタM2のソースは外部端子TM3に接続される、即ちグランドに接続される。ノードND1に生じる電圧をスイッチ電圧と称し、記号“VSW”にて表す。インダクタL1の一端は外部端子TM2に接続され、インダクタL1の他端はノードND2に接続される。ノードND2に出力電圧VOUTが生じる。ノードND2とグランドとの間に出力コンデンサC1が接続される。また、ノードND2とグランドとの間に帰還抵抗R1及びR2の直列回路が設けられる。従って、帰還抵抗R1及びR2間の接続ノードには出力電圧VOUTの分圧である帰還電圧VFBが生じる。帰還抵抗R1及びR2間の接続ノードが外部端子TM4に接続されることで、外部端子TM4に帰還電圧VFBが加わる。尚、トランジスタM1をPチャネル型のMOSFETとして構成する場合にあってはトランジスタM1のソース及びドレインの関係が逆になる(即ち、トランジスタM1のソース、ドレインが、夫々、外部端子TM1、ノードND1に接続されることになる)。
【0028】
図1において、“LD”は、ノードND2とグランドとの間に接続される負荷を表している。負荷LDは出力電圧V
OUTに基づき駆動する任意の負荷(マイクロコンピュータ等)である。ノーND2から負荷LDに流れる、負荷LDの消費電流を負荷電流と称し、記号“I
LD”にて表す。また、インダクタL1に流れる電流をインダクタ電流と称し、記号“I
L”にて表す。
【0029】
制御部10は、帰還電圧V
FBと、出力トランジスタM1に流れる電流に応じた後述のスロープ電圧V
SLPとに基づき、トランジスタM1及びM2のゲート電圧を制御することを通じてトランジスタM1及びM2のオン/オフを制御し、これによって出力電圧V
OUTを所定の目標電圧V
TG(例えば5V)に安定化させる。
図1の制御部10では、所謂カレントモード制御方式にてトランジスタM1及びM2を駆動することが可能となっている。内部電源回路30は、入力電圧V
INから所定の内部電源電圧V
REGを生成する。制御部10内の各回路は内部電源電圧V
REGに基づいて駆動する。
【0030】
制御部10の内部構成を説明する。制御部10は、エラーアンプ11、基準電圧源12、抵抗13、コンデンサ14、スロープ電圧生成部15、メインコンパレータ16、セット信号生成部17、制御信号生成部18、ゲートドライバ19、逆流検出部20、スキップコンパレータ21及びワンショットパルス生成部22を備える。説明の便宜上、まず、制御部10の内、スキップコンパレータ21及びワンショットパルス生成部22の存在を無視し、他の部位の説明を行う。
【0031】
エラーアンプ11は電流出力型のトランスコンダクタンスアンプである。エラーアンプ11の反転入力端子には外部端子TM4に加わる帰還電圧VFBが供給される。基準電圧源12は所定の正の直流電圧である基準電圧VREFを生成する。基準電圧VREFはエラーアンプ11の非反転入力端子に入力される。エラーアンプ11の出力端子は電源IC1内の配線であるラインLN1に接続される。尚、電源IC1にソフトスタート機能が設けられる場合には、エラーアンプ11に対しソフトスタート電圧も入力されるが、当該機能については後述するものとし、ここでは当該機能を無視する。
【0032】
エラーアンプ11は、負側対象電圧と正側対象電圧との差分に応じた誤差電圧VCMPを生成する。ソフトスタート機能を無視した場合、負側対象電圧、正側対象電圧は、夫々、帰還電圧VFB、基準電圧VREFである。エラーアンプ11は、負側対象電圧と正側対象電圧との差分に応じた誤差電流信号による電荷をラインLN1に対して入出力することで、ラインLN1に誤差電圧VCMPを生じさせる。具体的にはエラーアンプ11は、正側対象電圧が負側対象電圧よりも高いときには誤差電圧VCMPが高くなるようにラインLN1に向けて誤差電流信号による電流を出力し、負側対象電圧が正側対象電圧よりも高いときには誤差電圧VCMPが低くなるようにラインLN1からエラーアンプ11に向けて誤差電流信号による電流を引き込む。負側対象電圧と正側対象電圧との差分の絶対値が増大するにつれて、誤差電流信号による電流の大きさも増大する。
【0033】
ラインLN1とグランドとの間には抵抗13及びコンデンサ14の直列回路が接続される。当該直列回路は位相補償部として機能し、エラーアンプ11と協働してラインLN1に誤差電圧VCMPを生じさせる。具体的には抵抗13の一端がラインLN1に接続され、抵抗13の他端がコンデンサ14を介してグランドに接続される。抵抗13の抵抗値及びコンデンサ14の静電容量値を適切に設定することにより誤差電圧VCMPの信号位相を補償して出力帰還ループの発振を防ぐことができる。尚、抵抗13及びコンデンサ14の双方又は一方は、電源IC1の外部に設けられて、電源IC1に対して外付け接続されるものであっても良い。
【0034】
スロープ電圧生成部15は、出力トランジスタM1のオン区間(即ち、出力トランジスタM1がオン状態となっている区間)において出力トランジスタM1に流れる電流に応じたスロープ電圧VSLPを生成する。
【0035】
メインコンパレータ16は、スロープ電圧VSLPと誤差電圧VCMPとを比較して比較結果を示す信号RSTを出力する。メインコンパレータ16の出力信号RSTの内、ハイレベルの信号RSTのみがリセット信号として機能し、ローレベルの信号RSTはリセット信号に該当しない。以下、メインコンパレータ16からハイレベルの信号RSTが出力されることを、リセット信号の発行又は出力と表現することがある。メインコンパレータ16は、スロープ電圧VSLP及び誤差電圧VCMPに基づきリセット信号を発行するリセット信号生成部として機能する。
【0036】
セット信号生成部17は、信号SETを制御信号生成部18に対して出力する。セット信号生成部17の出力信号SETの内、ハイレベルの信号SETのみがセット信号として機能し、ローレベルの信号SETはセット信号に該当しない。以下、セット信号生成部17からハイレベルの信号SETが出力されることを、セット信号の発行又は出力と表現することがある。セット信号生成部17は周期的にセット信号を発行できる他、後述の信号SKP及びOSHTに基づくセット信号の出力/非出力制御も可能であるが、詳細は後述される。
【0037】
制御信号生成部18は、フリップフリップなどのロジック回路にて構成され、セット信号生成部17からの信号SETとメインコンパレータ16からの信号RSTとに基づいて、トランジスタM1及びM2のオン/オフ状態を指定する制御信号CNTを生成及び出力する。ゲートドライバ19は、制御信号CNTに基づいてトランジスタM1のゲート信号G1及びトランジスタM2のゲート信号G2を制御する。
【0038】
図3に、信号SET、RST、CNT、G1及びG2の関係を示す。信号SET、RST、CNT、G1及びG2の夫々は、ハイレベル及びローレベルの何れかをとる二値信号である。
【0039】
信号RSTがローレベルである状態でハイレベルの信号SETが制御信号生成部18に入力されたとき(即ちセット信号が発行されたとき)、制御信号CNTはハイレベルとなり、以後、ハイレベルの信号RSTが制御信号生成部18に入力されるまで(即ちリセット信号が発行されるまで)制御信号CNTはハイレベルに保持される。
信号SETがローレベルである状態でハイレベルの信号RSTが制御信号生成部18に入力されたとき(即ちリセット信号が発行されたとき)、制御信号CNTはローレベルとなり、以後、ハイレベルの信号SETが制御信号生成部18に入力されるまで(即ちセット信号が発行されるまで)制御信号CNTはローレベルに保持される。
信号SET及びRSTが共にローレベルである区間では、制御信号CNTは保持されたレベルにて維持される。制御部10において信号SET及びRSTが同時にハイレベルとなることは無い。
【0040】
トランジスタM1及びM2から成るブロックを、便宜上、出力段と称する。出力段の状態は、出力ハイ状態と、出力ロー状態と、Hi-Z状態の何れかとなる。出力ハイ状態では、トランジスタM1、M2が夫々、オン状態、オフ状態である。出力ロー状態では、トランジスタM1、M2が夫々、オフ状態、オン状態である。Hi-Z状態では、トランジスタM1及びM2が共にオフ状態である。ゲートドライバ19は、制御信号CNTがハイレベルである区間では、ゲート信号G1、G2を、夫々、ハイレベル、ローレベルとすることで、出力段を出力ハイ状態とし、制御信号CNTがローレベルである区間では、ゲート信号G1、G2を、夫々、ローレベル、ハイレベルとすることで、出力段を出力ロー状態とする。但し、制御信号CNTがローレベルとなっている区間においても、逆流検出部20からハイレベルの逆流検出信号ZXOUTが出力されると、ゲートドライバ19は出力段を出力ロー状態からHi-Z状態に切り替え、以後、制御信号CNTがハイレベルに切り替わるまで、出力段をHi-Z状態に維持する。
【0041】
逆流検出部20は、トランジスタM2のオン区間中にスイッチ電圧VSWをグランドの電位と比較することにより、トランジスタM2への逆流電流の有無を検出して、その検出結果を示す逆流検出信号ZXOUTを生成する。逆流検出信号ZXOUTはゲートドライバ19に供給される。逆流電流とは、ノードND1からトランジスタM2を介してグランドに流れ込む電流を指す。逆流検出信号ZXOUTのレベルは、スイッチ電圧VSWがグランドの電位よりも低いときにローレベルとなり、スイッチ電圧VSWがグランドの電位よりも高いときにハイレベルとなる。つまり、逆流検出信号ZXOUTのレベルは、インダクタ電流ILがグランドからトランジスタM2を介してインダクタL1に向けて流れているときにローレベルとなり、インダクタ電流ILがインダクタL1からトランジスタM2を介しグランドに逆流しているときにハイレベルとなる。逆流電流が検知されたときに出力段をHi-Z状態にして逆流電流を遮断することで、軽負荷時の効率を向上させることができる。
【0042】
上述の如く構成された制御部10は、帰還電圧VFB及びスロープ電圧VSLPに基づき、トランジスタM1及びM2を交互にオン、オフとする(即ち、出力段を出力ハイ状態及び出力ロー状態間で切り替える)スイッチング動作を行うことで、基準電圧VREFに応じた目標電圧VTGに出力電圧VOUTを安定化させることができ、スロープ電圧VSLPによる電流情報を用いることで負荷応答性を高めることができる。出力電圧VOUTの情報に加えて(即ち帰還電圧VFBに加えて)電流情報を用いてトランジスタM1及びM2を制御する方式はカレントモード制御方式と称され、その制御はカレントモード制御と称される。
【0043】
尚、スイッチング動作において、トランジスタM1及びM2を交互にオン、オフとする(即ち、出力段を出力ハイ状態及び出力ロー状態間で切り替える)とは、出力ロー状態から出力ハイ状態への遷移の間に逆流検出信号ZXOUTに基づくHi-Z状態が介在することをも含む概念である。また、出力段の状態を出力ハイ状態及び出力ロー状態間で切り替える際、トランジスタM1及びM2を通じた貫通電流の発生を抑止すべく、トランジスタM1及びM2が同時にオフとされるデッドタイムが挿入されても良い。
【0044】
スイッチング動作により、実質的に入力電圧VINのレベルとグランドのレベルとでレベルが変動する矩形波状の電圧がスイッチ電圧VSWとして現れるが、当該スイッチ電圧VSWがインダクタL1及び出力コンデンサC1にて平滑化されることで直流の出力電圧VOUTが得られる。
【0045】
スロープ電圧VSLPについて説明を補足する。出力トランジスタM1のオン区間中において出力トランジスタM1に流れる電流は、出力トランジスタM1のオン区間中におけるインダクタ電流ILに等しいため、スロープ電圧VSLPは出力トランジスタM1のオン区間中におけるインダクタ電流ILの情報を示している。即ち、スロープ電圧VSLPは、出力トランジスタM1のオン区間中における出力トランジスタM1又はインダクタL1の電流情報を含んでいる。当該電流情報を含むスロープ電圧VSLPの生成方法として公知の任意の方法を利用できる。
【0046】
図4(a)にスロープ電圧生成部15の構成の例を示し、
図4(b)にスロープ電圧V
SLPに関与する電流及び電圧の波形を示す。
図4(a)のスロープ電圧生成部15は、IV変換部15aと、ランプ電圧生成部15bと、加算部15cと、備える。IV変換部15aは、出力トランジスタM1のオン区間中に出力トランジスタM1に流れる電流(即ち出力トランジスタM1のオン区間中におけるインダクタ電流I
L)を電圧に変換することにより、当該電流に比例したセンス電圧V
SNSを生成する。ランプ電圧生成部15bは、出力トランジスタM1のオン区間中において0Vを起点に徐々に増加する鋸波状のランプ電圧V
RMPを生成する。加算部15cは、センス電圧V
SNSとランプ電圧V
RMPの和の電圧をスロープ電圧V
SLPとして生成する。出力トランジスタM1のオン区間以外の区間においてスロープ電圧V
SLPは0Vである(但し、所定のバイアス電圧値を有していても良い)。周知の如く、ランプ電圧V
RMPの加算により、カレントモード制御における出力帰還ループの発振を抑制することができる。
【0047】
[基本スイッチング制御]
次に、負荷電流ILDが比較的大きい場合に制御部10にて実行可能な基本スイッチング制御について説明する。ここにおける負荷電流ILDが比較的大きい状態とは、スキップコンパレータ21の出力信号SKPがローレベルに維持される状態に対応し、この状態において、スキップコンパレータ21及びワンショットパルス生成部22は有意に機能しない。そこで、スキップコンパレータ21及びワンショットパルス生成部22の存在を無視して基本スイッチング制御を説明する。
【0048】
図5(a)に示す如く、セット信号生成部17は、所定の基準周波数f
CLKを有するクロック信号CLKを生成するクロック生成部17aを備え、基本スイッチング制御が実行される状態を含み、基本的にはクロック信号CLKに基づき信号SETを生成及び出力することができる。
図5(b)に示す如く、クロック信号CLKは、基準周波数f
CLKにてパルスが生じる信号であり、クロック信号CLKの周期ごとに微小時間だけハイレベルをとなるパルスがクロック信号CLKに生じる。クロック信号CLKにおいて、ハイレベルとなる区間の間隔は、クロック信号CLKの1周期分の時間T
P1、即ち基準周波数f
CLKの逆数と一致する。クロック信号CLKに基づき信号SETが生成される場合、クロック信号CLKのダウンエッジを契機にして信号SETが所定の微小時間だけハイレベルとなる。即ち、クロック信号CLKに基づき信号SETが生成される場合、信号SETはクロック信号CLKを上記微小時間だけ時間の遅れ方向にシフトした信号となる。
【0049】
パルス等について述べられる微小時間は、本発明において特に有意な長さを持たない。このため、以下の説明では、微小時間は十分に短い時間であるとして適宜ゼロとみなされる。また、ここでは、クロック信号CLKから信号SETが生成されているが、基本スイッチング制御においてクロック信号CLKそのものを信号SETとして制御信号生成部18に供給するようにしても良い。また、基本スイッチング制御において、クロック信号CLKのダウンエッジの発生がセット信号の発行に相当すると考えても良い。
【0050】
図6に基本スイッチング制御のタイミングチャートを示す。出力段が出力ロー状態であって且つクロック信号CLKがローレベルであるタイミングt
A0を起点にして基本スイッチング制御を説明する。基本スイッチング制御において、タイミングt
A0ではスロープ電圧V
SLPは0Vであり、その後、タイミングt
A1にてクロック信号CLKにパルスが生じるとクロック信号CLKのダウンエッジを契機として信号SETが微小時間だけハイレベルとなる、即ちセット信号が発行される。セット信号の発行を受けて制御信号CNTがローレベルからハイレベルに切り替わることで出力段は出力ロー状態から出力ハイ状態に切り替わる。出力段が出力ハイ状態である区間では、インダクタ電流I
Lが徐々に増大してゆき、これに連動してスロープ電圧V
SLPも徐々に上昇してゆく。そして、誤差電圧V
CMP未満であったスロープ電圧V
SLPがタイミングt
A2にて誤差電圧V
CMPにまで達すると、メインコンパレータ16の出力信号RSTがローレベルからハイレベルに切り替わる、即ちリセット信号が発行される。リセット信号の発行を受けて制御信号CNTがハイレベルからローレベルに切り替わることで出力段は出力ハイ状態から出力ロー状態に切り替わる。出力段が出力ロー状態となると、速やかにスロープ電圧V
SLPが0Vまで低下するため、信号RSTはローレベルに戻る。以後、同様の動作が繰り返される。
【0051】
このように、基本スイッチング制御では、基準周波数fCLKを有するクロック信号CLKのダウンエッジに応答してセット信号が発行されることになるため、トランジスタM1及びM2は基準周波数fCLKにてPWM制御されることになる。即ち、基本スイッチング制御では、入力電圧VINが基準周波数fCLKにてパルス幅変調されることで出力電圧VOUTが得られる。“PWM”はパルス幅変調の略語である。
【0052】
図7は、基本スイッチング制御が実行されているときにおいて負荷電流I
LDが低下したときの波形変化を表している。
図7において、実線波形311、312、313は、夫々、負荷電流I
LDの大きさが第1の大きさであるときのインダクタ電流I
L、誤差電圧V
CMP、スロープ電圧V
SLPの波形を表し、破線波形314、315、316は、夫々、負荷電流I
LDの大きさが第1の大きさから第2の大きさへと低下したときのインダクタ電流I
L、誤差電圧V
CMP、スロープ電圧V
SLPの波形を表す。尚、
図7において、スイッチ電圧V
SWがローレベルとなる区間では、波形313と波形316が互いに重なり合っている。
【0053】
上述の回路構成から理解されるように、カレントモード制御の一種である基本スイッチング制御では負荷電流I
LDに応じて誤差電圧V
CMPが変動し、例えば
図7に示す如く負荷電流I
LDの大きさが第1の大きさから第2の大きさに減少すると、インダクタ電流I
Lの平均値が減少すると共に誤差電圧V
CMPが低下する。負荷電流I
LDの減少に対して誤差電圧V
CMPに変化が無かったとしたならば、出力コンデンサC1への充電量が負荷電流I
LDに対して過大となって出力電圧V
OUTが上昇するため、誤差電圧V
CMPが低下するように作用する。
【0054】
[パルススキップ制御]
次に、負荷電流ILDが比較的に小さいときに実行可能なパルススキップ制御について説明する。パルススキップ制御の実現にはスキップコンパレータ21が利用される。スキップコンパレータ21の反転入力端子、非反転入力端子には、夫々、誤差電圧VCMP、所定のスキップ判定電圧VTSKPが入力される。スキップ判定電圧VTSKPは所定の正の直流電圧値を有する。スキップコンパレータ21は、誤差電圧VCMPとスキップ判定電圧VTSKPとを比較して比較結果に基づくスキップ信号SKPを出力する。具体的には、スキップコンパレータ21は、スキップ判定電圧VTSKPが誤差電圧VCMPより高ければハイレベルのスキップ信号SKPを出力し、誤差電圧VCMPがスキップ判定電圧VTSKPより高ければローレベルのスキップ信号SKPを出力する。誤差電圧VCMPとスキップ判定電圧VTSKPとが一致する場合、スキップ信号SKPのレベルはローレベル及びハイレベルの何れかとなる。セット信号生成部17はスキップ信号SKPがハイレベルであるときパルススキップ制御を行うことができる。
【0055】
図8を参照してパルススキップ制御を説明する。
図8の動作例において、タイミングt
A2の後のタイミングt
A3の直前までは、“V
CMP>V
TSKP”であるが故にスキップ信号SKPがローレベルに維持されている。スキップ信号SKPがローレベルである区間(
図8では、タイミングt
A3の直前までの区間)では上述の基本スイッチング制御をできる。故に、
図8の動作例において、タイミングt
A0からt
A2までの動作は上述した通りであって、タイミングt
A3の直前までは基本スイッチング制御が実行されている。
【0056】
図8の動作例では、負荷電流I
LDの低下に伴い、タイミングt
A0からタイミングt
A3以降に亘って誤差電圧V
CMPが単調減少することが想定されており、タイミングt
A2の後、クロック信号CLKに次のパルスが生じる前のタイミングt
A3を境に誤差電圧V
CMPがスキップ判定電圧V
TSKPを下回り、結果、タイミングt
A3にてスキップ信号SKPがローレベルからハイレベルに切り替わる。セット信号生成部17は、タイミングt
A3にてスキップ信号SKPがハイレベルに切り替わると、スキップ信号SKPがハイレベルに維持されている区間においてパルススキップ制御を行う。
【0057】
パルススキップ制御では、クロック信号CLKに同期した基本スイッチング制御が停止される。具体的には、パルススキップ制御では、ハイレベルのスキップ信号SKPに基づき、セット信号生成部17内において、クロック信号CLKをマスクする信号が発行され、その結果、信号SETがローレベルに維持される。従って、タイミングt
A3以降、スキップ信号SKPがハイレベルに維持されている限り、信号SETがローレベルに維持されることになるため、出力トランジスタM1はオフに維持される。
図8において、破線パルス333はマスクされたクロック信号CLKのパルスを表し、破線パルス334及び335は、パルススキップ制御が行われなかったとしたならば信号SET及びRSTに生じていたであろうパルスを表し、破線波形331及び332はパルススキップ制御が行われなかったとしたならばスイッチ電圧V
SW及びスロープ電圧V
SLPに含まれていたであろう電圧の波形を表している。上述のパルススキップ制御によりスイッチング損失が低減されて軽負荷時の効率向上が図られる。
【0058】
[参考復帰制御]
次に、パルススキップ制御から復帰するための制御として参考復帰制御を説明する。
図9は参考復帰制御の説明図である。参考復帰制御では、スキップ信号SKPのハイレベルからローレベルへの切り替わりに応答して、クロック信号CLKのマスクを解除し、以後、単純に上述の基本スイッチング制御を再開する。
【0059】
出力電圧VOUTの低下は誤差電圧VCMPの上昇をもたらすため、スキップ信号SKPのハイレベルからローレベルへの切り替わりは出力電圧VOUTの低下を意味している。目標電圧VTGからみて出力電圧VOUTが低下したとき、速やかに出力電圧VOUTを目標電圧VTGに戻すことが要求されるが、クロック信号CLKとスキップ信号SKPとは非同期であるため、参考復帰制御を用いた場合、スキップ信号SKPがローレベルに切り替わってから次にセット信号が発行されるまでに、比較的大きな時間が経過する場合が生じる。結果、参考復帰制御を用いた場合、クロック信号CLKのマスク解除後、セット信号が発行されるまでに出力電圧VOUTが目標電圧VTGに対して大きく低下することがある。
【0060】
出力電圧VOUTは目標電圧VTGにて安定化されるべきであるので、出力電圧VOUTが目標電圧VTGに対して大きく低下すること自体、好ましくないし、参考復帰制御を用いるとクロック信号CLKのマスク解除後の出力電圧VOUTの変動が大きくなることがある(即ち出力電圧VOUTのリプルが大きくなることがある)。クロック信号CLKのマスク解除後、出力電圧VOUTを目標電圧VTGにまで速やかに戻すためにセット信号を複数回連続的に発行するという方法も考えられるが、その方法を利用したとしても出力電圧VOUTのリプルが大きくなりうることに変わりは無い。
【0061】
[改良復帰制御]
そこで、パルススキップ制御から復帰するための制御として、制御部10は改良復帰制御を実行可能とされている。改良復帰制御には
図1のワンショットパルス生成部22(以下、生成部22と略記され得る)が利用される。生成部22は、スキップ信号SKPにダウンエッジが生じたとき(即ちスキップ信号SKPのハイレベルからローレベルへの切り替わりがあったとき)、スキップ信号SKPのダウンエッジに応答してワンショットパルスを発生させ、ワンショットパルスを信号OSHTに含めてセット信号生成部17に出力する。尚、以下では、ワンショットパルスの生成(発生)をワンショットパルスの発行と表現することもある。
【0062】
図10に、信号SKP、SKPIN及びOSHTに関係を示す。スキップ信号SKPを参照する回路(例えば生成部17及び22)には、スキップ信号SKPのノイズを除去するためのフィルタが設けられており、ノイズ除去後のスキップ信号SKPが信号SKPINに相当する。スキップ信号SKPを参照する回路(例えば生成部17及び22)は、信号SKPINに基づいて動作する。具体的には、上記フィルタは、原則として、スキップ信号SKPがローレベルであれば信号SKPINもローレベルとし且つスキップ信号SKPがハイレベルであれば信号SKPINもハイレベルとするが、スキップ信号SKPのダウンエッジに応答して信号SKPINにダウンエッジを発生させた後は、スキップ信号SKPのレベルに関係なく、所定のロー保持時間、信号SKPINをローレベルに維持する。スキップ信号SKPのダウンエッジに連動して信号SKPINのダウンエッジが生じるため、スキップ信号SKPのダウンエッジと信号SKPINのダウンエッジとは等価であると考えて良い。
【0063】
生成部22は、信号OSHTを原則としてローレベルに維持し、スキップ信号SKPのダウンエッジが発生したときに限り、スキップ信号SKPのダウンエッジを契機として(実際には信号SKPINのダウンエッジを契機として)微小時間だけ信号OSHTをハイレベルとする。信号OSHTに含まれ得る、微小時間だけハイレベルとなるパルス信号がワンショットパルスである。
【0064】
図11に、改良復帰制御のタイミングチャートを示す。上述のタイミングt
A0からタイミングt
A3までの流れにより基本スイッチング制御を経てパルススキップ制御が開始された後(
図8参照)、スキップ判定電圧V
TSKPを下回っていた誤差電圧V
CMPが増加してきてタイミングt
A4にてスキップ判定電圧V
TSKPに達したとする。そうすると、タイミングt
A4において、信号SKP及びSKPINにダウンエッジが生じ、信号SKP及びSKPINのダウンエッジを契機として信号OSHTにワンショットパルス(
図11では“パルス351”に対応)が生じる。
【0065】
セット信号生成部17は、信号OSHTにワンショットパルスが生じたことに応答して信号SETを微小時間だけハイレベルとする、即ちセット信号を発行する。セット信号の発行を契機として制御信号CNTにアップエッジが生じるため、出力段の状態が出力ロー状態又はHi-Z状態から出力ハイ状態へと切り替えられる。実際には信号等に遅延があるが、ここでは、タイミングtA4における信号SKP及びSKPINにダウンエッジに伴い、タイミングtA4にて、ワンショットパルスの生成、セット信号の発行、及び、出力段の出力ハイ状態への切り替えが生じると考える。
【0066】
タイミングtA4の後、上昇してきたスロープ電圧VSLPがタイミングtA5にて誤差電圧VCMPに達すると、リセット信号(即ちハイレベルの信号RST)が発行されるので、制御信号CNTがハイレベルからローレベルに切り替えられ、出力段の状態は出力ハイ状態から出力ロー状態へと切り替えられる。特に図示しないが、タイミングtA5の後、ハイレベルの逆流検出信号ZXOUTが生じると、出力段がHi-Z状態に切り替えられる。
【0067】
また、セット信号生成部17は、ワンショットパルスの発生タイミング、即ちタイミングt
A4を内部クロック信号の動作開始タイミングに設定する。タイミングt
A4が動作開始タイミングに設定された内部クロック信号を、上述のクロック信号CLKと区別するために、クロック信号CLK2を称する。上述のクロック信号CLKはパルススキップ制御が行われる前の内部クロック信号に相当すると解して良い。クロック信号CLK2は所定の周波数f
CLK2(例えば300kHz)を有する。クロック信号CLK2は、周波数f
CLK2にてパルスが生じる信号であり、クロック信号CLK2の周期ごとに微小時間だけハイレベルをとなるパルスがクロック信号CLK2に生じる(後述の
図13も参照)。クロック信号CLK2において、ハイレベルとなる区間の間隔は、クロック信号CLK2の1周期分の時間T
P2、即ち周波数f
CLK2の逆数と一致する。タイミングt
A4から時間T
P2が経過したタイミングにおいてクロック信号CLK2に1回目のパルスが発生し、以後、周波数f
CLK2にて周期的にクロック信号CLK2にパルスが生じる。信号SKPINにおける上記のロー保持時間は、クロック信号CLK2に基づき決定されて良く、
図11では、タイミングt
A4から周波数f
CLK2の逆数分の時間T
P2が経過したタイミングt
A6にてクロック信号CLK2にパルスが発生し、そのパルスを契機に信号SKPINのアップエッジが生じている(但し、ここでは、タイミングt
A4の後、タイミングt
A6よりも前に信号SKPにアップエッジが生じると仮定されている)。
【0068】
このように、改良復帰制御では、スキップ信号SKPのハイレベルからローレベルへの遷移に応答して、基本スイッチング動作におけるクロック信号CLKとは非同期で、即時に出力トランジスタM1をターンオンする。これにより、出力電圧VOUTの低下に応答して素早く出力コンデンサC1に電荷を供給することができるため、参考復帰制御の採用時との比較において出力電圧VOUTのリプルを低く抑えることが可能となる。
【0069】
制御部10等の動作について説明を加える。制御部10は、スキップ信号SKPが第1レベル(例えばローレベル)であるとき、クロック信号CLKに同期してスイッチング動作を実行する基本スイッチング制御を行うことが可能であり(
図6及び
図8参照)、基本スイッチング制御を行っているときにスキップ信号SKPが第2レベル(例えばハイレベル)に変化するとクロック信号CLKに同期したスイッチング動作を停止するパルススキップ制御を行うことができる(
図8参照)。その後、スキップ信号SKPが第2レベル(例えばハイレベル)から第1レベル(例えばローレベル)に遷移したとき、制御部10は、基本スイッチング制御におけるクロック信号CLKとは非同期で出力トランジスタM1をターンオンする(
図11参照)。
【0070】
より具体的には、スイッチング電源装置AAでは、基本スイッチング制御において、負荷電流ILDが大きくなるほど誤差電圧VCMPが第1方向(例えば上昇方向)に向けて変化してゆき、且つ、負荷電流ILDが小さくなるほど誤差電圧VCMPが第1方向とは逆の第2方向(例えば低下方向)に向けて変化してゆくように帰還制御ループが形成されている。また、スキップコンパレータ21は、誤差電圧VCMPの第2方向(例えば低下方向)への変化により誤差電圧VCMP及びスキップ判定電圧VTSKP間の高低関係が逆転したとき、スキップ信号SKPを第1レベル(例えばローレベル)から第2レベル(例えばハイレベル)に変化させ、且つ、誤差電圧VCMPの第1方向(例えば上昇方向)への変化により誤差電圧VCMP及びスキップ判定電圧VTSKP間の高低関係が逆転したとき、スキップ信号SKPを第2レベル(例えばハイレベル)から第1レベル(例えばローレベル)に変化させるように構成されている。
【0071】
加えて、エラーアンプ11は、出力電圧V
OUTの低下に伴って誤差電圧V
CMPが第1方向(例えば上昇方向)に変化するよう構成されている。このため、第2レベル(例えばハイレベル)のスキップ信号SKPに基づくパルススキップ制御の開始後、出力電圧V
OUTの低下に伴って誤差電圧V
CMPが第1方向(例えば上昇方向)に変化し、これによってスキップ信号SKPが第2レベル(例えばハイレベル)から第1レベル(例えばローレベル)に遷移したとき、制御部10は、基本スイッチング制御におけるクロック信号CLKとは非同期で出力トランジスタM1をターンオンすることになる(
図11参照)。
【0072】
スキップ信号SKPにおける第1レベル、第2レベルは、
図1のスイッチング電源装置AAでは、夫々、ローレベル、ハイレベルであるが、第1、第2レベルが、夫々、ハイレベル、ローレベルとなるようにスイッチング電源装置AAを変形しても構わない(後述の他の任意の実施形態においても同様)。スキップ信号SKPが第1レベル、第2レベルであるとは、厳密には、スキップ信号のレベルが第1レベル、第2レベルであることを意味する(他の信号についても同様)。第1レベルのスキップ信号SKPは第1論理値を有するスキップ信号SKPであって且つ第2レベルのスキップ信号SKPは第1論理値とは異なる第2論理値を有するスキップ信号SKPである、と考えることもできる(他の信号についても同様)。また、誤差電圧V
CMPの変化の方向としての第1方向、第2方向は、
図1のスイッチング電源装置AAでは、夫々、上昇方向、低下方向であるが、第1方向、第2方向が、夫々、低下方向、上昇方向となるようにスイッチング電源装置AAを変形しても構わない(後述の他の任意の実施形態においても同様)。
【0073】
制御部10は、スキップ信号SKPの第2レベル(例えばハイレベル)から第1レベル(例えばローレベル)への遷移に応答して特定信号を生成する特定信号生成部を有し、特定信号に基づき出力トランジスタM1をターンオンする。ワンショットパルス生成部22は特定信号生成部の例であり、ワンショットパルスは特定信号の例である。本発明において、特定信号の形態はパルス信号に限定されない。
【0074】
そして、制御部10は、特定信号(ここではワンショットパルス)に基づき出力トランジスタM1をターンオンした後、メインコンパレータ16による誤差電圧V
CMPとスロープ電圧V
SLPとの比較結果に基づき出力トランジスタM1のターンオフタイミングを決定すると良い(
図11のタイミングt
A5参照)。
【0075】
図12に、負荷電流I
LDが比較的小さく、スキップ制御と改良復帰制御が交互に繰り返されるケースでのタイミングチャートを示す。
図12において、371、372及び373は、信号OSHTに発生する3つのワンショットパルスを表しており、381、382、383は、夫々、ワンショットパルス371、372、373に応答して発行されるセット信号を表す。
図12のケースでは、スキップ信号SKPのダウンエッジに応答してワンショットパルス(例えば371)が発行され、出力電圧V
OUTが持ち上がることでスキップ信号SKPがハイレベルに戻る。その後、出力電圧V
OUTが徐々に低下してくるとスキップ信号SKPに再度ダウンエッジに応答してワンショットパルス(例えば372)が再度発行される。以下、同様の動作が繰り返される。
図12のようなケースでは、誤差電圧V
CMPがスキップ判定電圧V
TSKP近辺にて安定化するような動作が実現され、また制御信号CNTがハイレベルであるときのスロープ電圧V
SLPの傾きは一定であるので、ワンショットパルスの発行ごとの制御信号CNTのハイレベル区間は実質的に一定となる。故に、
図12のケースでは、コンスタントオンタイム制御と実質的に等価な制御が行われると言える。
【0076】
ワンショットパルスの発行間隔は負荷電流ILDに依存し、負荷電流ILDの増大につれてワンショットパルスの発行間隔は狭まる。その発行間隔が所定間隔にまで狭まると、以後は、クロック信号CLK2に同期してセット信号の発行を行うPWM制御に移行にしても良い。このPWM制御は、セット信号がクロック信号CLK2に同期して発行される点を除き、上述の基本スイッチング制御と同様である。
【0077】
<<第2実施形態>>
本発明の第2実施形態を説明する。第2実施形態及び後述の第3~第6実施形態は第1実施形態を基礎とする実施形態であり、第2~第6実施形態において特に述べない事項に関しては、矛盾の無い限り、第1実施形態の記載が第2~第6実施形態にも適用される。第2実施形態の記載を解釈するにあたり、第1及び第2実施形態間で矛盾する事項については第2実施形態の記載が優先されて良い(後述の第3~第6実施形態についても同様)。矛盾の無い限り、第1~第6実施形態の内、任意の複数の実施形態を組み合わせても良い。
【0078】
図13に第2実施形態に係る制御のタイミングチャートを示す。
図13におけるタイミングt
B1は第1実施形態で述べたタイミングt
A4(
図11参照)に相当し、タイミングt
B1よりも前の動作は第1実施形態で述べた通りであって良い。タイミングt
B1において、信号SKP及びSKPINにダウンエッジが生じ、信号SKP及びSKPINのダウンエッジを契機として信号OSHTにワンショットパルス411が生じる。セット信号生成部17は、信号OSHTにワンショットパルス411が生じたことに応答して信号SETを微小時間だけハイレベルとする、即ちセット信号431を発行する。セット信号431の発行を契機として出力段が出力ハイ状態に切り替わること、及び、その後にスロープ電圧V
SLPが誤差電圧V
CMPに達したことを契機としてリセット信号の発行を介し出力段が出力ロー状態に切り替わることは、第1実施形態で述べた通りである(後述の他のセット信号についても同様)。
【0079】
セット信号生成部17は、ワンショットパルス411の発生タイミング、即ちタイミングt
B1を内部クロック信号の動作開始タイミングに設定する。
図13の例においては、タイミングt
B1が動作開始タイミングに設定された内部クロック信号がクロック信号CLK2と称される。第1実施形態でも述べたように、クロック信号CLK2は所定の周波数f
CLK2(例えば300kHz)を有し、クロック信号CLK2の周期ごとにクロック信号CLK2にパルスが生じる。従って、タイミングt
B1からクロック信号CLK2の1周期分の時間T
P2が経過したタイミングt
B2においてクロック信号CLK2にパルス422が生じ、その後、更に時間T
P2が経過したタイミングt
B3においてクロック信号CLK2にパルス423が生じる。
【0080】
図13に示す状況とは異なるが、スキップ信号SKPのダウンエッジに応答したワンショットパルス411の発生後、パルス422が生じるまでに、リセット信号の発行及びスキップ信号SKPのアップエッジを経てスキップ信号SKPに再度のダウンエッジが生じ、スキップ信号SKPに再度のダウンエッジに応答して再度のワンショットパルスが発生するケースを考える。当該ケースは、換言すれば、スキップ信号SKPのダウンエッジのタイミングt
B1から所定時間内に(即ちクロック信号CLK2の1周期分の時間内に)スキップ信号SKPに再度のダウンエッジが生じるケースである。当該ケースでは、セット信号生成部17は、再度のワンショットパルス(スキップ信号SKPの再度のダウンエッジ)に応答してセット信号を発行すれば良く、これによって再度のワンショットパルスに応答して出力段が出力ハイ状態とされる。
【0081】
上記ケースは
図12のケースに対応している。
図12のケースでは、ワンショットパルス371の発生後、クロック信号CLK2の1周期分の時間T
P2が経過するまでに、リセット信号の発行及びスキップ信号SKPのアップエッジを経てスキップ信号SKPの再度のダウンエッジが生じることでワンショットパルス372が発生しており、故に、セット信号生成部17はワンショットパルス372に応答してセット信号382を発行している。
図12に示すケースは、負荷電流I
LDが比較的小さく、ワンショットパルスの1回の発行により出力コンデンサC1が十分に充電されるケース(即ち、出力電圧V
OUTが目標電圧V
TGにまで持ち上がるケース)に相当する。
【0082】
これに対し、
図13に示すケースは、タイミングt
B1近辺からの負荷電流I
LDが比較的大きく、ワンショットパルスの1回の発行では出力コンデンサC1が十分に充電されないケースに相当し、タイミングt
B1以降、タイミングt
B2及びt
B3を含めて、スキップ信号SKPがローレベルに維持されている。
【0083】
図13のケースにおいて、セット信号生成部17は、タイミングt
B2におけるクロック信号CLK2でのパルス422の発生を契機として、クロックマスク信号XCLKMSKをローレベルからハイレベルに切り替える。信号XCLKMSKは、クロック信号CLK2に基づきセット信号を発行するか否かを指定する信号であって、セット信号生成部17により生成される。スキップ信号SKPがハイレベルであるとき、信号XCLKMSKはローレベルとされる。スキップ信号SKPのダウンエッジのタイミングから所定時間内に(即ち、クロック信号CLK2の1周期分の時間内に)スキップ信号SKPに再度のダウンエッジが生じなかったとき、信号XCLKMSKにアップエッジが生じる。
【0084】
信号XCLKMSKがハイレベルであるときに限り、クロック信号CLK2に基づきセット信号が発行される。故に、
図13のケースでは、タイミングt
B2にてクロック信号CLK2でのパルス422に同期してセット信号432が発行され、タイミングt
B3にてクロック信号CLK2でのパルス423に同期してセット信号433が発行される。厳密には、信号XCLKMSKがハイレベルであるとき、クロック信号CLK2のダウンエッジに同期してセット信号が発行される。以後、同様の動作が繰り返される。
【0085】
図12には特に示されていないが、
図12のケースでは、信号XCLKMSKがローレベルに維持されていることが想定されている。信号XCLKMSKがローレベルであるときには、ワンショットパルスに基づきセット信号が発行される。信号XCLKMSKに応じ、ワンショットパルス及びクロック信号CLK2の何れかを選択的に用いてセット信号を発行するセレクタをセット信号生成部17に設けておくことができる。
【0086】
このように、制御部10は、スキップ信号SKPのダウンエッジのタイミングtB1から所定時間内に(即ち、クロック信号CLK2の1周期分の時間内に)スキップ信号SKPの再度のダウンエッジが生じなかったとき、負荷電流ILDが比較的大きいと判断して、タイミングtB1から上記所定時間が経過したタイミングtB2を起点に、クロック信号CLK2に同期した出力段のPWM制御を開始する。これにより、シームレスな制御の切り替えが可能となる。クロック信号CLK2に同期したPWM制御において、PWM周波数(パルス幅変調の周波数)は周波数fCLK2にて固定され、出力段の出力デューティは誤差電圧VCMP及びスロープ電圧VSLPに依存して定まる。即ち、タイミングtB2以降に行われるPWM制御は周波数fCLK2をPWM周波数としたカレントモードでのPWM制御である。出力段の出力デューティとは、PWM制御の1周期に占める、出力トランジスタM1のオン区間の割合を指す。
【0087】
<<第3実施形態>>
本発明の第3実施形態を説明する。制御部10は、ワンショットパルスに同期して出力段を所定のオン時間TCONだけ出力ハイ状態とするコンスタントオンタイム制御を行うようにしても良い。即ち、第3実施形態に係る制御部10において、スキップ信号SKPのダウンエッジに応答したワンショットパルスに基づきセット信号が発行されると、制御信号生成部18は、制御信号CNTをオン時間TCONだけハイレベルとし、その後、再度のセット信号が発行されるまで制御信号CNTをローレベルに維持する。これにより、ワンショットパルスに基づき出力トランジスタM1がオン時間TCONだけオンとされた後、出力トランジスタM1がターンオフされることになる。オン時間TCONは入力電圧VIN及び出力電圧VOUTに基づき決定される時間であって良い。
【0088】
第3実施形態におけるコンスタントオンタイム制御が実行されるときのタイミングチャートは
図12と同等なる。但し、第3実施形態では、上述の如く、ワンショットパルスが発行されるごとの出力トランジスタM1のオン区間の長さは、誤差電圧V
CMP及びスロープ電圧V
SLPに依存せず、オン時間T
CONに固定される。
【0089】
ワンショットパルスに基づくコンスタントオンタイム制御が実行される区間において、ワンショットパルスの発行間隔は負荷電流ILDに依存し、負荷電流ILDの増大につれてワンショットパルスの発行間隔は狭まる。ワンショットパルスの発行間隔が予め定められた間隔まで小さくなったときには、それ以上はワンショットパルスの発行間隔を狭めないようにして良い。
【0090】
コンスタントオンタイム制御を用いる場合、スイッチング周波数(即ちスイッチ電圧VSWの周波数)が定まらない、又は、定めようとしても周波数の設定精度を高め難い。一方、負荷電流ILDが或る程度大きな状況においては、スイッチング周波数の固定が望まれるアプリケーションも多い。このようなアプリケーションに対しては第1又は第2実施形態にて述べた制御を採用した方が好ましい。
【0091】
<<第4実施形態>>
本発明の第4実施形態を説明する。
図14(a)に示す如く、制御部10には動作モード設定部40が設けられている。電源IC1の動作モードには通常モード及び待機モードを含む複数のモードがあり、動作モード設定部40は、スキップ信号SKPに基づき通常モード又は待機モードを動作モードに設定する。
【0092】
電源IC1内の各回路は第1回路群及び第2回路群の何れかに分類され、
図14(b)に示す如く、通常モードにおいては(即ち動作モードが通常モードに設定されているときにおいては)第1回路群及び第2回路群を構成する各回路に電源電圧が供給されて第1回路群及び第2回路群を構成する各回路が動作する。一方、待機モードにおいては(即ち動作モードが待機モードに設定されているときにおいては)、第1回路群を構成する各回路には電源電圧が供給されて第1回路群を構成する各回路が動作するものの、第2回路群を構成する各回路の動作が停止する。このため、待機モードにおける電源IC1の消費電力は通常モードにおける電源IC1の消費電力よりも低い。第2回路群を構成する各回路の動作を停止させる際、第2回路群を構成する各回路に対する電源電圧の供給を遮断しても良い。
【0093】
図14(c)に示す如く、第1回路群には、エラーアンプ11、スキップコンパレータ21、バイアス系回路、内部電源回路30及び動作モード設定部40が含まれる。ワンショットパルス生成部22も第1回路群に含まれていても良い。バイアス系回路には、基準電圧V
REFを生成する回路(即ち基準電圧源12)及びスキップ判定電圧V
TSKPを生成する回路が含まれる。
【0094】
電源IC1に含まれる回路の内、第1回路群に含まれない回路の全部又は一部は第2回路群に属している。例えば、スロープ電圧生成部15、メインコンパレータ16、セット信号生成部17、制御信号生成部18、ゲートドライバ19及び逆流検出部20の内の、全部又は一部は第2回路群に属していて良い。また、電源IC1には様々な保護回路(不図示)が設けられており、電源IC1の仕様上、問題がなければ、保護回路も第2回路群に含めるようにしても良い。これにより、待機モードにおける電力消費が更に低減される。保護回路としては、電源IC1内の温度を監視して電源IC1内の温度が所定温度以上となると電源IC1内の全体の動作を停止させるサーマルシャットダウン回路や、トランジスタM1又はM2に過電流が流れたときに出力段をHi-Z状態にする過電流保護回路などがある。
【0095】
図15を参照して動作モードの設定方法を説明する。動作モード設定部40ではスキップ信号SKPに基づき信号DEEPのレベルを設定する。実際には、スキップ信号SKPに基づく信号SKPINに基づき信号DEEPのレベルが設定されるが、ここでは、スキップ信号SKPにノイズは含まれていないものとして、スキップ信号SKPとの関係で信号DEEPのレベルの設定方法を説明する。信号DEEPは原則としてローレベルとされ、信号SKPにアップエッジが生じたとき、動作モード設定部40は、自身が内包するタイマを動作させて信号SKPがハイレベルに維持されている区間の長さを計測し、信号SKPが所定の設定時間T
DEEP以上継続してハイレベルに維持されるという条件が満たされると信号DEEPをローレベルからハイレベルに切り替える。上記の計測は電源IC1内で生成される何れかのクロック信号を用いて行われる。信号DEEPがハイレベルに切り替わった後、信号SKPにダウンエッジが生じると信号DEEPはローレベルに切り替えられる。信号DEEPがローレベルであるときに動作モードが通常モードに設定され、信号DEEPがハイレベルであるときに動作モードが待機モードに設定される。
【0096】
<<第5実施形態>>
本発明の第5実施形態を説明する。電源IC1は、スイッチング電源装置AAの起動時において、出力電圧VOUTを0Vから目標電圧VTGに向けて緩やかに上昇させていくソフトスタート動作を実現できて良い。第5実施形態では、ソフトスタート動作に関わる技術について説明する。尚、第1~第4実施形態に示した動作は、後述の信号SSENDがハイレベルとなった後の動作であると解して良い。
【0097】
ソフトスタート動作を実現するために、制御部10には、
図16に示す如くソフトスタート電圧V
SSを生成するソフトスタート電圧生成部51及び電圧V
SSに応じた信号SSENDを生成する回路52が設けられ、且つ、エラーアンプ11には非反転入力端子として第1及び第2非反転入力端子が設けられる。エラーアンプ11の第1、第2非反転入力端子に対して、夫々、ソフトスタート電圧V
SS、基準電圧V
REFが印加される。エラーアンプ11の反転入力端子には上述の如く帰還電圧V
FBが印加される。
【0098】
エラーアンプ11は、上述の如く、負側対象電圧と正側対象電圧との差分に応じた誤差電圧VCMPを生成するが、ソフトスタート電圧VSS及び基準電圧VREFの内、低い方の電圧が正側対象電圧として用いられる。負側対象電圧は帰還電圧VFBである。故に、エラーアンプ11は、ソフトスタート電圧VSSが基準電圧VREFよりも低い区間では、帰還電圧VFBとソフトスタート電圧VSSとの差分に応じて誤差電圧VCMPを生成し、ソフトスタート電圧VSSが基準電圧VREFよりも高い区間では、帰還電圧VFBと基準電圧VREFとの差分に応じて誤差電圧VCMPを生成する。“VSS=VREF”であるときには、ソフトスタート電圧VSSと基準電圧VREFの何れかが正側対象電圧となる。
【0099】
図17はスイッチング電源装置AAの起動時におけるタイミングチャートである。タイミングt
C1において、電源IC1に供給される入力電圧V
INが0V(ゼロボルト)から所定の正の直流電圧へと上昇したとする。そうすると、タイミングt
C1にて電源IC1が起動し、生成部51は、タイミングt
C1を起点に、ソフトスタート電圧V
SSを0Vから所定の正の所定電圧V
SSMAXに向けて徐々に上昇させてゆく。例えば、定電流を生成する定電流回路と該定電流にて充電されるコンデンサにて電圧V
SSを生成することができ、電圧V
SSを生成するためのコンデンサは電源IC1に外付け接続されていても良い。タイミングt
C1よりも後のタイミングt
C3において、電圧V
SSはちょうど所定電圧V
SSMAXに達し、以後、電圧V
SSは所定電圧V
SSMAXに維持される。タイミングt
C1及びt
C3間のタイミングt
C2において、ちょうど、電圧V
SSは所定電圧V
SSMAXよりも低い所定電圧V
SSENDに達する。回路52は、電圧V
SSが所定電圧V
SSEND未満であるときにローレベルの信号SSENDを出力し、電圧V
SSが所定電圧V
SSEND以上であるときにハイレベルの信号SSENDを出力する。ハイレベルの信号SSENDはソフトスタート動作の完了を意味している。ここで、“0<V
REF<V
SSEND<V
SSMAX”が成立する。但し“V
REF=V
SSEND”であっても構わない。
【0100】
このように、生成部51は、スイッチング電源装置AAの起動時において(即ち電源IC1の起動時において)、基準電圧VREFより低い電位から基準電圧VREFより高い電位(VSSMAX)に向けて徐々に電位が上昇するソフトスタート電圧VSSを生成し、これによって出力電圧VOUTを0Vから目標電圧VTGに向けて緩やかに上昇させていくソフトスタート動作を実現する。
【0101】
タイミングt
C1を起点にして、エラーアンプ11からラインLN1に供給される電流により誤差電圧V
CMPが0V(ゼロボルト)から徐々に上昇してゆくことになるが、
図1の回路構成では、誤差電圧V
CMPがスキップ判定電圧V
TSKPに達するまでパルスキップ制御が働いて出力トランジスタM1がオンとならない。故に、仮にソフトスタート動作の実行中におけるスキップ判定電圧V
TSKPが高すぎたならば、電圧V
SSが相応に高くなってからしか出力トランジスタM1がターンオンされないことになり、出力電圧V
OUTの上昇の滑らかさが損なわれるおそれがある。即ち、
図18を参照し、起動時における出力電圧V
OUTの波形が、理想的な実線波形462から乖離した、破線波形461のようになるおそれがある。
【0102】
そこで、電源IC1では、ソフトスタート動作の実行時におけるスキップ判定電圧V
TSKPを、ソフトスタート動作の完了後のそれよりも低く設定する。これにより、起動時における出力電圧V
OUTの波形を、
図18の実線波形462のような滑らかなものとすることができる。具体的には、スキップ判定電圧V
TSKPに対し信号SSENDがローレベルであるときには所定の電圧V
TSKP1に設定し且つ信号SSENDがハイレベルであるときには所定の電圧V
TSKP2に設定する電圧設定回路(不図示)を制御部10に設けておく(
図19参照)。ここで、“0<V
TSKP1<V
TSKP2”が成立し、例えば、電圧V
TSKP1及びV
TSKP2は、夫々、30mV及び120mVである。即ち、制御部10は、ソフトスタート電圧V
SSが基準電圧V
REF以上の所定電圧V
SSENDに達するまでのソフトスタート区間において、それ以降よりも、スキップ判定電圧V
SKPを低く設定する。
【0103】
<<第6実施形態>>
本発明の第6実施形態を説明する。第6実施形態では、上述の第1~第5実施形態の内の任意の実施形態に適用可能な応用技術及び変形技術等を説明する。
【0104】
スイッチング電源装置AAは、負荷LDを有する任意の電気機器に搭載されて良い。出力電圧VOUTのリプル低減及び軽負荷時における電力消費削減に対して要求の強い用途において、スイッチング電源装置AAは特に有益に機能するが、スイッチング電源装置AAの用途は任意である。スイッチング電源装置AAが搭載される電気機器の例として、PLC(Programmable Logic Controller)が挙げられる。この場合、PLCに設けられたマイクロコンピュータやASIC(Application Specific Integrated Circuit)が負荷LDとなりうる。
【0105】
スイッチング電源装置AAが搭載される電気機器の他の例として冷蔵庫や洗濯機などの家電機器も挙げられる。冷蔵庫の庫内を照らすための照明部が負荷LDとなり得る。冷蔵庫では、扉の閉鎖時において照明部が消灯される一方で扉の開放時において照明部が点灯される。このため、照明部がスイッチング電源装置AAの負荷LDとなる場合、負荷電流ILDが大きく変動し、この変動の過程において上述の各実施形態で述べたような制御の滑らかな切り替えが有効に機能する。
【0106】
上述したように、電源IC1の各回路素子は半導体集積回路の形態で形成され、当該半導体集積回路を樹脂にて構成された筐体(パッケージ)内に封入することで半導体装置が構成される。但し、複数のディスクリート部品を用いて電源IC1内の回路と同等の回路を構成するようにしても良い。電源IC1内に含まれるものとして上述した幾つかの回路素子(例えばトランジスタM1及びM2)は、電源IC1外に設けられて電源IC1に外付け接続されても良い。逆に、電源IC1外に設けられるものとして上述した幾つかの回路素子を、電源IC1内に設けるようにしても良い。
【0107】
スイッチング電源装置AAはスイッチング電源用回路を内包している。電源IC1がスイッチング電源用回路に相当すると考えることができる。上述の電源IC1から電源IC1の構成要素の一部を除いた回路がスイッチング電源用回路に相当すると考えても良いし、或いは、上述の電源IC1と電源IC1外の任意の要素とでスイッチング電源用回路が構成されると考えても良い。
【0108】
任意の信号又は電圧に関して、上述の主旨を損なわない形で、それらのハイレベルとローレベルの関係を逆にしても良い。
【0109】
上述の各トランジスタは、任意の種類のトランジスタであって良い。例えば、MOSFETとして上述されたトランジスタを、接合型FET、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)又はバイポーラトランジスタに置き換えることも可能である。任意のトランジスタは第1電極、第2電極及び制御電極を有する。FETにおいては、第1及び第2電極の内の一方がドレインで他方がソースであり且つ制御電極がゲートである。IGBTにおいては、第1及び第2電極の内の一方がコレクタで他方がエミッタであり且つ制御電極がゲートである。IGBTに属さないバイポーラトランジスタにおいては、第1及び第2電極の内の一方がコレクタで他方がエミッタであり且つ制御電極がベースである。
【0110】
同期整流方式の降圧型スイッチング電源装置に本発明を適用した構成を例に挙げたが、本発明の適用対象はこれに限定されるものではなく、非同期整流方式のスイッチング電源装置に本発明を適用しても構わないし、昇圧型や昇降圧型のスイッチング電源装置に本発明を適用しても構わない。
【0111】
本発明の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。以上の実施形態は、あくまでも、本発明の実施形態の例であって、本発明ないし各構成要件の用語の意義は、以上の実施形態に記載されたものに制限されるものではない。上述の説明文中に示した具体的な数値は、単なる例示であって、当然の如く、それらを様々な数値に変更することができる。
【符号の説明】
【0112】
AA スイッチング電源装置
1 電源IC
10 制御部
11 エラーアンプ
15 スロープ電圧生成部
16 メインコンパレータ
17 セット信号生成部
18 制御信号生成部
21 スキップコンパレータ
22 ワンショットパルス生成部
M1 出力トランジスタ
M2 同期整流トランジスタ
VIN 入力電圧
VOUT 出力電圧
VFB 帰還電圧