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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-21
(45)【発行日】2023-06-29
(54)【発明の名称】熱利用発電モジュール
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20230622BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20230622BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20230622BHJP
   H02J 1/10 20060101ALI20230622BHJP
   H02J 1/00 20060101ALI20230622BHJP
【FI】
H02J7/00 302C
H01M10/48 P
H01M10/44 P
H02J1/10
H02J1/00 304E
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018247915
(22)【出願日】2018-12-28
(65)【公開番号】P2020108308
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】390039929
【氏名又は名称】三桜工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100114270
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 朋也
(74)【代理人】
【識別番号】100130052
【弁理士】
【氏名又は名称】大阪 弘一
(74)【代理人】
【識別番号】100124800
【弁理士】
【氏名又は名称】諏澤 勇司
(72)【発明者】
【氏名】梅 ▲ヒョウ▼
(72)【発明者】
【氏名】後藤 直哉
(72)【発明者】
【氏名】松下 祥子
(72)【発明者】
【氏名】林 ゆう子
(72)【発明者】
【氏名】荒木 拓真
【審査官】大濱 伸也
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-176408(JP,A)
【文献】特開平08-037322(JP,A)
【文献】国際公開第2017/038988(WO,A1)
【文献】国際公開第2001/071821(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
H02J 1/00
H02J 1/10
H01M 10/44
H01M 10/48
H02N 11/00
H01L 35/28
H01L 35/32
H01L 35/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱利用発電可能な熱利用発電素子であって、発電能力が低下した場合に負荷から切り離されることによって前記発電能力が回復する前記熱利用発電素子を含む複数の熱利用発電電池が前記負荷に対して互いに電気的に並列に接続されてなる電池群と、
前記複数の熱利用発電電池のそれぞれと前記負荷との間の接続経路上に設けられ、前記複数の熱利用発電電池のそれぞれと前記負荷との電気的な接続をオン/オフする複数のスイッチと、
前記複数の熱利用発電電池の両極間の電位差を検出する電圧検出部と、
前記電圧検出部によって検出された前記電位差と規定値との比較結果を基に、前記複数のスイッチのうちでオン状態にある少なくとも1つのスイッチをオフ状態に遷移させ、オフ状態にある少なくとも1つのスイッチをオン状態に遷移させて、前記複数の熱利用発電電池が前記負荷に対して交代で電力を供給することによって前記負荷に対して電力が継続的に供給されるように、前記複数のスイッチを制御する制御部と、を備える熱利用発電モジュール。
【請求項2】
前記電圧検出部は、前記複数の熱利用発電電池から前記負荷に印加される電位差を前記電位差として検出可能に構成され、
前記制御部は、前記電圧検出部によって検出された前記電位差が規定値を下回ったと判定したタイミングで、複数のスイッチのうちでオフ状態にあるスイッチを順次入れ替えるように、前記複数のスイッチを制御する、
請求項1記載の熱利用発電モジュール。
【請求項3】
前記電圧検出部は、前記複数の熱利用発電電池のそれぞれの両極間の前記電位差を独立して検出可能に構成され、
前記制御部は、前記電圧検出部によって検出された前記電位差が規定値を下回ったと判定された熱利用発電電池に対応するスイッチであって、オン状態にあるスイッチをオフ状態に遷移させ、前記電圧検出部によって検出された前記電位差が規定値を上回ったと判定された熱利用発電電池に対応するスイッチであって、オフ状態にあるスイッチをオン状態に遷移させる、
請求項1記載の熱利用発電モジュール。
【請求項4】
前記制御部は、前記複数のスイッチのうちでオフ状態にあるスイッチが時間経過とともに順次入れ替わるように、前記複数のスイッチを制御する、
請求項1~3のいずれか1項に記載の熱利用発電モジュール。
【請求項5】
前記複数の熱利用発電電池から前記負荷に対して供給される電流を検出する電流検出部をさらに備え、
前記制御部は、前記電圧検出部によって検出された前記電位差と前記電流検出部によって検出された前記電流とに対応する電力を基に、同時に前記負荷に電気的に接続される前記熱利用発電電池の個数を変更するように、前記複数のスイッチを制御する、
請求項1~4のいずれか1項に記載の熱利用発電モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱利用発電により電力を供給する熱利用発電モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近、温度勾配を必要としない熱利用発電素子が開発されている(下記特許文献1参照)。この熱利用発電素子は、温度勾配を与えることなく熱エネルギーを電気エネルギーに直接変換することにより、熱利用発電を行うことができる。このことから、熱利用発電素子は、地熱、自動車の排熱、工場の排熱などを利用した発電システムにおける利用が期待されている。一方で、従来から二次電池を利用した電力供給システムも用いられている(下記特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開2017/038988号公報
【文献】特開2003-111289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した熱利用発電素子を利用した発電システムにおいては、継続的な電力の供給を求められる傾向にある。一方で、熱利用発電素子単体での発電能力の持続時間は、供給する電力が大きくなるに従って短くなる傾向にある。また、熱利用発電素子の発電能力が低下した場合に負荷を低減させると発電能力が回復する現象が認められた。そのため、熱利用発電素子を利用した発電システムにおいては、継続的な電力供給を実現するための適切な制御が求められる。また、上記特許文献2に記載の電力供給システムでは、スイッチ操作によって劣化した二次電池を別の二次電池に交換する制御が行われているが、継続的な電力供給を行うことには限界がある。
【0005】
そこで、本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、継続的な電力供給を実現することが可能な熱利用発電モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一側面に係る熱利用発電モジュールは、熱利用発電可能な熱利用発電素子を含む複数の熱利用発電電池が負荷に対して互いに電気的に並列に接続されてなる電池群と、複数の熱利用発電電池のそれぞれと負荷との間の接続経路上に設けられ、複数の熱利用発電電池のそれぞれと負荷との電気的な接続をオン/オフする複数のスイッチと、複数の熱利用発電電池の両極間の電位差を検出する電圧検出部と、電圧検出部によって検出された電位差と規定値との比較結果を基に、複数のスイッチのうちでオン状態にある少なくとも1つのスイッチをオフ状態に遷移させ、オフ状態にある少なくとも1つのスイッチをオン状態に遷移させるように、複数のスイッチを制御する制御部と、を備える。
【0007】
上記一側面に係る熱利用発電モジュールによれば、負荷に対して互いに電気的に並列に接続された熱利用発電素子を含む複数の熱利用発電電池を利用して負荷に電力を供給する際に、複数の熱利用発電電池の両極間の電位差と規定値との比較結果に基づいて、負荷との接続が遮断されている熱利用発電電池と負荷との接続が確立されている熱利用発電電池とが入れ替えられる。これにより、複数の熱利用発電電池の両極間の電位差に対応して、複数の熱利用発電電池から負荷に対して交代して電力を供給させることができ、供給電力の大きさに応じて継続的な電力供給を実現することができる。
【0008】
ここで、上記一側面係る熱利用発電モジュールにおいては、電圧検出部は、複数の熱利用発電電池から負荷に印加される電位差を電位差として検出可能に構成され、制御部は、電圧検出部によって検出された電位差が規定値を下回ったと判定したタイミングで、複数のスイッチのうちでオフ状態にあるスイッチを順次入れ替えるように、複数のスイッチを制御する、ことが好適である。かかる構成を採れば、複数の熱利用発電電池の両極から負荷に印加される電位差が下がったタイミングで、複数の熱利用発電電池のうち負荷との電気的接続が遮断される熱利用発電電池を順次入れ替えることができる。その結果、熱利用発電電池の個数を削減しながら継続的な電力供給を個々の熱利用発電電池の供給電力の大きさに応じて効率的に実現することができる。
【0009】
また、電圧検出部は、複数の熱利用発電電池のそれぞれの両極間の電位差を独立して検出可能に構成され、制御部は、電圧検出部によって検出された電位差が規定値を下回ったと判定された電池に対応するスイッチであって、オン状態にあるスイッチをオフ状態に遷移させ、電圧検出部によって検出された電位差が規定値を上回ったと判定された熱利用発電電池に対応するスイッチであって、オフ状態にあるスイッチをオン状態に遷移させる、ことも好適である。この場合、複数の熱利用発電電池の個々の発電能力に応じて適切なタイミングで複数の熱利用発電電池と負荷との電気的接続を切り替えることができ、熱利用発電電池の個数を削減しながら継続的な電力供給を個々の熱利用発電電池の供給電力の大きさに応じて効率的に実現することができる。
【0010】
さらに、制御部は、複数のスイッチのうちでオフ状態にあるスイッチが時間経過とともに順次入れ替わるように、複数のスイッチを制御する、ことも好適である。こうすれば、熱利用発電電池の個数を削減しながら継続的な電力供給を個々の熱利用発電電池の供給電力の大きさに応じてさらに効率的に実現することができる。
【0011】
またさらに、複数の熱利用発電電池から負荷に対して供給される電流を検出する電流検出部をさらに備え、制御部は、電圧検出部によって検出された電位差と電流検出部によって検出された電流とに対応する電力を基に、同時に負荷に電気的に接続される熱利用発電電池の個数を変更するように、複数のスイッチを制御する、ことも好適である。かかる構成を採れば、供給電力の大きさに応じて同時に負荷に電気的に接続させる熱利用発電電池の数を変更することで、継続的な電力供給を確実に実現することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば継続的な電力供給を実現することが可能な熱利用発電モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係る熱利用発電モジュール1の構成を示す回路図である。
図2図1の熱利用発電電池3a,3b,3cに内蔵される熱利用発電素子の構成を示す図である。
図3図1のコントローラ11によるスイッチ5a,5b,5cの制御機能を説明するためのフローチャートである。
図4図3に示す制御によって時間経過とともに遷移するスイッチ5a,5b,5cのオン/オフの状態を示すタイミングチャートである。
図5図1のコントローラ11による電池個数の変更制御機能を説明するためのフローチャートである。
図6図5に示す制御によって時間経過とともに遷移するスイッチ5a,5b,5cのオン/オフの状態を示すタイミングチャートである。
図7】変形例に係る熱利用発電モジュール1Aの構成を示す回路図である。
図8図7のコントローラ11Aによるスイッチ5a,5b,5cの制御機能を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0015】
図1は、実施形態に係る熱利用発電モジュール1の構成を示す回路図である。熱利用発電モジュール1は、自動車等の運搬装置用のセンサー等の装置、地熱等を利用した発電装置、工場又はオフィス等における各種センサー等の装置に内蔵されて用いられ、熱エネルギーを利用して電力を供給する電源システムである。熱利用発電モジュール1は熱利用して電流を発生する装置ともいえる。図1に示すように、熱利用発電モジュール1は、熱利用発電可能な熱利用発電素子を内蔵する複数の熱利用発電電池(以下、「電池」と略称する。)3a,3b,3cによって構成される電池群3、複数の電池3a,3b,3cに対応して設けられる複数のスイッチ5a,5b,5c、複数の電池3a,3b,3cに対応して設けられる電圧センサー(電圧検出部)7a,7b,7c、電流センサー(電流検出部)9、及びコントローラ(制御部)11を含んで構成される。この熱利用発電モジュール1には、センサー等の負荷Lが電気的に接続される。図1においては、各構成要素間を結ぶ電気的な接続経路を実線で示し、コントローラ11と各構成要素との間でやり取りされる信号の経路を点線で示している。
【0016】
なお、電池群3を構成する電池の個数は特定の個数には限定されない。本実施形態では、電池の個数が3個の場合を例として説明する。
【0017】
複数の電池3a,3b,3cのそれぞれは、熱利用発電素子を内蔵する電池であり、その構成としては国際公開2017/038988号公報に記載の構成を採用できる。図2には、電池3a,3b,3cに内蔵される熱利用発電素子13の構成例を示している。このように、熱利用発電素子13は、2つの電極層である負極15a及び正極15bの間に電子輸送層17、電荷熱励起材料層19、及びイオン酸化還元層21の三層が積層されて構成されている。
【0018】
電荷熱励起材料層19は、熱を吸収して熱励起電子及び正孔を生成する半導体材料を含む。イオン酸化還元層21は、電荷輸送イオン対が移動できる固体電解質または電解質溶液を含む。ここでいう「電荷輸送イオン対」とは価数の異なる安定な2つのイオンであり、一方のイオンが酸化又は還元されて他方のイオンとなることにより、電子及び正孔を運ぶことができるイオンである。電子輸送層17は、半導体または金属等の電子輸送材料を含み、電荷熱励起材料層19で生成された熱励起電子を輸送するための層である。ただし、熱利用発電素子13においては、この電子輸送層17は省略されていてもよい。
【0019】
上記構成の熱利用発電素子13においては、電荷熱励起材料層19において熱の吸収が生じると熱励起電子e及び正孔hが生じ、熱励起電子eが電子輸送層17に向けて移動する。電荷熱励起材料層19で生じた正孔hが電荷熱励起材料層19とイオン酸化還元層21との界面で電荷輸送イオン対の一方であるイオンXを酸化して他方のイオンYに変化させる(X+h→Y)。そして、電子輸送層17で過剰になった電子eが負極15aを通って外部に移動し、負荷Lを介して正極15bまで移動する。このとき、熱利用発電素子13での発電による負荷Lにおける仕事が為される。さらに、正極15bまで移動した電子eが正極15bとイオン酸化還元層21との界面でイオンYを還元してイオンXに変化させる(Y+e→X)。イオン酸化還元層21と電荷熱励起材料層19との界面に生じたイオンYと、イオン酸化還元層21と正極15bとの界面で生じたイオンXとが、イオン酸化還元層21内を拡散して層内のイオン局在化が緩和される。このような熱励起電子eの移動と電荷輸送イオン対の拡散とが繰り返されることによって熱利用発電素子による発電が持続する。
【0020】
複数の電池3a,3b,3cのそれぞれは、熱利用発電素子13を1つあるいは複数内蔵する電池である。電池3a,3b,3cは、熱利用発電素子13を複数備える場合には、複数の熱利用発電素子13を内部で互いに電気的に直列に接続された形態で備える。
【0021】
このような構成の電池3a,3b,3cのそれぞれにおいては、上述したように、熱励起電子eの移動による電力の供給と、熱利用発電素子13内のイオン酸化還元層21内での電荷輸送イオン対の拡散とが並行して繰り返されることによって、電力の供給が持続される。このとき、単位時間あたりに取り出される熱励起電子eの量(=電流量)が小さければ、電荷輸送イオン対の拡散が十分に追いつくために、電力の供給の持続時間は長くなる傾向がある。特に、電流量が十分小さければ半永久的な電力の供給が可能となる。一方で、単位時間あたりに取り出される熱励起電子eの量(=電流量)が大きくなるに従って、イオン酸化還元層21と電荷熱励起材料層19との界面にイオンYが溜まってイオンXの量が少なくなり、イオンXからイオンYに変化する反応が生じにくくなり、イオン酸化還元層21と正極15bとの界面にイオンXが溜まってイオンYの量が少なくなり、イオンYからイオンXに変化する反応が生じにくくなる。この場合は、発電の持続時間が短くなる傾向にある。ただし、発電の持続時間は、電流量のみでなく、環境温度、熱利用発電素子13の各層の材料の組成(特にイオン酸化還元層21の材料の組成)によって決まってくるため、事前に決定することは困難である。
【0022】
このような熱利用発電素子13における発電能力の低下(イオン酸化還元層21におけるイオンの局在化の高まり)は、負荷Lを熱利用発電素子13から切り離すことによって時間経過とともに回復する。これは、熱励起電子eの移動が止まると電荷輸送イオン対の還元も止まるため、イオン対の酸化及び電荷輸送イオン対の拡散のみが進行するためである。ただし、この発電能力の回復時間も、環境温度、熱利用発電素子13の各層の材料の組成(特にイオン酸化還元層21の材料の組成)によって決まってくる。
【0023】
図1に戻って、複数の電池3a,3b,3cは、負荷Lに対して互いに電気的に並列に接続されている。具体的には、電池3aの正極は、スイッチ5a及び電流センサー9を介して負荷Lの一方の端子に接続され、電池3aの負極はグラウンドを経由して負荷Lの他方の端子に接続されている。同様に、電池3b,3cのそれぞれの正極は、スイッチ5b,5c及び電流センサー9を介して負荷Lの一方の端子に接続され、電池3b,3cのそれぞれの負極はグラウンドを経由して負荷Lの他方の端子に接続されている。
【0024】
複数のスイッチ5a,5b,5cは、外部からの制御によってその両端間の電気的な接続をオン/オフする半導体スイッチ、リレースイッチ等のスイッチング素子であり、それぞれが複数の電池3a,3b,3cと負荷Lとの接続経路上に設けられる。すなわち、スイッチ5aは、電池3aの正極と負荷Lの一方の端子との間の接続経路上に設けられ、電池3aと負荷Lとの電気的接続のみをオン/オフする。同様に、スイッチ5b,5cは、それぞれ、電池3b,3cの正極と負荷Lの一方の端子との間の接続経路上に設けられ、それぞれの電池3b,3cと負荷Lとの電気的接続のみをオン/オフする。これらのスイッチ5a,5b,5cは、コントローラ11からの信号による制御により、オン/オフを切り替え可能に構成される。
【0025】
電圧センサー7a,7b,7cは、それぞれ、個別に電池3a,3b,3cの両端に接続され、電池3a,3b,3cのそれぞれの両極間の電位差を独立して検出するセンサーである。これらの電圧センサー7a、7b,7cは、検出した電位差を示す信号をコントローラ11に送出することが可能とされている。
【0026】
電流センサー9は、複数の電池3a,3b,3cの並列回路におけるスイッチ5a,5b,5c側の一端と負荷Lの一方の端子との間の接続経路上に挿入され、複数の電池3a,3b,3cの並列回路から負荷Lに対して供給される電流を検出する。この電流センサー9は、検出した電流の量を示す信号をコントローラ11に送出することが可能とされている。
【0027】
コントローラ11は、電圧センサー7a,7b,7cおよび電流センサー9から送出された信号の示す値を参照して、それらの値と規定値との比較結果を基に、スイッチ5a,5b,5cのオン/オフを制御する制御装置である。このコントローラ11は、演算処理を担うCPU等の演算ユニットと、ROMおよびRAM等で構成され、演算処理で参照されるデータあるいは演算処理で生成されるデータを記憶するメモリユニットと、他の構成要素との信号のやり取りを行う通信ユニット等を内蔵する。コントローラ11への電力の供給は、電池3a,3b,3cの並列回路から行われてもよいし、二次電池等の他の供給源から行われてもよい。以下、コントローラ11の機能について説明する。
【0028】
図3は、コントローラ11によるスイッチ5a,5b,5cの制御機能を説明するためのフローチャートである。このように、コントローラ11は、電圧センサー7a,7b,7cによって検出された電位差を基に、電位差が規定値を下回った電池3a,3b,3cを判定し、その電池3a,3b,3cに対応するオン状態のスイッチ5a,5b,5cをオフ状態に遷移させる。それとともに、コントローラ11は、電圧センサー7a,7b,7cによって検出された電位差を基に、電位差が規定値を上回った電池3a,3b,3cを判定し、その電池3a,3b,3cに対応するオフ状態のスイッチ5a,5b,5cをオン状態に遷移させる。その際、コントローラ11は、複数の電池3a,3b,3cに対応するスイッチ5a,5b,5cのうちでオフ状態にあるスイッチが時間経過とともに順番に入れ替わるように制御する。
【0029】
具体的には、ユーザによる操作等を契機にコントローラ11の動作が開始されると、コントローラ11は、予め設定された最初の電池3aに対応するスイッチ5aをオンするように制御する(ステップS01)。それに応じて、コントローラ11は、負荷Lへの電力供給が稼働中である電池3aの電位差を、電圧センサー7aからの信号を基に検出する(ステップS02)。次に、コントローラ11は、検出した電位差が予め設定された規定値VA以下であるか否かを判定する(ステップS03)。この規定値VAは、想定される環境温度、電池3a,3b,3cに内蔵される熱利用発電素子13を構成する材料(特にイオン酸化還元層21の材料)の組成、熱利用発電素子13の直列数、及び負荷への入力特性の少なくとも一つに応じて予め設定され、発電能力の低下(イオン酸化還元層21におけるイオンの局在化の高まり)を示す値に対応する。コントローラ11は、判定の結果、検出した電位差が規定値VAを超えておりイオンの局在化が生じていないと判定される場合には(ステップS03;NO)、ステップS02の処理に戻って、稼働中の電池3aに関するステップS02,S03の処理を繰り返す。
【0030】
一方、コントローラ11は、検出した電位差が規定値VA以下でありイオンの局在化が生じていると判定される場合には(ステップS03;YES)、オフ状態のスイッチ5bに対応する待機中の電池3bの電位差を、電圧センサー7bからの信号を基に検出する(ステップS04)。そして、コントローラ11は、電位差が規定値VB以上であるか否かを判定する(ステップS05)。この規定値VBは、想定される環境温度、電池3a,3b,3cに内蔵される熱利用発電素子13を構成する材料(特にイオン酸化還元層21の材料)の組成、熱利用発電素子13の直列数、及び負荷への入力特性の少なくとも一つに応じて予め設定され、発電能力の回復(イオン酸化還元層21におけるイオンの局在化の緩和)を示す値に対応し、VB≧VAである。判定の結果、規定値VB未満でありイオンの局在化が未だ緩和されていないと判定された場合は(ステップS05;NO)、コントローラ11は、ステップS04に戻って電位差の検出及び判定を繰り返す。
【0031】
その一方で、規定値VB以上でありイオンの局在化が緩和されていると判定された場合は(ステップS05;YES)、コントローラ11は、稼働中である電池3aに対応するスイッチ5aをオフにし、待機中の電池3bに対応するスイッチ5bをオンにするように制御する(ステップS06)。その後、ステップS02に戻ってステップS02~S06の処理を繰り返し、コントローラ11は、稼働中の電池を順次入れ替え、時間経過とともに稼働中にある電池を順次待機中の状態に遷移させるように制御する。
【0032】
図4には、コントローラ11の制御によって時間経過とともに遷移するスイッチ5a,5b,5cのオン/オフの状態を示すタイミングチャートを示し、(a)はスイッチ5aの状態、(b)はスイッチ5bの状態、(c)はスイッチ5cの状態を示している。このように、コントローラの制御により、各スイッチ5a,5b,5cのオン状態の期間TONが時間経過とともに順次入れ替わり、各スイッチ5a,5b,5cが順次オフ状態に切り替えられてオフ状態の期間TOFFが順次開始される。期間TOFFの間に、図2に示したイオンXとイオンYの拡散が十分に行われ、界面での局在化がなくなっている。
【0033】
ここで、コントローラ11は、負荷Lに供給される電力を基に、負荷Lに電気的に接続される電池の個数を変更するように制御する機能も有する。図5は、コントローラ11による電池個数の変更機能を説明するためのフローチャートである。図5に示す処理は、図4に示すステップS02の直前に実行される。
【0034】
詳細には、ユーザによる操作等を契機にコントローラ11の動作が開始されると、コントローラ11は、予め設定された最初の電池3aに対応するスイッチ5aをオンするように制御する(ステップS11)。次に、コントローラ11は、負荷Lへの電力供給が稼働中である電池3aの電位差と、負荷Lに対して供給される電流とを、電圧センサー7a及び電流センサー9からの信号を基に検出する(ステップS12)。そして、コントローラ11は、検出した電位差及び電流を基に負荷Lに供給されている電力値を計算し、その電力値が規定値WA以上であるか否かを判定する(ステップS13)。この規定値WAは、負荷Lの消費電力値に応じて予め設定される。判定の結果、規格値以上である場合には(ステップS13;YES)、負荷Lに接続される電池の個数を変更することなく処理をステップS02(図3)に移行させ、稼働中の電池の入れ替えを制御する。
【0035】
一方で、規格値未満である場合には(ステップS13;NO)、負荷Lに接続される電池の個数を増加させるために、コントローラ11は、待機中の次の電池3bに対応するスイッチ5bをオンさせるように制御する(ステップS14)。その結果、負荷Lに電気的に接続される電池は2個となる。その後は、コントローラ11は、処理をステップS02に移行させ、稼働中の電池を順次待機中の電池と入れ替えるように制御する。
【0036】
図6には、コントローラ11の制御によって時間経過とともに遷移するスイッチ5a,5b,5cのオン/オフの状態を示すタイミングチャートを示し、(a)はスイッチ5aの状態、(b)はスイッチ5bの状態、(c)はスイッチ5cの状態を示している。このように、コントローラの制御により、稼働中の電池が2個に変更される場合には、電池3a,3b,3cのうちでオン状態の期間TONが重複する個数が常に2個となるようにスイッチ5a,5b,5cが制御され、稼働中の電池が順次待機中の電池と入れ替わり、電池3a,3b,3cのオフ状態の期間TOFFが順次他の電池の期間TOFFに変更される。
【0037】
本実施形態に係る熱利用発電モジュール1によれば、負荷Lに対して互いに電気的に並列に接続された複数の電池3a,3b,3cを利用して負荷Lに電力を供給する際に、複数の電池3a,3b,3cの個々の発電能力に応じて適切なタイミングで複数の電池3a,3b,3cと負荷Lとの電気的接続を切り替えることができる。具体的には、電池の3a,3b,3cの両極間の電位差により、熱利用発電素子13内のイオン酸化還元層21内でのイオンの局在化を判定し、その判定結果を基に負荷Lとの電気的接続を入れ替えている。その結果、電池の個数を削減しながら継続的な電力供給を個々の電池の供給電力の大きさに応じて効率的に実現することができる。
【0038】
特に、コントローラ11は、複数のスイッチ5a,5b,5cのうちでオフ状態にあるスイッチが時間経過とともに順次入れ替わるように、複数のスイッチ5a,5b,5cを制御する機能を有している。これにより、電力供給能力の低下した電池3a,3b,3cの能力の回復が効率的に行われる。その結果、電池の個数を削減しながら継続的な電力供給を個々の電池の供給電力の大きさに応じてさらに効率的に実現することができる。
【0039】
さらに、コントローラ11は、電池3a,3b,3cの並列回路から負荷Lに供給される電力を基に負荷Lに電気的に接続される電池の個数を変更する機能を有している。これにより、負荷Lに必要な消費電力に応じて負荷Lを安定して動作させることができ、継続的かつ安定した電力供給を確実に実現することができる。
【0040】
以上、好適な実施の形態において本発明の原理を図示し説明してきたが、本発明は、そのような原理から逸脱することなく配置および詳細において変更され得ることは、当業者によって認識される。本発明は、本実施の形態に開示された特定の構成に限定されるものではない。
【0041】
図7は、本発明の変形例に係る熱利用発電モジュール1Aの構成を示す回路図である。本変形例に係る熱利用発電モジュール1Aの構成の熱利用発電モジュール1との相違点は、各電池3a,3b,3cに対応して設けられた電圧センサー7a,7b,7cの代わりに1つの電圧センサー7が設けられる点である。
【0042】
すなわち、電圧センサー7は、電池3a,3b,3cの正極にスイッチ5a,5b,5cを経由して電気的に接続され、電池3a,3b,3cの並列回路から負荷Lの両端に印加される電位差を検出するセンサーである。この電圧センサー7は、検出した電位差を示す信号をコントローラ11Aに送出することが可能とされている。
【0043】
コントローラ11Aは、コントローラ11と同様な構成を有し、電圧センサー7および電流センサー9から送出された信号の示す値を参照して、それらの値と規定値との比較結果を基に、スイッチ5a,5b,5cのオン/オフを制御する。
【0044】
図8は、コントローラ11Aによるスイッチ5a,5b,5cの制御機能を説明するためのフローチャートである。このように、コントローラ11Aは、電圧センサー7によって検出された電位差を基に、稼働中の電池の電位差が規定値を下回ったタイミングを判定し、そのタイミングで稼働中の電池に対応するオン状態のスイッチ5a,5b,5cをオフ状態に遷移させ、待機中の電池に対応するスイッチ5a,5b,5cをオン状態に遷移させる。その際、コントローラ11Aは、複数の電池3a,3b,3cに対応するスイッチ5a,5b,5cのうちでオフ状態にあるスイッチが時間経過とともに順番に入れ替わるように制御する。
【0045】
具体的には、ユーザによる操作等を契機にコントローラ11の動作が開始されると、コントローラ11Aは、予め設定された最初の電池3aに対応するスイッチ5aをオンするように制御する(ステップS21)。それに応じて、コントローラ11Aは、負荷Lへの電力供給が稼働中である電池3aの電位差を、電圧センサー7からの信号を基に検出する(ステップS22)。次に、コントローラ11Aは、検出した電位差が予め設定された規定値VA以下であるか否かを判定する(ステップS23)。コントローラ11Aは、判定の結果、検出した電位差が規定値VAを超えている場合には(ステップS23;NO)、ステップS22の処理に戻って、稼働中の電池3aに関するステップS22,S23の処理を繰り返す。
【0046】
一方、コントローラ11Aは、検出した電位差が規定値VA以下である場合には(ステップS23;YES)、稼働中である電池3aに対応するスイッチ5aをオフにし、待機中の電池3bに対応するスイッチ5bをオンにするように制御する(ステップS24)。その後、ステップS22に戻ってステップS22~S24の処理を繰り返し、コントローラ11Aは、稼働中の電池を順次入れ替え、時間経過とともに稼働中にあった電池を順次待機中の状態に遷移させるように制御する。
【0047】
上記変形例によれば、複数の電池3a,3b,3cの両極から負荷Lに印加される電位差が下がったタイミングで、複数の電池3a,3b,3cのうち負荷Lとの電気的接続が遮断される電池を順次入れ替えることができる。その結果、電池の個数を削減しながら継続的な電力供給を個々の電池の供給電力の大きさに応じて効率的に実現することができる。加えて、電圧センサーの数が削減されるので小型化、軽量化、及びスイッチ制御のレスポンスの向上に有利である。
【符号の説明】
【0048】
1,1A…熱利用発電モジュール、3…電池群、3a,3b,3c…電池、5a,5b,5c…スイッチ、7,7a,7b,7c…電圧センサー(電圧検出部)、9…電流センサー(電流検出部)、11,11A…コントローラ(制御部)、13…熱利用発電素子、15a…負極、15b…正極、17…電子輸送層、19…電荷熱励起材料層、21…イオン酸化還元層、L…負荷。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8