(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-21
(45)【発行日】2023-06-29
(54)【発明の名称】水栓用ダンパー構造、水栓用ダンパー構造を備える水栓、及び水栓における音の低減方法
(51)【国際特許分類】
F16L 55/045 20060101AFI20230622BHJP
E03C 1/02 20060101ALI20230622BHJP
【FI】
F16L55/045
E03C1/02
(21)【出願番号】P 2019071237
(22)【出願日】2019-04-03
【審査請求日】2022-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000145471
【氏名又は名称】株式会社十川ゴム
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】角田 卓也
(72)【発明者】
【氏名】綱岡 朝香
【審査官】落合 弘之
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104989910(CN,A)
【文献】米国特許第03881519(US,A)
【文献】特開平08-021567(JP,A)
【文献】特開2007-333183(JP,A)
【文献】特開2005-344547(JP,A)
【文献】特開2010-159759(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 1/00
F16L 55/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
止水弁の下流側に配置される流路管と連通する状態で該流路管に取り付け可能なハウジング部材と、
前記ハウジング部材の内部に収容される弾性部材とを備え、
前記弾性部材は、円筒形状を有しており、その内部に空気が封入され、且つ膨張・収縮可能であり、
前記弾性部材の長手方向における一端から他端に亘って、厚みが連続的に肉厚となる水栓用ダンパー構造。
【請求項2】
止水弁の下流側に配置される流路管と連通する状態で該流路管に取り付け可能なハウジング部材と、
前記ハウジング部材の内部に収容される弾性部材とを備え、
前記弾性部材は、円筒形状を有しており、その内部に空気が封入され、且つ膨張・収縮可能であり、
前記弾性部材の外側面に、長手方向に延びる溝が形成されている水栓用ダンパー構造。
【請求項3】
止水弁の下流側に配置される流路管と連通する状態で該流路管に取り付け可能なハウジング部材と、
前記ハウジング部材の内部に収容される弾性部材とを備え、
前記弾性部材は、円筒形状を有しており、その内部に空気が封入され、且つ膨張・収縮可能であり、
前記弾性部材の内側面に、長手方向に延びる突条が形成されている水栓用ダンパー構造。
【請求項4】
前記ハウジング部材の一端に、着脱自在な蓋部材を備え、該蓋部材に対して前記弾性部材が接続される請求項1~
3のいずれか1項に記載の水栓用ダンパー構造。
【請求項5】
前記弾性部材が、前記蓋部材と連通する状態で接続されており、開閉自在な開口部が前記蓋部材に設けられている請求項
4に記載の水栓用ダンパー構造。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか1項に記載の水栓用ダンパー構造を備える水栓。
【請求項7】
請求項
6に記載の水栓における音の低減方法であって、
流体が水栓の内部を流れているときに前記弾性部材が収縮し、前記止水弁によって前記流体の流れが止められたときに前記弾性部材が膨張する工程を含む音の低減方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、止水時の水栓内圧の変化により発生する音を抑制する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の水栓としては、例えば、こま式水栓やレバー式水栓が知られている。こま式水栓は、ハンドルを数回回転させて止水するため、止水するまで数秒かかるが、レバー式水栓は、レバーを上げるか又は下げるだけですぐに止水することができる。そのため現在では、レバー式水栓が、キッチン用水栓、浴室用水栓、洗面用水栓等として広く用いられており、主流となってきている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
住宅の防音化が進む中、居住者が以前に比べて音に対して敏感になっており、部屋の静粛性に関するニーズが増してきている。一方、住宅における水道の蛇口やシャワーから出る水の流れは、水栓の中の止水弁の開閉によって制御される。水栓に設けられているレバーの操作によって一気に止水弁が閉じられると、蛇口等からの水の流れは止まるが、止水弁より下流側の水は慣性で流れ続けようとする。そのため、水栓内に一瞬の負圧が発生し、再び水が戻る力により一気に正圧がかかる。この水の圧力波(ウォーターハンマー)が止水弁に当たることによって音が発生することがあり、静粛な部屋の中ではその音が居住者に不快感をもたらすことがある。
【0004】
本発明の目的は、レバー式水栓や電磁弁型水栓における止水時の音の発生を抑えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る水栓用ダンパー構造は、
止水弁の下流側に配置される流路管と連通する状態で該流路管に取り付け可能なハウジング部材と、
前記ハウジング部材の内部に収容される弾性部材とを備え、
前記弾性部材は、円筒形状を有しており、その内部に空気が封入され、且つ膨張・収縮可能である。
【0006】
本構成によれば、流路管を水が流れているとき、その流水圧がかかることによって、ハウジング部材の内部に収容される円筒形状の弾性部材が収縮する。そして、レバーの操作によって止水弁が閉じられて止水されたとき、流水圧の減少に伴って、収縮していた弾性部材が速やかに膨張・復元する。これにより、止水弁の下流側に配置される流路管内に生じる負圧が吸収されて、その後の正圧も抑制されるため、水の圧力波(ウォーターハンマー)によって発生する音が軽減される。
【0007】
本発明に係る水栓用ダンパー構造においては、前記弾性部材の長手方向における一端から他端に亘って、厚みが連続的に肉厚となると好適である。
【0008】
本構成によれば、収縮していた弾性部材が膨張・復元する際に、厚みが厚い部分から、厚みが薄い部分へと順に膨張・復元してゆくことになり、急激な膨張・復元動作が抑制される。これにより、弾性部材が膨張・復元した際に発生する圧力波を緩和することができ、より効果的に音の発生を抑えることができる。
【0009】
本発明に係る水栓用ダンパー構造においては、前記弾性部材の外側面に、長手方向に延びる溝が形成されていると好適である。
【0010】
本構成のごとく、長手方向に延びる溝が弾性部材の外側面に形成されていることにより、弾性部材が収縮する際に、当該溝の部分が潰れ易くなるため、弾性部材の潰れ状態を制御することができる。また、弾性部材が収縮する際に、当該溝とその周辺部分全体が伸びて、弾性部材の一部分が局部的に伸びるという状況が生じ難くなるため、収縮及び膨張・復元が繰り返される弾性部材において、亀裂等が生じることを防止することができる。
【0011】
本発明に係る水栓用ダンパー構造においては、前記弾性部材の内側面に、長手方向に延びる突条が形成されていると好適である。
【0012】
本構成のごとく、弾性部材の内側面に、長手方向に延びる突条が形成されていることにより、弾性部材が収縮した際、弾性部材の内側が、面接触ではなく、突条において線接触することになるため、止水時において、弾性部材が、より速やかに膨張・復元することができる。
【0013】
本発明に係る水栓用ダンパー構造においては、前記ハウジング部材の一端に、着脱自在な蓋部材を備え、該蓋部材に対して前記弾性部材が接続されると好適である。
【0014】
本構成によれば、着脱自在な蓋部材に対して弾性部材が接続されているため、蓋部材をハウジング部材から取り外すことによって、弾性部材をハウジング部材から取り出すことができる。そのため、弾性部材のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0015】
本発明に係る水栓用ダンパー構造においては、前記弾性部材が、前記蓋部材と連通する状態で接続されており、開閉自在な開口部が前記蓋部材に設けられていると好適である。
【0016】
本構成によれば、弾性部材中に封入されていた空気が経年透過した場合でも、蓋部材の開口部を介して、弾性部材の中に空気を補充することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】水栓用ダンパー構造を備えるシングルレバー水栓の斜視図である。
【
図4】流体が水栓の内部を流れているときの水栓用ダンパー構造の弾性部材の状態を示す模式図である。
【
図5】弾性部材のその他の実施形態に係る斜視図である。
【
図6】弾性部材のその他の実施形態に係る説明図である。
【
図7】弾性部材のその他の実施形態に係る斜視図である。
【
図8】弾性部材のその他の実施形態に係る断面図である。
【
図9】弾性部材のその他の実施形態に係る断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
〔実施形態〕
以下、本発明の実施の形態を説明する。
(水栓用ダンパー構造)
図1には、本発明に係る水栓用ダンパー構造1を、シングルレバー水栓3に適用した例が示されている。尚、本発明に係る水栓用ダンパー構造1については、シングルレバー水栓3に限らず、他の形式のレバー式水栓や電磁弁型水栓等に適用しても良い。
【0019】
シングルレバー水栓3は、水栓本体30と、操作レバー31と、図示しない止水弁とを備える。本実施形態では、止水弁は、水栓本体30の内部に設けられている。尚、本発明に適用可能な止水弁には、手動で開閉を切り替える弁だけでなく、電磁弁も含まれる。
【0020】
水が流れ出る吐出部4が水栓本体30の上側に接続されており、水供給管5と湯供給管6が水栓本体30の下側に接続されている。流路管7は、その一端が水栓本体30に接続されており、他端が吐出部4に接続されている。
【0021】
水供給管5から送られてきた水と、湯供給管6から送られてきた湯とが、水栓本体30の内部で混合される。そして、その混合水が、流路管7を通って、水栓本体30から一旦下向きに流れた後、向きを変えて上方の吐出部4へと流れ、吐出部4から外部に流出する。
【0022】
操作レバー31は、水栓本体30に対して上下方向に回動可能に設けられており、操作レバー31の回動操作によって水量調節を行うことができる。本実施形態においては、操作レバー31が回動下端に位置する状態で止水弁が全閉状態となり止水される。そして、その回動下端の位置から上方へ操作レバー31を回動させると、その回動量に応じて止水弁の開度が大きくなり、より多くの水が流れ出るようになる。尚、操作レバー31が回動上端に位置する状態で止水弁が全開状態となり、流水量が最大となる。
【0023】
本実施形態における水栓用ダンパー構造1は、止水弁を有する水栓本体30の下流側に配置される流路管7と連通する状態で流路管7に取り付け可能なハウジング部材2と、ハウジング部材2の内部に収容されて、密封且つ膨張・収縮可能な円筒形状の、空気を内包した弾性部材22と、ハウジング部材2の一端に着脱自在な蓋部材23とを備える。
【0024】
本実施形態における水栓用ダンパー構造1は、水栓本体30に近接する位置において、流路管7にT字管8を介して設けられている。
【0025】
図2及び
図3に示されるように、本実施形態におけるハウジング部材2は、ニップル部材20と、円筒形状の外筒部材21とを備える。ハウジング部材2は、ニップル部材20が外筒部材21の一端に嵌め込まれていることにより構成されている。尚、ニップル部材20と外筒部材21はいずれも金属製であることが望ましいが、樹脂製のものを使用しても良い。ニップル部材20と外筒部材21が金属製である場合、金属の材質としては、例えば、ステンレス、黄銅、青銅、砲金等が挙げられる。また、ニップル部材20と外筒部材21が樹脂製である場合、樹脂の材質としては、例えば、ポリフェニレンサルファイド、ポリアセタール、ポリアミド、ポリフェニレンオキシド等が挙げられる。尚、ハウジング部材2の他の形態として、例えば、ニップル部材20と外筒部材21とが一体となっているような構成を備えるものであっても良い。
【0026】
弾性部材22は、両端が開口する円筒形状の部材で構成され、その一端に盲栓222が嵌め込まれることにより、一端が閉塞されている。尚、盲栓222については、必要に応じて、弾性部材22の外周をバンドで締め付けたり、あるいは加締めて固定するようにしても良い。また、本実施形態における弾性部材22は、その長手方向における一端から他端に亘って、厚みが一定となっている。
【0027】
弾性部材22の構成素材としては、収縮・膨張が可能であって、水道法上の基準を満たすような素材であれば、特に限定されるものではない。そのような素材としては、例えば、シリコーンゴム、フッ素ゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー等が挙げられる。また、弾性部材22の硬さとしては、例えばA50~A80の範囲にあることが望ましい。
【0028】
本実施形態における蓋部材23は、第1ニップル230、第2ニップル231、中空管232、盲栓233、第1フェルール234、第1ナット235、第2フェルール236、及び第2ナット237を備える。互いに螺合する第1ニップル230及び第2ニップル231によって、外筒部材21に接続される接続部分が構成される。そして、第1フェルール234及び第1ナット235によって、第1スウェージロック継手が構成され、第2フェルール236及び第2ナット237によって、第2スウェージロック継手が構成される。
【0029】
中空管232の一端側の外周面に、接続部分をなす第1ニップル230及び第2ニップル231が設けられており、第1スウェージロック継手を構成する第1フェルール234及び第1ナット235によって、当該接続部分(第1ニップル230及び第2ニップル231)の位置が固定されている。盲栓233は、第2スウェージロック継手を構成する第2フェルール236及び第2ナット237を介して、中空管232の他端に着脱自在に設けられており、盲栓233を取り外すことによって中空管232の他端が開口するように構成されている。即ち、盲栓233を取り外したときの中空管232の他端が開口部(図示せず)となる。
【0030】
蓋部材23を構成する、第1ニップル230、第2ニップル231、中空管232、盲栓233、第1フェルール234、第1ナット235、第2フェルール236、及び第2ナット237はいずれも金属製であることが望ましいが、樹脂製のものを使用しても良い。尚、蓋部材23の他の形態として、例えば、盲栓233以外の部材である、第1ニップル230、第2ニップル231、中空管232、第1フェルール234、第1ナット235、第2フェルール236、及び第2ナット237が一体となっているような構成を備えるものであっても良い。
【0031】
弾性部材22の開口部分に、蓋部材23の中空管232の端部(盲栓233が設けられていない側の端部)が嵌め込まれている。これにより、弾性部材22が、蓋部材23の中空管232と連通する状態で接続されると共に、弾性部材22の内部に空気が封入される。尚、弾性部材22の中に内包されていた空気が経年透過した場合でも、蓋部材23の盲栓233を取り外すことによって、開口部から弾性部材22の中に空気を補充することができる。
【0032】
ハウジング部材2の外筒部材21の端部(ニップル部材20が設けられていない側の端部)に、蓋部材23の第1ニップル230が螺合される。これにより、弾性部材22が、ハウジング部材2の内部に収容される。尚、弾性部材22の外径の大きさと、ハウジング部材2の内径の大きさは、弾性部材22が流水圧を受けて潰れて収縮したときに、弾性部材22がハウジング部材2の内壁と干渉して、弾性部材22を潰れきらないような設計にすることが望ましい。この構成により、止水弁が閉じられて止水されたとき、流水圧の減少に伴って、収縮していた弾性部材22がより速やかに膨張・復元し易くなる。
【0033】
流路管7に設けられているT字管8に対して、ハウジング部材2のニップル部材20を螺合することにより、水栓用ダンパー構造1が、流路管7と連通する状態で流路管7に取り付けられる。
【0034】
(水栓における止水時の音の低減方法)
上述の水栓用ダンパー構造1を備える水栓における止水時の音の低減方法を説明する。
当該音の低減方法は、流体が水栓の内部を流れているときに弾性部材22が収縮し、止水弁によって流体の流れが止められたときに弾性部材22が膨張する工程を含む。
【0035】
詳細には、例えば操作レバー31を操作して止水弁を開状態とすると、水(流体の一例)が水栓本体30を経て流路管7に流れて、水の一部が水栓用ダンパー構造1の中に流れ込む。このとき、
図4に示すように、弾性部材22に対して外側から流水圧がかかるため、弾性部材22が潰れて収縮する。
【0036】
次いで、操作レバー31の操作によって止水弁が閉じられて止水されたとき、
図2に示すように、流水圧の減少に伴って、収縮していた弾性部材22が流水圧の変化に応じて膨張・復元する。これにより、水栓本体30の止水弁の下流側に配置される流路管7内に生じる負圧が吸収されて、その後の正圧も抑制されるため、水の圧力波(ウォーターハンマー)によって発生する音が軽減される。
【0037】
〔その他の実施形態〕
1.上述の実施形態における弾性部材22は、両端が開口する円筒形状の部材で構成され、その一端に盲栓を設けられているが、この構成に限定されるものではない。他にも例えば、
図9に示すように、一端が閉塞され、且つ他端が開口する円筒形状の部材で構成しても良い。
【0038】
2.弾性部材22を、一端が閉塞され、且つ他端が開口する円筒形状の部材で構成する場合、
図5に示すように、弾性部材22の外側面に、長手方向に延びる溝220が形成されていても良い。本実施形態では、断面円弧状の2つの溝220が、弾性部材22の縦断面において対向する位置に設けられている。尚、弾性部材22の開口部付近には溝220は設けられていない。本構成のごとく、長手方向に延びる溝220が弾性部材22の外側面に形成されていることにより、弾性部材22が収縮する際に、
図6に示すように、当該溝220が変形して収縮し、弾性部材22の一部分が局部的に伸びるという状況が生じ難くなるため、収縮及び膨張・復元が繰り返される弾性部材22において、亀裂等が生じることが防止されて、弾性部材22の耐久性が向上することが期待される。
【0039】
3.弾性部材22を、一端が閉塞され、且つ他端が開口する円筒形状の部材で構成する場合、
図7に示すように、弾性部材22の内側面に、長手方向に延びる突条221が形成されていても良い。本実施形態では、4つの突条221が、縦断面において90度に間隔で設けられている。尚、弾性部材22の開口部付近には突条221は設けられていない。本構成のごとく、弾性部材22の内側面に、長手方向に延びる突条221が形成されていることにより、弾性部材22が収縮した際、弾性部材22の内面に真空状態ができることを防ぎ、流水圧の変化に対する膨張・復元の遅れを防ぎ、膨張時に発生する圧力波を緩和することができる。
【0040】
4.
図9に示される弾性部材22では、その長手方向における一端から他端に亘って、厚みが一定となっているが、この構成に限定されるものではない。他にも例えば、
図8に示すように、弾性部材22は、その長手方向における一端から他端に亘って、厚みが連続的に肉厚となっている構成としても良い。この構成によれば、収縮していた弾性部材22が膨張・復元する際に、厚みが厚い部分(他端側)から、厚みが薄い部分(一端側)へと順に膨張・復元してゆくことになり、急激な膨張・復元動作が抑制される。これにより、弾性部材22が膨張・復元した際に発生する圧力波を緩和することができ、より効果的に音の発生を抑えることができる。尚、本実施形態では、一端から他端に向かうほど、弾性部材22の内径が小さくなっているが、厚みを連続的に肉厚とする構成は、これに限定されるものではない。
【0041】
5.
図5に示される溝220の構成、
図7に示される突条221の構成、並びに
図8に示される厚みが連続的に肉厚になる構成については、これらの構成を必要に応じて、任意に組み合わせても良い。また、弾性部材22を、両端が開口する円筒形状の部材で構成した場合においても、当該構成に対して、
図5に示される溝220の構成、
図7に示される突条221の構成、並びに
図8に示される厚みが連続的に肉厚になる構成を、必要に応じて任意に組み合わせても良い。
【0042】
6.本発明に係る水栓用ダンパー構造については、上述の実施形態に限定されるものではなく、他にも例えば、空気を封入してある弾性部材を、一端が閉塞されているハウジング部材の中に配置させてあるだけのような、単純な構成であっても良い。この構成では、水が水栓用ダンパー構造の中に流れ込むと、弾性部材がハウジング部材の中で浮いているような状態となる。
【0043】
なお、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【実施例】
【0044】
(シングルレバー水栓における音量及び圧力の比較試験)
以下の表1に示すように、弾性部材の構成素材、硬さ、厚み(内径及び外径の寸法)、長さ、及び内容積、並びに、ハウジング部材の内径(ダンパー径)が異なる様々な水栓用ダンパー構造(実施例1~8)を用意し、
図1に示すように、シングルレバー水栓に組み込んで、止水時に発生した音量と、流路管内の圧力を測定した。また、比較例として、水栓用ダンパー構造を組み込んでいないシングルレバー水栓についても同様に、止水時に発生した音量と、流路管内の圧力を測定した。尚、音量については、マイクによって感知したものをチャートで表示して大きさを数値化した。圧力については、流路管に圧力計を接続して測定した。結果を以下の表1に示す。
【0045】
【0046】
表1に示されるように、本発明に係る水栓用ダンパー構造を組み込んだシングルレバー水栓(実施例1~8)における止水時の音の大きさは、水栓用ダンパー構造を組み込んでいないシングルレバー水栓(比較例)における止水時の音の大きさよりも小さく、音が低減されたことが確認された。また、圧力についても、本発明に係る水栓用ダンパー構造を組み込んだシングルレバー水栓(実施例1~8)によれば、水栓用ダンパー構造を組み込んでいないシングルレバー水栓(比較例)の場合よりも負圧になり難いことが確認された。また、ハウジング部材の内径(ダンパー径)については、径が小さくなるほど、音が小さくなる傾向が確認された。これは、弾性部材が収縮する際、弾性部材がハウジング部材の内壁と干渉して、弾性部材を潰れきらなかったためと考えられた。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、水栓における止水時の音の発生を抑える技術の分野において好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0048】
1:水栓用ダンパー構造
2:ハウジング部材
20:ニップル部材
21:外筒部材
22:弾性部材
220:溝
221:突条
222:盲栓
23:蓋部材
230:第1ニップル
231:第2ニップル
232:中空管
233:盲栓
234:第1フェルール
235:第1ナット
236:第2フェルール
237:第2ナット
3:シングルレバー水栓
30:水栓本体
31:操作レバー
4:吐出部
5:水供給管
6:湯供給管
7:流路管
8:T字管