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特許7300311過酢酸および過酸化水素含有殺菌剤中の過酢酸濃度を測定する方法および測定装置
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  • 特許-過酢酸および過酸化水素含有殺菌剤中の過酢酸濃度を測定する方法および測定装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-21
(45)【発行日】2023-06-29
(54)【発明の名称】過酢酸および過酸化水素含有殺菌剤中の過酢酸濃度を測定する方法および測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/3577 20140101AFI20230622BHJP
   G01N 21/33 20060101ALI20230622BHJP
   B65B 55/02 20060101ALI20230622BHJP
   A61L 12/08 20060101ALI20230622BHJP
【FI】
G01N21/3577
G01N21/33
B65B55/02 E
A61L12/08
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019095805
(22)【出願日】2019-05-22
(65)【公開番号】P2020020778
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2022-03-30
(31)【優先権主張番号】10 2018 113 300.6
(32)【優先日】2018-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508120916
【氏名又は名称】クロネス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】セルナー ユエルゲン
(72)【発明者】
【氏名】ディルシェール アーミン
【審査官】清水 靖記
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0024103(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第103922126(CN,A)
【文献】特表2014-508579(JP,A)
【文献】特開2006-258491(JP,A)
【文献】特開平04-045798(JP,A)
【文献】特開2010-243453(JP,A)
【文献】特開2013-092526(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0206787(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/01
G01N 21/17 - G01N 21/83
G01N 31/00 - G01N 31/22
G01N 33/18
B65B 55/00 - B65B 55/24
A61L 2/00 - A61L 12/14
C02F 1/50
C02F 1/70 - C02F 1/78
C12Q 1/00 - C12Q 3/00
B67C 3/00 - B67C 11/06
B08B 1/00 - B08B 13/00
A61L 101/22
A61L 101/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料充填設備(10)において過酢酸および過酸化水素含有殺菌剤中の過酢酸濃度を測定する方法であって、
以下の工程:
-前記殺菌剤中に含まれる過酸化水素を酸素と水に変換するカタラーゼ酵素を供給することにより前記殺菌剤を処理する工程
-カタラーゼ酵素により引き起こされた過酸化水素の変換の反応終了を検出する工程、および
検出されたカタラーゼ酵素により引き起こされた変換の反応終了の後に、光学測定方法を用いて前記処理済の殺菌剤中の過酢酸濃度を測定する工程
を含み、
前記カタラーゼ酵素により引き起こされた変換の反応終了を検出する工程において、前記処理済の殺菌剤の濁度を測定する、方法。
【請求項2】
前記光学測定方法において、前記処理済の殺菌剤を通過する光線(42)の吸光度を検出し、検出した吸光度に従って過酢酸濃度を測定することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記カタラーゼ酵素により引き起こされた変換の反応終了を検出する工程において、濁度の測定値が所定の閾値を下回ったときに反応終了が確認されることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の方法
【請求項4】
前記カタラーゼ酵素により引き起こされた変換の反応終了を検出する工程において、前記処理済の殺菌剤の濁度を測定するために、前記処理済の殺菌剤を通過する別の光線(58)の吸光度および/または散乱を測定することを特徴とする、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
飲料充填設備(10)内で使用するための、および前記飲料充填設備(10)を流れる過酢酸および過酸化水素含有殺菌剤流(16)中の過酢酸濃度を測定するための測定装置(34)であって、
-前記飲料充填設備(10)を流れる殺菌剤流(16;66)中にカタラーゼ酵素を供給する供給ユニット(36)
-前記供給ユニット(36)の下流に配置された、前記殺菌剤流(16;66)中の過酢酸濃度を測定する光学測定ユニット(38)、および
前記供給ユニット(36)の下流に配置され、前記殺菌剤流(16;66)中でカタラーゼ酵素により引き起こされた過酸化水素の変換の反応終了を測定するために前記殺菌剤流(16;66)の濁度を測定する濁度測定ユニット(54)
を含む、測定装置。
【請求項6】
前記光学測定ユニット(38)が、前記殺菌剤流(16、66)を通過する光線(42)を放出する光線源(40)、および前記殺菌剤流(16;66)を通過する前記光線(42)を測定する光センサ(44)を含むことを特徴とする、請求項に記載の測定装置。
【請求項7】
前記供給ユニット(36)と前記光学測定ユニット(38)の間に配置され、前記供給ユニット(36)から前記光学測定ユニット(38)の方向へ前記殺菌剤流(16)が貫流可能な滞留区間(46)が設けられていることを特徴とする、請求項または請求項に記載の測定装置。
【請求項8】
前記測定装置(34)を流れる前記殺菌剤流(16;66)の流量を測定する流量測定ユニット(50)が設けられていることを特徴とする、請求項から請求項までのいずれか1項に記載の測定装置。
【請求項9】
前記濁度測定ユニット(54)は、前記殺菌剤流を透過する赤外線(58)を放出する別の光源(56)と、前記殺菌剤流(16;66)を通り抜ける赤外線(58)を測定する別の光センサ(56)を含ことを特徴とする、請求項から請求項までのいずれか1項に記載の測定装置。
【請求項10】
前記濁度測定ユニット(54)は、濁度の測定値が所定の閾値を下回ったときに反応終了を測定するために設置されていることを特徴とする、請求項5から請求項9までのいずれか1項に記載の測定装置。
【請求項11】
前記光学測定ユニット(38)は、前記殺菌剤流(16;66)中でカタラーゼ酵素により引き起こされた過酸化水素の変換の反応終了が前記濁度測定ユニット(54)で測定されるときに前記殺菌剤流(16;66)中の過酢酸濃度を測定するために設置されていることを特徴とする、請求項5から請求項10までのいずれか1項に記載の測定装置。
【請求項12】
前記光学測定ユニット(38)および/または前記供給ユニット(36)は、前記光学測定ユニット(38)により測定された過酢酸濃度に従って前記殺菌剤流(16;66)中への過酢酸および/またはカタラーゼ酵素の流入を制御する制御ユニット(52)に接続している、または接続可能であることを特徴とする、請求項から請求項11までのいずれか1項に記載の測定装置。
【請求項13】
前記供給ユニット(36)の上流に配置され、前記殺菌剤流(16)中の過酢酸および過酸化水素の濃度を測定する別の光学測定ユニット(62)が設けられており、これは、前記制御ユニット(52)に接続可能であり、または接続しており、前記制御ユニット(52)は、前記光学測定ユニット(38)により測定された、前記供給ユニット(36)の下流の殺菌剤流(16;66)中の過酢酸濃度、および前記別の光学測定ユニット(62)により測定された、前記供給ユニット(36)の上流の殺菌剤流(16)中の過酢酸と過酸化水素の濃度に従って、前記供給ユニット(36)の上流の殺菌剤流(16)中の過酸化水素濃度を測定するために設置されていることを特徴とする、請求項12に記載の測定装置。
【請求項14】
飲料充填設備を流れる殺菌剤流(16)を提供する浄化システム(12)と、飲料充填設備を流れる前記殺菌剤流(16)中の過酢酸濃度を測定する請求項から13までのいずれか1項に記載の測定装置(34)を含む、飲料充填設備(10)。
【請求項15】
前記測定装置(34)にはバイパス管(64)を貫流する殺菌剤バイパス流(66)が供給可能であり、かつ、前記測定装置(34)は、前記殺菌剤流(16)中の過酢酸濃度を測定するために、前記バイパス管(64)を流れる前記殺菌剤バイパス流(66)を前記供給ユニット(36)を用いて処理し、かつ前記光学測定ユニット(38)を用いて分析するために設置されていることを特徴とする、請求項14に記載の飲料充填設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料充填設備に使用する過酢酸および過酸化水素含有殺菌剤中の過酢酸濃度を測定する方法および測定装置に関する。さらに、本発明は、このような測定装置を含む飲料充填設備に関する。
【背景技術】
【0002】
衛生上の要件を維持するために、食料品を包装する際には加工材料を無菌条件下で加工する無菌設備が使用される。これには、例えば、液状の充填物を充填する飲料充填設備が含まれる。
【0003】
このような設備は、周囲から隔離されたクリーンルームを有し、そこに充填物自体ならびに包装材、特に充填される容器を通過させ、かつ、その中には、例えば、充填される容器を製造する延伸ブロー成形装置、充填される容器を洗浄する洗浄装置、充填される容器に充填物を充填する充填装置、あるいは充填物が充填された容器を密閉する密閉装置の形式で、設備の加工ステーションが配置されている。無菌条件を保障するため、前記設備は周期的に、あるいは場合により、例えば化学滅菌用の殺菌剤を使用して殺菌することができる。
【0004】
飲料充填設備の分野では、前記設備内で充填される容器、例えばペットボトル、缶またはガラス瓶のための殺菌剤として過酸化水素含有洗浄液を使用することが公知である。
【0005】
さらに、飲料充填設備における殺菌剤として過酢酸含有洗浄液を使用することが、例えば特許文献1から公知である。過酢酸含有洗浄液は、その中で過酢酸、酢酸、過酸化水素および水の間に平衡(Gleichgewicht)が生じるという性質を有する。
【0006】
殺菌剤を再利用するために、すでに殺菌に使用した殺菌剤を回収し、処理し、その後改めて殺菌に使用するという殺菌剤の循環系を有する飲料充填設備用浄化システムが公知である。殺菌剤として過酢酸含有洗浄液を使用する場合、このような浄化システムでは、クリーンルーム内に洗浄液を噴霧した後、すなわち殺菌が行なわれた後、洗浄液中の過酢酸、酢酸、過酸化水素および水の間に新しい平衡が生じ得る。これは、例えば、殺菌の際の水による希釈により、またはそこに含まれる酸化剤の反応により起こり得るものである。
【0007】
しかし、殺菌剤により得られる洗浄効果は、本質的に、洗浄液の化学組成と酸化剤の含分に依存する。したがって、回収した、すでに殺菌に使用済の洗浄液を再利用するために、かつそれに応じて処理するために、洗浄液中に含まれる酸化剤、特に過酢酸の含分の測定および濃度監視を可能にする測定方法または測定装置が必要とされる。
【0008】
特許文献2からは、過酢酸および過酸化水素含有溶液を通り抜ける際の紫外線の吸光度、すなわち紫外線の減衰を測定する光学測定方法が公知である。この方法は、測定した吸光度は溶液中の過酢酸と過酸化水素の合計濃度と関係がある、という認識に基づくものである。したがって、この方法では、測定した吸光度に基づいて溶液中の過酢酸および過酸化水素の合計量を測定することが可能である。
【0009】
さらに、従来技術から、例えば特許文献3から電解測定方法が、および特許文献4から滴定測定方法が公知である。前記公知の光学測定方法に対し、これらの方法では、過酢酸および過酸化水素含有溶液中の過酢酸の濃度だけを過酸化水素と合計せずに測定することが可能である。
【0010】
前記電解測定方法および滴定測定方法では、タイムラグなしに過酢酸濃度のみを測定することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】独国特許出願公開第102013100284号明細書
【文献】米国特許出願公開第2010/0206787号明細書
【文献】欧州特許出願公開第0581081号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2880977号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前記公知の従来技術から、本発明の課題は、飲料充填設備における過酢酸および過酸化水素含有殺菌剤中の過酢酸濃度を測定する改良方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題は、請求項1の特徴を有する方法、請求項6の特徴を有する測定装置、およびこのような測定装置を含む、請求項14の特徴を有する飲料充填設備により解決される。好適な発展形態は、従属請求項ならびに本明細書および図面から明らかである。
【0014】
したがって、飲料充填設備における過酢酸および過酸化水素含有殺菌剤中の過酢酸濃度を測定する方法を提案する。この方法は、前記殺菌剤中に含まれる過酸化水素を酸素と水に変換するために前記殺菌剤を処理する工程、および光学測定方法を用いて前記処理済の殺菌剤中の過酢酸濃度を測定する工程を含む。
【0015】
本発明では、飲料充填設備での使用に対して、殺菌剤を分析するための、従来技術から公知の電解測定方法または滴定測定方法と比べて、光学測定方法は複数の利点を有していることがわかった。光学測定方法により、一つには、調査すべき殺菌剤の分析がほとんどタイムラグなしに(ohne zeitliche Verzoegerung)可能となり、それにより、特にインライン測定(Inline-Messung)またはオンライン測定(Online-Messung)が可能になる。このように、殺菌のために使用される殺菌剤が、そのために予定された過酢酸濃度を有しているかどうかを監視することができる。
【0016】
さらに、光学測定方法は流量依存性および温度依存性(durchfluss- und temperaturabhaengig)が小さく、わずかな実施費用および保守費用しか必要としない。飲料充填設備での使用に対する別の1つの利点は、光学測定方法では非接触測定が行なわれるので、無菌条件下で労力を抑えて行なうことができる点にある。
【0017】
以前から公知の光学測定方法では、分析すべき溶液を通り抜ける紫外線の吸光度を測定する。このような測定方法は、測定された吸光度が、例えば過酢酸および/または過酸化水素のような、溶液中に存在する酸化剤の量と概ね線形に関係している、という認識に基づいている。これらの異なる酸化剤は、このとき、溶液を通り抜ける紫外線に対して概ね同じように影響を及ぼす。したがって、この方法により同じ溶液中に含まれる異なる酸化剤を区別することはできない。しかし、分析すべき溶液が過酢酸も過酸化水素も含有している場合、公知の方法を使うと過酢酸と過酸化水素の濃度の合計は測定できるが、過酢酸の濃度だけを測定することはできない。
【0018】
前記提案した方法は、殺菌剤中に含まれる過酸化水素を酸素と水に変換するために殺菌剤を処理する工程を含むことにより、光学測定方法を実施する前にまず、殺菌剤中に含まれる過酸化水素の分解が行なわれる。
【0019】
殺菌剤中に含まれる過酸化水素を酸素と水に変換するために殺菌剤を処理する前記工程は、カタラーゼ酵素(Katalase-Enzyms)を供給することにより達成することができる。より正確には、カタラーゼ酵素が過酸化水素を酸素と水に変換させる。このようにして、処理済の殺菌剤から過酸化水素を完全に除去することができる。次の工程では、光学測定方法を用いて、前記処理済の殺菌剤中の過酢酸濃度を測定することができる。
【0020】
言い換えれば、殺菌剤中にカタラーゼ酵素を供給することにより、前記提案した方法において、光学測定方法の実施時点で殺菌剤中に過酸化水素がほとんど存在しないことが保障できる。このようにして、前記提案した方法により、殺菌剤中の過酢酸濃度を測定することができ、それにより正確な分析が可能になる。結局、先に挙げた光学測定方法の利点を有し、かつ同時に調査すべき殺菌剤の正確な分析を可能にする方法を提供するものである。
【0021】
前記提案した方法は、好ましくは飲料充填設備に使用されるが、任意の無菌設備、または過酢酸および過酸化水素含有殺菌剤の過酢酸濃度を測定する他の設備に使用することができる。過酢酸および過酸化水素含有殺菌剤は、好ましくは溶液の形で、すなわち液状で提供される。
【0022】
過酢酸濃度を測定する工程では、前記処理済の殺菌剤を通過する光線の吸光度を測定し、測定した吸光度に従って過酢酸濃度を測定する光学測定方法が使用できる。前記処理済の殺菌剤を通過する光線は、好ましくは紫外波長範囲の光線、すなわち紫外線である。紫外線は、例えば200nmと300nmの間の波長範囲を有することができる。
【0023】
前記光学測定方法は、過酢酸濃度と殺菌剤を通過する紫外線の吸光度との関係を表す数学モデルに基づく。この関係は、過酢酸濃度と紫外線の吸光度との間で基本的に線形関係もしくは比例関係であり得る。この数学モデルは、紫外線の吸光度の関数として過酢酸濃度を定義するのに利用することができる。したがって、前記方法により、紫外線の吸光度に従って過酢酸濃度を測定することが可能となる。光学測定方法の基になっている数学モデルを例えば参考実験に基づいて決定する基本的な手順は、従来技術から当業者には公知であり、したがって、ここでは詳細に説明しない。
【0024】
本方法では、過酸化水素に対するカタラーゼ酵素の触媒作用が利用されており、それにより、過酸化水素が酸素と水に変換する。したがって、本方法においてカタラーゼ酵素を供給することにより殺菌剤中の過酸化水素の分解が始まる。前記カタラーゼ酵素は、好ましくは、酸に対して耐性があるカタラーゼ酵素である。言い換えれば、前記カタラーゼ酵素は、好ましくは、過酸化水素に対するその触媒作用、すなわち過酸化水素との触媒反応が、殺菌剤中を支配する酸性のpH範囲、例えば2.6から6までのpH範囲において展開するように選ばれる。例えば、前記カタラーゼ酵素は、細菌または菌類由来の酵素であってよい。好ましくは、前記カタラーゼ酵素は菌類「黒コウジカビ(Aspergillus niger)」由来の酵素である。無菌設備での使用に適したカタラーゼ酵素は、国際公開第2009/128049号4頁18行から7頁10行に、例えば「Genencor CA-100」、「Genencor CA-400」、「Mitsubishi Gas and Chemical(MGC)ASC super G」および「MGC ASC super 200」のように、開示されている。
【0025】
殺菌剤を処理する工程では、特定の1つのタイプあるいは異なる複数のタイプのカタラーゼ酵素を使用することができる。カタラーゼ酵素は、例えばカタラーゼ酵素を含む溶液の形状、粉末状等々の様々な形状で殺菌剤に供給することができる。殺菌剤に供給するカタラーゼ酵素の量は、好ましくは、殺菌剤に含まれる過酸化水素の完全な変換を所定の時間で確実に行なうことができるように選ばれている。例えば、前記殺菌剤を処理する工程では、カタラーゼ酵素は、殺菌剤に対して0.1μg/mlから30μg/mlまで、あるいは20μg/mlより多い量で供給することができる。
【0026】
処理済の殺菌剤中の過酢酸濃度の正確な測定を可能にするために、過酢酸濃度を測定する工程は、好ましくは、殺菌剤中に含まれる過酸化水素がカタラーゼ酵素によって完全に変換した後に、すなわち完全に分解した後に行なわれる。このようにして、過酢酸濃度を測定する工程で測定される吸光度が殺菌剤中に存在する過酸化水素によって影響を受けないことが保障できる。
【0027】
カタラーゼ酵素により変換した過酸化水素の量は、このとき基本的に、カタラーゼ酵素を供給してから経過した時間に依存する。過酸化水素の完全な変換を保障するために、前記殺菌剤を処理する工程と前記過酢酸濃度を測定する工程の間に滞留期間(Verweildauer)を設けるように前記方法を行なうことができる。滞留期間は、好ましくは、その経過後に、カタラーゼ酵素により引き起こされた過酸化水素の変換が反応終了(Reaktionsende)に達するように選ばれている。言い換えれば、カタラーゼ酵素により引き起こされた過酸化水素の変換の反応終了は、処理済の殺菌剤中の過酸化水素が完全に分解されたときに達成されている。
【0028】
前記滞留期間は、予め決定もしくは予め設定しておくことができる。言い換えれば、前記方法において、前記過酢酸濃度を測定する工程は、前記殺菌剤を処理する工程の後、カタラーゼ酵素により引き起こされた過酸化水素の変換が反応終了に達する所定の滞留期間の後に行なうことができる。前記滞留期間は、例えば参考実験に基づいて設定することができる。滞留時間を設定するために、特に、殺菌剤に供給するカタラーゼ酵素の量と種類を考慮することができる。このとき、殺菌剤に供給するカタラーゼ酵素の量が増えると、設定した滞留期間を短くすることができる。滞留期間は、好ましくはカタラーゼ酵素の種類、量、温度および/または濃度に従って決められる。例えば、滞留期間は20秒から30秒の間であってよい。
【0029】
代わりに、または加えて、前記方法は、カタラーゼ酵素により引き起こされた過酸化水素の変換の反応終了を検出する工程を含んでよい。特にこの工程では、この工程が実施される時点で反応終了になっているのか否かを測定することができる。過酢酸濃度を測定する工程は、したがって、殺菌剤中でカタラーゼ酵素により引き起こされた過酸化水素の変換の反応終了を検出する前記工程に従って行なうことができる。例えば、処理済の殺菌剤中の過酢酸濃度を測定する工程は、カタラーゼ酵素により引き起こされた変換の反応終了を測定した後に行うことができる。言い換えれば、前記方法は、反応終了が測定されてすぐに続けて過酢酸濃度を測定する工程が行なわれるように実施することができる。
【0030】
殺菌剤中でカタラーゼ酵素により引き起こされた過酸化水素の変換もしくは分解では、酸素が発生し、好ましくは液状の殺菌剤の内部に気泡の形で放出される。そのように放出された酸素の泡は、処理済の殺菌剤に濁りを生じ、これが光学測定方法に影響を及ぼす。
【0031】
これに基づき、ここで提案された方法では、過酸化水素の変換により引き起こされた殺菌剤の濁りが、過酸化水素の変換が反応終了しているのか、あるいは変換工程が停止しているのか、を示す指標として適していることが認識された。前記方法においては、したがって、カタラーゼ酵素により引き起こされた過酸化水素の変換の反応終了を検出する工程で、反応終了を測定するために処理済の殺菌剤の濁度(Truebung)の測定を行なうことができる。この工程では、例えば、処理済の殺菌剤の濁度の測定値が所定の閾値を下回ったときに、反応終了を確認することができる。濁度を測定するために、例えば、処理済の殺菌剤を通過する光線の吸光度および/または散乱を測定することができる。これには、例えば赤外波長範囲を有する光線、すなわち赤外線を使用することができる。
【0032】
さらに、飲料充填設備を流れる過酢酸および過酸化水素含有殺菌剤流中の過酢酸濃度を測定するために設置された、飲料充填設備内で使用するための測定装置を提案する。それに応じて、前記提案された測定装置は、前記飲料充填設備を流れる殺菌剤流中にカタラーゼ酵素を供給する供給ユニット、および前記供給ユニットの下流に配置された、前記殺菌剤流中の過酢酸濃度を測定する光学測定ユニットを含む。ここで「下流」および「上流」の概念は、殺菌剤流の流れ方向に関するものである。
【0033】
前記測定装置は、特に、過酢酸および過酸化水素含有殺菌剤中の過酢酸濃度を測定する前述の方法を実施するために設けられている。したがって、前記方法に関する前述の技術的特徴は、ここに記載の、前記方法を実施するための測定装置にも該当する。
【0034】
前記測定装置は、飲料充填設備の浄化システム(Reinigungssystems)のプロセス管(Prozessleitung)を流れる殺菌剤流を分析するために設けられていてよい。前記プロセス管は、飲料充填設備のクリーンルームに供給される、および/またはそこから排出される殺菌剤流を飲料充填設備中に送るために設けられていてよい。飲料充填設備の浄化システムは、特に、殺菌剤もしくは殺菌剤流が飲料充填設備内でプロセス管を通って循環する殺菌剤循環系を有することができる。
【0035】
前記供給ユニットは、殺菌剤流が貫流するプロセス管にカタラーゼ酵素を供給するために設置されていてよい。それに応じて、前記光学測定ユニットは、プロセス管を通る殺菌剤流の流れ方向に対して前記供給ユニットの下流、もしくはカタラーゼ酵素を殺菌剤流に供給する位置の下流に配置されているプロセス管の箇所において、プロセス管を流れる殺菌剤流を分析するために設置されていてよい。
【0036】
したがって、前記提案された測定装置により、飲料充填設備のプロセス管を流れる殺菌剤流を連続的にかつほとんどタイムラグなしに分析できることが可能になる。このように、過酢酸および過酸化水素含有殺菌剤流の過酢酸濃度をインライン測定する測定装置が提供される。
【0037】
代わりに、または加えて、前記測定装置は、プロセス管のバイパス管(Bypass-Leitung)を流れる殺菌剤バイパス流(Sterilisierungsmedium-Bypass-Strom)を分析するために設置されていてよい。これに関連して、バイパス管は本来のプロセス管に平行に接続された管と解釈され、それにより、プロセス管を流れる殺菌剤流のうち少量が枝分かれして、バイパス管を通って送られ、続いてプロセス管に再び供給される。前記測定装置のこの形態は、殺菌剤流のオンライン測定を可能にする。バイパス管を流れる殺菌剤バイパス流がプロセス管を流れる殺菌剤流よりも小さい質量流量を有することにより、それに応じて、過酢酸濃度を測定するために殺菌剤に供給されるカタラーゼ酵素の量を削減することができる。このようにして、測定装置と測定方法の効率を上げることができる。バイパス管を流れる殺菌剤バイパス流において測定装置を用いて行われる分析は、このとき、プロセス管を流れる殺菌剤流を代表している。
【0038】
殺菌剤流中の過酢酸濃度を測定するために、前記光学測定ユニットは、殺菌剤流を透過する光線、特に紫外線の吸光度に従って過酢酸濃度を測定するために設置されていてよい。したがって、前記光学測定ユニットは、殺菌剤流を透過する光線、特に紫外線を放出する光線源と、前記光線源から放出されて殺菌剤流を透過する光線を受け取って測定する光学探知器、特に光センサを含んでいてよい。前記光線源および前記光センサは、プロセス管の対向する面に配置されていてよく、このとき、前記光学測定ユニットの範囲のプロセス管は、光線源から放出された光線が透過する材料から製造されていてよい。前記光学測定ユニットは、殺菌剤流中の過酢酸濃度の非接触測定を可能にするという効果を有する。
【0039】
カタラーゼ酵素が添加された殺菌剤中の過酢酸濃度の正確な測定を可能にするために、前記測定装置は、前記供給ユニットと前記光学測定ユニットの間に配置された滞留区間(Verweilstrecke)を備えていてよい。この滞留区間を、好ましくは殺菌剤流が前記供給ユニットから前記光学測定ユニットの方向へ貫流可能である。この滞留区間は、カタラーゼ酵素を供給した後に処理済の殺菌剤がまずこの滞留区間を流れるので、光学測定ユニットを用いて処理済の殺菌剤中の過酢酸濃度の測定を行う前に特定の滞留期間が経過する、という効果を有する。このようにして、光学測定ユニットで殺菌剤を分析する前に殺菌剤中に含まれる過酸化水素の完全な分解が行なわれることが保障できる。このとき、滞留区間の長さ(Laenge)および流量断面積(Durchflussquerschnittsflaeche)は、滞留区間を流れる殺菌剤が供給ユニットから光学測定ユニットの方向へ流れるために所定の滞留時間を必要とするように選ばれている。滞留時間は、その経過後にカタラーゼ酵素を用いた殺菌剤流中の過酸化水素の完全な分解が保障できるように選ばれる。このとき、滞留区間の流量断面積は、好ましくは、その上流もしくは下流に配置された管の流量断面積と同じである。このようにして、測定装置内の流量損失を回避することができる。あるいは、滞留期間を延ばすために、滞留区間の流量断面積は、そこに隣接する、その上流もしくは下流に配置された管の流量断面積よりも大きくてよい。滞留区間は、例えば2mから25mの長さ、例えば概ね5mの長さを有してよい。
【0040】
前記測定装置は、さらに、この測定装置を流れる、もしくは飲料充填設備のプロセス管を流れる殺菌剤流の流量、特に質量流量および/または体積流量(Massen- und/oder Volumenstroms)を測定するために設置された流量測定ユニットを含んでいてよい。この流量測定ユニットは、測定装置または飲料充填設備の制御ユニットと接続していてよく、または接続可能であってよい。この制御ユニットは、前記流量測定ユニットにより測定される殺菌剤流の流量の値に応じて、かつ、滞留区間の長さと流量断面積に従って供給ユニットと光学測定ユニットの間の殺菌剤の滞留期間を測定するために設置されていてよい。
【0041】
代わりに、または加えて、前記測定装置は、供給ユニットの下流に配置された濁度測定ユニットを含んでいてよい。この濁度測定ユニットは、殺菌剤流中でカタラーゼ酵素により引き起こされた過酸化水素の変換の反応終了を測定するために設置されていてよい。より正確には、この濁度測定ユニットは、殺菌剤流の濁度を測定するために設置されていてよい。このため、この濁度測定ユニットは、前記殺菌剤流を透過する赤外線を放出する光源と、前記殺菌剤流を通り抜ける赤外線を測定する光学探知器、特に光センサ、を含んでいてよい。さらに、前記濁度測定ユニットは、濁度の測定値が所定の閾値を下回ったときに殺菌剤流中の過酸化水素の変換の反応終了を測定するために設置されていてよい。
【0042】
前記光学測定ユニットは、殺菌剤流中でカタラーゼ酵素により引き起こされた過酸化水素の変換の反応終了が、別の光学測定ユニットにより表示または測定されたときに前記殺菌剤流中の過酢酸濃度を測定するために設置されていてよい。このようにして、殺菌剤流中の過酸化水素がまだ完全な分解に達していない状態で前記光学測定ユニットを用いた測定が行なわれることを防止することができる。
【0043】
さらに、前記光学測定ユニットおよび/または前記供給ユニットは、測定装置の制御ユニットと接続していてよく、および/または飲料充填設備の制御ユニットと接続可能であってよい。このとき、この制御ユニットは、前記殺菌剤流中への過酢酸および/またはカタラーゼ酵素の流入を前記光学測定ユニットにより測定された過酢酸濃度に従って制御するために設置されていてよい。過酢酸の流入は、このとき、別の供給ユニットを用いて実現していてもよく、飲料充填設備の殺菌を実施するために殺菌剤流を供給する前にその殺菌剤流を処理するために用いてもよい。
【0044】
さらに発展させた形態では、前記測定装置はさらに、前記供給ユニットの上流に配置された、殺菌剤流中の過酢酸および過酸化水素の濃度を測定する別の1つの光学測定ユニットを含んでいてよい。この別の光学測定ユニットは、先に開示した光学測定ユニットに即して形作られていてよい。この別の光学測定ユニットは前記制御ユニットと接続していてよい。したがって、前記制御ユニットは、前記光学測定ユニットにより測定された、供給ユニットの下流の殺菌剤流中の過酢酸濃度と、前記別の光学測定ユニットにより測定された、供給ユニットの上流の殺菌剤流中の過酢酸および過酸化水素の濃度に従って、供給ユニットの上流の殺菌剤流中の過酸化水素濃度を測定するために設置されていてよい。より正確には、これは、前記光学測定ユニットにより測定された過酢酸濃度を、別の光学測定ユニットにより測定された過酢酸および過酸化水素の濃度から減ずることにより行なうことができる。このように、前記提案した測定装置は、さらに、過酢酸および過酸化水素含有殺菌剤流中の過酸化水素濃度の測定を可能にする。
【0045】
さらに、飲料充填設備を流れる殺菌剤流を供給する浄化システムと、飲料充填設備を流れる殺菌剤流中の過酢酸濃度を測定する上述の測定装置を含む、飲料充填設備を提案する。
【0046】
前記浄化システムは、好ましくは、飲料充填設備のクリーンルームの殺菌剤を回収し、処理し、その後改めてクリーンルームに供給する飲料充填設備内部の循環系に殺菌剤流を循環させるために設置されている。このように、殺菌剤は再利用できるので、飲料充填設備の効率を上げることができる。
【0047】
さらに発展させた形態では、前記測定装置に、前記浄化システムのプロセス管から枝分かれした、バイパス管を流れる殺菌剤バイパス流が供給可能であってよい。したがって、前記測定装置は、浄化システムにより循環させた殺菌剤流中の過酢酸濃度を測定するために、バイパス管を流れる殺菌剤バイパス流を供給ユニットを用いて処理し、光学測定ユニットを用いて分析するために設置されていてよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】第1実施形態の測定装置を有する飲料充填設備を概略的に示すものである。
図2】第2実施形態の測定装置を有する飲料充填設備を概略的に示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本発明の、他の好適な実施態様を、以下、図面により詳細に説明する。
【0050】
以下、好適な実施例を図面に基づいて記載する。ここで、異なる図面における同じ部材、類似の部材または同じ作用をする部材には同一の符号を付しており、重複を避けるために、これらの部材を繰り返して説明することは部分的に省略する。
【0051】
図1には、飲料充填設備10が示されており、これは、飲料充填設備10中を循環系14で循環する殺菌剤流16を提供かつ処理する浄化システム12を含む。飲料充填設備10はクリーンルーム18を含み、この中に飲料充填設備10の製造ラインが配置されており、加工材料が加工される。飲料充填設備10内の無菌条件を保障するために、操業中、浄化システム12のプロセス管20を介して殺菌剤がクリーンルーム18に供給され、その中で分配ノズル22により噴霧される。殺菌剤流16を形成する殺菌剤は、過酢酸および過酸化水素を有する。
【0052】
より正確には、浄化システム12は、殺菌剤をクリーンルーム18内で噴霧し、そこで噴霧された殺菌剤を捕集ユニット24で回収し、処理し、かつその後改めてクリーンルーム18に供給するために設置されている。このようにして、殺菌剤の再利用が行なわれ、それにより、飲料充填設備10の効率が上がる。捕集ユニット24に回収された殺菌剤は、プロセス管20のフィードポンプ26を介して改めて供給され、処理ユニット28の方向へ送られる。
【0053】
処理ユニット28は、過酢酸供給ユニット30および水供給ユニット32を含み、これらは、プロセス管20を流れる殺菌剤流16中に過酢酸および水を供給するために設置されている。特に、ここで示した飲料充填設備10においては、殺菌剤流16中の過酢酸濃度を調整して、それにより殺菌剤の洗浄作用に影響を与えるために、過酢酸および/または水を添加することにより殺菌剤流16の処理を行なう。
【0054】
目的に合わせた殺菌剤流16中の過酢酸濃度の調整を可能にするために、飲料充填設備10はさらに、飲料充填設備10を流れる過酢酸および過酸化水素含有殺菌剤流16中の過酢酸濃度を測定する測定装置34を含む。
【0055】
測定装置34は、プロセス管20を流れる殺菌剤流16にカタラーゼ酵素を供給する供給ユニット36を含む。言い換えれば、供給ユニット36を用いて、殺菌剤流16中に含まれる過酸化水素を酸素と水に変換するカタラーゼ酵素を供給することにより殺菌剤流16の処理を行なう。
【0056】
このように処理された殺菌剤流16は、供給ユニット36から、供給ユニット36の下流に配置された、光学測定方法を用いて処理済の殺菌剤流16中の過酢酸濃度を測定するために設置された光学測定ユニット38の方向に流れる。より正確には、光学測定ユニット38は、殺菌剤流16を透過する、200nmから300nmの間の波長範囲を有する紫外線42を放出する光線源40を含む。ここで、プロセス管20は、光学測定ユニット38の範囲に、紫外線42を通す部分を含む。このように、光線源40から放出された紫外線42は、測定ユニット38の範囲でプロセス管を流れる殺菌剤流16を通り抜け、その後光学測定ユニット38の紫外線センサ44に当たる。この紫外線センサ44は、殺菌剤流16を通過する紫外線42を測定するために設置されている。特に、紫外線センサ44は、入射した紫外線42を光電効果を用いて電気信号に変換する、あるいは入射した紫外線42に依存する電気抵抗を示す電子部材である。したがって、紫外線センサ44は、入射した紫外線42の強度を測定するので、紫外線センサ44に当たる紫外線42の吸光度、すなわち減衰を測定することができる。測定装置34は、このとき、光学測定ユニット38により検出された吸光度に従って殺菌剤流16中の過酢酸濃度を測定するために設置されている。
【0057】
正確な測定結果を保障するために、測定装置34には、供給ユニット36と光学測定ユニット38の間に、図1において破線で示された特定の滞留区間46が配置されており、ここを通って殺菌剤流16が供給ユニット36の下流から光学測定ユニット38まで流れる。滞留区間46は、例えば5mの長さを有し、これに隣接するプロセス管20の部分とほぼ一致する流量断面積を有する。カタラーゼ酵素を供給した後、処理済の殺菌剤はまず滞留区間46を流れるので、殺菌剤が光学測定ユニット38に到達して過酢酸濃度が測定される前に所定の滞留期間が経過する、という効果を滞留区間46は有する。このとき、測定装置34は、滞留区間46における殺菌剤の滞留期間が、カタラーゼ酵素を用いた殺菌剤中に含有される過酸化水素の完全な変換が保障できるほど十分な長さであるように構成されている。そのようにして、光学測定ユニット38を貫流する殺菌剤流16が光学測定方法に影響を及ぼすかもしれない過酸化水素を有することが防止できる。
【0058】
測定装置34により殺菌剤流16の流速を調整し、かつ、それで滞留区間46内の殺菌剤の滞留期間を調整するために、測定装置34はその入口または出口に、プロセス管20内に流量制御弁48を含む。さらに、測定装置34は、測定装置34を流れる殺菌剤流16の流量、特に質量流量および/または体積流量を測定する流量測定ユニット50を含む。流量測定ユニット50は、流量測定ユニット50により検出された流量に応じて滞留区間46における処理済の殺菌剤の滞留期間を測定する制御ユニット52と接続している。測定装置34のこの構成により、浄化システム12の稼働中、滞留区間46における殺菌剤の滞留期間を正確に調整することが可能になる。
【0059】
測定装置34は、さらに、流れ方向で光学測定ユニット38の直前に配置された、殺菌剤流16の濁度を測定する濁度測定ユニット54を含む。濁度測定ユニット54は、殺菌剤流16を透過する赤外線58を放出する赤外線源56と、赤外線58が殺菌剤流16を通り抜けた後に当たる赤外線センサ60を含む。この光センサ60は、このとき、濁度を測定するために、殺菌剤流16を通過する赤外線58の吸光度を測定する。より正確には、濁度測定ユニット54は、濁りの測定値が所定の閾値を下回ったときに、殺菌剤流16中でカタラーゼ酵素により引き起こされた過酸化水素の変換の反応終了を制御ユニット52に表示するために設置されている。言い換えれば、この閾値は、それを下回った場合、ほぼ透明な、すなわち無視できるほどの濁りしか有していない殺菌剤を前提とすることができるように選ばれており、これが過酸化水素の変換の反応終了の指標である。光学測定ユニット38の測定の誤りを防ぐために、測定装置34は、殺菌剤流16中での反応終了が濁度測定ユニット54で測定されたときだけ、対応して光学測定ユニット38を用いて過酢酸濃度を測定するために設置されていてよい。
【0060】
濁度測定ユニット54および光学測定ユニットは、あるいは1つのユニット内に構設してもよい。
【0061】
光学測定ユニット38は、制御ユニット52と接続しており、これに光学測定方法により測定した殺菌剤流16中の過酢酸濃度の値を伝達するために設置されている。制御ユニット52は、殺菌剤流16中への過酢酸および/または水および/またはカタラーゼ酵素の流入を調節するために、光学測定ユニット38により測定された過酢酸濃度に従って供給ユニット36、過酢酸供給ユニット30および水供給ユニット32を制御するために設置されている。
【0062】
さらに、測定装置34は、供給ユニット36の上流に配置された、供給ユニット36の上流の殺菌剤流16中の過酢酸および過酸化水素の濃度を測定するための別の光学測定ユニット62を含む。この別の光学測定ユニット62は、光学測定ユニット38に即して構成され、測定結果を伝達する制御ユニット52と接続している。制御ユニット52は、さらに、供給ユニット36の上流の殺菌剤流16中の過酸化水素濃度を測定するために設置されている。これは、光学測定ユニット38により測定された、供給ユニット36の下流の殺菌剤流16中の過酢酸濃度を、別の光学測定ユニット62で測定された、供給ユニット36の上流の殺菌剤流16中の過酢酸および過酸化水素の濃度から減ずることにより行なわれる。
【0063】
結局、ここに示した測定装置34により、プロセス管20を流れる殺菌剤流16を連続的にかつほとんどタイムラグなしに分析できることが可能になる。このように、過酢酸および過酸化水素含有殺菌剤流中の過酢酸濃度および/または過酸化水素濃度をインライン測定するための方法と装置が提供される。
【0064】
図2は別の飲料充填設備10を示し、ここでは、図1に示した測定装置と比較して、プロセス管20から枝分かれした、バイパス管64を流れる殺菌剤バイパス流66が測定装置34に供給される。したがって、測定装置34は、浄化システム12を循環する殺菌剤流16の過酢酸濃度を測定するために、バイパス管64を流れる殺菌剤バイパス流66を供給ユニット36を用いて処理し、光学測定ユニット38を用いて分析するために設置されている。プロセス管20を流れる殺菌剤流16から枝分かれした測定装置34の殺菌剤バイパス流66が分析されることにより、この構成は、殺菌剤中の過酢酸濃度のオンライン測定を可能にする。
【0065】
適用できる限り、実施例に記載されている全ての個別の特徴は、発明の範囲を逸脱しなければ互いに組み合わせても、および/または交換してもよい。
【符号の説明】
【0066】
10 飲料充填設備
12 浄化システム
14 殺菌剤用循環系
16 殺菌剤流
18 クリーンルーム
20 プロセス管
22 分配ノズル
24 捕集ユニット
26 フィードポンプ
28 処理ユニット
30 過酢酸供給ユニット
32 水供給ユニット
34 測定装置
36 供給ユニット
38 光学測定ユニット
40 光線源
42 紫外線
44 紫外線センサ
46 滞留区間
48 制御弁
50 流量測定ユニット
52 制御ユニット
54 濁度測定ユニット
56 赤外線源
58 赤外線
60 赤外線センサ
62 別の光学測定ユニット
64 バイパス管
66 殺菌剤バイパス流
図1
図2